...

(平成22年度) (PDF 2.4MB)

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

(平成22年度) (PDF 2.4MB)
平成 22 年度
とよた子どもの権利相談室
活動報告書
平成 23 年 6 月
とよた子どもの権利相談室
巻頭言
『アンパンマンマーチ』に寄せて
豊田市子どもの権利擁護委員
代表
木全 和巳
豊田市子ども条例が制定されて 4 年、とよた子どもの権利相談室を開設して 3 年目の春
を迎えました。今年の春は、特別な春だと思います。私たち一人ひとりが、3 月 11 日の東
日本大震災の被害の受けとめと、復興をめざしていく春だからです。
大震災の直後、被災した子どもたちを励ましている一つの歌があると、
『朝日新聞』
(2011
年 03 月 26 日)に報じられていました。誰でも口ずさむことができるあの歌『アンパンマ
ンマーチ』(作曲
三木たかし)です。90 歳を過ぎてなおもご健在である原作者のやなせ
たかしさんが作詞をしています。
《そうだ
うれしいんだ
なんのために
/
こたえられない
生まれて
なんて
生きる
よろこび
/
たとえ
/
なにをして
生きるのか
/
そんなのは
いやだ!》
胸の傷がいたんでも
/
生きることそのものがよろこびであること、でも生きていくには、胸(心)の傷がとも
なうこと、それでも生きていくことはよろこびであること、そして、誰にとってもたった
一度の人生、「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」という、そう簡単にはこ
たえられない問いだけれども、生きている以上、この問いを受けとめざるをえないこと、
できうるならば積極的に受けとめていこうという決意を込めて、「こたえられないなんて
そんなのはいやだ」と、やなせさんは、表現したんだと読み取りました。
アンパンマンマーチの歌詞を何度も口ずさみながら、権利相談室の活動をするときに、
人権とともに欠くことができないもう一つのことばを重ねて、子どもの権利相談室の役割
を問い直している自分がいました。社会正義(Social Justice)です。社会的公正とも訳され
ています。
弁護士法の第一条には、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを
使命とする」と、また、ソーシャルワークの定義には、「人権と社会正義の原理は、ソー
シャルワークの拠り所とする基盤である」とあります。
子どもの権利相談室の権利擁護委員や相談員も、子どもたちの権利が侵害された状況か
らの回復をめざしていくときに、人権と社会正義の原理に照らし合わせて、さまざまな相
談支援の活動を行います。
この「正義」について、やなせさんは、1973 年、当初はちっとも売れなかった『アンパ
ンマン』絵本の第一作のあとがきに、こう書き記しています。「ほんとうの正義というも
のは、けっしてかっこいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つ
くものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えません」(やなせたか
し『アンパンマンの遺書』岩波書店
1995 年
から)。
「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこいいものではないし、そして、そのた
めにかならず自分も深く傷つくものです」の一文は、権利擁護委員の活動をしているわた
し自身のこころに深く刻み込まれたフレーズです。傷ついた子どもたちの権利を回復をい
っしょに行うということは、よろこびもありますが、同時に、深い傷つきをともなう作業
であることを忘れてはならないと思うのです。
たった一度しかない人生の主人公は、私たち一人ひとりです。そのなかでも、子どもた
ちは、主体者でありつつ、未来のより確かな主体者に育っていく存在です。周囲の人たち
の支援のもとで、育ち合い、学び合う環境がなければ、確かに育っていくことはできませ
ん。子どもの権利相談室では、子どもたちに寄り添い、支え、子どもたちの生活の安心や
安定と、成長と発達を護る立場から、関係者と関係機関との調整活動をていねいに行って
いきたいと考えています。こうした活動は、市民の方々をはじめ関係者の理解と協力がな
ければ、行うことはできません。
《そうだ
うれしいんだ
/
生きる
よろこび
/
たとえ
胸の傷がいたんでも》
アンパンマンは、飢えた人たちに自分のかおを差し出します。私たちキュウサイくんやキ
ュウサイさんは、何を与えることができるのか。これからも問い続けたいと思います。
生きていること、日常のあたりまえの生活のいとおしさと大切さを受けとめつつ、かけが
えのない人たちを失った子どもたちとともに
2011 年
特別な春の日に
も
く
じ
はじめに(巻頭言)「『アンパンマンマーチ』によせて」
豊田市子どもの権利擁護委員
代表擁護委員
木全 和巳
1.
とよた子どもの権利相談室の概要
――――――――――――4
2.
相談の状況について
――――――――――――――――――7
平成 22 年度の相談状況
3.
調査・調整活動
―――――――――――――――――――15
申立・発意案件
調整案件
4.
出張相談
――――――――――――――――――――――23
5.
広報・啓発活動
―――――――――――――――――――24
6.
研究・協議活動
―――――――――――――――――――28
7.
第2回活動報告会
――――――――――――――――――30
① 平成 21 年度活動報告」の記録
② シンポジウム」の記録
8.
擁護委員からのメッセージ
――――――――――――――60
・子どもの権利相談室と権利擁護委員の仕事
―特に「是正の勧告」と「改善の要請」について―
木全 和巳
・学童保育の指導と子どもの権利
大村 惠
・相談室での活動をふりかえって
吹野 憲征
・新入りの擁護委員です
高橋 直紹
(参考資料)
豊田市子ども条例
豊田市子ども条例の一部の施行期日を定める規則
豊田市子ども規則
平成 22 年度
あとがき
擁護委員、相談員、所長
名簿
1.とよた子どもの権利相談室の概要
(1)
「とよた子どもの権利相談室」の目的
市では、子どもの権利を保障し、子どもが幸せに暮らすことのできるまちを実現するため
に、平成 19 年に「豊田市子ども条例」を制定しました。そして、条例制定の重要なテーマで
ある「子どもの権利の侵害に対する救済と回復」を支援するために、「豊田市子どもの権利
擁護委員制度」をつくりました。
「とよた子どもの権利相談室」は、子どもが感じている身近な悩みやSOSへの対応とし
て、独立性、第三者性の機能を持つ「子どもの権利擁護委員」が、「子どもの最善の利益」
を考えて子どもと一緒になって解決を図る専門機関です。
(2)
「とよた子どもの権利相談室」の運営体制
豊田市子どもの権利擁護委員 3名
擁護委員は、人格に優れ、子どもの権利、福祉、教育などに関して知識や経験のある
人のうちから、市長が選びます。
豊田市子どもの権利相談員
7名
擁護委員の仕事を補助するために置かれ、相談や申立ての受付業務を行います。相
談室には常時、2~4名が勤務しています。
所長(事務局職員)
1名
相談室の事務担当として、次世代育成課職員が所長を務めています。
相談や調査活動は担当していません。
(3)
相談できる人
豊田市に在住、在学、市内の施設を利用している子ども本人
保護者、教職員、関係者など本市の子どもにかかわるすべての市民
(4)
相談の方法
電話
フリーダイヤル 0120-797-931
相談室に来室しての面談
(来室が困難な場合は、相談室以外で行うこともできます。)
〒471-0026 豊田市若宮町1-57-1 A館t-FACE9階(松坂屋上階)
ファックスや手紙など文書
FAX 0565-33-9314
(5)
相談時間
月・水・木曜日
午後 1 時~午後 6 時
金曜日
午後 1 時~午後 8 時
土・日曜日
午前 10 時~午後 6 時
(火曜日は休みです。)
とよた子どもの権利相談室の入口です
t-FACE9 階フロアー図
写真はイメージです
エレベーター
献血ルーム
就労
支援室
相談室
子ども多目
的トイレ
事務室
会議室
子育て広場
すくすく
ヤング・オールド
サポートセンター
子育て広場
市民活動
センター
エスカレーター
わくわく
エスカレーター
交流ロビー
福祉の店
サークル活動室
工作室
サークル活動室
ホール
多目的
ホール
≪相談から解決まで≫
*リーフレットより*
上の図は、相談者の方が相談したら、どのように相談にのってもらえて、どのように解
決するかをイメージしたものです。相談された方の秘密は守ります。
「つらい」「苦しい」「困った」と思った時や「いじめられている」「たすけてほしい」
「だれにも言えない」という時に、相談室へ電話をしてください。友だちのこと、学校の
こと、家族のことなど、その他どんなことでも話してください。子どもの権利相談員があ
なたの話をじっくり聞きます。子どものことなら大人でも相談できます。
スマイルダイヤルは、フリーダイヤルですので電話代はかかりません。公衆電話からか
けた場合、お金は戻ってきます。
2.相談の状況
平成 22 年度に受け付けた新規(*注 1)の相談案件は 86 件でした。
相談は 1 回で終わるものもありますが、その後、何回か続いて相談を受ける案件もあり
ます。前年度からの継続相談 13 件も含めると、相談の延べ回数(*注 2)は 939 回でした。
これを平成 21 年度と比較すると、新規案件で 3 件多く、延べ回数では 407 回多くなってい
ます。
22 年度は申立案件・発意案件はありませんでした。相談者の同意を得て関係機関と調整
を行った案件は 3 件ありました。
なお、短時間であっても相談者と会話したものは相談案件として扱っています。電話を
とっても相手が無言のまま切れるものがあります。こうした無言電話は「相談件数」と扱
っていません。話したいことがあったが言葉にできなかった、あるいは話すことがまとま
らなかったなどととらえ、慎重に対応しています。
*注 1「新規」・・初回相談のこと。初回の相談から終結するまでの相談を 1 案件とする。
*注 2「延べ回数」・・案件について継続して相談があった回数。この中には申立・発意案件での調査
・調整活動、同意を得ての調整活動の回数も含む。(例、1 案件で 5 回相談があった場合は延
べ回数 5 回とする。)
平成 22 年度に相談室が受けた相談を、項目に分けて集計してみました。
(相談状況の統計)
(1)
月別相談件数
(2)
相談者内訳
(3)
相談者が子どもの場合の学齢
(4)
相談対象の子どもの学齢
(5)
相談の継続回数
(6)
相談の主訴
(7)
相談の曜日
(8)
相談の時間帯
(9)
相談の方法
(10)
相談の所要時間
(1) 月別相談件数
4月
H.21 年度
新規件数
H.21 年度
延べ回数
H.22 年度
新規件数
H.22 年度
延べ回数
5月
6月
7月
8月
9月
10 月 11 月 12 月 1 月
2月
3月
総計
5
9
11
5
5
8
6
13
3
8
5
5
83
30
26
35
26
23
36
72
74
35
48
58
69
532
6
13
8
12
7
7
6
3
8
2
6
8
86
67
73
105
100
77
83
78
98
45
65
64
84
939
新規件数でみると、多いのは 5 月(13 件)、7 月(12 件)で、少ないのは 1 月(2 件)、
11 月(3 件)でした。そのほかの月は 6~8 件となっています。
延べ件数では 6 月、7 月、11 月が多く、100 回ほどとなっています。これは 1 案件につい
て数回の相談を重ねることが多くなっていることと、前年度から継続している案件で、調
査・調整活動の回数が多いことが反映しています。
「子どもたちからたくさんの相談があるといいな」。そんな思いから相談電話をフリ
ーダイヤル(電話代は無料)にしています。22 年度は子どもからの相談割合が 33%で
した。子どもからの相談がもっと増えてほしい。
子どもたちにとって身近な存在で安心して相談できる、そんな相談室になりたいと思
っています。
(相談員)
(2) 相談者内訳
*(91)「対象年齢外」は、相談の対象者が「18 歳までの子ども」でない案件
*(99)「不明」は、相談者の年齢が不明の案件
相談者の内訳をみると、86 件のうち、子どもからの相談は 28 件(33%)でした。21 年
度と比較すると、子どもからの相談は 3 件、割合で 4%減っています。
子ども以外からの相談では、親からの相談が 39 件と多く、祖父母からは 7 件の相談があ
りました。
(3) 相談者が子どもの場合の学齢
*(99)「不明」は、相談者の学齢が特定できなかった案件
「子どもからの相談」の 28 件を学齢別にみると、高校生からの相談が 14 件(50%)、
小学校高学年 5 件(18%)、中学生 3 件(11%)となっています。小学校低学年、就学前
の子どもからの相談はありませんでした。
21 年度(31 件)は、小学校高学年 12 件(39%)、高校生 4 件(13%)、中学生 3 件(10
%)、小学校低学年 2 件(6%)でしたので、高校生からの相談が多くなりました。22 年度
は「中学・高校生向けカード」を作り、高校を訪問して配布をお願いしました。高校生へ
の広報活動の影響かと思います。
(4) 相談対象の子どもの学齢
*(90)「その他」は、小学生だが低・高が特定できなかった案件、対象の子どもが複数の案件
*(99)「不明」は、子どもの学齢が特定できなかった案件
相談室は 18 歳までの子どもに関する相談を受けています。相談対象の子どもを学齢別に
みると高校生 23 件(27%)、中学生 18 件(21%)、小学校高学年 15 件(17%)、小学校
低学年 13 件(15%)の順となっています。
21年度は小学校低学年(25%)、小学校高学年(28%)、中学生(14%)、高校生(12
%)の順でしたので、22 年度は中学生、高校生に関する相談が増えました。
(5) 相談の継続回数
86 件あった相談で、1回(初回)だけの相談で終わったものは 70 件(81%)、その後相
談が継続した案件は 16 件(19%)でした。
相談が継続した 16 件と前年度から継続している案件 13 件の計 29 件について、継続回数
をみると、相談回数が 2~5 回のものは 15 件(52%)で、51 回以上のものが 4 件あります。
この中には発意案件 1 件、同意を得ての調整案件 2 件が含まれます。
(6) 相談の主訴 (統計・グラフ
次ページ)
83 件の相談案件を主訴別にみると、「交友関係の悩み」12 件(14%)、「子育ての悩み」
9 件(11%)、次いで「いじめ」、「性の悩み」、「家族関係の悩み」8 件(10%)ずつの
順となっています。
83 件のうち子どもからの相談は 28 件でした。子どもからの相談で多いのは「交友関係の
悩み」と「性の悩み」で 7 件(25%)ずつでした。
一方、大人からの相談 55 件で多いのは「子育ての悩み」9 件(16%)、「不登校」、「い
じめ」6 件(11%)ずつ、「交友関係の悩み」「家族関係の悩み」5 件(9%)ずつとなっ
ています。
「性の悩み」の相談は子どもからだけでした。また、「不登校」の相談は大人からだけ
でした。
※(90)「その他」とは(1)~(21)に該当しない案件
4
3
4
1
9
8
2
4
総計
5
(99)
不明
6
2
(90)
その他
8
5
(21)
家庭内虐 待
1
家族関係の悩
1
9
(20)
み
2
1
(19)
子育ての悩み
7
その他機関の
1
4
(18)
対応の問題
4
学校・子ども
4
園等の対応の
1
(16)
問題
4
教職員等(
保
6
育師等含む)
12
(15)
のその他指導
8
上の問題
総計
教職員等(
保
7
育師等含む)
2
4
(10)
の暴力や威嚇
子ども
6
(8)
性の悩み
5
(7)
心身の悩み
6
(6)
進路問題
大人
(5)
不登校
交友関係の悩
(2)
み(
いじめ除
く)
いじめ
(1)
55
5
28
5
83
(7) 相談の曜日
相談を曜日別にみると、多い順に木曜日 19 件(22%)、水曜日 18 件(21%)、金曜日
17 件(20%)で、少ないのは日曜日 8 件(9%)、月曜日 10 件(12%)でした。
日曜日に相談が少ないのは前年と同様です。
(8) 相談の時間帯
午前中に開設しているのは土・日曜日(10 時~12 時)、18 時~20 時は金曜日だけで、
月・水・木曜日は 13 時~18 時となっています。午前中の相談は少なかったです。
(9) 相談の方法
相談の方法として電話、面談、ファックス、手紙(そのほか、聴覚障がい者に限りメー
ルも可)があります。電話での相談が多く、80 件(93%)ありました。初回の相談が面談
というケースが 6 件ありました。
(10) 相談の所要時間
相談に要した時間別にみると、子ども、大人とも 30 分以内のものが約 65%で、30 分~
60 分は約 30 パーセントでした。1 時間を超える相談が 5 件ありました。
3.調査・調整活動
(申立・発意案件)
平成 22 年度、子どもの権利侵害に対する救済の「申立案件」、擁護委員の「発意案件」
はともにありませんでした。
平成 21 年度に調査・調整を行っていた発意案件(第 09-2 号)は、平成 23 年 5 月 23
日をもって終結となりました。本来ならば来年度発行する「平成 23 年度報告書」への掲載
となるのですが、本件は終結までに 1 年以上かかっており、早く報告するべきと考えて今
回の報告書に掲載をすることにしました。
<発意案件
第09-2号
について>
発意決定日
平成 22 年 3 月 3 日
終結日
平成 23 年 5 月 23 日
(相談の主訴)
市内の放課後児童クラブに参加する児童の保護者から、「指導に問題のある指導員
のことで困っている。他のところにも相談したが対応できないと言われた。」との相
談があった。
(発意案件とした理由)
この相談を受けて、擁護委員は、相談者の話が事実であれば子どもの権利の侵害に
当たり、相談者の子どもだけでなく当該クラブに参加する子ども全体の問題であると
考えて、自らの判断で「調査の必要な案件」(擁護委員による発意案件)とし、3 月 3
日、調査に入ることを決定した。また、調査の過程で当該クラブだけでなく他のクラ
ブにおいても指導に関しての抗議、苦情が寄せられていることがわかり、3 月 8 日、
市内のクラブ全体に対して調査を行うことを決定した。
(調査・調整の経過、および結果)
相談者の話が事実かどうか、権利の侵害があったかどうかを調査するため、調査対
象機関(者)に対して「調査実施」の通知をして聞きとり調査を行った。
対象機関(者)は、豊田市子ども部次世代育成課、当該クラブ担当主任指導員及び
指導員、当該小学校校長であった。この他にも、子どもや保護者、指導員から話を聞
いた。
相談者の話にあった「罰ゲーム」(忘れ物などが多いことを理由に、子どもに「外
遊びなし、おやつなし、多く勉強する」などの罰を与えること)は、当該クラブで実
際に行われていたことが確認できた。相談室では「罰ゲームはすぐに止めさせる必要
がある」と考え、4 月 21 日付けで「罰ゲームは子どもの権利に対する侵害のおそれが
ある」ので「すぐにやめさせることを要請する」旨の見解文書により次世代育成課に
通知した。また当該クラブで行われている指導全般について「子どもの権利を大事に
した指導」が行われるために、相談室は今後も調査・調整活動を行っていくことを確
認し、その旨を次世代育成課・当該クラブ指導員に伝えた。
その後、相談員が当該クラブを訪問して、クラブの活動や様子を見学し、指導員と
話し合いを持った。6 月 1 日には、当該クラブの子ども・保護者に「相談室が調査を
行い、その後も調整活動を行っていること、保護者説明会を持つこと」を文書で知ら
せ、6 月 25 日、小学校の図書室で「保護者説明会」(次世代育成課、当該クラブ、相
談室の共催)を開催した。参加された 13 名の保護者に対してこの間の経過を説明し、
今後の調整活動に対しての理解・協力を要請した。
7 月 21 日、次世代育成課、当該クラブ担当の主任指導員、相談室の三者で、「指導
の改善」に向けて話し合っていくことを確認した。
8 月 9 日、次世代育成課、当該クラブの主任・専任指導員、相談室の三者で「改善
の計画」を策定し、これに基づき改善をしていくこと、今後も相談室が当該クラブの
訪問を行うこと、月1回の定期懇談を持って「指導の改善」についての進捗状況を確
認することを決定した。この決定に基づいて 9,10,11 月と定期懇談を行った。そし
て 12 月 8 日の懇談で「指導が改善されている」ことが確認された。
相談室は、12 月 15 日付けで次世代育成課、当該クラブ指導員に対して「調査・調
整を終了する」旨を通知した。また、相談者には「調査を終了し、当該放課後児童ク
ラブの指導が改善された」ことを報告した。
市内のクラブ全体に関しては関連する資料を次世代育成課からいただいた。加えて
クラブ全体の実態調査のため、次世代育成課と相談室が合同で「全クラブアンケート」
「全指導員アンケート」を実施した。同じ時期に相談員が 5 クラブを訪問し、指導員
から話を聞いた。
次世代育成課は、回収したアンケートを集計して指導員に中間報告書を配布した。
アンケートにあった「相談室に関しての質問、意見」については、11 月 29 日に実施
された「指導者研修会」の場で、子どもの権利相談員が回答をし、擁護委員が「子ど
もの権利と指導のあり方」について話をした。
平成 23 年 2 月 17 日、「放課後児童クラブ事務連絡会」の場で、「相談室の見解」
を掲載した「アンケート結果最終報告」を配布し、擁護委員が「アンケート結果につ
いて
相談室の見解」(*資料 1)を報告した。
この間の調査の結果、条例第 21 条に基づき、3 月 14 日付けで豊田市長に対して「制
度などの改善の要請」(*資料 2
通知書第 2010-10 号)を行い、要請に対しての「対
応状況の報告」を求めた。
これに対して 3 月 31 日、次世代育成課長から「対応状況についての報告書」(22
年度の研修実績と 23 年度の研修計画、指導員の適正配置や施設の充実に努めること、
などが内容)を受け取り、この報告書に基づいて懇談を擁護委員と次世代育成課で行
った。この懇談で指導員への研修が実施され、放課後児童クラブの運営が改善される
方向が確認されたので「案件の終結」を宣言し、5 月 23 日「終結の通知」(*資料 3
通知書第 2011-1 号)を行った。
(資料 1)
アンケート結果について
子どもの権利相談室
アンケートにご協力いただきありがとうございました。「豊田市子ども条例」では、放
課後児童クラブは「育ち学ぶ施設」であり、この「施設」では「子どもにとって最もよい
ことは何かを第一に考えて、子どもの年齢や発達に応じた援助や指導をしなければなりま
せん」と書かれています。ご回答いただいた結果について、「豊田市子ども条例」の内容
にもとづき、子どもたちが安心して過ごせる放課後児童クラブをともに作っていく立場か
ら、相談室で話し合い、確認したことをコメントします。
1.「子ども条例」については、「知らない」と「あまり知らない」合わせて 36%を超え
ていました。この結果は、気になる数字でした。放課後児童クラブは、条例にいう「育
ち学ぶ施設」です。条例では、「子どもにとって最もよいこととは何かを第一に考えて、
子どもの権利を保障」することを規定しています。「子どもの権利を尊重すること」に
関しては、90%の職員の方が「全くその通り」「そう思う」と答えられていますが、7
%ほどの方が「あまりそう思わない」という回答をされています。このように、特に「子
ども条例」についての理解は、十分とはいえません。また、「あまりそう思わない」は、
条例の趣旨からしても、懸念される回答です。次世代育成課とも連携しつつ、研修の場
を通して、学ぶ機会を作っていきたいと思います。
2.指導員と子どもたちとの関係は、「良い」以上が 50%、「普通」と合わせると 97%
であり、概ね良好といえます。しかしながら、指導に困る子どもたちが「多数いる」か
ら「いる」までの数値は、80%近くになり、何らかの暴力的な子ども、障がいのある子
どもなど、支援が困難な子どもたちへの対応のむずかしさが出されていました。次世代
育成課と協力しつつ、具体的な研修の機会を設けるとともに、主任指導員への相談も含
めて、指導員がよりよく対応できるちからをつけていけるようなしくみを作っていきた
いと思います。
3.忙しい日常ですが、毎日の打ち合わせを行っているクラブが 50 クラブで 80%を超え、
指導員全員での打ち合わせもほとんどのクラブで行われているなど、指導員間の話し合
いの時間をもつような努力をされています。子どもたちにとって、指導員集団の関係が
良いことは、とても大切なことです。これからも指導員間の打ち合わせを大切にしてく
ださい。
4.日課や行事などを決めるときに、子どもの意見を採り入れるようにしているクラブは、
29 クラブ(57%)でした。また、子どもたちの組織を作っているクラブは、23 クラブ
(45%)でした。「自分の気持ちや考えを表明すること」「表明した自分の気持ちや考
えが尊重されること」「年齢や発達にふさわしい活動の機会が用意されること」「年齢
や発達に応じて意思決定に参加すること」「必要な情報を大人や社会に求め、集めるこ
と」「仲間をつくり、集まること」は、子ども条例で規定されている子どもの権利です。
子どもたちは、あそびの内容やグループづくりなど、自分たちの生活に関わることでは、
自分たちなりのおもいやねがいを持っています。子どもたちに意見を出してもらい、話
し合いをしながら、行事の内容を決めていけるような取り組みを進めるようにしてくだ
さい。
5.「クラブのお便り」はすべてのクラブで発行されていました。保護者会の必要性につ
いては、必要という回答は 18 クラブ(35%)でした。放課後児童クラブでの子どもた
ちの様子を保護者のみなさんも知ってもらうことは、保護者と指導員がより良い関係づ
くりのためにも大切なことです。保護者たちも自分の子育てや放課後クラブの運営につ
いても、自分の気持ちや意見が言える場として、無理なく保護者の集まりを作っていけ
るようなくふうが必要です。こうした取り組みが、みんなといっしょに地域で安心して
子育てをしていくことにつながります。
6.学校の先生との連絡会を実施しているクラブは、8クラブ(16%)でした。個別には
指導員から学校側に相談することがあるようです。それぞれの役割を大切にしながら子
どもたちを育てていくためにも、定期的な会の実施が望まれます。
7.「呼び捨て」「命令口調」「おしりをたたく」など不適切な対応をされた経験がある
割合が、30%を超えていました。多くが、ケンカや危険な場面などです。呼びすてや命
令口調になってしまう場面の対応についての質問がありました。子どもたちに呼ばれた
くない呼び方を確認するなど、いつも子どもたちが大切にされていると感じる呼び方を
使ってください。日常的な信頼関係があってこそ、危険な時に止めさせる強い口調が、
効果的な役割を果たします。
8.60%超える指導員から、何らかの障がいのある子どもたちなど、支援が困難な子ども
たちへの対応のむずかしさが出されていました。条例には「育ち学ぶ施設の管理者は、
育ち学ぶ施設の職員が子どもと育ち合い、学び合うことができるよう、職場環境の整備
や研修の機会の提供などの必要な支援をしなければなりません」とあります。具体的な
研修の機会を設けるとともに、主任指導員への相談も含めて、指導員がよりよく対応で
きるちからをつけていけるようなしくみを作っていきましょう。
9.専任の負担の多さなどの意見に対しては、大規模のところは二人体制にするなど、次
世代育成課も、改善の考えをまとめています。子どものことを大切に考えながら、豊田
市の放課後クラブの指導員として、これからも意見を出してほしいと思います。
10.児童クラブは、子ども条例の育ち学ぶ施設です。最後に第10条をもう一度確認してくだ
さい。
総じてアンケートの結果からは、指導員のみなさんが、子どもたちのしあわせをねがい、
保護者の就労を支える立場で、子どもたちの放課後の生活の支援について、懸命に実践を
されていることを読みとることができました。指導員一人ひとりが、今後とも、子どもの
生活を支える専門職としてちからをつけつつ、実践を積み重ねていけるように、相談室と
しても、条例の趣旨に則り、活動を続けていきたいと思います。指導員の方々も、子ども
のことで困ったことがあれば、相談室に相談をしてください。
*豊田市の放課後児童クラブ数
10 月に実施。
51、 「全放課後児童クラブ」「全指導員」に対するアンケートは 9、
(資料 2)
通
知
第 2010-10 号
書
平成 23 年 3 月 14 日
豊田市長
鈴木
公平
様
豊田市子どもの権利擁護委員
印
豊田市子どもの権利擁護委員による発意案件(第 09-2 号)につきまして、下記のことを
通知します。
(通知事項)
■調査・調整の結果等についての通知
(通知内容)
制度などの改善の要請
豊田市子ども条例(以下「子ども条例」という)第 21 条第 4 項に基づき、下記のとお
り制度などの改善の要請を行います。
1.放課後児童クラブの指導員一人ひとりが「育ち学ぶ施設」で働く専門職員として、
「子ども条例」の内容を学ぶために、しっかりとした研修を実施し、受講させてく
ださい。
2.放課後児童クラブの指導員一人ひとりが「育ち学ぶ施設」で働く専門職員として、
子どもの権利を侵害する不適切な指導を行うことがないよう、放課後児童クラブの
運営や保護者への対応、障がいのある子どもなど指導が困難な子どもの指導などの
ちからをつけていくための研修を実施し、受講させてください。
3.放課後児童クラブは「豊田市子ども総合計画」においても重点事業の一つになっ
ていますが、指導員の処遇の向上や適正配置や施設設備の充実などを速やかに実施
してください。
なお、「子ども条例」第 23 条第 1 項の規定に基づき、対応状況の報告を毎年度末、
今後 5 年間求めます。
<改善の要請に至る経過>
・・・・以下の部分は、15ページ<発意案件第 09-2 号について>(調査・調整の経
過、および結果)に記載してあるので省略します。・・・・
(資料 3)
通
知
書
第 2011-1 号
平成 23 年 5 月 23 日
豊田市長
鈴木
公平
様
豊田市子どもの権利擁護委員
印
豊田市子どもの権利擁護委員による発意案件(第 09-2 号)につきまして、下記の
ことを通知します。
(通知事項)
■案件の終結の通知
(通知内容)
本件は、豊田市子ども条例に基づき、平成 22 年 3 月 8 日付けで豊田市次世代育
成課に調査実施通知を行い、その後関係者・機関に対して調査・調整活動を実施し
てきたものです。
その結果、条例上の対処として平成 23 年 3 月 14 日付けで豊田市長に対して「制
度などの改善の要請」を行い、対応状況についての報告を求めました。これに対し
て
平成 23 年 3 月 31 日、次世代育成課より「報告書」を受け取りました。
報告書では、要請の「1
指導員に対する子ども条例に関する研修」「2
クラ
ブの運営、保護者対応、障がい児への指導に関する研修」に対して、平成 22 年度も
取り組まれており、平成 23 年度はより充実した研修を計画している、と報告があり
ました。
この報告を受けて、平成 23 年 5 月 2 日に次世代育成課と擁護委員で懇談を行い、
指導員研修について話し合いました。擁護委員は、次世代育成課から出された「平
成 23 年度研修計画」は、子ども条例、クラブの運営、保護者への対応、障がいのあ
る子どもの理解・指導など、指導員として必要な内容になっていると評価をします。
しかし、計画にある「指導員全員対象の研修会」の参加者が「希望者」となってお
り、これでは指導員全員が受講することにならないと指摘しました。加えて専任指
導員に対して行う「権利学習プログラム(大人版)」を、次年度から 2・3 年間で全
指導員に実施するよう要請をしました。
これに対して、次世代育成課からは、研修案内文書から「希望者」との文言を削
除すること、指導員の研修会への出欠を確認して、参加しなかった指導員に対して
次年度には受講するよう指導し、2 年間で全員を受講させるとの回答がありました。
また、全指導員への権利学習プログラムの実施については、前向きに検討するとの
回答を得ました。
平成 23 年度の研修計画を実施することにより、指導員の間に子ども条例の理念が
理解され、子ども理解が深まってより良いクラブ運営がなされることを期待します。
また、今年度の新しい取り組みとして次世代育成課が「クラブ支援訪問」を行う
と報告を受けました。このクラブ訪問がより良いクラブ運営につながるものになる
と評価をします。
要請の「3
指導員の処遇の改善、適正配置、施設設備の充実などの速やかな実
施」に対しては、専任指導員の配置、加配臨時指導員の配置などでより組織的なク
ラブ運営を図り、子どもたちにきめ細やかな対応ができるように配慮されているこ
と、施設設備についても現場の指導員と協議をしながら、子どもたちが安心安全に
過ごすことができる環境づくりに努められていることを評価します。
こうした取り組みは、単年度で目に見える結果が出るものではありません。今後
も引き続きの取り組みを要請し、放課後児童クラブが子ども・市民にとって安心・
安全で充実した制度になるよう期待するものです。なお、対応状況について、今後
5 年間にわたり報告を受けることを確認しました。
これを持って本件を終結といたします。
以上
(調整案件)
相談室が受けた相談の中には、問題の背景を把握したり解決したりするために、関係
機関(者)に聞き取りや問い合わせ、連絡等を行うことがあります。こうした活動を「調
整活動」と呼んでいます。調整を行うに当たって、可能な限り相談者に同意を得るよう
にしています。
今年度、調整活動を行った案件は 3 件ありました。3 件とも相談者の同意を得て関係
機関と連絡を取りあいました。
なお、「虐待の疑い」のある相談の場合は、必要と判断したら豊田加茂児童・障害者
センター(児童相談所)、市の家庭児童相談室に通告をします。
4.出張相談
平成 22 年度より、相談室に来室しにくい新市域部を中心に、交流館で出張相談を行いま
した。
子どもたちとできるだけ交流できるようにとの思いから、夏休み・冬休み・春休みに開
設し、多くの子どもたちと出会い、話をすることができました。
平成 22 年 7 月 22 日(木)
稲武交流館
7月
7月
8月
8月
8月
8月
12 月
12 月
12 月
平成 23 年 3 月
3月
3月
下山 〃
旭
〃
小原 〃
石野 〃
足助 〃
松平 〃
前林 〃
上郷 〃
井郷 〃
朝日丘〃
高橋 〃
保見 〃
28 日(水)
29 日(木)
4 日(水)
5 日(木)
18 日(水)
19 日(木)
22 日(水)
23 日(木)
24 日(金)
23 日(水)
24 日(木)
25 日(金)
電話相談の終盤に、「会って話してみない?相談室の場所、知ってる?」と提
案すると、「遠いから一人で行けない」「バス代がかかっちゃうから無理」と答
える子どもたちがいます。日々の相談活動では、相談員が子どもたちに会いに行
くこともありますが、いろいろな地区の子どもたちと出会いたくて、出張相談を
始めました。どの地区でも、図書室で勉強していたり、ロビーでお友達とおしゃ
べりしている子どもたちと、相談室のリーフレットやカードを手渡ししながらお
話できて嬉しかったです。
(相談員)
5.広報・啓発活動
常時活動
権利相談室入口のボードに権利相談室の業務案内等を掲示しています。子育て総合
支援センター(あいあい)と同じフロアーで、横に自動販売機もありますので、とき
どき幼い子を連れた親子、祖父母が立ち止まって見ています。季節の花などの飾りも
加えて、親しみやすいものになるように工夫しています。
権利相談室は駅前のt-FACEビルの最上階にあります。t-FACEのA館の
インフォメーションとB館の公共施設案内コーナーに、カードとリーフレットを置い
ています。
エレベーターの横。みんなエレベーターに乗ることしか考えていないよう
な、こんなところ、誰も見向きもしないだろうなあ。なあんていう当初の予想
を超えて、1 ヵ月に一度はカードの補充をしています。
手に取って、そのままケースに返していく人もいれば、バッグの中に入れて
いく人も。カードを見るひとりひとりの人の表情が気になります。今は大丈夫
でも、いつか困ったら連絡してほしいと思いながら.「ひとりで抱え込まない
で、電話をください。」と心の中で、そっと声をかけています。
(相談員)
PR用に新しく作成
今年度、権利相談室のPR用に中学・高校生向けカード、クリアファイルを新しく
作成しました。以前からある黄色のカードは、高校生には少し幼すぎるという理由と、
「高校生って子どもなの?」という意見が高校生から聞かれたため、内容を少し変え
て色は白にしました。
クリアファイルは、いつも手元に置いて使えるものに権利相談室の案内が描かれて
いたらよいのでは、ということでマスコットキャラクターの<キュウサイくん・キュ
ウサイさん>とともに権利相談室のフリーダイヤルを載せたものを、A4判で黄色と
白色の 2 種類作成しました。なかなか好評で、PRで配布時にはわざわざ「ください。」
と言って、取りに来る子もいました。
また、開所当時に作成した日本語版リーフレットを見直し、新しく作成しました。
大きさをB4判からA4判にし、わかりやすく見やすく親しみやすい内容に作り替え
ました。
(リーフレット)
中学・高校生向けカード
(カード表面)
(カード裏面)
カードを配布
市内各小学校に新 1 年生分と予備枚数のカードを配布しました。また、中学・高校
生向けカードを新しく作成し、カードを置いてもらえるように市内全高等学校を回り、
協力をお願いしました。
特別支援学校(養護学校)への対応
市内にある豊田養護学校、愛知県立豊田高等養護学校にカード、リーフレットを配
布しました。
また、市内の子どもが通学している愛知県立岡崎聾学校(岡崎市)にFAX相談用
紙と相談用メールアドレスを貼付したカードを配布しました。
行事、催しものでのPR
平成 22 年 4 月 21 日(水)、教職員会館で行われた『学校相談員研修会』に参加し
た小、中学校の相談員さんに、権利相談室の役割や豊田市子ども条例について知って
もらうために、資料(73部)を配布、PRしました。
平成 22 年 6 月 12 日(土)、豊田市民文化会館で開催された『第27回豊田市中学
生の主張発表大会』において、参加者にリーフレット、カード(200部)を配布し
ました。
平成 22 年 10 月 2 日(土)・3 日(日)、豊田スタジアムで行われた『産業フェス
タ』では、訪れた親子連れを対象に「とよた子どもの権利相談室を知っていますか?」
アンケートを実施し、権利相談室の役割を説明、困ったら電話してほしいことなどを
話し、ファイル、カード(250部)などを配布しました。相談室の周知度がわかり、
今後の相談室運営の参考になりました。
平成 23 年 2 月 27 日(日)、豊田市民文化会館で行われた『市制60周年記念
子
どもにやさしいまちづくりシンポジウム2011』において、リーフレットを配布し
ました。
今回のシンポジウムでは、“チルコ”というと
っても可愛い豊田市子ども条例のマスコットキ
ャラクターも発表されました。これです!とって
も可愛いですよね~。
豊田市のホームページに、“チルコ”の由来な
どが載っていますよ!ぜひ1度見てみてくださ
い。
豊田市子ども条例
マスコットキャラクター
チルコ
(相談員)
「権利学習プログラム」の参観
子ども条例第12条では「市が市民に子どもの権利を広く周知すること、子どもの
権利についての学習を支援すること」と定めています。これに基づいて市内の小・中
学校では道徳の授業などで「権利学習プログラム」が行われています。保護者や市民
に対してもこのプログラムが実施されています。
今年度は、擁護委員・相談員が小・中学校4校を訪問して授業を参観しました。授
業の最後に、児童・生徒の皆さんに、相談員が子ども条例や相談室についての話をし
ました。1 月に猿投台中学校で行われた授業には地元の「ひまわりテレビ」が取材に
入り、その時の様子がひまわりテレビの「とよた NOW」で放映されました。
12月には、PTA主催の保護者を対象にした講座に2名の相談員が参加をして、
一緒に受講しました。
「権利学習プログラム」を実施している次世代育成課では、「権利学習プログラム
・幼児版」を作成し、市内の子ども園での実施を計画しています。
子どもたちが権利学習ノートを通して、授業の中で楽しく子ども条例や
自分たちの権利について学習している姿を参観することができました。子
どもたちが権利について授業で学習し、子どもの権利相談室にも相談して
みようという気持ちになってくれるとうれしいです。(相談員)
権利学習ノート
~小学生低学年版~
~中学生版~
『広報とよた』への掲載
豊田市の全家庭に配布される『広報とよた』の毎月 15 日号に相談室の案内を載
せています。「広報を見て電話しました」という相談者からの相談電話もありま
した。『広報とよた』には、出張相談や活動報告会についても載せています。市
の情報誌で月 2 回発行され、各家庭でよく読まれているため、『広報とよた』に
載せることはたいへんPR効果があります。
地元新聞等の記事
新三河タイムス、矢作新報に、活動報告会の様子や権利相談室に関する記事が
掲載されました。
『FMとよた』電話インタビュー
「第 2 回活動報告会」開催を直前にした 9 月 22 日、「FMとよた」から電話インタ
ビューを受け、所長が対応しました。活動報告会開催についてよいPRとなりました。
6.研究・協議活動
研究会などへの参加
※「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2010
主催
シンポジウム実行委員会、白山市、白山市教育委員会
日時
平成22年10月28日(木)~29日(金)
場所
松任文化会館、松任学習センター
他
9回目となる「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウム2010」が石川県
の白山市で開催されました。
1日目の全体会Ⅰでは「ハッピー子育て~子どもと親の育ちを支える~」と題した精神
科医の明橋大二氏の講演に続き、「子ども支援とネットワークづくり」というテーマでシ
ンポジウムが行われました。
2日目の分科会では、とよた子どもの権利相談室は「子どもの相談・救済」に参加しま
した。また、豊田市次世代育成課職員が「子ども条例の制定と実施」の分科会で「豊田市
子ども総合計画による子ども条例の具体
化の推進」と題して報告を行いました。
分科会終了後の全体会Ⅱでは「子育て支
援と子ども支援―国と自治体の取り組
み」というテーマでシンポジウムが行わ
れました。
シンポジウムの開催に伴い、その翌日
に「子どもの相談・救済に関する関係者
会議」が開催されました。とよた子ども
の権利相談室は「年次報告会の運営と市
シンポジウムや分科会で取り上げられ
ているテーマは豊田市でも話題になった
り、課題であったりすることばかりでと
ても興味深い内容でした。年に一度の全
国シンポですが、回を重ねるごとに参加
自治体が増え、子どもの権利侵害、救済
への取り組みが広がっているのだと実感
しました。
(相談員)
民による検証」というテーマで報告をし
ました。
※ 多治見市子どもの権利擁護委員
「平成 21 年度活動報告会」
日時
平成 22 年8月5日(木)
場所
岐阜県多治見市役所
内容
・たじみ子ども会議活動報告
子ども情報センター
・自立支援事業中間報告
・基調講演「子どもが自分らしく生きることができるまちづくり
~多治見市子どもの権利条例と子どもの権利擁護委員制度~」
講師
山梨学院大学法科大学院教授
所長と相談員 2 名の 3 名が参加しました。
荒牧重人
先生
※ 川西市子どもの人権オンブズパーソン
日時
平成23年3月19日(土)
場所
兵庫県川西市中央公民館
内容
・2010年次の制度運営報告
「2010年次活動報告会」
・座談会:「語ろう、市民とオンブズ」
川西市は全国で最初に権利救済のためのオンブズパーソン条例を制定したところ
です。相談員2名が参加しました。
※
相談員研修
○平成 22 年 8 月 27 日(金)
講師:豊田市青少年相談センター、指導主事
内容:豊田市の教育現場でのいじめ、不登校などへの関わり方
○平成 22 年 10 月 6 日(水)
講師:高橋擁護委員
内容:新しく就任した擁護委員を囲んで。
○平成 23 年 2 月 26 日(土)
「川西市子どもの人権オンブズパーソン」の調査相談専門員、「多治見市子どもの
権利相談室」の子どもの権利相談員とともにワークショップ形式で、活動をしていく
中での課題を出し合い、対応方法について意見交換をしました。
他市の相談員とのワークショップ形式での話し合いでは擁護委員と相
談員とのケースの共有化や、相談員のスキルアップ、関係機関との関係づ
くりなどそれぞれ地域や相談室の形態は違っていても思いや課題は同じ
ことが多いな~と実感。これからも他市の相談室と意見交換をする場を持
っていきたいなーと思いました。
(相談員)
※ 相談室内での会議
相談室では子ども規則第 6 条で規定されている「擁護委員会議」、相談案件を基に具
体的な対応について話し合う「ケース検討会議」、相談室の運営や相談員の意見交換を
行う「相談員会議」などの話し合いを行っています。
○擁護委員会議
2ヶ月に1度
擁護委員が合議すべき内容について話し合います。
○ケース検討会議
月に2回(隔週)
擁護委員と相談員全員で具体的な個々のケースについて検討し、
課題を整理して対応を決めています。
○相談員会議
月に1回
相談員全員で、相談対応の方法や相談室の運営などについて話し合います。
7.「第2回活動報告会」
豊田市子ども条例第25条「擁護委員は、毎年の活動状況などを市長に報告し、市民に公表し
ます。」の規定に基づき、「第2回活動報告会」を行いました。
日時: 平成 22 年9月 23 日(日) 10 時 30 分~12 時 30 分
場所: とよた市民活動センター ホール
内容: 第1部は平成21年度の相談状況をもとに吹野擁護委員が活動報告を行いました。
第2部は「子どもの権利を守るために私たちができること~子どもに関するNPOの活
動者とともに~」をテーマに、豊田市内で活動している子ども関係のNPOの方々と
シンポジウムを行いました。
<参加されたみなさんの声>
(参加者へのアンケートから抜粋)
・報告・提言が興味深かった。
・いろいろなところで苦労している子どもたちや親御さんがいることを知った。
・豊田は先進的な取り組みをしているのだと思った。
・解決事例を説明してほしい。
・まずは広く市民に(擁護委員や相談室を)知らせることが必要。
・行政とは独立・中立の立場で今後とも事業や活動をすすめてほしい。
・「子どもの権利を意識する子どもは少ない」という感じを持った。
・大人は常に子どもに向き合い、聞く姿勢をしっかり持つことも大切だと思った。
・もっと子どもたちと権利について考えていく学びの場が必要なのではないかと思う。
とよた子どもの権利相談室
第2回活動報告会
平成22年9月23日
とよた市民活動センター
第1部
ホール
活動報告
報告者
擁護委員
吹野憲征
権利擁護委員の吹野
たちが疲れを感じる時期だという時期的
と申します。よろしくお
な問題が一つあるのかと思います。9月
願いします。これから、
からというのは長い夏休みの後で二学期
平成21年度の相談状況について約20
が始まるという中で相談が出てくるのか
分ほどご報告をさせていただきたいと思
と思います。10月11月に関しては特
います。まず、トータルの件数から。2
に学校の行事もいろいろあったりという
1年度に相談室が受けた新規、新たに相
こともあって、そういったことも少し相
談として受け付けた件数が83件という
談件数が多い要因としては関係があるん
ことになっております。その内、救済の
だろうかどうなのかと感じているところ
申し立てが相談された方からあったもの
です。ただ、相談を受けての印象として
1件。擁護委員の判断で発意の案件とし
は、学校が休みの期間、夏休み、冬休み、
て取り上げた案件が1件ということにな
春休み、休みの期間中は平常よりは少し
っております。新規の案件として83件
相談が減り気味かなというのは、相談を
で、継続相談、それから相談に基づく調
受けている各相談員の実感として感じて
査・調整活動でいろいろやりとりした回
いるところです。もう少し相談を積み重
数、そういった回数を含めた延べの相談
ねていけば、月別の傾向なり分析という
回数としては21年度は532回という
ものが、もう少し詳しいものができてく
ことになっております。その他に前年度、
ると思います。
平成20年度から相談が継続している案
次ですが曜日別の相談件数、新規に関
件が10件ありまして、延べの相談回数
してということになります。曜日別では
としては131回ということになってお
21年度は月曜日が20件で最多になり
ります。
ました。次いで木曜日18件、水曜日1
(今画面に出ておりますのが)まず、月
6件、次が金曜日ということになってお
別の相談件数。月別で見ますと11月で
ります。20年度は木曜日が最多という
すね、これが13件で最多ということに
ことになっております。20年度はちな
なっています。続いて6月が11件、5
みに木曜日の次は日曜日が多く、次いで
月9件、9月8件、1月も同じく8件と
水曜日で20年度に関しては月曜日が一
いう状況になっております。月別の相談
番相談が少なかったということです。今
で見ますと11月が多いということで、
年は月曜日が最多になってまして、大人
大まかに見ますと5、6月、それから9
と子どもの20件の内訳をご覧いただく
月から11月にかけて相談の多い時期と
と、子どもが4件、大人からが16件で
して21年度は二つの山、ピークだと思
すので、月曜日は大人の方からの相談が
います。まだ相談室が開所して2年です。
多かったということになっております。
20年度の報告は半年分ということです
21年度は印象としては土日は相談が少
ので、まだ月別の傾向がどうだというと
なかったというところです。この理由に
ころまで確固としたことを言うのは早い
ついてはいろいろ考えられるところだと
と思うのですが、この件数の状況を見ま
思いますが、学校が休みなのでほっとし
して、5月6月というのは新学期が始ま
て過ごしているのかという部分があった
って緊張感が少しとれたところで子ども
り、逆に休日で家族が家にいるという家
庭が多いと思いますので、子ども自身か
あってお子さんからの相談の割合が高か
らは家から相談の電話がかけにくい面も
ったのではないかと思います。今回の2
あるのかと考えたりしています。ただ、
1年度につきましては、子どもたちへの
20年度は日曜日に17件相談がありま
直接の配布というのが小学校への新入学
して、20年度は日曜日に子どもさんか
する1年生への配布にとどまりましたの
らの相談が結構多かったものですから、
で、このへんが子どもからの相談の割合
これもなかなか一概には言いきれない部
が下がった要因としてあるように感じて
分もあると思います。
います。
次です。時間帯別の相談件数。相談室
続きまして、相談の方法別の件数です。
は火曜日が休みでありまして、月、水、
電話と面談による相談に分かれています
木については午後の1時から6時までが
が、電話による相談が68件82%。8
相談の時間。金曜日は午後の1時から夜
割を超える方が初回電話での相談という
の8時まで相談室は開所しています。土
ことになっています。ただ、大人の方は
曜日、日曜日は午前10時から午後の6
電話ではなく初回から面接相談という方
時というふうになっています。時間帯で
も15件ありました。子ども自身からす
すけれども、大人に関しては12時から
ると直接相談室を訪ねて面接というのは
午後3時までの昼間の時間帯が一番多
なかなかむずかしいところがあるのかと
く、次いで午後3時から午後6時までの
感じています。他の自治体、兵庫県の川
時間。これに対して子どもさん本人から
西市ですとか岐阜県の多治見市では子ど
の相談になりますと午後3時から6時の
もからの相談は面談が多いという報告も
時間、少し遅めの時間帯が多くなってお
あります。川西市も多治見市も相談室の
ります。
設置されているまわりに子どもが集まり
今度は相談者別の相談件数。新規で直
やすい図書室、学習室といった施設があ
接相談室に相談してくる方が大人なのか
ったり、川西市は相談室とは別に子ども
子どもなのかというところで分類してい
がふらっと寄れるようなサロン的なスペ
ます。子ども自身からの相談が29件と
ースも用意されていたりするので、子ど
いうことになってまして、全体の36%
も自身が気軽に訪ねやすい雰囲気がある
が子ども自身からの相談ということにな
のかと思います。今後の相談室の運営で
っています。21年度は親御さんからの
気軽に子どもたちが立ち寄れるスペース
相談が一番多くて43件。その他は祖父
を作っていくというのは中長期的な課題
母の方から2件、市民から4件となって
になっていくのかと思っています。
います。開設当初は、子ども自身からの
次に初回相談に関してですが、所要時
相談が53%半数を超えていましたの
間別の分類です。子どもからの相談で約
で、21年度は子ども本人からの相談が
72%、大人からの相談では60%が3
減り気味というところです。20年度は
0分以内で相談が終了しています。次い
相談室の開所にあたりまして、市内の公
で多いのが1時間。初回の相談ですので
立小中学校を訪問しまして全児童・生徒
あまり長過ぎるのは相談する側にとって
さんに相談室の名刺大のカードを配布い
も負担になる部分もあるのであまり長過
たしました。初年度はその効果もかなり
ぎないように心がけているところもあり
あったように思います。そういうことも
ます。ただ、大人からの相談については
1時間を超えるものも6件ほどあります
配布ですとか、高校については全生徒さ
ので1割程度あります。このへんは切実
んというわけにはいきませんが希望され
な相談になると時間が長くなってくる面
る生徒さんがとっていけるように学校に
もあるかと思います。
置いていただくという形でPRをはかっ
続いて、対象となっている子どもたち
ていきたいと思っています。
の学齢、性別の分類です。一番多かった
相談の回数についてですが、新規83
のが対象となる子どもが小学生ですね。
件のうち一回の相談で終結しているもの
低学年、高学年合わせまして43件、5
が51件61%で、それ以外が継続相談
3%という数字になっています。次いで
ということになります。継続相談の32
中学生が11件で14%、高校生が10
件中回数が2回から5回で終結している
件で12%ということになっています。
ものが継続相談中の72%23件という
小学生に関する相談が多いという傾向は
ことになります。回数が多いものという
20年度と同様で引き続きの傾向だと思
のは電話とか面接だけではなく、他機関
います。ちなみに20年度は小学生は合
との調整活動等の連絡も含まれますので
わせて57%ですね、6割近くが小学生
延べの回数が増えるという関係になって
の子どもに関する相談です。
います。
逆に言いますと中学、高校の子どもたち
相談内容の主訴、何に困って相談して
に関する相談をもう少し気軽に相談して
いるのか。子ども大人共通で21年度ト
もらえる工夫が必要かと感じています。
ップは「いじめ」に関する相談です。子
次は、相談室に実際に電話、面接で相
どもに関しては続いて、いじめを除いて
談される方、相談者の学齢、性別の相談
の交友関係、友だち関係での悩み。それ
の件数ということです。これは、子ども
から子ども自身の相談で特徴的なのは
からの相談29件を分類したものという
「性」に関する悩みで4件。これはいず
ことになります。一番多いのが小学校高
れも男子からの相談でしたが、子ども自
学年の12件で41%です。やはり、先
身が直接電話で相談してきました。やは
ほどもふれましたが中学生、高校生から
り対人関係に関する悩み相談というのが
の相談というのが思いのほか少ないと感
多いということがあります。大人からの
じております。ちなみに川西市の場合は
相談はいじめに続いて子育てに関する悩
中学生、高校生からの相談が68%、7
みが7件13%です。それから不登校に
割近くとなっていますので、中学生、高
関する相談というものが3件あります。
校生に対するPR活動をすすめなくては
不登校に関しては子ども本人からの相談
いけないということを思います。現在子
は21年度は見られませんでした。
どもたち向けに配布している相談室のカ
次は、新規ではなく継続相談等も含め
ードが、キャラクターなんかをデザイン
ての延べに関して相談の主訴を分けたも
してかわいいものになっていまして、中
のです。大人からの相談に関しては学校
学生高校生の生徒たちからすると少し年
や園等の対応の問題というのがトップに
齢が低い子向けの相談室なのかという印
なっています。ただ、これは調査・調整
象を持たれているということもあるのか
活動を含めての機関との連絡等もありま
ということで、今年度は中高生向けのカ
すので、回数が多くなるのはそういう関
ードを作りました。これから順次学校に
係もあると思います。不明が74件ある
ということですが、相談が1件で74回
たが、子ども自身からの相談の割合が2
ということで、主訴が不明なものがある
0年度よりも落ちています。22年度の
ということです。
4月から7月までの数字ですが、子ども
データは以上のような感じになってい
自身からの相談パーセンテージが23%
ます。相談室が始まってもうすぐ2年と
ということでさらに低下しているという
いうことですが、今後の相談室の課題と
ことがありますので、子ども自身に相談
して感じているところを最後に少し簡単
室の存在をアピールしていくことが必要
にお話しさせていただきたいと思いま
だと思います。間口はできるだけ広く、
す。
権利をうたってはおりますがもう少し気
21年度の市民の意向調査の結果など
軽にいろいろなことを相談してみようと
を見ましても、豊田市が「子ども条例」
思われるような相談室を目指していきた
というものを設けているんだということ
いと思います。先ほどもお話しましたが、
について「知っている」という方のパー
出張相談も取組の一つですし、学校訪問
セントがまだ低い、「知らない」という
や各種イベントでPRを行っていくこと
方が7割を超えた状態です。それから「相
も力を入れていきたいと思います。それ
談室」に関しても周知が行き届いている
から、この点に関連してですが相談室が
かと言われると、ここは不足している部
子どもたちがふらっと立ち寄れるような
分というところがありますので、条例の
雰囲気を作っていくことが必要になって
趣旨中身ですとか、相談室がどういう所
くるのかと思います。スペースの問題等
なのか、どういうスタンスで相談を受け
いろいろありますので、すぐに実現はむ
ているのかということをご理解いただく
ずかしい面もあるかもしれませんが、中
活動も必要になってくると思います。今
長期的に考えた場合には、子どもがちょ
年度は松坂屋ですね、市の中心部になり
っと立ち寄って行けるようなスペースが
ますが、ここで相談を待つだけではなく、
作っていけたらと思います。
少し外に出て行こうということで夏休み
報告書(*21 年度版)の18ページ以
に出張相談を合計で6回実施しておりま
下ですが調査・調整活動についての報告
す。今後も今年度中に冬休みに出張相談
が掲載されております。21年度は申立
を4回ほど予定しています。春休みに2
ての案件が1件、擁護委員の判断で調査
回出張相談という形でと考えています。
を開始した案件、自己発意の案件が1件
それから、豊田市の条例というのは個
となっております。申立ての案件はすで
別の案件の救済だけを扱う条例ではあり
に解決して終結しておりますが、相談者
ません。町づくり全般ですね、子どもに
の意向等を踏まえまして今年度は掲載を
関する、子どもにやさしい町づくりとい
控えさせていただきました。発意案件に
うことで、全般を定めているという形に
つきましては、まだ調整活動が引き続き
なっておりますので「権利学習プログラ
継続しており、終結しておりませんので、
ム」を小中学校で実施しております。各
今年度の報告書には掲載しておりませ
学校で取り組む権利学習のプログラムの
ん。今回掲載させていただいたのは20
授業に相談員が参加させていただくとい
年度にあった申立て案件2件と、擁護委
う取組も今年度は考えています。
員の判断で動いた発意案件3件というこ
それから、先ほどもお話しいたしまし
とです。今日は個別の相談内容について
立ち入ったお話をするのはここの趣旨で
はございませんので、内容については触
れませんが、概要については記載させて
いただいておりますので、お時間のある
時にお読みいただければと思います。
20ページ、21ページは調整活動で
す。救済申し立てではありませんが学校
に関する問題として調整で動いた案件に
ついて、やや詳しく概要と所感を掲載さ
せていただきました。お時間のある時に
お読みいただければ幸いかと思います。
短時間で駆け足になりましたが、21
年度の相談状況に関する報告は以上で
す。
第2部
シンポジウム
「子どもの権利を守るために私たちができること」
~子どもに関するNPOの活動者とともに~
<シンポジウムに参加していただいたNPO>
「個性の強いこどもを地域で支える会」
デグチ
サオリ
氏
「トルシーダ」
湯原
由美
氏
「まちあいしつ」
大村
美恵
氏
「YOU」
鈴木
佳代
氏
擁護委員
大村
惠
コーディネーター
大村委員:それで
方に活動の紹介を簡単にしていただ
は、
本日のシンポジウムを始
いて、その次にそれぞれの向き合っ
めさせていただきます。テ
ている子どもたちがどういう生き辛
ーマは「子どもの権利を守
さ、困り感を持っているのか、それ
るために私たちができる
をどのように見ているのかというこ
こと~子どもに関するNPOの活動
とをお話いただいて、まず前半を「生
者とともに~」ということでお願い
き辛さ」というものをどういう風に
します。お手元の資料の中にシンポ
とらえたらいいだろうかということ
ジウム資料が入っているかと思いま
を共有したいと思いますのでお願い
すので、それを見ていただければと
いたします。
思います。第一回の活動報告会にお
発表の順番ですが、「トルシーダ」
いてもシンポジウムを開催しまし
の湯原さん、「まちあいしつ」の大
た。その時には豊田市に関わる様々
村さん、「YOU」の鈴木さん「個
な子どもの相談機関の方々にお越し
性の強いこどもを地域で支える会」
いただきました。新しく子どもの権
のデグチさん、この順番で報告をお
利相談室ができたわけですが、そう
願いしたいと思います。では、湯原
した相談機関がどのように連携して
さんよろしくお願いします。
いくのかというのが前回のテーマで
湯原:
トルシーダの湯原と申します。よ
あったわけです。その内容について
ろしくお願いいたします。今日はせ
は活動報告書に掲載してございます
っかくの機会ですのでいろいろな方
ので、お読みいただけたらと思いま
に活動の写真なんかも見ていただき
す。
たいと思いまして写真を用意させて
本日のシンポジウムはNPOの方
いただきました。
々に来ていただくという形で設定し
トルシーダの活動の紹介をさせて
ています。元々私たち相談室の仕事
いただきます。トルシーダというの
は、子ども一人ひとりの思い、生き
は「応援する」という意味のポルト
辛さにより添い、お互いに生き辛さ
ガル語で外国籍の方たちの暮らしと
を共有しながらその解決に向けて共
か学びを応援したいという意味でこ
に考えていくという姿勢を持ってい
ういう名前になっています。目指し
ます。今日のシンポジウムも基本は
ていることは、外国籍の人たちと日
それと同じだろうと思っています。
本人がともに普通に暮らせるように
まず、問題の共有ですね。豊田の子
ということを目指しています。
どもたちがどういう生き辛さを抱え
この活動を始めたきっかけは、ま
ているのか、困っているのか、悩ん
ず最初に 98 年頃に
でいるのか、そういったことを共有
学校に行ってない子
したいと思います。そしてそれを元
どもとの出会いがあ
にその解決に向けて共に考える機会
りました。その子た
にしたいということです。シンポジ
ちが言うには日本語
ウムの進め方としては、まず4人の
もわからないし、学
校にも行ってないし、日本のことも
加するということなどもすすんでや
あまり知らないというお話を聞きま
るようにしています。
した。「どうやったら学校に入れる
トルシーダのこれからということ
のかな。」とか「いつからでも入れ
で、そういう子どもたちが豊田には
るのかな。」とかそういう普通日本
たくさんいるんだということをたく
人の友だちがいれば聞けるようなこ
さんの方に知ってほしいと思ってい
とを聞く相手がいないというお話が
ます。この写真は保見交流館なんで
ありまして、そしてそこに保見団地
すが、国際交流コーナーというのを
があったということで、主にブラジ
設けていただいて、いくつかの NPO
ルの方を対象に日本語を教えるとい
で活動の紹介をさせていただいてい
う活動を始めました。
ます。あと、ブログを書いていまし
2003 年に NPO 法人として活動を
て、「毎日こんな面白いことがあっ
始めて、集会所を借りて、大きい子
たよ」ということを書いたりですと
も小さい子も一緒に日本語を勉強し
か、鶴舞線にNGOを広める広告を
たり、いろんなことを知るという場
出そうというプロジェクトにも参加
所を始めました。現在の活動内容は
しております。いろいろな方に子ど
主に 3 つあります。「居場所づくり」
もたちのことを知ってほしいという
そして「日本語教室」「情報提供」
活動も力を入れてやっております。
というのを 3 本の柱で活動しており
以上です。
ます。一番の居場所づくりは、不就
学の子どもの居場所をつくるという
ことをやっています。そこで日本語
大村委員:
では、続きまして「まちあい
しつ」の大村さんお願します。
大村: みなさんおはようございます。
「ま
教室もやっておりまして、子どもた
ちあいしつ」の大村美恵と申します。
ちの日本語教室。そして、おとなの
よろしくお願いします。大村惠先生
方の就労が安定しないと子どもも安
の足元にもおよびませんが、ちょっ
心して学校に行けないということも
と似たような名前でうれしいなと思
ありますので、おとな向けの教室も
っています。今日はお招きいただき
現在はやっております。そして情報
ましてありがとうございます。この
提供ということで、いろんな情報を
シンポジウムの前に打ち合わせがご
知らせるということも並行してやっ
ざいまして、「どうして市民活動団
ております。私たちにできること、
体をお呼びいただいたんでしょう
「トルシーダ」の役割は何かなとい
か。」とお尋ねしたところ、「昨年
うことを考えた時に、「つなげるこ
のシンポジウムで行政の方をお呼び
と」と思っています。行政の方にい
したけれども、市
ろんなことを教えていただいたり、
民の方もお呼びし
学校のことを相談したり、学校に行
たらどうかという
きたいという子がいれば学校へご相
意見があったの
談にいったり、地域でいろいろ活動
で」ということで
している方に助けていただいて活動
早速実行に移して
を続けています。地域のお祭りに参
いただいて、すご
く頼りがいのあるところだなと思っ
一番下の応募人数と不合格者数を見
ています。
ていただきたいんですが、20年は
私の所属しております「まちあい
募集が238人に対して応募が33
しつ」は「不登校を考える豊田の会」
1人、これは前期です。それに対し
と申しまして、不登校の親と先生の
て2年後は募集が228人で応募が
会として、15年ほど前から始めさ
382人となっており、不合格にな
せていただきました。そのきっかけ
る子が2倍になっているんです。こ
というのは、わが子の不登校です。
のような状態をどのようにしたらよ
私には子どもが二人おりまして、二
いのかを含め考えております。よろ
人とも不登校の時期を過ごしたとい
しくお願いします。ありがとうござ
うことで、私のような思いを他のお
いました。
母さん方と共有したいという思いで
始めさせていただきました。現在は
大村委員:
はい。それでは YOU の鈴木
さんお願いいたします。
毎月第2土曜日、午前中に例会をや
鈴木: おはようございます。YOU の世話
っております。毎回10人程度の方
人代表の鈴木佳代です。YOU という
が参加されております。例会では体
のは「学校と距離をとっている子ど
験談とか、「こんなことが困ったよ」
もを持つ親の自助グループ」です。
というご相談や悩みを打ちあけて時
1997年の11月に不登校をして
間を過ごしております。私どものこ
いる小学生を持つお母さん3人で
ういった親の会は、全国的にもたく
「親子の居場所」として活動を始め
さんございまして、そういった親の
たんですが、「親のための自助グル
会が集まって全国ネットワークとい
ープ」として活動を続けて13年に
うのを作っております。「NPO 法人
なります。この親の会を始めたきっ
登校拒否・不登校考える全国ネット
かけは、私の娘が小学校3年生で不
ワーク」というのがありまして、そ
登校になったことでした。学校の先
れにも所属させていただきまして、
生に相談していたんですが「教師は
そちらの理事も務めさせていただい
不登校の専門家ではありませんか
ております。
ら」という言葉に「親自身が何とか
それで子どもの状況はいろいろあ
しなければいけないんだ」と思って、
るわけですけれども、今の子どもの
青少年相談所に行ったり、病院に行
状況はどうなのかというのを考えて
ったり講演会などに参加していまし
おります。お手元にお配りさせてい
たけれども、その延長線上で大村さ
ただきました。一枚の表があると思
んがやっている「親の会」に出会い
います。文字が細かくて申し訳ござ
ました。
「親の会」
いませんが、これは定時制通信制の
に私が初めて行
永野さんに作っていただいた資料で
った時に、親自身
す。定時制というのは不登校の子ど
も子どもも批判
もたちの重要な進路になっているわ
されずに、ただた
けですけれども、平成20年と21
だ話を聴いてく
年、22年のものがございまして、
れる仲間がいる
っていうことがとてもうれしかった
は親が孤立しないこと、これが一番
です。話を聞いてもらうと自分自身
大切だと思っています。親自身が自
が見えてきて、世間体を気にして子
分の気持ちを話せる居場所を持って
どもを傷つけてきた自分に気づい
いることが大切で、安心を感じた時
て、またその話を聴いてもらうとい
に初めて気持ちを話すことができま
うことを繰り返して、その時間を積
す。人は気持ちを話すことができて
み重ねて子どもの応援者としてそば
受け止めてもらえると、「受け止め
にいられるようになったのかと今感
てもらえた」と感じた時に元気が出
じています。ただ、大村さんの「親
てくるのではないかと思っていま
の会」は月に一回ということで、私
す。そうすると今度は家に帰って子
はとても物足りなくて「もっとみん
どもの話を聴くことができるように
なと話したい」という思いがあって、
なるのではないかと考えています。
毎週水曜日に親子で集まるという
先ほど大村さんからもネットワー
「親子の居場所」を始めたのがこの
クの話が出たんですが、私たちの会
会のきっかけです。その後、親自身
自体も孤立しないことが大切だと思
がまず自分の居場所を持つことが大
っていて、「NPO 法人登校拒否・不
切だと思って自助グループとして活
登校を考える全国ネットワーク」と
動を続けています。今では、毎月第
いうのにつながっていたり、あるい
2水曜日の午前10時半から12時
は県内、市内でもネットワークを持
半までの例会。それから第3水曜日
って活動しています。そんな中で情
の午後1時半から3時半まで、16
報交換をしたり、新しい学びを得た
歳以上の子どもを持つ親の自助グル
りして活動をしております。
ープ「YOU プラス」というのを行っ
大村委員:それでは、デグチさんお願いい
ています。それ以外にも毎月第2水
たします。
曜日の午後からの時間帯で読書会を
デグチ:「個性の強いこどもを地域で支え
行ったり、毎月最終水曜日の午前1
る会」の発起人で代表を務めていま
0時半から午後3時までで、毎月
す、デグチサオリと申します。この
「YOU」という通信を発行している
会は2006年、今から4年前に発
んですが、その通信の発送準備と、
足しました。ちょっと変わった子た
親子の居場所ということで、親子で
ちが理解されずに二次障がいとして
過ごす時を設けています。
鬱などの精神障がいに苦しむ状況を
それ以外にもパステルシャインア
無くしたい。また、親や教師の孤立
ートとかコラージュをしたりレーキ
を防ぎ地域全体で子どもを育てるこ
ヒーリングをしたりということで、
とが必要だと思い、まわりの方たち
親子で楽しめる時間というのを持つ
に声をかけて非営
ようになってきました。後はみんな
利市民活動団体と
で新年会をしたり、今度またお泊り
して活動を始めま
会もあるんですが、そういうお楽し
した。この会での
み会も行っています。
「個性の強い子ど
親子の会を行っていて感じること
も」の定義は、健
常児と同じ小学校、園に通う発達障
作りました。その他にも発達障がい
がいを含む社会配慮が必要な子ども
を持つ当事者の講演会や支援具の展
のこととしています。ここで言う発
示会など、個性の強い子らが生きや
達障がいは知的に遅れのない自閉
すくなるための支援活動を行ってい
症、いわゆる広汎性発達障がい、ア
ます。ちなみに受付のところにチラ
スペルガー症候群。高機能自閉症や
シを置かせていただいております
LD といって脳の機能により漢字な
「明日から使える発達障がいサポー
どの線の位置を認識する力が弱く個
ト小学生編」というのを11月14
々に合わせた学習の仕方が必要な学
日に行います。こちらの方は支援具
習障がい。また、注意欠陥多動性障
の展示と参加者同士がおしゃべりを
がいといって忘れものが多い、落ち
して支援のヒントを共に探す場を作
着きがない子としてあげられる
ろうと思って企画しました。会報は
ADHD。このような脳の機能が生まれ
だいたい3か月に一回程度発行して
つき独特であったり、発達の片寄り
おり、定例会で今どんなことに困っ
によるつまづきや生き辛さを持って
ているかや、伝えたいことなどを話
いる子たちを対象にしています。文
し合い作っています。受付のところ
部科学省の調査で16人に一人の割
に置かせていただいているのは12
合で存在していると言われる身近な
号で「連絡帳うまく使っていますか」
子どもたちです。この会の中心は主
と内容です。学校と家庭での連絡ツ
に月2回の定例会です。様々な立場
ールの使い方とか考え方で何かヒン
や経験のある参加者が意見を出し合
トになればということで作らせてい
い、「今問題となっていることは何
ただきました。このような活動を通
か」「それに対する方法にはどんな
して私たちは、個性の強い子どもを
ものがあるか」を話し合っています。
支援しています。以上です。
もっと知りたいということに関して
大村委員:
ありがとうございました。今
は勉強会を開いたり、配本として発
4人の方に活動紹介をしていただき
行して社会に啓蒙しています。昨年
ましたが、外国籍の子どもたち、あ
度は「あいちモリコロ基金」に助成
るいは母語が日本語でない子どもた
を受け「ここさぽ」という豊田市で
ち、不登校の子どもたち、発達障が
できる個性の強い子たちのサポート
いのある子どもたち、もっと他にも
ヒント集を発行しました。これも定
いろいろなニーズを持った子どもた
例会での話の中から生まれたもので
ちもいるわけですが、今日はこの三
す。インターネットや本などで子ど
つの切り口から考えていきたいと思
もたちへの支援について情報がたく
います。それでは、さっそく先ほど
さん溢れているのに、実際に自分た
の「生き辛さ」とは何だろうか。子
ちが住んでいる豊田市ではどのよう
どもの抱える生き辛さっていうもの
な社会資源があり活用できるのか。
をどのように捉えていらっしゃるか
また、地域の中で実際にどんなふう
ということをお話しいただきたいい
に理解が進み支援しているのかが知
と思います。
りたいということから取材を進めて
また、先ほどと同じ順でお願いし
ます。
湯原:
いるブラジルの方の場合は今、日本
今度も写真をいろいろ見ていただ
で生まれた子もとても多いです。近
きたいと思います。トルシーダです。
くに学べるところがないということ
よろしくお願いいたします。
で、去年から送迎バスを出せるよう
活動の中心になっておりますのが
になりまして、保見団地だけでなく
「日本語教室 CSN」という子どもの
て市内の各所から通ってこられるよ
ための日本語教室です。これは、昨
うになりました。受け入れているの
年度から文科省の架け橋事業として
は 7 歳から 18 歳の子どもたちです。
実施させていただいております。
まず一つは、学校に行っていないこ
先ほどお話しいたしましたよう
と。もう一つは、日本に来たばかり
に、活動場所が保見団地になります。
という子もいます。そういう子は、
いらっしゃったことがある方も多い
たいがい保護者のどちらかが日本人
かと思いますが、ここは日本語がな
と結婚して、大きくなってから日本
くても暮らせる町になります。今、
に来たというフィリピンや中国の子
豊田市の人口の内だいたい 3%くら
は、私たちの周りでは今増えていま
いの方が外国籍の方だそうです。そ
す。それで日本語を覚えたいという
れが 1 万 5 千人くらい、そのうち 0
子どもたちです。
歳~19 歳の子が 2,676 人ぐらいいら
っしゃるそうです。
学べる場所が他にないというの
は、例えば 7 歳から 15 歳までの子で
そのうちの何十%かは保見団地で
すと、豊田市の場合は外国籍の受け
暮らしていらっしゃると聞いており
入れの態勢を充実していただいてい
ます。ここは、ブラジル人学校もあ
る地域もありますし、日本語がまっ
りますし、ブラジルの方の場合は、
たく分からなくても小学校や中学校
日本の学校に行かなくても学びを続
に入ることができます。ただ、15 歳
けることができますが、日本語を知
9月を過ぎていると、中学校にはい
らないで社会に出ることになってし
れないということで、そこからどう
まう子どもたちがいます。そして、
やって勉強を続けていこうかという
日本語を学んでいないと限られた職
問題を抱えている子どもたちが今、
業につくしかないということも現実
私たちの教室では増えています。
としてあります。
その子どもたちがこれからどうし
教室の時間ですが、月曜日から金
たいのかということなのですけれど
曜日まで開いております。10 時から
も、先ほどお話もしましたが、小学
3 時半まで毎日 4 時間の授業をして
校や中学校に行きたいという子はあ
います。お昼ごはんも子どもたちは
る程度日本語を覚えて自信がつけば
一緒に食べております。
学校に入っていくことができます。
その子たちはどこから来た子かと
問題は高校に行きたいという子なの
いいますと、どこの子どもたちだと
ですが、大きくなってから来た子の
思われますでしょうか。フィリピン
場合は、母国で基礎教育と言うのが
やブラジル、そして中国からの子ど
9 年修了していないと、高校を受験
もたちがいます。保見団地に住んで
することが日本ではできないので
す。そういう場合は、中学校程度卒
視野でその子どもの教育について考
業認定試験というものがございまし
えることが難しい。子どもたちはい
て、昔でいう大検みたいなものの、
つ国に帰るかわからない不安を抱え
高校版ということになります。5 教
ながら勉強している。そういうとこ
科の科目すべてをパスしなければ高
ろが子どもたちの困っているところ
校を受験する資格が得られないとい
かなと思っています。
うことになっています。日本語で試
日本語を学ぶためにどんなことを
験を受け、5 教科のたとえば社会な
やっているかと言うことを写真で見
どは日本の歴史のテストをパスしな
ていただきたいのですが、普通の授
ければ、高校に入るための試験を受
業もしますが、かるたで漢字を覚え
けることができないという困難な状
たりとか、書く練習もなるべく楽し
況にあります。
くできるように工夫してやるように
外国籍の子ども全般に言えること
しています。
として将来の見通しがとても立ちに
それから、日本語と同時に学校へ
くいということがあることと、親御
行っていないということで社会や日
さんが学校制度の違いをご存じない
本のことを知る機会がないというこ
ということで、子どもたちが困って
とがありますので、いろいろな所へ
いるということがあります。将来ど
連れ出して、調べたことを発表した
こで暮らすのかということがはっき
りとか、今年は近くの大学の学生さ
り決まっていない、親御さん自身も
んと先生のご協力で田植えをさせて
はっきり決めていらっしゃらないと
いただいたりとかですね、この写真
いうことが子どもたちの本当に一番
は日進の畑・田んぼなのですが、芋
困ったことだと思います。どこに住
を植えたりとか、エコットの見学に
むのかもそうですけれども、どの言
行ったりとか、いろいろな所に子ど
葉で学び続けるのかということを保
もたちを連れ出して、子どもたちも
護者がはっきり決めていない場合、
いろいろな経験をしてほしいし、日
もちろん母語は、例えばブラジルの
本のことを知ってほしい。それから、
方でしたら、ポルトガル語も絶対に
地域の方たちにも、こういった子ど
忘れないでほしい。だけど、今は日
もたちがいるのですよということを
本の学校に通っているという子の場
知っていただきたいと思って活動し
合は、親御さんの期待どおりになれ
ています。
ばいいのですけれど、残念ながら両
他にも、子どもたちは学校に行っ
方中途半端になってしまって、“ダ
ていないと体を動かしませんので、
ブルリミテッド”というそうなので
体育も毎週やっています。自分たち
すが、両方十分でないという子がい
で企画して運動会をしたりとか、遠
ます。
足に行ったり、地域の方のご協力で
子どもは日本で育っているので、
流しそうめんも今年はやらせていた
日本でずっと暮らしたいと思ってい
だいて、とっても楽しかったです。
るけれども、親御さんは帰国したい
そういったこともやっています。右
と思っている場合も多く、長期的な
下の写真がトゥーリオ選手なんです
けれど、遊びに来たというか連れて
なパンフレットも作っていただい
きたのですけど。近くのスーパーで
て、今回のこの報告書、皆さんお手
買い物していたところを「お願いで
元にありますか。最後に子ども条例
すから、ちょっと子どもたちに勇気
そのものが載っていまして、67 ペー
をください」と言ってですね、ちょ
ジ第 4 章の第 14 条『市、育ち学ぶ施
っとお話しさせていただいて、そう
設、市民及び事業者は、外国籍の子
いった楽しいことを一緒にやろうと
ども、障がいのある子ども、ひとり
やっています。先週はですね、サン
親家庭の子ども、経済的に困難な子
トス選手が来てくれました。とても
ども、』ここに『不登校の子ども』
楽しかったです。
が出てくるんです。不登校の子ども
私たちが一番言いたいことは、
「こ
のそういった『特別なニーズがある
こにいてもいいよ」ということなん
と考えられる子どもとその家庭に気
ですね。学校に行っていないという
を配り、適切な支援をしなければな
ことは居場所がないということなの
りません。』と豊田市は決めてくだ
で、「ここにどうぞいてください」
さったのです。大変これはありがた
「安心していていいよ」「じゃあ、
いことで、非常にうれしく思ってい
ここで何をしようか考えようね」と
ます。
いうことをやっています。ありがと
うございました。
それで、例えば子どもの状態はど
うなのかと言いますとですね、どこ
ありがとうございました。学
に困っているのだろうということで
ぶ機会、あるいは仕事につながる教
すが、まず不登校になりますと、親
育の機会の問題、それから将来どこ
は「自分の育て方が間違っていたの
で暮らすか決まっていないというこ
ではないか」と自分を責めるケース
とが、将来、未来を描くことができ
が大変多いです。私もそうでした。
るかどうか、あるいは子ども条例に
「あれ、私、どこで間違っちゃった
はですね、『夢をかなえることがで
んだろう」とそのようなことを思っ
きるまち』といった表現が出てくる
ていました。それで、同じ経験を持
のですが、どこに暮らすことができ
つ親が集まって、自助グループで体
るのか分からないというときに夢が
験談を話していくうちに元気を出し
描けるのだろうかということにも関
ていくのですけれども、やはり子ど
わってくると思います。
も自身は理解してくれる大人が周り
大村委員:
また同じ問題が出てくるかもしれ
にいないと、自分に対する自信をな
ませんが、この外国籍の子どもたち
くしてしまって、他人と接すること
の問題ですね、みなさんからもまた
が怖くなったりするようになってき
ご意見をお聞きしたいと思います。
ます。私の下の子も、小学校 2 年の
それでは大村さん、よろしくお願い
時に学校に行けなくなったのです
します。
が、「学校に行けないのは自分一人
大村: はい。ありがとうございます。私、
だけ」「学校に行けないのは悪い自
この豊田市子ども条例ができてすご
分」というように非常に自信をなく
く嬉しかったのです。こんなに立派
していました。親は「大丈夫だよ」
と言っても、子ども自身が非常に自
フリースクールに行ってもいいんだ
分に対して自己否定的な感情を持っ
よと、そういう自由な選択肢が豊田
ています。なので、出かけるときに
の子どもも含めですが、ないという
も車の後ろに乗せていくのですが、
ことがちょっと困っているのかな。
人が通ると隠れてしまって顔を見せ
それより何より、自己肯定感を育て
ないという状態が 5 年くらい続きま
なければ、やろうという意欲も起こ
した。そういったのが困り感ですか
ってこないので、そこをなんとか支
ね。
えてあげたいというのが思いです。
以上です。
それと、大きな視野で言いますと
この子ども条例と言うのは、子ども
大村委員:
た。では、続けてお願いいたします。
の権利条約の理念に基づき作られた
のですけども、その中で毎年政府が
はい。ありがとうございまし
鈴木:
先ほど、不登校の子どもたちが全
政府報告書というのを出して勧告を
国で 12 万人という話だったのです
国連の委員が出しているのです。今
けども、豊田市では何人くらいいる
回、今年 6 月勧告というものが出さ
と思いますか。だいたい 500 人弱の
れました。その一部ですが、『教育
子どもたちが不登校しているのです
制度の過度に競争的な性格が、子ど
ね。この数字は年間 30 日以上休んで
もの肉体的および精神的な健康に否
いる子どもたちなんです。ですので、
定的な影響を及ぼしかつ、子どもが
行きづらいな、学校嫌だなって思い
最大可能なまでに発達することを妨
ながら、いろいろなものを抱えなが
げている』といった報告書だったの
ら通っている子たちは、こういう数
です。これは学校に行っている子ど
字に入ってこないのですね。
もも行っていない子どもも同じ状態
かと思います。
毎年夏休みの終わりごろから 9 月
の初めにかけて、全国で子どもたち
今日の中日新聞に、 『子どもの不
が自殺するというニュースが聞かれ
登校、変化に敏感に大らかに』とい
ます。今年も、何人もの子どもたち
う趣旨の社説が載っていました。こ
が自らの命を絶っています。愛知県
ちらは、フリースクールの東京シュ
でも瀬戸市の中学生が亡くなってい
ーレを見学に行かれた中日新聞の方
ます。私が 10 年ぐらい前にこの
が書かれたのですが、『小中学校の
「YOU」を続けようかどうか迷った時
不登校が十万人を超えて十三年が経
期があったのですけども、その時に
つ。スクールカウンセラーや適応指
継続してやっていこうと決心したの
導教室などの専門領域の拡充では限
は、下山地区で中学生が自殺をした
界のようだ』というように書いてあ
という新聞記事を読んだからでし
るのです。最後の締めでですね、
『子
た。子どもたちは学校にも家にも居
どもが主体的に学びの場を選択でき
場所がないと感じた時に、自殺や家
る法的な仕組みを求めたいというこ
出という手段を選ぶのではないかと
とを応援したい』とおっしゃってい
思っています。学校や家に居場所が
るのです。子どもは家にいてもいい
ないと感じている子どもたちは、体
んだよと、定時制に行ってもいいし、
調不良、例えば頭痛や腹痛になった
り、目が見えなくなったり、耳が聞
はそこで「不登校は子どもが自分自
こえなくなったり、足が動かなくな
身を守るための手段としてそうなっ
ったりというような身体症状を現す
たんだ」と気づくことができました。
ことがあります。それから、リスト
その時に、子どもの権利条約という
カットや摂食障がいになったり、う
ものを同時に知りました。親として、
つ状態になったり、あるいは自分の
大人として、どのように子どもと関
部屋に閉じこもるというようなこと
わっていったらいいのかなというそ
をしています。そういうことをして、
のヒントが、この子どもの権利条約
子どもは自分の命をかけて、生き辛
にあると私は感じました。親の会で
さを訴えているのではないかと感じ
も、皆さんに伝えていけたらと思っ
ています。
ています。
私も、わが子が不登校になったと
大村委員:
ありがとうございます。不登
きに「学校へ行かなければ、この子
校の子どもたちを巡っては、今の大
の未来はない」と思いこんでいたの
村さんや鈴木さんのお話にあったよ
ですね。犯罪者になってしまうので
うに、子ども自身が自信を失う、自
はないかとか、大人になれないので
己肯定感を失ってしまうと同時に、
はないかと本当に思っていました。
保護者も育て方を間違ってしまった
そのような思いがあって、私も学校
というような形で自己肯定感を失っ
へ行かせようとしていた時期があり
ていく、二重の問題がおそらくある
ました。子どもに学校の話をしただ
んだろうなと思います。その中で、
けで、おなかをこわしたり、顔から
学校に行かなくては未来がないとい
表情が消えて自信を失っていくとい
うように思いこんでしまう、しかし
うことを目の当たりにしました。
同時に、お二人がやっていらっしゃ
本当に、自信がなくなるといろい
る居場所の中で学ぶ場を作り出して
ろなものごとが決められなくなっ
いったり、あるいは、もっと公的な
て、自販機の前で飲みたいジュース
学ぶ場の選択肢がないだろうか。今
が決められない。あるいは「写真に
日の資料も見せていただきました
とられるのが嫌だ」といって写真を
が、今は定時制にも行けなくなって
嫌がったり、そういう時期もありま
いるといった事態の中で、学ぶ場が
した。
奪われているのではないかというこ
学校に居場所がないと感じたので
ともおそらく選択肢の問題、大きな
あれば、せめて家だけでも居場所だ
問題があるのだろうなと思います。
と感じてもらえたら、周りの人に分
それと同時に、居場所の問題は豊
かってもらえなくても、たった一人
田市子ども条例にも子どもの権利と
でも味方だなと感じられる誰かがい
して、『安心して過ごすことができ
れば、子どもは生きることを選択し
る居場所を持つこと』と書かれてい
てくれるのではないかなと思って、
ます。そうした居場所が今、なくな
私は今、親の会を続けています。
ってきているということも少し考え
大村さんがやっている「まちあい
しつ」という親の会に出会って、私
ておきたいと思います。
それではデグチさん、お願いしま
「自分はダメなんだ」という気持ち
す。
発達障がいのある子やそのまわ
が膨らんで自己肯定感が持てなくな
りにいる方々の視点から生き辛さや
るというようなことが起こってきま
困り感についてお話したいと思いま
す。こういう場合はそもそも原因は
す。発達障がいのある子は一見して
何なのかを早い段階で知り、この子
困り感が見えないということが一番
の脳の機能に合わせた学習や支援が
大きな障がいになっていると思いま
わかれば、このような二次的な困り
す。たとえば字を読むことが苦手な
感はなくなるというふうに考えられ
子の中には音声ならば内容理解は簡
ます。発達障がいを持つ子の機能的
単だけれど、文字になると形を正し
な生き辛さは、発達の凸凹であった
く認識できなくて一字一字をやっと
り片寄りですが、それは発達段階に
の思いで読み上げたものの、内容ま
合わせた取り組みやすいスモールス
では頭の中に入ってこないという子
テップであったり、支援具の利用な
もいます。「音声ならわかるのに何
どである程度カバーできるものだと
で読めないのか」学校では「読む練
思います。
デグチ:
習を怠けてるんじゃないか」と誤解
しかし、精神的な生き辛さだった
されて毎日音読の課題が追加され
りとか、人間関係のこじれというの
る。また、家庭では「できないとこ
は、年を重ねて失敗をどんどん重ね
ろを伸ばしてあげたらこの子のため
ていくたびに複雑にからみ合って発
になる」と、親がつきっきりで本読
達障がいという元々の困り感より
みの練習をして、子どもは間違いを
も、もっと重大で大きな障がいとし
指摘されることで委縮してしまった
て表れてきます。また、虐待を受け
り、自分を守るためのすべとして反
る子どもの50%以上に発達障がい
抗的な態度をとることがあります。
があると言われています。言っても
そうすると親は「あなたのためにや
わからないから叩いてわからせたい
ってるのに」と腹立たしく思ったり、
と「しつけ」のつもりがエスカレー
我が子の「できない」ところに着目
トしていく事例もあります。また、
して落胆してしまったりということ
肌の接触を嫌がって抱っこされたく
が起きます。そういうことを含めて、
ないとか、お母さんのほうを向いて
親自身も怒ってしまったり、落胆し
微笑みかけたりすることが少ないお
てしまう自分を「ダメだなぁ」と思
子さんがいます。そういった愛着行
いやすい。そんな出来事が発達障が
動の少なさから我が子をかわいく思
いのある子のまわりでは起こりやす
えずにネグレクトに至ってしまうと
いのではないかと思います。まわり
いうような、そんなケースもあるん
の人はこの子のために良かれと思っ
じゃないかと思います。子どもは発
てやっていることが実はその子を苦
達途中の人間ですので、たくさんの
しめてしまったり、悪循環を起こす
経験をして学んでいきます。その学
ことにもなるのです。子どもは文字
習の過程でつまづきがある場合は、
が読めないという困り感だけではな
やはり支援が必要だと思います。中
く、頑張っても成果がでないことで
には自分の考えを言葉に変えて表現
するということに困難さを持つ子も
まうというような、まわりから見る
います。たとえば、子ども同士のけ
とこれぐらいは知っているだろうと
んかに大人が介入するとき事実の確
誤解されていて、そういう機会を失
認をした後に、加害者とされる子に
っている子たちだと思います。
「『ごめんなさい』と言いなさい」
また、聴覚に過敏さがある子とい
と謝らせて、被害者とされる子には
うのも中にはいます。クラスメイト
「あなたも自分の言いたいこときち
がしゃべっている中で教師の指示を
んと言いなさい」というケースはよ
聞き取り難くて苦労していても、そ
くあると思います。しかし、こうい
れはみんな同じように苦労している
う場合にお説教から抜け出したいが
中でがんばって読み取っているんだ
ために「自分が悪いです。ごめんな
と思って、「自分は読み取り難いな」
さい。」と言って切りぬけてしまう
と思いながらも「みんな同じだから」
という子がいます。そういった間違
と思って我慢していて、本人ですら
った学習をしたままの子はそのまま
自分の生きづらさというものを見過
将来犯罪組織にいいように使われた
ごしてしまっているということもあ
り、冤罪を作りだしてしまうという
ると思います。
こともあります。また、「自分の意
権利を軽んじられやすい子どもの
見を言え」というのも、うまく言え
立場と、発達障がいのある子はそれ
ないからこそトラブルになったとい
にプラスしてさらに自分の気持ちや
うことであって、次に同じ場面にな
状況をうまく表現できなかったりだ
った時にどうしたらよいのかという
とか、本質を誤解されて困り感を見
学習はされてないということになり
つけにくいというような特性が合わ
ます。これはどんな子にも言えるこ
さった困難さがあって、生き辛さが
とだと思いますが、特に発達障がい
さらに覆いかぶさっているケースが
を持つ子の中には、まわりを見て「そ
多いと思います。
うか、こうしたらいいんだ。」と気
大村委員:
ありがとうございます。発達
づいたことや、考えたことを自分の
障がいについては学校においても家
行動に取り入れるという力が弱いと
庭においても理解がそれほど広まっ
いう子がいますので、そういうとこ
ていないということもあるんでしょ
ろで学習を誤っていたり、間違った
うが、今のお話はすぐ見てわかる障
認識を持ってしまうというようなこ
がいでない場合に、子ども自身も親
とがあります。また、とてもまじめ
もあるいは学校の中で理解できない
に言われたことをきっちり守るお子
場合にいろんな生き辛さが生まれて
さんもいます。そうすると状況が変
くるということであったと思いま
わった場合に臨機応変に対応できな
す。
いということが起きます。こうした
さて、お話をずっと聴いてきまし
つまづきや特性から、間違った認知
たが、ここで少しフロアーのみなさ
や未学習が起きる子がいます。これ
んからもご意見、ご質問を受けたい
は本来教えてもらったり、知ってお
と思います。あまり時間をとれない
くべきことを知らないまま育ってし
ですが、「ここをもう少しお話をし
ていただきたい」とかみなさん自身
方にというお話でしたから、湯原さ
は今どういうことを考えていらっし
んからお願いします。
ゃるのかということも合わせて、少
湯原:
すみません。私は不登校のことは
しお聞きしたいと思います。どなた
不勉強で申し訳ないんですが、フリ
からでも結構ですが、ご発言いただ
ースクールの制度のことは詳しく存
ける方は挙手をお願いできませんで
じあげないんですけど。
しょうか。ご感想でも結構です。
参加者:
トルシーダはフリースクールに
大村さんや、鈴木さんが全国不
は入らないんですか。話を聞いてい
登校ネットワークの蒲郡大会の時に
てフリースクールの一つかなと思い
すごくがんばっていて、あの時に初
ました。
参加者:
めて一度だけ全国大会に参加させて
湯原:
NPO の日本語教室ということでフ
いただきました。その時に沖縄から
リースクールの一つなのかもしれな
北海道まで親御さんが集まってみえ
いですけど、これだけ長い時間でき
て、その内容のすごさに圧倒されて、
るようになったのは、昨年、文科省
「こんなにたくさんの人たちが困っ
からの予算がついたからでして、そ
てみえるのだ」そういうことに対す
れまでは一日2時間のボランティア
るいろいろ施策が遅れてるんだとい
の教室を細く長く続けてきたという
うことをその時にすごく感じまし
ことです。ただ、子どもたちが学ぶ
た。鈴木さんが、常に500人近い
場所は多いほうがいいんじゃないか
不登校生が豊田市の中にもいるとい
ということは思っています。それは
うことを言ってみえましたが、それ
日本の子も外国の子もいっしょかな
に対して適応教室とかいろいろある
と思って聞いておりました。
と思うですが、たとえば適応教室に
大村:
昨年のこのシンポジウムにパルク
対して、4人の方にお聞きしたいの
の成毛先生がお越しになってたんで
ですが、「もう少しこうなってほし
すね。この報告集(*21 年度版)の
いな」とかあるいは、全国大会の時
33ページから昨年のシンポジウム
には相当の情報量も入ってくる「東
のまとめがあるんですが。適応教室
京シューレ」のことなんかもよく知
はパルクにあります。それで私ども
ってみえるし、そういうフリースク
はこの5年ほど懇談する機会を作っ
ールについて、豊田市にもあったほ
てもらって続けているのですが、今
うがいいと考えているのか、そうい
年の4月からパルクは自分たちが
うのは子どもたち自身が選択するこ
「これを勉強したい」と言ったらそ
との一つとしてまだ豊田市として考
れが勉強できるようになったという
えるには早いと考えているのかお聞
ことなんです。これはもうすごく画
きしたいと思います。
期的なことなんですね。今までは1
ありがとうございました。他
時間目算数、2時間目国語と決まっ
にもし、質問があれば合わせてお答
てたけど、「これがやりたい」と言
えをいただきたいと思いますが、よ
ったらそうなったということだった
ろしいでしょうか。
のでそれは非常にいいことだと思い
大村委員:
それでは今のことについて4人の
ます。でも、不登校のすべての子ど
鈴木:
もが適応教室に行かなければいけな
スクール、フリースペースというよ
いかと言ったらそうでもなくて、そ
うなこととは違うことなのかなと感
れは選択肢の一つであって、すごく
じています。「もうそろそろそうい
合う子もいれば合わない子もいる。
うことを考えたらいいのではない
という風に考えていますので、選択
の」と声かけていただくこともある
肢があるという意味ではフリースク
のですが、なかなか市民の力で、私
ールももしかしたらできたらいいな
やれるかといったら、やっぱりでき
と思うんですが、そのフリースクー
ないということが現状なんですね。
ルが名前だけフリースクールだと非
大村さんからも「ただ名前だけじ
常に困ってしまうのでそこは何とも
ゃ」という話が出たんですけど、子
言えないです。
どもたちが行きたくなるような、過
「豊田市には、不登校の子どもた
ごしたくなるようなそういう居場所
ちが行けるフリースクールがあ
が一つじゃなくてたくさんできてい
る?」と聞かれることがあるのです
くことが大事かなと感じています。
が、私の情報としてはなくて、いつ
デグチ:
私は、“学びの多様性”とい
も困ってしまって「名古屋にはある
う言葉がポーンと浮かんだんです
よ」という形でお伝えしている状況
ね。それは、学ぶ場であったり、学
です。適応指導教室が居場所になれ
び方の多様性があっていいのではな
ばそれはそれでいいと思っていま
いかということです。「学びの多様
す。しかし、やはり適応指導教室と
性」を実現するには、物質的にそう
いう場所が嫌だと感じる子がいるの
いう場が必要になります。例えば学
も当然なので、その子たちがまたど
校への行き渋りがおこった時に、親
こか選べるといいなと思います。
はもの凄く焦ると思うんですけど、
パルクとよたができたときに、ふ
そういう多様性があるんだという軸
らっと行って、親がちょっとお茶を
があると、もうちょっと落ち着いて
飲んだりとかして、そこに来たお母
「この子に会ったのはどこかな」と
さんたちと雑談して帰れるとか、子
選択できたり、その子自身が進路を
どもたちもふらっと行ってパーっと
選択するときに制度として確立して
眺めて話しが合う子がいたら、話を
ると行きやすいのではないかと思い
して帰ってくるというような、もっ
ます。私が発達障がいのある子のお
とゆったりした、「来てもいいよ」
話を聞いて感じるのは、やはり学び
というような「オープンスペースみ
方の多様性がまだ少ないのではない
たいなところはできないですか」と
かなと思います。選択肢も少なけれ
お尋ねしたことがあります。しかし
ば、学び方の選択肢もまだまだ少な
「パルクというところは、相談セン
い。もっともっと多様性を広げてい
ターなのでちょっとそういうことは
くことがその子その子の生きやすさ
出来ないです」という回答をいただ
だったり、学びやすさにつながって
いたかなと思っているのですね。や
もっと「学校へ行ってみたいな」と
はり、相談センターとしてやってい
か、「学びたいな」という気持ちや、
くというやり方と、それからフリー
生きる力につながっていくのではな
で、やっぱり基礎がないとその後伸
いかと思います。
ありがとうございました。み
びませんので、そういった場所があ
なさんからお話をうかがう時間はそ
るといいなと思います。それから最
ろそろないんですけれども、この点、
後にいろいろな人のかかわりの中
もう少し聞きたいことがあれば出し
で、子どもたちが暮らして成長して
ていただければと思います。よろし
いける。そういうところだったらい
いでしょうか。よろしければ、もう
いなと思います。そういう活動をし
後半に入るのですが、いま、フリー
ているところに日本人もボランティ
スクールのお話もありましたが、日
アとして参加したりしてですね、自
常的な学習の場をオルタナティブな
分のできることで関われる。そうい
学校という形で作り出していくと思
うところだったらいいなと思いま
います。そういったことも入るのか
す。「教えて」とか「助けて」と気
もしれませんが、先ほど出していた
楽に言い合えるそういうところだっ
だいた“生き辛さ”に対して、「こ
たらいいなと考えています。
大村委員:
湯原:
うなったらいいね」という解決イメ
相談室に期待することということ
ージですね、「こんな町になったら
なんですが、せっかくいい場所があ
いいな」「こんな地域やこんな学校
りますので、「相談できる場所があ
になったらいいね」という事を出し
るよ」ともっとたくさんの子どもた
ていただいて、これからそれをどう
ちに知らせていただきたいと思って
やったら実現できるのだろうかとい
います。特に保護者が日本の学校を
う話をさせていただければと思いま
経験したことがない場合、親自身の
す。少し、時間が押していますので、
経験から子どもにアドバイスするこ
最後に予定していました“相談室に
とができないものですから。親御さ
期待すること”も合わせて出してい
んも日本語が不十分な場合、学校と
ただければと思います。順番は先ほ
か日本のことについて理解するのが
どと同じで、湯原さんからお願いし
難しいということもあって、子ども
ます。
が相談するところが限られてしまう
「こうなったらいいね」「どうい
んですね。そいう子たちにも市とし
うふうになったらいいかな」を考え
ても外国語でも対応していただける
てみたんですが、まず一つ、いつか
ということですので、ぜひ、たくさ
らでも学べる、そういうところであ
んの子に「こういう場所があるよ」
ったらいいなと思います。それは、
と知らせていただきたいと思いま
どこの国にいても、もちろん日本に
す。よろしくお願いします。
いても、途中からでも、何歳からで
大村:
そこに、「子どもの権利相談室」
あっても学び直せる、学べる場所が
の見やすいパネルを作っていただき
あったらいいなと思います。
ました。参加する権利の中に「自分
もう一つは、外国籍の人の立場に
の気持ちや考えを表わすこと」第8
立って考えてみますと日本語の基礎
条ということが書いてあります。こ
を学べる場所があるということ。子
れは子どもがいろんなところに参加
どもたちが国を移動していますの
できるし、
「こう思っているんだよ。」
とか「こういう感情があるんだよ。」
級を認めないことで子どもが幸せに
ということを大人に伝えることがで
なりますか?そういうこともまった
きると書いてあります。でも、なか
く考えられていないような校長先生
なか子どもって言わないんですよ。
だったかと思うんですが、親たちが
それで、子どもの気持ちを親が想像
何度も話しに行ってこの事態は解決
するんですが、たいてい間違ってい
しました。最後には進級を認めてい
ます。というのを何度も経験しまし
ただいたわけですが、子どもたちが
た。だから子どもさんに「あなたに
幸せになるためには大人が何をして
は意見表明権があります。」と言う
いったらよいのかということを子ど
だけでは不十分です。子どもがどう
もたちを含めて話し合う機会を多く
いう時に自分の考えを言うか、感情
とらないといけない。11月23日
を表すかと言ったら「自分を受け入
に「中学校卒業後の進路を考える会」
れてくれるな」と思った時だと思い
というものを計画しました。今回、
ます。「ここでは大丈夫」と直感的
通信制の高校に通うお子さんの体験
に感じとった空気では感情は出せま
談をお話ししていただく予定なんで
すし、意見も言えます。そういった
す。どう思っているのか、どうして
空気を大人が作っていかなくてはい
その学校に行ったのかというような
けないです。逆に子どもに「学校に
ことが話し合えればいいと思ってい
行きたいの?」聞いたら「行きたい」
ます。
それから、相談室に期待すること。
と言ったとしてもそれが本当だとは
限らないということもあります。
「親
子どもの権利を市民のみなさんに理
が行ってほしいと思う」とか「学校
解してもらうために、ぜひ広報が必
に行かないと親が心配するんじゃな
要であると思いました。これは子ど
いか」という思いで「うん、行きた
も条例ができる前ですが、子どもの
い」と言う場合もあるんです。子ど
権利講演会「子どもにやさしいまち
もは非常にまわりの状況を察知し
づくり」を開催いたしました。多数
て、あっという間に適応してしまう
の方にご参加いただいたんですが、
適性を持っていますので、子どもが
まだまだ大人に対する広報も十分で
意見表明を自由にできる空気を大人
はないので、その広報も含めてやっ
社会がどう作っていくかというのは
ていただければと思います。この豊
非常に問題かと思います。むずかし
田に条例ができたことはたいへんう
い問題です。
れしいことで相談室もあって、擁護
ある事例をご案内します。ある小
委員の先生もいらっしゃって非常に
学校の校長先生が不登校で休んでい
うれしいです。他市に誇れる制度だ
る子どもの進級を認めないというこ
と思います。今後も私たちの身近に
とがありました。これは相談室がで
存在する相談室であり続けていただ
きる前のお話ですが。子どもの進級
きたいと思います。ありがとうござ
を認めないということを親に言った
いました。
んですが、子どもの気持ちはこの校
長先生聞いていないと思います。進
鈴木:
「こうなったらいいね。」という
ことですが、今日の資料のYOUの
紹介の裏に「不登校の子どもの権利
育とは、国や保護者がすべての
宣言」というのを印刷させていただ
子どもに教育を受けられるよう
きました。この権利宣言は2009
にする義務である。子どもが学
年、親子で一泊二日での夏合宿の機
校に行くことは義務ではない。
会がありました。東京シューレの子
二、
学ぶ権利
どもたちが中心になって、何か月も
私たちには、学びたいことを自
かけて権利のことを学んで、「不登
身に合った方法で学ぶ権利があ
校の子どもの権利宣言」ということ
る。学びとは、私たちの意思で
でこの権利宣言をまとめ上げまし
知ることであり他者から強制さ
た。その時に会場のみなさんに発表
れるものではない。私たちは生
してくれたものです。今日は少しお
きていく中で多くのことを学ん
時間をいただいてこれを私が読み上
でいる。
げたいと思います。
聞いていただけたらうれしいです。
不登校の子どもの権利宣言。前文。
三、学び・育ちのあり方を選ぶ権利
私たちには、学校、フリースク
ール、フリースペース、ホーム
私たち子どもはひとりひとりが個性
エデュケーション(家で過ごし
を持った人間です。しかし、不登校
・学ぶ)など、どのように学び
をしている私たちの多くが、学校に
・育つかを選ぶ権利がある。お
行くことが当たり前という社会の価
となは、学校に行くことが当た
値観の中で、私たちの悩みや思いを、
り前だという考えを子どもに押
十分に理解できない人たちから心無
しつけないでほしい。
い言葉を言われ、傷つけられること
四、安心して休む権利
を経験しています。不登校の私たち
私たちには、安心して休む権利
の権利を伝えるため、すべてのおと
がある。おとなは、学校やその
なたちに向けて私たちは声をあげま
ほかの通うべきとされたところ
す。おとなたち、特に保護者や教師
に、本人の気持ちに反して行か
は、子どもの声に耳を傾け、私たち
せるのではなく、家などの安心
の考えや個々の価値観と、子どもの
できる環境で、ゆっくり過ごす
最善の利益を尊重してください。そ
ことを保障してほしい。
して、共に生きやすい社会を作って
五、ありのままに生きる権利
いきませんか。多くの不登校の子ど
私たちは、ひとりひとり違う人
もや、苦しみながら学校に生き続け
間である。おとなは子どもに対
ている子どもが、一人でも自身に合
して競争に追いたてたり、比較
った生き方や学び方を選べる世の中
して優劣をつけてはならない。
になるように、今日この大会で次の
歩む速度や歩む道は自身で決め
ことを宣言します。
る。
一、
教育への権利
六、差別を受けない権利
私たちには、教育への権利があ
不登校、障がい、成績、能力、
る。学校へ行く、行かないを自
年齢、性別、性格、容姿、国籍、
身で決める権利がある。義務教
家庭事情などを理由とする差別
をしてはならない。
十、対等な人格として認められる権
例えばおとなは、不登校の子ど
利
もと遊ぶと自分の子どもまでも
学校や社会、生活の中で子ども
が不登校に なるという 偏見 か
の権利が活かされるように、お
ら、子ども同士の関係に制限を
となたちは私たちを対等な人格
付けないでほしい。
として認め、いっしょに考えな
七、公的な費用による保障を受ける
ければならない。子どもが自身
権利
の考えや気持ちをありのままに
学校外の学び・育ちを選んだ私
伝えることができる関係、環境
たちにも、学校に行っている子
が必要である。
どもと同じように公的な費用に
十一、不登校をしている私たちの生
よる保障を受ける権利がある。
き方の権利
例えば、フリースクール・フリ
おとなは、不登校をしているわ
ースペースに所属している、小
たしたちの生き方を認めてほし
・中学生と高校生は通学定期券
い。私たちと向き合うことから
が保障されているが、高校に在
不登校を理解してほしい。それ
籍していない子どもたちには保
なしに、私たちの幸せはうまれ
障されていない。すべての子ど
ない。
もが平等に公的費用を受けられ
る社会にしてほしい。
八、暴力から守られ安心して育つ権
利
十二、他者の権利の尊重
私たちは、他者の権利や自由も
尊重します。
十三、子どもの権利を知る権利
私たちには、不登校を理由にし
私たちには、子どもの権利を知
た暴力から守られ、安心して育
る権利がある。国やおとなは子
つ権利がある。おとはな、子ど
どもに対し、子どもの権利を知
もに対し、体罰、虐待、暴力的
る機会を保障しなければならな
な入所・入院などのあらゆる暴
い。子どもの権利が守られてい
力をしてはならない。
るかどうかは、子ども自身か決
九、プライバシーの権利
める。
おとなたちは私たちのプライバ
2009年8月23日全国交流合宿
シーを侵害してはならない。
「ぱおぱお」参加者一同。
例えば、学校へ行くよう説得を
ご静聴ありがとうございました。
するために、教師が家に勝手に
権利と聞くとむずかしいと感じる
押しかけてくることや、時間に
方もいるかもしれないですが、権利
関係なく何度も電話をかけてく
とか人権というのは「生きる力」の
ること、親が教師に家での様子
ことだと思います。権利、人権が守
を話すこともプライバシーの侵
られていない時に、生きる力が感じ
害である。私たち自身に関する
られなくなるのだと思います。この
ことは、必ず意見を聞いてほし
権利を大人も子どもも正しく知るこ
い。
とが大切だと思っています。私は「あ
いちCAP」というところにも所属
と思っています。
しているんですが、CAPというの
権利相談室の仕事は権利侵害が起
は子どもへの暴力防止プログラムを
きた時の救済なのかもしれません
伝えているグループです。子どもた
が、やはり、まず権利が何かがわか
ちに「権利侵害をされたときには安
っていないと権利が侵害されている
心、自信、自由の気持ちが感じられ
のかどうかわからないというところ
なくなるよ。」という話をしながら
があると思うので、そこを市民のみ
権利について話しています。そして、
なさんが理解できるように活動して
「NO、GO、TELL」を伝えて
いただけたらと思っています。
います。「いやな時はいやと言って
デグチ:
「こうなったらいいね」という
いいんだよ。いやと言えない時は逃
イメージということだったので、そ
げてもいい。いやと言えなかったり、
の話をしたいと思います。
逃げることができなくてもそれはあ
親や教師をはじめ支援者が子ども
なたのせいじゃないよ。そしてそう
の本当の姿を評価ができるといいと
いう時には大人に話してね。話をし
思います。一人ひとりの人間ではあ
た大人がもしわかってくれなかった
る一面でしか子どものことを評価で
としたら諦めないで他の大人に話を
きないので、様々な人と繋がって多
してね。」こんなふうに伝えていま
角的に子どもを見て、どんなところ
す。CAPの講座の後には、子ども
に困り感があるか、またどんな時に
たちから話を聞く時間も設けている
成功しているか失敗しやすいかとい
んですが、CAPはその時にしかそ
うようなこともわかるといいと思い
こにいませんので、その子どもたち
ます。一昔前は、三世代での同居だ
の話を聞くのは、まわりの親や先生
とか近所付き合いなど、様々な年代
たちまわりの大人になりますので、
や経験者は子どもの身近にいまし
親や先生たちにも講座を行っていて
た。現在は核家族化が進んで、日常
「子どもの話を聞いてください。」
的に子どものまわりにいる大人とい
ということをお願いしています。ま
うのは、親と教師ぐらいという感じ
わりの大人にも話ができない時には
になっています。子どもも多くの人
「電話相談もあるよ。」ということ
と繋がることでそれぞれの人の違っ
を伝えています。話を聞いてもらっ
たやりとりや考え方に出会うことが
ただけで、気持ちを言葉にできただ
できます。そうすると考え方や経験
けでスッキリすることもたくさんあ
に広がりが出てきます。見聞きした
るので、権利相談室のみなさんには
りとか体験した出来事を新しい場面
これからも子どもたちの話を聞いて
に遭遇した時発揮できるということ
いただきたいと思っています。それ
が、子どもの自立や自由が確立して
からここの場所は「あいあい」がす
いく大事な一歩一歩だと思っていま
ぐ隣にあるので、小さい子どもを持
す。また、子ども自身だけではなく、
つお母さんたちや、小さな子どもた
支援者を含めてまわりの人間も、自
ちにも権利のことを伝えられるよう
分と他人の感じ方やもののとらえ方
な活動があったらいいのではないか
に違いがあること、そして自分自身
を知れるといいと思います。
子どもに社会のルールを教えた
すくなるのではないかと思っていま
す。
り、自分の考えを表現し、また相手
まず一つは、子どもを多角的に見
の考えを聞くことの大切さを日常の
てより正しい評価をすること。二つ
中で学ぶ機会が多くあるといいと思
目は表面的な流れだけではなくて、
います。
言葉以外の表現も読み取ること。三
活動を通して思うのは、特に親御
つ目は子どもも大人も人とのつなが
さんには精神的、体力的な余裕が持
りを多くして、経験を増やすという
てるような支援があるといいと思っ
こと。四つ目は、権利の受け手側の
ています。日常のこと、ご自身のこ
精神的、体力的な余裕を持てるよう
と子どものこと、たくさんのできご
にすること。そして五つ目が個々の
とが絡まっていっぱい、いっぱいに
理解と支援のために発想の引き出し
なっている状態から振り返る時間や
を多く持つということです。現在子
落ち着ける居場所でリフレッシュす
どもと関わっている一挙一動がその
ることで、気持ちの整理や方針を決
子の将来にどんな影響をもたらすの
めるなど子育てへのやる気が出てく
かという視点で考えて、子どもたち
るのではないかと思います。一見関
が現在もそして将来も生きているこ
係ないように見えるけれども、実は
とに喜びを感じられるような、そん
子どもの一番近くで権利を受け取る
な社会になるといいと思っていま
側の状況を整えるということが、子
す。
どもの生きづらさや困り感の解消に
相談室に期待することは三つあり
なるんじゃないかと思っています。
ます。一つめは地域に馴染むことで
また、子どもがたくさん集まる学
す。出張相談をされていると前半で
校のような集団においては、平等や
おっしゃっていましたが、その時に
権利についての目的がズレているの
相談者がいない場合は会場の交流館
ではないかと思うことがあります。
に遊びに来ている子どもたちと話し
子ども一人ひとりに与える量として
たり遊んだりしているということを
の平等ではなくて、例えば手がかか
お聞きしました。そういった機会が
る子、特別な配慮が必要だという子、
あるとふっと「この前さぁ」という
いろんな子がいますが、そういった
感じで相談の内容なんかが出てくる
いろんな子の育ちを支える質の平等
んじゃないかと思います。そんなふ
というか、それぞれの子が生きてい
うに子どものたまり場や相談対象者
くための土台をつくることの平等や
が集まりそうな場所に足を運んでい
権利について考えられるといいと思
ただいて、顔見知りになったり、そ
います。
の土地の文化に馴染むことで、より
私は発達障がいに関わっている経
験から子どもの生き辛さを解消する
相談者の背景が理解できるのではな
いかと思います。
ための支援を考える時、今から話す
二つ目。これは発達障がいのある
五つのことがうまくまわっていく社
人からのお願いでもあるんですが、
会になると、だれもがより暮らしや
少数派の人もいるということを忘れ
ないでほしいということです。私は
解決イメージと言いましたが、そ
当事者からの相談に乗ることもあり
れぞれの方がおっしゃる解決イメー
ます。簡単に解決しそうな相談内容
ジは相当大きい、壮大な計画だなと
であっても、模範的な解決策の提案
思いました。確かにそうした町全体
がかえって相談者を苦しめてしまう
やそれぞれの学校や地域がそうした
ということもあると思います。例え
子どもに対してどういう学校である
ば、一般的には「家族そろって食事
か、どういう地域であるかというこ
をすることがのぞましい」と言われ
とを抜きには子どもたちの幸せを考
ますが、だれかといっしょにごはん
えることができないということはそ
を食べると集中できないという人も
の通りだと思います。私たち「子ど
います。集中できなくて口の中を噛
もの権利相談室」は子どもたちの声
んでしまったり、みんなのペースに
を聞き、子どもたちやその保護者、
合わせることが苦痛で「食べた気が
まわりの大人たちと寄り添って解決
しない」というような相談内容もあ
をいっしょに目指していこうという
ります。いろんな考え方や解決法が
役割を持っています。同時に解決は
あるということを知っていてほしい
私たちだけでは無理なこともよく自
と思います。
覚しています。豊田市は子ども条例
三つ目ですが、各機関や人と連携
の中で「子ども総合計画」というも
して繋がっていくことを大切にして
のを作るということになっていま
ほしいです。一つ一つ丁寧に事案を
す。これは子ども条例の画期的な大
解決、解消していく中で、いろいろ
事な項目です。この子ども総合計画
な機関や人と繋がっていくと思いま
をいかに豊かにしていくのかという
す。そういうことでまた新たな解決
ことが、市民全体の責任でもありま
法が見出せるきっかけであったり、
すが、私たち子ども権利相談室も大
発想が出てくるのではないかと思い
事な役割を担っていると思います。
ます。私たち「個性の強い子どもを
第一回の総合計画はすでに作られた
地域で支える会」の活動の土台とし
んですが、その中で、今日も何度も
ても、子どもの権利に関わることを
お話に出てきている「学ぶ場」の問
しています。たとえばいじめ、虐待、
題ですね。これはもちろんオルタナ
障がい特性の無理解、誤解による不
ティブな選択肢も用意すべきという
利益、障がい者差別などについて、
ことを含みながら、「学ぶ場」を子
必要に応じて相談室とも私たちの会
どもたちが手に入れることを支援し
が連携していって、それぞれの事案
ていくことをぜひ入れたかったので
について意見や情報を交換し合える
すが、残念ながら全体の共通理解に
ような関係を作って活動していけた
は至らず重点項目には入らなかった
らと、相談室への期待というか、私
です。しかし、今日お話をうかがっ
たちの会の希望でもあるんですが、
てみるとやはり、子どもたちが一律
そんなふうに考えています。以上で
な「学ぶ場」ではなくて、それぞれ
す。
の子どもに合った「学ぶ場」、その
大村委員:
ありがとうございました。
「学ぶ場」でのその子に合った支援
を求めているということははっきり
寄せいただければありがたいと思い
してきたかと思います。これからも
ます。
考えていきたいと思いますし、今日
時間になりました。フロアーのみ
NPOのみなさんからお話をうかが
なさんのご意見をもっとお聞きした
いましたが、こうした場を持つのは
かったのですが、先ほども申しまし
私たち初めてで、これから今日はお
たようにこれからこういう場をでき
見えでないNPOの方々とか他にも
るだけ作っていきたいと思いますの
子どもといっしょに活動していらっ
で、ご意見をお寄せいただいて、あ
しゃる方たちといっしょに子どもた
るいはいっしょに解決に向けて「こ
ちのことを考える機会をもっと作っ
うなったらいいね。」ということを
ていきたいし、できればそこに子ど
実現する取り組みに向けて協力し合
もたち自身も入っていっしょに考え
う、連携し合うということを大事に
ていくような相談室の活動を作って
していきたいと思います。
いきたいと思いました。
相談室への期待も非常に高くてう
れしいのですが、そうしたことがで
きるためにもいろいろなご意見をお
本日はありがとうございました。
8、擁護委員からのメッセージ
子どもの権利相談室と権利擁護委員の仕事
―特に「是正の勧告」と「改善の要請」について―
豊田市子どもの権利擁護委員
木全
和巳
1.はじめに
豊田市子ども条例(以下「子ども条例」)が制定されて4年、とよた子どもの権利相談
室(以下「相談室」)を開設して3年目の春を迎えました。豊田市子どもの権利擁護委員
(以下「擁護委員」)として、こうしたエッセイを綴るのも3回目となりました。締め切
りまでに何かを綴らなければならないという機会をいただき、相談室の活動と擁護委員と
しての実践の一年を振り返りながら、擁護委員として考えたいこと、伝えたいことに改め
て思いを巡らせています。この一年の活動を通して、擁護委員として考えなければならな
い課題はいくつかありましたが、今回は本報告書にも概要が報告される放課後児童健全育
成事業(放課後児童クラブ)に関する「自己発意案件」について、擁護委員としての活動
を振り返りながら、相談室と擁護委員の仕事について書いてみます。
この事例を振り返ってみる必要を感じたのは、擁護委員として、豊田市の担当課に対し
て条例に基づいた「改善の要請」を初めて行ったケースだからです。発足から 12 年が経過
して、事例の積み重ねもあり逐条解説も整っている兵庫県川西市と、同じく発足から 10
年の経験があり、逐条解説がある神奈川県川崎市の条例に学びながら振り返りをしてみま
す。
なお、豊田市の擁護委員会議は合議制で行われています。各案件には担当を設けますが、
対応などは合議での確認に基づいて実行されています。川崎市はオンブズパーソン一人ひ
とりの個人責任制です。もちろん、この案件についても合議をしながらすすめてきました
が、ここで書いたことは私の個人的な見解であることをお断りしておきます。
2.「是正の勧告」と「制度などの改善の要請」について
(1)豊田市の条例の場合
子ども条例第 21 条では、「擁護委員の仕事」として(1)「子どもの権利の侵害について、
子ども又はその関係者から相談を受け、その救済と権利の回復のために、助言や支援など
をすること」(2)「権利の侵害を受けている子どもについて、本人又はその関係者から救済
の申立てを受け、事実の調査や関係者間の調整をすること」(3)「子どもが権利の侵害を受
けていると認めるときに、自らの判断で調査すること」(4)「調査や調整の結果、必要と認
めるときに、子どもの権利を侵害したものに対して、是正措置を講ずるよう勧告したり、
制度などの改善を要請したりすること」(5)「勧告や要請を受けたものに対して、是正措置
や制度などの改善の状況などの報告を求めること。また、その内容を申立人などに伝える
こと」とあります。
ここでは特に(4)「調査や調整の結果、必要と認めるときに、子どもの権利を侵害したも
のに対して、是正措置を講ずるよう勧告したり、制度などの改善を要請したりすること」
について考えていきます。
子ども条例第 21 条第 1 項第 4 号の解説(『子どもの権利擁護制度ガイドブック-子ども
条例の解説-』)では、「『是正措置の勧告』とは、擁護委員自身が、権利侵害の関係者
等に対して当該子どもを取巻く環境の悪い点や不都合な点を改める必要性を告げ、場合に
よっては、具体的な案を提示するなどして、適切な措置を講じるように求めることを意味
します。」と、また「『改善を要請』とは、関係者自身によって、今後子どもの権利侵害
に対する救済や回復が適切に図られると判断される場合に、改善の要請を求めることを意
味します。」と書いてあります。
具体的には、この報告書に掲載した別紙通知書(平成 23 年 3 月 14 日)にあるように「放
課後児童クラブの指導員一人ひとりが『育ち学ぶ施設』で働く専門職員として、『子ども
の条例』の内容を学ぶために、しっかりとした研修を実施し、受講させてください。」な
どの3項目の改善の要請を豊田市長に対して行いました。
(2)川西市の条例の場合
川西市の「川西市子どもの人権オンブズパーソン条例」では、第6条「オンブズパーソ
ンの職務」として、「オンブズパーソンは、次に掲げる事項を所掌し、子どもの人権案件
の解決に当たる。(1)子どもの人権侵害の救済に関すること。(2)子どもの人権の擁護及
び人権侵害の防止に関すること。(3)前 2 号に掲げるもののほか、子どもの人権の擁護の
ため必要な制度の改善等の提言に関すること。」と「必要な制度の改善等の提言」を位置
づけています。
『川西市子どもの権利オンブズパーソン条例の解釈と運用』(以下『逐条解説』とする。
引用は『ハンドブック子どもの人権オンブズパーソン』明石書店 2001 年を利用)では、
「本
号が規定する制度改善等は、主として、第1号に定める個別救済、第2号に定める個別擁
護や一般の子どもの人権侵害を図るために、その対応の積み重ねのなかから必要と判断さ
れる制度改善等を意味するもので、特にかれらの背景や要因等に関連する分析や考察を踏
まえて行う職務といえます。」と解説しています。そして、この「制度」については「本
市の子どもに影響を及ぼす公的または社会的な仕組み、きまり等を広く指し、条例や規則、
学校の校則等を含むもの」と広く定義しています。
このように「オンブズパーソンの職務」を定めた後で、改めて第 15 条「勧告、意見表明
等」において、「オンブズパーソンは、子どもの人権案件の調査の結果、擁護及び救済の
必要があると認めるときは、関係する市の機関に対し、是正等の措置を講ずるよう勧告し、
又は是正等申入れ書を提出することができる」、「2
オンブズパーソンは、子どもの人権
案件の調査の結果、制度の見直しの必要があると認めるときは、関係する市の機関に対し、
当該制度の見直し等を図るよう意見表明し、又は改善等申入れ書を提出することができる」
として、「擁護及び救済の必要のための是正等の措置の勧告」と「制度の見直しの必要の
ため意見表明」を厳密に区別しています。これらは、第 15 条第 1 項は主に個人の人権の擁
護と救済に関連して第6条の(1)(2)に、第 15 条第 2 項は制度の改善に関連して(3)に、と
いうかたちで対応をさせています。また、それぞれ書面のみで行う場合は「改善等申入れ」
と表現しています。
『逐条解説』では、「擁護及び救済の必要があると認めるとき」とは「当該子どもの擁
護および救済を図るために、関係する市の機関の行為等を是正または改善する必要がある
とオンブズパーソンが判断する場合」を、「勧告」とは「オンブズパーソン自身が、関係
する市の機関に対して是正または改善の必要性を告げ、場合によっては自ら具体案を提示
するなどして、適切な措置を講ずるよう求めること」であり、「特に緊急を要するもの、
重大性を持つと考えられるもの、あるいは背景や要因が複雑で当事者の対応をみながら勧
告する必要があるものと判断されるもの、等を想定して定め」られています。また、「制
度の見直しの必要があると認めるとき」とは「市の機関が関係する制度等の見直し等を行
うことにより、特定または不特定の子どもの人権の擁護を図ることができるものと、オン
ブズパーソンが判断する場合」を、「意見表明」とは「改善等を必要とする事項について
オンブズパーソンの考えや提案等を、他の者を代行させずに直接に関係する市の機関に表
明し、必要な見直しや改善を促すことを意味」するとあります。加えて「勧告と同様に緊
急を要する案件等においてとられる方法」の他にも、「子どものかかわる施策の総合的か
つ横断的な推進を期待するものであることから、複数の関係する市の機関等が一堂に会す
る場の設定を求め、オンブズパーソンが直接意見表意をするといったケースも想定して定
めたもの」と解説しています。
(3)川崎市の条例の場合
川崎市の「川崎市人権オンブズパーソン条例」では、第 3 条「人権オンブズパーソンの
職務」として「(1)人権侵害に関する相談に応じ、必要な助言及び支援を行うこと。(2)
人権侵害に関する救済の申立て又は自己の発意に基づき、調査、調整、勧告、是正要請等
を行うこと。(3)制度の改善を求めるための意見を表明すること。(4)勧告、意見表明
等の内容を公表すること。(5)人権に関する課題について意見を公表すること」を掲げて
います。川崎市のオンブズパーソンは、子どもの権利の侵害と男女平等にかかわる人権の
侵害の両方を扱っています。
そして、第 19 条「市の機関に対する勧告等」で「人権オンブズパーソンは、調査の結果、
必要があると認めるときは、関係する市の機関に対し、是正等の措置を講ずるよう勧告す
ることができる」「2
人権オンブズパーソンは、調査の結果、必要があると認めるとき
は、関係する市の機関に対し、制度の改善を求めるための意見を表明することができる」
とあります。
この条文について、『川崎市人権オンブズパーソン条例
逐条解説』では「『必要があ
ると認めたとき』とは、人権侵害の原因等が市の機関の業務の執行及び当該業務に関する
職員の行為に違法、又は不当、不適切な点があった場合をいう」、「『是正等』とは、是
正及び改善をいい、『是正』とは、悪い点があれば、これを改め正しくすることであり、
『改善』とは、悪いことを改めて、よくすることをいう」、「『勧告』とは、一定の行為
をすること又はしないことを勧めることをいい、行政指導の範ちゅうに含まれるものであ
る」と解説しています。
(4)比較をしての振り返り
今回の放課後児童クラブの事案に関して振り返ってみます。
平成 22 年4月 21 日に、これまでの当該児童クラブの関係者と関係機関に対する一連の
聞き取りを踏まえて、「とよた子ども権利相談室」の見解として、当該児童クラブで行わ
れていた「罰ゲーム」は、「子ども条例」第 5 条第6項及び第8項に照らして、「子ども
の権利に対する侵害のおそれがある」と判断して、この「指導」を中止するよう文書を出
しました。
この平成 22 年4月 21 日文書では、相談室の「見解」であり、「罰ゲームという指導の
中止」は「要請」という表現にしています。改めて、川西市の条例解説や川崎市の条例解
説と豊田市の条例解説を読み直してみると、この文書は「是正の勧告」の意味をもつもの
であったと考えることができます。「権利侵害のおそれ」ということで「見解」の表明と
「要請」という運用をしましたが、正しくは「是正の勧告」でありました。そして、平成
23 年 3 月 14 日の文書の方は「改善の要請」として整理をすべきでした。
3.今後の課題
川西市のオンブズパーソン中心の条例とは異なり、豊田市の子ども条例は子どもの諸権
利の確認の他、「豊田市子ども会議」や「豊田市子ども総合計画」や「豊田市子どもにや
さしいまちづくり推進会議」などの条項も含んだ総合的な条例になっています。こうした
理由もあって、擁護委員の仕事の内容は今回検討した「是正の勧告」「改善の要請」の区
別も含めて、川西市や川崎市の条例のように厳格な運用ができていません。
他にも十分検討ができませんでしたが、「自己発意」に関してもあいまいなところが残
っています。川西市の条例第 11 号第 3 項では、「オンブズパーソンは、本市内の子どもの
人権に係る事項についての相談又は匿名の擁護及び救済の申立てその他の独自に入手した
情報等が第 6 条各号のいずれかに関するものであると認める場合は、当該情報等に係る調
査を自己の発意により実施することができる」と、「自己の発意」による調査の実施につ
いて明確に記載されています。川崎市の条例第 3 条第 1 項第 2 号でも、「人権侵害に関す
る救済の申立て又は自己の発意に基づき」と、「自己発意」の文言があります。豊田市の
子ども条例には「自己発意」という文言はありません。第 21 条第 1 項第 3 号に「子どもが
権利の侵害を受けていると認めるときに、自らの判断で調査すること」とありますので、
この条文を「自己発意」と読み替えています。
また、今回の放課後児童クラブの事案も含めて、こうした勧告や要請の内容の公表のし
かたについても、プライバシーを守りつつ、市民の方々に状況を知らせつつ、という点で
も検討していく必要があると思います。
加えて、川西市の条例の「改善の要請」では「子どものかかわる施策の総合的かつ横断
的な推進を期待するものであることから、複数の関係する市の機関等が一堂に会する場の
設定を求め、オンブズパーソンが直接意見表意をするといったケースも想定して定めたも
の」とあるので、施策の推進を期待するための動きも求められています。豊田市には子ど
も条例第 27 条に「子どもにやさしいまちづくり推進会議の設置など」が定められている
ので、今回の「改善の要請」は、この「推進会議」にも報告することが必要であると判断
しているところです。
(きまた
かずみ
日本福祉大学
教授)
学童保育の指導と子どもの権利
豊田市子どもの権利擁護委員
大村
惠
はじめに
2010 年度の子どもの権利相談室の案件の中で、学童保育に関わる案件は大きな比重を持
ちました。それは第一に、個別案件ではなく、豊田市全体の学童クラブを「子どもにふさ
わしい」児童福祉施設としてどのように改善していくか、という大きな問いに向かいあう
ことだったからです。そして第二に、豊田市子ども条例にいう「育ち学ぶ施設」として、
条例がめざす施設のあり方、それに向かう施設づくりはどうあるべきか、とりわけ条例第
10 条の内容を具体化するという意味も持っていました。
(育ち学ぶ施設における権利の保障)
第 10 条 育ち学ぶ施設は、子どもにとって最もよいことは何かを第一に考えて、子どもの
年齢や発達に応じた援助や指導をしなければなりません。
2 育ち学ぶ施設は、子どもの気持ちや考えを受け止め、相談に応じ、対話などをしなけれ
ばなりません。
3 育ち学ぶ施設は、子どもを育ち学ぶ施設の一員として認め、その主体的な自治的活動を
支援しなければなりません。
4 育ち学ぶ施設の管理者は、育ち学ぶ施設の職員が子どもと育ち合い、学び合うことがで
きるよう、職場環境の整備や研修の機会の提供などの必要な支援をしなければなりません。
5 育ち学ぶ施設は、いじめを防止するとともに、子どもがいじめについて相談しやすい環
境を整備しなければなりません。また、いじめが発生したときは、関係する子どもにとっ
て最もよいことは何かを第一に考えて対応しなければなりません。
6 育ち学ぶ施設は、子どもに過度なストレスを与えたり、虐待や体罰などをしたりしては
なりません。
7 育ち学ぶ施設、保護者及び子どもは、いじめや虐待、体罰などの暴力を許してはなりま
せん。
もちろん、こうした問いには、唯一の正しい回答が用意されているわけではなく、子ど
も、保護者、地域住民、施設職員、担当行政職員等の関係者が、それぞれの立場で意見を
言い、そのあり方を議論し、模索することが必要です。今回は、その第一歩として、相談
室が意見表明を行ったと理解していただきたいと思います。
案件に対する相談室の取り組みは、本報告書にまとめられています。その過程の中で、
2010 年 11 月 29 日の豊田市学童保育専任指導員研修会において、「子どもの権利と指導の
あり方」という講義を行いました。今後の議論のために、この講義の中で十分にお話しで
きなかった、子どもの権利を尊重した子どもへの指導のあり方を、 学童保育指導員のみな
さんがアンケートに書かれた指導上の懸念や疑問をてがかりに、 考えてみたいと思いま
す。
1.学校と家庭の間
「学校と家庭と生活が違う。クラブは学校と家庭の中間であるので、どうやって指導し
ていくのか等、クラブのあり方に頭を悩ませる。」
子どもにとっての学校は、学習し、教育を受ける場所です。一方、子どもにとっての家
庭は、休息と睡眠、食事等のケア、家族からの愛情によって健康に育てられる場所です。
学童保育は、児童福祉法に基づいて子育て支援事業の一環として行われる放課後児童健全
育成事業です。児童福祉法では、次のように定められています。
この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね十歳未満の
児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に
従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、
その健全な育成を図る事業をいう。(児童福祉法第6条の二第2項)
家庭に代わる遊びと生活の場を用意するものですから、学童保育の指導の質は、家庭的
なものでなければなりません。ただし、それぞれ違う家庭の子どもたちが集まっています
から、子ども集団は社会的な性格を持ちます。それが「クラブは学校と家庭の中間」と表
現されている所以だろうと思います。学校と同じようでは、子どもにとっての休息の場に
はなりません。一方、ケアをしてあげるだけでは、元気のいい子どもたち相手ではたちま
ち収拾がつかなくなることにもなりかねません。学童保育の指導員は、教師でもないし、
保護者でもない、固有の役割を持っています。「頭を悩ませる」のは、これを書かれた方
が、指導員の役割について真剣に考え、子どもたちに誠実に向き合っているからだろうと
推察します。
2.しかること、ほめること
「しかったらいかん、注意してはいかん、ほめてやらなきゃいかん、など、難しい。」
子どもの権利を尊重することは、子どもを甘やかすことだという理解があるようです。
しかし、そうではありません。子どもには、間違った行動に対しては、適切にしかられた
り、注意されたりする権利があります。そうでなければ、子どもは成長することができな
かったり、健康を損なったりしてしまうことになります。大切なことは、どういうことを
大事にしてしかるのか、注意するのか、ということです。たとえば、まず第一に、どんな
行動が不適切なのかという「価値基準」について、第二に、「価値基準」を子どもに正確
に伝える表現について、第三に、しかったり注意したりするときにも人格を尊重すること、
第四に、有形および無形の暴力を用いないことなどについて、指導員個人だけではなく指
導員集団として考え、共有しておく必要があるでしょう。さらに子どもの発達段階や個性
にも配慮する必要がありますし、指導員の間で 厳しくしかる指導役とその後のフォロー役
などの役割分担をしたほうがいいケースもあるでしょう。なるほど、「難しい」問題です。
だからこそ、学童保育指導員の専門的な力量を高めていくことが求められます。
一方、ほめることはどうでしょうか。「ほめて育てる」という子育ての考え方が紹介さ
れる機会が増えています。その背景には、子どもと大人の双方の要因があるように思いま
す。子どもの側から見ると、耐性が低下した、がまんすることができなくなったという評
価があります。それを受けて、「ほめて育てる」ことが大事だという見方と、がまん強さ
を身につけるためにきびしく育てることが大事だという両方の見方があるようです。いず
れにしても、それぞれの子どもの置かれている状況、身につけてきた「生きる力」によっ
て指導の方針が立てられるべきだと思いますが、共通して考えなくてはいけないことは、
自己肯定感の低さの問題です。自己肯定感が育ってなければ、どんな指導も子どもには届
かないおそれがあります。指導が生きるためには、自分の存在やいいところが大人たちに
認められているという実感が重要になります。ほめることは、この自己肯定感を育てるた
めに重要な働きかけになるでしょう。
また、大人の側から見ると、少子化の中で子育てに余裕のない保護者が増えていること
が気になります。さらに、大人自身が忙しい毎日を送っていると、大人の思い通りに行動
しない子どもにいらついたり、つい口と手が出てしまう。しかし、手をかけすぎていては、
子どもは育ちません。何よりも、子どもを思い通りに行動させよう、コントロールしよう
という考え方自体が、子どもの権利を軽んずるおそれを持っています。「ほめて育てる」
ことも、子どもの操縦術としてとらえてしまっては大切なことを見落としてしまいます。
子どもをかけがえのない存在として認め、独立した人格として尊重するためには、時間が
かかっても子どもの中に「生きる力」が育つことをゆったりと見守りながら待つことが必
要になります。それはもちろん放任するということではなく、じっくりと話を聴くこと、
必要なときに抱きしめてあげたり、ぽんと背中をおしてあげたりすることというように、
子どもを理解しようとすると同時に、信頼している、応援しているというメッセージを送
ることが大切だと思います。
3.子どもの自治的な活動を育てる
「次世代から、日課・行事等子どもの意見を取り入れてとよく言われるが、実際それは
難しい。」
豊田市子ども条例では、「育ち学ぶ施設は、子どもを育ち学ぶ施設の一員として認め、
その主体的な自治的活動を支援しなければなりません。」(第 10 条第3項)と定められて
います。子どもたちは、学童保育の「お客さん」ではなく、「主人公」です。
もっとも、豊田市の学童保育は小学校3年生までというところに特有の難しさがありま
す。小学校の中学年は、いわゆるギャングエイジの年頃で、排他的な遊び仲間を作り、自
分たちの世界で遊ぶことに夢中になります。上の世代とも下の世代とも距離をおいて自律
的な集団を作る中で社会性を養う、子どもの成長にとって大切な時期ですが、学童保育の
仲間のみんなをまとめていくには難しい年頃でもあります。そのため、子どもたちで話し
合いをさせようとしても、なかなか話が進まないことはありうると思います。学校におい
て話し合いの技能を育てる指導が十分に行われていない場合は、なおさらそうでしょう。
しかし、では子どもたちは学童保育の生活に自分たちの意見を取り入れることを求めて
いないかといえば、そうではないはずです。自分たちで話し合って、決めて、実行すると
いう自治的な活動の技能を十分に身につけていなくとも、放課後を楽しくすごすためにこ
うだったらいいという願いは持っているはずです。そうした小さな願いを出し合い、少し
ずつその願いを実現していく経験を重ねることで、子どもたちの力は豊かになっていきま
す。はじめから大きな課題を目指すのではなく、まずは同じ学年の話し合いから、まずは
今日の集団遊びの内容を話し合うところから始めて、少しずつ拡げていっていただきたい
と思います。
4.専門的労働者としての指導員研修
以上のような学童保育の実践に関わる悩みを解決していくためには、自分たちの実践に
ついて語り合い、他都市の実践記録を読んで学ぶような、研修が必要です。医療や法律な
どの分野と同じように、教育や福祉においても、専門的労働に従事する者の研修は、権威
的に何かを教えられることではなく、自分の判断や行動が適切であったのかどうかをふり
返り、そこから得たものを次の実践に活かしていくような研修が求められます。
学童保育指導員も、一人ひとり発達段階も個性も異なる子どもへの指導を、その場その
場での自分の判断に基づいて行わなければなりません。条例において、「育ち学ぶ施設の
管理者は、育ち学ぶ施設の職員が子どもと育ち合い、学び合うことができるよう、職場環
境の整備や研修の機会の提供などの必要な支援をしなければなりません。」(第 10 条第4
項)と、職場環境の整備と研修への支援の重要さを指摘して、それを管理者の義務として
位置づけているのはこのためです。
できれば、管理者まかせの研修ではなく、学童保育指導員にとって必要な研修を自ら検
討し、計画し、実施していただくことによって、個人と集団の力量形成のためにより有効
な研修になるのではないかと思います。
(おおむら
めぐみ
愛知教育大学
教授)
相談室での活動をふりかえって
豊田市子どもの権利擁護委員
吹野
憲征
(はじめに)
平成20年10月から平成22年9月末まで、豊田市子どもの権利擁護委員として、相
談室で様々な事例に接してきました。擁護委員としての活動期間は2年間でしたが、豊田
市子ども条例の制定作業にも一部関わり、相談室の開設準備にも関わってきて、本当に色
々な経験をさせていただきました。
子ども条例自体、全国どの自治体でも制定されているものではなく、子どもの権利相談
室を設置している自治体の数は、さらに限られてきます。裁判であれば、過去の判例を調
べる中で、一定の方向性が見えてくることは多いのですが、相談室に寄せられるケースで
は、お手本となるようなものはないに等しいという状態です。ひとつひとつの問題への対
応は、ほんとうに手探りの中で進んできたというのが実感です。
ここでは、相談室での活動を中心にふりかえってみて感じたことを、述べたいと思いま
す。
(悩ましいケース)
相談件数は、開設当初と比べると減り気味かな、という印象でしたが、件数が減って楽
になっていたのかと言えば、そんなことはなく、寄せられる相談には、どのように解決の
方向を見出したらよいのか、考えさせられるものが多かったです(擁護委員を卒業する際、
このケースは最終的にどんな解決に至るのだろう、と気掛かりなケースがいくつかありま
した)。子どもに関する相談は、もともと解決の指針が何かあるという訳ではなく、文字
通りケース・バイ・ケース、関わる当事者が異なれば状況が全く違う、という性質が強い
と思います。そして、難しいケースほど関係者の間の認識や理解のずれは大きく、お互い
に相手の思いや考えが伝わりにくくなっていて、悩ましさは深くなっています。
また、学校に関する相談では、子どもの進路・進級との関係で、相談から限られた時間
で何らかの対応が必要なものもあり、走りながらどう進めようか、と考えるケースもあり
ました。
さらに、相談者と相談室との最初の接点は、電話相談が多いのですが、相談を聴いてこ
れは気になるケースだな、と感じても、そこで止まってしまうというものもありました。
電話相談は、匿名でも可能であり、匿名であるからこそ、他人に打ち明けられるという面
もありますが、気掛かりなケースを如何に面接相談へ移行するか、という問題もなかなか
悩ましいものだと感じました。
(人と人との「つながり」を意識して)
「子どもの権利相談室」「子どもの権利擁護委員」というと、子どもを巡って問題が生
じ、相談が寄せられると、事実関係を調査し、条例に照らして問題点や責任の所在を明ら
かにして、一刀両断に問題を解決するというイメージを持たれるでしょうか?
実際には、相談室のメンバーは、そのようなスタンスで相談業務に当たっている訳では
ありません。過去の相談室の報告書でも述べられているところですが、相談室の活動の中
心は、やはり調整活動にあるのではないか、と思います。
調整活動の重要な点は何だろう、と考えた時に思うのは、お互いの顔が見えなくなって
困っている状態の中で(相手が何を考えているのだろう、どんなことを感じているのだろ
う、ということが、わかりにくくなった状態)、問題に関わっている人々がつながること
ではないか、と感じます。
相談者である子どもや保護者が、相談員や擁護委員と「つながる」。調整活動に入る中
で、相談員や擁護委員が子どもを取り囲む関係者から事情を聴き、意見を交換する中で「つ
ながる」。そして、子どもや保護者と子どもを取り囲む関係者が「つながる」。
「つながる」という言葉だらけになってしまいました。でも、色々な相談事例を思い返
すと、子ども、保護者、子どもが利用する学校や施設の関係者、それに関わる機関のメン
バーが、何を考え、どのような思いでいるのか、問題が起きている状況をどう受け止め、
どのような方向性を望んでいるのか、こうしたことが相互に率直に通じるようになれば、
問題解決の方向性が、何となく浮かんでくるのではないか、そんな思いです。
子どもに関する相談窓口は、民間のものも含めれば様々なものがあります。そのような
中で、とよた子どもの権利相談室の特色は、豊田市が市の条例に基づき設置した独立した
相談室である、という点にあると思います。地域に根ざし、市によって設置されているけ
れども、他の機関からの独立性が保たれ、問題解決にあたっては、子どもにとって、もっ
とも良い解決は何か、どうしたら子どもが笑顔で過ごせるのか、を中心に据える、こうし
た相談室の性格からすれば、子どもに関わる人々の「つながり」ということが、とても大
事なものではないかと考えます。
(おわりに)
2年間の相談室での活動は、長いようであっという間だった気がします。ふりかえって
考えたことも、まだまだ十分にまとまっている訳ではありません(弁護士として今後も子
どもに関する相談を受ける中で、ずっと悩み続けるんだろうなあと思います)。
ただ、豊田市子ども条例は、個別の事案の救済のみを定めるのではなく、子どもにやさ
しいまちづくりの推進が、大きな指針として定められています。人と人とのつながりとい
う視点で考えると、問題が起きた時に対応するだけではなく、出張相談や普段の相談室の
PR活動、権利学習プログラムの実施、活動報告会など、様々な機会を通じて相談室の性
格・役割を理解していただき、「相談室はこんなところ」「相談室にはこんな人がいる」
といったイメージを持っていただければ、と期待しています。そこまで相談室が地域に根
ざし、子どもや保護者からだけではなく、子どもが利用する施設側からも、「ちょっと気
になる問題があるから、相談室に相談してみようか」、そんな関係ができればいいなあ、
と思いつつ、元擁護委員からのメッセージとさせていただきます。
(ふきの
かずゆき
弁護士)
新入りの擁護委員です
豊田市子どもの権利擁護委員
高橋
直紹
昨年10月から、吹野憲征擁護委員から引き継いで擁護委員となりました高橋直紹(た
かはしなおつぐ)と申します。本職は吹野さんと同じく弁護士です。弁護士としては17
年目になります。
愛知県の弁護士の殆どがそうですが、私もいわゆる「町(まち)弁」で、基本的にはど
んな事件でもやります。交通事故、破産、離婚、遺産分割・・・その中で、多少特徴があ
るとすると、子どもの事件と DV(ドメスティックバイオレンス)の事件が比較的多いとい
うことです。子どもの事件は、少年事件もありますし、子どもの虐待事件、学校問題など
いろいろあります。数だけは結構こなしてきたつもりです。そんな関係もあり、吹野さん
からこの豊田市子どもの権利擁護委員を引き受けることになりました。
就任当初はシステム等がすぐに理解できずにとまどうことも多かったのですが、他の擁
護委員や相談員のみなさんに教えてもらいながら、少しずつ慣れていっています。
子どもの事件は、まず、子どもにとって幸せになるような相談・援助をしていく必要が
あります。
しかし、子どもにとって「子どもの幸せ」というのが何なのかは明確でないケースが結
構あります。家族や学校など沢山の人や機関が絡んでいる場合にはなおさらです。私たち
は「子どもの最善の利益」を目指して活動していますが、一体「子どもの最善の利益」と
いうものが何なのか?具体的なケースでは必ずしも明確ではないことも多いです。個々の
具体的ケースにおいて、明確とはなっていない「子どもの最善の利益」とは何なのかを悩
みながら子ども、親御さんたちと一緒に考えていくこと自体が何より大切なのかも知れま
せん。
また、子どもの相談に携わっていると、最終的な結果だけではなく、そのプロセスがと
ても大切だと感じています。できる限り子どもの視線に立ち、子どもの主張や希望を十分
に聴きながら、「子どもの最善の利益」を模索していく・・・それ自体が大人が子どもを
一人の人間として扱うという当然なことなのに忘れがちな大切なことを実践していくこと
なんだろうと思います。特に、虐待やいじめなどを受けてきた子どもにとって、それが第
一のスタートになるのかも知れません。
あと、実際に相談して下さる方は親御さんであることも多いのですが、親御さんの想い
・ニーズと子どもの想い・ニーズとが微妙にずれているケースも沢山あります。「子ども
のため」と言いながら、結果として、親のプライドや想いが全面に出てしまっているので
す。親御さんの想いも丁寧に聴きながら、でも、一番中心に据えるのは「子ども」自身だ
よねということを親御さんと話をしています。子どもの声に耳を傾けるだけで、子ども自
身が自分で考え納得できる方法を見いだすこともあります
愛知県弁護士会所属の弁護士に多田元(ただはじめ)という人がいます。子どもの事件
と医療過誤事件の被害者側しかやらないという変わった(?)方なのですが、多田さんは、
子どもを支援する上で大切にしたいことを3つ挙げられています。一つは、援助者として
子どもを支える、指導はしないということ。二つ目は子どものことは子どもから学ぶ、そ
の相互関係を大切したいということ。三つ目は、関わるプロセスを大切にしたいというこ
とです。これも言うのは易しやるは難しです。でも、いつも頭に置いて置かなければなら
ないもののように感じています。
子どもの権利相談室にはいろいろな相談の電話が掛かってきたり、面接が入っています。
具体的な電話の対応などは相談員のみなさんが担当して下さっています。相談者の話を丁
寧に聴いて一緒に悩まれています。仕事とはいえ頭が下がる思いです。新入りの私も早く
一人前の擁護委員になり、他の擁護委員や相談者のみなさんと一緒に活動できるよう努力
したいと思います。
今一番感じるのは、子どもを支援するネットワークの重要性です。子どもを支援するこ
とは、一人の人間、一つの機関でできることではありません。いろいろな人間、機関が子
どものために連携していくことが必要です。
しかし、子どもの事件を担当していると、各支援機関の置かれている立場などから必ず
しもうまく連携が取れているといえないのではないかと感じることも多々あります。いろ
いろな壁があると思いますが、それぞれの機関の立場も尊重しつつも、「子どもの最善の
利益」という一点で、子どもを支援する機関が繋がっていくことができればいいなぁと思
います。子どもの権利相談室は既存の支援機関より新しい機関で、その存在や役割をまだ
理解してもらっていないところもあるのかも知れません。今後とも私たちのことを知って
もらう努力を続けていきたいと思っています。
(たかはし
なおつぐ
弁護士)
<参考資料>
・豊田市子ども条例
・豊田市子ども条例の一部の施行期日を定める規則
・豊田市子ども規則
・平成22年度
擁護委員・相談員・所長
名簿
豊田市子ども条例
平成19年10月9日
平成19年条例第70号
目次
前文
第1章
総則(第1条~第3条)
第2章
子どもにとって大切な権利(第4条~第8条)
第3章
家庭、育ち学ぶ施設及び地域における権利の保障(第9条~第11条)
第4章
子どもにやさしいまちづくりの推進(第12条~第19条)
第5章
子どもの権利の侵害に対する救済と回復(第20条~第25条)
第6章
子どもに関する施策の推進と検証(第26条~第29条)
第7章
雑則(第30条)
附則
子どもは、生まれながらにして、一人ひとりが独立した人格を持つかけがえのない存在
であり、自らの力で未来を切りひらく主体です。このため、子どもの心と体が大切にされ
なければなりません。子どもと子ども、子どもと大人とが、育ち合い、学び合う関係の中
で、発達が保障され、社会と文化の創造に参加する機会が与えられなければなりません。
大人は、子どもとふれあい、子どもの声を聴き、子どもと共に生きることによって、喜
びと夢を分かち合うことができます。子どもは、地域の宝であり、社会の宝です。保護者
や、子どもにかかわる仕事や活動に従事する大人だけでなく、すべての市民が子どもに対
する責任を負っています。このため、社会全体で、子どもと直接向き合う大人への支援と
子どもが育つ環境づくりを進めなければなりません。
子どもにやさしいまちは、すべての人にとってやさしいまちになります。子どもが夢を
かなえることができるまちは、すべての人にとって希望のあふれるまちになります。私た
ちは、子どもと大人が手をつなぎ、子どもにやさしいまちづくりをめざします。
私たちは、こうした考えのもと、子どもの権利を保障し、子どもにやさしいまちづくり
を進めることを宣言し、ここに豊田市子ども条例を制定します。
第1章
総則
(目的)
第1条
この条例は、日本国憲法と児童の権利に関する条約の理念に基づき、子どもの権
利を保障し、社会全体で子どもの育ちを支え合う仕組みを定めることにより、子どもが
幸せに暮らすことのできるまちを実現することを目的とします。
(定義)
第2条
この条例で「子ども」とは、18歳未満の人をいいます。また、これらの人と等
しく権利を認めることがふさわしい人を含みます。
2
この条例で「育ち学ぶ施設」とは、子どもを対象とする学校教育施設、社会教育施設、
児童福祉施設などをいいます。
3
この条例で「事業者」とは、事業活動を行うすべての人や団体をいいます。
(責務)
第3条
保護者は、子育てについての第一義的責任を持ち、子どもの年齢や発達にふさわ
しい環境の下で子どもを育てなければなりません。
2
市は、保護者が子育てについての第一義的責任を遂行するために必要な支援をしなけ
ればなりません。
3
市、保護者、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子どもにとって最もよいことは何か
を第一に考えて、子どもの権利を保障し、お互いに協力して子どもの育ちを支え合わな
ければなりません。
4
市は、国や他の公共団体などと協力して、市の内外において子どもの権利が保障され
るよう努めなければなりません。
第2章
子どもにとって大切な権利
(子どもの権利と責任)
第4条
子どもは、あらゆるとき、あらゆる場所において、この章に定める権利が特に大
切なものとして保障されます。
2
子どもは、自分の権利を大切にするよう努めなければなりません。
3
子どもは、自分の権利が尊重されるのと同様に、他者の権利を尊重するよう努めなけ
ればなりません。
4
子どもは、子ども同士や大人との間でお互いの権利を尊重し合うことができる力を身
に付けるために必要な支援を受けることができます。
(安心して生きる権利)
第5条
子どもは、安心して生きるために、次のことが保障されます。
(1)命が守られ、かけがえのない存在として大切にされること。
(2)愛情と理解をもってはぐくまれること。
(3)年齢や発達にふさわしい環境の下で生活すること。
(4)平和で安全な環境の下で生活すること。
(5)健康に気を配られ、適切な医療が受けられること。
(6)あらゆる差別や不当な不利益を受けないこと。
(7)困っていることや不安に思っていることを相談すること。
(8)いじめ、虐待、体罰などのあらゆる暴力や過度なストレスから心と体が守られるこ
と。
(自分らしく生きる権利)
第6条
子どもは、自分らしく生きるために、次のことが保障されます。
(1)ありのままの自分が認められること。
(2)個性が尊重され、その個性を伸ばすことについて支援が受けられること。
(3)自分の気持ちや考えを持ち、表明し、それに基づいて行動すること。
(4)自分に関係することを、年齢や発達に応じて自分で決めること。
(5)安心できる場所で休み、自由な時間を持つこと。
(6)安心して過ごすことができる居場所を持つこと。
(7)プライバシーや名誉が守られること。
(豊かに育つ権利)
第7条
子どもは、様々な経験を通して豊かに育つために、次のことが保障されます。
(1)遊ぶこと。
(2)学ぶこと。
(3)保護者と一緒に、食事や会話などの楽しい時間を過ごすこと。
(4)自分の気持ちや考えを聴いてもらうこと。
(5)友だちをつくること。
(6)様々な世代の人々とふれあうこと。
(7)地域や社会の活動に参加すること。
(8)芸術、文化、スポーツなどに親しむこと。
(9)自然に親しむこと。
(10)夢に向かって挑戦し、失敗しても再度挑戦すること。
(参加する権利)
第8条
子どもは、家庭、育ち学ぶ施設、地域社会などに主体的に参加するために、次の
ことが保障されます。
(1)自分の気持ちや考えを表明すること。
(2)表明した自分の気持ちや考えが尊重されること。
(3)年齢や発達にふさわしい活動の機会が用意されること。
(4)年齢や発達に応じて意思決定に参加すること。
(5)必要な情報を大人や社会に求め、集めること。
(6)仲間をつくり、集まること。
第3章
家庭、育ち学ぶ施設及び地域における権利の保障
(家庭における権利の保障)
第9条
保護者は、子どもにとって最もよいことは何かを第一に考えて、子どもの年齢や
発達に応じた援助や指導をしなければなりません。
2
保護者は、子どもの気持ちや考えを受け止め、それにこたえていくとともに、子ども
と十分に話し合わなければなりません。
3
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、保護者が子どもと育ち合い、学び合うことが
できるよう、学習の機会や情報の提供などの必要な支援をしなければなりません。
4
保護者は、子どもに過度なストレスを与えたり、虐待や体罰などをしたりしてはなり
ません。
5
保護者は、たばこや酒類の害から、子どもを保護しなければなりません。
(育ち学ぶ施設における権利の保障)
第10条
育ち学ぶ施設は、子どもにとって最もよいことは何かを第一に考えて、子ども
の年齢や発達に応じた援助や指導をしなければなりません。
2
育ち学ぶ施設は、子どもの気持ちや考えを受け止め、相談に応じ、対話などをしなけ
ればなりません。
3
育ち学ぶ施設は、子どもを育ち学ぶ施設の一員として認め、その主体的な自治的活動
を支援しなければなりません。
4
育ち学ぶ施設の管理者は、育ち学ぶ施設の職員が子どもと育ち合い、学び合うことが
できるよう、職場環境の整備や研修の機会の提供などの必要な支援をしなければなりま
せん。
5
育ち学ぶ施設は、いじめを防止するとともに、子どもがいじめについて相談しやすい
環境を整備しなければなりません。また、いじめが発生したときは、関係する子どもに
とって最もよいことは何かを第一に考えて対応しなければなりません。
6
育ち学ぶ施設は、子どもに過度なストレスを与えたり、虐待や体罰などをしたりして
はなりません。
7
育ち学ぶ施設、保護者及び子どもは、いじめや虐待、体罰などの暴力を許してはなり
ません。
(地域における権利の保障)
第11条
市民及び事業者は、地域の中で、子どもを見守り、子どもが安心して過ごすこ
とができるよう努めなければなりません。
2
市民及び事業者は、子どもを地域社会の一員として認め、その気持ちや考えを受け止
め、対話などをするとともに、地域の活動に子どもの意見を取り入れるよう努めなけれ
ばなりません。
3
市民及び事業者は、子どもに過度なストレスを与えたり、虐待や体罰などをしたりし
てはなりません。
4
市民、事業者、保護者及び子どもは、いじめや虐待、体罰などの暴力を許してはなり
ません。
第4章
子どもにやさしいまちづくりの推進
(子どもの権利の周知と学習支援)
第12条
市は、この条例と子どもの権利について、市民に広く知らせなければなりませ
ん。
2
市は、家庭、育ち学ぶ施設、地域などにおいて、子どもが自分の権利と他者の権利を
学び、お互いの権利を尊重し合うことができるよう支援しなければなりません。
3
市は、市民が子どもの権利について理解を深めることができるよう支援しなければな
りません。
(子育て家庭への支援)
第13条
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子育てをしている家庭に気を配り、保
護者が安心して子育てをすることができるよう支援しなければなりません。
2
市、育ち学ぶ施設及び事業者は、子育てをしている家庭の一人ひとりの保護者に寄り
添って、仕事と子育ての両立を支援する環境づくりに努めなければなりません。
(特別なニーズのある子ども・家庭への支援)
第14条
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、外国籍の子ども、障害のある子ども、
ひとり親家庭の子ども、経済的に困難な家庭の子ども、不登校の子ども、社会的ひきこ
もりの子ども、虐待を受けた子ども、心理的外傷を受けた子ども、非行を犯した子ども
などで、特別なニーズがあると考えられる子どもとその家庭に気を配り、適切な支援を
しなければなりません。
(子どもの虐待の予防などに関する取組)
第15条
2
市は、子どもに対する虐待の予防と早期発見に取り組まなければなりません。
子どもは、自らが虐待を受けたときや虐待を受けていると思われる子どもを発見した
ときは、市や関係機関に相談することができます。
3
育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子どもに気を配るとともに、虐待を受けていると
思われる子どもを発見したときは、直ちに市や関係機関に通報しなければなりません。
4
市は、虐待を受けた子どもを迅速かつ適切に救済するために、関係機関と協力して、
必要な支援をしなければなりません。
(有害・危険な環境からの保護)
第16条
市、保護者、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子どもの健やかな発達を支援
するために、次のものに子どもが接することがないよう取り組まなければなりません。
(1)環境たばこ煙や環境汚染物質などの健康に有害なもの
(2)喫煙、飲酒及び薬物の濫用
(3)売買春、児童ポルノなどの性的搾取や性的虐待
(4)過激な暴力や性などの有害な情報
(5)犯罪の被害や加害
(6)公共施設や交通機関などにおける危険な環境
(子どもの居場所づくりの推進)
第17条
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子どもが安心して過ごすことのできる
居場所づくりに努めなければなりません。
2
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、地域において、子どもが様々な世代の人々と
ふれあうことのできる場や機会の提供に努めなければなりません。
3
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子どもが多様で豊かな体験をすることのでき
る場や機会の提供に努めなければなりません。
4
市は、子どもが自然に親しむことのできる環境の整備に努めなければなりません。
5
市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、居場所づくりなどについて、子どもが気持ち
や考えを表明したり、参加したりする機会を設けるよう努めなければなりません。
(意見表明や参加の促進)
第18条
市は、市政などについて、子どもが気持ちや考えを表明したり、参加したりす
る機会を設けなければなりません。
2
育ち学ぶ施設は、施設の行事や運営などについて、子どもが気持ちや考えを表明した
り、参加したりする機会を設けるよう努めなければなりません。
3
市民及び事業者は、地域の行事や運営などについて、子どもが気持ちや考えを表明し
たり、参加したりする機会を設けるよう努めなければなりません。
4
市、保護者、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、子どもの意見表明や参加を促進する
ために、子どもの気持ちや考えを尊重するとともに、子どもの主体的な活動を奨励し、
支援するよう努めなければなりません。
(子ども会議)
第19条
市は、子どもにやさしいまちづくりに関することについて、子どもの意見を聴
くため、豊田市子ども会議を置きます。
第5章
子どもの権利の侵害に対する救済と回復
(子どもの権利擁護委員の設置など)
第20条
市は、子どもの権利の侵害について、迅速かつ適切に対応し、その救済を図り、
権利の回復を支援するため、豊田市子どもの権利擁護委員(以下「擁護委員」といいま
す。)を置きます。
2
擁護委員は、3人以内とします。
3
擁護委員は、人格に優れ、子どもの権利、福祉、教育などに関して知識や経験のある
人のうちから、市長が選びます。
4
擁護委員の任期は2年とし、補欠者の任期は前任者の残りの期間とします。ただし、
再任も可能です。
5
擁護委員は、任期の満了以外は、その意に反して職を解かれません。ただし、市長は、
擁護委員が心身の故障によりその仕事ができないと判断したときや、擁護委員としてふ
さわしくない行為があると判断したときは、その職を解くことができます。
(擁護委員の仕事)
第21条
擁護委員は、次の仕事を行います。
(1)子どもの権利の侵害について、子ども又はその関係者から相談を受け、その救済と
権利の回復のために、助言や支援などをすること。
(2)権利の侵害を受けている子どもについて、本人又はその関係者から救済の申立てを
受け、事実の調査や関係者間の調整をすること。
(3)子どもが権利の侵害を受けていると認めるときに、自らの判断で調査すること。
(4)調査や調整の結果、必要と認めるときに、子どもの権利を侵害したものに対して、
是正措置を講ずるよう勧告したり、制度などの改善を要請したりすること。
(5)勧告や要請を受けたものに対して、是正措置や制度などの改善の状況などの報告を
求めること。また、その内容を申立人などに伝えること。
2
擁護委員は、その仕事を行うに当たっては、次のことを守らなければなりません。
(1)仕事上知ることができた秘密を漏らさないこと。擁護委員の職を離れた後も同様と
します。
(2)申立人などの人権について十分に気を配ること。
(3)取り扱う内容に応じ、関係機関などと協力して、その仕事を行うこと。
(擁護委員への協力)
第22条
市の機関は、擁護委員の独立性を尊重し、その仕事を積極的に支援しなければ
なりません。
2
保護者、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、擁護委員の仕事に協力するよう努めなけ
ればなりません。
(勧告や要請への対応)
第23条
市の機関は、擁護委員から勧告や要請を受けたときは、速やかに勧告や要請に
応じ、その対応状況などを擁護委員に報告しなければなりません。
2
市の機関以外のものは、擁護委員から勧告や要請を受けたときは、速やかに勧告や要
請に応じ、その対応状況などを擁護委員に報告するよう努めなければなりません。
(勧告や要請などの内容の公表)
第24条
擁護委員は、必要と認めたときは、勧告や要請、その対応状況などの報告の内
容を公表することができます。
2
擁護委員は、勧告や要請、その対応状況などの報告の内容を公表するときは、個人情
報などの保護について十分に気を配らなければなりません。
(活動状況などの報告と公表)
第25条
擁護委員は、毎年の活動状況などを市長に報告し、市民に公表します。
第6章
子どもに関する施策の推進と検証
(子ども総合計画)
第26条
市は、子どもの権利を保障し、子どもにやさしいまちづくりを総合的かつ計画
的に進めるため、豊田市子ども総合計画(以下「子ども総合計画」といいます。)を作
ります。
2
子ども総合計画は、必要に応じて、その内容を見直します。
3
市は、子ども総合計画を作るときや見直すときは、子どもを含めた市民や豊田市子ど
もにやさしいまちづくり推進会議の意見を聴きます。
4
市は、子ども総合計画を作ったときや見直したときは、速やかにその内容を公表しま
す。
(子どもにやさしいまちづくり推進会議の設置など)
第27条
市は、子どもにやさしいまちづくりに関することについて、専門的な意見など
を聴くとともに、子どもに関する施策の実施状況を検証するため、豊田市子どもにやさ
しいまちづくり推進会議(以下「推進会議」といいます。)を置きます。
2
推進会議の委員は、30人以内とします。
3
委員は、子どもの権利、福祉、教育などに関して知識や経験のある人、豊田市子ども
会議の代表者、市民及び事業者のうちから、市長が選びます。
4
委員の任期は2年とし、補欠者の任期は前任者の残りの期間とします。ただし、再任
も可能です。
(推進会議の仕事)
第28条
推進会議は、市長その他の執行機関の求めに応じ、次のことを調査したり、審
議したりします。
(1)子ども総合計画に関すること。
(2)子どもに関する施策の実施状況に関すること。
(3)その他子どもにやさしいまちづくりに関すること。
2
推進会議は、必要があるときは自らの判断で、子どもにやさしいまちづくりに関して、
調査したり、審議したりできます。
3
推進会議は、必要に応じて、委員以外の人に出席を求め、意見を聴くことができます。
(報告、提言など)
第29条
推進会議は、市長その他の執行機関の求めに応じ、又は自らの判断で調査した
り、審議したりしたときは、その結果を市長その他の執行機関に報告し、提言します。
2
市長その他の執行機関は、推進会議から報告や提言を受けたときは、その内容を公表
します。
3
市長その他の執行機関は、推進会議の報告や提言を尊重し、必要な措置をとります。
第7章
雑則
(委任)
第30条
附
この条例に定めるもののほか、必要なことは、市長が別に定めます。
則
この条例は、公布の日から施行します。ただし、第19条並びに第5章及び第6章の規
定は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において規則で定める日から施行
します。
豊田市子ども条例の一部の施行期日を定める規則
平成20年規則第4号
豊田市子ども条例(平成19年条例第70号)附則ただし書に規定する規定のうち、第1
9条及び第6章の規定の施行期日は平成20年6月1日とし、第5章の規定の施行期日は
同年10月1日とする。
豊田市子ども規則
平成20年規則第3号
目次
第1章
総則(第1条・第2条)
第2章
豊田市子ども会議(第3条・第4条)
第3章
豊田市子どもの権利擁護委員(第5条~第16条)
第4章
豊田市子どもにやさしいまちづくり推進会議(第17条~第21条)
第5章
雑則(第22条)
附則
第1章
総則
(趣旨)
第1条
この規則は、豊田市子ども条例(平成19年条例第70号。以下「条例」といい
ます。)第30条の規定に基づき、条例の施行に関し、必要なことを定めます。
(子どもの定義)
第2条
条例第2条第1項に規定するこれらの人と等しく権利を認めることがふさわしい
人とは、年齢が18歳又は19歳の人で、次の学校や施設に在学したり、入所していた
りする人をいいます。
(1)学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する高等学校又は中等教育学校
(2)児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する児童福祉施設
(3)前2号に準ずる学校や施設
第2章
豊田市子ども会議
(委員)
第3条
条例第19条に規定する豊田市子ども会議(以下「子ども会議」といいます。)
の委員は、公募により市長が選びます。
(子ども会議の意見)
第4条
子ども会議は、市長その他の執行機関に対して、子どもにやさしいまちづくりに
関することについて、意見を提出することができます。
2
市長その他の執行機関は、子ども会議から意見の提出を受けたときは、その内容を公
表します。
3
市長その他の執行機関は、子ども会議の意見を尊重し、必要な措置をとります。
第3章
豊田市子どもの権利擁護委員
(兼職などの禁止)
第5条
条例第20条第1項に規定する豊田市子どもの権利擁護委員(以下「擁護委員」
といいます。)は、衆議院議員若しくは参議院議員、地方公共団体の議会の議員若しく
は長又は政党その他の政治団体の役員と兼ねることができません。
2
擁護委員は、市と特別な利害関係にある法人その他の団体の役員と兼ねることができ
ません。
3
擁護委員は、前2項に定めるもののほか、擁護委員の仕事の公平な遂行に支障が生ず
るおそれがある職と兼ねることができません。
(代表擁護委員)
第6条
2
擁護委員のうち1人を代表擁護委員とし、擁護委員の互選により決めます。
代表擁護委員は、擁護委員の会議を招集し、議事を運営するほか、擁護委員に関する
庶務を行います。
3
代表擁護委員に事故があるとき又は代表擁護委員が欠けたときは、代表擁護委員があ
らかじめ指名する擁護委員が、その仕事を行います。
4
その他擁護委員の会議について必要なことは、代表擁護委員が他の擁護委員の意見を
聴いて決めます。
(子どもの権利相談員)
第7条
擁護委員の仕事を補助するため、豊田市子どもの権利相談員(以下「相談員」と
いいます。)を置きます。
2
条例第21条第2項及びこの規則の第5条の規定は、相談員について準用します。
(相談及び救済の申立て)
第8条
何人も、擁護委員に対して、市内に住所を有したり、在勤したり、在学したりす
る子どもの権利の侵害について、文書や口頭により、相談したり、救済を申し立てたり
することができます。
2
相談や救済の申立ての受付は、擁護委員及び相談員が行います。
(救済の申立書など)
第9条
救済の申立て(以下「申立て」といいます。)は、文書による場合は次のことを
記載した申立書を提出し、口頭による場合はこれらのことを述べることとします。
(1)申立人の氏名、年齢、住所及び電話番号
(2)申立人が子どもである場合は、在学する学校、入所している施設又は勤務先の名称
及び所在地
(3)申立ての趣旨
(4)申立ての原因となる権利の侵害があった日
(5)権利の侵害の内容
(6)他の機関への相談などの状況
2
擁護委員及び相談員は、口頭による申立てがあったときは、前項のことを聴き取り、
書面に記録しなければなりません。
(調査)
第10条
擁護委員は、申立てがあった場合は、その申立てについて調査しなければなり
ません。ただし、その申立てが次のいずれかに該当すると認められる場合は、この限り
ではありません。
(1)判決、裁決などにより確定した権利関係に関するとき。
(2)裁判所において係争中の権利関係や行政庁において不服申立ての審理中の権利関係
に関するとき。
(3)議会に請願又は陳情を行っているとき。
(4)申立ての原因となる権利の侵害があった日から3年を経過しているとき。ただし、
正当な理由があるときを除きます。
(5)条例に基づく擁護委員の行為に関するとき。
(6)申立てに重大な偽りがあるとき。
(7)具体的な権利の侵害を含まないとき。
(8)その他擁護委員が調査することが適当でないと認めるとき。
2
擁護委員は、権利の侵害を受けた子ども又はその保護者以外の者から申立てがあった
場合や、条例第21条第1項第3号の規定により調査する場合は、その子ども又は保護
者の同意を得て調査しなければなりません。ただし、その子どもが置かれている状況な
どを考慮し、擁護委員がその必要がないと認めるときは、この限りではありません。
3
擁護委員は、第1項ただし書の規定により調査をしない場合は、理由を付して、申立
人に速やかに通知しなければなりません。
(調査の中止など)
第11条
擁護委員は、調査を開始した後においても、前条第1項のいずれかに該当する
こととなったときその他調査の必要がないと認めるときは、調査を一時中止したり、打
ち切ったりすることができます。
2
擁護委員は、調査を一時中止したり、打ち切ったりしたときは、理由を付して、申立
人や前条第2項の同意を得た者(以下「申立人など」といいます。)に速やかに通知し
なければなりません。
(市の機関に対する調査など)
第12条
擁護委員は、市の機関に対し調査を開始するときは、あらかじめその機関に通
知しなければなりません。
2
擁護委員は、調査のため必要があると認めるときは、子どもの権利の侵害に関する救
済を図るため必要な限度において、市の機関に資料の提出や説明を求めることができま
す。
3
擁護委員は、調査の結果必要があると認めるときは、権利の侵害の是正のための調整
(以下単に「調整」といいます。)をすることができます。
4
擁護委員は、調査や調整の結果について、申立人などに速やかに通知しなければなり
ません。
(市の機関以外のものに対する調査など)
第13条
擁護委員は、調査のため必要があると認めるときは、子どもの権利の侵害に関
する救済を図るため必要な限度において、市の機関以外のものに資料の提出や説明につ
いて協力を求めることができます。
2
擁護委員は、調査の結果必要があると認めるときは、調整について協力を求めること
ができます。
3
擁護委員は、調査や調整の結果について、申立人などに速やかに通知しなければなり
ません。
(身分証明証の提示)
第14条
擁護委員及び相談員は、調査をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、
関係者に提示しなければなりません。
(相談室の設置など)
第15条
子どもの権利の擁護に必要な支援をするため、とよた子どもの権利相談室(以
下「相談室」という。)を豊田市若宮町1丁目57番地1に設置します。
2
相談室は、次に掲げる事務を行います。
(1)擁護委員及び相談員の仕事の補助に関すること。
(2)子どもの権利の侵害に関する相談に関すること。
(3)子どもの権利の救済及び回復の支援に関すること。
(4)条例の普及及び子どもの権利の啓発に関すること。
(5)関係機関及び関係団体との連絡調整に関すること。
(6)前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認めた事務
3
相談室に所長その他の職員を置きます。
4
所長は、次世代育成課長の指示に従い、相談室の事務を管理します。
(相談室の利用日及び利用時間)
第16条
相談室の利用日及び利用時間は、次の表のとおりとします。ただし、12月2
9日から翌年の1月3日までを除きます。
利用日
2
利用時間
日曜日及び土曜日
午前10時から午後6時まで
月曜日、水曜日及び木曜日
午後1時から午後6時まで
金曜日
午後1時から午後8時まで
前項の規定にかかわらず、市長が特に必要があると認めたときは、臨時に利用日又は
利用時間を変更することができます。
第4章
豊田市子どもにやさしいまちづくり推進会議
(会長及び副会長)
第17条
条例第27条第1項に規定する豊田市子どもにやさしいまちづくり推進会議
(以下「推進会議」といいます。)に会長と副会長各1人を置き、委員の互選により決
めます。
2
会長は、推進会議を代表し、会務を総理します。
3
副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき又は会長が欠けたときは、その仕事
を行います。
(会議)
第18条
推進会議の会議は、会長が招集し、会長がその議長となります。
2
推進会議は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができません。
3
推進会議の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長が決めま
す。
(委員)
第19条
条例第27条第3項の規定により市民のうちから選ばれる委員は、公募による
ものとします。
(部会)
第20条
推進会議は、必要に応じて、部会を置くことができます。
2
部会に属する委員は、会長が推進会議の意見を聴いて指名します。
3
部会に部会長を置き、部会に属する委員の互選により決めます。
4
部会長は、部会の会務を総理し、部会の調査審議の経過や結果を推進会議に報告しま
す。
5
部会は、その調査審議に必要があると認めたときは、委員以外の人に出席を求め、説
明や意見を聴くことができます。
6
第18条の規定は、部会の会議について準用します。
(庶務)
第21条
推進会議の庶務は、子ども部次世代育成課において処理します。
第5章
雑則
(委任)
第22条
附
この規則に定めるもののほか、必要なことは、市長が別に定めます。
則
この規則中第2章及び第4章の規定は平成20年6月1日から、第3章の規定は平成2
0年10月1日から、その他の規定は公布の日から施行します。
附
則
(平成20年9月30日規則第69号)
この規則は、平成20年10月1日から施行します。
平成 22 年度
擁護委員・相談員・所長
き ま た
擁護委員
木全
か ず み
和己
名簿
日本福祉大学教授
(代表擁護委員)
平成 20 年 10 月~
おおむら
擁護委員
大村
めぐみ
惠
愛知教育大学教授
平成 20 年 10 月~
ふ き の
擁護委員
吹野
かず ゆき
憲征
弁護士
平成 20 年 10 月~平成 22 年 9 月
たかはし なおつぐ
擁護委員
高橋直紹
弁護士
平成 22 年 10 月~
職名
氏名
職業等
相談員
板倉
治子
市特別任用職員
〃
稲垣
忠彦
〃
〃
岩崎
克司
〃
〃
小川
圭子
〃
〃
小谷
珠恵
〃
〃
船山
宣子
〃
〃
藪押
眞子
〃
所長(事務局職員)
森下
保朗
次世代育成課職員
あとがき
子どもの権利侵害の相談、救済機関として「子どもの権利相談室」が平成20年10月
に開設され、2年6か月が経過しました。
この間、活動内容については、年次ごとに「活動報告書」によって、みなさまに公表し
ております。
平成22年度は、市民のみなさまに、「子どもの権利相談室」をより身近に感じていた
だくための出張相談、各種イベントなどでの広報・周知活動を積極的に行ってきました。
さらに、「子どもの権利擁護委員」の発意による調査・調整活動を行うなど、公平な第
三者機関として、幅広い活動を行うよう努めてきました。
今年3月に起きた東日本大震災により、様々な方面で、多くのみなさまに計り知れない
影響がでてきております。また、子どもたちを取り巻く環境にも、大きな変化が生じてき
ています。
今、このような時期にこそ、未来を担う子どもたちの権利を保障し、幸せに暮らすこと
のできるまちを実現していくことが求められています。
今後も、「子どもの権利相談室」では、子どもにとって最善の利益を求めながら、子ど
もや保護者、関係機関、地域等のみなさまのご理解ご協力が得られ、信頼いただける活動
に努めてまいります。
平成23年6月
とよた子どもの権利相談室
所長
羽根田
吉康
平成 22 年度 とよた子どもの権利相談室 活動報告書
平成 23 年 6 月発行
とよた子どもの権利相談室
〒471-0026
愛知県豊田市若宮町 1-57-1
A 館t-FACE9階
電話 0565-33-9317(代表)
FAX 0565-33-9314
≪子どもスマイルダイヤル≫
相談専用電話
0120-797-931 (フリーダイヤル)
Fly UP