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2004年11月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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2004年11月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第 3 巻 第 1 2 号( 通 巻 3 8 0 号 )
2004.11
特集
リレーションシップバンキング機能の
発揮に向けて
■
リレーションシップバンキング論
−理論的背景と日本の最近の動向−
■ 市町村の社会・経済構造からみた都道府県の地域特性
−各市町村が担う機能・役割の特性から地域社会・経済を分析−
■ リレーションシップバンキング対応強化の「ガイド」としての中小企業白書
−地域金融機関はその利用価値を再認識すべき−
■ リレーションシップバンキングの機能強化と今後の信用金庫の経営課題
● 原油を中心とした商品市況高騰の背景と今後の展望
−地政学的リスクが薄れれば、原油相場は安定へ向かう可能性が大きい−
● 第117回全国中小企業景気動向調査
7∼9月期業況も改善基調を維持
特別調査−地域金融機関等に期待すること
● 上海駐在員事務所を開設
●『産業クラスターと地域活性化』を刊行
● 統計
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」「中小企業金融」「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご参
照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学商学部教授(信金中金総合研究所長)
委 員
筒井義郎
大阪大学社会経済研究所教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:落合、稲葉)
Tel : 03(3563)7541 / Fax : 03
(3563)7551
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
巻 頭 言
2004年11月号 目次
特集 リレーションシップバンキング機能の発揮に向けて
特集にあたって
信金中央金庫総合研究所 所長
藤野次雄
2
成城大学 経済学部教授
村本 孜
3
峯岸直輝
28
平野雅史
55
間下 聡
77
黒岩達也
96
総合研究所
110
総合企画部
124
総合研究所
125
特 集
リレーションシップバンキング論
−理論的背景と日本の最近の動向−
市町村の社会・経済構造からみた都道府県の地域特性
−各市町村が担う機能・役割の特性から地域社会・経済を分析−
リレーションシップバンキング対応強化の「ガイド」としての中小企業白書
−地域金融機関はその利用価値を再認識すべき−
リレーションシップバンキングの機能強化と今後の信用金庫の経営課題
調 査
原油を中心とした商品市況高騰の背景と今後の展望
−地政学的リスクが薄れれば、原油相場は安定へ向かう可能性が大きい−
第117回全国中小企業景気動向調査
7∼9月期業況も改善基調を維持
特別調査−地域金融機関等に期待すること
信金中金だより
上海駐在員事務所を開設
『産業クラスターと地域活性化』を刊行
信金中央金庫総合研究所活動状況(9月)
126
統 計
信用金庫統計、金融機関業態別統計
127
2004
11
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
特集にあたって
信金中央金庫総合研究所 所長
藤野 次雄
(横浜市立大学商学部教授)
2002年10月に、主要行向けに『金融再生プログラム』が公表され、2003年3月には、中小・地
域金融機関について金融審議会金融分科会第二部会報告書『リレーションシップバンキングの機
能強化に向けて』が公表された。主要行には日本経済再生の視点から「不良債権処理」が強く求
められ、2年間に半減するように要請された。他方、信用金庫をはじめとする地域金融機関につ
いては、それだけでなく、地域経済・中小企業に配慮して、「地域経済の活性化」という視点が
導入され、「地域貢献」が監督行政上も求められた。
その後、上記報告の提言を踏まえ、金融庁において、『リレーションシップバンキングの機能
強化に関するアクションプログラム』が取りまとめられ、各金融機関は、平成15∼16年度の2年
間を「集中改善期間」として、中小企業の再生と地域経済の活性化に向けた取組みを進め、機能
強化計画を半期ごとに作成してきたが、2005年3月末で終了する予定である。
本特集では、
「リレーションシップバンキング論」
(村本孜成城大学教授)で、地域金融機関の
ビジネスモデルとして位置づけられた「リレーションシップバンキング」という従来なじみの薄
かった概念の論理的背景と日本の最近の動向について考察した。
次に、
「市町村の社会・経済構造からみた都道府県の地域特性」
(峯岸直輝研究員)で、中小・
地域金融機関が地域経済の活性化、地域貢献の対象とすべき地域について、市町村、都道府県の
両レベルで特性把握のための類型化を行った。
さらに、
「リレーションシップバンキング対応強化の『ガイド』としての中小企業白書」
(平野
雅史主任研究員)では、地域金融機関の主たる取引相手である中小企業について、中小企業白書
は、リレーションシップバンキングに係る対応を強化する上での「ガイド」になり得るものであ
ることを、現実の編集者との面談も入れて検討した。
「リレーションシップバンキングの機能強化と今後の信用金庫の経営課題」(間下聡主任研究
員)では、機能強化計画に取り組む信用金庫にとり、優先して強化されるべき課題を再確認し、
機能強化計画の進捗状況から、今後の課題を評価するとともに、規制変更により生じる新たな経
営課題をも整理している。
最後に、
「第117回全国中小企業景気動向調査」でも「地域金融機関等に期待すること」という特
別調査を実施し、本月報は、地域金融機関が「リレーションシップバンキング」機能を十分に発
揮するための一助として、当研究所における最近の研究成果を特集として公表することとした。
2
信金中金月報 2004.11
リレーションシップバンキング論
−理論的背景と日本の最近の動向−
成城大学 経済学部教授
村本 孜
(キーワード)リレーションシップバンキングの意義とコスト、ソフトバジェット問題とホールドア
ップ問題、アクションプログラムの取組みと成果、コミットメント・コスト、非効率性
(要 旨)
金融審議会の『リレーションシップバンキングの機能強化に向けて』(2003年3月)報告は、
地域金融機関とくに信用金庫にとって2つの意義を持っている。1つは、信用金庫にとって典型
的な金融手法である、人縁・地縁といわれるような長期継続的な取引関係によって構築される
間柄を重視する融資の手法について、その重要性を確認したことである。もう1つは、そのよ
うな金融手法の担い手として、地域金融機関の存在意義を確認したこと、とりわけ協同組織金
融機関の存在意義すなわち信用金庫の存在意義を政府の公式な文書で確認したという制度論的
な意義である。
本稿は、このリレーションシップバンキングについて、筆者が金融審議会で行った報告を基
に、最近の理論展開を整理し、その有効性と課題を論ずることが第1の目的である。次に、金
融審議会報告以後、アクションプログラムが策定されたが、実際に地域金融機関の取り組んだ
状況を金融庁の発表を要約することにより、集中改善期間の前半期における状況を見て、一定
の方向性と成果が見られることを示す。さらに、リレーションシップバンキングの課題として
のコミットメント・コストの問題を取り上げ、最近実証レベルで精緻に行われるようなった非
効率性の議論との関係を整理した。非効率性の存在が、地域における不採算取引に取り組む信
用金庫の姿勢を評価できるからである。
特 集
3
究が行われ、中小企業金融研究のうえでのキ
1.はじめに
ーワードになっているので、まずその先行研
リレーションシップバンキングという用語
究を展望する。その上で、金融審議会報告の
は、2003年3月27日に発表された金融審議会の
概要を紹介し、その後のリレーションシップ
『リレーションシップバンキングの機能強化に
バンキングのアクションプログラムの結果を
向けて』報告によって定着したが、従来、メ
みるが、あくまで2年間の集中改善期間の初年
インバンク制といわれた議論もほぼ同じ内容
度である点には注意を要する。さらに、コミ
であるといえよう(この点について、堀内
ットメントコストの問題と金融機関の非効率
[2004]は、メインバンク関係はリレーション
性の分析についての関連を考察する。
シップバンキングの一形態ではあるが、理念
型としてのリレーションシップバンキングは、
「メインバンク関係などよりももっと幅広く見
られる、より普遍的なものとして理解される
べきである」としている)
。
2.リレーションシップバンキングの
先行研究
(1)リレーションシップバンキング研究
リレーションシップバンキングとは、長期
最近のリレーションシップバンキングの認
的継続関係に基づく貸出ないし借り手との密
識は、2002年10月の「金融再生プログラム」に
接な関係に基づく貸出のことで、中小企業金
おける、メガバンクには不良債権処理を2年間
融がその典型であるが、この分野については情
で求める一方、地域金融機関についてはその
報理論に依拠した研究の系譜がある(Leland
特性に配慮して対応することとし、その際リ
and Pyle[1977]、Diamond[1984、1991]、
レーションシップバンキングをその特性とし
Ramakrishnan and Thakor[1984]、Boyd and
て理解することにあるといえよう。金融庁は、
Prescott[1986]など)。1980年代後半以降、
最近、リレーションシップバンキングを「間
銀行と借り手のリレーションシップの長さと
柄重視の地域密着型金融」(略して、「間柄金
貸出の価格(金利、担保など)の関係が議論
融」)と呼んでいる。
されるようになり、企業規模に関わりなくリ
リレーションシップバンキングは、本来ソ
レーションシップの問題が議論されている。
フト情報を活用するという点で中小企業に対
Petersen and Rajan[1993]は、逆選択やモ
する貸出手法でもあり、従来の用語でいえば
ラル・ハザードを手がかりに、借り手のこと
中小企業向け金融ということになる。そこで、
がわからない段階では貸出金利の設定は高い
本稿では、リレーションシップバンキングの
が、借り手情報が蓄積された段階には貸出金
考え方を整理することとし、まずリレーショ
利は低下することを示した。Boot and Thakor
ンシップバンキングについて、1980年代後半
[1994]は、銀行と借り手のリレーションシッ
から欧米諸国、とくにアメリカでは膨大な研
プのデュレーションが貸出価格の決定におい
4
信金中金月報 2004.11
て重要であること、担保徴求がリレーション
関借入(間接金融)と資本市場調達の手法が
シップの長さに依拠すること、すなわち借り
一般的であり、その中間形態として借入(貸
手はリレーションシップの初期には高い金利
出)を担保とする証券化手法が市場型間接金
支払いと担保徴求を迫られるが、リレーショ
融として発展している。資金調達行動として
ンシップの確立後は金利が低下し担保が徴求
みると、大企業は資本市場からの資金調達手
されないことを示した。ただし、Petersen and
段を活用できるのに対し、中小企業は金融仲
Rajan[1995]は、銀行と借り手のリレーショ
介機関からの資金調達(借入)に依存する比
ンシップが相互の利益のための私的情報を作
重の高いことが認識されている。
り出すプロセスで、貸し手の情報独占を通じ
これを情報の非対称性の問題としてとらえ
てレント(収益)を発生させるが、資本市場
ると、大企業に比して中小企業金融のほうが情
からの競争圧力の高まりが、レントの減少を
報の非対称性の度合いの強い分野
(information
通じて、銀行が貸出を行うインセンティブを
opaque)であり、金融仲介機関による情報生
低下させ、企業の資金調達行動が借入から資
産機能が重要となる分野として認識される。金
本市場へシフトさせることを示している。
融仲介機関、とくに銀行の融資のある部分は、
これに対して、貸し手はリレーションシッ
長期的継続関係ないし借り手との密接な関係
プの初期段階ではむしろ借り手を支援する条
すなわちリレーションシップを重要視してい
件で融資し(ある種の補助金の提供)
、後にこ
ることに特色があるが、この点は資本市場で
の支援分を回収するという行動をとるといっ
の資金調達では重要視されない。金融仲介機
た議論もある(Greenbaum, et al.[1989]、
関は、情報生産、情報分析、金利・担保など
Sharpe[1990]
、Wilson[1993]
)。
融資条件の設定などによって、中小企業金融
Berger and Udell[1995]では、中小企業につ
における情報問題を解決できるのであるが、そ
き、NSSBF(National Survey of Small Business
の際、中小企業との長期的取引関係を通じて
Finances、全米中小企業金融調査)をデータと
蓄積された情報を活用することが重要な意味
し、銀行と借り手のリレーションシップのデュ
をもつのである。
レーションを用いて、実証を行った結果、銀行
リレーションシップバンキングの本来の意
と長期のリレーションシップを構築している
味は、長期継続的な種々の取引(貸出、預金、
場合に、低い金利が適用され、他の中小企業に
その他取引)ないし顧客との密着した相対取
比べて担保徴求も少ないことが示されている。
引を通じて、当該企業およびその所有者につい
て蓄積された情報を活用した取引(貸出)で、
(2)中小企業金融との関連
外部からは入手しにくい情報を活用したもの
①中小企業金融の特質:情報の不透明性の存在
と理解される。Boot[2000]は、リレーショ
企業金融において、資金調達手段は金融機
ンシップバンキングこそ、情報の非対称性問題
特 集
5
を解決する最良の手法であると論じ(P. 8)、
リレーションシップバンキングは、
①顧客特有の情報を独占的に入手するための
投資を行うこと、
②この投資の収益性について、横断的・長期
的に顧客を包括的に判断すること、
であると定義している(P. 10)
。さらに、Boot
[2000]は、この情報について、
馬場・久田[2001]
)。
リレーションシップバンキングは、このよ
うな非対称情報問題を解決するほか、金融取
引に不可避な不完備契約に対しても有効であ
る。将来起こり得るあらゆる状況をすべて予
測することは困難であり、融資契約で借り手
の財務状況に応じて、その経営に関与するこ
となどを予め定めておくことはできない(こ
①非公開情報であること、
れを不完備契約という)
。しかし、リレーショ
②包括的取引を長期的に継続することによっ
ンシップバンキングによって借り手をモニタ
てのみ得られる情報であること、
ーし続けることができれば、経営危機をキャ
③コンフィデンシャル(外部に開示しない。秘
ッチし、その情報を収集して、当初の契約の
匿の意)な面が残り、独占されるものであ
見直すことで、そのことに伴う非効率性を排
ること、
除できる。さらに、債務不履行に陥った企業
という特色をもつものとしている(P. 10)
。リ
の救済、あるいは清算の判断を行って、債権
レーションシップバンキングでは、顧客取引
者の権利を履行するなどの判断を的確に行う
に独占的情報をもつことにより、独占的なレ
ことが可能になる。
ントを獲得することになるのである。
このように、リレーションシップバンキン
中小企業金融においては、リレーションシ
グがその本来の機能を発揮すれば、中小企業金
ップが重要であるが、最近の間接金融の有効
融において重要な非対称情報・不完備契約とい
性をめぐる議論では、情報非対称性の度合い
う困難を回避し、解決可能になるはずである。
が強く市場性が低いとされるリレーションシ
ップに代わって、アームス・レングス貸出
(arm’s length lending)ないしトランズアクシ
②リレーションシップバンキングとトランズ
アクションバンキング
ョン貸出(transaction lending)という一定の
リレーションシップバンキングの対語は、ト
距離を置いた市場性の高い貸出(取引貸出)の
ランズアクションバンキングであり、中小企
存在も重視され(具体的には、モーゲージ貸
業金融の文脈では、一定の距離を置いた市場
出。担保さえ徴求できれば、特別なモニタリ
性の高い貸出(財務諸表準拠の貸出、資産担
ングを行わないで実行する貸出)
、取引貸出で
保貸出、クレジット・スコアリング(credit
は銀行と借り手の間で情報の共有が行われず、
scoring)などをこの範疇に含める。トランズ
資本市場での資金調達と競合関係が存在する
アクションバンキングでは銀行と借り手の間
というものである(Boot and Thakor[2000]
、
で情報の共有が行われず、資本市場での資金
6
信金中金月報 2004.11
調達と競合関係が存在するものと理解される。
一般に、アメリカの銀行では、コミュニテ
業向け取引だけでなく、大企業向け取引でも
あったのである。
ィ・バンクと呼ばれる小銀行のビジネスモデ
ルがリレーションシップバンキングであると
③中小企業金融としての2つの手法
理解されており、他方、中・大銀行のビジネ
Berger and Udell[2002]は、中小企業金融
スモデルがトランズアクションバンキングと
における融資手法として4つの手法――財務諸
理解されるが(図表1)、Berger and Udell
表準拠貸出、資産担保貸出、クレジット・ス
[2002]は中小企業においてもトランズアクシ
コアリング、リレーションシップ貸出――を
ョンバンキングの存在を指摘している。日本
取り上げ、前三者の手法がトランズアクショ
においても、リレーションシップバンキング
ンバンキングであるとする。
は、メインバンク制として従来から主要行だ
けでなく、地域金融機関などの金融機関一般
イ.財務諸表準拠貸出(financial statement
のビジネスモデルとして定着してきた。リレ
lending)
ーションシップバンキングの対象は、中小企
融資の可否・条件は、貸借対照表(BS)
・損
図表1 アメリカのリレーションシップバンキングとトランズアクションバンキングの比較
リレーションシップバンキング
トランズアクションバンキング
担い手
小∼中銀行(地域限定的)
中銀行∼大銀行(地域横断的)
重視する情報
経営者等に関するソフト情報(マネ
信用履歴等のハード情報(ビジネス
ージメントリスクが重視される)
リスクが重視される)
経営者に関する情報
フェース・トゥ・フェース で入手
個人の信用履歴を活用
審査方法
面談重視(コスト)
クレジット・スコアリング
(初期投資は大きいが低コスト)
融資の判断
顧客の取引店(分散型)
ローンセンター(中央集権型)
顧客にとっての
個別ニーズへの柔軟な対応。
効率化による低金利・審査スピード
メリット
単独行取引
の速さ。複数行取引
課題
高コスト。ソフト・バジェット問題、 自由度が低い。競争激化、
ホールドアップ問題
価格低下圧力
(出所)廣住[2003]P. 9の図表3と青木[2003]P. 23の図表4を修正
特 集
7
益計算書(PL)の質によって決定され、基本
関係を基礎に独占的に入手されるもので、企
的には適正な監査等によりその財務諸表の真
業との長期間にわたる取引関係の構築・維持
正性が担保される企業にのみ適用されるので、
が必要となる。情報収集には、企業自体の情
事実上、相対的に規模が大きく、業歴が長く、
報だけでなく、地域や取引先における当該企
高収益性の透明度の高い企業に限定される。
業の評判等の情報も重要となる。コスト的に
は相対的に高くなるが、イ.∼ハ.の手法では
ロ.資産担保貸出(asset-based lending)
入手できない情報を入手可能となる。
融資決定は、基本的に、担保の質によって
決定され、企業の特性は融資決定の可否・条
リレーションシップの具体的中身は、ソフ
件に影響はなく、保有資産の担保価値が重要
ト情報である。ハード情報という財務諸表に
となり、担保価値のモニタリングが必要で、高
代表される明確な計数的裏付けのある情報に
コストになる。担保としては、売掛債権、在
対して、経営者の人柄・能力・経営判断・業
庫なども含まれる。
界での評価・地域での風評などといった計数
化されない情報が、ソフト情報であり、従業
ハ.クレジット・スコアリング(credit scoring)
員の資質・士気・技術力・開発力などや、そ
消費者金融で活用されている手法で、それ
の企業の業界・地域での評価なども含まれよ
を企業融資に活用し、過去のデータとの比較
う。ある意味で、情報を生産した担当者以外
による倒産確率の算定によって、融資の可否・
にはその真偽を直接に証明できないような種
条件等が決定されるこの手法では、倒産確率
類の情報といえる側面をもつ。
算定のために、十分な財務諸表(企業数)の
このソフト情報は、リレーションシップを
蓄積・経営者の信用状態に関する履歴情報が
構築して初めて入手可能な情報であり、外部
必要である。アメリカでは、中小企業金融分
からは入手しにくいという性格をもつ。金融
野では新しい手法とされ、25万ドル以下のマ
仲介機関の情報生産は、情報収集・審査、ス
イクロ・ローンに用いられている。
クリーニングやモニタリングによるもので、そ
れらのエージェンシー・コスト(金融取引に
ニ.リレーションシップ貸出(relationship
伴うモニタリングなど種々の費用)をリレー
lending)
ションシップの構築によって軽減することが
融資決定に際して、当該中小企業の財務諸
可能になる。反面、一度、このソフト情報を
表等の定量情報に加えて、企業とその経営者
入手すれば、ある種の独占的なレントを獲得
等に関する定性情報(ソフト情報)を用いる。
したことになるので、情報の非対称性に伴う
この定性情報は、金融機関のリレーションシ
サンクコスト(回収できない費用。埋没費用)
ップ・マネージャーと中小企業との間の取引
をカバーすることが可能になる。
8
信金中金月報 2004.11
金融仲介機関は、決済手段としての預金を
キングについて、ソフト・バジェット問題と
取り扱うので、融資先企業の経営をモニター
ホールドアップ問題というコスト(負の側面)
でき、リレーションシップバンキングの実現
が存在するとした。前者は、リレーションシ
により、個々の企業の経営に関する内部情報
ップバンキングにおける銀行側の潜在的脆弱
を収集可能とするほか、この借り手企業に関
性に関わるものであり、後者は銀行の情報独
する情報は取引されず(金融機関には融資先
占に関わるものである。一般に、情報の非対
企業の内部情報の守秘義務がある)
、金融機関
称性や契約の不完備性があると、逆選択やモ
が占有することになる。企業にすれば、自ら
ラル・ハザードが発生するが、ソフト・バジ
の内部情報がライバル企業にリークすること
ェット問題とホールドアップ問題もこの関連
を怖れるので、企業情報を秘匿できるリレー
で議論されている。
ションシップバンキングは好都合な場合も多
いのである(堀内[2004]
)。
ソフト情報は、数量化されないため、担当
ソフト・バジェット問題は、もともと社会
主義経済の国営企業の行動を特徴づける重要
な要素として取り上げられ、社会主義経済で
者たとえば融資担当者(ローンオフィサー)に
の種々の非効率性を説明する用語であったが、
集積・蓄積される傾向にある。財務情報など
市場経済でも民間への政府の介入が高い場合
の定量情報は数量化して組織のなかにデータ
には発生する問題である(事後的救済問題
ベース化することが可能で、円滑に伝達され
[Bail-out problem]ともいう)
。たとえば、公的
るが、ソフト情報は伝達されないので、ある
企業が収益獲得の努力をせず、赤字を発生さ
種のエージェンシー問題が融資担当者と経営
せても、結局政府が赤字補填をするので、経
陣との間に発生し、これをコントラクティン
営努力が行われないことになったり、あるい
グ問題(contracting problem)という(Berger
は経営努力して費用削減しても翌年から予算
and Udell[2002]
)
。これは、リレーションシッ
を減らされるので、改善努力をしない状況が
プバンキングに固有な課題ともいえる。融資
発生することになることが考えられるのであ
担当者への権限付与がなされることになれば、
る(予算は一度決められれば変更されないが、
融資のパフォーマンスを管理する経営陣にす
政府が赤字を補填することにより、予算制約
ればその実態を十分に把握できないというエ
が緩く(ソフト)になるということになる。す
ージェンシー問題は避けられないことになる。
なわち、経営努力が行われず、労働意欲が失
われるということである)
。
3.リレーションシップバンキングの2
つのコスト
(1)ソフト・バジェット問題
Boot[2000]は、リレーションシップバン
ソフト・バジェット問題は、銀行と企業の
関係では追加融資(追い貸し)問題として表
れる。すなわち、不良化した企業でも、すで
に融資を行いモニタリングコスト等を負担し
特 集
9
ているので、追い貸しをして少しでも利益が
債権の法的優先性を確保することが必要とな
出るならば、これまでの融資全体では赤字で
る。この優先性があれば、融資を受けている
も追い貸しで少しでも損を取り戻すことが行
企業のモラル・ハザードを防止可能となる。
われることがあるように、銀行が問題発生時
に追加的融資をするか否かに関わるものであ
(2)ホールドアップ問題
る。すなわち、業績不振に陥った企業との取
ホールドアップ(お手上げ)問題とは、契
引において、金融機関が法的整理等による損
約の不完備性(将来起こりうるあらゆる事態
失の表面化を危惧し、回収に重大な疑義があ
を想定した完全な条件付き契約を結ぶことは
るにもかかわらず、融資を継続することとさ
不可能な状況をいう。契約条項に曖昧さがあ
れる。リレーションシップバンキングの対象
る点を悪用する、ないし契約条項の履行を強
先の取引企業の経営に問題が発生したときに、
制できないのを見越すなどによる)により、取
金融機関が追加の融資要請を拒否できるかと
引相手が自己に有利な行動をとることとされ
いう問題である。
るが、リレーションシップバンキングの特質
倒産に瀕した借り手が倒産回避のため、追
である金融機関の借り手情報の独占に関わる
加融資の必要性がある場合、借入契約の再交
ものである。銀行は、リレーションシップの
渉が容易ならば、借り手の失敗回避の努力は
構築により、借り手に関する独占的情報をも
不十分なものとなる可能性が高い。銀行貸出
つ一方、借り手である企業にすれば銀行に情
の優先性が確保されなければ、銀行は借り手
報を握られ、ロックイン(封じ込める)され
の行動に介入しえないことになるのである。す
ている懸念から、銀行借入を躊躇することに
なわち、業績が悪化し、破綻に瀕した企業が
なるという問題が、ホールドアップ問題であ
新たな資金提供先を得ることは困難なので、リ
る。また、企業は情報独占を許しているので、
レーションシップのある金融機関に追加融資
他の金融機関からの借入をしにくく、新規投
を求めることとなるが、金融機関が当該企業
資による収益機会を喪失するという問題もあ
を回復可能と判断すれば、金利減免等の契約
る。これに対し、借り手は、複数銀行取引を
条件緩和による追加融資が実行される一方、契
行うことで、この懸念を取り払うことも可能
約条件の安易な変更は契約の規律を弛緩させ、
である。Ongena and Smith[2000]は、複数銀
取引先の再建努力は不完全となり、再建計画
行取引はホールドアップ問題を解決するもの
は成功しないこととなる。
の、借入額は縮小することを示した。
ソフト・バジェット問題への対応としては、
とくに、情報生産に伴う費用がサンクコス
金融機関が当初の契約よりも多い担保を要求
トである場合には、貸し手は借り手の情報を
したり、コベナンツ(財務制限条項)を実行
独占することになり、借り手に対する資金提
して、当該企業の債務のなかでの金融機関の
供を無条件に断れる交渉権を獲得可能になる。
10
信金中金月報 2004.11
この場合、借り手は経営努力によって収益拡
(screening cost)が低い場合に限定されるこ
大を図るとしても、その収益の一部をレント
とを示していることにみられるように、情報
として貸し手が徴収するので、借り手は経営
の非対称性から生じる非効率性を解消するに
改善の努力のインセンティブを低下させるこ
は情報生産機能が重要であるとしても、その
とになる(ホールドアップ問題)。すなわち、
有効性は市場の特性や審査コストの水準など
貸し手は事前に将来収益の一部を貸出金利に
によって異なるといわれる。また、銀行貸出
上乗せするので、借り手はせっかく収益を増
市場の競争が増大すれば、リレーションシッ
大させても貸し手に移転するだけなので、借
プバンキングの有効性が低まるといわれる
り手の経営改善努力のインセンティブは減退
することになる。
(Boot[2000]P. 18)
。
Boot and Thakor[2000]は、銀行が借り手
さらに、契約が不完備であるため(借り手
の質に注目し、リレーションシップバンキン
のプロジェクトの収益は事前には立証できな
グあるいはトランズアクションバンキングの
いため)
、借り手は貸し手の要求する返済を行
いずれかを選択することを、貸出からのレン
う保証が担保できないことになるので、社会
トとコストの関係から論じた。すなわち、
的にみれば望ましいプロジェクトであっても、
①銀行間の競争が緩やかな場合、貸し手はリ
資金供給が行われないことになり、これは別の
レーションシップバンキングによるレント
ホールドアップ問題を生じさせることになる。
を十分に享受でき、その大きさは借り手の
財務の安定した企業・成長性の高い企業は、
質に依存する、
複数金融機関取引や資本市場調達などが可能
②レントは借り手の質の減少関数であるので
になり、金融機関は情報独占のメリットを失
(質が低いとレントが高く、質が高いとレン
うことになるので、リレーションシップバン
トが低い)
、質の高い領域では情報収集コス
キングは成立しなくなる。単一金融機関によ
トがレントを上回るので、トランズアクシ
る情報独占をリレーションシップバンキング
ョンバンキングが適用される一方、質の低
の特質とすれば、このホールドアップ問題の
い領域ではレントが高いのでリレーション
解決は困難である。
シップバンキングが適用される、
③②の状況で、銀行間の競争が激化すると差
(3)リレーションシップの有効性
別化の困難なトランズアクションバンキン
ところで、いかなる状況においてもリレー
グになるレントは減少してしまうので、借
ションシップバンキングが、貸し手によって
り手の質の如何にかかわらず、差別化の可
選択され、その有効性が発揮されるわけでは
能なリレーションシップバンキングを選択
ない。Cao and Shi[2000]は、Petersen and
することが貸し手にとって合理的になる、
Rajan流の議論が成立するには、審査コスト
④質の高い借り手が資本市場にアクセスし、銀
特 集
11
行離れが生じると、銀行組織全体の獲得可能
とを示している。
なレントが減少し、銀行間の競争インセンテ
ィブは低下するので、①の状況に近くなる、
という点を明らかにした。
(4)日本のリレーションシップバンキングの
実証研究
実証レベルとしては、Scott[2000]は、リ
日本では、『法人企業統計年報』『法人企業
レーションシップの形成によって得られる情
統計季報』
『日銀短観』などの調査があるもの
報を制度情報(institutional memory)と主体
の、いずれもサンプル調査であり、個別企業
情報(agent memory)に分け、制度情報の代理
の統計は公表されていないなどの制約から、欧
変数として、メインバンクとの取引期間、パ
米流の研究の蓄積は少ない。ただし、メイン
ーソナルバンキング(給与振込など個人ない
バンク制の研究の中で、リレーションシップ
し職員の取引先かどうか)
、金融サービスを受
の構築が、借入金利・借入条件、金融機関の
けるための取引銀行数をとり、主体情報の代
貸出態度に影響することは検討されている。
理変数として、3年以内に交替した担当責任者
『中小企業白書』は、中小企業の動向を独自
数、social rating(担当者と経営者の接触密度)
の調査を活用して分析しているが、
『同2002年
をとることとし、中小企業金融のデータとし
版』は中小企業の金融状況を詳細に分析した
てNFIB(National Federation of Independent
ものである。その中で、中小企業の借入金利
Business、全米独立企業連盟)1995を用いて、
と、従業員規模・企業年齢・自己資本比率・
計測した結果、中小企業金融の改善(資金調
総資本営業利益率・債務償還率・メインバン
達のアベイラビリティの改善、貸出金利・担
ク業態・取引金融機関数・メインバンクとの
保徴求要請の軽減)に対して、主体情報とい
取引年数・メインバンク依存度などとの関係
うコード化されない情報が、コード化される
を分析している。データは、独自調査の『企
制度情報とは独立の効果をもつこと、を明ら
業資金調達環境実態調査』と㈱東京商工リサ
かにしている。
ーチデータベースである。
Lehmann and Neuberger[2000]は、ドイ
Petersen and Rajan流の研究結果によれば、
ツの主要銀行のデータを用いて、social rating
企業年齢・企業規模と借入金利は逆相関とな
を、経験(experience。過去にプラスの経験を
るとの仮説が、日本においても成立するかが
有しているか)
、顧客満足度(obligation)
、情
ポイントとなるが、『中小企業白書2002年版』
報(information。借り手は自社経営に問題発
によると(pp. 147∼153、249∼256、図表2)、
生時に情報提供するか)
、安定度(stability。リ
被説明変数として借入金利をとった場合、
レーションシップの安定度)に細分化した指
①従業員規模が大きいほど、
標を当てはめた結果、コード化できない情報
②自己資本比率や債務償還年数で表される財
の蓄積は中小企業金融の改善に有意であるこ
12
信金中金月報 2004.11
務状況が良好なほど、
図表2 リレーションシップバンキングの有効性(『中小企業白書2002年版』P. 256)
金 利
全業態
大手行
地銀・第二地銀
借入対応(0=借入受諾、1=借入拒絶)
信金信組
全業態
大手行
地銀・第二地銀
信金信組
符号 係数 符号 係数 符号 係数 符号 係数 符号 係数 符号 係数 符号 係数 符号 係数
定数項
+ 2.513
+ 2.552
+ 3.178
+ 3.576
+ 0.102
+ 0.080
△ 0.458
△ 0.762
従業員数
△ 0.442
△ 0.432
△ 0.463
△ 0.445
△ 0.556
△ 0.496
△ 0.584
△ 0.621
企業年齢
+ 0.000
+ 0.000
△ 0.001
+ 0.003
+ 0.001
+ 0.001
+ 0.001
+ 0.008
自己資本比率
△ 1.124
△ 0.986
△ 1.072
△ 1.745
△ 1.849
△ 1.530
△ 1.897
△ 2.247
総資本営利率
△ 0.132
+ 0.528
△ 0.514
△ 0.204
△ 4.048
△ 6.597
△ 2.577
△ 3.641
債務償還年
+ 0.000
+ 0.000
+ 0.000
+ 0.000
+ 0.000
+ 0.000
+ 0.000
+ 0.000
メイン業態
+ 0.273
取引銀行数
+ 0.181
+ 0.326
+ 0.061
+ 0.272
+ 0.619
+ 0.389
+ 0.766
+ 1.054
メイン取引年
△ 0.006
△ 0.003
△ 0.006
△ 0.013
△ 0.008
△ 0.009
△ 0.008
△ 0.009
メイン依存度
+ 0.170
+ 0.107
+ 0.202
+ 0.088
+ 0.148
+ 0.138
+ 0.125
+ 0.375
△ 0.207
メイン業態1=大手行、2=地銀、3=信金
は有意水準1%以上
△=係数がマイナス
は有意水準5%以上
+=係数がプラス
は有意水準10%以上
③メインバンクとの取引年数が長いほど、
達を行っていること、そしてメインバンクの
④メインバンクの業態については、信金・信
業態によって金利が異なることが明らかにな
組→地銀・第二地銀→大手行、の順に、
借入金利は低くなるという結果を得ている。さ
ったとしている。
次に、被説明変数として借入申込状況(金
らに、
融機関の借入対応〔貸出拒絶・減額対応〕
)を
①企業年齢と借入金利には有意な関係はない
とると、
こと、
②総資本営業利益率が高い企業ほど金利が低下
するものの、統計的には有意ではないこと、
③金利設定に関しては、金融機関が直近の利
①従業員規模が大きいほど、
②自己資本比率・債務償還年数で表される財
務状況が良好なほど、
③メインバンクとの取引年数が長いほど、
益よりも、過去の蓄積である自己資本比率
④総資本営業利益率が高いほど、
を重視していること、
⑤メインバンク業態別では、大手行→地銀・
④取引金融機関数が多いと金利が高いこと(仮
説と反対の結果)、
第二地銀→信金・信組、の順に、
金融機関の拒絶・減額対応は少なくなること
という結果も得ている。このことから、企業
が明らかになったとしている。さらに、取引
規模が大きく、財務良好で、金融機関と長期
金融機関数が多い企業は、拒絶・減額対応が
継続的関係(リレーションシップ)を形成し
有意に多くなるが、これは借入金利の場合と
ている企業が金利面で有利な条件での資金調
同様、取引金融機関の多さはメインバンクの
特 集
13
当該企業への消極的な貸出姿勢の表れである
4 ) 上位銀行取引ダミー(銀行取引において
と、借入申込を受けた金融機関側が判断する
は、業態間競争があり、特にメインバンク
からとされる。さらに、借入金利の場合と同
より上位の業態と取引がある企業には、借
様、企業年齢と借入申込対応には有意な関係
入れに有利になっていると考えられる)
はないこと、も明らかであったという。
5 ) メインバンクダミー(メインバンクの業
いずれにしても、地域密着型の協同組織金
態によって、メインバンクの対応や金利は
融機関の借入申込対応においてその拒絶・減
異なる。大手行は調達金利が低いため貸出
額対応が少ないことは、リレーションシップ
金利も低いが、借入申込みへの対応は「ド
の構築すなわち融資先企業と密接な関係にあ
ライ」であり、地域金融機関はその逆と考
って、入手しにくいインフォーマルな情報を
えられる)
活用して、モニタリングが他の金融機関の場
6 ) メインバンクとの取引年数(取引年数が
合に比べてきめ細かく行われ、一律の融資拒
長い企業ほど、銀行と企業との間の「リレ
絶・減額という対応をとらないものとして評
ーションシップ」が強化され、銀行に情報
価している点は、興味深い。
も蓄積されるので借入れに有利になると考
さらに、『2003年版』では(pp. 273∼275)、
企業概要に関する変数として、
1 ) 自然対数企業年齢(企業年齢が高い企業
えられる)
7 ) 借入以外の取引ダミー(メインバンクと
借入以外の取引を多く行っている企業ほど、
は長年の事業を通じて培った信用力があり、
メインバンクとの関係が緊密であり、借入
銀行もそうした老舗としての看板を企業の
れが有利になると考えられる)
安定性の証左として評価し、貸出しを行い、
8 ) 金利知識豊富ダミー(金利も銀行との相
金利を低くすることがあると考えられる)
対交渉で決定されるので、資金の価格であ
2 ) 自然対数従業員数(規模によってメイン
る金利水準を知っていることは、借入金利
バンクの対応や金利は異なる。規模が大き
い企業ほど銀行は安定度が高いと判断する
ためと考えられる)
が低くなることが考えられる)
9 ) 後ろ向き使途ダミー(
「減産運転資金」
「借
入返済のしわ補填資金」
「赤字補填資金」の
をとり、銀行取引などに関する変数として
ような後ろ向きの使途の借入申込みは、銀
3 ) 取引銀行数(取引銀行数が多いほど、企
行としても応諾しにくく、金利も高くなる
業の交渉力が増し、メインバンクの対応や
と考えられる)
金利に影響を与えていると考えられる。一
をとって、企業のディスクローズなどに関す
方で、取引銀行数が多い企業は、メインバ
る変数として、
ンクの消極姿勢の表れということも考えら
10)資料自主提出ダミー(資料を自主的に提
れる)
14
信金中金月報 2004.11
出している企業は、銀行側はそのディスク
ローズに対する積極的な姿勢を評価したり、
資料提出によって銀行側の情報が豊富なた
に有利になると考えられる)
14)支店近距離ダミー(銀行から見て、取引
め、借入れに有利になると考えられる)
企業が近いほどソフトインフォメーション
11)資料提出頻繁ダミー(資料を頻繁に提出
が伝わりやすく、訪問もしやすいため、貸
している企業は、銀行側はそのディスクロ
出しを行いやすいと考えられる)
ーズに対する積極的な姿勢を評価したり、頻
をとり、財務内容に関する変数として、
繁な資料提出によって銀行側の情報が豊富
15)自己資本比率(自己資本比率は企業の安
なため、借入れに有利になると考えられる)
12)決算書信頼性向上策数(決算書の信頼性
全性を測る上で重要な財務指標であり、メ
インバンクの対応や金利に影響を与える)
向上に努力している企業は、銀行側は安心
16)総資本営業利益率(総資本営業利益率は、
してその決算書を用いて審査することがで
収益性を測る指標であり、収益性が高い企
き、かつその情報の質も高いため、借入れ
業ほど貸出金が返済される可能性は高く、借
に有利になると考えられる)
入申込みに対して影響を与えていると思わ
13)担当者接触頻繁ダミー(メインバンクへ
れる)
の貸出担当者との接触頻度が高い企業は、日
をとると、リレーションシップバンキングが
頃の接触を通じて財務情報以外のソフトイ
有効であるとの結果が得られている(同『白
ンフォメーションが銀行側へ伝達され、
「情
書』付注2-3-2)
。
報の非対称性」が緩和されるため、借入れ
図表3 『中小企業白書2003年版』
(P. 275)
メインバンクの対応(拒絶=1)
推計係数
標準誤差
有意水準
△0.014
0.204
△0.041
0.056
△0.186
0.025
***
0.006
0.006
△0.226
0.135
*
0.276
0.090
***
△0.071
0.080
△0.004
0.002
*
△0.480
0.095
***
定数項
自然対数企業年齢
自然対数従業員
取引銀行数
上位銀行取引ダミー
メイン大手行ダミー
メイン地銀・第二地銀ダミー
メインバンクとの取引年数
借入以外の取引ダミー
金利知識豊富ダミー
後ろ向き使途ダミー
0.520
0.069
資料自主提出ダミー
△0.395
0.056
資料提出頻繁ダミー
0.651
0.064
決算書信頼性向上策数
△0.005
0.031
担当者接触頻繁ダミー
△0.238
0.074
支店近距離ダミー
△0.039
0.091
自己資本比率
△0.694
0.081
総資本営業利益率
△1.464
0.366
観察数
4,829
Adjusted RSQ
対数尤度
△1,362.308
χ2P値
0.000
***=1%有意水準 **=5%有意水準 *=10%有意水準
***
***
***
***
***
***
推計係数
3.709
△0.037
△0.191
0.013
△0.169
△0.506
△0.318
△0.004
0.024
△0.233
0.267
△0.129
0.472
△0.043
△0.002
△0.052
△0.637
△0.045
金利(単位:%)
標準誤差
0.093
0.025
0.010
0.002
0.047
0.041
0.036
0.001
0.031
0.026
0.035
0.023
0.029
0.013
0.033
0.038
0.044
0.196
4,773
0.349
有意水準
***
特 集
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
15
以下、6月30日発表の2003年度実績からアク
4.リレーションシップバンキング・
アクションプログラムの成果
ションプログラムの実行状況をチェックして
(1)リレーションシップバンキングのアクシ
期分のみであり、その評価は限定的であろう。
みたい。ただし、2年間の集中改善期間の前半
ョンプログラム
金融庁の発表によれば、
2003年の金融審議会報告を受けて『リレー
1 ) 2003年度上半期の取組実績と比べて、ほ
ションシップバンキングの機能強化に関する
とんどすべての項目で実施金融機関数が着
アクションプログラム』が策定され、中小・
実に増加しており、大幅に増加している項
地域金融機関は2003∼2004年度の集中改善期
目もあること、
間に中小企業金融の再生と地域経済の活性化
2 ) ほとんどの銀行において実施されている
に向けた取組みについて、2003年8月末までに
項目や、地域金融機関全体で見て過半数を
機能強化計画を金融庁に提出した、その進捗
超える金融機関において実施されている項
状況についても、2003年度上半期分は2004年1
目も少なくないこと、
月16日に、2003年度分については同6月30日に
3 ) 早期事業再生や新しい中小企業金融(担
公表されている、報告提出金融機関は、地方
保・保証に過度に依存しない融資への取組
銀行65行(埼玉りそな銀行を含む)
、第二地方
等)といった先進的な取組みに関しては、実
銀行50行、信用金庫306金庫、信用組合181組
施金融機関数は多くないものの、件数・融
合(地域信用組合は131組合)である。
資額において着実な進捗が見られること、
図表4 アクションプログラムの実施状況
取
①
②
組
み
内
容
コンサルティング機能、情報提供機能等を活用して、財務管理手法等の改
善、経費節減、資産売却、業務再構築、組織再編、M&A 等の助言を実施
当行が紹介した外部専門家(経営コンサルタント、公認会計士、税理士、
弁護士等)が業務再構築等の助言を実施
実施金融機関
491
196
③ 中小企業再生支援協議会と連携し当行が再生計画の策定に関与
162
④ 当行から人材を派遣して再建計画策定その他の支援等を実施
117
⑤
⑥
⑦
企業再建ファンドの組成による企業再生のため当該ファンドに出資(現物
出資)
企業再生に当たり、デットエクイティスワップ(DES)、DIP ファイナン
ス等の手法を活用
プリパッケージ型事業再生(民事再生法等の活用)及び私的整理ガイドラ
イン手続きの中で再生計画等の策定に関与
⑧ 産業再生機構を活用して再生計画の策定に関与
⑨
「中小企業再生型信託スキーム」等 RCC の信託機能を活用して再建計画の
策定に関与
(出所)金融庁資料、同ホームページ
16
信金中金月報 2004.11
50
42
26
10
6
となっており、
「全体としては、中小企業金融
・8割を超える銀行が産官学ネットワークとの
の再生に向けた取組みはさらに着実に進んで
情報交換・関係強化を図っている。
おり、リレーションシップバンキング(間柄重
・ベンチャー企業の育成支援に係る政府系金
視の地域密着型金融)の機能強化が一層確実に
融機関との連携強化については、約6割の金
図られてきている」と金融庁は評価している。
融機関が情報交換を行っている。
・企業育成ファンドの組成・出資を行った。
(2)具体的な取組み
①創業・新事業支援機能等の強化
②取引先企業の経営相談・支援機能の強化、早
期事業再生に向けた取組み
〔融資審査態勢の強化〕
・約8割の銀行が専門部署の設置・強化等を行
〔取引先企業の経営相談・支援機能の強化〕
ったほか、6割以上の銀行が審査に関する組
・約8割の銀行で、ビジネスマッチングの情報
織内の情報共有化促進や業種別審査体制の
提供の仕組みを導入・強化するとともに、約
構築・強化を行っている。
9割の金融機関が、業界団体等が実施する外
・約9割の金融機関が業界団体等が実施する外
部研修への職員の参加・派遣を通じ経営相
部研修へ参加・派遣したほか、内部研修・
通信教育等による人材育成の取組みを実施
談・支援機能の強化を図っている。
・要注意先債権等の健全債権化党に向け、銀
している。
行の9割弱と信用金庫の約3/4が新たに担当
〔技術開発・新事業展開支援〕
部署の設置・増強を図るなど、ほとんどの
・全銀行と7割以上の信用金庫が「産業クラス
金融機関で体制整備強化が図られている。
ターサポート金融会議」へ参加しこれを活用
・銀行の約8割がコンサルティング会社等の外
図表5 創業・新事業支援機能等の強化の実績(2003年度)
政府系金融機関との協調融資
創業支援融資商品による融資
企業育成ファンドの組成・出資
288件 304億円 (91件)
(76億円)
2,233件 225億円 (762件)
(87億円)
144件 183億円 (17件)
(12億円)
(備考)下段の括弧は、2003年度上半期の実績
(出所)金融庁資料、同ホームページ
図表6 ビジネスマッチングの成約件数
2003年度の実績
14,369件
2003年度上半期
2,856件
(出所)金融庁資料、同ホームページ。
特 集
17
部専門機関との連携強化を図っているほか、
職員の外部研修への参加・派遣を通じ企業
約6割が支援先企業への人材派遣を行ってい
再生支援に関する人材(ターンアラウンド・
る。
スペシャリスト)の育成を図っている。
〔早期事業再生に向けた取組み〕
・ほとんどすべての銀行と7割を超える信用金
庫が中小企業再生支援協議会との連携化・
③新しい中小企業金融の取組みの強化、地域
貢献に関する情報開示
情報交換を行うとともに、約2割を超える銀
・銀行の約7割がスコアリングモデル(信用格
行が企業再生ファンドの組成・出資を行っ
付モデル)の活用による担保・保証に依存
ている。
しない融資に取り組むとともに、4割を超え
・約4割の銀行において、デット・エクイティ・
スワップ(債務の株式化)やDIPファイナン
ス(再建中の企業に対する運転資金の供給)
る金融機関がローンレビュー(貸出後の業
況把握)の徹底を図っている。
・1割を超える銀行が財務制限条項(財務指標
等の先進的手法の活用が図られている。
が一定の水準を達成できない場合に金利等
・ほとんどすべての銀行と9割近い信用金庫が
の融資条件が変更される特約、コベナンツ
図表7 早期事業再生の取組み
企業再生ファンドの組成・出資
デット・エクイティ・スワップ
デット・デット・スワップ
DIPファイナンス
63件 150億円 (12件)
(51億円)
37件 183億円 (12件)
(117億円)
7件 55億円 (―)
(―)
215件 587億円 (66件)
(190億円)
130,831件 10,564億円 (59,168件)
(4,414億円)
2,243件 596億円 (88件)
(95億円)
12,631件 1,415億円 (6,924件)
(444億円)
(備考)下段の括弧は、2003年度上半期の実績
(出所)金融庁資料、同ホームページ
図表8 新しい中小企業金融の取組み
スコアリングモデルを活用した商品
による融資
コベナンツを活用した商品による融資
独自の新商品開発・強化
(備考)下段の括弧は、2003年度上半期の実績
(出所)金融庁資料、同ホームページ
18
信金中金月報 2004.11
という)を活用した取組みを実施している。
・財務諸表の制度が相対的に高い中小企業に
が実現した、支援先のうち正常先を除く経営改
善支援先は55,055先で、債務者区分が上昇した
対し金利や担保・保証等に対し優遇を行う等
先数は、8,797先(16.0%)である。その内訳は、
の融資プログラムの整備を図るため、約4割
・一般要注意先 → 正常先:14.5%
の銀行が外部機関との連携により、銀行の1/4
・要管理先 → 一般要注意先以上:21.4%
が独自に、新商品開発・強化を行っている。
・破綻懸念先 → 要管理先以上:14.2%
・地域貢献に関し、ほとんどすべての金融機
・実質破綻先 → 破綻懸念先以上:17.6%
関がディスクロージャー誌等による情報開
・破産先 → 実質破綻先以上:20.4%
示を行ったほか、銀行の約1/3において地域
となっている。
説明会の開催を行っている。
このように、リレーションシップバンキン
グの徹底による経営支援が、ランクアップを
(3)ランクアップの状況:要注意先債権等の
健全債権化等に向けた取組みの概要
①取組みの内容
先の4.
(2)の②の経営改善支援は具体的に
はランクアップ(債務者区分の上昇)として
もたらしたといえるが、ランクアップは経営
支援によるものばかりではなく、景気回復に
よる面も大きい。したがって、2003年初以来
の景気回復による部分がどのくらいあるかの
チェックがむしろ重要であろう。
表れるが、域金融機関はコンサルティング機
また、経営支援取組先のうち、ランクアッ
能・情報提供機能を活用して支援先の経費節
プした分は、経営支援の実効が現れているの
減、業務再構築等に関する助言を行っている。
でよいが、ラックアップしなかった分や、む
また、多くの銀行が、業務再構築等の助言を
しろランクダウンした部分ないし償却した分
行うため経営コンサルタント、公認会計士等
をいかに考えるかも重要であろう。今回のデ
の外部専門家を支援先に紹介しているほか、中
ータでは十分に解析できない部分である。
小企業再生支援協議会と連携し、あるいは自
行から人材を派遣し、再建計画の策定等の支
③経営改善支援の課題等
援を行っている。このような活動の結果、債務
〔ランクアップの成功例〕
者である企業等で財務管理の重要性、自社が抱
ランクアップしたケースで経営改善の成功
える経営上の問題点、財務情報の開示の重要性
には、
に対し共通の認識を有するようになっている。
・債務者と金融機関の間で経営改善に対する
共通の認識が築かれること、
②ランクアップの上昇
このような経営改善支援は、59,166先に対し
て行われ、債務者区分の上昇(ランクアップ)
・必要に応じ積極的な財務リストラを行うと
ともに事業の見直しや新規事業に積極的に
取り組むこと、
特 集
19
図表9 ランクアップの状況
一般要注意先
要管理先
債務者区分の
上昇 4,954件
14.5%
破綻懸念先以下
債務者区分の
上昇 2,561件
債務者区分の
上昇 1,282件
14.5%
21.4%
(経営改善支援先 34,217件)
(経営改善支援先 11,986件)
(経営改善支援先 8,852件)
(備考)15年度(通期)における経営改善支援先数
地域銀行 34,026先(1銀行あたり 約295先)
信用金庫 20,732先(1金庫あたり 約68先)
信用組合 4,408先(1組合あたり 約24先)
(出所)金融庁資料、同ホームページ
図表10 ランクアップの状況
地方銀行
A
正常先
B
第二地銀
C
A
B
C
1,307,001
1,680
―
493,039
743
―
179,447
12,837
15.3%
95,312
7,032
13.5%
要管理先
25,283
4,886
20.5%
9,355
1,851
16.3%
破綻懸念先
34,554
3,095
9.7%
17,268
1,465
14.9%
実質破綻先
22,600
257
12.5%
11,865
57
10.5%
破綻先
11,190
64
26.6%
7,102
59
5.1%
1,580,075
21,139
15.7%
633,941
10,207
14.1%
一般要注意先
合 計
信用金庫
A
正常先
B
信用組合
C
A
B
C
1,479,885
1,108
―
416,592
580
―
201,893
12,187
13.2%
32,442
2,161
20.1%
要管理先
29,838
4,267
22.5%
8,465
982
30.4%
破綻懸念先
43,724
2,971
16.4%
8,605
595
24.0%
実質破綻先
36,260
175
23.4%
9,455
75
26.7%
破綻先
20,892
24
29.6%
5,716
15
40.0%
1,812,492
19,624
15.8%
481,275
3,828
23.6%
一般要注意先
合 計
A=期初債務者数、B=経営改善支援取組先(合計の値は要注意先以下の分)、C=ランクアップ率
(出所)金融庁資料、同ホームページ
20
信金中金月報 2004.11
・外部専門家や中小企業再生支援協議会と連
携して適切な経営改善計画を策定すること、
等が有効というのが、金融庁の評価である。
〔経営改善が進まない場合〕
経営改善がうまく進まない場合の事由は、債
再生支援協議会等の第三者の助言活用、取
引先の顧問税理士・公認会計士等への協力
要請、セミナーの実施)
、
・金融機関の職員のスキルアップ(内部研修、
外部研修)
、税理士・経営コンサルタント・
務者側の事情として、
商工会議所等外部専門家との連携や研修に
・経営者の危機意識の欠如、オーナー経営者
より人材確保、中小再生支援協議会の活用
が助言に耳を貸さない等、抜本的な経営改
や他金融機関との密なコミュニケーション
善の必要性の意識の共有までに時間がかか
醸成による協調関係の構築を行い支援態勢
ること、
を強化すること、
・財務専門担当者の不足により財務データ等
の資料作成が困難で、金融機関としても実
態把握や適切なアドバイスができない、
・金融機関の支援を受けると風評に影響する
といった対応が必要となるのが、金融庁の評
価である。
このようにリレーションシップバンキング
の取組みは、一見順調であるが、図表4のよう
との考えから、金融機関の助言に対し警戒
に、地域金融機関552(信組は地域信組のみ)
感が強いこと、
中、最大の項目でも88.9%の取組みであり、1
・経営改善を実施し得る人材や後継者の等の
人材不足、
割は取り組んでいない。企業再生などへの取
組みは2∼3割にとどまるし、先進的な取組み
がある。また、金融機関側の事情として、
は5∼10%程度である。この点で、より一層の
・企業再生や税務等の専門知識が不足してい
取組みが必要であるし、ランクアップ率も50%
ること、
程度を期待したい。
・売上増加に結びつく経営戦略や営業強化等、
経営全般にわたる助言が必要であるが、ノ
ウハウ・人材が不足していること、
5.非効率性の分析
(1)金融機関の競争力・効率性
・同じ債務者に対する取引各行の支援スタン
金融機関の行動を分析する際、その競争力
スが違うことから、協調して支援する体制
ないし効率性を分析する場合に、規模の経済
構築までに時間がかかること、
性・範囲の経済性を中心に実証研究が蓄積さ
という課題がある。
れてきた。このような議論の前提にあるのは、
したがって、経営改善を有効にするには、
金融機関がミクロ経済学的には利潤極大行動
・経営者の意識改善に努めること(定期的な
を行った結果という点である。すなわち、2次
訪問等密度の濃いコミュニケーションによ
元のグラフ的には、短期的に一定の生産規模
る相互理解の向上、外部専門家・中小企業
の下で、利潤極大行動を行った結果として得
特 集
21
られた利潤極大点(利潤極大の生産量ないし
行われてきた(Journal of Banking and Financeの
最小費用)について、さまざまな生産規模に
1993年の第2・3号の特集など。Berger, Hunter
対応する点を結んだ包絡線が長期費用曲線に
and Timme[1993]など)
。実証的には、費用
なるからである。したがって、金融機関が効率
関数ないし生産関数を推計し、推定値と実現
的な経営を行っていること、つまりX非効率(注)
値の残差をX非効率性として計測する手法を取
な経営を行っていないことを前提としている
っている。
と考えることができる。すなわち、規模・範
アメリカでは、S&Lについて、Mester[1993]
囲の経済性が存在する前提は、金融機関が
などの研究(株式組織のS&Lの方が相互組織
efficient frontier(最も効率的な費用ないし費
のS&Lよりも非効率であるとの実証結果)
、EU
用曲線)で行動していることなのである。
諸国についてMolyneux et al.[1996]
(EUの市
ところが、実際の金融機関は、生産要素が
場統合が金融機関のX非効率性を低下させたこ
効率的に使用されていない、ないし経営能力
との実証)等の研究がある。日本でも、小平
が不十分であるといった理由から、金融機関
[1995][1997]、村本・小平[1997]、小西
の経営が効率ではないことがあり、このよう
[1998]
、藤野[2004]などがあり、業態による
な効率的生産からの乖離がX非効率性である。
X非効率性の存在とその差異が示されている。
金融機関が、efficient frontierで生産していな
い可能性があるのは、金融機関の経営はその
(2)コミットメント・コストと非効率性
特質(経営形態や規制の存在など)からと考
リレーションシップバンキングの問題点と
えられる。経営形態というのは、株式組織で
して、金融審議会報告は、
「わが国の中小・地
あるか、相互組織・協同組織であるかという
域金融機関は、…中小企業あるいは地域経済
企業形態の問題であり、そのガバナンスの相
から期待される役割を果たすため、取引先や
違がX非効率をもたらす可能性があるからであ
地域へのコミットメントを行っている。この
る。さらに、規制が当局によって行われれば、
ため、中小・地域金融機関はそうしたコミッ
非効率性がもたらされる可能性がある。無論、
トメントに伴い、以下で述べるようなコスト、
経営スラック、従業員の怠慢、大規模組織の
いわゆるコミットメントコストを負担するこ
階層性の弊害などがX非効率性をもたらすこと
とにつながっていると考えられる。とりわけ、
はいうまでもない。このようなX非効率性の分
最近においては、金融機関の経営力(審査能
析は、規模・範囲の経済性の計測の前提とし
力、モニタリング能力等)不足、借り手企業
てチェックされる必要があることから、1990
の弱体化やモラルハザード、ガバナンスの限
年代前半以降、精力的に理論的・実証的研究が
界あるいは公的金融の存在、地域経済・財政
(注)ライベンシュタインが主張した概念で、経営スラック、従業員の怠慢、大規模組織の階層性の弊害を指すが、本稿では最も効
率的な費用との差を指す。
22
信金中金月報 2004.11
の厳しさといった外部環境を背景に、こうし
ことで地域銀行がコミットメントコストを負
たコストの顕在化は著しくなってきており、結
担している可能性を示したものと理解できる。
果として、中小・地域金融機関の収益力の低
信用金庫について同様の分析はほとんどな
下や財務体力の低下、更には経営の健全性に
いが、村本研究室が取り組んだ成果(峯岸
対する預金者等の信頼を損ないかねない財務
[2003]
)では、信用金庫のX非効率性は第二地
状況をもたらしているのではないかと考えら
銀よりも大きく、より大きなコミットメント
れる」と指摘し、具体的には、
コストを負担している可能性が強いことがわ
・金利水準からは正当化できない信用リスク
かった。図表11は、フロンティア費用曲線を
の負担、
・地域における悪評の発生(レピュテーショ
ナルリスク)を恐れた問題の先送り、
・採算性を離れたサービスの提供、
を挙げている。そして、
「こうしたコミットメ
ントコストの負担は、地域に根ざして営業を
展開する中小・地域金融機関にとっては避け
ることが困難な面があることは否定できない
が、中小・地域金融機関においても健全性の
測定し、このフロンティア費用曲線からの乖
離で、金融機関のX非効率性を計測したもので
ある。これによれば、
・信用金庫のX非効率性は、第二地銀よりも大
きいこと、
・都内信金のX非効率性は、第二地銀とほぼ同
じ水準ないしそれよりも低いこと、
・全国信金のX非効率性は、都内信金よりも大
きいこと、
確保が求められるのは当然であり、コミット
という結果であった。この点から、信用金庫
メントコストの負担がリレーションシップバ
は、競争の厳しい都内では、効率性を追及し
ンキングの当然の前提であるといった認識は
て経営を行っていることが予想される一方で、
改め、金融機関の経営に対する適正・有効な
東京圏以外の地方部では、大きな非効率性を
規律づけにより、適正な金利・手数料を確保
抱え、いわば大きなコミットメントコストを
しつつコミットメントコストの発生を抑制し
負担している可能性が強いのである。この非
ていく必要がある」と指摘した。
効率性の所以が、規制によるものか、経営上
このようなコミットメントコストの負担は、
の非効率性なのか、真のコミットメントコス
地域金融機関の経営には非効率性を発生させ
トの反映なのかは不明である。しかし、相当
ているはずである。そこで、その検証を行う
部分がコミットメントコストである可能性は
ことが必要である。藤野[2004]は、都市銀
排除できない。今後、この点をより明らかに
行・地域銀行の効率性を確率的フロンティア
する手法による検証が必要である。
生産関数から計測し、都市銀行→地方銀行→
藤野[2004]の分析を考慮すると、地銀→
第二地銀の順で、非効率性が高まっていること
第二地銀→信金の順で非効率性が大きく、信
を時系列で分析したが、非効率性の存在を示す
金は、地域銀行よりも大きな非効率性を抱え
特 集
23
図表11 信用金庫のX非効率性
(%)
(a)対 経常収益比
60
40
20
0
都内信金
全国信金
第二地銀
1993
4.21
17.24
3.46
(%)
1994
4.62
23.67
5.49
1995
5.28
33.01
11.14
1996
6.57
49.65
5.62
1997
4.86
40.4
7.35
1998
7.54
46.11
7.79
1999
5.64
23.9
8.14
2000
7.17
23.53
37.83
1997
5.1
45.42
7.87
1998
7.97
51.25
8.2
1999
5.97
27.02
8.86
2000
7.79
26.61
41.36
(b)対 経常費用比
60
40
20
0
都内信金
全国信金
第二地銀
1993
4.5
18.65
3.63
1994
4.97
26.25
5.82
1995
5.63
37.11
11.98
1996
6.96
56.43
5.91
(出所)峯岸[2003]P. 79
ており、より地域性を反映する状況にあり、大
域経済・地域金融の活性化を図ることが期待
きなコミットメントコストを抱えている可能
され、この点を2003年金融審議会報告は強調
性が高いといえよう。
し、その具体的な展開をも示したのである。
日本の金融システムは、金融審議会の『中
6.リレーションシップバンキングの
整理
期的に展望したわが国の金融システムの将来
リレーションシップバンキングは、多くの
たように、預金・貸出業務による産業金融モ
実証研究が示しているように、その有効性に
デルがキャッチアップ経済では中心であり、単
ついて疑いはない。したがって、金融機関が
線的システムであったが、金融のグローバル
その考え方に準拠して行動することは、中小
化が進み、リスクが多様化・高度化する状況
企業金融を活性化するうえで有効である。日
になると、従来の産業金融モデルに加えて市
本の地域金融機関が、リレーションシップバ
場金融モデルを構築して、複線的システムに
ンキングの理念を体現することによって、地
整備する必要がある。複線的システムでは市
24
信金中金月報 2004.11
ビジョン』(2002年9月30日)において示され
場型間接金融もその重要な手法であり、リレ
グの占める重要性に変わりはない。したがっ
ーションシップバンキングと並んで中小企業
て、今後ともリレーションシップバンキング
金融においては整備される必要がある。しか
を精緻化し、その有効性を高めることが期待
し、中小企業金融のすべてをカバーする手法
される。
にはなりえず、リレーションシップバンキン
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26
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特 集
27
市町村の社会・経済構造からみた都道府県の地域特性
−各市町村が担う機能・役割の特性から地域社会・経済を分析−
信金中央金庫 総合研究所研究員
峯岸 直輝
(キーワード)市町村、中心地的機能、ベッドタウン、工業集積、基盤活動、主成分分析
(視 点)
日本経済は回復過程にあるが、依然として地域経済格差は縮小していない。景況が改善して
いるとされる東海地方の中でも、市町村レベルでは社会・経済構造の違いによって景気回復の
進捗度合いにバラツキが生じているおそれがある。そこで本稿では、全市町村を社会・経済構
造の類似性に基づいて分類し、各都道府県がどのようなタイプの市町村から構成されているの
かを把握することで、都道府県の景気回復効果の浸透度合いや構造的な課題を検証してみた。
(要 旨)
●
各市町村を55の統計データを基に主成分分析を用いて、「中心地型」「ベッドタウン型」「郊
外工業型」「農村勤労型」「特定産業依存型」
「少子高齢型」の6タイプに分類した。
●
大都市は中心地型が多いが、ベッドタウン型・郊外工業型も存在する。都市の中枢管理機能
は東京都特別区に集中し、地方の大都市は特別区の出先機関としての役割を担っている。
●
ベッドタウン型では平均的な所得水準が高い反面、保育施設等の社会資本基盤が不足してい
る。出生率が低い地域が多く、将来的には少子高齢化への対応が求められよう。
●
郊外工業型は、就労機会に恵まれており、失業率が低い。世帯人員数が多く、共働き世帯の
割合が高いため、短期的な景気変動で生じる失業などのリスクが相互扶助で軽減される。
●
小規模市町村では、農林水産業や公共分野への依存度が高い地域が多い。農業の効率化・高
付加価値化や自立的な産業基盤の構築が必要である。
●
同じく過疎地域といっても、高齢者だけの世帯が多い市町村と大家族傾向が強い市町村との
格差は大きい。工業集積度と世帯人員数・若年層の流出との間には一定の関連性がある。
●
都市部から農村部への財政移転で地方行財政の受益と負担のバランスがとれていない。「市
町村合併」「三位一体改革」に伴って農村型では都市型依存体質からの脱却が求められる。
28
信金中金月報 2004.11
告されている。また、今回の景気回復局面は、
はじめに
東海・中国地方といった自動車・鉄鋼などの
03年12月号の『信金中金月報』
「都道府県の
大型工場が集積している地域の回復が顕著と
社会・経済特性からみた課題と対策」では、都
されているが、同じ東海・中国地方でも農村
道府県別のデータを基に社会・経済特性を分
部にまで回復効果が十分に浸透しているのか
析した。しかし、信用金庫は都道府県単位で
疑問が残る。同じ都道府県でも、社会・経済
はなく市町村といったより小さなエリアを対
構造の相違によって景気が回復している市町
象に営業活動を行っており、同じ都道府県で
村と景気回復効果が波及しにくい市町村が存
も都市部と農村部では大きな違いがみられる
在しており、都道府県を構成する各市町村の
ので、地域に密着したリレーションシップバ
特性を把握しなければ、地域経済の動向をよ
ンキングを展開している信用金庫業界にとっ
り正確に認識することは困難と考えられる。
ては、市町村レベルから地域社会・経済を分
そこで、本稿では、各市町村を社会・経済構
析する方がより意義深い結果が得られるもの
造の類似性に基づいて分類し、各タイプの特徴
と考えられる。そこで本稿では、都道府県を
に起因する景気回復効果の浸透度合いや構造
構成する市町村の社会・経済構造を都市型と
的な課題を明らかにすることで、小規模な市町
農村型に大別し、さらにそれを細分化して合
村も加味した都道府県の特性を検証してみた。
計6つのパターンとして比較することで、地域
における景気回復効果の浸透度や少子高齢化
などの構造的な課題について地域の現状をよ
り的確に反映した分析を試みてみた。
(2)全国の市町村を6つのタイプに分類
本稿では、日本全国の3,181市町村(注)1を人
口・世帯、経済基盤、行政基盤、労働、福祉・
社会保障などに関する55の統計データ(図表
1.市町村を社会・経済構造関連指標
を基に6つのタイプに分類
(1)市町村から社会・経済構造を分析する意義
2)に基づいて、主成分分析と呼ばれる統計的
手法を活用することで6つに分類した。
(注)
2
人口比
具体的には、DID(人口集中地区)
日本経済は02年1月を底に景気が緩やかに回
率や商業就業者比率などを強く反映する「都市
復してきたが、依然として地域経済格差は縮
化度」
、世帯人員数や共働き世帯数などを強く
まっていないという指摘は多い。04年8月の内
反映する「家族相互扶助度」
、昼夜間人口比率
閣府『地域経済動向』の地域景況判断による
や事業所数などを強く反映する「労働力需要度
と、東海地方が「力強く回復している」一方、
(労働力供給度)
」
、金融・保険事業所数や病床
北海道はいまだに「やや弱含んでいる」と報
数などを強く反映する「基盤整備度」が各市町
(注)
1.本稿では、03年10月1日現在の3,181市町村(東京都三宅村を除く)が対象。統計指標の調査時点以降に市町村合併が行われ
た市町村では、旧市町村の比率データを人口に基づく加重平均値で代用しているケースがある。
2.DID(人口集中地区)とは、人口密度が高く(原則として4,000人/km2以上)かつ人口が5,000人以上のエリア
特 集
29
村を特徴づける主要な成分であるという結果
例えば、東京都特別区(以下、
「特別区」と
が導き出されたため(注)3、これらの成分に対す
いう。
)
、大阪市(大阪)
・金沢市(石川)な
る得点の高低に基づいて分類することにした。
どの政令指定都市・中核市、函館市(北海
6つのタイプ(以下、
「6分類」という。
)は、
道)・八戸市(青森)・佐世保市(長崎)な
「都市化度」や「基盤整備度」が高く、「家族
どの特例市、小田原市(神奈川)
・米子市(鳥
相互扶助度」が低い市町村を『中心地型』
、
「都
取)
・丸亀市(香川)などの旧城下町・宿場
市化度」や「労働力供給度」が高く、
「基盤整
町などが挙げられる。多くの人口規模が大き
備度」が低い市町村を『ベッドタウン型』
、
「都
い市は中心地型に含まれるが、人口規模が小
市化度」や「家族相互扶助度」が高い、ベッ
さくても、その地域の交流拠点として結節点
ドタウン型以外の市町村を『郊外工業型』
、
「都
の役割を果たし、人々が経済活動のために集
市化度」が低く、
「家族相互扶助度」や「労働
まるような地方の市町村も多く含まれる。
力需要度」が高い市町村を『農村勤労型』
、
「家
②ベッドタウン型
(416市町村)
…他市町村へ通
族相互扶助度」が低く、
「労働力需要度」が高
勤している者が多く、生産年齢人口割合や
い、中心地型以外の市町村を『特定産業依存
雇用者比率が高いなど、労働力を他市町村
型』、「都市化度」や「労働力需要度」が低い
へ供給している市町村が該当する。特別区
市町村を『少子高齢型』と定義した(図表1)
。
や大阪市などの大都市に本社を構える企業
次に、具体的に6分類の主な特徴をみること
に勤める労働者が多いため、平均所得水準
にしよう(図表2)。
や地方税収割合が高い一方、保育所入所待
機児童数が多いなど、人口に対する社会福
①中心地型
(415市町村)
…昼間の人口が夜間に
祉などの基盤整備が遅れている。また、高
比べて多く、大型小売店の店舗数や商業就業
い所得水準を反映して老後不安が少ないこ
者数、金融・保険事業所数やサービス業就業
ともあり、共働き世帯割合や合計特殊出生
者数が多いなど、人口が密集しており、人々
率が比較的低いことも特徴的である。例え
が仕事やショッピングなどのために集まっ
ば、さいたま市・新座市(埼玉)
、千葉市・
てくる、人口吸引力(注)4が強い市町村が該当
市川市(千葉)
、国分寺市・小金井市・武蔵
する。中心地型では、地価が比較的高く、過
野市(東京)
、横浜市・川崎市・鎌倉市(神
密であるうえ、大学・専門学校の学生や扶養
奈川)、八幡市(京都)、吹田市・大阪狭山
家族がいない流動的な単身者が多く集まっ
市(大阪)
、芦屋市(兵庫)
、生駒市(奈良)
、
ていることもあり、持家比率が低く、単独世
橋本市(和歌山)などが挙げられる。
帯割合や失業率が高いといった特徴がある。
③郊外工業型
(446市町村)
…大型小売店の店舗
(注)
3.各成分は第1∼4主成分であり、第4主成分までの累積寄与率は0.5を超える。各成分の名称は、主成分負荷量を参考に執筆者
が命名した。
4.本稿では、
「人口吸引力」という言葉を、主に「他市町村から通勤・通学者や買い物客などの人を昼間に呼び込む力」という生
活圏の人口移動を念頭に使用しており、必ずしも「常住地として自市町村に人口を呼び込む力」だけを指しているわけではない。
30
信金中金月報 2004.11
図表1 市町村6分類の特性(主成分得点の平均値)
都市化度
1.0
中心地型
農村勤労型
ベッドタウン型
特定産業依存型
郊外工業型
少子高齢型
0.0
基盤整備度
-1.0
家族相互扶助度
労働力需要度
中心地型
都市化度
1.0
ベッドタウン型
0.0
基盤整備度
郊外工業型
-1.0
0.0
家族相互
扶助度 基盤整備度
労働力需要度
都市化度
1.0
都市化度
1.0
農村勤労型
特定産業依存型
-1.0
0.0
家族相互
扶助度 基盤整備度
労働力需要度
都市化度
1.0
都市化度
1.0
少子高齢型
-1.0
家族相互
扶助度 -1.0
労働力需要度
0.0
基盤整備度
家族相互
扶助度 -1.0
労働力需要度
0.0
基盤整備度
都市化度
1.0
0.0
家族相互
扶助度 労働力需要度
基盤整備度
家族相互
扶助度 -1.0
労働力需要度
(備考)総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
特 集
31
図表2 市町村6分類の主な特色(各変量のグループにおける単純平均、00年∼02年の直近値)
(単位:%、人、軒)
粗出生率
(人)
婚姻率
(件)
商業販売額 大型小売
(万円)
店舗数
医師数
DID
可住地1km2
当たり総人口 人口比率
核家族
世帯割合
離婚率
(件)
住宅地平均
刑法犯
価格
(万円/㎡) 認知件数
雇用者
比率
完全
失業率
商業就業
者比率
中心地型
9.42
5.86
267.18
1.46
27.16
1,364.79
45.73
58.54
2.39
5.72
183.75
75.97
5.00
ベッドタウン型
8.41
5.43
128.38
1.04
11.22
2,667.30
45.35
63.69
2.01
9.62
194.78
78.96
4.73
20.83
郊外工業型
9.46
5.71
186.82
1.21
11.86
945.30
20.58
56.27
1.99
4.84
176.42
74.45
3.89
18.25
農村勤労型
7.64
4.62
92.62
0.43
6.90
320.32
1.82
44.78
1.45
1.77
95.64
63.67
2.70
13.58
特定産業依存型
7.78
4.76
108.95
0.44
10.29
500.81
8.63
53.49
1.53
2.20
107.28
66.17
2.70
13.61
9.37
372.76
0.90
52.50
1.46
1.74
90.57
67.27
3.74
建設業就 市町村歳出 普通建設事 地方税収
業者比率 額(万円) 業費(万円) 割合
他市町村
からの通
勤者比率
他市町村
への通勤
者比率
製造業就
業者比率
事業所数
乗用車
保有比率
少子高齢型
6.28
農林水産業
就業者比率
3.90
死亡率
(人)
71.54
0.28
高齢
世帯割合
老年人口
割合
21.97
14.69
工業
集積度
中心地型
6.96
8.59
17.00
19.88
11.56
42.77
9.32
30.19
30.36
28.49
16.70
56.27
34.60
7.68
ベッドタウン型
4.67
7.38
12.70
16.54
9.67
34.56
7.13
37.38
42.84
59.58
22.67
37.98
34.96
8.84
15.57
郊外工業型
9.11
8.17
11.67
18.52
10.12
38.27
8.52
34.42
42.07
46.01
28.13
49.06
39.58
農村勤労型
22.29
11.04
16.44
26.44
13.11
66.85
16.83
15.06
25.80
34.67
21.13
54.45
35.07
9.65
特定産業依存型
21.85
11.23
24.14
27.37
14.35
122.82
38.18
14.33
19.61
17.52
10.86
67.76
34.38
5.90
18.82
12.93
25.28
29.97
13.74
少子高齢型
公共分野 年少人口 平均法人 舗装道路 平均課税
対象所得
申告所得
実延長
就業者比率
割合 (100万円)
(km/km2) (万円)
5.06
15.25
187.36
1.55
322.41
中心地型
75.93
19.67
12.04
24.47
35.85
17.69
53.87
32.13
病床数 金融・保険 1世帯当たり 保育所
外国人
共働き サービス業 単独世帯
(病院+
延べ面積
人口比率 診療所) 業事業所数 (㎡)
在所児数 世帯割合 就業者比率
割合
6.72
世帯
人員数
0.60
245.52
9.72
100.39
33.59
30.14
28.54
25.64
ベッドタウン型
4.49
14.89
163.80
1.56
367.91
0.66
95.09
4.07
106.51
27.02
32.37
26.46
18.38
3.04
郊外工業型
3.63
15.94
276.75
1.40
323.96
1.00
118.32
5.52
124.90
36.20
40.70
22.45
17.27
3.28
2.75
農村勤労型
3.96
14.93
101.94
1.81
287.76
0.40
59.66
4.11
152.90
46.33
49.82
20.55
14.35
3.56
特定産業依存型
6.90
13.99
83.32
2.24
314.41
0.42
98.11
5.36
110.92
37.08
35.12
26.43
26.85
2.72
少子高齢型
5.14
13.17
73.11
2.53
291.01
0.27
100.21
4.28
129.93
47.93
38.38
23.49
19.22
3.04
60∼64歳
昼夜間
合計特殊 人口の社会
人口増加率 人口比率 出生率(人) 増加率
転出率
15∼19歳
保育所 労働力人口 労働力人口 介護保険
施設定員
持家比率
人口増加率 待機児数 比率(男) 比率(女) 数(人)
公債費
比率
20∼24歳
人口増加率
中心地型
98.47
101.97
1.54
-0.45
4.87
65.21
94.57
0.83
73.07
47.99
41.43
15.61
85.18
ベッドタウン型
99.22
83.73
1.32
-0.25
4.49
75.41
101.98
1.48
74.80
46.68
35.88
12.63
92.17
郊外工業型
99.09
95.84
1.53
-0.43
4.15
78.69
94.09
0.25
77.36
52.21
35.26
13.31
86.00
農村勤労型
98.62
91.22
1.67
-0.59
3.26
89.52
82.05
0.27
76.63
53.98
29.65
14.73
70.37
特定産業依存型
95.20
100.78
1.66
-0.89
5.20
74.04
71.72
0.34
75.94
50.06
33.95
14.66
88.95
少子高齢型
99.35
89.97
1.56
-0.51
3.51
87.62
81.60
0.09
71.04
46.41
39.07
15.02
67.39
(備考)1.単位が%以外のものは、人口規模の影響を除くため、人口1人当たりの数値。ただし、粗出生率(死亡率・婚姻率・離婚率)
は人口1,000人当たりの出生児(死亡者・婚姻・離婚)数。他市町村からの(への)通勤者比率は対従業地(常住地)就業
者、雇用者比率は対常住地就業者。平均法人申告所得は法人、平均課税対象所得は納税義務者当たり。大型小売店舗数・
金融保険事業所数・医師数・病床数・刑法犯認知件数は人口1万人、事業所数は人口1,000人、介護保険施設定員数は65歳
以上人口1,000人、保育所在所児数は0∼5歳人口100人、保育所入所待機児数は保育所在所児100人当たりの数値
2.DID(人口集中地区)とは、人口密度が高く(原則として4,000人/km2以上)かつ人口が5,000人以上のエリア。15∼19歳
人口増加率は5年前の10∼14歳人口に対する比率(20∼24歳、60∼64歳も同様)。
高齢世帯割合=高齢単身世帯割合+高齢夫婦世帯割合。工業集積度=製造業事業所の従業者数÷人口
3.濃いシャドーは6分類の中で数値が高い上位2グループ、薄いシャドー(数字がイタリック)は下位2グループ
4.総務省『統計でみる市区町村のすがた』
(総務省『国勢調査』
『事業所・企業統計調査』などのデータを集録)などより作成
数や商業販売額が比較的多い一方、世帯人
(群馬)
、茂原市(千葉)
、富士市・磐田市・
員数や共働き世帯数が多いなど、郊外的な
湖西市(静岡)
、豊田市・岡崎市・刈谷市・
側面が見受けられる市町村が該当する。大
安城市(愛知)、多気町(三重)、竜王町・
型工場が多く、労働力需要が旺盛なので、労
多賀町(滋賀)、久御山町(京都)、大津町
働力人口比率や外国人人口比率が高い。郊
(熊本)などが挙げられる。
外に位置しているケースが多いので、通勤
④農村勤労型
(503市町村)
…農村の中に工場が
やショッピングのために乗用車を保有して
散在しており、世帯人員数が多く、女性の
いる比率も高水準である。所得水準は比較
労働力の活用度が高い市町村が該当する。平
的高いうえ、工場の集積によって法人申告
均的な所得水準は低く、居住環境が良好で
所得額が大きく、地方税収割合が高い。例
持家比率が高いこともあり、合計特殊出生
えば、金ヶ崎町(岩手)
、二本松市(福島)
、
率が高く、大家族・共働き世帯が多い。工
真岡市・芳賀町(栃木)
、伊勢崎市・大泉町
業団地が立地しているケースが多いことか
32
信金中金月報 2004.11
ら、労働力人口比率が高く、失業率は比較
などが挙げられる。
的低いのが特徴である。例えば、江刺市(岩
⑥少子高齢型
(949市町村)
…高齢者のみの世帯
手)
、金浦町(秋田)
、長井市(山形)
、白沢
が多く、労働力人口が少ないうえ、基盤と
村・磐梯町(福島)、大和村(茨城)、新井
なる産業にも乏しいので、労働者が他の市
市・栄町(新潟)、小矢部市(富山)、勝山
町村へ働きに出るケースが比較的多い市町
市(福井)、豊富村(山梨)、富士見町(長
村が該当する。若年層の流出が顕著であり、
野)、千代田町(広島)、七城町(熊本)な
粗出生率が低い一方、老年人口比率が高く、
どが挙げられる。
少子高齢化が進んでいるのが特徴である。例
⑤特定産業依存型(452市町村)…発電関連施
えば、滝上町(北海道)
、七ヶ宿町(宮城)
、
設・空港・基地・大学・スキー場・温泉な
檜原村・奥多摩町(東京)
、早川町(山梨)
、
どの特定産業・企業や公的施設・公共事業
坂内村(岐阜)、紀和町(三重)、豊浜町・
への依存度が大きく、農村でも労働力需要
神石町(広島)、旧東和町(山口)、関前村
度が比較的強い市町村が主に該当する。ま
(愛媛)などが挙げられる。
た、島嶼や辺地など近隣集落への距離が遠
く、生活圏が自市町村にとどまり、昼夜間
人口比率が100%近辺の市町村も多い。人口
(3)市町村の6分類からみた都道府県の特性
各市町村を6つのタイプに分類したが、次に、
当たりの市町村歳出額や普通建設事業費が
各タイプの市町村はどのような都道府県で多
大きく、建設業や公共分野の就業者比率が
くみられるのかをみることにしよう(図表3)
。
高いのが特徴である。高齢世帯(注)5や寄宿
①の中心地型の市町村が占める割合が高い
舎・独身寮も多く、持家比率が低いため、世
のは、沖縄県、山口県、福岡県などである。沖
帯人員数が少ないといった側面もある。例
縄県の場合、交通手段の未整備や米軍基地の
えば、千歳市・ニセコ町(北海道)
、六ヶ所
立地(注)6によって、那覇市・浦添市・宜野湾市、
村(青森)
、東海村(茨城)
、日光市(栃木)
、
沖縄市・具志川市、名護市といった中心地的
伊香保町・水上町(群馬)
、大島町・新島村
な地域が散在しているうえ、島嶼の中で中枢
(東京)、箱根町(神奈川)、美浜町・高浜
的な機能を担う石垣市、平良市などもあり、中
町・大飯町(福井)、安曇村・野沢温泉村
心地型の市町村の割合が高くなっている。山
(長野)
、白川村(岐阜)
、御殿場市(静岡)
、
口県は、人口10万人を超える市が瀬戸内海に
長久手町(愛知)
、門真市(大阪)
、府中町・
面して6つも点在しており(注)7、山口県最大の
宮島町(広島)、恩納村・座間味村(沖縄)
都市である下関市の人口は25万人に満たない。
(注)
5.高齢世帯は高齢単身世帯と高齢夫婦世帯を足したものとした。
6.那覇空港から首里を結ぶ「ゆいレール(沖縄都市モノレール)
」が03年8月にようやく開通した。米軍基地によって、都市が
分断され、密集している反面、雇用創出、地代収入、米軍による消費、基地周辺対策費などが地元経済の一部を支えている。
7.04年3月31日現在の総務省『住民基本台帳』より。下関市(245,011人)
、宇部市(170,946人)
、周南市(156,035人)
、山口市
(138,661人)、防府市(118,866人)
、岩国市(105,644人)
特 集
33
図表3 市町村6分類の都道府県別の構成比
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
中心地型
ベッドタウン型
郊外工業型
農村勤労型
特定産業依存型
少子高齢型
(備考)1.主成分分析における第1∼4主成分に基づいて6つのタイプに分類した。変量は図表2の統計データ項目
2.総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
人口規模が山口県に近い愛媛県では、10万人
②のベッドタウン型の市町村が占める割合
を超える市町村が松山・新居浜・今治市の3つ
が高いのは、大阪府、神奈川県、埼玉県、東
だけであり(注)8、松山市の人口は下関市の2倍
京都、奈良県、千葉県などである。大阪府は、
に相当する約50万人と規模が大きく、そこに
県下44市町村のうち昼夜間人口比率が100%を
都市機能が集積している。山口県にはこのよ
超えるのは9市町だけであり(注)9、その周辺市
うな50万人級の大都市がなく、中心地的な機
町村の大半は、これらの市町に勤める労働者
能を担う中都市が分散している。一方、福岡
の居住都市としての役割を担っている。特に
県は、北九州市と福岡市という九州の中枢機
大阪市は141.2%と昼間の人口が夜間より4割以
能を担う2つの政令指定都市を擁するほか、久
上も増加するほど人口吸引力が強い都市であ
留米21万石(江戸時代)の城下町を基盤とし
る。大阪市同様、特別区も137.5%と高水準で
ている久留米市や九州の地理的中心地として
あり、昼間の人口は夜間より303万人増加する。
交流拠点の役割を果たす大牟田市といった中
この数値は茨城県民全員や千葉県民の半分が
心地的な都市が福岡平野・筑後平野・直方平
特別区に流入するほどの規模であり(注)10、特別
野に形成されていることが、中心地型の傾向
区への通勤者は東京都・神奈川県・埼玉県・
が強い一因になっている。
千葉県など広範囲に居住している。
(注)8.山口県の人口は1,512,333人、愛媛県は1,496,929人。松山市は476,250人、新居浜市は127,553人、今治市は116,761人(04年3
月31日現在、総務省『住民基本台帳』)
9.総務省『国勢調査(00年)
』
。9市町は、大阪市(141.2%)
、守口市(102.5%)
、泉佐野市(107.2%)
、大東市(101.3%)
、門
真市(108.3%)
、摂津市(111.3%)、東大阪市(104.0%)、田尻町(115.5%)
、美原町(105.0%)
10.茨城県の人口は2,991,804人、千葉県は6,001,032人。人口が300万人を超える都道府県は10都道府県しかない(04年3月31日
現在、総務省『住民基本台帳』
)
。
34
信金中金月報 2004.11
③の郊外工業型の市町村が占める割合が高
⑤の特定産業依存型の市町村が占める割合
いのは、滋賀県、栃木県、静岡県、愛知県、茨
が高いのは、北海道、沖縄県、島根県、宮崎
城県、富山県などである。滋賀県では、ダイ
県である。特に、北海道や沖縄県は、土地が
ハツ工業が竜王町、三菱自工が旧甲西町、京
広大であったり、島嶼が多かったりするため、
セラが八日市市・蒲生町、三菱重工・積水化
近隣集落との距離が遠く、生活圏が自市町村
学・松下電工が栗東市などに工場を立地して
にとどまっている市町村が多い。例えば、沖
おり、栃木県でも、日産自動車が上三川町、い
縄県では渡嘉敷村や座間味村など、島嶼部の
すゞ自動車が大平町、本田技研が真岡市・芳
17町村が農林水産業や観光産業・公共部門を
賀町、ブリヂストンが黒磯市、富士通が大田
経済基盤にしているため、特定産業依存型に
原市・小山市、シャープが矢板市などに工場
含まれている。また、島根県では、市町村歳
を構えている。自動車や電機などの工場が立
出における人口当たりの普通建設事業費が大
地している市町村が多い県で郊外工業型の市
きい市町村が多く、公共事業に依存する傾向
町村の割合が高い。また、富山県では、YKK
が強い。このような市町村では、地理的に経
が黒部市、JFEマテリアルが新湊市、立山アル
済活動範囲が限られてしまっているため、農
ミが高岡市・福岡町などに工場を立地してお
林水産業に加えて、観光産業や公共分野など
り、低廉な電力(注)11を活用した金属工場などが
に対する依存度が高いケースが多い。
集積している。これらの県は、中心地から離
⑥の少子高齢型の市町村が占める割合が高
れた郊外で工業集積地として都市が形成され
いのは、高知県、和歌山県、鹿児島県、大分
た市町村を多く含んでいる。
県、山口県などである。例えば、高知県では
④の農村勤労型の市町村が占める割合が高
愛媛県境に四国山脈(主峰の石鎚山は西日本
いのは、山形県、福島県、岩手県、福井県、鳥
最高峰)がそびえ立つ急峻な地形であり、和
取県、新潟県などであり、東北・北陸・甲信
越・山陰地方で割合が高い。山形県では、櫛
引町・鮭川村・羽黒町で平均世帯人員数が4人
図表4 市町村の平均値からみた都道府県の
6分類
中心地型
ベッドタウン型
を上回っており、共働き世帯割合は6割を超す
郊外工業型
など、家族相互扶助の傾向が強い市町村が多
農村勤労型
い(注)12。これらの市町村は農林漁業就業者比率
特定産業依存型
が2割を超える農村が多い一方で、製造業の就
業者比率も平均的に2割程度あり、農・工が比
較的調和しているものと考えられる。
少子高齢型
福岡
埼玉
京都
茨城
愛知
岩手
石川
北海道
青森
広島
長崎
千葉
大阪
栃木
滋賀
山形
福井
島根
宮城
山口
熊本
東京
兵庫
群馬
香川
福島
長野
宮崎
秋田
徳島
大分
神奈川
奈良
山梨
佐賀
新潟
岐阜
沖縄
和歌山
愛媛
鹿児島
三重
静岡
富山
鳥取
岡山
高知
(備考)1.市町村の主成分得点を都道府県ごとに単純平均し、
その数値を都道府県の主成分得点とみなし、6つのパ
ターンに分類
2.総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
(注)11.富山県の年間降水量(02年)は2,708mm(石川県は2,793mm)であり(気象庁『気象庁年報』
)、このような豊富な水資源と急
峻な地形を活用しているために、北陸電力の水力発電比率は他の電力会社よりも高く、低廉な電力を供給することができる。
12.共働き世帯割合が60%を超える市町村は全国で15町村しかない(総務省『国勢調査(00年)』
)
。
特 集
35
歌山県も和歌山平野・日高平野・田辺平野を
の特徴が強いが、当該市自身はどのような「都
除いて中央構造線(注)13以南の大半が紀伊山系の
市機能」を担っているのか疑問が残る。そこ
山岳地帯であるなど、地理的条件によって産
で、大都市を、事務や専門的技術的な部門を
業が発展しにくい市町村が多く、若年層の流
担当する「中枢管理機能」
、販売・物流や生活
出など少子高齢化・過疎化の進展が著しい。
関連サービスなどを供給する「流通サービス
機能」
、主にモノの製造を担う「生産加工機能」
2.大都市の機能と特徴―中心地型が
多いが、一部にベッドタウン型・郊
外工業型も
という都市が担うべき機能(以下、
「中心地的
(1)大都市の中心地的機能分類―中枢管理機
中心地的機能別の従業員構成比が最大にな
機能」という。
)に着目して分類してみた(図
(注)
14
。
表5)
能は特別区に集中
るのは、大半の大都市で中枢管理機能であり、
第1章では、各市町村を6つのタイプに分類
旭川市・船橋市・横須賀市が流通サービス機
した。人口規模が大きい政令指定都市や中核
能(注)15、いわき市・浜松市・豊橋市・岡崎市・
市は、中心地型が多いが、ベッドタウン型・
豊田市・姫路市・倉敷市・福山市が生産加工
郊外工業型も存在する(図表5)。これらの市
機能であった。販売やサービスの提供は他市
は「大都市」として包括されてしまうことが
町村から所得を獲得することが限定的である
多いが、すべての大都市が同じような機能を
という特性が強いことから、流通サービス機
果たしているとは限らない。そこで、本節で
能に偏っている都市では、内需(自市内需要)
は、大都市がどのような「都市機能」を担い、
への依存度が比較的大きいと考えられる。一
どのような特徴があるのかについてみること
方、いわき市には日産自動車、浜松市にはヤ
にする。
マハ・スズキ・本田技研、豊橋市には日東電
6分類では、大都市(特別区+13政令指定都
工・デンソー、岡崎市には三菱自工・日清紡・
市+35中核市)の大半は中心地型で、さいた
東レ、豊田市にはトヨタ自動車、姫路市には
ま市・千葉市・横浜市・堺市など11市がベッ
東芝・三菱電機・山陽特殊製鋼・新日鉄、倉
ドタウン型、豊橋市・岡崎市・豊田市が郊外
敷市にはJFEスチール・三菱自工・三菱化学、
工業型と分類された。ベッドタウン型の市は、
福山市にはJFEスチール・シャープ・三菱電機
隣接大都市へ通勤する労働者の居住地として
といった大型工場が立地しており、これらの
(注)13.西南日本を内帯(日本海側)と外帯(太平洋側)とに分ける断層帯のこと。長野県の諏訪湖付近から赤石山脈の西側を通
り、渥美半島から伊勢湾、紀伊半島、四国の吉野川に沿って九州中部まで続く。
14.中枢管理機能は専門的技術的職業・管理的職業・事務従業者、流通サービス機能は販売・サービス職業・保安職業・運輸・
通信従業者、生産加工機能は生産工程・労務作業者の従業地従業員構成比を基に分類した(総務省『国勢調査(00年)
』
)
。統
計の都合上、さいたま市は旧浦和市と旧大宮市、静岡市は旧静岡市と旧清水市の合計、福山市は旧福山市としている。
15.旭川市は西武・丸井今井・エクス・イオン・イトーヨーカドー、船橋市は西武・ロフト・東武・Face・ららぽーと・イト
ーヨーカドーや中央卸売市場・倉庫・物流センター、横須賀市は岡田屋モアーズ・さいか屋・エイビイ・西友・LIVIN・ダイ
エーなどの流通施設が立地している。ただ、旭川市に日本製紙、船橋市にクボタ・サッポロビール、横須賀市に日産自動車
などの工場も立地している。
36
信金中金月報 2004.11
都市では域外需要の高まりなどによる景気波
の構成比で割った値(特化係数)が1倍を超え
及効果が大きいものと推測される。
る機能を、その都市が担っている機能と定義
多くの大都市では、中枢管理部門に従事す
すると、次の6パターンに大別される(図表5)
。
る労働者の割合が流通サービスや生産加工部
①中枢管理機能;特別区・千葉市の2都市、
門よりも高いものの、他の大都市と比較する
②流通サービス機能;札幌市・仙台市や熊本
と、各大都市がどの中心地的機能に特化して
市・鹿児島市など7都市、③生産加工機能;い
いるのかが明確になる。そこで、各大都市の
わき市・豊田市・大分市など21都市、④流通
中心地的機能別従業員構成比を49大都市合計
サービス・生産加工複合機能;旭川市・船橋
図表5 大都市(14大都市と35中核市)の中心地的機能分類
6分類
札 幌
旭 川
仙 台
秋 田
郡 山
い わ き
宇 都 宮
川 越
さいたま
千 葉
船 橋
特 別 区
横 浜
川 崎
横 須 賀
相 模 原
新 潟
富 山
金 沢
長 野
岐 阜
静 岡
浜 松
名 古 屋
豊 橋
岡 崎
豊 田
京 都
大 阪
堺
高 槻
神 戸
姫 路
奈 良
和 歌 山
岡 山
倉 敷
広 島
福 山
高 松
松 山
高 知
北 九 州
福 岡
長 崎
熊 本
大 分
宮 崎
鹿 児 島
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
中心地型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
郊外工業型
郊外工業型
郊外工業型
中心地型
中心地型
ベッドタウン型
ベッドタウン型
中心地型
中心地型
ベッドタウン型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
中心地型
機能別の従業員構成比(%)
中枢管理機能
流通サービス機能
生産加工機能
40.7
35.8
42.0
39.0
35.2
33.8
37.3
36.1
40.6
43.3
35.6
49.5
42.1
42.6
34.3
36.4
40.6
40.0
41.1
41.2
38.4
37.1
33.8
40.4
32.1
33.3
31.3
38.4
43.1
34.6
36.8
41.3
34.5
42.3
38.0
40.2
33.2
41.2
33.7
43.5
39.2
40.3
36.9
43.1
41.2
41.1
38.9
41.3
40.8
36.9
35.9
36.6
34.5
33.4
29.6
33.2
30.6
35.5
33.7
36.6
33.3
32.5
27.9
37.3
29.6
35.2
31.3
34.0
30.6
34.2
31.8
29.5
35.1
29.6
28.6
21.4
36.2
35.9
32.3
31.9
34.0
30.9
36.6
31.7
33.4
27.8
34.4
30.1
34.1
35.3
35.6
33.9
37.8
35.5
37.1
31.8
36.6
36.5
22.4
28.3
21.4
26.5
31.4
36.6
29.4
33.3
23.9
23.0
27.7
17.2
25.4
29.5
28.3
34.0
24.3
28.7
24.9
28.2
27.4
31.1
36.7
24.5
38.3
38.0
47.3
25.4
20.9
33.1
31.3
24.7
34.6
21.1
30.3
26.4
39.1
24.4
36.2
22.4
25.5
24.1
29.2
19.1
23.2
21.8
29.3
22.1
22.7
中枢管理機能
0.96
0.84
0.99
0.92
0.83
0.80
0.88
0.85
0.96
1.02
0.84
1.16
0.99
1.00
0.81
0.86
0.95
0.94
0.97
0.97
0.90
0.87
0.79
0.95
0.76
0.78
0.74
0.90
1.01
0.81
0.87
0.97
0.81
1.00
0.90
0.95
0.78
0.97
0.79
1.02
0.92
0.95
0.87
1.01
0.97
0.97
0.92
0.97
0.96
特化係数(対49都市合計)
流通サービス機能
生産加工機能
1.09
1.06
1.08
1.02
0.99
0.87
0.98
0.90
1.05
1.00
1.08
0.99
0.96
0.82
1.10
0.87
1.04
0.92
1.01
0.90
1.01
0.94
0.87
1.04
0.87
0.85
0.63
1.07
1.06
0.95
0.94
1.01
0.91
1.08
0.94
0.99
0.82
1.02
0.89
1.01
1.04
1.05
1.00
1.12
1.05
1.10
0.94
1.08
1.08
0.95
1.19
0.91
1.12
1.33
1.55
1.24
1.41
1.01
0.97
1.17
0.73
1.07
1.25
1.20
1.44
1.02
1.21
1.05
1.19
1.16
1.31
1.55
1.03
1.62
1.61
2.00
1.07
0.88
1.40
1.32
1.04
1.46
0.89
1.28
1.11
1.65
1.03
1.53
0.95
1.08
1.02
1.23
0.81
0.98
0.92
1.24
0.94
0.96
(備考)1.さいたま市は旧浦和市と旧大宮市、静岡市は旧静岡市と旧清水市の合計、福山市は旧福山市
2.中枢管理機能は専門的技術的職業・管理的職業・事務従業者、流通サービス機能は販売・サービス職業・
保安職業・運輸・通信従業者、生産加工機能は生産工程・労務作業者の従業地従業員構成比
3.機能Aの特化係数=当該都市のA機能の構成比÷49都市合計のA機能の構成比
4.総務省『国勢調査(00年)』より作成
特 集
37
市・横須賀市など15都市、⑤中枢管理・流通
る。ただ、札幌市や仙台市は、北海道・東北
サービス複合機能;大阪市・高松市・福岡市
地方の中核的な都市であるにもかかわらず、流
の3都市、⑥中枢管理・生産加工複合機能;川
通サービス機能への特化度が高く、北日本を
崎市の1都市である。
代表する中枢的な役割を十分に果たしていな
中枢管理機能は、特別区が1.16倍と突出して
い。往々にして地方都市は販売・サービスや
おり、1倍を超えるのは他に千葉市・川崎市・
生産部門を担っており、専門技術・管理部門
大阪市・高松市・福岡市の6都市で、1.00倍を
は特別区に依存している傾向が読み取れる。
若干上回る程度に過ぎない。特別区がいかに
(2)大都市は都市化・サービス化度と高齢化
事務・管理などの本社機能に著しく特化して
いるのかが理解できる。実際、各政令指定都
度で特徴づけが可能
市の民営事業所に勤務する従業員のうち、特
前節では、大都市を「都市機能」の面から
別区に本社を構える企業で働いている従業員
分類したが、本節では、大都市の間にどのよ
の割合は、さいたま市で27.7%に達し、東京か
うな類似点や相違点を見出せるのかをみるこ
らの距離が遠い札幌市でも12.4%、福岡市で
とにする。
13.7%を占める(図表6)。地方都市は、東京
6分類と同様な手法で、大都市を対象に都市
の出先機関としての機能も担っている一方で、
を特徴づける主要な成分を抜き出してみると、
東京は地方の経営管理・専門技術的な職務な
①単独世帯割合、DID人口比率、人口密度、商
どを請け負っている側面も大きい。大企業の
業・サービス業就業者比率などが高く、世帯
業況回復の影響は少なからず支社・支店を通
人員数、共働き世帯割合、製造業就業者比率、
じて地方都市へも及んでいるものと考えられ
労働力人口比率などが低いと数値が高くなる
図表6 14大都市の民営事業所従業員のうち、他の大都市
に本社がある会社の従業員が占める割合
「都市化・サービス化度」と、②老年
人口割合、病床数、建設業就業者比
(%)
45
率、介護保険施設定員数などが高く、
14大都市以外
他の14大都市
大阪市
特別区
40
35
30
課税対象所得、婚姻件数、他市町村
間との通勤者比率などが低いと数値
25
が高くなる「高齢化度」の説明力が
20
大きく、この2成分の高低で主に4つ
15
10
に分類することができる(図表7)
。
5
0
札
幌
市
仙
台
市
さ
い
た
ま
市
千
葉
市
特
別
区
横
浜
市
川
崎
市
名
古
屋
市
京
都
市
大
阪
市
神
戸
市
広
島
市
北
九
州
市
福
岡
市
(備考)1.14大都市は13政令指定都市に特別区を加えた都市。公務を除く全産業
2.総務省『事業所・企業統計調査(01年)』より作成
38
信金中金月報 2004.11
仙台市・特別区・名古屋市・京都
市・大阪市・神戸市・福岡市といっ
た主要な中心地は、都市が成熟して
高齢化度が中位水準にあり、人口が
図表7 大都市(14大都市と35中核市)の主要な特徴
2.0
高知
1.5
旭川
いわき
1.0
富山
宮崎
高齢化都市型
長崎
北九州
熊本
高松
和歌山
金沢 秋田
郡山 大分
松山
岡山
福山
新潟
静岡
岐阜 広島
倉敷
長野
強
0.5 ↑
高
0.0 齢
化
-0.5 度
↓
弱
-1.0
-1.5
豊橋
浜松
札幌
京都
中枢都市型
福岡
神戸
姫路
名古屋
大阪
仙台
宇都宮
横須賀
堺
奈良
岡崎
特別区
千葉
高槻
工業都市型
川越
さいたま
船橋
-2.0
鹿児島
横浜
居住都市型
相模原
豊田
川崎
-2.5
弱←都市化・サービス化度→強
-2.5
-1.5
-0.5
0.5
1.5
2.5
(備考)1.主成分分析の第1主成分得点(x軸)と第2主成分得点(y軸)
2.総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
密集し、商業やサービス業が集積しているた
めに都市化・サービス化度が高い(中枢都市
型)
。川崎市・横浜市・川越市・さいたま市な
3.ベッドタウン型の特徴―高所得で
合計特殊出生率が低く、少子化が課題
どは、若年層の流入が顕著なために高齢化度
(1)昼夜間人口比率からみた都道府県の特徴
が低く、核家族世帯の住宅地が多いので都市
各市町村を特徴づける際に、昼夜間人口比
化・サービス化度が中位にある(居住都市型)
。
率など、通勤・通学における市町村間の人口
高知市・旭川市・長崎市・北九州市などは、高
移動は極めて重要な要素であり、都市形成の
齢化によって社会福祉産業の発展、高齢世帯
過程にも影響を及ぼす。そこで、本章では、他
の増加が進行しているために、都市化・サー
市町村への通勤者が多く、昼夜間人口比率が
ビス化度や高齢化度が比較的高い(高齢化都
低い、ベッドタウン型の市町村について、そ
市型)
。豊田市・岡崎市・豊橋市・浜松市・宇
の機能と特徴についてみることにする。
都宮市などは、工場が集積し、都市化・サー
図表8は、各都道府県のうち、昼夜間人口比
ビス化度は低いが(工業都市型)
、同じく工場
率が90%以下の市町村の割合と県外への通勤・
が比較的立地しているいわき市・富山市・長
通学者の比率が5%以上の市町村の割合を散布
野市などでは高齢化度が高まっている。
図にしたものである。
大都市といえども、工場の集積やベッドタ
北海道では、近隣集落までの距離が遠いな
ウン化によって人口の流入がみられる市、都
どの地理的な要因で、昼夜間人口比率が100%
市の成熟化・高齢化・サービス経済化が進展し
近辺に集中しており(図表9)、生活圏が自市
ている市など、都市のライフサイクルにおい
町村に限られているケースが多い。地理的に
て各々局面が異なっている状況が読み取れる。
隔離されている他に、①交通基盤の整備が不
特 集
39
図表8 昼間人口が少ない市町村と県外通勤・通学者が多い市町村の割合
(%)
85
80
75
70
65
60
55
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
県外に人口吸引力が
強い市町村がある
が県
5 外
%へ
以の
上通
の勤
市・
町通
村学
の者
割比
合率
埼玉
奈良
神奈川
京都
千葉
茨城
滋賀
和歌山
生活圏が自
市町村内
北海道
0
岐阜
佐賀
栃木
三重
大阪
兵庫
10
20
30
40
県内に人口吸引力が
強い市町村がある
東京
群馬
岩手
山梨
熊本 長野
岡山
山口
高知
愛媛
愛知
静岡 青森
福島
宮城
長崎
秋田
宮崎 鹿児島 沖縄
広島 大分 新潟 石川 富山
徳島
香川
島根
福岡
鳥取
福井
昼夜間人口比率が90%
以下の市町村の割合
山形
50
60(%)
(備考)1.昼夜間人口比率=昼間人口÷夜間人口
2.総務省『国勢調査(00年)』より作成
十分である、②老年人口割合が高いために人
口移動が活発でない、③工場集積地などの労
図表9 昼夜間人口比率の相対頻度分布
(%)
45
働力需要が強い近隣市町村が存在していない、
40
などの特徴がある市町村では昼間と夜間の人
35
口に大きな変化がみられない。このような市
30
市
町
村
の
割
合
全 国
埼 玉
鳥 取
北海道
25
町村が多い県では、景気変動の影響が伝播し
にくいという特徴があるものと推測される。
他方、鳥取県・埼玉県・千葉県・福岡県・神
奈川県などは、昼間の人口が夜間に比べて10%
20
15
10
5
0
以上も減少する、通勤などに伴う流出超過幅が
大きい市町村が多い。ただ、埼玉県や神奈川県
は県外へ流出するケースが多い一方、鳥取県や
60
70
80
90
100
110
120
130(%)
(備考)1.昼夜間人口比率(横軸)は5%刻み(例えば、横軸の
100%は当該都道府県の市町村のうち、昼夜間人口比率
が95∼100%の間にある市町村が占める割合を示す)
2.総務省『国勢調査(00年)』より作成
福岡県は通勤・通学圏が県内にとどまる市町村
市として県内の他市町村から人口を吸引して
が多いという違いがみられる。例えば、鳥取県
おり、県内の雇用機会を提供する役割を果たし
は、鳥取市の昼夜間人口比率が112.4%、倉吉市
ている。一方、埼玉県は、市部で昼夜間人口比
が114.2%、米子市が108.2%であり、この3市で
率が100%を上回るのは熊谷市・秩父市・本庄
3.7万人の人口が昼間に増加する(注)16。この3市
市の3市のみであり、この3市でたった6,599人
は、鳥取県の東部・中部・西部の中核をなす都
しか昼間の人口が増加しない(注)17。埼玉県で
(注)16.3.7万人は鳥取県の夜間人口の6.0%に当たる。鳥取県の昼夜間人口比率は100.2%であり、他県からの流入超過数は1,283人
にとどまる(総務省『国勢調査(00年)』
)
。
17.埼玉県の町村部で昼夜間人口比率が100%を上回るのは、三芳町、滑川町、玉川村、大滝村、児玉町、川本町の6町村
40
信金中金月報 2004.11
は、県外へ通勤・通学する者は119万人、夜間
老年人口割合が高く、東京圏の方が働き盛り
人口の17.3%に相当し、大半の市町村は特別区
の世代の割合が高い、②大阪圏の方が単独世
などへ通勤する多数の労働者を抱えている。埼
帯割合は低く、世帯人員数が多いなど、大家
玉県の他に、奈良県・神奈川県・京都府・千
族傾向が比較的強い一方で、高齢者のみの世
葉県などで、特別区や大阪市といった大都市
帯も多く、高齢化が進展している、③大阪圏
のベッドタウンとして機能している市町村が
の方が共働き世帯割合や女性の労働力人口比
多い。
率が低いうえ、保育施設が充実しており、合
計特殊出生率が高い、④大阪圏の方が失業率
(2)東京圏と大阪圏のベッドタウンの比較
は高く、雇用環境は東京圏の方が良好である、
前述したように、特別区は303万人、大阪市
⑤大阪圏の方が製造業に従事している労働者
は107万人もの人口が昼間に増加するほど人口
が多く、東京圏はサービス業就業者が多い、⑥
吸引力が強い大都市であるが、その両ベッド
東京圏と大阪圏では課税対象所得はおおむね
タウンの市町村間には、類似点や相違点を見
同水準であるが、地方税収割合は東京圏の方
出すことができるのであろうか。本節では、東
が高い一方、人口当たり市町村歳出額は大阪
京圏と大阪圏のベッドタウン市町村(注)18に関す
圏の方が多い、などの相違点が挙げられる。
る各指標の平均値が統計的に同水準とみなせ
大阪平野の面積は関東平野の6分の1しかな
るのかを調べてみた(図表10)。
く、大阪圏のベッドタウンは生駒山地や北摂
具体的には、①大阪圏の方が年少人口割合・
山地などを越えて形成されている。このため、
図表10 東京圏と大阪圏のベッドタウン市町村(平均値)の比較
粗出生率(人口1,000人当たり、人)
合計特殊出生率(人)
東京圏
大阪圏
8.82
9.29
判定
*
商業就業者比率(%)
東京圏
大阪圏
22.46
22.82
判定
1.23
1.31
**
サービス業就業者比率(%)
29.35
27.53
**
年少人口割合(%)
14.27
14.98
**
労働力人口比率(女、%)
47.03
42.27
**
老年人口割合(%)
13.27
14.96
**
完全失業率(%)
**
2.77
2.90
**
平均課税対象所得(納税義務者当たり、万円)
24.25
19.66
**
平均世帯人員数(人)
単独世帯割合(%)
4.74
5.60
404.27
404.32
地方税収割合(%)
49.33
41.22
**
高齢世帯割合(%)
10.48
13.36
**
市町村歳出額(1人当たり、万円)
29.40
36.05
**
共働き世帯割合(%)
27.44
25.60
**
保育所在所児数(0∼5歳児100人当たり)
19.18
23.35
**
**
工業集積度(%)
7.15
8.07
保育所入所待機児童数(在所児100人当たり)
3.18
1.40
大型小売店店舗数(1万人当たり)
1.29
1.17
病床数(1万人当たり)
104.54
107.86
18.77
21.70
15∼19歳人口の対5年前10∼14歳人口比率(%)
108.30
103.79
製造業就業者比率(%)
**
**
(備考)1.ベッドタウン市町村の定義は、東京(大阪)の場合、都(府)内他市町村への通勤・通学者比率が20%以上、埼玉・千葉・
神奈川(京都・兵庫・奈良)は県外他市町村への通勤・通学者比率が10%以上を目安とした。
2.判定は、*の数が多いほど東京圏と大阪圏の平均値が同水準であるとはいえないことを示す(*;有意水準5%、**;
有意水準1%、ウェルチ検定)。
3.総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
(注)
18.ベッドタウン市町村の定義は、東京(大阪)の場合、都(府)内他市町村への通勤・通学者比率が20%以上、埼玉・千葉・
神奈川(京都・兵庫・奈良)は県外他市町村への通勤・通学者比率が10%以上を目安とした。
特 集
41
山村的な特性と居住都市としての側面を合わ
に勤める人口が多いので、平均的な所得水準
せ持つ市町村が少なくないことが、世帯人員
は高い傾向がある。ベッドタウン市町村を抱
数や老年人口割合・高齢世帯割合の違いに影
える都道府県の中には、所得水準が低い農村
響していると考えられる。また、大阪圏の方
部も含んでいるケースがあるために、都道府
が保育施設は充実しているものの、雇用環境
県内で市町村間の所得格差が開いている県も
が厳しいこともあり、女性の社会進出が進ん
見受けられる。
でいない。ただ、子供を養育するという側面
そこで、都道府県の中で各市町村の課税対
では環境が整っており、東京圏よりも合計特
象所得が平等に近いかどうかをみるために、ジ
殊出生率が高く、少子化のペースは東京圏に
。京都府・
ニ係数(注)19を算出してみた(図表11)
比べて抑制されている。
千葉県・沖縄県・兵庫県・奈良県・茨城県な
また、景気面では、大阪圏のベッドタウン
ど、おおむね特別区・大阪市・福岡市周辺の
の方が製造業就業者は多いため、輸出主導の
府県でジニ係数が比較的高く、所得格差が開
回復局面における景気波及効果は大阪圏の方
いている。京都府では、6分類のベッドタウン
が強い可能性がある。
型に該当する市町村の課税対象所得の平均値
は388.3万円であるが、それ以外の市町村の平
(3)ベッドタウンと農村部が混在する地域で
均値は309.8万円にとどまる。府外への通勤・
は所得格差が大きい
通学者比率が28.5%に達する木津町が445万円
ベッドタウンでは、就業者層が厚く、特別
と府内で最も高く、28.7%の加茂町も431万円
区や大阪市などの大都市に本社を置く大企業
と2番目に高い。千葉県もジニ係数が高いが、
図表11 都道府県における市町村間の平均課税対象所得格差(ジニ係数)
0.08
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
(備考)1.数値が0に近いほど市町村別の課税対象所得分布が平等に近いことを示す。
2.課税対象所得は納税義務者当たりの数値
3.総務省『統計でみる市区町村のすがた』より作成
(注)
19.数値が0に近いほど市町村別の課税対象所得分布が平等に近いことを示す。
42
信金中金月報 2004.11
これは、特別区など県外への通勤・通学者比
あり(注)20、他の指標と比べても強い相関関係
率が高い(5%以上)市町村の割合が34.1%と
が認められ、所得水準が高い市町村は合計特
埼玉県の80.0%に比べると低く、浦安市や千葉
殊出生率が低い傾向を示している。
ニュータウンを形成する印西市・白井市など
このことは、合計特殊出生率が上位25%に
で所得水準が高い一方で、農村部に含まれる
含まれる市町村と下位25%に含まれる市町村
市町村が多いことが影響している。一方、神
について、課税対象所得の相対頻度分布(ヒ
奈川県・東京都・埼玉県・大阪府などは、大
ストグラム)を描くと、明らかに下位25%の
半の市町村が大都市のベッドタウン化してい
方が、所得水準が高い方へ分布の形状がズレ
るため、所得水準格差が著しく開いていると
ていることからも理解できる(図表12)
。例え
いう状況ではない。
ば、埼玉県鳩山町では、課税対象所得が429万
円と高水準であるが、合計特殊出生率は0.97人
(4)ベッドタウン型は出生率が低く、少子化
と極めて少ない(注)21。所得水準が高いと、①金
への対応が課題
銭面での老後不安が少ないので、子供に老後
ベッドタウン市町村の特徴として、所得水
を世話してもらうという意識が低い、②子供に
準が高いことに加え、合計特殊出生率が低い
十分な養育を施そうとするインセンティブが
ことが挙げられる。全市町村に関して合計特
働くので、生涯出生数が抑えられる、③晩婚に
殊出生率と課税対象所得の相関係数を求める
よって物理的に出産機会が限られる、などの要
と△0.4423となる。この数値は統計的に有意で
因によって、出生率が低くなると考えられる。
図表12 合計特殊出生率が高い市町村(上位25%)
と低い市町村(下位25%)の平均課税対象所得と
15∼19歳人口増減率の相対頻度分布
(%)
9
8
7
(%)
25
市
町
村
の
割
合
市
町
村
の
割
合
20
人口流出
超
人口流入
超
6
5
<出生率>
15
<出生率>
上位25%
4
下位25%
上位25%
下位25%
10
3
2
5
1
0
220 250 280 310 340 370 400 430 460 490(万円)
納税義務者1人当たり平均課税対象所得
0
10
40
(%)
70
100
130
15∼19歳人口の5年前の10∼14歳人口に対する比率
(備考)厚生労働省『人口動態保健所・市区町村別統計(98∼02年)』、総務省『国勢調査(95,00年)』より作成
(注)
20.課税対象所得と合計特殊出生率の相関係数が0であるという仮説を、有意水準1%で棄却する。
21.鳩山町は、人口が16,529人であり、日立製作所基礎研究所や気象衛星センター(気象衛星通信所)
・宇宙航空研究開発機構
(地球観測センター)
・東京電機大学などの研究施設が多いので、これらの研究者の動態が反映されている可能性がある。
特 集
43
合計特殊出生率と相関関係が強い指標とし
ては、課税対象所得の他に15∼19歳人口増加
率(対5年前の10∼14歳人口比)が挙げられる
積している市町村(注)22と対比することでみるこ
とにしたい。
工業集積度が高い市町村が多い都道府県は、
(相関係数は△0.4433、図表12)。若年層の流
滋賀県・愛知県・静岡県・三重県・山梨県で
出が著しい市町村では、子供の役割(跡継ぎ・
あり、商業集積度が高い市町村が多いのは、香
労働力・扶養など)に期待する向きがコスト
川県・大阪府・愛知県・富山県・福岡県とい
要因としてとらえる傾向よりも強く、流入が
った平均標高が低い、または、中山間地域(注)23
著しい市町村では養育環境が不十分になるこ
が少ない都道府県である(図表13)。
とが影響していると考えられる。
主な特徴点を挙げると(図表14)
、まず、工
ベッドタウン型では、人口の流入が持続し
業集積地は、工場の立地件数や世帯人員が多
ているうちは都市の活性化がもたらされるが、
いことによって、女性の労働力人口割合・共
合計特殊出生率が低いため、都市が成熟化す
働き世帯割合が高いうえ、外国人労働者の活
るにつれて高齢化が急速に進展する点に留意
用度も高い。また、高齢化が進んでいる一方、
する必要がある。
高齢者のみの世帯が少ないなど、家族相互扶
助の傾向が強い。例えば、静岡県豊岡村では、
4.郊外工業型とサービス業集積地の
特徴
(1)工業集積地と商業集積地の比較
ヤマハや同和メタルなどの工場が立地してい
るが、同村の平均世帯人員数は3.8人、共働き
世帯割合は53.4%に達する。このような地域で
6分類では、都市的な要素も考慮しながら、
は、短期的な景気変動で生じる失業などのリ
家族相互扶助度が高い市町村を「郊外工業型」
スクが、家族で相互に扶助することで軽減さ
と定義した。これは、このような性質を帯び
れると考えられる。
ている市町村は、郊外で工場の立地に伴って
一方、商業集積地は都市化が進んでおり、単
都市が形成・維持されたケースが多いことに
独世帯割合・失業率・離婚率・サービス業就
由来する。例えば、工業集積度(当該市町村
業者比率が高い。工業集積地は、商業集積地
の工場に勤めている従業者数の対人口比)が
と昼夜間人口比率が同水準であるにもかかわ
高い(20%以上)市町村のうち、68.5%が郊外
らず、サービス業の集積度が低いなど、都市
工業型に分類される。それでは、郊外工業型
としての産業構造に偏りがある(注)24。
の市町村が大半を占める工業集積地とは、一
また、工業集積地は、労働力を他市町村へ
体、どのような特徴が強いのかを、商業が集
供給する側面も強い。例えば、三重県朝日町
(注)
22.商業集積地は人口当たり商業販売額が300万円以上の市町村とした。物流センターなどが存在する市町村で高まる傾向がある。
23.中山間地域とは、一般的に「平野の周辺部から山間部に至る、まとまった耕地が少ない地域」とされる。中山間地域が少
ない都道府県では、おおむね大部分が平野、あるいは、急峻な山岳地帯を背負っているため、平野部に比較的人口が集中し
やすい。
24.工業集積地は商業よりも規模の経済性が強く、大勢の労働者を投入するケースが多いため、製造業のウエイトが高まる面
もある。
44
信金中金月報 2004.11
図表13 都道府県における工業集積市町村と商業集積市町村の割合
(%)
町商
村業
の集
割積
合市
高松市、宇多津町、
国分寺町
香川
大阪市、吹田市、 富山
東大阪市
12
鳥取
東京
大門町、富山市、 飛島村、大口町、
実線は工業集積度の
大島町
音羽町
高い市町村、
破線は商業集積度の
高い市町村の例
新潟
8
宮城
旧大安町、旧員弁町、
多気町
石川
京都
北海道
山形 島根
兵庫
広島
埼玉
佐賀
6 青森 山口
群馬
愛媛
三重
岡山
山梨
岩手
長野 岐阜
和歌山
茨城
秋田
栃木
4 徳島 千葉
高知
福島
福井 忍野村、昭和町、
熊本
宮崎 長崎
神奈川
玉穂町
鹿児島
2
沖縄
大分
奈良
0
愛知
福岡市、新宮町、
志免町
福岡
10
豊山町、名古屋市、
飛島村
大阪
0
5
10
豊岡村、湖西市、
竜洋町
静岡
竜王町、高月町、
愛知川町
滋賀
工業集積市町村の割合
15
20
25
30(%)
(備考)1.工業集積度=製造業事業所の従業者数÷人口とし、
20%以上の市町村を工業集積市町村とした。
2.商業集積市町村は人口当たりの商業販売額が300万円以上の市町村とした。
3.総務省『事業所・企業統計調査(01年)』、経済産業省『商業統計表(01年)』などより作成
図表14 工業集積市町村と商業集積市町村(平均値)の比較
工業
商業
判定
商業
105.52
106.87
判定
粗出生率(人口1000人当たり)
9.12
9.93
**
合計特殊出生率(人)
1.52
1.48
*
他市町村への通勤者比率(%)
45.97
32.50
**
年少人口割合(%)
15.67
15.28
*
他市町村からの通勤者比率(%)
51.44
38.65
**
老年人口割合(%)
18.59
17.32
**
サービス業就業者比率(%)
20.54
26.41
**
外国人人口比率(%)
1.21
0.88
**
労働力人口比率(女、%)
52.07
50.18
**
平均世帯人員数(人)
3.32
2.85
**
完全失業率(%)
3.60
4.37
**
単独世帯割合(%)
18.12
25.13
**
平均課税対象所得(納税義務者当たり、万円) 330.14
342.83
**
高齢世帯割合(%)
11.49
13.21
**
地方税収割合(%)
39.44
39.40
共働き世帯割合(%)
40.81
32.40
**
保育所在所児数(0∼5歳児100人当たり)
36.53
31.24
**
1.85
2.25
**
金融・保険事業所数(1万人当たり)
4.72
9.28
**
離婚率(人口1,000人当たり)
昼夜間人口比率(%)
工業
(備考)1.判定は、*の数が多いほど工業と商業の平均値が同水準であるとはいえないことを示す(*;有意水準5%、**;有意
水準 1%、ウェルチ検定)。
2.総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
では東芝・日立金属などの工場が集積してお
働者が他市町村へ通勤する比率が高まってし
り、同町で働いている人の75%が他市町村に
まうことが考えられよう。工業集積地は、長
住んでいる一方、同町に住んでいる就業者の
期的には産業構造のすそ野を広げるといった
61%が他の市町村で働いている。工業集積地
多様化・安定化へ向けた動きを進める必要性
では、当該市町村で非基盤活動(注)25に従事する
が高まろう。
者が相対的に少なく、他市町村のベッドタウ
また、富士重工業や三洋電機東京製作所な
ン機能も担っているケースもみられるため、労
どの工場が立地する群馬県大泉町では、外国
(注)
25.非基盤活動とは、他市町村から所得を獲得する経済活動(基盤活動)を支える生活関連サービスなどを供給する活動のこと。
特 集
45
人人口比率が11.9%にまで高まるなど(注)26、将
コ町(北海道)
、伊香保町(群馬)
、安曇村(長
来的には労働力不足が深刻化するおそれがあ
野)といった温泉地・スキー場などのリゾー
る。女性や高齢者の労働市場への参入が円滑
ト地・観光地が多く含まれる。
に進まなければ、生産加工などに携わる労働
力や技術者の確保が困難になる。
自然活用型と都市型の主な特徴としては、①
両者共に昼夜間人口比率の平均値が100%を上
回り、人口吸引力が比較的高い、②自然活用
(2)サービス業集積地は知識集約型と労働集
型の方が、老年人口割合が高いにもかかわら
約型に二極化
ず、労働力人口比率が同水準で失業率が低く、
サービス業が集積しているのは、主に情報
共働き世帯が多い、といったことが挙げられ
サービスや娯楽産業などの供給拠点となる中
る(図表15)。
心地のほか、スキー場や温泉街などの観光や
自然活用型サービス集積地では、産業基盤
高齢者に関連する社会福祉サービスが主力産
が脆弱な周囲の市町村の雇用を創出している
業となっている地域である。例えば、サービ
側面が強く、観光地の影響力はその周辺地域
ス業集積度(当該市町村でサービス業に従事
へも及んでいる。また、観光を通じて大都市
している就業者数の対人口比)が全国平均値
などから所得を獲得しているため、大都市の
を上回る市町村の6分類別構成比は、中心地型
景気動向が観光地に及ぼす影響も無視できな
が35.0%と最もシェアが大きく、特定産業依存
い。安定した観光需要の確保に加え、人材の
型(27.6%)や少子高齢型(19.1%)も比較的
流出防止や労働力の高齢化などへの対策も講
高い。サービス業といっても、主に知識集約
じる必要があろう。
的な都市型と労働集約的な自然活用型に二極
化していることがわかる。そこで、サービス
業集積度が高い市町村を、人口集中度を基に
5.農村型の特徴
(1)小規模市町村では、農林水産業や公共分
都市型サービス集積地と観光などが主力産業
野への依存度が高い
である自然活用型サービス集積地に分けて比
農林水産業に従事している就業者の比率は、
較してみた(注)27。例えば、都市型には大阪市や
全国平均でみると5%程度に過ぎない。しかし、
特別区などの大都市のほか、つくば市(茨城)
、
市町村別の農林水産業就業者比率を単純平均
成田市・浦安市(千葉)
、泉佐野市(大阪)と
すると、その数値は15%を超える(図表16)。
いった研究施設・空港・テーマパーク所在地
確かに、多種多様な業種に就業する機会が多
などが含まれる。一方、自然活用型は、ニセ
い大都市やその周辺部では、商業・サービス
(注)
26.総務省『国勢調査(00年)
』
。大泉町はブラジル人が多いが、町内全小学校(4校)に「英語科」を新設する「大泉町英語教
育特区」を04年10月中に国に申請することを決め、共通言語としての英語に力点を置くことで外国人との共生を目指す方針
である。
27.サービス業集積度が全国平均値を上回る市町村のうち、人口集中地区が存在しない市町村を自然活用型、存在する市町村
を都市型と便宜的に区分した。
46
信金中金月報 2004.11
図表15 自然活用型と都市型サービス集積市町村(平均値)の比較
自然活用
都市
判定
合計特殊出生率(人)
1.59
1.51
人口の社会増加率(%)
-0.63
-0.53
年少人口割合(%)
13.72
15.01
**
老年人口割合(%)
27.70
19.22
平均世帯人員数(人)
2.89
核家族世帯割合(%)
29.39
*
平均課税対象所得(納税義務者当たり、万円) 311.03
336.36
**
平均法人申告所得(法人当たり、100万円)
84.68 192.97
**
**
労働力人口比率(男、%)
74.14
73.95
2.71
**
労働力人口比率(女、%)
49.94
49.03
*
50.90
56.71
**
雇用者比率(%)
68.40
76.23
**
高齢世帯割合(%)
22.80
15.88
**
完全失業率(%)
2.85
4.49
**
共働き世帯割合(%)
36.67
30.15
**
病床数(1万人当たり)
159.87 238.19
**
持家比率(%)
78.53
61.96
**
市町村歳出額(1人当たり、万円) 110.09
41.99
**
101.21 105.00
**
地方税収割合(%)
17.01
34.09
**
5.24
10.71
**
他市町村への通勤者比率(%)
24.72
24.36
他市町村からの通勤者比率(%)
判定
26.85
昼夜間人口比率(%)
**
自然活用 都市
金融・保険事業所数(1万人当たり)
(備考)1.サービス業集積市町村は、サービス業従業者の人口に対する比率が全国平均を上回る市町村とした。そのうち人口集中
地区(DID)を含まない市町村を自然活用型、含む市町村を都市型とした。
2.判定は、*の数が多いほど自然活用型と都市型の平均値が同水準であるとはいえないことを示す(*;有意水準5%、
**;有意水準1%、ウェルチ検定)。
3.総務省『統計でみる市区町村のすがた』などより作成
業・通信運輸・金融などに従事する者が多く、
農林水産業への就業者数は少ない。しかし、小
規模な町村部では人口規模や地理的な要因も
あり、他産業の発達が困難なために農林水産
図表16 産業別の就業者構成比
(全国平均と市町村別の平均値)
(%)
25
45°
線
市
町
村
別
の
平
均
20
小さな市町村の
方が重要な産業
製造業
業への依存度が高い市町村は極めて多い。
図表17は、市町村別に基盤活動就業者の全
サービス
農林水産業
商業
15
建設業
就業者に対する比率を算出し、都道府県ごと
10
に単純平均したグラフである。北海道・東北・
中国・四国・九州地方で農林水産業を産業基
盤にしている市町村が多いことがわかる。製
造業を産業基盤にしている市町村が多いのは
関東・北陸・東海・近畿地方の各県、サービ
公務
5
大きな市町村の
方が重要な産業
運輸通信
全国平均
電気ガス 金融
0
0
不動産
5
10
15
20
25
30(%)
(備考)1.分類不能を除いてから構成比を算出した。鉱業は
農林水産業に含めた。
2.総務省『国勢調査(00年)』(大分類)より作成
ス業は東京都・神奈川県や沖縄県ぐらいのも
れだけ全体の就業者が増加するのかを示した
のである。日本には農林水産業が他市町村か
地域乗数をみると、数値が低い市町村が多い
ら所得を獲得する役割を担っている市町村が
のは、主に北海道・東北・信越・中国・四国
多く、製造業やサービス業を基盤活動として
西部・九州(福岡・大分県を除く)
・沖縄の各
いる市町村は比較的限られているということ
道県である(図表18)
。これらの道県では、農
に留意する必要があろう。
林水産業などの基盤活動に従事する就業者が
また、基盤活動就業者が増加した時に、ど
増加したとしても、自市町村の需要を満たす
特 集
47
図表17 都道府県の基盤活動就業者の全就業者に対する比率(市町村別の平均値)
(%)
35
30
25
20
15
10
5
0
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
1次産業
製造業除く2次産業
製造業
サービス除く3次産業
サービス
(備考)1.基盤活動就業者は産業別就業者構成比が全国平均より高い部分に相当する就業者
2.総務省『国勢調査(00年)』(大分類、従業地)より作成
図表18 地域乗数が全国上位50%の市町村の各都道府県における割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
(備考)1.地域乗数=従業地就業者数÷基盤活動就業者数。基盤活動就業者数が増加した時、その増加分に地域乗数を掛けた分の
就業者が全体で増加することを示す。
2.総務省『国勢調査(00年)』(大分類、従業地)より作成
他の産業が発達しにくく、他市町村に財・サ
は、官公庁や電力・ガス・水道などの公共分
ービスの供給を依存している市町村が多いこ
野への就業者比率が高い市町村の割合が大き
とを示している。
い(図表19)
。沖縄県では粟国村・渡名喜村・
また、過疎化・高齢化の進展や島嶼部・辺
南大東村・渡嘉敷村といった島嶼で役場(注)28な
地などの地理的な条件によって、公共分野へ
どの公共分野で働いている労働者が多い。一
の依存度を高めざるを得なかった市町村もあ
方、島根県・北海道・沖縄県などは市町村歳
る。例えば、沖縄県・北海道・和歌山県など
出における普通建設事業費(対人口)が大き
(注)
28.沖縄県には県が設置・管理する第三種空港が12(宮古・石垣・久米島・伊江島・粟国・慶良間・北大東・南大東・下地島・
多良間・波照間・与那国空港)もあり、空港勤務者等を含めるとさらに高まる(公務には学校や空港等で働く地方公務員は
含まれていない)
。
48
信金中金月報 2004.11
図表19 公共分野への依存度が高い(全国上位25%)市町村の割合
(%)
上公
位共
25 分
%野
市就
町業
村者
割比
合率
全
国
80
70
60
50
沖縄
鹿児島
40
島根
長崎
三重
30
大阪
20
佐賀
福島
千葉
神奈川
宮城
秋田
10 茨城
0
北海道
和歌山
奈良
埼玉
静岡
香川 愛知
山形
栃木
0
青森
東京
福岡
京都
宮崎
福井
高知
徳島
岐阜
山口 石川
富山
山梨
岡山
滋賀
熊本
新潟
岩手
鳥取
兵庫
大分
愛媛
長野
広島
普通建設事業費(対人口)
全国上位25%市町村割合
群馬
10
20
30
40
(備考)1.公共分野は公務に電気・ガス・熱供給・水道を加えたもの。
2.総務省『国勢調査(00年)』などより作成
50
60
(%)
い市町村の割合が高い。島根県では頓原町・
など、人口の集積といった意味で都市化して
海士町・旧布施村・旧大和村などで公共事業
いるとは限らない。まず、都道府県ごとに世
規模が大きく、これらの市町村では、国を通
帯人員数が多い市町村の割合をみると、東北・
じた財政移転に対する依存度が高い。
北関東・北陸地方の各県や岐阜県・滋賀県・
鳥取県・佐賀県で大家族傾向が強いが、北海
(2)過疎市町村の間でも家族相互扶助の度合
道・東京都・山口県・高知県・宮崎県・鹿児
いは大きく異なる
島県では世帯人員数が多い市町村は少ない(図
近代化の流れの中で、日本の社会構造は都
表20)
。北海道や高知県・鹿児島県といった農
市化や核家族化(世帯人員数の減少)が進展
村部が多くを占める地域でも、世帯人員数が
してきた。しかし、世帯人員数の減少が顕著
少ないという点では東京都や大阪府などと共
な市町村が、必ずしもDID人口比率の高まり
通している。
図表20 平均世帯人員数が多い市町村の割合
(%)
100
全国上位20∼40%
全国上位20%
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
(備考)総務省『国勢調査(00年)』より作成
特 集
49
そこで、過疎市町村と都市化が進んでいる
して、過疎市町村の最頻値は26∼28%と高く
過密市町村(注)29の世帯人員構成に関する相対頻
(図表21)、高齢化の進展や若年層の都市部へ
度分布を描いてみよう(図表21)
。過密市町村
の流出が顕著な地域で世帯人員数が少ない状
は最頻値である2.80∼2.85人の近辺に集中して
況にある。
いるが、過疎市町村の分布はかなりバラツキ
では、都道府県ごとに若年層の流出が激しい
がみられる(注)30。過疎市町村の方が大家族傾向
市町村の割合をみることにしよう。図表22は、
の強い市町村が多い一方で、世帯人員数が2.5
10歳代前半だった若者が、5年後にどれだけ当
人に満たない市町村の割合は過密市町村より
該市町村を去っていったのかを示したグラフ
も高い。つまり、過疎市町村といえども、世
である。例えば、高知県では、30%以上が去
帯人員の構成には著しい格差が生じていると
っていった市町村の割合は35.8%に達する。10
いうことがわかる。ただ、過疎地域で世帯人
歳代後半の人口が30%減少したということは、
員が少ない市町村が多いといっても、その中
10歳代前半に当該市町村に住んでいた者が、高
身は若年層の単独世帯が多い大都市とは異な
校までは地元に残り、高校卒業後はそのすべ
り、高齢者のみで暮らす世帯が多いことが主
ての者が地元を離れる(あるいは死亡する)ケ
因である。過密市町村では、高齢世帯割合が
ースに等しい。高知県の他、鹿児島県・島根
10∼12%近辺の市町村が大半を占めるのに対
県・広島県など、おおむね中国・四国・九州
図表21 過疎・過密市町村の世帯構成の相対頻度分布
(%)
(%)
9 市
8
7
22
町
村
の
割
合
過疎
過密
全国
市
町
村
の
割
合
20
18
過疎
過密
全国
16
6
14
5
12
4
10
8
3
6
2
4
1
0
1.8
2
2.2
2.6
3.0
3.4
3.8
4.2 (人)
世帯人員数
0
2
10
18
26
34
42
50
58(%)
高齢世帯割合
(備考)1.過疎(過密)市町村は可住地1km2当たり人口が全国下位(上位)25%の市町村とした(ただし、過疎(過密)は人口集
中地区(DID)を含む(含まない)市町村を除いた)。
2.高齢世帯割合は高齢単身世帯と高齢夫婦世帯の割合を足した値
3.総務省『国勢調査(00年)』より作成
(注)29.過密(過疎)市町村は、可住地面積1km2当たり人口が全国下位(上位)25%の市町村とした(ただし、過疎(過密)市町
村は人口集中地区を含む(含まない)市町村を除いた)
。
30.過密市町村と過疎市町村の平均世帯人員数の母分散が等しいという仮説は有意水準1%で棄却される。
50
信金中金月報 2004.11
図表22 若年層の流出が多い市町村の割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
〈15∼19歳人口の5年前の10∼
14歳人口に対する減少率〉
10∼20%減少
20∼30%減少
30%以上減少
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
(備考)総務省『国勢調査(95、00年)』より作成
地方で若年層の流出が著しい市町村が目立つ。
しているが、特に東北地方で世帯人員数が多
一方、東北地方で大家族傾向が強いが、こ
い過疎市町村が多く、そのような市町村では
れには工業集積度が比較的高いことが影響し
工業集積度が高い。東北地方では、工場の立
ている可能性がある。過疎市町村を世帯人員
地が一定の雇用機会を創出し、中国・四国・
の多い市町村(上位25%)と少ない市町村(下
九州地方のような極度な若年層の流出は抑制
位25%)に分けて、工業集積度に関して相対
されている。
頻度分布を描いてみた(図表23左)
。そうする
と、工業集積度の最頻値は上位25%が7∼8%
(3)農村型は都市部からの財政移転に依存
で、下位25%が2∼3%であり、世帯人員数が
農村型の市町村では、産業基盤が乏しく、公
多い分布の方が工業集積度は高いことがわか
共分野への依存度が高いことから、国の財政
る。図表23右では、過疎市町村の中でも世帯
移転制度に依存する傾向が強い。財政力指数
人員数が多い市町村の工業集積度の分布を示
が低い市町村が多いのは、主に、北海道・北
図表23 過疎市町村の世帯人員別(上位25%と下位25%)工業集積度の分布
(%)
20
18
(市町村)
30
市
町
村
の
割
合
16
14
12
上位25%
下位25%
過疎全体
25
20
世帯人員数が過疎市町村
の中で上位25%に含まれ
る市町村は工業集積度が
高い方に寄っている。
10
8
6
4
2
0
過疎市町村の中で世帯
人員数が上位25%に含
まれる市町村の工業集
積度別の分布
15%∼
10∼15%
5 ∼10%
0∼5%
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30(%)
工業集積度
北青岩宮秋山福茨栃群千新富石福長岐愛三奈鳥島徳香佐熊大
海森手城田形島城木馬葉潟山川井野阜知重良取根島川賀本分
道
(備考)1.工業集積度=製造業事業所の従業者数÷人口
2.総務省『国勢調査(00年)』、『事業所・企業統計調査(01年)』などより作成
特 集
51
東北・島根・四国(香川県を除く)
、九州(福
政サービスを受けられるとは限らない。ベッ
岡・佐賀県を除く)
・沖縄の各道県である(図
ドタウン型のうち、1人当たり歳出額が低い市
表24)
。一方、埼玉県・神奈川県・東京都・静
町村(全国下位25%)が占める割合は70.2%に
岡県・愛知県・大阪府など、企業や工場の集
達し、郊外工業型も53.5%、中心地型も35.2%
積地や大都市のベッドタウンでは財政基盤が
と割合が高い(図表26)
。一方、少子高齢型は
総じて強い傾向にある。
2.3%、農村勤労型は3.1%、特定産業依存型は
例えば、6分類のベッドタウン型では、財政
力指数の数値が全国上位25%に含まれている
図表25 財政力指数が全国上位25%に含まれ
る市町村の割合
市町村の割合が59.6%に達し、同様に郊外工業
80
(%)
型が55.7%、中心地型が47.2%を占めた(図表
70
59.6
60
25)
。その一方で、高齢化・過疎化が進展して
50
産業基盤が脆弱な少子高齢型は0.7%、所得水
40
財政が豊かな市町村
はベッドタウン型、
郊外工業型、中心地
型に集中
55.7
47.2
30
準が相対的に低水準である農村勤労型は2.7%、
20
工業集積度が低い市町村を多く含む特定産業
10
(注)
31
依存型は12.3%にとどまる
。このような市
0
町村は、自立的に行政サービスを実施してい
くことが極めて困難な状況にある。
また、財政力が強いからといって、厚い行
12.3
2.7
中
心
地
型
ベ
ッ
ド
タ
ウ
ン
型
郊
外
工
業
型
農
村
勤
労
型
0.7
特
定
産
業
依
存
型
少
子
高
齢
型
(備考)地方財務協会『市町村別決算状況調(01年度)』などよ
り作成
図表24 都道府県における市町村別財政力指数の分布
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
1.0以上
0.5∼1.0
20
10
0.25∼0.5
0.25未満
0 北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
海森手城田形島城木馬玉葉京奈潟山川井梨野阜岡知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄
川
道
山
島
(備考)1.財政力指数=基準財政収入額÷基準財政需要額の3か年平均
2.地方財務協会『市町村別決算状況調(01年度)』などより作成
(注)31.特定産業依存型に含まれる市町村には、原子力発電関連施設所在地や一部の企業城下町なども含まれるため、若干数値が
高まる。例えば、特定産業依存型に含まれ、原子力発電関連施設がある六ヶ所村(青森、ウラン濃縮工場や低レベル放射性
廃棄物埋設センターなどの原子燃料サイクル施設が立地)の財政力指数(01年度)は1.61、東海村(茨城、東海第二発電所
の発電量は茨城県内の電力消費量の約3分の1を占める)は1.34、大飯町(福井、大飯発電所(4基)の発電量は関西電力で最
大)は1.72と高水準である。
52
信金中金月報 2004.11
7.5%と低水準である。つまり、財政力が強い
税制度の見直しといった「三位一体改革」が
地域の方が、薄い行政サービスしか受けられ
議論されている。また、小規模な町村で、地
ない市町村が多いことを示している。これは、
方自治体の固定費削減や近隣地域における公
農村型の市町村から流出した者が都市型の市
共施設の重複投資解消のために、市町村合併
町村で所得を稼ぎ出し、その一部を国の地方
や都道府県による直轄統治を行う意義は大き
への財政移転制度を通じて仕送りをしている
い。農村型の市町村は、こうした地方行財政
ような状況である。行政サービスを実施する
改革や高齢社会の進展・農業への新規参入を
ためには固定的な費用を要するため、人口規
はじめとした構造調整圧力をバネとし、都市
模が大きい市町村の方が規模の経済性が働き、
型の市町村にできるだけ依存しない、自立的
1人当たり歳出額が逓減することは理解できる。
な産業構造・財務体質へ変貌を遂げる必要が
しかし、ベッドタウン型の市町村でも、人口
ある。
増加に伴う社会基盤整備の必要性の増大、保
育施設の未整備などに起因する低い合計特殊
出生率→将来的な少子化、団地の老朽化など
6.地域の実情に合わせた市町村運営
と市町村間の連携が必要
の問題を抱えており、市町村財政が比較的豊
全国の市町村を6つのタイプに分類して、各
かにもかかわらず、十分な行政サービスが提
タイプの特徴や課題について概観してきたが
(図表27)、地理・地形的、近隣市町村との役
供されているとはいえない状況である。
地方行財政において受益と負担のバランス
割分担や歴史的な要因などで、各々都市の形
を図る必要があることから、国から地方への
成過程が異なり、現在の市町村が特徴づけら
税源移譲・国庫補助負担金の削減・地方交付
れている側面が強いことがわかった。
図表26 1人当たり市町村歳出が全国下位25%
に含まれる市町村の割合
1つの都道府県においても、中心地、居住地
域、工業集積地、農村部・山間部など、複数
(%)
のタイプの市町村を内包しており、各々の地
80
70.2
70
60
1人当たりの市町村
歳出額が小さい市町
村は、ベッドタウン
型、郊外工業型、中
心地型に集中
53.5
50
40
35.2
域特性に応じた対応が求められている。その
ため、各市町村がその実情に合わせた対策を
行えるように市町村の裁量を広げることが、地
30
域の活性化につながり、また、都道府県内の
20
10
0
3.1
中
心
地
型
ベ
ッ
ド
タ
ウ
ン
型
(備考)図表25に同じ
郊
外
工
業
型
農
村
勤
労
型
7.5
2.3
特
定
産
業
依
存
型
少
子
高
齢
型
同じようなタイプの市町村はもとより、都道
府県外の同様なタイプの市町村との広域的な
連携を図りながら、お互いが抱える課題の解
決策を求め合える市町村運営の体制作りも必
要になっているのではなかろうか。
特 集
53
図表27 6分類別にみた主な課題
中心地型
ベッドタウン型
地方都市では東京の出先機関としての役割が大きい。北海道や東北などでは、中枢管理機能への特化度が高い
大都市が存在せず、東京への中枢管理機能の依存度が高い。
地方都市の中には高齢者のみの世帯の割合が高い都市もあり、老老介護など都市化に伴う社会保障・福祉への
一段の対応が必要
人口の流入により、官民の施設・サービスの供給が不足
ベッドタウン市町村の住民が中心地で所得を獲得し、国を通じて農村へ所得移転が行われている。
保育所が不足傾向にあり、共働き世帯の割合や女性の労働力人口比率が低く、合計特殊出生率が低い。
郊外工業型
生産拠点の海外移転のリスクが高い。
産業構造の多様化・安定化を進める必要がある。
将来的には労働力不足が予想され、労働力としての外国人への対策が必要
農村勤労型
都市化の進行による家族相互扶助の崩壊や工場の海外移転などによる労働需要の減少が懸念される。
貿易自由化や農業生産法人の株式会社化などによる農業の競争激化への対応が必要
特定産業依存型
少子高齢型
特定の産業や企業に依存しているので、安定した産業基盤が確立されている反面、事故・天災・企業の経営不
振などに伴うリスクが大きい。
人口流出が著しく、過疎化が進展している。
公共分野や農業への依存度が高いので、地方行財政改革や農業の競争激化による影響が大きい。
人口流出などにより、高齢世帯割合が高くなっており、高齢者サービス需要への対応が必要
少子高齢化が進み、生産年齢人口が少なく、産業基盤が脆弱なので、地方税収割合が極めて低い。
(備考)信金中金総合研究所作成
〈参考文献〉
大友篤『地域分析入門』東洋経済新報社(1982)
54
信金中金月報 2004.11
リレーションシップバンキング対応強化の「ガイド」としての中小企業白書
−地域金融機関はその利用価値を再認識すべき−
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
平野 雅史
(キーワード)中小企業白書、リレーションシップバンキング、創業、再生、廃業、個人保証
(視 点)
『リレーションシップバンキングの機能強化計画に関するアクションプログラム』の集中改
善期間はこの2004年度で最終年度を迎えた。今後のリレーションシップバンキングの対応強化
への取組みは、各地域金融機関が独自の対応策を模索していく必要があるだろうし、また、そ
のためには中小企業の経営や環境に対する洞察がより一層求められよう。
中小企業の経営課題や金融に対する期待等を多面的に考察した結果を総括して提供する中小
企業白書は、中小企業に関する論点の宝庫であり、地域金融機関が中小企業に対する洞察を深
め、リレーションシップバンキングに係る対応を強化する上での「ガイド」になり得るもので
ある。また、白書が誰でも入手容易であることは、中小企業の現状や金融への期待等に関する
認識を、地域金融機関役職員が広く共有するための教材になるとも言える。本稿では、今さら
にあえて中小企業白書を取り上げ、地域金融機関にとっての利用価値を再認識する機会につな
げていきたい。
なお、本稿をまとめるに当たり、中小企業白書の編纂に携わってこられた安田武彦前中小企
業庁調査室長(現東洋大学教授)よりコメントを得たので掲載している。
(要 旨)
●
中小企業白書は、中小企業基本法にもとづき毎年公表され、中小企業の現状を知る機会を国民
に提供するとともに、政策、研究者や支援関係者等が有する中小企業観に影響を与えている。
●
中小企業白書を時代ごとに振り返ると、「二重構造下での弱者」から「多様性ある先導者」
へと、経済社会において中小企業に期待される役割や中小企業観の変遷が見える。
●
アクションプログラムでうたわれる創業促進や再生支援、個人保証等の課題は、プログラム
に先立って白書で描写・指摘されている。すなわち、その時代における中小企業の経営課
題、中小企業金融における課題や期待は、白書を通じて把握することができる。
特 集
55
(2)中小企業白書の構成
1.中小企業白書
(1)中小企業白書の法的根拠
『中小企業白書』(以下、「白書」という。)
白書は、大きく「第1部」、「第2部」および
「施策」から構成される。
第1部では、前年度における中小企業の景況
は、年に1回、中小企業の動向および中小企業
や投資、金融環境、倒産等、中小企業の業況
に関して講じた施策に関して国会に報告する
分析にあてられている。
ことを定めた中小企業基本法(以下、
「基本法」
第2部は、第1部で行われた業況分析等を基
という。
)第11条にもとづき、経済産業省の外
本として、中小企業を巡る新しい動きにテー
局である中小企業庁が報告する内容を、広く
マを絞って考察を行っている。また、1968年
国民に公表するために発行される政府刊行物
以降、白書には副題が付けられているが、こ
である。毎年、5月の閣議決定および国会報告
の副題は第2部における考察の結果にもとづい
を経て『中小企業白書』として出版され、広
て命名される。副題は、その年の白書におけ
く国民に公表される。
る最大の主張を表明するとともに、その時代
また、白書は、1963年に基本法が制定・施
における中小企業を表すキーワードともなる。
行されて以降、毎年継続して公表、発刊され
この第1部と第2部でなされた考察の結果は、
ている。
中小企業政策当局としての中小企業に対する
なお、中小企業庁では、白書(本編)の公
課題認識を表明するものである。白書では、こ
表に先立って「中小企業白書のポイント」と
の課題認識や関連法令を踏まえて政府が講じ
してその概要を公表し、また、本編出版から
ようとする施策が説明されている。
一定期間の後には、本編の内容も同庁ホーム
ページで無料提供している
(URL : http://www.
chusho.meti.go.jp/hakusyo/index.html)。
図表1 中小企業基本法(抜粋)
(年次報告等)
(3)中小企業の研究者や支援者に与える影響
中小企業庁は、中小企業に関する現状分析、
調査研究に必要不可欠な各種統計の整備・発表
(注)
1
を占める。
においておよそ「独占的な地位」
第十一条 政府は、毎年、国会に、中小企業の動向及
中小企業庁の関連機関である中小企業総合事
び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告
業団(2004年7月に独立行政法人中小企業基盤
を提出しなければならない。
整備機構に再編)や民間シンクタンクへの委
2 政府は、毎年、中小企業政策審議会の意見を聴い
て、前項の報告に係る中小企業の動向を考慮して講
託調査、また、中小企業庁独自の内部調査等
じようとする施策を明らかにした文書を作成し、こ
にもとづく調査結果を用いて考察され、白書
れを国会に提出しなければならない。
は取りまとめられる。
(注)1.寺岡寛 中京大学教授は「中小企業庁(=経済産業省)は中小企業の調査研究、とりわけ、現状分析に不可欠な各種統計の
整備・発表において独占的な地位を占める」としている(出所:寺岡寛「日本における中小企業の研究動向」『大原社会問題
研究所雑誌 No.541』法政大学大原社会問題研究所(2003年12月)
)
。
56
信金中金月報 2004.11
こうして取りまとめられた白書は、中小企
業研究者等が中小企業に対して有する認識に
影響を与え、中小企業研究における「オピニ
(注)
2
的な存在である。
オンリーダー」
加えて、昨今多くの地域金融機関がその育
成を進めている、中小企業支援者として代表
的な「中小企業診断士」では、白書等の統計
調査への理解を、支援に従事する者に求めら
れるスキルとして位置づけ、その資格試験の
一部として取り上げている(図表2)。この結
果、白書は、支援者がいだく中小企業観の形
成に影響を与え、また、支援業務を通じて中
図表2 中小企業診断士試験と中小企業統計
中小企業政策審議会「新しい中小企業診断士制度につ
いて」(平成 12 年 6 月)より(抜粋)
中小企業診断士試験・養成過程科目構成(案)
8.中小企業経営
(科目設置の目的)
中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタン
トとしての役割を期待されており、中小企業経営の特
徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・
助言等を行う必要がある。そこで、各種統計等により、
経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解
するとともに、経営における大企業との相違を、数値
面でも質的な面でも把握する必要がある。
(内容)
(1)経済・産業における中小企業の役割、位置づけ
・各種統計に見る中小企業
(2)中小企業の経営特性と経営課題
・各種統計に見る中小企業経営の特徴
・中小企業経営にかかる最近の動向
小企業の経営に対しても影響を与えていると
と中小企業」と題された。60年代は、東京オ
言える。
リンピックが開催され、日本万国博覧会を控
えたわが国の高度成長期の後半にあたる。
2.中小企業白書に見る中小企業観の
変遷―弱者から先導者へ―
先述したとおり、白書の副題は、その年に
旧基本法制定当時の中小企業は、事業規模
の過小と事業所数の過多を背景に設備近代化
の遅れや中小企業相互間の過当競争が著しく、
おける最大の主張を表明するものであり、ま
生産性、賃金面などでの大企業との格差と取
た、その時代の中小企業をあらわすキーワー
引条件の不利性が問題視され、日本経済のい
ドとなる。副題の変遷を通じて、その時代の
わゆる二重構造の底辺に位置する存在として
中小企業の経営課題やそのトレンドを概観す
画一的に「弱者」ととらえられた。このため、
ることができる。ここでは、白書の副題を10
中小企業の経営近代化・高度化等による大企
年ごとに区切り、中小企業観等の変遷を振り
業との格差是正が政策上の目標とされた(注)3。
返る(図表3)。
②1970年代:試練に対応し、経済社会の発展
①1960年代:高度経済成長下の中小企業
に貢献する中小企業
63年に旧基本法が制定されて後、白書に初
70年代の副題では「試練」、「厳しさ」が合
めて副題が付けられた68年は「先進国への道
計4度にわたり用いられている。円の変動相場
(注)
2.出所:寺岡寛「日本における中小企業の研究動向」
『大原社会問題研究所雑誌 No.541』法政大学大原社会問題研究所(2003
年12月)
。また、植田浩史 大阪市立大学大学院助教授は「それぞれの時代を反映した『白書』の叙述は、当時の中小企業に対
する認識を代表するものであり、結果として政策や研究者、そして一般の中小企業に対する認識に影響を与えてきており、無
視することはできない」としている(出所:植田浩史『現代日本の中小企業』
)
。
3.
「中小企業基本法の改正と中小企業政策の新しい展開」
『産業調査情報 No.36』信金中金総合研究所 参照
特 集
57
図表3 わが国経済成長と中小企業白書副題の変遷
わが国の実質GDP成長率(四半期毎・前期比)の推移
(%)
18
神武景気
岩戸景気
オリンピック景気
いざなぎ景気
第一次石油危機不況
世界同時不況
円高不況
平成景気
平成不況
16
56∼73年度
(9.1%)
14
12
2004年1∼3月
(5.6%)
10
8
74∼90年度
(3.9%)
6
91∼2003年度
(1.3%)
4
2
0
-2
(年)
-4
56
58
60
62
64
66
68
70
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04
中小企業白書の副題
60年代
70年代
80年代
90年代
2000年代
68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
︵
1
9
6
3
︵
昭
和
38
︶
中
小
企
業
基
本
法
制
定
︶
︵
1
9
6
4
︵
昭
和
39
︶
中
小
企
業
白
書
刊
行
︶
先
進
国
へ
の
道
と
中
小
企
業
中
小
企
業
分
野
の
新
展
開
変 ※ 変 発 新 安 試 厳 新 変
わ な 化 展 た 定 練 し た わ
り し と へ な 成 の さ な り
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多 の 課 長 中 の 試 ゆ
く
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性 練 に 済 中 に を 時
小
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向 へ 小 活 生 代
企
代
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業
へ
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展
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業 対
応
80
年
代
を
拓
く
中
小
企
業
の
活
力
技
術
と
知
識
で
拓
く
中
小
企
業
の
経
営
多
様
化
す
る
経
済
社
会
へ
の
新
た
な
対
応
活
力
あ
る
経
済
社
会
を
支
え
る
中
小
企
業
の
新
た
な
展
開
新
し
い
流
れ
を
拓
く
中
小
企
業
の
活
力
変
革
の
時
代
に
挑
む
中
小
企
業
の
課
題
︱
技
術
・
情
報
・
人
材
︱
新
た
な
国
際
化
時
代
を
生
き
抜
く
中
小
企
業
の
活
力
新
た
な
産
業
構
造
の
転
換
に
挑
戦
す
る
中
小
企
業
円
高
下
に
お
け
る
産
業
組
織
構
造
の
変
化
と
新
た
な
発
展
へ
の
模
索
円
高
定
着
下
で
進
展
す
る
構
造
転
換
と
新
た
な
課
題
景
気
拡
大
下
で
進
行
す
る
中
小
企
業
構
造
の
変
化
と
新
た
な
発
展
へ
の
課
題
21
世
紀
に
向
け
て
挑
戦
を
続
け
る
中
小
企
業
新
中
小
企
業
像
︱
多
様
化
し
増
大
す
る
中
小
企
業
の
役
割
︱
中
小
企
業
の
課
題
と
進
路
︱
新
し
い
経
済
社
会
へ
の
構
造
変
化
の
中
で
構
造
変
化
の
中
で
の
﹁
変
革
﹂
と
﹁
創
造
﹂
新
た
な
る
可
能
性
へ
の
チ
ャ
レ
ン
ジ
中
小
企
業
の
時
代
︱
日
本
経
済
再
建
の
担
い
手
と
し
て
中
小
企
業
、
そ
の
本
領
の
発
揚
変
革
を
迫
ら
れ
る
中
小
企
業
と
企
業
家
精
神
の
発
揮
経
営
革
新
と
新
規
創
業
の
時
代
へ
I
T
革
命
・
資
金
戦
略
・
創
業
環
境
目
覚
め
よ
!
自
立
し
た
企
業
へ
﹁
ま
ち
の
起
業
家
﹂
の
時
代
へ
∼
誕
生
、
成
長
発
展
と
国
民
経
済
の
活
性
化
∼
再
生
と
﹁
企
業
家
社
会
﹂
へ
の
道
多
様
性
が
織
り
な
す
中
小
企
業
の
無
限
の
可
能
性
(備考)1971年(暦年)までに発行された中小企業白書は、年度末(3月末)までに発行され、当該年度の年をとり「…年版」の表
記をもって発行されていたが、「1972年版」からは発行時点の暦年をとり「…年版」の表記をもって発行されている。このた
め、中小企業白書には1971年版が存在しないこととなる。
制への移行、2度にわたるオイルショック、戦
業転換法、分野調整法、中小企業倒産防止共
後初めてのマイナス成長など、わが国経済や
済法など、厳しい環境変化への対応を支援す
中小企業の経営環境が厳しいものであったこ
る施策が講じられた。
とがうかがわれる。こうした環境のもとで、事
58
信金中金月報 2004.11
一方、この当時の白書には「ベンチャー企
業」が登場し(第1次ベンチャーブームの到
業に対する評価が前向きなものとなる一方、80
来)
、経済社会発展に貢献する積極的な中小企
年代の後半から開業率・廃業率が逆転し、中
業観による論調が強くなってくる。
小企業の減少が問題視されるようになった。
こうした課題認識のもと、
「過小過多」が問
③1980年代:環境変化に前向きに対応する活
題視された60年代とは大きく異なり、新分野
力ある多数の中小企業
進出や創業を促進する施策(新事業創出促進
80年代の副題には「活力」が4度、「拓く」、
法等)が施行され、99年11月には36年ぶりと
「挑む」が5度用いられ、成熟期に移行したわ
なる基本法の改正(図表4)に至っている(注)4。
が国の経済社会における中小企業の役割が、よ
り積極的にとらえられている。しかしながら、
⑤2000年代:わが国経済の変革を牽引する多
85年のプラザ合意を経て円高が進展した結果、
様な中小企業
輸出関連中小企業を中心に環境は厳しさを増
基本法の抜本改正を受けた2000年代は、90
し、80年代後半はこれを表した副題が付され
年代同様に開業率・廃業率の逆転現象が続い
ている。急速な円高や生産拠点海外化など産
てきた(図表5)。この環境下、90年代後半と
業組織構造の変化への対応が重視された。
合わせ「起業家(精神)
」
、
「創業」と、新たな
中小企業の創出を訴える副題が続いている。
④1990年代:わが国経済の再生を担う中小企業
バブル崩壊後の90年代は、日本経済が高度
成長期以降最も厳しい状況を迎える。中小企
2001年の「目覚めよ! 自立した企業へ」には、
中小企業は守られる存在ではなくむしろ牽引
する存在である、との主張が見られる。また、
図表4 中小企業基本法の新旧比較
旧・中小企業基本法
中小企業の
二重構造の底辺
イメージ
弱者
新・中小企業基本法
我が国経済のダイナミズムの源泉
基本理念
企業間における生産性等の「格差是正」
独立した中小企業の多様で活力ある成長発展
政策体系
中小企業構造の高度化(生産性向上)
経営の革新、創業の促進(自ら努力する企業の支援)
・設備近代化・技術の向上
・経営革新の促進(技術、設備、ソフト面の支援等)
・経営管理の合理化・企業規模の適正化
・創業の促進(情報提供、研修、資金供給機能円滑化等)
・事業共同化組織整備・商業およびサービス業
・創業的事業活動(ベンチャー)の促進(研究開発、人材支援、株式・社債
・事業転換・労働に関する施策
等による資金調達等)
事業活動の不利是正(取引条件の向上)
経営基盤の強化(経営資源の充実)
・過度の競争防止・下請取引適正化
・経営資源確保(設備、技術〈中小企業技術革新制度、産学官連携等〉、
・事業活動の機会確保・国等受注機会確保
人材・情報、中核支援拠点等の整備)
・輸出の振興・輸入品との関係調整
・連携・共同化の促進 ・産業集積商業集積の活性化
・労働に関する施策 ・取引適正化
・国等受注機会確保
経済的社会的環境の変化への適応の円滑化(セイフティネットの整備)
・経営の安定、事業転換等の円滑化
・共済制度整備、倒産法制
(備考)「中小企業基本法の改正と中小企業政策の新しい展開」『産業調査情報No.36』信金中金総合研究所(2000年3月)より転載
(注)
4.
(注)
3に同じ
特 集
59
「多様な中小企業が多様なニューサー 図表5 開業率・廃業率の動向
ビスを生み、経済社会を発展させて
いく」という「ぺティ=クラークの
2003年版中小企業白書より
第2-2-2図 企業数による開廃業率の推移(非一次産業、年平均)
∼1980年代以降、低下する開業率∼
法則」にもとづいた中小企業観が強
調されている。
以上、経済社会の変化のなかで、発
行当初の「二重構造下の弱者」から、
最近は「多様性ある先導者」へと、
中小企業観は大きく変化している。
(1)アクションプログラムと最近の中小企業
3.アクションプログラムと中小企業
白書
金融庁は2003年3月28日に『リレーションシ
ップバンキングの機能強化に関するアクショ
ンプログラム』(図表6)を公表した。
白書
①2002年版(平成13年度版):アクションプ
ログラム公表前の白書
同年白書は、中小企業の誕生、成長・発展、
退出という中小企業のライフサイクルごとに
同プログラムにおける取組みは、目利きや
中小企業を巡る問題を分析するとともに、中
創業・ベンチャー支援など「中小企業の多様
小企業の生涯に常についてまわる金融問題、中
性ある先導者」としての力を引き出す活動や
小企業が一国の経済の雇用に対して果たす役
再生支援、中小企業金融など、白書における
割を分析している。
中小企業観や課題意識との関連性を強く見出
すことができる。
金融面では、中小企業向け貸出減少の原因
を金融機関の経営状態や土地価格等に求め、金
融機関の不良債権比率・自己資本比
図表6 アクションプログラム抜粋
率および土地価格と中小企業向け貸
Ⅰ.中小企業金融の再生に向けた取組み
1.創業・新事業支援機能等の強化
(1)業種別担当者の配置等融資審査態勢の強化
(2)目利き研修の実施
(3)技術開発や新事業の展開を支援
(4)ベンチャー企業の育成を支援
(5)中小企業支援センターの活用
2.取引先企業に対する経営相談・支援機能強化
3.早期事業再生に向けた積極的取組み
4.新しい中小企業金融への取組みの強化
(1)担保・保証に過度に依存しない融資の促進
(5)信用リスクデータベースの整備
5.顧客への説明態勢の整備、相談・苦情処理機能の強化
(1)貸付・保証契約の内容等に関する債務者への説明態勢
出との関係などが分析されている。
また、金融機関と中小企業との長期
継続的な関係(リレーションシッ
プ)
、リレーションシップバンキング
の中核的な概念となる「情報の非対
称性」についても、同年白書ですで
に考察のうえ紹介されている。
ほか
60
信金中金月報 2004.11
「3.廃業・倒産とその教訓」では、
図表7 2002年∼2004年版中小企業白書の目次構成等
年 次
副 題
第2部
目 次
2002 年(平成 14 年)
2003 年(平成 15 年)
2004 年(平成 16 年)
記述内容の年度は平成 13 年度
記述内容の年度は平成 14 年度
記述内容の年度は平成 15 年度
金融再生プログラム、リレバンアク 金融再生プログラム、リレバンアク リレバン集中改善期間 1 年目
ションプログラム公表前の最新白書 ションプログラム公表直後の白書
「まちの起業家」の時代へ∼誕生、 再生と「企業家社会」への道
成長発展と国民経済の活性化∼
1.中小企業の誕生
(1)創業者の誕生
(2)開業率の推移および業種別・地域
別に見た開業率の分析
(3)誕生直後のパフォーマンスと開業
形態
(4)開業の国民経済的意義
2.中小企業の発展成長と経営革新
(1)経営革新により発展成長する中小
企業
(2)中小企業の研究開発活動
(3)中小企業の成長と事業転換
3.廃業・倒産とその教訓
(1)廃業率と廃業に至る経路
(2)マクロ経済指標、企業属性と倒産
の関係
(3)失敗から活かされる教訓
4.中小企業金融の課題
(1)中小企業の資金調達の可能性
(2)金融機関の中小企業貸出の変化と
その要因
5.中小企業の雇用創出・喪失
(1)雇用の変動状況
(2)創出、喪失される雇用の内容
多様性が織りなす中小企業の無限
の可能性
1.我が国経済における中小企業
の地位と経済再生に果たす役割
1.経済社会の発展・多様性のシ
ーズとなる中小企業
(1)長期的に見た中小企業の日本経済
(1)中小企業の多様な営みと経済社会
における地位とその背景としての中
小企業の「強み」
(2)中小企業のダイナミズム
(3)経済構造の変化を主導する中小企
業の内部構造と経営戦略
(4)日本経済再生と中小企業
(5)日本経済再生に向けた中小企業を
巡る問題
の発展
(2)ニューサービスの創出をとおして
ライフスタイルの多様化をもたらす
中小企業
(3)技術革新を生み出す中小企業
(4)柔軟な就業形態としてライフスタ
イルの多様化をもたらす中小企業
(5)地域の実情にあったサービス、雇
用を生み出す地域貢献型事業
2.参入の活性化と円滑な退出、
(6)来街者に楽しさを与える商店街
再生・再起
(1)低迷する我が国の開業の動向
2.グローバリゼーションと中小
企業
(2)開業率低下の要因
(3)日本経済再生に向けた中小企業を
巡る問題
3.金融環境変化のなかでの中小
企業の資金調達
(1)中小企業金融の特性
(2)円滑な間接金融
(3)多様な資金調達手段
4.中小企業のネットワークによ
る経営革新
(1)垂直連携ネットワーク
(2)水平連携ネットワーク
(3)ネットワークのインキュベータと
しての産業集積
(1)中小企業の海外進出・撤退の趨勢
(2)直接投資を行っている中小企業の
特徴と成功要因
(3)国内取引との関係
3.中小企業の世代交代と廃業を
巡る問題
(1)経営者の高齢化
(2)中小企業における経営者交代の実
態
(3)後継者への承継準備と企業の成長
(4)円滑な退出の方途
4.多様性を確保するための金融
(1)中小企業金融の特性
(2)再生のための企業金融の道
(3)売掛債権担保融資保証制度を利用
する中小企業の特性
結 び
日本経済が現在の状況を脱
最後に、本白書では「倒産
中小企業は、好況の時も不
するためには、英米で起こ も 破 産 も 終 わ り で は な い 」 況の時も様々な課題を抱え
ったように中小企業者それ ことを述べた。日本経済も ている。しかしながら、最
ぞ れ が 主 役 と し て 活 躍 し 、 現在は極めて厳しい状況に 初に見たように中小企業に
その総和が大きな流れとなる、 あるが、決してこれは終わ は常に新しいものを生み出
こうした過程が生まれるこ りの始まりでは無い。
す創造力に満ちた存在である。
とが課題であろう。
(略)中小企業は過去も現
(略)悲観論に陥らず、経
済 構 造 改 革 を 着 実 に 進 め 、 在も未来も経済社会を先導
日本経済の再生を実現して する存在であることを指摘
いかなければならない。
して、「2004 年版中小企業白
書」の結びとする。
特 集
61
※同年白書より転載。以下同じ。
第2-4-25図 メインバンクとの取引
第2-4-52図 金融機関不良債権比率
第2-4-54図 市街地価格指数の推移
年数と借入拒絶・減額対応を受けた
と中小企業向け貸出残高伸び率(都
と中小企業向け民間総貸出残高の推
企業の割合(2001年)
市銀行、地銀・第二地銀、信用金庫)
移
∼メインバンクとの取引年数が短い
∼不良債権比率が低いほど中小企業
∼地価の動きに若干遅れて中小企業
ほどメインバンクから借入拒絶・減
向け貸出残高伸び率は増加∼
向け民間総貸出残高も推移∼
額対応を受けた企業の割合が高い∼
個人保証の問題や破産手続における自由財産
化、②『リレーションシップ』の再評価、③
(差押禁止財産)に関する考察が簡潔ながらな
新しい金融手法の開発が考えられる」
(白書P.
されている。アクションプログラムにおいて
164)としている。このなかで「融資担当者は、
担保・保証に過度に依存しない融資や保証契
同じような成長段階にある同じような顧客を
約内容等の説明態勢などが求められた背景が、
取扱うことによって、経験を獲得することが
同年白書からは見ることができる。
できる」(白書P. 165)とし、業種や成長段階
に応じた柔軟な審査が中小企業向け貸出推進
②2003年版(平成14年度版):アクションプ
のポイントのひとつであるとしている。一方
ログラム公表直後の白書
の借り手である中小企業については、金融機
第40回目に当たる同年白書では、前年に引
関に対する情報開示(注)5が資金調達を左右する
き続き取引年数と借入との関係等について考
ことを分析、紹介する。また、CRD(信用リ
察するとともに、アクションプログラムとの関
スクデータベース)
、東京都によるCLO、コミ
連においてさらに踏み込んだ記述が見られる。
ュニティ・クレジット等、中小企業の資金調
例えば、「『情報の非対称性』を乗り越える
ための銀行側の対応策としては①審査能力強
達にかかわる新たな手法を紹介する(注)6。
「2.参入の活性化と円滑な退出、再生・再
(注)
5.
「リレーションシップ重視の流れを中小企業が資金調達円滑化につなげていくために―キーワードは“情報開示”―」
『産業
企業情報 16-2』信金中金総合研究所 参照
6.
「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムにおける専門用語集」
『金融調査情報 No.15-2』
信金中金総合研究所 参照
62
信金中金月報 2004.11
第2-3-30図 貸してもらえなかった
第2-3-29図 貸してもらえなかった企業の割合(接触頻度別)
企業の割合(資料自主提出の有無別)
∼接触頻度が高い企業は貸してもらいやすい∼
∼自主的に資料を提出している企業
は貸してもらいやすい∼
第2-2-54図 個人保証や個人財産を
第2-2-55図 経営者個人が倒産によ
第2-2-78図 倒産企業経営者の再起
担保に提供していた範囲
って負った債務
業意思
∼大多数の経営者が個人保証や個人
∼1億円を超える債務を負った経営
∼休廃業した倒産企業の経営者の多
財産を担保として提供∼
者が過半数を占める∼
くが再起業を希望している∼
起」では、倒産・廃業から再生・再起に至る
ることができる。
過程において、個人保証に伴う債務負担や資
産処分がその後の事業継続における障害とな
③2004年版(平成15年度版):集中改善期間
っていることを分析、紹介したうえで、終章
1年目
では「倒産も破産も終わりではない」
(白書P.
同年の白書では、
「多様性」をキーワードと
216)と締め括っている。
アクションプログラムにおける個人保証の
問題や業種別審査態勢、信用リスクデータベ
ース等の背景について、同年白書を通じて知
してコミュニティ・ビジネスやニューサービ
ス(注)7の担い手としての中小企業、グローバリ
ゼーションとの関係等を分析する。
金融面では、
「多様性を確保するための金融」
(注)7.「『経済のサービス化』を踏まえた創業・新事業支援を―『伸びる産業』であるサービス業を、ひとつの重点分野に―」『金
融調査情報 No.15-7』信金中金総合研究所 参照
特 集
63
第2-4-36図 経営計画の具体性とメ
第2-4-48図 支援開始後、支援の継続に特に障害となる要素(金融機関業態別)
インバンクの対応(自己資本比率別)
∼たとえ支援を受けられても、経営者の意欲の弱さは金融機関の支援継続を
∼具体性の高い経営計画の作成は円
困難にする∼
滑な借入に効果がある可能性∼
と題して、新たな事業活動が中小企業の成長
融機関による再生支援(注)9やその障害について
や業績回復にとって有効である一方、資金調
分析する。
達が課題となっていることを分析する。また、
加えて、不動産担保や根担保・根保証の問
アンケート調査や中小企業再生支援協議会(注)8
題を緩和する新たな資金調達方法のひとつと
の事例等にもとづき、具体的な経営計画や管
して、売掛債権担保の可能性およびその課題
理会計が再生途上企業の資金調達やその後の
を指摘し、信用保証協会による売掛債権担保
業績回復にとって重要であると指摘、また、金
融資保証制度(注)10の実績を紹介する。
第2-4-55図 保証協会の利用状況
第2-4-54図 売掛債権担保融資保証制度の実績
∼従業員規模が小さい方が売掛債権
∼着実に実績を伸ばす売掛債権担保融資保証制度∼
担保融資制度を含む保証協会を利用
している企業の割合が高い∼
(注)8.
「中小企業再生支援協議会の制度概要とその現状」
『産業企業情報 No.15-3』信金中金総合研究所 参照
9.信金中金総合研究所では、
『産業企業情報』
として、
中小企業の経営改善支援に関する情報を提供しているので参照されたい。
10.
「売掛債権担保融資保証制度の利用状況」
『金融制度情報 No.4』信金中金総合研究所 参照
64
信金中金月報 2004.11
「3.中小企業の世代交代と廃業を巡る問題」
では、「事業に見切りをつける基準」(白書P.
第2-3-98図 廃業前の資産状況と再
起業の関係(40歳代以下)
∼廃業前の資産状態は、再起業実現
207)を明らかにしようと分析を試み、廃業後
率に大きな影響を与える∼
の再起業実現の観点から「資産状態が債務超
過になるか否かによる退出の見極めは中小企
業にとって主要かつ明確な判断材料と言えよ
う」と結論づけている。
加えて、後継者(注)11が抱える悩みについて分
析している点は、多くの2代目経営者と接する
地域金融機関職員にとっても興味深い示唆が
あると思われる。
2004年度の中小企業施策においても重点施策に
以上、最近の白書は、アクションプログラ
掲げられる(図表9)
。第2に、中小企業施策は、
ムの背景にある中小企業金融の課題や期待に
政府系金融機関や中小企業支援センター(注)13な
関する言及が多く見られ、リレーションシッ
どの実施主体を介して行われるが、アクショ
プバンキングへの取組みが求められる背景や
ンプログラムではこれら実施主体の活用等が
必要性を知ることができる。
うたわれている。第3に、各取組みに関連する
法令には経済産業省所管のものが多く、例え
(2)中小企業施策とアクションプログラムと
ば「経営革新支援法」、2004年4月に改正され
の関連性
た「投資事業有限責任組合契約法」
(通称ファ
上記に加えて、アクションプログラムの各
(注)
14
等は経済産業省・中小企業庁が所
ンド法)
取組みと中小企業施策との間には強い関連性
管する。
を見出すことができ(図表8)、同プログラム
これら政策・施策は、基本法の政策理念、そ
が中小企業施策の影響を強く受けたものであ
の当時の課題認識や経済社会における中小企
ることがわかる。
業観などにもとづいて実施されるものであり、
まず第1に、元来、中小企業における資金調
達は最も重要かつ継続的な課題であるから、金
この課題認識や中小企業観を表明するものが
『中小企業白書』であるといえる。
(注)12
であり、
融対策は中小企業施策の「基本」
(注)
11.信金中金総合研究所では、第二創業に係る情報を近く提供する予定である。
12.出所:中小企業庁長官望月晴文講演要旨「中小企業政策の現状と課題―地域金融機関への期待―」
『リージョナル・バンキ
ング2004年6月号』第二地方銀行協会(2004年6月)
13.
「一層の活用が期待される中小企業支援センター―支援事業概要と有効活用事例―」
『産業企業情報 No.16-3』信金中金総
合研究所参照
14.
「地域の企業再生ファンドの実態―信用金庫にとっての活用のポイント―」
『産業企業情報 No.16-4』信金中金総合研究所
参照
特 集
65
図表8 アクションプログラムに掲げられた各取組みと中小企業施策との関連性
金融庁「リレーションシップバンキングの
機能強化に関するアクションプログラム」項目
関連する主な中小企業施策等
Ⅰ.中小企業金融の再生に向けた取組み
1.創業・新規事業支援機能等の強化
(1)業種別担当者の配置等融資審査態勢の強化を図るための具体的な取組みを要請
(2)
「目利き研修」を実施するよう要請
2003 年版中小企業白書において言及
「創業意識喚起活動事業」
、
「創業塾・創業講座・創業セミナー」
、
「新規創業支援研修」
等の実施
(3)特に経済産業省「産業クラスター計画」支援のため、有望な研究開発型企業と
優良案件の発掘に資する「産業クラスターサポート金融会議」立上げを要請
中小企業創造活動促進法や経営革新支援法にもとづく支援、中小企業技術革新制度 SBIR、
経済産業省が「新産業創造戦略」を公表、中小企業経営革新等総合支援法(仮称)
(4)ベンチャー企業の育成を支援するため、日本政策投資銀行、中小企業金融公庫、 中小企業金融公庫、商工組合中央金庫は、経済産業省管轄の政府系金融機関
商工組合中央金庫等との情報共有、連携強化を要請
(5)創業・経営革新を支援するため、中小企業支援センターの活用について検討す 中小企業支援センターは中小企業庁の所管法人、中小企業創造活動支援法や経営革
るよう要請
新支援法にもとづく支援
2.取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化
(1)経営情報やビジネス・マッチング情報を提供する仕組みの整備を要請
J-Net21(中小企業総合事業団が運営する情報サイト)上において「経営実態把握サ
ポートサイト」、
「M&A マッチングサポート」等を実施
(2)銀行法等における付随業務における具体的な考え方等を、整理のうえ公表
(3)健全債権化及び不良債権新規発生防止の体制整備について、取組みを一層強化
するとともに、平成 15 年度の実績から公表を要請
(4)中小企業支援スキルの向上を目的とした研修プログラムを実施するよう要請
中小企業支援法にもとづく中小企業診断士制度運営、各種の講座・研修等の実施
(5)中小企業等の財務・経営管理能力向上を支援する「地域金融人材育成システム 経済産業省が、2004 年 5 月に同プログラムの教材等を公表
開発プログラム」等について協力を要請
3.早期事業再生に向けた積極的取組み
(1)取引先企業に対し、「早期事業再生ガイドライン」の趣旨を踏まえ、事業再生へ 経済産業省が、2003 年 2 月に公表
の早期着手を期待
(2)地域の中小企業を対象とした企業再生ファンドの組成について検討するよう要請 「がんばれ!中小企業ファンド」の組成を促進、2004 年 4 月に投資事業有限責任投
資組合契約法(経済産業省所管)の改正
(3)デット・エクイティ・スワップ(DES)、DIP ファイナンス等の手法の積極的な 信用保証協会「事業再生保証制度(DIP 保証制度)」、商工中金「事業再生支援資金
活用を要請
制度(DIP ファイナンス)」の実施等
(4)「中小企業再生型信託スキーム」等 RCC の信託機能を積極的に活用するよう要請 (RCC に貸付債権が譲渡された中小企業者のうち再生可能性がある者を保証対象に
追加)
(5)産業再生機構の活用について検討を要請
(6)中小企業再生支援協議会への協力とその機能の積極的な活用を図ることを要請 産業活力再生特別措置法(経済産業省所管)にもとづき、全都道府県に設置
(7)企業再生支援に関する人材(ターンアラウンド・スペシャリスト)の育成を目 経済産業省、中小企業庁が事業再生実務家協会の設立を支援、「リストラクチャリン
的とした研修プログラムの実施を要請
グ・アドバイザー」の教育プログラム・教材等の整備およびモデル講座開講
4.新しい中小企業金融への取組みの強化
(1)担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る観点からの取組みを要請、また、 売掛債権担保融資保証制度の実施、2003 年 6 月の経済産業省産業金融部会報告「中
第三者保証の利用に当っては過度なものとならないよう要請
堅・中小企業のための新たな金融機能の創造に向けて」で言及
(2)「擬似エクイティ部分の優先株式への転換」等にかかるモデル取引事例に関する 商工中金が、2004 年 4 月に DDS の第 1 号案件を実行し契約書を公開
基本的考え方を踏まえ、具体化に向けた実務レベルの検討を要請
(3)各金融機関及び政府系金融機関等に対し、証券化等に対する積極的な取組みを
要請
2004 年 6 月に中小企業金融公庫法改正(民間金融機関等の中小企業向け貸付債権等
の証券化を支援する業務を中小企業金融公庫に追加)
(4)中小企業庁「中小企業の会計に関する研究会報告書」を踏まえ、財務諸表の精
度が高い中小企業に対する融資プログラムの整備に向けた取組みを期待
中小企業庁が、2002 年 6 月に報告
(5)信用リスクデータベースの整備・充実及びその活用に向けた積極的な取組みを (中小企業庁主導により、信用保証協会等で CRD の構築)
要請
(6)協同組織中央機関に対し、個別金融機関のリスクを調整・吸収するための仕組
みの検討を要請
5.顧客への説明責任態勢の整備、相談・苦情処理機能の強化
(1)貸付契約、保証契約の内容等重要事項に関する債務者への説明態勢の整備に対 経済産業省産業金融部会報告「中堅・中小企業のための新たな金融機能の創造に向
する監督のあり方を事務ガイドラインに明示
けて」で言及(その後、法務省「
「保証制度」の見直しに係る中間試案」公表)
(2)都道府県毎に金融当局、中小・地域金融機関及び関係業界団体から構成される「地
域金融円滑化会議」を新たに設置
(3)相談・苦情処理体制の強化に努めるよう要請、また、関係業界団体に対し、各 上記 5.(1)に同じ
金融機関の体制の強化を積極的に支援するよう要請
(備考)『中小企業白書』ほか各種情報にもとづき信金中金総合研究所作成
図表9 2004年度中小企業施策「3つの柱」
2004年度中小企業施策
3つの柱
中小企業金融対策
中小企業再生支援
創業・新事業挑戦支援
・セーフティネット対策
・不動産担保や保証人に過度に
依存しない資金供給手法など、
多様化促進
・中小企業再生支援協議会
・地域金融機関や中小企業診断
士・公認会計士等の専門家と
連携
・創業・新事業挑戦後押し
・資金面・人材面・技術開発・販
路開拓等各面からの支援
(備考)『2004年版中小企業白書』にもとづき信金中金総合研究所作成
66
信金中金月報 2004.11
4.集中改善期間終了後の中小企業金
融に対する期待
ここまで、白書が各時代の中小企業の経営
課題をとらえ、また、その金融面の課題を示
す資料であることを見てきた。では、リレー
ションシップバンキング集中改善期間終了後
の白書では、どのように考察、描写されてい
くのであろうか。
2004年5月に金融庁が公表した「中小・地域
金融機関向けの総合的な監督指針」における
図表10 中小・地域金融機関向けの総合的な
監督指針(抜粋)
Ⅱ−5.中小企業金融の再生の促進
Ⅱ−5−1.意義(省略)
Ⅱ−5−2.主な着眼点
(1)創業・新事業支援機能等の強化
(2)取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化
(3)早期事業再生に向けた取組み
(4)新しい中小企業金融への取組みの強化
(5)顧客への説明態勢の整備、相談苦情処理機能の強化
(6)進捗状況の公表
Ⅱ−5−3.監督手法・対応
平成16年度までの「集中改善期間」において、半
期毎に財務局において機能強化計画の実施状況につ
いてフォローアップを行うものとする。また、当該
フォローアップの結果を踏まえ、必要に応じ、監督
上の対応を行うものとする。
「中小企業金融の再生の促進」
(図表10)の枠組
みのなかで、以下の観点から推察してみたい。
年、地方銀行においても実施例が生まれつつ
ある。また、2003年版白書では、中小企業に
(1)新中小企業基本法の政策理念
よる新たな取組みに伴うリスクを貸し手と借
中小企業をわが国の経済のダイナミズムの
り手で共有する金融手法として「成功報酬型
源泉ととらえる新基本法では、
「創業支援」と
金利制度」(白書P. 167)の可能性について言
「経営革新」が政策の骨格をなしている(注)15。
及している(注)17。これら経営革新等を促進する
創業については、開業率と廃業率との逆転
新たな融資形態等は、今後の白書でも考察さ
現象が続く状況には変化が見られず創業・新
れるだろう。
事業支援機能等の強化に係る取組みは今後も
期待されていくであろう。
また、融資等資金供給機能面では、例えば
(注)16
は、1995年頃から
「知的財産権担保融資」
(2)経済産業省「新産業創造戦略」
2004年5月に経済産業省が公表した「新産業
創造戦略」は、わが国産業が、①世界との競
担保となる資産を持たないベンチャー企業へ
争をどう勝ち抜くか、②社会の要請にどう応
の融資手法として注目されるようになった。当
えるか、③地域の低迷をどう脱するか、の3つ
時、知的財産権担保融資を行っていたのは政
の視点から新たな産業政策の確立を目指すも
府系金融機関や大手行が中心であったが、近
のである。
(注)
15.なお、研究開発を通じた新製品・サービス創出を支援することを目的とする「創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」
は2004年度で失効する。これに伴い、重複が多いとされている同法および中小企業経営革新支援法、新事業創出促進法の3法
は統合され「中小企業経営革新等総合支援法(仮称)
」に1本化される見通し。
16.
「知的財産権担保付融資の概要」
『金融調査情報 No.16-6』信金中金総合研究所 参照
17.成功報酬型金利制度とは異なるが、2004年7月28日付日刊工業新聞によれば、シンジケート・ローンでは「企業業績に連動
して適用金利が変化する『業績連動型スプレッド』が成長企業に人気」
、
「
『企業は業績が良くなれば金利が少なくなる。透明
性・公平性が受けた』(三井住友銀行)」、「東京三菱銀行はコンクリート製品製造の武井工業所に対して、当初金利を低くす
る一方、赤字を計上したら金利を引き上げるといったコベナンツを締結し、好評を得ている」と報道されている。
特 集
67
このなかでは、
「地域再生の産業分野」とし
高まる可能性があるだろう。
て、①地域を基盤とした先端産業、②ものづ
くり産業の新事業展開、③地域サービス産業
の革新、④食品産業の高付加価値化を政策対
(3)中小企業サイドのニーズ
「担保・保証に過度に依存しない融資」は、
創業や再生途上企業に限らず資金調達を行う
象として検討している。
こうした地域再生や産業育成に資する資金
ほとんどの中小企業に関わることから、今後
供給、地域振興支援への取組み・関与(注)18等
も中小企業サイドから求められていくことと
は、地域金融機関の自主的・積極的な取組み
なろう。
が期待されるところであり、また、地域金融
特に、個人事業主の高齢化が進んでいるな
機関に対するこうした要請は、今後ますます
か、最近の白書が注目してきたとおり、廃業
図表11 新産業創造戦略(抜粋)
新産業創造戦略で取り上げる産業群
【抽出の4条件】
①日本経済の将来の発展を支える戦略分野
②国民ニーズが強く、内需主導の成長に貢献する分野
③最終財から素材まで、大企業から中堅・中小まで、大都市から地方まで広範な広がりがあり、我が国
の産業集積の強みが活かせる分野
④市場メカニズムだけでは発展しにくい障壁や制約があり、官民一体の総合的政策展開が必要な分野
【市場ニーズの拡がりに
対応する新産業分野】
【先端的な新産業分野】
燃料電池
・自動車や家庭用などで大きな市場が期待
・環境対策の切り札
・市場創出に向け耐久性・コスト面で課題
情報家電
・日本が強い擦り合わせ産業
・たゆまぬ先端技術と市場を創成
・垂直連携、技術開発、人材、知的財産保護に課題
ロボット
・介護支援、災害対策、警備など人を支援・代替した
り、人にできないことをさせるニーズ
・技術力に日本の強み
・市場創出、技術開発、規制に課題
コンテンツ
・情報家電とともに大きな成長が期待
・日本のコンテンツの広がりが世界の文化や市場にも波及
・流通、人材、資金調達に課題
健康福祉機器・サービス
・健康な長寿社会の構築
・高齢者の社会参加
・財政負担少ない福祉
・健康産業の国際展開
・制度改革、IT化、バイオ技術等で課題
環境・エネルギー機器・サービス
・きれいな水、空気、土壌の回復
・優れた環境・エネルギー技術による機器・サービ
スの開発
・環境規制、技術開発、情報開示等の課題
ビジネス支援サービス
・事業再編に伴う非コア業務分離、外注化
・ITを柱に新たなサービスが拡大
・雇用吸収先としての期待
・人材育成、品質・生産性に課題
7分野ごとに、具体的な市場
規模、目標年限を明示した
政策アクションプラン等を
明示
【地域再生の産業分野】
地域を基盤とした先端産業
・地域環境(産業クラスター)の創出
・大学からの技術移転の進展
・横のネットワーク化、産学連携、伝統と先端技術と
の融合、人材育成が課題
ものづくり産業の新事業展開
・地域のものづくりの伝統・文化の潜在力
・世界に誇る「高度部材産業集積」
・横のネットワーク、製品化開発、販路開拓、資金調達に課題
地域サービス産業の革新
・集客交流や健康などで、独自の魅力を持った付加価
値の高い事業の展開
・ブランド作り、外部企業との連携推進に課題
食品産業の高付加価値化
・安全・安心な食品の提供と市場開拓
・トレイサビリティ、品質管理、ブランド化、効能に
関する分析、技術開発と産学連携に課題
革新技術(ナノテク、バイオ、IT、環境)
(出所)経済産業省『新産業創造戦略』
図表12 東京商工会議所「リレーションシップバンキングに対するニーズ調査」
(03年8月)
(資金供給機能について)
選 択 肢
物的担保(不動産)に過度に依存しない融資
連帯保証人に過度に依存しない融資
商品・サービス・技術などの企業の事業性のみを基にした融資
信用保証協会の保証付きでないプロパー融資
物的担保以外の担保(知的財産権、売掛債権等)を活用した融資
(データベース等を活用した)迅速な貸出し
売掛債権等の証券化
ファンド等を通じた融資
その他
回 答 数
回答割合(%)
116
71.2
109
66.9
95
58.3
94
57.7
61
37.4
34
20.9
22
13.5
9
5.5
3
1.8
(備考)複数回答のため、回答割合は100を超える。
(注)
18.
「信用金庫経営における、地域産業連関分析の有効性∼産業連関表の概要と活用方法∼」
『地域調査情報 No.16-2』信金中
金総合研究所 および「地域産業連関表作成マニュアル」を参照
68
信金中金月報 2004.11
時の債務処理の問題が今以上に顕現化する可
ションプログラム』に関する各取組みの背景等
能性は否定できない。
を描写していること、中小企業金融に対する期
待を示すものであること等を示した(図表13)
。
金融庁の『リレーションシップバンキング
こうした白書は、中小企業に対して金融サ
の機能強化に関するアクションプログラム』自
ービスを提供する地域金融機関にとって論点
体が中小企業政策をつかさどる経済産業省・
の宝庫と言える(なお、白書の利用価値を改
中小企業庁の課題認識や施策の影響を受けた
めて再認識頂くことが本稿の目的であるので、
ものと言える。同様に、同プログラム終了後
各論点に関する考察や調査は脚注に掲げた当
の中小企業金融に対する期待や課題認識も、白
研究所発行のレポート等を参照願いたい)
。ま
書における考察や言及がそのひとつのよりど
た、地域金融機関にとっては、以下のような
ころとなるであろう。
場面を含めた数多くの場面で組織的に活用し
得る資料であり、リレーションシップバンキ
5.地域金融機関における中小企業白
書の利用価値
ングの対応強化にとって、方向性を示唆する
「ガイド」として活用できるものと期待される。
(1)地域金融機関における利用価値の再整理
ここまで、白書が、中小企業の経営課題や
①経営方針の策定等における基礎情報
環境について多数の調査にもとづき考察した
中小企業や中小企業金融のトレンドに関す
容易に入手可能な資料であること、各時代の中
る情報を提供する白書は、地域金融機関が中
小企業観等を示す資料であること、
『リレーシ
小企業金融の環境変化を踏まえた経営方針等
ョンシップバンキングの機能強化に係るアク
を策定するに際して、基礎情報を提供するも
図表13 地域金融機関と中小企業白書との関係(イメージ図)
金融経済
実体経済
地域金融機関
個々の中小企業
リレーションシップ
バンキング
︵
機
能
強
化
計
画
︶
監
督
、
検
査
政
金 融 庁
府
経済産業省
中小企業庁
中
小
企
業
政
策
現
状
、
実
態
の
把
握
中小企業白書
中小企業観
中小企業の動向
課題や成功事例
中小企業金融
中小企業施策 等
(備考)信金中金総合研究所作成
特 集
69
のと言える。まず、先述のとおり、
図表14 金融検査と中小企業経営実態把握
白書の記述や中小企業施策とアクシ
コメントの概要
ョンプログラムの各取組みに関する
(経済産業省)
金融検査が中小企業者の実態に
即したものとなるためには、検
査官が中小企業金融の特性や実
態等を十分に理解していること
が必要である。このため、検査
官の指導に当たっては、中小企
業者の経営実態に日頃から接し
ている中小企業診断士等と連携
した研修を行うなど、十分な措
置を講じるべきである。
相関性は高く、また、中小企業金融
に対する期待は今後の白書において
も考察、描写されると推察される。
加えて、論点の宝庫と言える白書は、
アクションプログラム後のリレーシ
ョンシップバンキングの対応強化に
向けた取組みを検討するに当たって
の着眼点を提供する。
コメントに対する
金融庁の考え方
金融庁ではすでに中小企業診断
士の方を講師として迎え、検査
官研修を実施しているところで
あるが、今後とも研修の充実に
努めてまいりたい。
(出所)金融庁検査局
「パブリック・コメントの概要およびそれに対する考え方」
『金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕等の改訂について』
(2004年
2月26日)
の認識を持って議論するために、白書が活用
②融資政策や融資商品の企画・立案
できるものと期待される。
サービス業やコミュニティ・ビジネス等新
たに伸びる産業にかかる考察に加え、特に最
近の白書では、リレーションシップバンキン
③経営相談・支援機能の強化
白書における中小企業の統計調査に対する
グや「情報の非対称性」の解消に関する方策、
理解は、中小企業支援者である中小企業診断
また、中小企業の多様性を促す融資形態等に
士等にとっては必要なスキルと位置づけられ
関する考察が見られる。中小企業に対する資
ている。また、白書には、中小企業の経営課
金供給機能を担う地域金融機関の融資政策、融
題や成功事例、中小企業施策等が掲載されて
資商品等を検討するに当っては、白書はその
いることは、中小企業に対する経営相談や経
着眼点を提供する(ちなみに、金融庁が『リ
営支援の場面においても有効な資料であるこ
レーションシップバンキングの機能強化計画
とを意味する。
に関するアクションプログラム』を公表する
以前から創業支援融資を提供してきた信用金
④教材としての教育効果
庫では、開業率・廃業率の逆転問題を考察し
中小企業動向等を広く国民に公開する白書
た白書の記述等を端緒に、その検討を始めた
は、地域金融機関役職員が容易に入手できる、
という)。
その時代における中小企業を多面的に分析し
なお、今後の資産査定に係る金融検査では、
た資料であり、また、中小企業庁のホームペ
従来以上に中小企業の実態を踏まえた検査が
ージを通じて無料で入手できる。すなわち、中
促進されるものと期待され(図表14)
、地域金
小企業の実態や経営課題、成功事例、また、中
融機関と金融検査官とが中小企業に係る共通
小企業金融に対する期待等に関する認識を、各
70
信金中金月報 2004.11
地域金融機関の役職員が共有し、各地域金融
現実的に不可能であるから、白書において用
機関におけるリレーションシップバンキング
いられる統計調査には自ずと限界があり、ま
強化を推進していくための機会を提供する、有
た、白書の考察は中小企業庁によるひとつの考
用かつ低廉な教材になり得ると言えよう。
え方であることは念頭に置く必要がある(注)20。
もとより、白書が提供するものは、地域金
融機関のリレーションシップバンキングの機
①統計の限界
能強化にかかる施策という直接的な解そのも
白書では様々な統計調査にもとづいて考察
のではなく、その検討の着眼点や機会である
がなされているが、それぞれの統計調査には
ことは言うまでもない。
限界や特徴があることから、一様に扱うので
はなく、それぞれの特徴を念頭において読み
(2)中小企業白書の利用上の留意点
解くことが必要だろう。
中小企業はわが国企業の99%以上を占め、そ
例えば、白書の第1部で用いられる主要な景
の企業数は約470万社(注)19にのぼる。膨大な数
況調査を比較した場合(図表15)、一括りに
の中小企業のすべてについて網羅することは
「中小企業」といっても、調査対象企業の規模
図表15 主要な中小企業景況調査とその相違
中小企業庁・
中小企業総合事業団
名称
中小企業景況調査
(四半期)
日本銀行
中小企業金融公庫
企業短期経済観測調査
中小企業動向調査
(四半期)
(四半期)
中小企業景況調査
(月次)
国民生活金融公庫
商工組合中央金庫
全国小企業動向調査 全国小企業月次動向調査 中小企業月次景況観測
(四半期)
(月次)
(月次)
調査対象
実施団体会員企業
企業一般
取引先
取引先
取引先
取引先
取引先
サンプル数
約19,000社
中小企業は約4,700社
約14,000社
900社
約10,600社
1,500社
800社
有効回答率
92.1%
中小は94.6%
49.4%
76.4%
61.0%
89.1%
(12年10∼12月期)
調査時点
四半期最終月の5日
(4月のみ12日)
地域別集計
主要DI
(12年12月)
回答期間約1か月の
地域別集計には企業
プル数に問題
規模区分なし
業況:
前年同期比、原数値
(13年3月)
(12年10∼12月期)
100%
(13年3月)
(13年3月)
四半期最終月の末日
毎月中旬
四半期最終月の10日
毎月上旬
毎月中旬
集計あり
集計なし
集計あり
集計なし
集計なし
うち回答時点
集計あるが地域別のサン
「好転」−「悪化」
(12年10∼12月)
業況:
「良い」−「悪い」
業況:
「好転」−「悪化」
売上げ:
「増加」−「減少」
業況:
「良い」−「悪い」
水準、原数値
前年同期比、季調値
前期比、季調値
前年同期比、原数値
中小企業の中でも
中小企業
中小企業
小規模企業のみ
売上げ:
業況:
「増加」−「減少」
前年同期比、季調値
「好転」−「悪化」
前期比、原数値
*他に前期比、水準DIも調査
企業規模
中小企業
中小企業以外も一部
比較的大きな企業。
含む。
法人企業のみ。
製造、建設:
製造等:50∼299人
製造、建設、運輸、サービス:30人未満
∼300人または∼3億円
卸売 :20∼99人
卸売、小売、飲食:10人未満
卸売:
小売 :20人∼49人
*月次調査もこれに準じる
∼100人または∼1億円
サービス:20∼49人
小売:
∼50人または∼5,000万円
サービス:
∼100人または∼5,000万円
(備考)『2001年版中小企業白書』にもとづき作成
(注)
19.総務省『事業所・企業統計調査』を再編加工した『2004年版中小企業白書』にもとづく2001年の計数
20.植田浩史大阪市立大学大学院助教授は、こうした状況を「もともと数多く存在する中小企業を平均化して描き出すことは
容易ではないし、具体的な中小企業を選び出して話を進めようとすると、ケースの選択の段階ですでに著者の中小企業観が
反映している。現在は、多様な中小企業観によって描き出された、多様な中小企業像が錯綜している。異質多元な中小企業
をとらえる視点自体も錯綜しているだけに、『中小企業とは何か』は古い問題であると同時に今日的な問題ともなっている」
と表現している(出所:植田浩史『現代日本の中小企業』
)
。
特 集
71
や業種構成、調査対象企業数等には違いがあ
小企業」が「脇役」に見えやすい。加えて、調
る。この結果、一言で中小企業の景況といっ
査を計画・実施する中小企業庁自身は、一方
ても、必ずしも中小企業全体を反映していな
で、中小企業政策の主体であることにも留意
い可能性がある。また、白書の第2部では多く
する必要があるだろう。
のアンケート調査が用いられているが、その
また、中小企業を見る視点自体も変化する。
調査対象企業の属性や標本数等は公表されて
例えば、大企業との格差が問題視された、旧
いないケースも少なくない。
基本法制定当時における二重構造下での「弱
これらは統計調査を利用する際の基本的な
者」観(注)23は、経年とともに変化し、2004年版
留意事項ではあるものの、白書をより有効に
白書では「中小企業は過去も現在も未来も経
活用するためにも改めて再確認しておくべき
済社会を先導する存在である」として締め括
だろう。なお、白書では、「本文を読む前に
っている。
(凡例)」として、その統計を読む際のおおよ
その留意点を掲載している。
②白書は経済産業省中小企業庁の考え方
6.中小企業白書編纂者の目から見た
地域金融機関への期待
(インタビュー)
ここでは、2002年版から
白書の記述は、統計データ等にもとづく考
2004年版の3年にわたる中小
察の結果であり、また、分析テーマは中小企
企業白書の編纂に従事して
業政策審議会における識者の議論を経て決定
きた安田武彦前中小企業庁
されるため、客観性があるように見受けられ
調査室長(現東洋大学教授、
る。しかし、その考察は、中小企業政策当局
独立行政法人経済産業研究
によるひとつの考え方であることは念頭に置
所ファカルティフェロー)のコメントを得た
く必要があるだろう(注)21。
ので紹介したい。
安田前室長
まず、白書の考察には政策的意図(注)22が介在
する。例えば、99年に改正された中小企業基
本法は、経営革新と創業の支援にその政策理
(1)リレーションシップバンキング
リレーションシップバンキングの考え方は、
念を置くため、これにかかわる分析の比重が
日本においては近年の不良債権処理という金
大きく、大多数を占めるであろう「普通の中
融課題の解決の過程で取り上げられたものだ
(注)21.植田浩史大阪市立大学大学院助教授は「政府によって作成された『中小企業白書』は、中小企業に対する見方の一つであ
り、批判的に検討する必要があることはいうまでもない」としている(出所:植田浩史『現代日本の中小企業』
)
。
22.寺岡寛中京大学教授は「中小企業庁は、(略)…オピニオンリーダー的地位(=政策的意図性)」と表現し、その考察には
政策的意図が介在することを指摘している(出所:寺岡寛「日本における中小企業の研究動向」『大原社会問題研究所雑誌
No.541』法政大学大原社会問題研究所(2003年12月))
。
23.1957年3月の日本生産性本部2周年記念講演で有沢広巳東京大学教授が「二重構造」という用語を初めて用い、1957年度の
『経済白書』において日本経済の二重構造を問題視しその解消を図ることの重要性を指摘したことで広く知られるようになっ
た。有沢氏は「大企業は先進国並みで中小企業は遅れている。しかも両者の間には大変大きな格差があってそして中小企業
は産業社会の底辺に沈殿している。全く発展性がない」ととらえていたとされる(出所:(財)中小企業総合研究機構編「法政
大学総長清成忠男氏―20世紀の中小企業の総括と今後の展望―」『中小企業懇話会要訳集』
(平成16年1月)
)
。
72
信金中金月報 2004.11
が、実は、日本経済の中長期的な経済構造変
借りに来る」企業もあるのである。そもそも、
化のなかで必要とされているものだと思う。
融資は金融機関による信用供与といわれるが、
すなわち、生産要素としての土地が相対的
実態はそうではない。金融機関は企業の信用
に希少なわが国では、高度成長に伴い土地の
に対して「資金」を供与するのであって、
「信
価格が持続的に上昇し、バブルの資産インフ
用」を供与するのではない。企業サイドもこ
レがこれに加わり、土地価格は上がるもので
の点を理解する必要がある。自分の企業が信用
あるとの観念がすっかり定着してしまった。こ
を得るための日頃の努力もまたリレーション
れが土地担保本位の融資制度を確立させた環
シップバンキングを成立させる条件といえる。
境的な要因と言える。しかしながら、高度成
また例えば、2003年版白書でも指摘してい
長は終焉し、バブルも崩壊した。さらに、90
るとおり、経営不振の中小企業が金融機関に
年代に入って企業が海外進出・生産拠点の海
経営内容を明らかにして、共に議論を深め経
外移転というオプションを手に入れたことに
営計画を作成することは、その資金調達にと
伴い、わが国の国内に立地すること自体が選
って効果がある。中小企業が数字にもとづい
択肢のひとつでしかなくなり、構造的に不動
た経営を実践することは、金融機関とのリレ
産価格が上昇する要因は解消してしまった。こ
ーションシップを維持・強化していくために
の結果、土地本位にもとづく不動産担保融資
重要だといえるのである。
慣行は見直しを迫られている。つまり、経済
的な構造変化のなかで融資システムには不動
(2)地域金融機関とリレーションシップバン
産担保に過度に依存しない融資慣行への転換
キング
が求められているのであり、その中で重要な
金融大競争時代のなか、地域金融機関は、自
役割を果たすのがリレーションシップバンキ
身の強みを十分に認識し、リレーションシッ
ングの考え方である。
プバンキング構築に当っていくことが重要で
注意しなくてはならないのは、リレーショ
ンシップバンキングの考え方は金融機関の努
あろう。地域金融機関ゆえにできること、で
きないことがある。
力のみで成り立つものではないということで
例えば、地域金融機関はメガバンク等に比
ある。この関係を成り立たせるためには、借
べれば、地域に存立し取引先が限られる以上、
り手である中小企業等にも求められるものが
膨大な計数データの蓄積や数量分析は単独で
ある。
は難しい。反面、地域に密着し、その地域か
例えば、しばしば企業からは金融機関を「雨
ら逃れられないがゆえにメガバンク等には見
が降れば傘を貸さず、晴れたときだけ傘を押
え難い「目に見えない情報」
、例えば「社長の
し付ける」と揶揄する声が聞かれるが、金融
人柄」、「従業員の結束」が見えるという強み
機関からすれば「雨が降ったときだけ、傘を
がある。こうした「目に見えない情報」と例
特 集
73
えばCRDの定量情報とを組み合わせ活用する
のではないだろうか。こうした強みを自覚し、
ことで、地域金融機関の審査能力を引き上げ
地域金融機関が積極的に自らの業務プロセス
る効果が期待できる。
や審査基準に位置づけていくことができれば、
一方で、都銀の合併の結果としてメガバン
クが生まれているが、メガバンクの登場に象
そのことが当該金融機関の競争戦略上の優位
性の源泉となっていくものと考えられる。
徴される巨大組織化は、組織の肥大化、内部
手続の複雑化を通じて、取引先の定性情報が
内部で伝達されることを阻害する効果を持つ。
(3)地域金融機関における白書の活用と留意点
中小企業白書は、信用金庫などの地域金融
また、合併に伴い審査基準は統合され画一的
機関がリレーションシップバンキングの考え
になりがちであり、多様な存在である中小企
方を進め、改善していくための視点を提供す
業を多様に見ることができなくなる。多様な
るものと思う。
存在である中小企業を金融面で支えるために
第1に、多様なアンケートを通じた中小企業
は、やはり多様な地域金融機関の目利きが必
に対する総合的な全体像を提供する。地域で
要と言える。
個別の具体的な企業を実際に見聞きしている
地域金融機関は、いわば地域の実体経済を
地域金融機関にとって、こうした全体的な大
実際に見聞きしやすいポジションにある。中
きな動きに関する情報は、身近に接している
小企業の顧客が見えたり知人であったり、実
例が一般的なものか、それとも特殊なものか
際に取り扱っている商品の現物、店舗界隈の
を検討するに際しての参考になるだろう。
人の動き、生産・販売の現場を目にすること
第2に、中小企業白書では、様々な中小企業
も多い。こうした情報を融資審査などで活か
の成功事例を紹介している。直接に中小企業
していくことは可能であろう。産地に存する
の経営者と話をすることが多い信用金庫役職
地域金融機関でなければ得難い産地の情報を
員にとってもこれらの事例は役に立つものと
蓄積することができる。
思う。
また、経営者も様々な悩みを抱えている。し
ただし、一方で留意すべき点はある。
かし、経営者が容易には弱音は吐けない孤独
まず、中小企業は多様な存在である。しか
な存在であることは、実地調査で常に実感す
し、中小企業白書は、中小企業の全体像を活
ることである。企業との間柄がビジネスライ
写することに力点を置きがちであるため、多
クになってしまったなか、地域の金融機関が
様な中小企業像すべてを描ききることはでき
こうした悩みを拾ってあげることによって「聴
ない。また、当然ではあるが、白書で述べて
いてくれる相手」として信頼され、かつ、メ
いることがすべての企業に当てはまるもので
ガバンクとは違い「目に見えない情報」を活
もない。
用できれば、他行との競争的な地位は上がる
74
信金中金月報 2004.11
さらに、統計的制約から中小企業白書では
個人企業の分析が手薄になりがちであること
計画に関するアクションプログラム』の集中
などの限界もある。グラフ等で、従業員規模
改善期間はこの2004年度が最終年度となる。今
別の階層を細かく示すことによって、個人企
後のリレーションシップバンキングの対応強
業や生業的企業における経営課題についても
化への取組みは、
「中小・地域金融機関向けの
類推ができるよう配慮しているが、分析の限
総合的な監督指針」の枠組みを踏まえながら、
界点というところでもある。
各地域金融機関それぞれが独自に対応策を模
索していくことが求められるだろう。それだ
(4)最近の中小企業白書で注目して欲しいポ
けに、中小企業に関する調査や統計等の活用
イント
の巧拙、中小企業の経営や環境に対する洞察
第1に、2004年版白書では中小企業の事業承
が、当該地域金融機関のリレーションシップ
継における実態を解明しようとしている。事
バンキングへの対応強化の推進を左右する可
業承継にとって好ましい経営者・後継者の年
能性がさらに高まっていくと言える。
齢、成功する後継者の属性、後継者が抱える
もとより調査には限界があるが、中小企業
悩みなどを示している。事業承継は、中小企
の経営や金融面の課題等を多面的に考察した
業経営者の高齢化が進むなか、多くの中小企
結果を総括して提供する中小企業白書は、中
業が広く抱える経営課題であり、信用金庫役
小企業に関する論点の宝庫であり、地域金融
職員がよく直面する課題であろうと思われる。
機関が中小企業に対する洞察を深め、リレー
日ごろ接するなかで、経営者や後継者の年齢
ションシップバンキングの機能を強化するう
を考える視点、悩みを共有するための着眼点
えでの「ガイド」になり得るものである。ま
を提供するものと思われる。
た、白書が誰でも入手容易であることは、中
第2に、2003年版白書における再生・再起で
小企業の現状や金融に対する期待等に対する
ある。再生については、
「早期」
、
「迅速」が重
認識を、地域金融機関職員が広く共有するた
要といわれる。それでは、どの程度が早期、迅
めの手軽な教材になるとも言える。すなわち、
速なのかはあまり指摘されてこなかったが、続
中小企業に対する金融サービスのプロフェッ
く2004年版白書では廃業者に対する集中的ア
ショナルとしての役割が期待される地域金融
ンケートをもとに、廃業と再生との見極め時
機関およびその役職員にとって、その利用価
期を示すよう努めている。
値は高い。
こうした点を再認識したうえで、改めて中
おわりに
本稿では、今さらながらに中小企業白書を
題材に取り上げた。
『リレーションシップバンキングの機能強化
小企業白書を有効活用していくことは、ひい
ては各地域金融機関独自のリレーションシッ
プバンキングの対応強化につながるものと期
待される。
特 集
75
〈参考文献〉
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清成忠男『中小企業読本[第3版]
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藤林潤「多様性が織りなす中小企業の無限の可能性 2004年版中小企業白書のポイント」
『中小公庫マンスリー2004年7月号』
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望月晴文中小企業庁長官講演要旨「中小企業政策の現状と課題―地域金融機関への期待―」
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2004年6月号』(社)第二地方銀行協会(2004年6月)
安田武彦「多様な存在としての中小企業に相応しい金融システムの構築を―2003年中小企業白書の分析から―」独立行
政法人経済産業研究所コラム(2003年6月)
渡辺幸男・小川政博・黒瀬直宏・向山雅夫『21世紀中小企業論』有斐閣(2001)
76
信金中金月報 2004.11
リレーションシップバンキングの機能強化と今後の信用金庫の経営課題
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
間下 聡
(キーワード)リレーションシップバンキング、機能強化計画、集中改善期間、目利き力
(視 点)
リレーションシップバンキングの機能強化への取組みは、中小・地域金融機関が講じていく
様々な施策や手段に対する認識を深めるうえで大きな意味を持つ。一方で、金融機関の姿勢を
みると、行政からの課題として、義務的に機能強化に取り組んでいる感もある。機能強化への
取組みを集中改善期間のみの「キャンペーン」として終わらせず、普遍的課題として認識し、
信用金庫の経営基盤の強化に結びつけていくためにも、リレーションシップバンキングの機能
強化の本質的意味合いを改めて確認する必要があると考える。
そこで、本稿では、リレーションシップバンキングの機能強化の意義、目的を再確認したう
えで、2003年度中の機能強化計画の進捗状況について概観する。さらに、今後、信用金庫の経
営全般に影響を及ぼすと考えられる制度変更等について、信用金庫が対応するうえでの課題、
留意点等を整理し、信用金庫が今後の経営計画等を検討する際の参考に供したい。
(要 旨)
●
リレーションシップバンキングの機能強化の中心課題は、中小企業支援であり、そこで求め
られるのが、
目利き力の発揮によるコンサルティング機能の提供である。
新しい中小企業金融
手法の実施や、そのための業務体制作りは、
長期的視点に立って取り組んでいく必要がある。
●
信用金庫の機能強化計画の進捗状況をみると、目利き力強化のための人材育成や、不良債権
発生防止などに向けた体制整備に力点を置いて取り組んでいる。一方、新しい中小企業金融
への取組みは、ローン・レビューの徹底や売掛債権担保融資などは着実に実施されている
が、今後、取組みを強化していかなければならない項目も多い。
●
リレーションシップバンキングの機能強化への対応のほかにも、ペイオフ全面解禁、新自己
資本比率規制の導入や、さまざまな業務規制の緩和、制度変更など、集中改善期間後も対応
の必要な経営課題が多くある。今後、信用金庫はこうした経営課題の意義、重要性を判断し
ながら、収益管理体制の整備と収益力の向上を図っていくことが重要である。
特 集
77
己資本比率規制導入に加え、業務規制の緩和
はじめに
2003年3月に金融審議会は、『リレーション
や制度変更などが予定されており、信用金庫
を取り巻く経営環境は変化していく。そこで、
シップバンキングの機能強化に向けて』と題
今後の変化に対応するうえでの課題をRB機能
する報告書(以下、
「RB報告書」という。
)を
強化上の課題とも関連づけながら検討し、信
発表し、それを受けて金融庁は、
『リレーショ
用金庫が、今後の経営計画等を検討する際の
ンシップバンキングの機能強化に関するアク
参考に供したい。
ション・プログラム』(以下、「アクション・
プログラム」という。
)をまとめた。アクショ
ン・プログラムは、2005年3月までの2年間を
1.リレーションシップバンキングの
機能強化の意義と目的
集中改善期間とし、信用金庫や地方銀行、第
(1)中心課題は中小企業再生と地域経済活性化
二地銀、信用組合の中小・地域金融機関は、集
RB報告書は、中小・地域金融機関が地域経
中改善期間中、アクション・プログラムにし
済と深く連関していることから、金融再生プ
たがってリレーションシップバンキング(以
ログラムが大手行に求めたような、早急な不
下、
「RB」という。
)の機能強化計画を立てて
良債権のオフバランス化と同じ方法では、中
取組み、その進捗状況を半期に1度、金融庁に
小・地域金融機関の不良債権問題は解決でき
報告することとなった。
ないとの問題意識から作成された。こうした
RB報告書は、不良債権処理促進が求められ
不良債権の処理は、地域の中小企業の破綻増
る中で、そればかりでなく、金融機関が講じ
加を通じて不良債権を増加させ、ひいては地
ていくべき施策や手段を公的に明らかにした
域経済の衰退をもたらすおそれがあるからで
点で意義深い。一方で、その内容を具体的課
ある(図表1)。
題に表したアクション・プログラムの項目は
そこで、事業再生を重視した不良債権問題
多岐にわたっているため、金融機関は各々の
解決と、地域経済活性化による地域金融基盤
業態や地域、取引顧客層等に応じて、実効性
の強化を両立させる形での解決が目指された。
の高い計画を立案し、それに取り組んでいく
具体的には、借り手との長期継続的取引によ
必要がある。
る与信情報の累積的蓄積に依拠したビジネス・
そこで、集中改善期間もすでに残り半年と
モデルであるRBに注目し、その顧客情報を活
なる現在、機能強化の目的、意義と、2003年
かした問題解決を模索したのである。このこ
度中の機能強化計画の進捗状況から、これま
とは、これまでにも中小・地域金融機関が意
でに何が実施され、何が残された課題なのか
識的に、場合によっては無意識に行ってきた
を考える。
ことといえる。
さらに、今後も、ペイオフ全面解禁、新自
78
信金中金月報 2004.11
RB報告書は、中小・地域金融機関の取組み
図表1 RB報告書の問題意識―悪循環避け両立目指す
地域の
中小企業の
破綻増加
性急な
不良債権
処理加速
悪循環
地域経済の
衰退
地域経済
活 性 化
に よ る
地域金融
基盤強化
早期事業
再 生 を
重視した
不良債権
問題解決
両立
不良債権の
増加
(備考)信金中金総合研究所作成
の第1に、
企業の不良債権化を未然に食い止めること、
イ.創業企業に対する企業支援の強化
ハ.すでに業績が悪化しており、要管理先以
ロ.成長期・安定期企業に対する円滑な資金
下に区分されている企業に対しては、でき
供給、経営相談等の実施
るだけ早期にその事業再生を図り、不良債
ハ.早期事業再生に向けた積極的取組み
権問題を解決していくこと、
の3つを挙げている。
の3つである。
これは、中小・地域金融機関が地域の1つの
なお、事業再生と地域経済活性化を図る間、
企業の創業期、成長期・安定期、業績悪化期
中小・地域金融機関の健全性を確保するため、
にわたって、同じ地域に住むホーム・ドクタ
適切な償却・引当を進めていくことが併せて
ーとして各ステージで対応することを述べて
求められている。
いる(図表2)
。同時に、地域経済の
活性化を図るために、3つの局面にあ
図表2 金融機関の企業支援―企業のライフ・サイクルを
通じて
るそれぞれの借り手企業に対して、
適切に対処する必要がある。すなわ
業績悪化期
企業業績
企業規模
再生可能な
事業の再生
成長期
安定期
ち、
イ.創業企業を支援することで地域
見極め
に新しい事業と雇用を生み出すと
を開拓すること、
ロ.正常先、その他要注意先に区分
事業譲渡や廃業
など別の出口
創業期
ともに、金融機関自らの新規顧客
時間
目標
新規顧客
の育成
顧客企業の不良
債権化未然防止
不良債権問題
の解決
円滑な資金供給
経営相談
早期事業再生
(財務支援・
再生助言)
されていると目される成長期・安
定期の企業に対し、
円滑な資金供給
と経営相談を実施することで、そ
の事業の好調を持続させ、それら
具体策
資金供給
起業相談
(備考)信金中金総合研究所作成
特 集
79
(2)基本は目利き力
事業の将来性の判断を行う力が、目利き力で
前述の3つを実行するうえで重要な役割を果
ある。
たすのが、金融機関によるコンサルティング
この目利き力とは、最終的には、企業ある
機能の提供である。つまり、顧客企業の経営
いは事業ごとの将来キャッシュ・フローを見
状況を把握、判断し、その問題点を突き止め、
積もることのできる能力であるともいえる。借
問題解決策に対する示唆を与える情報提供で
り手企業の将来キャッシュ・フローを見積も
ある。創業企業に対しては起業相談・支援、成
る力は、事業プロジェクトに対する融資を行
長期・安定期企業に対しては経営相談・指導、
う場合や、事業再生支援を行うかどうかを判
そして業績悪化企業に対しては事業再生コン
断する際の基本となる。対象企業の経営改善
サルティングと再生支援である。そこで、重
計画や再生計画の妥当性は、それらが想定し
要なカギを握るのは、金融機関の目利き力で
ている将来キャッシュ・フローの見積もりが妥
ある。
当か、実現可能であるかが重要なポイントであ
RB報告書で「目利き力」とは、事業の将来
る。DIPファイナンスやデット・エクイティ・
性を見通す力であるといえる。この目利き力
スワップ(DES)
、デット・デット・スワップ
こそが、金融機関が前述の3つのライフ・ステ
(DDS)を行う際にも、対象企業の将来キャッ
ージのそれぞれにある借り手企業に対して、コ
ンサルティング機能を発揮するうえ
シュ・フローの見積もりが重要視される。
図表3 顧客情報を加工する目利き力の発揮
での力の源泉であると考えられる。
筆者なりに目利き力について考え
顧客中小企業
リレーションシップ
目利き力
れば、まず、目利き力の土台となる
顧客情報
+
のは、企業の財務分析や財務手法、
土台となる財務分析、財
務手法、顧客事業の内容
に関する知識・理解
業種別の事業内容、技術力の評価に
関する知識、ノウハウなど、審査・
管理に関連した知識の職員個々人と
組織全体による蓄積である(図表3)
。
それに加えて、RBによる取引経験
事業の将来
性に関する
目利き力
の累積により、顧客の定性情報を継
目利き力と継
続的取引情報
による審査力
再生可能性
に対する
目利き力
続的に入手し、さらに、内外景気や
地域内の同業種、異業種の顧客情報、
景況感などから、その業種の地域内
外での市場環境も把握することによ
り得た情報を総合して、個別顧客の
80
信金中金月報 2004.11
創業支援
成長期・安定期
の経営相談
問題解決に威力
(備考)信金中金総合研究所作成
早期事業再生
こうした「目利き力」の養成は、前述した
手中小企業との相互理解を高め、より多様な
「金融機関の審査能力の向上」や「プロジェク
金融サービスを提供していくことが求められ
トファイナンス等への的確な対応」、「事業再
る。また、自らの健全性の確保のために、中
生」だけではなく、RB報告書にある担保や保
小・地域金融機関は収益管理体制の改善・構
証への過度な依存の緩和にもつながるもので
築に努め、地域集中リスクなどにも対応して
あり、ひいては金融機関の融資業務の今後の方
いくことになる。
向性までも左右しかねない重要な要素である。
具体的な内容としては、まず、借り手の信
しかしながら、一口に「目利き力」の養成
用リスクに見合った上乗せ金利を乗せた利ざ
といっても、企業経営者や事業運営者と同等
やの確保や、担保や保証に過度に依存した融
か、それ以上の視点で経営や事業の将来性を
資慣行の見直しが挙げられている。また、借
考えることを事実上要求されるわけであるか
り手企業の財務データなどから、信用リスク
ら、一朝一夕に成し得るものではない。
の分析や計測ができるように、信用リスク・デ
十分に目利き力を発揮しているという地域
ータベースを整備することが求められている。
金融機関は現段階では少ないと考えられる今
資本と融資の分離についても問題提起され
こそ、中長期的な観点から、RBに基づく情報
ている。短期融資であっても、ロールオーバ
の非対称性の解消と併せ、それらの情報を咀
ーにより長期固定化され、事実上、自己資本
嚼・評価・活用するとともに、これまで以上
に類似した性格の資金となっている中小企業
に金融機関が企業経営や事業運営のスキル・
への融資を株式化(DES)したり、貸出期間
ノウハウを身に付けて信頼される相談相手に
を長期化し、同時に、そのリスクに見合った
なり、最終的には提言力を持つまでに至るこ
貸出条件等を設定していくことで、その資金
とを目標とし、組織的に人材の養成に取り組
の資本的な性格を顕在化させることが促され
む必要があろう。
ている。
併せて、借り手の保有する売掛債権の活用
(3)中小企業金融円滑化と健全性確保のため
など、借り手の資金調達ニーズに応じた金融
の業務改善への対応
サービスの多様化が促されており、貸出先が
RB報告書は、中小企業再生と地域経済活性
地域内に集中することからくる、信用リスク
化を挙げる一方、中小企業に対する金融の円
面からの地域集中リスクについても指摘され
滑化と、金融機関自身の健全性の確保のため
ている。地域集中リスクの分散も兼ねて、貸
の業務改善にも取り組むことを求めている。
出ポートフォリオの構成を組み替える、債権
中小企業に対する金融の円滑化のために、中
の流動化や証券化、他の地域の流動化債権や
小・地域金融機関は、RBによる顧客情報の蓄
証券化証券への投資などについても示唆され
積を活かして融資慣行の健全化を図り、借り
ている。
特 集
81
これらの業務改善は、中小・地域金融機関
項目であり、
「5.顧客への説明体制の整備、相
の金融機能とその継続可能性の向上を目的と
談・苦情処理機能の強化」は、アクション・
している。そのため、緊急に取り組むべき課
プログラムを受けた金融庁の2003年7月29日付
題である中小企業再生と地域経済活性化に比
の事務ガイドラインの一部改正に対する対応
べて、緊急性は低い一方、長期的には金融機
を求めるものである。「6.地域貢献に関する
関の体質強化に資する課題であるため、今後
情報開示」は、RB報告書の情報開示等による
も、優先順位をつけながら継続的に取り組む
規律に対応する項目である。また、信用金庫
必要がある。
の進捗状況には、同じ情報開示等による規律
に対応する項目として、「7.総代会の機能向
2.機能強化計画の課題項目構成と2003
年度中の機能強化計画の進捗状況
(1)機能強化計画の課題項目の構成
上」も挙げられている。
(2)2003年度中の機能強化計画への取組実績
前述したRB報告書を踏まえて、中小・地域
次に各業界団体が取りまとめた信用金庫、地
金融機関がRB機能の強化のために取り組むべ
方銀行、第二地銀の2003年度中の機能強化計
き、より具体的な課題を整理したものがアク
画の課題項目別進捗状況を、信用金庫を中心
ション・プログラムであり、中小・地域金融
にまとめることとする。
機関は、各自、アクション・プログラムの課
題項目に取り組むための機能強化計画を立て、
2004年6月までに、その進捗状況を金
図表4 機能強化計画の課題項目の構成
融庁に報告した。
機能強化計画の課題項目は大きく
6つに分けられる(図表4)
。
「1.創業・新規事業支援機能の強
化」
、
「2.取引先企業に対する経営相
談・支援機能の強化」
、
「3.早期事業
7.総代会の
機能向上
6.地域貢献に関
する情報開示
再生に向けた積極的取組み」は、お
おむねRB報告書の中心課題である中
小企業再生と地域経済の活性化に関
5.顧客への説明体制
の整備、相談・苦情
処理機能の強化
1.創業・新規事業
支援機能の強化
2.取引先企業に
対する経営相談・
支援機能の強化
3.早期事業再生に
向けた積極的取組み
する項目である。「4.新しい中小企
業金融への取組みの強化」は、おお
4.新しい中小企業金融
への取組みの強化
むねRB報告書の中小企業に対する金
融の円滑化と健全性の確保に関する
82
信金中金月報 2004.11
(備考)信金中金総合研究所作成
イ.中小企業再生と地域経済の活性化に向け
うしたスキームを活用した事業再生にも対応
た取組み
できるよう、信用金庫は業務知識の習得や体
創業・新規事業支援機能等の強化について
制整備などを図っていくことも必要となろう。
は、企業の将来性や技術力を評価するうえで
こうしたなか、企業の創業や事業再生を支
必要となる目利き力の養成等に向けて、3業態
援していくにあたり、信用金庫は銀行と同様
とも8割を超える金融機関が、外部研修への参
に外部機関との連携も図っている。具体的に
加・派遣や内部研修などによる人材育成に積
は、中小企業支援センターや中小企業再生支
極的に取り組んでいる(図表5)。また、融資
援協議会との情報交換は、3業態とも7割以上
審査態勢の強化への取組みとして、地方銀行、
が実施している。信用金庫においては情報交
第二地銀が業種別担当者の配置、増強を中心
換にとどまらず、具体的案件の持込みなどを
に対応を図っているのに対し、信用金庫は職
通じて、これら機関の支援機能をさらに活用
員数の規模などを勘案して、専門部署の設置
していくことも必要であると思われる。
による強化に努めている。
取引先企業に対する経営相談・支援機能の
ロ.新しい中小企業金融や健全性の確保に向
強化では、要注意先債権等の健全債権化や不
けた取組み
良債権の新規発生防止に向け、信用金庫の約8
新しい中小企業金融への取組状況をみると、
割、地方銀行、第二地銀の9割超が専担部署の
ローン・レビューの徹底(貸出後の業況把握)
設置・強化を図っており、各業態とも不良債
や売掛債権担保融資については、約半数の信
権問題解決に向けては、特に強い姿勢で取り
用金庫が実施しているものの、他の項目の信
組んでいる。一方、取引先にビジネスチャン
用金庫の実施割合は、地方銀行、第二地銀に
スを提供し、業績の拡大、改善を図る目的か
比べて総じて低い傾向にある。すなわち、約7
ら、約6割の信用金庫が地方銀行、第二地銀と
割の銀行がスコアリング・モデルを活用した
同様、ビジネスマッチングの情報提供の仕組
商品を導入しているのに対し、信用金庫は3割
みの導入、強化にも努めている。
弱にとどまっている。信用リスク・データベ
早期事業再生に向けた対応として、中小企
ースの整備は、信用金庫においてもデータベ
業の過剰債務構造の解消等では、約4割の信用
ースの整備は徐々に進んできているものの、プ
金庫が経営改善支援手法等の研究に取り組ん
ライシング・モデルやスコアリング・モデル
でいるが、地方銀行、第二地銀の7∼8割の実
の開発・活用については、6割前後の銀行が実
施率と比べて低く、今後はさらなる強化が必
施しているのに対して、信用金庫はいずれも1
要である。加えてDES、DDS、DIPファイナン
割程度の取組みにとどまっている。
スへの取組みについても、各業態とも実施事
また、相談・苦情処理体制は、大半の信用
例は現状では必ずしも多くないが、今後はこ
金庫で整備されているが、貸付、保証契約内
特 集
83
図表5 信用金庫、地方銀行、第二地銀の2003年度の機能強化計画進捗状況(その1)
信用金庫
実施庫
実施率
1.創業・新規事業支援機能の強化
(1)業種別担当者の配置等、融資審査態勢の強化
業種別担当者の配置・増強
専門部署の設置・強化
業種別審査体制の構築・強化
審査に関する組織内の情報の共有化促進
シンクタンク・専門機関の活用
決裁権限の移譲
審査手法の高度化
(2)企業の将来性や技術力を的確に評価できる人材の育成を目的とした研修の実施
外部研修への参加・派遣(通信研修を除く)
内部研修の実施・強化(通信研修を除く)
通信研修の実施・強化
中小企業診断士等、専門性の高い人材育成
(3)中小企業支援センターの活用
センターとの情報交換
センターの機能の活用
センター支援業務に係る情報提供
センターへの人材派遣・出資
(4)創業・新規事業支援機能強化の成果
創業支援融資商品の導入
企業育成ファンド(ベンチャー・ファンド)の組成・出資
2.取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化
(1)経営情報、ビジネス・マッチング情報の提供の仕組みの整備
ビジネス・マッチングの情報提供の仕組み導入・強化
うちイントラネットの活用等、行内体制の整備
経営情報提供の仕組み導入・強化
うちビジネス・ポータルサイトの設置・活用
商談会の開催等
外部専門機関(グループ会社等含む)の活用
専担部署の設置・強化
情報マインドの向上等、営業店指導の強化
(2)要注意先債権等の健全債権化および不良債権の新規発生防止のための体制整備・強化
専担部署の設置・強化
営業店での取組強化
営業店と本部の連携強化
外部機関との連携強化
信金中金との連携強化
既存部署への専担者の設置・増強
経営改善マニュアルの策定
対象企業への人材派遣
ローン・レビューの実施(見直し)
(3)中小企業支援スキルの向上を目的とした研修の実施
外部研修への参加・派遣(通信研修を除く)
内部研修の実施・強化(通信研修を除く)
通信研修の実施・強化
3.早期事業再生に向けた積極的取組み
(1)中小企業の過剰債務構造の解消・再生の取組み
プリパッケージ型事業再生の活用
経営改善支援手法等の研究
専担部署の設置・強化
専担者の設置・強化
外部機関との連携強化
スポンサー企業情報等、必要情報の収集強化
(2)地域の中小企業を対象とした企業再生ファンドの組成の取組み・出資
企業再生ファンドの組成・出資
(3)DES、DDS、DIPファイナンス等の具体的案件の発掘・実施
DES案件の発掘・実施
DDS案件の発掘・実施
DIPファイナンス案件の発掘・実施
(4)「中小企業再生型信託スキーム」等、RCCの信託機能の活用
RCC信託機能の活用
RCCとの連携強化・情報交換
(5)産業再生機構の活用
(6)中小企業再生支援協議会への協力とその機能の活用
協議会との連携強化
再生支援機能の活用
うち中小企業再生支援協議会への案件持込み
うち取引先に対する協議会の紹介・斡旋
協議会への参加・人材派遣等の協力
地方銀行
実施行
実施率
60
92
72
132
42
40
66
19.6%
30.1%
23.5%
43.1%
13.7%
13.1%
21.6%
54
26
49
48
30
20
22
84.4%
40.6%
76.6%
75.0%
46.9%
31.3%
34.4%
30
16
25
30
11
11
13
60.0%
32.0%
50.0%
60.0%
22.0%
22.0%
26.0%
296
252
200
159
96.7%
82.4%
65.4%
52.0%
64
58
62
47
100.0%
90.6%
96.9%
73.4%
50
44
48
28
100.0%
88.0%
96.0%
56.0%
230
129
127
16
75.2%
42.2%
41.5%
5.2%
61
54
52
38
95.3%
84.4%
81.3%
59.4%
42
32
30
14
84.0%
64.0%
60.0%
28.0%
107
40
35.0%
13.1%
38
40
59.4%
62.5%
17
N.A.
34.0%
N.A.
183
113
167
88
32
124
95
128
59.8%
36.9%
54.6%
28.8%
10.5%
40.5%
31.0%
41.8%
58
47
56
35
28
52
41
49
90.6%
73.4%
87.5%
54.7%
43.8%
81.3%
64.1%
76.6%
39
26
33
13
12
28
29
27
78.0%
52.0%
66.0%
26.0%
24.0%
56.0%
58.0%
54.0%
231
259
277
110
82
125
139
54
178
75.5%
84.6%
90.5%
35.9%
26.8%
40.8%
45.4%
17.6%
58.2%
59
62
63
57
N.A.
43
26
48
40
92.2%
96.9%
98.4%
89.1%
N.A.
67.2%
40.6%
75.0%
62.5%
47
46
48
34
N.A.
31
14
25
27
94.0%
92.0%
96.0%
68.0%
N.A.
62.0%
28.0%
50.0%
54.0%
297
258
216
97.1%
84.3%
70.6%
64
62
59
100.0%
96.9%
92.2%
50
48
46
100.0%
96.0%
92.0%
14
116
100
93
66
23
4.6%
37.9%
32.7%
30.4%
21.6%
7.5%
15
52
44
40
42
32
23.4%
81.3%
68.8%
62.5%
65.6%
50.0%
N.A.
33
31
27
32
12
N.A.
66.0%
62.0%
54.0%
64.0%
24.0%
20
6.5%
17
26.6%
8
16.0%
8
2
21
2.6%
0.7%
6.9%
16
1
22
25.0%
1.6%
34.4%
7
3
7
14.0%
6.0%
14.0%
5
39
1.6%
12.7%
12
46
18.8%
71.9%
0
18
0.0%
36.0%
8
2.6%
21
32.8%
223
106
86
84
42
72.9%
34.6%
28.1%
27.5%
13.7%
63
54
48
43
41
98.4%
84.4%
75.0%
67.2%
64.1%
(備考)1.実施率とは業態ごとの全金融機関数のうち2003年度末までに実施した金融機関の割合
2.全信協、地銀協、第二地銀協の機能強化計画進捗状況取りまとめより信金中金総合研究所作成
84
信金中金月報 2004.11
第二地銀
実施行
実施率
N.A.
47
37
30
22
18
N.A.
94.0%
74.0%
60.0%
44.0%
36.0%
図表6 信用金庫、地方銀行、第二地銀の2003年度の機能強化計画進捗状況(その2)
信用金庫
実施庫
実施率
4.新しい中小企業金融への取組みの強化
(1)担保・保証へ過度に依存しない融資の促進等第三者保証のあり方の見直し
スコアリング・モデルを活用した商品の導入
財務制限条項を活用した商品の導入
第三者保証の見直し
うち内部規定を変更
ローン・レビューの徹底
(2)証券化等の取組み
債権流動化、証券化への参画(含むCLO、CBO)
売掛債権担保融資
シンジケート・ローンへの参画
私募債への取組み
PFIへの取組み
(3)財務諸表の精度が相対的に高い中小企業に対する融資プログラムの整備
地方銀行
実施行
実施率
第二地銀
実施行
実施率
88
14
61
40
158
28.8%
4.6%
19.9%
13.1%
51.6%
42
7
27
26
33
65.6%
10.9%
42.2%
40.6%
51.6%
36
7
18
9
20
72.0%
14.0%
36.0%
18.0%
40.0%
25
141
90
65
10
8.2%
46.1%
29.4%
21.2%
3.3%
15
52
60
59
15
23.4%
81.3%
93.8%
92.2%
23.4%
10
31
44
37
4
20.0%
62.0%
88.0%
74.0%
8.0%
98
32.0%
(4)その他の施策
キャッシュ・フローの的確な把握等、信用リスク管理の精緻化
45
14.7%
ファクタリング取扱いの実施
13
4.2%
(投資家として)証券化商品の購入
7
2.3%
(5)信用リスク・データベースの整備・充実およびその活用
自行データベースの整備
114
37.3%
業界関連機関を活用したデータベースの整備
87
28.4%
CRD等外部データベースの活用
25
8.2%
プライシング・モデルの開発・活用
30
9.8%
スコアリング・モデルの開発・活用
34
11.1%
5.顧客への説明態勢の整備、相談・苦情処理機能の強化
(1)銀行法等に義務付けられた、貸付契約、保証契約の内容等重要事項に関する債務者への説明態勢の整備
内部規定等の見直し
155
50.7%
研修の実施
134
43.8%
融資関連約定書の改訂
110
35.9%
内部周知の徹底
144
47.1%
顧客向け説明資料の作成
102
33.3%
内部監査機能の整備
55
18.0%
監査状況等を踏まえた改善策の実施
34
11.1%
(2)相談・苦情処理体制の強化
営業店指導、内部研修の実施
279
91.2%
地域金融円滑化会議における情報交換・活用
292
95.4%
苦情の原因分析、改善等の実施
283
92.5%
融資専用ホットラインの設置
21
6.9%
相談・苦情処理対応部署の増強
120
39.2%
役職員への周知・徹底
287
93.8%
6.地域貢献に関する情報開示(信用金庫と第二地銀は2004年3月末時点の実施予定を含む)
ディスクロ誌(ミニ・ディスクロ誌を含む)
291
95.1%
ホームページで公開
219
71.6%
決算発表時の添付資料として公表
4
1.3%
地域貢献専用のパンフレット作成
17
5.6%
地域説明会で説明
12
3.9%
7.総代会の機能向上
(1)開示予定項目
総代会の仕組み
266
86.9%
総代候補者選考基準
232
75.8%
総代の選考方法
254
83.0%
総代会の決議事項
241
78.8%
総代の氏名
286
93.5%
総代会の模様
18
5.9%
総代の属性別構成比
34
11.1%
会員の属性別構成比
27
8.8%
その他
6
2.0%
(2)開示予定媒体
法定ディスクロージャー誌(一般向け)
252
82.4%
事業報告書(会員向け)
7
2.3%
「法定ディスクロージャー誌」と「事業報告書」の両方
29
9.5%
その他の媒体
13
4.2%
41
64.1%
24
48.0%
22
18
19
34.4%
28.1%
29.7%
N.A.
N.A.
N.A.
N.A.
N.A.
N.A.
55
N.A.
33
39
40
85.9%
N.A.
51.6%
60.9%
62.5%
43
N.A.
31
28
27
86.0%
N.A.
62.0%
56.0%
54.0%
43
40
42
51
28
19
16
67.2%
62.5%
65.6%
79.7%
43.8%
29.7%
25.0%
34
36
29
39
19
16
10
68.0%
72.0%
58.0%
78.0%
38.0%
32.0%
20.0%
63
63
62
7
25
62
98.4%
98.4%
96.9%
10.9%
39.1%
96.9%
50
50
49
6
26
47
100.0%
100.0%
98.0%
12.0%
52.0%
94.0%
60
64
29
9
24
93.8%
100.0%
45.3%
14.1%
37.5%
48
46
8
1
15
96.0%
92.0%
16.0%
2.0%
30.0%
(備考)図表5に同じ
容等の債務者への説明態勢の整備については、
地域貢献に関する情報開示において、ディ
信用金庫の実施率は、地方銀行、第二地銀を
スクロ誌による開示の実施割合は、3業態とも
総じて下回っており、内部での周知徹底等を
9割超の高い水準にある。今後は、単なる開示
中心に取組みを強化する必要があろう。
ではなく顧客からの信頼が増すように、開示
特 集
85
内容の範囲など開示のあり方についても検討
集中していたことから起きた面が大きく、本
していくべきである。
制度の導入により、機械設備や製品在庫、原
一方、ガバナンスの強化については、大半
材料を担保として利用しやすくなれば、不動産
の信用金庫が総代会の仕組み、選考方法、総
担保の余裕がない中小企業に対する新たな資
代の氏名などの開示に取り組んでいる。
金供給に道を開くことになる。
現行法上、動産譲渡担保にかかる対抗要件
3.今後の規制変更による経営環境の
変化への対応―継続する機能強化課
題とともに
具備のための公示方法は、占有改定による引
渡しがあるが、占有改定は当事者間の意思表
示のみによってなされ、外形上その存否が判
RB機能強化については、集中改善期間終了
然としない。そのため、その動産について優
後も優先順位をつけながら、引き続き取り組
先する譲渡担保権者が別にいるにもかかわら
んでいくことが重要である。
ず、それと知らずに担保としたり、逆に、先
しかし、信用金庫が取り組まなければなら
行して占有改定により譲渡担保権者になりな
ない課題は、RB機能強化の継続課題にとどま
がら、他者に善意取得されてしまうおそれも
らない。今後、信用金庫の経営環境に影響を
あり、譲渡担保取引の安定性、実効性に欠け
与える規制変更等は、現在スケジュールに上
ている。そこで、この動産譲渡登記制度が導
っているものだけでも数多くある。それらの
入されることになった。
なかには、RB機能強化とも関連する課題もあ
この登記制度は、登記事項は何人にも開示
り、信用金庫は、それらにも併せて対応して
されるが、すべての登記事項は、その動産譲
いく必要がある。そこで、本章では、それら
渡の当事者や利害関係者、または譲渡人の使用
新しい課題の主だったものについて、一つの
人にのみ開示される。動産譲渡登記がなされ
整理として資産、負債、資本に関する項目お
るごとに、登記事項の概要を譲渡人の法人登記
よびその他業務の項目に分類し、概説してい
簿に登録する制度は設けられず、譲渡人の本店
くこととする。
または主たる事務所の所在地の登記所に、譲渡
人ごとに編成する動産譲渡登記事項概要ファ
(1)資産に関する課題
イ.動産譲渡登記制度の導入
動産譲渡登記制度が導入される予定である。
関連法案がこの秋の臨時国会に提出された。
イル(仮称)が備えられ、何人も、そのファイ
ルに記載されている事項を証明した書面の公
布を請求することができる制度が設けられる。
なお、動産担保融資には、動産担保の評価
RB機能強化計画は、担保・保証に過度に依存
が難しいこと、担保取得した動産を処分する
しない融資の促進をうたっているが、そもそ
専門業者や流通市場が未発達であることなど
もバブル期の問題は、担保が事実上不動産に
の問題点がある。動産担保の活用が進んでい
86
信金中金月報 2004.11
図表7 信用金庫のRB機能強化計画と今後の主な経営課題
資産
負債
RB機能強化計画
①中小企業再生・債権健全化
中心は目利き力を活かした経営相談
・ツールの利用
(創業ファンド、再生ファンド、DIPファイナンス、
DES、DDS等)
・ノウハウの吸収
(研修、政策金融機関や中小企業支援センター、中
小企業再生支援協議会など外部組織の活用)
②新しい中小企業金融への対応
・担保・保証に過度に依存しないCF重視の融資
・債権流動化・証券化によるポートフォリオ再構築、
地域集中リスク分散
・①②全般の基礎となる信用リスク・データベース
の構築
③対顧客の説明態勢整備、苦情処理機能強化
(貸付契約、保証契約等)
RB機能強化計画
地域貢献情報のディスクロージャー
(預金者へのアピール)
ペイオフ全面解禁(2005年4月から)
(信用力のアピール(ディスクロージャー、外部格付
など)、決済用預金の準備(任意))
個人の金融所得に対する一体的課税(一部、時期未定)
(預金金利、株式、公社債、投資信託の売買損益や利
子・配当・分配金の相殺が可能に。納税者番号制度
導入も想定され、納税方法の変更からシステム変更
負担)
可変預金保険料率導入(時期未定)
(自己資本比率などの信用力が料率に反映)
動産譲渡登記制度の導入
(2004年秋に関連法案国会提出)
(不動産以外の担保の利用促進)
保証制度の見直し
(2004年秋に関連法案国会提出)
(包括根保証制度の廃止など、保証人が過酷な返済責
任を負うのを防ぐ目的)
金融重点強化プログラム(2005年4月)
(2年間の重点強化期間を設定。内容の詳細は未定)
資本
個人情報保護法の全面施行(同上)
(2004年10月には、より詳細な個人情報保護に関する
金融庁ガイドラインも発表され、それにも対応する
必要)
RB機能強化計画
総代会の機能向上
(ガバナンスの強化)
固定資産の減損会計(2006年3月期)
(すでに2004年3月期から任意適用も可能。導入は内
部管理会計整備の契機)
新自己資本比率規制(2006年12月期)
(信用リスク測定の精緻化、オペレーショナル・リス
クの導入を伴うため、帳簿上の自己資本充実に限ら
ず、リスク管理の高度化の契機)
その他業務
確定拠出年金の掛け金上限額引上げ(2004年10月から)
証券仲介業(2004年12月から銀行等に解禁)(提携先証券会社の選定とシステム対応)
保険窓販全商品に拡大(2007年3月までに)(取扱商品の選択とシステム対応)
(備考)信金中金総合研究所作成
特 集
87
る米国に存在するリクィデターのような専門
業者(注)1の登場が、日本でも期待される。
ただし、債権者に対し、主たる債務額の変
動、不履行の発生等の一定の事由について保
証人に通知すべき義務を課すことと、通知義
ロ.保証制度の見直し
務を怠った場合の私法上の扱いが検討される
RB機能強化計画は、保証制度に過度に依存
ことになっている。そのため、通知義務や契
した融資の見直しを促しているが、法制審議
約管理に関する金融機関や借入企業の事務負
会により、貸金業務について根保証した個人
担が包括根保証の場合よりも大きくなること
を想定して、保証人の保護を目的とした保証
を、問題視する向きもある。
制度の見直しが進められ、この秋の臨時国会
に民法改正案が提出された。
ハ.金融重点強化プログラム
法制審議会が2004年9月8日に答申した、
「保
2004年6月4日に閣議決定された、
「経済財政
証制度の見直しに関する要綱」などによれば、
運営と構造改革に関する基本方針2004」
(以下、
企業と金融機関の継続的取引契約による取引
「骨太2004」という。)では、2005年4月から
から生じる不特定多数の債務に関する保証で
2007年3月までの2年間を重点強化期間と位置
ある根保証の契約を結ぶ際に、限度額(注)2や保
づけている。金融分野については、重点強化
証期限(期日を定める場合は根保証契約日か
期間を対象に「金融重点強化プログラム(仮
ら5年以内、定めない場合は3年を経過した日
称)
」が2004年中をメドに金融庁により策定さ
など)を限定することで、保証の限度額や保
れることになっている。
証期限を限定しない包括根保証を廃止するこ
とが内容となっている。
包括根保証は、経営者個人や家族のほか、知
骨太2004は、金融重点強化プログラムによ
り、バブル崩壊以来の不良債権問題への対応
から脱却して、以下の5つを柱とする金融行政
人などの「第三者」が借入れを行う法人の連
への積極的転換を図るとしている。
帯保証人になった際、予想外に過酷な返済責
①強固で活力ある金融システムの構築
任を負うことが社会的にも問題視されてきた。
②金融機関の自主的・持続的な取組みによる
今回の見直しが、失敗した経営者の再起に道
を開き、中小・地域金融機関が第三者保証等
を見直す直接の契機となることなどが期待さ
れている。また、借り手の信用力評価と損失
力測定に大きく依拠する無担保・無保証貸出
の拡大が促されることになろう。
経営強化
③地域活性化・中小企業再生に貢献する地域
金融や中小企業金融の構築
④利用者のニーズに対応した多様で高度な金
融サービスの提供
⑤金融実態に対応した取引ルール等の整備と
(注)
1.日本政策投資銀行ホームページのNews Release(2004年4月5日)参照
2.債務の元本、利息および損害賠償額のすべてを含む額
88
信金中金月報 2004.11
そのもとでの利用者の安心の確保
「当社の与信判断・与信後の管理」などが例示
内容の詳細は、まだ明らかではないが、基
された。特に、融資に際して借り手の個人情
本的に5つの柱は、機能強化計画の延長上にあ
報を取得する場合においては、利用目的につ
るとみられ、その点ではRBの機能強化継続の
いて本人の同意を得ることが望ましく、契約
重要性が確認された。なお、一部に、これま
書等における利用目的は、他の契約条項等と明
でよりも不良債権問題の解決を促す内容が盛
確に分離して記載されることとされ、本人の同
り込まれるとの見方もあり、今後も策定経過
意の確認欄を設けることが望ましいとされた。
が注目されよう。
個人情報の通知または公表済みの利用目的
以外での利用や、第三者提供の場合には、本
ニ.個人情報保護法の全面施行
人同意を原則書面(注)3で得ることとされ、後者
2005年4月1日より個人情報保護法が全面施
については記載事項(注)4も列挙される予定であ
行となり、民間事業者も法の遵守を義務づけ
る。個人信用情報機関に対してその個人デー
られ、違反した場合、刑事罰に処せられるこ
タが提供される場合には、その機関を通じて
ともある。金融庁は、この全面施行に先立っ
機関の他の会員にも情報が提供されることに
て、9月29日に「金融分野における個人情報保
なるため、第三者提供の本人同意文書には、そ
護に関するガイドライン(案)」を公表した。
の旨と、その機関の会員企業として個人デー
ガイドラインは、パブリック・コメントの手
タを利用する者の表示も行うこととされた。顧
続きを経て、正式に決定される。そのかわり、
客情報を他の業務で利用するような場合は、そ
金融分野の個人情報保護に関する個別法につ
の旨利用目的にうたわれていなければ、利用
いては、制定されないとの見方が有力である。
目的以外での利用に当たるので、注意が必要
ガイドライン案では、個人情報保護法でポ
である。
イントとなる利用目的の特定や通知、公表の
なお、機微(センシティブ)情報(注)5につい
仕方、民間事業者による個人データ(データ
ては、定められた例外を除き、その取得、利
ベース化された個人情報)に対する安全管理
用または第三者提供を行わないこととされた。
措置、従業員や業務委託先の監督などの内容
ガイドライン案は、安全管理規程等の整備・
が、より具体的に規定されている。
運用と、その実施状況の点検・検査などの体
利用目的の特定については、提供する金融
制整備等を内容とする組織的安全管理措置、従
商品、サービスを示したうえで特定すること
業員の教育や監督を内容とする人的安全管理
が望ましいとされ、「当社の預金の受入れ」、
措置、個人データやそれを取り扱う情報シス
(注)
3.電子的方法、磁気的方法、その他の知覚によっては認識することのできない方法で作られる記録を含む。
4.個人データを提供する第三者。提供を受けた第三者における利用内容。第三者に提供される情報の内容
5.政治的見解、信教(宗教、思想および信条をいう。
)
、労働組合への加盟、人種および民族、門地および本籍地、保健医療お
よび性生活、ならびに犯罪暦に関する情報
特 集
89
テムへのアクセス制御、情報システム監視等
ごとにその将来キャッシュ・フローを見積も
を内容とする技術的安全管理措置の3種に分け
って、減損損失を認識するかどうか判断し、そ
て、安全管理措置について規定している。金
の損失額の測定を行うからである。
融機関は、それらを含む措置を講じる必要が
固定資産のグルーピングについて金融界は、
ある。特に電子データについては、近年流出、
金融機関をネットワーク産業とみなして、全
漏えい事件が多発しており、システム・セキ
社で1グループとする要望を出していたが、最
ュリティの強化も重要な検討課題の1つに入っ
近は、全社単一グルーピングには無理がある、
てくると思われる。
というのが共通認識となりつつある。グルー
個人情報の本人からの、個人情報の開示、訂
プごとの将来キャッシュ・フローを見積もる
正、利用停止、第三者提供の停止などの求め
には、その基礎として、近年のグループごと
に応じる体制整備、苦情の受付窓口を設置す
のキャッシュ・フロー実績を求めることので
るなどの対応も必要である。
きる内部会計データの整備も必要となるため、
その準備も必要である。
ホ.固定資産の減損会計
減損会計導入初年度に、多額の減損損失が
すでに任意適用は開始されているが、2006
出て、自己資本が大きくき損するなどの事態
年3月期からは信用金庫にも減損会計が強制適
を防ぐため、減損損失が出やすい保有遊休地
用される。減損会計とは、
「固定資産の収益性
の処分や評価減などの対策を講じておく必要
の低下により投資額の回収が見込めなくなっ
がでてくる場合もある。
た場合に、回収不能部分を損失として、資産
の帳簿価額を回収可能な範囲まで切り下げる
(2)負債に関する課題
会計処理」をいう。減損処理は、減損の兆候
イ.ペイオフ全面解禁
が確認された固定資産について、減損損失を
2005年4月からはペイオフが全面解禁される。
認識するかどうか判定し、減損損失が認識さ
それまでは預金保険で全額保護される当座預
れた場合に、その損失額を測定するというプ
金、普通預金、別段預金についても法人、個
ロセスで進められる。その際、重要となるの
人の別なく1預金者当たり1金融機関当たり預
が固定資産のグルーピングとグループ単位で
金残高1,000万円とその利子を超える分につい
の将来キャッシュ・フロー見積もりの準備で
てペイオフが導入される。そのかわり、2005
ある。減損会計は、他の固定資産から独立し
年4月以降も決済用預金(注)6については、預金
てキャッシュ・フローを生み出している固定
保険によりその全額が保護される。
資産(群)を1つのグループとして、グループ
ペイオフ全面解禁に備えた名寄せ作業や、決
(注)6.①決済サービスを提供できること、②預金者が払戻しをいつでも請求できること、③利息がつかないこと、という3条件を
満たす預金
90
信金中金月報 2004.11
済用預金となる新たな商品を導入する場合の
益間での損益通算が可能であり、さらに、公募
システム対応が必要となる。加えて、財務内
株式投信の解約・償還損の上場株式等売買益と
容はもちろん、地域貢献の内容なども含み、健
の相殺が可能となっている。金融庁は、平成
全性をアピールでき、預金者の信頼を獲得で
17年度税制改正要望項目で、株式等(未上場株
きるようなディスクロージャーを行うことも
式も含む)
・株式投資信託、公社債・公社債投
課題となる。そして、より長期的には、その
資信託、先物・オプション、預金等の金融商品
ようなディスクロージャーに耐えうる実際の
からの収益と損失について、幅広く損益通算
健全性を備えるための、資産の質の向上、自
を可能とするよう要望している。つまり、この
己資本の充実なども課題となってこよう。風
要望では預金等や公社債の利子、株式配当や、
評リスクに耐える体制を事前に整える必要が
公社債の売買損益、投資信託の解約・償還益や
ある。なお、決済用預金の預金保険料率が、仮
収益分配金もひろく損益通算の対象となる。
に他の預金よりも高く設定されることになれ
しかし、政府税調の方針としては、預金等
ば、預金金利がほとんどゼロである現状では、
や公社債の利子、公社債投資信託の実施は遅
決済用預金が無利子預金であっても、他の預
らせる見通しであり、また、利子配当所得と
金に対するコスト優位性もなきに等しいため、
株式売買等損益の通算にも限度額を設ける見
当面割高な資金となる可能性がある。
通しである。
決済性預金の導入に関しては、導入自体が
預金等利子まで導入されれば、納税方法の
預金者の信用喪失につながるという見方もあ
変更やそのシステム対応が必要となると思わ
ったが、2004年4月に八千代銀行が導入してか
れる。また、前述の損益通算の限度額にもよ
らは、導入を予定する地方銀行や大手行も増
ろうが、現在ゼロに近い預金利子率が将来上
え、都内の全信用金庫25金庫が2005年4月まで
昇して、損益通算の効果が高まるようなこと
に導入する見通しとの新聞報道(注)7もあった。
になれば、預金者の株式投資信託などリスク
また、95行の地方銀行、第二地銀も2005年3月
商品の保有に対するリスク許容額がいく分高
までに決済性預金を導入する予定であるとさ
まる可能性があるので、投資信託の窓販戦略
れている(注)8。
を考えるうえでの留意点になろう。
ロ.個人の金融所得に対する一体的課税
ハ.可変預金保険料率導入
政府税調や金融審議会の議論により、金融
時期は未定だが、預金保険制度は、例えば
商品の一体化課税が進められる方向である。現
自己資本比率などの財務上の定量指標や、そ
行、上場株式等・公募株式投資信託の売買損
れに検査格付のような定性指標も組み合わせ
(注)
7.日本経済新聞2004年9月11日(土曜日)参照
8.日本経済新聞2004年8月20日(金曜日)参照
特 集
91
て、金融機関をグループに分け、そのグルー
的内部格付手法(基礎的IRB)、先進的内部格
プにより保険料率が変わる、可変保険料率と
付手法(先進的IRB)の3種類の計測手法の中
なる方向で議論されている。米国では、1993
から選択できる。それらの特徴は、図表8のと
年に可変保険料率が採用され、その後、採用
おりである。リスク感応度の高度化とは、信
する国が年々増加傾向にある。信用金庫など
用リスクの違いによって、同じ借入主体であ
の業態別相互支援制度の存在を可変保険料率
っても、そのリスク・ウエイトが大きく変わ
にどのように反映させていくかも、今後の検
る仕組みになったということである。条件を
討課題となっている。
満たす、個人や中小企業向けの小口債権につ
ここでいう自己資本比率が新自己資本比率
いては、その小口リスク分散効果を考慮して、
規制上のものとなるのであれば、信用リスク
例えば標準的手法であれば、リスク・ウエイ
の高い貸出を行った場合、それに見合った上
トが現行規制の100%から75%に引き下げられ
乗せ金利を確保しなければ、預金調達コスト
る。一方、90日以上延滞債権以下の不良債権
との見合いでも採算が悪くなる仕組みとなる
の場合、その引当率によって、未引当部分の
おそれがある。実際、十分な上乗せ金利を恒
リスク・ウエイトが大きく異なる。標準的手
常的に確保していかなければ、デフォルトの
法の場合で、引当率50%以上なら100%または
発生による損失に割り負け、自己資本自体が
各国裁量で50%に、引当率20%未満であれば
食いつぶされていく可能性も否定できない。し
150%になる。
たがって、この点からも、自己資本比率水準
より先進的な手法を用いるほど、正常なリ
とプライシング方針を総合した貸出戦略を考
テール債権のリスク・ウエイトが低くなる一
えていく必要が将来出てくる。
方、不良債権のリスク・ウエイトは高くなる
仕組みとなっているため、一概に先進的な手
(3)資本に関する課題
イ.新自己資本比率規制
2006年12月期から導入される新BIS規制の内
法が有利とはいえない。また、システム対応
や信用リスク管理の現状を踏まえた手法の選
択が必要となる。
容が2004年6月に公表された。これを受けて金
オペレーショナル・リスクのリスク額の計
融庁は、早ければこの秋にも自己資本比率の
算方法には、基礎的指標手法、標準的手法、先
新国内基準を公表する予定である。今回のポ
進的測定手法の3種がある(図表9)
。そのリス
イントは、信用リスク計測の精緻化とリスク
ク額は、8%で割られ(=12.5倍され)
、自己資
感応度の高度化、オペレーショナル・リスク
本比率の計算の際の分母であるリスク・アセ
の導入、それらリスクの計測方法に複数の選
ットに加算される。
択肢があり、選択が可能なことなどである。
今回の新自己資本比率規制は、信用リスク
信用リスクについては、標準的手法、基礎
の計測の精緻化が主なポイントであるため、自
92
信金中金月報 2004.11
己資本の充実はもちろん、資産の質の向上が
引上げが実施された。確定拠出年金の掛け金
重要な課題となる。実際、より精緻な計測を
上限は、図表10のようになる。掛け金上限の
通じた信用リスク管理の高度化につながって
引上げにより、年金資産の積上がりが早まる
いこう。ペイオフ全面解禁で、預金者もこれ
ことが期待できる。
まで以上に、金融機関間に生じる、信用リス
今後も年金資産の運用難が進むようなら、既
クをより精緻に反映した自己資本比率の差を
存の確定給付型企業年金を廃止し、確定拠出
注視していくことになろう。
年金を導入する動きが民間企業の間で一層広
がる可能性もある。今後の取組みによって、将
(4)その他業務に関する課題
イ.確定拠出年金の掛け金上限引上げ
2004年10月から確定拠出年金の掛け金上限
来、他の金融機関と大きく差が開く可能性が
あることにも留意して、取組方針を考える必
要がある。現状、信用金庫業界の場合、個人
図表8 信用リスク計測手法の種類
計測手法
標準的手法
基礎的
内部格付手法
先進的
内部格付手法
特 徴
現行BIS規制のようにバーゼル委員会が一律に決めた資産分類別のリスク・ウ
ェイトによるほか、各国の監督当局が認定した外部信用評価機関の外部格付情
報を利用した貸出先別外部格付別のリスク・ウェイトも用いることができる。
例えば、大企業向け債権の場合、新BIS規制の標準的手法でのリスク・ウェイ
トは、現行同様の一律100%のほか、外部格付けを利用する場合は、大企業の
場合で格付けにより20∼150%となる(無格付けは100%)。
内部格付手法とは、個々の金融機関が内部格付を行って信用リスク別に分類し
た債権グループごとに、平均のデフォルト関連データを計算し、それをバーゼ
ル委員会があらかじめ設定した決定式に代入して、その債権グループに対する
信用リスク・アセット額をきめ細かく計算する方法である。そのうち基礎的手
法は、デフォルト率(その金融機関の内部格付別の、総貸出先数のうちの1年
当りデフォルト発生先数の割合)のみを個々の金融機関が計算する方法である。
先進的手法とは、デフォルト率以外にも、デフォルト時損失率(内部格付別に、
デフォルトを起こした貸出の名目額に対する損失額の割合)など4つのパラメ
ータをすべて個々の金融機関が計算する方法である。
導入時期
2006年末以降
2005年末予備計算
開始、2006年末以
降導入
2005年末予備計算
開始、2007年末以
降導入
(備考)国際決済銀行、日本銀行資料より信金中金総合研究所作成
図表9 オペレーショナル・リスク計測手法の種類
計測手法
基礎的指標手法
標準的手法
先進的計測手法
特 徴
オペレーショナル・リスクによるリスク額を、3年間の平均粗利益の15%であ
るとみなす手法。15%はバーゼル委員会が設定したリスク係数である。ここで
粗利益とは純金利収入+純非金利収入のことで、詳細は各国監督当局により定
義される。
バーゼル委員会が決めた分類に従って、業務ラインごとに粗利益を計算し、そ
の業務ラインごとにバーゼル委員会が決めた比率でリスク額を計算し、それを
集計して銀行全体のリスク額を求める手法。なお、業務ラインのうち、リテー
ル・バンキングとコマーシャル・バンキングについては、粗利益でなく貸出残
高を用いてリスク額を計測する代替的標準手法が各国監督当局の裁量で認めら
れる場合もある。
個々の銀行が金融工学の成果をもとに、それぞれ独自に開発した方法でオペレ
ーショナル・リスクを計測する手法。監督当局は個々の銀行の計測手法を審査
し、問題がなければそれぞれに認めることになっている。
導入時期
2006年末以降
2006年末以降
2005年末予備計算
開始、2007年末以
降導入
(備考)国際決済銀行、日本銀行資料より信金中金総合研究所作成
特 集
93
型の獲得が中心であり、2003年度末
図表10 確定拠出年金の掛け金上限
個人型
企業型
厚生年金基金も適格年金も企
厚生年金基金も適格年金もな
業型確定拠出年金もない企業
い企業の従業員の場合、年間
の従業員の場合、年間18万円
43万2,000円から55万2,000円
から21万6,000円に引上げ。
に引上げ。
自営業者などの場合、年間81
厚生年金基金や適格年金があ
万6,000円で変わらず。
る企業の従業員の場合、年間
の加入者シェア(信金中央金庫経由
分)は8.5%となっている。
ロ.証券仲介業
2004年12月から、銀行等による証
21万6,000円から27万6,000円
券仲介業も解禁となる。証券仲介業
者は、証券会社等の委託を受けて、
に引上げ。
(備考)信金中金総合研究所作成
その証券会社等のために、顧客の有
投資に慣れない顧客のバイ&ホールドの需要
価証券売買注文の証券会社等への取次ぎや、新
を満たすのであれば、個別株式でなくとも、す
規発行時の募集の取扱いなどを行ったりする。
でに行っている投信窓販により、かなり対応
証券仲介業者の業務内容は、取引の勧誘等に
は可能である。証券仲介業への参入が富裕層
制限され、あくまで顧客は、委託元の証券会
の囲い込みに役立つ面もあるが、システム導
社等と取引をする。したがって、顧客口座も
入コストなども踏まえ、参入前に、十分需要
委託元の証券会社等が保有・管理し、顧客か
調査を行うべきであろう。
らの金銭や有価証券の受入れも、その証券会
社が行う。2004年4月から、まず、一般事業会
社、会計士、税理士などに解禁された。
ハ.保険窓販の全商品への拡大
2007年3月までに、保険窓販商品が全保険商
参入する場合、提携先証券の選定やシステ
品に拡大される。しかし、貯蓄性の強い年金
ム、コンプライアンス上の準備が必要となる。
保険等は、すでに解禁されている。人気が高
例えば、証券仲介業を行う者は、内閣総理大
まっている医療保険などは、保証内容なども
臣の登録を受ける必要があり、その担当者は、
複雑であり、また、保険料も死亡保険などに
日本証券業協会の証券外務員資格を取得しな
くらべて少な目であり、販売手数料も厚くな
ければならない。
い可能性がある。医療に関するより詳細な専
しかし、営業員による投資アドバイスを必
門知識が必要になる場合もあり、コンプライ
要とせず、頻繁に売買を行う売買慣れした投
アンスや研修準備もより難しくなろう。一方
資家は、売買手数料率の安さからネット証券
で、公的年金も財政不安が高まってきたこと
を利用する傾向が強い。資産運用の個別総合
から、個人年金のニーズは引き続き拡大する
的なアドバイスを営業員から受けることを望
公算が高い。今後、どのような保険商品を扱
む富裕層については、地方での店舗網で劣る
っていくかについて、市場調査やマーケティ
とはいえ、大手証券やメガバンクがすでに一
ング戦略を踏まえて、十分検討していく必要
本釣りで押さえてしまっている可能性もある。
がある。
94
信金中金月報 2004.11
これらに対する取組みは、健全性の確保だ
おわりに
けでなく、収益力の強化にもつながっていく
RB報告書による提言と、これを受けたアク
ものであるが、個々の取引先やプロジェクトか
ション・プログラムに基づくRBの機能強化は、
ら目を転じ、より大きな視点で考えれば、信用
一言で言えば地域金融機関の健全性の確保と
金庫の経営基盤である地域の疲弊を解消し、活
収益力の強化を求めるものであり、足元を磐
性化し、発展させていくことにも積極的に関わ
石にし、将来に対して今の段階から布石を打
っていく必要があり、これら一連の諸問題にど
つことが求められていると言えよう。この点、
う対応していくかが、10年後、20年後の信用金
機能強化計画の進捗状況をみると、信用金庫
庫の命運を左右するといっても過言ではない。
は、企業の将来性や技術力を的確に評価する
さらに、第3章でみたとおり、今後、信用金庫
うえで必要となる目利き力強化のための人材
の経営に影響を与える制度変更等が数多く予定
育成や、喫緊かつ恒久的課題である不良債権
されている。これらの制度変更等の目的や背景
発生防止などに向けた体制整備に力点を置い
は、それぞれ異なるものの、対応の仕方によっ
て機能強化を実施していることがうかがえる。
て、その金融機関のB/S、P/L、信用力等への影
これらは、いわば、金融の自由化やグロー
響は、微妙に変わってくるものばかりである。
バル化に伴って顕在化するべくして顕在化し
今後、信用金庫は、地域や取引先の特性な
た地域金融や中小企業金融の古くて新しい課
どを踏まえ、これまで述べた様々な経営課題
題であり、従来、地域に特化し、取引先とリ
等に優先順位をつけながら戦略的に対応して
レーションシップを築いてきた信用金庫が、情
いくことが求められようが、本稿では、リレ
報の非対称を解消し、メガバンクとの競争に
ーションシップバンキングへの対応を含めた
おいて今後比較優位を保っていかなければな
地域金融機関の経営環境の変化について概観
らないキーポイントと考えられる。また、一
したため、全体的に金融機関サイドからの視
方では、信用リスク・データベースに代表さ
点が中心となってしまった感がある。近時強
れるようなリレーションシップバンキングと
く求められている健全性の確保や収益力の強
は異なる手法による信用リスク管理も求めら
化は、金融機関や企業の一方的な都合で成し
れており、中小企業に対する小口多数融資や
得るものではなく、いずれの経営課題に対応
個人融資など特定の顧客層、顧客ニーズに対
するについても、金融機関や企業にとって一
しては、従来の審査方法とは異なる効率的な
番大切な存在であり、将来への道しるべでも
融資についても考える必要がある。
ある顧客の存在を忘れてはならない。
〈参考文献〉
金融審議会金融分科会第二部会『リレーションシップバンキングの機能強化に向けて』
(2003年3月27日)
企業再生中小企業診断士会編著『目利きを活かした中小企業金融再生プラン』金融ブックス
特 集
95
原油を中心とした商品市況高騰の背景と今後の展望
−地政学的リスクが薄れれば、原油相場は安定へ向かう可能性が大きい−
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
黒岩 達也
(キーワード)CRB、WTI、OPEC、地政学的リスク、エルニーニョ現象、中国
(視 点)
原油価格の高騰が続いている。NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)では、10
月1日、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物が1バレル50.12ドルに達
し、終値ベースで史上初の50ドル台を記録した。
原油を中心とした商品市況の上昇は、日本経済にも少なからず悪影響を及ぼす可能性があ
り、回復の兆しがでている中小企業の景況感にも水を差すことにもなりかねない。そこで、本
稿では、①最近の原油価格高騰の要因を明らかにして今後を展望すると同時に、②穀物、貴金
属、および国内の鉄鋼・非鉄金属の市況と需給動向を分析し、最後に③商品市況の上昇が景気
や金利に与える影響について考察した。
(要 旨)
●
国際商品先物市場では、原油、天然ガスなどのエネルギー先物価格が高騰を続けているほ
か、金、銀などの貴金属先物価格も堅調に推移している。また、国内商品市場では鉄鋼製品
や非鉄金属の上昇が目立っている。
●
原油需要は中国を中心とするアジア途上国を中心に着実に増加しているものの、OPECによ
る増産体制の継続などを考慮すると、05年に向けて需給は緩和に向かうと予想される。地政
学的リスクは容易には解消されないであろうが、1バレル50ドルを超えるような原油価格が
中長期的に継続する可能性は小さく、今後は低下するとみられる。
●
穀物はエルニーニョ現象が過ぎ去ったことで需給が緩和している。貴金属市況は、景気回復
に伴う工業需要、地政学的リスクを背景とした投資需要の増加などから堅調な推移が見込ま
れる。また、国内では中国特需から引き続き鉄鋼、非鉄市況が底堅く推移するとみられる。
●
原油価格上昇は、日本などよりもエネルギー効率の低い中国などアジア途上国にとって悪影
響が大きいが、原油の高騰は長続きせず、景気・金利への影響は限定的なものとなろう。
96
信金中金月報 2004.11
280台に乗せ、異常気象で穀物が急騰した84年
はじめに
以来、約20年ぶりの高水準となっている。
04年10月に入って、代表的指標であるWTI
CRBの品目別先物指数の推移をみると、原
の先物取引では終値ベースで1バレル50ドルを
油、天然ガス、ヒーティング・オイルで構成
超える水準まで原油価格が高騰した。原油を
されるエネルギー先物指数の高騰が目立つほ
中心とした商品市況の高騰は、順調な回復を
か、プラチナ、金、銀などで構成される貴金
続けてきた世界経済の腰折れをもたらす危険
属先物指数も上昇している。このほか、04年
性がある。とりわけ、日本経済は輸出をリー
の春先までは大豆、小麦などを中心として穀
ド役に回復を遂げてきただけに、原油高によ
物先物指数も上昇傾向が顕著であったが、そ
る直接的、間接的悪影響が長引けば、中小企
の後は急落している(注)2(図表2)。
業を中心として大きな打撃を被る可能性も否
定できない。
(2)国内商品指数も上昇基調が継続
しかし、結論から言えば、原油高は一時的な
一方、図表3は国内の代表的指標である日経
ものと予想され、世界経済や日本経済に与える
商品指数42種の推移をみたものである(注)3。ま
悪影響は限定的と考えられる。以下では、原油
価格の高騰が一過性にとどまるとみられる背
図表1 CRB商品先物指数の長期推移
(1967年=100)
350
337.6
景を説明すると同時に、その他の代表的な商品
300
についても、その動向と今後の展望を紹介する。
285.0
284.2
250
1.内外の商品指数は高値圏で推移
(1)CRB商品先物指数は20年ぶりの高水準
CRB商品先物指数は、国際商品市況の動向
200
150
100
を示す最も代表的な指標である(注)1。図表1は
50
70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04(年)
その長期推移をみたものだが、直近の指数は
(備考)1.CRB先物指数=EXP(Σ
[LOG17品目の商品先物指数])
2.ブルームバーグにより作成
(注)1.Commodity Research Bureau Futures Price Indexは、ココア(NYBOT)、コーヒー(NYBOT)、砂糖(NYBOT)、綿花
(NYBOT)、銅(NYMEX)、プラチナ(NYMEX)、銀(NYMEX)、原油(NYMEX)、とうもろこし(CBOT)、天然ガス
(NYMEX)、小麦(CBOT)、大豆(CBOT)、蓄牛(CME)、豚(CME)、ヒーティング・オイル(NYMEX)、金(NYMEX)、
オレンジ・ジュース(NYBOT)の商品先物17品目で構成(NYBOT=ニューヨーク商品取引所、NYMEX=ニューヨーク・マ
ーカンタイル取引所、CBOT=シカゴ商品取引所、CME=シカゴ・マーカンタイル取引所)。指数の計算に含まれる先物価格
は、当月から11か月内のすべての限月で、その平均価格を用いて指数化される。商品ごとのウエイト付けはないが、各商品の
取引状況などにより不定期に構成品目の入替えが行われる。
2.穀物先物指数はとうもろこし(CBOT)、大豆(CBOT)、小麦(CBOT)、畜産類先物指数は蓄牛(CME)、豚(CME)、エ
ネルギー先物指数は原油(NYMEX)、天然ガス(NYMEX)、ヒーティング・オイル(NYMEX)、貴金属先物指数はプラチナ
(NYMEX)、金(NYMEX)、銀(NYMEX)、銅(NYMEX)、ソフト商品先物指数はココア(NYBOT)、コーヒー(NYBOT)、
砂糖(NYBOT)
、綿花(NYBOT)
、オレンジ・ジュース(NYBOT)で構成されている。
3.日経商品指数42種は、綿糸、毛糸、生糸、アクリル糸、ポリエス糸、ナイロン糸、スフ糸、棒鋼、山形鋼、H形鋼、冷延薄
板、厚鋼板、SC材、ステンレス鋼版、銅地金、亜鉛地金、鉛地金、すず地金、アルミニウム地金、黄銅丸棒、米ツガ正角、ヒ
ノキ正角、杉小幅板、合板、カセイソーダ、純ベンゼン、塩ビ樹脂、低密度ポリエチレン、ガソリン、白灯油、軽油、C重油、
上質紙、コーデッド紙、K’ライナー、大豆米産、大豆油、砂糖上白、セメントバラ積み、原皮北米産ステア、天然ゴム、金
地金の42種で構成されている。
調 査
97
だ、相対的なレベルは低いが、01年末の100.2
を底に04年9月末には126.2まで上昇してきてい
図表2 CRB品目別先物指数の推移
(2002年年初=100)
280
る。品目別にみると、棒鋼、H形鋼、冷延薄板
250
などの鉄鋼製品やすず地金などの非鉄金属の
220
上昇が目立っている(図表4)。
190
穀物先物指数
畜産類先物指数
エネルギー先物指数
貴金属先物指数
ソフト商品先物指数
256.1
161.4
160
2.原油価格の高騰の原因と今後の動向
(1)WTI先物は史上最高値だが、実質では依
130
100
70
02/1
然ピークの半値水準
商品市況のなかでも、原油価格の動向は経
02/7
03/1
03/7
04/1
04/7(年/月)
(備考)1.各先物指数の原データは1967年=100
2.ブルームバーグにより作成
済に大きな影響を与えるという意味で最も注
4月に1バレル39.5ドルの高値を記録したが、そ
目される。
の後は91年の湾岸戦争など特殊要因による一
原油市況の代表的指標は、NYMEX(ニュー
時的な高騰はあったものの、基調として低迷
ヨーク・マーカンタイル取引所)に上場され
を続けてきた。しかし、03年春のイラク戦争
ている米テキサス州西部などで産出される良
を契機として、いわゆる地政学的リスクが強
質の超軽質原油であるWTI(ウエスト・テキ
く意識されるようになり、04年に入ってから
サス・インターミディエート)の先物価格で
は産油国における様々な政治的・経済的な懸
ある。図表5は、WTI先物価格(期近物)の長
念材料が噴出して急騰し、直近9月には月中平
期推移を月中平均ベースでみたものである。
均で1バレル45.9ドルと史上最高値を更新した。
WTI先物価格は、第2次石油ショック後の80年
ただ、72年を基準とする実質価格は04年9月
図表3 日経商品指数42種の推移
(1970年=100)
210
図表4 国内の主要商品相場の推移
(2002年1月=100)
209.8
220.0
220
200
190
180
170
208.1
棒鋼
H形鋼
冷延薄板
すず地金
ガソリン
187.6
169.6
160
150
140
126.2
130
125.3
120
110
100
100.2
90
80
02/1
70
70 73 76 79 82 85 88 91 94 97 00 03(年)
02/7
03/1
03/7
04/1
04/7 (年/月)
(備考)棒鋼はOA機器、工作機械、自動車の部材、H型鋼は建
設物、橋梁の骨組み、冷延薄板は自動車、家電製品のフ
(備考)1.日経商品指数42種=EXP(Σ
[LOG42品目の商品先物指数]) レーム、すず地金は電子部品、めっき製品の原料、など
が主な用途である。
2.日本経済新聞報道により作成
98
信金中金月報 2004.11
図表5 WTI先物価格(期近物)の長期推移
(ドル/バレル)
60 第
一
次
石
50 油
シ
ョ
ッ
40 ク
︵
73
︶
第
二
次
石
油
シ
ョ
ッ 39.5
ク
︵
79
︶
湾
岸
戦
争
︵
91
︶
イ
ラ
ク
戦
争
︵
03
︶ 45.9
WTI先物価格(期近物)
30
20.4
20
10.1
10
実質原油価格
(WTI先物価格/米国CPI:1972年基準)
0
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98 2000 2002 2004(年)
(備考)ブルームバーグ等により作成
でも10.1ドルと依然として過去のピークの半値
行の目標価格レンジは22∼28ドルに置かれて
以下にとどまっており、日本のような非産油
いる。
国に与える経済的な打撃という面では第2次石
この水準は、世界経済の成長を促し、OPEC
油ショック時ほどのインパクトはないと考え
原油への長期的かつ安定的な需要を促進でき
られる。
るレベルであるとの認識に基づいている。し
先物価格ばかりでなく、現物価格も大きく
かし、原油価格高騰後も旺盛な需要が続いてい
上昇している。図表6は、OPEC諸国が産出す
ることを背景に、OPECの一部諸国からは目標
る原油のスポット価格を加重平均したバスケ
レンジを5ドル程度引き上げる案もでてきてお
ット価格の推移である。OPECは、このバスケ
り、早ければ04年12月にカイロで開かれる予定
ット価格を参考に石油戦略を決定しており、現
のOPEC総会で決定される可能性もでてきた。
図表6 OPECバスケット価格と目標レンジ
(ドル/バレル)
46
44
42
40
38
36
34
32
30
28
26
24
22
20
18
16
14
01
43.39
現行目標レンジ
新規目標レンジ?
02
03
04
(年)
(備考)1.バスケット価格はUAE・ドバイ、アルジェリア・サハランブレント、ナイジェリア・
ボニーライト、インドネシア・ミナス、サウジアラビア・アラビアンライト、メキシコ・
イスムス、ベネズエラ・ティアファーナライトの7種の原油スポット価格の加重平均
2.Energy Information Administration(EIA)、OPEC資料により作成
調 査
99
(2)原油需給は逼迫も危機的水準にはほど遠い
月の生産量と生産枠、生産能力をまとめたも
この数年、世界の原油需要は前年比2∼3%
のである。イラクを除く生産量は日量2,754万
程度のテンポで着実に増加しているが、なか
バレルに達し、すでに生産枠を大きく上回る
でも目立って需要を伸ばしているのが中国で
増産が図られている。安定的に生産が維持で
ある。主要国の原油需要量の推移をみると、中
きる限界能力に接近しており、今後の増産余
国はすでに日本を抜いて米国に次ぐ世界第2位
力はわずか24万バレルに過ぎない。
の消費国となっている(図表7)。
また、米国などでは石油精製能力が低下し
IEA(国際エネルギー機関)によれば、中国
の原油需要量は03年の前年比11%増
に続いて、04年が同15.3%増、05年
ているという問題もある。例えば、米国のガ
図表7 主要国の原油需要
(百万バレル/日)
(百万バレル/日)
12
が同7.6%増と予測されている。中国
を除いても、世界のなかでアジア途
上国の需要の伸びが大きく、毎年3∼
5%のペースで増加している。
中国やアジアの原油需要が拡大し
ている背景には、経済が高成長を続
11
7.00
7
19
6
4
すると日本は9にとどまる。つまり、
8.59
8
効率が極端に低い経済構造になって
量を比較したものだが、中国を100と
21
20
9
5
を創出するために必要なエネルギー
20.78
EURO-4
米国(右目盛)
10
けていることに加えて、エネルギー
いることがある。図表8はGDP1単位
日本
中国
5.65
03
04
18
05
(年)
(備考)1.04年第3四半期以降はIEAによる予測値
2.International Energy Agency(IEA), Oil Market Report, Sep. 2004により
作成
図表8 アジア主要国のエネルギー消費原単位
(中国=100)
140
中国はGDP1単位を生産するために
125
120
日本の約10倍のエネルギーを消費す
100
る極端なエネルギー浪費型の経済構
80
造となっているわけである。
程度の差
60
はあるが、
中国以外のアジア途上国に
40
おいても同様の傾向がみられ、
今後、
20
100
69
42
省エネを進める余地はかなり大きい。
一方、供給サイドをみると、OPEC
諸国の増産能力が限界に近づきつつ
ある。図表9は、OPEC各国の04年8
100
信金中金月報 2004.11
0
45
45
9
中
国
タ
イ
マ
レ
ー
シ
ア
フ
ィ
リ
ピ
ン
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
ベ
ト
ナ
ム
日
本
(備考)1.エネルギー消費原単位=エネルギー消費÷名目GDP(00年時点)
2.資源エネルギー庁『2030年に向けた国際エネルギー戦略』
(04年4月)
により作成
図表9 OPECの原油生産と生産余力
(単位:百万バレル/日)
生産量(A) 生産枠(B)
生産枠
安定的生産
(04年8月) (04年8∼10月)
(04年11月∼) 能力(C)
アルジェリア
インドネシア
イラン
クウェート
リビア
ナイジェリア
カタール
サウジアラビア
UAE
ベネズエラ
小計
イラク
合計
1.23
0.95
3.95
2.37
1.59
2.45
0.80
9.50
2.48
2.22
27.54
1.79
29.33
0.83
1.35
3.82
2.09
1.39
2.14
0.67
8.45
2.27
2.99
26.00
―
―
0.86
1.40
3.96
2.17
1.45
2.22
0.70
8.78
2.36
3.11
27.00
―
―
増産余力 協定遵守状況
(C)
−
(A) (A)
−
(B)
1.25
1.00
4.00
2.35
1.58
2.50
0.80
9.50
2.55
2.25
27.78
2.50
30.28
0.02
0.05
0.05
△0.02
△0.01
0.05
0.00
0.00
0.07
0.03
0.24
0.71
0.95
0.40
△0.40
0.13
0.28
0.20
0.31
0.13
1.05
0.21
△0.77
1.54
―
―
(備考)International Energy Agency(IEA), Oil Market Report, Sep. 2004により作成
ソリン在庫は長期趨勢的に低下して
きている(図表10)
。これは、近年、
精製業者が老朽化した製油設備の廃
図表10 米国のガソリン在庫とガソリン価格
(百万バレル)
(セント/ガロン)
240
230
ガソリン在庫(左目盛)
ガソリン価格(右目盛)
ガソリン在庫トレンド線(左目盛)
210
230
190
棄・転用などの合理化を促進した結
170
220
果である。また、各州政府によるガ
ソリンの硫黄分などに対する厳しい
規制によって、高い精製技術が求め
200
られるようになったこともある。
こう
190
した在庫の逼迫がガソリン価格高騰
180
91
に結びつき、
これが逆に原油先物の思
惑買いを誘っているとの見方もある。
以上のように、原油需給は引き締
110
90
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
50
04(年)
(備考)Energy Information Administration(EIA)資料により作成
図表11 OECD諸国の原油在庫
(日分)
140
124
120
は石油ショック時のような、
「石油が
100
手に入らない状況」
、とはまるで異な
80
る。加えて、OECD諸国には有事に
60
備えて豊富な原油在庫がある。04年
40
3月末のOECD全体の原油在庫は81日
20
分、なかでも日本は124日分の在庫を
0
図表12は、世界の原油需給見通し
130
70
まってきているものの、現在の状況
保有している(図表11)。
150
210
81
84
77
民間
51
政府
29
OECD
米国
日本
欧州
(備考)1.04年3月末現在
2.International Energy Agency(IEA), Oil Market Report, Sep. 2004により
り作成
調 査
101
図表12 世界の原油需給見通し
(百万バレル/日)
(百万バレル/日)
86
3
予測
84
2
82
1
80
0
78
需給バランス(供給−需要:右目盛)
原油供給量(左目盛)
原油需要量(左目盛)
76
74
02
03
04
-1
-2
-3
05
(年)
(備考)1.世界需要、非OPEC供給量の予測はIEA。OPECの供給量は04年第3四半期から横ばいと仮定
2.International Energy Agency(IEA), Oil Market Report, Sep. 2004により作成
を示したものである。今後もOPECが現状レベ
では政治的な紛争、サウジに次ぐ産油国・ロ
ルの生産水準を維持すれば、04年冬場から05年
シアでも最大の石油会社・ユコスの経営破た
の需給バランスはプラス、つまり在庫が積み増
んによる原油輸出停滞が懸念されている(図
され、
需給は大幅に緩和することが見込まれる。
表13)。
イラク戦争以来のイスラム原理主義過激派
(3)地政学的リスクは残るも原油価格は徐々
の反米感情の高まりなどを考えると、地政学
に低下へ
的リスクが早期に低下する可能性は少ない。し
ただし、原油価格安定のためには地政学的
かし、原油需給などをもとに推計したWTI先
なリスクの低下が必要である。サウジ、イラ
物価格の理論値は足元で1バレル30ドル前後と
クなど中東産油国ではテロによる原油生産の
推定され、50ドルを超す原油価格は明らかに
停滞が懸念され、ナイジェリア、ベネズエラ
行き過ぎである(図表14)。
図表13 主要産油国の情勢
政治・経済における懸念材料
サウジアラビア
首都リヤドや東部の油田地帯で欧米人、欧米企業を標的とし
たイスラム過激派によるテロが頻発
10.7
イラン
米国は同国の核開発の可能性を懸念。米国の対応次第で原油
輸出に影響する可能性も
4.7
イラク
テロによる治安悪化。イラク南部の積出港・バスラは石油輸
出の9割を占め、同地域へのテロ攻撃は打撃大。パイプライン
襲撃件数は6月12件、7月17件発生
1.7
ナイジェリア
9月下旬、反政府勢力が政府に対する全面戦争を宣告、原油
生産が停止する可能性
2.7
チャベス大統領と石油産業が油田開発資金をめぐり対立
2.5
ベネズエラ
ロシア
同国最大の石油会社・ユコスが経営破たんの危機に。脱税に
よる莫大な追徴課税が要因。同社の大株主・ホドルコフスキー
はプーチン大統領の政敵とされ、政治闘争の側面も
(備考)1.世界生産に占める割合は03年時点
2.IEA、BP資料および各種報道により作成
102
世界の原油生産に
占める割合(%)
国 名
信金中金月報 2004.11
10.7
また、中長期的な観点からすると、原油価格
特に、タールサンド、GTL、オイルシェー
が30ドルを大きく超える水準で高止まりすれ
ルなどの非在来型石油は埋蔵量も豊富で、代
ば、省エネが加速されると同時に、非在来型の
替エネルギー開発に比べて技術的問題も少な
石油開発や太陽光発電・風力地熱発電・水素・
く、生産コストも比較的低い(図表15)
。生産
燃料電池等の代替エネルギー開発が促進され、
コストは原油が1バレル換算当たり5∼17ドル
それが結果的に原油価格の下押し圧力になる。
であるのに対して、タールサンドが7∼22ドル、
図表14 WTI先物価格の理論値の推計
(百万バレル/日)
45
40
WTI先物価格(期近物)
35
理論値
38.90
(04.1-9)
予測
30
31.26(05)
28.70(04)
25
20
15
10
5
0
70
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04(年)
(備考)1.LN(WTI先物価格)=−15.198−7.121×LN(世界の原油生産量)+8.302×LN(世界の原油需要量)
(−1.768) (−1.752) (1.899)
−2.108×LN(ドル実効為替レート)+2.452×LN(米国消費者物価指数)
(−6.734) (6.034)
R2=0.819 推計期間:70年∼03年 カッコ内はt値
2.72年以前のドル実効為替レートは未公表のため、73年1月の数値を適用
3.04∼05年の予測値は原油需要、非OPECの原油生産量についてはIEAの予測、OPECの原油生産量、ドル実効為替レート
は04年8月以降横ばい、米国の消費者物価は年率3%として推計
4.FRB資料等により信金中金総合研究所試算
図表15 原油と非在来石油の埋蔵量・生産コスト
推定埋蔵量(兆バレル)
超重質油 0.6
生産コスト
超重質油
22
オイルシェール
オイルシェール 2.6
原油 3.3
21
GTL
12
タールサンド
16
7
22
5
原油
GTL 0.8
26
17
タールサンド 1.6
0
5
10
15
20
25
30
(ドル/バレル)
(備考)1.タールサンドは重質の油分を多量に含んだ砂または砂岩。GTL(Gas to Liquid)は天然ガスから作られる液体燃料、オイ
ルシェールは固有の有機物(ケロージェン:石油の根源物質)を多量に含んだ泥板岩。超重質油はアスファルト(ガス化
して発電等に利用)
2.IEPE, Prospective Outlook on Long-term Energy Strategy, Feb. 1998、David Deming, Oil : Are We Running Out?, Jan, 2000、
EMD, Oil Shaleなどにより作成
調 査
103
オイルシェールが21∼26ドル程度で
図表16 主要国の確認埋蔵量と可採年数
(年)
(億バレル)
あると言われ、原油価格が30ドルを
3,000
250
超える水準であれば十分な競争力が
2,500
200
ある。
2,000
図表16は石油埋蔵量が多い上位10
1,500
か国を示しているが、可採年数が100
1,000
年に近い、あるいは100年を超える産
500
油国は中東地域に集中しており、長
0
100
期的にはOPECの支配力が高まる事
態は避けられない。中東諸国による
エネルギー支配を回避するためにも、
150
50
サウジ
アラビア イラン イラク UAE クウェート ベネズエラ ロシア リビア ナイジェリア
0
米国
確認埋蔵量 2,627
1,307
1,150
978
965
780
691
360
343
307
73.3
92.9
235.2
120.7
110.4
71.5
22.2
66.3
43.1
11.3
可採年数
(備考)1.確認埋蔵量は左目盛、可採年数は右目盛
2.可採年数=埋蔵量÷年間生産量(03年末現在)
3.BP, Statistical Review of World Energyにより作成
米国、カナダ、オーストラリアに多く存在す
は天候によって大きく左右されるが、最近の
る非在来型石油の開発が急がれている。
研究ではエルニーニョ現象が世界の天候に大
きな変化をもたらすものとして注目されてい
3.その他の商品市況は安定した推移に
る。エルニーニョ現象とは、東部太平洋赤道
(1)穀物需給は作柄の好転から緩和傾向
域を中心に海面水温が通常より高くなる現象
のことである(注)4。
春先以降、大豆を中心とした穀物市況は軟
図表17は、エルニーニョ監視水域の水温偏
調に推移している。当然ながら、穀物の作柄
図表17 エルニーニョ現象と大豆価格
(℃)
(セント/ブッシェル)
1200
4
エルニーニョ監視水域の水温偏差(左目盛)
大豆価格(米国現物:右目盛)
3
1000
2
800
1
600
0
400
-1
200
-2
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
0
04(年)
(備考)1.エルニーニョ監視海域は、北緯4度と南緯4度、西経150度と西経90度で囲まれた海域
2.気象庁気候・海洋気象部、米国農務省資料により作成
(注)4.気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値(1961年から1990年までの30年間の平均水温)との差の5か月移動
平均値が6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象と定義している。
104
信金中金月報 2004.11
差と大豆価格の推移をみたものである。シャ
ると、西部では多雨、東部では少雨になる傾
ドーの部分がエルニーニョ発生時期を示して
向があり、それが小麦、大豆などの作柄に悪
いるが、両者には非常に高い相関性があるこ
影響を与える場合が多い(注)5。
エルニーニョ現象は過去3∼4年に1回の頻度
とがわかる。
エルニーニョ発生時には、世界的な異常気
で発生しており、直近では02∼03年にかけて
象が発生するとされる(図表18)
。特に、国際
発生した。エルニーニョが発生すると、それ
穀物市況に大きな影響のある北米の場合をみ
が大豆の作柄に悪影響を与え、結果として在
図表18 エルニーニョ現象発生時における世界の天候(夏)
少雨
多雨
低温
高温
(備考)1.エルニーニョ発生時における6∼8月の天候の特徴
2.気象庁気候・海洋気象部資料により作成
図表19 米国の大豆在庫率と農家の平均販売価格の推移
(%)
(ドル/ブッシェル)
30
28.5
4.0
米国の大豆在庫率(左目盛)
農家の平均販売価格
(右目盛:逆目盛表示)
25
20
6.0
15
10
8.0
6.9
4.2
5
0
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
10.0
04(年)
(備考)1.在庫率=(期末在庫÷消費量)×100
2.04年度(04年9月∼05年8月)は04年9月時点の米国農務省による予測値
3.米国農務省資料により作成
(注)
5.日本の場合、6∼8月は低温・多雨になる傾向があり、それがコメなどの作柄に悪影響を与えるとされる。
調 査
105
図表20 米国の穀物需給見通し
総供給
穀物全体
小麦
粗粒穀物
コメ
油糧種子
輸 出
国内需要
期末在庫
在庫率
03年
395.7
88.2
262.9
44.5
16.9
04年
412.3
88.9
270.7
52.8
19.5
03年
78.9
31.6
32.5
14.9
45.7
04年
74.3
25.9
32.7
15.7
48.1
03年
309.1
53.4
226.7
28.9
12.8
04年
329.8
59.7
234.2
36.0
15.4
03年
7.7
3.3
3.7
0.8
20.7
04年
8.3
3.4
3.8
1.0
27.2
03年
82.1
25.1
45.7
3.9
8.5
04年
92.3
28.2
48.1
6.3
13.1
(備考)1.粗粒穀物はとうもろこし、大麦等、油糧種子は大豆、ナタネ等
2.04年度は04年9月時点の米国農務省による予測値
3.米国農務省 World Agricultural Supply And Demand, Sep. 2004により作成
庫率が大きく低下し、市況が上昇するという
パターンを繰り返してきている(図表19)。
(2)貴金属は需要増、地政学的リスク等を背
景に堅調
04年は、エルニーニョ現象の発生もなく作
貴金属市況は、金を中心として底堅い推移
柄も穀物全般に良好と予想される。米国農務
となっている。この背景には、04年になって
省によれば、穀物全体の在庫率は03年の16.9%
金の需給が好転していることがある(図表21)
。
から04年は19.5%へ上昇することが見込まれて
とりわけ、地政学的リスクの高まりを背景と
いる(図表20)
。一部にはエルニーニョ現象の
して、個人の装飾品や金地金などに対する需
再発を懸念する向きもあるが、過去のパター
要が高まっていると同時に、世界的な景気回
ンからすると、当面、その可能性は低く、穀物
復を背景に工業用需要も増加している。
市況は需給緩和から安定した推移を続けると
これに伴って、金価格も1オンス400ドル前
予想される。
後まで回復している(図表22)
。地政学的リス
図表21 世界の金需給動向
図表22 金価格(現物)
と円/ドル相場
(単位:トン、%)
2002
2003
2003
前年比
700
5.3
706
584
499
5.1
600
前年比
生産
2,168 2,283
(ドル/オンス)
800
2004
3Q
4Q
1Q
政府売却
546
617
13.1
153
170
96
-26.8
スクラップ
836
945
13.0
210
240
221
-19.0
3,550 3,845
8.3 1,071
994
815
-7.1
400
装飾品
2,680 2,532
-5.6
617
747
604
12.0
300
200
金地金・コイン投資
281
273
-2.7
61
84
77
13.7
291
318
9.4
79
82
83
8.4
歯科用需要
69
67
-2.8
16
17
17
-0.6
3,321 3,190
-3.9
773
930
780
11.4
総需要量
(備考)World Gold Council資料により作成
106
信金中金月報 2004.11
金価格(左目盛)
円/ドル相場(右目盛:逆目盛表示)
500
総供給量
工業用需要
(円)
100
0
50
100
150
200
250
300
0
350
73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03(年)
(備考)ブルームバーグにより作成
図表23 日本の対中鉄鋼・非鉄金属輸出
図表24 中国の固定資産投資(前年比)
(%)
(%)
100
70
鉄鋼
非鉄金属
80
(%)
140
固定資産投資(左目盛)
基本建設支出(右目盛)
60
120
50
100
60
40
80
40
30
60
20
40
10
20
20
0
-20
-40
01/1
01/7
02/1
02/7
03/1
(備考)1.前年比増減率
2.財務省資料により作成
03/7
04/1
04/7
0
0
-10
-20
-20
-40
-30
02/1
02/7
03/1
03/7
04/1
(年/月)
クの高まりを背景に、ドル資産から金資産な
どへの乗換えの動きも活発化しており、当面、
貴金属市況は堅調な推移が続くとみられる。
04/7
-60
(年/月)
(備考)国家統計局『中国経済景気月報』により作成
と予想される。
特に、日本は中国では技術的に生産が難し
い鋼板などの生産能力が高いことから、中国
経済が多少減速しても日本の鋼材製品に対す
(3)国内の鉄鋼・非鉄金属市況も底堅い推移に
一方、日本国内の市況では、鉄鋼・非鉄金
る需要はさほど衰えないのではないか、と言
われている(図表25)
。
属の市況が上昇傾向を続けている。これらの
市況を支えているのは中国である。04年に入
っても、日本から中国への鉄鋼・非鉄金属の
図表25 日中韓の鋼材生産構造
(%)
100
輸出は高い伸びを続けている(図表23)
。この
7.6
背景には、中国の旺盛な建設需要がある。固
80
22.3
12.0
定資産投資は04年5月に前年比10.4%増と大き
く減速した後、再び拡大テンポを高めており、
60
26.3
7月の同31.5%増に続き、8月も同26.2%増とな
った(図表24)。
40
59.2
中央政府が経済成長のボトルネックになっ
ている電力設備や運輸設備の増強に力を入れ
ていることに加えて、地方政府による投資が
再び活発化してきているとの指摘もある。目
先、中国の景気過熱は心配ではあるが、中長
期的にも中国の素材製品への需要は衰えない
20
0
39.3
中国
鋼管
33.6
韓国
めっき鋼板等
日本
薄板
厚中板
棒鋼
(備考)1.日本、韓国は02年、中国は01年の数値
2.日本鉄鋼連盟『鉄鋼統計要覧』、
『中国鉄鋼工業統計』
により作成
調 査
107
図表26 原油価格上昇の主要国経済への影響
4.商品市況高騰による先進国
の景気・金利への影響は軽微
実質GDP
インフレ率
年率:%
年率:%
OECD諸国
△0.4
0.6
米国
△0.3
0.6
日本
△0.4
0.3
EURO
△0.5
0.6
況高騰の影響をみることにする。図
アジア
△0.8
1.4
表26は、IEAによる試算である。10
中国
△0.8
0.8
ドルの原油価格上昇は、米国の実質
インド
△1.0
2.6
マレーシア
△0.4
2.0
フィリピン
△1.6
1.6
タイ
△1.8
0.8
ラテンアメリカ
△0.2
1.2
(1)原油価格上昇はアジア経済への
打撃が大きい
最後に、原油を中心とした商品市
GDPを0.3%ポイント、日本のGDPを
0.4%ポイント押し下げるとみられて
いる。しかし、アジア諸国の経済的
打撃はさらに大きく、中国などでは
(備考)1.原油価格が10ドル上昇した場合の1年後の影響
2.IEA, Analysis Impact of High Oil Prices on the Global Economy, May
2004により作成
実質GDPを0.8%ポイントも押し下げ
る効果があると見込まれている。これは、前
(2)米国の長期金利は理論値を大きく下回る
述したようにアジア諸国におけるエネルギー
水準
効率の低さが大きく影響しているものと考え
さらに、金利への影響である。例えば、現
在の米国10年国債利回りはCRB先物指数など
られる。
図表27 米国10年国債利回りの推計
(%)
16
米債10年利回り
理論値
14
12
10
8
5.73
(7-9月)
6
4
4.31
(7-9月)
2
0
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
(備考)1.米国債10年物利回り=−12.191+4.908×LN(2四半期前のCRB商品先物指数)+0.377×FFレート
(−1.768) (3.615) (6.326)
−2.125×LN(ドル実効レート)
(−4.881)
R2=0.851 推計期間:78年1Q∼04年2Q カッコ内はt値
2.原材料価格要因=CRB商品先物指数、政策要因=FFレート、リスクプレミアム=ドル実効為替レート
3.FRB資料等により信金中金総合研究所試算
108
信金中金月報 2004.11
02
04(年)
から推計した理論値を大きく下回る水準にあ
る(図表27)
。通常、原油価格の上昇はインフ
えられる。
したがって、今後、原油価格が低下すれば、
レ期待を高め、金利水準を押し上げる結果を
米国の長期金利はむしろ上昇する公算が大き
もたらすものであるが、現在は原油価格の高
い。ちなみに、原油価格が30ドルの場合の米
騰がインフレよりも景気鈍化を招くとの懸念
国10年国債利回りの理論値は5%程度と推計さ
が強く、その分、金利を押し下げていると考
れる。
〈参考文献〉
International Energy Agency (IEA) , Oil Market Report, Sep. 2004
International Energy Agency (IEA) , Analysis Impact of High Oil Prices on the Global Economy, May 2004
IEPE, Prospective Outlook on Long-term Energy Strategy, Feb. 1998
David Deming, Oil : Are We Running Out?, Jan. 2000
BP, Statistical Review of World Energy, Jun. 2004
資源エネルギー庁『2030年に向けた国際エネルギー戦略』(2004年4月)
米国農務省 World Agricultural Supply And Demand, Sep. 2004
調 査
109
第117回全国中小企業景気動向調査
(2004年7∼9月期実績・10∼12月期見通し)
7∼9月期業況も改善基調を維持
【特別調査−地域金融機関等に期待すること】
信金中央金庫
総合研究所
調査の概要
1.調査時点:2004年9月1日∼7日
2.調査方法:全国各地の信用金庫営業店の調査員による、共通の調査表に基づく「聴取り」調査
3.標 本 数:16,000企業(有効回答数14,272企業・回答率89.2%)
4.分析方法:各質問項目について、
「増加」
(良い)−「減少」
(悪い)の構成比の差=判断D.I.に基づく分析
(概 況)
1.04年7∼9月期(今期)の業況判断D.I.は△17.7、4∼6月期(前期)比3.0ポイントの改善と、
バブル崩壊後最悪を記録した02年1∼3月期(△47.9)以来の改善基調を維持した。一方、収
益面では前年同期比売上額および同収益判断D.I.がそれぞれ△10.5、△15.3と、ともに7四半
期連続でマイナス幅縮小となった。また、設備投資実施企業割合も小幅ながら6四半期連続
で上昇し20.5%となった。なお、業種別の業況判断D.I.では、比較的改善が進んでいた製造
業と不動産業が改善一服となったものの、それ以外の4業種では改善した。
2.04年10∼12月期(来期)の予想業況判断D.I.は△10.7と、今期実績比7.0ポイントの改善見
通しとなっている。予想改善幅は過去10年の平均(10.1ポイント)を若干下回るが、引き続
き改善基調が見込まれている。
業種別天気図
業種名
時 期 2004年
4∼6月
地区別天気図(今期分)
2004年 2004年
10∼12月
7∼9月 (見通し)
地 域
業種名
北
海
道
東
北
関
東
首
都
圏
北
陸
東
海
近
畿
中
国
四
国
総合
総合
製造業
製造業
卸売業
卸売業
小売業
サービス業
小売業
建設業
サービス業
不動産業
建設業
(この天気図は、景気指標を総合的に判断して作成したものです。)
好調←
不動産業
110
信金中金月報 2004.11
→低調
北
九
州
南
九
州
図表1 主要判断D.I.の推移
1.全業種総合
(D.I.)
△10
△10.5
前年同期比収益判断D.I.
○業況は改善基調を維持
今期の業況判断D.I.は△17.7、前期比3.0ポイ
ントの改善と、バブル崩壊後最悪水準を記録
した02年1∼3月期(△47.9)以来の改善基調を
維持した。また、前年同期比売上額および同
△15.3
△17.7
△20
前年同期比売上額判断D.I.
△30
△40
業況判断D.I.
△50
2001.6 9
12 02.3 6
9
12 03.3 6
9
(時期)
9
12 04.3 6
収益の判断D.I.は、それぞれ3.6、2.3ポイント
改善し△10.5、△15.3と、ともに7四半期連続
でのマイナス幅縮小となった。さらに、前期
図表2 前期比売上額、販売価格判断D.I.の推移
(D.I.)
0
比売上額および同収益判断D.I.も前期に比べそ
△10
れぞれ3.0、1.7ポイントマイナス幅が縮小し△
△20
7.5、△13.8となった。
△7.5
△10.8
販売価格判断D.I.
△30
販売価格判断D.I.は6四半期連続でマイナス
△40
前期比売上額判断D.I.
幅が縮小(価格が下降したとする企業の割合
1999.9
が減少)し、△10.8となった(図表1、2)
。一
方、仕入価格判断D.I.は、価格が上昇したとす
る企業の割合がさらに増えてプラス14.3(前期
は13.4)となった。
設備投資実施企業割合は前期比0.1ポイント
上昇して20.5%と、6四半期連続で増加した。
01.9
02.9
(時期)
04.9
03.9
(備考)傾向値とは5期分の移動平均値
図表3 設備投資実施企業割合、資金繰り、
借入難易度、人手過不足判断D.I.の推移
(%)
25
(D.I.)
10
人手過不足判断D.I.(右目盛)
20.5
20
15
△3.9
△6.7
設備投資の実施企業割合(左目盛)
0
△10
△16.9
また、資金繰り判断D.I.は△16.9と、前期比1.0
10
ポイントの小幅改善となった。さらに、雇用
5
面では、人手過不足判断D.I.が△3.9(前期は
2000.9
前期比売上額判断D.I.
傾向値
借入難易度判断D.I.(右目盛)
資金繰り判断D.I.(右目盛)
0
2001.6 9 12 02.3 6 9 12 03.3 6
△20
△30
9
12 04.3 6
△40
9
(時期)
△2.5)と、前期に比べ不足感はやや強まった
(図表3)。
て全6業種中最も厳しいものとなっている。
業種別の業況判断D.I.は、比較的改善の進ん
地域別には、中国、四国と南九州が小幅悪
でいた製造業と不動産業が改善一服となった
化し、北九州で横ばいとなったものの、それ
ものの、それ以外の4業種では改善した。前期
以外の7地域では改善となった。
比での改善幅では建設業の9.7が最大で、これ
に小売業の6.3が続く形となった。なお、業況
判断D.I.の水準では小売業の△31.2が依然とし
○すべての業種・地域で業況改善予想
来期の予想業況判断D.I.は△10.7、今期実績
調 査
111
比7.0ポイントの改善を見込んでいるが、この改
○人手不足感強まる
善幅は、過去10年の予想値の平均改善幅(10.1
設備投資実施企業割合は前期に引き続き前
ポイント)を若干下回るものとなっている。
期比0.9ポイント上昇し25.0%となった。一方、
予想前期比売上額判断D.I.はプラス転換して
人手過不足判断D.I.は前期の△4.7から△6.6と
2.1、同収益判断D.I.は△4.6と、それぞれ今期実
不足感が強まった。また、残業時間判断D.I.は
績比で9.6、9.2ポイントの改善を見込んでいる。
前期の1.3から0.7となり、やや弱まったものの、
業種別の予想業況判断D.I.は6業種すべてで、
また地域別にも11地域すべてで、それぞれ今
期実績比での改善を見込んでいる。
残業時間の増加傾向が続いている。
販売価格判断D.I.は、前期の△9.5から今期
は△8.1と、このところデフレは収束傾向にあ
る。一方、原材料(仕入)価格判断D.I.はプラ
2.製造業
ス26.0と前期比横ばいとなり、上昇傾向が一服
○業況改善基調に変化なし
した。ちなみに「経営上の問題点」として「原
今期の業況判断D.I.は△10.2、前期比0.6ポイ
材料高」を挙げる企業の割合は小幅ながら増
ントのマイナス幅拡大と、主に季節要因から
加した(前々期13.6%、前期18.8%、今期19.6%)
。
改善一服の形となった。しかし、前年同期比
売上額および同収益の判断D.I.は、それぞれ、
資金繰り判断D.I.は△13.3(前期は△14.3)
と、6四半期連続の改善となった。
1.7、0.2ポイント改善してプラス0.5、△6.0と、
ともに10四半期連続でマイナス幅が縮小して
○業種別では改善・悪化まちまち
おり、特に前年同期比売上額がバブル崩壊後
今期の業種別業況判断D.I.は、製造業22業種
初めてプラスになるなど、業況改善基調に変
中、改善10業種に対して悪化12業種と、まち
化はないとみられる(図表4)。
まちの動きとなった(図表5)。
なお、前期比の売上額および同収益判断D.I.
素材型業種は7業種中2業種で改善した。特
は、季節要因もあってそれぞれ1.6、2.1ポイン
に、非鉄は前期比10.8ポイントの大幅改善で、
ト悪化し、△1.1、△9.1となった。
鉄鋼とともに業況判断D.I.がプラスになった。
部品加工型業種ではプラスチックが悪化す
図表4 製造業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
10
る一方、金属プレス、金属製品が改善し、特
0.5
0
前年同期比収益
△6.0
△10.2
△10
△20
に金属製品は10.3ポイントの大幅改善でプラス
転換した。
建設関連型業種では家具の13.5ポイントの悪
前年同期比売上額
△30
化と、木材の8.7ポイントの改善が目立っている。
△40
機械器具型業種は一般機械がやや悪化した
業況
△50
2001.6 9
12 02.3 6
112
信金中金月報 2004.11
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
(時期)
9
ものの、ほかの3業種は改善し、4業種いずれ
もプラス水準を持続している。特に、精密機
○改善の見通し
械はプラス24.3と製造業でもっとも高い水準が
来期の予想業況判断D.I.は△1.0、今期実績
続いているほか、電気機械も大幅に改善しプ
比9.2ポイントの改善を見込んでいる。また、
ラス12.5となった。
予想前期比売上額判断D.I.は10.4、同収益判断
消費財型業種は玩具を除く3業種が悪化した。
特に、食料品の大幅な悪化が目立った。
D.I.は1.6と、それぞれ今期実績比11ポイント
前後の改善を見込んでいる。業種別にも22業
図表5 製造業 業種別業況判断D.I.の推移
○大メーカー型・輸出主力型で引き続き改善
販売先形態別の業況判断D.I.は、大メーカー
型は引き続き改善したが、中小メーカー型が
△60 △50 △40 △30 △20 △10
0
10
(D.I.)
20 30
繊維
化学
皮製品
素材型 ゴム
やや悪化した。
輸出主力型の業況判断D.I.は19.1(前期は
15.2)と引き続き改善した。一方、内需主力型
は前期比0.5ポイント悪化して△11.2となった。
従業員規模別の業況判断D.I.は、50人未満で
悪化する一方、50人以上では改善し、プラス
鉄鋼
非鉄金属
紙・パルプ
プラスチック
部 品
金属製品
加工型
金属プレス・メッキ
窯業・土石
建 設 建設建築用金属
関連型 木材・木製品
家具・装備品
となった。その結果、従業員規模間の格差は
やや拡大した。ちなみに従業員規模別の業況
判断D.I.の水準は、1∼19人が△19.0、20∼49
一般機械
機 械 電気機械
器具型 輸送用機器
精密機械
衣服その他
人が△1.2、50∼99人が5.7、100人以上は13.2と
なっている。
消 費 食料品
財 型 玩具・スポーツ
出版・印刷
全 業 種 平 均
●前期(2004年4∼6月期)⃝今期(2004年7∼9月期)
○地域でばらつき
地域別の業況判断D.I.は東北、北陸など6地
域で改善、四国、南九州など5地域で悪化した。
図表6 製造業 地域別業況判断D.I.
△30
△20
△10
0
10
(D.I.)
20
北海道
東 北
水準では、前期に引き続き近畿が唯一プラス
(3.0)のほか、関東、北陸、東海でマイナス幅
が1ケタ台となっている。一方、四国や南九州
関 東
首都圏
北 陸
東 海
近 畿
では、マイナス幅が20台と依然として大きい
ものとなっている(図表6)。
中 国
四 国
北九州
南九州
全地域平均
●前期(2004年4∼6月期)⃝今期(2004年7∼9月期)
調 査
113
種中20業種とほとんどの業種で改善が見込ま
○改善を予想
れている。特に精密機械は業況判断D.I.が20.2
来期の予想業況判断D.I.は△9.4と、今期実
と引き続き高いプラス水準を見込んでいる。一
績比で7.5ポイントの改善を見込んでいる。業
方、地域別には11地域すべてで改善の予想と
種別には、15業種中10業種で改善が見込まれ
なっている。
ており、地域別ではすべての地域で改善見込
みとなっている。また、販売先形態別では、大
3.卸売業
メーカー型の企業で悪化するものの、従業員
○業況は引き続き改善
規模別や地域別ではすべての階層で改善が見
今期の業況判断D.I.は前期比4.9ポイントマ
込まれている。
イナス幅が縮小して△16.9と、前期に引き続き
4.小売業
改善した。
また、前年同期比売上額判断D.I.、同収益判
断D.I.は、それぞれ4.2、4.6ポイント改善し、
○業況は10年ぶりの4四半期連続改善
今期の業況判断D.I.は△31.2と、前期比6.3ポ
イントの改善となった。およそ10年ぶりの4四
△11.0、△11.9となった(図表7)。
半期連続改善で、業況判断D.I.の水準は直近ピ
○業種・地域別でもおおむね改善
ーク(00年7∼9月期、△37.3)を4年ぶりに上回
業種別の業況判断D.I.は、全15業種中、改善
る結果となった。また、前年同期比売上額判断
が10業種とおおむね改善した。このうち再生
D.I.と同収益判断D.I.は、それぞれ7.7、4.8ポイ
資源、機械器具、鉱物金属・燃料の3業種は、
ント改善し、△24.7、△28.8となった
(図表8)
。
それぞれD.I.が21.9、13.6、12.8とプラスとな
っている。一方、地域別では四国以外の地域
○家電がプラスに転換
で業況が改善し、販売先形態別では大メーカ
業種別の業況判断D.I.は、13業種中8業種で
ー型以外で、また従業員規模別では50人以上
改善、5業種で悪化となった。とりわけ家電が
の階層以外では改善した。
前期比40ポイント超の大幅改善で、13業種中
図表7 卸売業 主要判断D.I.の推移
図表8 小売業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
△10
△11.0
△11.9
(D.I.)
△20
△24.7
△16.9
△20
△30
△28.8
△31.2
△30
前年同期比売上額
前年同期比収益
△40
前年同期比売上額
前年同期比収益
△40
△50
業況
△50
業況
△60
2001.6 9
12 02.3 6
114
信金中金月報 2004.11
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
(時期)
9
△60
2001.6 9
12 02.3 6
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
(時期)
9
唯一のプラス転換(プラス9.0)となった。一
○全8業種中4業種、全11地域中7地域で改善
方、地域別では、北陸と四国を除く9地域で改
業種別では8業種中、業況判断D.I.がプラス
善した。とりわけ北海道、東北、関東は前期
6.6となった情報サービス・調査・広告や娯楽
比10ポイント超の大幅改善となったのが目立
など4業種で改善したが、物品賃貸、自動車整
った。
備および駐車場など4業種では悪化し、まちま
ちの結果となった。また、地域別の業況判断
○総じて改善の予想
D.I.では北海道が前期比7.1ポイントマイナス
来期の予想業況判断D.I.は△26.6と、今期実
幅が縮小するなど11地域中7地域で改善した。
績比4.6ポイントの改善を予想している。前期
比売上額、同収益の予想判断D.I.も、ともに今
○ほぼ全面的に改善を予想
期実績比10ポイント以上の改善を予想してい
来期の予想業況判断D.I.は△14.7と、今期実
る。また、業種別では家電、木建材以外の11
績比5.3ポイントの改善を見込んでいる。業種
業種で、地域別では北海道を除く地域で、そ
別では8業種すべてで改善を見込んでいる。ま
れぞれ改善を見込んでいる。
た、地域別では11地域中、北海道と東海を除く
地域で改善を予想している。さらに従業員規
5.サービス業
模別でもすべての階層で改善を予想している。
○業況は引き続き改善
今期の業況判断D.I.は前期比1.4ポイントマ
イナス幅縮小の△20.0と、前期に引き続き改善
6.建設業
○悪化から一転して大幅な改善
した。前年同期比売上額判断D.I.と同収益判断
今期の業況判断D.I.は、業況が△22.5、前期
D.I.は、前期比0.7、0.1ポイント改善し、それ
比9.7ポイント改善となり、直近のピークであ
ぞれ△17.4、△19.2となった(図表9)。
った00年10∼12月期の△22.6をわずかに上回っ
た。また、前年同期比売上額が△17.2、同5.6
ポイント、同収益は△24.4、同5.0ポイントと
図表9 サービス業 主要判断D.I.の推移
図表10 建設業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
△10
(D.I.)
△15
前年同期比売上額
△20
△17.4
△19.2
△20.0
△17.2
前年同期比売上額
△22.5
△24.4
△25
業況
△30
△35
△40
△45
業況
前年同期比収益
△50
2001.6 9
12 02.3 6
9
12 03.3 6
前年同期比収益
9
12 04.3 6
(時期)
9
△55
2001.6 9
12 02.3 6
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
調 査
(時期)
9
115
改善した。特に前期比受注残が△9.9、同16.1
6四半期連続しての改善から一転しての悪化と
と大幅に改善していることが、景況感にプラ
なり、業況には一服感が現われているようで
スしているようだ(図表10)。
ある(図表11)。
○すべての地域、請負先、規模で改善
○全11地域中4地域で業況が改善
地域別では11地域すべてが改善し、そのう
従業員規模別の業況判断D.I.は、20∼39人の
ち9地域では10ポイント以上の改善となった。
階層でプラス20.0となり、また、1∼4人では前
業種別、請負先別でもすべてで改善した。な
期比同水準となった。一方、10∼19人、40人
かでも業種別では設備工事が、請負先別では
以上の階層ではプラス幅が縮小した。
大企業向けで、業況判断D.I.がそれぞれ△9.1、
地域別の業況判断D.I.では、10ポイント超の
△7.8とマイナス幅が比較的小さくなっている。
改善となった東海をはじめ、東北、関東、四
規模別ではすべての階層で改善となった。
国が改善となった一方、7地域では悪化した。
○引き続き改善を予想
○来期は改善の予想
来期の予想業況判断D.I.は△16.1、今期実績
来期の予想業況判断D.I.は△2.4、今期実績
比6.4ポイントの改善を見込んでおり、実現す
比4.3ポイントの改善を見込んでいる。地域別
れば97年4∼6月期実績値△17.6以来、約7年ぶ
では、今期の悪化から一転し、10ポイント超
りの△10台となる。
の改善を見込む中国など、11地域中8地域が改
また、すべての業種、請負先、従業員規模
で改善を見込むとともに、地域別でも全11地
域のうち9地域が改善を見込んでいる。
7.不動産業
善を予想している。従業員規模別では1∼4人
を除く階層で改善を予想している。
図表11 不動産業 主要判断D.I.の推移
(D.I.)
0
△2.9
△6.7
△8.3
△10
○持続的な回復には一服感
今期の判断D.I.は、業況が△6.7、前期比△
1.9ポイント、前年同期比売上額が△2.9、同1.4
△20
前年同期比売上額
業況
△30
前年同期比収益
ポイント、同収益は△8.3、同△0.1ポイントと、
前年同期比売上額を除き若干の悪化となった。
116
信金中金月報 2004.11
△40
2001.3 9
12 02.3 6
9
12 03.3 6
9
12 04.3 6
(時期)
9
特別調査
地域金融機関等に期待すること
2004年度はアクションプログラムの集中改善期間の最終年度にあたる。同プログラム
では目利きや経営相談・支援機能の強化、担保・保証に過度に依存しない融資などが求め
られていることを踏まえ、
今回の調査では、
中小企業が地域金融機関等に求める役割や新
たな融資形態等について調査している。一口に中小企業といっても、業種や規模、経営
者の経営経験年数等の視点から見ると、そのニーズや期待が多様であることがわかる。
○回答者の属性
今回の調査では、信用金庫等の取引先約
16,000社にアンケートを依頼し、うち約14,000
図表12 回答者の属性(左:経営経験年数、
右:メイン金融機関)
社から回答を得ている。経営者の経営経験年
30∼40年
数、メイン金融機関の各属性による回答者の
20∼30年
構成は図表12のとおりであり、信用金庫の取
調査
信用金庫
16.6
40年以上
地銀・
第二地銀
23.0
引先が多いことから、信用金庫の取引関係の
実態に近い内容であると考えられる。
○金融機関に評価して欲しい点、そのために
8.6
調査金庫
以外の信金
12.4
0
11.0
信組・
農協他
22.2
10年未満
20.2
都市銀・
信託
25.8
10∼20年
55.4
10
20
30
(%)
4.8
0
20
40
60
(%)
取引先を一様な視点で評価するのではなく、企
有効だと考える手段
業年齢等に応じて取引先のどのような点を評
全体を通じてみると、事業内容・特徴や経
価していくかが、リレーションシップを強化
営者の資質等の定性面を評価して欲しいとい
するための鍵となろう。一方、小規模層が評
う意向が多く、逆に経営の結果である財務内
容や業績を評価して欲しいという意見は少な
図表13-1 左:金融機関に評価して欲しいポ
イント、右:そのための資料等の手段
い(図表13-1)
。にもかかわらず、そのための
事業内容
や特徴
決算書等
財務資料
28.4
経営者の
資質等
事業計画、
戦略の資料
27.5
金融機関と
の取引実績
経営者・
社員の話
14.7
将来性や
成長性
顧客等の
評価
13.8
財務内容
や業績
その他
25.2
手段は、決算書等財務資料が最も多い結果と
23.7
なっており、評価して欲しいポイントとその
22.5
ための手段との間にギャップが見られる。
ただ、経営経験年数ごとに見ると、経験の
短い経営者ほど事業性、将来性等を評価して
欲しいとの意見が多く、逆に長い経営者ほど
取引実績への評価を期待している(図表13-2)
。
30
(%)
20
10
0
21.9
20.6
1.5
0
10
調 査
20
30
(%)
117
図表13-2 評価して欲しいポイント
(経営経験年数別)
図表13-3 評価のための手段
(従業員規模別)
(%)
(%)
30
10年未満
10∼20年
20∼30年
30∼40年
40年以上
25
20
40
事業計画、戦略の資料
35
決算書等財務資料
30
声の情報
25
回
答
割 15
合
回
答
割 20
合
顧客等の評価
15
10
経営者・社員の話
10
5
文字の情報
5
その他
0
事業の内容
や特徴
経営者の
資質等
金融機関
取引実績
将来性・
成長性
財務内容
や業績
0
1∼4 5∼9 10∼ 20∼ 30∼ 40∼ 50∼ 100∼ 200∼
19 29 39 49 99 199 300 従業員規模
(人)
価のために有効として挙げる手段は、経営者・
ント」が情報提供に次いで期待されており、若
社員の話が優勢である(図表13-3)
。信用金庫
い企業からの期待は比較的大きい
(図表14-1)
。
の主たる取引先である小規模層に対しては、話
一方、
「悩みの聴き手」を期待する声は、小規
を聴き評価に活かすインタビュー・スキルや、
模層では情報提供に次いで2番目に多い(図表
「声の情報等」を「文字や数字の情報」に変換
していく計画策定支援が重要といえる。
14-2)
。どのような中小企業と付き合うにして
も、情報提供力は渉外担当者にとって最も重
要な要素といえ、加えて提言力が求められる。
○渉外担当者に期待する役割
一方で、信用金庫の主たる取引層である小規模
「様々な情報提供」を期待する声は、すべて
層では、問題や悩みを経営者と分かち合う姿勢
の業種、規模、経験年数において最も多い。ま
をもった、いわゆる「コーチ」や「メンター」
た、財務や事業について「提言するコンサルタ
のような役割も期待されていると考えられる。
図表14-1 渉外担当者に期待する役割
(経営経験年数別)
図表14-2 渉外担当者に期待する役割
(従業員規模別)
(%)
60
(%)
10年未満
10∼20年
20∼30年
30∼40年
40年以上
発信
50
提言
40
回
答
割 30
合
80
発信
70
様々な情報提供
60
財務コンサルタント
回 50
答
割
合 40
聴く
聴く
20
事業コンサルタント
細やかなサービス提供
30
10
20
0
10
提言
悩みの聞き手
金融商品のプロ
コーディネーター
商材紹介
情様 タ財 タ事 サ細
報々 ン務 ン業 ーや
トコ
提な トコ
ン
ン ビか
供
サ
サ スな
ル
ル
悩
み
の
聴
き
手
ネコ プ金 サ個
ーー ロ融 ル人
資
タデ
商 タ
ン金
ーィ
品 トコ
の
ン
(備考)複数回答
118
信金中金月報 2004.11
商
材
紹
介
そ
の
他
0
その他
個人資金コンサルタント
1∼4 5∼9 10∼ 20∼ 30∼ 40∼ 50∼ 100∼ 200∼
19 29 39 49 99 199 300 従業員規模
(人)
○金融機関以外で今後相談したい相手
「公認会計士・税理士(52.0%)
」が群を抜い
て多く、次いで「中小企業診断士等(28.9%)
」
、
「商議所・商工会(25.2%)
」となっている(図
表15)
。規模別に見ると、大規模層では中小企
業診断士等に、小規模層では商議所等に対し
て、相談相手としての期待が高いようである。
図表15 金融機関以外で今後相談したい相手
公認会計士・
税理士
中小企業
診断士等
商議所・
商工会
25.2
同業者団体
24.5
52.0
28.9
仕入先・
販売先
中小企業
支援センター
自治体等の
経営相談
17.0
16.8
7.0
2.5
その他
2006年より施行予定の改正会社法において、税
理士等が経営者とともに決算書を作成する「会
0
10
20
30
40
50
回答割合
(備考)複数回答
60
(%)
計参与」の導入が予定されていることも踏ま
期待が現われている。特に、小規模層での期
えれば、信用金庫が地元の税理士等と協力し
待は圧倒的であり、業種別では小売業で期待
て中小企業を支援していく必要性はますます
感が強いようである。
高まるといえそうだ。
アクションプログラム「中小企業金融の再
生」とともに地域金融機関の注目が集まって
○今後対応を期待したい新たな融資形態等(図
表16-1、16-2)
いる新しい融資や担保の形態に対する認知度
等は、総じていまだ低いようである。しかし、
「すぐに借りられる小口融資」
、
「小口の無担
「財務制限条項付融資」には全体の2割を超え
保・無保証融資」は全体として特に多く、即
る回答があり、一定規模以上では安定的に3割
時性や利便性、担保・保証の限定性に対する
を超える期待がある。
「売掛債権担保融資」は、
図表16-1 対応を期待したい新たな融資形態等
(従業員規模別)
図表16-2 対応を期待したい新たな融資形態等
(業種別)
(%)
(%)
70
70
すぐに借りられる小口融資
60
60
50
50
小口無担保・無保証融資
回 40
答
割
合 30
財務制限条項付融資
小売業
回 40
答
割
合 30
不動産業
不動産業
建設業
不動産業
売掛債権担保
20
製造業
卸売業
小売業
サービス業
建設業
不動産業
小売業(回答割合が最も高い業種)
コミットメント等
20
卸売業
10
製造業
動産担保
10
0
ノンリコース型
知的財産権担保
0
1∼4 5∼9 10∼ 20∼ 30∼ 40∼ 50∼ 100∼ 200∼
19 29 39 49 99 199 300 (人)
従業員規模
(備考)複数回答
す
ぐ
借
り
ら
れ
る
融
資
無小
保口
証無
融担
資保
・
財
務
制
限
条
項
付
融
資
売
掛
債
権
担
保
コ
ミ
ッ
ト
メ
ン
ト
等
動
産
担
保
調 査
ノ
ン
リ
コ
ー
ス
知
的
財
産
権
担
保
119
全体では16.8%の回答割合ながらも、規模が大
て優先順位を付け、対応を進めていくことが
きいほどに期待する声は多くなり、業種別で
必要だと考えられる。
は建設業のうち3割弱の企業が期待を有してい
る。また、
「知的財産権担保」では、200∼300
人規模の1割以上の企業に期待する声がある。
○信用金庫によるリレーションシップバンキ
ングの強化に向けて
「ノンリコース型融資」(責任財産限定・非
多くの場合、信用金庫の取引先は個人企業
遡及型融資)に対する回答は全体では1割程度
などの小規模層が中心をなすものと考えられ
に過ぎないが、不動産業では32.4%と他業種に
る。この点を踏まえると、信用金庫が取引先
比べて突出して高い期待がある。企業再生支
からの満足度やロイヤルティを高め、また、そ
援を目的に賃貸ビル向けのノンリコース的な
の成長に資するためには、①文字になってい
ローンを実行する信用金庫の事例も出てきて
ない情報を汲み取り・評価し文字や数字に変
おり、今後不動産向けを中心に、中小企業で
換する力、②情報提供力や「コンサルタント」
も普及が進む可能性がある。加えて、
「ノンリ
的な提言力が求められることに加え、③経営
コース型融資」同様、「財務制限条項付融資」
者の悩みを聴き・分かち合ういわゆる「コー
や「コミットメントライン等」に最も期待し
チ」や「メンター」のような役割も求められ
ている業種は不動産業であり、不動産業にお
ているといえそうだ。
いては新たな融資形態の活用に向けて積極的
また、営業エリアや営業政策等は各信用金
な姿勢がうかがわれることが特徴的である。
庫によって異なることから、融資取引先の属
なお、経営者の経営経験年数の視点からは、
大きな差異は見られない。
性等も異なる。④既往取引先や開拓を見込む
新規先の規模や業種等の属性に応じた与信企
新たな融資や担保の形態については、デー
画を進めていくことも重要だといえよう。加
タベースの整備、契約書の作成や精査、実際
えて、財務計数にもとづく財務制限条項付融資
の担保処分時の対応など、金融機関には対応
への期待、身近な税理士等への相談相手として
すべき課題がある。同じ中小企業といっても
の期待が高いこと、会社法改正が間近であるこ
規模や業種など属性によって異なる期待やニ
と等を踏まえると、⑤地元の税理士等との協力
ーズに応えていくためには、各地域金融機関
関係を改めて強化し、会計の質の向上に寄与し
の取引先層等を踏まえながら、各課題に対し
ていくことも検討する必要があるだろう。
120
信金中金月報 2004.11
図表17 【問1】経営者の経営経験年数、メイン金融機関
(単位:%)
企業経営の経験年数
全体
北海道
東北
関東
首都圏
地
北陸
域 東海
近畿
別
中国
四国
北九州
南九州
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
従
業
20∼ 29人
員
30∼ 39人
規
40∼ 49人
模
別
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
メイン金融機関
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30年未満
30年以上
40年未満
40年以上
12.4
13.3
14.8
14.6
9.7
13.4
16.2
12.9
16.5
8.4
13.1
13.1
8.6
13.0
13.9
12.7
14.6
14.0
19.4
20.0
16.4
13.1
14.2
9.2
12.8
13.2
11.8
22.2
20.6
21.1
20.8
22.4
22.7
20.7
23.3
19.4
24.1
26.9
22.2
22.6
22.3
21.4
21.9
23.0
21.0
22.2
23.7
20.5
21.8
21.6
20.6
23.7
23.1
26.0
25.8
24.4
24.9
21.1
29.6
27.0
18.3
24.4
19.2
29.2
25.4
28.6
30.9
24.9
24.6
24.8
20.7
22.8
18.1
16.0
12.3
24.5
25.5
27.1
26.7
23.7
31.8
23.0
20.6
23.8
24.5
23.3
22.7
23.4
22.5
24.2
24.8
20.7
21.9
23.1
23.4
24.1
23.7
22.7
21.6
19.2
21.7
23.8
23.1
20.7
23.3
24.3
23.3
23.3
16.6
21.1
15.4
19.0
15.0
14.3
21.4
16.8
20.6
13.5
14.0
14.2
14.7
16.4
16.0
17.0
19.0
20.6
21.1
18.7
27.0
17.5
18.0
19.8
12.6
16.7
7.2
都市銀行・ 地方銀行・ 信用組合・ 調査信用金庫 調査金庫以外
信託銀行 第二地銀 農協・その他 のみ(他になし) の信用金庫 11.0
4.8
2.2
2.2
17.3
2.3
9.8
16.8
3.2
1.8
3.1
1.9
8.1
8.2
9.1
11.6
15.2
17.0
23.2
21.5
32.2
11.8
14.9
9.8
9.8
7.7
10.0
20.2
23.1
39.0
38.6
5.4
40.0
19.4
19.0
37.2
39.4
38.3
28.5
10.3
17.6
21.0
26.8
31.0
33.0
36.7
41.8
47.1
21.0
24.6
13.6
14.6
25.6
24.4
8.6
8.9
10.1
8.9
5.6
8.8
14.7
8.6
11.1
10.6
7.8
14.4
8.5
8.8
10.3
9.9
7.5
7.0
7.0
6.4
2.5
7.7
8.3
9.2
9.5
8.4
11.6
55.4
60.6
47.0
48.8
63.1
47.2
51.5
51.7
47.1
46.7
49.8
54.1
65.7
61.3
56.5
48.4
42.9
39.1
31.0
26.3
14.0
54.7
48.2
61.9
60.2
54.7
48.4
4.8
2.6
1.6
1.5
8.7
1.7
4.6
3.9
1.4
1.5
1.1
1.1
7.3
4.2
3.2
3.3
3.5
3.9
2.1
4.0
4.1
4.7
4.0
5.4
5.9
3.6
5.6
図表18 【問2】評価して欲しいポイント、評価するための有効な資料
(単位:%)
評価して欲しいポイント
経営者の 資質や熱意
全体
北海道
東北
関東
首都圏
地
北陸
域 東海
近畿
別
中国
四国
北九州
南九州
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
従
業
20∼ 29人
員
30∼ 39人
規
40∼ 49人
模
別
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
23.7
21.7
22.2
23.0
25.7
23.3
22.3
20.8
24.5
24.8
22.8
28.2
29.6
25.1
22.7
18.1
16.3
18.8
14.7
12.7
20.0
19.9
21.1
28.9
27.6
24.3
26.6
財務内容
や業績 13.8
16.7
13.2
13.9
11.6
14.2
15.5
16.0
16.8
9.9
16.0
13.9
7.9
10.8
15.9
16.1
23.1
21.8
23.5
28.4
22.5
14.5
17.8
9.8
12.8
14.6
13.5
有効な資料等
貴社と金融
事 業 計 画 貴社の顧客
現在の事業の 今後の将来
決算書類等
機関との や 戦 略 に や同業者等
内容や特徴 性や成長性
の財務資料
取引実績 関する資料 からの評価
25.2
26.6
26.5
25.9
23.7
26.8
27.0
25.6
24.5
28.7
24.3
24.6
23.0
24.4
26.0
27.6
27.0
27.9
27.4
30.4
27.5
28.8
24.6
21.0
24.5
22.6
25.6
14.7
13.5
17.5
17.1
13.0
13.2
14.9
17.2
16.2
12.9
14.9
14.1
10.1
14.1
15.0
18.9
19.3
19.9
22.2
20.1
24.2
17.0
13.7
12.1
14.8
14.0
13.4
22.5
21.6
20.6
20.2
25.9
22.5
20.4
20.3
18.0
23.8
22.0
19.1
29.4
25.6
20.3
19.3
14.2
11.6
12.2
8.4
5.8
19.7
22.8
28.2
20.3
24.4
20.9
28.4
30.0
26.6
27.7
26.6
28.0
31.7
31.6
31.9
25.0
29.2
24.2
22.1
26.7
31.3
33.8
34.8
32.8
36.2
38.8
38.1
31.1
32.0
23.0
27.3
28.5
23.9
27.5
25.3
32.1
31.5
22.5
29.9
31.1
31.5
28.2
31.2
30.1
30.3
19.8
26.4
28.8
33.5
35.3
38.2
38.7
37.1
33.1
28.2
27.9
22.8
26.5
28.0
37.5
20.6
22.8
24.2
21.8
18.1
21.1
22.3
19.4
21.9
23.2
20.7
27.8
23.5
23.2
20.9
17.3
16.7
16.2
12.7
12.2
15.3
19.3
18.6
23.0
20.5
22.8
20.5
経営者・
社員の話
21.9
20.4
15.4
16.4
31.0
20.2
13.8
16.5
17.5
18.8
18.7
16.5
32.5
21.9
17.8
14.8
12.6
11.8
11.7
10.2
12.7
20.2
20.0
29.2
23.9
19.2
16.9
調 査
その他
1.5
1.4
1.6
2.5
1.9
0.8
1.2
1.0
0.4
1.8
1.4
1.2
2.2
1.8
1.1
0.6
0.5
1.0
0.7
1.7
0.8
1.2
1.3
2.0
1.9
1.4
1.2
121
図表19 【問3】地域金融機関の渉外担当者に対する満足や期待
(単位:%)
経営者個人 財務改善の
金融商品 の資金活用 提言をする
販売のプロ コンサルタ コンサルタ
ント ント 全体
北海道
東北
関東
首都圏
地
北陸
域 東海
近畿
別
中国
四国
北九州
南九州
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
従
業
20∼ 29人
員
30∼ 39人
規
40∼ 49人
模
別
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
17.8
13.8
12.7
13.2
22.0
20.1
12.9
16.1
14.1
17.6
20.1
19.7
18.8
18.4
15.9
17.0
17.6
14.6
18.6
19.2
23.8
17.9
18.8
19.0
18.0
13.9
19.2
13.3
10.3
8.1
11.7
17.1
12.5
9.6
12.1
6.9
14.1
13.6
14.2
17.7
13.9
11.5
11.5
10.0
7.6
7.6
7.7
0.8
12.4
11.6
17.4
15.0
11.1
11.5
43.0
43.6
44.8
44.4
39.1
47.4
46.2
44.6
49.7
36.6
49.4
44.5
33.9
44.3
47.4
49.9
51.5
47.8
49.8
49.2
47.5
47.6
44.7
35.4
39.4
46.5
35.6
事業・業務
他社や地域 細やかな
改善の提言 経営者の悩 様々な情報
とのコーディ サービス
をするコン みの聴き手 の提供者 ネーター 提供 サルタント
41.1
42.9
46.1
43.4
36.1
40.2
43.6
45.2
46.8
37.4
42.7
45.0
35.0
41.8
46.0
45.0
45.7
46.6
45.0
36.4
38.5
42.1
42.3
36.8
39.2
45.5
40.1
25.9
20.8
26.6
21.1
32.6
24.9
18.1
20.8
18.7
27.0
28.0
25.3
35.3
27.9
23.9
20.6
16.3
13.1
12.3
7.4
9.0
24.7
23.5
33.0
28.8
21.9
20.0
56.9
67.6
66.0
65.3
46.3
58.4
65.4
58.7
65.0
61.6
57.1
64.2
49.4
55.3
59.2
62.5
59.8
67.4
67.9
70.7
74.6
56.4
59.1
50.2
55.3
62.6
65.9
17.9
23.8
19.9
21.1
13.8
16.5
20.3
19.9
24.2
18.6
18.7
17.8
14.5
17.6
19.0
18.6
20.9
23.8
22.2
23.6
23.8
16.4
18.4
15.6
17.4
20.5
27.8
29.4
21.0
25.6
28.0
32.7
26.6
32.5
28.9
27.5
32.2
24.0
24.8
33.2
28.7
27.0
27.3
28.6
28.0
24.4
27.6
23.8
28.2
28.7
37.4
33.6
23.1
19.7
貴社の商材
の紹介 12.4
15.5
16.4
16.5
8.5
12.3
15.1
14.1
15.1
12.4
13.4
12.7
10.1
12.0
14.0
12.9
13.4
14.4
17.5
14.1
12.3
12.6
12.7
8.9
9.3
14.7
21.9
その他
1.2
1.6
1.2
1.4
0.9
0.9
1.8
1.3
0.8
1.7
0.7
0.9
1.1
1.3
1.1
1.2
1.3
1.7
0.8
0.7
2.5
1.2
0.9
1.1
1.7
1.1
1.3
(備考)複数回答
図表20 【問4】金融機関以外で、今後活用したい相談相手
(単位:%)
中小企業診断
仕入先・販売
中小企業支援 商工会議所 各自治体の 公認会計士
同業者団体 士等経営コン
先の経営相談
センター ・商工会 経営相談所等
・税理士 サルタント 等 全体
北海道
東北
関東
首都圏
地
北陸
域 東海
近畿
別
中国
四国
北九州
南九州
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
従
業
20∼ 29人
員
30∼ 39人
規
40∼ 49人
模
別
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
16.8
12.5
19.1
15.4
17.1
16.6
14.0
18.2
22.5
17.2
14.4
17.1
15.2
16.8
18.5
19.7
18.1
15.8
16.3
17.3
14.3
20.0
14.6
14.9
15.6
16.3
12.1
(備考)複数回答
122
信金中金月報 2004.11
25.2
29.4
23.2
21.6
26.7
36.6
17.8
20.5
24.2
31.3
27.5
33.9
31.6
28.9
22.9
19.2
19.6
14.1
16.1
13.8
11.8
24.4
23.5
30.6
25.1
23.3
21.6
7.0
4.7
5.7
5.0
9.5
6.6
3.8
5.9
5.0
5.9
8.3
6.2
9.7
6.3
6.4
4.3
5.4
4.5
5.1
2.1
4.2
6.7
5.9
8.6
7.0
6.7
5.8
24.5
23.6
24.1
24.8
26.1
20.2
22.2
24.0
19.8
27.2
26.8
23.0
28.4
23.4
23.8
20.5
22.2
23.3
20.1
19.4
17.6
21.3
21.6
24.1
30.5
26.3
34.3
28.9
28.1
27.7
30.9
25.8
29.7
35.9
32.2
30.4
23.8
29.5
28.2
20.5
26.6
29.8
38.6
39.5
39.4
39.9
40.8
37.8
30.0
32.0
24.1
26.7
32.6
27.5
52.0
54.5
56.1
56.8
46.1
52.0
59.9
55.7
53.9
47.4
52.9
51.8
42.7
52.2
56.0
59.1
56.2
59.3
63.4
61.2
62.2
52.3
55.2
45.4
50.7
58.3
51.8
17.0
21.6
18.9
19.0
14.8
14.5
20.9
15.3
19.0
20.0
18.1
17.6
19.4
18.0
16.9
12.8
14.4
15.3
13.1
14.2
10.9
16.5
20.3
22.9
12.5
10.3
17.5
その他
2.5
1.7
4.5
3.3
2.1
3.1
2.8
2.8
2.1
4.4
1.8
1.0
2.0
2.7
2.6
2.5
2.8
3.3
3.0
3.8
2.5
2.4
2.3
2.6
2.9
2.4
2.8
図表21 【問5】今後対応を期待したい新たな融資形態や担保
(単位:%)
売掛債権を 知的財産権
財務制限 金額限定の
新たな融資
動産を担保
すぐ借りられ ノンリコース コミットメント
担保とする を担保とす
条項付き 小口無担保・
形態等は とする融資
る小口融資 型融資 ライン契約等
融資 る融資 融資 無保証融資
望まない 全体
北海道
東北
関東
首都圏
地
北陸
域 東海
近畿
別
中国
四国
北九州
南九州
1∼ 4人
5∼ 9人
10∼ 19人
従
業
20∼ 29人
員
30∼ 39人
規
40∼ 49人
模
別
50∼ 99人
100∼199人
200∼300人
製造業
業 卸売業
小売業
種
サービス業
別 建設業
不動産業
16.8
18.3
23.3
15.9
14.0
17.0
19.8
16.9
18.5
18.6
18.6
16.7
10.1
18.3
20.4
21.2
21.7
18.0
22.8
22.8
22.2
17.9
20.9
10.7
10.8
26.0
10.9
4.5
2.2
3.6
4.4
4.0
3.2
4.8
7.0
4.0
3.3
4.7
5.8
3.0
3.4
4.4
6.9
6.2
6.2
7.6
6.9
12.8
6.3
4.1
2.4
4.1
3.6
3.9
12.1
11.3
14.5
11.6
10.4
14.2
13.3
14.2
12.6
13.3
12.7
11.2
9.2
11.8
12.5
14.5
16.0
16.0
17.1
16.2
6.8
14.2
15.5
11.8
8.4
8.5
9.1
23.8
19.2
26.1
24.9
19.5
26.8
24.7
29.7
25.3
24.4
27.8
28.3
17.6
23.8
25.0
29.0
31.9
30.0
29.5
30.0
31.6
23.9
25.7
19.4
23.4
25.8
28.1
34.1
29.2
36.5
32.6
36.7
36.9
28.3
29.6
33.6
33.4
40.1
40.5
42.3
38.7
33.4
26.7
23.6
21.5
19.5
12.8
12.0
33.1
33.4
40.2
35.3
30.2
29.0
53.3
44.7
52.3
49.3
59.4
54.6
45.7
45.4
49.1
58.0
59.5
63.8
63.2
61.7
52.6
46.4
42.3
33.4
30.0
23.4
17.9
50.9
52.6
60.5
57.0
50.4
46.9
9.7
7.8
10.4
12.9
7.7
11.6
11.2
11.2
11.3
10.8
10.7
9.5
8.9
9.4
9.6
10.0
10.0
13.2
11.4
9.0
7.7
7.7
6.5
6.8
8.3
12.2
32.4
15.4
14.9
13.7
17.9
14.5
11.6
15.4
18.4
17.0
14.8
13.7
14.9
12.6
14.2
15.2
17.9
18.9
20.3
21.1
18.6
21.4
14.9
15.8
14.0
13.4
17.1
21.2
20.8
30.4
19.7
21.2
19.7
20.1
24.8
20.2
22.8
19.8
13.9
15.2
19.7
17.1
20.1
21.4
23.5
28.0
25.0
31.7
29.1
21.1
19.4
21.3
21.4
21.2
18.0
その他
2.1
1.8
1.7
2.6
1.9
1.2
2.7
2.4
1.5
3.0
1.8
1.8
2.0
2.3
1.9
1.2
2.4
2.4
3.0
2.8
2.6
2.2
1.7
1.7
2.5
1.8
2.7
(備考)複数回答
調 査
123
上海駐在員事務所を開設
信金中央金庫
総合企画部
上海の浦東新区
信金中央金庫は、9月10日に、上海駐在員事務
所を開設した。
上海国際貿易中心
(上海駐在員事務所が入居)
各種情報を提供するとともに、きめ細かなアドバ
イスを行う、②信用金庫の外為業務の機能を補完
日本企業は、低廉豊富な労働力を求めて中国に
するため、中国におけるコルレス銀行との関係を
進出してきたが、2002年12月のWTO加盟後は、中
強化する、③信用金庫の人材育成に資する、④中
国市場の開放により、日本製品の中国向け輸出の
国における本中金のIR活動を行うこととしている。
増加、日本のサービス業の中国進出が期待される
今後、総合研究所アジア業務相談室と連携し、
ようになり、日本企業の中国進出および貿易取引
信用金庫および信用金庫取引先からの様々な要望
に一層拍車がかかっている。
に応えていくこととしているので、情報提供依
本中金が2003年度に実施した「信用金庫取引先
海外進出状況調査」の結果では、すでに947先が
中国に進出しており、2001年度調査時の641先か
ら306先増加した。このうち上海市、江蘇省およ
び浙江省の華東地域に進出している先は、中国全
体の49.2%にあたる466先と最も多い。
これら進出している信用金庫取引先や進出を計
画している先は、現地の投資環境・設立ノウハウ
等に関する情報や進出後の資金需要・外国為替に
関するサポートを必要としており、今般、信用金
庫取引先の中国における事業展開を支援するため、
上海駐在員事務所を開設した。
同事務所の活動内容は、①信用金庫取引先の中
国への進出を支援するため、信用金庫および信用
金庫取引先に対して、金融・経済情勢および投融
資環境ならびに現地の法律・税務・雇用等にかかる
124
信金中金月報 2004.11
頼・相談等については、信金中金営業店までご一
報頂きたい。
〔上海駐在員事務所の概要〕
1.名称
信金中央金庫上海駐在員事務所
中文名称:日本信金中央金庫有限公司
上海代表処
英文名称:Shinkin Central Bank
Shanghai Representative Office
2.住所
中華人民共和国上海市延安西路2201号
上海国際貿易中心508室
Room508, Shanghai International Trade Center
2201 Yan-An Xi Road, Shanghai, China
3.電話番号/FAX番号
TEL : +86-21-6270-3091 FAX : +86-21-6270-3095
4.E-mailアドレス
[email protected]
5.人員
所長:丹羽弘之
担当:姜敏(しょう・びん)
〔日本語可〕
『産業クラスターと地域活性化』を刊行
信金中央金庫
総合研究所
2004年10月、浜松信用金庫と当研究所の共
編により、
『産業クラスターと地域活性化―地
域・中小企業・金融のイノベーション』
(同友
館刊)を発行した。B5版275ページの体裁で、
定価3,150円(本体価格3,000円+税5%)
、全国
の書店また同友館ホームページ(http://www.
doyukan.co.jp/)でお求めいただける。
本書の内容紹介に代え、信金中央金庫宮本理
事長による巻頭の「ごあいさつ」を紹介する。
近年、地域経済の衰退や地域産業の空洞化が指摘されており、地域と共生する地域金融機関・信
用金庫にとっても、地域を活性化させることが重要なテーマであり、これに取り組むことが大きな
課題となっています。
本書は、
「浜松地域経済研究会」による調査研究結果をとりまとめたものであります。浜松地域経
済研究会は、浜松信用金庫の発起による産学官連携の研究会であり、地域活性化の方向性を見出す
ことを目的としたものであります。その意味では、浜松地域経済研究会は、行政主導ではない、信
用金庫主体の「民間版産業クラスターサポート金融会議」といえましょう。信用金庫が地域の産学
官の触媒となって、主体的に地域活性化策を見出し、書籍出版を通じて情報発信していく試みは、
おそらく初めてのことだと思います。そして、このような浜松地域経済研究会での活動は、
「地域金
融・中小企業金融・協同組織金融」の21世紀モデルであるといっても過言ではありません。
本書は、その内容において、極めて独創性に富んでおり、地域金融機関役職員、地域政策担当者、
中小企業研究者等にとって大変有益な専門書であるといえましょう。また、理論・実践・政策を包
含した体系的な構成になっており、タイトルのとおり「産業クラスターと地域活性化」の戦略を示
しています。こうしたテーマは、浜松地域だけではなく、全国各地の地域産業の活性化策に大変参
考になると思われます。
信金中央金庫総合研究所が浜松地域経済研究会の調査研究活動と本書出版に参画できたことを喜
ぶとともに、本書が地域活性化に関係する多くの方々に対して何らかの示唆を与えられれば幸いで
あります。
信金中金だより
125
信金中央金庫総合研究所活動状況(9月)
1.レポート等の発行
発行日
04.9.1
04.9.8
04.9.13
04.9.13
04.9.15
04.9.22
レポート分類
通巻
タ
イ
ト
ル
内外金利・為替見通し 16-6 ―
産業企業情報
16-5 事業改善が続く中小精密機械製造業の現状
―業況好転の背景と好調企業の取組み事例―
金融調査情報
16-5 預金者行動からみた金融機関の情報開示
金融調査情報
16-6 知的財産権担保融資の概要
内外経済・金融動向
16-5 地方財政と三位一体改革
―中長期的には地方交付税制度の抜本的な見直しが焦点―
貿易投資相談ニュース 113 海外進出にかかる技術流出について
執筆者
斎藤大紀
平井昌夫
廣住亮
谷地向ゆかり
荒井宏文
―
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
04.9.3
種類
タ イ ト ル
講演 企業経営の見方
04.9.8∼9
04.9.14
講演
講演
04.9.17
講演
最新の中国情勢と中国ビジネス事情
経営改善への示唆
講座・講演会・番組名称
営業店融資担当者に
対する目利き研修
アジアビジネススクール
第2回ちょうししんきん
経営者セミナー
新規業務等説明会
場所・放送局
しまね信用金庫
本店
関西経済連合会
銚子信用金庫
講 師 等
藤津勝一
篠崎幸弘
藤津勝一
04.9.18
中小企業再建支援における財務手法
(DES・DDS等)について
講座 地域活性化とは(1)
04.9.23
放送
04.9.25
どう挑む 中国巨大市場
∼変わる日本企業の戦略∼
講演 中国投資最新事情―経済政策の行方
と開発区の統廃合について―
講座 地域活性化とは(2)
信金中央金庫
間下聡
東北支店
ベンチャービジネスと 専修大学
長山宗広
地域活性化
経済最前線特集
NHKBSニュース 篠崎幸弘
04.9.25
04.9.27
講演
講座
中国ビジネスセミナー 中 国 江 蘇 省 昆 山 市
人民政府日本事務所
ベンチャービジネスと 専修大学
地域活性化
目利き研修
豊田信用金庫
金融制度論
神奈川大学
04.9.29
講演
04.9.24
経営改善支援の手順、具体的事例
わが国金融資本市場の概況
5.外国為替市場
商店街活性化のためにやるべきこと
飯 能 市 商 店 街 活 性 化 飯能信用金庫
講演会
篠崎幸弘
長山宗広
藤津勝一
澤山弘
笠原博
3.原稿掲載
発行日
04.9.1
126
タ
イ
ト
ル
掲 載 誌
中小企業でのインターネット普及は鈍化
東洋経済統計月報
「中小企業景況レポートNo. 116」掲載
(9月号)
【特別調査―インターネットの利用について】
信金中金月報 2004.11
発
行
東洋経済新報社
執筆者
―
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況 ………127
(2)信用金庫の店舗数、合併等 ……129
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …130
(4)信用金庫の預金者別預金 ………131
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …132
(6)信用金庫の貸出先別貸出金 ……133
(7)信用金庫の余裕資金運用状況 …134
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等 …………………135
(2)業態別貸出金 ……………………136
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔―〕該当計数なし 〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の4
県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.
(1)信用金庫の主要勘定概況(2004年8月末)
○預 金
8月の全国信用金庫の預金は、月中1,394億円、0.1%増と、前年同月(6,078億円、0.5%増)と同様に増加した。
① 要求払預金は、前月末休日による残高高どまりの反動減がみられたものの、年金振込金の滞留や、各種自
振口資金の一時滞留等から、月中919億円、0.2%増と、前年同月(6,290億円、1.9%増)と同様に増加した。
② 定期性預金は、定期積金の掛込みがみられたものの、営業資金および決済資金のための流出等から、月中
17億円、0.0%減と、前年同月(58億円、0.0%減)と同様に減少した。
③ 外貨預金等は、月中492億円、11.6%増加した。
なお、2004年8月末の預金の前年同月比増減率は、1.3%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中3,366億円、0.5%減と、前年同月(2,916億円、0.4%増)の増加から減少となった。
① 割引手形は、前月末休日による商手決済のズレ込みや、期日落込みの増加等から、月中3,042億円、12.8%
減と、前年同月(1,833億円、8.0%増)の増加から減少となった。
② 貸付金は、住宅ローンの実行がみられたものの、前月末休日による回収分のズレ込みや、季節的要因によ
る資金需要の減退等から、月中323億円、0.0%減と、前年同月(1,082億円、0.1%増)の増加から減少となった。
なお、2004年8月末の貸出金の前年同月比増減率は、1.2%減となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中4,354億円、0.8%増と、前年同月(4,283億円、0.8%増)と同様に増加した。
主な内訳をみると、預け金は、月中7,994億円、3.9%増となった。
金融機関貸付等は、買現先勘定が増加したものの、コールローンが減少したことから、月中67億円、12.2%
減となった。
有価証券は、地方債(177億円増)や外国証券(113億円増)等が増加したものの、国債(2,131億円減)およ
び社債(901億円減)が減少したため、月中2,597億円、0.9%減となった。
統 計
127
信用金庫の主要勘定増減状況(2004年8月末)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買 現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
貸 付 有 価 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要 求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定 期 性 預 金
項
定
期
預
金
定
期
積
金
外 貨 預 金 等
目
実
質
預
金
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
員
勘
定
増 減 額
1,507,580
△
(△
134,044 )
20,870,503
(
19,419,318 )
(
41,000 )
48,258
△
0
0
37,259
△
10,999
0
405,351
△
316,466
△
13,503
△
28,079,192
△
7,717,144
△
2,960,387
299
11,232,122
△
527,320
217
669,181
4,910,611
61,907
△
0
51,240,856
61,634,869
△
(
61,457,351 )
2,065,554
△
59,569,314
△
7,215,034
49,318,576
△
3,035,703
107,105,832
(
106,544,795 )
33,890,232
2,199,519
△
29,301,602
1,317,141
146,466
△
889,825
35,675
△
72,743,618
△
65,568,915
△
7,174,702
471,981
106,971,787
120,718
514,764
△
57.4
(
(
(
(
(
会
会
員
勘
定
普 通 出 資 金
優 先 出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資 本 準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利 益 準 備 金
特 別 積 立 金
前 期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
△
5,663,277
580,378
43,590
0
30,977
0
358,533
4,331,189
119,291
513
199,598
2
797
0
0
△
△
△
△
増 減 率
77,254
△
(△
125,343 )
799,492
(
757,204 )
(
0)
6,724
△
0
0
7,723
△
1,000
0
18,493
△
325
△
1,532
△
259,729
△
213,183
△
17,785
0
90,149
△
9,084
0
6,055
11,339
659
△
0
435,435
336,614
△
(
59,994 )
304,222
△
32,392
△
21,802
82,913
△
28,719
139,447
(
152,771 )
91,954
344,695
△
56,387
259
35,408
△
418,972
3,562
△
1,744
△
40,305
△
38,560
49,237
264,789
22,944
29,272
△
17
1,123
0
0
0
0
0
936
754
496
11
0
66
0
0
△
△
△
△
0.0
0.1
0.0
―
0.0
―
0.0
0.0
0.6
*
0.0
0.0
―
―
―
信金中金月報 2004.11
2.3
3.6
147.8
―
122.9
△ 100.0
△
0.3
1.3
17.7
―
△
3.4
―
―
―
―
年
月中増減額
4.8
4.4
△
( △ 48.7 )
(
48.3 )
3.9
5.0
△
(
(△
4.0 )
3.2 )
( △ 56.0 )
(△
0.0 )
12.2
△ 50.2
△
─
△ 100.0
─
─
17.1
△ 43.5
△
10.0
△
8.3
─
△ 100.0
4.3
△ 26.4
△
0.1
17.5
10.1
△ 52.9
0.9
4.2
2.6
10.7
0.6
13.7
0.0
△ 70.0
0.7
△
2.0
1.7
15.9
0.0
△ 65.7
△
0.9
9.2
0.2
2.9
1.0
△
0.7
─
─
△
0.8
4.1
0.5
△
1.2
(△
(
0.0 )
0.7 )
12.8
△ 15.9
0.0
△
0.6
0.3
△
8.2
0.1
0.8
0.9
△
4.2
△
0.1
1.3
(
(
0.1 )
1.6 )
0.2
4.7
13.5
△
6.1
0.1
4.9
0.0
△
1.4
19.4
△
5.9
△
88.9
55.5
△
9.0
△
2.8
0.0
△
0.1
△
0.0
0.3
△
0.5
△
4.5
11.6
8.8
△
0.2
1.4
23.4
35.3
5.3
△ 10.8
(備考)預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
128
前年同月比
増 減 率
前
△
同
29,469
△
(
118,843 )
209,102
△
(△
189,171 )
(△
1,998 )
12,988
△
0
0
14,989
△
2,001
0
28,968
△
211
3,662
704,984
451,675
32,153
0
168,665
1,832
310
△
2,208
48,576
195
10
△
428,330
291,618
(
256,490 )
183,358
108,260
10,667
129,819
32,225
△
607,814
(
346,962 )
629,052
233,190
639,994
2,012
6,814
△
242,726
△
3,397
5,829
△
41,929
△
36,100
15,408
△
488,972
24,458
2,324
2,572
2,406
0
0
0
0
0
0
60
64
0
0
162
0
0
月
前年同月比
増 減 率
2.0
△
6.6
(△
83.3 )
5.4 )
1.0
△
2.9
(△
0.9 )
2.3 )
( △ 13.2 )
2.0 )
11.8
10.4
0.0
─
─
─
18.5
△ 24.8
20.0
─
0.0
─
4.9
24.4
0.0
△ 20.1
14.6
53.1
2.6
14.6
6.9
40.1
1.2
3.6
0.0
─
1.4
11.4
0.4
△ 12.2
32.8
△ 73.8
0.3
△ 26.6
1.0
10.6
0.3
9.1
100.0
△ 100.0
0.8
6.0
0.4
△
0.6
(△
0.4 )
0.6 )
8.0
△
8.3
0.1
△
0.3
0.1
△
7.3
0.2
1.1
1.0
△
4.5
0.5
2.3
(
0.3 )
2.3 )
1.9
4.7
11.0
3.6
2.3
5.2
0.1
△
4.3
4.1
△
5.5
29.7
13.1
10.1
△
1.5
0.0
1.4
0.0
2.1
0.4
△
4.5
3.4
△
8.6
0.4
2.3
37.7
250.1
0.4
56.4
月中増減率
△
△
0.0
0.4
0.0
―
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
―
0.0
―
―
―
―
△
△
△
△
△
1.0
5.0
*
―
246.3
―
1.5
2.7
24.8
237.7
2.4
―
―
―
―
1.
(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数
店
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
本 店
支 店
(信用金庫数)
386
8,004
371
7,842
349
7,781
330
7,707
326
7,673
326
7,655
321
7,595
315
7,529
314
7,514
314
7,513
309
7,508
307
7,502
306
7,471
306
7,466
306
7,460
306
7,452
304
7,438
304
7,427
p
304
舗
(単位:店、人)
数
常
出張所
合 計
248
267
270
267
264
258
258
262
265
266
267
266
282
283
282
281
274
271
8,638
8,480
8,400
8,304
8,263
8,239
8,174
8,106
8,093
8,093
8,084
8,075
8,059
8,055
8,048
8,039
8,016
8,002
7,980
会 員 数
8,876,360
8,941,138
8,981,084
8,982,770
9,001,391
9,032,713
9,058,720
9,067,020
9,073,614
9,083,334
9,086,064
9,093,543
r 9,091,805
9,099,916
9,106,748
9,112,262
9,113,379
9,116,103
9,121,880
常勤役員
2,900
2,804
2,734
2,607
2,557
2,508
2,488
2,463
2,459
2,455
2,426
2,414
r 2,396
r 2,392
r 2,387
2,385
2,380
2,379
勤
男 子
98,124
94,112
91,451
89,712
87,922
88,196
87,065
86,761
86,522
86,194
85,865
85,489
r 84,345
85,575
85,307
84,696
84,388
84,150
役
職
職
員
女 子
43,781
41,004
38,851
38,706
37,086
38,559
37,429
37,204
37,095
36,622
36,380
36,149
r 35,051
36,926
36,720
36,381
36,040
35,762
員
数
計
141,905
135,116
130,302
128,418
125,008
126,755
124,494
123,965
123,617
122,816
122,245
121,638
r 119,396
122,501
122,027
121,077
120,428
119,912
合
計
144,805
137,920
133,036
131,025
127,565
129,263
126,982
126,428
126,076
125,271
124,671
124,052
r 121,792
r 124,893
r 124,414
123,462
122,808
122,291
121,502
信用金庫の合併等
年 月 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月22日
2003年 7 月22日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年11月 4 日
2004年 1 月13日
2004年 1 月19日
2004年 1 月19日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月16日
2004年 3 月22日
2004年 7 月12日
2004年 7 月20日
2004年10月12日
芝
一宮
東京東
赤穂
秋田
富山
福岡ひびき
能登
王子
直江津
北伊勢
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
彦根
大阪
異
東調布
愛北
小岩
伊那
五城目
射水
新北九州
共栄
太陽
高田
上野
さぬき
川内
(高浜信組)
福光
豊浦
近江八幡
南大阪
動
金
庫
名
津島
門司
築上
荒川
日興
直方
新金庫名
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
滋賀中央
大阪
金庫数
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
305
304
303
異動の種類
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
統 計
129
1.
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,047,505
1,035,536
1,054,744
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,175
1,063,080
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
要求払
214,497
230,205
297,903
320,432
312,842
325,170
322,502
322,398
327,046
336,074
324,452
331,166
328,610
336,762
334,117
341,198
337,982
338,902
340,543
前年同月比
増 減 率
4.1
7.3
29.4
27.1
5.0
3.5
4.6
5.0
5.4
4.8
6.7
6.6
5.0
4.5
4.4
4.9
6.5
4.7
5.5
定期性
797,284
801,008
723,681
722,295
716,192
724,946
726,178
723,891
723,409
727,873
727,359
725,787
720,951
721,817
722,676
724,892
727,453
727,436
725,012
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.8
8,539 △ 9.2
0.4
6,829 △ 20.0
△ 9.6
6,613 △ 3.1
△ 10.0
4,776 △ 10.0
△ 1.0
6,500 △ 1.7
1.1
4,627
0.1
1.2
5,127 △ 8.1
1.2
4,489 △ 13.4
1.1
4,703 △ 11.4
0.7
4,152 △ 13.0
0.7
4,137 △ 14.6
0.8
4,056 △ 11.1
0.6
5,614 △ 13.6
0.5
4,500 △ 3.3
0.4
4,551 △ 4.5
△ 0.0
4,866
5.1
△ 0.1
4,227 △ 5.8
△ 0.1
4,719
8.8
△ 0.1
4,910 △ 4.2
実質預金
1,016,862
1,033,760
1,024,192
1,043,490
1,032,788
1,053,240
1,051,883
1,049,323
1,052,500
1,065,180
1,053,362
1,058,358
1,052,971
1,061,047
1,059,865
1,069,538
1,067,069
1,069,717
1,068,785
前年同月比
増 減 率
1.4
1.6
△ 0.9
△ 1.2
0.8
1.9
2.2
2.2
2.3
2.0
2.3
2.4
1.9
1.7
1.7
1.5
1.7
1.4
1.6
譲渡性預金
122
105
114
321
244
650
915
1,005
1,084
766
965
855
789
716
824
938
977
1,207
1,099
前年同月比
増 減 率
△ 36.7
△ 13.3
7.9
129.4
113.7
189.0
202.8
177.5
230.4
138.1
225.6
162.7
223.1
86.9
62.4
44.1
51.0
35.3
20.0
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
地区別預金
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
(単位:億円、%)
北海道
51,708
53,392
54,596
56,826
55,302
56,473
55,749
55,624
56,645
57,719
55,985
56,167
56,194
56,928
56,622
57,357
57,005
57,133
56,869
近 畿
206,301
207,950
201,814
203,462
201,600
204,930
205,386
204,412
205,232
207,067
205,239
206,117
205,213
206,682
206,367
208,296
208,205
208,434
208,501
前年同月比
増 減 率
2.5
3.2
2.2
0.4
1.2
1.5
0.8
1.6
1.9
1.5
2.3
2.0
1.6
1.4
1.6
1.5
2.1
1.7
2.0
前年同月比
増 減 率
0.7
0.7
△ 2.9
△ 3.3
△ 0.1
1.5
2.0
2.0
2.2
1.7
2.3
2.5
1.7
2.0
1.6
1.6
1.8
1.5
1.5
東 北
38,831
39,684
39,036
40,360
39,462
40,347
40,145
40,170
40,281
40,851
40,355
40,619
39,896
40,591
40,242
40,639
40,517
40,590
40,438
中 国
49,526
49,578
49,651
50,632
50,175
51,036
50,844
50,300
50,480
51,138
50,337
50,618
50,456
50,743
50,569
51,106
51,030
51,049
50,911
前年同月比
増 減 率
1.7
2.1
△ 1.6
△ 0.5
1.0
0.9
1.1
1.2
1.3
1.2
1.7
1.8
1.0
1.0
0.7
0.7
0.9
0.6
0.7
前年同月比
増 減 率
0.8
0.1
0.1
△ 0.7
1.0
1.9
1.8
1.5
1.6
0.9
1.1
1.3
0.5
0.7
0.4
0.1
0.6
0.0
0.1
東 京
192,017
194,416
190,125
194,208
193,270
196,425
196,553
196,386
197,385
199,155
197,620
198,294
196,903
198,198
198,014
199,329
199,319
199,038
199,504
四 国
17,198
17,773
18,064
18,341
18,206
18,483
18,491
18,438
18,494
18,769
18,634
18,730
18,625
18,722
18,699
18,887
18,946
18,952
18,954
前年同月比
増 減 率
0.3
1.2
△ 2.2
△ 1.8
0.8
2.2
2.4
2.7
2.8
2.5
3.1
2.9
1.8
1.9
1.4
1.4
1.8
0.8
1.5
前年同月比
増 減 率
2.0
3.3
1.6
△ 0.4
0.7
1.9
2.0
2.2
2.2
2.3
2.8
2.9
2.3
2.2
2.0
2.1
2.5
2.2
2.5
関 東
197,800
199,809
198,309
201,075
197,820
201,691
201,450
201,355
201,837
204,715
202,305
203,450
201,888
203,399
203,184
205,068
204,725
205,230
204,838
九州北部
17,411
17,940
17,916
18,439
17,984
18,597
18,452
18,455
18,486
18,766
18,558
18,645
18,298
18,652
18,577
18,751
18,728
18,745
18,665
前年同月比
増 減 率
0.9
1.0
△ 0.7
△ 0.9
0.4
2.3
1.8
2.0
2.0
1.8
2.2
2.3
2.0
1.7
1.7
1.6
1.9
1.5
1.6
前年同月比
増 減 率
2.5
3.0
△ 0.1
△ 0.6
0.3
2.2
2.0
2.3
2.2
1.7
2.8
2.6
1.7
1.2
1.0
0.8
1.4
0.7
1.1
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
130
信金中金月報 2004.11
北 陸
30,732
31,560
31,829
32,600
32,313
32,818
32,778
32,774
32,796
33,108
32,812
32,992
32,710
32,996
32,912
33,249
33,132
33,199
33,031
南九州
24,139
24,392
23,556
24,424
23,746
24,269
24,306
24,119
24,230
24,855
24,312
24,226
24,219
24,320
24,331
24,541
24,539
24,587
24,525
前年同月比
増 減 率
1.6
2.6
0.8
0.4
1.5
1.2
2.3
2.4
2.1
1.5
2.6
2.7
1.2
1.2
0.7
1.3
1.1
0.6
0.7
前年同月比
増 減 率
1.2
1.0
△ 3.4
△ 1.9
0.8
1.9
2.1
1.9
1.9
1.7
2.5
2.4
1.9
1.2
1.2
1.1
1.6
1.2
0.9
東 海
193,122
200,034
201,901
205,777
204,281
208,291
208,248
207,358
207,916
210,580
208,431
209,789
209,402
210,488
210,500
212,288
212,039
212,642
212,782
全国計
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,047,505
1,035,536
1,054,744
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,175
1,063,080
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
前年同月比
増 減 率
3.4
3.5
0.9
0.2
1.1
2.9
3.1
2.7
2.9
2.3
2.5
2.6
2.5
1.9
2.2
1.9
2.0
1.9
2.1
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
1.
(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 8
9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
1,019,963
1,037,617
1,027,696
1,047,491
1,035,334
1,054,739
1,056,651
1,053,806
1,050,777
1,055,157
1,068,098
1,055,947
1,061,009
1,054,774
1,063,078
1,061,344
1,070,956
1,069,662
1,071,056
個人預金
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.3
2.2
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
一般法人預金
201,155
200,268
182,602
182,904
173,622
174,582
176,231
176,942
173,553
179,661
183,661
177,071
176,720
175,486
177,528
175,508
175,929
178,942
173,257
要求払
3,433
3,569
12,046
12,262
11,804
14,234
11,572
11,960
11,363
11,290
9,971
9,673
9,677
9,986
11,937
14,002
12,748
10,885
13,104
768,266
792,296
802,012
821,867
820,195
832,512
837,644
833,099
836,650
835,115
846,003
842,122
847,639
842,751
846,867
842,430
851,169
850,365
853,612
前年同月比
増 減 率
△ 1.0
△ 0.4
△ 8.8
△ 7.4
△ 4.9
△ 2.8
△ 0.1
△ 0.1
△ 0.0
0.2
0.4
3.4
3.5
1.0
0.2
△ 2.0
0.7
3.6
△ 1.6
要求払
前年同月比
増 減 率
10.7
3.9
237.4
361.3
△ 2.0
△ 4.0
△ 20.3
△ 17.0
△ 15.3
△ 15.7
△ 18.6
△ 25.1
△ 25.8
△ 15.4
△ 8.1
10.4
△ 10.4
△ 20.0
13.2
定期性
62,619
69,649
85,538
92,675
84,315
85,598
87,649
88,331
85,307
91,736
96,030
89,515
89,178
88,339
90,064
88,453
89,321
92,393
86,828
20,770
20,719
10,738
13,047
10,366
15,932
15,611
13,747
13,323
13,145
12,817
12,672
11,901
10,623
11,578
13,524
15,534
15,821
15,578
前年同月比
増 減 率
2.0
3.1
1.2
0.6
2.2
2.8
3.4
3.3
3.3
3.3
2.9
3.0
3.0
2.7
2.5
2.3
2.2
2.2
1.9
要求払
前年同月比
増 減 率
△ 0.2
11.2
22.8
27.2
△ 1.4
△ 1.2
3.4
3.0
3.3
3.4
3.6
10.3
10.2
4.7
2.9
△ 1.2
4.3
10.2
△ 0.9
定期性
141,879
153,271
195,149
211,302
211,169
221,079
221,570
217,690
222,508
220,874
226,794
222,961
229,245
226,091
231,178
227,575
235,714
232,606
235,435
138,202
130,298
96,760
89,865
88,922
88,622
88,208
88,215
87,859
87,551
87,249
87,182
87,185
86,830
87,112
86,700
86,241
86,191
86,060
前年同月比
増 減 率
6.2
8.0
27.3
22.3
8.2
5.9
7.4
7.2
7.3
7.7
7.3
7.9
7.9
7.0
6.3
5.9
6.6
7.6
6.2
定期性
626,134
638,772
606,630
610,303
608,742
611,104
615,716
614,990
613,669
613,754
618,654
618,597
617,817
616,073
615,079
614,269
614,853
617,135
617,523
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
1.1
238
119.2
2.0
240
0.5
△ 5.0
220
△ 8.3
△ 5.1
250
16.2
0.3
273
24.1
1.8
318
39.5
2.0
346
34.6
1.9
407
61.7
1.9
462
87.3
1.7
476
93.9
1.3
544
117.4
1.3
552
112.9
1.3
566
112.6
1.2
576
111.0
1.0
600
120.4
0.9
575
89.8
0.6
591
85.7
0.3
612
81.2
0.2
643
85.8
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 1.4
323
8.9
△ 5.7
309
△ 4.1
△ 25.7
293
△ 5.0
△ 27.8
354
9.0
△ 8.1
376
28.2
△ 4.4
353
△ 7.1
△ 3.5
364
2.3
△ 3.2
386
11.3
△ 3.1
377
8.2
△ 2.9
365
4.2
△ 2.9
373
5.2
△ 2.8
365
△ 0.5
△ 2.3
347
△ 3.2
△ 2.3
349
△ 7.3
r
△ 2.4
343
△ 4.0
△ 2.7
346
△ 5.6
△ 2.6
358
1.4
△ 2.5
348
△ 1.6
△ 2.4
360
△ 1.0
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
10.3
456
27.2
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200
△ 67.1
△ 47.0
37
△ 70.7
△ 3.4
118
△ 41.2
7.1
208
98.3
4.4
36
△ 67.8
△ 0.7
51
35.2
0.9
16
105.5
0.5
201
342.4
△ 1.7
57
54.1
△ 0.0
12
△ 63.9
△ 0.6
93
167.0
2.4
298
152.7
2.2
56
*
3.6
19
△ 74.8
△ 2.4
371
77.8
△ 1.8
11
△ 27.5
△ 0.2
154
319.2
金融機関預金
25,857
20,141
20,084
17,361
19,217
17,259
15,546
17,995
15,861
15,733
15,577
14,386
14,969
15,579
15,100
15,851
15,195
13,628
15,341
公金預金
24,663
24,903
22,990
25,350
22,292
30,379
27,223
25,763
24,706
24,640
22,850
22,361
21,675
20,951
23,576
27,549
28,657
26,721
28,839
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 4.8
14
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 7.9
1
△ 4.3
1
3.7
1
△ 4.6
0
△ 6.5
1
△ 7.8
1
△ 5.4
1
△ 10.2
0
△ 11.9
0
△ 11.6
0
△ 18.9
0
△ 12.7
0
△ 1.2
0
△ 11.9
0
△ 19.0
0
△ 1.3
0
前年同月比
増 減 率
10.6
0.9
△ 7.6
△ 7.5
△ 3.0
1.9
△ 8.0
△ 8.9
△ 7.2
△ 7.1
△ 9.8
△ 12.8
△ 13.5
△ 6.0
△ 3.1
6.7
△ 5.6
△ 10.1
5.9
譲渡性預金
122
105
114
321
244
650
891
915
1,005
1,084
766
965
855
789
715
824
938
977
1,207
(備考)日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による(3)預金種類別預金、地区別預金の預金計とは一
致しない。
統 計
131
1.
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
687,159
661,879
639,805
638,093
626,342
619,691
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
622,364
617,120
614,368
615,321
619,714
616,348
622,105
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
31,785
33,932
28,762
28,125
24,051
23,054
22,238
22,256
24,592
26,093
25,388
24,828
22,388
21,870
21,730
21,682
23,697
20,655
20,832
貸付金
前年同月比
増 減 率
△ 4.9
6.7
△ 15.2
△ 9.9
△ 16.3
△ 15.7
△ 7.9
△ 7.7
△ 7.7
△ 7.2
1.0
1.8
△ 6.9
△ 5.7
△ 14.7
△ 5.9
4.1
△ 15.9
△ 6.3
655,373
627,946
611,043
609,968
602,291
596,636
603,192
601,182
602,259
606,919
602,249
601,538
599,975
595,249
592,638
593,638
596,017
595,693
601,273
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 4.1
△ 2.6
△ 2.2
△ 1.4
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.3
△ 0.4
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.6
△ 0.3
手形貸付
107,804
97,975
90,943
86,970
84,739
78,219
79,940
79,025
78,708
80,066
78,310
78,116
77,758
74,314
71,686
71,481
71,932
72,150
73,854
前年同月比
増 減 率
△ 8.7
△ 9.1
△ 7.1
△ 8.4
△ 6.8
△ 6.6
△ 7.5
△ 7.3
△ 7.5
△ 7.9
△ 7.7
△ 8.1
△ 8.2
△ 8.4
△ 8.5
△ 8.6
△ 8.3
△ 8.2
△ 7.6
証書貸付
509,049
493,986
485,532
489,691
484,045
486,415
490,191
490,176
491,561
495,078
492,647
492,181
490,499
490,369
490,291
491,932
494,014
493,185
495,820
前年同月比
増 減 率
△ 2.2
△ 2.9
△ 1.7
△ 0.8
△ 0.3
0.6
1.2
1.3
1.3
1.0
1.3
1.4
1.3
1.2
0.9
1.1
1.2
0.8
1.1
地区別貸出金
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
38,520
35,984
34,567
33,306
33,506
32,001
33,060
31,980
31,988
31,774
31,291
31,239
31,717
30,564
30,660
30,223
30,069
30,357
31,598
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 6.5
△ 3.9
△ 4.6
△ 3.0
△ 3.1
△ 5.0
△ 5.1
△ 4.4
△ 4.5
△ 5.9
△ 6.0
△ 5.3
△ 5.9
△ 4.5
△ 5.5
△ 6.1
△ 4.2
△ 4.4
(単位:億円、%)
北海道
30,197
29,377
29,521
29,862
29,628
28,255
29,083
29,346
29,451
30,095
29,461
29,472
29,855
29,152
28,526
28,524
28,792
28,845
29,485
近 畿
144,784
136,814
130,271
127,566
124,418
123,725
124,171
123,680
124,553
125,340
124,471
124,035
122,626
122,063
121,745
121,845
122,789
121,660
122,425
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 2.7
0.4
1.0
0.3
0.4
0.3
1.1
1.1
0.7
1.7
1.7
0.7
1.1
0.5
0.9
1.4
0.3
1.3
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 5.5
△ 4.7
△ 5.9
△ 4.4
△ 2.5
△ 1.6
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.7
△ 0.9
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.3
△ 2.0
△ 1.5
△ 0.8
△ 2.1
△ 1.4
東 北
25,091
24,875
24,520
24,506
24,413
23,735
23,944
23,930
23,993
24,136
23,941
23,952
23,865
23,539
23,274
23,242
23,350
23,303
23,543
中 国
33,451
31,863
30,826
30,692
30,140
29,641
29,978
29,740
29,797
30,114
29,880
29,904
29,815
29,442
29,347
29,412
29,567
29,492
29,702
前年同月比
増 減 率
△ 1.2
△ 0.8
△ 1.4
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.2
△ 1.2
△ 2.2
△ 2.0
△ 2.3
△ 2.0
△ 1.9
△ 2.3
△ 1.6
前年同月比
増 減 率
△ 4.4
△ 4.7
△ 3.2
△ 1.6
△ 2.2
△ 1.7
△ 1.2
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.8
△ 1.0
△ 1.0
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.9
東 京
135,174
131,381
125,915
127,252
124,445
124,278
124,861
124,624
125,315
126,390
125,432
124,884
123,525
123,320
122,917
123,115
124,253
123,066
123,743
四 国
11,098
11,060
10,974
10,901
10,823
10,788
10,867
10,808
10,856
10,893
10,838
10,799
10,800
10,676
10,653
10,628
10,664
10,673
10,774
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 2.8
△ 4.1
△ 2.8
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.6
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.2
△ 1.6
△ 0.8
前年同月比
増 減 率
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.5
△ 1.3
0.3
0.4
0.4
0.4
△ 0.0
0.2
0.0
△ 0.2
△ 0.6
△ 1.3
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.8
関 東
133,558
125,418
120,357
118,814
116,756
115,768
116,985
116,639
117,227
118,457
117,704
117,604
116,513
115,727
115,322
115,517
116,136
115,785
117,045
九州北部
12,030
11,797
11,551
11,736
11,575
11,389
11,434
11,416
11,478
11,553
11,453
11,469
11,406
11,283
11,177
11,184
11,261
11,197
11,311
前年同月比
増 減 率
△ 3.7
△ 6.0
△ 4.0
△ 2.7
△ 1.9
△ 1.1
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.3
0.1
0.2
△ 0.2
△ 0.1
△ 0.5
△ 0.2
0.0
△ 0.6
0.0
前年同月比
増 減 率
△ 1.7
△ 1.9
△ 2.0
△ 0.1
0.2
0.0
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.5
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.4
△ 1.2
△ 2.4
△ 1.7
△ 1.2
△ 2.3
△ 1.0
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
132
当座貸越
信金中金月報 2004.11
北 陸
20,387
20,088
19,287
19,419
19,061
18,720
18,847
18,773
18,879
19,077
18,939
18,942
18,768
18,690
18,530
18,580
18,722
18,666
18,703
南九州
16,971
16,530
15,972
15,874
15,489
15,232
15,498
15,505
15,594
15,788
15,584
15,560
15,470
15,240
15,239
15,336
15,412
15,473
15,586
前年同月比
増 減 率
△ 2.0
△ 1.4
△ 3.9
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.4
△ 0.8
△ 1.0
△ 1.1
△ 1.7
△ 0.7
△ 0.4
△ 1.5
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.7
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 2.5
△ 3.3
△ 4.2
△ 3.0
△ 1.1
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.1
0.6
0.7
0.6
0.5
東 海
123,154
121,487
119,553
120,414
118,573
117,141
118,739
117,963
118,694
120,157
118,923
118,736
118,715
116,999
116,643
116,943
117,776
117,196
118,796
全国計
687,159
661,879
639,805
638,093
626,342
619,691
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
622,364
617,120
614,368
615,321
619,714
616,348
622,105
前年同月比
増 減 率
△ 2.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 0.2
△ 0.8
△ 0.3
0.2
0.1
0.1
△ 0.2
0.1
0.1
0.1
△ 0.3
△ 0.8
△ 0.1
0.3
△ 0.6
0.0
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
1.
(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
企業向け計
年 月 末
製造業
建設業
2000. 3
687,157
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.6
100.0
480,319
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.5
69.8
106,973
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
15.5
01. 3
661,876
△ 3.6
100.0
459,367
△
4.3
69.4
102,550
△ 4.1
15.4
78,299
△
5.4
11.8
02. 3
639,803
△ 3.3
100.0
435,084
△
5.2
68.0
94,053
△ 8.2
14.7
71,366
△
8.8
11.1
02. 9
12
629,549
638,092
△ 3.6
△ 2.6
100.0
100.0
423,123
430,011
△ 6.2
△ 4.9
67.2
67.3 b
90,024
91,584
△ 9.5
△ 7.6
14.2
14.3
67,526
67,981
△
△
9.8
9.2
10.7
10.6
03. 3
6
9
12
04. 3
6
△ 2.1
1.2
0.6
0.7
0.6
0.7
100.0
415,696
△
4.4
66.3
86,168
65,371
△
8.4
10.4
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
410,032
412,646
418,470
405,917
400,204
△
△
△
△
△
3.2
2.4
2.6
2.3
2.3
66.1
65.9
66.1
65.2
65.0
84,676
84,541
86,344
82,052
80,845
△ 7.9
7.1
5.5
5.1
4.7
4.5
13.7
619,689
625,429
633,012
622,492
615,319
13.6
13.5
13.6
13.1
13.1
62,121
63,252
64,107
61,905
59,001
△
△
△
△
△
7.3
6.3
5.6
5.3
5.0
10.0
10.1
10.1
9.9
9.5
626,340
年 月 末
卸売業
2000.
01.
02.
02.
3
3
3
9
12
03. 3
6
9
12
04. 3
6
年 月 末
40,922
39,320
36,758
35,401
36,235
34,255
33,818
34,004
34,927
33,063
32,441
12
04. 3
6
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.0
3.9
6.5
7.9
6.2
6.8
5.5
3.9
3.6
3.4
4.0
5.9
5.9
5.7
5.6
5.6
5.4
5.4
5.4
5.5
5.3
5.2
小売業
49,905
46,557
42,824
41,245
40,983
39,648
38,977
38,752
38,757
37,365
36,586
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
5.5
6.7
8.0
8.5
8.2
7.4
6.4
6.0
5.4
5.7
6.1
7.2
7.0
6.6
6.5
6.4
6.3
6.2
6.1
6.1
6.0
5.9
b
飲食店
16,654
15,622
14,524
14,108
14,008
13,653
13,415
13,300
13,145
12,723
12,526
△
△
△
△
△
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
3.9
6.1
7.0
7.0
7.1
5.9
5.7
5.7
6.1
6.8
6.6
2.4
2.3
2.2
2.2
2.1
2.1
2.1
2.1
2.0
2.0
2.0
不動産業
73,187
71,861
74,989
76,218
77,439
78,217
79,366
80,787
81,889
82,419
83,358
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
1.1
1.8
4.3
2.9
2.8
4.3
5.9
5.9
5.7
5.3
5.0
10.6
10.8
11.7
12.1
12.1
12.4
12.8
12.9
12.9
13.2
13.5
個 人
地方公共団体
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
2000. 3
01. 3
02. 3
02. 9
12
03. 3
6
9
△
△
△
△
△
82,844
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
12.0
前年同月比
構成比
増 減 率
前年同月比
構成比
増 減 率
83,373
80,128
77,123
△ 2.7
△ 3.8
△ 3.7
12.1
12.1
12.0
11,695
11,762
13,527
2.5
0.5
15.0
1.7
1.7
2.1
195,143
190,747
191,192
75,897
76,674
86,254
85,633
85,831
△ 4.4
△ 4.0
―
―
―
12.0
12.0
13.7
13.8
13.7
12,824
13,426
15,680
13,637
13,957
21.7
23.5
15.9
10.8
8.8
2.0
2.1
2.5
2.2
2.2
86,476
84,192
83,353
―
△ 2.3
△ 2.6
13.6
13.5
13.5
14,630
16,933
15,293
8.9
7.9
12.1
2.3
2.7
2.4
△
△
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
1.5
2.2
0.2
28.3
28.8
29.8
121,253
123,501
127,347
5.0
1.8
3.1
17.6
18.6
19.9
193,602
194,655
194,964
196,020
198,825
1.1
1.4
1.9
2.6
2.6
30.7
30.5
31.1
31.6
31.7
130,858
133,267
134,672
136,530
139,484
4.2
4.6
5.7
5.9
6.5
20.7
20.8
21.5
22.0
22.3
199,911
199,641
199,822
2.7
2.3
1.9
31.5
32.0
32.4
142,207
141,966
143,772
6.7
5.4
5.3
22.4
22.8
23.3
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による(5)科目別貸出金、地区別貸出金の貸出金計と
は一致しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービ
ス業」は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
統 計
133
1.
(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9 p
現 金
14,277
14,238
19,391
19,941
17,492
15,863
15,148
13,522
14,936
18,842
15,566
14,080
16,040
15,783
15,772
15,385
15,848
15,075
15,158
金融機関
預 け 金
買入金銭
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
うち信金中金預け金
債
権
預 け 金
ロ ー ン 取引支払保証金
146,973(
8.5)
1,373
129,402( 12.8) 24,425
5,900
―
4,182
183,867( 25.1)
2,553
166,783( 28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5)
3,004
2,104
―
2,084
199,514(△ 0.3)
1,103
187,256(△ 0.9)
1,301
1,301
―
5,213
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0)
2,654
1,654
1,000
3,274
208,191(△ 0.5)
853
195,676(△ 0.8)
1,205
905
99
6,188
192,727(△ 2.3)
853
163,256(△ 6.1)
1,424
945
89
4,579
194,467(△ 1.4)
880
184,147(△ 0.8)
613
443
89
4,789
195,734(△ 0.7)
775
185,067(△ 0.4)
662
511
80
4,536
199,978(
0.2)
605
189,285(
1.0)
582
449
63
4,555
196,366(
1.9)
550
186,157(
2.2)
744
597
87
4,229
206,613(
4.0)
550
195,765(
4.1)
745
595
90
4,020
196,398(
1.1)
910
154,855(△ 2.6)
2,175
1,575
0
3,095
206,247(△ 0.6)
700
195,116(△ 0.5)
734
634
0
3,679
206,666(
2.0)
510
195,228(
1.9)
699
609
0
3,900
207,344(△ 0.4)
510
193,808(△ 0.9)
578
498
0
4,232
200,710(△ 0.0)
410
186,621(△ 1.8)
549
449
0
4,238
208,705(
5.0)
410
194,193(
3.2)
482
372
0
4,053
206,143(
6.9)
410
166,545(
2.0)
1,119
1,119
0
3,439
金銭の
信 託
4,725
4,057
3,103
3,223
2,463
2,673
2,601
3,332
3,318
3,297
3,262
3,257
2,729
3,085
3,090
3,089
3,167
3,164
3,202
535
198
188
164
197
263
272
255
223
208
197
168
159
175
147
152
150
135
121
有価証券
国
198,272(
221,566(
236,169(
241,184(
248,064(
258,273(
270,957(
269,930(
269,250(
267,560(
267,647(
265,686(
268,761(
272,413(
273,624(
281,796(
283,389(
280,791(
277,917(
投資信託
15,654
14,226
8,034
7,517
5,176
6,149
5,976
6,003
6,146
6,106
5,842
6,033
5,650
5,856
6,199
6,315
6,631
6,691
6,519
9.8)
11.7)
6.5)
0.9)
5.0)
11.6)
12.9)
12.6)
12.1)
10.9)
9.2)
7.8)
8.3)
9.3)
8.2)
9.1)
8.0)
4.2)
2.5)
外国証券
34,184(
36,743(
39,660(
43,306(
41,917(
45,895(
47,723(
47,916(
48,223(
48,380(
48,153(
47,939(
46,121(
47,416(
47,777(
48,751(
48,992(
49,106(
48,485(
37,723(
50,807(
58,911(
52,105(
62,730(
62,868(
72,767(
71,365(
69,919(
68,790(
69,463(
68,346(
73,655(
74,183(
73,268(
78,190(
79,303(
77,171(
76,097(
債
地方債
41.0)
34.6)
15.9)
3.7)
6.4)
27.7)
34.0)
37.6)
34.2)
32.0)
25.5)
18.2)
17.4)
21.6)
20.8)
24.3)
21.6)
10.7)
4.5)
18,507
20,554
24,778
24,942
24,914
25,476
26,233
26,288
26,116
26,237
26,550
26,480
26,755
27,427
28,306
29,244
29,426
29,603
29,675
社
債
86,672(△
92,497(
99,328(
107,394(
108,534(
112,671(
113,131(
113,106(
113,566(
112,821(
112,450(
111,599(
110,483(
112,166(
112,462(
113,591(
113,222(
112,321(△
111,146(△
公社公団債
5.4) 13,679
6.7) 15,595
7.3) 21,166
5.0) 24,993
9.2) 27,267
12.0) 30,091
8.8) 32,126
6.6) 32,526
6.6) 33,066
5.0) 33,364
3.4) 33,538
3.0) 33,597
1.7) 33,875
2.3) 35,282
0.7) 35,947
0.8) 37,211
0.2) 37,412
2.0) 37,170
1.7) 37,083
余資運用 信金中金
その他の 貸
付 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 有価証券 (A)
16.0)
―
5
393,392
147,096
7.4)
346
5
439,243
166,783
7.9)
442
0
445,987
159,156
1.2)
633
0
470,543
187,256
5.6)
565
0
468,216
159,131
8.5)
619
0
492,659
195,676
12.1)
627
0
487,710
163,256
12.1)
632
0
486,910
184,147
12.0)
634
0
488,662
185,067
11.7)
630
0
495,024
189,285
11.5)
616
0
488,014
186,157
11.6)
622
0
494,572
195,765
10.0)
643
0
489,360
154,855
10.4)
606
0
502,119
195,116
7.6)
612
0
503,901
195,228
6.2)
619
0
512,578
193,808
3.7)
625
0
508,054
186,621
2.9)
619
0
512,408
194,193
1.5)
630
0
507,102
166,545
金融債
29,579
31,849
34,374
37,994
37,894
37,722
36,287
35,526
35,479
35,081
34,922
34,644
34,274
34,556
34,358
34,586
34,368
33,987
33,661
預貸率 (A)
/預金
67.3
63.7
62.2
60.8
60.4
58.7
59.2
59.2
59.3
59.2
59.3
58.9
58.9
58.0
57.8
57.4
57.8
57.4
58.0
38.5
42.3
43.3
44.9
45.2
46.6
46.2
46.2
46.2
46.3
46.1
46.5
46.3
47.2
47.4
47.8
47.4
47.7
47.3
その他
43,412
45,052
43,787
44,406
43,372
44,858
44,717
45,053
45,019
44,376
43,990
43,357
42,334
42,327
42,155
41,793
41,441
41,163
40,401
株 式
信金中金月報 2004.11
5,467
6,325
4,987
5,256
4,206
4,581
4,492
4,610
4,640
4,587
4,565
4,660
5,449
4,752
4,993
5,079
5,182
5,273
5,358
貸付信託
57
58
24
26
17
10
4
4
4
4
3
3
2
2
2
2
2
2
0
預証率 (B)
/預金(B)/(A)
19.4
21.3
22.9
23.0
23.9
24.4
25.6
25.6
25.4
25.0
25.3
25.0
25.4
25.6
25.7
26.2
26.4
26.1
25.9
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
134
商品有価
証
券
14.4
16.0
15.4
17.8
15.3
18.5
15.4
17.5
17.5
17.7
17.6
18.4
14.6
18.3
18.3
18.0
17.4
18.1
15.5
37.3
37.9
35.6
39.7
33.9
39.7
33.4
37.8
37.8
38.2
38.1
39.5
31.6
38.8
38.7
37.8
36.7
37.8
32.8
2.
(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
国内銀行
前年同月比
増 減 率
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
大手銀行
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
2000. 3
1,020,320
1.4
6,639,673
1.0
4,298,016
1.7
2,433,587
0.8
2,090,975
0.4
1,742,961
1.5
01. 3
1,038,043
1.7
6,641,871
0.0
4,288,153
△ 0.2
2,466,900
1.3
2,102,820
0.5
1,785,742
2.4
02. 3
1,028,198
△
0.9
6,790,535
2.2
4,416,792
2.9
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
1,813,848
1.5
02.12
1,047,505
△
1.2
6,701,855
1.0
4,323,991
1.3
2,666,605
5.4
2,292,954
5.9
1,806,287
0.5
03. 3
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487
△ 0.0
1.1
6
1,054,744
1.8
6,644,211
△
1.5
4,239,210
△ 2.7
2,753,332
2.5
2,365,201
1.3
1,850,150
03. 9
1,053,808
2.1
6,641,341
△
0.8
4,271,387
△ 1.6
2,770,950
3.7
2,385,332
3.5
1,816,601
1.4
10
1,050,779
2.2
6,580,434
△
0.9
4,241,987
△ 1.7
2,733,683
2.8
2,353,812
2.8
1,792,664
1.5
11
1,055,159
2.3
6,653,866
△
0.8
4,288,017
△ 1.7
2,767,642
2.3
2,385,727
2.3
1,816,427
1.6
12
1,068,100
1.9
6,673,286
△
0.4
4,289,361
△ 0.8
2,757,888
3.4
2,368,299
3.2
1,825,041
1.0
04. 1
1,055,949
2.4
6,651,254
△
0.4
4,302,101
△ 1.2
2,760,911
2.6
2,378,636
2.9
1,799,432
1.6
2
1,061,010
2.5
6,687,936
△
0.5
4,326,416
△ 1.4
2,773,222
1.6
2,389,622
1.7
1,809,568
1.8
3
1,055,175
1.8
6,798,238
△
0.0
4,420,297
△ 0.0
2,842,197
2.9
2,456,008
3.2
1,825,541
4
1,063,080
1.7
6,810,122
2.3
4,427,542
3.6
2,825,196
1.5
2,443,326
1.7
1,829,132
5
1,061,345
1.6
6,834,449
2.6
4,448,122
4.0
2,850,634
2.4
2,469,833
2.8
1,833,797
6
1,070,958
1.5
6,820,754
2.6
4,413,657
4.1
2,801,267
1.7
2,415,082
2.1
1,849,677
7
1,069,663
1.8
6,799,707
2.4
4,411,376
3.4
2,807,968
1.7
2,420,989
2.0
1,832,415
8
1,071,058
1.3
6,775,417
1.8
4,394,076
2.9
2,801,325
1.1
2,413,968
1.2
1,827,581
9
p 1,070,466
1.5
年 月 末
第二地銀
信用組合
前年同月比
増 減 率
労働金庫
前年同月比
増 減 率
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
0.6
△
0.1
0.0
△
0.0
0.4
△
0.2
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
598,696
△
5.1
191,966
△
4.9
111,791
4.4
702,555
1.8
2,599,702
2.9
11,266,007
1.4
01. 3
567,976
△
5.1
180,588
△
5.9
117,212
4.8
720,944
2.6
2,499,336
△ 3.8
11,197,994
△ 0.6
02. 3
559,895
△
1.4
153,541
△ 14.9
125,200
6.8
735,373
2.0
2,393,418
△ 4.2
11,226,265
0.2
02.12
571,577
△
0.3
149,872
△ 10.8
134,012
5.5
751,811
0.7
2,359,130
△ 1.8
11,144,185
0.0
03. 3
561,426
0.2
148,362
△
3.3
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465
△ 2.5
11,191,160
△ 0.3
6
554,851
△
1.2
150,940
△
0.6
136,476
2.6
757,417
1.6
2,323,381
△ 2.8
11,067,169
△ 1.2
03. 9
553,353
△
1.8
151,772
1.9
135,179
3.3
752,178
1.8
2,300,064
△ 2.7
11,034,342
△ 0.6
10
545,783
△
1.8
151,407
2.1
134,787
3.1
756,441
1.9
2,301,184
△ 2.7
10,975,032
△ 0.7
11
549,422
△
2.1
151,575
2.2
134,809
3.4
757,171
2.0
2,290,355
△ 2.6
11,042,935
△ 0.6
12
558,884
△
2.2
153,408
2.3
137,941
2.9
766,812
1.9
2,300,362
△ 2.4
11,099,909
△ 0.3
04. 1
549,721
△
1.6
152,296
2.7
137,193
3.1
760,884
2.1
2,294,158
△ 2.5
11,051,734
△ 0.3
2
551,952
△
1.5
152,828
2.9
137,276
3.3
763,654
2.1
2,295,114
△ 2.3
11,097,818
△
3
552,400
△
1.6
152,526
2.8
135,713
3.1
759,764
2.0
2,273,820
△ 2.5
11,175,236
△
4
553,448
0.4
153,126
2.3
137,973
2.9
763,175
1.9
p 2,272,153
△ 2.5
p11,199,629
1.2
5
552,530
0.5
152,967
2.1
137,533
3.0
763,045
1.9
p 2,257,389
△ 2.6
p11,206,728
1.3
6
557,420
0.4
154,072
2.0
140,395
2.8
772,433
1.9
p 2,261,257
△ 2.6
p11,219,869
1.3
7
555,916
0.9
154,249
2.3
140,296
3.0
771,625
2.2
p 2,247,216
△ 2.8
p11,182,756
1.2
8
553,760
0.2
139,624
2.7
p 2,241,378
△ 3.1
p 2,216,109
△ 3.6
9
0.4
0.1
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
135
2.
(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
信用金庫
年 月 末
大手銀行
前年同月比
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
都市銀行
前年同月比
増 減 率
第二地銀
前年同月比
増 減 率
信用組合
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
687,159
△
3.4
2,788,233
△
1.0
2,151,274
1.9
1,340,878
△ 3.0
505,738
△ 4.0
142,433
△ 7.6
01. 3
661,879
△
3.6
2,746,303
△
1.5
2,133,507
△ 0.8
1,357,418
1.2
465,931
△ 7.8
133,612
△ 6.1
02. 3
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△ 4.5
1,359,864
0.1
444,432
△ 4.6
119,082
△ 10.8
02.12
638,093
△
2.6
2,519,538
△
5.5
2,135,044
3.0
1,354,958
△ 0.5
441,929
△ 2.0
93,079
△ 24.8
03. 3
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
1.8
1,352,514
△ 0.5
429,130
△ 3.4
91,512
△ 23.1
6
619,691
△
1.2
2,379,564
△
6.6
2,006,581
△ 7.4
1,330,607
△ 0.1
413,407
△ 5.1
90,545
△ 13.6
03. 9
625,431
△
0.6
2,375,563
△
4.5
1,993,783
△ 5.2
1,345,276
0.6
416,370
△ 4.3
91,511
△ 5.1
10
623,438
△
0.5
2,336,226
△
6.4
1,962,538
△ 7.1
1,335,550
0.4
414,822
△ 4.3
91,409
△ 4.9
11
626,852
△
0.5
2,356,647
△
6.2
1,985,128
△ 6.8
1,340,065
0.2
417,592
△ 4.1
91,770
△ 4.7
12
633,013
△
0.7
2,361,749
△
6.2
1,991,686
△ 6.7
1,352,962
△ 0.1
423,823
△ 4.0
92,384
△ 0.7
04. 1
627,637
△
0.2
2,341,942
△
6.1
1,971,502
△ 6.7
1,346,007
0.3
420,122
△ 3.6
91,927
△ 0.3
2
626,366
△
0.2
2,330,705
△
5.6
1,951,514
△ 6.6
1,347,901
0.4
419,680
△ 3.5
91,897
△ 0.3
3
622,364
△
0.6
2,344,621
△
4.3
1,958,921
△ 5.4
1,352,081
△ 0.0
420,236
△ 2.0
91,234
△ 0.3
4
617,120
△
0.6
2,292,763
△
4.6
1,912,736
△ 5.9
1,337,101
△ 0.0
414,732
0.2
90,688
△ 0.2
5
614,368
△
1.1
2,287,430
△
4.1
1,913,218
△ 5.1
1,325,597
△ 0.6
412,920
△ 0.1
90,416
△ 0.4
6
615,321
△
0.7
2,280,592
△
4.1
1,910,458
△ 4.7
1,324,230
△ 0.4
413,043
△ 0.0
90,456
△ 0.0
7
619,714
△
0.2
2,283,623
△
2.6
1,915,566
△ 2.9
1,331,384
△ 0.2
415,252
0.1
90,910
0.0
8
616,348
△
1.2
2,288,310
△
3.0
1,920,610
△ 3.3
1,320,041
△ 1.4
412,277
△ 0.8
622,105
△
0.5
前年同月比
増 減 率
うち中小
企業向け
前年同月比
増 減 率
9
年 月 末
p
労働金庫
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
うち住宅
金融公庫
合 計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
73,830
4.0
220,863
0.2
1,729,489
8.0
297,448
4.3
745,413
3.3
7,488,623
0.0
01. 3
76,213
3.2
220,078
△
0.3
1,731,885
0.1
293,556
△ 1.3
759,220
1.8
7,393,319
△ 1.2
02. 3
81,054
6.3
217,357
△
1.2
1,693,486
△ 2.2
288,025
△ 1.8
726,516
△ 4.3
7,156,880
△ 3.1
02.12
85,122
7.8
213,487
△
1.7
1,645,069
△ 3.7
284,652
△ 2.4
690,486
△ 7.0
6,991,275
△ 3.7
03. 3
87,266
7.6
215,147
△
1.0
1,617,238
△ 4.5
279,743
△ 2.8
671,999
△ 7.5
6,870,363
△ 4.0
6
87,930
8.3
213,430
△
0.7
1,606,884
△ 4.6
278,349
△ 2.4
659,966
△ 8.1
6,742,058
△ 4.1
03. 9
89,637
8.3
214,601
△
0.4
1,569,865
△ 5.2
277,987
△ 1.6
634,452
△ 9.5
6,728,254
△ 3.0
10
90,443
8.1
214,696
△
0.1
1,560,756
△ 5.3
275,448
△ 1.4
629,594
△ 9.7
6,667,340
△ 3.8
11
91,205
7.7
214,889
0.0
1,559,932
△ 5.2
277,480
△ 1.3
626,931
△ 9.7
6,698,952
△ 3.7
12
91,749
7.7
213,529
0.0
1,556,901
△ 5.3
279,855
△ 1.6
622,745
△ 9.8
6,726,110
△ 3.7
04. 1
91,394
7.6
212,930
0.1
1,546,860
△ 5.1
276,757
△ 1.1
618,112
△ 9.7
6,678,819
△ 3.5
2
91,794
6.8
213,253
△
0.0
1,538,354
△ 5.1
275,699
△ 1.3
612,729
△ 9.7
6,659,950
△ 3.3
3
92,664
6.1
214,871
△
0.1
1,531,569
△ 5.2
274,726
△ 1.7
605,947
△ 9.8
6,669,640
△ 2.9
4
92,589
5.7
214,398
0.1
1,524,592
△ 5.2
272,383
△ 1.8
601,913
△ 9.8
6,583,983
△ 2.8
5
92,590
5.5
214,406
0.2
1,527,198
△ 5.4
270,630
△ 2.4
601,093
△ 9.8
6,564,925
△ 2.9
6
92,663
5.3
214,190
0.3
1,522,584
△ 5.2
272,745
△ 2.0
595,953
△ 9.6
6,553,079
△ 2.8
7
92,746
5.1
214,457
0.2
1,518,198
△ 4.7
277,180
0.0
589,569
△ 9.4
6,566,284
△ 2.0
8
93,061
4.7
1,508,032
△ 4.7
274,463
△ 0.7
583,785
△ 9.0
9
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
136
信金中金月報 2004.11
ホームページのリニューアルのご案内
当研究所ホームページをリニューアルしました。
従来トップページのみに表示されていたメニュ
ーを下層のページにも表示し、使いやすくしたほ
か、「ご意見ご要望窓口」を設置して、ご利用者
からのメールを受け付けることとしました。
内容も、従来からの各種レポート、信金中金月
報等の掲載や当研究所業務の概要、講演内容、活
動記録などの紹介に加え、「信金統計」英語版
Statistics of Shinkin Banks やサイトマップを掲載
しました。
このホームページのリニューアルにより、地域
金融、中小企業金融、協同組織金融等の当研究所
の研究調査活動の成果物が、これまで以上にご利
用しやすくなりました。
URL は
http://www.scbri.jp/
です。
ISSN 1346−9479
2004年( 平 成16年 )
11月1日 発行
2004年11月号 第3巻 第12号( 通 巻380号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒1 0 4−0031 東京都中央区京橋3−8−1
T E L 0 3( 3 5 6 3 )7 5 4 1 F A X 0 3( 3 5 6 3 )7 5 5 1
<本誌の無断転用、転載を禁じます>
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