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予稿集 平成 25 年 12 月 14 日

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予稿集 平成 25 年 12 月 14 日
予稿集
目次
■2013 年度日本都市計画学会北海道支部研究発表会開催要領 ··································································· 1
■ポスターセッション研究発表タイトル ································································································································· 2
■記念講演 ··············································································································································································· 3
■研究発表セッション ······························································································································································ 4
■研究発表予稿 ········································································································································································ 5
平成 25 年 12 月 14 日
■2013 年度日本都市計画学会北海道支部研究発表会開催要領
日本都市計画学会北海道支部では、都市計画に関する日頃の研究内容や実践活動を発表する機会を広く設け
るため、昨年の第 1 回に引き続き支部研究発表会を開催します。内容は研究論文に限ることなく、都市・地域づくり
の現場における実用性に寄与する実務報告や実践報告も含めて発表する場として、都市計画に関連する分野の
方々の情報交換や交流の機会になることを期待しております。
1.日時:2013 年 12 月 14 日(土)13:00-17:30
13:00-14:00:ポスターセッション
14:15-15:15:記念講演
15:20-17:30:研究発表セッション
18:00-:懇親会
2.場所:札幌市民ホール 第 1 会議室 (札幌市北区北 1 条西 1 丁目)
3.研究発表会の形式:ポスターセッション形式、および研究発表
4.内容
地域資源を活かしたまちづくり、都市文化、地方分権、サステイナブル、参加と組織、都市・地域の再生、都市・地
域経営、観光、交通、ランドスケープ、海外都市計画などをはじめとする、広く建築・土木・造園分野の都市計画に
関する研究、および計画、デザイン、分析、調査、事業等についてのポスターを募集し、応募者が公開の場でその発
表を行うものとします。
5.応募資格
発表者は、本会員であることを必ずしも求めません。発表内容は、未発表のものだけでなく、研究発表会などで発表
された内容、プロジェクトを別途発表したものであっても可とします。
6.参加費:500 円
※資料代を含む、懇親会は別途(P3 参照)
7.その他
優秀なポスターには、支部長賞が授与されます。発表ポスターの表題と発表者は、都市計画学会本部のデータベー
スに掲載されます。
8.後援
日本建築学会北海道支部、土木学会北海道支部、日本造園学会北海道支部、北海道都市地域学会、計画行政学
会北海道支部、日本都市計画家協会北海道支部、北海道市長会、北海道町村会、北海道開発局、北海道、札幌市
9.実行委員会
実行委員長
:西山徳明(北海道大学)
実行副委員長
:小篠隆生(北海道大学)
委員
:愛甲哲也(北海道大学)、麻生美希(北海道大学)、池ノ上真一(北海道大学)
及川宏之(ドーコン)、久保勝裕(北海道工業大学)、窪田映子((株)KITABA)
坂井 文(北海道大学)、奈良照一(ドーコン)、松岡佳秀(北海道庁)
村瀬利英(札幌市)、横山直満(北海道市長会)
アドバイザー
:宮島滋近(北海道開発局)
1
■ポスターセッション研究発表タイトル
No.
1
研究発表タイトル・研究代表者
Park-tivity -公園周辺の都市空間再編によるアクティビティの多様化-
6
山崎 嵩拓(北海道大学大学院工学院空間性能システム専攻都市計画研究室) 他
山村景観を有する自治体における景観保全および形成の枠組みに関する研究
〜岐阜県白川村における景観計画の改定のための調査研究を事例として〜
麻生 美希(北海道大学 観光学高等研究センター)
主要幹線道路における沿道景観の特性分析に基づく施策に関する一考察
―国道 36 号線札幌・千歳間に着目して―
山崎 嵩拓(北海道大学大学院工学院空間性能システム専攻都市計画研究室) 他
北海道農村部における子どもの暮らしの変容と課題
〜留萌市幌糠地区におけるコミュニティ再生の取り組みをとおして〜
新川 歩(北海道教育大学旭川校、一般社団法人留萌青年会議所) 他
コミュニティ・ベースド・パーク・マネジメントの提案
-エチオピア国世界自然遺産シミエン国立公園を事例として八百板 季穂(北海道大学観光学高等研究センター) 他
礼文島の地域生態系の考察
7
小坂 典子(北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院 観光創造専攻) 他
博物館活動による地域づくり支援に関する研究
2
3
4
5
8
9
花岡 拓郎(北海道大学 観光学高等研究センター)
郊外住宅地におけるエリアマネジメントの推進 ~もみじ台地域の取組事例
勝見 元暢(札幌市役所市民まちづくり局都市計画部地域計画課)
東日本大震災を教訓とした『北海道の防災』 -“教訓と提言”-
掲載ページ
P5
P6
P7
P8
P9
P10
P11
P12
P13
10
高宮則夫(公益社団法人日本技術士会北海道本部防災委員会) 他
市民と共に地域の文化資源を再発見 —ヨルダンハシミテ王国サルト市の事例を通じてー
P14
11
村上 佳代(北海道大学 観光学高等研究センター)
「阿蘇の文化的景観」について
P15
12
中林 光司(北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻) 他
路面電車ループ化を契機とした官民連携による沿線のまちづくり
P16
岩田 朋道(札幌市市民まちづくり局都市計画部都心まちづくり推進室都心まちづくり課)
13 都市再開発における歴史的建物の記憶の継承
P17
14
~「王子サーモン館」記録と記憶プロジェクトの事例を通して~
張 慶在(北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院 観光創造専攻) 他
地域創成-東四丁目軸の都市型コミュニティ-
P18
15
吉村 務(北海道大学大学院工学院空間性能システム専攻都市計画研究室) 他
官民協働による「安全に走れるみち」を目指して
西田 陽一(株式会社ドーコン) 他
16 創成川通アンダーパス連続化事業について
P19
P20
中塚 慎一(札幌市 市民まちづくり局 総合交通計画部)
17 道路整備事業の事業地域における工事関係者の域内日常生活支出と経済波及効果の推計
P21
18
伊藤 徳彦(一般社団法人北海道開発技術センター) 他
地域の魅力向上に資する歩道等の設計上の課題
P22
19
笠間 聡(独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所) 他
札幌の都心におけるアート・コミュニティの可能性
P23
20
加藤 康子(北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院)
都市近郊の自然歩道の利用状況と変動要因の把握
P24
魏 子祺(北海道大学大学院農学院) 他
2
■記念講演
【論 題】 フラノマルシェとまち育て
【講 師】 ふらのまちづくり株式会社
代表取締役社長
西本伸顕 氏
【概 要】
2010 年4月、富良野市中心市街地に、「農と食の魅力」を中心にまちの情報を発信する集客拠点施設『フラノマ
ルシェ』がオープンしました。その盛況ぶりは多くのメディアで報道されています。この施設は、地元企業らの出資による
「ふらのまちづくり株式会社」が、戦略的中心市街地商業等活性化事業の補助を受けて建設したものです。
この講演会では、同社の代表取締役社長であり、今年7月に出版された『フラノマルシェの奇跡 小さな街に 200
万人を呼び込んだ商店街オヤジたち』の著者でもある西本伸顕にお越しいただき、フラノマルシェの建設に至ったプロセ
スと、その後の中心市街地活性化に向けた取り組みの現状についてご講演いただきます。
■懇 親 会
【会 場】 野菜のフレンチ・イタリアン 「ジャルダン ポタジエ ODORI」
住 所:札幌市中央区南 1 条西 2 丁目 IKEUCHI ZONE 8F
(札幌市民ホールから徒歩で 10 分程度)
T E L:011-218-1318
U R L:http://www.4jardin.com
【時 間】 18:00~20:00(2 時間)
【形 式】 立食パーティー形式
【会 費】 3,500 円
3
■研究発表セッション
テーマ説明
(15:20〜15:23)
今回の支部研究発表会には 20 の研究が投稿された。これらの研究は、地域資源を活かし
たまちづくり、都市文化、参加と組織、都市・地域の再生、観光、交通、ランドスケープなどの分
野に大別され、それぞれの分野や具体的な地域の課題を見いだし、解決を試みているものであ
る。これを踏まえ、今回の研究発表会のテーマを「北海道における地域課題とその解決」とし、
各研究分野の代表によるディスカッションを展開する。これらの研究は、多様な側面から北海道
が抱えている課題を浮かびあがらせるものであり、日本都市計画学会北海道支部としての目指
すべき方向も含め、今後の地域づくりのための議論を深めることとしたい。
西山 徳明(日本都市計画学会北海道支部副支部長・研究発表会実行委員長)
1.北海道における地域課題とその解決 その1
(15:25〜16:17)
コメンテータ:愛甲 哲也
司会:及川 宏之
時間
◎発表者(所属)、連名者
タイトル
15:25-15:33 ◎金田 武(株式会社ドーコン)
官民協働による「安全に走れるみち」を目指して
西田 陽一、及川 宏之、角田 洋、
湯浅 浩喜、三好 達夫
15:33-15:41 ◎山崎 嵩拓(北海道大学工学院)
主要幹線道路における沿道景観の特性分析に
坂井 文、越澤 明
基づく施策に関する一考察
-国道 36 号線札幌・千歳間に着目して15:41-15:49 ◎中林 光司(北海道大学大学院国際
「阿蘇の文化的景観」について
広報メディア・観光学院)
西山 徳明
15:49-15:57 ◎浅野 基樹(日本技術士会北海道本部 東日本大震災を教訓とした『北海道の防災』
防災委員会)
-“教訓と提言”高宮 則夫、小林 正明、大浦 宏照
15:57-16:17 ディスカッション
2.北海道における地域課題とその解決 その 2
(16:20〜17:20)
コメンテータ:坂井 文
司会:小篠 隆生
時間
◎発表者(所属)、連名者
タイトル
16:20-16:28 ◎小坂 典子(北海道大学大学院国際
礼文島の地域生態系の考察
広報メディア・観光学院)
池ノ上 真一
16:28-16:36 ◎新川 歩(北海道教育大学旭川校)
北海道農村部における子どもの暮らしの変容と
川口 宏和
課題
-留萌市幌糠地区におけるコミュニティ再生の取り
組みをとおして16:36-16:44 ◎魏 子祺(北海道大学大学院農学院) 都市近郊の自然歩道の利用状況と変動要因の
愛甲 哲也
把握
16:44-16:52 ◎勝見 元暢(札幌市都市計画部)
郊外住宅地におけるエリアマネジメントの推進
-もみじ台地域の取組事例16:52-17:00 ◎伊藤 徳彦(一般社団法人北海道開発 道路整備事業の事業地域における工事関係者
技術センター)
の域内日常生活支出と経済波及効果の推計
高野 伸栄
17:00-17:20 ディスカッション
4
■研究発表予稿
1
Park-tivity
-公園周辺の都市空間再編によるアクティビティの多様化北海道大学工学院
山崎嵩拓
松浦裕馬
工学部
佐々木暢
新谷綾一郎 山崎弘
□対象地区 創成川公園周辺エリア
本提案では、近年整備された創成川公園周辺の都市空間再編提案を行う。創成川公園は 11
億円かけて整備が行われ 2011 年に完成した。この公園が市民の様々なアクティビティの場
となる事で公園やその周辺に賑わいが創出され、創成川の東西分断が解消される事が期待さ
れた。しかし現在、公園でのアクティビティは時間帯やイベントの有無によって限定的であ
り、東西分断も未だ解消されたとは言えない状況である。また、公園周辺には都心に位置し
ながらも多くの老朽建築物、低未利用地が残り、今後の開発の方向性を議論して行く事が必
要なエリアであると考える。
□創成川公園周辺のポテンシャル
“Activity”
そこで、創成川公園やその周辺のアクティビティをより詳しく把握する為に現地調査を行
った。その結果、滞在、飲食、休憩、移動等の様々なアクティビティが朝、昼、夜それぞれ
の時間帯で異なる傾向を持っている事が確認された。
また、この場所は昼間人口と夜間人口の多いエリアの境界に位置し、こういった活動時間
帯の差は東西分断要素の一つにもなっていると考えられる。
□Activity を「動産」と捉えた都市再編手法の提案
以上を踏まえ、本提案ではアクティビティに着目した都市再編手法の提案を行う。都市に
おける建物が「不動産」であれば、安全性や地域活性化、観光振興に影響を与えその空間の
価値を決定付ける要因となるアクティビティは「動産」と位置づけられる。
公園周辺の動産を喚起させる公共空間やプログラムを、公園に面する四街区それぞれに整
備する事で新たな動産の喚起を促す。これにより、土地利用の誘導や集積等の更なる相互作
用を引き起こす。
5
2
山村景観を有する自治体における景観保全および形成の枠組みに関する研究
〜岐阜県白川村における景観計画の改定のための調査研究を事例として〜
北海道大学 観光学高等研究センター 麻生 美希
都市における景観保全および形成の取り組みは、基本的には開発が集積したエリアを取
り扱うものが多いため、建造物のデザイン誘導など開発を前提とした景観の調和が求めら
れることが多い。一方で、山村の魅力は、山林や農地、河川などの開発が行われていない
空間によって構成されていることが多く、構造物よりも土地利用のあり方が景観に与える
影響が大きいことが特徴である。したがって、開発を含めたメリハリのある土地利用(戦
略的土地利用)が景観保全や形成の課題になる。また、その土地利用のあり方を検討する
際には、山村集落においては山の起伏を含む景観構造を分析する必要がある。本研究は、
岐阜県白川村における白川村景観計画(平成20年3月策定)の改定のための調査研究を通じ、
山村景観の景観保全や形成の枠組みを整理することを目的とした研究である。
本研究は2つの視点を有する。一つは、白川村には16の集落があるが、村全体における景
観形成を行う枠組みである。もう一つは、16の集落の内の一つである世界遺産に登録され
ている荻町を中心とし、周辺環境を含めて一つのまとまりを持った集落景観を保全する枠
組みである。
前者に関しては、既存法制度(森林法や農地法、農振法、自然公園法、砂防法など)に
よって定められている土地利用の方針や開発規制の把握、地域コミュニティの単位やイン
フラの整備状況の把握、それらと景観構造との関係性を分析することにより景観形成の枠
組みを構築することを試みた。それにより、既存法制度とリンクして景観的側面からも開
発を規制するエリア、集落景観と調和した開発を行うべきエリア、景観に与える影響が少
なく開発を誘導できるエリアに整理することができた。
後者に関しては、重要伝統的建造物群保存地区選定および世界文化遺産登録という特殊
性はあるものの、一つの集落を単位とした場合の景観としてのまとまりを持つ範囲の明確
化、より詳細な既存法制度による開発規制状況の把握、過去の土地利用の履歴や現状の土
地利用の把握を通じ、景観保全の枠組みを構築することを試みた。それにより、居住域(世
界遺産でいう資産)と周辺環境(バッファゾーン)として単純に規制の強弱をつけて景観
保全を試みる手法ではなく、1つの集落景観の中で土地利用を保全すべきエリアと都市的土
地利用が進んだ開発を許容できるエリアとに分け、景観保全と開発とを両立させられる可
能性を示すことができた。
6
3
主要幹線道路における沿道景観の特性分析に基づく施策に関する一考察
―国道 36 号線札幌・千歳間に着目して―
北海道大学工学院 山崎 嵩拓
同 坂井 文 越澤 明
日本全国で景観に関する取り組みは活発化しつつあるが、特に交通量の多い主要幹線道
路の沿道では全国に画一的な景観が形成されており、この状況に対して都市計画行政の介
入が遅れている点は一課題として考えられる。本論では、北海道の主要空港アクセス道路
である国道 36 号線札幌・千歳間に着目し、沿道に跨る 4 市の景観に関する計画や沿道に決
定される施策、また実態調査に基づき、土地利用の観点から沿道景観特性を明らかにし、
主要幹線道路沿道における良好な景観形成の方策の考察を行った。
研究により主要幹線道路の沿道景観では、1.自治体ごとの沿道景観の変化、2.主要
幹線道路を挟む沿道景観の不調和、3.多様な景観構成要素に対する個別対応という三点
が景観特性となっていることが明らかになった。今後の主要幹線道路における沿道景観を
意識した施策で重要と考えられる、ガイドラインや地域地区制度をはじめとする制度の展
開や、道路に沿った自治体間での協議について考察を行った。
7
4
北海道農村部における子どもの暮らしの変容と課題
〜留萌市幌糠地区におけるコミュニティ再生の取り組みをとおして〜
北海道教育大学旭川校 教育発達専攻3年
一般社団法人留萌青年会議所
理事長
新川 歩
川口 宏和
1.背景と目的
留萌市幌糠地区は、留萌市街からおよそ 15km、深川市と結ぶ国道沿いにある。全国有
数の豪雪地帯であり、良質な米や野菜を出荷する農業集落である。かつては林業を生業とす
る地区として主に富山県方面の人々に開拓されたが、大水害(昭和29年)をきっかけに、
発達した土木技術や農業機械を背景に米作を主とする農業集落への転換が行われた。しかし
現在は、少子高齢化、過疎化が進む地域課題を抱え、平成19年度には幌糠中学校、さらに
幌糠小学校は今年度での閉校が決まっている。
他方、一般社団法人留萌青年会議所(以下、留萌 JC)では、2011年から当該地域で
のコミュニティ再生を目指した活動に取り組んでおり、とくにトヨタ財団の助成を活用し
「今日も行く?互いに学び、教えあえるコミュニティカフェ―小規模・高齢者地域でつくる
居心地の良い陽だまり―」
(2012〜2014)を展開してきている。
そこで本研究では、当該地域が抱える課題を明らかにし、留萌 JC をはじめとする取り組
みの有効性を検証するとともに、今後の課題を提示することを目的とする。
2.暮らし方の分析と地域課題
地域課題を明らかにするため、フ
ェノロジーカレンダーの作成と土地
利用を把握することで、当該地区の
暮らし方を明らかにした。また、開
拓期から現代までの暮らし方の変容
を分析することで、現在における地
域矛盾を解明し、地域課題を考察し
た。とくに小中学校の閉校など少子
高齢化による影響を直接受けるこど
もに着目することで、当該地区の将
来にとって必要な取り組みについて
言及した。
8
コミュニティ・ベースド・パーク・マネジメントの提案
5
-エチオピア国世界自然遺産シミエン国立公園を事例として北海道大学観光学高等研究センター
八百板 季穂 ・ 西山 徳明
1. 背景と目的
エチオピア国シミエン国立公園は、初めて世界遺産リストが作成された 1978
年に、ガラパゴス諸島などと一緒に世界遺産に登録された。しかし、
1996 年、公園内外の農村集落域の拡大が公園内の野生生物に対する脅威と
なっていることが指摘され、危機遺産リストに掲載された。エチオピア政府は、
公園の環境を回復させるため、移住政策を推進しているが、補償に対する資金
不足に加え、多くの住民は移住の意志を持たないことから、対策は進んでいな
い。
本研究では、公園の環境回復と住民の居住を両立させるため、コミュニティ・
ベースド・ツーリズムを代替生業としつつ、住民自らが公園管理に対しても責
任の一端を担うようなコミュニティ・ベースド・パーク・マネジメントの仕組
みを形成することを大きな目標としつつ、今後の居住域を検討する上で手がか
りとなる、公園設立当時の集落域を把握することを目的とした。
2. 研究方法
公園設立当時に撮影された写真と現在の土地利用とを比較し、集落域および
農地の拡がりを分析、把握した。なお、本研究は、北海道大学観光学高等研究
センターが受託している国際協力事業「JICA エチオピア国シミエン国立公園
及び周辺地域における官民協働によるコミュニティ・ツーリズム開発プロジェ
クト」の一環として実施された。
3. 調査結果
公園内において最大規模を有するギッチ集落について、国立公園設立以降現
在までに拡大された集落域を地図上で把握できた。今後は、他の集落について
も国立公園設立時の規模を把握すると共に、今回の調査結果を元に、コミュニ
ティ・ベースド・パーク・マネジメントを実現するための適切な集落規模の検
討を進める。
9
礼文島の地域生態系の考察
6
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院
観光創造専攻
修士 1 年 小坂典子
北海道大学観光学高等研究センター
准教授
池ノ上真一
当該研究の対象地は、日本最北の有人島である礼文島であ
る。島全体に希少植物を多く含む高山植物と豊かな海洋資源を
有する島として知られている。また縄文時代からの人の営みが
確認されており、様々な人々が長い年月をとおし自然環境との
関係を築き上げてきている。とくに近代以降は、ニシン漁を中
心とした漁業が主たる産業となり新たな拓殖が展開され、さら
に近年ではとくに高山植物を観光資源とした観光関連業が興っ
ている。しかし、現在では少子高齢化、過疎化が深刻化し、観
光による入り込み客数も 10 年前から比べ半減している。
本研究ではこれらの現状から課題を抽出するために、当該地域
(fig. 1)礼文島の位置図
における人と自然生態系との関係
の中で構築されてきた地域生態シ
ステムについて、とくに漁業従事者
の暮らしに焦点をあてたフェノロ
ジーカレンダーの作成をとおして
明らかにするとともに、近年の観光
との関係に関してとくに空間的な
観点からの活動分析をとおして、矛
盾を明らかにした。
(fig. 2) 礼文島の人口、世帯数、漁業人口の推移と観光入
込数の推移
(fig.1)国土地理院地理院タイルより筆者作成
(fig. 2)※総務省統計局国勢調査『人口・世帯数
の推移(大正 9 年~平成 22 年)』、『産業別 15 歳以上就業者数(昭和 45 年~平成 22 年)』、宗谷総合振興局 『宗谷
管内市町村観光入込客数調査結果』(H20~H24)、北海道経済部観光のくにづくり推進局 『北海道観光入込客数調査報
告書』(~H19)より筆者作成 ※H8 以前と H9 以降で人口調査方法が異なるため、H8 以前の方法に則して数値を出した。
(参考文献)
真坂昭夫・比田井和子・高梨洋一郎(2010)
『宝探しから持続可能な地域づくりへ 日本型エコツーリズムとは何か』, (株)
学芸出版社, 京都, 198p.
鳥越晧之・家中茂・藤村美穂(2009)『景観形成と地域コミュニティ』社団法人農山漁村文化協会, 東京, 308p.
上甫木昭春(2009)『地域生態学からのまちづくり 共生環境のマネジメント』, (株)学芸出版社, 京都, 151p.
真坂昭夫・石森秀三・海津ゆりえ(2011)
『エコツーリズムを学ぶ人のために』,
世界思想社, 京都, 356p.
10
7
博物館活動による地域づくり支援に関する研究
北海道大学 観光学高等研究センター
特任助教
花岡 拓郎
1.背景と目的
本研究は、文化資源を活かした地域づくりを博物館活動によって支援できる可能性の検証を目
的としている。博物館施設は有形無形の資産を収蔵、管理すると共に、学術的知見に富んだ貴重
な情報を生み出しているが、その活動を地域づくりの観点から捉え直すと、地域資源の再評価や
新たな創出に直接関わる活動であるほか、博物館施設の機能や専門的人材の存在も踏まえると、
博物館活動は地域づくりに寄与する重要な活動の一つとして捉えることができる。しかしながら
今日まで、博物館活動を積極的に地域づくりに利活用する事例は少なく、本研究では博物館活動
が地域づくりを支援できる可能性、方策について検証する。
2.方法
博物館活動による文化資源を活かした地域づくりの実現に必要と考えられる条件を下記のよ
うに設定し、研究対象地において社会調査、文化資源の概要調査、地域の空間と景観の概要調査
を行い、博物館活動による地域づくり支援の実現可能性があることを示す根拠を確認、その有効
性について検証した。具体的にはペルー国クエラップ遺跡及び周辺集落を対象とした。
3.分析と考察
【条件①】地域に文化資源が存在しているか?
→ 豊かで多様な文化資源が存在していることが確認できた。さらに調査地域には日本の文化財
保護体系における全カテゴリに対応する文化資源が存在していた。
【条件②】地域住民によって文化資源が保護・継承されているか?
→ 文化資源のほとんどが地域住民の手によって継承されていることが確認できた。さらに” 文
化資源を残そう、伝えようとする住民の意志”
、
” それらの持続的な利用”
、
” 技術の持続的な継
承” が確認でき、文化資源を活用した博物館活動を支える潜在的な地域力も存在していた。
【条件③】文化資源が存在する地域の一体的なまとまりがあるか?
→ 地域全体がまとまりを帯びた山岳地帯に連続的に存在し、一体的な固有の文化的景観(山岳
丘陵地帯の農村景観)を育み、集落の地域コミュニティによって社会的まとまりも有していた。
こうした空間的、景観的、社会的まとまりを持った範囲が将来の博物館活動のエリアとなるとい
えた。
【条件④】博物館又は博物館活動の運営が可能であるか?
→ 将来的に博物館活動を実施または支えることができると考えられた組織や施設の存在が確認
できた。遺跡専門家は将来の学芸員となり、集落ごとのコミュニティは将来の文化資源管理組織
となり、集落ごとの公的施設等は将来の地域博物館となりえると考えられた。
4.まとめ
上記の①から④の条件設定によって、地域における博物館活動において活用される資源、活動
の主体(組織)
、範囲、拠点となる施設など、活動に必要な全ての要素を把握することができた。
また、調査対象地においては、地域全体を屋根の無い博物館のテリトリーとみなし、エコミュー
ジアム概念に基づいた博物館活動が実施可能であると考えられ、それらの活動が観光振興策とも
つながることで地域づくりを支援する主要な活動となることを指摘することができた。
* 対象事例地「ペルー国クエラップ遺跡と周辺集落」
ペルー北部のアマソナス州チャチャポヤス地域にあり、海抜 3,000 前後の山岳地帯に 8 つの集
落が配され、要塞状の石造建造物のクエラップ遺跡が文化的象徴とみなされている。循環型の社
会構築(特に自然保護や相互扶助)に対する観念が強く、民間信仰とキリスト教の両者に対する
信仰も篤い。地域の主要産業は農業。
11
郊外住宅地におけるエリアマネジメントの推進
8
~もみじ台地域の取組事例~
札幌市都市計画部
1
勝見 元暢
はじめに
札幌市の郊外住宅地においては、人口減少・少子高齢化に伴う様々な課題が顕在化し
ている。本報告では、札幌市の郊外住宅地におけるまちづくりの新たな方向性である、
エリアマネジメントの推進について、市有財産の収益を活用したその仕組づくりの事例
を報告する。
2
取組を支える場の創出
もみじ台管理センター(以下「センター」という。
)は、昭和 40 年~50 年台に札幌市
が開発した大規模住宅団地である、もみじ台団地のコミュニティ施設で、市の図書コー
ナー、集会施設、貸事務所等で構成されている。平成 24 年3月までは㈶札幌市住宅管理
公社(以下「公社」という。
)が所有し管理運営していたが、エリアマネジメントの仕組
みづくりを試行するため、市が譲渡を受けたものである。
センターについては、エリアマネジメントの取組を支える場として活用することとし、
新たな管理運営を始めるにあたっては、センターの有効活用等により地域の課題解決や
活性化などを図ることを目的とした事業(以下「有効活用事業」という。)の企画・実施
を条件として、公募プロポーザル方式で民間事業者を決定した。
3
活動資金の確保とコーディネーターの配置
センターには市の図書コーナーの受託管理収入、集会施設の利用料収入、貸事務所の
賃貸料収入等で、約 4,500 万円/年の収入があったが、公社が管理運営していた期間は
光熱水費や人件費等の施設管理費に収入の大部分が充てられていた。民間事業者による
管理運営が始まってからは、事業者のノウハウにより施設管理費が圧縮され、有効活用
事業の費用として約 700 万円/年が確保されている。この費用が確保されたことで、有
効活用事業に専従する者の人件費を負担することが可能となり、高齢者のグループづく
り・ネットワークづくり・拠点づくりの活動を行うNPO法人と、まちづくりコンサル
タントの2者がコーディネーターとして配置されている。
4
取組の広がり
この仕組みづくりによる具体的な成果としては、公社による管理運営期間と比べて集
会施設の稼働率が向上したほか、有効活用事業のプログラム数も増加傾向にある。
また、同時期にもみじ台地域内で閉校となった2つの学校施設があるが、これらにつ
いても、別の民間事業者による跡利用が図られており、センターの取組との連携が生ま
れるなど、地域の活性化等に資する取組の有機的な広がりが見られる。
5
おわりに
もみじ台地域での取組は、エリアマネジメントの推進のために、市有財産の収益を活用
した事例であるが、今後、他の郊外住宅地においてエリアマネジメントの取組を推進する
ためには、本事例の汎用化やその他の公共空間の活用の検討など、地域特性に応じたエリ
アマネジメントの仕組みづくりを継続していく必要があると考えられる。
12
東日本大震災を教訓とした『北海道の防災』-“教訓と提言”-
9
日本技術士会北海道本部防災委員会委員長
高宮則夫
○日本技術士会北海道本部防災委員会副委員長 浅野基樹
1.
日本技術士会北海道本部防災委員会幹事
小林正明
日本技術士会北海道本部防災委員会幹事
大浦宏照
はじめに
(公社)日本技術士会北海道本部では、東日本大震災の教訓から、地震や津波に関わる新
たな北海道の防災・減災への教訓と提言を取りまとめ、平成 25 年 10 月に札幌で開催された
第 40 回日本技術士会全国大会にて発表したので、その概要を紹介する。
2.
本“教訓と提言”のコンセプト
本“教訓と提言”では、2000 年の有珠山の経験から、過去の災害やそのメカニズム、教訓
を「よく知り」
、
「よく備える」ことは「正しく恐れる」ことであり、被害の最小化につなが
るものと考え、市民に向けて「よく知り、よく備え、正しく恐れる」ことを提言し、その助
けになる内容を目指した。
3.
構成
本書は、まずⅠ.
「よく知る」ことのため、
「Ⅰ-1.東日本大震災等の巨大地震・津波災害
「Ⅰ
の被害と発生メカニズム」
、
「Ⅰ-2.北海道における地震・津波災害と発生メカニズム」、
-3.北海道において想定される地震・津波災害について」、の 3 項目についてとりまとめた。
次に、Ⅱ.
「よく備え」
・
「正しく恐れる」ことのため、
「Ⅱ-1.各団体からの提言類」、
「Ⅱ
-2.東日本大震災等からの教訓・提言」、「Ⅱ-3.市民が「よく備え」・「正しく恐れる」た
めに」
、
「Ⅱ-4.技術士の役割」についてとりまとめている。
また、本書は市民向けの提言書とすることから、市民向けの Q&A である「地震災害に関
する Q&A」を加えた 2 部構成となっており、市民の日頃の防災準備にも役立つことを目指
したものとなっている。
13
10
市民と共に地域の文化資源を再発見
—ヨルダンハシミテ王国サルト市の事例を通じてー
北海道大学
観光学高等研究センター 特任助教
村上 佳代
本研究の目的は、市民と共に地域の文化資源を再発見するためのプロセスについて、
参画したヨルダンハシミテ王国サルト市における JICA 青年海外協力隊の活動と技術
協力プロジェクトを通じて考察することである。
ヨルダンは観光を重要な外貨獲得の手段としている。ペトラ遺跡や死海など世界的
にも有数の観光地を保有し、古くから観光に力を入れている。旧首都のサルト市は、
急斜面に石造りの歴史的建造物が建ち並び、活気溢れるアラビアの都市空間を観光資
源として新たに注目されている。しかしまだ宿泊施設も無く観光客の往来も少ない状
況であり、2008 年より歴史的市街地の文化資源を観光資源として見出す調査が JICA
によって行われ始めた。2008 年からの調査では、これまで 657 件と報告されていた
歴史的建造物に対し 990 件が再発見された。市民へのヒアリングと内部調査による成
果である。こうした調査手法は市民が自ら建物の価値に気付き、更に新しい物件を発
見するきっかけともなった。
2012 年からは JICA による 3 年間の観光開発プロジェクトが始まった。その一環と
して 2013 年 10 月に行った「サルトフェスティバル」では、市民が家を開放し、家の
宝だと思うものを展示・解説する「オープンハウス」企画を実施した。参加した S 家
は、倉庫に眠っていた伝統衣装や民具を引っぱり出し、家族で昔を振り返った。これ
まで忘れかけていた母の小さい頃の思い出が再発見された民具を通じて子に話すきっ
かけができ、その思い出のつまった民具は家族のかけがえのないものになったとフェ
スティバル後、語っている。
地域の文化資源を市民と共に再発見する意義は、法律で護れない文化資源に対し、
愛着が生まれることによって重要な継承者となりうるということだけでなく、地域に
昔から住んでいる市民しか知り得ないことがあり、地域の歴史や文化の調査研究を進
めていく上で重要な役割を果たすことだと言える。今後は、価値に気付いた住民がど
のように継承するように促していくかが課題であるが、こうした研究が同様に急速な
経済成長の中で貴重な文化資源が徐々に失われている多くの地域の一つのモデルとな
る様プロジェクトを進めていきたい。
14
11
「阿蘇の文化的景観」について
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院
観光創造専攻
博士課程
中林 光司
北海道大学観光学高等研究センター
教授 西山 徳明
「文化的景観」とは「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形
成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」と定義
されている。この研究は文化的景観の典型例である阿蘇地域を熊本県及び阿蘇周辺市町村
及び他大学と協力し、阿蘇の資産の価値の本質を結論付ける研究である。
阿蘇の景観の価値の本質の基底を支えるのは 2 つあり、第一には火山活動がもたらした
火山灰層豊かなカルデラ火山の自然地形を挙げることができる。霧島火山帯に属し、数回
に渡る多量の火砕流噴出の結果、東西約 18km、南北約 24km という世界屈指の巨大陥没カ
ルデラ形成後湖水が誕生し、さらに立野火口瀬から流出し現在に至る景観である。
阿蘇での人と火山との共生史は、旧石器時代まで遡り、弥生期には人々はカルデラ床に
定住が始まり、文献では中国の『隋書』、日本の平安期『延喜式』に関連記述がある。ま
た草原は労働力である牛馬の放牧や牧草採取、草肥生産の場であり、牛馬により草肥堆肥
は高地より酸性低湿地の火口原に運搬投入され土壌改良が行われ、豊かな水田に転換して
いった。これは古来より「採草火入れ放牧」という人々の営みによって維持され、今日ま
で継承されている。第二の基底はこのように「一万年の草原景観」とその維持システムで
あり、阿蘇の景観は火口原からカルデラ縁上へと向かう、耕地-集落-森林(里山、二次
林)-草原(外輪山・中央火口丘下)の垂直的土地利用のユニットを集落単位で有機的に
進化させつつ継承してきた。今日の緑あふれる阿蘇カルデラ火山の一大景観は、まるで人
智を越えた力によってデザインされたのである。
本研究は上記で述べた、第一の基底については文献、写真で確認をするとともに、第二
の基底についても、過去から現在までの経過(文献及びインタビュー/農家・地域の女性・
役場)
、データ分析(集落界内の土地利用データなど)、現地踏査、写真分析をそれぞれの
地域ごとの景観特性や、草地管理への関わり方を併せることによって裏付けすることによ
り、本資産の価値の本質を、この世界最大と言える単一景域としての文化的景観文化的景
観であることを結論付けるものである。
15
路面電車ループ化を契機とした官民連携による沿線のまちづくり
12
札幌市市民まちづくり局都心まちづくり推進室 岩田
1
朋道
趣旨
路面電車のループ化にあわせ、札幌の目抜き通りである札幌駅前通の賑わいを創出し、
来街者の利便に供する施設の整備等を、地元のまちづくり組織である札幌大通まちづくり
㈱(都市再生整備推進法人)と協働で進める。
実施にあたっては、道路占用許可の特例制度(都市再生特別措置法)を活用する。
2
路面電車のループ化について
(1)開業時期:平成 27 年春
(2)区間:札幌市中央区南 1 条西 3・4 丁目~南 4 条西 3・4 丁目(札幌駅前通)
(3)特徴:ループ化による利便性向上、電車運行の効率化
歩道側を走行するサイドリザベーション方式の採用により、沿道と一体となっ
たまちづくりの推進
3
路面電車ループ化にあわせた沿道の賑わい創出
(1)事業主体:札幌大通まちづくり(株)(都市再生整備推進法人)
(2)取組内容:札幌駅前通の歩道上(①南 2 条西 4 丁目・②南 1 条西 3 丁目)に、食事・
購買施設(
「大通すわろうテラス」
)を設置(①平成 25 年 8 月・②平成 25 年 11
月)することで、滞留空間を形成し、まちの賑わいを創出する。また、統一感
のある街並みを形成できる広告塔を設置することで、まちの景観の向上を図り、
まちづくりへの再投資を図る収益を確保する。
(3)運営方法:国・札幌市による一部補助を受けながら設置し、四季を通じて運営する。
出店する店舗は定期的に入れ替え、公募により決定する。
(4)その他:平成 23 年 12 月に札幌市が札幌大通まちづくり(株)を都市再生整備推進法人
に指定し、同社から上記取組を含む都市再生整備計画の提案を受け、同計画を
変更した(平成 25 年 3 月)。また、同社と駅前通を管理する北海道開発局との
間で都市利便増進協定が締結され(平成 25 年 3 月)
、同社が施設周辺の清掃・
美化活動、放置自転車の整序等を行っている。北海道開発局は当該道路を特例
道路占用区域に指定し(平成 25 年 5 月)
、道路(歩道)空間の活用(オープン
カフェ・広告塔の設置)が可能となった。
16
13
都市再開発における歴史的建物の記憶の継承
~「王子サーモン館」記録と記憶プロジェクトの事例を通して~
北海道大学大学院 張
慶在
札幌建築鑑賞会
正人
杉浦
本研究の目的は、都市再開発における歴史的建物の記憶を継承する方法について、
「
『王子サーモン館』記録と記憶プロジェクト」の事例を通して考察することである。
かつて札幌市中央区北 1 条西 1 丁目にあった「王子サーモン館」は、札幌市の「第 4
次長期総合計画」の一環である「創世 1.1.1 区構想」の対象区域として、2012 年 2 月
に解体された。それを受けて札幌建築鑑賞会では、
「王子サーモン館」の歴史を記録し、
記憶を未来へ伝えることを目的とする「『王子サーモン館』記録と記憶プロジェクト」
(以下、
“記録と記憶”プロジェクト)を展開してきた。
“記録と記憶”プロジェクトは、大きく二つの柱で構成される。一つは建物や周辺
の土地に関する歴史を記録として残すこと、もう一つは建物の記憶をイメージ化し、
建物跡地で進められる再開発事業に提案することである。具体的には、記録を残す作
業として、360 度パノラマ映像(CD-R)
、コンピュータグラフィックスによる風景の再
現(DVD)、1/50 の立体模型の制作を行った。併せて、建物の歴史に関する文献調査、煉
瓦製造者や関係者への聞き取り調査、関連する札幌の煉瓦造建物の実態調査を行い、
その結果を小冊子(要約版)にして市民に配布した(本報告書は 2013 年 12 月完成予
定)
。また、記憶を伝える作業として、2012 年 10 月に「アイディアカフェ」を開き、
建物に使われた煉瓦(解体時に所有者から百数十個を譲り受け、現在会で保管してい
る)の活用方策を語り合った。それをもとに、ランドスケープデザイン専門家に依頼
し、12 点を図案化した。2013 年 3 月に催した報告会での投票を通して最終的に 3 点を
選び、再開発の事業者へ提案した。
“記録と記憶”プロジェクトの意義は、解体された建物の価値を評価するのみなら
ず、未来へ継承する方法を市民が模索したこと、その結果をイメージ化して、市民が
主体となって再開発への具体的な反映を提案したことである。同様の再開発事業が予
定されている中、このプロジェクトは、都市再開発における歴史的建物の評価、記憶
の継承、市民参加の一つのモデルを提供できると考えられる。
17
14
地域創成-東四丁目軸の都市型コミュニティ-
北海道大学工学研究院
吉村
務
北海道大学工学研究院
押木
祐生
北海道大学工学研究院
寺川
真未
北海道大学工学部
今瀧 亞久里
札幌市中央区の創成川以東地区では、近年増え続けるマンションの開発、高齢化に伴
って、従来の地縁的なコミュニティによるまちづくりでは限界があると考える。そこで、
本提案では東四丁目通り周辺を対象として「都市型コミュニティ」をテーマとし、長期
的計画によって都市部に適した地域コミュニティの創造モデルを提案する事を目的とす
る。組織、活動の場、ネットワークを段階的に整備する事で、世代に関わらずにまちづ
くりに参加するための、持続的なシステムを目指す。
PHASE1:まず、まちづくりの土台作りとして
『組織』の整備を行うため「市民まちづくりセ
ンター」の設立を提案する。本施設では、東北
まちづくりセンターを移設し、東四丁目軸にお
いて住民と行政をつなぐ存在として機能させる。
PHASE2:活動を行うための『場づくり』とし
て、地域まちづくりのコアを整備する。現在も
残されている東四丁目通りのクランクを利用す
る事で、人の流れが留まるように整備を行い、
住民や買い物客が集まり、賑わいをもたらす場
をつくる。
PHASE3:市民まちづくりセンターを中心とし
て組織を『ネットワーク化』することで、更な
る東 4 丁目軸のコミュニティの拡大を目指す。
事前調査から生産年齢の増加と高齢化が考えら
れるため、世代間交流とまちづくりを組み合わ
せた活動を提案する。
図 1:提案敷地図
18
15
官民協働による「安全に走れるみち」を目指して
株式会社ドーコン 西田 陽一、金田 武、及川 宏之、角田 洋
北海道開発局 網走開発建設部 湯浅 浩喜、三好 達夫
1.はじめに
世界自然遺産“知床”のアクセス道路である一般
取組実施区間
国道334号斜里~ウトロ間において官民協働で「使
いやすい道路」を目指した「協働型道路マネジメン
ト」活動を進めている。このうち、より「安全に走
れるみち」を目指した取組を紹介する。
2.「 安全に走れるみち」の取組
一般国道334 号斜里町の峰浜地区~日の出地区
図1.取組実施区間
は、狭小幅員の橋梁や急カーブの連続、路面凍結に
起因する交通事故発生などの問題を抱えていた。
そこで人身ならびに物損事故の発生履歴を入手
し、事故発生箇所を把握するとともに、地区住民へ
のアンケート調査により運転時に危険を感じる潜
在的事故危険箇所(ヒヤリ・ハット箇所)を把握し
た。
図2.ヒヤリ・ハットマップ
それらの箇所を可視化した「ヒヤリ・ハットマッ
プ」を作成することにしたが、事故の情報だけでは、
観光客は興味を引かず手にとらないことが想定さ
れたため、少しでも興味を引くよう地域の「見所マ
ップ」も記載している。また、土地勘のない観光客
には、マップだけでは実際の危険箇所がわかりにく
いため、マップと連動した現地看板を設置するなど
の工夫をしている。この「ヒヤリ・ハット(見所)
図3.見所マップ
マップ)
」は、春・夏・秋・冬と一年を通じて作成
し、道の駅や宿泊施設等で配布している。
この取組について、道路利用者へのアンケート調査
を行ったところ、マップと現地看板の連動による危
険箇所の情報提供は、高い評価を得ている。
図4.ヒヤリ・ハット現地看板
19
創成川通アンダーパス連続化事業について
16
札幌市
市民まちづくり局 総合交通計画部
中塚
慎一
1.背景と目的
環境問題が深刻化し、また少子高齢化により人口増加が緩やかになり、今後も財政の制約
状況は続くと考えられている中、一方では、きめ細やかな市街地の更新と良好な都市景観の
形成が求められている。このような課題に対応するため、本事業は道路空間の再配分により、
交通環境と都市環境の改善を図ることを目的として実施された。
2.事業の概要
この事業は、2 つのアンダーパスを連
続化することで、都心へのアクセス交通
と都心通過交通をそれぞれ、地上部道路、
地下トンネルに分離。また、従前のアン
ダーパス構造により、物理的に不可であ
った創成川を挟んだ東西市街地を新たに
整備前
結ぶ道路の新設や交差点での付加車線設
整備後
置により、都心交通の整序化を図り、交
通の円滑化を図った。
さらに、連続化により車道 8 車線のうち 4 車線が地下トンネルとなることから、用地確保
が難しい都心において、新たに 5,000 ㎡の
空間を生み出した。従前の約 1.4ha の河川敷地とあわせて約 1.9ha の創成川を活かした公園
を整備した。
3.効果
①都心通過交通の速達性の向上
・アンダーパス連続化区間(北 3 条~南 5 条)において所要時間が約半減し、行速度が
約 1.9 倍になった。
②周辺道路の混雑緩和
・西 2 丁目線の滞留長が大幅に減少
③東西地域の分断の解消
・地上部整備により創成川東西地域の往来者が増加
・創成川以東地区の人口増加
20
道路整備事業の事業地域における工事関係者の域内日常生活支出と
17
経済波及効果の推計
一般社団法人北海道開発技術センター
伊藤徳彦
北海道大学大学院工学研究院
高野伸栄
本研究では、道路整備事業の建設工事に伴う経済効果のうち、工事関係者の事業地
域での日常生活支出に着眼し、
高規格幹線道路事業トンネル
トンネル工事関係者の
域内日常生活支出傾向の把握
工事をケーススタディに経済
X・Y地域産業連関表
の作成
経済波及効果分析
波及効果を推計し、Fig.1 の推
計プロセスの開発を行った。
トンネル工事関係者の域内日常生活支出傾
向と経済波及効果推計
その結果、工事関係者 88 名
Fig.1
推計プロセス
の域内日常生活支出は年額
1,756 万円、一人あたり 20 万円であり、ガソリン・一般食料品・生鮮食料品の購入
と自動車整備が支出全体の約 70%を占める傾向とわかった。経済波及効果は 2,933 万
円で、同年度我が国の名目経済成長率が 1.1%のなか、過疎化高齢化とマイナス経済
成長の懸念の地域で、域内生産額 16,846 百万円の 0.17%増分に相当するものと推計
した。産業別では、製造業・農業・商業運輸・自動車整備業等に効果が及ぶとわかり、
結果、推計プロセスを開発できた。
プロジェクト(事業)
今後は、地方部の高規格幹線道路事
工事費
業トンネル工事をケーススタディに、
工事・資材の発注、現場事務所の設
資材費等
営業余剰等
用地・補償費
賃金
置・運営に係る調達を探り、Fig. 2 に
家計所得
おける、工事費から、資材費等・営業
家計消費支出
余剰等・家計消費支出を経て、事業地
地域別最終需要(財・サービス)Y
域に発現する、道路整備建設工事に伴
産業間の波及
う事業効果の全体像を把握し、経済的
生産誘発効果
を予定する。
所得再分配
効果
住宅投資
投入係数の逆行
列
地域別所得 V
地域別雇用 E
高次効果
Fig.2
21
貯蓄
地域別生産額
X
インパクトを明らかにするとともに、
その推計プロセスの構築を行うこと
財産所得
事業効果の計測
雇用
効果
18
地域の魅力向上に資する歩道等の設計上の課題
独立行政法人土木研究所
寒地土木研究所
同
笠間 聡
松田 泰明
1.研究の背景と目的
近年、多くの地域において、地域の魅力向上や地域活性化は重要な取組みや課題の一つ
となっており、事業における景観配慮、景観向上への要望が高まっている。しかし、その
際に景観検討を担当できる技術者や担当者は不足しており、十分な検討体制が確保されな
かったり、景観整備内容が適切でなかったりする例もみられる。そのため、十分な検討体
制が確保されない事業にあっても、最低限必要な景観配慮が進められるように、景観配慮
の基本やその検討方法あるいは検討例を整理し、理解しやすい形で取りまとめておくこと
が必要と考えられる。
このような背景の下、道路の歩道等に関するものを対象として、その設計・整備時の景
観配慮に参考となるマニュアル類のレビューを行い、適切な景観配慮の促進のための技術
情報の充実といった観点から、既存の記述内容の整理と課題点の抽出を行った。
2.調査と結果の概要
本研究では、選定した 12 の設計技術資料について、道路の歩道等について景観検討を
行う際の参考となる記述内容について抽出を行い、歩道等の歩行空間を構成する要素ごと
に、それら記述内容を「a. 基準・推奨値」
「b. 方針・配慮事項」
「c. 方法・判断指標」
「d.
例示・参考値」の 4 区分に分類して整理した。
この結果から、
「b. 方針・配慮事項」に分類される「ガイドライン」的な記述は比較的
充実している一方で、他の区分の記述が限られることや、具体の「a. 基準・推奨値」
「c. 方
法・判断指標」と、
「b. 方針・配慮事項」が併記された技術資料の有効性などを示した。
3.道路の歩道設計に関する課題の整理
これらの調査結果のほか、行政における設計業務の現状も踏まえ、今後の景観検討の支
援や技術資料の充実に求められる要件や方向性について考察した。
22
19
札幌の都心におけるアート・コミュニティの可能性
北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院
メディア文化論専攻 加藤康子
近年の札幌の都心部では、公示地価が最高値の街区においてすら長期の空室が目立つなど、
空洞化の進行が著しい。このため、従来は都心に活動場所を得ることが難しかった非営利の
アート団体にも参入の機会がもたらされている。2008 年 5 月に設立された「OYOYO まち×ア
ートセンター」
(以下:OYOYO と略称)も、そうしたコミュニティ&スペースの一つで、市民
有志が自主運営する札幌の創造・交流拠点である。その組織や運営形態、コミュニティの性
格はユニークで、いずれも札幌では他に類例を見ない。なぜこうしたアートスペースが都心
の一等地に持続して存在できるのか。発表では、その外的内的要因と、そこに育まれたコミ
ュニティの性格について報告する。
存続の外的要因は、都心に散在する古い建物という経済収益性の隙間であり、OYOYO も空
洞化対策の一つとして構想された。内的要因はその運営システムである。OYOYO は、美術部、
音楽部、写真部など学校の課外活動を模した部活制を根幹としており、部員が毎月納める部
費をベースに、不足分をホールレンタル等で補っている。OYOYO は、外部からレンタルを誘
致できる手腕を持つ人材に恵まれていたため、現在まで存続が可能だったといえる。
また、この部活制は、組織の多様性の担保と分権の受け皿、自主運営システムとしても機
能し、部員の自主性を育むことになった。特に美術部に顕著にみられるのが、部員が交互に
講師を務めるレクチャーによる「相互リスペクト」
、どのような前衛的もしくはマニアックな
発表であっても全員で共感して楽しむ「バカの許容」
、全員が平等に発言権を持ち対等な関係
の中で尊重しあう「カリスマなき緩いつながり」などの特徴である。これらにより、部員全
員が安心してそれぞれの個性(特異な嗜好や専門性、集団の中での異質性、社会全体にとっ
ての多様性)を発揮することが出来るようになり、結果としては個人としての表現強度を高
め、集団全体での企画力や問題解決能力を増すことにつながっている。
OYOYO のような都心のアートスペースは、市民個々に潜在する能力や個性などの多様性の
社会へのフィードバック、その後の協働創作の契機として、またアートを通じた市民の創造
性の開花、街中の居場所づくり、引いては札幌のまちづくり全体にも非常に大きな可能性を
投げかけるものと考える。
23
20
都市近郊の自然歩道の利用状況と変動要因の把握
北海道大学大学院農学院
魏 子祺
北海道大学大学院農学研究院 愛甲哲也
都市近郊に位置する森林は、遠隔地の森林に比べて、人のアクセスも接触も容易な
ために、都市住民にとって特に重要な自然鑑賞や休養の場所となっている(Lee et al.,
2002)
。札幌市では比較的アクセスしやすいところに、多くの自然歩道がある。これ
らの自然歩道の適正な管理を行うには、利用状況を正確に把握する必要がある。本研
究では、赤外線カウンターによる通年の利用状況の把握と、季節や登山口の立地によ
る相違の比較、変動に関わる要因を明らかにすることを目的とした。
2012 年 10 月 23 日に三角山登山口の山の手、宮の森、大倉山と、円山登山口の八
十八ヵ所に、2012 年 11 月 29 日に動物園裏に Eco-Counter 社製の PYRO 赤外線カウ
ンターを設置し、利用者数と移動方向を記録した。2012 年 10、11 月と 2013 年 2、5
月の金、土、日曜日の各三日、調査員による実測を行った。
赤外線カウンターにより、通年での利用状況の把握が可能なことが示された。利用
者は春に最も多いが、冬でも一定の利用者がいることがわかった。利用者数は、曜日
や天候などにより変動していた。季節や登山口によりそれらの変動要因の影響は異な
り、立地条件の違いやトイレや駐車場などの有無が影響していることが考えられた。
表 1 平均利用者数(人)
平 利
数( )
円山
季節
平日
休日
秋(設置~11/18) 115.2
210.4
冬(11/19~4/12) 92.9
117.9
春(4/13~5/31) 235.3
449.6
24
三角山
平日
休日
176.8
282.4
110.8
133.0
221.3
290.6
2013 年度
日本都市計画学会北海道支部研究発表会
実行委員会
Fly UP