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GPS による測位を利用した地理情報の収集・提供技術

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GPS による測位を利用した地理情報の収集・提供技術
GPS による測位を利用した地理情報の収集・提供技術に関する調査研究
実施期間
平成 15 年度
地理情報部情報普及課 安藤暁史
1.はじめに
近年の携帯電話の進歩には目を見張るものがある。携帯電話が急速に普及したのは 1990 年代中盤に入
ってからで、そのわずかな期間のうちに技術的な進歩を重ねている。当初、携帯電話の通信方式はアナロ
グ方式を採用していたが、
通話時の盗聴を防ぎ、
より高度なサービスに対応するためにデジタル化された。
これが第 1 世代から第 2 世代への移行である。
現在国内で販売・使用されている携帯電話のほとんどがこのデジタル携帯電話である。そして各社新し
いサービスを開始・追加するために次々と新しい携帯電話端末が投入され、またソフトウェアが開発され
ている。1999 年にはiモード、EZWeb、J-Sky といった携帯インターネットサービスが各社から登場し
た。このサービスは、メールソフトと Web ブラウザが携帯電話に搭載されることが可能となって初めて
成立するものであり、携帯電話がコンピュータを内蔵していることを多くの人が実感することとなった。
さらに、パソコンと違って自動的にメールや各種情報を受信できるなど、現在では日常生活に欠かすこと
のできないサービスとして定着をしている。また、デジタルカメラや GPS 受信機の搭載などにより、画
像情報と位置情報を同時に取得できるなど、情報収集能力がさらに高まっている。
本作業では、こうした情報収集端末として進歩した携帯電話に注目した。特に GPS 機能を搭載した携
帯電話端末などを利用し、その各種機能を利用することにより、各種情報に位置情報を付加して収集し、
さらにはリアルタイムでその収集した情報を地理情報システムで処理することにより、これらの情報を防
災等へ有効利用できるようにするための技術開発に必要な情報について、調査・情報収集・研究を行なっ
た。
なお、本研究は、平成 15 年度に開始した国土交通省総合技術開発プロジェクト「リアルタイム災害情
報システムの開発」の研究の一部として、平成 14 年度末∼平成 15 年度初頭にかけて行ったものである。
2.研究内容
本研究では大きく分けて 4 つの調査を行なった。1 つ目は、GPS 機能を搭載し、測位を行なうことので
きる携帯電話端末について、その仕様や機能の調査である。本研究の開始当時には au 製の一部の携帯電
話にのみ搭載されていた GPS 機能について、その仕様、機能、測位の方法、位置精度などの情報を収集
した。また実際に携帯電話を利用して位置精度についての検証実験を行なっている。2 つ目としては、GPS
機能付携帯電話端末により取得された位置情報ならびにそれに付随するデータの仕様に関する調査を行な
った。この調査を行なうことで、今後実際に動作するシステムを構築する際の有用な情報を得ることがで
きた。3 つ目は、携帯電話端末で取得された位置情報等を収集するための仕組み・仕様、そしてそれらを
統合加工し提供するために必要なサーバの仕様についての調査を行なった。これについても、2 つ目と同
様に、実際のシステムを構築する上で重要な情報となるものである。そして最後 4 つ目として、過去に行
なわれた GPS 機能付携帯電話端末を用いた研究事例の調査を行なっている。一部の大学、民間会社等で
試験的に位置情報の取得、配信をおこなっている。これらの研究成果を調査することで、重複して技術開
発を行なう必要の無いように、また効率的に有益な情報を入手できるようにした。
3.得られた成果
携帯電話を利用して位置情報や画像情報を取得し送信する場合、携帯電話端末に別の GPS 受信機やデ
ジタルカメラを搭載し、携帯電話は情報通信機能のみを利用する方法と、携帯電話に搭載されているカメ
ラ機能、測位機能、情報通信機能を利用する方法に分かれる。このうち前者は受信機等の専用の機器が必
要となり、情報収集端末のシステムが複雑になるとともにその形状も大きなものとなってしまう。このた
め携帯電話端末単体を情報収集端末として利用する場合についてより多くの検討を行なっている。
GPS 携帯電話の測位精度についての検討の結果では、携帯電話に搭載されている GPS が行なっている
単独測位という方法では、約 10m の位置精度を有していることがわかった。これは実際に行なった実験
においても同様の結果が得られている。ただしその精度は測位を行なう地点の上空視界の良否に大きく左
右される。また GPS 携帯電話の場合、上空視界の悪い地点においても、基地局の情報を利用して位置情
報を取得できるもののその精度は悪く、最大で 1km ほどの誤差を生じる。防災等で位置情報を利活用す
る上では不十分な精度であるといわざるを得ない。
その他携帯電話端末の仕様、送受信する位置情報ならびにこれに付随するデータの仕様、これらのデー
タを収集するためのサーバの仕様など有益な情報を得ることができた。さらに現在すでに開発されている
GPS 携帯電話を使用する情報収集システムについての調査の結果、比較的簡易にシステムの構築が可能で
あることがわかった。
4.結論
研究の結果、携帯電話端末を用いて位置情報等を収集し、この情報を防災等で利活用することは可能で
あり、多くのメリットがあることが分かった。ただし、位置精度の問題をはじめ、現在携帯電話端末に搭
載されているデジタルカメラ機能の解像度の低さなど、実利用では課題もある。測位の精度については、
現在行なわれている単独測位に代わり、今後 DGPS 方式による測位値の提供が行なわれるようになれば、
測位精度は 1∼2m 程度が期待できる。現行の単独測位方式でも測位計算は通信事業者のサーバにより行
なわれており、利用者は測位結果を通信事業者のサーバから受け取っている。DGPS 方式による測位補正
値を通信事業者のサーバから利用者へ提供し、より高機能となった利用者の携帯電話内で単独測位値へ補
正値を付加することにより、より高精度の測位結果を得ることが可能になるものと思われる。今後普及が
期待される第 3 世代の携帯電話端末であれば十分可能なものとなるであろう。
カメラ機能についても同様、
今後より高解像度の画像を取得できるカメラが開発され搭載されていくものと期待されることから、携帯
電話端末がより情報収集端末として有用なものとなることが期待できる。
本研究では、実際にシステムを構築するための技術的な情報を収集することが主眼であり、これを利用
する環境や状況などの検討は今回行なっていない。今後実際にシステムを構築する上で、そしてそのシス
テムを防災等で有効活用するためには、
こうした点についても今後検討を行なう必要があるものと考える。
参考文献
最新テクノロジー携帯 Java 橋本賢一 ナツメ社
2015 年の情報通信技術 NTT 技術予測研究会
情報通信白書 2003 総務省
リアルタイム測位技術研究発表会資料集 社団法人日本測量協会
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