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船舶を介した海藻類の越境移動とその早期検出に向けて

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船舶を介した海藻類の越境移動とその早期検出に向けて
Kobe University Repository : Kernel
Title
船舶を介した海藻類の越境移動とその早期検出に向けて
Author(s)
川井, 浩史
Citation
環境技術,41(7):427-432
Issue date
2012-07-20
Resource Type
Journal Article / 学術雑誌論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90001913
Create Date: 2017-03-29
V
o
L
4
1 No.7
2
7
(
2
01
2)
船舶を介した海藻類の越境移動と
その早期検出に向けて
川 井浩史・
キーワード 船体付品 川ラス ト水外来植 越境移入 早 期検
/
l
I
ず移入 Lてしまう場合)と
遠距離を航行する大
要 旨
海洋生物の船舶を介 Lた越境移動は パラス
剖わる部分については IMOによる規
トホに l
制が準備されているが船体付着に関わる部分
体内部のパラストタンクに積む海水)に混入した
についてはさらに拡大することが危恨される
ることによって引き起こされることが多い
海洋外来種のうち梅部類では。代表的なイチイ
うち
プタ
ワカメなどにつ
積載するパラストホは膨大な訟であるが 我が国
いて遺伝子マーカーを用いた起源や移入経路の
j
f
iぃ)資源を輸入し(より軽くなった )
製品を輸
は(
解析が進んでいる
外来種の沿岸への移入を早
出することが多い産業形態であることから
期に検出するため
港湾に際準化 された付着基
で採水し海外で枚出されるパラスト水の量が多く
ミル
タマハハキモク
板を用いたモニタリングを行い
分布情報をず
また移入極の
タベース化する試みがなされて
型船舶のパラストホ(船体の浮力調節のために船
り 船体表而に着生する生物が寄港先で散布され
船舶を介した移入については!大型船舶が
t
日本
なるため,海洋外来生物の輸出国(つ )と Lて世界
各国から問題視されている
このようなパラスト
ホに起因する海坪生物の起境移動に r~1
いる
この
Lては 国
際海事機関 (IMO)によりいわゆるパラスト木管
理条約が策定され発効待ちの状態にある
1 はじ め に
民耕や遠距離交易の発達以降
きまざまな動他
これ
はハラストホを寄港先で放出する際に
パラスト
水中に含まれる生物を殺滅するなどして
i
タンク
物が人間によって本来の生育地から速く離れた場
外に生きた生物が放出されないようにするための
所へ運ばれて飼育栽培され
規制である
またそれらが野生
一方。船体に付着寸る生物の移動を
化 Lて定着ー拡散し 二次的に分布を広げてきた
M Oによる検討が行
防ぐための対策についても I
このような人間活動に伴う生物の移動と分布拡大
われているが
は}近年の農水産業の高度化や。物流移動のグロー
I
Jの中にあるのに対 Lて 船体表面
う│引鎖的な空 I
パル化高速化によって加速度的に増加し
は開放的で。船体付着生物は常時海と接 Lている
外来
パラストホがパラストタンクとい
種として移入先で Lばしば深刻な生態系の撹乱を
ことから
引き起こしている
ト的にも困難であることが干想される
このような外来種の出現や外
来種が引き起こす生態系の変化と環境問題は
陸
線本的な対策をとるのは技術的
}方
コス
発
展途上 国における海運の活発化と航路の多様化
践では目につきやすく。比較的理解されているが
や 北極海の結氷の減生に伴う北極海航路の実用
海の生態系についての知見は少ない
化などによって
海洋生物の越境移入は
水産養殖などのための
物の越境移動は深刻化することが危倶される
意図的な移入 (
導入)あるいは非意図的な移入(意
図的に導入された生物に混入するなどして意図せ
船体付者生物に由来する海洋生
きて。外来種による生態系の撹乱や農水産業に
おける被害を防ぐためには
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本神 戸 大 学 自 然 科 学 系 先 端 融 合 研 究 環 内 海 域 環 境 教 育 研 究 七 ン タ
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4
2
7
言うまでもなく可能
環境技術
2
8
な限り移入自体を干防寸ることが望ましい
しか
が代表的なものとされている
このうち南太平洋
し 移入定着してしまった場合には可能な限り
早期に検出して 駆除寸ることでそれ以上の繁殖
原産と考えられているイチイズタ以外の 3種
や二次的な拡散を防ぐことが重要であるしかし
日本を吉む束アジア原産の植である
なわちタマハハキモク
ワカメ
l
す
ミルはいずれも
海
このうちタ 7 ハハキモクは 1
9
4
0
5
0
年代に養殖
域についてはさらに困難な場合が多いたとえば
ある海域で これまで知られていなかった生物種
を目的と Lて日本から導入された牡帽の推 買に着
生していたものが北米の太平洋沿岸に移入 定
(
外来磁りが発見された場合
着したとされている
これらのことは陸域であっても容易ではなく
その般類がどの
1
9
7
0
年代には直接
その後
程度の量,どれくらいの広がりをも って生育して
日本から。あるいは北米に定着していたものが。
いるのかを明らかにし
再び牡械の導入に伴って地中海や北海の沿岸に定
効果的な駆除を行うこと
は容易ではない また さらなる移入を防止する
ため その援類がどのようなルートでどこから侵
着し その後ヨ
考えられている
入したのかを明らかにするのは困難な場合が多
ロッパにタマハ山キモク同様。牡蛾の導入に伴っ
く!時にはそもそもそこに生息していなかったか
て移入 し 今 で はタマノ、ハキモク同様ヨーロァパ
どうかすらはっきりしないことがある これは海
の中の生態系が 自につきにくく また研究の対卑
の広い範囲に分布を広げている
1
9
8
0
年代以降は後述するように
としにくいだけではなく
米太平洋沿岸
港湾部や養殖場など開
発によって在来生物の生態系が脆弱化し
ロッパの広い範囲に広がったと
方 ワカメは 1
9
7
0
年代にヨー
また ワカメは
オセアニア 北
アルゼンチノなどにも移入
定着
L.]
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e
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e
dと Lて知られていた
外来海
洋生物の移入が起こりやすくなっている場所の多
1
9
7
0
年代以前から
ミルは東アジア原産だが
くが市民のみならず研究者でも立ち入りにくい
北米大西洋沿岸ほかの広い範囲で
場所であることにも起因している このため 海
の生物ではどのように駆除し拡散を防ぐかとい
知られ (
現地では D
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dma
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sf
i
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sとも呼ば
れている ) 砂浜などに大量に打ち上げられ環境
う課題以前に
問題を引き起こ Lてきた
どのような方法で移入
定着を早
i
外来種と して
イチイズタは後述する
期に検出するか また外来極と考えられる生物の
起源 (
あるいは在来様である場合を含め 本来の
ように 1
9
8
0
年代に水族館で展示用に栽培されて
いたものが野生化 L 地中海の広い範囲に広がり
分布域) を明らかにする方法を確立することが喫
その後カリフォルニ 7などにも拡散している
緊の課題である
この問題に 1
制連 Lて
のほか。地中海を中心とするヨーロ ァパには 3
0
観
こ
を超える日本に由来すると考えられる外来海藻が
この数年筆者の研究グ
世界全体では約3
∞績が外来海
ループでは多くの共同研究者とともに!大型船舶
報告されており
を介 Lて越境移動するさまざまな海洋生物の動態
藻として認識されている (
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h
の解析や海洋外来生物の起源や移入経路の推定!
港湾における付着海洋生物の移入の早期検出 ま
2
∞7
) しかし興味漂いことに日本産(あるい
たは沿岸の移入種のデータベース構築などの研究
殖している例は非常に多いが
に燐わってきた
日本に移入
ここでは
来海藻類の移入起源の解明と
は東アジア産)の海藻類が外国で外来種として繁
そのうち代表的な外
沿岸海洋外来種の
その逆に海外から
拡大したことが明らかな海藻類は非
常 に 少 な い こ れ は 多 く の=枚貝 節足動物な
とが日本に移入 Lている現状とやや様相を異にす
る なぜ海藻類的日本への移入が少ないかについ
早期検出に附わる話題について紹介する
E 代表的な外来種としての海藻類
ては
外来種になった海藻類は !その移入先での分布
水産業
の特徴
海速などに附わる日本の産業形態
日本周辺の海藻他生の:O:'
sさ。沿岸海域
域の広がりや生態系や水産業などへの影響という
の環境変動の大きさなどに起因するなど
観点から見ると。タマハハキモク(褐藻ホノダワ
かの要因が考えられるが確かなところはいまだ
ラ類) ワカメ(褐藻コンブ類) ミルのー亜種 (
緑
不明である
藻ミル類),イチイズタ(緑藻イワズタ類)など
-4
2
8
いくつ
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4
1 NO.7
3
2
9
(
2
0
1
2)
遺伝 子 マ ー カ ー に よ る 移 入 集 団 の 起源 と
移入経路の推定
前述のように 多くの海洋生物。特に海溌類の
場合はその分布情報または形態の情報だけから在
来種であるか外来穫であるかを見極め,またその
原産地や移入経路を推定することは難しい場合が
多い
一方 近年の分子生物学的研究手法の一般
分布を広げることが危倶されている
日本でも}
水族館から自然海岸に短期間ではあるが流出 した
ことから
ミル
その移入が危倶されている
ミル(海松)Codiumf
r
a
g
i
l
eは,ワカメ (
若
布 和布) ノリ(海苔)とともに日本では万葉
の昔からなじみの探い海藻である ミルにはいく
つかの亜種で区別される種類があることが知られ
て い た が 東 ア ジ ア 原 産 の ー 亜 種 (Codiwn
海藻類における研究
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s)が大西洋。南半球を含
む広い海域で外来海海として大繁殖し 環境問題
例は 前述の海藻類ではイチイズタの例が最も古
く その後その他の外来海藻類についても研究結
を引き起こしてきた 特に 沿岸の富栄養化など
に伴い 大量に繁殖した藻体が砂浜などに打ち上
果が報告され
げられ!腐敗することで悲臭を放ったり
化により。遺伝子マーカ ーを用いてこれらの問題
を解析する例が増えてきた
I
移入の起源や経路が明らかにな っ
I
周辺の
てきた
生物相に影響を与え
イチイズタ イチイズタ C
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げ
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aは
,
本来は亜熱帯から酷帯に分布する種で 地中海の
た このような現象は同じ緑藻のアオサ類でも見
られるが。植物プラノクトノやヤコウチユウの大
うレなくとも北岸には分布しないとされていた
し
繁殖で海が赤〈見える赤潮 (
r
e
dt
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d
e)になそ'ら
かし 1
9
8
4
年に地中海中部のモナコの海岸で初め
えてグリーンタイド (
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e
e
nt
i
d
e
) とも呼ばれて
いる
てその生育が報告され
発見場所の立地や形態学
展示されていた本種
このようなミルの移入と環境問題は少なくとも
定着したとの考え方が
モナコの海岸か勺報告
数十年前から知られていたが, ミルもイチイズタ
同様その形態変異が大きいことかりその分類や起
的な特徴から水族館で栽培
が排水に混じって流出し
示 された これに対
v
c
大きな環境問題とな ってき
された極はC.m
e
x
i
c
a
叩という日)
1
の極であり,ス
源についてはさまざまな説が出されていた
エズ運河経由で紅海から分布を拡大 Lてきたいわ
ゆるレセップス径と Lて以前から池中海の他の海
に対して 比較的最近 博物館などに収蔵されて
いる古い乾燥標本を用いて遺伝子マーカーを用い
域に分布していたものであるという反論がなされ
た絹Z
量的な解析がなされ
た (
C
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olme
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.
l1
9
9
5) しか Lイチイズタの
仲間は成育環境によって形態が著しく変わること
i
∞年以上前には起こ って おり
から 形態からの分類 ー同定が難しく またこれ
らの穫の亜熱帯 軌帯域での分布に閲する情報も
I
極めて限られていたことから
この論争について
はなかなか決着がつかなかった
その後,一連の遺伝子マーカーを用いた研究
これ
その移入が少なくとも
i
アジア原産の亜
種がヨーロ yミ
ノ チ').オセアニア 北アフリカ
西 岸 南 ア フ リ カ カナダ大西洋沿岸,カリフオ
I
t
ルニアなど世界の広い範囲に拡散したことが明ら
かにされた (
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ne
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l2
ぽ)8;図 1)すなわち,
各地で過去に採集されたさく業(乾燥)標本から
DNAを抽出 して
その塩基配列に基づいて詳細
(
O
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8
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9
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∞2)が報告され この極は C m
出 l
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mw
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L2
ではなく CI
叩i
f
o
l
i
aであり 本種の中でも水族
る系統だけが自然の分布とは考えにくい極めて広
い分布を示 L ヨ ロァパには少なくとも 1
8
4
5
年
館で栽培されているものと問じ系統であることが
明らかにされた この栽培株はおそらくオースト
には移入していたと結論されている これはミル
が港ではプイや浮き桟橋などに頻繁に着生してい
ラリア北部周辺を原産地とするのではとの考えが
る海藻である ことから
出されている
代以降
この種績については
路は明らかになったが
I
その移入経
その後も地中海の広い範
囲に拡散L,.生態系や水産業に大きな影響を与え
てきたほか カリフォルニアにも侵入 L さらに
-4
泊
な分類を行った結果
東アジア原産の本亜種のあ
1
5
世紀に始まる大航海時
船体あるいは当時用いられていた船底の
石のパラストなどに付着して分布を広げたものと
考えられる
ワカメ
ワカメ U
l
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aは 円 本 韓
環境技術
との考え方が不されていた
一
-鰍リ
アカ マ
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セ平アド
オ太
F
大口
。酉ッ浮
ルー プは
そ こで筆者の研究 グ
遺 伝子マーカーを用いてまず日本周辺
の ワ カ メ の 各 地 域 集 団 の 遺 伝 的 な 多様性 を調査
し 一定の地域性が見いだされることを 明 らかに
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l2 6 川 井 ら2
01
1) すなわち
ワカメは原産地ではその遺伝子型と分布から, 1)
北海道と東北の太平洋 沿岸
かけての太平洋沿岸
沿岸 ,4) 韓国
2)本州から九州に
3)瀬戸内海から日本海の
中国の沿岸
の 4つの地成タイ
プに大別する こ とができた (
図
(
Pr
o
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nら(
2
曲8
)
の聞を簡略化して改置)
2) 次いで移 入
先の海外のさ まざまな 地 占から採集 された個体に
ome
n
t
回初 d
e
s
)
図 1 ミルのー亜種 ( Codium)何 ~i/e spp. l
の分子革研解析結果
ニの雄の重値 またはそれよ
り 下位の分額鮮の集団はそれぞれ閲
有の分布成を持っているが 1つの系統どけは党界中に分布し
人為的な拡散の結果でゐると解釈され る これち の解析のもと
叩年以上刷に採集さ れており 移入がそれ以前
になった機本は i
に引 き起こ された こ
と を示している
つ いてもその遺伝子型 を調べ。その個体が属する
系統 の本来の生育場所 (
移入の起源) を推定した
とこ ろ
例 え ば同 じオーストラリアの集団でもタ
スマ ニアとピクトリア州では由来が異なり
前者
は 日本 海 または瀬芦内海沿岸に由来する可能性が
高 いのに 対 し 後 者 は 本 来 日 本 に は 分 布 せ ず 韓
国の周辺を原産地とする海藻であり。前述し た よ
国ま たは中 国に由来する 系統である ことが明らか
97
0
年代に水産目的の非意図的移入により
うに 1
にな った
ヨーロッパに移入定着した
一方
降 に。オーストラリア (タスマニア
I
同様に
ニュ ー ジー ラ ンド
アルゼン
1
9
8
0年代以
チンの集団 も韓 国 または中国に由来する可能性が
ヒクト リア
示唆され守近接する これらの海践 で三次的な移入
州 ), ニ ュ ー ジ ー ラ /ド。 カ リ フ 寸 ル ニ ア 。 ア ル
が起こ った可能性も考えられた
ゼン チ ンなどにあらたに移入
定着したことが報
ルニアの集団は本州の太平洋沿岸が起源であろう
これ ら に つ い て は そ の 移 入 経 路 が
と考え られ た が 近 接 す る メ キ ン コ で は北 日本ま
告されたが
は っ き りしないものであった
たは韓国
このため 日本から
大型船舶のパラストホを 介 して
中国のタイプであり
方}カ リフォ
その起源が異 去
るこ とが示 さ れ て い た が 最 近 に な っ て メキシコ
移入が起 こった
特
北日本タイプ, -h
(
川祢ら(
2
01
1
1の凶を改変)
図 2 ワカメの日本とその周辺の地域軍国の遺伝子型と世界に措置した集団由直伝子型
世 界各 地の 集 団が換な る 地成集 l~ に起源 を もら さまざま
な経路で移入が引 き起こされたことがわかる アルファベッ トと数字はミ
Fコ〆
ドリ
ア遺伝子に よる遺伝チ型を示す
4
3
0
Vo
.
l
4
1 N
o
.7
(
2
0
1
2)
31
のものは水産 目的で怠凶的に導入された。との情
いた手法 (
装世)だ が 北 大 平 洋 沿 岸 の 6ヵ国 (
合
報が得られた
衆 国 カ ナ ダ ロ シ ア 韓 国 中 国 日 本)が国
ニュージーランドでは 1
9
8
7
年ころにはじめて移
際的な研究協力を行うための組織である北太平洋
入が確認されてから 1
0年程度でほぼ全国に拡散
海洋科学機憐 (
PJ
CES) の外来生物に関するワー
し 生態系や水産業に深刻な影響を与えるように
キンググループ (
WG-21) のなかで
なった これらの移入 Lたワカメの糠本は時代を
追って採集され,前述のミルのようにさく葉椋本
法と Lて採用し 各国でその有効性を検証してき
た これには東南アジアの研究者のグループも興
として標本室に保管されていた
味を示し これまでタイやマレーンアでも採用さ
そこで
これら
の標本から DNAを摘出して遺伝子解析を行った
共通の手
れてきた
この装置は円形のプラスチ
結 果 北 島 の ウ ェリン トンと?南ぬのテイマルで
は別々の移入原因 (
移入ベクタ )があり 特
y ク板
2枚を異なる
に商品には何度も繰り返し移入が起こっていたこ
水深帯に設置す るというだけの 極めて単純な方
法であるが 浮き絡橋なと訟の浮体構造に設置する
とを示唆する結果が得られた
ことでさまざまな海洋生物が着生しやすく。また
基本的に同じ素材
4 港湾などにおける外来海洋生物の早期検出
各地点 t
rIlの比較をしやすいというメリァトがある
船舶を介した海洋生物の移入は 国際港湾の周辺
から起こることが多いと考えられる
形状のものを用いることで
(
図
3) 無者の研究グル ープでも
この付着基板
すなわち船
を生物多機性が大きく異なる大阪湾湾口部付近の
によ って運ばれてきた外来生物がまず港湾の周辺
漁港 (
岩屋港)と湾奥部の深江 (
神芦大学海'
J
I
科
で散布され
学部ポンド)に設世 L 付着生物の変遷を比較す
そこに定着して。増植し周辺の自然
の海岸へ広が って いくケ
る実験を行った
スが多いと考えられ
その結果。両地点聞で付着基板
る これは船に直接関わる要国としては外来
生物を運んでいる船が港湾に停泊したり その
に若生 Lていた生物相は大きく異なり また外来
径と考えられる生物彼が高い比率で古まれるとい
周辺でパラスト水を放出することや
船体の清掃
う このモニタリングの目的とよく合う結果が得
を行うドックなども港湾の周辺に立地することが
港湾の周辺は地
られた実際日本の他の海践では報告があるが。
これまで大阪湾町議岸 などからは見つかっていな
官栄養化や水質汚濁などによって夜来
かった外来種の 7ジツボ頬 (
アミメフジ yポ)が
の海洋生物の生物多敏性が減合 している場合が多
初めて確認されるなどその有効性が検証された
しか L これらの底生生物は 形態情報だけでは
多いからである
形の改変
それ以外にも
t
く。このような環境に耐 えられる性質を持った外
来生物には侵入しやすい状態にあり また外敵も
穫の同定が困難辛場合が多いそこで遺伝子マー
少奇いことから大繁殖しやすい
カ を用いて極の同定を行えるンステムの構築を
の立 ち入りは制映されており
さらに。港湾へ
目指 Lた研究も進められている
漁業も活発ではな
この場合
DGGE法などを併用 Lて 環境 DNAサンプルと
いため人目に触れにくく 外来生物が大繁殖する
まで気づかれないケースが多くなる しかし そ
呼ばれる多くの生物種が混入したサンプルからで
の一方 で 外 来 海 洋 生 物 の 定 着 分 布 拡 大 を 防 ぐ
も目的とする生物酵の種の塩基配列を決定 L 極
ためには十 早期にその侵入を検出する必要がある
の同定を行える方法も考案されている
このような背 l
Aから
港湾などにおいて
に移入生物を早期検出するための
簡易
lつの方法と L
て 人工の基板 (
基質) を浮き峨橋などの浮体構
5
外来海洋生物の分布データベースの構築
上述してきたように
ある海洋生物が在来種で
造に固定して水中に吊しそこに付着。繁殖する
二枚貝 フジソボ類 ホヤ類などの付着性証脊椎
あるか外来種であるかを明らかにするため
動物や海藻類を定期的に観察するというモニタリ
だけでなく周辺国を含む他の海域の海洋生物の分
ング方法が考案された これはもともとカナダの
研究者がホヤ績の移入を検出するために採用して
布や分類に関する情報が不可欠である また 全
ての牛物のグループについてこのような情報が収
また
はその種類を正確に分類するためには。その海域
43
1
環境技術
32
rI
fI
図 3 藩湾において底生生物白移入を早期横出するために考案され 標準化された付着基板 (
c
a
t
c
hp
l
a
t
eまたは
c
o
l
l
e
c
t
o
rと呼んでいる)
円形のプラスチック仮 2枚を浮き後憐などから水中に長下し定期的に付靖生物を l
叫収 Lてその生物相をモニタリノグする
j
j
!され
また出版
場合によっては他の海域の生物の分類に l
瑚
ので
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r
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.1
7
2
.2
7
5
2
凪 1
9
9
8
公表されているわけではない
3)川井清史上手字選也羽生目的昭外来種に会った日本
の海藻類遺伝子からみたその起源と動車地球環境
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欠である
このような目的から!前述した
PICES WG-21のなかで
カパーする
北太平洋沿岸の全域を
海産外来生物のデ
タベ
ス構築が
進められてきた
これは
沿岸をいくつかの生物
地理区に分額し
さまざまな海洋生物 (ただし魚
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と
いう情報を地図情報とともに検索できるンステム
である
日本の水産庁が出資 Lた研究費
これは
によって。ア メリカの研究者を 中
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し、
に デー タベー
スのプログラムが作られ
デ
各国の研究者の協力で
タ入力が行われてきた ものであり
今年度中
には公開される予定になっている
引用文献
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