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special BGM edition 福島の世界的影響 原子力功労者賞

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special BGM edition 福島の世界的影響 原子力功労者賞
special BGM edition
inside WANO
T H E M A G A Z I N E O F T H E W O R L D A S S O C I AT I O N O F N U C L E A R O P E R AT O R S
第19冊
福島の世界的影響
2011年
第3号
8
原子力功労者賞
11
inside
インサイドWANOは、
世界原子力発電事業者協会により、
協会員のために発行されます。
編集者
クレア・ニューウェル
WANOロンドン事務所
contents
E-mail: [email protected]
From the top 3
編集委員
WANO総括事務局長
ジョージ・フェルゲート
アトランタセンター事務局長、
デーブ・ファー
モスクワセンター事務局長、
ミハイル・チュダコフ
パリセンター事務局長、
イグナシオ・アラルース
新WANO総裁の紹介
WANO BGM 2011 4
福島後のWANO: グローバルな原子力安全の強化
Editorial 6
WANOの強化を実現するための新たなコミットメント
東京センター事務局長
白柳 春信
Feature 8
福島の世界的影響
WANOロンドン事務所
Cavendish Court
11–15 Wigmore Street,
London W1U 1PF
United Kingdom
Tel: +44 (0)20 7478 9200
Fax: +44 (0)20 7495 4502
In focus 11
2011年原子力功労者賞
Special Feature 14
新会員
WANOアトランタセンター
700 Galleria Parkway SE
Suite 100
Atlanta, GA 30339-5943
USA
Tel: +1 770 644 8602
Fax: +1 770 644 8505
WANOモスクワセンター
Ferganskaya 25
Moscow 109507
Russia
Tel: +7 495 376 1587
Fax: +7 495 376 0897
WANOパリセンター
8 rue Blaise Pascal
92200 Neuilly-sur-Seine
France
Tel: +33 1 46 40 35 55
Fax: +33 1 46 40 35 53
Dates for the diary
2012年3月5日
-小規模CEO会議、台北
2012年9月24日-26日
-WANO発電所長会議、東京
2013年5月19日-21日
-WANO隔年総会、モスクワ
WANO東京センター
〒201‑8511
東京都狛江市岩戸北2‑11‑1
Tel: +81 (0)3 3480 4809
Fax: +81 (0)3 3480 5379
表紙
隔年総会
歓迎晩餐会
2
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
Copyright © 2011 World Association of Nuclear Operators (WANO). All rights reserved. Not for sale or for commercial use.
from the top
ウラジミール・
アスモーロフ教授
中国の深圳で開催された
第11回隔年総会で
WANO総裁に就任。
新WANO総裁の紹介
こ
のたびWANOの新総裁に選任していた
2011年隔年総会で挨拶するアスモーロフ教授
だいたことは私にとって大変な栄誉です
。皆様の信任に対して感謝を申し上げた
いと思います。ウォルター・マーシャル卿、ニコラ
イ・ルコーニン氏、ウィリアム・リー氏など、
WANOを設立した偉大な人々の名前が思い出され
ます。今日、私はこれらの先人たちとWANOの仲
間の皆様に、この職責で最善を尽くすことを約束し
「ポスト福島委員会
の勧告を受け入れ
てもらう唯一の方法
は、WANOを強
化することです。
WANOは、発電会
社の組合組織です。
私たちは団結した
時ますます強くな
ります。」
ウラジミール・アスモーロフ
WANO総裁
ます。
隔年総会の場では、ジム・エリス氏がWANOの
輝かしい歴史を紹介しました。WANOは、チェル
ノブイリの事故が発生した後の1989年に設立さ
れました。WANOの過去22年間にわたる活動を
振り返ると、その成果は優れたものであり、
WANOの使命は、原子力発電所のパフォーマンス
の改善、良好事例の実施、ピアレビューや技術支援
ミッションの成果などで達成されているということ
ができます。
しかし、このようなあらゆる取り組みにもかかわ
らず、2011年3月11日、福島第一原子力発電
ポスト福島委員会の勧告の基礎となっていると思
われる原則をいくつかご紹介します。
1.安全の基本原則は正しく、いかなる改定も行
ってはならない。
2.過酷事故発生時には、責任感があり強力な発
電会社と、可能な限り迅速な対応ができる十分訓練
を積んだスタッフが、成否の鍵となる。
所の複数の原子炉で事故が起きました。この事象に
3.発電所の事業者は、プラントの安全設計が十
よって、世界の原子力発電産業の頑健性が改めて試
分頑強で、どんな事故が起きてもその進行をくい止
されることになりました。
めることができることを確認しなければならない。
したがって、WANO総裁、WANO議長、
4.最終的には、発電所の事業者が原子力安全の
WANO理事、地域センター事務局長、そして
責任を負うのであって、その責任を果たすために
WANO自身の役割は今日、以前よりもさらに決定
WANOの力を活用すべきである。
的で重要で、強力でなければならないと思います。
このような原則が受け入れられるようにするに
世界の原子力発電産業はこれまで大規模な発展を
は、WANOを強化するほかありません。WANO
遂げてきましたが、今後はそのペースが落ちる可能
は、義務を伴わないクラブのようなものではありま
性があり、それは現実となりつつあります。私たち
せん。WANOは、発電会社の組合組織です。私た
は、福島の事故にもかかわらず、世界的な気候変
ちは団結した時にますます強くなります。私たちの
動、原子力発電フリートの老朽化、原子力発電所を
コミットメントは、団結した時にさらに強化されま
新設する国の需要の高まり、長く原子力発電所を運
す。私たちが団結したとき、私たちの名前は
転してきた国が政治的な理由で、経験豊かな原子力
WANOになるのです。
発電所を廃止する動きなどについて考える必要があ
ります。
WANOの次回隔年総会は2年後、モスクワで開
催される予定です。
私たちは原子力発電所の運転に永く携り、その
私はWANOが、今日よりもさらに経験豊かで、
間、異常な事象や事故、良好事例から多くの教訓を
賢く、パワーアップした姿でモスクワの会議にあら
学んでいます。福島の事故に対応して設置された
われることを確信しています。その過程に皆様と一
WANOポスト福島委員会は、このような教訓に基
緒に関与してゆくのはきっと素晴らしい経験になる
づいて、また、将来同様の事故が発生することを防
ことでしょう。2013年にモスクワでお会いしま
止するために一連の勧告を策定しました。この勧告
しょう。
は、WANOのパフォーマンスを改善するために注
視すべき事項を指摘しています。
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
3
WANO BGM 2011
福島後のWANOグローバルな
原子力安全の強化
W
「WANOの会員は、
原子力発電産業がこの
25年間で直面した最
大の課題に立ち向かう
ため、その票を投じ、
原子力安全に対するコ
ミットメントを増やす
ことを誓いました。」
ローレン・ストリッカー
WANO議長
ANOの歴史でおそらく最も重要であ
隔年総会の主な決定事項
った7ヶ月が経った10月23日から
第一に、WANOピアレビュー及び他のプログラ
25日に、第11回WANO隔年総会
ムの範囲を拡大し、原子力事象の防止のみならず
に出席するため、中国深圳のインターコンチネ
事故発生時にはその影響の緩和に焦点を当てる。
ンタルホテルに600名を超える参加者が集ま
これには既存のWANO活動に緊急時対応と過酷
った。
事故管理の追加が含まれる。
今年の総会のテーマとなった「福島後の
第二に、WANOピアレビューを強化し、発電所
WANO: グローバルな原子力安全の強化」は
ピアレビューの実施頻度を高め、今後6年以内に
会議の緊張感にも明らかで、2011年3月11
各会員組織で本社ピアレビューを実施する。
日に起きた事故の深刻さとそれが原子力発電産業
第三に、WANOの全ての活動とサービスの質と
に与えた影響のため、過去の総会より明らかに厳
整合性を高める。まずWANOの各地域センター
粛な空気が漂っていた。
とロンドン事務所の自己評価に着手する。また、
ローレン・ストリッカーWANO議長は開会挨
WANO緊急時対応手順を確立し、原子力の緊急
拶で来賓を歓迎し、WANOは福島の教訓をすみ
事故が発生した際の役割と責任を明確に定める。
やかに取り入れ、事故後の状況の中でWANOの
さらに、IAEA、WNA、INPOなど、原子
組織をますます強化しなければならないと強調
力産業の他の主要組織と協力し、それぞれの計画
した。
を統合する方針を進める。
隔年総会の場で議論の対象となったもうひとつ
最後に、WANOは、為すべき仕事を達成するた
の重要案件は、10月23日(日曜日)午後の会
めに、4つの地域すべてにおいて経験豊富な人材
議でWANO理事会が承認したWANOポスト福
を増員する。現在の要員レベルは、一ユニットあ
島委員会の勧告事項あった。
たり0.3人、全世界では約140人である。で
WANOの役割の変更やWANOのリソースを
きるだけ早い段階で確実なWANOの要員の増員
増加することに会員の支持を求める決議は、隔年
を開始する予定で、2012末までに一ユニット
総会初日の午後に開催された特別総会で実施され
あたり0.5人、2013年末までに一ユニット
た投票によって、全会一致で可決された。
あたり0.65人、2014年末までには一ユニ
「WANOの会員は、原子力発電産業がこの
25年間で直面した最大の課題に挑むため、原子
ットあたり0.8人又は約415名に増やすこと
を目標とする。
力安全にさらなるコミットメントをすることを、
票を投じて誓いました。」と、ストリッカー氏は
言った。
「ここ深圳でなされたコミットメントが実現す
るかどうかは、WANOと会員相互の取り組みに
かかっています。目の前に大変困難な仕事が待ち
受けていますが、私たちが共通の目的を持つこと
は、原子力発電産業が今回の困難から立ち上が
り、安全性とWANOの使命をあらためて注
視し、真剣に取り組むことになると確信してい
ます。」
トが初臨界に達する前に起動前ピアレビューを
世界的に統一された事故対応戦略の策定、
受けられるようにするため、起動前ピアレビュー
WANOの信頼性の向上などがあり、WANOピ
チームのオフィスを深圳に設けることも決定さ
アレビューの重要な手順の変更、WANOの知名
れた。
ビスの品質改善などが含まれる。
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
る地域、すなわちアジアに、すべての新設プラン
今回の決定には、WANOの活動範囲の拡大、
度の向上、WANOの全てのプロダクツ及びサー
4
また、WANOのリソースを最も必要としてい
天野之弥IAEA事務局長、クリストフ・ド・
マルジュリTOTAL社会長兼CEO、相澤善吾
中国の深圳で開催された
第11回WANO隔年
総会は、WANOと
その会員にとって
歴史的な出来事に
なった。
基調講演を行った天野之弥
IAEA事務局長
最後に、天野氏は、WANOがIAEAのワー
クショップへより積極的に参加するよう呼びか
け、起動前ピアレビューの分野でのWANOの業
績を賞賛した。
TOTALのクリストフ・ド・マルジュリ
CEOは、隔年総会でのスピーチで、メキシコ湾
TOTALのクリストフ・ド・マルジュリ会長兼CEO、
基調講演を行う
岸原油流出事故と福島の事故を比較して、異なる
業種間で専門知識の交換を増やしていくことを提
案した。
「原子力発電産業と石油産業は同じ問題を抱え
ています。」とマルジュリ氏は述べた。
「今日私たちは、1970年代のフランス以
来、最も野心的な原子力発電拡大計画をもつ中国
に集まっています。TOTALには、原子力発電
産業に提供できる経験が沢山あります。また、原
子力発電産業から学ぶことも沢山あります。二つ
の業種間で交流を拡大すべき時が来ています。」
東京電力の相澤副社長は、3月11日の事故の
概要と東京電力の対応、2011年末までに実施
される予定の原子炉の冷温停止に向けたロードマ
ップの進捗について説明した。
また、ジョン・リッチ世界原子力協会
(WNA)会長、ジム・エリスINPO社長兼会
長が「福島事故後の協力とコミュニケーション」
東京電力副社長の3氏が基調講演を行い、福島の
というテーマでセッションを行った。エリス氏
事故に関するそれぞれの見解と将来のための教訓
とリッチ氏は、3月11日の事故後、それぞれ
を語った。
天野氏は、IAEAとWANOの両組織間の協
力を強化していく必要性に触れ、WANOピアレ
の組織における受け止め方と課題について説明
した。
最後に、ウラジミール・アスモーロフ次期
ビューとIAEAのOSARTミッションの調整
WANO総裁が次回の隔年総会へ参加者を招待し
や、両組織の補完的なプログラムの情報共有をさ
たほか、新時代の原子力安全に対するコミットメ
らに進めることが重要であると強調した。
ントを強化することを会員に呼びかけ、隔年総会
「WANOピアレビューはIAEAのミッショ
ンよりずっと頻繁に実施されています。WANO
は、発電事業者が日常的に対処している安全性の
問題について、相当詳しい情報を蓄積していま
す。」と天野氏は言う。「私たちのOSARTミ
ッションには、加盟国政府の招待を受けて実施
されるというメリットがあります。こうした二つ
のアプローチが相互に補完しあい、この分野での
協力を深めていくことは相互に有益であると思い
ます。」
さらに天野氏は、原子力発電産業全体で得た教
訓の恩恵を相互に享受できるよう、WANOが
運転経験を共有し、IAEAが国際報告制度へ
のアクセスを拡大することのメリットについて
述べた。
は閉会した。
WANOポスト福島委員
会メンバー
議長:トム・ミッチェル
社長兼CEO
オンタリオ電力
V. アスモーロフ
第一副総裁
ロスエネルゴアトム
ウィリアム・コーリー
前CEO
ブリティッシュ・エナジー
デューク・パワー
藤江孝夫
理事長
日本原子力技術協会
ジョン・ヘロン
会長兼社長
エンタジー・ニュークリア
V. フラヴィンカ
最高発電責任者
チェコ電力
アラン・カプシス
元WANO総裁、
元オンタリオ・ハイドロCEO
高立
上級副社長
中国広東核工業集団公司
ヨルグ・マイケルズ
執行取締役
ENBW原子力発電会社
ドミニク・ミニエー
副社長
フランス電力公社・
Y. ネダシュコフスキィ
社長
エネルゴアトム
朴賢澤
副社長
韓国水力原子力発電株式会社、
豊松秀己
取締役副社長
関西電力
F. ヴァン・トロアイ
発電担当部長
エレクトラベル
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
5
editorial
WANOの強化を実現するための
新たなコミットメント
今
回の隔年総会は、WANOとその会員
が一堂に会して、今年起きた事象を考
2011年隔年総会で出席者を歓迎する
ローレン・ストリッカー議長
察し、皆で原子力発電産業の将来を決
定する場になりました。隔年総会には35カ国・
地域から152社を代表する600人以上が出席
し、大きな成功をおさめることができました。
このように多数の出席者を迎えたことは、原子
力安全を強化することや、福島事故の後、原子力
「WANOがより
規制当局に近いものに
なるなどと言って
いるのではないことを
理解してください。
WANOの強化とは
WANOの実効性、
信頼性、効率性、
透明性を向上させる
ための措置を
取ることです。」
ローレン・ストリッカー
WANO議長
発電産業につきつけられた新たな要求に対応する
ための、会員のコミットメントを反映していま
す。この記事では、ローレン・ストリッカー
WANO議長とジョージ・フェルゲート総括事務
局長がこの重要な会議の成果を説明します。
最善の防御
隔年総会のハイライトは、特別総会で実施された
ればなりません。こうしたことが実現するのは、
投票でした。WANO会員はこの場で、ポスト福
専門知識を備えた経験豊かなレビューワーが、プ
島委員会の勧告とWANOの強化を支援すること
ラントの運転状況の全貌をレビューチームに提供
を約束しました。
して補完するピアと連携してピアレビューを実施
「WANOの強化」とは何を意味するのだろう
と考えるとき、WANOがより規制当局に近いも
のになるなどと言っているのではないことを覚え
はWANOを改善するために資源を投入すること
を約束しています。会員が期待し、かつWANO
WANOの実効性、信頼性、効率性、透明性を向
が約束しているのは、私たちが資源を賢く利用し
上させるための措置を取ることです。すべての
て理事会が定めたWANOの目標を達成すること
WANO会員がその意味を理解する必要があり
です。今後毎年、WANOがどのように資源を利
ます。
用したかを会員に報告する予定です。
WANOの実効性、信頼性、効率性と
透明性の向上
ん。これは、WANOがプラント固有の情報を規
制当局や一般大衆と共有すると言っているのでは
WANOは実効性を高めなければなりません。す
ありません。世界のどこかで原子力安全について
最後に、WANOは透明でなければなりませ
なわち、原子力安全のパフォーマンスにみられる
議論が行われるときには、WANOも招待される
会員間のギャップを特定し、そのギャップを各会
べきだ、ということです。WANOは事後ではな
員会社の上層部に伝え、問題解決の責任を委ねる
く、事故が起きる前にこのような議論に関わって
のです。それには、私たちがもっと頻繁に会員と
いなければなりません。
接触しなければなりません。そうしてこそ、産業
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
WANOは効率を高める必要があります。会員
ておいてください。WANOの強化とは、
全体にリスクをもたらす可能性のある会員を見つ
6
する場合に限られます。
次のステップ
け出し、適切な手段を講じることができるのです
特別総会で可決された決議では、福島事故後の変
。
更事項は、2015年にアトランタセンターが主
私たちは信頼性を高めなければなりません。そ
催する隔年総会までに実施にするという目標が設
のために、私たちが見つける改善可能分野は重要
定されました。2013年にモスクワで開催され
なものでなければなりません。会員会社の最高経
る隔年総会の時までには、相当の進化が達成され
営責任者にとって価値があり、正確なものでなけ
ているはずです。以下に、WANOが最優先で実
ローレン・ストリッカ
ーWANO議長と
ジョージ・フェルゲート
総括事務局長、
今年の隔年総会の
主要な成果を紹介
ジョージ・フェルゲート氏 先回隔年総会以降のWANO活動の概要を説明
範囲を拡大し、技術支援ミッションの能力を向上
させる必要があります。緊急時対応を対象分野に
追加することが第一のステップです。また、専門
家の数を増員し、レビューワーの訓練を行う必要
があります。これと平行して、オンサイトの燃料
貯蔵と過酷事故管理を検証する方法や、設計上困
難な分野にどう取り組むかについても検討を開始
する予定です。
第四に、アジアで著しく増大する新設の原子力
発電所を支援するため、同地域に起動前ピアレビ
隔年総会参加者、特別総会の結果に拍手を送る
ュー(PSUR)事務所を設置します。予定され
ているレビューを効果的に支援するため、専門家
で構成されるレビューワーのチームを一箇所にま
とめる必要があります。WANOはこうした支援
をする準備ができていなければならず、そうでな
ければ信頼を失うことになります。WANOはこ
のような重要な分野で信頼を失うわけにはいきま
せん。
最後になりますが、第五に、WANOは熟練し
た常勤のピアレビュー要員を増やす必要がありま
す。将来的には、すべてのピアレビューチームの
50%を、WANOの常勤レビューワーか、経験
豊富な長期出向者で構成することを目標としてい
ます。WANOは、できるだけ早くWANOの要
員の増員を開始する予定で、2012末までに1
ユニットあたり0.5人、2013年末までに1
施しようとしている事項の概略を説明します。
第一に、WANOはサービスとプロダクツの
「量」を増やす前に、その「質」に取り組まなけ
ればなりません。全地域センターとロンドン事務
ユニットあたり0.65人、2014年末までに
は1ユニットあたり0.8人あるいは約415名
に増やすことを目指しています。
所を対象に全面的な自己評価を実施して、どこに
新たなコミットメント
問題点があるかを発見し、次に、全センターを各
私たちの行く手には、いくつかの困難な仕事と大
プログラム毎に、ベストパフォーマーの水準に引
きな課題が待ち受けています。しかし、もっとも
き上げることを目標に、ギャップを埋める作業を
重要なことは、原子力発電産業がその存続と将来
行います。WANOは2012年末までに、この
の繁栄のために、変化を必要としていること、そ
5件のレビューを完了し、その結果を公表する予
してWANOの強化が必要であることを認識した
定です。
ことです。WANOはそのようなコミットメント
第二に私たちは、世界のどこかで、もしまた重
「私たちの行く手に
は、いくつかの困難
な仕事と大きな課題
が待ち受けていま
す。しかし、もっと
も重要なことは、原
子力発電産業がその
存続と将来の繁栄の
ために、変化を必
要としていること、
そしてWANOの
強化が必要である
ことを認識したこ
とです。」
ジョージ・フェルゲート
WANO 総括事務局長
を尊重して取り組んでいきます。
大な事象が起きた場合に、WANOが取るべき対
応を記した手順書を準備しているところです。こ
れはWANOの役割と責任、会員との連絡方法に
ついて規定します。さらに難しい課題は、
INPO、WNA、IAEAなど、他の組織と話
し合い、どのようにWANOの計画を他組織の計
画とつなぎ合わせるかということです。
第三に、WANOは、WANOピアレビューの
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
7
feature
福島の世界的影響
福
島の事故は、単に東京電力や日本だけ
隔年総会で講演する陳氏
の事象ではなかった。それは世界中の
すべての原子力発電事業者に甚大な影
響を与えた。今年の隔年総会で最も重要視された
のは、事故の影響と、WANOの4つの地域で取
られた、あるいは今後計画されている重要な対策
についてであった。
EDFエナジー(英)のヴァンサン・ド・リヴ
「重大な原子力事故が放
出する放射能が国境を越
えて広がることを、私た
ちは皆知っています。ま
た、今日のコミュニケー
ションの世界では、正確
であるか否かを問わず、
情報はかつてない速さで
広範囲に伝わります。」
アルボ・ヴオレンマ
WANOモスクワセンター
議長
ァース氏、中国核工業集団公司の陳樺(チェン・
フア)氏、コンツェルン・ロスエネルゴアトム
(露)のオレグ・チェルニコフ氏、エンタジー社
(米)のジョン・ヘロン氏の4名のスピーカーが
2011年3月の事故を踏まえ、事故に対する自
身の見解を述べ、それぞれの地域における原子力
発電産業の将来について考察した。
世界的な国民感情の変化
WANOモスクワセンターの議長を務めるフィン
原子力発電産業にとって基本用件であると唱えて
きました。」とド・リヴァース氏は言った。「パ
会を任されたセッションを福島事故後の一般公衆
ブリック・アクセプタンスを獲得するには、ただ
の原子力に対する感情に着目して開始した。国に
一つの質問、すなわち、安定供給、適切な価格、
よっては、原子力推進派である多数派に若干の影
脱炭素という相関する3つの課題にどのように対
響を及ぼしたにすぎないところもあるが、福島の
応するのかという質問に焦点を当てて、オープン
事故以来、原子力へのグローバルな支持は急激に
で誠実な議論を行うことです。」
この質問に対する英国の答えはというと、ド・
WIN/GIA が実施した世論調査によれば、原子
リヴァース氏によれば、英国はエネルギーの供給
力を支持する層は全世界で25%から6%に減少
には多様性が必要だと考えており、福島の事故に
しました。」と、ヴオレンマ氏は述べた。「ま
もかかわらず、原子力は依然として選択肢のひと
た、以前は原子力を支持する層が国民の過半数を
つであり続けている。
占めていたにもかかわらず、少数派になってし
「アクセプタンス」から「信頼」へ移行するた
まった国もいくつかあります。日本、カナダ、オ
めに、英国内の発電所新設計画で行われている作
ランダなどの国で最も大きな変化が見られま
業を公開するなどのEDFエナジーが取った措置
した。」
のほか、ド・リヴァース氏は、福島の事故への英
ヴオレンマ氏は続けて、福島の事故後、世論や
国の対応について説明した。英国の原子力規制局
政治の反応や傾向は長期的にどのように変化する
は、福島の事故後、英国の原子力発電所の安全審
のだろうという疑問を投げかけた。この疑問は、
査を実施する最高原子力検査官(Chief Nuclear
ヴァンサン・ド・リヴァース氏のスピーチの核心
Inspector)を任命した。
となるポイントであった。
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
「私は長い間、パブリック・アクセプタンスが
ランド、Fortum社のアルボ・ヴオレンマ氏は、司
失われている。
8
「謙虚さとリーダーシップ」を示す「義務」があ
ったと述べた。
最高原子力検査官の最終報告書は2011年
9月に発表され、福島の事故後にも、英国の原子
一般公衆に対する義務
力開発は継続可能であることを明らかにした。ま
ド・リヴァース氏は、福島事故の直後にも、原子
た、この報告書では、既存の原子力発電所の事業
力発電産業が信頼に足ることを証明するために自
者と新設発電所の事業者の両方を対象とした勧告
ら公衆に向かって話しかけ、危機に直面しても
も行われた。
今回の隔年総会の
キーセッションは、
事故の影響、
WANOの4地域で
取られた又は今後
計画されている
重要な対策が
中心テーマとなった。
3月11日の地震と津波発生後の福島第一原子力発電所
ド・リヴァース氏は、勧告に対するEDFエナ
陳氏は、中国の原子力発電施設の安全性を確保
ジーの対応を説明したほか、同社が洪水の研究、
するために行われている取り組みをより広く知っ
緊急時対応計画の分野で追加的な対策をとったこ
てもらうために、もっとオープンなコミュニケー
と、インフラの大規模な破壊が社会に与える影響
ションをする必要があると述べた。陳氏は、現在
を理解することの重要性について説明した。
もそして今後も、原子力安全を最優先事項とする
中国における原子力開発の継続
ことを約束して、スピーチを締め括った。
「CNNCと中国の原子力発電産業は、安全と
次 に 、 中 国 核 工 業 集 団 公 司 (C N N C )の 陳 樺
品質を最優先するという原則にこだわり、運転中
(チェン・フア)氏は、福島の事故後、中国が取
及び建設中の発電所の設計、建設、運転について
っている対応と、中国の発電会社が直面してい
国が定めた原子力安全に関する規格基準を厳格に
る課題について具体的に述べた。陳氏は、中国
順守します。」と、陳氏は述べた。
の既存の14プラントの安全性は現在まで良好
な状態にあるが、このほかに現在27基が建設
中であることから、安全性は依然として中国の
ロスエネルゴアトムのオレグ・チェルニコフ氏
は、WANOモスクワセンターの地域を代表し
福島の事故後、中国政府は適切な対応策を模索
て、自社のプラントを対象として実施した自己評
価について説明した。その結果、全体として、連
するための会議を開いた。この会議では、4つの
邦が課す安全上の要求事項と、ロシアの原子力産
分野で結論が出された。すなわち、全原子力施設
業の規制当局ロステスナゾルがライセンスを認可
を対象に安全検査を実施すること、可能ななかぎ
する際の諸条件は整合性が取れていることが確認
りすみやかに発電事業施設の安全管理を強化する
された。
こと、建設中のプラントに対しては包括的なレビ
しかし、福島の事故後、設計、機器の引渡し、
ューを実施すること、新設計画については入念な
緊急時手順とガイドラインの調整などの分野で追
審査を行うこと、である。
加措置を実施する必要があり、これらはそれぞれ
福島の事故後に、運転中と建設中の両方のプラ
ントに対して実施された安全検査の結果、プラン
ヴァンサン・ド・リヴァース
EDFエナジー社長
一般公衆や規制当局との協力
原子力開発にとって極めて重要な要素であると
述べた。
「私は長い間、パブリ
ック・アクセプタンス
が原子力発電産業にと
って基本用件であると
唱えてきました。それ
を得る鍵は、オープン
で誠実な議論を行うこ
とでした。」
短期、中期および長期的に実施すべき措置に分類
される。
トは確実に安全であると最終的に判明した。しか
チェルニコフ氏は、また、社会との関わり
し、安全性に係る様々な問題に対処する方策は、
について触れ、原子力に対する支持を維持す
福島の事故から得た教訓を考慮したうえ、運転中
るためには、自己評価と規制当局が実施した
のプラントと建設中のプラントの両方に対して実
安全検査の結果の両方を公表することが重要だと
施する予定である。
唱えた。
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
9
feature
チェルニコフ氏、福島の事故に関してWANOモスクワ
センターの視点を披露。
実施できるよう、上級幹部をメンバーとする委員
会を設置したことです。」
ヘロン氏は次に、福島の事故以降に原子力発電
産業が直面するさらなる課題について検証した。
たとえば、天然ガス等の燃料の相対的コスト、ク
リーンエネルギー技術の新しい計画、原子力発電
産業が必要とする設備投資、使用済燃料に係る解
決策の必要性などを取り上げ、これらは原子力発
電産業が将来的に克服しなければならない課題で
「3月に私たちがただ
ちに取った対応は、設
計基準を超える事故、
発電所の停電やプラン
トの溢水を緩和するた
めに取るべき措置を調
査することでした。」
ジョン・ヘロン
エンタジーニュークリアー
会長兼社長
あると指摘した。ヘロン氏は最後に、原子力は一
般社会の支援を必要としているだけでなく、原子
力発電産業の将来を確実なものとするためには経
済もよくならなければならないと締め括った。
隔年総会のすべてのセッションの講演とスライド
「一般公衆によるチェックの一環として、政府
機関、地方公共団体、それに公的、環境、医療、
教育、文化にかかわる団体の代表者400名以上
が、今年の4月と5月の間にロシアの原子力発電
所を訪問しました。」と同氏は言った。「その主
な目的は、原子炉の安全系、セーフティカルチャ
ー、プラントの状態について理解を深めることで
した。」
今後のさらなる課題
次に、エンタジーニュークリアー社のジョン・ヘ
ロン会長兼社長が演壇に上がり、福島の事故が
WANOアトランタセンター地域に与えた影
響をテーマに、米国世論が原子力をどう見ている
かについて話し始めた。ヘロン氏は、ビスコ
ンティー世論調査の結果を紹介した。 それによ
ると、福島の事故後、米国世論の原子力支持はわ
ずかばかり低下したにすぎない。
一般公衆の反応はある程度沈静化したのかもし
れないが、原子力発電産業に及ぼした影響は、地
域ごとにみても世界的にみても甚大である、とヘ
ロン氏は述べた。
「3月に私たちがただちに取った対応は、設計
基準を超える事故、発電所の停電やプラントの溢
水を緩和するために取るべき措置を調査すること
でした。」とヘロン氏は、事故の際に事業者が取
った主な対応を説明した。「ここで重要な点は、
原子力発電産業が新たなイニシアチブを一貫して
10
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
は、WANO会員専用サイトからダウンロードで
きます。
in focus
ローレン・ストリッカー
WANO議長、
原子力発電所の卓越した
運転の追求において
比類なき貢献を示した
2011年の
原子力功労者賞受賞者
8名を祝福する。
2011年WANO
原子力功労者賞
歴
史的な隔年総会を締めくくるのにふさ
ストリッカー氏は言います。「今年の受賞者
わしい総会最終日の夜、原子力安全に
は、際立った実績によって広く功績を認められ
著しい貢献をした8名が、原子力功労
た、真に優れた原子力発電の専門家ばかりです。
者賞受賞者として表彰されました。エスパーニャ
彼らの業績の分野や範囲はそれぞれ異なってお
・ボールルームの壮麗な会場で、ローレン・スト
り、また組織内のポジションも様々ですが、それ
リッカー議長と退任する賀禹(He Yu)WANO総裁
ぞれが原子力安全に対して目覚しい貢献をされま
が賞を授与し、受賞者がそれぞれの分野で成しと
した。」
げた卓越した貢献を讃えました。
ムハマド・アクラム・アシャン
パキスタン原子力委員会
チ
ャシュマ原子力発電所のパフォーマンス改善の可能性を求める不断の取り組みに対して。
また、プラント改良など、パフォーマンス改善に対する解決策を追求する果敢な取り組みに対
して。また、粘り強い努力によって計画外停止を減少させ、所員に困難な状況においても安全
で効率的な解決策を見つけることができるという自信を深めさせた。
アシャン氏は、受賞を知らされたとき大変感動し、自分が技術上達成した成果について、これまでに
ない強い誇りを感じた、と言いました。アシャン氏は、インサイドWANOに対し、これまで自分のキ
ャリアの中で出会った最も優れたアドバイスは、オルダス・ハクスリーという著名な作家の言葉で
「experience is not what happens to you, it is what you do with what happens to you( 経験とは、あな
たに起こることではない。起こることに対してあなたがすることで ある。)」というもので、アシャン
氏は、努力したことの最善のものを日常に取りこもうと努めています。アシャン氏はこの賞を、会社の
展示室に飾るつもりだと述べました。
陳 樺(チェン・フア)
中国核工業集団公司
中
国の原子力発電産業の発展に果たした著しい貢献に対して。また、指導力と原子力発電所の機
器の信頼性について高いパフォーマンスの実現を重視したことに対して。さらに、中国核工業
集団公司のフリート内で強力なセーフティカルチャーを推進するため献身的に努力したことに
ついて。
陳氏は言いました、「原子力功労者賞は、世界の原子力発電所の安全性と信頼性を改善することで原
子力発電産業に普段の努力と貢献をした者を表彰し、称えるものです。この賞を受賞したことは大変な
名誉であると思います。」陳氏は、毎日見ることができるように自分の机の上に賞を飾っておく、とイ
ンサイドWANOに語りました。
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
11
in focus
ジョージ・ハッチャーソン
INPO(米国原子力発電運転協会)
世
界原子力発電事業者協会(WANO)発足に際し、当初の方針と体制を構築する重要な仕事を
し、文字通り創立者の一人としての役割を果たしたことに対して。また、元のWANO調整セ
ンターの構想を生み、設立し、同センターに貢献したこと、WANOとINPOの数々の要職
を務め、専門家として原子力発電産業に継続的に貢献してきたことに対して。
福島後の原子力発電産業の将来について意見を問われて、ハッチャーソン氏がコメントしたのは「私
たちの産業は過去にも重大な課題に直面して、より強化されてきました。私は、私たちの産業を構成し
ている原子力専門家達が福島の事故が提起した諸課題に対処していくものと確信しています。」ハッチ
ャーソン氏は、原子力功労者賞をINPOの自分のオフィスに飾るつもりだと言いました。
マニュエル・イバネス
UNESA(スペイン電気事業者連合会)
ス
ペインの原子力発電所においてWANOプログラムを統合、実施する支援をした目覚しい貢献
に対して。また、国際的な協力と技術交換訪問を積極的に推進したことに対して。また、原子
力発電産業に対して見せた最高レベルのプロフェッショナリズムと献身に対して。
イバネス氏は、過去の原子力功労者賞の授賞式を見てきて、この賞が高いレベルの賞であると考えて
いたとインサイドWANOに言います。「私はこの賞が設けられて以来、何度か隔年総会に出席してい
ます。その価値を評価するには、ただ過去の受賞者の名前と経歴を見れば十分です。」と言いました。
イバネス氏は、自宅の応接室に賞を飾るつもりです。
スーザン・ランダール
エクセロン電力(米国)
原
子力発電所において絶え間なく卓越した運転を追求してきたことに対して。また、エクセロン
社のフリートの中で、幅広く多様な要職についてリーダーシップを発揮したことに対して。ま
た、メンターや原子力発電産業の他の人たちのロールモデルとして、ウーマン・イン・ニュー
クリアやヤング・ジェネレーション・ニュークリア等の組織を通して、著しい貢献をした。
ランダール氏は、原子力功労者賞の受賞を聞いてワクワクしたと言います。新しい世代が、原子力発
電産業の将来の成功の鍵になります、とインサイドWANOに言いました。「原子力産業のリーダーで
ある今の世代が退いていくとき、多彩で有能な次世代のリーダーに生涯をかけた仕事を引き継ぐことが
できるようにするためには、従業員への投資だけが成功をもたらすでしょう。」ランダール氏は賞を
自分のオフィスに飾っておくと言いました。
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INSIDE WANO: V19–NO3–2011
長申(リュー・チャンシェン)
大亜湾原子力発電管理会社(中国)
相
次ぐ建設計画と並行して、原子力発電の卓越した運転の追求に積極的に関与したことに対して
。また、プラントスタッフの知識と技能の重視及びヒューマンエラーの削減を重視したことな
どを含め、原子力安全を重視してきたことに対して。また、パフォーマンスを継続的に改善す
る一手段として、海外のアイデアや慣行をオープンに受け入れたことに対して。
卢氏は、原子力功労者賞の受賞者になったことについて「感激し、名誉に思っています」、そして、
最初の原子力発電会社の発電所長を務めた頃のことを最も誇りに思っている、とインサイドWANOに
言いました。「私の生涯の目標は原子力の平和利用に関わることでした。この30年間における中国の
原子力発電産業の発展に立ち会うことができたことを大変名誉に思います。」と、卢氏は言いました。
賞は自宅の居間に飾っておくそうです。
スタン・ロズマン
クルスコ原子力発電会社(スロヴェニア)
ス
ロヴェニアの原子力発電計画における卓越した水準の確立および維持に優れたリーダーシップ
を発揮したことに対して。また、その努力と専門技術によってロールモデルとなり、その結果
、クルスコ原子力発電所の運転を比類なき成功に導いたことに対して。また、WANO理事
及び、WANOの方向を定めた複数の重要で影響力のあるワーキンググループの議長を務めたことによ
り、WANOのミッションに対し揺るぎない貢献があった。
ロズマン氏は、原子力功労者賞を受賞したことは大変な驚きであった、とインサイドWANOに言い
ました。「私たちの産業には、強力なリーダーシップを持ち、高いプラントパフォーマンスの記録を残
している、大変多くの優れた人々がいます。仲間たちによって選ばれることは大変な栄誉です。」ロズ
マン氏は、会社の会議室に賞を飾るつもりだと言いました。
ニコライ・ソローキン
コンツエルン・ロスエネルゴアトム(ロシア)
ク
ルスコ原子力発電所における卓越したパフォーマンスの追求にリーダーシップを発揮したこと
に対して。また、ロシアのフリートに強力な原子力安全文化を定着、強化する取り組みにあら
われた著しい貢献に対して。また、国際的な原子力安全の推進に継続的に関与した。
ソローキン氏は「この賞の特別な価値は、私たちの困難な作業の価値を知っている同僚によって、候
補者が推薦されることです」と言いました。また、インサイドWANOに対し、WANOの過去は将来
のための重要な接点であると言いました。「WANOの先駆者の一人であるマーシャル卿は、グロー
バルな原子力発電産業を鎖に例えて、鎖全体の強さはその中の最も弱い環によって決まると言いまし
た。福島後、鎖の全ての輪が強化されるべきです。その主導的な役割は、新生WANOが果たすで
しょう。」ソローキン氏は「栄誉にふさわしい場所」に賞を保管するつもりです。
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
13
special feature
新会員
W
も強化しています。
然な選択でした。
ANOは、全ての会員に有効な支援が
「原子力発電産業の仲
間からいろいろな恩恵
を受けることが出来る
ので、CPIはWAN
Oに加入することは必
要だと考えていまし
た。また、私たちの新
しい経験を提供するこ
とで、WANOの仲間
に貢献することもでき
ると考えました。」
宋旭丹 (Song Xudan)
中国電力投資集団公司
(CPI)
出来るよう努めているばかりでなく、
ジョージア電力のヴォーグル発電所やSCANA
14カ国・地域で60以上の原子炉が
のV.C.サマー発電所がAP1000の建設を
建設中であることを踏まえ、初めて原子力発電開
計画していることから、CPIにとっては
発に参入しようとしている企業や国に対する支援
WANOアトランタセンターに加入することが自
福島事故が発生する前、2011年隔年総会に
CPIは、WANOアトランタセンター理事会
は、新規参入企業とそれらがWANOと協力した
やWANO隔年総会に参加したり、WANOアト
経験や今後の展望を重点的に取り上げる予定でし
ランタセンターのシニアバイスプレジデントワー
た。この計画は最終的にキャンセルされることに
クショップのプレゼンテーションを入手できたこ
なりましたが、インサイドWANOの本項では、
となどで、WANOの恩恵を受けています。
新規参入企業である中国電力投資集団公司
また、CPIがWANOに加入してから、オペ
(CPI)とエミレーツ・ニュークリア・エネジー
レーターの基本知識と訓練をテーマにした二件の
社(ENEC)の2社が、WANO会員になった
技術支援ミッションが実施されました。
ことで得られたメリットと、プラントの運転開始
CPIはWANOアトランタセンターに駐在員
が近づきつつあるなかで最も有用であったと思わ
を置くことや、ベンチマーク活動をさらに促進す
れる事項についてそれぞれの見解をご紹介しま
ることを計画しています。
す。両社ともに、原子力発電産業の仲間と出会っ
てネットワークを構築するために、今年深圳で開
催された隔年総会に参加しました。
2009年12月、アラブ首長国連邦(UAE)
のハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤ
ーン大統領は、政令によってエミレーツ・ニュー
中 国 電 力 投 資 集 団 公 司 (C P I : China Power
クリア・エネジー社(ENEC)を設立しました。
Investment Corporation)は、電力、石炭、アルミ
同社は、発電を行い、経済発展を支援し、国内の
ニウム、鉄道、海運を統合する総合エネルギー集
雇用機会創出するUAEの原子力エネルギー計画
団です。水力、火力、原子力、新エネルギー関連
を実施する責任を担っています。ENECは、U
の資産を所有し、中国で原子力発電所を開発、建
AE国内における原子力発電所の設置、所有、運
設及び運転することのできる4企業のうちの1社
転を専業とする会社です。
原子炉建設に自然になじむ
エクサレンスを目指して
エミレーツ・ニュークリア・エネジー社(ENEC)
世界原子力発電事業者協会(WANO)の新規加
は 、 2010年 10月 、 世 界 原 子 力 発 電 事 業
入会員である中国電力投資集団公司(CPI)は、
者協会(WANO)が提供する、特に原子力安全
海陽(ハイヤン)原子力発電所1号機の建設に際
に関するグローバルな知識と最良事例を共有する
し、コンクリートの初打設までにWANOの会員
プラットフォームの恩恵を受けるためWANOに
になることを目指しました。
加入しました。
「原子力発電産業の仲間からいろいろな恩恵を
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
ENECについて
CPIについて
です。
14
海陽発電所ではAP1000を建設しており、
2009年12月に設立されたENECは、ア
受けることが出来るので、CPIはWANOに加
ラブ首長国連邦国内でもっぱら商業用の原子力発
入することは必要だと考えていました。」と、C
電所を設置、所有、運転するための企業であり、
PIの宋旭丹氏は言います。「また、私たちの新
2017年にUAEの送電系に安全で、クリーン
しい経験を提供することで、WANOの仲間に貢
で、信頼性が高く、かつ効率的な電力を送電する
献することもできると考えました。」
という使命を負っています。
会員になった
ENECとCPI、
WANOとの協力に
ついて語る
海陽原子力発電所1号機
ENECは、ワークショップやセミナー、リー
ダーシップと監督者の訓練、運転経験と教訓のレ
ビュー、最良事例情報など、WANOを通じて可
能な限り多くのリソースを利用し、ENECのプ
ログラムの開発と実施に支援を受けてきました。
「野心的なパフォーマンス目標をもつ計画を立
てる際には、多くの課題と優先事項があります
が、強力なセーフティカルチャーを構築し、継続
的な学習と改善へのコミットメントを根付かせる
ことが、私たちの最も重要な優先事項です。」
エミレーツ・ニュークリア・エネジー社(ENEC)
と、マズルーイ氏は言います。
「これはもちろん、確固たる世界レベルの安全
政策と手順によって裏打ちされなければならず、
定期的な訓練と開発の機会によって常に強化する
必要があります。このような目標の達成に、
WANOへの加入は不可欠であり、運転開始
に向けた準備が進むにつれ、WANOは引き続き
ENECの発展をサポートしてくれると思い
ます。」
UAEとENECは、商業用原子力発電計画の
策定にあたって、安全性、効率性及び卓越した運
転に関してベンチマークを設定するようなものに
するとのコミットメントを表明しました。
ENECはこの2年間、計画どおり順調に運営
されています。この計画の副最高原子力責任者で
「商業用原子力発電計
画は新しく急テンポで
進展していますが、
WANOに加入したお
かげで、ENECは、
何十年にもわたる安全
運転の経験をもつ企業
にアクセスすることが
できました。そうした
企業はすべての会員の
利益となるように、自
らの専門知識と経験を
惜しみなく分け与えて
くれます。」
アーマッド・アル・マズルーイ
エミレーツ・ニュークリア・エネジ
ー社
(ENEC)
あるアーマッド・アル・マズルーイ氏は、世界の
原子力発電産業の最良事例や蓄積された経験から
教訓を得なければ、ENECは目標を達成するこ
とは出来ないと言います。
「商業用原子力発電計画は新しく急テンポで進
展していますが、WANOに加入したおかげで、
ENECは、何十年にもわたる安全運転の経験を
もつ企業にアクセスすることができました。そう
した企業はすべての会員の利益となるように、自
らの専門知識と経験を惜しみなく分け与えてくれ
ます。」と、アル・マズルーイ氏は言います。
「WANOへの加入は、アラブ首長国連邦が安全
な原子力エネルギーを導入する過程で、重要な一
里塚でした。」
INSIDE WANO: V19–NO3–2011
15
WANOの使命は
世界中の原子力発電所の運転上の安全性と信頼性を最高レベルに
高めるために、協同でアセスメントやベンチマーキングを行い、
さらに相互支援、情報交換やベストの事例を学習することで、
パフォーマンスの向上を図ることである。
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