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学習メモ

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学習メモ
第 52 〜 56 回
古文編 詩歌
(全五回)
一 [万葉集]
折々のうた
全五回 の
学習のポイント1
情景を想像する。
〈一回〉万葉集 〈二回〉古今和歌集 〈三回〉新古今和歌集
〈四回〉梁塵秘抄/閑吟集 〈五回〉近世俳句
都から近い湖=近江
大岡 信
講師
都から遠い湖=浜名湖 遠江 ※近江は滋賀県、遠江は静岡県の古名でもある。
民の歌)を含む、さまざまな階層の歌を収録
・万葉仮名による表記
・東歌(東国地方の歌)、防人歌(九州で警護に当たった庶
・第四期 代表歌人 大伴家持(編纂に関与)
・第三期 代表歌人 山上憶良 山部赤人
・第二期 代表歌人 柿本人麻呂
・第一期 代表歌人 天智天皇 天武天皇
・歌風 ますらをぶり(男性的な力強さ 素朴)
・二十巻 四千五百首 相聞・挽歌・雑
・現存最古の歌集
万葉集とはどのような歌集か
学習のポイント2
畠山 俊
万葉集の素朴な歌を読んで、作者の心情や歌に詠まれた
■学習のねらい■
歌に詠まれた懐旧の情を読み味わおう
作者柿本人麻呂が近江大津京(現在の滋賀県大津市)の都跡
を訪れて、栄えていた昔をしのんで詠んだ歌。
作者の思い
淡海=湖のことだが、琵琶湖を指す
情もしのに……「心が悲しみでしっとりと濡れて」
− 139 −
高校講座・学習メモ
ラジオ学習メモ
古文編
国語総合
第 52 〜 56 回
学習のポイント3
春の美しさの味わいを読み取ろう
こころ
いにしへ
かきのもとのひ と
ま
ろ
【巻三】
柿本人麻呂
桃の花が咲き乱れ、樹下の小道が赤く染まっている
そこにたたずむ乙女
な
にほふ 「(見た目の)美しさ」
中国風の樹下の美人を連想させる
うみ
■万葉集■
あ ふ み
淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば情もしのに 古 思ほゆ
した で
を と め
おほ
とものや か も ち
大伴家持 現代語訳 目の前に広がる琵琶湖の夕波に遊ぶ千鳥よ。お前が鳴くと、心が悲
しみでしっとりと濡れて、昔栄えたころのここの景色が幻のように目
の前に浮かぶことだよ。
そのくれなゐ
春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女
【巻十九】
現代語訳 春の庭に赤く鮮やかに咲く桃の花。その赤い色が照り映えた下の道
にたたずんで立つおとめよ。
全五回
の 二 [古今和歌集]
■学習のねらい■
古今和歌集の繊細優美な歌を読んで、それぞれの歌の季
節の趣きを味わう。
学習のポイント1
うたに表現された思い出を感じよう
昔の恋人が着物に柑橘系のにおいをたきしめていた。
あるとき、橘の木の側を通りかかり似たにおいをかいだ。
昔の恋人のことを思い出した。
花橘の香=昔の恋人という連想の型が出来上がる。
月の異名
むつき/きさらぎ/やよい/うづき/さつき/みなづき/
十月/十一月/十二月…冬
四月/五月/六月………夏
ふみつき(ふづき)/はづき/ながつき/かん(み)なづ
き/しもつき/しわす
昔の暦 月を基準にした陰暦
一月/二月/三月………春
七月/八月/九月………秋
係り結び
係助詞=ぞ・なむ・や・か
結び(文末)=連体形
係助詞=こそ
結び(文末)=已然形
− 140 −
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古文編
国語総合
学習のポイント2
最初の勅撰集
古今和歌集とはどのような歌集か
・
歌風 たをやめぶり(繊細優美)
二十巻 千百首 春・夏・秋・冬・恋などの部立て
・
撰者 紀友則 紀貫之 凡河内躬恒 壬生忠岑
・
・
第一期 詠み人知らずの時代
・
第二期 六歌仙の時代
・
第三期 撰者の時代
・
六歌仙 在原業平 僧正昭 小野小町 ・
大友黒主 文屋康秀 喜撰法師
仮名序(仮名書き) 真名序(漢文)
・
学習のポイント3
歌に季節の移り変わりが
どのように詠まれているか
秋来ぬ
……「ぬ」完了の助動詞 → 秋がやって来た
見えねども
……「ね」打ち消しの助動詞 → 見えないけれども
おどろかれぬる
「ぬる」完了の助動詞
……「れ」自発の助動詞 → 自然と気づかされた
たちばな
か
よみ人しらず ※目ではまだ見えない季節の移り変わりを風の音によってと
らえた。
はな
■古今和歌集■
さ つ き
五月待つ花 橘 の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
【巻三 夏歌 】
ふじ
わらのと し ゆ き
藤原敏行
現代語訳 夏を待って咲く橘の花の香りをかぐと昔の恋人の袖の香りがするこ
とだよ。
き
秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風のおとにぞおどろかれぬる
【巻四 秋歌上】
現代語訳 秋がやって来たと目にははっきりとはとらえられないけれども、風
の音に秋の訪れを気づかされたことよ。
− 141 −
高校講座・学習メモ
ラジオ学習メモ
第 52 〜 56 回
古文編
国語総合
第 52 〜 56 回
全五回
の 三 [新古今和歌集]
■学習のねらい■
新古今和歌集の余情のある歌を読んで、そこに描かれた
情景を味わう。
学習のポイント1
春の夜の情趣を読み味わおう
袖の上 梅の花の香り(嗅覚)
春の夜の美の競演
月の光(視覚)
和歌=五七五(上の句)
七七(下の句)
影 =光自体を「影」という → 月の影=「月の光」
学習のポイント2
新古今和歌集とはどのような歌集か
・二十巻 二千首 春・夏・秋・冬・恋などの部立て
・撰者
源通具 藤原有家 藤原定家 藤原家隆 藤原雅経 寂蓮
・歌風 幽玄(余情のある静かな美しさ)
・仮名序 真名序
・万葉集 古今集 新古今集
三大集
・古今集~新古今集 八つの勅撰集 八代集
学習のポイント3
歌と歌との結び付きを調べてみよう
有明の月が深夜に昇る 光の筋の波による揺らめきが湖岸が凍るにつれて沖合
いに遠ざかっていく
本歌取りの技法
〔本歌〕
小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波
波音が遠ざかっていくことで湖岸が凍っていくことが
わかる
本歌は、聴覚によって湖岸が凍ることを示したが、それを視
藤原定家
さだいへ
覚によってとらえ直し、広がりのある世界を作り上げた。
■新古今和歌集■
が
ありあけ
いへたか
藤原家隆 現代語訳 梅の花の香りを移している私の袖の上に軒から漏れてくる月の光が
差し込んできて美しさを争っているようだよ。
【巻一 春歌上】
梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ
し
【巻六 冬歌】
志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りていづる有明の月
現代語訳 志賀の浦よ。遠ざかっていく波の間から、凍ったように冷たい光を
投げかけて出てくる有明の月だよ。
− 142 −
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古文編
国語総合
第 52 〜 56 回
全五回 の
四 [梁塵秘抄/閑吟集]
■学習のねらい■
歌謡を読んで、描かれた人物の心情を思いやる。
学習のポイント1
平安時代の歌謡を読んでみよう
かたつむりをみつけた子どもたちが、動け、動けとけしかけ
ている様子を歌謡に仕立てている。
子どもの童謡として歌われたもので、子どもの無邪気な心情
が詠まれている。
「す」「さす」
使役の助動詞
「て」推量などの助動詞の上にくるときは強意の助動詞
「む」意志の助動詞 「~よう」
学習のポイント2
歌謡とはどのようなものか
学習のポイント3
室町時代の恋が
詠まれた歌を味わおう
好きでも表に見せず、平然としているのが懐の深い男だと女
から見た男の理想像を歌にしている。
わ
この歌に続いて、その男が平然としていたら恋の病で痩せに
痩せてしまったとある。
歌と歌とが連歌的につながっている。
ひ せう
庶民の恋をユーモラスに描いている。
りやうぢ ん
■梁塵秘抄■
かたつぶり
く
舞へ舞へ蝸牛 舞はぬものならば
馬の子や牛の子に蹴ゑさせてむ 踏み破らせてむ
まことに美しく舞うたらば 華の園まで遊ばせむ
現代語訳 踊れ、踊れ、かたつむりよ。踊らないならば、馬の子や牛の子に蹴
らせてしまうぞ、踏み割らせてしまうぞ。本当にかわいらしく踊った
ならば、花の咲く広場で遊ばせよう。
かんぎんしふ
■閑吟集■
思へど思はぬ振りをして
歌謡とは主に庶民が口ずさんで楽しんだ詩歌。
「梁塵秘抄」=平安時代の歌謡集、後白河法皇が編纂
しやつとしておりやるこそ底は深けれ
現代語訳 好きなくせに好きな様子も見せないで、しゃきっとしていらっしゃ
るのが心の深さよ。
( 七 五 七 五 七 五 七 五 ) を 集 め、
庶 民 に 流 行 し た「 今 様 」
徐々に貴族層にも広がった。
「閑吟集」=室町時代の歌謡集、
「小歌」
(七五七五)が中心
− 143 −
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古文編
国語総合
第 52 〜 56 回
全五回
の 五 [近世俳句]
■学習のねらい■
俳句を読んで、そこに込められた作者の思いや感覚を読
み取る。
学習のポイント1
古人への思いを読み味わおう
松尾芭蕉が奈良の唐招提寺を訪れて、開祖鑑真和上の坐像を
拝した。仏教を広めるために来日を志し、失明するほどの苦難
の旅であったことに思いを馳せる。
涙を流しているかのように見える目を柔らかい若葉で拭って
差し上げたい。作者の古人への思いが詠まれている。
季語=若葉 夏
学習のポイント2
俳句はどのように成立したか
八代集の後、和歌は衰退へ向かう。
五七五と七七とを繰り返しながら、続ける連歌が文芸として
現れる。連歌が衰退し、その発句(初めの五七五)を独立させ
る俳諧が生まれる。
俳諧=俳句
近世俳句の中心 松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶
学習のポイント3
自然の生命力を歌は
どのようにとらえているか
枯 れ て い る よ う な 冬 木 立 に 斧 を 入 れ た ら、 木 の 香 が 一 面 に
まつ を
ば せう
松尾芭蕉
漂った。思いもかけない生命力への驚きが句になっている。
季語=冬木立 冬
体言止め=余情
しづく
■近世俳句■
おん め
か
ふゆ こ だち
さ
ぶ そん
与謝蕪村 よ
現代語訳 柔らかな若葉で鑑真和上のお目を拭って差し上げたいものだよ。
若葉して御目の雫拭はばや
おの
斧入れて香に驚くや冬木立
現 代 語 訳 斧 を 木 に 打 ち 込 ん だ 瞬 間 驚 い た こ と よ。 冬 木 立 一 面 に 木 の 香 り が
漂ってきた。
− 144 −
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