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深宇宙航行技術実証ミッションDESTINYの研究

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深宇宙航行技術実証ミッションDESTINYの研究
共通様式
深宇宙探査機技術の研究
ISAS事業
計画No,
研究代表者(所属)
費用(概算で
もOK)
3-­‐2-­‐1(例)
事務局記
入
川勝 康弘 (ISAS)
9,000千円
研究成果のハイライト
本研究では、自在な深宇宙探査の鍵となる電気推進式宇宙機につ
いて、より高度な探査活動の実現のため、到達範囲、適用範囲のさら
なる拡大を目指してきた。はやぶさの2倍の航行能力を持ち、惑星間
のみならず重力天体周辺での多周回軌道遷移にも適用でき、コンパ
クトなアビオニクスを搭載する高性能電気推進宇宙機と、分離・回収
可能な超小型探査機とが連携して流星群母天体である太陽系始原
天体Phaethonの先進的フライバイ探査を行う工学・理学連携ミッショ
ンDESTINY+を平成27年度公募型小型計画に提案した。
地球・月圏を離脱するDESTINY+実証機システム
と超小型探査機POCYON mini
成果の社会的意義・価値
成果創出に至る取組・克服状況
本研究の成果を、適切な打上げ手段と組み合わせれば、火星等の
重量天体域や、より遠方の小天体との往復などの、高度な探査活動
が可能になる。本研究の成果を用いれば、小型の打上手段や、静止
衛星打上相乗りによる深宇宙探査も可能になる。
前回(平成25年度)の公募型小型計画に選定されなかった
結果を受け、次(平成27年度)の提案までの2年を活かし、コ
ンパクト・アビオニクス、先端的なフライバイ探査技術の実証、
等を加え、ミッションをブラシュアップした。また、前回評価結
果を踏まえ、理学ミッション(小惑星Phaethonフライバイ)も加
え、ミッション提案に至った。
上記研究成果に関するエビデンス(査読付き論文、学会発表等)
第59回宇宙科学技術連合講演会オーガナイズドセッション、第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイ
エンスワークショップ、宇宙科学シンポジウムなどで計41件の学会発表を行った。
平成27年度戦略的開発研究(工学)報告書
研究課題名
深宇宙探査機技術の研究
研究代表者(所属)
川勝康弘(ISAS)
共同研究者(所属)
岩田隆浩、大槻真嗣、岡田達明、小川博之、坂井真一郎、冨木淳史、豊田裕之、西山和
孝、坂東信尚、福田盛介、船木一幸(ISAS)、池永敏憲、岡崎峻、佐藤峻介、住田泰史、
中村徹哉、山本高行(研開部門)、稲守孝哉、船瀬龍(東大)、荒井朋子、小林正規(千葉
工大)、他
研究協力者(所属)
活動区分
■WG □RG □衛星運用 研究活動期間
平成 24年度 から 平成 27年度(予定) 平成27年度 研究費 9,000 (千円) 平成28年度 研究費要求額
T.B.D(千円)
平成27年度
研究成果
本研究では、自在な深宇宙探査の鍵となる電気推進式宇宙機について、より高度な探査
活動の実現のため、到達範囲、適用範囲のさらなる拡大を目指してきた。はやぶさの2倍
の航行能力を持ち、惑星間のみならず重力天体周辺での多周回軌道遷移にも適用でき、
コンパクトなアビオニクスを搭載する高性能電気推進宇宙機と、分離・回収可能な超小型
探査機とが連携して流星群母天体である太陽系始原天体Phaethonの先進的フライバイ
探査を行う工学・理学連携ミッションDESTINY+を平成27年度公募型小型計画に提案した。
評価ポイント
平成25年度の発出のイプシロン級小型計画に宇宙工学委員会から候補として推薦された
のちの所内経営審査においてDESTINYは選定されなかった。その際の評価内容を踏ま
えて理学ミッション(小惑星Phaethonフライバイ)を加えるとともに、この2年を活かし、コン
パクト・アビオニクス、先端的なフライバイ技術という新たな工学実験要素を組み込む形で
ミッションをブラッシュアップして再提案した。
2
本研究の目的
本研究の背景,目的,意義など
(背景)
•  宇宙工学では「より遠くへ、より自在に」をテーマに掲げ、テクノロジーの進歩を通して、より多面的かつ高度な
科学観測や探査活動を実現することを目指している。
•  はやぶさ、はやぶさ2で実用段階に達した電気推進式宇宙機は、自在な深宇宙探査の鍵となるシステムであ
るが、より高度な探査活動のため、到達範囲、適用範囲のさらなる拡大を目指すべき段階に達している。
(目的)
•  はやぶさの2倍の比推力、2倍の推力加速度を有する、高性能電気推進式宇宙機を実現する。
•  高効率な電気推進を、惑星間航行のみならず、重力天体周辺での多周回軌道遷移にも適用するための宇宙
機システム・運用を実現する。
•  早期の飛翔・実用化のため、本研究の特徴を活かした理学観測・工学実験と組み合わせて、H27年度に公募
発出が予想される次のイプシロン級小型計画にミッションを提案する。
(意義)
•  本研究の成果を、適切な打上げ手段と組み合わせれば、火星等の重量天体域や、より遠方の小天体との往
復などの、高度な探査活動が可能になる。
•  本研究の成果を用いれば、小型の打上手段や、静止衛星打上相乗りによる深宇宙探査も可能になる。
本研究のゴール
•  本研究の成果を活かしたミッションを、H27年度に公募発出が予想される次のイプシロン級小型計画に提案し、
深宇宙航行技術実証機DESTINYとして実現することをゴールとする。
•  各要素技術については、ミッション選定・プリプロジェクト移行時に、開発に移行できる状態(ハードウェア機器
についていえば、認定モデルの開発が可能な状態)に達することをゴールとする。
3
研究計画と方法
研究計画・方法(開始年度から)
平成23年度、深宇宙探査技術実験ミッション(DESTINY)の実現を目指したWGの設立が工学委員会にて認めら
れた。平成24年度より、DESTINYミッション、システムに関わる検討は小型科学衛星専門委員会下のWGの活動
に移管され、工学委員会には、将来の深宇宙探査の鍵となる技術の研究を提案し(研究課題:深宇宙探査機技
術の研究)、DESTINYを活用した早期の飛翔実験を具体的な目標において活動を進めている。
平成24年度 (研究費:3,000千円)
高性能電気推進バス
·∙ 薄膜軽量太陽電池パネル
·∙ μ20イオンエンジン
·∙ 先端的熱制御
運用効率化
·∙ 先端的通信技術
·∙ 運用自律化・効率化
·∙ 軌道決定の高度化
より高度な深宇宙探査を、より安価・高頻度に実現するという
目標に照らし、将来の深宇宙探査の鍵となる技術として、図1
に示す3テーマ(高性能電気推進バス、運用効率化、ミッショ
ミッション・軌道設計
ン・軌道設計)、9項目を選定した。このうち、必要費用が他の
·∙ イプシロンによる高エネ軌道投入
研究費で工面できたもの、および現段階では内部検討が主で
·∙ 電気推進によるスパイラル軌道遷移
·∙ ハロー軌道遷移・維持
研究費を要さないものを除いた3項目(薄膜軽量太陽電池パ
ネル、μ20イオンエンジン、運用自律化・効率化)について、以
図1 将来の深宇宙探査の鍵となる技術
下の研究計画を立案・申請し、3,000千円が配算された。
(1) 耐放射線性強化型スペースソーラシートの耐環境性評価
深宇宙用途用に耐放射線性を強化したスペースソーラシート(薄膜太陽電池)の仕様・設計が完了したので、供試体
を製造し、耐環境性を評価する。
(2) μ20耐久試験用大電流中和器の製作、および専用耐久試験装置構築
μ20 用中和器について、内壁面素材の評価・選定が完了したので、速やかに耐久試験を開始できるよう、供試体を
製作し専用試験装置を構築する。
(3) EOS(Encapusulated Operation Script)要求性能評価用ダミーOBC 整備
搭載ソフトウェアによる新概念の自律化フレームワーク(EOS)の概念が固まったので、搭載計算機に対する仕様策定
のため、要求性能評価用ダミーOBC を整備する。
4
研究計画と方法
研究計画・方法(つづき)
平成25年度 (研究費:17,930千円)
将来の深宇宙探査の鍵となる技術として選定した3テーマ、9項目のうち、必要費用を他の研究費として申請し
ているもの、および現段階では内部検討が主で研究費を要さないものを除く5項目について以下の研究計画を
立て、共通経費とあわせて研究費を申請し、17,930千円が配算された。
1.薄膜軽量太陽電池パドル
薄膜軽量太陽電池パドルの機構・構造に関する以下の項目について設計・試作・試験を実施する.
(a) 基本展開・曲面パネル用軽量ヒンジの設計・試作
(b) 保持解放機構、展開同期機構の設計・試作
(c) 追加パネル・ヒンジ製造
(d) 展開試験 2.大型イオンエンジンμ20
条件の異なる2系統の中和器耐久試験(年間5,000時間以上を目標)を実施する。燃料用Xeガスを購入し、2式目の中和器
供試体・制御系・試験治具を整備する。機器・サブシステムの設計境界条件を具体化するため、μ20イオンエンジン系の搭
載性検討を実施する。
3.運用スクリプトEOSによる宇宙機運用の自律化
搭載計算機のBBMを試作し、EOSを動作可能とするために必要なDESTINY用搭載計算機の定量的性能を明らかにする。
4.イプシロンロケットによる高エネルギ軌道投入
多目的進化計算による最適化手法を用いて、実用上の諸制約すべてを考慮したイプシロンロケットによる高エネルギ軌道
への打上軌道を設計・最適化する。
5.電気推進によるスパイラル軌道遷移
宇宙機システム設計上の制約を考慮し、軌道制御方法の自由度も高めたモデルを用いて、電気推進によるスパイラル軌道
の設計方法を確立する。多変数・多制約・多目的の設計問題であるため、多目的進化計算による最適化手法を用いる。
平成26年度 (研究費:32,000千円)
将来の深宇宙探査の鍵となる技術のうち、DESTINYのプリプロジェクト化前に着手することにより技術開発リ
スクを低減できる6項目、およびDESTINY全体の技術・プログラムリスクを低減するシステム検討について、以
下の研究計画を立て、共通経費とあわせて32,000千円を要望し、要望額が配算された。
5
研究計画と方法
研究計画・方法(つづき)
平成26年度(づづき)
1.薄膜軽量太陽電池パドル(7,000千円)
薄膜軽量太陽電池パドルに関する以下の項目について設計・試作準備を実施する。
(a) 実機相当パネル拡張性・搭載性の検討
(b) 収納性を考慮した実機相当パネルの製造設計
(c) 保持解放部小型化検討
2.大型イオンエンジンμ20(5,000千円)
クリティカル聞き(ITA、IPM、IPPU)の概念検討・開発計画詳細化を進め、EM開発の準備をする。昨年度までに制作した機
器・部品を統合したスラスタ動作試験を実施する。また、中和器単体の評価試験を継続する。
3.先端的熱制御(5,500千円)
LHP用ラジエタとして比較評価のため2方式を製作し、試験をおこなう。また、これら先端的熱制御デバイスを活用した推進モ
ジュールのシステム熱設計を実施する。
4.電気推進によるスパイラル軌道遷移(1,000千円)
システム設計上の制約を考慮し、軌道制御方法の自由度も高めたモデルを用いて、スパイラル軌道の設計方法を検討・評
価する。多目的進化計算による最適化手法を用いるため、実行管理と計算結果のデータ整理の支援費用を申請する。
5.ラグランジュ点ハロー軌道への遷移と維持(1,000千円)
ハロー遷移軌道に関して、詳細な天体歴を用いた設計・解析、および、月スイングバイフェーズとのI/F検討をおこなう。
6.運用スクリプトEOSによる宇宙機運用の自律化(3,000千円)
搭載計算機へのEOSの実装可能性・方法(ファイルシステムを準備可能かどうか、等)を検討する。
7.DESTINYシステム検討(8,000千円)
DESTINY推進モジュールに関わるI/F仕様をまとめ、推進モジュールのシステム設計を実施する。また、理学観測機器等か
らなるミッションモジュールの搭載性を検討する。
この他に共通経費(旅費等)(1,500千円)をあわせて申請している。
6
研究計画と方法
研究計画・方法(つづき)
平成27年度 (研究費:9,000千円)
H27年度に公募発出が予想される次のイプシロン級小型計画へのミッション提案を目指し、技術的・プログラ
ム的成立性を高めるためのシステム検討、およびミッション達成の鍵となる4つの重要技術について、研究計
画を立て、共通経費とあわせて研究費を申請した。要望額の一部の9,000千円が配算されたため、特に優先
度の高い項目に絞り込んだ計画に変更したものを以下に示す。(実施を見送った内容を取り消し線で表示)
1.DESTINYシステム検討(2,000千円)
H27年度に公募発出が予想される次のイプシロン級小型計画へのミッション提案に向けて、システム検討を実施し、ミッション
の技術的・プログラム的成立性を高める。なお、次回提案では小型科学衛星標準バスの使用を前提としないので、プリプロ
ジェクト移行後にRFPを実施することを考えて、衛星システムメーカ32社(NEC、Melco、MHI)に検討を委託する。
2.薄膜軽量太陽電池パドル(0千円)
次回提案では、推進系も取り込んだ一体型のバス・システムを構成する方針であり、それを反映した最適なパドル構成を検
討する。また、その結果を反映したEMパドル(パネル2~4枚、ヨーク、ヒンジ、保持解放機構、展開機構)を製造する。
3.イオンエンジン(5,000千円)
イオンスラスタμ10HIspをDESTINYに適用する場合のイオンエンジンサブシステムの仕様・構成・開発計画を検討する。また、
新規の重要開発部分である高圧直流電源(IPPU)について、高圧部の概念検討、高排熱設計のための検討を実施する。ま
た、中和器用セミリジッド同軸ケーブルの耐熱性、信頼性向上のためSiO2ケーブルの試作・試験を実施する。
4.先端的熱制御(0千円)
先端的熱制御デバイスを活用したDESTINYのシステム熱設計を実施する(システムメーカ32社に委託)。また、実機相当の
ヒートスイッチのBBMを用いた設計・検討をデバイスメーカに依頼し、今後の方針・仕様決定のための基礎情報を取得する。
5.軌道計画(500千円)
月スイングバイフェーズや、ハロー遷移フェーズ等の複雑な力学系下での低推力軌道の最適化に用いることができる、汎用
性の高い軌道最適化ツールを整備する。また、DESTINYの軌道・運用計画システムの開発・整備計画を検討する。システム
検討の一環としてインハウスで軌道計画を検討・立案する(計画見直し後追記) 。
この他に共通経費(旅費等)(1,500千円)を見込む。
7
平成27年度研究成果の概要
研究成果
1.システム検討: 新たなミッションプロファイルに沿った実証機システムの設計・解析を行い成立解を得た。
2.薄膜太陽電池搭載軽量パドル: クーポンパネルの製造・試験と実機相当モデルのEM製造・試験を完了した。
3.イオンエンジン: サブシステムの概念検討・トレードオフの結果、比推力3000秒のコスト最小構成を選定した。
4.先端的熱制御: 可逆展開ラジエター、Loop Heat Pipe(LHP)を採用するシステム熱設計を実施した。
5.軌道計画: 地球脱出軌道を探査機質量可変で最適化、ノミナル質量時小惑星遷移-地球再会合軌道を設計。
6.PROCYON mini: 新たな構想として、フライバイ探査用子機である超小型探査機の概念検討を実施した。
7.小惑星Phaethon探査:流星群母天体である太陽系始原天体の地質・放出ダストの物理・化学特性を調べる
理学ミッションの定義と複数のサイエンス機器(母船側搭載品、子機側搭載品)の検討を行った。
目標の達成状況
H27年度に公募発出が予想される次のイプシロン級小型計画へのミッション提案を目指し、技術的・プログラム
的成立性を高めるためのシステム検討を実施した。想定していたとおり、昨年末に公募が発出されたため、本
研究のこれまでの成果に、新たな要素(コンパクト・アビオニクス、先端的なフライバイ探査技術、理学ミッション
(小惑星Phaethonフライバイ))を合わせた形にミッションをブラッシュアップし、提案に至った。すなわち、目標を
達成したと考える。
来年度以降の研究方針
平成27年度公募型小型計画宇宙科学ミッションとして工学委員会からの推薦が得られれば、ISASによる最終
選定に向けた活動の中で、プリプロジェクト化前に着手することによる技術開発リスク低減を目指したフロント
ローディング活動を実施する。プリプロジェクト以降前のフェーズA1 においては、ミッションの技術的実現性
(フィージビリティ)の確保に重点をおいて活動することとする。
8
平成27年度研究費内訳
項目
1.DESTINYシステム検討
(a) DESTINYの概念検討(バス・推進・ミッションモジュール一体化方式)
(b) DESTINYの概念検討(バス・推進・ミッションモジュール一体化方式)
2.イオンエンジン
(a) イオンエンジンサブシステム概念検討(比推力7千秒/3千秒比較、熱設計) 3.軌道計画
(a) 軌道計画検討立案(スパイラル上昇軌道、惑星間軌道)
4.共通経費
(a) 旅費、他雑費
研究資金(千円)
997 NEC契約
997 MHI契約
4,990
275
1,210
合計
8,469
備考
NEC契約
解析用計算機、他
H28.1.31時点
9
平成27年度研究業績(研究発表,特許,表彰など)
DESTINYシステム検討
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
川勝康弘, DESTINYWG, "深宇宙探査技術実証機DESTINY", 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G01, 2015.
豊田裕之, 川勝康弘, 佐藤峻介, 岡崎峻, 西山和孝, "DESTINYシステム設計", 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G02, 2015.
川勝康弘, "DESTINY+の全体計画", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
川勝康弘, DESTINY WG, “深宇宙探査技術実証機DESTINY+”, 第16回宇宙科学シンポジウム, S5-005, 2016.
豊田裕之, 川勝康弘, 佐藤峻介, 西山和孝, 岡崎峻, 山本高行, 小倉聡司, Bruno Sarli, 伊藤大智, “DESTINY+システム設計”, 第16回宇宙科学シンポジウム,
P-128, 2016.
薄膜軽量太陽電池パネル、イオンエンジン、先端的熱制御
1. 
2. 
3. 
4. 
西山和孝, 細田聡史, 月崎竜童, 國中均, “高比推力イオンエンジンμ10HIspのDESTINYへの適用検討”, 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G04, 2015.
中村徹哉, 柴田優一, 住田泰史, 今泉充, 豊田裕之, 川勝康弘, “DESTINY用薄膜軽量太陽電池パドルの開発”, 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G05, 2015.
岡崎峻, 長野方星, 永井大樹, 小川博之, 川勝康弘, “先進熱制御デバイスを用いたDESTINY熱設計”, 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G06, 2015.
西山和孝, 中村 徹哉, 岡崎峻, 川端洋輔, Chit Hong YAM, “高性能深宇宙航行機DESTINY+を実現する重要技術”, 第16回宇宙科学シンポジウム, P-131, 2016.
軌道計画
1.  山本高行, 川勝康弘, Chit Hong Yam, Campagnola Stefano, 杉本理英, 大山聖, 渡辺毅, 廣瀬史子, 池永敏憲, 立川智章, 萩原和子, 小倉聡司, 中宮賢樹,
“DESTINY軌道計画”, 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G03, 2015.
2.  佐藤峻介, 山本高行, 川勝康弘, 大山聖, 萩原和子, 立川智章, “イプシロンロケットによる高エネルギ軌道への投入”, 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G07,
2015.
3.  池永敏憲, 歌島昌由, 石井信明, 川勝康弘, 吉川真, 船木一幸, 岩田隆浩, “惑星間待機法を用いた深宇宙探査機の同時打上軌道設計について”, 第59回宇宙科
学技術連合講演会, 2G08, 2015.
4.  Bruno V. Sarli, Chit Hong Yam, Yasuhiro Kawakatsu, “Low-Thrust Trajectory Design for the DESTINY Mission to 3200 Phaethon”, 26th AAS/AIAA Space Flight
Mechanics Meeting, 2016.
PROCYON mini
1.  船瀬龍, 稲守孝哉, 福島洋介, “DESTINYにおける子機を用いた超高速小惑星フライバイ観測技術の実証”, 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G11, 2015.
2.  船瀬龍, “PROCYON-miniによるPhaethon近接フライバイ”, 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
3.  小林正規, “Procyon-mini搭載候補ダストカウンター”, 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
4.  船瀬龍, “Procyon-mini搭載候補カメラ”, 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
5.  船瀬龍ほか, “DESTINY+ミッションにおける小惑星Phaethonの近接フライバイ観測のための超小型探査機PROCYON-miniの検討”, 第16回宇宙科学シンポジウ
ム, P-130, 2016.
10
平成27年度研究業績(研究発表,特許,表彰など)(つづき)
小惑星Phaethon探査
1.  岩田隆浩, 川勝康弘, 村上豪, 江副祐一郎, 亀田真吾, 桂華邦裕, 荒井朋子, 松浦周二, 佐伯孝尚, 今村剛, 小郷原一智,大山聖, "DESTINYで目指す深宇宙探査
の科学", 第59回宇宙科学技術連合講演会, 2G09, 2015.
2.  荒井朋子, 小林正規, 春日敏測, 大塚勝仁, 中村智樹, 渡部潤一, 伊藤孝士, 川勝康弘, SarliBruno, 亀田真吾, 千秋博紀, 山田学, 中村メッセンジャー圭子, 木村
宏, 浦川聖太郎, 阿部新助, 小松睦美, 三河内岳, SramaRalph, KrugerHarald, "DESTINYによる小惑星Phaethonフライバイ探査計画", 第59回宇宙科学技術連合
講演会, 2G10, 2015.
3.  岩田隆浩, "DESTINYで目指す深宇宙探査の科学", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
4.  荒井朋子, "DESTINY+のミッション定義案", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
5.  木村宏, "DESTINY+のダスト科学における意義", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
6.  薮田ひかる, "ダストアナライザーで解明するB型小惑星の有機宇宙化学", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワーク
ショップ, 2015.
7.  小松睦美, "始原的隕石の水質変成", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
8.  中藤亜衣子, "始原的隕石の加熱・脱水", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
9.  和田浩二, "小天体への衝突実験の科学的意義", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
10.  Ralph Srama, "DESTINY+搭載候補機器Dust analyzer", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
11.  Dave Jewitt, "Phaethonの地上及び衛星観測", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
12.  春日敏測, "ふたご座流星群、流星群母天体の地上観測", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
13.  佐藤幹哉, "ふたご座流星群ーPhaethonダストトレイル軌道予測", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ,
2015.
14.  阿部新助, "ふたご座流星群の地上観測、太陽系小天体の軌道進化", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショッ
プ, 2015.
15.  石黒正晃, "彗星、枯渇彗星のダストトレイル観測", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
16.  橘省吾, "ダスト科学からDESTINY+への期待", 第8回CPS月惑星探査研究会 深宇宙探査技術実証機DESTINY+サイエンスワークショップ, 2015.
17.  荒井朋子ほか, “DESTINY+ミッションが目指す小惑星Phaethonの科学的意義”, 第16回宇宙科学シンポジウム, P-129, 2016.
18.  岩田隆浩, 川勝康弘, 村上 豪, 江副祐一郎, 亀田真吾, 桂華邦裕, 荒井朋子, 松浦周二, 佐伯孝尚, 今村 剛, 小郷原一智, “深宇宙探査技術実験機 DESTINY による太陽系探査 の検討”,日本地球惑星科学連合2015年大会, 2015.
19.  T. Iwata, Y. Kawakatsu, G. Murakami, Y. Ezoe, S. Kameda, K. Keika, and T. Arai, “Studies on Solar System Explorations using DESTINY”, 30th International
Symposium on Space Technology and Science (ISTS), 2015.
20.  T. Iwata, Y. Kawakatsu, G. Murakami, Y. Ezoe, S. Kameda, K. Keika, T. Arai, S. Matsuura, T. Imamura, K. Ogohara; A. Oyama, and T. Ikenaga, “Solar System
Explorations using DESTINY”, AOGS 12th Annual Meeting (AOGS2015) , 2015.
21.  荒井朋子、小林正規 、春日敏測 、川勝康弘 、岩田隆浩、小惑星 Phaethon探査検討チーム、DESTINYワーキングループ、 "DESTINYによる小惑星Phaethon及
び関連小天体のマルチフライバイ探査計画" 、第48回月・惑星シンポジウム, 2015.
22.  川勝康弘, 荒井朋子, 豊田裕之, 西山和孝, 船木一幸, 岩田隆浩, 船瀬龍, “深宇宙探査技術実証機 DESTINY+”, 日本惑星科学会2015年度秋季講演会,2015. 11
23.  荒井朋子ほか、深宇宙探査技術実証機 DESTINY+による小惑星Phaethonフライバイ探査計画, 第8回スペースガード研究会, 2015
非公開希望の有無
平成27年度研究成果の詳細
1.システム検討
昨年度は分割していたバスモジュールと推進モジュールを一体化し、
探査機システムの再検討を行った。検討結果の一例を示す。
ミッション期間
4年以上
質量(WET)
440 kg
打ち上げロケット
イプシロン+4段キックステージ
軌道
初期投入(230km×52708km, 30.44°)~月高度(38万km) ~小天体Phaethon遷移軌道
姿勢制御方式
3軸制御(誤差 < 1 arc-­‐min.)
通信系
X帯(GaN SSPA)
太陽電池パネル
薄膜軽量SAP(出力/質量比 > 100W/kg(世界最高))
発生電力2.3kW@EOL
推進系
化学推進(ヒドラジン 1液)+電気推進(μ10×4台)
熱制御系
先端的熱制御
(展開型ラジエタ, ループヒートパイプ)
薄膜軽量SAP
700
1650
探査機外観
2.コンパクト・アビオ
展開
探査機構体拡大
アビオニクス(データ処理、通信、姿勢軌道制御系機器)の合計質量を、従来の深宇宙探査機の半分以下に。
機器の小型化、集約化
•  高集積デバイス、高密度実装技術で
大幅減
1スライスをクレジットカードサイズ
(1U, 90×60×10mm)に小型化。 •  統合SMU:10.46 kg → 1.04 kg •  統合AOCU:16.08 kg → 6.10 kg アビオニクス質量比較
他に、MEMSジャイロ, 国産タイプS RW, GaN XSSPA, 42Ah Li-­‐ion電池により軽量化。 統合SMU
統合AOCU
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非公開希望の有無
平成27年度研究成果の詳細
有
2.薄膜太陽電池搭載軽量パドル
薄膜太陽電池搭載軽量パドルに関する以下の項目について検討を行った。
(a) クーポンパネルの製造・試験
新規開発をした薄膜3接合太陽電池をCFRPバックシートおよびカバーガラスでラミ
ネートした構造のガラスタイプのスペースソーラーシート(G-SSS,図1)を,湾曲した状
態にて曲面フレームに搭載したクーポンパネルを製造し,熱真空耐性および熱衝撃耐
性を確認した。
図1:ガラスタイプスペースソーラーシート
(b) 実機相当モデルのEM製造・試験
TRL5(技術要素としての実証モデルが,実際の使用環境に近い条件の者で試験さ
れている)の開発実績を実現するため,実機相当モデルの薄膜太陽電池搭載軽量パ
ドルの製造および表1に示すEM試験を実施した。パネルは平成26年度に検討した実
装効率向上の結果などを反映し,実機相当モデルはパネル8枚構成となっている。図
2は実機相当モデルを用いた音響試験時のコンフィグレーションを示している。
DESTINY+のパネルは、本パネルの1/2エリアにあたる。設計を共通化し、製造性に
ついても問題は無い。
図2:薄膜軽量太陽電池搭載軽量パドル 音響試験 表1:試験概要
試験概要
音
響
試
験
EM
EFM
PFM
G-­‐SSSを曲面状態にて搭載したサンプルを用いた試
験を実施する.
実機相当のパネルを製造する.実機相当ヒンジ,実
機相当保持部を製作し,保持解放・展開動作の解
析予測精度を確認する.
さらにリファービッシュすることによりEFMとする.
エンジニアリングフライトモデル
フライトモデル
電
気
性
能
試
験
○
○
○
○
○
○
○
○
○
クーポンパネル
展
開
衝
撃
試
験
正
弦
波
振
動
試
験
展
開
試
験
熱
真
空
熱
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平成27年度研究成果の詳細
3.イオンエンジン
非公開希望の有無
表3-1 DESTINY電気推進系の構成比較 DESTINY+の電気推進系は440 kgの小型宇宙機に最大推力40
mNで5 km/sの増速能力を持たせることを要求仕様としている。
宇宙科学研究所では「はやぶさ」に始まるマイクロ波放電型イオ
ンエンジンμ(ミュー)シリーズの研究開発を行ってきており、スラ
スタ単体の推力や比推力について表3-1に示すような複数の構
成案(ブロック図3-1~3)を検討した。高比推力のμ10HIsp×2台
構成を詳細に検討したが、高電圧直流電源の質量や開発コスト
に不確実性が大きいことが分かった。そこで、「はやぶさ2」での
実績ある機器を中心に構成を簡略化したμ10×4台構成を追加
で検討し、探査機システムの成立性の目途を得た。ΔV=5 km/s
の前提では電気推進に関わる総質量は各案で拮抗しており、冗
長性・開発コスト・スケジュール・リスクなどとのトレードオフ関係
にある。小型計画の公募に向けては質量は最大だが、コスト最
小のμ10×4台構成をノミナルとすることにした。 図3-1 μ10×4台構成(ノミナル案) 図3-2 μ10HIsp×2台構成(案2) 図3-3 μ20×1台構成(案3) 14
平成27年度研究成果の詳細
非公開希望の有無
4.先端的熱制御
(a) システム熱設計
可逆展開ラジエター、Loop Heat Pipe(LHP)を熱制御シ
ステムに適用するデバイスとして選定し、DESTINYのシ
ステム熱設計を実施した。また、イオンエンジンの発熱
量・熱環境条件に応じた熱設計検討を実施している。
本検討は、メーカとJAXAインハウスで並行して検討を
進めている。『システムメーカ(製造側)の観点からの設
計』と『JAXAと大学の共同研究で蓄積してきた先進的
熱制御デバイスの知見』を融合させることで、有用な先
進的熱制御技術の特性を最大限に生かした熱制御シ
ステムの検討が可能である。これら検討によって、機器
の許容温度を満たし、ヒータ電力を削減する設計が可
能である事を確認している。発熱量の大きな機器には
可逆展開ラジエターを適用することで、低温条件におい
て保温に必要なヒータ電力を削減する。イオンエンジン
はジンバル機構による駆動を行うため、リジッドな管で
構成されるヒートパイプなどの熱制御デバイスの適用
は困難である。そこで,環境や機器発熱など放熱量増
加に対して、Loop Heat Pipeによる他面(搭載面以外
の放熱面)への熱輸送によって機器許容温度を満たす
設計が可能である。
さらに、熱制御デバイス搭載に必要なインターフェース
情報の整理、デバイスメーカとの情報共有などを進め
ることができた。これら検討はDESTINYのみならず他の
科学衛星や宇宙機の設計に幅広く応用可能な貴重な
知見である。
展開
収納
図3-1イオンエンジン熱設計案
(左:Z面放熱 右:LHPによる熱輸送)
図3-2 展開ラジエター熱
数学モデル
図3-3 DESTINY簡易熱数学モデル
図3-4 展開ラジエター適用によるヒータ電力削減量
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平成27年度研究成果の詳細
非公開希望の有無
5.軌道計画
本年度は、DESTINY+の質量の違いによる軌道計画,システム解析への感度を求めるという
目的で,遺伝的アルゴリズムを利用した多目的最適化によるイプシロンロケットによる高エネ
ルギ軌道投入およびスパイラル高度上昇フェーズの軌道最適化を複数ケース実施した。また
地球脱出後,小惑星Phaethonをフライバイする遷移軌道,さらに地球に再会合して地球スイ
ングバイする軌道の検討を行った.右図は地球-Phaethon-地球遷移軌道の軌道計画例を
図示したものである。DESTINY+質量を440kgとしてノミナル軌道を選定すると,軌道投入から
Phaethonフライバイを経て地球再会合までに電気推進により必要となる総ΔVは約4,300 m/s,
推薬量に換算すると約59.6 kg との結果を得た.
6.PROCYON mini
本年度から新たにDESTINYミッションに加わった,小惑星Phaethon近接フライバ
イ観測のための超小型宇宙機PROCYON miniについて,概念検討を実施し
た.PROCYON miniは,独自の光学航法用望遠鏡を利用した小惑星に対する相対軌
道決定を実施し,更に独自の推進機を用いてPhaethonに対して最接近高度
50~100kmを約25km/sでフライバイする軌道に誘導し,Phaethonを高分解能で観
測する.分離機構含めて20kg以内という制約の中で,光学航法機能,軌道制御機
能,地球及び母船との通信機能を有する超小型機を6U (10x20x30cm), 10kg程度
のリソースで実現できる見込みを得た.
7.小惑星Phaethon探査
図5-1 Phaethonフライバイ軌道例
図6-1 PROCYON mini外観図(SAP展開状態)
今年度のDESTINY+ミッションでの理学ミッションが流星群母天体のフライバイ計画に絞られ
たことを受け、科学的意義や技術的実現性の観点で、複数の流星群母天体を検討し、小惑星
(3200)Phaethonを最優先探査標的とした。2015年11月24日ー25日に神戸大CPSにて、
DESTINY+探査計画のサイエンスワークショップを開催し、流星科学、隕石分析、地上望遠鏡
による彗星・小惑星観測、ダスト科学の惑星科学の幅広い研究分野の研究者と本探査に関
わる工学研究者で本ミッションの科学的意義について議論を行った。DESTINY+及び超小型
宇宙機PROCYON miniそれぞれに可視近赤外の多バンドカメラおよびダストアナライザを搭
載し、Phaethonから異なる距離からのフライバイにより、天体表層の地質観測および周辺ダ
ストの物理化学特性のその場観測を行う。また、Phaethonへの航行中にPhaethon軌道のダ
ストストリーム中でのダストのその場観測や1AUまで到達する星間ダストの観測も行う。
(概念図)
(BBM)
図7-1 ダスト分析器の概念図とBBM
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