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『法律系国際公務員養成プログラムと連動させた国際裁判所、国際会議

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『法律系国際公務員養成プログラムと連動させた国際裁判所、国際会議
2011 年度海外実習実施のご報告
2011 年 11 月 4 日
国際協力研究科 博士前期課程2年
上田匡邦 齋藤千尋 青山文音
この度、我々は 2011 年度海外実習「法律系国際公務員養成プログラムと連動させた国際裁判所、
国際会議、国際機関等視察」に参加しました。以下では、実習の概要、実施内容、その成果につ
いて報告いたします。
1. 海外実習の概要
期間:2011 年 9 月 11 日(日)~23 日(金)
渡航先:ハンブルグ(ドイツ)、ハーグ(オランダ)、ジュネーブ(スイス)
訪問機関等:国際海洋法裁判所、国際環境法会議、国際司法裁判所、国際刑事裁判所、在オラ
ンダ日本国大使館、化学兵器禁止機関、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、バーゼル条約
事務局、ワシントン条約事務局、国連難民高等弁務官事務所、国連人権高等弁務官事務所、赤
十字国際委員会。
2. 実習内容とその成果
参加者の関心分野、将来目指す方向性等を踏まえ、順に報告します。
(1)上田匡邦
①ハンブルグ
国際海洋法裁判所(ITLOS)の口頭審理の傍聴と国際環境法会議への参加を目的に、9 月 11 日
から 18 日まで(16 日を除く)の一週間滞在しました。
(i)ITLOS
バングラディシュとミャンマー間のベンガル湾の海洋境界画定に関する事件(第 16 号事件)を
傍聴しました。国際環境に関する紛争の解決手続に関心があり、かねてより一度国際法廷を傍
聴してみたいと思っていました。国際法、特に国際環境法を研究する学生なら誰でも知ってい
る著名な学者が双方の弁護人として弁論しているのには、大変感銘を受けました。バングラデ
ィシュ側は、James Crawford 教授、Alan Boyle 教授、Philippe Sands 教授、ミャンマー側には、
Alain Pellet 教授が担当されています。大陸棚の限界の境界画定にあたり関連事情として何を考
慮すべきか、という論点が議論の中心でした。
また、我々の傍聴初日の昼休憩中、広報官の Julia Ritter さんとお話しする機会もありました。
参加者全員が、1階のラウンジで彼女を囲んで、インターンシップや研修プログラムの内容、
応募者の傾向、応募に際して求められる資質などの点を質問しました。インターンの採用枞は
かなり限られている印象を受けたものの、アジア人の応募者は比較的少なく、地理的配分やそ
の他の要素も考慮されることから、海洋法を研究する大学院生は挑戦してみる価値があると感
じました。加えて、日本財団による研修プログラムは主に途上国の若手の行政官を対象とし、
ごくまれに博士課程で研究を行う学生や研究者の参加の実績もあることが分かりました。
休廷日であった 9 月 14 日、ITLOS の法務官である Ximena Hinrichs さんと昼食の時間に面談を
する機会もありました。この面談は、現在外務省の専門調査員としてハンブルグで勤務され研
究科の先輩でもある藤井さんに彼女を紹介していただき、口頭審理の期間中であったにもかか
わらず、幸運にも面談の実施に至りました。Hinrichs さんや他の法務官の職務内容、法務官の下
で働くインターンの仕事内容、国連海洋法条約附属書 VII による仲裁裁判と ITLOS の管轄権、
大陸棚限界委員会の大陸棚の限界を判定する権限と ITLOS のそれとの関係についての質問を投
げかけました。最後の質問は現在審理中の内容に直接関係するとのことで、回答は得られませ
んでしたが、その他の質問については全て丁寧に説明して下さいました。
左:Ritter さんを囲んで
右:Hinrichs さん(中)
(ii)国際環境法会議(Hamburg International Law Conference 2011)
9 月 15 日、16 日にハンブルグで開催された国際環境法会議には、初日のみ参加しました。同
日は「気候変動」がテーマで、Daniel Bodansky 教授によるプレゼンテーション「気候保全の国
際法文書の多様性(Instrumental Diversity in Climate Protection)」に出席しました。気候保全の
レジームは複数の条約からなる体制で複雑かつ断片的なものだが、失敗を互いに補完しあうと
も考えられ潜在的には強固なものともいえよう、という主張であると理解しました。ドイツの
若手の弁護士や博士課程の学生と知り合う機会にも恵まれました。
左:会場
右:開会の様子
(iii)その他
ITLOS の柳井判事とは、実習初日朝のご挨拶の時のみならず、市庁舎近くのビアホールで外
務省の職員の方々と ITLOS の柳井判事を囲んだ夕食会、さらには国際環境法会議初日のレセプ
ションの際にもお会いすることができました。レセプションは、歴史ある重厚なハンブルグの
市庁舎で開催され、柳井判事を含む ITLOS の判事の方々が多数参加されており、大変貴重な場
でした。
左:柳井判事とともに
右:市庁舎でのレセプションの様子
②ハーグ
(i)国際司法裁判所
実習第一週目には、国際司法裁判所(ICJ)でも事件の審理が行われていました。8 月上旬のプ
レスリリースで口頭審理の予定を知り、早速傍聴の申請を行い、傍聴が許可されました。傍聴
したのは、ドイツ対イタリアの主権免除事件です。イタリアの裁判所ではドイツに対するイタ
リア国民による第二次世界大戦の戦後補償に関する訴訟が多数提起されていますが、イタリア
がこれを容認するのはドイツの国際法上の主権免除に反するとして、ドイツが提訴したもので
す。この主題からして、この ICJ の判決は、後に日本の戦後補償の問題にも何らかの影響を与
えるのではないかと感じました。
左:国際司法裁判所の正面玄関
中央:建物入口
右:大使館前にて
(ii)在オランダ日本国大使館
国際司法裁判所から徒歩で 5 分くらいの距離に位置しています。当日は、柴田先生に同行し書
記官にお会いし、国際協力研究科のプログラムの紹介、実施状況、邦人職員の採用動向等につ
いて意見を交換させていただきました。
(iii)国際刑事裁判所
ハーグの中央駅から 1 つ目の駅の近くに所在します。傍聴者向けの玄関脇には、収監される被
告人のゲートのようなものもありました。傍聴に当たっては、全ての荷物を 1 階のロッカーに
収納し、荷物の持ち込みは一切認められていません。実際傍聴室に入っても、一部の審理の内
容、例えば証人の発言を聞いたりその様子をみることは認められておらず、残念ながら目の前
の審理の内容を十分に理解することはできませんでした。刑事裁判は、他の国際裁判所での審
理の環境とは全く異なる点を改めて痛感しました。
左:傍聴者用玄関
右:建物正面
(iv)弁護士事務所での会合同席
柴田先生の会合に同行させていただきました。
弁護士の Brans さん、Alejandro さん、柴田先生
③ジュネーブ
(i)バーゼル条約事務局
事務局長にご挨拶に伺いました。その後、柴田先生が、10 月下旬に開催された締約国会議の中
心的な複数の議題である、禁止修正条項や事務局の統合などにつき質問されました。
左:複数の環境条約事務局が入居する建物
右:質問の様子
(ii)ワシントン条約事務局
バーゼル条約事務局職員との会合を中座して、法務・貿易政策のチーフである Marceil Yeater さ
んとの面談に向かいました。私の関心分野である不遵守手続について質問することが訪問の目
的でした。非常に丁寧に回答して下さり、当初 30 分の予定でしたが、最終的には彼女のオフィ
スで約 1 時間半も会話しました。私は、どのようにして不遵守の可能性のある事案を特定して
いるのか、不遵守手続着手後に関係当事国が委員会の会合に参加する費用はどの財源によるか、
委員会は支援的な措置の決定を行った後具体的に何を行っているのか、などの質問をしました。
左:Yeater さんと面談中
右:CITES 事務局エレベーター前
(iii)在ジュネーブ国際機関日本政府代表部
我々の先輩である本田さんが、環境条約を担当する専門調査員として当代表部に勤務されてい
ます。書記官のアレンジにより、皆で小田部特命全権大使にご挨拶に伺いました。
左:代表部前
④成果
私は、現在、国際協力研究科博士前期課程 2 年次に在籍中であり、法学修士の取得及び博士後
期課程への進学を目指しています。その後、専門分野に関わる国際的なキャリアをスタートさ
せ、国際法、特に国際環境法の研究の基盤となる経験を積みたいと考えています。このような
目標を具現するには、専門分野に関連する国際的なキャリアとして具体的にどのようなポジシ
ョンがあるのか、さらにそれらに求められる資質や経験は何か、といった点を予め知っておく
必要があります。この点、この海外実習では、国際裁判所での傍聴に加え、大使館や国際機関
に勤務される多くの職員とお会いし、現在の職務内容やご経歴、学生時代の研究分野などにつ
いて伺うことができました。海外実習を通じて、今の自分に不足する知識や経験がより明確に
なり、さらにその実現までの道のりも再認識しました。
他方、ITLOS と CITES 事務局の法務官との面談の実施は、事前に準備した紛争解決や不遵守
手続に関する質問に対する回答を得て、自分の研究に大変参考になりました。
ところで、今回の海外研修は、自ら訪問先の選定を行い担当者へ連絡を取り、実施計画を立
てたため、我々の関心分野や目指す方向性が反映された実習内容となりました。アポイントメ
ントを一つ一つ確定し、実施計画を完成させるのは容易ではなく、準備にかなりの時間を費や
しました。特に、限られた面談の時間を無駄にしないよう質問内容を慎重に検討しました。こ
れは、当日の面談時の自信につながりました。
もちろん、国際機関等の職員との面談の実施のみでその先の道がすぐに開かれるわけではあ
りません。けれども、関係機関の職員の方々に一度お会いし、求められる資質や職務の内容の
具体的なイメージが持てるようになったこと、またこのように面識を得たことが、今回の実習
の重要な成果であり、今後への第一歩であると認識しています。
(2)齋藤千尋
(i)国際刑事裁判所(ICC)
国際刑事裁判所(ICC)を訪問しました。ここでは予約せずに傍聴ができるので、まずは尾崎判
事が裁判官を務める Bemba 事件の傍聴へ。この日の Bemba 事件の審議は、被告側の証人尋問だ
ったので、身元が特定されそうな場合は、Closed になり、音声が一切聞こえなくなりました。
あとから分かったことなのですが、この証人は被告側の「内部者」であるので、その人、そし
てその家族の安全のために、身元が一切わからないような、保護を与えているとのことでした。
Witness Protection の制度を、間近に見られる、いい機会だったと思います。しかし、Open にな
りそうもないので休憩後からは、別に行われていた Katanga 事件をのぞいて見ることにしまし
た。Katanga 事件では、検察が証人尋問をしているところでした。
午後には職員の山口やよいさんとお会いしました。山口さんには、ICC でのお仕事やこれま
でのキャリアについてのお話し、そしてインターンシップについても伺いました。私たちの目
指すキャリアパスを進んできた先輩からお話を伺うことができただけでなく、仕事内容も具体
的にお話ししていただけたので、国際法の知識を活かして国際機関で働くことを希望する私た
ちにとって、とても貴重な機会となりました。
翌日は、尾崎判事、山口さん、オランダ大使館の森田明日香さん、ICTY の河島さえ子さんに
お会いして様々なお話しを聞くことができ、とても刺激的な時間を過ごしました。
右:World Peace Pathway , ICJ 前
(ii)化学兵器禁止機関(OPCW)
私たちの先輩である博士後期課程山田さんからの紹介で、OPCW のリーガルアドバイサーであ
る神吉加奈枝さんにインタビューをしました。神吉さんには OPCW でのお仕事内容、そして今
左:ICC 内部
までのキャリアパスを伺いました。専門調査員、ICTY でのインターンなど私たちのキャリアパ
スにも参考にできるお話しをして下さり、とても大きな収穫を得ることができました。また、
国際法を使った国際公務員になることについてのアドバイスとして、なるべく自分ができるこ
とを広く持つこと、specialize しないように、と言ってくださいました。実際に機関でも、幅広
いことができる人材が求められているということで、このアドバイスを肝に銘じてこれからも
励みたいと思います。
左:OPCW 建物正面
右:ICRC 本部
(iii)赤十字国際委員会(ICRC)
アポの約束を取るのにとても苦労した ICRC では、Internment 担当のリーガルアドバイサーであ
る Ms. Jelena Pedic にお会いしました。彼女には、ICRC のインターンのお話しを伺いました。
HP には載ってない情報を教えていただいたり、インターン担当の方の連絡先を教えていただい
たりなどとてもよくしていただきました。また、ICRC のリーガルアドバイサーの分類やお仕事
の内容、さらには彼女が書いた論文をもとに共通3条の適用範囲に関する話など、とても内容
の濃い時間を過ごすことができました。自分の研究についても興味を持って下さり、質問をし
てもいいとまで言ってくださいました。また、私たちがインターンに強い関心があるのが伝わ
り、実際に今インターンとして働いている人たちとお話しする機会も設けていただき、インタ
ーンからより具体的なお話しも聞けました(インタビューで聴かれた質問や、delegation を目指
しているかなど)。
さらに、慣習法をやっている人の名前がほしいという要望に、とてもよく対応してくださり、
なんと翌日にアポをとっていただきました。紹介いただいたのは、同じくリーガルアドバイサ
ーの Tristan Ferraro 氏 。慣習法についてお話し、意見を伺いました。いつか神戸大で講義をし
たい!修士論文読んでほしかったら送って!と、とても急なアポイントメントだったにも関わ
らす気さくに接してくださり、とても有意義な時間となりました。
この海外実習の大きな目的の 1 つであった「人脈づくり」も達成できたと思います。
左:ICRC 本部受付
左:国連欧州本部内
Jelena Pajic 氏
総会議場の壇上
右:Tristan Ferraro 氏
右:国連欧州本部からレマン湖
平野氏とともに
(iv)成果
私は、国際公務員の道を目指しているため、現場の雰囲気を味わうこと、そしてこれからに
つなげられる人脈づくりを主な目的として海外実習に参加しました。事前準備を含め、海外実
習では、様々な機会が与えられ、苦労はしたもののアポをたくさんとることができたので、海
外実習の内容はとても濃く、自分にとって多くの収穫があるものとなりました。中でも、自分
にはこれからどのようなキャリアパスがあるのかが、いろいろな方からお話しを伺うことによ
ってある程度イメージが湧いたのは自分にとってとても大切なことでした。さらに、国際公務
員になるのは狭き門、困難な道であるのを承知の上で、「自分もこの場で活躍したい!」と強
く感じることができました。さらには、興味のある機関でのインターンシップの話を具体的に
聞けたこと、また、次の機会にぜひ応募するように言っていただけたことによって、モチベー
ションも高まりました。自分には、国際法の知識の他にも、英語での表現力、フランス語の能
力など、足りないものがたくさんありますが、それを少しずつでも補い、これからも自分の目
標に向かって努力したいと考えています。
今回の海外実習では、多忙な中貴重な時間をとっていただいたからこそ、ここまで充実した
ものとなりました。お会いしましたすべての方々に、心から御礼申し上げます。本当にありが
とうございました。
(3)青山文音
(i)国際裁判(ITLOS、ICJ、ICC)の傍聴
国家と国家が法廷で争う姿はそうなかなか見ることはできません。国際社会の主要な裁判所
である国際司法裁判所、海洋法裁判所、刑事裁判所で実際に事件を傍聴することができたこと
は、国際法を学ぶ私たちにとって、大変貴重で幸運な経験となりました。日本の中で考えてい
るよりもずっと、世界中の国々がこういった国際裁判の動向を注視していること、そして、日
本がどれだけ国際社会に貢献しているのか、あるいは国際社会で存在感を発揮しようとしてき
たのかもよくよくわかりました。これら裁判を見たことで(むしろ裁判所に足を踏み入れるこ
とができたこと自体で)
、さらに国際法の面白さを実感し、国際法の研究に取り組む意欲につな
がりました。
(ii)邦人職員からのアドバイス
国際刑事裁判所(ICC)の尾崎久仁子判事、同法務官の山口やよい氏、旧ユーゴスラヴィア国際
刑事裁判所(ICTY)法務官の河島さえ子氏、在蘭大使館三等書記官の森田明日香氏を囲んでお話
をしました。日本人として国際機関(特に裁判所)でご活躍される立場から見る国際公務員に
ついて公私にわたる様々なお話をいただき、とてもよい刺激になりました。また、実際に働く
方からの有益な情報も多くいただき、大変学ぶことが多かったです。
左:国際司法裁判所前にて。傍聴当日。
右:国際海洋法裁判所
法廷内にて。
(iii)国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) ジュネーブ本部
財務局会計課会計補佐(Assistant Treasurer)をされている上月光氏にお話を伺いました。上
月氏は UNHCR 入所以前は民間企業で勤務されていた経験があり、また JPO 制度を使って国
際公務員の道に入ってこられたので、そういった経験を経た視点から私たちに具体的なアドバ
イスを下さいました。
国際機関はいずれも、インターンはもとより職務経験をとても重要視しているうえ、上月氏
はご自身ふくめ実際に何らかの職務経験を積んだのちに活躍している世界中から来た同僚の
方々のことをよく知っておられるので、そういう国際公務員の実際の採用状況を背景に繰り返
し強調しておられたのは、「長期的視野でキャリアを構築する」姿勢で腰を据えて取り組むこと
の重要性でした。
また日本の JPO 制度を活用することの有用性についても触れ、日本のような影響力のある国
が後押ししている(というふうに内部で見られる)制度を十分に活用することの重要性を知る
ことが出来ました。そして私たちが単に印象として持っている「○○のキャリアを持っていな
いと国際機関で働けない」ということはなく、特にフィールドでの活動が活動全体の 8 割ほど
にもなる UNHCR のような援助機関ではむしろどんな仕事でも出来なくてはないため、そうい
った意味で自分のキャリア構築を広く捉え、さらに JPO なり YPP(旧国連競争試験)に「年中行
事のように」トライし続けていくこと・気概を持ち続けることが大事であることを教えていた
だきました。これは私たちにとってとても印象的であり、有意義な示唆をたくさんいただけて
大きな収穫となりました。
左:UNHCR ジュネーヴ本部内部
右:国連欧州本部前椅子のモニュメン
トにて
左:国連欧州本部
右:国連欧州本部
正面ゲート前
(iv)ジュネーブ国連事務局、人権高等弁務官事務所(OHCHR)
財務官(Finance Officer)の平野哲也氏のご紹介で、Roberto Ricci 氏(Chief of Peace Missions
Support and Rapid Response Section)にお会いして、Human Rights Officer として過酷な国
連ミッションで長年活躍し続ける中で経験されている、実際的なお話をたっぷりと聞かせてい
ただきました。これは特に人権・人道分野で活動することを志すに当たって知っておくべき現
実という視点でお話をいただいたので、国際法の理論上の話にとどまらず、紛争や災害で最も
不安定な状況のフィールドにおける、国際(人権)法の意義と限界(法はどれだけ重要で、し
かしどれだけ無力であるか)に焦点を当てたお話を聞きました。
Ricci 氏は今までのだれもが知っている最も過酷なフィールドを経験してきた方で、たとえば
それにはアフガン、東ティモール、クロアチア、ルワンダ、コンゴ民主共和国等でのミッショ
ンが含まれています。したがって日本や先進諸国の情勢からは想像もできない現実とそこで生
き抜く人々の姿と、OHCHR を含め国連のミッションに携わる職員たちの困難といたたまれな
さ・やりきれなさ、そしてやりがいというものを伝えていただきました。なぜ国際機関や国際
法は必要なのか、そして、なぜ自分は国際公務員を目指すかについて、もう一度深く自問する
機会になりました。
平野氏からは人権・人道に関する国際機関一般の視点からアドバイスをいただき、国際公務
員になることはもちろんですが、なってからのことについても多くの示唆をいただきました。
またたくさんお時間を割いていただいて、公私にわたってたくさんお話をしてくださいました。
自分たちにとっての課題が明らかになりました。
今回参加して本当によかったと思います。お世話になった方々に、心から感謝申し上げます。
左:Ricchi 氏とともにオフィスにて。
右:上月氏とともに UNHCR 食堂にて。
(v)成果
この実習を通じて「いつか必ず国際公務員として国際社会の問題に尽力する」という決意が
できたことが自分にとって最も大きな成果となったように思います。そのために必要な能力、
現在自分に足りないものや身につけるべきものがはっきりと認識できたうえ、逆に国際機関の
側からみた必要とする人物像の実態のようなものが、以前よりももっと理解できました。それ
はつまり、自分のやるべきことがみえたとも言えると思います。また、日本人の国際公務員へ
の道は確かに狭き門ですが、しかしむやみに恐れるには足りず、印象論として考えているより
もずっとチャンスはあって、自分の覚悟と努力次第であることが(今まで先輩方を見ていてわ
かっているつもりでしたが、それ以上にも)よくよくわかりました。
職員の方々はみなさん情熱を持って自分の仕事に取り組んでおられるので、お話も熱心にし
てくださいました。しかし逆に、私たちは自分たちが依頼して時間を割いていただいたという
遠慮から熱心に聞くばかりではなく、もっと自分の意見をぶつけてみる姿勢で会合に臨むべき
であったとも一方では思いました。そういう力や姿勢を常日頃から鍛えることが国際公務員を
目指す道で生き残っていくために必要なのだと感じます。
文責:上田匡邦(1.及び2.(1))、齋藤千尋(2.(2))、青山文音(2.(3))
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