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報告書(6.4MB) - 九州地域産業活性化センター

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報告書(6.4MB) - 九州地域産業活性化センター
平成 20 年度
太陽光発電関連機械工業の大規模拠点化に関する調査
∼ソーラーアイランド九州の実現に向けて∼
報
告
書
2009 年 3 月
財団法人
九州地域産業活性化センター
調査によせて
世界は低炭素社会の形成に向けた取組みに邁進している。2008 年からの世界同時不況に
よって、世界経済は混迷を極めている。このなかで、米国オバマ新大統領が打ち出した「グ
リーン・ニューディール政策」の流れ、すなわち低炭素社会を目指した社会基盤・産業基
盤を構築していくことで経済を活性化しようとする流れが世界中に広がりつつある。特に、
再生可能エネルギーに対する関心は高く、なかでも太陽光発電に注目が集まっている。
わが国は、太陽光発電に関する技術開発、産業形成、普及拡大のすべての面において、
これまで世界を牽引してきた。特に、近年では太陽光発電システムの中核をなす太陽電池
の技術レベルが向上し、政策面での普及支援もあり、太陽電池の市場は世界的に急拡大し
ている。そのようななか、第2世代太陽電池とされる薄膜系太陽電池が事業化段階に突入
し、その最新の薄膜系太陽電池の生産拠点が九州に集積しつつある。薄膜系太陽電池は、
Cool Earth50 エネルギー革新技術計画で想定しているコスト低減に向けたロードマップを
達成できる可能性を秘めた太陽電池であり、今後の世界的な事業拡大が期待されている。
この薄膜系太陽電池を軸として、太陽電池に係る製造検査装置、材料、部資材、最終製品
(アプリケーション・システム)、設置・施工などを加味した産業群を「太陽光発電産業」
と捉え、この太陽光発電産業を九州の新たな基幹産業として振興していくことができない
かとの視点で調査を行った。九州の太陽光発電産業の実態を整理し、産業集積の促進、産
業クラスターの形成促進のための施策を提示することが調査の目的である。
調査にあたっては、熊本大学工学部教授の谷口功委員長をはじめ、業界に精通する産学
官の関係者 15 名からなる委員会で熱心なご審議をいただいた。また、オブザーバー参加も
毎回 10 名以上に及び、委員会自体も貴重な交流の場となった。専門的な立場から財団法人
九州経済調査協会にご協力いただいた。ここに関係各位のご尽力に対して、深く感謝する
ものである。
本調査が、太陽光発電産業の発展と、九州における次世代の基幹産業づくりに寄与する
とともに、低炭素社会の形成に繋がれば望外の喜びである。
平成 21 年 3 月
財団法人
九州地域産業活性化センター
会長
鎌田
迪貞
要約
九州は、第2世代薄膜系太陽電池の世界的な一大集積地となっており、これを中核にす
えた太陽光発電産業の形成に向けた機運が高まっている。薄膜系太陽電池(太陽光発電パ
ネル)を核にして、アプリケーション、システム機器、販売・施工、製造装置、材料など
の周辺産業までを取りこんだ新しい基幹産業づくりが進められている。
きっかけは、薄膜系太陽電池(アモルファスシリコン、CIGS)で新規参入を目指してい
た三菱重工業や富士電機システムズ、昭和シェルソーラー、ホンダソルテックなどの技術
が確立して量産化フェーズに突入するとともに、その製造拠点が九州に立地したことにあ
る。第1世代の結晶系太陽電池で先行し、業界のパイオニアとなっているシャープ、京セ
ラ、三洋電機などの老舗の拠点が関西・中部に形成されるなか、新規参入組の拠点が九州
にできた。シリコンアイランドとして、九州がこれまでに蓄積してきた半導体関連の技術
や人材という地域リソースとリンクしながら量産技術に磨きをかけつつ生産力を増強中で
ある。さらに大学が持つ知的基盤でも、薄膜系で九州は強みを持つ。特に、超軽量・フレ
キシブル・低コストを実現する薄膜系太陽電池として有望視されている有機系太陽電池(色
素増感、有機薄膜)に関する研究者の厚みもある。九州大学や九州工業大学、宮崎大学な
どをはじめ、九州の各大学には、先端材料、デバイス構造、プロセスなど幅広い研究領域
をカバーする研究者がおり、今後は大学間連携や産学連携を通じた産業化の促進が求めら
れる。すでに、北九州市に北九州薄膜太陽電池研究会(北九州産業学術推進機構)、熊本県
に有機薄膜研究会(熊本県産業技術センター)が立ち上がり、交流が始まっている。
九州の太陽電池の生産力については、各社の設備投資計画等を勘案すると、2007 年に約
100MW だったものが、2010 年頃には 500MW 程度になると見られる。今後、世界的に年
率 30%成長が続いたと仮定しても、九州の生産力は世界シェア5%、国内シェア 15%程度
になりそうである。その際の太陽電池の出荷額は約 2,000 億円程度になると見込まれる。
さらに、住宅向け補助金制度の復活で、政府目標にあわせて普及導入が進んでいけば、九
州で毎年 200∼300 億円程度の販売・施工のマーケットが生まれるとみられる。
太陽光発電産業の九州での産業群の広がりについては、「産業拠点化アンケート(対象は
九州の太陽光発電関連ならびに半導体関連メーカー926 社、回答約 183 社、回答率 19.8%)」
によると、現在太陽光関連事業に従事する企業は 73 社あり、そのうち 63 社(86.3%)が
今後事業拡大を目指すとしている。
さらに、今後新規参入を検討している企業も 31 社あり、
太陽光発電関連事業に対する関心は非常に高まっている。今後は、九州の薄膜系太陽電池
メーカーの量産技術の確立・生産性の向上、生産力の拡大等に対応して、関連メーカーの
果たす役割は大きくなっていくとみられる。
また、九州は太陽光発電システムの一大消費地でもある。世帯普及率の上位3県は、佐
賀県、宮崎県、熊本県とすべて九州である。全国の普及トップランナーとして、地域を挙
げて普及の促進を図るべく、官民挙げて取り組みも進められている。行政では、九州経済
産業局において、全国 No.1 普及メガソーラー地域構想や離島グリーンエナジー構想、太陽
電池評価拠点構想、ソーラークラスターの形成が進められ、鹿児島市や佐賀県などでグリ
ーン電力証書の流通促進が図られている。民間でも、九州電力が3MW の大規模太陽光発
電所の建設を決めたほか、芝浦特機が集合住宅向けの普及モデルを確立して事業展開を進
めている。このほか、再春館製薬所など MW 級大規模システムの導入を図る事業者もみら
れる。ジェット・NEKO やパワーバンクシステム、プレシードなどのアプリケーションメ
ーカーも続々と新製品を発表している。
このようななか、太陽光発電産業の産業規模を拡大させていくためにも、太陽光発電シ
ステムのさらなる普及導入の促進が不可欠である。特に、事業化が始まったばかりの薄膜
系太陽電池の技術基盤を確立し、製品を磨いていくためには、マーケットからのフィード
バックが重要であり、地元での市場創出は産業振興の上でも欠かせない。現在わが国の太
陽電池市場は、住宅向けが中心となっており、ここには第1世代の結晶系太陽電池が使わ
れるケースが多い。設置スペースが限られるので変換効率の高さが求められるためである。
一方、九州で作られた太陽電池は、フィードインタリフ導入国を中心とした欧米に輸出さ
れ、メガソーラー発電所などの用途で利用されるケースが多い。今後は、薄膜系太陽電池
の地元での市場を創出すべく、事業所や公共施設、LLP(有限責任事業組合)等のスキー
ムを活用した大規模発電所などの産業向け市場を確立していくことが求められる。事業所
等を対象とした「システム普及促進アンケート(対象は九州の主要地場企業・メーカー・
デベロッパー・設計事務所など 2,000 社、回答数 346 社、回答率 17.3%)」によると、現在
の太陽光発電システム導入率は 16.3%であり、今後の導入を検討中の企業が 25.1%となっ
ている。今後の伸びしろはまだまだ大きい。その一方で、太陽光発電システム導入のネッ
クとして、費用対効果が悪い、設置価格が不透明、具体的メリットがないなどが多くから
指摘されている。さらに、導入インセンティブとして、住宅向け初期投資補助制度と電力
会社の売電制度(RPS 制度)の二つは 6 割強で認知されているものの、それ以外の制度、
例えばグリーン電力証書やグリーン電力基金、G マーク認定制度などの認知度は低いとい
う結果も明らかになった。導入を促す効果の高いインセンティブとして、CO2 削減への換
算や電力の高値買取り、法人税の税額控除、不動産取得税・固定資産税の軽減、低利融資・
利子補給などが指摘されており、今後はこれらに耳を傾けた対応策が求められる。
最後に、これらの状況を踏まえて、今後の九州での太陽光発電産業の拠点化∼ソーラー
アイランド九州の形成∼に向けて、裾野産業支援スキームとして7点、普及導入支援スキ
ームとして5点の施策を提案している。
1)裾野産業支援スキーム
①PV メーカーの課題解決支援∼企業内覧会
②アプリケーション開発支援∼アイディアコンテスト
③技術・製品の提案支援∼製品評価支援
④ソーラーアイランドワークショップ(仮称)の開催
⑤太陽光発電関連企業・研究者 DB の作成
⑥太陽光発電産業を担う人材育成支援
⑦次世代技術研究開発プロジェクト
2)普及導入支援スキーム
①グリーン電力証書流通スキーム
②LLP 等によるメガソーラー構築
③九州グリーン電力基金活性化スキーム
④PV 施工業者認証・ビジネスコンサル育成スキーム
⑤税制優遇・規制緩和プログラムスキーム
今後、これらの支援スキームの実現に向けて、関係各所で具体的な議論が展開され、九
州が薄膜系太陽電池を核とする太陽光発電産業の拠点∼ソーラーアイランド九州∼となる
ことを強く希望するものである。
平成 20 年度
太陽光発電関連機械工業の大規模拠点化に関する調査
目
次
調査によせて
要約
はじめに ...................................................................... 1
1.調査の背景 ................................................................ 1
2.調査目的 .................................................................. 2
第Ⅰ章
太陽光発電産業の動向と新産業形成の萌芽................................. 3
1.太陽光発電の特徴........................................................... 3
2.太陽光発電を取り巻く社会情勢と普及状況..................................... 9
3.太陽光発電産業の世界的な動き.............................................. 15
4.太陽光発電産業に関する新しい産業形成の芽.................................. 22
第Ⅱ章
九州の太陽光発電産業の特徴とポテンシャル.............................. 25
1.薄膜系太陽電池の主力生産拠点としての九州.................................. 25
2.高まる太陽電池関連の研究開発機能の集積.................................... 28
3.装置・材料メーカー等のサポーティング産業の存在............................ 32
4.技術蓄積を生かした技術応用による新事業創造の高まり........................ 33
5.大学の研究シーズからみた九州のポテンシャル................................ 35
6.九州における今後の太陽光発電産業の産業規模................................ 37
第Ⅲ章
太陽光発電産業の要素技術と既存産業集積との融合可能性 .................. 39
1.太陽電池の生産プロセスと半導体・FPD との技術親和性 ........................ 39
2.太陽電池の要素技術の整理.................................................. 43
3.太陽電池と半導体・FPD との技術親和性 ...................................... 45
4.太陽光発電産業と半導体・FPD 産業の関係性∼事業の相互参入実態∼ ............ 50
5.メインプレイヤーの研究課題とアウトソーシングの可能性 ...................... 51
第Ⅳ章
九州の太陽光発電産業の事業実態と産業集積形成の可能性 .................. 53
1.裾野産業形成アンケート調査の概要.......................................... 53
2.九州企業の太陽電池関連事業に対する関心と取組み............................ 56
3.九州企業の太陽電池関連事業の現状.......................................... 60
4.太陽電池メーカーが抱える課題と九州企業の技術シーズ........................ 67
第Ⅴ章
九州の太陽光発電産業の取引構造と参入実態.............................. 75
1.太陽光発電産業間取引・連携の現状と課題.................................... 75
2.太陽光発電産業間取引・連携の課題のまとめ.................................. 78
3.九州の地場参入企業の実態と課題............................................ 80
4.九州の地場参入企業の成功のポイントと課題のまとめ.......................... 83
第Ⅵ章
太陽光発電システムの普及導入に関する支援策............................ 85
1.太陽光発電システムの普及導入支援制度...................................... 85
2.地方自治体での太陽光発電システムの普及促進制度............................ 89
3.太陽光発電システムの普及に影響を及ぼす税制度とその課題 .................... 92
4.民間による太陽光発電システムの普及促進制度................................ 93
第Ⅶ章
太陽光発電システム導入に対する九州企業の実態.......................... 99
1.太陽光発電システム普及促進に関するアンケート調査の概要 .................... 99
2.太陽光発電システムに対する取組み実態..................................... 102
3.太陽光発電システムの導入インセンティブ................................... 106
4.太陽光発電システムの導入支援に対する考え................................. 113
第Ⅷ章
ソーラーアイランド形成に向けたビジョンと施策......................... 115
1.ソーラーアイランドの形成に向けて......................................... 115
2.裾野形成支援スキーム..................................................... 117
3.普及促進支援スキーム..................................................... 129
参考資料:太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査における趣意書 ....... 139
参考資料:太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査における調査票 ....... 141
(太陽電池関連周辺企業向け、セル・モジュールメーカーを除く)
参考資料:太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査における調査票 ....... 151
(セル・モジュールメーカー向け)
参考資料:太陽光発電システム普及促進に関するアンケート調査における調査票 ..... 161
はじめに
1.調査の背景
地球温暖化に代表される地球環境問題と資源エネルギー問題の解決が世界的に大きな課
題となっている。特に、近年の原油高騰によるコストアップ要因は、企業の事業環境なら
びに市民生活に大きな支障を生み出している。さらに、2012 年をターゲットとする京都議
定書による地球温暖化防止に向けた CO2(等の温室効果ガス)削減の具体的な数値目標に
ついては、運輸・事業・民生部門での削減が振るわず、その達成が非常に厳しい状態にな
っている。本年、ポスト京都議定書をひとつのテーマとして洞爺湖サミットが開催される
が、ここでも地球温暖化防止策の新たな枠組みや目標が議論されるところである。
このようななかで、CO2 の排出を抑制できるクリーンエネルギー(再生可能エネルギー)
に対する期待は大きい。特に、ベース電力として原子力発電や水力発電などの既存の発電
方法はあるが、これを補完する分散型発電システム、すなわち家庭や事業所が地球環境に
貢献できる可能性のある発電方法・発電システムとして、風力や太陽光発電が特に期待さ
れている。これらの発電システムについては、高い発電効率と安定供給に向けた技術の確
立や、量産効果によるコスト削減によって、システムの普及が今後世界的に進んでいくも
のとみられる。特に、ドイツやデンマークなどの欧州では、電力政策によって、これらの
クリーンエネルギーが主力発電システムとして明確に規定されている。クリーンエネルギ
ーの目標値が定められ、フィードインタリフ(買取制度)などの具体的な導入促進策を通
じて、急速に普及が進みつつある。そして、普及促進が契機となり、技術蓄積と関連産業
が着実に形成されつつある。
なかでも、太陽光発電の可能性はきわめて有用である。すなわち、太陽エネルギーは、
無公害で無限である。地球に到達するたった1時間の太陽光エネルギー(約 125 兆 kWh)
で全世界が消費する1年分のエネルギー(約 120 兆 kWh、石油換算約 100 億トン)を補う
ことができる大きな規模である。太陽光発電は、現在未利用な太陽光エネルギーを、直接
電気に変換できる有用なシステムである。このため、世界での生産・市場はそれぞれ年率
40∼50%で成長しており、技術が実用化段階にまで確立されつつある昨今、特にその成長
が加速しつつある。
ひるがえって、わが国の太陽光発電の歴史をみると、1970 年代に始まったサンシャイン
計画からの一連の国家プロジェクトの実施によって、技術蓄積を進め、世界に先駆けて産
業化されてきた。その結果、わが国ではドイツと二分する世界最大の市場となるとともに、
日系メーカーの技術力と生産力は、世界を牽引している。太陽光発電は、今後ともわが国
が世界的な使命を果たすべき領域として、非常に期待が大きい。
政府において、1997 年の「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」や 2006 年
の「新・国家エネルギー戦略」などにおいて、太陽光発電の重要性と政策支援対象として
の位置づけが明確にされ、2010 年の導入目標値として 4,820MW(京都議定書目標達成計
1
画、2005 年閣議決定)が示されている。しかしながら、政府の導入支援策(助成金制度)
がトーンダウンし、中国をはじめとした新興国の積極的な参入攻勢があり、国内マーケッ
トの成長と、日系メーカーのポジショニングは鈍化しつつある。技術力は持ちながら、世
界のマーケットを十分に開拓できず、産業のポジショニングが相対的に低落していこうと
している現在の構図は、非常に危機的状況にある。まさに、わが国の半導体産業やアメリ
カの太陽光発電産業の二の舞であり、今こそ産学官金民が一体となって、地球環境問題、
エネルギー問題、産業振興問題の3つの視点から、太陽光発電産業の振興策を提示してい
くことが求められている。
そのなかで、九州をみると、太陽光発電の導入実績の全国比は約 20%に達し、地域ブロ
ック別で三大都市圏を押さえてトップとなっている。世帯普及率も 1.2%と全国平均の約2
倍の水準となっている。また、太陽光発電産業との親和性の高い半導体産業では、装置や
材料といった周辺産業の集積も進んでいる。これらの産業集積のメリット、すなわち製造
技術や人材の蓄積などの事業環境に目をつけて、次世代薄膜型の太陽電池メーカー(セル
メーカー)の製造拠点の進出が促されつつある。現時点でのセルメーカーの立地は、三菱
重工業(長崎県)、富士電機システムズ(熊本県)、ホンダソルテック(熊本県)、昭和シェ
ルソーラー(宮崎県)の4メーカーで、44MW(2006 年度)の生産能力を有する。今後、
2009 年頃までに約 150MW∼200MW 程度にまで増産の計画があり、このときには全国の
約1割の生産力になるとみられる。今後の増産(継続的設備投資)と新規立地の促進に向
けて、各方面からの支援や取り組みが求められる。また、これら九州の生産拠点の多くは
量産開始間もないため、研究開発段階からの繋がりで装置や材料を域外調達しているケー
スが多いという実態がある。今後は、九州域内企業とのサプライチェーンを強め、域内に
関連産業群を形成し、産業クラスター化していくことが大きな課題である。
2.調査目的
九州での太陽光発電産業(太陽光発電関連機械工業)集積の形成促進(大規模拠点化)
とソーラー産業クラスターとしての場づくり(産業クラスター形成)に向けた道筋と施策
の提示を行い、「ソーラーアイランド九州」としてのブランド形成を図る。
①「ソーラーアイランド九州」形成に向けたビジョン、プロジェクト提案、PR
「産業拠点化」を目指すメッセージと具体的施策の提示
「普及導入トップランナー」地域を目指すメッセージと具体的施策の提示
②九州におけるソーラー産業クラスター(産業生態系)の形成
③既存の半導体関連産業との融合可能性の提示
④民間主導の普及支援スキームの提示
2
第Ⅰ章
太陽光発電産業の動向と新産業形成の萌芽
1.太陽光発電の特徴
1)太陽光発電とは
太陽光発電とは、太陽電池を利用して、太陽の光エネルギーを直接的に電力に変換する
発電方式を指す。再生可能エネルギーの一種であり、太陽熱利用とならんで、太陽エネル
ギー利用の有効なひとつの形態である。
太陽光発電の中核をなす太陽電池とは、太陽の光エネルギーを吸収して電気に変えるエ
ネルギー変換器(光電エネルギー変換半導体)である。シリコンなどの半導体に光があた
ると電気が発生する「光電効果」の原理を応用したものである。したがって、日照強度と
発電量は比例関係をなす。光を電気に直接変換するため、発電過程の環境負荷がゼロであ
る上、機械的要素がほとんどないため、設置や保守が容易等の利点がある。なお、太陽電
池は、電池という名称になっているが、一般的な電池のような蓄電機能はない。
図表1−1−1
太陽電池の原理
資料)太陽光発電協会資料より引用
2)未利用エネルギーとしての高いポテンシャル
太陽光発電の最大の魅力は、太陽光という未利用エネルギーが膨大に存在することであ
る。地球に到達する太陽光エネルギーは、毎秒 42 兆 Kcal といわれており、地球全体の消
費エネルギーの約1万倍の規模に達する。風波や地熱などの他の再生可能エネルギーと比
較すると、その規模の大きさは際だっている。太陽光エネルギーを極限まで活用できると
仮定して逆算すれば、1時間の照射エネルギーで、世界のエネルギー需要の1年分をまか
なえる計算になる。
ただし、エネルギー密度は大気表面で 1.4kW/㎡、地表面で 1kW/㎡と低く、広く薄く偏
在しているエネルギーをどう活用するかが技術開発の焦点となる。したがって、太陽電池
3
の技術開発は「変換効率」をいかに高めるかが鍵となる。ちなみに、変換効率が 100%で
1kW/㎡なので、例えば変換効率 10%の太陽電池では、100W/㎡のエネルギーを活用するこ
とができる計算となる。
図表1−1−2
地球上のクリーンエネルギーの比較
エネルギー源
水 力
潮汐流
地 熱
風 波
太陽光
エネルギー量
5億Kcal
7億Kcal
77億Kcal
880億Kcal
420,000億Kcal
資料)太陽光発電協会資料より九経調作成
図表1−1−3
太陽光エネルギーの活用状況
資料)太陽光発電協会資料より引用
3)太陽光発電の特徴
太陽光発電のメリットとデメリットについては、以下のような点が指摘されている。
メリットとしては、先に述べたように膨大なエネルギーを永続的に活用でき、ランニン
グコストが安いという点が最大の魅力である。寿命が長く、メンテナンスもほとんど必要
ないということ、さらに建物の屋根などに設置できること(土地の多重利用ができること)
というメリットがあることから、これまで住宅用としての普及が進んできた経緯もある。
分散型の電源システムとして非常に有用である。
一方で、デメリットとしては、日射強度によって活用できるエネルギー量が変化するた
4
め、エネルギーのコントロールがしにくいことがある。また、現状では、太陽光発電シス
テムの初期投資のコストが高く、寿命と発電量等を考慮すると、発電コストがキロワット
あたり 46 円程度かかる。これは、家庭用電力料金(キロワットあたり 23 円)や事業所用
電力料金(キロワットあたり 14 円)と比べて高いため、これらの水準まで発電コストを下
げるための研究開発が行われている。
図表1−1−4
太陽光発電のメリット・デメリット
メリット
…
…
…
…
…
…
エネルギーが膨大
エネルギーが永続的
エネルギーが無料
エネルギーがクリーン(発電
時の廃棄物ゼロ)
メンテナンスが容易
長寿命
†
†
…
…
…
デメリット
…
安定した発電ができない
†
†
…
…
発生電力をコントロールできな
い
現在では一般電力より単価が
高い
†
単結晶シリコン30年
a-シリコン:10年以上
†
分散型発電が可能
土地の多重利用が可能
(電力買取制度あり)
…
…
…
天候・季節・気温等で出力が変
化
夜間の発電ゼロ
46円/kW程度
家庭用:23円/kW、事業用:14円
/kW、発電所:7円/kW
面積あたりの出力が小さい
出力が直流
蓄電機能なし
資料)各種資料より九経調作成
4)環境的視点から見た太陽光発電の重要性
太陽光発電を環境的視点から俯瞰しても、さまざまな重要性が指摘できる。環境に対す
る最大の利点は、CO2 や大気汚染物質の排出が微少であり、地球温暖化の抑制・防止に繋
がる環境保全効果が高いことである。発電方式別の二酸化炭素排出量をみると、石炭や石
油といった化石燃料系のエネルギー源と比較して数%以下の水準に削減することが可能で
ある。風力や地熱、水力といった他の再生可能エネルギーおよび原子力とほぼ同程度であ
り、環境への負荷は非常に低い。太陽電池製造時の投入エネルギーのペイバックタイムに
ついても2∼3年程度まで短くなってきており、10∼30 年以上の寿命を有する現状におい
ては、創エネルギーデバイスとして十分に機能する水準にまで技術進歩が進んできている。
そのほか、夏期・日中の電力ピーク時に発電量が増大するというピークカット効果も期待
できる。
太陽光発電はエネルギーのコントロールがしにくいため、日射強度が弱く発電しないと
きに備えて、バックアップとしての化石燃料系の発電設備は必要になる。しかし、これを
できるだけ稼働させなくて済むようにできるという意味では、化石燃料の消費抑制や温室
効果ガスの排出抑制ができる。エネルギーバランスのベストミックスを考慮して導入を図
ることで、低炭素社会形成に寄与できる。
5
図表1−1−5
発電方式別の二酸化炭素排出量(ライフサイクル CO2)
(g‐CO2/kWh)
1,200
1,000
設備・運用
800
600
発電燃料燃焼
887
400
200
704
478
88
38
130
111
石
炭
火
力
石
油
火
力
L
N
G
火
力
L
N
複
合 G
火
力
0
408
︵
︶
53
29
22
15
11
太
陽
光
風
力
原
子
力
地
熱
中
小
水
力
注1)発電燃料の燃焼に加え、原料の採掘から発電設備等の建設・燃料輸送・情報・運用・保守等のために消費される全ての
エネルギーを対象としてCO2排出量を算出。
注2)原子力については、現在計画中の使用燃料国内再処理・ブルサーマル利用(1回リサイクルを前提)・高レベル放射性
廃棄物処理等を含めて算出。
資料)電力中央研究所より九経調作成
図表1−1−6
再生可能エネルギーの発電方式別にみた温室効果ガス排出量
資料)産業技術総合研究所資料より引用
5)太陽光発電産業の重要性
新しい基幹産業の柱として、太陽光発電産業に注目する理由は以下の4点である。
ひとつが、これまで述べてきたように、低炭素社会の形成に寄与するということであり、
地球環境問題や CO2 削減という社会的要請に直結するキーテクノロジーになる可能性があ
る点である。
ふたつが、エネルギー問題への対応である。化石燃料への過度の依存は、2008 年に突然
6
世界をおそった石油価格の高騰といったリスクを常に抱えたままの状態にあることを意味
する。エネルギーバランスを考慮するためにも、創エネルギー分野の技術革新と産業化は
エネルギー政策上においても必要不可欠である。
みっつに、太陽光という莫大な未利用エネルギーが活用できる点である。この点につい
ては先述のとおりであるが、世界中に遍在する密度の低いエネルギーを如何に効率的に利
用していくかが重要であり、これまでにない新たなチャレンジであり、ここに技術やビジ
ネスの可能性が開ける。
最後が、わが国における環境・エネルギー関連技術の蓄積である。わが国の環境技術は
世界トップレベルと言われている。
特に、太陽電池ではこれまで過去 30 年以上にわたって、
日本が世界の技術と事業化を先導してきた経緯がある。直近において、世界の太陽電池市
場が急成長するなかで、中国を中心とした新興国での生産拡大が進んでいるが、技術レベ
ルや研究蓄積ではまだまだ日本は高い優位性を持つ。第2世代の薄膜系太陽電池の事業化
を世界で先がけているように、これまでの研究成果や技術の蓄積を芽吹かせ、事業や産業
に結びつけていくのはこれからの段階である。ここに次世代産業としての大いなる可能性
が眠っている。
図表1−1−7
地球環境問題・
CO2の削減
太陽光発電産業に注目する理由
太陽光という
未利用エネルギー
の存在
省エネルギー・
創エネルギー
ニーズ
環境・エネルギー
技術の蓄積
太陽光発電をターゲットとして九州で次世代の産業集積を形成できないか?
伸長する太陽電池
の世界市場
薄膜系太陽電池
メーカーの進出
既存産業集積(半
導体産業)の存在
1
資料)九経調作成
6)施設別のシステム規模のイメージ
太陽光発電システムの価格はこれまで技術革新とともに低減してきている。近年は、フ
ィードインタリフ(電力の固定買取制度)導入国での旺盛な需要があり、結晶系太陽電池
の原材料であるシリコン不足があったこともあり、価格低減のスピードが鈍化しているが、
これは価格低減の伸びしろがなくなったために起こっている現象ではない。各社とも、後
述する PV2030 や Cool Earth50 エネルギー革新技術計画で想定しているコスト低減に向け
たロードマップを睨み、グリッドパリティ(系統以下の発電コスト)の実現に向けた変換
効率の向上や長寿命化、製造コストの圧縮等の技術開発に取り組んでいる。
なお、参考までにシステム価格を 68 万円/kW(2006 年換算)とした場合の太陽光発電
システムの導入費用の大まかなイメージを以下に示す。なお、実際には、大口ユーザーは
半額程度かそれ以下の価格でシステムを導入しているのが実態であり、以下のデータはあ
くまでも参考値である。
7
・家庭用:3∼4kW(200∼250 万円)
・公共施設・学校:10∼50kW(700 万円∼3,500 万円)
・マンション:50∼100kW(3,500 万円∼7,000 万円)
・大学・大型公共・産業:100kW∼500kW(7,000 万円∼3 億 5,000 万円)
・大規模発電所(メガソーラー):500kW∼1,000kW(3 億 5,000 万円∼7 億円)
図表1−1−8
太陽光発電システムのシステム価格と発電コスト
(発電コスト:円)
(システム価格:千円)
4,000 3,700
280
3,500
300
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
140
2,000
120
1,700
システム価格
(1kWあたり)
250
発電コスト
(1kWhあたり)
200
150
82
1,200
100
72
71
65
58 52 49 48
46 46 47 50
1,040 1,020 930
840 760
710 690 670 660 680 0
500
‐50
0
‐100
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
資料)『日本のエネルギー2008』資源エネルギー庁
8
2.太陽光発電を取り巻く社会情勢と普及状況
1)太陽光発電を取り巻く社会情勢∼高まる期待と国際競争の激化∼
低炭素社会の構築に向けて世界各国での取り組みがなされはじめている。世界的な目標
として、2008 年 7 月の洞爺湖サミットでは、世界全体の温室効果ガスの排出量を 10 年∼
20 年でピークアウトし、2050 年までに半減することが合意された。わが国においても、
「低
炭素社会づくり行動計画」
(2008 年 7 月閣議決定)において、日本の長期目標として 2050
年に現状より 60∼80%削減するという高い目標が示されたところである。
そもそも、わが国のエネルギーにおける再生可能エネルギーの導入量は各国と比較して
も非常に低いレベルにとどまっている。一次エネルギー供給ベースでは、2005 年の実績で
5.0%である。同時期のスウェーデンは 28.4%、デンマークは 15.5%、EU 全体では 7.1%
である。今後の導入目標値も、わが国が 2020 年に 8.2%程度なのに対して、スウェーデン
が 49.0%、デンマークは 30.0%、EU 全体で 20.0%と大きな差がある。2005 年時点ではわ
が国と同程度の導入実績であるドイツやイギリス、フランス、イタリア、スペインなどで
も、2020 年には高い目標値が設定されている。ドイツが 18.0%、イギリスが 15.0%、フラ
ンスが 23.0%、イタリアが 17.0%、スペインが 20.0%である。欧州では、再生可能エネル
ギーの高い導入目標を掲げ、新エネルギー(再生可能エネルギー)を一大産業として築き
上げようとしている。太陽光発電についても、各国で電力の固定買取制度(フィードイン
タリフ、FIT)が積極的に導入され、ここで太陽光発電が投資案件として成立し、大規模な
太陽光発電所が各地に建設されている。太陽光発電が投資案件として成立することで、幅
広い層からの資金を集めることに成功し、普及が急速に進む。同時に、需要サイドの牽引
によって、太陽光発電が産業として成立しつつあり、発電ビジネスの起こりが産業形成に
大きく寄与している。
現在、フィードインタリフ導入国は、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、チェ
コ、韓国など世界的に拡大しつつある。わが国も、2010 年からのフィードインタリフ導入
が検討されはじめたところである。このようなマーケット要因によって、世界の太陽光発
電システム導入量の成長率は年率 40%超の高成長を続けている。2007 年の世界の太陽光発
電システムの累積導入量は 7,841MW であるが、2000 年の 10 倍以上の水準にある。
9
図表1−2−1
世界の太陽光発電システム累積導入量の推移
(MW)
9,000
合計
8,000
7,841
ドイツ
7,000
日本
6,000
アメリカ
その他
5,000
3,862
4,000
3,000
1,919
2,000
1,229
1,000
831
0
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
注)累計の出典はTRENDS IN PHOTOVOLTAIC APPLICATIONS
(Report IEA-PVPS T1-15:2006)
注)単年は累計からJPEAで計算
資料)資源エネルギー庁、太陽光発電協会より九経調作成
図表1−2−2
世界の太陽光発電システム累積導入シェアの推移(世界トップ3)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
15.7
15.9
10.6
24.5
28.1
日本
29.1
49.3
20%
10%
0%
その他
アメリカ
47.7
40%
30%
15.5
29.5
13.3
20.8
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
注)累計の出典はTRENDS IN PHOTOVOLTAIC APPLICATIONS
(Report IEA-PVPS T1-15:2006)
注)単年は累計からJPEAで計算
資料)資源エネルギー庁、太陽光発電協会より九経調作成
10
ドイツ
2)ポスト京都議定書∼低炭素社会形成∼で追い風になる太陽電池
これらの動きに対して、わが国も低炭素社会形成に向けたイニシアティブをとるべく、
さまざまな政策が進められつつある。
2007 年5月 24 日には、地球温暖化に対する当時の安倍総理のイニシアティブとして
「Cool Earth 50(美しい星 50)」が示された。このとき、はじめて世界全体の温室効果ガ
ス排出量を現状比で 2050 年までに半減とする長期目標提案が提示された。この目標は、自
然界の吸収量と同等のレベルに押さえる水準を目指そうとするものである。このためには、
革新的技術と低炭素社会の実現が不可欠として、太陽電池を中核とする太陽光発電技術が
重要なテーマとして明確に示された。また、2007 年6月のハイリゲンダムサミットでは、
気候変動が重要テーマのひとつとなり、2050 年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を
少なくとも半減することなどを真剣に検討することが合意された。世界的にも 2050 年半減
という目標が議論の遡上にのった。環境・エネルギー関連で世界トップ水準の技術を有す
るわが国は、技術開発の加速推進と国際連携によって世界への積極的貢献が求められると
して、研究開発の強化と関連産業の国際競争力の強化が強く示された。その結果、詳細は
後述するが Cool Earth 50−エネルギー革新技術計画が 2008 年 3 月に提示され、太陽電池
も重要な柱として明示されることとなった。
3)太陽電池導入目標と導入促進プランの明確化
この流れを受けて、2008 年6月に、新エネルギー部会によって「新エネルギー政策の新
たな方向性について∼新エネルギー国家の構築に向けて∼」が示された。要点は、今後わ
が国は、原子力、省エネルギー、新エネルギーに特に注力し、新エネルギーのなかでは、
太陽光発電、蓄電池、燃料電池に注力することが明示された。太陽光発電が、新エネルギ
ーの柱として位置づけられた。
時を同じくして、2008 年6月に発表された「低炭素社会・日本を目指して∼福田ビジョ
ン∼」において、新エネルギー大綱(2004 年 12 月)に示されていたわが国の太陽電池の
導入目標が上方修正された。太陽電池の導入量を 2020 年に 10 倍、2030 年に 40 倍にする
として、具体的には、2005 年の導入量 1.4GW をベースとして、2020 年に 14GW、2030
年 57GW が目指されることになった。その後、2009 年2月には「低炭素社会構築に向けた
再生可能エネルギー普及方策について」がとりまとめられ、この導入目標がさらに上方修
正されている。新しいターゲットは、2020 年に現状の 25 倍(37GW)、2030 年に現状の
55 倍(79GW)であり、2050 年までに 173GW という 2050 年までの長期目標がはじめて
提示された。
これらの導入目標を達成するための具体的な施策も積極的に展開されつつある。2008 年
11 月には、
「4省庁合同アクションプラン(経済産業省、国土交通省、環境省、文部科学省)」
が示され、太陽電池の導入促進加速に向けた合意形成とプランが示された。2008 年 12 月
には、条件付きながら kW あたり7万円という水準で住宅用補助金が復活した。昨今の金
11
融危機への経済対策・雇用対策として、2009 年1月には「日本版グリーン・ニューディー
ル構想」の検討が開始され、環境市場 100 兆円、雇用 220 万人創出(2015 年)の目標が設
定されたところである。さらに、2009 年2月には、2010 年の導入を目指した日本版フィー
ドインタリフの検討が開始されはじめている。
図表1−2−3
わが国の太陽電池導入実績と導入目標
①導入実績
②導入目標
(MW)
(MW)
2,500
1,919
1,709
2,000
1,132
500
累積設置容量(実績)
50,000
新エネルギー導入大綱目標値(1994年)
40,000
1,422
1,500
1,000
56,880
60,000
低炭素社会・日本を目指して∼福田ビジョン目標
値(2008年)
30,000
860
637
452
330
133209
19 24 31 43 60 91
20,000
14,220
10,000
1,919
0
4,800
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
0
出典)Trends in Pohotovoltaic Applications, IEA-PVPS
資料)新エネルギー・産業技術総合開発機構、
資源エネルギー庁より九経調作成
1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030
資料)新エネルギー・産業技術総合開発機構、太陽光発電協会、
資源エネルギー庁より九経調作成
4)九州における太陽光発電システムの普及状況∼普及のトップランナーとなる九州
このように、太陽光発電システムの普及拡大が目指されるなか、九州は普及率が高く、
全国的にも先進的な地域となっている。九州における人口あたり普及率は全国平均の約2
倍であり、県別の世帯普及率も上位を独占している。
NEDO の住宅向け普及事業導入実績より、太陽光発電システムの地域ブロック別構成比
をみると、平成 6 年∼平成 16 年の累計導入規模で、九州は全国の 21.3%(件数では 20.3%)
を占め、三大都市圏を有する関東・中部・近畿に匹敵する導入状況となっている。これを
人口 1,000 人あたりの発電規模に換算すると、九州は 12.5kW/人となり、他の地域ブロッ
クを押さえてトップの水準となっている。全国平均 6.2kW/人の2倍以上の水準である。
また、住宅用太陽光発電システムに関する人口あたり導入規模の都道府県ランキングを
みても、上位3位は宮崎、佐賀、熊本で、九州が独占している状況にある。
これには、九州の日射条件の良さがひとつの要因として効いている可能性がある。資源
エネルギー庁が発行する『新エネニッポン 2007』に登場する全国 115 施設の太陽光発電シ
ステムの導入規模と実際の発電量を集計した結果、九州での単位システムあたりの発電量
は九州が最も高い値を示した。1kW システムあたりの実質年間発電量の全国平均が
12
959kWh であったのに対して、九州は 1,105kWh と 15%ほど高い水準を示した。
図表1−2−4
NEDO 住宅向け普及事業導入実績(平成 6 年∼平成 16 年累計)
①地域ブロック別構成比
0%
20%
40%
60%
80%
②人口あたり普及状況
100%
(kW/1,000人)
14.0
12.5
北海道
導入件数
21.1
21.1
東北
20.3
11.6
12.0
10.0
10.0
関東
中部
8.0
7.2
近畿
4.3
四国
4.0
九州
導入規模
19.8
21.4
21.0
沖縄
2.0
6.2
5.8
6.0
中国
3.9
3.8
1.5
0.0
北海道 東北
注1)平成6年度∼平成8年度モニター事業、平成9年度∼平成13年度導入基盤整備事業、
平成14年∼平成16年度導入促進事業の実績を掲載。
注2)数値は地域別のベスト3(中部、九州、関東)を掲載。
資料)新エネルギー・産業技術総合開発機構より九経調作成
図表1−2−5
関東
中部
近畿
中国
四国
九州
沖縄
全国
注1)平成6年度∼平成8年度モニター事業、平成9年度∼平成13年度導入基盤整備事業、
平成14年∼平成16年度導入促進事業の実績を掲載。
注2)数値は地域別のベスト3(中部、九州、関東)を掲載。
資料)新エネルギー・産業技術総合開発機構より九経調作成
住宅用太陽光発電システム普及に関する都道府県ランキング
①人口あたりランキング
②世帯普及率ランキング
(kW/1,000人)
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
1
宮崎
2
佐賀
3
熊本
4
香川
5
長崎
6
鹿児島
7
長野
8
徳島
9
大分
12.3
宮崎県
10
山口
12.1
鹿児島県
‐
0
全国
5
10
15
20
(‰)
25
18.3
全国
17.9
7.8
九州
16.9
福岡県
16.1
14.1
10.2
佐賀県
14.0
13.8
長崎県
13.7
熊本県
大分県
13.0
22.1
15.1
18.8
12.7
19.8
13.7
6.2
注)平成16年度まではモニター事業、導入整備事業による実績。平成17年度は、
注)NEDO住宅用太陽光発電システム普及実績(平成6年∼平成16年累計)/人口。
資料)新エネルギー財団、国勢調査より九経調算出。
「住宅用太陽光発電システム価格等動向調査」のメーカー販売量調査による。
資料)九州経済産業局エネルギー対策課資料より引用
13
図表1−2−6
導入施設での高い発電実績
(主要太陽光発電導入施設の 1kW システムあたり実質年間発電量(実績))
(kWh/1kWシステムあたり)
1,200
1,041
1,000
800
759
876
880
関東
中部
1,101
1,105
959
947
801
600
400
200
0
北海道
東北
近畿
中国
四国
九州
注1)『新エネニッポン』資源エネルギー庁、2007掲載の太陽光発電施設(115施設)の実績を
積算して算出。
注2)設置条件(設置場所、設置パネルの種類など)による発電量が変わる可能性もある。
資料)『新エネニッポン』資源エネルギー庁、2007より九経調算出。
14
全国平均
3.太陽光発電産業の世界的な動き
1)急伸する世界の太陽電池生産量
太陽電池の生産量は世界的には急伸している。2007 年の世界の太陽電池生産量は、
3,733MW(3.7GW)となっており、過去5年間で 6.6 倍の規模にまで拡大した。この間の
年平均成長率は 46.0%である。フィードインタリフという需要サイドの刺激によって、太
陽電池は新興国でも急速に産業形成されつつある。特に、中国、台湾、韓国での産業化の
波は急速である。
2007 年の生産量の国別ランキングをみると、日本が 920MW(世界シェア 24.6%)で第
1位となっているが、第2位の中国が急速な勢いで躍進しつつあり、821MW(同 22.0%)
で日本に迫っている。中国で生産されている太陽電池は、現状では主に第1世代の結晶系
太陽電池が中心である。2007 年に、メーカー別の世界ランキングで第3位に躍り出た
Suntech(中国)は、自社技術をもって事業展開しているが、多くの新興メーカーは半導体
産業や FPD 産業と同様に、大規模投資によって製造装置と材料をセットで導入し、事業を
急拡大している。製造装置一式をエンジニアリングとともに提供する「フルターンキー」
ビジネスが起こっており、これによって新規参入が続出している。以下、第3位のドイツ
が 738MW(同 19.8%)、米国が 382MW(10.0%)、台湾が 368MW(10.0%)と続く。
特に、近年は中国や台湾といった新興国と、フィードインタリフの導入で産業を牽引し
たドイツの成長が著しく、わが国の世界シェアは 2004 年の 50%をピークとして、2007 年
には 25%まで低下している。野村證券金融経済研究所では、2010 年にはわが国の世界シェ
アが 15%程度まで低下するとみている。なお、メーカー別ランキングでは、これまで長年
にわたって首位を守ってきたシャープが、2007 年に Q-Cells(ドイツ)に抜かれて第2位
となった。2005 年には、世界ランキング5位以内に日系メーカーが4社入っていたが、2007
年には2社となっている。
15
図表Ⅰ−3−1
世界の太陽電池生産量の推移
(MW)
3,733
4,000
3,000
2,521
1,759
2,000
1,195
1,000
155
288
201
391
562
744
0
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
注)PV News 2008年3月号、4月号を基に、㈱資源総合システムが作成
資料)資源総合システム『太陽光発電マーケット2008』より作成
図表Ⅰ−3−2
太陽電池生産量の国別シェア(2007 年)
その他
504
13%
台湾
368
10%
米国
382
10%
日本
920
25%
太陽電池生産量
3,733MW
(2007年)
中国
821
22%
ドイツ
738
20%
資料)PV NEWS より九経調作成
16
図表Ⅰ−3−3
順
位
企業名
太陽電池メーカーの世界ランキング
2005年生産量
(MW)
2006年生産量
(%)
(MW)
(%)
2007年の対前年
増加量・伸び率
(MW)
(%)
2007年生産量
(MW)
(%)
1 Q‐Cells(ドイツ)
166
9.4
253
10
389
10.4
136
53.8
2 シャープ(日本)
428
24.3
434
17.2
363
9.7
-71
-16.4
3 Suntech(中国)
82
4.7
158
6.2
327
8.8
170
107.6
4 京セラ(日本)
142
8.1
180
7.1
207
5.5
27
15.0
5 First Soler(米&ドイツ)
20
1.1
60
2.4
207
5.5
147
245.0
6 MOTECH(台湾)
60
3.4
110
4.4
196
5.3
86
78.2
7 三洋電機(日本)
125
7.1
155
6.1
165
4.4
10
6.5
8 SunPower(フィリピン)
23
1.3
63
2.5
150
4
87
139.2
9 Baoding Yingli(中国)
Deutsche Solar(ドイツ)
10
/SolarWorld CA(米)
11 三菱電機(日本)
-
-
35
1.4
143
3.8
108
307.1
80
4.5
86
3.4
130
3.5
44
51.2
100
5.7
111
4.4
121
3.2
10
9.0
注)PV News 2008年3月号、4月号を基に、㈱資源総合システムが作成
資料)資源総合システム『太陽光発電マーケット2008』より引用
2)注目される第2世代の薄膜系太陽電池
太陽電池のマーケットは、今まさに技術的な転換点にある。先述したように、薄膜系太
陽電池が事業化段階に突入し、今後のマーケットの急伸を支える重要なデバイスになると
みられている。
第1世代の結晶系太陽電池(単結晶・多結晶)は、2006 年∼2007 年にかけて、原料であ
るシリコン不足の影響で、世界的に旺盛を極めるマーケットの需要に対応できなかった。
需要があって、生産能力もあるのに供給ができないという状況に日系メーカーは陥った。
そこで、業界各社ではシリコンに依存しない第2世代の薄膜系太陽電池の開発に力を注い
でいる。第1世代の結晶系太陽電池で業界をリードしているシャープや三洋電機、京セラ
以外にも、薄膜系太陽電池で業界に新規参入を果たす企業もみられる。業界全体が急成長
している時期でもあるので、業界の活性化、相互の競争による技術進歩や製品の磨き上げ
という点では良いが、生産能力が過剰になるとの見方もあって、この数年間で如何に競争
力を持てるかが事業存続の鍵になるとみられる。今後は、どの種類の太陽電池が主流とな
るか、どのようなマーケットの棲み分けになるか、どの企業が競争に勝ち残っていくのか
という点に注目が集まるだろう。
このようななかで、第2世代の薄膜系太陽電池は、マーケットにおいて一定のポジショ
ンを獲得するとの見方が有力である。ディスプレイリサーチ社によると、2007 年の太陽電
池の世界の生産能力は 7,123MW(7.1GW)であり、そのうち結晶系太陽電池が 6,320MW
で 88.7%、薄膜系太陽電池が 803MW で 11.3%の構成とみられている。5年後の 2012 年
の予測値では、世界の生産能力が 39,625MW(39.6GW)であり、そのうち結晶系が
26,624MW で 67.2%、薄膜系が 13,001MW で 32.8%になるとみられている。この5年間
17
の生産能力の倍率は、結晶系が 4.2 倍なのに対して、薄膜系は 16.2 倍と予測されている。
図表Ⅰ―3−4
太陽電池の種類とプロダクトサイクル
単結晶シリコン
プロダクト
サイクル
成熟期
多結晶シリコン
成熟期
球状シリコン
導入期
アモルファスシリコン
成長期
微結晶シリコン
成長期
CIGS
成長期
CdTe
成長期
GaAs等
成熟期
色素増感
導入期
太陽電池の種類
第1世代
第2世代
結晶系
薄膜系
無機薄膜系
薄膜シリコン
化合物系
有機薄膜系
第3世代
新構造
有機薄膜
導入期
量子ドット
導入期(初期)
多接合
導入期(初期)
注)太陽電池の名称や分類方法は種々あるが、本表を本調査における分類名称のベースとしている。
資料)産業技術総合研究所資料より九経調作成
図表Ⅰ−3−5
0%
種類別にみた太陽電池生産能力のシェアの将来予測
20%
40%
2007
60%
80%
4.3
1.6 0.8
4.5
88.7
2012
67.2
多/単結晶Si
20.7
a‐Si/μc‐Si
CIGS
注)ディスプレイリサーチ社予測
資料)半導体産業新聞2009.02.25より九経調作成
18
100%
CdTe
6.8 4.9 0.4
その他
図表Ⅰ−3−6
種類別にみた太陽電池生産能力の将来予測(2012 年/2007 年)
(倍)
30.0
26.6
24.1
25.0
20.0
16.2
15.0
10.0
5.0
6.1
4.2
5.6
2.6
0.0
多/単結晶Si
a‐Si/μc‐Si
CIGS
CdTe
その他
薄膜系計
合計
注)ディスプレイリサーチ社予測
資料)半導体産業新聞2009.02.25より九経調作成
3)わが国太陽電池メーカーの事業戦略
日系太陽電池メーカーの事業戦略は明快である。メインターゲットは、電力発電用の大
規模マーケットであり、海外のフィードインタリフ導入国を中心に広がりつつあるメガソ
ーラー発電所が最大の顧客である。特に、第2世代薄膜系太陽電池メーカーは、現状でも
海外のメガソーラーが主要マーケットとなっており、そのほかでも公共施設や事業所など
で用いる比較的規模の大きな顧客がターゲットである。海外のフィードインタリフ導入国
では、一括大量購入を行ってくれるので、大量生産の規格品への注力が必要となる。半導
体でたとえるなら、システム LSI というよりも DRAM(Dynamic Random Access
Memory:揮発性メモリの一種)に近いビジネスモデルであり、海外の新興メーカーとの価
格競争が熾烈で、海外メーカーとの激しい競争を強いられる。このため、価格競争力がひ
とつの重要な競争要因となり、生産性の向上が不可欠となる。ただし、DRAM ビジネスと
大きく異なるのが、太陽電池は求められる製品寿命が 30 年程度と非常に長く、極めて高い
耐久性が求められることである。DRAM は製品ライフサイクルが短い消耗品であるが、太
陽電池は製品ライフサイクルの長いインフラ商品なのである。したがって、フィードイン
タリフ導入国では、長期にわたって安定的に高い発電ができるかどうかが収益の決め手に
なるため、耐久性と品質は極めて重要な競争要因・差別化要因となる。現在、わが国の太
陽電池に対する評価は高く、フィードインタリフ導入国からの引き合いが極めて旺盛であ
るため、日本製太陽電池の販売価格は高止まっている状況にある。
一方、薄膜系太陽電池よりも変換効率が高く、省スペースでより多くの発電を行う結晶
系太陽電池は、メガソーラー市場や事業所・公共施設といった大口顧客のみならず、住宅
市場にも積極的に展開している。変換効率の高さという要因に加え、これまで歴史的に培
19
ってきた販売店網等のサプライチェーンや小売りでの品質管理ノウハウ・体制等を構築し
ていることが重要な競争力になっている。ただし、住宅市場についても、個別訪問販売型
から、ハウスメーカーやデベロッパーと連携した大量一括販売型へと販売形態を大量販売
にシフトしつつある。
図表Ⅰ−3−7
わが国の太陽電池メーカーの競争優位と競争劣位
競争優位=技術・品質
…
高い技術水準
†
…
†
†
…
…
…
投資スピード・投資規模
†
30年レベルの耐久性
†
10年以上の長期保証
システムまでトータルでの品質保証
ソーラーファンドで日系パネルの指名買
いあり
†
†
†
…
…
高品質の日本製品は「社会インフラとしての
太陽電池」にマッチ=半導体等の商品ライフ
サイクルとの違い
「長期間利用」で発電コストに高い優位性あり
…
輸送コスト、マーケット開拓
FIT導入国との力強さの格差
高い価格競争圧力
中東・インド等の新興市場の開拓
†
世界市場で高いブランド力・信頼を獲得
海外の専業・水平分業型の高い対応力=オイ
ルマネー・ファンド等の積極的活用
足下の国内市場の弱さ
†
…
シリコン、レアメタル
主要市場である欧米マーケットとの距離感
†
…
装置・材料等の関連産業の高い技術力
産業の歴史的蓄積
†
資源・材料の確保
†
品質保証体制の確立
†
…
変換効率、高信頼性、品質安定性
耐久性
†
…
競争劣位=グローバル対応力
価格競争力
現地で新興メーカーが誕生
政策的にマーケットの囲い込みが
立地インセンティブ
†
†
海外での手厚い優遇措置の恩恵を受けた企業
との競争
産業立地のグローバル競争
資料)ヒアリング等をもとに九経調作成
4)日本における太陽光発電産業の取引構造
太陽電池メーカーのビジネスモデルを考慮すると、変換効率の高さに加えて、製品の耐
久性や品質保証体制、価格競争力が特に重要な課題となる。また、シリコン不足によって
マーケットの旺盛な需要に応えられなかったという苦い経験もあり、結晶系太陽電池では、
材料の調達体制の確立という点も大きな課題となっている。このようなことから、わが国
では、太陽電池メーカーを軸とした戦略的アライアンスが加速し、垂直統合構造が構築さ
れようとしている。垂直統合構造の対象は、結晶系太陽電池では、材料(ポリシリコン∼
インゴット・ウエハ)∼セル∼モジュール・システム∼販売・施工であり、薄膜系太陽電
池では、セル・モジュール∼装置である。材料確保、性能向上、生産性向上、スピーディ
ーな事業展開、低コスト化、品質保証、技術流出抑止などが、垂直統合を進めようとする
インセンティブとなっている。
たとえば、シャープは、結晶系太陽電池に関して、材料開発・材料確保の観点で新日鐵
が設立した NS ソーラーマテリアル(太陽電池向け多結晶シリコン製造・販売)と連携した
ほか、自社でもシリコン工場を設けた。また、製造プロセス開発では、東京エレクトロン
20
と薄膜プラズマ CVD 装置分野において合弁会社を設立した。昭和シェルソーラーにおいて
も、製造プロセス開発でアルバックと共同研究している。
薄膜系太陽電池にとって、成膜プロセスは競争力の源泉である。したがって、先述した
共同開発も、成膜プロセスのノウハウはあくまでも太陽電池メーカーが握り続ける形での
アライアンスと言われている。ただし、これまでの半導体・FPD 産業の歴史をひもとけば、
相当のノウハウが装置メーカーに流出することが考えられる。東京エレクトロンとアルバ
ックは、ともに太陽電池製造装置の外販を展開しているため、長期的には第2世代の薄膜
系太陽電池のフルターンキービジネスが世界的に進んでいく可能性は高いとみられる。し
かし、技術流出のリスクよりも、旺盛な需要へのスピーディーな対応と熾烈なコスト競争
を勝ち抜くためには、製造技術のレベルアップ(生産性向上:歩留まり向上、スループッ
トの向上等)が必要不可欠であるとの判断が働いたものとみられる。
なお、成膜工程を除く製造検査装置については、成膜工程以上にアウトソーシングする
動きが進みはじめている。
図表Ⅰ−3−8
太陽電池関連産業の産業連関の構図
商品開発
アプリケーション
メーカー
デバイス構造
材料・部材
装置メーカー
生産プロセス
システム
メーカー
販売店
(設備・メンテ)
デベロッパー
課題解決
研究開発
システム供給
資料)ヒアリング等をもとに九経調作成
21
カスタマー
太陽電池メーカー
材料メーカー
部材メーカー
4.太陽光発電産業に関する新しい産業形成の芽
先行する大手太陽電池メーカーの事業戦略は極めて明確なため、その戦略にマッチした
分野で新産業が形成できる可能性が高い。また、その一方でマーケットでのニーズはある
ものの、大手メーカーがターゲットとしない領域も明確に存在しており、この領域も今後
の新産業形成の可能性を秘めた部分となる。
まず、大手太陽電池メーカーの事業戦略に沿った関連ビジネスとしては、①材料ビジネ
ス、②装置ビジネス、③インテグレータービジネス、④リサイクルビジネスがある。また、
大手太陽電池メーカーと差別化ができる関連ビジネスとしては、⑤新領域アプリケーショ
ンビジネス、⑥新領域にマッチした太陽電池関連ビジネスの2つがある。
1)材料ビジネス
太陽電池メーカーの品質向上(変換効率・耐久性)と低コスト化(製造プロセス・リサ
イクル)に対応した材料が求められている。特に、結晶系太陽電池では、シリコンの品質
と供給能力がビジネスの鍵になる。薄膜系太陽電池では、各種成膜工程で必要な高純度ガ
スや希少金属の品質と供給能力、ならびに低コストな透明導電ガラスの供給力が鍵になる。
2)装置ビジネス
ひとつは、ターンキービジネスのような製造工程のすべての装置を供給し、エンジニア
リングするビジネスである。これに加えて、薄膜系太陽電池では、量産ラインの歩留まり
向上が至上命題となっており、これに寄与する装置や部材、モジュール等を供給するビジ
ネスである。先述したように、成膜プロセスは太陽電池メーカーの競争力の源泉であるの
で、現状では参入機会は限られている。大手装置メーカーとのアライアンスが進みつつあ
るが、現状では装置に組み込む部材やモジュール、制御ソフト等を部品として供給するベ
ンダービジネスとしての取引が中心になっている。しかしながら、それ以外の製造工程、
具体的にはスクライビング工程や検査工程などにおいては、装置自体を外部から調達する
太陽電池メーカーもある。この領域においては、薄膜系太陽電池メーカー向けに装置ビジ
ネスが成立する可能性がある。いずれにしても、装置関連のビジネスを行うためには、自
社で明確なコア技術を持ち、太陽電池メーカーとの開発試作段階から取引を進められるよ
うな連携が不可欠である。
3)インテグレータービジネス
インテグレーターとは、メガソーラー発電所や大型ソーラーパーク等の大規模な太陽光
発電システムの設計・設置を手がける建設系システムメーカーである。主要メーカーはほ
とんどが欧州にあり、フィードインタリフ導入国で建設される投資案件としてのメガソー
ラーを対象としたビジネスを展開している。太陽光発電システムの設計を自社で行い、太
22
陽電池メーカーから太陽電池や周辺機器を購入する。一部の周辺機器については自社生産
するなどメーカー的要素をもったビジネス展開をしていることも多い。わが国では未発達
なビジネス形態であるが、2009 年に入って、わが国においてもフィードインタリフの導入
が検討されはじめたことから、今後国内においてもインテグレータービジネスが起こり、
これが太陽光発電産業の拡大に重要な役割を果たす可能性が高い。
4)リサイクルビジネス
太陽電池は、この 10 年ぐらいで爆発的な普及が始まった。システムの耐用年数が 10 年
以上なので、現在のところ大きな問題になっていないが、今後は廃棄される太陽電池が大
量に出てくることが予測される。NEDO でも、リサイクル技術研究(太陽光発電システム
共通基盤技術研究開発:太陽光発電システムのリサイクル・リユース処理技術等の研究開
発)を実施しており、2010 年には 500 トンに及ぶ廃棄がなされると予測している。まずは、
結晶系太陽電池が対象となるが、現状では周辺システム(パワコン、接続箱、架台等)は
リサイクルしているものの、太陽電池モジュール部分は、ガラスとアルミのみ回収し、そ
の他シリコンセル等は破棄・埋め立てしている状況にある。重量比で8割程度の回収率と
なっているが、今後は、太陽電池製造時に使用する電力の大幅削減を果たしていくために、
シリコンセル部分の回収システムの確立が求められており、この点は業界で共通した課題
となっている。なお、将来的には、CIGS 等の薄膜系太陽電池からレアメタル等の回収を行
うビジネスも出てくるだろう。薄膜系太陽電池のリサイクル技術は、熱処理から機械処理、
湿式冶金処理と希少金属回収のプロセスも確立している。ただし、リサイクルコストが高
いという課題は残っている。接着剤である EVA 等のリサイクル容易性材料の開発やカバー
ガラスの除去技術、部材の共通化/標準化など、業界で確立すべき共通技術もあり、これ
らの社会システム作りとともにビジネスが成立してくるとみられる。
5)新領域アプリケーションビジネス∼ユビキタス電源用途アプリケーション
先述したとおり、大手の太陽電池メーカーの主要ビジネスフィールドは電力発電用途で
あり、設置・固定型が主力である。できるだけ同品種のものを大量に生産することがコス
ト低減に直結するため、カスタマイズはできる限り行わない場合が多い。現在、わが国で
唯一フィルム基板上にデバイスを形成したフレキシブル太陽電池の量産体制を確立してい
る富士電機システムズ(無機薄膜系:薄膜シリコン)においても、メインターゲットは事
業所や公共施設等の設置・固定型のフィールドである。年産数十 MW クラスの生産能力を
持った以上、まずは大量に販売できるマーケットを開拓することが先決であるという判断
である。
このようななか、設置・固定とは対極をなす、移動・モバイル型のマーケットも見え隠
れしている。たしかに、現状では市場規模は非常に小さい。しかしながら、それはモバイ
ル用途に適した太陽電池が存在せず、アプリケーションが開拓されていないからである。
23
古くは、電卓が薄膜シリコンの太陽電池市場を作り上げた例はある。しかし、現在は、モ
バイル製品が電卓から、携帯電話、携帯型デジタルオーディオプレイヤー、ノートパソコ
ン、ミニノート、電子手帳・電子辞書、デジタルカメラなど多岐にわたるとともに、その
電力消費水準も高まってきている。また、防災やセキュリティ機器、アウトドア用品、充
電式乾電池など、モバイル型の新しい用途開拓の可能性については枚挙にいとまがない。
そのほかにも、無線通信とセンサー技術の発達によって、ユビキタスセンサーネットワー
ク社会が構築されるなかで、ユビキタスセンサーの電源問題は大きな課題となっており、
ここにも新しいマーケットの可能性がある。
ニッチなマーケットではあるが、ミリ級・マイクロ級等のモバイル型のユビキタス電源
用途では、従来の電力発電用途のビジネス領域とバッティングしないベンチャー的ビジネ
スが起こる可能性がある。
6)新領域にマッチした太陽電池関連ビジネス∼有機薄膜系太陽電池関連ビジネス
新領域アプリケーション、すなわちモバイル型のユビキタス電源用途のマーケットでは、
現在のところこの用途にマッチした太陽電池が存在しない。軽量・フレキシブルでミリ級
の発電をする低価格な太陽電池が必要である。発電条件やデバイスの大きさ、製品形状に
よっては、結晶系太陽電池や無機薄膜系太陽電池(アモルファスシリコン、CIGS 等)もこ
の条件を満たす可能性はある。ただし、各社がビジネスのターゲットとしていない上、価
格やフレキシビリティ、デザイン性をさらに追求しようとすると限界もある。これに対し
て、色素増感や有機薄膜といった有機薄膜系太陽電池がひとつの解になる可能性がある。
有機薄膜系太陽電池は、現状においては変換効率や耐久性が結晶系太陽電池や無機薄膜太
陽電池に劣る。また、低コストな量産技術も現在確立している最中の段階である。しかし
ながら、理論変換効率は、これらよりも高く、簡易な製膜手法により超低コストでの量産
の可能性がある。また、化学的視点からのアプローチになるため、わが国が強みを有する
機能性材料の蓄積が生かせ、新しいプレイヤーが産業を形成していく可能性も秘めている。
既存の太陽電池と異なる領域からの新規参入や新しいプレイヤーの活躍によって、新しい
マーケットを開拓しつつ、材料開発や装置開発を進めていくことで、関連産業までを含め
た新たな太陽電池ビジネスが生まれる可能性がある。
24
第Ⅱ章
九州の太陽光発電産業の特徴とポテンシャル
1.薄膜系太陽電池の主力生産拠点としての九州
九州の最も大きな特徴は、無機薄膜系太陽電池(アモルファスシリコン、CIGS)の世界
的な生産拠点になっていることである。第1世代の結晶系太陽電池メーカーは、主に関西・
中部を生産拠点としていたが、第2世代の薄膜系太陽電池で事業参入を果たした三菱重工
業、富士電機システムズ、昭和シェルソーラー、ホンダソルテックの4社が九州に拠点を
構えている。先行するシャープや三洋電機等も薄膜系太陽電池の大幅増産・事業化を検討
中であり、これらは関西になりそうであるが、薄膜系太陽電池産業集積が「関西」と「九
州」の2極にできつつある。
なお、九州に立地する薄膜系太陽電池メーカー4社は、三菱重工業と富士電機システム
ズの2社が薄膜シリコン太陽電池であり、昭和シェルソーラーとホンダソルテックの2社
が化合物系太陽電池である。また、モジュールメーカーの YOCASOL は、結晶系太陽電池
モジュールを主力事業としているが、将来的には薄膜系太陽電池のモジュールにも意欲を
示している。
九州に立地する薄膜系太陽電池メーカーの生産能力は、2007 年に年産約 100MW(約 500
億円)だったものが、2010 年までに約 500MW(約 2,000 億円)に達する見込みである。
九州では、先の4社を中心に、毎年 200∼500 億円程度の設備投資の計画があり、生産能力
が急激に拡大していく見込みである。
世界の太陽電池の成長率を 30%で想定すると、九州は 2010 年に世界の5%、日本の 15%
程度のシェアを握る一大薄膜系太陽電池生産拠点へと成長するとみられる。
25
図表Ⅱ−1−1
わが国の主要太陽電池工場
資料)資源総合システム、産業タイムズ社等の資料より作成
図表Ⅱ−1−2
九州の薄膜系太陽電池メーカーの生産能力と今後の設備投資計画
生産能力
(2007年)
今後の
設備投資計画
研究開発
特徴
アモルファス、
微結晶タンデム
28MW
40MW/2008年
50MW/2009年
130MW/2010年
250MW/2012年
(約600億円)
諫早
・大面積高速製膜技術(VHFプラズマCVD
製膜技術、微結晶Si高速製膜技術)
・製膜ユニットセルフクリーニング技術
・さらなる多接合化(NEDO革新的技術研究
採択2008)
アモルファス
(フィルムタイプ)
12MW
40MW/2009年
150MW/2011年
(370億円)
熊本南関
・フレキシブルモジュール(計量、大面積)
・絶縁性基板
・ステッピングロール製膜装置
熊本県大津町 2007年10月
CIGS
薄膜化合物
27.5MW
−
栃木芳賀/
埼玉和光
・黒色モジュール
・安価なモジュール価格(145万円/kW)
・国内販売網の重点化(総合的な品質保証
体制の確立)
昭和シェルソーラー 宮崎県田野町 2007年1月
CIS
薄膜化合物
20MW
60MW/2008年
80MW/2009年
1,000MW/2011年
(1,000億円)
宮崎田野/
神奈川厚木
97.5MW
187.5MW/2008年
357.5MW/2009年
487.5MW/2010年
企業名
三菱重工業
所在地
長崎県諌早市
操業年次
2002年
富士電機システムズ 熊本県南関町 2006年11月
ホンダソルテック
九州計
パネルタイプ
注)今後の設備投資計画の九州合計値は、各社の設備投資が九州内で実施された場合の想定値。
資料)各社資料より作成
26
・黒色モジュール
・接合界面制御技術(CIS系光吸収層/高抵
抗バッファー層など)
図表Ⅱ−1−3
太陽光発電産業における九州の将来的なポジショニング
(MW)
(%)
12,000
世界
10,000
日本
16.0
14.0
13.7
12.0
九州
8,000
6,000
10.3
世界シェア
国内シェア
10.0
8.0
7.5
4.9
4,000
3.6
2.6
2,000
14.0
97.5
187.5
4.8
6.0
4.0
357.5
487.5
2.0
0.0
0
2006
2007
2008
2009
注1)2006年まで実数。2007年以降は年率40%成長と想定。
注2)九州の値は、現在立地する4社の増産計画がすべて九州で実施されたと想定して算出。
資料)各社資料より九経調算出。
27
2010
2.高まる太陽電池関連の研究開発機能の集積
九州には薄膜系太陽電池に関連した研究開発機能の集積も進み始めた。大学や研究機関
の研究開発拠点形成の動きに加え、メーカーの研究開発機能も拡充されつつある。さらに、
有機薄膜系太陽電池に関する産学官連携の場も起こりつつある。
九州に立地する薄膜系パネルメーカー4社は、いずれも世界トップレベルの技術を有し、
事業を急速に拡大させつつある。しかし、先に述べたように、生産性の高い量産技術の確
立は喫緊かつ明確な課題である。特に、製造プロセスの可視化(計測技術)や原理の解明
など、量産技術の確立のために必要な基礎的研究領域もある。さらに、変換効率の向上と
製品の高耐久性の実現に向けた材料やモジュール化の技術開発、薄膜系太陽電池の正確な
性能評価・出力評価技術の確立なども大きな課題である。これらの地元の技術課題への解
決に向けた取組みは、新たなビジネスチャンスでもあり、産業集積形成の鍵にもなり、産
業の国際競争力の向上にも繋がる重要なテーマである。
1)大学や研究機関の研究開発拠点
(1)産業技術総合研究所の評価拠点構想
産業技術総合研究所太陽光発電研究センターでは、九州経済産業局と連携して、鳥栖の
産業技術総合研究所九州センターに太陽電池評価拠点の形成を計画している。太陽光発電
システムの大型化などによって、これから実環境下で起こるさまざまな現象を解析する必
要性が高まる。故障診断システムや発電量評価システムの確立など、システムの信頼性検
証に係る情報の蓄積と研究開発へのフィードバックによって、システムの普及拡大や高付
加価値化が図られることで、太陽光発電産業の産業規模の拡大と国際競争力を高める効果
が期待される。特に、薄膜系太陽電池での実環境下での性能は高く、結晶系太陽電池との
間の変換効率の差は、実験室下で計測される変換効率ほど大きくないことが多いと言われ
ている。この点に関する実証研究によって、新たな発電量評価の新基準(=変換効率では
なく、実際の発電量で評価する基準)を確立していくことが薄膜系太陽電池の振興には欠
かせない。九州に立地する薄膜系太陽電池メーカーとの連携が期待されている。
(2)知的クラスター創成事業でのエコデバイスへの展開
知的クラスター創成第Ⅱ期事業(2007 年度∼2011 年度)において、福岡は「福岡先端シ
ステム LSI クラスター構想」を進めている。事業の中核は、先端的なシステム LSI 開発拠
点化であり、研究テーマとして 24 本のプロジェクトが進行中である。これらは、アプリケ
ーション(最終製品)を見据えた基礎研究から実用化研究までを包括しており、将来のユ
ビキタスセンサーネットワーク社会の構築に向けたテーマが多い。これらのセンサーに求
められる電源問題として光電変換デバイス(太陽電池)や熱電変換デバイスにも注目が集
まっており、LSI への集積化なども今後検討されていくことになる。なお、第Ⅱ期事業が進
28
捗するなかで、次世代の研究テーマとして、ユビキタスセンサーネットワークに加えて、
3D マイクロインテグレーション(3次元実装システム)
、グリーンデバイス・エコデバイ
ス(エネルギーデバイス、省エネデバイス)に注力することが検討されている。なお、こ
れらの基盤技術として、有機エレクトロニクスの重要性が認識されており、新材料の探索、
構造・動作原理解明、構造制御等に関する次世代の研究開発案件が検討されつつある。
(3)リサイクル実証拠点の存在∼北九州エコタウンの実証実験エリア∼
九州には、リサイクル技術の研究開発を行う公的インフラとして、北九州エコタウンが
ある。特徴として、①人材・技術・ノウハウが蓄積し、産業インフラとして高いポテンシ
ャルを有する、②公害克服で培われた市民、企業、行政の連携が強い、③アジア諸都市を
中心とした環境国際協力の実績が 20 年以上にわたること等があげられる。エコタウン内に
は、各種のリサイクル工場が建ち並ぶ総合環境コンビナートエリアや響リサイクル団地の
ほかに、実証研究エリア(7.7ha)が併設されている。北九州エコタウンでは、環境産業の
振興のために、①教育・基礎研究、②技術・実証研究、③事業化を3点セットで行い、教
育から技術実証、そして事業化といった一貫した流れで支援している。教育・基礎研究で
は、北九州学術研究都市(北九州市立大学、九州工業大学、早稲田大学大学院)と連携を
図り、技術・実証研究に関しては、エコタウン内の実証研究エリアで産学連携によるリサ
イクル技術の実証研究から実用化に至るまでの支援がなされている。また、事業化では、
中小・ベンチャー企業の事業支援をサポートする地区として、リサイクル工場が集積する
総合環境コンビナート、地元中小・ベンチャー企業が立地する響リサイクル団地等がエコ
タウン内にある。
図表Ⅱ−2−1
北九州エコタウンにおける実証実験フィールド
資料)北九州エコタウンのホームページ
29
2)薄膜系太陽電池メーカーの研究開発拠点
(1)三菱重工業の研究拠点形成
三菱重工業では、元々太陽電池の開発は長崎と諫早で行っていた。したがって、主たる
研究開発チームは長崎と諫早にいるが、2009 年になって諫早に新たに次世代型太陽電池の
研究開発・量産化実証拠点の開設を決めた。微結晶タンデム型について、さらなる改良を
加え、大型化と変換効率 15%以上を目指した研究開発に取り組む。早期事業化に向けて量
産技術の確立が欠かせないことから、研究開発の拠点を生産拠点と併設することに決めて
いる。
(2)富士電機システムズの研究拠点形成
富士電機システムズの研究開発の中核部隊は千葉や東京、豊田などにいるが、熊本でも
主に生産技術に関する研究者が 10 人以上おり、
生産技術の開発を担っている。技術開発は、
基本的に自社で行うが、材料メーカーや装置メーカーとの連携は必須と考えている。装置
も設計は自社で行いつつも、機械化の段階では地場企業との連携を進めている。熊本では、
現在の1ライン 12MW 体制から、3ライン 40MW 体制に拡充しつつある。第1ラインの
立ち上げでは、九州の地場企業との関係はほとんどなかったが、第2ラインの立ち上げで
は約 40%程度の部材供給を九州から行っている。
(3)その他材料系メーカーの研究拠点も存在
太陽電池メーカーのみならず、太陽電池関連の材料メーカーの研究拠点も九州には多数
立地する。特に、有機薄膜系太陽電池関連の材料メーカーの研究拠点が多い。三菱化学(有
機色素)や新日鐵化学(有機色素、有機 EL 材料)、日揮触媒化成(ナノチタニア、色素)、
フロンティアカーボン(フラーレン)などがある。
3)有機薄膜系太陽電池に関する研究交流の場
(1)有機 EL 討論会
同討論会は、2005 年 8 月に設立された。有機 EL に関する研究開発が持続的かつ高度な
レベルを維持していくために、研究者・技術者の意識意欲の高揚と共有が必要との認識の
上、組織を超えた学際的な研究活動と実践的技術開発活動の結合を促進するための情報交
流の場とすることが主旨である。会員数は約 600 名。現場のリアルな問題の議論を通じて、
新産業の創出を果たしていこうという高い志をもった研究会を目指している。有機化学、
高分子化学、材料工学、界面科学、固体物性学、デバイス物理学、電気電子工学などの幅
広いメンバーで構成されている。代表に元九州大学大学院総合理工学研究院筒井哲夫先生
が、また副委員長に服部励治先生(九州大学大学院システム情報科学研究院)、委員に安達
千波矢先生(九州大学未来化学総合センター)が参画するなど、九州大学がひとつの核と
なっている。
30
(2)北九州薄膜太陽電池研究会
同研究会は、2008 年2月に、九州工業大学早瀬教授(色素増感太陽電池)と北九州産業
学術推進機構が中心となって設立された。参画企業には、三菱化学、新日鐵化学、フロン
ティアカーボン、大日本印刷などがある。早瀬教授の持つ色素増感太陽電池のレベルアッ
プと、デバイス化・商品化を目指している。北九州市では、2001 年度から産学連携による
「色素増感型太陽電池研究会」をスタートさせており、対象分野を広げる形で新たな研究
会を再スタートさせている。
(3)有機薄膜研究会
同研究会は、2009 年2月に、熊本県産業技術センターが中心となって設立された。参画
企業には、東京エレクトロン九州や平田機工などがある。次世代の太陽電池に求められる
コスト競争力を実現するものとして、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池に注目してい
る。次世代 FPD や次世代照明でも有機 EL が注目されるなど、「有機薄膜」が次世代エレ
クトロニクスのコア技術になると考え、材料、薄膜の形成手法、装置の技術開発で主導権
を握り、新たな産業づくりを進めていくことを目指している。
31
3.装置・材料メーカー等のサポーティング産業の存在
これまで、シリコンアイランド九州として培ってきた半導体関連企業約 700 社の産業集
積は、太陽電池メーカーの生産拡充や研究開発に対して重要なサポーティング機能として
の役割を果たしている。また、これらをネットワークする組織として、産業クラスター政
策のなかで、中核機関として「九州半導体イノベーション協議会 SIIQ」があり、情報や人
的な交流、ならびに企業間ネットワークの構築がスムーズに行われつつある。
なお、九州に立地する半導体・FPD 企業における太陽光発電産業に対する関心は極めて
高い。詳細は後述するが、今回調査で行ったアンケート調査(太陽光発電関連産業拠点化
に関するアンケート、対象:九州の太陽光発電ならびに半導体関連メーカー926 社、回答
183 社、回答率 19.8%)によると、すでに約 70 社が事業参入を果たすとともに、7割以上
の企業が太陽光発電産業に関心をもっている。装置や部品等の供給での参入が中心で、製
造プロセスでは、搬送や成膜、セルテスト等幅広い領域に及ぶ。さらには、これら参入企
業の 86.3%が今後とも太陽光発電関連事業を拡大予定であるとしており、現在太陽電池に
参入していない企業についても、約 30 社が参入を検討している。九州では、関連のサポー
ティング産業において太陽光発電産業への期待感が非常に高まっている。
図表Ⅱ−3−1
プロセス
搬送全般
九州の企業が現在関わっている製造プロセスの具体的内容
事業所名
所在地
業種
具体的な内容
㈱プレシード
熊本県
製造/検査装置
ガラス基板の取り出し、洗浄、搬送
ローツェ㈱
第一施設工業㈱
熊本県
福岡県
製造/検査装置
設備・環境
ウェーハ検査
上下階への垂直搬送設備(クリーンソフター)
エッチング(ウェット)
㈱カンセツ久留米事業所
弘田化学工業㈱
福岡県
福岡県
機械設計事業
各設備への搬送装置の設計
その他(薬品製造) 表面加工
スクリーン印刷
成膜(スパッタリング)
九栄スクリーン㈱
福岡県
中興化成工業㈱ 福岡本部 福岡県
その他
素材・材料
スクリーンマスク製造
蒸着による薄膜成型時の搬送用ベルト供給
成膜(プラズマCVD)
田中貴金属販売㈱福岡支店 福岡県
㈱西日本常盤商行
福岡県
素材・材料
その他
Ag(銀)系のスパッタリングターゲット
膜の品質検査
㈱マルマエ
ケー・エム・テクノロジー㈱
スクライビング(レーザー) 武井電機工業㈱
洗浄(ウェット)
カミマル㈱九州事業部
鹿児島県 製造/検査装置
長崎県 製造/検査装置
一式
装置メンテナンス
佐賀県
大分県
製造/検査装置
薄膜レーザーパターニング装置の製造
装置関連部品・金型 ドライアイスブラストによる洗浄
長崎県
大分県
製造/検査装置
装置メンテナンス
装置関連部品・金型 ドライアイスブラストによる洗浄
洗浄(ドライ)
ケー・エム・テクノロジー㈱
カミマル㈱九州事業部
ラミネーション
中興化成工業㈱ 福岡本部 福岡県
素材・材料
EVAラミネート時の離型シートを供給
セルテスト
タブ付け
㈱デンケン
㈱デンケン
大分県
大分県
電気・電子機器
電気・電子機器
特性検査
特性検査
ラミネーション
特性評価(セル)
中興化成工業㈱ 福岡本部 福岡県
九州計測器㈱
福岡県
素材・材料
電気・電子機器
保護フィルムをラミネート時の離型シートを供給
実験室レベルでの計測
特性評価(モジュール)
組立・施工
九州計測器㈱
㈱三松
福岡県
福岡県
電気・電子機器
フィールドでの実証試験等の測定
装置関連部品・金型 フレーム、架台制作
シリコン抽出・分離
㈱プレシード
ケー・エム・テクノロジー㈱
熊本県
長崎県
製造/検査装置
製造/検査装置
注 1)九経調「太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート」より
注 2)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケートより九経調作成
32
新しい組立、施工法の開発
シリコン材料の供給
4.技術蓄積を生かした技術応用による新事業創造の高まり
九州に立地する薄膜系太陽電池メーカーにとって、効率的な生産を行う上で、地場企業
との協力関係は重要である。半導体・FPD・太陽電池の共通要素技術について次章に詳述
するが、これをもとにして太陽電池の要素技術に対して、地場企業が持つ技術シーズを整
理した。その結果、九州には製造プロセスから材料に至る比較的広範にわたってシーズを
有する企業が存在することがわかった。半導体産業や FPD で培われた技術蓄積の横展開(応
用展開)の可能性を示している。これらの技術蓄積と太陽電池メーカーを繋ぐことで、ア
ウトソーシングや装置等の共同開発、部資材の供給、メンテナンス・エンジニアリングな
ど、今後様々な側面で新事業が始まる可能性がある。
図表Ⅱ−4−1
既存産業集積から見た九州のポテンシャル(製造プロセス)
(社・事業所)
35
31
30
25
30
25
20
20
19
19
18
16
15
15
11
10
12
12
11
10
8
7
4
5
15
12
6
5
6
5
9
6
4
3
4
2
2
0
0
0
0 0
0 0 0
0
0 0
0 0
レ
ウ
レ
出
力
検
査
解
析
モ
ジ
︶
セ
ル
特
性
評
価
ュー
端
子
取
付
︵
ミ
ン
グ
特
性
評
価
︵
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処
理
︶
ン
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フ
レ
ー
プ
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︶
ル
設
計
組
立
・
施
工
シ
リ
コ
ン
抽
出
・
分
離
レ
ア
メ
タ
ル
抽
出
・
分
離
︶
発
電
検
査
タ
ブ
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け
レ
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ョ
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浄
抵
抗
測
定
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︶
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形
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状
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球
状
S
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ル
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ッ
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入
ラ
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ネ
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ー
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着
︵
研
磨
︵
、
、
︶
、
ャ
︶
反
発
そ射
電電
成
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極層
膜
他止
形
膜
成
パス
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温
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式
ー
ズ
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C
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︵
ッ
︶
テ
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ン
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面
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イ
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ン
注
入
タ
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ス
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ー
ダ
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ン
グ
ト
︵
搬
送
ス
ラ
イ
シ
ン
グ
ウ
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ド
ラ
イ
ッ
セ
ス プ
高 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42
1 2 3 4 5 6 7 8 9パ
10
11 12
メ
ラ
ル
セル工程
モジュール工程
評価・解析
システム リサイクル
注1)九経調「太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート」より
注2)半導体関連企業を中心に抽出
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート、九州経済調査協会「MAP2008 九州とアジアの半導体実装関連企業デ
ータベース」より九経調作成
33
図表Ⅱ−4−2
既存産業集積から見た九州のポテンシャル(材料・部材)
(社・事業所)
35
30
30
28
25
20
17
19
18
15
10
6
7 6
3
5
7 6
7
4 5
3 2 2 2 4
3
0 1
8 8
5
ー
ー
ッ
ィ
プ ポ シ 薄 酸 化 有 有 ナ 電 透 青 白 フ ス そ ガ フ バ 封 リ 配 ア パ 接 昇 表 電 ケ イ バ 電 ア
ィ
0
10
9
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ロ リ リ 膜 化 合 機 機 ノ 極 明 色 色
1セ
2シ 3コ 形
4 物
5 物
6 薄
7 系
8 粒
9 101112131415161718192021222324252627282930313233
箱 接 ユ 貯 ブ バ バ モ ミ
用 電 ガ ガ ル ン 他 ス ル ク 材 ド 材 ミ
ー
︵
ー
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ッ
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︶
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蓄
電
装
置
ッ
︶
電極
基板
セル・モジュール材料
シ
ョ
︶
薄膜材料
配
線
コ
ン
デ
ィ
︶
ー
カ
バ
セル
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ん ム
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ム シ 料 フ
レ
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V ム
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︵
色 子 金 極 ラ ラ ム レ
ス
素
属 用 ス ス
材
金
料
属
ー
膜
系
材
料
︵
半
導
体
材
料
ー
ェ
ス リ ン 成 半
用 コ ウ 用 導
反 体
薬 ン
ハ 応 材
品
ガ 料
ス
モジュール
システム材料・部材
注1)九経調「太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート」より
注2)半導体関連企業を中心に抽出
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート、九州経済調査協会「MAP2008 九州とアジアの半導体実装関連企業
データベース」より九経調作成
34
5.大学の研究シーズからみた九州のポテンシャル
1)薄膜系太陽電池に関する研究者が集まる九州
九州では、各大学に太陽電池関連の研究者が多くいる。特に、プロセスやデバイス関係
では九州大学、九州工業大学、宮崎大学が特に精力的に取り組んでいる。また、材料関係
では九州大学が有機材料分野で世界的にも注目されている。九州の大学の持つ研究シーズ
の最大の特徴は、有機薄膜系太陽電池(色素増感、有機薄膜)関連研究者の集積の厚みが
あるということができる。
図表Ⅱ−5−1
九州の太陽電池関連研究者の PV 別グルーピング
薄膜シリコン系太陽電池
有機系太陽電池
色素増感型太陽電池
有機薄膜太陽電池
九州工業大学:早瀬先生
九州工業大学:白土先生
九州大学:木田先生
九州大学:山田先生
九州大学:米村先生
北九州市立大学:鈴木先生
佐賀大学:渡先生
大分大学:天尾先生
九州大学:安達先生
九州大学:藤田先生
九州工業大学:金藤先生
熊本大学:栗原先生
崇城大学:八田先生
九州大学:渡辺先生
九州大学:白谷先生
九州大学:田中先生
崇城大学:逸見先生
長崎大学:藤山先生
鹿児島大学:寺田先生
化合物系太陽電池
九州大学:吉武先生
熊本大学:連川先生
都城高専:赤木先生
宮崎大学:吉野先生
宮崎大学:西岡先生
鹿児島大学:寺田先生
注)本図は、弊所が時間制約のなかで調べた限りであって、あくまでイメージをつかむためのものである。順不同。
資料)九州経済調査協会作成
2)無機薄膜系太陽電池に関する主要研究者
生産性の高い量産プロセスの確立が求められている無機薄膜系太陽電池において、その
製造プロセス関連研究者の存在もみられる。薄膜シリコン太陽電池では、九州大学の渡部・
白谷・田中研究室、崇城大学の逸見研究室、長崎大学の藤山研究室、鹿児島大学の寺田研
究室などがある。化合物系太陽電池では、九州大学の吉武研究室、熊本大学の連川研究室、
都城高専の赤城研究室、宮崎大学の吉野・西岡研究室、鹿児島大学の寺田研究室が取り組
んでいる。
また、立命館アジア太平洋大学には、シャープで太陽電池事業に深く関わっていた中田
先生がおり、2008 年に設立した AP-IMAC(アジア太平洋イノベーション・マネジメント・
センター)にて、太陽電池のグローバルマーケティングについて取組みをはじめている。
3)有機薄膜系太陽電池に関する主要研究者
色素増感太陽電池では、九州工業大学の早瀬研究室が中核的な研究を行っている。同大
学の白土研究室、九州大学の山田研究室(米村先生は同研究室の准教授)や木田研究室、
35
北九州市立大学の鈴木研究室、佐賀大学の渡研究室、大分大学の天尾研究室が精力的に取
り組んでいる。有機薄膜太陽電池では、九州大学の安達研究室や藤田研究室が取り組んで
いる。また、九州工業大学の金藤研究室、熊本大学の栗原研究室、熊本崇城大学の八田研
究室も取り組んでいる。有機薄膜系太陽電池関連の特徴としては、材料、デバイス構造、
動作機構、プロセス技術など幅広い研究領域を設定している研究室が多い上、太陽電池の
みならず、有機 EL、有機トランジスタ、有機レーザーなど幅広い応用分野を見据えて研究
しているということがある。
図表Ⅱ−5−2
機関名
所属
役職
シ
リ
コ
ン
結
晶
系
バ
ル
ク
シリコン系
ア
モ
ル 球
フ 状
シ
ス リ
シ コ
リ ン
コ
ン
○
シ
リ
コ
ン
結
晶
系
薄
膜
ァ
氏名
九州の主要太陽電池研究者リスト
渡辺征夫
九州大学
大学院システム情報科学研究院
名誉教授
安浦寛人
九州大学
大学院システム情報科学研究院
教授
白谷正治
九州大学
大学院システム情報科学研究院
教授
○
藤田克彦
田中雅慶
木田徹也
九州大学
九州大学
九州大学
先導物質化学研究所
総合理工学研究院
総合理工学研究院
准教授
教授
准教授
○
吉武剛
九州大学
総合理工学研究院
准教授
宮原広郁
九州大学
工学研究院
准教授
山田淳
九州大学
工学研究院
教授
米村弘明
九州大学
工学研究院
准教授
安達千波矢
九州大学
未来化学創造センター
教授
早瀬修二
趙孟佑
金藤敬一
白土竜一
九州工業大学
九州工業大学
九州工業大学
九州工業大学
大学院生命体工学研究科
宇宙環境技術センター
大学院生命体工学研究科
工学研究院
教授
教授
教授
准教授
鈴木拓
北九州市立大学
国際環境工学部
准教授
渡孝則
佐賀大学
理工学部
教授
相川正義
佐賀大学
理工学部
教授
江良正直
佐賀大学
理工学部
准教授
天尾豊
大分大学
工学部
中田行彦
立命館アジア太平
アジア太平洋マネジメント学部
洋大学
教授
谷口功
熊本大学
教授
大学院自然科学研究科
熊本大学
大学院自然科学研究科
教授
鳥居修一
熊本大学
大学院自然科学研究科
教授
連川貞弘
熊本大学
大学院自然科学研究科
教授
栗原清二
熊本大学
大学院自然科学研究科
准教授
逸見次郎
崇城大学
工学部
教授
八田泰三
崇城大学
工学部
教授
吉野賢二
宮崎大学
工学部
准教授
西岡賢祐
宮崎大学
工学部
准教授
赤木洋二
都城工業高等専門
電気情報工学科
学校
○
鹿児島大学
工学部
教授
楠元芳文
鹿児島大学
工学部
教授
藤山寛
長崎大学
生産科学研究科
教授
松尾博文
長崎大学
生産科学研究科
教授
二宮保
長崎大学
工学部
教授
辻史郎
長崎総合科学大学 工学部
教授
・太陽電池用高品質アモルファスシリコン膜の高速作製
・ハードウェア/ソフトウェアコデザイン、システムLSIの設計手法、社
会基盤のための情報技術、低消費電力・低エネルギシステム設計技
術
・アモルファスシリコン太陽電池の高効率化(微粒子抑制型プラズマ
CVD法による高品質薄膜形成)
○
・有機超薄膜作製技術の開発と有機半導体デバイスへの応用
○
○
・太陽電池薄膜形成のためのプラズマ生成法
○ ○
・色素増感型太陽電池の開発といった機能材料の設計に関する研究
・高効率太陽電池素子(理論値:16-23 %)として可能性を秘めた
○
○ beta-FeSi2(鉄シリサイド半導体)の研究
・超ナノ微結晶ダイヤモンド薄膜太陽電池の研究
・太陽電池用多結晶シリコンインゴットの組織最適化
・金属ナノ粒子を使った光電変換機能の研究
○ ○ ○
・有機光電池の研究,表面・界面の分光センシング
・電極電位、光などを加えた多角的に応答する修飾電極の開発に取
○ ○ ○
り組みなど新しい光機能材料(色素増感太陽電池等)につながる基
礎研究
・有機太陽電池などの有機半導体デバイスの材料設計・合成からデ
○
バイス物理の解明
○
・色素増感型太陽電池の高効率化、新規材料合成、シミュレーション
○
・静止軌道衛星の帯電を防止する受動型電子エミッタの実用化研究
○ ○ ○
・導電性高分子によるソフトアクチュエータの開発
○
・色素増感太陽電池のための立体構造FTO電極の開発
・半導体電極の表面・界面制御による高機能色素増感太陽電池の研
○
究開発
○
・泳動電着法による色素増感太陽電池用TiO2膜の製造
・佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターを利用して、シリコンの
○
多層化や薄膜化に関する基礎研究
○
・電子伝導性有機色素を用いた高効率全国体型太陽電池の開発
・バイオマス太陽電池
○
○ ・緑色植物の光合成色素を利用した機能性太陽電池の構築に関す
る研究開発
○
・太陽電池産業のグローバル競争戦略
・機能化修飾電極を用いた金属タンパク質の電極反応とその応用
・単結晶電極上の機能化界面の解析
・太陽電池等価回路パラメータの推定と太陽光発電システム最適運
○
用への応用
○
・太陽電池パネル冷却用反重力ヒートパイプの開発研究
・結晶シリコンの結晶粒界の効率化
・化合物半導体(CdTe)の結晶粒界の研究
・太陽電池寄附講座(富士電機システムズ)
・液晶モノマーの合成と光機能材料への応用、液晶高次構造の光制
御、刺激応答性高分子の開発
・アモルファスシリコンの初期劣化の抑制
○
・ポータブル太陽電池など新型アプリケーションの開発
・小中学生向けの環境教育
・有機薄膜太陽電池の材料合成
・カルコパイライト型化合物半導体を用いた太陽電池の開発
・スプレー法やスパッタリング法を用いた透明電導膜の形成
・高効率シリコン系太陽電池をめざした反射防止構造の形成
○
・等価回路を用いた各種太陽電池の動作解析
・集光型太陽電池、宇宙用太陽電池の研究
・Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ2族カルコパイライト型太陽電池用半導体薄膜の作製と評
価
・CIGS系太陽電池の高効率化(光電子分光法(UPS)、逆光電子分光
法(IPES)を用いたCdS/CIGS界面バンド接続の直接評価)
・新規の太陽電池の開発(可視光応答型光触媒、タンデム型、水の
○
光分解)
・プラズマ技術を用いた太陽電池用大面積均一アモルファスシリコン
膜の形成
・太陽電池、燃料電池を用いたクリーンエネルギーシステムに関する
○
研究
・太陽電池と電気二重層コンデンサによるクリーンエネルギーシステ
○
ム
・太陽光発電水循環システムの開発
○
・ソーラーシップの開発など
○
○
○
○
○
○
○
○
○
准教授
寺田教男
研究テーマ
○
准教授
池上知顯
タ
ン
デ
ム
型
有機系
化
合
周 新
物
辺 型
系 有 色
関 太
機 素
連 陽
薄 増
分 電
膜 感
野 池
○
○
○
○
注)以下の資料より探索。なお、この資料は資料的・時間的制約のなかで調べた限りであり、すべての研究者を網羅できている訳ではない。
1.『早瀬修二, 藤嶋昭(2004), 「色素増感型太陽電池の開発技術 プラスチック化,大面積化,耐久性・変換効率向上」, 技術教育出版社』の執筆者
2.『荒川裕則(2007), 「色素増感太陽電池の最新技術II」, シーエムシー出版』の執筆者
3.『豊島安健, 内田聡(2007), 「最新太陽電池総覧」, 技術情報協会』の執筆者
4.『上原赫、吉川暹(2009), 「有機薄膜太陽電池の最新技術II 」』の執筆者
5.『特許庁(2005), 「特許出願技術動向調査報告書」』における研究者別論文発表件数ランキング上位者
6.『第5回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウム』の講演者
7.『第4回「有機太陽電池シンポジウム」』の講演者
8.『PVJapan2008』の講演者
9.研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)
資料)上記資料ならびにHP等をもとに九経調作成
36
6.九州における今後の太陽光発電産業の産業規模
九州における太陽光発電産業の産業規模(太陽電池の生産規模)は、各社の設備投資計
画を考慮すると 2020 年頃に約 500MW の生産能力に達し、その結果、世界の約5%、わが
国の 15%程度の規模になると先に述べた。
この規模を金額ベースに換算するとおよそ 2,000 億円程度になるとみられ、2007 年から
の3年間で産業規模が約5倍に拡大する可能性がある。また、太陽光発電システムの設置・
施工についても、政府目標(2008 年福田ビジョンベース)の 2020 年 14GW の達成に向か
って普及が進むと仮定すると、九州では毎年 160MW∼200MW 程度の導入量となり(2006
年の対全国比 21.0%を維持すると仮定した現状維持シナリオ)、このときの施工マーケット
は毎年 150 億円∼180 億円程度になると見られる。なお、九州において積極的な普及拡大
施策を展開し、2020 年に全国比 3 割程度にまで位置づけを高めると仮定すると(2020 年
全国比 3 割シナリオ)、2020 年には 350MW の導入で、施工マーケットは 320 億円程度に
なるとみられる。
このほかにも、関連する製造検査装置や材料、部資材等々、太陽光発電産業は幅広い。
したがって、これらも加味すると、2010 年頃には九州の太陽光発電産業は 2,500 億円程度
の産業規模にまで拡大していく可能性があるとみられる。
図表Ⅱ−6−1
九州における太陽光発電産業の将来の産業規模の推計
①太陽電池の生産量の推計値
②太陽光発電システム施工市場の推計値
(百万円)
(百万円)
250,000
35,000
207,851
200,000
25,000
152,424
21,590
18,294
20,000
150,000
15,000
100,000
32,275
30,000
15,007
10,000
79,943
5,000
0
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
50,000
41,570
0
2007
2008
2009
現状維持シナリオ
2020年全国比3割シナリオ
2010
注1)太陽電池の生産量は各社発表のMWベースの年産生産規模
(設備投資計画)で代替。
注1)導入量については、2008年8月発表の福田ビジョンの導入目標
値を想定。中間値は線形補完で算出。
注2)太陽電池価格は、NEDOが発表しているシステム価格構成
(2006年水準)の「太陽電池」分で代替。(kWあたり42万6,360円)。
注2)施工単価(設備工事単価)は、NEDOのシステム価格構成(2006
年水準)の1kWあたりの「設置工事」で代替(kWあたり9万2,480円)。
注3)将来的な太陽電池価格の低減効果は加味せずに算出。
資料)各社資料、NEDO資料等より九経調作成
注3)将来的な設備工事単価の低減効果は加味せずに算出。
注4)現状維持シナリオは、2006年の九州の対全国比21.0%(NEDO
住宅向け普及事業導入実績H6-16の対全国比)が継続するもの
と想定。2020年全国比3割シナリオは、普及拡大施策を展開し、
2020年に対全国比3割に達したと想定。
資料)各社資料、NEDO資料等より九経調作成
37
第Ⅲ章
太陽光発電産業の要素技術と既存産業集積との融合可能性
1.太陽電池の生産プロセスと半導体・FPD との技術親和性
1)太陽電池の種類とプロダクトサイクル
1954 年に米国ベル研究所で変換効率6%の単結晶シリコン太陽電池が報告されたことを
機に、太陽電池が電力発電用として認知されはじめ、各社での研究開発が本格化したと言
われている。その後は、結晶系の単結晶シリコンのみならず様々な種類の太陽電池の開発
が進められている。
現在開発されている太陽電池を大別すると、先に示したとおり、第1世代の結晶系太陽
電池と第2世代の薄膜系太陽電池、それに今後先端分野として基礎研究が進められようと
している第3世代の新構造太陽電池がある。
図表Ⅲ−1−1
太陽電池の種類とプロダクトサイクル
単結晶シリコン
プロダクト
サイクル
成熟期
多結晶シリコン
成熟期
18∼22%
球状シリコン
導入期
10∼13%
アモルファスシリコン
成長期
6∼10%
微結晶シリコン
成長期
10∼13%
CIGS
成長期
10∼14%
CdTe
成長期
10.5%
GaAs等
成熟期
40%
色素増感
導入期
7∼11%
有機薄膜
導入期
2∼5.4%
量子ドット
導入期(初期)
−
多接合
導入期(初期)
−
太陽電池の種類
第1世代
第2世代
結晶系
薄膜系
無機薄膜系
薄膜シリコン
化合物系
有機薄膜系
第3世代
新構造
光電変換効率
15%(セル25%)
注)太陽電池の名称や分類方法は種々あるが、本表を本調査における分類名称のベースとしている。
資料)産業技術総合研究所資料より九経調作成
2)太陽電池の種類別にみた製造プロセス
太陽電池は、種類によって製造プロセスや材料が異なる。特に、第1世代の結晶系太陽
電池と第2世代の薄膜系太陽電池では、光電変換のコアデバイス部分(光吸収層)の材料
や製造方法が全く異なる。結晶系太陽電池では、セル工程とモジュール工程という2つの
工程を切り分けて考えることができ、生産ラインも独立して存在させることができる。シ
ャープなどの日系太陽電池メーカーも、セル工程は国内で行い、モジュール工程は太陽電
池を導入設置する海外(例えば欧州)等で行うといった分業をしている。これに対して、
薄膜系太陽電池は、光電変換のコアデバイス部分(光吸収層)を成膜によって形成し、こ
39
れを同時に封止するという製造プロセスになる。したがって、セルとモジュールという概
念がなく、その結果、製造現場も全工程一体で構成するケースが多い。
以下、第2世代までの太陽電池について、種類別に製造プロセスの特徴を示す。
図表Ⅲ−1−2
太陽電池の種類別にみた製造プロセス
薄膜系
結晶系
セ
ル
工
程
結晶シリコン
薄膜シリコン
CIGS
色素増感
有機薄膜
高純度シリコン
シランガス、ドーピング
ガス
Cu、In、Ga、Se
酸化チタン/
対極触媒
CuPc/C60成膜
(真空蒸着)
シリコンウエハ
p層(PECVD)
Cu+In+Ga
(スパッタ)
酸化チタン焼成
バッファ層
テクスチャ形成
i層(PECVD)
CIGSe(セレン化)
色素浸漬
Al裏面電極
pn接合形成
n層(PECVD)
バッファ層
貼り合わせ/封止
封止
反射防止膜
形成
ZnO:バッファ層
透明電極
電解液注入
電極形成
Ag裏面電極
カバーガラス/
封止
カバーガラス、バック
シート、封止
バックシート/封止
出力検査
タブ付け
ー
モ
ジ
ュ
ストリング、レイアップ
ル
工
程
フレーミング、端子取付
出力検査
出荷
資料)半導体産業新聞をもとに九経調作成
(1)単結晶シリコン太陽電池
太陽電池のなかで、最も歴史の古いものが単結晶シリコンインゴットを用いた単結晶シ
リコン太陽電池である。単結晶シリコン太陽電池は、n 型−i 型−p 型半導体の積層構造を
しており、IC の主材料であるシリコンウエハを使って製造される。コストは高い反面、効
率も高いのが特徴である。単結晶シリコン太陽電池は、主に 200 ミクロン程度にスライス
された p 型シリコンウエハの表面からリンを拡散させて薄い n 型層を形成し、集電用表面
電極と反射防止膜、裏面全体に電極を形成してセルが作られる。このセルを並べてアレイ
40
構造にすることによって、太陽光パネル(モジュール)が製造される。
(2)多結晶シリコン太陽電池
単結晶シリコン太陽電池は、高効率で信頼性も高いものの、シリコン材料のコストが高
く、全体的なコストアップに繋がるため、これよりも低コストでの製造が可能な多結晶シ
リコン太陽電池が開発されている。多結晶シリコン太陽電池は、現在生産されている太陽
電池のなかで、最も生産量が多く、国内では、シャープ、京セラ、三菱電機等が生産を行
っている。多結晶シリコン太陽電池は、基本的に単結晶シリコン太陽電池と同じ製造方法
であるが、基板となるシリコンウエハに多結晶シリコンを使っている点で異なっている。
多結晶シリコンも、n 型−i 型−p 型半導体の積層構造をしており、材料となる多結晶シリ
コンは、融解したシリコンを鋳型によって凝固させるキャスト法と呼ばれる方法で製造さ
れる。単結晶シリコンに比べると、低コストであるものの、異なった面方位を向いた多く
の単結晶が継ぎ接ぎになって1つのインゴットを形成しており、構造欠陥ができているた
め、変換効率が単結晶シリコン太陽電池に比べると劣る。変換効率では劣るが、コストが
安く、バランスという点で優位性をもっている。なお、モジュールの製造工程も、単結晶
シリコン太陽電池とほぼ同様である。
(3)薄膜シリコン太陽電池
現在の主流は結晶系シリコン太陽電池であるが、シリコン不足や価格高騰等のリスク要
因を懸念して、シリコンの使用量を抑えた薄膜系太陽電池が開発されている。薄膜シリコ
ン太陽電池は、その代表格のひとつである。薄膜シリコン太陽電池は、従来の結晶系シリ
コン太陽電池に比べ、シリコン使用量を2桁低減できるほか、薄型で軽量、湾曲可能であ
ることから、住宅用、産業用パネルだけでなく、様々なシーンでの利用が期待されている。
薄膜シリコン太陽電池も、n 型−i 型−p 型半導体の積層構造をしており、シリコン系ガス
を材料にプラズマ技術を用いてガラス基板にシリコンアモルファス膜を形成したものを光
吸収層として利用し、バッファ層を形成した後、裏面電極を形成して製造される。シリコ
ン原料の不足が予想されるなかで、シリコン原料の使用量低減と変換効率とのバランスが
良いため、国内では現在、三菱重工業をはじめ、シャープ、カネカ、富士電機システムズ
などが製造しており、三洋電機も今後量産化を検討している。
(4)化合物系薄膜太陽電池
薄膜シリコン太陽電池のようにシリコンの使用量を減らすのではなく、全く使わないと
いうコンセプトで開発されているのが、化合物系薄膜太陽電池である。代表的なものとし
て、Cu、In、Ga、Se で形成した化合物薄膜を利用した CIGS 型薄膜太陽電池があり、ホ
ンダソルテックや昭和シェルソーラーが生産している。CIGS 型薄膜太陽電池は、構成する
元素の組成比や濃度分布によって禁制帯幅とその分布を制御でき、光吸収率が高い材料を
41
用いることで、わずか1∼2ミクロン程度の薄膜でありながら、理論的には変換効率 25%
程度のモジュール変換効率を実現できるといわれている。現在のモジュール変換効率は量
産品で 12%前後、研究室レベルでは、結晶系シリコン太陽電池並みの 19.5%が達成されて
いる。さらに、CIGS 太陽電池は、光吸収層を形成するための基板に制限がなく、ごく一般
的な青色ガラスの上に作成できるほか、金属箔やプラスチック基板等にも作成できるとい
ったメリットがある。
(5)色素増感太陽電池
化合物ではなく、有機材料を使って開発されたのが、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽
電池である。色素増感太陽電池は、色素を沈着させた酸化チタン電極とプラチナ電極を用
いた湿式電池で、プラチナ以外は非常に低コストな素材で構成されている。クリーンルー
ムを使わず比較的簡単な設備で電池が製作できるのが特徴であるが、現在のところ製品の
安定性や耐久性に課題を抱えている。色素増感太陽電池は、ナノメートルサイズの酸化チ
タン微粒子等でできた薄膜電極、白金やカーボンなどによる対向電極、光増感剤である色
素、ヨウ素イオンを含む電解液で構成されている。セル製作に蒸着などの真空プロセスを
必要としないため、化合物系薄膜太陽電池よりもさらに低コストの次世代太陽電池として
期待されている。発電メカニズムは、酸化チタンに表面に吸着した色素が可視光等の光を
吸収し、励起した電子が酸化チタンでできた薄膜電極へ移動し電気が発生する。電子を失
った色素は、ヨウ素イオンから電子を受け取り再生し、再び光を吸収して、電子ができ、
この繰り返しによって電流が流れる。有機色素によっては、可視光から近赤外線領域まで
幅広い吸収特性を持つ太陽電池を作成できるが、電解液に蒸発しやすい有機溶媒を使用す
ることから耐久性が課題となっている。
(6)有機薄膜太陽電池
色素増感太陽電池と同じように有機材料を用いているのが、有機薄膜太陽電池である。
有機材料は、通常電気を通す性質がなく、絶縁体として使用されてきたが、特別なπ電子
を利用することで、伝導性をもつ有機材料の開発が可能となっている。太陽電池作成のた
めには、結晶シリコン太陽電池にあたる p 型層と n 型層が必要となるが、有機薄膜太陽電
池の場合は、p 型層に伝導性ポリマーを使い、n 型層にはフラーレンを使っている。これら
2種類の有機半導体を混ぜて溶かし、次に溶液を電極がついた基板上に真空蒸着によって
薄膜を形成し、最後に Al 裏面電極を有機薄膜上に形成するという非常に簡単な方法で作成
することが可能である。なお、高分子有機材料を利用することで、真空蒸着よりも低コス
トな印刷やスプレーなどの塗布方式で成膜が可能になる。したがって、今後は低コスト化
に向けたアプローチとして、材料の高分子化と低コスト製造プロセスの研究開発に注目が
集まっている。
42
2.太陽電池の要素技術の整理
太陽電池は、シリコンインゴットを使って作製される結晶系と、CVD 等による成膜技術
を必要とする薄膜系に大別され、次に材料による分類から、シリコンと化合物、有機に分
類される。これら種々の太陽電池の製造工程は異なるものの、必要な要素技術については、
共通するものも多い。
全ての太陽電池に関わる技術としては、工場内での搬送やアニール(熱処理)、モジュー
ルにする際のフレーミングや端子取り付け、出力検査等がある。
結晶系についてみると、単結晶と多結晶で投入するシリコンは異なるものの、セルから
モジュールに至るまでに関わる要素技術はほぼ変わらず、インゴットからセルを切り出す
ためのスライシングやダイシング、発電層形成のためのエッチングや拡散、イオン注入、
出力検査のためのセルテストを経て、セルが完成する。その後、セルを規則正しく並べて
アレイ構造にし、ストリングやタブ付け、フレーミングなどを行って、モジュールが完成
する。
アモルファスシリコン薄膜や化合物系薄膜、有機薄膜については、原料の違いはあるも
のの、基板上に光吸収層や発電層といった薄膜を形成する必要があるため、PECVD やスパ
ッタリングによる成膜技術を必要とし、電流経路を形成するためのスクライビング技術が
必要である。薄膜系については、基板が一度装置に投入されると、モジュール工程まで一
貫で進むため、セルテストなどはなく、最終的にフレーミングや端子などを取り付けて完
成となる。
図表Ⅲ−2−1
太陽電池の要素技術(製造プロセス)
モジュール工程
セル工程
パス
タク
ラ
ンイ
ニビ
ンン
ググ
ー
ュ
ョ
ュー
ッ
︵
ー
︵
ー
︵
︵
、
︶
︶
︶
︶
︶
︶
ョ
︵
ー
︵
︵
ー
︶
ッ
ェッ
ー ー
︶
ス プ
パ ラ
ズ
タ マ
リ C
ン V
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ッ
ェッ
︵
ー
ー
︶
洗
浄 ス
ク
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ー
、
、
︶
反
発
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電電
成
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極層
他止
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膜
成
、
チ
ス
ン
イ
ダ ・
ラ
表グ
オ
イ 面
拡
搬イ
ン
ジ
散
送シ
注
ン
ン
入
グ
ウ
グ
ド
ラ
イ
ト
ャ
︶
第
結
1
晶
世
系
代
セ
特
レ
ル
シ
性
集
ア
特
テ
リ
評
キ
ア
光
メ
性
レ
ラ
ラ
滴
ス
コ
組
価
吸
球
フ
ニ
タ
評
電 ミ
下処状 ト タ ス レ ミ ア レ 端出
立ン
着
理
ル
設
解価
ザ
解ネ
ト イ ネ
抽
・
モ
研
S
子
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ル球
抵 ブ
抽
計
液
リ ア
施出
ジ
色
磨
熱 ミ 取検
状 反 i 抗 付
出
セ
カ
注シ 熱 S 射
ン
シ
ン
測
高
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素
処ン 付査
実 定 け
メ
・
ル
処 i 板
入
グプ
印
温
レウ
分
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ド
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分
ト
ン 理
ン
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発
離
ル
形
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ラ
電
離
式ラ
ザ
検
他カ
イ
ズ
ト
査
ル
マ
︵
エ
ッ
太陽電池の種類
リサイクル
︵
︵
テ
ク
荒
ス
ら
チ
し
評価・解析 システム
単結晶シリコン
○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○ ○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
多結晶シリコン
○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○ ○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
球状シリコン
○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○
アモルファスシリコン
○
微結晶シリコン
CIGS
○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○ ○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○ ○ ○
○ ○
○
○
○ ○ ○
○ ○ ○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
CdTe
○
○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
GaAs等
○
○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
色素増感
○
○ ○ ○
○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
有機薄膜
○
○ △ ○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
薄膜シリコン
第
薄
2
膜
世
系
代
無機薄膜系
化合物系
○ ○ ○
○
有機薄膜系
○ ○ ○ ○
資料)各社ヒアリングをもとに九経調作成
43
図表Ⅲ−2−2
太陽電池の要素技術(材料・部材)
システム材料・部材
セル・モジュール材料
電極
セル
モジュール
ー
ー
ー
カ
バ
ー
電
力
ア
イ
貯
パ
ル
配
ケン
ワ 昇 蔵
ミ
封 線
薄
バ
酸化
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バ フ
有有
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透
ア
ブ
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化合
ポ
バ
機機 電明
材
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ル コ 接接示バル タ イ 力 レ
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ナ
リ
薄系 極電
料 配 ミ ン 続続ユ イ ・ /バモ
セ コ成
半半
ノ
ク
シ
膜色 用極
ス ン用
線 フ デ箱ユニ ス コ コ ス ニム
リ
導導
粒
シ
リ
ニ
材レ
素
系素 金用青白 ス
用 ウ反
E
ネン タ
体体
子
コ
ト蓄
子 パ
材材 属金色色 フ テ そ ガ フ
薬
V ド 料 シ
応
クバ
材材
ト
ン
ト 電
ネ
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品 ハガ
A フ ム
属ガガ ンの ラ
タ
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料料
ル
ル
レ
装
ル
ナ
ス
ラ ラ レ他ス
ん
タ
ム
ム
置
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だ
基
板
ー
ッ
ー
ョ
︵
︶
ー
︶
︶
等
︶
ム
︵
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ッ
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ー
ー
ィ
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ィ
︵
太陽電池の種類
第
結
1
晶
世
系
代
薄膜シリコン
第
薄 無機薄膜系
2
膜
化合物系
世
系
代
有機薄膜系
単結晶シリコン
○ ○ ○
○
多結晶シリコン
○ ○
○
球状シリコン
○ ○
○
アモルファスシリコン
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
微結晶シリコン
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○ ○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
CIGS
○
○ ○ ○
○ ○ ○
○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
CdTe
○
○ ○ ○
○ ○ ○
○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
GaAs等
○
○ ○ ○
○ ○ ○
○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
色素増感
○
○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
有機薄膜
○
○
○
○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
資料)各社ヒアリングをもとに九経調作成
44
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
3.太陽電池と半導体・FPD との技術親和性
1)要素技術の整理
太陽電池と半導体・FPD との間には、多くの共通する要素技術が存在する。
主にシリコンウエハを使う半導体は、CVD やエッチング、フォトリソ等によりシリコン
ウエハ上に回路を形成し、ダイシングした後、パッケージに合わせてワイヤーボンデング
等の方法により実装され、モールディング後に特性検査を経て完成となる。半導体からは、
光電変換層の形成に重要となる p-n 層を形成するための CVD 等の成膜工程やテクスチャ構
造形成のためのエッチング工程等で使われる技術が太陽電池に応用されている。この他に
も、結晶系シリコン太陽電池のセルを切り出すスライシング工程には、IC 製造におけるス
ライシング技術が応用されている。
FPD は、ガラス基板上に CVD 等により薄膜シリコン薄膜を形成してマザーガラス基板
を作成し、印刷による電極形成、フォトリソなどによりアレイ基板を作成し、作製された
アレイ基板とカラーフィルタを貼り合わせてできた液晶パネルにバックライトを取り付け
て完成となる。FPD からは、アレイ製造工程での絶縁層や半導体層を形成する技術が、薄
膜系太陽電池のガラス基板上に薄膜を形成する技術として応用されている。また、電極形
成についても、FPD のカラーフィルタ製造工程における電極(ITO)膜形成と技術的に似
通っており、FPD 製造装置に組み込まれている製造技術が利用されている。
また、太陽電池ではコスト削減が強く求められることから、モジュールの大面積化が進
んでいる。現在、昭和シェルソーラーやホンダソルテックなど国内の大手薄膜系太陽電池
メーカーが開発する基板サイズは、液晶パネルでいうと、第4世代もしくは第5世代に相
当する。生産効率向上や高付加価値化のために、液晶メーカーと製造装置メーカーによっ
て培われたパネルの大型化を進める技術は、太陽電池でも生かされている。
このように CVD・スパッタ技術を用いた薄膜形成技術や太陽電池をモジュール化するた
めの貼り合わせや封止技術等、半導体・FPD 産業で培われた多くの技術が、太陽光発電産
業へと産業を越えて生かされており、今後拡大が予想される太陽電池市場に向けて、これ
ら要素技術を持つ企業の活躍が期待される。
45
図表Ⅲ−3−1
半導体の製造工程
後工程
前工程
検査
工程
FEOL、BEOL
WB
モ
ル
デ
ィ
ン
グ
リ
ド
め
っ
き
繰り返し
プ
切
断
は
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①
バ
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検
査
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板
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り
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は
ん
だ
ボ
放
熱
板
取
り
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け
ー
F
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ジ
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断
ル
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ー
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マ
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①
バ
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ー
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グ
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バ
バ
ン
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成
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ー
ー
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ー
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ン
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ー
C
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ー
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純
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加
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ウ
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性
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ー
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ン
イ
ン
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性
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②
ダ
イ
ジ
ン
グ
特
性
検
査
②
テ
Wafer Process
︵
フ リ
ォ
ド
ミ カ
ン ッ
グ ト
マ
キ
ン
グ
ン
イ
ン
資料)『IC ガイドブック』社団法人電子情報技術産業協会、『図解でわかる半導体製造装置』日本実業出版社
46
ー
ポ
ッ
テ
ィ
ン
グ
ー
ボ
ン
デ
ィ
ン
グ
ー
ダ
イ
ボ
ン
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ィ
ン
グ
ー
︶
チ
通
ッ
電
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特
光
性
検
検
査
査
ー
LED
ダ
イ
ジ
ン
グ
ピ
ン
グ
入
庫
出
荷
図表Ⅲ−3−2
FPD の製造工程
ガラス基板製造工程
原料溶融
熱間工程
薄膜形成
切断・面取り
熱処理・研磨
冷間工程
アレイ設計工程
洗浄・検査
システム設計
梱包・出荷
アレイ設計
マザーガラス基板
駆動回路・方式設計
アレイ製造工程
カラーフィルタ製造工程
アレイ・パターン
設計(レイアウト)
金属膜形成
ブラックマトリクス形成
テスト設計
絶縁膜、半導体層形成
着色パターン形成
設計データ
洗浄
保護膜形成
マスク作成
レジスト塗布
透明電極(ITO)形成
マスク
露光
切断
現像
検査
エッチング
カラーフィルタ基板
レジスト剥離
アレイ検査
ア レイ基板
偏光板製造工程
パネル(セル)製造工程
投入・洗浄
投入・洗浄
配向膜形成
(PI塗布)
配向膜形成(PI塗布)
ヨウ素染色、延伸、架橋(PVA、
偏光フィルム)
基板フィルム(TAC)
配向処理(ラビング)
配向処理
(ラビング)
前
工
程
離形フィルム(PET)
スペーサ散布
保護フィルム(PET)
シール形成
PVA、TAC、PET、保護フィルム
張り合わせ
トランスファ散布
張り合わせ(組立・封着)
検査
切断(カット)
ロール巻取り
切断
注入・封止
面取り
後
工
程
偏光版張り合わせ
検査
偏光板
点灯検査
パネル(セル)基板
バックライト製造工程
モジュール製造工程
導光板作成
ACF貼り付け
TAB圧着
ACF貼り付け
LSI
ベアチップ圧着
OLB検査
圧着検査
プリアッセンブリ(PA、MA)
FPC圧着
導光板、反射フィルム、拡散
シート、プリズムシートの組立
冷陰極管、
ランプリフレクタ組立
エージング
PCB実装(TAB折曲げ、TAB半
田付け、ケーブルなど実装)
輝度測定
樹脂塗布
検査・出荷
バックライト取り付け
バックライト
組立検査
エージング
最終検査
モ ジ ュール
資料)『よくわかる液晶ディスプレイのできるまで』日刊工業新聞社
47
図表Ⅲ−3−3
太陽電池、FPD、半導体の共通要素技術
太陽電池
Poly-Si技術
印刷電極技術
モジュール技術
化合物薄膜技術
a-Si薄膜
C-Si薄膜
微細加工技術
熱参加技術
平坦化技術
多層配線技術
プロセス技術
(CVD、スパッタ、印刷)
封止技術
各種材料
評価・解析技術
TFT技術
大型装置技術
大型ガラス技術
光学フィルム
バックライト
露光技術
FPD
半導体
資料)中田行彦「産業集積「九州ソーラーセル・アイランドの形成」
∼液晶、半導体、太陽電池の産業集積の比較∼」立命館アジア
太平洋大学、2008 年より引用
2)要素技術ごとにみた事業参入ハードル
太陽電池は、半導体・FPD 産業で培ってきた要素技術と共通な点が多いことから、要素
技術をブラッシュアップし、応用することで、相互に事業展開を進めることが可能である。
例えば、シリコンインゴットのスライシング技術の応用などは非常に分かりやすい。ただ
し、太陽電池で求められるスライシング技術に対する要求は、半導体・FPD のような精度
というよりも、カットロスの削減によるコスト低減にある。既存技術の大幅な高度化は必
要とされないものの、いかに効率的にスライシングするかといったチューニングレベルの
技術開発が求められる。
また、搬送技術については、リニアモーターを利用した高速搬送や FPD で培った大型パ
ネルの搬送ノウハウ等を太陽電池で生かすことが可能であるが、液晶パネルの搬送と異な
り、搬送上の緻密さは必要とされないため、周辺技術や部材などの面でのスペック変更が
求められる。これもチューニングレベルの変更が必要な例である。
一方で、製造プロセスにおいてチューニングレベルを超えた、応用技術開発が必要な要
素技術もある。特に、薄膜系太陽電池の製造にとって重要な成膜技術が挙げられる。成膜
技術は、薄膜系太陽電池にとって変換効率や品質、スループットなどを左右する重要な技
術である。このため、成膜品質の安定化や耐久性向上を目指して、CVD やスパッタリング、
イオン注入、真空プロセス技術等の開発が必要である。
また、太陽電池の作成に必要な各種材料については、今後はどの材料が変換効率の向上
に最も寄与するのかの評価と原理解明が重要であり、太陽電池メーカーと材料メーカーと
の共同開発が今後ますます活発になるものと予想される。また、基板については集光ロス
の削減と低コスト化に寄与するための ITO 膜やテクスチャ構造の開発が必要であり、カバ
48
ーや封止材料についても、より透明度と耐久性の高い材料開発が求められる。
図表Ⅲ−3−4
技術親和性(生産プロセス)
モジュール工程
セル工程
︵
ー
︵
ョ
ョ
ュー
ッ
︵
︵
ー
ュ ︵
ー
︵
︵
︵
ー
︶
︶
︶
︶
、
︶
︶
︶
ッ
ン
印
ド
そカ
ズ
刷
湿プ
マ
ラ
のニ
C 式 ラ 他 カ ザ
イ
ト
ズ
V
ル
マ
D
吸
電
着
解
液
色
カ
注
素
入
ト
︵
ー
レウ
研
磨
ザ
セ
特
レ
ル
性
シ
集
特
ア
テ
評
リ
キ
ア
光
性
メ
ラ
ラ
組コ
価
フ
ニ滴処球ス
評
タ
ミ
下
ト タ ス レ ミ ア レ 端出
立ン
理状
解価
設
ル
ト イネ
ネ
モ
・ 抽
子力析
S 抵 ブ
ル球
計
抽
リ ア
ジ
施出
熱 ミ 取検
状 反 i 抗 付
セ
出
測
シ 熱 S 射
シ
ン
工 ・
処
ン
け
付
実
査
定
ル
・
処 i 板
グプ
分
理グ
成 装
分
ン 理
ン
発
ル
離
形
電
離
ー
レ
ー
メ
ー
高
温
洗
浄 ス
ク
リ
ェッ
ー ー
検
査
︶
タ
リ
ン
グ
ト
︶
ッ
有機薄膜系
、
、
、
︶
化合物系
イ
オ
ン
散
注ス プ
入パ ラ
ウ
ェッ
第
薄 無機薄膜系
2
膜
世
系
代
チ
・ ン
表グ
面
拡
ド
ラ
イ
パス
タク
ラ
ンイ
ニビ
ンン
ググ
反
発
そ射
電電
成
の防
極層
他止
形膜
膜
成
ャ
︶
薄膜シリコン
エ
ッ
第
結
1
晶
世
系
代
ダ
イ
ジ
ン
グ
リサイクル
︵
︵
ス
ラ
搬イ
送シ
ン
グ
太陽電池の種類
テ
ク
荒
ス
ら
チ
し
評価・解析 システム
単結晶シリコン
● ● ● ● ● ●
●
● ● ○
●
○ ▲ ● ● ● ● ▲ ▲ △ ○ □ □
□
多結晶シリコン
● ● ● ● ● ●
●
● ● ○
●
○ ▲ ● ● ● ● ▲ ▲ △ ○ □ □
□
球状シリコン
●
● ●
● ○
アモルファスシリコン
●
○
○ ○ ○
微結晶シリコン
●
○
○ ○ ○
● ● ● ●
CIGS
●
○ ○ ○ ○ ○
● ● ●
CdTe
●
○ ○ ○ ○ ○
● ● ●
GaAs等
●
○ ○ ○ ○ ○
● ● ●
色素増感
●
○ ○ ○
有機薄膜
●
○ ○ ○
凡例: ●:半導体、FPD(チューニングレベル)
■:半導体(チューニングレベル)
▲:FPD(チューニングレベル)
空白は特に関連のない分野
● ●
○ ○ ○
● ● ● ●
▲ ▲ △ ○ □ □
□
● ●
△ ○ □ □
□
● ●
● ●
△ ○ □ □
□
● ●
● ●
△ ○ □ □
○
● ●
● ●
△ ○ □ □
○
● ●
● ●
△ ○ □ □
○
○ ● ●
△ ○ □ □
○
● ●
△ ○ □ □
○
● ●
● ● ○
● ● ● ●
● ○
○:半導体、FPD(要応用技術開発)
□:半導体(要応用技術開発)
△:FPD(要応用技術開発)
資料)『2008 有機 EL テクノロジー大全』㈱電子ジャーナル、『2007 太陽光発電技術大全』㈱電子ジャーナル、『2008 有機 EL の
最新動向と製造装置・部材産業』㈱プレスジャーナル、『「2007 太陽電池メーカー動向と製造装置・部材産業」』㈱プレスジ
ャーナル、『2007 半導体製造装置データブック』㈱電子ジャーナル、『2007 半導体材料技術大全』㈱電子ジャーナル、
『2007LCD 工場・装置・設備』㈱電子ジャーナル、PV ジャパン 2008 出展企業、ヒアリング、各社 HP より九経調作成
図表Ⅲ−3−5
技術親和性(材料・部材)
システム材料・部材
セル・モジュール材料
電極
セル
︵
︵
ッ
ッ
ー
ョ
︵
ィ
ー
ー
ィ
︵
ー
ィ
ェ
︶
ー
︶
︶
ム
ー
ッ
太陽電池の種類
電
ア
力
イ
ル
貯
ケン
ミ
蔵
昇
バ
バ
フ
圧表デ
ア
ブ
電
ル コ 接接示バル タ イ 力レ
ミ ン続続ユ イ ・ /バモ
フ デ箱ユニス コ コ スニム
素
ニ
レ
ネン
タ
シ
ト 蓄
パ
子
クバ
ト
電
ネ
ム
タ
ナ
装
ル
タ
置
パ
ワ
ー
ー
配
薄
封 線
酸化
透
プ
止
シ膜
有有
バ
化合
ポ
ロ
材
電明
リ形
機機
物物
リ
ナ
セ
料
極電
コ成
薄系
配
ク
半半
シ
ノ
ス
用極
ン用
膜色
線
リ
シ
導導
リ
粒
材
E
用
金用青白
ウ反
系素
ス
体体
コ
子
V ド 料
応
薬
属金色色 フ テ そ ガ フ
材材
ト
材材
ン
ハガ
A フ
属ガガ
品
料料
ンのラ
は
料料
ル
ル
レ
ス
ラ ラ
レ他ス
ん
ム
ム
スス
ス
だ
ー
カ
バ
ー
基
板
モジュール
︶
等
第
結
1
晶
世
系
代
薄膜シリコン
第
薄 無機薄膜系
2
膜
世
系
代
有機薄膜系
化合物系
単結晶シリコン
● ● ●
○
多結晶シリコン
● ●
○
球状シリコン
● ●
○
アモルファスシリコン
● ●
● ●
○ ○
○ ● ▲
○ ○
●
微結晶シリコン
● ●
● ○
○ ○
○ ● ▲
○ ○
●
CIGS
●
● ● ○
○ ○ ○
●
○ ○
●
CdTe
●
● ● ○
○ ○ ○
●
○ ○
●
GaAs等
●
● ○ ○
○ ○ ○
●
○ ○
●
色素増感
●
○ ○
○ □ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○
●
●
○
○
○ ○
●
有機薄膜
凡例: ●:半導体、FPD(チューニングレベル)
■:半導体(チューニングレベル)
▲:FPD(チューニングレベル)
○ ○ ○ ● ■ ●
○ ○ ○ ● ■ ●
●
○ ○ ○ ○ ○ ●
○ ○ ○ ●
●
○:半導体、FPD(要応用技術開発)
□:半導体(要応用技術開発)
△:FPD(要応用技術開発)
資料)『2008 有機ELテクノロジー大全』 ㈱電子ジャーナル、『2007 太陽光発電技術大全』 ㈱電子ジャーナル、『 2008 有機
EL の最新動向と製造装置・部材産業』 ㈱プレスジャーナル、『 「2007 太陽電池メーカー動向と製造装置・部材産業」 』
㈱プレスジャーナル、『 2007 半導体製造装置データブック』 ㈱電子ジャーナル、『 2007 半導体材料技術大全』 ㈱
電子ジャーナル、『 2007LCD 工場・装置・設備』 ㈱電子ジャーナル、PVジャパン 2008 出展企業、ヒアリング、各社 HP
より九経調作成
49
4.太陽光発電産業と半導体・FPD 産業の関係性∼事業の相互参入実態∼
太陽電池と半導体・FPD とは要素技術の共通性が高いことから、太陽光発電産業におい
て、半導体・FPD 関連企業の存在感は大きく、今後とも共通した要素技術を持つ企業の参
入によって、産業が形成されてくるものと予想される。
各種の資料から、相互参入率をみると、材料・部材メーカーや製造装置メーカーは9割
近くに達する。一方で、同じ装置でも検査・評価装置は約7割となっている。これは、表
面検査や生産ラインに組み込まれる各種検査機器においては関連性が高いものの、太陽電
池の特性評価や出力検査等では、検査項目が異なるためとみられる。このあたりの分野に
ついて、応用開発の必要があるため、検査・評価装置は製造装置に比べると技術的な参入
ハードルは高いと考えられる。
図表Ⅲ−4−1
太陽光発電産業参入企業の半導体・FPD 参入率
0
20
40
システム・関連機器
60
80
100 (%)
38
N=44
セル・モジュールメーカー
58
N=24
製造装置メーカー
94
N=77
検査・評価装置メーカー
71
N=35
材料・部材メーカー
92
N=88
注)以下の資料に掲載されている企業について、太陽電池、半導体、FPD の各産業への事業参入実
態を調査し、事業の相互参入状況を把握。太陽電池事業を行っている事業者が半導体・FPD 関連
の事業を行っている場合に、相互事業参入ありとみなし、参入率として計算。
資料)『2008 有機ELテクノロジー大全』 ㈱電子ジャーナル、『2007 太陽光発電技術大全』 ㈱電
子ジャーナル、『 2008 有機 EL の最新動向と製造装置・部材産業』 ㈱プレスジャーナル、『 「2007
太陽電池メーカー動向と製造装置・部材産業」』㈱プレスジャーナル、『 2007 半導体製造装置デ
ー タ ブ ッ ク 』 ㈱ 電 子 ジ ャ ー ナ ル 、 『 2007 半 導 体 材 料 技 術 大 全 』 ㈱ 電 子ジ ャ ー ナ ル 、
『 2007LCD 工場・装置・設備』 ㈱電子ジャーナル、PVジャパン 2008 出展企業、ヒアリング、各社
HP より九経調作成
50
5.メインプレイヤーの研究課題とアウトソーシングの可能性
太陽電池メーカー各社は、NEDO のロードマップに掲げられた 2010 年発電コスト 23 円
/kWh を目標に開発を行っている。達成時期については疑問が残るものの、現在の技術の延
長線上で達成できると言われており、各社が開発競争に凌ぎを削っている。なお、現在大
手太陽電池メーカーで 2010 年に 23/kWh 円を達成できると発表できた会社はなく、唯一、
三洋電機が目標年次から 5 年遅れの 2015 年に 23 円/kWh を達成できる見込みである。た
だし、23 円/kWh より先の 14 円/kWh、7 円/kWh という発電コストは現在の技術の延長線
上では達成できないため、基礎研究段階からの画期的なブレイクスルーが必要である。
太陽電池の製造装置メーカーは、フルターンキーサービスの展開を進めている。特に重
要となる薄膜系太陽電池の成膜技術については、セルメーカー、装置メーカーともに多額
の研究予算が投入されている。今後、さらなる発電効率の向上のために、異なる光吸収領
域を持つ発電層の積層が検討されており、タンデム型やトリプル型の成膜装置の開発が進
むと思われる。このほかにも、溶液成長法による高抵抗バッファ層成膜に対する品質安定
化、セレン化後の硫化法による CIS 系吸収層の安定化などの技術開発が進行中である。
成膜技術以外にも高効率化を達成するため、基板の開発が進められており、現在の主流
のガラス基板に加え、安価で光の反射が高く、光の閉じこめ効果が大きいセラミック基板
への期待が高まっている。この他にも、ロスの 44%を占めると言われる入射ロスを低減す
るため、電極を細く深くするための高性能な電極ペーストの開発や、バックコンタクトへ
移行するための構造開発等に対する研究が行われている。
結晶系太陽電池についても、コスト削減に向けた技術開発が活発である。例えば、ワイ
ヤーソーを使ったシリコンインゴットのスライス工程では、多量のカーフロスが発生する
ため、プラズマやパルス放電といった非接触型のスライス技術の開発が求められている。
また、ウエハの薄型化を達成するために、BSF 構造やテクスチャ加工のプロセス開発も必
要となっている。
このような基礎研究や量産化技術について、太陽電池メーカーは、大手装置メーカーと
組んで開発する傾向が強い。結晶系太陽電池は、ひとつひとつの製造工程を半導体のよう
に切り離すことが可能であるため、外注の余地を残しているが、薄膜系太陽電池の場合は、
フルターンキーで基板からモジュールまでが1つの装置の中で完結するため、共同開発し
た装置メーカー以外との取引はないものと思われる。このため、特に薄膜系太陽電池への
量産段階に入って、太陽電池メーカーとの取引を行うことは難しい。
しかし、必ずしも門戸が閉ざされている状態にはない。現在、太陽電池メーカーの開発
スピード競争が激化しており、少しでもスピードを上げるため、技術ではなく製品として
ある程度形になったものがあればオファーを受ける体制を整えている企業も多く、研究段
階からの自社技術・製品の売り込みと、共同研究への参加が必要である。
51
図表Ⅲ−5−1
セル・モジュールメーカーが外注をしている生産プロセス
(社・事業所)
4
3
3
2
2
1
そ
の
メ
カ
レ
ウ
ド
ラ
研
磨
レ
吸
着
電
解
ラ
ミ
ア
ニ
滴
下
集
光
球
状
セ
ル
タ
ブ
ス
ト
レ
イ
ラ
ミ
キ
フ
レ
ー
高
温
ュ
湿
式
2
1
ー
プ
ラ
1
︵
ス
パ
ー
イ
オ
ー
ス
ク
︵
拡
散
2 2 2 2 2 2
1 1
ー ー
ウ
1
ェッ
ド
ラ
2
1
ー ー
ダ
イ
ッ
ス
ラ
1
ー
搬
送
1
ェッ
0
1
2
端
子
出
力
解
析
特
性
1
特
性
設
計
組
立
1
シ
リ
レ
ア
ト
グ
プ
シ
熱
処
理
ン
グ
セ
ル
︶
ン
モ
ジ
ュー
抵
抗
測
定
ル
工
抽
出
・
分
離
︶
ル
抽
出
・
分
離
発
電
検
査
ー
洗
浄
︶
、
、
︶
、
ャ
︶
パス
タク
ラ
ンイ
ニビ
ンン
ググ
実
装
、
︵
ッ
反
発
そ射
電電
の防
成
極層
膜
他止
形
膜
成
反
射
板
成
形
︶
︵
︵
︶
テ
クエ
荒
ス
ら
チチ
し
ン
・ グ
表
面
状
S
i
︵
︶
熱
処
理
︶
ン
︵
シ
ョ
入
︵
素
ト
ッ
カ
ル
︵
ズ
マ
︵
C
V
D
︶
リ
ン
グ
ョ
入
︶
ン
印
刷
グ
ッ
ン
グ
︵
イ
ザ
ン
ズ
取 検
プ 他 ニ ザ
液 ネ
処 S テ 付 リ ア ネ ア
評 評
・
コ メ
1 2シイ 3ジン 4イ 5ト 6 7リ 8注
9タ 10
11 12
13 14
15 16
17
18 19
20
21
22 23
24 25
26
27
28 29 30 31 32 33
34
35 36 37
38 39 40
41
42
ト
色 注
ル 球 理
ミ 付 査
マ
ラ
i
価 価
施 ン タ
ス け ン
カ
セル工程
モジュール工程
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
52
評価・解析
システム リサイクル
第Ⅳ章
九州の太陽光発電産業の事業実態と産業集積形成の可能性
1.裾野産業形成アンケート調査の概要
本調査において、九州における太陽光発電産業の実態を把握するために以下のアンケー
トを実施した。本章では、アンケート結果を概括する。
1)アンケート概要
[アンケート調査名]
太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート調査
[調査目的]
目的①:九州における半導体・FPD 関連企業やシステム周辺機器メーカーの太陽電池産業へ
の参入ならびに事業拡大可能性の調査
目的②:全国の太陽電池セル・モジュールメーカー、装置、材料、検査、システム、施工
メーカーの太陽電池産業の事業拡大可能性の調査
目的③:企業における太陽電池システムの普及導入可能性の調査
※普及導入に関するアンケート結果については第4章で述べる。
[調査対象]
・全国の主要太陽電池セル・モジュールメーカー
・全国の太陽電池に関する主要な装置、材料、検査、システム・施工メーカー、アプリケ
ーション(最終消費財)メーカー
・九州における半導体関連企業、FPD 関連企業
・九州における太陽電池関連企業、システム・施工メーカー
[調査実績]
・発送日:10 月 17 日
・締め切り日:10 月 31 日(到着分最終締め切り日 12 月 1 日)
・発送件数:926 件
・回答件数:183 件
・回答率:19.8%
53
2)アンケート回答者の属性
アンケート回答企業の業種は、第1に半導体を中心とする製造/検査装置が 22.4%、第2
に電気・電子機器が 15.8%、第3に装置関連部品・金型が 13.1%といった業種構成になっ
ている。
また、回答があったセル・モジュールメーカー5社は、①シャープ、②京セラ、③三菱
重工業、④昭和シェルソーラー、⑤ホンダソルテックである。
図表Ⅳ−1−1
電気・電子機器
LSI・電子部品
製造/検査装置
装置関連部品・金型
素材・材料
設備・環境
システム・施工
その他
セル・モジュールメーカー
無回答
合計
業種
実数(社) 構成比(%)
29
15.8
17
9.3
41
22.4
24
13.1
20
10.9
4
2.2
7
3.8
33
18.0
5
2.7
3
1.6
183
100.0
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
送付先は九州が中心であったこともあり、回答企業も九州企業が多くなっている。また、
全国の主要なセル・モジュールメーカーや装置メーカーからも数件の回答が得られた。
図表Ⅳ−1−2 業種
実数(社) 構成比(%)
福岡県
60
32.8
佐賀県
9
4.9
長崎県
6
3.3
熊本県
26
14.2
大分県
13
7.1
宮崎県
12
6.6
鹿児島県
15
8.2
山口県
1
0.5
東京都
15
8.2
神奈川県
5
2.7
千葉県
3
1.6
埼玉県
2
1.1
愛知県
2
1.1
静岡県
1
0.5
大阪府
3
1.6
京都府
4
2.2
奈良県
2
1.1
滋賀県
1
0.5
無回答
3
1.6
183
100.0
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
54
回答企業の従業員規模別の構成比をみると、最も回答が多い層は 21 人以上から 100 名以
下の中堅企業で 35.5%となっている。また、300 人を越える大企業が2割弱、20 名以下の
中小企業が2割程度となっている。
図表Ⅳ−1−3
20人以下
21∼100人
101∼300人
301人以上
無回答
計
従業員規模別の構成比
実数(社) 構成比(%)
42
23.0
65
35.5
41
22.4
32
17.5
3
1.6
183
100.0
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
ターゲットにしている最終製品を尋ねたところ、太陽電池および周辺機器が 44.3%、半
導体が 46.4%といったように太陽電池と関連が深い製品を最終製品とする企業の回答が多
かった。
また、太陽電池は、液晶分野での製造技術を水平展開できる余地が大きいこともあって、
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機 EL ディスプレイから参入している企業も
多かった。
図表Ⅳ−1−4
(%) 0.0
5.0
ターゲットとする最終製品
10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0
太陽電池および周辺機器
44.3
液晶ディスプレイ
22.4
プラズマディスプレイ
14.2
有機ELディスプレイ
15.8
半導体
46.4
その他
無回答
22.4
9.3
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
55
複数回答
N=183
2.九州企業の太陽電池関連事業に対する関心と取組み
太陽電池関連事業に対する関心
太陽電池関連事業に対する関心を尋ねたところ、「非常に関心がある」が 41.4%、「関心
がある」が 34.3%となっており、あわせて7割以上が太陽電池関連事業に関心があるとし
ている。太陽電池関連事業に対する高い関心が確認された。
図表Ⅳ−2−1
太陽電池関連事業に対する関心
全く関心
はない
6.6
それほど
関心は
ない
16.6
無回答
1.1
非常に関
心がある
41.4 %
関心が
ある
34.3
N=181
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
太陽電池関連事業への取組状況
太陽電池関連事業に現在取り組んでいる企業は 73 社で、取り組んでいる割合は 40.3%と
なっている。
図表Ⅳ−2−2
太陽電池関連事業への取組み
無回答
1.1
取り組ん
でいる
40.3 %
取り組ん
でいない
58.6
N=181
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
56
太陽電池関連事業の売上比率
太陽電池関連事業に現在取り組んでいる企業に対して、売上げに占める太陽電池関連事
業比率を尋ねたところ、売り上げに占めるシェアが 20%未満にとどまっている企業が8割
近くに達する(79.5%)
。今の段階では太陽電池関連の売上げはさほど高くはない状況にあ
る。
図表Ⅳ−2−3
売上げに占める太陽電池関連事業比率
(取組ありに対する限定質問)
40∼50%
未満
0.0
わから
ない
1.4
30∼40%
未満
4.1
無回答
1.4
50%
以上
9.6
20∼30%
未満
4.1
20%未満
79.5 %
N=73
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
太陽電池関連事業に対する期待
現在太陽電池関連事業に関わっている企業のなかで、今後事業の拡大を予定している企
業は 63 社あり、86.3%と8割を越えた。太陽電池関連事業に対する期待の大きさが確認で
き、今後の産業拡大が見込まれる結果となった。
図表Ⅳ−2−4
太陽電池関連事業に対する今後の取組み
(取組ありに対する限定質問)
縮小予定
0.0
無回答
1.4
現状維持
12.3
拡大予定
86.3%
N=73
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
57
太陽電池関連事業への新規参入意向
太陽電池関連事業に現在取り組んでいない企業に対して、新規参入について尋ねたとこ
ろ、「取り組む予定」と回答した企業は 29.2%であり、新規参入を考えている企業は3割
程度にとどまる結果となった。
図表Ⅳ−2−5
太陽電池関連事業への新規参入の有無
(取組なしに対する限定質問)
無回答
1.9
取り組む
予定
29.2 %
取り組む
予定は
ない
68.9
N=106
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
新規参入に対する課題∼専門人材不足と主力事業との親和性∼
太陽電池に対する関心は高いものの、新規参入に慎重な理由としては、
「専門人材の不在」
が 43.8%、「主力事業との親和性の低さ」が 41.1%と高くなっており、これらが新規参入
の大きな障壁となっている。
専門人材に関しては、太陽電池の急速な市場やニーズの高まりに人材育成が追いついて
ない状況にあるので、産学官あげての育成体制の整備が求められる。
「主力事業との親和性の低さ」が上位を占めるが、太陽電池は種類が多様であり、種類
ごとに製造プロセスも異なるため、自社がどの種類の太陽電池に対してどのような製造プ
ロセスや部材提供で貢献できるか明確に把握できていないことも要因に考えられる。太陽
電池産業の裾野の広がりや参入可能領域が明確に示されれば、参入が促される可能性はあ
る。
58
図表Ⅳ−2−6
太陽電池関連事業に取り組まない理由
(%) 0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
専門人材の不在
50.0
43.8
主力事業との親和性の低さ
41.1
研究開発体制の未整備
35.6
取引先の不在
21.9
開発コストの高さ
17.8
関連企業・研究機関の乏しさ
17.8
製造コストの高さ
9.6
市場の成長性
1.4
市場規模の小ささ
複数回答
N=73
0.0
その他
19.2
無回答
4.1
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
太陽電池事業への参入理由∼今後の市場の成長性が突出
現在太陽電池関連事業に取り組んでいる企業と今後新規参入を予定している企業に参入
理由をたずねたところ、
「市場の成長性」が 85.8%と突出しており、これに、「市場規模の
大きさ」や「主力事業との親和性の高さ」「取引先の存在」が続く。
図表Ⅳ−2−7
太陽電池関連事業に取り組む理由
(%) 0.0
20.0
40.0
60.0
市場の成長性
53.8
主力事業との親和性の高さ
34.0
取引先の存在
32.1
専門人材の存在
11.3
製造コストに見合う利益の見込み
関連企業・研究機関の集積
開発コストの回収にめど
その他
無回答
100.0
85.8
市場規模の大きさ
研究開発体制の整備
80.0
9.4
5.7
3.8
複数回答
N=106
1.9
4.7
2.8
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
59
3.九州企業の太陽電池関連事業の現状
1)事業領域
現在取り組んでいる事業内容∼装置・材料等の裾野産業が中心∼
現在展開している、あるいは今後展開予定である太陽電池関連事業については、アンケ
ート回答企業の属性で製造装置関連企業が多かったこともあり、
「製造装置関連」が 40.6%
と上位にきている。
製造装置関連以外にも、部品・材料関連、システム・施工関連、検査・測定関連など多
岐にわたっており、半導体関連産業が一堂に集積している九州の裾野の広さをうかがえる
結果となり、今度の太陽電池関連産業の広がりにも期待がもてる。
図表Ⅳ−3−1
(%) 0.0
5.0
太陽電池関連事業の事業内容
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
製造装置関連
45.0
40.6
部品・材料関連
32.1
システム・施工関連
19.8
検査・測定関連
17.9
セル/モジュール関連
13.2
その他
無回答
40.0
12.3
複数回答
N=106
1.9
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
関心のある太陽電池の種類∼薄膜系シリコンがトップで、結晶系、化合物系が続く∼
九州には薄膜系シリコンと化合物系のセル・モジュールメーカーが立地していることも
あり、「薄膜系シリコン太陽電池」が 60.4%、「化合物系太陽電池」が 40.6 %とそれぞれ
に高い関心が示されている。また、現在の市場規模の大きな結晶系太陽電池も単結晶が
52.8%、多結晶が 51.9%で関心を集めており、九州では太陽電池の種類によらず、関心が
持たれている状況にある。
60
図表Ⅳ−3−2
関心がある太陽電池の種類
(%) 0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
薄膜系シリコン(アモルファス・微結晶など)
70.0
60.4
シリコン結晶系(単結晶)
52.8
シリコン結晶系(多結晶)
51.9
化合物系(CIGS, CIS, CdTeなど)
40.6
有機系(色素増感、有機薄膜)
32.1
集光追尾系
8.5
その他
複数回答
N=106
1.9
無回答
7.5
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
関心のある太陽電池の選択理由
関心を持つ太陽電池の種類として選択した理由の最上位には、「市場シェア」の 41.8%
が挙がっている。これは、高い市場シェアを占める結晶シリコンに対して関心が高いこと
を裏付ける結果となった。
また、技術親和性・応用可能性が次にきており、今の技術をいかに水平展開できて参入
できるかが大きな鍵になっている。
図表Ⅳ−3−3
(%)
関心を持つ太陽電池の種類を選択した理由
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
市場シェア
41.8
技術親和性・応用可能性
33.7
高効率性
29.6
量産プロセスの確立
22.4
部材・原料の安さ
20.4
長寿命
15.3
設置コストの安さ
12.2
応用先アプリケーションの多様性
10.2
デザイン・意匠のよさ
7.1
その他
無回答
50.0
15.3
1.0
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
61
複数回答
N=98
2)九州で事業展開が進められる生産プロセス
九州の太陽電池周辺企業は①成膜、②搬送、③洗浄に関わる企業が比較的多い
現在関わっている太陽電池の生産プロセスでは、スパッタリングやプラズマ CVD に関す
る装置関連企業、シリコンやガラス基板を搬送するような運搬に関わる企業、ウェットや
ドライによる洗浄に関わるような装置関連企業が比較的多い。
図表Ⅳ−3−4
太陽電池システムの各生産プロセスに関わっている企業数
(社・事業所)
8
7
7
6
6
5
5
4 4
4
5
4
4
3
3
3
2
2
1
1
そ
の
メ
カ
レ
ウ
ド
ラ
研
磨
レ
吸
着
電
解
ラ
ミ
ア
ニ
滴
下
集
光
球
状
セ
ル
タ
ブ
ス
ト
レ
イ
ラ
ミ
キ
フ
レ
ー
高
温
1
ュ
湿
式
1
ー
プ
ラ
︵
ス
パ
ー
イ
オ
ー
ス
ク
︵
拡
散
2
1 1 1 1
ー ー
ウ
2
1
ェッ
ド
ラ
1
ー ー
ダ
イ
ッ
ス
ラ
ー
搬
送
ェッ
0
1
2
1
端
子
出
力
1
解
析
特
性
1
特
性
設
計
1
組
立
シ
リ
レ
ア
ト
グ
プ
シ
熱
処
理
ン
グ
セ
ル
︶
ン
モ
ジ
ュー
抵
抗
測
定
ル
工
抽
出
・
分
離
︶
ル
抽
出
・
分
離
発
電
検
査
ー
洗
浄
︶
、
、
︶
、
ャ
︶
パス
タク
ラ
ンイ
ニビ
ンン
ググ
実
装
、
︵
ッ
反
発
そ射
電電
成
の防
極層
膜
他止
形
膜
成
反
射
板
成
形
︶
︵
︵
︶
テ
クエ
荒
ス
ら
チチ
し
ン
・ グ
表
面
状
S
i
︵
︶
熱
処
理
︶
ン
︵
シ
ョ
入
︵
素
ト
ッ
カ
ル
︵
ズ
マ
︵
C
V
D
︶
リ
ン
グ
ョ
入
︶
ン
印
刷
グ
ッ
ン
グ
︵
ン
液 ネ
処 S テ 付 リ ア ネ ア
評 評
・
コ メ
ズ
プ 他 ニ ザ
イ
ザ
取 検
1 2シイ 3ジン 4イ 5ト 6 7リ 8
9 10
11 12
13 14
15 16
17
18 19
20
21
22 23
24 25
26
27
28 29 30 31 32 33
34
35 36 37
38 39 40
41
42
注 タ マ
i
ス け ン
価 価
施 ン タ
ラ
カ
ト
色 注
ル 球 理
ミ 付 査
セル工程
モジュール工程
評価・解析
システム リサイクル
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
図表Ⅳ−3−5
現在関わっている生産プロセスの具体的内容
プロセス
1 搬送全般
事業所名
㈱プレシード
ローツェ㈱
第一施設工業㈱
㈱カンセツ久留米事業所
5 エッチング(ウェット)
弘田化学工業㈱
7 スクリーン印刷
九栄スクリーン㈱
9 成膜(スパッタリング)
中興化成工業㈱ 福岡本部
田中貴金属販売㈱福岡支店
10 成膜(プラズマCVD)
㈱西日本常盤商行
㈱マルマエ
ケー・エム・テクノロジー㈱
15 スクライビング(レーザー) 武井電機工業㈱
16 洗浄(ウェット)
カミマル㈱九州事業部
ケー・エム・テクノロジー㈱
17 洗浄(ドライ)
カミマル㈱九州事業部
22 ラミネーション
中興化成工業㈱ 福岡本部
27 セルテスト
㈱デンケン
28 タブ付け
㈱デンケン
31 ラミネーション
中興化成工業㈱ 福岡本部
37 特性評価(セル)
九州計測器㈱
38 特性評価(モジュール)
九州計測器㈱
40 組立・施工
㈱三松
㈱プレシード
41 シリコン抽出・分離
ケー・エム・テクノロジー㈱
所在地
熊本県
熊本県
福岡県
福岡県
福岡県
福岡県
福岡県
福岡県
福岡県
鹿児島県
長崎県
佐賀県
大分県
長崎県
大分県
福岡県
大分県
大分県
福岡県
福岡県
福岡県
福岡県
熊本県
長崎県
業種
製造/検査装置
製造/検査装置
設備・環境
機械設計事業
その他(薬品製造)
その他
素材・材料
素材・材料
その他
製造/検査装置
製造/検査装置
製造/検査装置
装置関連部品・金型
製造/検査装置
装置関連部品・金型
素材・材料
電気・電子機器
電気・電子機器
素材・材料
電気・電子機器
電気・電子機器
装置関連部品・金型
製造/検査装置
製造/検査装置
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
62
具体的な内容
ガラス基板の取り出し、洗浄、搬送
ウェーハ検査
上下階への垂直搬送設備(クリーンソフター)
各設備への搬送装置の設計
表面加工
スクリーンマスク製造
蒸着による薄膜成型時の搬送用ベルト供給
Ag(銀)系のスパッタリングターゲット
膜の品質検査
一式
装置メンテナンス
薄膜レーザーパターニング装置の製造
ドライアイスブラストによる洗浄
装置メンテナンス
ドライアイスブラストによる洗浄
EVAラミネート時の離型シートを供給
特性検査
特性検査
保護フィルムをラミネート時の離型シートを供給
実験室レベルでの計測
フィールドでの実証試験等の測定
フレーム、架台制作
新しい組立、施工法の開発
シリコン材料の供給
3)セル・モジュールメーカーのアウトソーシングの実態
モジュール工程や評価・解析で外注工程が多い
回答があった主要セル・モジュールメーカー(①シャープ、②京セラ、③三菱重工業、
④昭和シェルソーラー、⑤ホンダソルテックの 5 社から回答)は、モジュール工程や評価・
解析などセル製造以降の工程で外注項目が多い。
薄膜系太陽電池は、セル・モジュールまで一貫して製造するため、セル・モジュール工
程における外注実態はないものの、最終工程である枠付けから梱包・出荷作業を外注して
いるとの回答はあった。
製造工程では、搬送、エッチング、成膜、スクライビング、熱処理の工程に外注が存在
セル製造工程では、成膜におけるスパッタリングやプラズマ CVD 装置が3件、スクライ
ビング工程におけるレーザー装置が2件、外注しているとの回答があった。
また、搬送、エッチング、ウェット洗浄、研磨、ラミネーション、アニールといった各
項目で1件ずつ外注しているとの回答があった。
図表Ⅳ−3−6
セル・モジュールメーカーが外注している生産プロセス
(社・事業所)
4
3
3
2
2
1
そ
の
メ
カ
レ
ウ
ド
ラ
研
磨
レ
吸
着
電
解
ラ
ミ
ア
ニ
滴
下
集
光
球
状
セ
ル
タ
ブ
ス
ト
レ
イ
ラ
ミ
キ
フ
レ
ー
高
温
ュ
湿
式
2
1
ー
プ
ラ
1
︵
ス
パ
ー
イ
オ
ー
ス
ク
︵
拡
散
2 2 2 2 2 2
1 1
ー ー
ウ
1
ェッ
ド
ラ
2
1
ー ー
ダ
イ
ッ
ス
ラ
1
ー
搬
送
1
ェッ
0
1
2
端
子
出
力
解
析
特
性
1
特
性
設
計
組
立
1
シ
リ
レ
ア
実
装
ト
グ
プ
シ
熱
処
理
ン
グ
セ
ル
︶
ン
モ
ジ
ュー
抵
抗
測
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ル
︶
、
反
射
板
成
形
︶
工
抽
出
・
分
離
ル
抽
出
・
分
離
発
電
検
査
洗
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︶
、
、
︶
、
ャ
︶
パス
タク
ラ
ンイ
ニビ
ンン
ググ
ー
ッ
反
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そ射
電電
成
の防
極層
他止
膜
形
膜
成
︵
︵
︵
︶
テ
クエ
荒
ス
ら
チチ
し
ン
・ グ
表
面
状
S
i
︵
︶
熱
処
理
︶
ン
︵
シ
ョ
入
︵
素
ト
ッ
カ
ル
︵
ズ
マ
︵
C
V
D
︶
リ
ン
グ
ョ
入
︶
ン
印
刷
グ
ッ
ン
グ
︵
ザ
液 ネ
処 S テ 付 リ ア ネ ア
評 評
・
ン
ズ
イ
取 検
コ メ
プ 他 ニ ザ
1 2シイ 3ジン 4イ 5ト 6 7リ 8注
9タ 10
11 12
13 14
15 16
17
18 19
20
21
22 23
24 25
26
27
28 29 30 31 32 33
34
35 36 37
38 39 40
41
42
ト
色 注
ル 球 理
ミ 付 査
i
価 価
施 ン タ
マ
ス け ン
ラ
カ
セル工程
モジュール工程
評価・解析
注)九州を含む全国のセル・モジュールメーカー
(①シャープ、②京セラ、③三菱重工業、④昭和シェルソーラー、⑤ホンダソルテックの 5 社から回答)
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
63
システム リサイクル
4)九州で関連のある材料分野
シリコンウエハ、薄膜材料、基板、電力モニタを提供する企業が比較的多い
九州で取り組まれる関連材料としては、シリコンウエハで4社、システム材料・部材に
おける電力モニタで4社、薄膜材料の酸化物半導体材料で3社、ガラス基板の白色ガラス
で3社となっている。
図表Ⅳ−3−7
太陽電池システムの各種材料に関わっている九州の周辺企業数
(社・事業所)
5
3
3
3
2
2
1
3
2
2
1
1
2
1
1
フ
リ
配
線
ラ
ミ
1 1
1
1 1
ア パ 接 昇 表 電 ケ
ル ワ 続 圧 示 力
イ
ン
ー
バ 封
止
2
ー
ガ
ラ
2
ー
そ
の
ー
ス
テ
1
ー
フ
ッ
薄 酸 化 有 有 電 透 青 白
膜 化 合 機 機 極 明 色 色
1
ィ
プ ポ シ
ロ リ リ
セ シ コ
ス リ ン
用 コ ウ
薬 ン
品
ハ
2
ィ
0
4
4
4
バ 電 ア
イ 力 ル
ン
デ
ト
ト
タ 素
/ 子
コ
ン
バ
タ
︶
モジュール
システム材料・部材
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
64
タ
レ
ム
パ
ネ
ル
︶
デ ・
バ コ
イ ネ
ス ク
タ
蓄
電
装
置
ー
シ
ナ
ユ
ニ
︵
ム
ー
レ
ン
︵
電極
基板
セル・モジュール材料
配
線
シ
ッ
薄膜材料
レ
は
ム ん
だ
等
︶
ー
カ
バ
セル
E
V
A
ィ ョ
ト
ッ
ス
ー
ス
ョ
ス
︵
導 系 素 属 用
金
体 材 材
属
材 料 料
料
︶
導
体
材
料
ー
ェ
用
反
応
ガ
ス
︵
ー
電 ガ ガ ル ン 他 ス ル ク 材 ド 材 ネ ミ
箱 接 ユ 貯 ブ バ バ モ ミ
1 2 3 形
4 物
5 物
6 薄
7 系
8 用
9 101112131415161718192021222324252627282930313233
続 ニ 蔵 ル
成 半 半 膜 色 金 極 ラ ラ ム レ
ム シ 料 フ 料
ス ニ フ
フ コ
5)太陽電池関連アプリケーションへの取組み
アプリケーションの開発・生産を行う企業は1割程度
セル・モジュールを組み込んだアプリケーション開発は参入領域として有望と考えられ
ているが、現状での取り組みは限定的である。現在、太陽電池を組み込んだアプリケーシ
ョンの開発・生産を行っている企業は1割程度である。
図表Ⅳ−3−8
太陽電池を組み込んだアプリケーションの開発・生産の有無
2.8
はい
10.4%
いいえ
86.8
N=106
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
アプリケーション開発に関する興味
アンケート送付先企業には装置関連企業などアプリケーション開発とは無関係な企業も
多いため無回答が7割を占める。しかし、これを除いた3割の中で、関心の有無を回答し
た企業の中では関心が「おおいにある」、または「ある」との回答が大多数を占めている。
アプリケーションに近い企業では、大いに期待が持てる領域であることが確認できる。
図表Ⅳ−3−9
太陽電池を組み込んだアプリケーションに対する関心
おおいに
ある
5.7 %
ある
18.9
ない
0.9
全くない
0.9
無回答
70.8
わから
ない
2.8
N=106
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
65
太陽電池を組み込んだアプリケーション開発に取り組んでいる企業の事業内容
アプリケーション開発を行っている企業の内容を大まかに示すと、太陽電池と蓄電装置
を組み合わせた開発が特徴といえる。
図表Ⅳ−3−10
事業所名
開発した太陽電池を組み込んだアプリケーションの具体的内容
所在地
業種
西部電気工業㈱
福岡県
システム・施工
九州計測器㈱
福岡県
電気・電子機器
㈱正興電機製作所
福岡県
電気・電子機器
㈱プレシード
熊本県
ジェット・NEKO㈱
宮崎県
製造/検査装置
セル・モジュール
メーカー
具体的内容
LED照明を使った街路灯
海上、山間、山岳における気象観測等データロギング
システム
太陽電池と蓄電を組み合わせた中小規模事業所向け
のピークカットシステム
風力・太陽光ハイブリッド型発電システム
ソーラー蓄電装置、街路灯
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
66
4.太陽電池メーカーが抱える課題と九州企業の技術シーズ
1)関連産業の技術シーズと太陽電池メーカーのニーズ
九州の太陽電池周辺関連企業は量産の自動化・エンジニアリングに大きな技術シーズ
太陽電池業界の数多くの課題に対して、ソリューションを提供できる技術シーズを尋ね
たところ、九州の太陽電池関連企業は、「量産ラインの自動化・エンジニアリング」「量産
の低コスト化」という量産技術の高度化に関するものが多くなっている。九州には半導体
の量産技術の蓄積があるため、こうした背景を受けて、量産段階での技術貢献ができる企
業が目立っている。
また、
「太陽電池の販売代理・設置施工」についても 14.9%となっており、販売や設置と
いった地域での普及につながる領域に関わる企業も確認できる。
図表Ⅳ−4−1
太陽電池業界において将来関われる課題領域
(%) 0.0
5.0
量産ラインの自動化・エンジニアリング
量産の低コスト化
太陽電池の販売代理・設置施工
量産安定化(歩留まり向上)
新しいアプリケーション 開発
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
16.4
14.9
14.9
13.4
9.0
品質安定化(大面積均一成膜技術等)
7.5
省エネ技術(インバーター・制御等)
7.5
光電変換効率の向上
6.0
蓄電技術
6.0
太陽電池システム設計技術
6.0
リサイクル技術
4.5
長寿命化(材料技術)
3.0
長寿命化(モジュール組立技術)
0.0
その他
3.0
無回答
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
67
複数回答
N=67
セル・モジュールメーカー
を除く
九州周辺企業
32.8
高効率化、量産の低コスト化、リサイクル技術に課題
セル・モジュールメーカーに関して、太陽電池事業での課題を尋ねたところ、光電変換
効率の高効率化について、回答があった5社全社が課題と回答した。
次いで、量産の低コスト化については 80%(5社中の4社)が課題としている。量産の
低コスト化は、九州の太陽電池関連企業が技術シーズを持つ領域なので、連携促進が求め
られる。
図表Ⅳ−4−2
(%) 0.0
セル・モジュールメーカーの課題領域
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
80.0
90.0
100.0
光電変換効率の向上
80.0
量産の低コスト化
リサイクル技術
60.0
40.0
品質安定化(大面積均一成膜技術等)
20.0
長寿命化(材料技術)
20.0
量産安定化(歩留まり向上)
20.0
量産ラインの自動化・エンジニアリング
20.0
省エネ技術(インバーター・制御等)
20.0
蓄電技術
20.0
新しいアプリケーション開発
20.0
太陽電池の販売代理・設置施工
複数回答
0.0
長寿命化(モジュール組立技術)
N=5
0.0
太陽電池システム設計技術
0.0
その他
0.0
無回答
注)九州を含む全国のセル・モジュールメーカー
(①シャープ、②京セラ、③三菱重工業、④昭和シェルソーラー、⑤ホンダソルテックの 5 社から回答)
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
100.0
2)九州の太陽電池関連企業の生産プロセスへの技術シーズ(将来関われるプロセス)
ウェットによる洗浄、搬送、組立・施工への参入に期待
太陽電池の一連の生産プロセスに対して、技術シーズがあって、将来関わることができ
る領域を尋ねたところ、①ウェットによる洗浄に 10 社、②搬送に8社、③組立・施工に7
社が回答した。
68
図表Ⅳ−4−3
各生産プロセスに対して技術シーズを持つ企業数
(社・事業所)
12
10
10
8
8
7
6
5
4
4
3
2
2
1 1 1
1
そ
の
メ
カ
レ
ウ
ド
ラ
研
磨
レ
吸
着
電
解
ラ
ミ
ア
ニ
滴
下
集
光
球
状
セ
ル
タ
ブ
ス
ト
レ
イ
ラ
ミ
キ
フ
レ
ー
高
温
1 1
ュ
湿
式
1 1
ー
プ
ラ
︵
ス
パ
ー
イ
オ
1 1
ー
ス
ク
︵
拡
散
1
ー ー
ウ
2
1 1 1
ェッ
ド
ラ
2
ー ー
ダ
イ
1
ッ
ス
ラ
ー
搬
送
3
2
ェッ
0
3
2
端
子
1 1 1
出
力
解
析
特
性
特
性
設
計
1 1
組
立
シ
リ
レ
ア
実
装
ト
グ
プ
シ
熱
処
理
ン
グ
セ
ル
︶
ン
工
モ
ジ
ュー
抵
抗
測
定
抽
出
・
分
離
ル
︶
、
反
射
板
成
形
︶
ル
抽
出
・
分
離
発
電
検
査
洗
浄
︶
、
、
︶
、
ャ
︶
パス
タク
ラ
ンイ
ニビ
ンン
ググ
ー
ッ
反
発
そ射
電電
の防
成
極層
他止
膜
形
膜
成
︵
︵
︵
︶
テ
クエ
荒
ス
ら
チチ
し
ン
・ グ
表
面
状
S
i
︵
︶
熱
処
理
︶
ン
︵
シ
ョ
入
︵
素
ト
ッ
カ
ル
︵
ズ
マ
︵
C
V
D
︶
リ
ン
グ
ョ
入
︶
ン
印
刷
グ
ッ
ン
グ
︵
液 ネ
処 S テ 付 リ ア ネ ア
評 評
・
ザ
ズ
取 検
ン
イ
コ メ
プ 他 ニ ザ
1 2シイ 3ジン 4イ 5ト 6 7リ 8注
9タ 10
ト 17 18 19 20
色 21
ル 24
球 25
ミ 34
注 22 23
理 26
i 27
け 29
価 38
価 39 40
施 41
マ 11 12
付 35
タ
ス 28
ン 30 31 32 33
ン 42
ラ 13 14
査 36 37
カ 15 16
セル工程
モジュール工程
評価・解析
システム リサイクル
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
生産プロセスに技術シーズがある九州の太陽電池周辺企業
太陽電池システムの生産プロセスに関する技術シーズの具体的内容は以下の通りである。
また、一方でセル・モジュールメーカーの生産プロセスに対する技術課題としては、
①搬送工程に課題があり、工場全体での自動運転対処がうまくいっていないこと
②成膜(湿式)工程において、溶液成長法による高抵抗バッファ層成膜に課題があること
③成膜工程において、セレン化後の硫化法による CIS 系光吸収層の形成に課題があること
などが得られた。
69
図表Ⅳ−4−4
生産プロセスに対する技術シーズの具体的内容
具体的な内容
ロボット、エアーバキューム等を使用したハンドリング
技術を保有
熊本県 製造/検査装置
㈱プレシード
パネル製造ラインの高効率化、低コスト化
福岡県 設備・環境
第一施設工業㈱
上下階への垂直搬送設備(クリーンソフター)
福岡県 機械設計事業
自動化の拡大、コストダウン
㈱カンセツ久留米事業所
7 スクリーン印刷
福岡県 その他
九栄スクリーン㈱
スクリーン印刷技術
9 成膜(スパッタリング)
田中貴金属販売㈱福岡支店 福岡県 素材・材料
Ag(銀)系のスパッタリングターゲット
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
10 成膜(プラズマCVD)
福岡県 その他
㈱西日本常盤商行
膜の表面検査
鹿児島県 製造/検査装置
㈱マルマエ
電極制作
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
11 成膜(湿式)
熊本県 製造/検査装置
㈱プレシード
薄膜塗付(スリットコーター)装置
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
12 成膜(高温プラズマ)
武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
成膜(その他)
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
13
武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
14 スクライビング(メカニカ 浜村ユアツ㈲
福岡県 製造/検査装置
プレス技術を利用したリードフレームの分割技術を保
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
ル)
武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
成膜からレーザスクライビング洗浄までの工程(他メー
15 スクライビング(レーザー) 武井電機工業㈱
佐賀県 製造/検査装置
カーとの協業)における生産ラインの構築
16 洗浄(ウェット)
熊本県 製造/検査装置
㈱セイブ
半導体関連、FPD関連での洗浄装置に実績あり
シリコンウェーハの研磨再生における洗浄(ウェット)、
㈱フジミファインテクノロジー 長崎県 製造/検査装置
研磨技術
福岡県 その他(薬品製造) 高効率性(セル ベベル洗浄)
弘田化学工業㈱
研磨
シリコンウェーハの研磨再生における洗浄(ウェット)、
18
㈱フジミファインテクノロジー 長崎県 製造/検査装置
研磨技術
19 レーザーカット
福岡県 製造/検査装置
浜村ユアツ㈲
レーザーによるICの樹脂バリ切断装置実績
28 タブ付け
大分県 製造/検査装置
装置化
シェルエレクトロニクス㈱
32 キュア(熱処理)
熊本県 製造/検査装置
アルミフレーム応用の軽量フレーミング化
㈱プレシード
34 端子取付
大分県 製造/検査装置
装置化
シェルエレクトロニクス㈱
37 特性評価(セル)
福岡県 電気・電子機器
セル評価のための測定システム
九州計測器㈱
38 特性評価(モジュール)
福岡県 電気・電子機器
モジュール評価のための測定システム
九州計測器㈱
40 組立・施工
熊本県 システム・施工
㈱石崎錻力店
金属屋根に組込んだソーラー発電装置の施工
福岡県 装置関連部品・金型 施工を簡素化する部材
㈱三松
大分県 製造/検査装置
シェルエレクトロニクス㈱
装置化
41 シリコン抽出・分離
長崎県 製造/検査装置
シリコンパウダーの抽出、分離
ケー・エム・テクノロジー㈱
42 レアメタル抽出・分離
佐賀県 製造/検査装置
武井電機工業㈱
薄膜系太陽電池のリサイクルプロセスの検討
1
プロセス
搬送全般
事業所名
浜村ユアツ㈲
所在地
福岡県
業種
製造/検査装置
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
70
3)九州の太陽電池関連企業の部材での技術シーズ(将来関わることができる部材)
基板、モジュール、システムの材料で技術シーズ
九州の太陽電池関連企業で、技術シーズがある材料としては、多い順から、モジュール
におけるアルミフレームが4社、ステンレスの基板が3社となっており、システム材料・
部材においては電力モニタ、インバータ/コンバータ、電力貯蔵デバイスで2社回答があっ
た。
図表Ⅳ−4−5
各種材料に対して技術シーズを持つ九州の太陽電池周辺企業数
(社・事業所)
5
4
4
3
3
2
2
1
1
2
2
1
フ
リ
配
線
ラ
ミ
ア パ 接 昇 表 電 ケ
ル ワ 続 圧 示 力
イ
ン
ー
バ 封
止
2
1
ー
ガ
ラ
1 1 1
ー
そ
の
2
1
ー ョ
ス
テ
ー
フ
ッ
薄 酸 化 有 有 電 透 青 白
膜 化 合 機 機 極 明 色 色
1
ィ
プ ポ シ
ロ リ リ
セ シ コ
ス リ ン
用 コ ウ
薬 ン
ハ
品
1
ィ
0
2
バ 電 ア
イ 力 ル
ム
ン
デ
ト
ト
タ 素
/ 子
コ
ン
バ
タ
︶
モジュール
システム材料・部材
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
注)九州の太陽電池周辺企業を選択
71
タ
レ
ム
パ
ネ
ル
︶
デ ・
バ コ
イ ネ
ス ク
タ
蓄
電
装
置
ー
シ
ナ
ユ
ニ
︵
レ
ン
︵
電極
基板
セル・モジュール材料
配
線
シ
ッ
薄膜材料
レ
は
ム ん
だ
等
︶
ー
カ
バ
セル
E
V
A
ィ ョ
ト
ー
ス
ッ
ス
ー
ス
︵
導 系 素 属 用
体 材 材
金
材 料 料
属
料
︶
導
体
材
料
ー
ェ
用
反
応
ガ
ス
︵
ー
箱 接 ユ 貯 ブ バ バ モ ミ
電 ガ ガ ル ン 他 ス ル ク 材 ド 材 ネ ミ
1 2 3 形
4 物
5 物
6 薄
7 系
8 用
9 101112131415161718192021222324252627282930313233
フ コ
ス ニ フ
成 半 半 膜 色 金 極 ラ ラ ム レ
ム シ 料 フ 料
続 ニ 蔵 ル
4)セル・モジュールメーカーの部材での課題
電極用金属、バックシート、アルミフレーム、ケーブル・コネクタといった材料に課題
回答が得られたセル・モジュールメーカー5社中4社が、電極用金属、バックシート、
アルミフレーム、ケーブル・コネクタに課題を抱えている。
全体的な傾向としてはセル工程よりもモジュールやシステム工程で用いる材料に課題を
かかえる結果となった。
図表Ⅳ−4−6
セル・モジュールメーカーが課題を抱える各種材料
(社・事業所)
5
4
4
4
4
3
3
2
2 2
2
1
1
1 1
2
2
3 3
2
2 2 2
2 2 2
1
フ
リ
配
線
ラ
ミ
ア パ 接 昇 表 電 ケ
ル ワ 続 圧 示 力
イ
ン
ー
バ 封
止
ー
ガ
ラ
ー
そ
の
ー
ス
テ
ー
フ
ッ
薄 酸 化 有 有 電 透 青 白
膜 化 合 機 機 極 明 色 色
1
ィ
プ ポ シ
ロ リ リ
セ シ コ
ス リ ン
用 コ ウ
薬 ン
品
ハ
2
ィ
0
2
3
4
バ 電 ア
イ 力 ル
ン
デ
ト
ト
タ 素
/ 子
コ
ン
バ
タ
モジュール
システム材料・部材
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
注)九州を含む全国のセル・モジュールメーカー
(①シャープ、②京セラ、③三菱重工業、④昭和シェルソーラー、⑤ホンダソルテックの 5 社から回答)
72
タ
レ
ム
パ
ネ
ル
︶
デ ・
バ コ
イ ネ
ス ク
タ
蓄
電
装
置
ー
シ
ナ
ユ
ニ
︵
ム
ー
レ
ン
︶
配
線
シ
︵
電極
基板
セル・モジュール材料
は
ん
だ
等
ッ
薄膜材料
レ
ム
︶
ー
カ
バ
セル
E
V
A
ィ ョ
ト
ッ
ス
ー
ス
ョ
ス
︵
導 系 素 属 用
体 材 材
金
材 料 料
属
料
︶
導
体
材
料
ー
ェ
用
反
応
ガ
ス
︵
ー
ガ 13
ガ 12
電 11
ミ
他 16
バ 31
モ 33
ン 15
バ 32
箱 26
接 27
材 20
貯 29
ス 17
材 2223
ネ ミ 24 25
ユ 28
ル 14
ル 18
ク 19
ド 21
ブ 30
1 2 3 形
4 物
5 物
6 薄
7 系
8 用
9 10
ス ニ フ
フ コ
続 ニ 蔵 ル
成 半 半 膜 色 金 極 ラ ラ ム レ
ム シ 料 フ 料
5)大学・研究機関との共同研究ニーズ
過半数が大学・研究機関との共同研究に関心
九州のセル・モジュールメーカーと太陽電池周辺企業の約半数が大学・研究機関との共
同研究に関心を示した。
図表Ⅳ−4−7
大学・研究機関との共同研究に対する関心
無回答
6.6
はい
49.1%
いいえ
44.3
N=106
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
大学・研究機関に対する期待
九州のセル・モジュールメーカーと太陽電池周辺企業に対して大学・研究機関に求める
役割を尋ねたところ、
「評価・実験の場」としての役割が 35.8%と、最も強く希望している
結果になった。
続いて、「生産技術の共同開発」が 31.1%、「材料・構造に関する共同開発」が 29.2%と
続き、量産体制の確立と太陽電池の材料・構造について大学・研究機関と共同開発を希望
していることが確認された。
図表Ⅳ−4−8
(%) 0.0
大学・研究機関に求めるもの
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
評価・実験の場
35.8
生産技術の共同開発
31.1
材料・構造に関する共同開発
29.2
原理解明
17.0
人材育成
その他
40.0
12.3
複数回答
N=106
3.8
無回答
31.1
資料)太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート
注)九州のセル・モジュールメーカーおよび周辺企業を選択
73
74
第Ⅴ章
九州の太陽光発電産業の取引構造と参入実態
1.太陽光発電産業間取引・連携の現状と課題
前章では、アンケートにより太陽光発電関連産業の実態を概観したが、本章では、実際
に太陽光発電関連の事業に取り組んでいる各社へヒアリングを行い、産業間連携の取り組
みなどについて聞き取った。その結果を業態別・企業別にまとめ、実態を明らかにする。
1)ヒアリング調査の概要
今回のヒアリングでは、太陽光発電関連企業の上流から下流までの約 40 社にヒアリング
を行った。
ここでは、太陽電池メーカー(パネル・モジュール)、材料・部材・装置メーカー、アプ
リケーション・システムメーカー、販売店・デベロッパーの 4 つに大別し、各々の現状と
課題を明らかにする。
図表Ⅴ−1−1
太陽光発電産業の産業連関構図
アプリケーション・
システムメーカー
新型アプリケーション
太陽電池メーカー
装置メーカー
パネル
モジュール
システム
メーカー
販売店
(設備・メンテ)
カスタマー
材料メーカー
部材メーカー
デベロッパー
材料・部材・装置メーカー
販売店・デベロッパー
資料)九経調作成
2)太陽電池メーカー(パネル・モジュールメーカー)
(1)関連産業との連携の現状
○材料・副部材については、各社とも工程毎に専門メーカーからの調達を行っている。
○製造装置については、自社で内製化し、垂直統合型で開発しているメーカー、製造装置
メーカーとアライアンスを組んで開発しているメーカーなどに分かれる。アライアンス
を組む場合でも、製造装置の全てではなく、自社のコア技術の流出を防ぐため、搬送技
75
術や封止技術など一部の連携に留まるメーカーが多い。
○九州の薄膜系太陽電池メーカーの中には、地場企業から部材や製造装置を購入している
企業もある。
○人材育成や次世代太陽電池(有機薄膜系)の研究開発を目的として、大学との共同研究
を行っているメーカーも多い。
(2)課題・問題点
○セルの変換効率だけではなく、搬送、成膜、スループットなど生産ラインにおける「生
産性の向上」について、各社とも課題としている。
○セルの品質向上に繋がる副部材としての材料や封止材などについて、関連メーカーから
の提案を期待している。
○一部メーカーにおいては、モジュール工程以降のアウトソーシングも可能と考えており、
地場企業の参入余地がある。
○研究開発にかかる研究者不足、ライン増設に伴う技術者増強など人材不足に悩むメーカ
ーが多い。
○新型アプリケーションの開発によるビジネスモデルづくりを期待している。
○リサイクル技術や実証実験の必要性を課題としているメーカーも多い。
○太陽光発電産業が国家間の競争になっていることや海外の粗悪品による信頼性低下の懸
念など、海外との関係性を課題に挙げる企業も多い。
3)材料・部材・装置メーカー
(1)参入の現状
○半導体や FPD など各社がこれまで培ってきた技術を応用して、太陽光発電産業に参入し
てきたケースが多い。
○製造装置は、ターンキーではなく、搬送など装置の一部を取り扱っている企業がほとん
どである。
○材料や装置などの研究開発については、太陽電池メーカーより大学や公設試験研究機関
と共同研究を重ねているケースが多い。
(2)課題・問題点
○製造装置メーカーとしては、ライン立ち上げ時から太陽電池メーカーと共同で開発しな
ければ参入機会が確保できない現状がある。
○地場の製造装置メーカーが、後発で大手のアルバックや AMAT の装置ビジネスの牙城に
参入できるかという不安がある。
○研究機関のシーズも含めた太陽電池に関する情報が不足している。
○新規参入或いは今後の参入領域としてのリサイクル技術、リサイクル実証実験、レアメ
76
タルの抽出などへの関心が高い。
4)アプリケーション・システムメーカー
(1)参入の現状
○アプリケーションメーカーは主に自社で研究開発しており、太陽電池メーカーとの共同
開発を行っているメーカーは一部にとどまっている。
○システムメーカーについては、普及に向けて各社独自のビジネスモデルを開発している。
(2)課題・問題点
○アプリケーション開発に必要な太陽電池は、小ロットであり、太陽電池メーカーから思
うように調達できない(海外メーカーからの調達が主流)
。他の参入希望企業からの試作
用パネルの調達要望も多い。
○地方では太陽光発電に関する情報が少なく、セミナーや勉強会が必要である。
○地場中小企業や関連企業同士のネットワークが整備されていない。
○太陽光発電が他の再生可能エネルギーに比べコスト高であり、全体のコスト低減を図る
ことが必要である。
5)販売店・デベロッパー
(1)参入の現状
○設置する太陽電池パネルは、1社ではなく、複数社取り扱っている販売店が多い。
○各社とも販売網について農協などと提携したり、リサイクルを睨んで古物商免許を取得
したりするなど、独自の営業を行っている。
(2)課題・問題点
○蓄電池や系統連携設備の共有化など、太陽電池設備に付随した設備の運用方法について
ルール化や維持負担の問題がある。
○研究開発に偏っている補助を普及にも向けるべきであり、補助金制度は行政のお墨付き
として有用な制度で必要である。普及に向けたビジネスモデルの開発も必要である。
○普及が拡大する際に、訪問販売業者の一部で高額での売りつけ、手抜き工事などを行う
悪徳業者を排除するような仕組み作りも必要である。
77
2.太陽光発電産業間取引・連携の課題のまとめ
前節までで明らかになった各社が抱える課題や問題点をまとめると、①量産にかかる生
産性の向上、②人材不足の解消、③情報流通の拡大、④普及拡大に向けたビジネスモデル
づくり、⑤ネットワークづくり、⑥リサイクルシステムの構築に集約される。
1)量産にかかる生産性の向上
太陽電池メーカーでは、変換効率向上や発電コストの低下、長寿命化などの技術開発に
独自で取り組み、改良を重ねている。しかし、セルやモジュールの量産化に際しては、変
換効率だけではなく、歩留まりの向上やラインの自動化といった搬送技術や成膜技術、封
止技術など生産性の向上のために克服すべき課題も多い。これらの課題解決のため、材料
メーカー、部材メーカー、製造装置メーカーといった専門技術を有する企業との連携を図
る例も多い。したがって、九州の地場企業においても、各社の有する技術を太陽電池メー
カーや製造装置メーカーに示したり、アライアンスを組むことで太陽光発電産業に参入す
ることが可能である。このため、太陽電池メーカー向けの課題解決提案や地場企業が自社
技術を提案するような交流の場を設けることが求められる。
2)人材不足の解消
太陽光発電産業はここ数年で注目を浴びて急速に拡大しており、太陽電池メーカーや関
連企業、大学等の研究機関も含め、各所で人材不足の声が聞かれる。太陽光発電産業は他
の再生可能エネルギー産業と比較しても依然コストが高く、各社とも研究開発に熱心に取
り組んでいる。しかし、昨今の急速な産業の成長に対して、各社の人材確保や人材育成が
追いついていない現状がある。また、大学でも結晶系・化合物系・有機系と様々な種類の
太陽電池に関する研究が行われているが、往々にして学生は一般企業へ就職するため、研
究者人材も不足している。したがって、企業に対して太陽電池に精通した人材を供給でき
るよう、大学等における人材育成が必要である。
3)情報流通の拡大
太陽電池メーカーや既に参入している関連企業及びこれから参入を考えている地場企業
においては、まだ様々な課題を抱えているにもかかわらず、その解決のための技術を持っ
た企業情報、大学等の研究者情報が不足している。九州でも、薄膜系太陽電池メーカーの
存在は知られているものの、それ以外の関連企業や大学の研究者については認知されてい
ない場合が多い。したがって、九州内での太陽光発電産業に関する企業及び研究者のデー
タベース化などによる情報流通の拡大策が必要である。
78
4)普及拡大に向けたビジネスモデルづくり
住宅用太陽光発電システムについて、九州は全国でも普及率の高い地域となっている。
しかしながら、その普及率はせいぜい3%前後である。今後こういった住宅用の太陽光発
電システムの普及を進めるとともに、住宅用以外への普及に向けた新たなビジネスモデル
づくりが求められる。ビジネスモデルとしては、ミリ級の小型新アプリケーション開発か
ら、芝浦特機のような集合住宅での収益モデル、LLP化による大規模発電の取り組みな
どが例としてあげられる。
5)ネットワークづくり
太陽電池メーカーの一部で生産工程のアウトソーシングを行っており、材料・部材・装
置メーカーなどの関連企業も取引拡大の機会を狙っている。しかしながら、各社の課題や
技術に関する情報提供の機会がなければ、アウトソーシングや取引拡大には繋がらない。
したがって、これらを繋ぐためのイベントやセミナー開催によって人的ネットワークを構
築するほか、商談の場を設けることも必要である。
6)リサイクルシステムの構築
太陽電池は一度取り付けるとパワコンなどを除いて 20 年以上は使用可能と言われている。
太陽光発電産業がここ数年急成長して、各地で太陽光発電システムが設置されているが、
これらは十数年後には廃棄やリサイクル、希少金属(レアメタル)の抽出などの問題が発
生する可能性が高い。リサイクル技術の研究は進められているものの、本格的な実用化・
事業化に向けた技術開発とシステムの確立は今後の課題である。九州では北九州市や大牟
田市、水俣市といった環境産業の先進地があり、これらの環境産業で培った技術を活かし
た太陽電池のリサイクルやレアメタルに関する技術研究開発やシステム構築で先導するこ
とが求められる。
79
3.九州の地場参入企業の実態と課題
本節では、九州の地場企業の太陽光発電産業への参入実態と課題について、製造装置・
検査装置メーカーとアプリケーション・システムメーカーに分けて整理する。
1)製造装置・検査装置メーカー
(1)参入の経緯
製造装置や検査装置などで太陽光発電産業に参入したメーカーは、いずれも搬送やレー
ザー加工、検査などの各社が得意とする分野で、半導体産業や FPD 産業などに既に関わっ
ている。各社は、半導体・FPD 産業の成熟化により将来の大きな市場の伸びが期待できな
いなかで、新たな成長産業として太陽光発電産業に注目した。第Ⅲ章で触れたように、半
導体・FPD 産業と太陽光発電産業の技術親和性が高いため、各社が持つ技術を応用する形
で、太陽光発電産業へと参入した経緯がある。
例えば、得意としていた光ディスク関連の装置に関連したレーザー加工機を転用した製
造装置メーカー、家電メーカーに家電製品の検査装置を納めていたところ、その家電メー
カーが扱う太陽電池の検査装置も作ってみてはと依頼されたことがきっかけで参入した検
査装置メーカーなど、それぞれ参入の経緯は異なる。しかし、各社ともしっかりとした技
術を持っていたこと、また装置の研究開発に熱心に取り組んだことなどが評価された点は
共通している。
(2)参入の課題
製造装置は、太陽電池メーカーにとって生命線となりうるコア技術を含んだ部分である
ことから、地場メーカーが納める装置は製造プロセスの一部であったり、部材・パーツで
あったりする場合が多い。特に成膜プロセス工程が中核になるので、それ以外の工程に関
する装置の開発を手掛けることが多い。
検査装置については、セル1枚の検査を行う大学等の研究機関レベルから量産用に大量
のセルを検査する太陽電池メーカーまで幅広い検査装置の用途が見込まれる。したがって、
それらにカスタマイズした、より正確な検査が可能な装置の開発が求められる。
製造装置、検査装置いずれの場合においても、各社が開発した装置がどんなに高い技術
を持っていても、実際に使用するカスタマーへ商品を提案して認めてもらうことが必要で
ある。したがって、各装置メーカーと太陽電池メーカーなどとの具体的な提案の「場」、商
談の「場」づくりが求められる。
2)アプリケーション・システム施工メーカー
(1)参入の経緯
アプリケーション開発メーカーや、太陽電池を実際に屋根に取り付ける施工メーカーは、
80
中小企業であることが多い。
これらの企業が太陽光発電産業へ参入した経緯を辿ると、経営者の意識や行動力によっ
て現在の成功があると言える。
元々それぞれ太陽電池とは直接関わらない事業を行っていたが、雑誌の記事で環境問題
に取り組む重要性を認識したり、大地震のニュースから非常時に必要な充電器などの開発
を思い立ったり、電気の販売代理店から環境を意識して太陽光発電産業に参入したりと、
経営者の気づきから事業がスタートしていることが多い。共通して言えることは、経営者
が高い環境意識を持ち、今後の時代に必要だと思い、即座に行動(研究開発・事業参入)
に移したことである。
太陽光発電産業への参入と言っても、一朝一夕に成功にたどりついた訳ではなく、各社
ともアプリケーション開発に相当の研究開発費や時間を費やし、施工業者としての実績を
積むための勉強や努力を行ってきた。その中で、参入に成功した経営者はキーマンとなり
うる人物と出会ったりしている。
ある経営者は、新型アプリケーションの開発を考えて、大学を通じてある太陽電池メー
カーに開発の相談をしていたところ、同県にそのメーカーが進出したことで関係性が深ま
って、商品開発に繋がった。また、ある経営者は、太陽電池の施工業者を目指して当時の
太陽電池設置の補助事業に応募し、同時に補助を受けた近所に住む大学教授(太陽電池を
研究)と懇意になり、太陽電池を基礎から学び、施工業者としての技術についても実践で
学ぶことができた。
太陽光発電産業への参入を考えている地場中小企業にとっては、何らかの示唆を得たり、
取引に繋がるようなキーマンとの出会いが鍵になるとも言える。
したがって、中小企業やその経営者に対して、太陽光発電産業に関係する情報を提供す
るためセミナーやシンポジウムを開催し、キーマンとなるような人物との出会いの場を創
造していくことが必要であろう。
(2)参入の課題
アプリケーションを開発する中小企業にとっては、研究開発資金を確保することが重要
であるが、そのほかにも試作用の太陽電池を手に入れることも重要である。あるアプリケ
ーション開発企業には、太陽電池(パネル)を分けて欲しいという依頼がよく来るという。
中小企業にとっては試作用の少量の太陽電池で十分であるが、量産体制を構築した太陽電
池メーカーから少量を購入するのは難しく、太陽電池自体が逆に手に入りにくいものとな
っている。したがって、アプリケーション開発とパネルの供給が同時にできるような支援
策の検討も必要であろう。
また施工業者にとって大敵なのが太陽光発電に対する悪評の広まりである。太陽光発電
の補助金制度をうたい文句に、高額な太陽光発電システムを売りつける「悪徳業者」が少
なからず存在しており、そういった業者は得てして手抜き工事を行い、取り付けた顧客の
81
太陽光発電システムがほとんど機能しないといったケースもあると聞かれる。同様のケー
スで被害が広がれば、太陽光発電自体の評判が悪くなり、普及の足を引っ張りかねない。
そのため、普及に向けて、長期の品質保証や自治体における業者認定制度など、安心して
導入を行える体制づくりも求められる。
82
4.九州の地場参入企業の成功のポイントと課題のまとめ
各社の参入経緯や取引実態により、今後九州の地場企業が太陽光発電産業に参入するに
あたって必要なポイントや克服すべき課題は以下のとおりである。
1)成功のポイント
(1)経営者の環境意識・情熱・意欲・行動力
現在、太陽光発電産業に参入している地場企業が成功している理由として、経営者や代
表者が高い環境意識を持ち、環境貢献に向けて情熱と意欲を持って取り組んでいる場合が
多い。特にそういった経営者は、人々が太陽光発電に注目するより先に独自で勉強や研究
を始め、結果として会社としての参入成功を果たしている。
(2)人の出会い・繋がり
参入に成功している企業は、キーとなる研究者や関係企業との出会いにも恵まれている
場合が多い。成功している企業では、人より早く意識して取りかかり、その中で成功に繋
がるような企業・研究者とのネットワークを形成している。行動力でセミナーや研究会に
積極的に参加して、自らの手でつかみ取っているケースが多い。
(3)自社の技術力の応用と研究開発
参入を成功させるためには、自社の技術を磨き、応用展開や横展開に向けた研究開発に
積極的に取り組んでいる。各社とも研究開発に時間をかけ、太陽電池メーカーの要望にカ
スタマイズし、採用されるレベルの装置・機器を開発している。
2)参入するために克服すべき課題
先のアンケートやヒアリング結果をみても、地場企業で参入に成功している事例はまだ
少ない。参入の課題としては、技術情報や太陽電池メーカーの課題など欲しい情報が少な
く、企業同士のネットワークもないことがある。一方、参入に成功している企業は、成功
事例のポイントでも触れたとおり、他よりも先に動いてセミナーなどで情報を収集し、人
的ネットワークを構築し、キーマンとの出会いをきっかけとしている。
関係企業と地場企業同士のネットワーク構築やセミナーなどでの情報収集の場が、重要
なひとつのきっかけづくりとなり、地場企業の参入にとっては最も重要なファクターとな
りうる。そのため、九州においても関係者が集うようなセミナー・シンポジウムの継続的
な開催、人的ネットワーク構築・情報収集のための太陽光発電産業に関係する企業及び研
究者のデータベース化が強く求められる。
83
84
第Ⅵ章
太陽光発電システムの普及導入に関する支援策
1.太陽光発電システムの普及導入支援制度
1)海外の制度
太陽光発電システムは、1990 年代は日本やアメリカを中心に導入が進められた。しかし、
2000 年以降は、ヨーロッパを中心に導入が進んできている。これは、ヨーロッパで様々な
普及促進制度が整備された結果である。
1997 年に京都議定書が議決され、CO2 の削減目標が定められた。これを受けて、EU で
は、2010 年における再生可能エネルギーを全エネルギーの 12%、電力の 22%とすること
を定めた。その後 2001 年には、「欧州再生可能エネルギー系統指令」によって、各加盟国
に対して再生可能エネルギーの利用目標が設定された。
こうした状況下、EU 加盟国のドイツは、再生可能エネルギーの1つである太陽光発電シ
ステムの積極的な活用を始めた。ドイツは、2000 年に「再生可能エネルギー法(EEG)」
を施行し、電力供給事業者に対して再生可能エネルギーによる電力の買取りを義務づけ、
買取額と買取期間(20 年間保証)を定めた。こうした太陽光発電システムによるエネルギ
ーの買取価格と買取期間を法律で定める方式が、いわゆるフィードインタリフ制度(以下
FIT)である。買取額が 20 年間保証されているため、EEG の施行後、ドイツでは急速に太
陽光発電システムが普及した。2000 年でのドイツにおける太陽光発電システムによる電力
生産量は、64GWh であったが、2006 年には 2,000GWh と急増した。
ドイツでの普及の成功を受けて、現在では、ヨーロッパを中心に FIT を採用する国が急
増 し て い る 。 REN21(Renewable Energy Policy Network for the 21th century) の ”
Renewables 2007 Global Status Report”によると、FIT を採用する国は 36 カ国あるが、
このうち、21 カ国が EU 加盟国である。アジアでも、韓国や中国、インドネシアなどは、
FIT を採用している。また、世界各国では、FIT だけではなく、補助金、税制度、RPS 制
度などの各種のインセンティブを設定し、普及促進制度を強化している。
この結果、世界の太陽光発電システム年間導入量(但し IEA 加盟国 18 カ国に限る)は、
2006 年に 1.5GW を超え、2007 年までの累積で 7.8GW となっている。
85
図表Ⅵ−1−1
ヨーロッパ主要国における太陽光発電システムの普及促進制度
資料)一木修・貝塚泉「欧米における再生可能エネルギーの普及への取り組み」『光発電 2008 年 No.31』
86
2)日本の制度
(1)他国に先駆けた研究開発と実証試験に対する支援
日本の太陽光発電システムの普及促進制度は、1994 年から始まった住宅用太陽光発電シ
ステムの導入に対する補助制度であるが、研究開発レベルも含めると、1974 年から始まっ
たサンシャイン計画が、初めてのものである。研究開発支援は、サンシャイン計画、ニュ
ーサンシャイン計画、各種太陽光関連研究開発と、その形を変えながらも現在まで続いて
いる。また、実証実験についても、1992 年から始まった独立行政法人新エネルギー・産業
技術総合開発機構(以下、NEDO)による「太陽光発電新技術等フィールドテスト事業」
が現在まで続いている。
図表Ⅵ−1−2
日本の太陽光発電システムに対する導入支援制度
1985
研
究
開
発
サンシャイン計画(1974∼1992)
(太陽光、大型風力等)
1990
1995
2000
2005
ニューサンシャイン計画(∼2000)
(太陽光、大型風力等)
太陽光関連研究開発等
(2001∼)
実
証
試
験
風況調査、風力発電フィールドテスト等( 1986∼)
導
入
・
普
及
住宅用太陽光発電導入促進
(1994∼2005)
太陽光発電フィールドテスト等( 1992∼)
新エネ事業者支援・地域新エネ導入 促進
(1997∼)
電
力
業
界
の
取
組
余剰電力購入メニュー( 1992∼)
グリーン電力基金( 2000∼)
グリーン電力証書( 2001∼)
新エネルギー利用等の促進に関 する特別 措置法
(1997∼)
法
制
度
RPS法
(2003∼)
資料)資源エネルギー庁資料
(2)RPS の運用強化と家庭用太陽光発電システムへの補助
一方、普及促進に関しては、FIT による支援を進める諸外国に対して、日本は主に家庭用
太陽光発電システム設置に対する補助制度や、事業者向けの各種制度、RPS の運用強化の
面から導入を支援している。
住宅用太陽光発電システム設置への補助制度については、2005 年には廃止されたが、
2008 年度(2009 年1月)から条件付きで再開され、2009 年度も継続の予定である。また、
87
住宅用については、地方自治体による支援制度もある(後述)。
事業者向けの普及促進制度は、経済産業省の「新エネルギー事業者支援対策事業」、環境
省の「再生可能エネルギー導入加速化事業」など、中央省庁によるものが充実している。
RPS の運用強化については、2007 年に見直しを実施し、2014 年度の新エネルギーによ
る発電の利用目標量を 160 億 kWh に設定した上で、太陽光発電システムに係る RPS 相当
量を2倍にしている。
(3)税制の緩和
2009 年度からは、住宅用および事業所用の太陽光発電システム設置を促進するため、一
部で税制の緩和が図られている。住宅用については所得税の減税、事業所用については税
額控除や固定資産税の軽減などが見られる。
図表Ⅵ−1−3
太陽光発電システムに関する政策支援措置(予算と税制)
住宅用
事業用
新築
既築
住宅用太陽光発電導入支援対策補助金
(平成20年度補正予算額90億円(新規))
(平成21年度予算(案)201億円)
以下の要件を満たす住宅用太陽光発電システムの設置を行う者を対
補 象に定額補助を実施(7万円/kW)
助
金 ①変換効率が一定以上のもの
②一定の品質・性能が一定期間確保されているもの
③kWあたりのシステム価格が一定以下のもの(70万円/kW以下)
<ローンを組む場合>
住宅ローン減税の延長・拡充
(所得税)
太陽光発電設備等を備えた新築
住宅に対する、住宅ローン減税
税 制度の延長及び拡充を図る。
制
<ローンを組まない場合>
住宅の省エネ改修に係る投資型
減税措置の創設(所得税)
ローンを組まずに、太陽光発電
設備を導入する一定の省エネ
改修に対し投資型減税措置を
創設(工事に要した費用の10%を
所得税額から控除)
資料)九州経済産業局資料
88
新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金
(平成21年度予算(案)364億円)
うち、新エネルギー等事業者支援対策事業
民間事業者による先進的な新エネルギー等利用設備の導
入事業に対し、事業費の一部を補助する(補助率1/3以内)
うち、地域新エネルギー等導入促進対策事業
従来の地方公共団体の実施する事業に加え、民間事業者
による地方公共団体と連携して行う大規模太陽光発電や公
的施設における太陽光発電設備の導入に対し、事業費の
一部を補助する。(補助率1/2以内)
エネルギー需給構造改革投資促進税制
(平成24年3月31日まで)
①所得税又は法人税の額から所得税の7%を税額控除
(中小企業等に限る)又は、
②所得税の30%相当額を特別償却
省エネ・新エネ設備当の投資促進のための税制措置
省エネ・新エネ設備等の初年度即時償却(時限措置)
太陽光発電設備に対する課税標準の特例の創設
(固定資産税)
事業者が太陽光発電設備を導入する際に課税される固定
資産税について、最初の3年度分の課税標準を2/3に軽減す
る
2.地方自治体での太陽光発電システムの普及促進制度
1)住宅向けの支援制度
住宅向けの太陽光発電システムの普及促進制度は、地方自治体においても積極的に取り
組まれている。2008 年度における全国の支援自治体数は 311 カ所あり、総自治体数 1,857
カ所の 16.7%を占めている。
補助内容は、普及促進を実施する市町村に対する助成と、システムの導入・設置に対す
る補助に分かれる。都道府県の制度は、助成と補助の双方があり、市町村の制度は、補助
が中心である。なお、都道府県の制度の中には、売電量に応じた助成(滋賀県)や電子ポ
イント交付(京都府)、太陽光発電システムによる電気の環境付加価値分の買取り(和歌山
県)など、ユニークなものも存在する。
補助額については、多くても 60 万円程度であり、ほとんどの自治体が 10∼20 万円台程
度にとどまっている。なお、各自治体の支援制度には、年間補助上限が存在するため、希
望者全てが利用できるとは限らない。
図表Ⅵ−2−1
県名
自治体名
福島県
住宅用に対する主要自治体の普及促進制度(全国:2008 年度)
補助内容
3万円/kW
茨城県
東海村
10万円/kW
群馬県
明和町
6万円/kW
新潟県
糸魚川市 10万円/kW
長野県
東御市
愛知県
3万円/kW
2万円/kW
愛知県
小牧市
7.5万円/kW
愛知県
田原市
15万円/kW
上限
年間
補助上限
12万円
(4kW)
40万円
(4kW)
30万円
(5kW)
40万円
(4kW)
30万円
(10kW)
制度開始
他補助金
との併用
H19∼
予算の
範囲内
○
○
○
○
H13∼
○
H16∼
○
○
H15∼
○
○
H12から
○
○
○
○
8万円
(4kW)
30万円
(4kW)
60万円
(4kW)
新築戸建 既築戸建 共同住宅
○
○
店舗との併用住宅は対象
○
店舗との併用住宅は対象
補助対象経費の1/3以内
○
○
県内市町と連携して補助
太陽光発電設備に係る売
電量に対する3年間の助
成
同左
H17∼H20
○
○
5万円
(10kW)
H20∼
○
○
350万円
H15∼
7.5万円
H18∼
12.5万円
(5kW)
山口県
愛媛県
松山市
年利1.9%
5年以内で元金均等月 500万円
賦償還
40万円
8万円/kW
(5kW)
県内市町村が住宅に対して
助成事業を実施する場合
の補助
○
5∼10円/kWh
2.5万円/kW
店舗との併用住宅は対象
○
滋賀県
和歌山県
○
○
H13から
兵庫県
店舗との併用住宅は対象
○
同左
利率:年1.7%
10年以内均等月賦返
2.5万円/kW
設置費用×4.875%
○
H11∼
6万円/件
0.5万円/kW
備考
県内市町村が住宅に対して
助成事業を実施する場合
の補助
補助率:1/2以内かつ上限
300万円
H13∼
三重県
京都府
その他
○
○
電子ポイントの交付
リフォームによる設置が対象
×
○
○
H20
○
○
H20∼22
○
○
H12∼
○
○
注)都道府県の制度は全て掲載。市町村は上限額 30 万円以上のものを掲載
資料)(財)新エネルギー財団ホームページ、各自治体ホームページ
89
補助・融資制度がある県内
市町村の人は不可
自家消費電力(約500kWh)
の環境価値相当分を1kWh
当たり50円で買い取る手法
で設置者に対して導入時に
助成
○
融資制度
○
店舗との併用住宅は対象
九州・沖縄で普及促進に取り組んでいる自治体は 12 カ所(九州・沖縄の自治体の4%)
に過ぎない。県内全市町村を支援の対象にしている佐賀県内の全市町村を加えたとしても、
32 カ所(11.6%)にとどまっている。九州各県の住宅向けの太陽光発電システムの普及率
は、全国よりも高い水準を維持しているが、制度については全国よりも取り組みが遅れて
いるといえる。
図表Ⅵ−2−2
県名
福岡県
自治体名 補助内容
上限
年間
補助上限
制度開始
他補助金
との併用
北九州市 5万円/kW
20万円
(4kW)
年120件
程度
H19∼H21
×
福岡市
10万円/件
筑前町
2.5万円/kW
大木町
香春町
佐賀県
長崎県
熊本県
新築戸建 既築戸建 共同住宅
○
その他
備考
○
太陽熱利用システムもあり
×
共同住宅は分譲、賃貸共に
可。賃貸共同住宅はH20∼
店舗との併用住宅は対象
年200件
H13∼
○
○
○
予算の
範囲内
不明
規定なし
○
○
年間7件
H14∼
規定なし
○
○
年間10件
H16∼
規定なし
○
○
予算の
範囲内
○
太陽熱利用設備もあり
○
店舗との併用住宅は対象
H20∼制度変更
目標:1万件
H18∼
規定なし
○
○
H12∼
規定なし
○
○
○
店舗との併用住宅は対象
増設や改修は対象外
○
店舗との併用住宅は対象
なし
菊池市
2万円/kW
天草市
5万円/kW
大津町
10万円/kW
高森町
4万円/kW
なし
宮崎県
なし
沖縄県
同左
10万円
(4kW)
9万円
3万円/kW
(3kW)
8万円
2万円/kW
(4kW)
6万円
1.5万円/kW
(4kW)
大分県
鹿児島県
住宅用に対する自治体の普及促進制度(九州・沖縄:2008 年度)
鹿児島市 4.5万円/kW
那覇市
2万円/kW
6万円
予算の
(3kW)
範囲内
20万円
予算の
(4kW)
範囲内
30万円
15件
(3kW) (予算450万円)
16万円
(4kW)
13.5万円
(3kW)
6万円
(3kW)
H18∼
規定なし
○
○
H19∼
規定なし
○
○
予算の
範囲内
H19∼
規定なし
○
○
○
店舗との併用住宅は対象
町内進出企業からの寄付を
原資として実施
年250件
H16∼
規定なし
○
○
○
店舗との併用住宅は対象
予算の
範囲内
H15∼
規定なし
○
○
注 1)支援内容は全て「補助」
注 2)空欄は該当する記載なし
資料)(財)新エネルギー財団ホームページ、各自治体ホームページ
2)事業所・公益的施設向けの制度
2008 年度における事業所向けの制度は、全国で 14 カ所にとどまっており、住宅向け支援
制度に比べるとさらに遅れている。事業所向けの制度は、経済産業省や環境省、NEDO な
ど、政府や研究機関で数多く設定されており、自治体の制度は少ない状況にある。
事業所向けの制度は、設置に対する補助、ないし設置に対する融資に大別される。補助
額にはばらつきがあり、最も多い自治体では 350 万円が設定されている。融資については、
概ね 1,000 万円台が上限となっている。自治体の中には、町田市や神戸市のように、利子
補給を実施する制度もある。
90
図表Ⅵ−2−3
県名
岩手県
自治体名
葛巻町
福島県
事業所・公益的施設に対する自治体の普及促進制度(全国:2008 年度)
種類
内容
上限
制度開始
他補助金等
との併用
補助
国・県の補助金を受けた場合、補助対象事
業費の1/10以内
同左
H14∼H21
○
補助
市町村事業費の1/2以内かつ上限300万
円
30万円
(10kW)
H19∼
○
備考
県内市町村が事業所に対して助
成事業を実施する場合の補助
東京都
墨田区
補助
設置に関する経費の30%
50万円
H20∼H22
東京都
足立区
補助
助成対象経費の1/2
350万円
H20∼H22
自治会会館や障害者施設など公
益的施設のみ対象
東京都
三鷹市
補助
5万円/kW
20万円
(4kW)
H16∼
市民、団体、事業者等全てが対象
年利1.8%全額補助
利子補給 信用保証料全額補助
7年以内割賦返済
1,000万円
H15∼
中小企業者かつ環境改善整備資
金を受けていないもの
東京都
町田市
神奈川県
海老名市
補助
3万円/kW
10万円
(3.3kW)
愛知県
田原市
補助
15万円/kW
60万円
(4kW)
H11∼
補助対象経費の1/3以内
融資
所要資金の90%以内
利率:年2.5%
10年以内均等月賦返済
8,000万円
H15 ∼
対象は組合でも可
組合の上限は1億6,000万円
京都府
京都府
京都市
融資
年利1.5%
10年以内月賦返済
4,000万円
H14 ∼
兵庫県
神戸市
融資
年利1.8%で融資
7∼10年で元利均等月賦償還
利子の30∼60%を補給
2,000万円
H6∼
広島県
福山市
融資
年利1.9%以下(要信用保証)
7年以内割賦返済
2,000万円
H13∼
融資
年利1.9%
10,000万円 H18∼H22
5∼10年で元金均等月賦償還利子後払い
補助
(10kW以上が対象)
山口県
愛媛県
松山市
100万円
注)中小企業、中小事業所向けの支援
資料)(財)新エネルギー財団ホームページ、各自治体ホームページ
91
H12∼
対象は組合でも可
組合の上限は5,000万円
3.太陽光発電システムの普及に影響を及ぼす税制度とその課題
1)関係が深い不動産取得税と固定資産税
太陽光発電システムの導入にあたって、様々な税金がかかる。戸建て住宅に対する設置
の場合、購入時には、国税(登録免許税、印紙税、その他)、都道府県税(不動産取得税)、
市町村税(地方税)が課せられる。このうち、太陽光発電システムの導入と深く関係する
税は、不動産取得税と固定資産税である。
不動産取得税は、住宅(家屋)の評価額の3%を取得時に支払うものであり、固定資産
税は、住宅の評価額の 1.4%を毎年支払うものである。この2種類の税金を算定する時に必
要となる評価額は、家屋評価によって決定される。家屋評価では、屋根や基礎部分など、
建物本体と構造上一体となっているもの全てが評価の対象となる。
図表Ⅵ−3−1
国/地方税
戸建て住宅購入時に必要な税金
種類
登録免許税
印紙税
その他
都道府県税(地方税) 不動産取得税
固定資産税
市町村税(地方税)
その他
国税
内容
家の所有権保存や抵当権設定の登録時に必要
不動産取引の契約書に貼付
消費税など
不動産を取得した時に1回だけ納める
不動産を所有している者が毎年支払う
都市計画税
資料)九経調作成
2)税負担が異なる建材一体型と後付型
家屋評価では、建物本体と構造上一体となっているもの全てが評価の対象となるため、
新築家屋に既に取り付けられているいわゆる建材一体型の太陽光発電システムは、評価額
に含まれる。しかし、後から取り付けられた後付型の太陽光発電システムは、構造上一体
となった設備と見なされないため、評価対象外となる。
一般的に、新築の際には、建材一体型の太陽光発電システムの方が安価に導入できると
言われているが、建材一体型はその後も税負担を続ける必要があるため、後付型と大きな
差が生じる。
現在の不動産取得税と固定資産税の評価システムは、建材一体型のコストメリットを享
受できない上、環境への配慮が高い人の方が、負担が重くなる可能性があるという矛盾を
抱えている。
92
4.民間による太陽光発電システムの普及促進制度
行政サイドの太陽光発電システムの普及促進制度は、主に設備に対する助成や補助、融
資が中心となる。一方、民間の制度は、設備に対する助成や補助に加え、太陽光発電シス
テムによる電気の活用を促進するものが多い。代表的なものとしては、電力のなかに含ま
れる環境付加価値を証書化する「グリーン電力証書」や、公的施設に対する助成制度であ
る「グリーン電力基金」が挙げられる。ここでは、グリーン電力証書と、九州で実施され
るグリーン電力基金である「九州グリーン電力基金」を紹介する。
1)グリーン電力証書
グリーン電力とは、自然エネルギーからつくられ、発電時に二酸化炭素や有害物質を排
出しない環境負荷の小さい電力を指す。一般的には、太陽光、風力、バイオマス、地熱な
どの再生可能なエネルギーで発電された電気は、全てグリーン電力となる。
二酸化炭素や有害物質を排出しないという環境に対する付加価値を持つグリーン電力は、
消費者運動を背景として、1990 年代初頭にアメリカで誕生した。グリーン電力には、環境
価値部分を評価して追加料金を払い、市場での競争力を持たせ、普及させようとする考え
が含まれている。
グリーン電力の普及を促進するために発生した概念が、環境付加価値を証書化した「グ
リーン電力証書」である。グリーンエネルギーから得られた電気を、電気そのものと環境
付加価値とに切り離し、証書の形で電力需要家(企業など)が保有し、普通の電気と組み
合わせることで、グリーンエネルギーによる電気と見なすことができるのである。
図表Ⅵ−4−1
グリーン電力
発電事業者
グリーン電力とグリーン電力証書の概念
グリーンエネルギーからの電気
電気
需要家
電気
=
+
電気
そのもの
+
グリーン
電力証書
=
環境
付加価値
グリーン
電力証書
グリーンエネルギーによる
電気とみなせる
グリーン電力
資料)経済産業省資源エネルギー庁
グリーン電力証書を認証するのは、認証機関である「グリーンエネルギー認証センター」
である。同機関から認証されたグリーン電力証書を必要とする電力需要家に対して発行・
93
販売するのは、「証書発行事業者(仲介団体)」である。証書発行事業者は、NTT ファシリ
ティーズやエネサーブなど、全国に 11 カ所存在する。
なお、電力需要家が払う証書の代金は、最終的にグリーン電力発電事業者に渡る。グリ
ーン電力証書は、通常再生可能エネルギーの導入量を電力会社に義務づける制度(日本で
は RPS 法)と共に用いられる。
図表Ⅵ−4−2
グリーン電力証書認証の仕組み
環境付加価値の取引
認証機関
電力量認証
電力量認証の申請
(環境付加価値の
グリーン電力としての認証依頼)
環境付加価値の移転
電力需要家
通常の電力
取引
証書代金
(証書化費用除く)
仲介団体
証書代金
電力会社 A
電力会社 B
グリーン電力発電
事業者
グリーン電力証書
通常の電力の
販売、取引
通常の電力の取引
資料)経済産業省資源エネルギー庁資料に九経調が加筆して作成
認証されたグリーン電力量は、2001 年度以降着実に増加を続け、2006 年度には単年度で
年間1億 kWh を超えた。2008 年 12 月までの累計では約 5.5 億 kWh に達している。
グリーン電力証書の購入者は、グリーン電力認証機構の発足当初(2001 年 11 月)には、
わずか 10 社程度であったが、2008 年4月には国内で 150 社以上に拡大した。国内最大の
証書購入事業者はソニー(株)であり、2008 年4月段階では、3,150 万 kWh 購入している。
しかし、世界におけるグリーン電力の取引量は日本よりも多い。アメリカのグリーン電
力の発電量は、2006 年には年間 88 億 kWh が認証されている。また、アメリカ最大のグリ
ーン電力購入者(インテル社)は、2008 年1月までに 13 億 kWh を購入している。
94
図表Ⅵ−4−3
グリーン電力の発電電力量の推移
(1000kWh)
600,000
545,651.2
認証電力量(左目盛)
累積認証電力量(右目盛)
500,000
400,000
354,351.2
266,980.3
300,000
200,000
191,300.0
152,717.3
114,263.0
87,370.9
100,000
50,430.3
1,158.0
0
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年4∼12月
資料)(財)日本エネルギー経済研究所グリーンエネルギー認証センター資料と資源エネルギー庁資料より作成
ところで、現在のグリーン電力は、設備件数では太陽光発電システムが約半数を占める
が、電力量(設備容量)では、太陽光発電システムは 6.4%にとどまっている。電力量でみ
た場合、現在のグリーン電力は、風力とバイオマスが中心である。
ヒアリング調査によると、現在の日本では、グリーン電力証書が1kWh あたり5∼10 円
程度で販売されている。一方、再生可能エネルギーによる発電コストをみると、風力発電
(大規模)は、1kWh あたり9∼14 円であるのに対して、太陽光発電システムは、46 円
程度である(「日本のエネルギー2006」)。太陽光発電システムによる電気は発電コストが高
く、グリーン電力証書の販売額との差が大きい。また、太陽光発電システムによるグリー
ン電力証書の取引には、計量法に準拠した計量器を用いることが前提となり、この計量結
果を写真撮影して自家消費電力量(=グリーン電力量)を報告するなどの面倒な作業が必要
となる。そのため、現時点では太陽光発電システムによるグリーン電力は少ないのが実態
である。
95
図表Ⅵ−4−4
グリーン電力の設備種別の比率
19.8%
27.9%
2.3%
55.7%
36.2%
2007年度末現在
86件
226,086.09kW
3.5%
46.5%
6.4%
0.4%
1.3%
バイオマス
【24件、81,893kW】
水力
【3件、802kW】
太陽光
【40件、14,461.09kW】
地熱
【2件、2,890kW】
風力
【17件、126,040kW】
注)内円はグリーン電力の設備種別の件数の比率、外円は設備種別の設備容量の比率
資料)(財)日本エネルギー経済研究所グリーンエネルギー認証センター資料より九経調作成
2)九州グリーン電力基金
地方公共団体や公益的な法人、市民団体による公的施設(学校、公民館、病院等)に対
する太陽光発電システムの設置については、「グリーン電力基金」による支援制度がある。
グリーン電力基金とは、太陽光発電システムの設備や風力発電設備等の設置に対する助
成の原資(基金)であり、全国各地の電力会社が、一般家庭(個人)や企業から集める1
口 500 円(1月)の基金である。電力会社は、電気料金上乗せの形で顧客から拠出金を預
かり、集めた拠出金と同額程度の資金を、グリーン電力基金に寄付する。そして、グリー
ン電力基金の運営主催者は、助成を希望する太陽光発電システムの設備や風力発電設備を
設置する施設を募集し、審議の上、設置費用の一部に対して助成する。
九州で展開される「九州グリーン電力基金」は、(財)九州地域産業活性化センターが運
営主体となり、2000 年 10 月に誕生した。加入口数は 2008 年7月末時点で 7,476 口である
が、2003 年8月末の 12,396 口をピークに減少傾向にある。なお、現在のところ、加入者
の多くは一般家庭である。
九州グリーン電力基金の太陽光発電システムに対する助成状況は、平成 20 年までの累計
が 255 件、出力換算で 2,763kW であり、その助成額は3億 7,246 万円である。助成件数は
年々増加傾向にあるが、基金自体が減少しているため、助成額は減少している。
96
図表Ⅵ−4−5
年度
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
合計
件数
11
22
27
25
30
30
34
37
216
一般枠
助成対象
出力
(kW)
141
239
299
283
332
334
391
448
2,467
九州グリーン電力基金の助成状況(太陽光発電システム)
助成額
(万円)
1,410
2,385
3,028
4,395
4,979
4,348
3,909
3,627
28,081
件数
4
5
7
5
6
6
6
39
特別枠
助成対象
出力
(kW)
15
33
40
55
49
55
50
297
助成額
(万円)
800
1,000
2,100
1,500
1,485
1,200
1,080
9,165
件数
11
26
32
32
35
36
40
43
255
計
助成対象
出力
(kW)
141
254
332
323
387
383
446
498
2,764
助成額
(万円)
1,410
3,185
4,028
6,495
6,479
5,833
5,109
4,707
37,246
注1)一般枠とは、地方公共団体や公益的法人等による公的施設への設置への助成。平成 20 年の助成額は、1kW あたり 10 万円
(上限 15kW)
注2)特別枠とは、地域の市民団体と公的機関の協力による公的施設への設置で創意工夫がみられるものへの助成。平成 20 年
の助成額は、1件あたり 180 万円(上限6件)
資料)(財)九州地域産業活性化センターより九経調作成
なお、九州電力は、グリーン電力基金以外でも、低圧太陽光発電からの余剰電力を一律
25 円/kWh で購入する形で太陽光発電システムの普及促進に貢献している。
経済産業省の発表では、家庭や学校、企業が太陽光で発電した電力について、現行の2
倍程度の価格で買い取ることを電力会社に義務付ける制度を 2009 年度から導入するとして
いる。その場合、購入価格は、50 円/kWh 程度になると見込まれている。
97
98
第Ⅶ章
太陽光発電システム導入に対する九州企業の実態
1.太陽光発電システム普及促進に関するアンケート調査の概要
本調査において、九州における太陽光発電システムの普及実態を把握するために以下の
アンケートを実施した。本章では、アンケート結果を概括する。
1)アンケート調査の概要
[アンケート調査名]
太陽光発電システム普及促進に関するアンケート調査
[調査目的]
目的①:九州企業の太陽光発電システムに対する取組み状況の把握
目的②:九州企業が求める太陽光発電システムの導入インセンティブの把握
目的③:九州企業が求める太陽光発電システムに関するセミナー・ビジネス商談の把握
[調査対象]
①
九州に立地する資本金 10 億円以上の企業(製造業を除く)
924 社
出典:帝国データバンク
②
九州に立地する資本金1億円以上の工場(製造業)
540 社
(但し「太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケート」発送企業を除く)
出典:(株)データフォーラム「工場ガイド」
③
九州のハウスメーカー及び建築家
271 社
出典:Web サイト「HOME’s 注文住宅」掲載企業、ASJ 建築家リスト
④
太陽電池販売施工メーカー
255 社(但し有限会社、任意団体、営業所等を除く)
出典:経営事項審査 徹底活用法!ホームページ
⑤
九州の建物売買業・貸事務所業の年商上位 10 社
出典:帝国データバンク
合計
2,000 社
[調査実績]
■発送日:12 月5日(金)
■締切日:12 月 19 日(金)
(到着分最終締切日:12 月 22 日)
■発送数:2,000 件
■回答数:346 件
■回答率:17.3%
99
2)アンケート回答状況
アンケート回答者の属性
回答者の所在地は、福岡県(39.0%)が最も多く、以下熊本県(15.0%)、大分県(11.
0%)、鹿児島県(9.8%)と続いている。
図表Ⅶ−1−1
回答者の所在地
無回答
0.9
鹿児島県
9.8
宮崎県
9.0
福岡県
39.0 %
大分県
11.0
長崎県
8.1
熊本県
15.0
N=346
佐賀県
7.2
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
売上高をみると、全体の 81%が資本金1億円以上の企業である。
図表Ⅶ−1−2
無回答
11.3
100億円
以上
16.8
50億∼
100億円
未満
7.8
回答者の売上高
1億円
未満
7.8%
1億∼5億
円未満
14.2
10億∼50
億円未満
28.9
5億∼10
億円未満
13.3
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
100
業種を見ると、最も多いのは製造業(24.3%)であり、以下サービス業(17.3%)、土木・
建設・設備工事業(13.0%)、卸売業・小売業(9.2%)と続いている。
図表Ⅶ−1−3
回答者の業種
無回答
0.9
製造業
24.3 %
その他
27.5
卸売業・
小売業
土木・建 9.2
設・設備
工事業
N=346
13.0
サービス
業
17.3
運輸・
倉庫業
0.6
住宅・不
動産業
7.2
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
従業員数を見ると、最も多いのは 21 人以上 100 人以下(30.9%)の中堅企業である。301
人以上の大企業、20 人以下の中小企業は、共に2割程度である。
図表Ⅶ−1−4
回答者の従業員数
無回答
1.2
301人
以上
19.7
20人以下
20.5 %
101∼300
人
27.7
21∼100
人
30.9
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
101
2.太陽光発電システムに対する取組み実態
高い新エネルギー、省エネルギーへの関心
新エネルギー、省エネルギーへの関心をみると、全体の9割以上の企業が、「関心がある
(92.5%)」としている。九州の企業は、新エネルギー、省エネルギーに対する関心が高い
ことがうかがえる。
図表Ⅶ−2−1
新エネルギー・省エネルギーに対する関心
無回答
0.6
いいえ
6.9
はい
92.5%
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
太陽光発電システムに関心のある企業は7割弱
関心の高い新エネ・省エネ対策について、最も高いのは、「太陽光発電システムの導入
(66.3%)」であり、以下、「エネルギー管理の改善、徹底(48.1%)」、「高効率器へのリプ
レイス(35.9%)」と続いている。新エネ・省エネの具体的な手段として、太陽光発電シス
テムに関心が集まっていることが理解できる。
業種別に「太陽光発電システムの導入」に対する関心をみると、最も高いのは、土木・
建設・設備工事業(82.2%)であり、以下卸売業・小売業(81.3%)、住宅・不動産業(80.0%)
と続いている。
102
図表Ⅶ−2−2
関心のある新エネ・省エネ対策
(%) 0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
太陽光発電システムの導入
66.3
エネルギー管理の改善、徹底
48.1
高効率機器へのリプレイス(空調等)
35.9
太陽光発電以外の新エネルギー(風力等)
26.3
コージェネレーション(ガスタービン等)の導入
13.8
その他
無回答
3.8
複数回答
N=320
2.2
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
16%にとどまる太陽光発電システムの導入
太陽光発電システムを既に導入している企業は、全体の 16.3%にとどまっている。
図表Ⅶ−2−3
太陽光発電システムの導入の有無
わから
ない
1.5
無回答
0.6
はい
16.3%
いいえ
81.7
N=529
注)太陽電池関連裾の産業アンケート回答企業 183 社含む
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
今後導入・導入拡大を検討する企業は全体の4分の1
今後、太陽光電池を導入・拡大の検討をする企業は、全体の 25.1%にとどまり、関心を
持つ企業の割合(9割)とのギャップが目立つ。ただし、
「わからない」と回答した企業が
30%弱存在するため、有用なインセンティブの導入を進めれば、今後、検討する企業の増
加が期待される。
103
図表Ⅶ−2−4
太陽光発電システムの導入検討の有無
無回答
0.8
はい
25.1%
わから
ない
29.5
いいえ
44.6
N=529
注)太陽電池関連裾の産業アンケート回答企業 183 社含む
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
期待が高い環境対策への貢献
太陽光発電システムの導入・導入拡大を検討する理由については、
「環境対策(CO2 削減)
への貢献」
(90.2%)が突出して多い。化石エネルギーの使用を減らすことで、CO2 の使用
量削減を目指す目的意識が強いことがうかがえる。以下、
「CSR の向上」(54.1%)、「節電
意識の向上」(50.4%)などが続いている。
一方、コストに関係する「発電による環境価値の販売」(21.1%)や「消費電力のピーク
カット」(19.5%)や「商品・サービスの付加価値向上」(17.3%)、導入インセンティブの
1つとなる「行政支援策の存在」(19.5%)などは、導入を検討する理由としての位置づけ
が低い。
104
図表Ⅶ−2−5
導入を検討する理由
(%) 0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
環境対策(CO2削減)への貢献
90.2
CSR(企業の社会的責任)の向上
54.1
節電(省エネ)意識の向上
50.4
ブランド・イメージへの貢献
36.8
発電による環境価値の販売
21.1
消費電力のピークカット
19.5
行政の支援策の存在
19.5
商品・サービスの付加価値向上
17.3
費用対効果がよい
その他
無回答
複数回答
N=133
13.5
3.0
0.0
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
導入を検討しない主な理由はコスト面に対する懸念
太陽光発電システムの導入・導入拡大を検討しない理由としては、
「費用対効果が悪い」
(49.2%)、
「設置価格が不透明」
(35.4%)、
「導入の具体的なメリットが分からない」
(29.3%)
など、コスト面に関する先行きが見えにくいことを挙げる企業が多い。
一方、
「売電条件が悪い」
(8.9%)や「導入方法が分からない」
(7.3%)、
「環境対策や CSR
への貢献が不透明」(4.5%)を理由として挙げた企業は少数に止まっている。
図表Ⅶ−2−6
導入を検討しない・分からないとする理由
(%) 0.0
20.0
40.0
費用対効果が悪い
49.2
設置価格が不透明
35.4
導入の具体的なメリットが分からない
29.3
今後の設置費用の下落への期待
26.4
故障時の保証や対応に不安
23.2
行政の支援策が不十分
19.5
減価償却の長さ
19.1
設置場所・スペースがない
15.9
夜間発電をしない
13.4
売電条件が悪い(25円/kWh)
8.9
導入方法が分からない
環境対策やCSRへの貢献が不透明
複数回答
N=246
7.3
4.5
その他
無回答
60.0
12.2
1.2
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
105
3.太陽光発電システムの導入インセンティブ
知名度が高い「住宅向け補助制度」と「電力会社への売電」
太陽光発電システムの導入インセンティブをみると、「住宅向け初期投資への補助制度」
(57.3%)と「電力会社への売電」(65.3%)が、他の導入インセンティブに比べて、非常
に知名度が高い。以下、「フィールドテスト事業による初期投資への補助制度」(26.9%)、
「グリーン電力証書」(18.8%)、「グリーン電力基金」(16.2%)と続いている。
一方、太陽光発電システムを導入している企業が全体の 16%程度であることが影響し、
現在、導入インセンティブを活用している企業は極めて少ない。導入が最も進んでいる「電
力会社への売電」についても、全体のわずか 11.0%である。
図表Ⅶ−3−1
太陽光発電システムの導入インセンティブに対する理解と活用
(%) 0.0
20.0
住宅向け初期投資への補助制度
(個人向け、地方自治体が中心・国も検討中)
初期投資への利子(一部)補給制度
(法人向け、一部自治体で導入)
0.9
Gマークの認証制度
(グリーンエネルギー活用商品のエコブランド認定制度)
0.0
その他
無回答
知っている
18.8
1.7
0.6
100.0
26.9
7.2
グリーン電力基金
(公共性の高い施設向け、教育機関等の民間施設を含む)
80.0
65.3
11.0
フィールドテスト事業による初期投資への補助制度
(法人向け、国やNEDOが中心)
60.0
67.3
9.5
電力会社への売電
(余剰分の電気と環境価値の買取り制度)
グリーン電力証書
(自家消費分の環境価値の買取り制度)
40.0
既に活用
16.2
9.2
9.2
複数回答
N=346
0.3
0.0
12.4
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
106
82.9
関心が高い補助・補給制度と税の規制緩和
太陽光発電システムの導入(拡大)を検討すると仮定した場合における、関心を持つ導
入インセンティブについて尋ねた。
「初期投資への補助制度」
(73.7%)や「無利子・超低利
融資、利子補給制度」
(30.8%)といった投資への補助・補給に関係する制度や、
「法人税の
税額控除」
(38.0%)、
「不動産取得税・固定資産税等の軽減」
(26.3%)、
「減価償却期間(17
年)の圧縮」(24.6%)といった、税の規制緩和に関する制度に対する関心が高い。
また、投資額の回収が早くなる「発電した電気の高値買取制度」(46.9%)や、排出権取
引に関係する「CO2 削減実績に換算される制度」(35.3%)に対する関心も高い。
一方、「緑地面積との代替制度」(8.7%)や「容積率や建坪率の規制緩和」(6.6%)とい
った、建築物の規制緩和に対する関心は低い。
図表Ⅶ−3−2
関心を持つ導入インセンティブ
(%) 0.0
20.0
40.0
発電した電気の高値買取制度
60.0
46.9
初期投資への補助制度
73.7
無利子・超低利融資、利子補給制度
30.8
電力証書による環境付加価値買取制度
13.6
35.3
CO2削減実績に換算される制度
緑地面積との代替制度
8.7
容積率や建坪率の規制緩和
6.6
他者への屋根貸し制度
4.3
債務保証制度
3.8
不動産取得税・固定資産税等の軽減
26.3
法人税の税額控除
38.0
減価償却期間(17年)の圧縮
24.6
認定事業者制度設立と業者のサポート
その他
無回答
80.0
6.8
複数回答
N=529
1.5
9.8
注)太陽電池関連裾の産業アンケート回答企業 183 社含む
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
107
注目を集める太陽光発電システム超低利融資制度
今後の新しい各導入支援の制度設計に対する関心について、最も多くの関心を集めたの
は、「超低利融資制度」である。同制度については、A(太陽光発電システムにかかる追加
融資分の金利をゼロにする制度)のみ、B(融資全体の金利を 0.1∼0.2%程度優遇する制
度)のみに対する関心と合わせると、回答者の 62.7%が関心を持っている。これに対して、
インテグレーター認定制度に対する関心は 50.9%、メガソーラー設立支援制度に対する関
心は 43.9%となっていることからも、超低利融資制度に対する期待の高さがうかがえる。
投資に対する金銭面での優遇に対する関心が高いことによる結果だと予想される。
図表Ⅶ−3−3
超低利融資制度に対する関心
無回答
2.3
どちらに
もある
42.5 %
どちらに
もない
35.0
Aに関心
がある
14.7
Bに関心
がある
5.5
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
図表Ⅶ−3−4
インテグレーター認定制度に対する関心
無回答
1.2
わから
ない
35.0
はい
50.9%
いいえ
13.0
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
108
図表Ⅶ−3−5
メガソーラー設立支援制度に対する関心
無回答
2.0
わから
ない
36.4
はい
43.9%
いいえ
17.6
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
期待が大きい超低利融資制度に対する有用性
有用性についても、「超低利融資制度」に対する期待が高く、Aのみ、Bのみを合わせる
と全体の6割弱を占める。一方、インテグレーター認定制度については 46.2%、メガソー
ラー設立支援制度については 41.6%であった。
また、どの制度についても「わからない」とする企業が全体の3∼5割程度を占めてい
る。アピールの仕方次第で、今後、有用と思う企業が増加する可能性があるため、制度を
実際に運用する際には、適切な広報が必要になる。
図表Ⅶ−3−6
超低利融資制度に対する有用性
無回答
3.5
どちらも
有用
43.9 %
わから
ない
32.1
どちらも
無意味
5.8
B は有用
3.8
A は有用
11.0
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
109
図表Ⅶ−3−7
インテグレーター認定制度に対する有用性
無回答
3.5
わから
ない
43.9
有用
46.2 %
N=346
無意味
6.4
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
図表Ⅶ−3−8
メガソーラー設立支援制度に対する有用性
無回答
2.3
有用
41.6%
わから
ない
50.6
N=346
無意味
5.5
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
110
環境価値の無償譲渡を可能とする企業は 15%存在
金利優遇の代わりに環境価値を無償譲渡することが可能かどうかを尋ねたところ、「可
能」が 15.0%、「不可能」が 4.6%と、「可能」が「不可能」を上回った。
しかし、77.5%の企業が「わからない」としている。仮に、金利優遇と環境価値の無償譲
渡(グリーン電力証書大口化)を導入支援の制度とする場合は、導入を検討する各企業に
対して、きめ細やかなローン返済計画や発電シミュレーションの提示等を行い、環境価値
の無償譲渡に参加しやすい制度設計を進めることが求められる。
図表Ⅶ−3−9
環境価値の無償譲渡に関する可能性
無回答
2.9
可能
15.0 %
不可能
4.6
わから
ない
77.5
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
111
「可能性あり」が「可能性なし」を上回った屋根貸し制度
自社施設の屋根を、共同出資型メガソーラーなど、外部の太陽発電のために活用しても
らう制度に対する可能性については、
「ない」
(32.9%)が最も多い。しかし。
「ある」と「条
件次第である」を合わせると 37.2%となり、「ない」を上回る。
図表Ⅶ−3−10
屋根貸し制度に対する可能性
無回答
2.3
ある
9.2 %
わから
ない
27.5
条件次第
である
28.0
ない
32.9
N=346
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
112
4.太陽光発電システムの導入支援に対する考え
関心が高い技術動向セミナー
セミナー・ビジネス商談イベントに対する関心は、
「技術動向セミナー」
(32.1%)が最も
多い。その他のセミナーについては、10%台後半から 20%台前半となっている。
図表Ⅶ−4−1
セミナー・ビジネス商談イベントにおける興味のあるテーマ
(%) 0.0
5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
技術動向セミナー
32.1
パネルメーカーの技術ニーズセミナー
18.0
導入設計支援セミナー
23.3
ビジネスプランセミナー
19.3
参入支援セミナー
その他
16.1
複数回答
N=529
2.1
無回答
36.3
注)太陽電池関連裾の産業アンケート回答企業 183 社含む
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
113
求める情報交換相手は製造装置メーカーやパネルメーカー
アンケート回答企業が求める情報交換相手は、
「製造装置メーカー」
(25.5%)が最も多く、
以下「パネルメーカー」
(22.1%)、システム・設備メーカー(20.8%)、
「電力会社」
(17.2%)、
「行政」(13.6%)と続いている。
図表Ⅶ−4−2
(%) 0.0
5.0
情報交換したい相手
10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
パネルメーカー
22.1
製造装置メーカー
25.5
材料メーカー
11.3
アプリケーションメーカー
5.3
システム・設備メーカー
20.8
導入支援コンサル
デベロッパー
ハウスメーカー
12.7
4.0
4.5
行政
13.6
電力会社
金融機関
その他
17.2
複数回答
N=529
3.8
2.6
無回答
35.5
注)太陽電池関連裾の産業アンケート回答企業 183 社含む
資料)太陽光発電システム普及促進に関するアンケート
114
第Ⅷ章
ソーラーアイランド形成に向けたビジョンと施策
1.ソーラーアイランドの形成に向けて
低炭素社会の構築は、世界的な課題である。そのなかで、再生可能エネルギー・新エネ
ルギーの主役として太陽光発電の重要性が高まっている。マーケットは急速に拡大し、そ
れに伴って世界各地で産業形成が急がれている。世界的な不況対策のひとつの流れとして
のグリーン・ニューディール政策の動きもあり、この数年は特に市場が伸長しそうである。
このようななか、第2世代の薄膜系太陽電池メーカーが集積し、太陽光発電システムの
普及導入が全国トップレベルにある九州においては、今後さらなる産業化の促進が求めら
れる。要素技術の整理や太陽光発電産業への参入意向など、さまざまな角度から九州の実
態の把握に努めたが、九州では薄膜系太陽電池に関する多くのポテンシャルを有している
ことが明らかになるとともに、半導体関連産業という既存の産業集積との融合の可能性も
確認できた。産業界の技術フィードバックと消費地立地に動く太陽電池メーカーの立地戦
略を考慮すると、地元での普及導入促進が産業振興(九州への産業吸引力の向上)に対し
ても不可欠かつ重要なテーマであることも確認できた。
今後、九州を世界的な太陽光発電産業の拠点=「ソーラーアイランド九州」に育て上げ
ていくためには、①「産業拠点化=ソーラー産業クラスター(産業生態系)の形成」を目
指す裾野形成支援施策と、②「普及導入トップランナー地域」を目指す普及導入支援施策
が不可欠である。以下、裾野形成支援スキームについて7点、普及導入支援スキームにつ
いて5点を提案する。
115
図表Ⅷ−1−1
裾野形成支援スキーム
①PVメーカーの課題解決支援∼企業内覧会∼
地場企業の
参入・
取引拡大
②アプリケーション開発支援∼アイディアコンテスト+パネル提供∼
③技術・製品の提案支援∼製品評価支援∼
人・情報
の交流
産業発展の
基盤形成
④ソーラーアイランド・ワークショップ(仮称)の開催
⑤太陽光発電関連企業・研究者DBの作成
⑥太陽光発電産業を担う人材育成支援
⑦次世代技術研究開発プロジェクトの実現
資料)九経調作成
図表Ⅷ−1−2
①グリーン電力証書
流通スキーム
②LLP等による
メガソーラー構築
③九州グリーン電力基金
活性化スキーム
④PV施工業者認証・ビジネス
コンサル育成スキーム
⑤税制優遇・規制緩和
プログラムスキーム
普及導入支援スキーム
•金融機関と証書発行事業者が主体。事業所・住宅等が対象。
•太陽電池融資「金利ゼロ」等で普及後押し。
•金融機関を中核に証書を大口化。取引先のネットワークを通じた証書流通の加速。
•課題:証書需要の開拓、計量法適合メーター設置+検針
•グリーン電力証書流通スキームが円滑に進んだ後に実施
•金融機関と証書発行事業者に加え、グリーン電力証書の購入に積極的な環境意識の高い企業が主体。
•役割分担を決めた上でのLLPによるメガソーラーの構築
•環境教育や普及PRも実施
•電力会社と基金事務局KIACが主体。公的施設が対象
•PV普及の「見える化」と「教育・啓発促進」:駅や空港、サービスエリア、教育機関等へ積極導入
•スキームの運営主体による証書の大口化。売却益は再び基金に拠出
•課題:基金参加主体(特に法人)の拡大、基金の寄付に対する税控除の要望
•戸建て住宅向けと集合住宅向けの2種類
•戸建てはPVメーカーと行政、集合住宅はPVメーカーや集合住宅のデベロッパー、システム設計・設置
業者、電力会社、既存のPV集合住宅のオーナー等のアライアンス組織が主体
•発注者に対して受注者の信頼を担保するスキーム
•課題:アライアンス組織の立ち上げと組織における人材育成
•地方自治体が中心。住宅・事業所等が対象
•直接的な財政支出を伴わない方策:「優遇税制」「規制緩和」など
•基金を設置した上でのデベロッパーに対する融資制度の創設
•課題:政府との調整、調整の機会費用減少への対応等
資料)九経調作成
116
2.裾野形成支援スキーム
産業拠点化を目指す7つの裾野形成支援スキームは、地場産業の参入・取引拡大、人・
情報の交流、産業発展の基盤形成に大別される。
地場産業の参入・取引拡大に関する3つのスキームは、産業連関の構図で示すとおり、
川上の材料・部材メーカーや製造装置メーカーと太陽電池メーカー間の課題解決につなが
る企業内覧会、太陽電池メーカーと川下のアプリケーションメーカーやシステムメーカー
間の商品開発などに関係したアイディアコンテスト+パネル提供、川上から川下までの関
連企業と太陽電池メーカー間の取引関係強化に繋がる製品評価支援がある。
そのほか、人・情報の交流や産業発展の基盤形成に資する4つのスキームは、太陽光発
電産業に関連する全ての企業・研究者の裾野形成づくりに寄与する取り組みとなっている。
以下、7つのスキームについて詳しく述べる。
図表Ⅷ−2−1
課題解決
研究開発
産業連関の構図と裾野形成支援スキーム
商品開発
デバイス構造
システム
メーカー
①企業内覧会
材料メーカー
部材メーカー
材料・部材
装置メーカー
生産プロセス
販売店
(設備・メンテ)
デベロッパー
システム供給
人・情報の交流:④イベント・セミナー、⑤データベース
人産業発展の基盤:⑥人材育成、⑦研究開発
資料)九経調作成
117
カスタマー
アプリケーション
メーカー
太陽電池メーカー
②アイディアコンテ
スト+パネル提供
③製品評価
1)PVメーカーの課題解決支援∼企業内覧会∼
(1)太陽電池メーカーと地場企業の対話の場づくり
国内の太陽電池メーカーの技術課題解決を目的として、直接意見交換を行う企業内覧会
形式の「場」を設ける。地場企業が九州或いは九州外の太陽電池メーカーを訪問し、各メ
ーカーから技術課題のニーズやアウトソーシング領域をクローズドセミナー形式で具体的
に提示してもらい、後日地場企業が各太陽電池メーカーを訪問し、各自の技術シーズをパ
ネル化して太陽電池メーカーの現場の技術者に提示する。各太陽電池メーカーの技術者の
ニーズと地場企業の技術シーズがマッチングすれば、技術課題の解決に向けてコンタクト
を継続していくことになる。
(2)太陽電池メーカー及び地場企業のメリット
企業内覧会形式は、太陽電池メーカー及び地場企業の双方に大きなメリットがある。太
陽電池メーカー側のメリットは、内覧会開催時に複数の関連企業と商談が可能となり、自
社の技術課題解決に向けた数多くの提案を同時に受けられることである。また、社内の複
数の技術者や資材調達者が内覧会に参加可能であり、通常の営業活動や見本市等で技術シ
ーズを実際に見る機会が少ない社員が課題解決のためのシーズを得ることも可能である。
一方、地場企業のメリットは、自社の製品や技術を太陽電池メーカーの具体的なニーズ
にカスタマイズして直接提案することが可能であるほか、現地の工場見学やライン見学等
により、メーカーの抱える課題に対する解決策を現場で直接提示することも可能となる。
(3)企業内覧会の成功の鍵
企業内覧会の成功の鍵は、参加企業の意欲と企業内覧会の橋渡し役の存在である。
企業内覧会に協力する太陽電池メーカーは、各社の技術的な課題がどこにあるかを具体
的に提示する必要があり、場合によってはそれが各社のコア技術に近い部分となる可能性
もある。そのため、企業内覧会に参加する地場企業も、単なる情報収集や太陽光発電産業
の知識習得のための参加ではなく、太陽電池メーカーの技術課題解決を具体的に提案でき
る真剣な参加意欲が求められる。情報提供による技術流出は各太陽電池メーカーに甚大な
被害をもたらし、訴訟リスクの可能性も想定した厳密さが求められる。
企業内覧会が真剣なビジネスの場であるため、そこには橋渡し役となる中立的な組織が
必要となるであろう。九州には先に半導体産業の集積があり、その関係企業や大学などの
関係強化やネットワーク形成を目的とした「九州半導体イノベーション協議会(SIIQ)」が
設けられている。SIIQ ではすでに「チャレンジマーケット企業内覧会」という半導体産業
における企業内覧会を実施して成果を上げている。九州での太陽光発電産業の裾野拡大の
ために、新たな制度や団体を創設するよりは、既存制度を活用する方が即効性があるため、
半導体の一種である太陽電池分野においても先の SIIQ のスキームを活用した企業内覧会活
動が求められる。
118
図表Ⅷ−2−2
STEP1
STEP2
STEP3
企業内覧会の具体的なステップ
・パネルメーカーA社から技術課題・アウトソーシング領域の提示
(クローズドセミナー形式)
→関心のある地場関連企業がセミナーに参加して
事前に具体的なニーズ情報を収集
・パネルメーカーA社の事業所に地場関連企業複数社が訪問
→提案したい技術シーズをパネル化し、現場の担当者へ提示
・パネルメーカーA社から技術課題・アウトソーシング領域の提示
(ポスター展示会形式)
(クローズドセミナー形式)
→現場の担当者と直接意見交換を実施(ファーストコンタクト)
→関心のある地場企業がセミナー情報収集
・パネルメーカーA社の担当者と地場企業の担当者が直接
ミーティング(商談会形式)
→ニーズとシーズがマッチングすればコンタクトを継続
パネルメーカーと地場企業の取引拡大へ
資料)九経調作成
119
2)アプリケーション開発支援∼アイディアコンテストとパネル提供∼
(1)太陽電池メーカーの事情と新たなアプリケーション開発
太陽電池メーカーは、低コスト・市場性・量産を重視した生産体制を構築しており、電
力級(住宅、事業所、大規模発電所など)に主眼を置いてビジネスを行っている。先頃開
催された PV EXPO2009(東京ビッグサイト、2009 年 2 月 25 日∼27 日、リードエグジビショ
ンジャパン社主催)においても、各太陽電池メーカーが出展していた商品は、大半が屋根
などに設置するサイズの大きいパネルに集中していた。
一方、アンケートやヒアリング結果から、太陽電池を使った新しいアプリケーション開
発に興味を持っている企業は多い。しかし太陽電池メーカーの事情もあって、アプリケー
ション開発を考えている地場中小企業は、商品開発・試作用の太陽電池(パネル)が手に
入りにくい現状がある。ミリ級などのニッチ市場や小型アプリケーション市場は、地場中
小企業やベンチャー企業等に参入チャンスがある分野であるが、PV EXPO2009 においても新
型アプリケーションを提案している企業は数えるほどしかなかった。
(2)アイディアコンテストとパネル提供
これまで行政が行っている補助事業は、
「研究開発費」や「試作品製作」のための「資金」
補助が一般的である。しかし、地場中小企業が参入するためには、小ロットでの試作用太
陽電池(太陽電池パネルという「モノ」)が必要である。したがって、今回はアイディアコ
ンテストを兼ねて、「資金」の提供だけではなく、通常手に入りにくい「モノ(パネル)」
の支給という形で、地場中小企業の太陽光発電産業参入を促すしくみが求められる。
九州の各自治体、ベンチャーキャピタル、地場中小企業、国内の太陽電池メーカーが協
力して、新たなアプリケーション開発のためのビジネスプラン・アイディアコンテストを
実施し、提案プランが優秀な企業には、賞金として事業化に向けた資金と試作・検証で必
要とするパネルの両方を提供するというものである。提案プランの審査は、ベンチャーキ
ャピタル等を中心とした審査会を構成し、提案アプリケーションでの事業化可能性を最重
点項目とする。賞金もベンチャー企業などがスタートアップに繋がるような額を用意する
ことが求められる。開発するアプリケーションの例としては、教育教材、ユビキタス通信・
センサー、農業、船舶、防災などが考えられるが、特に制限は設けない。開発にあたって
は、国や各自治体の技術支援機関がサポートや相談に入るほか、試作品はパネル提供した
太陽電池メーカーにも提示することとする。
アプリケーション開発が進んで商品化の目途が立った場合には、パネルを提供した太陽
電池メーカーにも新たなパネル供給企業が獲得できるメリットがあるほか、ベンチャーキ
ャピタルも事業拡大のため、更なる資金提供を行う可能性もある。
120
図表Ⅷ−2−3
アイディアコンテスト・パネル直接支給スキーム
【通常の補助スキーム】
補助金交付・検査
国・自治体
地場企業
補助金申請・報告
資金のみの動き
【アイデアコンテスト・パネル直接支給スキーム】
地場企業A
地場企業B
地場企業C
地場企業D
・
・
地場企業X
ー
地場企業E
ビ
ジ
ネ
ス
プ
ラ
ン
・
ア
プ
リ
ケ
シ
ョ
ン
の
提
案
審査会
・ベンチャー
キャピタル
資金の動き
償金・補助金提供
・行政機関
助言・評価
・研究機関
パネル提供
・パネルメーカー
などで構成
パネルや資金の継続提供
事業化
商品化へ
資料)九経調作成
121
モノの動き
地
場
企
業
3)技術・製品の提案支援∼製品評価支援∼
(1)地場企業の技術・製品を太陽電池メーカーが評価
地場関連企業は自社が持つ技術シーズやアイディアで太陽光発電産業に参入したいと考
えているものの、太陽電池製造にうまくマッチングしているのか、自社の技術や製品の問
題点がどこにあるのか、その評価・検証・相談をしたいと考えている。そのために地場企
業が一度に複数の太陽電池メーカーのパネルとの相性を評価・検証するための製品評価の
しくみが求められている。
太陽電池メーカーの生産性向上などの技術シーズに合致した技術や製品などをいち早く
市場に投入するため、地場企業の有する技術・製品を太陽電池メーカーがビジネスレベル
で評価・検証することがスキームの核心である。先の「企業内覧会」や「アイディアコン
テストとパネル提供」などの事業からさらに発展した形となる。
(2)地場関連企業及び太陽電池メーカーのメリット
参入を考えている地場関連企業にとっては、自社の技術シーズ等を具現化し、自社技術
の問題点を顕在化させ、改善のためのフィードバックができる。また太陽電池メーカーに
とっても、自社ラインの生産性向上・品質改善などの新たな提案が受けられ、新規の優良
取引先の発掘、共同研究開発への発展などが期待できる。
(3)製品評価支援の実施方法
地場関連企業の技術・製品を各太陽電池メーカーに評価してもらうためには、むやみや
たらに太陽電池メーカーに持ち込むのではなく、きちんとした手続きを踏み、機密技術や
特許技術などの保全が図られるような制度構築が必要である。その制度としては、前述の
九州半導体イノベーション協議会(SIIQ)が行っている「評価工房」のシステムを活用す
ることが有効である。
本事業では、太陽電池メーカーの技術ニーズに応じて、地場関連企業が有する技術・製
品を提供して、メーカーがそれを評価することにより、
「事業提携・技術評価・技術検証」、
さらには「金融機関等に対する信用力の向上」を図って、技術の事業化や製品の販路拡大
など製品開発力及び製品の市場投入力の向上を図ることが可能となる。
122
図表Ⅷ−2−4
SIIQ「試作工房」の具体的なフロー図
評価工房フロー図
ニーズの公表
※会員限定
評価申込み
評価依頼
評価結果通知
評価結果通知
IDMなど
ニーズの提供
太陽電池パネルメーカー
SIIQ会員
地
場
中
小
企
業
事務局
事業提携等
地場の中小企業、既存の半導
体メーカーなど太陽電池産業に
参入したい企業が、自社のシー
ズを売り込み、評価してもらう形。
九州に立地する三菱重工業、
富士電機システムズ、昭和シェ
ルソーラー、ホンダソルテック、
YOCASOLなどが評価
資料)SIIQ「評価工房」資料を基に九経調作成
123
4)ソーラーアイランド・ワークショップ(仮称)の開催
(1)太陽光発電産業への参入支援イベントの開催
先のアンケートでも、最新技術動向や導入設計支援に関する情報収集に対するニーズが
高いという回答が多く、業界を取り巻くマーケット情報、研究開発情報、海外情報等の域
外から九州への導入の場としての情報を提供するイベント・セミナーが求められている。
そこで、太陽光発電に関連する企業・研究者及びこれから参入を考えている企業を対象
とした、ビジネスチャンスを創造する「ソーラーアイランド・ワークショップ(仮称)」の
継続的な開催が必要である。こういったイベントでは、参加者が新たな知識や情報交流の
場、気づきの場、関連企業のキーマンとの縁づくりの場として活用することで、参入への
手助けとなるだろう。
(2)ワークショップに求められる内容
ワークショップでは、単なる技術情報提供中心のセミナーだけではなく、商談会等のビ
ジネスベースの交流も重視することが求められる。太陽電池メーカーや製造装置メーカー
と地場企業の商談会を行うほか、地場企業も積極的に技術や製品、事業モデルなどをプレ
ゼンテーションして相互に情報交換することも必要である。
そのほか、海外ビジネス展開の支援(海外企業との商談、国際協力事業などでの新型ア
プリケーションの活用)を模索することに加え、併せて行政機関などによる普及施策や導
入支援制度のあり方を検討していく場とすることも考えられる。
124
5)太陽光発電関連企業・研究者DB(データベース)の作成
今回の調査を通じて、九州の太陽光発電関連企業の発掘を行い、アウトラインは提示し
たものの、関連企業がどれだけ集積しているか、研究者がどこにいるかといった詳細の把
握については未だ不十分な状態にある。それらの関連情報をデータベース化することで、
九州での太陽光発電産業集積の促進・関連企業相互間取引の拡大に役立つと考えられる。
データベースで提供する内容は、①企業情報、②研究者情報、③行政情報、④基本情報な
どが考えられる。一元的な管理とデータベースの内容の充実、継続的な情報更新が必要で
あろう。
図表Ⅷ−2−5
関連データベースの内容
①企業情報(概要、事業内容、得意分野、特許等)
提
供
情
報
②研究者情報(所属、研究内容、共同研究実績等)
③行政情報(補助制度、普及支援策、研究機関)
④基本情報(太陽光発電の仕組み、歴史、実績)
資料)九経調作成
125
6)太陽光発電産業を担う人材育成支援
(1)不足する太陽電池専門人材
太陽光発電産業が世界的に急速に成長しており、太陽電池メーカーも含めた各関連企業
では、事業拡大に対して人材供給が追いついていない状況にある。アンケート結果でも、
太陽電池関連事業に取り組まない最大の理由として、「専門人材の不足」と回答した企業が
4割を超えている。また、大学で学んだ学生は、その多くが関連企業に就職してしまうた
め、若手研究者が大学に残らないなど研究者不足の声も聞かれる。また、九州で先に集積
している半導体産業や自動車産業では高等学校や各種専門学校に人材育成のカリキュラム
や学科が整備されているが、太陽光発電産業においては、ほとんど整備されていない。九
州で太陽電池関連産業が集積・発展していくためには、専門人材を育成していくことが重
要であろう。
(2)産学官連携による総合的な太陽光発電人材育成プログラムの策定
九州で太陽光発電産業振興のために、どのような人材を育て、企業に供給していくのか、
大学の研究者として残していくのかという明確なビジョンを描き、具体的な人材育成プロ
グラムを提示していくことが求められる。
どのような人材を育成していくかという点については、単に太陽電池の物理的な構造や
仕組みを理解した人材を育てるだけでなく、太陽電池に関する総合的な知見を持った、多
種多様な人材を育成していくことが必要である。したがって、太陽電池の研究開発や生産
性向上など携わる研究者や技術者人材、工場等のラインや生産管理などを行う技能職系人
材、海外展開も視野に入れた留学生教育、太陽電池の環境貢献や性能の良さを理解したう
えで、低炭素社会の構築に向けた社会インフラとして太陽電池を世に送り出していくよう
なデザイン系人材、建築士(家)人材の育成などが考えられる。九州大学では、平成 21 年
度から、西南学院大学、福岡女子大学と連携し、「オートモーティブサイエンス専攻」とい
う自動車関係学科を設置する。自動車の機械的仕組みだけではなく、女性・心理・社会・
経済・経営学など多角的な視点で自動車工学を学ぶ専攻課程を開設して新たな取り組みを
行う予定である。太陽光発電関連産業の人材育成でも、ここから学ぶべき点は多いだろう。
(3)プログラムにおける人材育成支援策のポイント∼連携大学院の構想
①総合的で実践的な大学院レベルのカリキュラムの構成 (研究者・技術者)
企業で研究開発を行う技術者、大学や研究機関の研究者など高度な専門人材の育成のた
め、大学間あるいは大学と太陽電池メーカーの連携によって、総合的で実践的な大学院教
育カリキュラムを構成することが求められる。研究者自体が不足している現状では、九州
内の一大学だけで育成するのではなく、太陽電池に関する「連携大学院」の設立により、
オール九州での取り組みが求められる。企業の技術ニーズと連動したカリキュラムを構成
し、社会人の受け入れも促進することで、産学連携も推進する。企業からの寄付講座や講
126
師派遣などによって、実践的なカリキュラムを構成し、即戦力となる研究者や技術者を養
成することが求められる。先進的な取り組みとしての富士電機システムズと熊本大学にお
ける寄附講座の開設や、自動車産業に関連した北九州市におけるカー・エレクトロニクス
センター・カーエレ連携大学院の取り組みなどが見受けられる。
②企業内大学校や専門学校(学科等)を設置(技能系人材)
技能職系人材教育の仕組みづくりについては、自動車産業におけるトヨタやデンソーな
どが設置している企業内大学校が参考となる。これらのカリキュラム構築や人材育成、講
師派遣などに基づいた太陽光発電産業にカスタマイズした取り組みが期待される。また、
専門学校には、太陽光発電学科、再生可能エネルギー学科など太陽光発電産業に関する専
門学科を設置し、継続的に人材を供給する仕組みが必要である。これらの技術者は、急速
な太陽光発電産業の拡大に伴う工場拡張に即座に対応可能な人材となる。
③留学生等の積極的な受け入れと国際的に注目されるポジションの獲得
太陽光発電産業は、日本国内だけで完結する産業ではなく、海外への事業展開も視野に
入れたグローバルな産業である。したがって、海外の大学や研究機関、国内外のキーマン
との連携を行うだけでなく、優秀な留学生を獲得し、日系企業・研究者としての活躍の場
を提供する仕組みづくりも必要である。留学生は、将来的にブリッジ人材(海外事業展開
時の現地幹部候補等)として活躍する可能性も視野に入れつつ、留学生を積極的に受け入
れて、国際的に注目されるポジションを獲得することが大事である。
④太陽電池を広めるデザイン系人材・建築士(家)の育成
太陽電池は、電気的な使用だけでなく、建築物の建材一体型屋根材としての利用や外壁
としての利用、小型アプリケーションとしての応用など、様々な分野で人の目に見えると
ころへ取り付けられる可能性がある。したがって、太陽電池自体の環境貢献や性能の良さ
を理解して、低炭素社会の構築に向けた社会インフラとして太陽電池を世に送り出してい
くようなデザイン系人材、建築士(家)人材の育成を行うことも求められる。
127
7)次世代技術研究開発プロジェクトの実現
九州は、薄膜系パネルメーカーが4社立地するという世界でも希有な地域である。この
ような地域特性とその将来性・発展性を考慮して、九州において「薄膜系太陽電池(薄膜
PV)」における世界的な研究開発拠点の形成及び人材育成拠点を目指していくことが求めら
れる。これによって、ソーラーアイランド九州のブランド形成を促すとともに、研究者・
人材・企業・情報等の吸引力の向上(マグネット効果)を図ることが期待される。
研究開発のイメージとしては、薄膜 PV 技術の学際化・統合化・ワンストップ化を行い、
複数拠点の連携型(=バーチャル連携大学院)で実施し、九州内の各大学、研究機関、産
業支援組織等がそれぞれ拠点となり、各拠点の位置づけ・専門性を明確化することで、九
州に太陽電池(特に薄膜系)研究者の一大集積を作り出すプロジェクトである。不足する
研究者・技術者を育成し、企業・大学へ輩出とともに、今後必要な「評価技術」や「リサ
イクル技術」の研究開発を行うことも検討する必要がある。
図表Ⅷ−2−6
次世代研究プロジェクトプログラムの内容
薄膜PV研究開発拠点化プログラム
ソーラーアイランド九州∼薄膜太陽電池の研究開発・産業拠点化を目指して∼
ターゲット
九州のポテンシャル
わが国の国際競争力へ
の寄与
薄膜PVメーカー・
関連産業の拠点
薄膜PV量産プロセス研究開発
薄膜PVに適した気象条件
(日射量大、高い気温)
大規模系統連携システム研究開発
半導体デバイス
研究開発拠点
薄膜PVユビキタス応用研究開発
リサイクル
実証実験拠点
リサイクル技術研究開発
有機材料・有機系太陽電池研
究者・関連企業
次世代薄膜PV(有機系太陽電池)研究開発
九州における
薄膜PV産業の拠点化
薄膜PVメーカー・
関連企業の振興
薄膜PVの
大規模普及への寄与
研究開発プロジェクト
短
期
中
期
長
期
産学連携・広域連携
次世代薄膜PV研究開発センター/連携大学院の設置
製造プロセス
ラボ
システム
ラボ
リサイクル
ラボ
マテリアル
ラボ
次世代PV
ラボ
資料)九経調作成
128
計測ラボ
評価ラボ
グローバル
マーケティング
ラボ
3.普及促進支援スキーム
日本は、2009 年1月から、住宅用太陽発電システムの導入費用補助を条件付きで再開し
た。また、グリーン電力の発電電力量は増加しており、今後も着実に増加することが予想
される。一方、九州の地方自治体が実施する住宅向けの普及促進制度は少なく、事業所向
けについては、制度を持つ自治体が存在しない。また、九州グリーン電力基金の加入口数
は横ばいである。税制度における矛盾の解消や太陽光発電システムの減価償却期間の減少
等、普及の後押しをする規制緩和が求められている。
1)グリーン電力証書流通スキーム
(1)システム導入費の金利ゼロ等による優遇融資と環境価値の無償譲渡
「グリーン電力証書流通スキーム」とは、グリーン電力証書を利用した住宅用、事業所
用の太陽光発電システムの普及促進体制である。
スキームの主体は、金融機関とグリーン電力証書発行事業者である。金融機関が、住宅
や事業所などの太陽光発電システムの新規設置者(ないし増設者)に対して、追加融資分
の金利をゼロにする等の優遇融資を行う。その代わり融資期間中に限り、金融機関は、新
規設置者から自家消費電力分の環境価値の無償譲渡を受ける。
無償譲渡された環境価値は、銀行が証書発行事業者に業務委託をする形で、グリーン電
力証書の認定を受ける。グリーン電力証書は銀行が管理し、証書を必要とするグリーン電
力需要家などに販売し、売却益を得る。想定されるグリーン電力需要家は、金融機関の取
引企業やスポンサー企業、九州内の環境系イベント(プロ野球やJリーグの試合)の主催
者などである。証書を必要とするグリーン電力需要家の開拓は、金融機関が既に有してい
るネットワークを活用することにより進める。
スキームを動かす、即ち新規設置者の環境価値の無償譲渡を円滑に進めるためには、優
遇融資による返済額の減少分を、環境価値の売却分よりも高くなるように設定することが
求められる。仮に環境価値の売却分が優遇融資による借金返済額の減少分よりも著しく高
くなった場合は、その売却益の一部を設置者に還元することや、九州グリーン電力基金へ
寄付することなどの措置が必要となる。
129
図表Ⅷ−3−1
グリーン電力証書流通スキームイメージ
優遇融資
グリーンエネルギー
認証センター
申請
認定
証書発行
事業者
太陽光発電
システム設置者
(住宅、事業所など)
・優遇融資による普及促進
・環境価値の販売により
月ごとに一定の金額を得る
ことが可能
融資の返済
環境価値販売
資金
金融機関
証書
証書購入
証書販売
・環境価値の「供給元」の確保
・証書販売先の確保
・融資額の増加
・企業のイメージアップ
・エコブランドの形成
・証書保管リスクの低下
グリーン電力需要家
(金融機関取引企業)
・証書のCSR等における活用
・エコプロダクツの開発・販売
・CO2削減
資料)九経調作成
(2)証書需要の開拓と環境価値の計測に関する負担が課題
同スキームの展開における課題は、グリーン電力証書の需要開拓と、設置者の自家消費
電力を計測するのに必要な計量法適合メーターの設置負担およびその検針である。
電力需要家におけるグリーン電力証書需要が不十分である場合、金融機関が証書の保管
リスクを背負う上、優遇融資による金利負担や、証書発行事業者に対して支払う資金の回
収が進まなくなるため、スキームが機能しなくなる。グリーン電力証書を必要とする企業
や、自社エコプロダクツの PR や CSR での活用を検討している企業やイベント主催者への
積極的な働きかけが求められる。
130
2)LLP 等によるメガソーラー構築
グリーン電力流通スキームが円滑に進む場合、グリーン電力証書の購入に積極的な企業、
即ち環境意識の高い企業が九州に多く存在することになる。これらの企業を巻き込み、大
規模太陽光発電システム(メガソーラー)の構築を目的とした LLP(Limited Liability
Partnership:有限責任事業組合)により、普及促進をすることも、導入スキームとして考え
られる。
環境意識の高い企業が、メガソーラーの工事、システム構築、事業所の屋根貸し等場所
の提供、環境教育の実施、普及 PR 等を役割分担しながら進めることで、メガソーラーの構
築を進める。
131
3)九州グリーン電力基金活性化スキーム
(1)公的施設からの環境付加価値の無償譲渡と売却益の基金への寄付
「九州グリーン電力基金活性化スキーム」とは、現在基金自体が減少しているグリーン
電力基金に対して、様々なプランを実施することにより、活性化を促進する体制である。
プランの1つとしては、九州グリーン電力基金によって太陽光発電システムが整備され
た公的施設から、自家消費分の環境付加価値の無償譲渡を受け、環境付加価値をグリーン
電力証書にして企業に販売した時の代金を九州グリーン電力基金に寄付するという方法が
挙げられる。現在、グリーン電力基金によって太陽光発電システムが整備された公的施設
は、自家消費分の環境付加価値に手をつけていない傾向が強い。手つかずの環境付加価値
による代金を九州グリーン電力基金に寄付することが出来れば、基金の減少を防ぐことが
可能になる上、1件あたりの助成額の増加も期待できる。
図表Ⅷ−3−2
個人・法人
九州グリーン電力基金活性化スキームイメージ
九州電力
寄付
証書販売
グリーン電力
需要家
九州グリーン電力基金
購入費用
助成
公的施設
(太陽光発電システム整備)
自家消費分の
環境付加価値の
無償譲渡
注1)実線の矢印は現在の九州グリーン電力基金における資金の流れ
注2)点線の矢印は今回提案する環境負荷価値と資金の流れ
資料)九経調作成
■事例
京(みやこ)グリーン電力制度■
京都市内では、2007 年 10 月から市内の太陽光発電システムを導入した施設でつくられ
た電力を事業者に購入してもらう「京グリーン電力制度」が展開されている。同制度は、
「京
のアジェンダ 21 フォーラム(事務局:京都市伏見区)」が実施主体になっている。
同フォーラムは、認定 NPO 法人きょうとグリーンファンドの「おひさま基金」によって
設置された京都市内の7つの「おひさま発電所(主に幼稚園)」から、環境付加価値の無償
132
譲渡を受ける。京都市内の企業や自治体は、同フォーラムから環境付加価値を 10 円/kWh
で購入し、同フォーラムは、購入の証明として、京都市限定のグリーン電力証書である「京
(みやこ)グリーン電力証書」を発行する。同フォーラムに入った環境負荷価値の代金は、
おひさま基金に寄付されて、次のおひさま発電所の整備に対する助成金として活用される。
京グリーン電力証書は、NTT ファシリティーズやエネサーブなどが発行するいわゆるグ
リーン電力証書とは異なる、プライベートな証書である。しかし、京都市域の太陽光発電
システムの設備が活用されていること、京グリーン電力証書の取得が、京都市域の多くの
企業が活用する「KES・環境マネジメントシステム・スタンダード」における環境配慮の
活動として認められていることにより、同証書の京都市内の企業におけるニーズは高い。
2008 年度は、(株)FM 京都、(株)JTB 西日本、(株)トヨタレンタリース京都などが同証書を
購入している。また、京都市は 2007 年と 2008 年に、嵐山、東山でのライトアップイベン
ト「花灯路」で使用する電力をグリーン電力とするために、同証書を活用した。
(2)公共性の高い象徴的施設への PR と積極導入
九州グリーン電力基金を活用した太陽光発電システムの導入は、公的施設に限定されて
いるため、主に保育園や幼稚園が基金を活用し、導入を進めている。小中学校を含めた教
育機関に対する導入は、子どもや機関の関係者に対する高い教育・啓発効果が期待される。
そのため、太陽光発電システムを導入していない保育園や教育機関に対して、九州グリー
ン電力基金を PR することで、今以上の積極導入を加速させることが求められる。また、老
人ホームなどの医療・介護施設でも、教育・啓発効果が期待されるため、これらの施設に
対しても PR を進める必要がある。
また、駅やバス停、空港や高速道路の SA といった、人が多く集まる施設に対しても、積
極導入を進めることが必要である。現時点で、空港や高速道路の SA の管理者が九州グリー
ン電力基金を活用する申請するケースはない。これらは、教育機関や医療・介護施設以上
に、不特定多数の人が訪問する、公共性のある施設である。これらの施設における整備が
進めば、九州における太陽光発電システムの導入・普及の「見える化」に貢献する。
(3)税額控除対象にすることが課題
同スキームの展開における課題は、基金参加主体(特に企業)減少に対する対応として、
基金への寄付を税額控除の対象とすることである。九州グリーン電力基金に参加する企業
が少ない理由の1つは、基金に寄付をしても、その寄付金は法人税控除の対象とならない
ことが挙げられる。そのため、環境意識の高い企業は、基金の寄付とは別の方法で、環境
への貢献を模索することになる。基金への寄付が、税額控除対象と認められれば、環境意
識の高い企業の一部は、基金への寄付を検討することが期待される。
また、電力会社(九州電力)は、寄付によって集まった拠出金と同額程度の資金を基金
に寄付するが、この寄付金も税額控除対象とならない。そして、この寄付金は、電力会社
133
に求められる「自然エネルギーによる発電」に対する投資と見なされない。企業や個人か
らの寄付金が増加すれば、電力会社が基金に支払う寄付金も増加する。電力会社の寄付金
を自然エネルギーによる発電と見なせるようにするなど、電力会社にとってもメリットの
ある形での制度変更も同時に求められる。
134
4)PV 施工業者認証・ビジネスコンサル育成スキーム
アンケート調査結果によると、太陽光発電システムのセミナー・ビジネス商談イベント
における「導入設計支援セミナー」や、導入支援コンサルとの情報交換のニーズが一定量
存在することがうかがえる。ヒアリング調査では、太陽光発電システム設置希望者(特に
個人)が、設置の際にどこに相談していいのか分からない状態となっていることが指摘さ
れている。また、国による住宅向けシステム導入に対する補助が存在した頃は、安い値段
で導入を進めるものの、その後の品質保証やメンテナンスを実施しない「悪徳業者」が数
多く存在していたとされている。
そのため、業界全体で、導入時の発電シミュレーションの提示や長期にわたる品質保証・
メンテナンスなど一定の基準を満たす施工業者の認定、導入におけるコンサルティングを
実施することが可能な個人・業者を育成するスキームづくりを進めることが求められてい
る。太陽光発電システムの導入を検討する個人や事業者が、安心して導入を検討・実施す
ることが出来るようになる体制作りが、「PV 施工業者認証・ビジネスコンサル育成スキー
ム」である。
なお、太陽光発電システムの導入における設置業者やコンサル会社の関わり方は、戸建
て住宅と集合住宅で異なる。そのため、同スキームは、戸建て住宅用と集合住宅用の2種
類に分けるものとする。また、事業所向けの太陽光発電システムの導入については、導入
企業と設置業者が様々な条件をすり合わせながら相対契約で進め、「悪徳業者」による介入
の余地が低いため、本スキームの対象外とする。
(1)戸建て住宅用スキーム
現在、シャープや京セラ、ホンダソルテックといった一部の太陽電池メーカーは、自社
製品を活用した戸建て住宅用太陽光発電システムの施工業者を認定している(認定の形は、
販売店フランチャイズ加盟店としての認定や取扱店の紹介など、メーカーごとに異なる)。
導入者がメーカー認定の施工業者を活用して設置した場合、導入者は各メーカーから品質
の 10 年間保証やメンテナンス・アフターケアを受けることが可能となる。
戸建て住宅に対する太陽光発電システムの導入については、一部の太陽電池メーカーの
自助努力によって、品質保証やメンテナンスが既に実施されている。しかし、国による住
宅向けシステム導入に対する補助が存在した時に見られたように、十分な知識や情報を持
たない個人に対して、「悪徳業者」が設置を進める可能性もある。
したがって、戸建て住宅用のスキームでは、九州各県がメーカー認定の施工業者をとり
まとめ、市民に対してこれらの情報を Web 等で紹介するといった安心・信頼性の担保を図
ることなどが求められる。導入を検討する個人は、紹介された Web 等を見ることで、メー
カーが認定した「安心できる業者」を選択することが出来る。このスキームが有効に機能
すれば、個人に対する「悪徳業者」の介入の余地が低くなり、太陽光発電システムの業界
に対するイメージの向上に資することが期待される。
135
(2)集合住宅用スキーム
集合住宅に対する太陽光発電システムの導入については、メーカーによる認定制度が存
在しない。また導入の際には、クリアすべき課題が複数存在する。主な課題は3つある。
それは、「集合住宅における太陽電池の設置方法」「集合住宅における系統連携や逆潮流等
に関する電力会社との調整」
「集合住宅オーナーに対する太陽光発電システム導入に対する
説明・説得」である。
集合住宅は、規模やレイアウトの違いで形態は千差万別であり、戸建て住宅のように類
型化された「太陽光発電システム」の形での導入は困難である。集合住宅における設置は、
それぞれの形状に合わせて個別に進める必要がある上、防水などの工事には独特のノウハ
ウが求められる。
また、太陽光発電システムは天候によって出力や電圧が変動し、曇天時や雨天時は晴天
時に比較して大幅に発電量が低下する。そして、夜間は発電しない。系統連系においては、
出力や電圧の変動が大きすぎると他の電源による調整が追いつかなくなる可能性があり、
集合住宅の太陽光発電システムは、戸建て住宅よりも規模が大きいため、常に出力の変動
が大きくなるリスクを伴っている。このリスクを抑制するためには、電力会社の技術者と
調整を進めながら、配線の設計とその工事、電圧変動に対応したインバータの導入等のシ
ステム設計等を実施することが求められるが、これらの実施には高いレベルの技術やノウ
ハウが必要になる。
更に、集合住宅のオーナーは、入居率の悪化や売れ残りというリスクを抱える上、集合
住宅建設に関する設備投資費も負担している。太陽光発電システムを導入する場合は、設
備投資費が更に高くなる。そのため、オーナーが太陽光発電システムの導入を決断するた
めには、メリットが明確に示されなければならない。
課題解消に必要なノウハウや資質は、課題ごとに異なるため、現在、3つの課題全てに
対応できる企業やコンサルタントの数は極めて少なく、今後、全てに対応できる企業やコ
ンサルタントを育成することも困難であると思われる。集合住宅における導入を進めるた
めには、それぞれの課題に対応できるコンサルタントをそれぞれ育成・認定する仕組みと、
課題の内容に応じて育成したコンサルタントを派遣する仕組みを1つにとりまとめる組織
が必要になる。
したがって、集合住宅用のスキームでは、太陽電池メーカーや集合住宅のデベロッパー、
システム設計・設置業者、電力会社、太陽光発電システムを導入した集合住宅のオーナー
等の関係者による「集合住宅用 PV コンサル認証機構(仮)」の設立と、同認証機構による
「集合住宅用ビジネスコンサル認定制度」の創設が求められる。
136
5)税制優遇・規制緩和プログラムスキーム
(1)地方発の税優遇制度等の設立
アンケート調査によると、企業が関心を持つ導入インセンティブとして、「法人税の税額
控除」、「不動産取得税・固定資産税等の軽減」、「減価償却期間(17 年)の圧縮」など、税
の優遇に関する項目に対しては、25∼40%程度の企業が関心を持っている。太陽光発電シ
ステムの導入を進めるためには、不動産取得税の軽減や、建材一体型に対する非課税ない
し減免制度の創設を含めた固定資産税の軽減、減価償却期間の圧縮による法人税の軽減等
を含めた地方発の税優遇制度の導入が効果を発揮する可能性は高い。
(2)工場や住宅建設に対する規制緩和
工場や住宅建設に対する規制緩和を進めることで、太陽光発電システムの導入を促進す
ることもできる。建物の建坪率や容積率の緩和、環境施設や緑地率規制の緩和、太陽光発
電システムに関する設備を緑地と見なす緑地代替制度など、各種の規制緩和を進めること
で、企業に対して導入へのインセンティブを与えることも検討することが求められる。
(3)太陽光発電システムを設置するデベロッパーへの融資
工場や(集合)住宅に対する太陽光発電システムの導入を促進するためには、導入に携
わる業者、特にデベロッパーの資金調達を容易にすることが必要となる。太陽光発電シス
テムの導入を進めるデベロッパーは、多くの初期投資額を必要とするが、借入金が多額に
なった場合、金融機関からの資金調達に時間がかかる傾向がある。したがって、デベロッ
パー等導入に携わる業者が資金調達できる「太陽光発電システム導入基金(仮)
」の創設が
求められる。
同基金に対しては、国や地方自治体、産業振興に携わる公益法人等が資金を拠出して、
基金運用によって運用益を得る。運用益は、
「CO2 排出量や光熱費削減に貢献する建物の建
設」等の名目で、太陽光発電システムの導入を前提とした戸建て住宅、集合住宅の建設に
携わる業者(特にデベロッパー)に融資する。業者は、この資金をもとに関連会社や機器
メーカーと協力しながら戸建て住宅、集合住宅の建設を進め、売却益が発生した時点で融
資された資金を基金に返済する。
基金の運用益を活用した融資・助成制度は、既に全国各地に存在する。熊本県が実施す
る「くまもと夢挑戦ファンド」は、地域資源を活用した新商品開発、新事業創出等に対す
る助成制度であり、25 億円の基金に対して、年間 3,600 万円の運用益によって助成金を確
保している。
ただし、財政状況が厳しい現在の国や地方自治体が、多額の基金を準備することについ
ても、困難が予想される。デベロッパーに対して行政が資格審査を通したお墨付きを与え
ることで、現状では額が小さい市中銀行の環境私募債の発行額を増やし、デベロッパーの
初期投資に活用してもらうといった基金以外の制度設計の検討も必要になる。
137
図表Ⅷ−3−3
「くまもと夢挑戦ファンド」スキーム
くまもと夢挑戦ファンドの概要
すいか、デコポン等の農林水産品、天草陶器、球磨焼酎等の鉱工業品として県の認定を受けた地域資源を活用した取組み及び自動
車、半導体等の県が成長分野として位置付けている分野における取組みを支援することにより新商品開発、新事業創出等を図る。
中小機構
20億円
熊本県へ
無利子貸
付
熊本県
0.1億円
㈶くまもとテクノ
産業財団
4.9億
くまもと夢挑戦ファンド
合計20.1を
無利子貸付
資金拠出
(既存基金
の活用)
運
基金総額:25億円
用
運用期間:10年
運用益:約3,600万円/年 益
で
(年利1.45%の場合)
助
成
【運営管理者】
㈶くまもとテクノ産業財団
資金助成以外の支援
《地域資源を活用した取組み》
(対象者)県内に事業所を有する中小企業
(助成率)2/3
(助成限度額)200万円
(助成期間)2年以内
(助成事業)地域資源を活用した製品・技術開発
販路開拓
《成長分野における取組み》
(対象者)県内に事業所を有する中小企業
(助成率)2/3
(助成限度額)500万円
(助成期間)3年以内
(助成事業)県が成長分野として位置付けている
分野で他の機関、企業と連携して行
う製品・技術開発、販路開拓
《産業支援機関における取組み》
(対象者)熊本県工業連合会等の産業支援機関
(助成率)10/10
(助成限度額)100万円
(助成期間)1年以内
(助成事業)上記取組に対する支援
138
1、㈶くまもとテクノ産業財団
<支援内容>
・専門家によるアドバイス
・広報、情報発信
・企業間連携、産学官連携
のコーディネート
・取引斡旋、販路開拓支援等
支
援
2、県内約30の支援機関
<支援機関>
商工会議所、商工会、工業連
合会、中小企業団体中央会、
起業化支援センター等
(事業の玉出し、課題解決の
アドバイス・支援等)
参考資料:太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査における趣意書
139
平成 20 年 10 月 17 日
「太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査」
ご協力のお願い
財団法人 九州経済調査協会
拝啓
時下ますますご清祥の段、お喜び申し上げます。
当会は、昭和 21 年に設立された文部科学省認可の学術研究機関であり、地域シンクタン
クの役割を担わせていただいております。
現在、当会では、財団法人九州地域産業活性化センターからの委託を受けまして、「太陽
光発電関連機械工業の大規模拠点化に関する調査」を行っております。
九州地域では、薄膜系の太陽電池を中心とした産業立地が進んでおり、さらなる産業振
興のためにも、既に集積をしている半導体関連企業や FPD 関連企業が中心となって、太陽
光発電関連産業の裾野産業を形成していくことが重要になってきております。
また、九州経済産業局は、メガソーラーの導入促進などソーラーアイランドへの取り組
みを開始しており、官民あげての産業振興が始まっております。
そこで、本アンケート調査では、九州の半導体関連企業、FPD 関連企業ならびに関連企業
やシステム周辺機器企業の方を対象に、太陽光発電関連産業への参入や事業拡大の可能性
を調査することを目的として実施するものです。同時に、全国の太陽電池セル・モジュー
ルメーカー、装置、材料、検査、システム、施工メーカーなど太陽光発電システム関連メ
ーカー様にも九州との事業拡大の可能性をお聞きしたいと考えております。
つきましては、ご多忙のなか大変お手数ですが、お答えいただける範囲で結構ですので、
別紙のアンケートにご協力いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。
敬具
■ ご回答にあたって ■
1. お答えいただいた内容につきましては、秘密を厳守し、本調査以外の目的には使用
しません。
2.
甚だ勝手なお願いで恐縮でございますが、10 月 31 日(金)までに同封の返信用封筒
(切手不要)かFAXにてご返送下さいますようお願い致します。
3. 本アンケート調査は、九州経済産業局エネルギー対策課の協力を得て実施するもの
です。
4. アンケートのお問い合わせについては、下記担当者までお願いします。
【お問い合わせ】
(財)九州経済調査協会 調査研究部
TEL:092-721-4905
担当:葛西(クズニシ)
FAX:092-722-6205
140
岡野(オカノ)
Email:[email protected]
参考資料:太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査における調査票
(太陽電池関連周辺企業向け、セル・モジュールメーカーを除く)
141
太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査表
【ご記入にあたって】
1.ご回答は 10 月 31 日(金)までに同封の返信用封筒(切手不要)または FAX でご送付をお願いします。
2.研究開発または事業企画ご担当の方にご回答いただければ幸いです。
3.貴社(貴事業所)単体での状況についてご回答ください。
4.アンケート結果は本調査の目的のみに使用し、他の目的で利用することはございません。
5.本調査は財団法人九州経済調査協会が実施しております。調査内容につきましてご不明な点やご質問
等ございましたら下記にご連絡ください。
【お問い合わせ先】
(財)九州経済調査協会 調査研究部
TEL:092-721-4905
担当:葛西(クズニシ)、岡野(オカノ)
FAX:092-722-6205
Email:[email protected]
貴社(貴事業所)の概要についてお答えください。
貴
社
名
(貴事業所名)
所
在
都・道
地
府・県
市・町
番地
氏名:
ご 担 当 者 様
部署・役職:
ご
TEL:
連
絡
先
FAX:
Email:
業
(
注
1
1.電気・電子機器
2.LSI・電子部品
種
3.製造/検査装置
4.装置関連部品・金型
)
5.素材・材料
6.設備・環境
7.システム・施工
8.その他(
1.20 人以下
3.101∼300 人
従
業
員
数
(
注
2
)
ターゲットとする
最
終
製
品
(該当するものを
複 数 選 択 )
2.21∼100 人
)
4.301 人以上
1.太陽電池および周辺機器
2. 液晶ディスプレイ
3.プラズマディスプレイ
4.
5.半導体
6. その他(
有機 EL ディスプレイ
注1)業種が複数にまたがる場合は、最も割合が高い業種を1つ選択して下さい。
注2)正社員と契約社員の合計です。パート・アルバイトや派遣社員は含めないで下さい。
この事業は競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
142
)
1.太陽電池関連事業に対する関心と取組み
問1 貴社(貴事業所)は、太陽電池関連事業に関してご関心ありますか。(ひとつ)
1. 非常に関心がある
2. 関心がある
3. それほど関心はない
4.
全く関心はない
問2 貴社(貴事業所)は、太陽電池関連事業に現在取り組まれていますか。(ひとつ)
1. 取り組んでいる
2. 取り組んでいない→問5へ
問3 問2で「1.取り組んでいる」とご回答いただいた方にお尋ねします。貴社(貴事業所)におけ
る売り上げ構成に占める太陽電池関連事業の比率はどのくらいですか。(ひとつ)
1. 20%未満
2. 20∼30%未満
3. 30∼40%未満
4. 40∼50%未満
5. 50%以上
6. わからない
問4 問2で「1.取り組んでいる」とご回答いただいた方にお尋ねします。貴社(貴事業所)は、
今後の自社の太陽電池関連事業についてどうお考えですか。(ひとつ)
1. 拡大予定
2. 現状維持
3.縮小予定
→問7へお進みください。
問5 問2で「2. 取り組んでいない」とお答えの方にご質問します。貴社(貴事業所)は、今後、
太陽電池関連事業に取り組む予定ですか。(ひとつ)
1. 取り組む予定→問7へ
2. 取り組む予定はない
問6 問5で「2.取り組む予定はない」とご回答いただいた方にお尋ねします。貴社(貴事業所)が
太陽電池関連事業に取り組まない理由はなんですか。(いくつでも)
1.市場規模の小ささ
2. 市場の成長性
3.主力事業との親和性の低さ
4. 専門人材の不在
5.研究開発体制の未整備
6. 取引先の不在
7. 開発コストの高さ
8.
9. 関連企業・研究機関の乏しさ
10. その他(
→問 23 へお進みください。
143
製造コストの高さ
)
問7 問2で「1.取り組んでいる」または問5で「1.取り組む予定」とご回答いただいた方にお
尋ねします。貴社(貴事業所)が太陽電池関連事業に取り組まれている(今後取り組もうとする)
理由はなんですか。(いくつでも)
1.市場規模の大きさ
2. 市場の成長性
3.主力事業との親和性の高さ
4. 専門人材の存在
5.研究開発体制の整備
6. 取引先の存在
7. 開発コストの回収にめど
8.
9. 関連企業・研究機関の集積
10. その他(
製造コストに見合う利益の見込み
)
2.太陽電池関連事業の展開内容
問8 貴社(貴事業所)が展開している(今後展開予定である)太陽電池関連事業は何ですか。
(いくつでも)
1. セル/モジュール関連
2. 製造装置関連
3. 部品・材料関連
4. 検査・測定関連
5. システム・施工関連
6. その他(
)
問9 太陽電池には多くの種類・方式がありますが、貴社(貴事業所)にとって関心があるものはど
れですか。(いくつでも)
1. シリコン結晶系(単結晶)
2. シリコン結晶系(多結晶)
3. 薄膜系シリコン(アモルファス・微結晶など) 4. 化合物系(CIGS、CIS、CdTe など)
5. 有機系(色素増感、有機薄膜)
7. その他(
6. 集光追尾系
)
問 10 問9でそのようにお答えになられた理由は何ですか?(いくつでも)
1. 市場シェア
2. 高効率性
3. 長寿命
4. 量産プロセスの確立
5. 部材・原料の安さ
6. 応用先アプリケーションの多様性
7.
設置コストの安さ
8.
9.
技術親和性・応用可能性
10. その他(
144
デザイン・意匠のよさ
)
問 11 太陽電池関連の一連の生産プロセスに関して、貴社(貴事業所)が、現在関わっているプロセ
スはありますか。(いくつでも)
<セル工程>
1. 搬送全般
2. スライシング
3. ダイジング
4. エッチング(ドライ)注 1)
5. エッチング(ウェット)注 1)
6. 拡散
7. スクリーン印刷
8. イオン注入
9. 成膜(スパッタリング)注 2)
10.成膜(プラズマ CVD)注 2)
11.成膜(湿式)注 2)
12.成膜(高温プラズマ)注 2)
13.成膜 注 2)(その他:
) 14.スクライビング(メカニカル)注 3)
15.スクライビング(レーザー)注 3)
16.洗浄(ウェット)
17.洗浄(ドライ)
18.研磨
19.レーザーカット
20.吸着(色素)
21.電解液注入
22.ラミネーション
23.アニール(熱処理)
24.球状シリコンの滴下
25.反射板形成等の集光処理
26.球状シリコンの実装
27.セルテスト
<モジュール工程>
28.タブ付け
29. ストリング
30.レイアップ
31. ラミネーション
32.キュア(熱処理)
33. フレーミング
34.端子取付
35. 出力検査
<評価解析>
36. 解析
37. 特性評価(セル)
38. 特性評価(モジュール)
<システム>
39. 設計
40. 組立・施工
<リサイクル>
41. シリコン抽出・分離
43.
42. レアメタル抽出・分離
今のところいずれの生産プロセスにも関わっていない
注 1)エッチング:テクスチャや表面荒らしなどが該当します。
注 2)成膜:発電層、電極、反射防止膜などの膜形成が該当します。
注 3)スクライビング:パターンニングなどが該当します。
問 12 問 11 のなかで、貴社(貴事業所)が現在取り組んでおられる生産プロセスの具体的な内容をご
記入下さい。(注力されている順に3つお選びいただいてご回答下さい。)
問 11 の選択肢番号
具体的な内容
問 13 太陽電池システムの各種材料におきまして、貴社(貴事業所)が現在関わっている材料はあり
ますか。(いくつでも)
145
<セル・モジュール生産におけるセル材料>
1. プロセス用薬品
2. ポリシリコン
3. シリコンウエハ
4. 薄膜形成用反応ガス
5. 酸化物半導体材料
6. 化合物半導体材料
7. 有機薄膜系材料
8. 有機系色素材料
<セル・モジュール生産における電極>
9. 電極用金属
10.透明電極用金属
<セル・モジュール生産における基板>
11.青色ガラス
12.白色ガラス
13.フィルム
14.ステンレス
15.その他(
)
<セル・モジュール生産におけるモジュール材料>
16.カバー用ガラス
17.カバー用フィルム
18.バックシート
19.封止材料(EVA)
20.配線用リードフレーム
21.はんだ等の配線材料
22.ラミネーション
23.アルミフレーム
<システム材料・部材>
24.パワーコンディショナ
25.接続箱
26.昇圧接続ユニット
27.表示ユニット
28. 電力貯蔵デバイス(蓄電装置)
29. ケーブル・コネクタ
30.インバータ/コンバータ
31. バイパス素子
32. 電力モニタ
33. アルミフレーム(パネル)
34. 今のところいずれの材料にも関わっていない
問 14 貴社(貴事業所)では、現在、太陽電池を組み込んだ(利用した)アプリケーション(例えば、
携帯電話のソーラー充電機器など)を生産もしくは開発されていますか。(ひとつ)
1. はい
2. いいえ→問 17 へ
問 15 貴社(貴事業所)では、太陽電池を組み込んだアプリケーション開発に関心はありますか。
(ひとつ)
1. おおいにある
2. ある
3.ない
4.全くない
5.わからない
問 16 貴社(貴事業所)では、現在、太陽電池を利用したアプリケーションを生産されていたら、そ
の具体的な内容をご記入下さい。また、今後、開発を検討されているものもございましたらご
記入願います。
3.太陽電池関連事業における技術シーズ
問 17 太陽電池業界では多くの課題があると言われておりますが、以下の課題に対して、貴社(貴事
業所)が解決に向けて関われる領域はありますか。(いくつでも)
146
1. 光電変換効率の向上
2. リサイクル技術
3. 長寿命化(モジュール組立技術)
4. 長寿命化(材料技術)
5. 品質安定化(大面積均一成膜技術等)
6. 量産安定化(歩留まり向上)
7. 量産の低コスト化
8.量産ラインの自動化・エンジニアリング
9. 省エネ技術(インバーター・制御等)
10.蓄電技術
11. 太陽電池システム設計技術
12.新しいアプリケーション開発
13.太陽電池の販売代理・設置施工
14.その他(
)
問 18 太陽電池関連の一連の生産プロセスに関して、貴社(貴事業所)にとって技術シーズがあり、
将来、関われるようなプロセスはありますか。(いくつでも)
<セル工程>
1. 搬送全般
3. ダイジング
5. エッチング(ウェット)
7. スクリーン印刷
9. 成膜(スパッタリング)
11.成膜(湿式)
13.成膜(その他:
15.スクライビング(レーザー)
17.洗浄(ドライ)
19.レーザーカット
21.電解液注入
23.アニール(熱処理)
25.反射板形成等の集光処理
27.セルテスト
<モジュール工程>
28.タブ付け
30.レイアップ
32.キュア(熱処理)
34.端子取付
<評価解析>
36. 解析
38. 特性評価(モジュール)
<システム>
39. 設計
<リサイクル>
41. シリコン抽出・分離
43.
2. スライシング
4. エッチング(ドライ)
6. 拡散
8. イオン注入
10.成膜(プラズマ CVD)
12.成膜(高温プラズマ)
) 14.スクライビング(メカニカル)
16.洗浄(ウェット)
18.研磨
20.吸着(色素)
22.ラミネーション
24.球状シリコンの滴下
26.球状シリコンの実装
29.
31.
33.
35.
ストリング
ラミネーション
フレーミング
出力検査
37. 特性評価(セル)
40. 組立・施工
42. レアメタル抽出・分離
今のところいずれの生産プロセスにも関わる予定はない
147
問 19 問 18 に関して、具体的な内容をご記入下さい。(3 つまで)
問 18 の選択肢番号
具体的な内容
問 20 太陽電池システムの各種材料におきまして、貴社(貴事業所)にとって技術シーズがあり、将
来、関われるような材料はありますか。(いくつでも)
<セル・モジュール生産におけるセル材料>
1. プロセス用薬品
2. ポリシリコン
3. シリコンウエハ
4. 薄膜形成用反応ガス
5. 酸化物半導体材料
6. 化合物半導体材料
7. 有機薄膜系材料
8. 有機系色素材料
<セル・モジュール生産における電極>
9. 電極用金属
10.透明電極用金属
<セル・モジュール生産における基板>
11.青色ガラス
12.白色ガラス
13.フィルム
14.ステンレス
15.その他(
)
<セル・モジュール生産におけるモジュール材料>
16.カバー用ガラス
17.カバー用フィルム
18.バックシート
19.封止材料(EVA)
20.配線用リードフレーム
21.はんだ等の配線材料
22.ラミネーション
23.アルミフレーム
<システム材料・部材>
24.パワーコンディショナ
25.接続箱
26.昇圧接続ユニット
27.表示ユニット
28. 電力貯蔵デバイス(蓄電装置)
29. ケーブル・コネクタ
30.インバータ/コンバータ
31. バイパス素子
32. 電力モニタ
33. アルミフレーム(パネル)
34. 今のところはない
問 21 貴社(貴事業所)では、太陽電池システムにおける生産プロセスや材料に関して、大学や研究
機関と共同研究を行うことにご関心がありますか。(ひとつ)
1. はい
2. いいえ
問 22 貴社(貴事業所)が、大学や研究機関に求めるものは何ですか。(いくつでも)
1.原理解明
2. 材料・構造に関する共同開発
3. 生産技術の共同開発
4. 人材育成
5.評価・実験の場
6. その他(
148
)
4.太陽電池産業の振興と導入普及の促進について
問 23 太陽電池産業の振興のため、九州でセミナー・ビジネス商談イベントの開催を計画しておりま
す。興味のあるテーマはありますか。(いくつでも)
1. 技術動向セミナー
2. パネルメーカーの技術ニーズセミナー
3. 導入設計支援セミナー
4. ビジネスプランセミナー
5. 参入支援セミナー
6. その他(
)
問 24 太陽電池事業の拡大に向けて、貴社(貴事業所)が情報交換したい相手はありますか。(いく
つでも)
1. パネルメーカー
2. 製造装置メーカー
3. 材料メーカー
4. アプリケーションメーカー
5. システム・設備メーカー
6. 導入支援コンサル
7. デベロッパー
8. ハウスメーカー
9. 行政
10.電力会社
11.金融機関
12.その他(
)
問 25 貴社(貴事業所)では、現在、太陽光発電設備の導入をしていますか。(ひとつ)
1. はい
2. いいえ
3.わからない
問 26 貴社(貴事業所)では、今後、太陽光発電設備の導入・導入拡大を検討されていますか。(ひ
とつ)
1. はい →問 27 へ
2. いいえ→問 28 へ
3.わからない→問 28 へ
問 27 問 26 で「1.はい」とご回答いただいた方にお尋ねします。問 26 でそのようにお答えになっ
た理由はなぜですか。(いくつでも)
1. 費用対効果がよい
2. 環境対策(CO2 削減)への貢献
3. CSR(企業の社会的責任)の向上
4. ブランド・イメージへの貢献
5. 商品・サービスの付加価値向上
6. 消費電力のピークカット
7. 節電意識の向上(省エネ)
8. 発電による環境価値の販売
9. 行政の支援策の存在
10.その他(
)
問 28 太陽光発電の導入を検討すると仮定した場合、以下の導入支援施策でご関心をもたれるものは
ありますか。(いくつでも)
1. 発電した電気の高値買取制度
2. 初期投資への補助制度
3. 無利子・超低利融資、利子補給制度
4. 電力証書による環境付加価値買取制度
5. CO2 削減実績に換算される制度
6. 緑地面積との代替制度
7. 容積率や建坪率の規制緩和
8. 他者への屋根貸し制度
9. 債務保証制度
10.不動産取得税・固定資産税等の軽減
11.法人税の税額控除
12.減価償却期間(17 年)の圧縮
13.認定事業者制度設立と業者のサポート
14.その他(
)
ご協力いただきましてありがとうございました。
149
150
参考資料:太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査における調査票
(セル・モジュールメーカー向け)
151
太陽光発電関連産業拠点化に関するアンケ−ト調査表
【ご記入にあたって】
1.ご回答は 10 月 31 日(金)までに同封の返信用封筒(切手不要)または FAX でご送付をお願いします。
2.研究開発または事業企画ご担当の方にご回答いただければ幸いです。
3.貴社(貴事業所)単体での状況についてご回答ください。
4.アンケート結果は本調査の目的のみに使用し、他の目的で利用することはございません。
5.本調査は財団法人九州経済調査協会が実施しております。調査内容につきましてご不明な点やご質問
等ございましたら下記にご連絡ください。
【お問い合わせ先】
(財)九州経済調査協会 調査研究部
TEL:092-721-4905
担当:葛西(クズニシ)、岡野(オカノ)
FAX:092-722-6205
Email:[email protected]
貴社(貴事業所)の概要についてお答えください。
貴
社
名
(貴事業所名)
所
在
都・道
地
府・県
市・町
番地
氏名:
ご 担 当 者 様
部署・役職:
ご
TEL:
連
絡
先
FAX:
Email:
業
(
注
1
1.電気・電子機器
2.LSI・電子部品
種
3.製造/検査装置
4.装置関連部品・金型
)
5.素材・材料
6.設備・環境
7.システム・施工
8.その他(
1.20 人以下
3.101∼300 人
従
業
員
数
(
注
2
)
ターゲットとする
最
終
製
品
(該当するものを
複 数 選 択 )
2.21∼100 人
)
4.301 人以上
1.太陽電池および周辺機器
2. 液晶ディスプレイ
3.プラズマディスプレイ
4.
5.半導体
6. その他(
有機 EL ディスプレイ
注1)業種が複数にまたがる場合は、最も割合が高い業種を1つ選択して下さい。
注2)正社員と契約社員の合計です。パート・アルバイトや派遣社員は含めないで下さい。
この事業は競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
152
)
1.太陽電池関連事業に対する関心と取組み
問1 貴社(貴事業所)は、太陽電池関連事業に関してご関心ありますか。(ひとつ)
1. 非常に関心がある
2. 関心がある
3. それほど関心はない
4.
全く関心はない
問2 貴社(貴事業所)は、太陽電池関連事業に現在取り組まれていますか。(ひとつ)
1. 取り組んでいる
2. 取り組んでいない→問5へ
問3 問2で「1.取り組んでいる」とご回答いただいた方にお尋ねします。貴社(貴事業所)におけ
る売り上げ構成に占める太陽電池関連事業の比率はどのくらいですか。(ひとつ)
1. 20%未満
2. 20∼30%未満
3. 30∼40%未満
4. 40∼50%未満
5. 50%以上
6. わからない
問4 問2で「1.取り組んでいる」とご回答いただいた方にお尋ねします。貴社(貴事業所)は、
今後の自社の太陽電池関連事業についてどうお考えですか。(ひとつ)
1. 拡大予定
2. 現状維持
3.縮小予定
→問7へお進みください。
問5 問2で「2. 取り組んでいない」とお答えの方にご質問します。貴社(貴事業所)は、今後、
太陽電池関連事業に取り組む予定ですか。(ひとつ)
1. 取り組む予定→問7へ
2. 取り組む予定はない
問6 問5で「2.取り組む予定はない」とご回答いただいた方にお尋ねします。貴社(貴事業所)が
太陽電池関連事業に取り組まない理由はなんですか。(いくつでも)
1.市場規模の小ささ
2. 市場の成長性
3.主力事業との親和性の低さ
4. 専門人材の不在
5.研究開発体制の未整備
6. 取引先の不在
7. 開発コストの高さ
8.
9. 関連企業・研究機関の乏しさ
10. その他(
→問 23 へお進みください。
153
製造コストの高さ
)
問7 問2で「1.取り組んでいる」または問5で「1.取り組む予定」とご回答いただいた方にお
尋ねします。貴社(貴事業所)が太陽電池関連事業に取り組まれている(今後取り組もうとする)
理由はなんですか。(いくつでも)
1.市場規模の大きさ
2. 市場の成長性
3.主力事業との親和性の高さ
4. 専門人材の存在
5.研究開発体制の整備
6. 取引先の存在
7. 開発コストの回収にめど
8.
9. 関連企業・研究機関の集積
10. その他(
製造コストに見合う利益の見込み
)
2.太陽電池関連事業の展開内容
問8 貴社(貴事業所)が展開している(今後展開予定である)太陽電池関連事業は何ですか。
(いくつでも)
1. セル/モジュール関連
2. 製造装置関連
3. 部品・材料関連
4. 検査・測定関連
5. システム・施工関連
6. その他(
)
問9 太陽電池には多くの種類・方式がありますが、貴社(貴事業所)にとって関心があるものはど
れですか。(いくつでも)
1. シリコン結晶系(単結晶)
2. シリコン結晶系(多結晶)
3. 薄膜系シリコン(アモルファス・微結晶など) 4. 化合物系(CIGS、CIS、CdTe など)
5. 有機系(色素増感、有機薄膜)
7. その他(
6. 集光追尾系
)
問 10 問9でそのようにお答えになられた理由は何ですか?(いくつでも)
1. 市場シェア
2. 高効率性
3. 長寿命
4. 量産プロセスの確立
5. 部材・原料の安さ
6. 応用先アプリケーションの多様性
7.
設置コストの安さ
8.
9.
技術親和性・応用可能性
10. その他(
154
デザイン・意匠のよさ
)
問 11 太陽電池関連の一連の生産プロセスに関して、貴社(貴事業所)が、現在外注している、また
は将来外注の可能性があるプロセスはありますか。
<セル工程>
1. 搬送全般
2. スライシング
3. ダイジング
4. エッチング(ドライ)注 1)
5. エッチング(ウェット)注 1)
6. 拡散
7. スクリーン印刷
8. イオン注入
9. 成膜(スパッタリング)注 2)
10.成膜(プラズマ CVD)注 2)
11.成膜(湿式)注 2)
12.成膜(高温プラズマ)注 2)
13.成膜 注 2)(その他:
) 14.スクライビング(メカニカル)注 3)
15.スクライビング(レーザー)注 3)
16.洗浄(ウェット)
17.洗浄(ドライ)
18.研磨
19.レーザーカット
20.吸着(色素)
21.電解液注入
22.ラミネーション
23.アニール(熱処理)
24.球状シリコンの滴下
25.反射板形成等の集光処理
26.球状シリコンの実装
27.セルテスト
<モジュール工程>
28.タブ付け
29. ストリング
30.レイアップ
31. ラミネーション
32.キュア(熱処理)
33. フレーミング
34.端子取付
35. 出力検査
<評価解析>
36. 解析
37. 特性評価(セル)
38. 特性評価(モジュール)
<システム>
39. 設計
40. 組立・施工
<リサイクル>
41. シリコン抽出・分離
42. レアメタル抽出・分離
43. 今のところいずれの生産プロセスも外注していない
注 1)エッチング:テクスチャや表面荒らしなどが該当します。
注 2)成膜:発電層、電極、反射防止膜などの膜形成が該当します。
注 3)スクライビング:パターンニングなどが該当します。
問 12 問 11 のなかで、貴社(貴事業所)が現在外注または外注予定の生産プロセスの具体的な内容を
ご記入下さい。(注力されている順に3つお選びいただいてご回答下さい。)
問 11 の選択肢番号
具体的な内容
問 13 太陽電池システムの各種材料におきまして、貴社(貴事業所)が、現在調達している、または
将来調達する可能性がある材料はありますか。(いくつでも)
155
<セル・モジュール生産におけるセル材料>
1. プロセス用薬品
2. ポリシリコン
3. シリコンウエハ
4. 薄膜形成用反応ガス
5. 酸化物半導体材料
6. 化合物半導体材料
7. 有機薄膜系材料
8. 有機系色素材料
<セル・モジュール生産における電極>
9. 電極用金属
10.透明電極用金属
<セル・モジュール生産における基板>
11.青色ガラス
12.白色ガラス
13.フィルム
14.ステンレス
15.その他(
)
<セル・モジュール生産におけるモジュール材料>
16.カバー用ガラス
17.カバー用フィルム
18.バックシート
19.封止材料(EVA)
20.配線用リードフレーム
21.はんだ等の配線材料
22.ラミネーション
23.アルミフレーム
<システム材料・部材>
24.パワーコンディショナ
25.接続箱
26.昇圧接続ユニット
27.表示ユニット
28. 電力貯蔵デバイス(蓄電装置)
29. ケーブル・コネクタ
30.インバータ/コンバータ
31. バイパス素子
32. 電力モニタ
33. アルミフレーム(パネル)
34. 今のところいずれの材料も調達していない
問 14 貴社(貴事業所)では、現在、太陽電池を組み込んだ(利用した)アプリケーション(例えば、
携帯電話のソーラー充電機器など)を生産もしくは開発されていますか。(ひとつ)
1. はい
2. いいえ→問 17 へ
問 15 貴社(貴事業所)では、太陽電池を組み込んだアプリケーション開発に関心はありますか。
(ひとつ)
1. おおいにある
2. ある
3.ない
4.全くない
5.わからない
問 16 貴社(貴事業所)では、現在、太陽電池を利用したアプリケーションを生産されていたら、そ
の具体的な内容をご記入下さい。また、今後、開発を検討されているものもございましたらご
記入願います。
3.太陽電池関連事業における技術シーズ
問 17 太陽電池業界では多くの課題があると言われておりますが、以下の課題に対して、貴社(貴事
業所)が課題と考えているものは何ですか。(いくつでも)
156
1. 光電変換効率の向上
2. リサイクル技術
3. 長寿命化(モジュール組立技術)
4. 長寿命化(材料技術)
5. 品質安定化(大面積均一成膜技術等)
6. 量産安定化(歩留まり向上)
7. 量産の低コスト化
8.量産ラインの自動化・エンジニアリング
9. 省エネ技術(インバーター・制御等)
10.蓄電技術
11. 太陽電池システム設計技術
12.新しいアプリケーション開発
13.太陽電池の販売代理・設置施工
14.その他(
)
問 18 太陽電池関連の一連の生産プロセスに関して、貴社(貴事業所)が、課題としているプロセス
はありますか。(いくつでも)
<セル工程>
1. 搬送全般
3. ダイジング
5. エッチング(ウェット)
7. スクリーン印刷
9. 成膜(スパッタリング)
11.成膜(湿式)
13.成膜(その他:
15.スクライビング(レーザー)
17.洗浄(ドライ)
19.レーザーカット
21.電解液注入
23.アニール(熱処理)
25.反射板形成等の集光処理
27.セルテスト
<モジュール工程>
28.タブ付け
30.レイアップ
32.キュア(熱処理)
34.端子取付
<評価解析>
36. 解析
38. 特性評価(モジュール)
<システム>
39. 設計
<リサイクル>
41. シリコン抽出・分離
43.
2. スライシング
4. エッチング(ドライ)
6. 拡散
8. イオン注入
10.成膜(プラズマ CVD)
12.成膜(高温プラズマ)
) 14.スクライビング(メカニカル)
16.洗浄(ウェット)
18.研磨
20.吸着(色素)
22.ラミネーション
24.球状シリコンの滴下
26.球状シリコンの実装
29.
31.
33.
35.
ストリング
ラミネーション
フレーミング
出力検査
37. 特性評価(セル)
40. 組立・施工
42. レアメタル抽出・分離
今のところはない
157
問 19 問 18 に関して、具体的な内容をご記入下さい。(3 つまで)
問 18 の選択肢番号
具体的な内容
問 20 太陽電池システムの各種材料におきまして、貴社(貴事業所)が、課題としている材料はあり
ますか。(いくつでも)
<セル・モジュール生産におけるセル材料>
1. プロセス用薬品
2. ポリシリコン
3. シリコンウエハ
4. 薄膜形成用反応ガス
5. 酸化物半導体材料
6. 化合物半導体材料
7. 有機薄膜系材料
8. 有機系色素材料
<セル・モジュール生産における電極>
9. 電極用金属
10.透明電極用金属
<セル・モジュール生産における基板>
11.青色ガラス
12.白色ガラス
13.フィルム
14.ステンレス
15.その他(
)
<セル・モジュール生産におけるモジュール材料>
16.カバー用ガラス
17.カバー用フィルム
18.バックシート
19.封止材料(EVA)
20.配線用リードフレーム
21.はんだ等の配線材料
22.ラミネーション
23.アルミフレーム
<システム材料・部材>
24.パワーコンディショナ
25.接続箱
26.昇圧接続ユニット
27.表示ユニット
28. 電力貯蔵デバイス(蓄電装置)
29. ケーブル・コネクタ
30.インバータ/コンバータ
31. バイパス素子
32. 電力モニタ
33. アルミフレーム(パネル)
34. 今のところはない
問 21 貴社(貴事業所)では、太陽電池システムにおける生産プロセスや材料に関して、大学や研究
機関と共同研究を行うことにご関心がありますか。(ひとつ)
1. はい
2. いいえ
問 22 貴社(貴事業所)が、大学や研究機関に求めるものは何ですか。(いくつでも)
1.原理解明
2. 材料・構造に関する共同開発
3. 生産技術の共同開発
4. 人材育成
5.評価・実験の場
6. その他(
158
)
4.太陽電池産業の振興と導入普及の促進について
問 23 太陽電池産業の振興のため、九州でセミナー・ビジネス商談イベントの開催を計画しておりま
す。興味のあるテーマはありますか。(いくつでも)
1. 技術動向セミナー
2. パネルメーカーの技術ニーズセミナー
3. 導入設計支援セミナー
4. ビジネスプランセミナー
5. 参入支援セミナー
6. その他(
)
問 24 太陽電池事業の拡大に向けて、貴社(貴事業所)が情報交換したい相手はありますか。(いく
つでも)
1. パネルメーカー
2. 製造装置メーカー
3. 材料メーカー
4. アプリケーションメーカー
5. システム・設備メーカー
6. 導入支援コンサル
7. デベロッパー
8. ハウスメーカー
9. 行政
10.電力会社
11.金融機関
12.その他(
)
問 25 貴社(貴事業所)では、現在、太陽光発電設備の導入をしていますか。(ひとつ)
1. はい
2. いいえ
3.わからない
問 26 貴社(貴事業所)では、今後、太陽光発電設備の導入・導入拡大を検討されていますか。(ひ
とつ)
1. はい →問 27 へ
2. いいえ→問 28 へ
3.わからない→問 28 へ
問 27 問 26 で「1.はい」とご回答いただいた方にお尋ねします。問 26 でそのようにお答えになっ
た理由はなぜですか。(いくつでも)
1. 費用対効果がよい
2. 環境対策(CO2 削減)への貢献
3. CSR(企業の社会的責任)の向上
4. ブランド・イメージへの貢献
5. 商品・サービスの付加価値向上
6. 消費電力のピークカット
7. 節電意識の向上(省エネ)
8. 発電による環境価値の販売
9. 行政の支援策の存在
10.その他(
)
問 28 太陽光発電の導入を検討すると仮定した場合、以下の導入支援施策でご関心をもたれるものは
ありますか。(いくつでも)
1. 発電した電気の高値買取制度
2. 初期投資への補助制度
3. 無利子・超低利融資、利子補給制度
4. 電力証書による環境付加価値買取制度
5. CO2 削減実績に換算される制度
6. 緑地面積との代替制度
7. 容積率や建坪率の規制緩和
8. 他者への屋根貸し制度
9. 債務保証制度
10.不動産取得税・固定資産税等の軽減
11.法人税の税額控除
12.減価償却期間(17 年)の圧縮
13.認定事業者制度設立と業者のサポート
14.その他(
)
ご協力いただきましてありがとうございました。
159
160
参考資料:太陽光発電システム普及促進に関するアンケート調査における調査票
161
太陽光発電システム普及促進に関するアンケ−ト調査票
【ご記入にあたって】
1.事業企画ご担当の方にご回答いただければ幸いです。
2.ご回答は 12 月 19 日(金)までに同封の返信用封筒(切手不要)または FAX でご送付をお願いします。
3.貴社(貴事業所)単体での状況についてご回答ください。
4.アンケート結果は本調査の目的のみに使用し、他の目的で活用することはございません。
5.本調査票は財団法人九州経済調査協会が実施しております。本調査内容につきましてご不明な点やご
質問等ございましたら下記にご連絡ください。
【お問い合わせ先】
(財)九州経済調査協会 調査研究部
担当:藤井(フジイ)、岡野(オカノ)
TEL:092-721-4905
FAX:092-722-6205
Email:[email protected]
貴社(貴事業所)の概要についてお答えください。
貴
社
名
(貴事業所名)
所
在
都・道
地
府・県
市・町
番地
氏名:
ご 担 当 者 様
部署:
ご
TEL:
連
絡
先
FAX:
Email:
年 間 売 上 高
業
(
種
注
1
)
1.1 億円未満
2.1 億∼5 億円未満
3.5 億∼10 億円未満
4.10 億∼50 億円未満
5.50 億∼100 億円未満
6.100 億円以上
1. 製造業
2. 卸売業・小売業
3. 土木・建設・設備工事業
4. 住宅・不動産業
5. 運輸・倉庫業
6. サービス業
7. その他(
従
業
員
数
(
注
2
)
1.20 人以下
)
2.21∼100 人
3.101∼300 人
注1)業種が複数にまたがる場合は、最も割合が高い業種を1つ選択して下さい。
注2)正社員と契約社員の合計です。パート・アルバイトや派遣社員は含めないで下さい。
この事業は競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
162
4.301 人以上
1.太陽光発電システムに対する取組み
問1 新エネルギー、省エネルギーに対する関心がありますか(ひとつ)。
1. はい
2. いいえ→問3へ
問2 どのような新エネ・省エネ対策に関心がありますか(いくつでも)。
1. 太陽光発電システムの導入
2. 太陽光発電以外の新エネルギー(風力等)
3. コージェネレーション(ガスタービン等)の導入
4. エネルギー管理の改善、徹底
5. 高効率機器へのリプレイス(空調等)
6. その他(
)
問3 現在、自社(社屋、工場、店舗等)に太陽光発電(太陽電池)を導入していますか(ひとつ)。
1.はい
2.いいえ
3.わからない
問4 今後、太陽光発電(太陽電池)の導入ないし導入拡大を検討していますか(ひとつ)。
1.はい→問5へ
2.いいえ→問6へ
3.わからない→問6へ
問5 問4でそのようにお答えになった理由はなぜですか(いくつでも)。 ※回答後は問7へ
1. 費用対効果がよい
2. 環境対策(CO2 削減)への貢献
3. CSR(企業の社会的責任)の向上
4. ブランド・イメージへの貢献
5. 商品・サービスの付加価値向上
6. 消費電力のピークカット
7. 節電(省エネ)意識の向上
8. 発電による環境価値の販売
9. 行政の支援策の存在
10.その他(
)
問6 問4でそのようにお答えになった理由はなぜですか(いくつでも)。
1. 費用対効果が悪い
2. 今後の設置費用の下落への期待
3. 設置価格が不透明
4. 売電条件が悪い(25 円/kWh)
5. 減価償却の長さ
6. 夜間発電をしない
7. 環境対策や CSR への貢献が不透明
8. 設置場所・スペースがない
9. 行政の支援策が不十分
10.故障時の保証や対応に不安
11.導入の具体的なメリットが分からない
12.導入方法が分からない
13.その他(
)
2.太陽光発電システムの導入インセンティブ
問7 太陽光発電システムの導入インセンティブは様々ありますが、ご存知のものはありますか(い
くつでも)。
1. 住宅向け初期投資への補助制度(個人向け、地方自治体が中心・国も検討中)
2. フィールドテスト事業による初期投資への補助制度(法人向け、国や NEDO が中心)
3.
初期投資への利子(一部)補給制度(法人向け、一部自治体で導入)
4. グリーン電力基金(公共性の高い施設向け、教育機関等の民間施設を含む)
5. グリーン電力証書(自家消費分の環境価値の買取り制度)
6. 電力会社への売電(余剰分の電気と環境価値の買取り制度)
7. G マークの認証制度(グリーンエネルギー活用商品のエコブランド認定制度)
8. その他(
)
問8 太陽光発電システムの導入インセンティブで、既に活用されているものはありますか。問7の
選択肢から選び、下記に記入して下さい(いくつでも)。
163
(例)1,2,5,6
問9 今後、太陽光発電システムの導入(拡大)を検討すると仮定した場合、以下の導入インセンテ
ィブでご関心をもたれるものはありますか(いくつでも)。
1. 発電した電気の高値買取制度
2. 初期投資への補助制度
3. 無利子・超低利融資、利子補給制度
4. 電力証書による環境付加価値買取制度
5. CO2 削減実績に換算される制度
6. 緑地面積との代替制度
7. 容積率や建坪率の規制緩和
8. 他者への屋根貸し制度
9. 債務保証制度
10.不動産取得税・固定資産税等の軽減
11.法人税の税額控除
12.減価償却期間(17 年)の圧縮
13.認定事業者制度設立と業者のサポート
14.その他(
)
問 10 今後の新しい導入支援の制度設計として、以下の仕組みについて検討しています。
①太陽光発電システム超低利融資制度
建物の新設にあわせて、太陽光発電システムの導入をする場合、(A)太陽光発電システムにかかる
追加融資分の金利をゼロにする制度、ないし(B)融資全体の金利を 0.1∼0.2%程度優遇する制度。
なお、家庭用太陽光発電システム(3kW・200 万円)の金利負担は月平均 3,000 円程度(金利 3%・30 年返済)
です。また太陽光発電システムを含めた 3,000 万円の住宅ローン全体の金利負担は、月平均 43,000
円程度(金利 3%・30 年返済)ですが、金利が 0.1%下がる毎に月平均の負担が 1,500 円程度下がります。
■A、Bの制度について、関心はありますか(ひとつ)。
1.どちらにもある
2.Aに関心がある
3.Bに関心がある
4.どちらにもない
■導入の検討材料として有用だと思いますか(ひとつ)。
1.どちらも有用
2.Aは有用
3.Bは有用
4.どちらも無意味
5.わからない
②グリーン電力証書大口化制度
太陽光発電は発電規模が小さいケースが多く、自家消費分の環境価値(電気そのものの価値とは別に、
省エネ(化石燃料削減)・CO2 排出削減など目に見えない価値を指す)が小口であるため活用されにくく、現
在、利用されないケースが多くなっています。そこで、これらの環境価値を集めて大口化させ、グリ
ーン電力証書として活用することを検討しています。
■先の「①太陽光発電システム超低利融資制度」による金利優遇の代わりに、環境価値を無償譲渡す
ることは可能ですか。なお、環境価値は一般的な家庭(3kW システム)で、年間 6,800 円程度(月平
均 570 円程度)です(ひとつ)。
1. 可能
2. 不可能
3. わからない
③インテグレーター(施工業者)の制度
品質保証やメンテナンス、導入時の発電シミュレーションなどについて、一定の基準を満たす優良施
工業者を認定する制度。安心して施工やメンテナンスを依頼できるようにするためのものです。
■関心はありますか(ひとつ)。
1. はい
2. いいえ
3. わからない
■導入の検討材料として有用だと思いますか(ひとつ)。
1. 有用
2. 無意味
④共同出資型メガソーラー(大規模発電システム)の設立支援制度
164
3. わからない
事業者や個人からの出資を募り、メガソーラーを建築し、環境貢献しようとする制度。大型化するこ
とでの設置コストや発電コストの低減、グリーン電力証書大口化による証書流通、教育プログラムへ
の活用が期待されています。出資者の方は、売電分の収益の還元を受ける上、環境貢献への寄与を目
に見える形で享受することができ、企業 PR なども行えます。
■関心はありますか(ひとつ)。
1. はい
2. いいえ
3. わからない
■導入の検討材料として有用だと思いますか(ひとつ)。
1. 有用
2. 無意味
3. わからない
⑤屋根貸し制度
事業所や事務所や工場の屋根を、先の「共同出資型メガソーラー」などの外部に活用してもらう制度。
■自社施設の屋根をご提供いただける可能性はありますか(ひとつ)。
1. ある
2. 条件次第である
3.ない
4. わからない
3.太陽光発電システムの導入支援に対するお考え
問 11 太陽電池産業の振興のため、九州でセミナー・ビジネス商談イベントの開催を計画しておりま
す。興味のあるテーマはありますか(いくつでも)。
1. 技術動向セミナー
2. パネルメーカーの技術ニーズセミナー
3. 導入設計支援セミナー
4. ビジネスプランセミナー
5. 参入支援セミナー
6. その他(
)
問 12 貴社(貴事業所)が情報交換したい相手はありますか(いくつでも)。
1. パネルメーカー
2. 製造装置メーカー
3. 材料メーカー
4. アプリケーションメーカー
5. システム・設備メーカー
6. 導入支援コンサル
7. デベロッパー
8. ハウスメーカー
9. 行政
10.電力会社
11.金融機関
12.その他(
)
問 13 その他、ご意見がございましたら自由にご記入下さい。
ご協力いただきましてありがとうございました。
165
九州地域太陽光発電関連機械工業調査委員会
委
氏 名
名
簿
会社・団体
所属・役職
一木 修
株式会社資源総合システム
代表取締役社長
上田 享
株式会社渕上ミクロ 代表取締役社長
東京工業大学統合研究院
特任教授
富士電機システムズ株式会社 制御システム本部
太陽電池統括部長
新地 哲己
芝浦特機株式会社
代表取締役
杉本 完蔵
太陽光発電協会
幹事会 幹事
武井 健治
武井電機工業株式会社
取締役会長
谷口 功
熊本大学
工学部長
西 道弘
九州工業大学
名誉教授
西村 正幸
九州電力株式会社
執行役員環境部長
野田 松平
財団法人北九州産業学術推進機構
黒川 浩助
斉藤 純一郎
○
員
橋本 正
西部電気工業株式会社
松永 新吾
株式会社産業タイムズ社
松本 修一
株式会社プレシード
田中 耕太郎
産学連携センター
産学連携担当部長
営業本部 環境事業部
太陽光発電部 部長
東京本社
編集部 記者
代表取締役社長
財団法人九州地域産業活性化センター 常務理事
○印:委員長、50音順
※会社・団体及び所属・役職は、委員就任当時のものを記載しております。
166
九州地域太陽光発電関連機械工業調査委員会
委 員 会 審 議 経 過
第1回委員会
平成 20 年7月 14 日(月)15:30∼17:30
[九州経済調査協会会議室]
・委員会の発足
・調査企画案の検討
・主要論点の検討
第2回委員会
平成 20 年9月8日(月)15:30∼18:00
[九州経済調査協会会議室]
・中間報告
・普及導入支援スキームの検討
・裾野形成アンケート調査の検討
第3回委員会
平成 20 年 11 月 18 日(火)15:30∼18:00
[九州経済調査協会会議室]
・裾野形成支援スキームについて
・裾野形成アンケート調査結果の検討
・普及導入アンケート調査の検討
第4回委員会
平成 21 年 1 月 31 日(火)15:30∼18:00
[九州経済調査協会会議室]
・普及導入アンケート調査結果野検討
・報告書(案)について
・太陽電池イベント企画の検討
【事務局】
林
良輔
(財)九州地域産業活性化センター 調査部長
御沓 史郎
(財)九州地域産業活性化センター 企画部課長
岡野 秀之
(財)九州経済調査協会 主任研究員(要約、はじめに、第Ⅰ章、第Ⅱ章、
第Ⅷ章担当)
藤井
学
(財)九州経済調査協会 研究主査(第Ⅵ章、第Ⅶ章、第Ⅷ章担当)
中川 敬基
(財)九州経済調査協会 研究員(第Ⅲ章担当)
葛西 正裕
(財)九州経済調査協会 研究員(第Ⅳ章担当)
市川 真実
(財)九州経済調査協会 調査役(第Ⅴ章、第Ⅷ章担当)
167
太陽光発電関連機械工業の大規模拠点化に関する調査
∼ソーラーアイランド九州の実現に向けて∼
平成 21 年 3 月発行
発
行:
財団法人
九州地域産業活性化センター
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通 5-14-12
TEL:092-713-6735 FAX:092-713-4292
製
作:
財団法人
九州経済調査協会
〒810-0041 福岡市中央区大名 1-9-48
TEL:092-721-4900 FAX:092-722-6205
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