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「機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパー プロジェクト」 事後

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「機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパー プロジェクト」 事後
「機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパー
プロジェクト」
事後評価報告書
平成18年9月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会
平成18年9月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 牧野 力 殿
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会 委員長 曽我 直弘
NEDO技術委員・技術委員会等規程第31条の規定に基づき、別添のとおり
評価結果について報告します。
目
次
はじめに
分科会委員名簿
審議経過
評価概要
研究評価委員会におけるコメント
研究評価委員会委員名簿
第1章
第2章
評 価
1.プロジェクト全体に関する評価結果
1.1 総論
1.2 各論
2.個別テーマに関する評価結果
2.1 カプセル成形技術
2.2 ナノ機能粒子表面物性制御技術
2.3 ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示
材料の開発と機能評価
3.評点結果
評価対象プロジェクト
1.事業原簿
2.分科会における説明資料
1
2
3
4
7
8
1-1
2-1
2-2
参考資料1 評価の実施方法
参考資料 1-1
参考資料2 評価に係る実施者意見 参考資料2-1
はじめに
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構においては、被評価プロジェク
ト毎に当該技術の外部の専門家、有識者等によって構成される研究評価分科会を研究
評価委員会によって設置し、同分科会にて被評価対象プロジェクトの研究評価を行い、
評価報告書案を策定の上、研究評価委員会において確定している。
本書は、(ナノテクノロジープログラム/ナノ加工・計測技術)「機能性カプセル活
用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト」の事後評価報告書であり、第9回
研究評価委員会において設置された(ナノテクノロジープログラム/ナノ加工・計測
技術)
「機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト」
(事後評
価)研究評価分科会において評価報告書案を策定し、第10回研究評価委員会(平成
18年9月26日)に諮り、確定されたものである。
平成18年9月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会
1
「機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト」
事後評価分科会委員名簿
(平成18年4月現在)
氏名
所属
分科会
会長
幡手
泰雄
鹿児島大学
分科会
会長代理
池澤
直樹
株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部
チーフ・インダストリー・スペシャリスト
面谷
信
東海大学
川居
秀幸
セイコーエプソン株式会社 先端商品開発センター
FM開発グループ 主任研究員
小林
芳男
茨城大学
藤掛
英夫
日本放送協会
主任研究員
分科会
委員
工学部
工学部
工学部
応用化学工学科
光・画像工学科
教授
教授
生体分子機能工学科
放送技術研究所
教授
材料基盤技術
敬称略、五十音順
2
審議経過
z
第1回 分科会(平成18年4月11日)
公開セッション
1.開会、分科会の設置等
2.分科会の公開について
3.評価の実施方法と評価報告書の構成について
4.プロジェクトの説明と質疑応答
(1)事業の位置付け・必要性及び研究開発マネジ
メントについて
(2)研究開発成果について
非公開セッション
(3)実用化、事業化の見通しについて
5.全体に対する質疑応答、今後の予定
6.閉会
z
第10回
研究評価委員会(平成18年9月26日)
3
評価概要
1.総
論
1)総合評価
電子ペーパー用表示体材料に関しては米国が先行する状況であり将来を見越した
基盤技術確立の必要性は高く、またナノテク産業を支える重要な基盤技術であるカプ
セル化技術を一般的なユーザー等がイメージし易いリライタブルぺーパーに応用し
たことは他のナノテク応用製品の実用化にも効果的であり、本プロジェクトは時機に
適して意義が深いものである。
成果は、3 つの研究課題に限定してプロジェクトを進めることにより、新方式のカ
ラー画像表示デバイスの作製を可能とし、先行技術を凌駕する性能を実現するプロト
タイプが作製できた点を評価したい。
基盤技術の中で、ナノ機能を有する均一サイズのカプセル粒子調製技術に力点を置
き、良好な成果を上げた点も評価できる。
また、電子ペーパー関連材料開発に向けて、多くの研究グループと技術分野が結集
されて、幅広く課題の抽出が行われたことは、実用化・産業化に向けて有用な成果で
あったと考える。
ただし、個々の実施者ごとには目標を十分達成しているが、それらの成果が分散し
ており、表示体材料として使えるレベルに纏め上げるための実施者間の連携がやや弱
かった。数多くの基盤技術の開発を行いつつ、同時に、用途を絞ることは、一つのプ
ロジェクトで行う上で多々困難があったと推察されるが、各企業間でのさらなる情報
交換がなされていればもっと成果が期待できたのではないかと思われる。
実用化にとって不可欠な耐候性については今後改善すべき課題として残された。実
用化に向けては外部状況を的確に把握しながら、本方式の特徴を生かした技術開発が
必要である。
また、プロジェクトがやり放しの立ち消えにならないよう、開発技術を今後生かす
ための体制作りまでこのようなプロジェクトの中で明確にし、軌道に乗せた上でプロ
ジェクトを終了とすることが望まれる。
2)今後に対する提言
最終商品として完成させるため、各実施者の事業シナリオにある、協業を円滑に進
めるための支援活動が必要と考える。多岐にわたる開発成果が得られているので、例
えば、NEDOによるその広報活動が挙げられる。
今後の課題として、①実際のディスプレイ製品に繋げるための検討と②画像表示デ
バイス以外での実用化の検討が挙げられる。
①に対しては、実施者間での情報交換を一層活発にすることや、パネル・メーカー
やユーザーの意見を積極的に取り込む活動が必要であり、その際には先行技術の特許
群に対するクリアランス策を明確化しておく必要がある。
②に対しては、将来のあるべきライフスタイルを見据えた新規産業創出と
4
いう観点から広い視野で検討して頂きたい。
また、電子ペーパー技術の応用として、電子書籍、電子書類等の具体的な用途を特
定し、最終ゴールをより明確とした集中的な研究開発を進めるプロジェクトの企画も
有意義であると考える。
尚、電子ペーパーの実現を目指す上で、マイクロカプセルのみを核とすることは、
過剰な限定要素とも考えられ、全く異なる原理に基づく有望な新規表示材料の発案・
開発をサポートする活動も必要になると思われる。
2.各 論
1)事業の位置付け・必要性について
リライタブルペーパーは今後のユビキタス社会実現等に対する重要技術であり、カ
プセル成形技術としてそのプロトタイプを完成させるという大きな目標を掲げ、他の
技術分野へ適用可能な基盤技術の確立までを目的とする本事業の意義は大きい。
本事業の目標達成には数多くの代替案があると共に、新たな省電力型表示、記録メ
ディアの基盤技術を先駆けて開拓するという観点から、民間企業が、その全ての開発
を行うことや、複数の企業を取り纏めるのは現実的に困難であり、NEDOが関与す
る必要性は高い。
リライタブルペーパーは今後のユビキタス社会実現等に対する重要技術であり、そ
の市場はデバイスのみならずコンテンツ産業や IT 産業などをも巻き込む非常に有望
なものである。海外の活発な動向と比較して国内の動きは鈍い印象があり、本事業の
目的の妥当性も高い。
尚、フォーカス21に選定され「出口」を強く意識して遂行された影響として、マイ
クロカプセルの汎用技術の追求等、基盤技術としての成果が薄まった可能性がある。
汎用技術としてのマイクロカプセル技術をもう少し重視すべきだった。5年から4年
への加速措置についての妥当性、必然性の説明も必要であった。
また、ヒューマンインターフェースの視点からの材料、デバイスに係る研究開発も
必要であった。
2)研究開発マネジメントについて
コントラストの向上およびフルカラー化は事業化の成否を決める大きな技術課題
であり、その課題を克服するための微粒子の表面物性制御技術や単分散カプセル形成
技術について具体的かつ的確な目標が設定されている。海外との競合も踏まえたもの
であり、設定目標は妥当である。
カラーリライタブルペーパーの実現に向けて3つの研究課題に注力してその可能
性を見極めると共に、多方面の材料技術からのアプローチによって多くの知的インフ
ラが構築、蓄積できたことは評価出来る。
実用化に向けて、実績を持つ企業を組み入れ、各企業および大学研究室の得意領
域を活かせる体制がとられ、多岐にわたる開発課題の進捗がよくマネージされている。
標準粒子を作成し、各分担小プロジェクト間での技術交流を効率的に進めたことを含
5
め、これらは評価される。
しかし、個々の成果が分散している印象があり、カプセル、単分散微粒子、ディ
スプレイの研究が密接に連携できていれば、さらに優れた解が見出せた可能性もある。
また、本プロジェクトの最終目標を踏まえると、デバイスを本業とする企業の取
り込みを、より強化すべきでもあった。
尚、単純マトリクス駆動に適した閾値特性の付与の妥当性には疑問が残る。アク
ティブマトリクス駆動への適合を狙うべきだったかもしれない。
3)研究開発成果について
材料からスタートしたにもかかわらず、目標としたカラー表示可能なデバイスの
作製という目標が達成されており、実用化に向けた技術成果として説得力がある。
35ミクロン、730dpi という高い解像度を確認し、白・黒・カラーの3状態を 1
カプセルごとに実現する方式の実現可能性を示したことを高く評価する。
個々の基盤技術の確立という点でも目標を十分に達成し、特許、論文を通じた情
報発信活動も十分な水準にあると考える。
尚、ナノ機能を備えたカプセル化基盤技術の体系化に対しては、「フォーカス 21」
移行に伴い、必ずしも大きな成果が得られたとは言えない点は今後に課題を残した。
また、基礎・基盤研究の取り組みとしては、斬新なナノテクノロジーを活用した
提案が見受けられなかったのは残念である。
実用製品化に必要な繰り返し安定性、長期安定性や温度等の環境安定性について
の言及がないことは不十分と考えられる。
更に、Impact Factor の高い雑誌への投稿がもっと多ければ、一層の波及効果が見
込まれたと考える。
4)実用化、事業化の見通しについて
まだ解決すべき技術課題も残っているが、事業化に向けた企業側の取り組みが期待
できる環境にある。本プロジェクトの範囲においては、今後の課題とその開発方向は
具体的であると考える。
本プロジェクトの成果は関連分野への技術的波及効果が期待できるものであるが、
既存の電気泳動カプセルに対して、今回の方式の明確な特徴・優位性を確保すると共
に、製造のコストや歩留まりなどの視点を入れて開発を進める必要があるため、今後
はパネル・メーカーや消費者の意見を積極的に取り入れ実用化への技術課題をさらに
フォーカスして、商品化を加速して頂きたい。
個々の企業の実用化への見通しは理解できるが、それらの企業の担当範囲を超えた
部分での見通しは不十分に感じられた。
特に、実施者にデバイス事業専門企業が含まれていないので、寿命、コスト等につ
いての課題は、意識されているが曖昧な面も感じられる。
6
研究評価委員会におけるコメント
第10回研究評価委員会(平成18年9月26日開催)に諮り、了承された。研究評価
委員からのコメントは特になし。
7
研究評価委員会
委員名簿
委員長
曽我
直弘
滋賀県立大学
理事長
委員長代理 西村
吉雄
東京工業大学
監事
委員
伊東
弘一
早稲田大学
委員
稲葉
陽二
日本大学
委員
大西
委員
尾形
仁士
三菱電機エンジニアリング株式会社
委員
黒川
淳一
横浜国立大学
委員
小柳
光正
東北大学大学院
委員
佐久間
委員
冨田
房男
放送大学
委員
架谷
昌信
愛知工業大学
委員
委員
平澤
吉原
優
一紘
学長
理工学術院総合研究所
法学部
客員教授
(専任)
教授
株式会社カネカ
一郎 東京大学大学院
泠
兼
顧問
大学院工学研究院
工学研究科
工学系研究科
北海道学習センター
工学部機械学科
取締役社長
システムの創生部門
教授
バイオロボティクス専攻
教授
精密機械工学専攻
教授
所長
教授
東京大学名誉教授
アルバック・ファイ株式会社
技術開発部
理事
(合計
13 名)
(敬称略、五十音順)
8
第1章
評価
この章では、分科会の総意である評価結果を枠内に掲載している。なお、枠の
下の○、●、●が付された箇条書きは、評価委員のコメントを原文のまま、参考と
して掲載したものである。
1.プロジェクト全体に関する評価結果
1.1 総 論
1)総合評価
電子ペーパー用表示体材料に関しては米国が先行する状況であり将来を見越
した基盤技術確立の必要性は高く、またナノテク産業を支える重要な基盤技術
であるカプセル化技術を一般的なユーザー等がイメージし易いリライタブルぺ
ーパーに応用したことは他のナノテク応用製品の実用化にも効果的であり、本
プロジェクトは時機に適して意義が深いものである。
成果は、3 つの研究課題に限定してプロジェクトを進めることにより、新方
式のカラー画像表示デバイスの作製を可能とし、先行技術を凌駕する性能を実
現するプロトタイプが作製できた点を評価したい。
基盤技術の中で、ナノ機能を有する均一サイズのカプセル粒子調製技術に力
点を置き、良好な成果を上げた点も評価できる。
また、電子ペーパー関連材料開発に向けて、多くの研究グループと技術分野
が結集されて、幅広く課題の抽出が行われたことは、実用化・産業化に向けて
有用な成果であったと考える。
ただし、個々の実施者ごとには目標を十分達成しているが、それらの成果が
分散しており、表示体材料として使えるレベルに纏め上げるための実施者間の
連携がやや弱かった。数多くの基盤技術の開発を行いつつ、同時に、用途を絞
ることは、一つのプロジェクトで行う上で多々困難があったと推察されるが、
各企業間でのさらなる情報交換がなされていればもっと成果が期待できたので
はないかと思われる。
実用化にとって不可欠な耐候性については今後改善すべき課題として残され
た。実用化に向けては外部状況を的確に把握しながら、本方式の特徴を生かし
た技術開発が必要である。
また、プロジェクトがやり放しの立ち消えにならないよう、開発技術を今後
生かすための体制作りまでこのようなプロジェクトの中で明確にし、軌道に乗
せた上でプロジェクトを終了とすることが望まれる。
<肯定的意見>
{ 3 つの研究課題に限定してプロジェクトを進めることにより、新方式のカラー
画像表示デバイスの作製を可能としたことは評価に値する。
{ 成果として目に見えるものが要求される中で、基盤技術開発を大幅に縮小した
分だけ、プロトタイプの作成の方に力を注ぐことが出来たと言える。最終的に、
プロトタイプが作成できた点を評価したい。また、基盤技術の中で、ナノ機能
を有する均一サイズのカプセル粒子調製技術に力点を置き、良好な成果を上げ
た点は評価できる。
{ 電子ペーパー用表示体材料に関して、米国先行の状況の中、将来を見越した基
1-1
盤技術確立を目的とした本プロジェクトは誠にタイムリーであり意義深いと
思われる。また、コントラスト向上、フルカラー化という2つの重要課題を的
確に捉え、目標の方向性や数値が適切に設定されており、マネジメント面でも
評価に値する。研究成果として、基盤技術の確立という面で十分に目標は達成
されており、さらに論文数、特許出願件数ともに充実したものとなっている。
{ カプセル化技術は、ナノテク産業を支える重要な基盤技術である。その技術を
一般的なユーザーや非専門家がイメージし易い、リライタブルぺーパーに応用
したことは、この製品以外のナノテク応用製品の実用化にも効果的であり、国
家的なプロジェクトとして遂行したことは妥当と考える。加えて、紙資源の消
費削減を、国がリードするといった側面でも妥当なプロジェクトであったと考
える。
{ 電気泳動表示方式について、先行技術を凌駕する性能データの達成、課題を解
決する方式の提案等がなされている点を高く評価する。
{ 電子ペーパー関連材料は、将来の表示分野の産業発展に欠かせないものと考え
る。その意味で、多くの研究グループと技術分野が結集されて、幅広く課題の
抽出が行われたことは、実用化・産業化に向けて有用な成果であったと考える。
<問題点・改善すべき点>
z 個々の実施者ごとには目標を十分達成しているが、それらの成果が分散してお
り、表示体材料として使えるレベルに纏め上げるための実施者間の連携がやや
弱かったように感じた。どこかの時点で材料や調製方法を1つに絞って集中す
る、その際に複数のパネル・メーカーの意見をヒヤリングする、などの動きも
必要だったかと思われる。
z 各企業間でのさらなる情報交換がなされればもっと成果が期待できたのでは
ないかと思う。実用化後の成果の共有について懸念される。
z デバイス関連企業を実施者に含めて、デバイス化、商品化について重点を置く
か、あるいは、デバイスへの応用より基盤技術の開発に集中するかについては、
検討の余地があったと考える。数多くの基盤技術の開発を行いつつ、同時に、
用途を絞ることは、一つのプロジェクトで行う上で多々困難があったと予想さ
れる。
z プロジェクト成果が今後どう生かされるかについて、今後の受け皿や見通しが
明らかにされていない。やり放しの立ち消えにならないよう、開発技術を今後
生かすための体制作りまでこのようなプロジェクトの中で明確にし軌道に乗
せた上でプロジェクトを終了とすることが本来は理想的である。
z 技術比較や人材交流など個別研究の結び付きが不足しており、多様な要素技術
の探索にとどまった感が否めない。実用化に向けては外部状況を的確に把握し
ながら、本方式の特徴を生かした技術開発が必要である。
z 実用化にとって不可欠な耐候性については今後改善すべき課題として残され
1-2
た。
<その他の意見>
• 米国では、基盤的な製造技術自体を事業としているベンチャーも少なくない。
このことを踏まえると、
「出口」イコール「最終製品」とは限らない。
1-3
2)今後に対する提言
最終商品として完成させるため、各実施者の事業シナリオにある、協業を円
滑に進めるための支援活動が必要と考える。多岐にわたる開発成果が得られて
いるので、例えば、NEDOによるその広報活動が挙げられる。
今後の課題として、①実際のディスプレイ製品に繋げるための検討と②画像
表示デバイス以外での実用化の検討が挙げられる。
①に対しては、実施者間での情報交換を一層活発にすることや、パネル・メ
ーカーやユーザーの意見を積極的に取り込む活動が必要であり、その際には先
行技術の特許群に対するクリアランス策を明確化しておく必要がある。
②に対しては、将来のあるべきライフスタイルを見据えた新規産業創出と
いう観点から広い視野で検討して頂きたい。
また、電子ペーパー技術の応用として、電子書籍、電子書類等の具体的な用
途を特定し、最終ゴールをより明確とした集中的な研究開発を進めるプロジェ
クトの企画も有意義であると考える。
尚、電子ペーパーの実現を目指す上で、マイクロカプセルのみを核とするこ
とは、過剰な限定要素とも考えられ、全く異なる原理に基づく有望な新規表示
材料の発案・開発をサポートする活動も必要になると思われる。
<今後に対する提言>
{ ナノ機能を有するカプセル化基盤技術の体系化を意識したプロジェクトの立
ち上げは意義があると思う。
{ プロジェクトにより新たな産業・学術分野が拓けるかどうかは、技術を正確に
理解して、精力的かつ粘り強く進展させていく若手研究者の養成にかかってい
る。次世代技術をターゲットとするプロジェクトでは、人材育成の面にも力を
入れて、その評価も積極的に行うべきである。
{ 今回はマイクロカプセル技術を核として、その電子ペーパー技術への応用をゴ
ールとしてプロジェクトが企画・遂行されたため特定の技術領域に研究リソー
スを集中できた利点がある一方、電子ペーパーの実現を目指す上ではマイクロ
カプセル技術のみを核とすることは過剰な限定要素とも考えられる。本プロジ
ェクトの成果も踏まえ、実用的な電子ペーパーの本格的な実現をゴールと設定
し、これに生かすことができる可能性を持つ多様な要素技術を研究開発内容と
して含むようなプロジェクトの企画立案が次段階として望まれる。
{ 電子ペーパー技術応用として電子書籍、電子書類等の具体的な用途を特定し、
最終ゴールをより明確とした集中的な研究開発を進めるようなプロジェクト
の企画も有意義であると考える。
{ ①実際のディスプレイ製品に繋げるための検討と、②表示以外の分野への横展
開、の2つが今後の大きな課題と思われる。①についてはパネル・メーカーや
ユーザーの意見を積極的に取り込む活動が必要だが、その際には先行技術の特
1-4
{
{
{
{
許群に対するクリアランス策を明確化しておく必要がある。また、②について
は、既存の市場や既存製品の改良だけに拘らずに、将来のあるべきライフスタ
イルを見据えた新規産業創出という観点から広い視野で検討して戴きたい。
最終商品として完成させるため、各実施者の事業シナリオにある、協業を円滑
に進めるための支援活動が必要と考える。
基盤的技術に関連する課題も多い。これらについては、持続的にナノテクノロ
ジープログラム内でプロジェクト化すべきであると考える。民間企業では、
「選
択と集中」で、短期的、応用的開発に注力され、基盤技術の開発が疎かになっ
ているという側面がある。国による支援が必要であると考える。
企業と大学、企業と企業、大学と大学間の情報交換をもっと活発に行う必要が
ある。
画像表示デバイス以外の実用性の検討の必要あり。
<その他の意見>
• マイクロカプセル型電気泳動は日本で発明された技術であるが、その開発・商
品化は米国に先を越されてしまった。また、電子ペーパー分野における主導権
争いにおいて、日本は米国、欧州、韓国に遅れをとっている状態である。本プ
ロジェクトを契機に、是非ともこの状況を変えて戴きたい。そのためには、今
回の成果を製品化に繋げるための動きのみならず、全く異なる原理に基づく有
望な新規表示材料の発案・開発をサポートする活動も必要になると思われる。
• 素材関連事業は小規模であることが多い。したがって、今後の展開では、ベン
チャーや小規模企業の参加が有効である場合もあると考える。
1-5
1.2 各 論
1)事業の位置付け・必要性について
リライタブルペーパーは今後のユビキタス社会実現等に対する重要技術であ
り、カプセル成形技術としてそのプロトタイプを完成させるという大きな目標
を掲げ、他の技術分野へ適用可能な基盤技術の確立までを目的とする本事業の
意義は大きい。
本事業の目標達成には数多くの代替案があると共に、新たな省電力型表示、
記録メディアの基盤技術を先駆けて開拓するという観点から、民間企業が、そ
の全ての開発を行うことや、複数の企業を取り纏めるのは現実的に困難であり、
NEDOが関与する必要性は高い。
リライタブルペーパーは今後のユビキタス社会実現等に対する重要技術であ
り、その市場はデバイスのみならずコンテンツ産業や IT 産業などをも巻き込む
非常に有望なものである。海外の活発な動向と比較して国内の動きは鈍い印象
があり、本事業の目的の妥当性も高い。
尚、フォーカス21に選定され「出口」を強く意識して遂行された影響として、
マイクロカプセルの汎用技術の追求等、基盤技術としての成果が薄まった可能
性がある。汎用技術としてのマイクロカプセル技術をもう少し重視すべきだっ
た。5年から4年への加速措置についての妥当性、必然性の説明も必要であっ
た。
また、ヒューマンインターフェースの視点からの材料、デバイスに係る研究
開発も必要であった。
<肯定的意見>
{ 複数の企業を取りまとめて 1 つのプロジェクトを効率よく進めることは非常に
困難である。その点に関して、NEDO の関与は不可欠であったと思われる。
{ 本プロジェクトの主題については、数多くの代替案がある。民間企業がそのす
べてを対象として開発を行うことは現実的に不可能である。同時に、本プロジ
ェクトで得られた成果は、単に、プロジェクトの主題のみに関連するものでは
なく、広い波及効果が得られることは確実である。
以上のことから、NEDO がリスクをとり、かつ、得られた成果が複数の関係企業
により活用されるよう図る必要性は高いと考える。
{ リライタブルペーパーを始めとする電子ペーパーは、デバイスのみならずコン
テンツ産業や IT 産業などをも巻き込む非常に有望な新市場であり、省エネル
ギーにも大いに貢献する技術であるものの、海外の活発な動向と比較して国内
の動きは鈍い印象があった。そのような状況において、将来を見通した基盤技
術確立を目的とする本プロジェクトの意義は非常に大きいと思われる。また、
確立技術の他分野への横展開も大いに期待でき、投資対効果の面からも評価で
きる。
1-6
{ 電子ペーパーは今後のユビキタス社会実現等に対する重要技術であり、その実
現をプロジェクトの最終目的としたことは妥当性が高いと考える。
{ 新たな省電力型表示・記録メディアの基盤技術を先駆けて開拓するという観点
から、民間だけではできない意義深いテーマと考える。
{ カプセル成形技術としてリライタブルペーパーのプロトタイプを完成させる
という大きな目標を掲げ、他分野へ波及できるカプセル化技術の基盤技術開発
も実施するというプロジェクトは評価できる。ナノを視野に入れたカプセル化
技術の波及効果が極めて大きいと考えられるからである。
<問題点・改善すべき点>
z 「本技術により紙媒体作製時の費用と電子ペーパーの駆動エネルギーから省
エネルギー化が可能」と謳っているが、電子ペーパー作製にかかるコストも考
慮すべきなのでは。
z 電子ペーパーの最終的な製品化に進む上で必要と思われる点として、どの企業
が事業主体となるのか、今回のプロジェクトの成果をどのように技術移転する
のか等についての道筋が必ずしも明確に示されていない。
z フォーカス21に選定された絡みで電子ペーパーに研究開発目的を特化しす
ぎた嫌いがある。汎用技術としてのマイクロカプセル技術の追求や応用展開を
もう少し重視すべきだったのではないか。
z 現在、電子ペーパー関連技術は用途開拓に関心が移りつつあり、視認性などヒ
ューマンインターフェースの視点からの材料・デバイス研究も必要と考える。
z 「出口」を強く意識してプロジェクトが進められたことは評価できるが、その
結果、基盤的な成果についての扱いが薄まった可能性があると考える。今回の
主題以外への広い波及効果が期待できる課題であることを踏まえると、工夫の
余地があったように考える。
z マイクロカプセル型電気泳動では、例え画期的な成果を達成したとしても、先
行技術の改良という批評を受ける可能性も否定できない。全く新規の表示方式
に挑戦しても良かったのではないだろうか。
<その他の意見>
• ディスプレイ以外の用途で、今回の開発成果でしか実現できないような用途に
ついての発表も期待したい。
• プロジェクトの参加大学・企業等の選定過程や選定理由が明示されていないが、
プロジェクトの立ち上げ経緯として明示が必要と思われる。
• 5年から4年への加速措置について、その加速の妥当性・必然性が不明である。
特にプロジェクト実施者側の可能な進度を充分に考慮した結果の加速措置であ
ったかどうか疑問が残る。加速措置の事由・妥当性説明が必要と考える。
1-7
2)研究開発マネジメントについて
コントラストの向上およびフルカラー化は事業化の成否を決める大きな技術
課題であり、その課題を克服するための微粒子の表面物性制御技術や単分散カ
プセル形成技術について具体的かつ的確な目標が設定されている。海外との競
合も踏まえたものであり、設定目標は妥当である。
カラーリライタブルペーパーの実現に向けて3つの研究課題に注力してその
可能性を見極めると共に、多方面の材料技術からのアプローチによって多くの
知的インフラが構築、蓄積できたことは評価出来る。
実用化に向けて、実績を持つ企業を組み入れ、各企業および大学研究室の得
意領域を活かせる体制がとられ、多岐にわたる開発課題の進捗がよくマネージ
されている。標準粒子を作成し、各分担小プロジェクト間での技術交流を効率
的に進めたことを含め、これらは評価される。
しかし、個々の成果が分散している印象があり、カプセル、単分散微粒子、
ディスプレイの研究が密接に連携できていれば、さらに優れた解が見出せた可
能性もある。
また、本プロジェクトの最終目標を踏まえると、デバイスを本業とする企業の
取り込みを、より強化すべきでもあった。
尚、単純マトリクス駆動に適した閾値特性の付与の妥当性には疑問が残る。
アクティブマトリクス駆動への適合を狙うべきだったかもしれない。
<肯定的意見>
{ 海外との競合を踏まえた、妥当な目標が設定されていたと考える。ナノ粒子、
カプセル、およびその組み合わせについての開発と、多岐にわたる開発課題の
進捗がよくマネージされていると考える。このことを支える会議体もよく工夫
されていると考える。
{ 電気泳動法などの電子ペーパーは、今後、産業化が期待される分野であり、そ
れらを多方面の材料技術からアプローチしたことにより、多くの知的インフラ
が構築・蓄積されたと思う。
{ 実用化に際し、ある程度実績を持つ企業群をプロジェクトに組み入れた点、こ
れらを目標別に個々のテーマで研究開発を推進した点は評価できる。
{ コントラストの向上およびフルカラー化は事業化の成否を決める大きな技術
課題であり、それらを戦略的に選択したことは妥当と考えられる。さらに、そ
の課題を克服するために、微粒子の表面物性制御技術や単分散カプセル形成技
術について具体的かつ的確な目標が設定されているとともに、実績・能力共に
適したプロジェクトリーダー、実施者が選任されており、妥当な実施体制であ
ると考える。
{ 最終的な目標であるカラーリライタブルペーパーの可能性を見極めるにあた
り、3 つの研究課題に限定する進め方は妥当であり、各企業および大学研究室
1-8
の得意領域をプロジェクトに活かせるように体制を整えていると思われる。
{ 標準粒子を作成し、各分担小プロジェクト間での技術交流基準を効率的に進め
たことを高く評価する。
<問題点・改善すべき点>
z プロジェクトを効率よく進めるには各担当の企業および大学研究室間での情
報交換等の連携が必要であるが、それが十分でなかったように思われる。
z 本プロジェクトと最終目的を踏まえると、デバイスを本業とする企業の取り込
みについては、より強化すべきであったと考える。
z 実施者個々の達成度は高いが、それらの成果がまだ分散している印象を受けた。
今後パネル・メーカーの意見を取り入れて方向性をフォーカスすれば更なる発
展が期待できると思う。
z 単純マトリクス駆動に適した閾値特性の付与の妥当性に疑問が残る。アクティ
ブマトリクス駆動への適合を狙うべきかもしれない。
z カプセル、単分散微粒子、ディスプレイの研究が密接に連携できていれば、さ
らに優れた解が見出せた可能性もある。ぜひ今後の開発・実用化に、それらの
知見・ノウハウを生かしていって欲しい。
<その他の意見>
• プロジェクト開始以降にフォーカス21に位置付けられたことを考慮すると、
マネジメント上の対応でも大きな努力があったと考える。
1-9
3)研究開発成果について
材料からスタートしたにもかかわらず、目標としたカラー表示可能なデバイ
スの作製という目標が達成されており、実用化に向けた技術成果として説得力
がある。
35ミクロン、730dpi という高い解像度を確認し、白・黒・カラーの3状態
を 1 カプセルごとに実現する方式の実現可能性を示したことを高く評価する。
個々の基盤技術の確立という点でも目標を十分に達成し、特許、論文を通じ
た情報発信活動も十分な水準にあると考える。
尚、ナノ機能を備えたカプセル化基盤技術の体系化に対しては、
「フォーカス
21」移行に伴い、必ずしも大きな成果が得られたとは言えない点は今後に課題
を残した。
また、基礎・基盤研究の取り組みとしては、斬新なナノテクノロジーを活用
した提案が見受けられなかったのは残念である。
実用製品化に必要な繰り返し安定性、長期安定性や温度等の環境安定性につ
いての言及がないことは不十分と考えられる。
更に、Impact Factor の高い雑誌への投稿がもっと多ければ、一層の波及効
果が見込まれたと考える。
<肯定的意見>
{ 個々の基盤技術の確立という点では目標を十分に達成していると思う。また、
論文数、特許件数共に申し分ない成果が出されている。
{ 目標に対する達成度は高い。世界的な水準、あるいは世界的にも独創的な成果
が得られていると考える。
{ 特許、論文を通じた情報発信活動も十分な水準にあると考える。
{ 具体的なプロトタイプの作成は、ユーザなど、当該技術自体についての専門家
以外への広報としても有効であったと考える。
{ 各種の新しいカプセル化方法の可能性を示した点、カプセル壁の汎用的評価方
法を確立した点を高く評価する。
{ 35ミクロン、730dpi という高い解像度を確認したことを高く評価する。
{ 高視認性の反射カラー表示実現のために望まれる、白・黒・カラーの3状態を
1 カプセルごとに実現する方式の実現可能性を示したことを高く評価する。
{ リライタブルペーパーのプロトタイプの作成という目標は達成している。この
成果は新たな技術領域の開拓と位置づけられるものであり、技術の改善が進め
ば今後 2~3 年で実用的技術として普及していくことも可能と考えられる。
{ 目標としていたカラー表示可能なデバイスの作製が達成され、特許も適切に出
願されている。
{ 材料からスタートしたにもかかわらず、電子ペーパーのプロトタイプの開発ま
でいたっており、実用化に向けた技術成果として説得力がある。そのため所期
1-10
の目標は、十分に達成されたと考える。
<問題点・改善すべき点>
z ナノ機能を備えたカプセル化基盤技術の体系化に対して組織的な研究が実施
されていたが、「フォーカス 21」移行に伴う実用化優先のため、必ずしも体系
化の大きな成果が得られたとは言えない点は今後に課題を残している。この新
規技術の波及効果は大きいと考えられるので何らかのケアーが望まれる。
z 海外における昨今の活発な動向を考えると、海外出願をもっと積極的に行なう
必要があると思われる。
z トップデータとしての成果は示されているが、実用製品化に必要な繰り返し安
定性、長期安定性や温度等の環境安定性についての言及がないことは不足点と
考えられる。
z (事業原簿について)31ページにあるような、「研究開発項目ごとの成果」
に関する「目標達成度と技術の適用範囲」の表記は、その考え方についてコメ
ントしておかないと分かり難い。
z 今回使用した手法のほとんどは、既存の化学反応や既知の物理現象の範囲にと
どまる。基礎・基盤研究の取り組みとして、斬新なナノテクノジーを活用した
提案が見受けられなかったのは残念である。
z 論文の発表も、質・量ともに十分であるが、欲を言えば、Impact Factor の高
い雑誌への投稿がもっと多い方が、波及効果が大いに見込まれたと考えられる。
一般向けの冊子の作成も行っても良かったのでは。実用化された場合、参加企
業がどのように利益を共有することになるのか等の今後の展開がやや懸念さ
れる。
<その他の意見>
• 今後育て上げて行く価値のある技術の種が多く提案されており、今後継続的に
これらの種を育成していく体制(プロジェクトの成果の今後の受け皿)の用意
が重要と考える。
• 多岐にわたる開発成果が得られているので、その広報についても相応した広報
活動が必要である。特に、測定技術についてはディスプレイ以外の用途でも必
要な技術であるので、今後の積極的な活動を期待したい。
1-11
4)実用化、事業化の見通しについて
まだ解決すべき技術課題も残っているが、事業化に向けた企業側の取り組み
が期待できる環境にある。本プロジェクトの範囲においては、今後の課題とそ
の開発方向は具体的であると考える。
本プロジェクトの成果は関連分野への技術的波及効果が期待できるものであ
るが、既存の電気泳動カプセルに対して、今回の方式の明確な特徴・優位性を
確保すると共に、製造のコストや歩留まりなどの視点を入れて開発を進める必
要があるため、今後はパネル・メーカーや消費者の意見を積極的に取り入れ実
用化への技術課題をさらにフォーカスして、商品化を加速して頂きたい。
個々の企業の実用化への見通しは理解できるが、それらの企業の担当範囲を
超えた部分での見通しは不十分に感じられた。
特に、実施者にデバイス事業専門企業が含まれていないので、寿命、コスト
等についての課題は、意識されているが曖昧な面も感じられる。
<肯定的意見>
{ 本プロジェクトの範囲においては、今後の課題とその開発方向は具体的である
と考える。
{ プロトタイプを完成した点は評価できる。まだ解決すべき技術課題も残ってい
るが、事業化に向けた企業側の取り組みが期待できる環境にある。
{ コントラスト向上、フルカラー化について、基礎的な技術確立は達成され、実
用化への道筋がある程度は明確化されたと思う。今後はパネル・メーカーや消
費者の意見を積極的に取り入れ実用化への技術課題をさらにフォーカスして、
商品化を加速して戴きたい。
{ 個々の企業の実用化への見通しが明確に表現されている。
{ 電子ペーパーの高機能化・用途拡大のため、カラー化が大きなトピックになっ
ており、今回、動かない微粒子を導入して、新たなカラー化方式を提案・実証
したことは高く評価できる。
{ 本プロジェクトの成果は関連分野への技術的波及効果が期待できるものであ
る。
{ プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進するなど
の波及効果を生み出していると考えられる。
<問題点・改善すべき点>
z 他分野への横展開、波及効果について、各実施者における方向性や具体的戦略
の早期明確化が課題だと思う。
z 既存の電気泳動カプセルに対して、今回の方式の明確な特徴・優位性を確保で
きないと、実用化の方向が見えてこない。また今後は、製造のコストや歩留ま
りなどセットメーカーの視点を入れて、開発を進める必要がある。
1-12
z 外部との性能比較において、外部は製品として発売されているものの到達度、
当プロジェクトはトップデータを用いて比較している傾向が見られる。
z 事業化へ向けてのシナリオは必ずしも明確に示されていない。
z 個々の企業の実用化への見通しは理解できるが、それらの企業の担当範囲を超
えた部分での見通しは不十分に感じられた。実用化に向けた全体的な取りまと
めと見通しをもっと具体的に説明する必要があるのでは。カラー表示デバイス
以外の応用についての具体的な戦略が理解できなかった。
z 実施者にデバイス事業専門企業が含まれていないので、寿命、コスト等につい
ての課題は、意識されているが曖昧な面も感じられる。特に、商品イメージ、
コンテンツ、ターゲット価格が曖昧である。
<その他の意見>
• 複数の事業化のシナリオで、
「協業」の必要性が主張されている。協業の成否を
見通すことは困難である。この点については、今後も持続的な努力が必要と考
える。
1-13
2.個別テーマに関する評価結果
2.1 カプセル成形技術
多様なカプセル化手法で検討が行われ、それぞれにおいて数値目標が達成さ
れている。各課題に適した実施者個別の研究チームの能力と努力、再委託によ
る所属機関間の垣根を越えた協力に敬意を表する。
最適なプロセスパラメータの発見や測定手法の開発については、実施者の知
的所有権を保護した上で、広報されるべき内容が多いと考える。
転相乳化法によるマイクロカプセル生成等、世界に先駆けての技術開発がな
されている点や、伝統的なコアセルベーション法及び架橋メラシン系相分離法
によってリライタブルペーパーのプロトタイプを作製した点は高く評価した
い。
ただし、カプセル成形技術・機能発現及び機能最適化について得られた一連
の検討結果を、構造的体系的に整理して、データベース化に備えるとした最終
目標に関しては、体系的整理が必ずしも充分に完遂されたとは言い難い。
また、石油系薬品を使用している工程が多々あり、環境面に関する点が懸念
される。
多くのカプセル化手法について並行研究が進められる中で、最も優れた方法
に早期に収束できれば、研究をさらに集中・加速できた可能性もある。
<肯定的意見>
{ 転相乳化法によるマイクロカプセル生成等世界に先駆けての技術開発がなさ
れている点を高く評価する。
{ 設定した個々の目標値を達成した結果が得られている。それは、再委託により
所属機関間の垣根を越えた協力によるものと思われ、この組織が概略的に良好
なものであったことが窺える。
{ 種々のカプセル化基盤技術の精査から、伝統的なコアセルベーション法及び架
橋メラシン系相分離法によってリライタブルペーパーのプロトタイプを作成
した点は高く評価したい。
{ 目標は十分に達成されている。広い範囲の代替的技術を検討し、相互に比較可
能なレベルで開発が進められていると考える。最適なプロセスパラメータの発
見や測定手法の開発については、実施者の知的所有権を保護した上で、広報さ
れるべき内容が多いと考える。
{ また、再委託者も含め、各課題に適した実施者が選ばれ、単分散カプセルの調
整などで、各実施者の蓄積も効果的に活用されていると考える。
{ 多様なカプセル化手法で検討が行われ、それぞれにおいて数値目標が達成され
ている。個別の研究チームの能力と努力には敬意を表する。
<問題点・改善すべき点>
1-14
z 多くのカプセル化手法について並行研究が進められる中で、最も優れた方法に
早期に収束できれば、研究をさらに集中・加速できた可能性もある。
z カプセル成形技術・機能発現及び機能最適化について得られた一連の検討結果
を、構造的体系的に整理し、データベース化に備えるとした最終目標に関して
は、体系的整理が必ずしも充分に完遂されたとは言い難い。
z 目標値をクリアした成果は評価できるが、石油系薬品を使用している工程が
多々あり、環境面に関する点が懸念される。実際に環境に対する試験はなされ
ていないようであった。
<その他の意見>
• 多くの発表も行われているので、改めて成果をまとめて出版することも意義が
あると考える。
1-15
2.2
ナノ機能粒子表面物性制御技術
ナノ機能粒子の表面物性制御機能に関する基盤技術を広い範囲にわたって検
討し、個別の研究グループがそれぞれの専門力を発揮することにより、数値目
標が十分に達成されている。
電気泳動表示方式の要となる粒子帯電性の制御法として、酸塩基解離に基づ
く粒子帯電等により必要な帯電性が確保されており、表面物性の制御技術とし
て最も重要なポイントは達成されたと考えられる。
さらに、カプセル内ナノ粒子の移動の直接観察や1粒子移動方式の開発など
世界的でユニークな成果も得られており、国際的な標準化を図る意義もあると
考える。
ただし、3原色の各々のカラー粒子について、目標の達成度に大きな差があ
り、達成度の低い色も残されている。
また、耐久性に関する試験が不十分のように感じ取られた。静置した場合の
耐光性や分散安定性だけでなく、表示動作後の安定性も評価する必要があった。
研究チーム間で機密事項があるのは理解できるが、横の連携により各方式の
メリット・デメリットを客観比較ができていれば、自らの研究にもポジティブ
なフィードバックになったと思う。
<肯定的意見>
{ 電気泳動表示方式の要となる粒子帯電性の制御法として、酸塩基解離に基づく
粒子帯電等により必要な帯電性が確保されており、表面物性の制御技術として
最も重要なポイントは達成されたと考えられる。
{ 目標は十分に達成されている。カプセル内ナノ粒子の移動の直接観察や1粒子
移動方式の開発など世界的でユニークな成果も得られている。ディスプレイ以
外の用途へも活用可能な、電気泳動方式では困難な機能の実現についても、良
好な成果が得られていると考える。特に、カラー化の実現は、インパクトのあ
る成果であると考える。
{ 個別の研究グループがそれぞれの専門力を発揮することにより、数値目標が十
分に達成されている。さらに、カプセル化技術との整合性の観点からも一部検
討されており、妥当な成果として評価できる。
{ 「カプセル成形技術」と同様、設定した個々の目標値を達成した結果が得られ
ているのは評価できる。
{ ナノ機能粒子の表面物性制御機能に関する基盤技術を広い範囲にわたって検
討し、プロトタイプとして機能を発揮する粒子を開発した点は評価できる。
<問題点・改善すべき点>
z 「カプセル成形技術」とも関連するが、耐久性に関する試験が不十分のように
感じ取られた。静置した場合の耐光性や分散安定性だけでなく、表示動作後の
1-16
安定性も評価する必要があったのではないか。
z 3原色の各々のカラー粒子について、目標の達成度に大きな差があり、達成度
の低い色も残されている。
z 研究チーム間で機密事項があるのは理解できるが、横の連携により各方式のメ
リット・デメリットを客観比較ができていれば、自らの研究にもポジティブな
フィードバックになったと思う。
<その他の意見>
• 開発された測定・評価手法については、国際的な標準化を図る意義もあると考
える。
1-17
2.3 ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評
価
各種の基盤技術の検討とその成果に基づいて、カプセル型の電気泳動方式や
トナー(気中分散)方式で、電子ペーパーのプロトタイプが試作されており、
数値目標はもとより包括的な意味でも、目標達成度は高い。
カラー化について、課題とされてきた反射型での明るい表示の実現について
新しい有望方式の可能性を示したことを評価する。
具体的な製品を実現したことは、ナノテク全般の理解を得る上でも効果的な
成果と考える。試作された製品は、最終製品を事業とする企業に、広く、早く
提供すべきであると考える。
ただし、実用性の観点での安定性、耐久性、生産性等や表示素子以外の利用
可能性についての検討は必ずしも充分ではない。
また、これまで電気泳動法、トナー方式、エレクトロクロミックの3方式を
トータルで扱った取り組みがないにもかかわらず、今回、それらの融合・境界
領域の技術開拓や用途・使い分けの整理がなされていないのは残念である。
<肯定的意見>
{ 各種の基盤技術の検討とその成果、また最終的にはプロトタイプの作成は評価
に値する。今後の発展が期待できる。
{ 目標は十分に達成されている。多様な課題から得られた成果をよくリライタブ
ルペーパーとしてまとめられていると考える。具体的な製品を実現したことは、
ナノテク全般の理解を得る上でも効果的な成果と考える。
{ カラー化について、課題とされてきた反射型での明るい表示の実現について新
しい有望方式の可能性を示したことを評価する。
{ 最終的にはカラー画像表示デバイスの作製を可能としたことは、きわめて大き
な成果である。リーダーおよびサブリーダーの手腕が大いに評価できる。
{ カプセル型の電気泳動方式やトナー(気中分散)方式で、電子ペーパーのプロ
トタイプが試作されており、数値目標はもとより包括的な意味でも、目標達成
度は高い。
<問題点・改善すべき点>
z 実用性の観点での安定性、耐久性、生産性等について検討は必ずしも充分では
ない。
z 計画では表示素子以外の利用可能性も検討するという計画であったが、実際に
はその他の利用についての検討が十分でなかったのは残念であった(時間的に
は困難であったと思うが)。
z これまで電気泳動法、トナー方式、エレクトロクロミックの3方式をトータル
で扱った取り組みがないにもかかわらず、今回、それらの融合・境界領域の技
1-18
術開拓や用途・使い分けの整理がなされていないのは残念である。
z 電極パターンニング技術は、製品化に不可欠と考えられるが、このこと自体を
本プロジェクトに含めることが不可欠であるか否かについては、検討の余地が
あったと考える。エレクトロクロミックについても同様の印象がある。
<その他の意見>
• 試作された製品は、最終製品を事業とする企業に、広く、早く提供すべきであ
ると考える。
1-19
3.評点結果
2.5
1.事業の位置付け・必要性
1.8
2.研究開発マネジメント
2.7
3.研究開発成果
1.8
4.実用化、事業化の見通し
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
平均値
素点(注)
1.事業の位置付け・必要性について
2.5
A
A
B
A
B
B
2.研究開発マネジメントについて
1.8
A
B
C
B
B
C
3.研究開発成果について
2.7
B
A
B
A
A
A
4.実用化、事業化の見通しについて
1.8
C
B
B
B
B
B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)事業の位置付け・必要性について
(3)研究開発成果について
・非常に重要
・重要
・概ね妥当
・妥当性がない、又は失われた
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→A
→B
→C
→D
(2)研究開発マネジメントについて
・非常によい
・よい
・概ね適切
・適切とはいえない
→A
→B
→C
→D
(4)実用化、事業化の見通しについて
→A
→B
→C
→D
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
1-20
→A
→B
→C
→D
第2章
評価対象プロジェクト
1.事業原簿
次ページに当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿を示す。
2-1
第1回「ナノ加工・計測技術(機能性カプセル活用フ
ルカラーリライタブルペーパープロジェクト)」(事後
評価)分科会
資料5-1
事業原簿
公開版
「機能性カプセル活用フルカラー
リライタブルペーパープロジェクト」
事業原簿
公開版
担当部
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ナノテクノロジー・材料技術開発部
目次
概要
プロジェクト基本計画
プロジェクト用語集
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
1.NEDOの関与の必要性・制度への適合性
・・・・・・
1頁
・・・・・・
2頁
1.事業の目標
・・・・・・
5頁
2.事業の計画内容
・・・・・・
8頁
・・・・・・
24頁
4.中間評価結果への対応
・・・・・・
25頁
5.評価に関する事項
・・・・・・
26頁
・・・・・・
27頁
1.1
NEDOが関与することの意義
1.2
実施の効果(費用対効果)
2.事業の背景・目的・位置づけ
2.1
事業の背景
2.1.1
社会的背景
2.1.2
技術的背景
2.2
事業の目的
2.3
事業の位置づけ
2.3.1
国の政策における位置づけ
2.3.2
関連する国内外の技術開発動向等における位置づけ
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
2.1
研究開発の内容
2.2
研究開発の実施体制
2.3
研究の運営管理
3.情勢変化への対応
3.1
フォーカス21への移行
3.2
表示素子の仕様確認
5.1
自主中間評価
Ⅲ.研究開発成果について
1.事業全体の成果
1.1
全体の成果概要
1.2
カプセル成形技術の成果概要
1.3
ナノ機能粒子表面物性制御技術の成果概要
1.4
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と
機能評価技術の成果概要
2.研究開発項目ごとの成果
・・・・・・
31頁
2.1
カプセル成形技術
31頁
2.2
ナノ機能粒子表面物性制御技術
96頁
2.3
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と
機能評価技術
127頁
Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて
1.概要
・・・・・・
1.1
全体概要
1.2
カプセル成形技術の応用展開
1.3
ナノ機能粒子表面物性制御技術の応用展開
1.4
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と
152頁
機能評価技術の応用展開
出願特許リスト
全5頁
発表論文リスト
全29頁
概
要
作成日
プログラム名
プロジェクト名
担当推進部/担当者
平成 18 年 1 月 17 日
ナノテクノロジープログラム(ナノ加工・計測技術)
機能性カプセル活用
プロジェクト
P02044
番号
フルカラーリライタブルペーパー
ナノテクノロジー・材料技術開発部
主査
大森俊也
ナノスケールで構造制御された機能粒子(以下「ナノ機能粒子」とい
う)は,従来にはない新規かつ特異的な機能を有することが知られてい
るが、凝集や化学的な不安定性に起因する機能の低下が認められてい
る。その欠点を補い、工業化(産業化)を図るには、ナノ機能粒子を、
0.事業の概要
安定な高分子薄膜で包み込むカプセル成形技術が重要となって来る。
この観点から、カプセル成形技術の実用化として、新規画像表示デバ
イスを最終目標とし、医農薬分野等他分野への活用が可能となる基盤技
術を開発すると共に、平成 17 年度までに、ナノ機能粒子をナノ薄膜で
カプセル化するための設計指針、及び製造技術の基盤を確立し、画像表
示デバイスのプロトタイプを作成する。
広範な産業技術分野に革新的発展をもたらし得るキーテクノロジー
Ⅰ.事業の位置付
である「ナノテクノロジー」の一環として、新規画像表示デバイスを始
け・必要性につい
め、化学、電子、光、触媒、医農薬等の広範な産業分野に応用可能な新
て
材料の創出に資する。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
平成17年度までに、ナノスケールで構造・機能制御された微粒子をナノ薄
事業の目標
膜でカプセル化するための設計指針及び製造技術の基盤を確立すると共
に、画像表示材料を創製し、画像表示デバイスのプロトタイプを作成する。
主な実施事項
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
407
529
431
356
1,723
407
529
431
356
1,723
カプセル成形技術
事業の計画内
容
ナノ機能粒子表面物性制御
ナノ機能性粒子のカプセル形
成技術を用いた画像表示材料
の開発と機能評価
会計・勘定
開発予算
(単位:百万円)
一般会計
特別会計(石特)
総予算額
総額
経産省担当原課
製造産業局
プロジェクトリーダー
千葉大学工学部 情報画像工学科 北村孝司教授
財団法人 化学技術戦略推進機構
参加8社:ダイセル化学工業㈱、大日本印刷㈱、
大日本塗料㈱、チッソ㈱、
東洋インキ製造㈱、
日立化成工業㈱、富士写真フイルム㈱、
㈱リコー
開発体制
委託先
化学課
当初PJは、経済産業省が直轄で実施する5年間の研究開発事業平成1
4年度構造改革特別要求分として、平成14年度にスタートしたが、平成
15年度に経済産業省の「経済活性化のための研究開発プロジェクト(フ
情勢変化への
対応
ォーカス21)」と位置づけられ、
「ナノ機能粒子のカプセル成形技術事業」
から名称を変更し、実施期間も1年短縮計4年し、NEDOの委託業務と
して実施している。
これに伴い、NEDOナノテクノロジー・材料技術開発部の自主的評価
のため、第三者による「技術評価委員会」を平成16年1月に設け、今後
の進め方を確認し、この結果は基本計画の目標達成等に反映させた。
Ⅲ.研究開発成果
について
本プロジェクトでは、カプセル成形技術およびその実用化として新規画
像表示デバイスを最終目標において研究開発を行い、
カプセル成形技術では、ナノ機能粒子の内包化を目的として 8 種のカプ
セル成形方法・3 種の単分散エマルション化プロセス検討、およびカプセ
ル成形メカニズム解明を行い、その結果を駆使した粒径の揃った単分散カ
プセルにより、従来困難とされていた明るい白表示 50%以上)を実現した。
またナノ機能粒子制御技術では、粒子表面物性を制御する事で、高い分
散性を有する泳動性、あるいは非泳動性のナノ機能粒子の開発に成功し、
その帯電特性を制御できる事を実証した。
これらの成果を集大成する事で、電気泳動、エレクトロクロミズム、気
中粒子移動の各方式で、以下に示す優れた特性の表示素子を開発した。
カプセル活用電気泳動方式:プロジェクトの最重要課題として取り組
み、フレキシブル化を達成すると共に、非泳動性粒子の開発により独自の
白色微粒子分散型1粒子移動方式を提案した。また電気泳動性カラー粒子
の開発により世界に先駆けてカラー表示を実証した。
エレクトロクロミズム方式:電圧印加により三原色を呈する化合物を見
出し、階調表現を実現し、三原色表示素子を三層構成した表示素子で写真
同等のフルカラー化の見通しをつけた。
気中粒子移動方式:3粒子系により世界で始めて4色表示を実証した。
投稿論文:査読付き:94件、その他:26件、学会発表:308件
特許:国内出願済:58件、海外出願済:12件
Ⅳ.実用化、事業
プロジェクトの目標として掲げた電気泳動方式、エレクトロクロミック
化の見通し
方式、および粉流体方式の三種類の表示デバイスについては、今回のプロ
について
ジェクト研究により、それぞれカラー化およびフレキシブル化を実現し、
プロトタイプを作成した事で、PJ 内外のメーカーが、他方式と比較した上
で、市場調査に基づき、具体的な商品化を考えるステージに入った。
カプセル活用電気泳動方式については、表示部(フロントプレーン)と、
駆動のための電極・駆動回路部(バックプレーン)を別個に作成し貼合わせ
る事で表示素子が製造可能であり、今後 PJ 内外のメーカーが商品コンセ
プトに合うフロントプレーン、およびバックプレーンを分担して設計・製
造する事で、短期間に商品化する事が可能。
但し表示デバイスの市場規模に比べると、その中の素材(カプセル、粒
子)の市場規模は桁違いに小さく、PJ で開発した技術については、参加企
業の他の事業に積極的に応用展開する事を進めたい。
事前評価:平成14年度実施経済産業省(NEDOは委託先選定に協力)
Ⅴ.評価に関する
中間評価以降:(平成15年度 自主中間評価実施)
事項
平成17年度 事後評価実施予定
作成時期:平成14年度に経済産業省が直轄事業として基本計画を策定
Ⅵ.基本計画に関
する事項
変更履歴:平成15年3月
ナノテクノロジープログラム
ナノ加工・計測技術
ナノ機能粒子のカプセル成形技術プロジェクト基本計画
(平成14年度開始時)
経済産業省産業技術環境局研究開発課
経済産業省製造産業局化学課
1.研究開発の目的・目標・内容
(1)研究開発の目的
物質をナノレベルで制御することにより、物質の機能・特性を飛躍的に向上させ、また、大
幅な省エネルギー化、大幅な環境負荷低減を実現し得るなど、広範な産業技術分野に革新的発
展をもたらし得るキーテクノロジーである「ナノテクノロジー」を確立し、得られた成果等の
知識の体系化を図ることで、我が国の産業競争力の源泉として、我が国経済の持続的発展に寄
与する技術的基盤の構築を図るため、超微細な物質構造を創製するプロセス技術及び計測技術
を開発するとともに、産業化に向け、得られる物質機能を向上・維持する成形・加工技術、評
価技術を開発し、超微細構造制御機能創製、加工、計測に係る基礎・基盤的技術の構築を図り
つつ、得られたデータ、知識(既存の知識を含む)について構造、機能、プロセスの視点から
体系化し、広範な分野において活用可能な知識基盤を平成19年度までに整備することを目標
とする「ナノテクノロジープログラム」のうちナノ加工・計測技術の一環として、本プロジェク
トを実施する。
ナノスケールで構造制御(粒子径、粒子径分布等)された超微粒子(以下「ナノ機能粒子」
という)は従来にはない新規かつ特異的な機能を有することが知られているが、これらナノ機
能粒子には凝集や化学的な不安定性による酸化反応等による機能の低下が認められ工業化(産
業化)させるためには特異的な機能を有するナノ機能粒子を安定な高分子薄膜で包み込むカプ
セル成形技術が重要なナノ加工技術として認識されている。
しかしながら、現在までに安定な高分子薄膜によるカプセル成形技術において、カプセル径
及びそのカプセル径分布の精密制御技術は確立されていない。
本プロジェクトでは、カプセル成形技術の実用化として新規画像表示デバイスを最終目標と
しつつ、医農薬分野等他分野への活用が可能となる基盤技術を開発する。これにより、化学、
電子、光、触媒、医農薬等の広範な産業分野に応用可能な新材料の創出に資する。
(2)研究開発の目標
平成18年度までに、ナノスケールで構造・機能制御された微粒子をナノ薄膜でカプセル化
するための設計指針及び製造技術の基盤を確立するとともに、画像表示材料を創製し、画像表
示デバイスのプロトタイプを作成する。
なお、中間目標として、白黒の画像パターン表示が可能な表示媒体の試作を行なう。
(3)研究開発の内容
上記目標を達成するために、以下の研究項目について、別紙の研究開発計画に基づき研究開
発を実施する。
①カプセル成形技術
②ナノ機能粒子表面物性制御技術
③ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価
2.研究開発の実施方式
(1)研究開発の実施体制
本研究開発は、経済産業省が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の協力を
得て、単独ないし複数の企業、研究組合、公益法人、独立行政法人、大学等の研究機関の中
から、研究開発実施者(再委託する研究開発実施者を含む。)を選定の上、委託して実施す
る。
共同研究開発に参加する各研究開発グループの有する研究開発ポテンシャルの最大限の活
用により、効率的な研究開発推進を図る観点から、研究体には研究開発責任者(プロジェク
トリーダー)を置き、その下に研究者を可能な限り結集して効果的な研究開発を実施する。
(2)研究開発の運営管理
研究開発全体の管理・執行に責任を有する経済産業省は、研究開発責任者と密接な関係を
維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに本研究開発の目的及び目標に照らして適切
な運営管理を実施する。
3.研究開発の実施期間
本研究開発の期間は、平成14年度から平成18年度までの5年間とする。
4.評価の実施
経済産業省は、経済産業省技術評価指針に基づき、技術的及び産業技術政策的観点から、研
究開発の意義、目標達成度、成果の技術的意義並びに将来の産業への波及効果等について、外
部有識者による研究開発の中間評価を平成16年度、事後評価を平成19年度に実施する。な
お、評価の時期については、当該研究開発に係る技術動向、政策動向や当該研究開発の進捗状
況等に応じて、前倒しする等、適宜見直すものとする。
5.その他の重要事項
(1)研究開発成果の取り扱い
①成果の普及
得られた研究成果については、経済産業省、実施者が、学会発表、ホームページでの情報公
開、シンポジウム開催等により協力して普及に努めることとする。
②知的基盤整備事業又は標準化等との連携
得られた研究開発の成果については、知的基盤整備または標準化等との連携を図るため、デ
ータベースへのデータの提供、必要に応じて標準情報(TR)制度への提案等を行う。
③知的所有権の帰属
委託研究開発の成果に関わる知的所有権については、産業活力再生特別措置法第30条第1
項の規定等に基づき、原則として、全て委託先に帰属させることとする。
(2)基本計画の変更
経済産業省は、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的状況、内外の研究開発
動向、産業技術政策動向、プログラム基本計画の変更、第三者の視点からの評価結果、研究開
発費の確保状況等を総合的に勘案し、達成目標、実施期間、研究開発体制等、基本計画の見直
しを弾力的に行うものとする。
(3)その他
「ナノテクノロジープログラム」で実施される他のプロジェクトと連携を図りつつ実施するこ
ととする。
6.基本計画の改訂履歴
(1)平成14年3月、制定。
(別紙)研究開発計画
研究項目①「カプセル成形技術」
1.研究開発の必要性
ナノスケールで構造制御されたナノ機能粒子の操作性を向上させるあるいはナノ機能粒子を
長期間安定に保持するための方法として、安定な高分子薄膜からなるカプセルに内包する技術
が強く求められている。この要求に答えるためには、カプセル径やカプセル膜厚を精密に制御
したカプセルの創製が必須であり、これによってナノ機能粒子の機能を充分に発揮させること
が可能になる。以上の観点から化学的技法や物理化学的技法などの既存のカプセル化技術に関
する知見を基礎としつつ、カプセル膜形成機構の解析及び特性評価・計測技術に基づくカプセ
ル膜合成技術を確立し、カプセル成形技術を体系的にまとめることが必要である。なお、均一
なカプセル膜、単分散なカプセル径分布を有するカプセルの応用範囲は広いが、本プロジェク
トでは、電子・情報分野、材料分野及び医農薬分野で有効に作用するナノ機能粒子を内包する
カプセルの特性を生かすための技術開発を重点化し実施する。
2.研究開発の具体的内容
新規画像表示デバイスへの活用を最終目標にしつつ基盤技術を確立することを目的とし、本
研究開発では、内包されるナノ機能粒子の機能性を最大限に発現させるため、それぞれの機能
性を付与したカプセル成形技術について、以下の項目を実施する。
(1)化学的技法(界面反応法、in situ 重合法等)や物理化学的技法(相分離法、液中乾燥
法等)によるカプセル成形技術について、単分散エマルション及び高分子カプセルの加工技術
(カプセル径分布制御加工技術)、カプセル径やカプセル膜厚を高精密に制御する技術(カプ
セル径・カプセル膜厚制御加工技術)を開発する。
(2)研究項目②で検討するナノ機能粒子を高効率で内包するためのプロセス因子の抽出を行
いカプセル膜内表面とナノ機能粒子との相互作用に関する知見を集積することで、カプセル内
部でのナノ機能粒子の分布を制御する技術を開発する。
(3)カプセル成形技術における製造プロセス条件と内包するナノ機能粒子等の機能発現との
関連性を明確にし、各技法での物性・機能を体系的に整理する。
(4)内包物をナノ薄膜でカプセル化するに必要な膜特性(高透明性や耐候性及び強度等の機
能)を評価する手法を開発する。
3.達成目標
透明性や強度に優れる等の高機能性を付与した高分子カプセルの製造が可能な技術を確立
するため、カプセル径・カプセル膜厚制御等のカプセル形成に関する基盤技術を体系化する。
また具体的には以下の目標を達成する。
【中間目標】
・カプセル径10~50μm(カプセル膜厚100~500nm)のカプセル単分散技術の確
立(CV<10%)
・カプセル強度評価法の確立
【最終目標】
・屋外耐光:
3 ヶ月以上
・透明性:
透過率80% 以上
・添加した芯物質の内包率:
90%以上
・カプセル径:
1~50μm
・カプセル径分布:
CV10%以下
・カプセル膜厚:
50~500nm
・カプセル成形技術・機能発現及び機能最適化について得られた一連の検討結果を、構造的体
系的に整理し、データベース化する。
(別紙)研究開発計画
研究項目②「ナノ機能粒子表面物性制御技術」
1.研究開発の必要性
一般的に、構造制御されたナノ機能粒子には付着・凝集等により機能の低下がみられ、本来
有する機能を充分には発揮していない。このように、ナノ機能粒子の均一な分散技術はナノ機
能粒子の機能を最大限に引き出すためには極めて重要な技術であるにもかかわらず未だ充分に
確立した技術とは言えない。さらに、カプセルに内包された状態においてもカプセル膜内部へ
のナノ機能粒子の付着・凝集等による機能低下を防ぐため、ナノ機能粒子の表面及び界面の精
密制御や界面におけるナノ機能粒子とカプセル膜との相互作用に関する知見などが必要とされ
るが、現在までにこれら技術の基盤の確立並びに技術の体系化は達成されていない。
以上の観点から、カプセルを構成する高分子表面とナノ機能粒子との界面における物理化学
的挙動に着目しつつ、精密に帯電制御されたナノ機能粒子を均一に分散させる技術を開発する。
2.研究開発の具体的内容
本研究開発では、研究項目③で活用するナノ機能粒子の材料として顔料微粒子、セラミック
微粒子、金属微粒子等の着色物質を対象とし、ナノ機能粒子の合成及び媒体中におけるナノ機
能粒子の分散安定化技術や帯電制御技術等の表面修飾技術を開発するため、以下の項目を実施
する。
(1)ナノ機能粒子を化学的技法や物理的・機械的技法によって製造するプロセスについて、
粒径や粒径分布及び吸光特性等の機能性を制御する技術を開発する。
(2)ナノ機能粒子表面における帯電制御剤の化学的あるいは物理的な吸着を利用した表面修
飾やナノ機能粒子と帯電制御剤とによる複合材料の創製などにより、媒体中におけるナノ機能
粒子の電気泳動移動度を精密制御する技術を開発する。
(3)ナノ機能粒子表面を低分子系あるいは高分子系の分散剤による表面修飾を施し、媒体中
で長期間安定に分散させることが可能な分散安定化技術を開発する。
3.達成目標
媒体中での分散安定性や帯電特性等の機能性に関するナノ機能粒子の表面物性制御技術基
盤を確立し、長期間にわたり安定した高速移動性を有するナノ機能粒子を開発するため、以下
の具体的目標を達成する。
【中間目標】
・粒径
50~200nm、粒径分布
CV10%以下の機能粒子の開発
・白黒粒子の帯電制御指針の確立
【最終目標】
・粒径:
20~200nm
・粒径分布:
CV10 %以下
・吸光係数:
W ・B 系のほかR ・G・B系あるいはY・M・C系の4色で、その
吸光係数がそれぞれ20,000cm-1以上
・帯電特性:
設計値からの変動が±1 0%以内
・分散安定性: 1ヶ月以上(凝集率10 %(重量)以内)
(別紙)研究開発計画
研究項目③「ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価」
1.研究開発の必要性
カプセル成形技術については、これまで物質をカプセルに内包することによって機能を発現
する静的な活用方法に関する研究開発は行われているが、カプセルに内包された物質を外部か
らの熱的、電気的、光学的、磁気的等の外部刺激によりカプセル本来の機能を動的に制御する
ための研究開発は遅れており、この基盤技術の確立は今後の産業への応用が期待されている。
以上の観点から、カプセルに内包された物質を外部刺激により動的に制御するための基盤技
術を確立するため、ナノ機能粒子のカプセル成形技術の応用分野として、有機EL材料と並ん
で新たな需要が期待できるフルカラー画像表示材料を対象とし、本プロジェクトの研究項目①
②で得られたカプセル成形技術及びナノ機能粒子表面物性制御技術を活用した薄膜画像表示デ
バイスの作成を試み、必要な評価技術の確立に取り組むとともに、薄膜画像表示デバイスの基
盤技術を確立する。
2.研究開発の具体的内容
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を利用した薄膜画像表示デバイスの試作にあたっては、独
立したカプセル柔軟性を最大限に利用したフレキシブルな薄膜画像表示デバイスを開発するた
め、以下の項目を実施する。
(1)カプセル成形技術を薄膜画像表示デバイスに活用するために必要な外部刺激による動的
制御のための基盤技術の確立及び原理解明。
(2)カプセル成形技術を活用した薄膜画像表示デバイスを試作するために必要なカプセル配
列技術、電極材料・電極パターニング技術、画像制御技術等を開発する。
(3)試作された画像表示デバイスの機能特性を評価する技術を確立する。
3.達成目標
画像表示デバイスの試作を行なうことにより、以下の目標を達成する。
【中間目標】
電極材料を開発し、線幅50μmでの電極パターニング技術を開発し、画像表示デバイスの
動作確認を行なう。
【最終目標】
(1)外部刺激による動的制御のための基盤技術を開発する。
(2)画像表示・制御電極材料及び導電性有機材料の低抵抗率を達成するとともに、薄膜成形
技術開発する。画像表示デバイスの動作印加電界を1V/μm以下とする。
(3)カプセルの配列技術、電極材料を開発し線幅10μmでの電極パターニング技術を開発
する。
(4) 応答速度1秒で5cm角の画像書換可能なフルカラー画像表示デバイスを開発する。
ナノテクノロジープログラム
ナノ加工・計測技術
機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト基本計画
(平成15年度以降)
1.研究開発の目的・目標・内容
(1)研究開発の目的
物質をナノレベルで制御することにより、物質の機能・特性を飛躍的に向上させ、また、大
幅な省エネルギー化、大幅な環境負荷低減を実現し得るなど、広範な産業技術分野に革新的発
展をもたらし得るキーテクノロジーである「ナノテクノロジー」を確立し、得られた成果等の
知識の体系化を図ることで、我が国の産業競争力の源泉として、我が国経済の持続的発展に寄
与する技術的基盤の構築を図るため、超微細な物質構造を創製するプロセス技術及び計測技術
を開発するとともに、産業化に向け、得られる物質機能を向上・維持する成形・加工技術、評
価技術を開発し、超微細構造制御機能創製、加工、計測に係る基礎・基盤的技術の構築を図り
つつ、得られたデータ、知識(既存の知識を含む)について構造、機能、プロセスの視点から
体系化し、広範な分野において活用可能な知識基盤を平成19年度までに整備することを目標
とする「ナノテクノロジープログラム」のうちナノ加工・計測技術の一環として、本プロジェク
トを実施する。
ナノスケールで構造制御(粒子径、粒子径分布等)された超微粒子(以下「ナノ機能粒子」
という)は従来にはない新規かつ特異的な機能を有することが知られているが、これらナノ機
能粒子には凝集や化学的な不安定性による酸化反応等による機能の低下が認められ工業化(産
業化)させるためには特異的な機能を有するナノ機能粒子を安定な高分子薄膜で包み込むカプ
セル成形技術が重要なナノ加工技術として認識されている。
しかしながら、現在までに安定な高分子薄膜によるカプセル成形技術において、カプセル径
及びそのカプセル径分布の精密制御技術は確立されていない。
本プロジェクトでは、カプセル成形技術の実用化として新規画像表示デバイスを最終目標と
しつつ、医農薬分野等他分野への活用が可能となる基盤技術を開発する。これにより、化学、
電子、光、触媒、医農薬等の広範な産業分野に応用可能な新材料の創出に資する。
当該研究開発事業は、経済産業省において研究開発の成果が迅速に事業化に結びつき、産業
競争力強化に直結する「経済活性化のための研究開発プロジェクト(フォーカス21)」と位
置づけられており、次の条件のもとで実施する。
・技術的革新性により競争力を強化できること
・研究開発成果を新たな製品・サービスに結びつける目途があること
・比較的短期間で新たな市場が想定され、大きな成長と経済波及効果が期待できること
・ 産業界も資金等の負担を行うことにより、市場化に向けた産業界の具体的な取組が示され
ていること
本プロジェクトにおいては、具体的には、成果に向けた、実施者による以下のような取組を
求める。
・エネルギー需給構造の高度化を図る観点から行うものであり、電場応答する顔料粒子を耐
候性に優れた透明高分子薄膜で包み込んだ機能性カプセルを活用して、画像書換時にのみ
電力を消費する新たな画像表示媒体であるフルカラーリライタブルペーパーの創成を図る。
なお適切な時期に実用化・市場化状況等について検証する。
(2)研究開発の目標
平成17年度までに、ナノスケールで構造・機能制御された微粒子をナノ薄膜でカプセル化
するための設計指針及び製造技術の基盤を確立するとともに、画像表示材料を創製し、画像表
示デバイスのプロトタイプを作成する。
(3)研究開発の内容
上記目標を達成するために、以下の研究項目について、別紙の研究開発計画に基づき研究開
発を実施する。
①カプセル成形技術
②ナノ機能粒子表面物性制御技術
③ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価
2.研究開発の実施方式
(1)研究開発の実施体制
本研究開発は、平成14年度は経済産業省産業技術環境局研究開発課及び製造産業局化学課
において基本計画を策定し事業を実施したものであるが、平成15年度以降は、NEDOにお
いて委託して実施する。なお、研究開発実施者の選定にあたっては、NEDOの協力の下、平
成14年7月経済産業省において選定。平成15年度以降は、実質的に継続事業であるため、
原則NEDOにおいて公募による研究開発実施者の選定は行わない。
共同研究開発に参加する各研究開発グループの有する研究開発ポテンシャルの最大限の活用
により効率的な研究開発の推進を図る観点から、研究体はNEDOが指名した千葉大学工学部
情報画像工学科
北村孝司教授を研究開発責任者(プロジェクトリーダー)とし、その下に可
能な限り結集して効果的な研究開発を実施する。
(2)研究開発の運営管理
研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDOは、経済産業省及び研究開発責任者と密
接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに、本研究開発の目的及び目標に照
らして適切な運営管理を実施する。このため、必要に応じてNEDOに設置する技術検討会等、
外部有識者の意見を運営管理に反映させる他、四半期に一回程度プロジェクトリーダー等を通
じてプロジェクトの進捗について報告を受けること等を行う。
3.研究開発の実施期間
本研究開発の期間は、平成14年度から平成17年度までの4年間とする。
4.評価の実施
NEDOは、国の定める技術評価に係わる指針及びNEDOが定める技術評価実施要領に基づ
き、技術的、実用化及び産業技術政策的観点の観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果
の技術的意義並びに将来の産業への波及効果等について、外部有識者による研究開発の事後評
価を平成18年度に実施する。なお、評価の時期については、当該研究開発に係る技術動向、
政策動向や当該研究開発の進捗状況に応じて、前倒しする等、適宜見直すものとする。
5.その他の重要事項
(1)研究開発成果の取り扱い
ⅰ.成果の普及
得られた研究成果については、NEDO、実施者とも、学会発表、ホームページでの情報公
開、シンポジウム開催等により普及に努めることとする。
ⅱ.知的基盤整備事業又は標準化等との連携
得られた研究成果については、知的基盤整備または標準化等との連携を図るため、データベ
ースへのデータの提供並びに、必要に応じて標準情報(TR)制度への提案等を積極的に行う。
ⅲ.知的所有権の帰属
委託研究開発の成果に関わる知的所有権については、
「新エネルギー・産業技術総合開発機構
産業新エネルギー業務方法書」第43条の規定等に基づき、原則として、全て委託先に帰属さ
せることとする。
(2)基本計画の変更
NEDOは、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的状況、内外の研究開発動
向、産業技術政策動向、プログラム基本計画の変更、第三者の視点からの評価結果、研究開発
費の確保状況、当該研究開発の進捗状況等を総合的に勘案し、達成目標、実施期間、研究開発
体制等、基本計画の見直しを弾力的に行うものとする。
(3)根拠法
本プロジェクトは、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)第
21条の2第1号に基づき実施する。
(4)その他
NEDO、実施者とも、研究開発の実施に関し、ナノテクノロジープログラム内の各プロジ
ェクト間の情報交換に努めることとする。
研究開発成果の実施について、プロジェクトの参加者は、他の参加者の有する特許、ノウハウ
等に関して、実施許諾を求める話し合いをすることができるものとする。ただし、その情報の
開示等については、その情報に係る権利を有する参加者との交渉に依ることは当然とする。
6.基本計画の改訂履歴
(1)平成15年3月策定。ただし、本事業は、平成14年度に、経済産業省の直轄事業とし
て開始され、経済産業省において基本計画が策定されている。
(別紙)研究開発計画
研究項目①「カプセル成形技術」
1. 研究開発の必要性
ナノスケールで構造制御されたナノ機能粒子の操作性を向上させるあるいはナノ機能粒子を
長期間安定に保持するための方法として、安定な高分子薄膜からなるカプセルに内包する技術
が強く求められている。この要求に答えるためには、カプセル径やカプセル膜厚を精密に制御
したカプセルの創製が必須であり、これによってナノ機能粒子の機能を充分に発揮させること
が可能になる。以上の観点から化学的技法や物理化学的技法などの既存のカプセル化技術に関
する知見を基礎としつつ、カプセル膜形成機構の解析及び特性評価・計測技術に基づくカプセ
ル膜合成技術を確立し、カプセル成形技術を体系的にまとめることが必要である。なお、均一
なカプセル膜、単分散なカプセル径分布を有するカプセルの応用範囲は広いが、本プロジェク
トでは、電子・情報分野、材料分野及び医農薬分野で有効に作用するナノ機能粒子を内包する
カプセルの特性を生かすための技術開発を重点化し実施する。
2. 研究開発の具体的内容
新規画像表示デバイスへの活用を最終目標にしつつ基盤技術を確立することを目的とし、本
研究開発では、内包されるナノ機能粒子の機能性を最大限に発現させるため、それぞれの機能
性を付与したカプセル成形技術について、以下の項目を実施する。
(1)化学的技法(界面反応法、In situ 重合法等)や物理化学的技法(相分離法、液中乾燥法
等)によるカプセル成形技術について、単分散エマルション及び高分子カプセルの加工技
術(カプセル径分布制御加工技術)、カプセル径やカプセル膜厚を高精密に制御する技術(カ
プセル径・カプセル膜厚制御加工技術)を開発する。
(2)研究項目αで検討するナノ機能粒子を高効率で内包するためのプロセス因子の抽出を行
いカプセル膜内表面とナノ機能粒子との相互作用に関する知見を集積することで、カプセ
ル内部でのナノ機能粒子の分布を制御する技術を開発する。
(3)カプセル成形技術における製造プロセス条件と内包するナノ機能粒子等の機能発現との
関連性を明確にし、各技法での物性・機能を体系的に整理する。
(4)内包物をナノ薄膜でカプセル化するに必要な膜特性(高透明性や耐候性及び強度等の機
能)を評価する手法を開発する。
3. 達成目標
透明性や強度に優れる等の高機能性を付与した高分子カプセルの製造が可能な技術を確立す
るため、カプセル径・カプセル膜厚制御等のカプセル形成に関する基盤技術を体系化する。ま
た具体的には以下の目標を達成する。
【最終目標】
・屋外耐光:
3ヶ月以上
・透明性:
透過率80%以上
・添加した芯物質の内包率:
90%以上
・カプセル径:
1~50μm
・カプセル径分布:
CV10%以下
・カプセル膜厚:
50~500nm
・カプセル成形技術・機能発現及び機能最適化について得られた一連の検討結果を、構造的体
系的に整理し、データベース化する。
(別紙)研究開発計画
研究項目②「ナノ機能粒子表面物性制御技術」
1. 研究開発の必要性
一般的に、構造制御されたナノ機能粒子には付着・凝集等により機能の低下がみられ、本来
有する機能を充分には発揮していない。このように、ナノ機能粒子の均一な分散技術はナノ機
能粒子の機能を最大限に引き出すためには極めて重要な技術であるにもかかわらず未だ充分に
確立した技術とは言えない。さらに、カプセルに内包された状態においてもカプセル膜内部へ
のナノ機能粒子の付着・凝集等による機能低下を防ぐため、ナノ機能粒子の表面及び界面の精
密制御や界面におけるナノ機能粒子とカプセル膜との相互作用に関する知見などが必要とされ
るが、現在までにこれら技術の基盤の確立並びに技術の体系化は達成されていない。
以上の観点から、カプセルを構成する高分子表面とナノ機能粒子との界面における物理化学
的挙動に着目しつつ、精密に帯電制御されたナノ機能粒子を均一に分散させる技術を開発する。
2. 研究開発の具体的内容
本研究開発では、研究項目③で活用するナノ機能粒子の材料として顔料微粒子、セラミック
微粒子、金属微粒子等の着色物質を対象とし、ナノ機能粒子の合成及び媒体中におけるナノ機
能粒子の分散安定化技術や帯電制御技術等の表面修飾技術を開発するため、以下の項目を実施
する。
(1)ナノ機能粒子を化学的技法や物理的・機械的技法によって製造するプロセスについて、
粒径や粒径分布及び吸光特性等の機能性を制御する技術を開発する。
(2)ナノ機能粒子表面における帯電制御剤の化学的あるいは物理的な吸着を利用した表面修
飾やナノ機能粒子と帯電制御剤とによる複合材料の創製などにより、媒体中におけるナ
ノ機能粒子の電気泳動移動度を精密制御する技術を開発する。
(3)ナノ機能粒子表面を低分子系あるいは高分子系の分散剤による表面修飾を施し、媒体中
で長期間安定に分散させることが可能な分散安定化技術を開発する。
3. 達成目標
媒体中での分散安定性や帯電特性等の機能性に関するナノ機能粒子の表面物性制御技術基盤
を確立し、長期間にわたり安定した高速移動性を有するナノ機能粒子を開発するため、以下の
具体的目標を達成する。
【最終目標】
・粒径:
20~200nm
・粒径分布:
CV10%以下
・吸光係数:
W・B系のほかR・G・B系あるいはY・M・C系の4色で、その吸光係数が
それぞれ20,000cm −1以上
・帯電特性:
設計値からの変動が±10%以内
・分散安定性:1ヶ月以上(凝集率10%(重量)以内)
(別紙)研究開発計画
研究項目③「ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価」
1. 研究開発の必要性
カプセル成形技術については、これまで物質をカプセルに内包することによって機能を発現
する静的な活用方法に関する研究開発は行われているが、カプセルに内包された物質を外部か
らの熱的、電気的、光学的、磁気的等の外部刺激によりカプセル本来の機能を動的に制御する
ための研究開発は遅れており、この基盤技術の確立は今後の産業への応用が期待されている。
以上の観点から、カプセルに内包された物質を外部刺激により動的に制御するための基盤技
術を確立するため、ナノ機能粒子のカプセル成形技術の応用分野として、有機EL材料と並ん
で新たな需要が期待できるフルカラー画像表示材料を対象とし、本プロジェクトの研究項目①
②で得られたカプセル成形技術及びナノ機能粒子表面物性制御技術を活用した薄膜画像表示デ
バイスの作成を試み、必要な評価技術の確立に取り組むとともに、薄膜画像表示デバイスの基
盤技術を確立する。
2. 研究開発の具体的内容
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を利用した薄膜画像表示デバイスの試作にあたっては、独
立したカプセル柔軟性を最大限に利用したフレキシブルな薄膜画像表示デバイスを開発するた
め、以下の項目を実施する。
(1)カプセル成形技術を薄膜画像表示デバイスに活用するために必要な外部刺激による動的
制御のための基盤技術の確立及び原理解明。
(2)カプセル成形技術を活用した薄膜画像表示デバイスを試作するために必要なカプセル配
列技術、電極材料・電極パターニング技術、画像制御技術等を開発する。
(3)試作された画像表示デバイスの機能特性を評価する技術を確立する。
3. 達成目標
画像表示デバイスの試作を行なうことにより、以下の目標を達成する。
【最終目標】
(1)外部刺激による動的制御のための基盤技術を開発する。
(2)画像表示・制御電極材料及び導電性有機材料の低抵抗率を達成するとともに、薄膜成形
技術開発する。画像表示デバイスの動作印加電界を1V/μm以下とする。
(3)カプセルの配列技術、電極材料を開発し線幅10μmでの電極パターニング技術を開発
する。
(4) 応答速度1秒で5cm角の画像書換可能なフルカラー画像表示デバイスを開発する。
プロジェクト用語集
リライタブルペーパー:
エネルギーが加えられる事により可視画像を形成し、その画像がエネルギーなしに保持でき、
再びエネルギーが加えられる事によって画像が消去でき、何度でも書き換えできる紙のような
記録媒体。ディスプレイとの大きな違いは、エネルギーなしに画像を保持する点であり、この
特徴から紙の代替として、ロイコ染料を用い、熱を加えることで印字/消去を行なう書き換え可
能なプリンター用紙が開発されている。
自己修復(崩壊):
自己修復にカプセルを用いる例としては、液体の修復材が入ったマイクロカプセルと修復材
を硬化させる物質を複合して混ぜ込んだエポキシ樹脂が挙げられる。これは材料にひび割れが
起こるとカプセルが割れ、修復材が割れ目を満し、それが触媒により硬化して割れ目を接着し、
細かなひび割れを自己修復するものである。
カプセルの崩壊効果を利用したものとしては、カプセルが筆圧で壊れるノンカーボン紙(カ
プセル実用化の草分け)、或いは、富士フフイルムが開発した圧力検出シート、プレスケール
等が挙げられる。その原理は、カプセル中の発色剤が圧力で破壊され顕色剤と反応し、加えた
圧力に従って発色する事から、発色濃度によって加えた圧力を求めるもの。
(白色)反射率:
表示素子に光を当て、積分球により全方位に拡散した光を集め、反射光量/入射光量をパーセ
ント表示した値(完全拡散板の値を100%とする)で定義されるが、当プロジェクトでは、表示素
子に45度方向から入射させた光の90度方向への反射光量を測定し、反射光量/入射光量値の
パーセント表示を使用している。
コントラスト:
反射型の表示装置においては、白、黒表示における反射率の比(反射率(白)/反射率(黒))で表さ
れる。
単純駆動:
単純マトリクス駆動:2枚の基板に挟まれた表示素子において、一方の基板に碁盤の目のよう
に多数の直交する画素電極を配置し、他方の基板は全面を電極として、基板をはさんで、碁盤
の目の交点に電圧をかける事で、画像を形成させる表示素子の駆動方式。表示品質はアクティ
ブマトリクスに比べ低いが、安価にできる。
アクティブ駆動:
アクティブマトリクス駆動:単純マトリクスの電極直交交点に、アクティブ素子(トランジ
スター)を配置したもの。各交点をアクティブ素子で駆動するため、スイッチング動作が厳密
に行え、表示品質は極めて高い。単純マトリクスに比べコスト高。
電気泳動方式:
電圧印加により、微粒子分散液(炭化水素系を代表とする非極性溶媒中に帯電した微粒子を分
散)を挟む二つの電極間で微粒子が移動する現象を利用する表示方式。表面の透明電極に対し、
逆極性の粒子が泳動し、その粒子の色を見る事が出来る。
単分散カプセル技術
粒径が均一であるカプセルを調製する技術
SPG膜乳化
SPG とは、昭和56年、宮崎県工業試験場が南九州に豊富なシラスを主原料に開発した新素材
で、Shirau Porous Glass(シラス多孔質ガラス)の略称であり、ミクロンサイズの均一な細孔
を無数に有し、その大きさを自由に変えられる。
SPG 膜乳化法は、均一な細孔を有する多孔質膜(SPG)に分散相を通し、分散させること
により、連続的に単分散エマルションを生成する乳化技術であり、1) 従来の高速攪拌、高圧
乳化、超音波乳化と比べて、粒子のそろった安定したエマルションが生成できる。 2) SPG
の細孔を変えることによりエマルションの粒子設計ができる。 3) 従来法と異なり、熱影響の
ない方式である。 4) 従来法では困難な技術とされていた、粒子の中に粒子が存在するダブル
エマルションを比較的容易に作ることができる。等の特徴を有し、現在、食品、化学品、化粧
品、医薬品等の分野で研究開発が進められており、すでに食品や化学品分野では膜乳化法を利
用した製品が上市されている。
相分離法
相分離法とは、ポリマー溶液からポリマーを相分離させてカプセル壁とする方法で、コアセ
ルベーションを利用するゼラチンカプセル、ゼラチン/アラビアゴムカプセル、さらには In
situ 重合による尿素−ホルマリンカプセル、メラミン−ホルマリンカプセルなどが挙げられる。
EC方式
電気化学的な酸化還元によって引き起こされる物質の色調、色彩の可逆的変化をエレクトロ
クロミズム(Electrochromism:EC)と言い、多色発色の可能性、低電圧駆動、メモリー性などの
特徴から、デジタルペーパー等の反射型の表示素子としての研究開発が進められている。
CV
母集団の母標準偏差 σ と母平均 μ との比率 σ / μ を変動係数 CV (coefficient of
variation)と呼び、通常この値は100倍した百分率で表示される。 CV = σ / μ
Ⅰ. 事業の位置付け・必要性について
1. NEDOの関与の必要性・制度への適合性
1.1 NEDOが関与することの意義
現在我が国の製造業における化学産業の出荷額は輸送機器製造業に次いで第2位であり、付
加価値は第1位となっている。特に半導体材料、液晶材料分野では圧倒的な強みを持っており、
今後とも我が国が高度部品・材料産業分野で優位性を維持するためには、このような創造型の
部材開発が不可欠である。
その中でナノテクノロジーは部材開発における基盤技術であるにもかかわらず、技術レベル
を欧米と比較すると、半導体やナノコンポジット関係では欧米をリードするものの、他の全て
で遅れをとっており、国家的なレベルで研究開発が行われなかった場合、社会的に多大な損失
の発生が見込まれている。
ナノテクノロジー・材料分野は、第二期科学技術基本計画、産業技術発掘戦略の両方で国家
戦略の重点4分野の一つと定められている。
さらに平成15年度には経済産業省により、ライフサイエンス分野、環境分野、情報通信分
野、およびナノテクノロジー・材料分野などの重点4分野で、研究開発の成果 が迅速に事 業化
に結びつき 、産業競争 力強化に直 結するよう な経済活性 化のための 研究開発プ ロジェクト
「フォーカス21」が創設され、当プロジェクトは、ナノテクノロジー・材料分野の「フォー
カス21」プロジェクトとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(「NEDO」)が研究
開発の運営管理を行うに至っている。
プロジェクトが最終ターゲットとしている電子ペーパーは、ナノテクノロジーを基盤技術と
し、紙と同様な利便性を持ちながら、書き換え可能な表示媒体を目指すものであり、将来大き
な市場が見込まれていて既に一部実用化されているにもかかわらず、デファクトスタンダード
となる方式が定まらず、米国、欧州、日本、アジア(韓国、台湾)の間で激しい開発競争が繰
り広げられている。
この電子ペーパー開発における研究分野は、ナノ機能粒子としての
(1) 粒径や粒径分布および吸光特性などの機能制御技術、
(2) 媒体中の電気泳動のための帯電制御技術、
(3) 媒体中の分散安定化技術 の開発、
さらにそれを電気泳動表示素子とするためにカプセル技術としての
(4) カプセル粒径や粒径分布、
(5)壁厚の制御技術、
(6) 壁にトラップされないカプセル壁/粒子相互作用の解明、
および表示素子として組み上げるための
(7) カプセルの配列技術、
(8) 駆動用電極技術
等のように、表示材料技術から画像制御技術にわたる広範囲な領域に渡っており、かつ最先端
の領域に属するため、これらを短期間で実施して海外との開発競争に勝利するには、民間によ
る分散的研究だけでは困難であり、資金面・人材面においては困難かつリスクが高く、NED
Oの元に、産学官の幅広い分野の第一線で活躍している研究者の参画を得て、集中的な研究開
発を実施する事が非常に重要である。
-1-
1.2 実施の効果(費用対効果)
1.2.1
費用
平成14年度~17年度(4年間)で約17億円を投じる。
1.2.2
効果
最終ターゲットとして考えている電子ペーパーは、当初2010年に約2000億円規模の
市場になると想定していたが、消費者ニーズにあったコンテンツの遅れ等により、普及が遅れ
気味ではあるが、2011年には1100億円程度の市場規模(テクノ・システム・リサーチ
社の調査)となり、その後の展開により2030年には数千億円程度になるものと予想されて
おり、プロジェクト終了後、プロジェクト内外の企業による市場調査、商品仕様検討、製造技
術開発 等を経て商品化が行われ、2015年頃に本格的な普及段階に達するものと予測されて
いる。
この電子ペーパーの普及により、現在大量に消費されている紙を削減する事が可能となり、
2010年に情報用紙・出版物の10%、新聞紙の10%が電子ペーパーに置き換わるとすれ
ば、その分の紙を生産・再生するためのエネルギーが不要となり、省エネルギー効果は原油9
5万Kl、CO 2 排出抑制量は480万トンに達し、2030年に印刷情報用紙・出版物の5
0%、新聞紙の100%が電子ペーパーに置き換わるとすれば、その分の紙を生産・再生する
ためのエネルギーが不要となり、省エネルギー効果は原油569万Kl、CO 2 排出抑制量は
2842万トンにも達する。
また電子ペーパーとして、書き換え時にのみ電力を消費する、低消費電力型の表示素子を用
いる事による省エネルギー効果は、2010年度で原油4.7万Kl、2030年で原油18.
8万Klに達する。
さらに開発されたナノ機能粒子、カプセル、表示材料等の技術は、塗料、接着剤、ドラッグ
デリバリーシステム、有機半導体 等の化学、電子・電気、機械、バイオ等の幅広い産業分野に
応用可能であり、新たな市場創出の可能性を秘めている。
2.事業の背景・目的・位置づけ
2.1
事業の背景
2.1.1
社会的背景
情報化社会にあっては、人と情報との媒体として、従来の紙媒体と共に様々な電子媒体が使
われて来ているが、長年にわたり維持されてきた紙の優位性、すなわち軽く薄く取り扱いやす
く、目に優しく読みやすく、かつ省電力である特長を持つ電子媒体の登場が強く期待されるよ
うになってきた。
さらにインターネットの普及もあって、2000年におけるPCの出荷台数は1千万台を越
え、今後も省スペース型、モバイル用ノート型PCの普及が続き、オフィスではPCが一人に
一台の割合で設置される時代を迎えている。このPCの増加に対応してプリンターや複写機の
伸びも大きく、世界のプリンター市場は台数で7300万台にも及び、消費する紙の量も膨大
なものとなっている。
我が国の2000年における紙・板紙の生産量は3182万トンであり、マイナスとなった
98年から再び増加に転じており、この内容は印刷・情報用が48%、包装・加工用が46.
5%、衛生用が5.5%であり、情報関連の用紙の占める割合が大きいことが分かる。
また我が国で2000年に出版・販売された書籍は7億7千万冊、雑誌は34億冊にも達し、
合計約42億冊の書籍・雑誌が販売され、さらに新聞の発行部数は5370万部にも達し、そ
のため341万トンの新聞用紙が生産されている。
-2-
このように大量に使用されている紙は、循環型社会においては、リサイクルはもちろん究極
的には使用量を削減する手段を施さざるを得ず、この点からも電子ペーパーの実用化が広く望
まれている。
すなわち電子ペーパーによる携帯情報表示端末は紙の役目をする事が可能であり、電子ブッ
クは書籍・雑誌のコンテンツを利用する事に、電子新聞は配達されている新聞の代わりとなる。
また想定している電子ペーパーは、コンテンツの書き換え時にのみ電力を消費するものであ
り、その消費電力は、現在の液晶表示素子の約50分の1、さらには有機EL表示素子の約7
0分の1程度であり、この低消費電力の点からも、さらなる少資源・省エネルギーが可能とな
る。
したがってナノテクノロジーを基盤とする電子ペーパーの開発は、省資源、省エネルギー、
環境問題対応の面からも急務であり、循環型社会システム構築には必須な技術といえる。
2.1.2
技術的背景
近年 IT で成長著しい情報表示・記録の分野に、カプセル化技術が広く利用されている。感圧
複写紙やプリンターには早くからその技術が利用され、現在も複写伝票などに利用され、カプ
セルサイズを微小化できる技術の進歩につれ、デジタル画像を高精細で表示できる媒体、プリ
ンターなどの情報を人間に知覚させる技術に役立っている。
一方電子ペーパーは、「紙」のように軽く薄く取り扱いやすく、「紙」のように目に優しく読
みやすく、かつ省電力ナ画像表示媒体として、その登場が期待され、数多くの方式が提案されて
いる。
電気泳動方式は電子ペーパーの有力候補であり、
「 複数のナノサイズの顔料を含む微小な粒子
滴を安定させ、その周囲に極薄膜のカプセル壁を形成させる」 等の技術開発が必要であり、前
述した、ナノ機能粒子、カプセル形成技術、表示材料に関する三つのキー技術開発として、愚
具体的に以下の3つの研究開発テーマを実施する事が必要である。
①カプセル成形技術
②ナノ機能粒子表面物性制御技術
③ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価
2.2
事業の目的
ナノスケールで構造制御(粒子径、粒子径分布等)された超微粒子(以下「ナノ機能粒子」
という)には、従来にはない新規かつ特異的な機能を有することが知られているが、これらナ
ノ機能粒子にはその広い表面積ゆえに、凝集や化学的な不安定性による酸化反応等による機能
の低下が認められ工業化(産業化)させるためには特異的な機能を有するナノ機能粒子を安定
な高分子薄膜で包み込むカプセル成形技術が重要なナノ加工技術として認識されている。
しかしながら、現在までに安定な高分子薄膜によるカプセル成形技術において、カプセル径
及びそのカプセル径分布の精密制御技術は確立されていない。
本プロジェクトは、カプセル成形技術の実用化として新規画像表示デバイスを最終目標とし
つつ、医農薬分野等他分野への活用が可能となる基盤技術を開発し、これにより、化学、電子、
光、触媒、医農薬等の広範な産業分野に応用可能な新材料の創出に資する事を目的としている。
2.3
事業の位置づけ
2.3.1
国の政策における位置づけ
ナノテクノロジー・材料分野は、第二期科学技術基本計画、産業技術発掘戦略の両方で国家
戦略の重点4分野の一つと定められ、その中で経済産業省産業技術環境局研究開発課及び製造
-3-
産業局化学課により基本計画が策定され、平成14年度から経済産業省の直轄事業としてスタ
ートした。
さらに平成15年度には経済産業省により、ライフサイエンス分野、環境分野、情報通信分
野、およびナノテクノロジー・材料分野などの重点4分野において、研究開発の成果が迅 速に
事業化に結 びつき、産 業競争力強 化に直結す るような経 済活性化の ための研究 開発プロジ ェ
クト「フォーカス21」が創設され、当プロジェクトは、ナノテクノロジー・材料分野の「フ
ォーカス21」プロジェクトとして、平成15年以降は新エネルギー・産業技術総合開発機構
(「NEDO」)が研究開発を委託し、運営管理を行うに至っている。
なお本プロジェクトは、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)
第21条の2第1号に基づき実施するものである。
2.3.2
関連する国内外の技術開発動向等における位置づけ
現在、 電子ペーパーとして研究されている技術を下表の様にまとめた。
この中で物理的な変化を利用し、電圧によって動作させるもの(殆ど電流は流れない)が、省
エネルギーの点から優れており、さらに紙に近い白色度、表示のコントラストの点から、粒子
移動を利用するものが優れている。
書換え要素
物理的
分子
粒子
化学的
電気
分子
光学異方性
バ
イ
ス
動作エネルギー
コレステリック液晶/光導電層積層
光/電圧
カイラルネマチック液晶
電圧
高分子強誘電性液晶
電圧
染料分子配向
高分子分散液晶・2色性染料
電圧/熱
粒子移動
マイクロカプセル型電気泳動
電圧
液体トナー電気泳動
電圧
粉体トナー移動
電圧
電子粉流体移動
電圧
粒子回転
ツイストボール
電圧
光散乱/相変化
透明白濁型リライタブル
熱
発消色/相変化
ロイコ染料発消色型リライタブル
熱、レーザー
イオン
銀イオン・固体電解質
電流
エレクトロクロミック
電流
MEMS
電圧
化学的
機械的
デ
薄膜移動
昨年、2004年には電子書籍用携帯端末が電子ブックとして発売され話題を呼んだ。そこ
に搭載された表示部の一つはマイクロカプセル型電気泳動方式であり、紙のような見やすさ、
低消費電力、携帯性を実現しており、特に反射型表示媒体の文章や線画の表示は発光型表示と
異なり視野角依存性がなく大変読みやすく見やすいことを実感することができた。
しかし、電子ペーパーが最終目標としている紙のような白色度、カラー化、薄膜軽量、そし
てフレキシブルという特長は未だ実現されておらず、本プロジェクトではこれらの観点から、
粒子移動方式に注目し、その中で紙のような白色度、カラー化、そしてフレキシブル化を実現
し得る技術の開発を目指している。
-4-
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
1.事業の目標
1.1
全体目標
本プロジェクトは、カプセル成形技術の実用化として新規画像表示デバイスを最終目標としつつ、
構造・機能の制御された微粒子をナノ薄膜でカプセル化するための設計指針、及び製造技術等の要
素技術の確立、並びにカプセル成形技術の医農薬分野等他分野への応用展開を可能とする基盤技術
の確立を目標としており、これにより、化学、電子、光、触媒、医農薬等の広範な産業分野に応用
可能な新材料の創出に資する事が出来る。
このため本プロジェクトでは、平成17年度までにナノスケールで構造・機能の制御された微粒
子を、ナノ薄膜でカプセル化するための設計指針および製造技術の基盤を確立すると共に、画像表
示材料を創製し画像表示デバイスのプロトタイプを作成することを目標としている。
これらの目標を達成するため、以下の三つの項目に関する研究開発を行う。
①
カプセル成形技術
②
ナノ機能粒子表面物性制御技術
③
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価技術
1.2
研究開発項目毎の目標
1.2.1
①
目標設定の根拠
カプセル成形技術
構造制御されたナノ機能粒子の操作性を向上させる、あるいはナノ機能粒子を長期間安定に保持
するための方法として、安定な高分子薄膜からなるカプセルにナノ機能粒子を内包する技術が求め
られている。このため従来から知られている化学的手法や物理化学的手法などのカプセル化技術に
関する知見に基づき、ナノ機能粒子を内包し、かつ最適なカプセル径、カプセル壁厚を有するカプ
セルの形成技術を確立し、体系的に纏める事が必要となって来ている。
ナノ機能粒子についてはその種類・応用範囲も広く、またそれを内包するカプセルについても最
適な粒径、壁厚等が広い範囲に渡るため、本プロジェクトでは、主として表示材料、特に電気泳動
方式、あるいは気中移動方式による表示素子に用いる粒子内包カプセル、および医農薬分野などの
他分野で用いられる粒子内包カプセルに関するカプセル成形技術の開発を行う。
以下に、主として表示素子に用いられるカプセルを想定した場合、最低限必要となる特性とその
数値目標を示す。
項目
目標
目標設定理由
屋外耐光
3ヶ月以上
表示素子の主な用途のひとつと想定される携帯電話で
は、更新期間が約1年程度である事から、その屋外使用
時間を1日4時間と見積もり目標とした。
透明性
80%以上
表示素子ではカプセル壁を通して内包粒子を見るため、
カプセル壁は、通常の透明プラスティックに近い透明性
が必要。
添加し た芯物質
の内包率
90%以上
内包粒子の量は、表示素子においては光学濃度、色相を
決め、外部に存在する内包されない粒子はコントラスト
低下をもたらすため、高い内包率が要求される。
-5-
カプセル径
1~100μm
表示素子では各々のカプセルに電圧を印加するため、単
カプセル径分布
CV10%以下
カプセル層を形成する事が必要であり、表示の光学濃度
は単カプセル層の厚みで決まるため、径が数十μmに揃
ったカプセルが必要。
なお医農薬分野では、より小サイズのカプセルも必要と
されている。
カプセル壁厚
50~5000nm
カプセル壁厚はカプセルの力学強度を決めるが、壁厚が
厚くなるとその分表示のコントラストが低下するため、
カプセル径の5%の厚さを目標とする
②
ナノ機能粒子表面物性制御技術
一般的にナノ機能粒子は、極めて大きい表面積のため付着・凝集等が起こりやすく、機能低下が
起こっており、その機能を最大限に引き出すためにも、ナノ機能粒子を均一に分散する技術が重要
になっていた。
さらに、表示素子においては、カプセルに内包されたナノ機能粒子が、カプセル壁へ付着するあ
るいはカプセル内で凝集する事を防ぐ事が必要であり、ナノ機能粒子を電圧印加によって電気泳動
あるいは気中移動させるため、ナノ機能粒子の帯電性を制御する事も必要となっていた。
そのため、ナノ機能粒子の合成技術を開発し、形状/粒径/粒径分布の制御されたナノ機能粒子(主
として電気泳動粒子、粉流体粒子)を合成し、得られるナノ機能粒子の帯電(ζ電位)制御、および媒
体中での分散安定化に必要な表面物性制御技術を開発するため、以下の目標を設定した。
項目
目標
目標設定理由
粒径
電気泳動方式
カプセルに内包することが前提であり、カプセル粒径よ
20~1000nm
り小さい事が前提であり、電気泳動方式では着色粒子は
気中移動方式
細かくても良いが、白色粒子は散乱強度がサブミクロン
0.5~5μm
のサイズで最大になる事、また気中移動方式では粉体を
大気中で扱うため、サブミクロン以上のサイズが適当で
粒径分布
CV10%以下
ある事から目標を設定。
また粒子の移動速度、カバリングパワーの点から、粒径
は揃っている事が好ましい。
吸光係数
W、B系のほかRG
1μ径の小サイズカプセルでも、光学濃度1.5以上を
B系またはYMC系
確保するために必要な吸光係数を見積もった結果を目標
の4色で、その吸光
として設定。
係数が20,000
cm-1以上
帯電特性
分散安定性
帯電量/ζ電位の設
帯電量/ζ電位の値が変化すると、表示素子の表示特性が
計値からの変動が±
変化し表示ムラが発生するため、実用上問題のないレベ
10以内
ルに目標を設定。
1カ月経過後に凝集
凝集により表示ムラが発生するため、実用上問題のない
率10%以内
レベルに目標を設定。
-6-
③
ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価
これまで物質をカプセルに内包する事によって機能を発現させる研究開発は行われているが、カ
プセルに内包された物質を、外部からの熱的、電気的、光学的、磁気的等の外部刺激により動的に
機能させる研究開発は遅れており、この技術を今後の産業へ応用する事が期待されている。
そのためカプセル成形技術の応用分野として、有機EL材料と並んで新たな需要が期待できるフ
ルカラー画像表示素子の実現を目標に、カプセルの配列技術を用いた電気泳動方式のフルカラー表
示素子、および粉流体を用いる表示素子、更にはエレクトロクロミック素子を重層したフルカラー
表示素子等のプロトタイプを試作し、特性評価する事で、技術的な問題点を明確にすると共に、今
後のフレキシブル化を実現するための、ウエットプロセスによる電極パターニング技術、およびア
クティブ素子作成の基盤技術を開発するために、以下の最終目標を設定する。
項目
目標
目標設定理由
カプセル化画像表 ・熱、電気などの外部刺激を用いて赤、青、 ・ 1画素あたりの発色数が多いほど
示デバイスの外部
緑などの組み合わせにより多色発色が可
高精彩画像を表示でき、かつ1画
刺激による機能制
能なナノ機能粒子を内包する材料を開発
素から複数の色を表示できる事で
御技術
する。
駆動システムとしての簡便化、デ
・外部刺激による動的制御のための基盤技
バイスとしての利用価値が高ま
る。
術を開発する。
・ 薄膜型表示デバイスとして利用す
るため十分なコントラストが必要
である。
表示用電極に用い ・ 真空プロセスを用いず、ウェットセスに ・ フレキシブルな基板上への高精細
る材料/パターニン
より、線幅50μm で電極パターニング
な画像表示を目指す。柔軟でかつ
グ技術
できる有望技術、材料を開発し、画像表
高精細化できる電極が必要であ
示用低抵抗電極とする。
る。
・ ウェットプロセスにより、アクティブ素
子を用いた画像制御電極を作製する。
表示カプセルイン ・ 青(B)、緑(G)、赤(R)のパターンにカプセ ・ フルカラー表示のためには独立し
キ層の設計および
ル配列できる技術を開発する。
その成形技術
た3原色の表示が必要であり、画
素を構成する3原色を規則的に配
列する必要がある。
画像表示材料の開 下記スペックのサンプルを作成する。
発と機能評価に関 ・ 5cm 角
する基盤技術
・ 実用化可能な画像表示デバイスと
して展開することが目的である。
・ 20×20 ドット(50×50 ドット)
そのための動作原理を確認する最
・ 書き換え可能
低必要なスペックとした。
・ 応答速度3秒程度以下(1秒以下)
・ 動作印加電界1V/μm以下
-7-
2.事業の計画内容
2.1
研究開発の内容
本プロジェクトの期間は平成17年度までの4年間と短く、基盤技術の確立後画像表示デバイ
スを開発する通常の二段階の研究を行う時間的な余裕がないため、以下①~③の項目を同時並行で
実施し、最終段階で開発した技術を集大成してプロトタイプを作成する事とする。
①
カプセル成形技術
②
ナノ機能粒子表面物性制御技術
③
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価技術
下図で研究項目間の関係を示すと共に、以下に各研究項目の実施内容を詳細に説明する。
研究課題
研究の流れと目標
① カプセル成形技術開発
単分散技術
微粒子合成技術
耐候性技術
分散技術
帯電制御
② ナノ機能粒子表面物性制御技術開発
高強度壁技術
分散安定性1ヵ月以上
白黒粒子
複数の可能性か
ら製法を絞る
カラー粒子
モノクロ
モノクロ
リライタブル
リライタブル
ペーパー
ペーパー
カプセル成形
カプセル成形
カラー
カラー
リライタブル
リライタブル
ペーパー
ペーパー
③ 画像表示材料開発と機能評価
ナノ機能材料
探索
粒子電界
移動
モノクロ画
像材料創製
カラー画像材料創製
電界発消色粒子
モノクロ画像
評価
表示動作確認
フレキシブルな
制御電極材料
2002
2.1.1
多色発消色粒子
制御電極の
パターニング
2003
カプセル配列
パターニング
2004
カラー画像
評価
カプセル配列
積層化
2005
カプセル成形技術
転相乳化法、インクジェット乳化法、マイクロチャネル乳化法、およびSPG(シラス多孔質ガラ
ス)膜乳化法 等の単分散乳化手法と、界面重合法、相分離法 等のカプセル化手法との組合わせによ
り、最終目標の粒径/粒径分布、カプセル壁厚、力学特性、光学特性、および耐光性 等を実現し、
電気泳動方式に用いる粒子の内包率、機能の発現、カプセル壁への取込まれ 等の観点から、フルカ
ラーリライタブルペーパーに最適なカプセル成形技術を開発し、フルカラー化に適用し得る三原色
のカプセルを作製する。その他粉流体を内包する中空カプセルの成形技術を開発し、粉流体を用い
るリライタブルペーパーのプロトタイプに適用する。
詳細な研究テーマは以下の通り。
(a)カプセル粒径/粒径分布制御技術
SPG(シラス多孔質ガラス)膜乳化法、インクジェット乳化法、マイクロチャネル乳化法、マイ
クロリアクター乳化法、および転相乳化法により、粒径1~100μmの単分散(CV10%以下)
エマルションを調製し、エマルションの粒径、単分散性を維持したままでカプセル化する事により、
最終目標の粒径1~100μmの単分散(CV10%以下)カプセルを作成する。
(b)カプセル壁厚制御技術
-8-
上記(a)の検討によって得られた粒径1~100μmの単分散(CV10%以下)エマルショ
ンを、化学的方法(界面反応法、in situ 重合法、ラジカル重合法等)、あるいは物理化学的方法(相
分離法、溶媒抽出法、転相乳化カプセル化法等)により、50~5000nmのカプセル壁厚を有
するカプセルにする(財団法人化学技術戦略推進機構、共同研究先:岡山大学)。
(c)ナノ機能粒子/カプセル壁相互作用の解明
ナノ機能粒子がカプセル壁に取り込まれる事を防止するために、粒子/粒子間の相互作用ならびに
コロイドプローブAFM(原子間力顕微鏡)による粒子/カプセル壁間の相互作用を評価し、ナノ機能
粒子の表面特性、カプセル壁材 等によりカプセル壁へ取り込まれる因子、そのメカニズムを明らか
にし、電気泳動粒子がカプセル壁に取り込まれる事なく内包化される対策案を提案する。
(財団法人
化学技術戦略推進機構、共同研究先:岡山大学、再委託先:東京農工大)。
(d)ナノ機能粒子のカプセル内包技術
機能粒子としての電気泳動粒子を含む分散物が、高効率でカプセルに内包されるための乳化方
法・条件、およびカプセル化方法・条件 等を明らかにして、機能粒子のカプセル内包率90%以上
を実現する。その他粉流体を内包する中空カプセル成形技術を開発する(財団法人化学技術戦略推
進機構、共同研究先:岡山大学)。
(e)内包されたナノ機能粒子の機能発現
ナノ機能粒子の分散物の表示特性、および粒子/粒子間相互作用の評価を通して、カプセル化され
ていない分散物におけるナノ機能粒子の表示特性、粒子間相互作用を把握し、各種のカプセル化法
における機能粒子の機能阻害を最小限にする方針を明確にし、内包されたナノ機能粒子の機能を最
大限に発揮させるカプセル化法を検討する。
また粉流体についても、その機能を最大限発現し得るカプセル成形技術を検討する(財団法人化
学技術戦略推進機構、共同研究先:岡山大学)。
(f)カプセルの特性制御技術
カプセル壁の材料としての特性(高透明性:80%以上、および力学的強度)を評価し、電気泳
動方式、あるいは粉流体を用いる表示素子として必要な光学的、力学的な要求特性を満足するカプ
セル成形技術を開発する(財団法人化学技術戦略推進機構、共同研究先:岡山大学)。
(g)カプセル化技術の体系化
既存のカプセル成形技術について応用展開を考慮し、粒子の内包を目的に共同研究先および再委
託先で、担当するカプセル化手法に特化して、粒径/粒径分布制御技術、カプセル壁厚制御技術を含
む「カプセル成形のメカニズムの解明」を主体に検討を行い、それらを統合する事で体系化を行い、
機能性カプセル活用リライタブルペーパー開発に寄与する(共同研究先:岡山大学(相分離法)、再
委託先:新潟大学(溶媒抽出法)、九州工業大学(コアセルベーション法)、信州大学(界面重合法)
、
宮崎大学(in-situ(インサイチュー)重合法)、産業技術総合研究所(シリカ系無機カプセル))。
なおカプセル化技術の体系化に関する再委託(4大学1法人)は、平成16年度で終了する。
2.1.2
ナノ機能粒子表面物性制御技術
カプセル化を前提とするナノ機能粒子の製造技術に関する知見を調査・整理すると共に、ナノ機
能粒子の合成技術を開発し、形状/粒径/粒径分布の制御されたナノ機能粒子(主として電気泳動粒子、
粉流体粒子)を合成して、得られるナノ機能粒子の帯電(ζ電位)制御、および媒体中での分散安定化
のため、表面物性制御技術を開発する。
最終的には電気泳動型表示素子に用いる泳動特性および分散安定性の付与された白、黒、さらに
-9-
は三原色のナノ機能粒子を作成すると共に、粉流体を開発する。
詳細な研究テーマは以下の通り。
(a)ナノ機能粒子の製造技術
乳化重合法、分散重合法、ハイドロサーマル法、ケイ素化合物の利用、液中乾燥法、懸濁重合法、
スプレードライ法 等により、電気泳動型表示素子に用いられる粒径20~1000nm、CV≦1
0%の白、黒および着色粒子(例えば赤、青、黄等)を作成する(財団法人化学技術戦略推進機構、
共同研究先:千葉/岡山大学)。
また独自のマクロモノマー法より、Isopar、またはシリコーンオイルなどの低誘電率溶媒中で分
散可能な粒径20~1000nm、CV≦10%の白、黒粒子を作成する(再委託先:山形大学)。
さらにテンプレートを用いるストーバー法により、無機有機ハイブリッド化されたメソポーラス
シリカ粒子の合成処方を開発し、Isopar に分散可能な粒径100~700nm、CV≦10%の粒
子を作成する(再委託先:東京農工大)
その他有機/無機粒子の複合化 等により、気相中で電場移動しうる流動性/帯電特性に優れ、中空
カプセルに内包可能な粒径0.5~5μの粉流体粒子(安息角≦15度、CV≦10%)を開発す
る(財団法人化学技術戦略推進機構)。
これらの新たに作成した機能粒子については、その化学組成等を明らかにすると共に、「詳細な
表面および形態観察を行い、粒子の内部構造、微細構造を明らかにし、設計通りの粒子が得られて
いる事を確認する。
(b)ナノ機能粒子の電気泳動特性制御技術
ナノ機能粒子表面へのイオン性界面活性剤/ポリマーの物理吸着、有機/無機顔料と高分子材料と
の複合粒子化、あるいは酸塩基解離法等 により、粒子を帯電させ、ζ電位を制御する事(設計値か
らの誤差±10%以内)で、電気泳動型表示素子として低電界(1V/μm以下)、短時間(1秒以
下)でコントラストの取れる、電気泳動特性を実現する(財団法人化学技術戦略推進機構、共同研
究先:千葉/岡山大学)。
特に白粒子については、PJ独自の白色微粒子分散型1粒子移動方式実現のために、白色度5
0%以上で、泳動速度が泳動粒子の1/100以下である、非泳動白色粒子を開発する(財団法人化
学技術戦略推進機構、共同研究先:千葉大学)。
また粒子の表面物性改良により、表示のメモリー性改良、さらには印加電圧による電気泳動性の
スレッシュホールド性付与 等の可能性を検討し、より優れた特性の電気泳動方式表示素子を目指す
(実施体制:財団法人化学技術戦略推進機構、共同研究先千葉大学)
(c)ナノ機能粒子の分散安定化技術
粒子の表面改質(表面の疎水化)を行うと共に、分散に用いる界面活性剤の最適化、および媒体
の粘度、密度調整等 により室温径時1ヶ月以上でも凝集率10wt%以下の分散安定性を実現する
(財団法人化学技術戦略推進機構、共同研究先:千葉/岡山大学)。
また再委託先の山形大学では、上記(a)で検討する独自のマクロモノマー法により、同じレベ
ルの分散安定性を実現する。
2.1.3
ナノ機能性粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価技術
カプセルの配列技術を用いた電気泳動方式のフルカラー表示素子、および粉流体を用いる表示素
子、更にはエレクトロクロミック素子を重層したフルカラー表示素子等のプロトタイプを試作し、
特性評価する事で、技術的な問題点を明確にすると共に、今後のフレキシブル化を実現するための、
- 10 -
ウエットプロセスによる電極パターニング技術、およびアクティブ素子作成の基盤技術を開発する。
最終的には電気泳動粒子の開発/カプセル化技術/カプセル配列技術、粉流体粒子の開発/カプセル
化技術、およびエレクトロクロミック材料開発/表示素子の積層技術 等の集大成として、電気泳動
型のフルカラー表示素子、粉流体を利用する表示素子、およびエレクトロクロミックを利用するフ
ルカラーの表示素子のプロトタイプを作成し、表示特性の評価を通し、課題を明確にする。
詳細な研究テーマは以下の通り。
(a)
カプセル化画像表示デバイスの外部刺激による機能制御技術
電圧印加により透明状態と着色状態(三原色)とを可逆的にとり得るクロミック材料、発色層、
電解質、媒体、更には発色層/電解質界面 等の最適化により、モデルとなる単色表示のデモサンプ
ルを作成し、光学特性を評価する。
さらに異なる単色表示のデモサンプルを積層して、フルカラーのプロトタイプを作成し、光学特
性を評価する(財団法人化学技術戦略推進機構、共同研究先:千葉大学)。
(b)
カプセルの配列技術の開発
カプセルを用いる電気泳動型表示素子に必要なカプセル配列技術として、グラビア印刷法、熱転
写法、電着法等 の各種配列方式について、主として表示特性からその優劣を比較検討して、電極パ
ターン上に、三色の独立したカプセルを単層かつ最密充填状態で配列する最適な方法を選択する。
さらに広幅のサンプル作成を行い、電気泳動方式のフルカラー表示素子のプロトタイプを作成す
る(財団法人化学技術戦略推進機構、共同研究先:千葉大学)。
(c)
電極材料の開発および物性評価
ウエットプロセスにより50μmの電極パターニング技術を開発し、電気泳動方式で単色高精細
の表示素子に使用されるパターン電極のプロトタイプを作成する。
またアクティブ素子に用いる透明電極材料、半導体活性層材料、絶縁材料等の電気物性把握とそ
の最適化、さらに作成プロセスの最適化により、アクティブ素子を再現良く作成するための基盤技
術を開発する。
さらにモデルとなるアクティブ単素子電極を作成して動作確認を行うと共に、問題点を明確にす
る(財団法人化学技術戦略、共同研究先:千葉大学)。
(d)
画像表示材料の開発と機能評価
電気泳動型のフルカラー表示素子、粉流体を利用する表示素子、およびエレクトロクロミックを
利用するフルカラーの表示素子
等のプロトタイプを作成し、表示特性評価を通して、問題点を明
確にすると共に、今後の特性改良のための材料およびシステム開発指針を明確にする(財団法人化
学技術戦略推進機構、共同研究先:千葉大学)。
2.1.4
研究開発費用
研究開発項目
(単位:百万円)
平成
平成
平成
平成
計
14 年度
15 年度
16 年度
17 年度
①カプセル成形技術
138
193
159
131
621
②ナノ機能粒子表面物性制御技術
137
168
136
112
553
③ナノ機能性粒子のカプセル成形技術
132
168
136
113
549
407
529
431
356
1723
を用いた画像表示材料の開発と機能
評価
総合計
- 11 -
2.1.5
研究開発スケジュール
研究項目
①
平成
平成
平成
平成
14年度
15年度
16年度
17年度
カプセル成形技術
(a) カプセル粒径/粒径分布制御技術
(b) カプセル壁厚制御技術
(c) ナノ機能粒子/カプセル壁間
相互作用の解明
(d) ナノ機能粒子のカプセル内包技術
(e) 内包されたナノ機能粒子の機能
発現
(f) カプセルの特性制御技術
(g) カプセル化技術の体系化
②
ナノ機能粒子表面物性制御技術
(a) ナノ機能粒子の製造技術
(b) ナノ機能粒子の電気泳動特性
制御技術
(c) ナノ機能粒子の分散安定化技術
③ ナノ機能粒子のカプセル形成技術を
用いた画像表示材料の開発と機能評
価技術
(a) カプセル化画像表示素子デバイス
の外部刺激による機能制御技術
(b) カプセルの配列技術の開発
(c) 電極材料の開発および物性評価
(d) 画像表示材料の開発と機能評価
- 12 -
2.1.6
研究単位
研究テーマの分担および内容
担当者
研究テーマ
研究内容
(実施計画の事業内容)
JCII
ダイセル化学
岡山集中研
単分散エマルションの調
林
製およびそのカプセル化
・転相乳化法の電気泳動粒子を含む分
散物への適用見極め
・転送乳化法によるエマルションの化
学的方法(in-situ 重合法、界面重合
法)によるカプセル化法の検討
・光散乱法によるカプセル粒径/壁厚、
大日本塗料
①-(a)、(b)、(d)、(e)、
カプセル/カプセル壁のレオロジー
(f)
特性評価法の検討
単分散エマルションの調
岩澤⇒山内
東洋インキ
有島
製およびそのカプセル化
を含む単分散エマルション調製法、
①-(a)、(b)、(d)、(e)
およびそれに続くカプセル化検討
ナノ粒子分散相の単分散
・SPG膜によるナノ粒子分散相の単
エマルションの調整およ
び粉流体粒子のカプセル
リコー
分散エマルションの調整
・中空カプセルの調製法調査、それに
化
基づく粉流体粒子を内包するカプ
①-(a)、(b)、(d)、(e)
セル調製法の検討
カプセル化を前提とする
柳沢
・MC法、IJ法による電気泳動粒子
泳動粒子の製造および帯
・重合法による高分子微粒子合成法の
検討
電性の制御
・酸塩基解離法による帯電制御の検討
②-(a)、(b)、(c)
・高分子による微粒子の分散安定化の
検討
共同研究先
北村教授
コアセルベーション法、相 ・コアセルベーション法、相分離法(U
岡山大
吉澤教授
分離法による電気泳動粒
F、MF)によるカプセル調製法の
神尾⇒山崎
子を内包する単分散カプ
検討
研究員
セルの調製
①-(b)、(d)、(e)、(f)、
(g)
- 13 -
・カプセル壁厚、カプセルの力学強度
評価方法の開発
再委託先
神谷助教授
ナノ機能粒子/カプセル壁 ・ナノ機能粒子/カプセル壁間相互作
東京農工大
前田助教授
相互作用の解明およびそ
用を評価する手段の開発
れを基にするナノ機能粒
・ナノ機能粒子がカプセル壁内に取
子のカプセル壁内取り込
り込まれる現象を防止する手法を
まれ防止手段の開発
体系的に確立
①-(c)、(d)、(g)
新潟大
田中教授
溶媒抽出法によるカプセ
田口助手
ル成形技術の開発
および体系化
・溶媒抽出法( PSt/天然系油)による
カプセル調整条件確立
・芯物質の徐放性制御技術の確立
①-(a)、(b)、(d)、(e)、 ・溶媒抽出法のナノ機能粒子内包カ
プセルへの適用
(g)
信州大
釼持教授
界面重合法によるカプセ
・界面重合法による芯物質として粒
奈倉教授
ル成形技術の開発および
子/液体を内包するカプセル調製
平井教授
体系化
条件確立および内包された粒子の
①-(a)、(b)、(d)、(e)、
機能発現
(g)
・界面重合法のナノ機能粒子内包カ
プセルへの適用
九州工大
鹿毛教授
コアセルベーション法に
・単分散のモデル芯物質による、カ
よるカプセル成形技術の
プセル壁形成条件の要因解析およ
開発および体系化
びコアセルベーション法の体系化
①-(a)、(b)、(d)、(e)、 ・コアセルベーション法のナノ機能
粒子内包カプセルへの適用
(g)
宮崎大
河野教授
In-situ 重合法によるカプ
塩盛助教授
セル成形技術の開発およ
び体系化
①-(a)、(b)、(d)、(e)、
(g)
・エマルション界面の高分子析出/
カプセル壁成機構の解明
・カプセル構造制御、物質の内包/
徐放機能制御方法の確立
・In-situ 重合法のナノ機能粒子内
包カプセルへの適用
産総研
藤原
主任研究員
無機カプセル成形技術の
・シリカ、珪酸カルシウム、炭酸カ
開発、インテリジェント化
ルシウム等の無機カプセルの調整
および体系化
条件の確立
①-(a)、(b)、(d)、(e)、 ・無機カプセルのナノ機能粒子内包
(g)
山形大
川口助教授
カプセルへの適用
両親媒性マクロモノマー
・両親媒性マクロモノマーを利用す
および界面活性性モノマ
る分散重合、乳化重合法等により
ーを用いた着色ナノ微粒
単分散で安定性の良いカプセル壁
子の研究開発
材との相互作用の小さいナノ機能
②-(a)、(c)
粒子を合成する技術の開発
- 14 -
非泳動性粒子の製造、およ ・非泳動性白色粒子の作成、および
チッソ
JCII
木前
千葉集中研
び分散安定化技術の開発
②-(a)、(b)、(c)
分散安定化技術の開発
・二酸化珪素(有機珪素化合物)を
主体とする非泳動性粒子の可能
性の見極め
東洋インキ
別当
微粒子の帯電制御技術、お ・高分子微粒子(顔料/樹脂コンポジ
よび粉流体の開発
ット)の表面修飾による帯電制御
技術の開発
②-(a)、(b)
・高流動性付与による、気相中での
電場移動により光学特性が変化
し表示が可能なナノ機能粒子(粉
流体)の開発
日立化成工業
春原
電気泳動粒子の泳動特性 ・電気泳動粒子の低電圧泳動性(5V
制御技術の開発
以下)、電圧のシュレッシュホー
②-(a)、(b)、(c)
ルド性付与技術の開発
・超臨界法による電気泳動微粒子の
作成法見極め
大日本印刷
馬場
表示カプセルインキ層の ・表示カプセルインキ層成形技術の
設計およびその成形技術
開発(単カプセル層形成、パター
の開発
ン配列、カプセル層成形)
③-(b)
・BGRのカプセルを電極パターン
上に配列するための印刷法、熱転
写法、電着法 等の各種方式の見
極め
日立化成工業
カプセル化画像表示デバ
・クロミック材料の基盤技術開発
浦野⇒郷
イスの外部刺激による機
・外部刺激により透明/着色状態を
能制御技術の開発
可逆的に発現するエレクトロク
③-(a)
ロミック材料の探索
富士写真フイ
表示用電極に用いる材料/ ・表示用電極材料(単純マトリクス/
ルム
パターニング技術の開発
藤本
③-(c)
アクティブマトリクス)の開発
・ウエットプロセス(印刷法等)によ
る微細パターニング技術の検討
共同研究先
千葉大
北村教授
画像表示材料の開発と機 ・カプセル型電気泳動画像表示デバ
小林教授
能評価に関する基盤技術
中村助教授
開発
大川助教授
③-(a)、(c)、(d)
遠藤⇒内城
イスの設計および特性評価
・クロミック化合物の探索・物性評
価およびデバイスの設計
・駆動用電極の設計および物性評価
技術の開発
研究員
- 15 -
2.2
研究開発の実施体制
2.2.1
実施体制図
本プロジェクトは千葉大学工学部
ェクトリーダー)、岡山大学
情報画像工学科
環境理工学部
北村孝司教授を研究開発責任者(プロジ
環境物質工学科
吉澤秀和教授をサブリーダーとし、
財団法人化学技術戦略推進機構を委託先として、下記の体制で研究開発を進める。
財団法人
化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
千葉大学
共同実施先
千葉集中研究室
(事業項目②、③の共同研究)
事業項目②、③を実施
共同実施先
岡山集中研究室
岡山大学
事業項目①、②を実施
(事業項目①、②の共同研究)
【再委託先】
東京農工大
神谷秀博
教授、前田和之
助教授
(事業項目①の一部を再委託)
新潟大学
田中眞人
教授
(事業項目①の一部を再委託)
九州工業大学
鹿毛浩之
教授
(事業項目①の一部を再委託)
宮崎大学
河野恵宣
教授
(事業項目①の一部を再委託)
信州大学
剱持潔
教授
(事業項目①の一部を再委託)
産業技術
総合研究所
山形大学
藤原正浩
研究員
(事業項目①の一部を再委託)
川口正剛
助教授
(事業項目②の一部を再委託)
2.2.2
岡山、千葉集中研究室
財団法人科学技術戦略推進機構はプロジェクトを実施する主体者として、研究項目①「カプセル
成形技術」、②「ナノ機能粒子表面物性制御技術」、③「ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画
像表示材料の開発と機能評価」 の三つの研究項目を同時並行で実施するため、二つの集中研究方式
を設置し、リーダー、サブリーダーの専門性に合わせ、①のテーマは岡山集中研究室、②のテーマ
- 16 -
は岡山集中研究室および千葉集中研究室、③のテーマは千葉集中研究室が担当する事とした。
なお①、②および③のテーマ間の連携は、同時並行的に研究開発を進める上で極めて重要であり、
研究成果である「もの」と研究者の「知恵」の交流を密接にとり、研究ステージに応じた連携をとれる
図1に示す体制とした。
岡山、千葉集中研あるいは再委託先の山形大学で開発された機能粒子を、岡山、千葉集中研で分
散して一次評価し、岡山集中研でカプセル化し、さらに千葉集中研で表示素子として特性を評価す
る形で緊密な連携をとって研究開発を進めている。
①カプセル成形技術
岡山集中研究室
②ナノ機能粒子
③画像表示材料の
表面制御技術
開発と機能評価
岡山集中研究室
千葉集中研究室
千葉集中研究室
図1 研究項目と研究実施体制
集中研究室には、本プロジェクトに参加する企業(8社)からの出向研究員を常駐させ、共同研究
先大学教官の指導の下、研究開発を実施している。
研究項目①の研究開発にはダイセル化学工業株式会社、大日本塗料株式会社、東洋インキ製造株
式会社が、研究項目②には、東洋インキ製造株式会社、チッソ株式会社、日立化成工業株式会社、
株式会社リコーが、研究項目③には、大日本印刷株式会社、日立化成工業株式会社、富士写真フイ
ルム株式会社が参加する。
参加企業は以下の点から、プロジェクトへの参加が認められたものである。
(1)
ダイセル化学工業株式会社
高分子微粒子製造技術に関して、接着剤、塗料などの用途向けに乳化重合を中心にポバールを保
護コロイドとした酢酸ビニルの重合、各種界面活性剤を用いたアクリル系モノマーの重合技術を駆
使し製造しており、最近では、転相乳化法を用いたソープフリー型の高分子微粒子の製造も開始し
た。このように、長年に亘り乳化重合についての技術の蓄積をし、同時に転相乳化、架橋性モノマ
ーの導入、限外濾過などの技術も保有しており、当該研究に必要な技術を確立している。以上の技
術系譜より、ナノ機能粒子のカプセル成形技術の実用化と画像表示デバイスとしての応用を目指す
本プロジェクトに寄与することができる
(2)大日本塗料株式会社
色材含有カプセルとして300~800・m 径のカラーマイクロカプセルをウレタン樹脂にて作
成し内装住宅建材のカラークリヤー塗料に混合し、新意匠として商品化したことや、エポキシ樹脂
硬化剤用カプセルとして323K 前後のガラス転移温度を持つアクリル樹脂中に硬化剤を入れカプ
- 17 -
セル化し、安定な一液エポキシ樹脂や動物忌避塗布剤用マイクロカプセルの商品化などの検討を通
し、当該担当テーマに関して精通した技術を有している。以上のように、高分子カプセル成形技術
に関する基盤技術の蓄積があり、本提案における研究開発へ大きく貢献できる。
(3)東洋インキ製造株式会社
有機、無機顔料の分散技術をベースに、オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、インキジ
ェット用インキ、静電トナーなどの印刷関連材料、液晶ディスプレイ用高色純度カラーフィルター
用レジストインキなどの高機能インキ、あるいは建築塗料などの開発を通し、これらの技術的蓄積
を有している。さらに、各種コーティング剤、粘接着剤、インキ用バイダー、塗料およびコーティ
ング用エマルション、さらには高分子微粒子も製造販売おり、高分子設計や合成技術を数多く保有
している。これらの研究開発実績から、当該研究の分担能力十分ある。
ソルトミリング法(無機塩を粉砕助剤として、樹脂/顔料/溶媒などを分散ミルで微粒化分散す
る方法)による顔料の微粒化技術を液晶カラーフィルター用顔料分散レジストや、静電荷像現像用
トナーなどに応用している。また、溶染顔料を界面活性剤、重合開始剤およびエチレン性不飽和単
量体の存在化、ミニエマルション重合法で染顔料を樹脂被覆する方法でインクジェット(IJ)用
インキに展開可能な技術を保有している。さらに、樹脂微粒子の合成に関して、単分散アクリル系
微粒子合成技術やコア/シェル構造を有するマイクロゲル粒子合成技術を、また、帯電性かつ易分
散性の着色粒子に関する技術として、静電トナーを作成、調整する技法を保有している。以上の実
績から当該研究開発テーマに精通した技術を有している。
(4)チッソ株式会社
世界の主要シリコンメーカーの一社であり、無機物・有機物からなる複合材に不可欠であるシラ
ンカップリング剤に代表されるオルガノファンクショナルシランおよびそのオリゴマ-類並びにそ
れらの原料であるクロロシランを一貫して製造している。このシリコン事業は、ケイ素化学並びに
有機・無機合成化学をベースとした技術に支えられており、またこれまでの事業および開発活動か
ら数多くの know-how をも保有している。それ故、当該研究開発テーマを遂行する能力は十分にある。
(5)日立化成工業株式会社
電子機器・半導体分野およびディスプレイ分野において熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を合成・加
工し、感光剤、無機フィラ、ガラスクロス、顔料、添加剤と組み合わせて物性制御、例えば、感度、
接着性、耐熱性、吸湿性などの物性を制御する技術を用いて、感光性ドライフィルム、各種積層板、
層間絶縁膜材料、RGBカラーレジストなどを製造販売している。これにより蓄積した高分子材料
技術や半導体用研磨剤 (CMP 研磨材)、トナー、異方導電接続材料や分析用カラムに応用している無
機・有機微粒子合成技術とその分散技術、表面改質技術や接着制御技術を保有している。これらの
実績により当該研究開発テーマに寄与することができる。
また、保有技術として、半導体層間絶縁膜や感光性ドライフィルムなどに応用している樹脂合成
技術とフィルム化技術、異方導電材料や各種配線板などに応用している接続配線技術、電子写真感
光体や光記憶媒体に用いられるフタロシアニン、ナフタロシアニンなどの光応答材料の合成および
分散・加工技術、半導体用研磨材や無機ELディスプレイに用いられる微粒子合成・分散技術や真
空成膜技術があり、これら関連技術の面からもプロジェクトに寄与することができる。
(6)株式会社リコー
着色高分子微粒子に関しては、電子写真用トナーの研究開発・製造・販売の実績を有し、特に研
究開発においては粉砕法のみならず、懸濁重合、乳化重合、分散重合など重合法による粒子合成を
行っている。溶媒中での微粒子の帯電制御および分散安定化技術に関しては、液体トナーの研究開
- 18 -
発・製造・販売の実績を有し、1997 年「電子写真液体トナーの開発」で平成9年度科学技術庁長官
賞を受賞している。以上の実績から当該研究開発テーマの担当能力は十分にある。
(7)大日本印刷株式会社
パターニング関連技術としては、フォトリソグラフィー技術を用いたカラーフィルター、フォト
マスクなどの製品実績があり、従来印刷技術を発展させたファインプリンティング技術を有してい
る。印刷法による有機ELディスプレイの研究開発に関しては、業界で初めてカラーフレキシブル
有機ELディスプレイの試作に成功した。更に、酸化チタンなどの光触媒を応用した新疎水パター
ン形成技術を独自開発している。
また、包装材料用のガスバリア技術を進化させたフレキシブルディスプレイ用のハイバリアフィ
ルムの研究と設備を有しており、ナノ機能粒子のカプセル成形技術の実用化と画像表示デバイスと
しての応用を目指す本プロジェクトに寄与できる。
(8)富士写真フイルム株式会社
写真感光材料、感熱感圧記録材料などを自社技術により製造販売しており、その研究開発の一環
として、有機材料、特に半導体性の有機素材の分子設計、合成、特性評価などの材料技術、塗布な
どの均一製膜技術、マイクロカプセル作成技術などの技術的蓄積を有する。また、ディスプレイ用
カラーフィルターやフォトレジストの研究から、マイクロパターニング技術の技術的な実績もある。
また、写真用フィルム、視野角向上用フィルム、レーザー発光デバイスなど、材料合成からデバ
イスの開発・製造化までの一貫した研究設備と製造ラインを有しており、ナノ機能粒子のカプセル成
形技術の実用化と画像表示デバイスとしての応用を目指す本プロジェクトに寄与することができる。
2.2.3
共同研究先
共同研究先については、以下の点から千葉大学、岡山大学が最適と判断し、千葉大学では、研
究項目②、③について、また岡山大学では、研究項目①、②について研究開発を行う事とした。
(1)千葉大学
a)工学部情報画像工学科
北村研究室
北村研究室は、これまで電子画像工学や画像記録および画像表示デバイスなどの分野で基礎的研
究から応用研究まで広範囲にわたる実験研究と理論研究を実施し、下記のような研究内容を報告し
ている。特に、リライタブルペーパーへのレーザー記録消去、さらに電子ペーパーについては独自
なトナーディスプレイの提案、特許出願および画像形成の原理解明、機能評価を実施している。こ
のように、我が国における電子ペーパー研究の第一線の研究者であることから、本プロジェクトに
関する十分な実績を有している。
b)千葉大学大学院
自然科学研究科
小林研究室
小林研究室では、新規な光電機能高分子材料の開発やそれらをマンマシンインターフェイスであ
る画像表示・記録デバイスや分子デバイス、ナノデバイスへ展開する研究を実施しており、既に原
著論文&書籍80編余、学術講演発表300程度を報告している。なかには国外学術誌のカラー表
紙に採用された成果もあり、国際的にも評価を受けている。画像表示に必要不可欠な、光、熱、電
気的な刺激でその電子状態を制御できる高分子の開発や、その発現環境場の設計ならびに機能発現
の高効率化について体系的に取り組んでおり、電子ペーパー用材料開発や機能の高効率化に関し本
プロジェクト推進に十分な実績を持っている。
c)工学部電子機械工学科
中村研究室
中村研究室は、主に分子エレクトニクスを基礎とする電子機能デバイスに関連する研究を進め、
- 19 -
ナノデバイス作製に必要な超微細構造作製技術の開発,分子ナノ構造デバイスの光電子物性評価技
術、走査型トンネル分光法や導電性原子間力顕微鏡を用いたナノ構造物性の解析、分子性超薄膜を
用いた光スイッチング素子やディスプレイ素子、自己組織化薄膜の機能性を利用した新機能デバイ
スなどの研究において、先駆的な研究成果をあげている。具体的な成果としては、その場電界効果
法により有機FETの電界効果キャリア移動度を測定することに世界で初めて成功したこと、有機
トランジスタの高性能化を縦型トランジスタ構造によって大幅に改善することを実証したことなど
がある。本プロジェクトに研究者として参加する中村雅一助教授は、エレクトロニクス材料・プロ
セス開発、表面科学などを専門とし、同研究室では主に走査型プローブ顕微鏡を用いた有機半導体、
導体材料のナノスケール電気物性測定に関して実績をあげている。最近では、導電性 AFM 探針を用
いた電界効果トランジスタ測定によって、ナノスケール有機トランジスタにおける高移動度動作の
実証を行った。さらには、企業における研究歴も十分であることから、画像表示デバイスの開発に
おいて基礎的段階から応用段階にわたる研究ステージにおいて、参加企業と連携して本プロジェク
トに寄与することができる
(2)岡山大学
環境理工学部
吉澤研究室
高分子微粒子や高分子マイクロカプセルなどに代表される高分子コロイド化学や微粒子物性制
御工学に関する研究を展開しており、最近10年間にカプセル形成技術を含む機能性高分子微粒子
に関し100編近い学術論文を発表している。また最近の5年間で学協会主催の上記技術分野に関
する招待講演を9回行っている。これらの事からも判るように、カプセル形成技術に関する豊富な
知識を有している。さらに、デジタルペーパー再燃の旗手として見られている米国 E-ink 社の電気
泳動型カプセルインクはマサチューセッツ工科大学で開発されたが、この開発段階において研究に
参画していた(H. Yoshizawa et al : An Electrophoretic Ink for All-printed Reflective Electronic
Displays, Nature, 394, 253-255 (1998))。これらの実績から、本提案における研究開発のイニシア
ティブをとるに十分な実績を有している。
2.2.4
再委託先
さらに研究項目①、②に関する研究開発成果をさらに確実なものとするため、集中研究室および
共同研究先で実施する内容を補い深めるため、この分野で独創的な研究を行い、国際的に高い評価
を得ている6大学の研究室及び産業技術総合研究所の研究体に再委託を行う。
すなわち研究項目①については、in situ 重合法、液中乾燥法、コアセルベーション法および界
面重合法において優れた業績をあげている宮崎大学助教授
人氏、九州工業大学助教授
塩盛弘一郎氏、新潟大学教授
田中真
鹿毛浩之氏、信州大学剱持潔氏に再委託する。さらに無機系カプセル
の調製で顕著な実績を有する産業技術総合研究所主任研究員
藤原正浩氏にも再委託を行う。
また研究項目①、②のうち、ナノ機能粒子/カプセル膜相互作用の解明とカプセル内ナノ機能粒
子分散制御技術の開発については、コロイドプルーブ原子間力顕微鏡(AFM)を用いた微粒子間相
互作用の評価法を駆使し、様々な課題を解決してきた東京農工大学助教授
大学助教授
神谷秀博氏、東京農工
前田和之氏に再委託する。
研究項目②については、これまで、各種マクロマーを合成し、ナノ機能粒子表面構造の制御に優れ
た研究を展開している山形大学助教授
川口正剛氏に再委託する。
- 20 -
2.2.5
研究開発に携わる研究者一覧リスト
氏名
所属・役職
北村
孝司
千葉大学
工学部
情報画像工学科
教授
小林
範久
千葉大学
大学院
自然科学研究科
教授
中村
雅一
千葉大学
工学部
電子機械工学科
助教授
大川
祐輔
千葉大学
大学院
自然科学研究科
助教授
遠藤
健
千葉大学
工学部
産学官連携研究員
(H15 年度まで)
内城
禎久
千葉大学
工学部
産学官連携研究員
(H16年度以降)
吉澤
秀和
岡山大学
環境理工学部
環境物質工学科
神尾
英治
岡山大学
環境理工学部
産学官連携研究員
(H15年度まで)
山崎
直宏
岡山大学
環境理工学部
産学官連携研究員
(H16年度以降)
神谷
秀博
東京農工大学
大学院
共生科学技術研究科
教授
前田
和之
東京農工大学
大学院
共生科学技術研究科
助教授
川口
正剛
山形大学
田中
眞人
新潟大学 工学部 化学システム工学科
田口
佳成
新潟大学
鹿毛
浩之
九州工業大学
河野
恵宣
宮崎大学
塩盛弘一郎
剱持
工学部
機能高分子化学科
工学部
(H15 年度以降)
教授
助教授
教授
(H16年度まで)
化学システム工学科 助手
〃
)
物質工学科
教授
(
〃
)
工学部
物質環境化学科
教授
(
〃
)
宮崎大学
工学部
物質環境化学科
助教授
(
〃
)
潔
信州大学
繊維学部
機能機械学科
教授
(
〃
)
平井
利博
信州大学
繊維学部
素材開発化学科
(
〃
)
奈倉
正宣
信州大学
繊維学部
繊維システム工学科
(
〃
)
藤原
正浩
中村
卓
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
技術部長
正樹
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
馬場
淳
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
岩澤
昭
(財)化学技術戦略推進機構
林
工学部
(
産業技術総合研究所
細胞研究グループ
関西センター
教授
教授
セルエンジニアリング研究部門
主任研究員
山内 健一郎 (財)化学技術戦略推進機構
(
研究開発事業部
研究開発事業部
〃
人工
)
研究員(H16年度まで)
研究員(H16年度以降)
木前
洋一
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
有島
真史
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
別当
温
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
春原
聖司
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
浦野
光
郷
豊
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員(H17年度以降)
藤本
潔
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
柳沢
匡浩
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
(財)化学技術戦略推進機構
- 21 -
研究開発事業部
研究員(H16年度まで)
2.3
研究の運営管理
本プロジェクトは委託先である化学技術戦略推進機構内に総合調査研究委員会、業務委員会を設
置し、研究全体の進捗状況や全体展開内容、予算管理、全体計画見直し等の1元的な研究開発・運
営管理を行っている。
また各集中研究室においてはリーダー、サブリーダーの指導の下に、基本計画のテーマごとに、
分科会を中心として研究の推進、調整、管理を行うと共に、集中研究室間で標準粒子による分散安
定化、カプセル化、表示素子化に関するリアルタイムな情報交換を行う事で、プロジェクト全体と
しての研究効率向上を常に意識している。
各分科会では研究の進捗状況、中間成果等の報告を行うとともに、論文・特許などの青果物の促
進、承認や各研究機関の連携・調整等を実施し、分科会間の情報交換や交流を行い、円滑な推進を
図ると共に、カプセル/なの機能粒子合同分科会、ナノ機能粒子/表示材料合同分科会等の合同分科
会を持つことで、研究員の間の密なコミュニケーションを図っている。
委員会等における外部からの指導および協力
(財)化学技術戦略推進機構
a
総合調査委員会
b
カプセル分科会
c
ナノ機能粒子分科会
d
表示材料分科会
研究開発事業部
委員会等における登録委員(平成17年度)
氏名
所属・役職
委員会
北村
孝司
千葉大学
工学部
情報画像工学科
教授
a,b,c,d
小林
範久
千葉大学
大学院
自然科学研究科
教授
a,c,d
中村
雅一
千葉大学
工学部
電子機械工学科
助教授
a,c,d
大川
祐輔
千葉大学
大学院
自然科学研究科
助教授
a,c,d
星野
勝義
千葉大学
工学部
情報画像工学科
助教授
a,c,d
工藤
一浩
千葉大学
工学部
電子機械工学科
教授
内城
禎久
千葉大学
工学部
産学官連携研究員
吉澤
秀和
岡山大学
環境理工学部
環境物質工学科
山崎
直宏
岡山大学
環境理工学部
産学官連携研究員
神谷
秀博
東京農工大学
大学院
共生科学技術研究科
教授
a,b
前田
和之
東京農工大学
大学院
共生科学技術研究科
助教授
a,b
川口
正剛
山形大学
工学部
機能高分子化学科
田中
眞人
新潟大学
工学部
田口
佳成
新潟大学
工学部
鹿毛
浩之
九州工業大学
河野
恵宣
宮崎大学
a,c,d
教授
a,b,c,d
a,b
助教授
a,c
化学システム工学科
教授
a,b
化学システム工学科
助手
a,b
物質工学科
教授
a,b
物質環境化学科
教授
a,b
工学部
工学部
a,d
- 22 -
a,b
教授
a,b
宮崎大学
工学部
剱持
潔
信州大学
繊維学部
機能機械学科
平井
利博
信州大学
繊維学部
素材開発化学科
奈倉
正宣
信州大学
繊維学部
繊維システム工学科
藤原
正浩
中村
卓
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
技術部長
a,b,c,d
花田
幸史
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
技術部長
a,b,c,d
西田
善行
ダイセル化学工業㈱
林
物質環境化学科
助教授
塩盛弘一郎
産業技術総合研究所
門
関西センター
人工細胞研究グループ
a,b
教授
セルエンジニアリング研究部 a,b
主任研究員
研開企画部
(財)化学技術戦略推進機構
正樹
a,b
教授
事業企画 G
研究開発事業部
a,b
研究員
ディスプレイ技術研究所
a,b
a,d
江頭
典孝
大日本印刷㈱
馬場
淳
(財)化学技術戦略推進機構
山崎
雄治
大日本塗料㈱
技術本部技術開発第二部
佐々木博治
大日本塗料㈱
技術本部 基礎研究第二部 チームリーダー副参事研究員
a,b
青木
大日本塗料㈱
技術本部
主事技術員
a,b
研究員
a,b
隆一
研究開発センター
主席研究員
研究開発事業部
所長
部長代行
基礎研究第二部
a,d
研究員
副参事
a,b
山内健一郎
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
垣内
秀明
チッソ㈱
機能材料企画室
室長
a,c
渡辺
健一
チッソ㈱
横浜研究所
上級主幹
a,c
木前
洋一
(財)化学技術戦略推進機構
石橋
正
東洋インキ製造㈱
有島
真史
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
a,b
別当
温
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
a,c
吉田
健
日立化成工業㈱
研究開発事業部
技術・研究・開発本部
a,c
研究員
R&D企画室
担当部長 a,b,c
電子材料事業グループ
表示材料事業部
a,c,d
電子材料事業グループ
表示材料事業部
a,c,d
開発担当部長
小林
雄二
日立化成工業㈱
開発グループ
春原
郷
聖司
豊
主任研究員
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
a,c
(財)化学技術戦略推進機構
研究開発事業部
研究員
a,d
担当部長
a,d
研究員
a,d
岡村
寿
富士写真フイルム㈱
藤本
潔
(財)化学技術戦略推進機構
平倉
浩治
㈱リコー研究開発本部
中央研究所
㈱リコー研究開発本部
中央研究所
川島 伊久衛
先進コア技術研究所
研究開発事業部
第二材料・デバイス研究センター
柳沢
匡浩
(財)化学技術戦略推進機構
上表において、a,b,c,d
a:
総合調査委員会
b:
カプセル分科会
c:
ナノ機能粒子分科会
d:
表示材料分科会
a,c
所長
a,c
課長研究員
研究開発事業部
研究員
は以下の委員会、分科会を表わす。
- 23 -
a,c
3.情勢変化への対応
3.1
フォーカス 21への移行
平成15年度から、本プロジェクトは経済産業省の経済活性化プログラム「Focus21」に移行す
る事となり、研究開発期間が当初の平成14年~平成18年度までの5年間から、平成17年度ま
での4年に短縮され、プロジェクト終了後3年程度で実用化を目指す事となり、プロジェクトとし
て下記の対応を行った。
ⅰ.
プロジェクト終了後の商品化を見据えたロードマップの作成
ⅱ.
ロードマップに基づく各社並行研究の設定ならびにその実施
ⅲ.
プロジェクトの表示素子の目標仕様設定、およびそれを実現する課題の明確化
Ⅳ.
中間目標を最終目標に統合し、最終目標を表示素子の目標仕様に従い変更
ⅴ.
カプセル技術の体系化を「粒子を内包するカプセル」に関する研究に限定し、カプセル技術
に関する再委託を平成16年度までの3年間に短縮
以下にプロジェクトの商品化を見据えたロードマップを示す。
機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクトの実用化シナリオイメージ(2003~2006年、F21)
機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクトの実用化シナリオイメージ(2003~2006年、F21)
機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペー
パープロジェクト
ナノ機能粒子のカプセル成形技術開発事業 平成14年度 経済産業省 直轄委託事業
平成15年度~17年度NEDO委託事業
カプセル技術の応用展開
①カプセル成形技術
・カプセル粒径/粒径分布制御(1~50µm、CV<10% )
・カプセル壁厚制御(100~500nm)
・ナノ機能粒子/カプセル壁相互作用解明
・ナノ機能粒子カプセル内包率制御
・カプセル内ナノ機能粒子分散性制御
・カプセル壁評価法開発
・カプセル成形技術体系化と知識の共有化
①カプセル成形技術
・注射によらない経口ワクチン
・ドラッグデリバリーシステム(DDS)
・自己修復(崩壊)材料
・耐候性塗料、除香・消臭剤、新規肥料 等
・カプセル粒径/粒径分布制御(1~100µm、CV<10% )
・カプセル壁厚制御(100~5000nm)
設定理由:コントラストの高い表示素子による差別化のため、大サ イズカプセルにより、白、黒の光学濃度を高くする。
・ナノ機能粒子/カプセル壁相互作用解明
・ナノ機能粒子のカプセル内包
・内包されたナノ機能粒子の機能発現(泳動特性、分散安定性)
・カプセル壁厚、力学特性評価法開発
・カプセル成形技術体系化
ナノ機能粒子を内包するカプセル成形メカニズムの解明
素材産業
粒子:3億円
(6g/m2、40円/g)
カプセル:1 0億円
(80g/m2:10円/g)
②ナノ機能粒子表面物性制御技術
・ナノ機能粒子作成(粒径20~200nm、CV<10%)
二
・帯電制御による電気泳動特性制御(変動±10%以内)
・分散安定化(凝集率<10%/1ヶ月)
③ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた
画像表示材料の開発と機能評価
・ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた
画像表示材料の開発
・カプセル化画像表示材料の外部刺激による機能制御
・電極材料・電極パターニング技術(線幅10μm)、画像制御技術
・カプセル配列技術
・画像表示デバイス機能評価と電極の物性評価
②ナノ機能粒子表面物性制御技術
・ナノ機能粒子作成(液中分散粒子粒径:20~1000nm、
気中分散粒子粒径:0.5~5μm、CV<10%)
設定理由:電気泳動粒子については、白色度による差別化のため、散乱 強度の大きい大粒径の領域を検討する。粉流体については、 今までの検討結果を踏まえ、今回初めて目標を設定。
・帯電制御による電気泳動特性制御(変動±10%以内)
・分散安定化(凝集率<10%/1ヶ月)
タイプ表示素子
・電気泳動型表示素子
・FR表示素子:高速応答対応
・EC表示素子:高度フルカラー対応
③ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた
画像表示材料の開発と機能評価
・ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発
・カプセル化画像表示材料の外部刺激による機能制御
・電極材料・電極パターニング技術(線幅50µm)、画像制御技術
設定理由:電気泳動型表示素子では、印加電圧により中間調が 出せる事から、解像度250ppiの画像の実現には線幅 50µmで十分対応可能。
・カプセル配列技術
・画像表示デバイス機能評価と電極の物性評価
過 去
2003年4月
各社 社内並行研究 - 24 -
電子ポスター
価格表示板
電子ペーパー
電子新聞
携帯端末
電子ブック
・商品設計
・市場動向
・カプセル、粒子、表示素子製造技術
・周辺回路技術
2006年3月
実 施 中
リライタブルペーパー
(2000万台/年)
2000億円(1万円/台)
2010年
3.2
表示素子の仕様確認
平成15年度、当PJが経済産業省の経済活性化プログラム「Focus21」に移行するに伴い、
プロジェクトで開発すべき表示素子の仕様を設定したが、その妥当性を検証するために、平成15
年度のスタートに当り、PJ内8社、PJ外3社(有力な機器メーカー)に、リライタブルペーパー
の具体的な商品イメージ、その商品化に必要な重要特性、および商品化時期・計画についてアンケ
ート調査を行った。
具体的商品として各社が挙げたものの上位4種は、電子ブック、電子ペーパー、電子ボード 等の
プライベートユースの商品と、電子ポスター 等のパブリックユースの商品、計4種である。
これらの商品に必要な重要特性としての上位3種は、白地の白さ、コントラスト、解像度であり、
PJの想定している仕様はほぼ妥当との確認が得られた。
その他プロジェクトの仕様にはない重要特性として コスト、重量、フレキシビリティー、厚み、
消費電力などのシステム全体に関するものが指摘されている。
また具体的商品の上位4種の内、電子ブック、電子ペーパー、電子新聞、電子ポスターについて
は、プロジェクト内外の機器メーカーとも、製造技術、商品の認知度、採算性等の点から、現時点
では商品化計画は未定との事であったが、電子ペーパー(書換え可能な紙)については、早ければ
プロジェクト終了後3年で商品化すべきとの意見が出されたが、プロジェクト内の部材メーカーは、
自社では商品化時期を決められず、機器メーカーのスケジュールに合わせるとの意見が大半であっ
た。
プロジェクトとしては、想定したリライタブルペーパーの仕様は、種々の具体的商品の特性とし
ては妥当との確認が得られたので、このまま進める事とした。
4.中間評価結果への対応
本プロジェクトが「Focus21」に移行する事に伴い、期間が5年間から4年間に短縮された事か
ら、NEDOの評価部署による中間評価は行われなくなった。しかしながら、プロジェクトの運営
管理面、ならびに「Focus21」に移行したことを考慮し、平成16年1月29日に NEDO の推進部
署であるナノテクノロジー・材料技術開発部により、外部評価者による自主的な中間評価を実施し
た。
評価委員会からは、プロジェクトの進捗状況として、プロジェクトがスタートして実質まだ一
年半程度しか経っていないにもかかわらず、大部分の研究テーマが中間段階としての目標を達成し
ており、また新たな技術も生まれており、妥当な結果であり、今後は各研究テーマとも、リライタ
ブルペーパーとしての具体的なイメージを明確にし、競合他社との差別化を意識した取り組みが必
要であるとの意見をいただいた。
また基本計画に挙げた目標値の変更は、プロジェクトにおける今までの検討結果から、リライタ
ブルペーパーを実現するため必要とされるので妥当との事で変更を認めていただいた。
カプセル粒径:1~50100μm
カプセル壁厚:50~5005000nm
粒径
:液中分散粒子20~2001000nm
気中分散粒子0.5~5μm
線幅
:1050μm
- 25 -
さらにプロジェクト体制に関しては、以下の提言をいただいた
・相互に関連する研究項目間の連携を強化し、個別の研究テーマの優先順位付けを行うために、
プロジェクトリーダーのリーダーシップがより一層発揮できるような体制作りが必要である。
・プロジェクトとしてタイムリーなデバイス作成が重要であり、この分野を強化するため、機器
メーカーを参画させることも含めて検討する必要がある。
この提言に対し、連携強化および複数の手法から最適なものを選択するため、リーダー、サブリ
ーダーの出席を得て、①、②、③の各研究項目に関し、定期的に合同分科会を開催し、お互いに研
究の進捗状況を確認し、問題点を供する事で研究の効率を上げる事にした。
またデバイス作成については、表示素子の電気特性が決まらないと、設計・組立てが困難であり、
それが見えてくるのはプロジェクト最終年度となるため、平成16年の段階で機器あるいは電機メ
ーカーが参加しても、全体の開発速度を上げる事にはならず、むしろ無駄に終わる可能性が高い。
したがって最終年度の早い時期に、プロジェクトリーダーを中心に、プロジェクト内外の企業に
デバイス作成の協力を依頼すると共に、プロジェクト内で最低限のデモサンプル作成を可能とすべ
く、必要な設備、部材の購入を進め、電極、駆動電源等の作成については、小回りのきく外注先を
捜す事とする。
5.評価に関する事項
5.1
自主中間評価
平成16年1月に、外部評価委員による自主中間評価を、推進部であるナノテクノロジー・材料
技術開発部を事務局として実施した(評価作業は知的財産権等の点から非公開で実施。評価結果・
提言等の概要は、4.中間評価結果への対応
を参照)。
- 26 -
Ⅲ.研究開発成果について
1.事業全体の成果
1.1
全体の成果概要
本プロジェクトでは、カプセル成形技術の実用化として新規画像表示デバイスを最終目標におい
て研究開発を行い、新しいカプセル成形方法をベースとした電気泳動方式、エレクトロクロミズム
方式、気中粒子移動方式のそれぞれで、従来にはない優れた特徴を持つ表示素子を開発した。
これにより、プロジェクト終了後、参画企業が電機メーカーなどと共同して、市場調査(商品コン
セプト、コスト、商品化時期)、製造化検討を通し、フルカラーリライタブルペーパーの実用化の道
が明確に示されたものと考えている。
電子ペーパーとしての期待が最も高く、プロジェクトで最重要課題として取り組んだカプセル活
用電気泳動方式については、以下の成果により従来困難とされていた明るい白表示とカラー表示の
両立、およびフレキシブル化を実証した。
(1)
カプセル成形技術について、8種のカプセル成形方法・3 種の単分散エマルジョン化プロ
セス検討を実施し、その総合成果として単分散カプセル成形により、従来困難とされていた
明るい白表示(偏光版を用いる反射型 LCD では困難な反射率 50%以上を達成)を実現した。
(2)
電気泳動性のカラー粒子を世界に先駆けて開発し、白粒子を用いる2粒子系でカラー表示
を行い、カラーフィルターを用いる方式では実現困難な反射率の高い白表示とカラー表示と
の両立を実証した。
(3)
プロジェクト独自のカプセル活用電気泳動方式(白色液体中1粒子移動型)を提案し、新
たに開発した非泳動性の白粒子と泳動性の黒粒子を用いる系で白黒表示を、また泳動性のカ
ラー粒子(Y,M,C)を用いる系でカラー表示を実証した。この事により、従来電気泳動方式では
困難とされたカラーフィルター方式以外でカラー表示を行う(同一画素内での多色表示)可能
性を初めて開いた。
(4) 透明電極(ITO 層)を設けたプラスティック支持体上に、任意の電気泳動カラー粒子を含むカ
プセルを電着する事で、フレキシブルなカラー表示素子を実現した。
また電気泳動方式では困難とされている写真同等の完全なるフルカラーを、エレクトロクロミズ
ム方式の検討により実証した。
(5)
電圧印加により透明⇔着色を可逆的に示す化合物を見出し、エレクトロクロミズムによる
三原色表示(Y,M,C)を世界で始めて実証した。
(6) 透明⇔着色の可逆変化を起こす原色表示を三層積層(Y,M,C)する事により、エレクトロクロ
ミズムでは世界で始めて減色混合による B,G,R 表示を可能にした。
(7)
印加電圧のパルス幅制御により、三原色の階調表現を可能にし、完全なるフルカラー実現
を実証した。
また電気泳動方式では応答速度の問題から困難とされる動画適性を実現するために、粒子の気中
移動方式を検討し、動画適正のあるカラー表示を実証した。
(8) 気中移動可能な正、負帯電性の白、黒粒子を作成した。
(9)
印加電圧、印加時間の制御により、帯電極性、帯電量の異なる3種類の気中移動可能な粒
子により、世界で始めて4色表示を実証した。
- 27 -
これらの表示素子を支える技術については、[カプセル成形技術]、「ナノ機能粒子表面物性制
御技術」、「ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価」 と言う三
つの研究テーマに関し、以下にその成果を述べる。
1.2
カプセル成形技術の成果概要
本プロジェクトでは新規画像表示デバイスへの活用を最終目標に、内包されるナノ機能粒子の機
能を最大限に発現させうるカプセル化法の開発を行い、電気泳動方式に用いられる色相あるいは泳
動特性等の異なる様々な粒子を、その機能・分散安定性を損なう事なく、高収率で内包し、かつ最
適な粒径を有する単分散カプセルの作成に、世界に先駆けて成功した。
特に、カプセル活用電気泳動方式ではカプセル粒径の単分散化が極めて重要であり、その事によ
って、反射型LCDでは到達困難な50%以上の白色度を有し、コントラスト20の優れた特性の
表示素子を実現した。さらに単分散化により、表示素子の応答速度が早くなる事を始めて見出した。
すなわちこれらのカプセルの作成のために、従来から知られている代表的なカプセル化方法を、
岡山集中研究室、共同研究先岡山大学、および6大学1法人の再委託先でそれぞれ分担を決め、粒
子を内包する観点から、それぞれの可能性を再検討した。
岡山集中研究室、および岡山大学では、転相乳化法、界面重合法、界面ラジカル重合法、相分離
法等によるカプセル形成方法の検討を行い、いずれの方法においても、電気泳動粒子がカプセル壁
に取込まれる事なく高効率で内包されたカプセルを作成することに成功した。さらに MC 法(マイ
クロチャネル)、IJ 法(インキジェット)、および SPG 膜乳化法等による単分散化の検討を行い、
それぞれ粒子を内包し、CV 値 5%以下の単分散なカプセルを作成する事に成功した。
その他、光散乱法を用いた非破壊の新規カプセル粒径・膜厚測定技術、カプセル個々の強度測定
技術を確立した。これらの開発技術によって複雑なカプセル形成過程の理解が進んだ。
また、気中粒子移動による表示素子用に、世界で初めて界面ラジカル重合法による中空マイクロ
カプセルの調製に成功し、カプセル合成に用いる芯物質の選択により粉流体内包の見通しをつけた。
再委託先では、相分離法、液中乾燥法、界面重合法、コアセルベーション法、in situ 重合法、界
面反応法といった基幹カプセル成形技術を取り上げ、プロジェクトの流れに沿った「ナノ機能粒子
の内包」という目的に資する基本データを収集すると共に、電気泳動方式の表示デバイスへ適用す
るために、相分離法、滴間合一法、界面重合法、コアセルベーション法、in situ 重合法、界面反応
法に関してナノ機能粒子内包化の検討を行った。
その結果、液滴界面での帯電調整や界面活性物質の吸着特性の調整などにより、ナノ機能粒子を
内包する安定なエマルションを調製することができれば、各種カプセル成形技術に固有する反応場
における析出挙動の制御により、ナノ機能粒子を高効率で内包するカプセルを調製できることを明
らかにし、プロジェクトの基本計画に策定したカプセル膜厚、内包率などの制御技術なども達成で
きることがわかった。
またカプセルに粒子を内包する場合、粒子がカプセル壁に取り込まれる事が懸念されたが、再委
託先の東京農工大でメカニズム解析が進み、その原因が明確になって来た事もあり、カプセル壁形
成プロセスの最適化により、粒子のカプセル壁への取り込れをほぼ抑える事が可能になった。
1.3
ナノ機能粒子表面物性制御技術の成果概要
本プロジェクトで最終目標としている、電気泳動方式、気中粒子移動方式等の新規画像表示デバ
イスに用いる機能粒子としては、最適な粒径(粒径分布)、吸収係数、帯電特性、分散安定性を有す
- 28 -
る粒子の開発が不可欠であり、プロジェクトでは白、黒、三原色等の顔料粒子表面をポリマーで修
飾する技術開発により実現した。
電気泳動方式に用いる泳動性の粒子は、非極性溶媒中で正または負に帯電し、分散安定性を有す
る事が必要であるが、これについては、顔料をコアとし帯電性の絶縁性ポリマーをシェルとするコ
ア・シェル型の粒子を分散重合により作成する岡山集中研の方法、顔料粒子の極性溶媒中に分散さ
せた分散物を非極性溶媒中に乳化し液中乾燥法により粒子化する千葉集中研の方法、さらには顔料
をコアとしビニルナフタレン/マクロモノマー/正・負の帯電モノマーをシェルとするコア・シェル
粒子を分散重合法により作成する山形大学の方法等により実現する事が出来た。
電気泳動性のカラー粒子は、世界に先駆けて開発されたものであり、液中乾燥法に関する成果に
ついては2005年12月のIDW/AD‘05で発表し、Outstanding Poster Award を受賞した。
またプロジェクト独自の電気泳動方式(白色液体中1粒子移動型)に用いる非泳動性の白色粒子
については、非極性溶媒中でのビニルナフタレン(有機物として高い屈折率を有する)の分散重合法
による山形大学の単分散高分子微粒子、あるいは白色顔料の表面をストーバー法により長鎖アルキ
ル基により疎水化し、ベタイン構造をとらせる事で荷電を消す千葉集中研の方法等により実現する
ことが出来た。
この非泳動性の白色粒子として、再委託先の山形大学で単分散の高屈折率の真球粒子を、世界で
初めて、ビニルナフタレンの分散重合により作成する事に成功したことは特筆すべき成果である。
粒子の気中移動方式による表示素子に用いられる粒子については、懸濁重合により得られる粒子
に帯電調整剤を組込む千葉集中研の方法により実現する事が出来た。
1.4
ナノ機能粒子のカプセル成形技術を用いた画像表示材料の開発と機能評価技術の成果概要
カプセル型電気泳動方式、気中粒子移動方式およびエレクトロクロミック方式による画像表示デ
バイスの作製技術に関する研究開発を行い、その画像表示デバイスの性能評価を行うと共に、カラ
ー化のための新規な画像表示材料の開発を行い、色鮮やかなフルカラー表示を実現した。
またカプセルや機能性粒子など、新規に開発された画像表示材料を組合せてモデルとなる画像表
示デバイスを作製し、その表示性能を正確に評価し、結果を材料開発にフィードバックさせるため
の機能評価システムを構築する事で、研究効率の向上を図った。
まず、画像表示デバイスの作製技術としてカプセル型電気泳動表示デバイスの作製を行った。
単色 (白/黒、白/三原色)表示に関しては、独立48ドット(36mm×48mm)によるカタカナ、アルフ
ァベット、幾何学模様等の表示、7セグメント(60mm×80mm)による数字の表示、固定文字パターン
(50mm 角に 106 文字)による高精細の漢字表示を実証し、目標の1V/μm以下の0.2V/μm程度
の印加電圧で駆動可能であることを示した。
またフルカラー表示を行うためには、三原色を表示する独立した電気泳動表示カプセル素子を、
電極パターン上に規則的且つ単層に配列する必要があり、電着法によりカプセルを単層かつ充填率
95%以上の最密充填状態で敷き詰ることに成功し、4種類のカプセルにより4回の電着プロセス
を繰り返し、4色のカプセルを規則的に配列させたカラー表示素子を作成して、フルカラー表示が
原理的に可能であることを実証した。
さらに、表示デバイスとして組み上げるためには駆動用電極が必要であり、基板へ直接電極材料
を塗布するために精密ディスペンサと3軸ロボットを組み合わせた描画システムを構築し、30ミ
クロンの線幅での電極パターニングを実現し、高精細な電極パターニングが可能であることを確認
した。
- 29 -
アクティブ素子作製のため、有機電界効果型トランジスタの構成要素である有機半導体層、絶縁
膜などを検討し、新規静電誘導型有機トランジスタを開発し、その基本特性を評価した。
またフルカラー表示を実現する技術としてエレクトロクロミック方式について検討し、透明状態
から鮮やかな基本三原色(シアン、マゼンタ、イエロー)の着色状態に変化するテレフタル酸誘導
体を見出し、三層積層構造の表示デバイスにより写真同等のフルカラーを実現した。この成果につ
いては2004年開催のIDW04で初めて発表し、色の鮮やかさで多くの注目を集め、優秀ポス
ター賞を受賞した。
さらに、ゲル電解質を用いることによりフレキシブルフルカラーリライタブル表示が可能である
ことを実証した。
また粒子の気中移動方式の検討では、帯電量の異なる2種類のカラー粒子と白色粒子を用いて、
それぞれの粒子を独立に表示させることに成功し、カラー表示を実証した。この中で粒子の流動性、
帯電性と駆動閾値電圧、応答性との関係を明確にし、粒子移動機構について多くの知見を得た事が
今回のカラー表示の成功につながった。
これらの開発研究と平行して、機能評価技術として電気泳動表示特性装置の開発、電気泳動粒子
の直接観察および電気泳動電流測定を行った。
特に1個のカプセルを光学顕微鏡下に置き、左右に針電極を設置して電圧を印加することにより
カプセル内の粒子の移動や挙動を直接観察する事に世界で初めて成功した事は特筆に価する。
以上の機能評価技術の開発は、表示デバイス評価と表示原理の理解に役立ち、材料開発を加速す
るのに多大な貢献をした。
- 30 -
2.研究開発項目ごとの成果
2.1
カプセル成形技術
2.1.1
転相乳化による単分散エマルションの調製およびそのカプセル化
JCII
2.1.1.1
岡山集中研
林
正樹
研究目標
ダイセル化学工業株式会社は、自社が有する転相乳化によるエマルション作成技術を基軸として、
単分散なエマルジョン及びリライタブルペーパーに活用可能なカプセル調製プロセスの確立を目指
す。合わせて散乱手法やレオロジー評価法等をも取り入れながらカプセル特性・物性に関する評価
技術についてもその確立を目指す。
以下に表示品位、製品の品質、機能発現等の観点から定めた詳細目標を記す。
中間目標(値)
転相乳化法を中心とした手法を利用してカプセル成形技術を検討するとともに、フルカラーリライ
タブルペーパーに用いられるカプセルに関わる、各種特性の評価技術の確立を目指す。
1)カプセル径
;1-100μm
2)カプセル膜厚
;制御因子を抽出する。(芯材乳化及びカプセル硬化条件からの抽出)
3)カプセル単分散技術の確立;CV<25%(但しエマルション)
4)カプセル構造評価法の確立;散乱法によるカプセル粒径と膜厚の評価手法を確立する。
最終目標(値)とその設定根拠
1)カプセル径
1)電気泳動により顔料粒子が良好に移動で
;100μm
きること、且つ表示の鮮明化にとって重要
2)カプセル膜厚
;50-5000nm
2)透明性を阻害せず物理強度を有する膜厚
3)カプセルの最密充填により表示品位を高
3)カプセル単分散技術の確立;CV<10%
但し、機械的又は物理的
単分散化技術を組合せる
める目的において重要
4)表示品位、及び表示機能発現の観点からこ
4)粒径・膜厚評価法の確立
;評価法確立
5)透明性
;可視域の透過率 80%以上5)表示色に鮮明性を付与する為、高透過率要
6)芯物質の内包率
;90%以上
6)同上
7)レオロジー特性評価技術
;評価技術確立
7)製品の品質、機能発現の観点からこの技術
の技術を確立することが重要
を確立することが重要
目標達成度と技術の適用範囲
達成度
60~70%
特性値
技術の適用範囲
・カプセル径;1-100μm,CV<25%
・各種塗料、接着剤用カプセル等
・カプセル膜厚;<2000nm
70~80%
・カプセル径;1-100μm,CV<20%
・大型、ポスター等表示用
・カプセル膜厚;100-2000nm
100%以上
・カプセル径;1-100μm,CV<10%
・カプセル膜厚;50-5000nm
・透明性;可視域の透過率 80%以上
・芯物質の内包率;90%以上
- 31 -
・フルカラーリライタブルペーパー
2.1.1.2
目標の達成度
・ カプセル径
:カプセル調製因子の調節により 1-100μm の制御可能
・ カプセル膜厚
:カプセル粒径の 1/20 以下を達成
・ カプセル単分散技術の確立
:湿式分級技術との組合せにより CV 値 7.9%を達成
・ 粒径・膜厚評価法の確立
:光散乱法を用いることにより確立
・ 透明性
:可視域の透過率 96%を達成
・ 芯物質の内包率
:97%を達成
・レオロジー特性評価技術の確立:強度評価技術を確立しカプセル成形検討に適用
・(グループ目標)屋外耐光性 :3 ヶ月の耐光性試験により透過率 96.5%から 93.7%へ
の変化を観測,80%以上の維持を確認
2.1.1.3
研究成果内容
(1)基本プロセスの確立
a) 転相乳化エマルションの調製
転相乳化法とは、図 1 に示すように予め油相に親水性の高い乳化剤を溶解させておき、徐々に水
を加えていくことにより油相の連続相から分散相への転換を誘発する乳化方法である。本研究では、
絶縁性が比較的高く、樹脂とも若干の親和性を有するジイソプロピルナフタレン(比誘電率 2.46,
SP値 9.2(cal/cm3)1/2)を芯材として選定した。また、酸基を有するアクリル系高分子を高分子乳化
剤として合成し、その中和度・乳化剤量及び転相時の攪拌速度等が、転相乳化エマルションの粒径
や粒度分布に与える影響について調査した。その結果、上記因子を適切に制御することにより分散
度の低いエマルション調製(CV~16%)を可能とした。
【1】溶液重合
2-プロパノール
(IPA)
【2】中和
COOH
COOH
アクリルポリマー
【3】芯材添加
IPA
HNR3+
HNR3+
COO-
COO-
HNR3+
COO-
親水性の高い乳化剤
HNR3+ COO
均一混合
【4】水添加(転相)
IPA
+
水
HNR3+
COOHNR3+
COO-
100μm
図 1 転相乳化による油/水型エマルション調製スキームと調製されたエマルション
b)カプセル成形プロセス
本研究においては、転相乳化エマルションの油
/水界面に存在するアクリル系高分子乳化剤を壁
材としても利用して、強靭且つ緻密性を有するカ
アクリルポリマー/IPA
混合
エポキシ樹脂
中和剤
プセル壁の成形を目指した。壁硬化方法の探索と
見極めを行った結果、適切な硬化剤としてエポキ
芯材
転相乳化
イオン交換水
シ樹脂を用い、エマルション粒子内部から硬化す
る方法が有効であることを見出した(図 2)。
カプセル化
(90℃,30分)
カプセル壁強化
(90℃ ,2時間)
架橋補助用アミン
マイクロカプセル
図2 カプセル化スキーム
- 32 -
(2)カプセル制御技術の開発
a) カプセル壁の制御法
図 3a で示すように以下の4点がリライタブルペーパー用カプセルとして改善すべき課題であ
った。
・カプセル化の際エマルションの単分散性が維持されない(エマルションの安定性不良)
・カプセル表面には凹凸が多い
・壁厚みが薄い
・壁強度が低く緻密性に欠けていること(真空中で行う電子顕微鏡法によって破壊を観測)
そこで、エマルションの安定性向上と高分子乳化剤の効率的なカプセル壁への転化を目指し、高
分子乳化剤の油滴への吸着量増大を検討した。熱力学的な考察から、油/高分子乳化剤/水の相平
衡状態、ひいては高分子乳化剤の油/水界面における存在率を転相時に系に添加する水量という物
理量によって制御可能であるという仮説を設けた。
仮説に基づいた検討の結果、系に添加する水量をアクリル樹脂の濃度と中和度に対して最適化す
る手法を編み出した。これにより、高分子乳化剤兼壁材であるアクリル樹脂をエマルションの油/
水界面へ可能な限り局在化(相分離)させることを実現し、エマルションの安定性を大きく向上さ
せることが出来た。
その結果、良好な CV 値を有するエマルション形成が安定に行えるようになり、且つ CV 値を維持
したまま、凹凸が無く厚い壁を有するカプセル成形も可能となった。
壁断面
電子顕微鏡像
光学顕微鏡像
100μm
100μm
1μm
100μm
100μm
10μm
(a) 水量最適化前
(b) 水量最適化後
図 3 水量最適化前・後のカプセル化状況:光学顕微鏡像(左),走査電子顕微鏡像(中・右)
また、図 4 に示すように転相水量を最適化した条件下で、カプセル壁厚みがエポキシ樹脂量・
カプセル壁厚み(μm)
アクリル樹脂濃度・中和度によって制御可能であることを確認した。
中和度25%
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
0.4
0.8
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
1.2
1.6
中和度25%
0%
10%
20%
樹脂濃度20%
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
30%
0% 10% 20% 30% 40% 50%
樹脂濃度
エポキシ当量
図4
カプセル壁厚み制御例
- 33 -
中和度
b)カプセル強度・透明性・耐光性
電気泳動表示媒体において、カプセルの変形による表示面積の極大化は画質向上の観点から重要で
ある。そこで、微小硬度計を用いた一個のカプセルに対する押し込み試験による変形性と強度の評
価法を確立した。ここでは変形率を押し込み深さ÷粒径と定義する。変形率と印加荷重との関係を
微分することにより、その極大位置から降伏点を算出し、降伏荷重をカプセル強度の指標とした。
その評価例を図 5 に示す。
降伏点
破壊点
変形率(%)
変形開始
100
80
60
40
20
0
破壊点
圧縮曲線
微分曲線
0
↑微小硬度計による押し込み試験スキーム
図5
2
降伏荷重
4
6
荷重(mN)
8
10
微小硬度計による押し込み試験のスキームとマイクロカプセルに対する適用例
このような解析から、上記転相水量の最適化を行った場合、行わない条件で調製されたカプセル
(中間審査以前)に比べ、以下 2 点の物性改善が為されたことを明らかにした。
・カプセル強度:降伏荷重にして 10 倍程度の強度向上
・カプセル変形性:破壊点に到達するまでの変形率 50%程度から 80%程度への向上
以上の改善結果から、電極に配列された後の圧力印加による表示面積の増大効果が期待できる。
また、透明性をヘイズメーターにより評価した結果、全光線透過率として目標値 80%を上回る 96%
を達成した。更に 3 ヶ月間の屋外耐光性試験の結果、可視域の透過率は 93.7%へと約 3%の低下が
観測されたに過ぎず、目標値の 80%以上を充分に満たしていることを確認した。
c) 粒子径及び分布制御
転相水量を最適化した条件下で、カプセル粒径(エマルション粒径)が攪拌条件・アクリル樹脂
濃度・中和度によって制御可能であることを確認した(図 6)。更に、樹脂分子量の増大や樹脂へ
の疎水性成分の導入により約 1μm、また分子量の低減や極性の高い中和剤への変更により約 100μm
のカプセルが得られることを確認しており、各因子の調節により 1-100μm の制御は可能であると
中和度25%
0%
10%
20%
80
60
40
20
0
30%
アクリル樹脂濃度
図 6 カプセル粒径制御例
- 34 -
平均粒径(μm)
平均粒径(μm)
80
60
40
20
0
樹脂濃度20%
中和度25%
80
60
40
20
0
0
80
60
40
20
0
200 400 600 800
攪拌回転数(rpm)
CV値(%)
中和度
80
60
40
20
0
40%
CV値(%)
樹脂濃度20%
80
60
40
20
0
10% 20% 30%
CV値(%)
平均粒径(μm)
考えている。
50
湿式での分級法を適用した。図 7 に、中和度
25%・アクリル樹脂濃度 20%・攪拌速度 400rpm
の条件で調製したマイクロカプセルに対する
湿式分級の適用例を示す。ここでは平均粒径
42.7μm・CV 値 7.9%のマイクロカプセルを得る
40
30
20
10
0
200μm
0
20
40
60
80
100
たカプセルの単分散度を更に向上させるため、
頻度(%)
転相乳化法により可能な限り単分散化され
粒径(μm)
図7 湿式分級適用後のマイクロカプセル
ことが出来た(収率 55wt%)。
(3)電気泳動粒子の内包化
a) 内包化制御
イ)顔料分散剤と微粒子の選定
電気泳動粒子のモデル粒子として酸化チタンを選択し、カプセルへの内包条件を探索した。検討
の結果、超微粒子酸化チタン(粒径 50nm 以下)に対して以下の内包条件を見出した。
・カプセル化に影響を及ぼさない酸性ないし
酸性顔料分散剤内包
塩基性の低い顔料分散剤を要する
塩基性顔料分散剤内包
・内包性と粒子表面の疎水性との間に明確な
相関があり、疎水性の指標であるメタノー
ル疎水化度が 75 以上となるよう高度に疎
水化処理されていることが必要である
100μm
100μm
(a) 顔料分散剤がカプセル成形に与える影響
しかしながら、隠蔽性(反射率)の高い顔料
グレード酸化チタン(粒径 200nm 以上)に関
疎水化度70%:壁付着有
疎水化度77%:壁付着無
しては、カプセルに内包可能な市販の疎水化処
理品は見出せなかったため、酸化チタンメーカ
ーである T 社と協議の上、大粒径品の疎水化処
理を依頼した。
20μm
20μm
(b) 顔料の疎水性とカプセル内包性との相関
入手した酸化チタン顔料に対して再び顔料
図8 各種因子が顔料内包化に与える影響
分散剤の最適化を行うことにより、カプセル内包化を可能とした。図 8a は顔料分散剤を溶解させ
たオイルを内包したカプセルであり、塩基性顔料分散剤が壁材であるアクリル樹脂の酸基と相互作
用を行うことによってカプセル化が阻害(不透明化)されたことを示唆している。
また、図 8b は顔料グレード酸化チタン内包カプセルを強制的に破壊した状況であり、顔料の高
疎水化が内包性の向上に寄与し、壁との付着ないしは壁への取り込まれが解消されたことを示して
いる。また、下記電気泳動粒子分散液(芯物質)を内包したカプセルに対する熱重量分析から、芯
物質内包率が 97wt%であることを確認した(目標値 90wt%以上)。
ロ)電気泳動粒子とその内包化
プロジェクトで開発された 2 粒子移動方式の電気泳動粒子(白・黒)のカプセル内包化を試みた。
開発粒子は樹脂修飾された酸化チタン及びカーボン顔料であるため疎水化されており、壁との相互
作用は見られないものの、粒子がカプセル内部で凝集を引き起こすという問題が発生した。転相乳
化からカプセル化の過程を詳細に調べることにより、転相助剤である 2-プロパノール(IPA)が顔
- 35 -
料の軟凝集を引き起こしていることを明らかにした。そこで、転相乳化後に適切なタイミングで IPA
をエバポレーションで除去することにより、顔料を凝集なくカプセル化することに成功した。
b) 電気泳動性の確認
顔料分散剤と溶剤組成が電気泳動粒子分散液の表示特性に与える影響を詳細に調べることによ
り、最適な組み合わせを選定した。分散液を内包したカプセルを 2 枚の ITO 電極基板間に配列し、
電圧を印加した結果、図 9 に示すように顔料分散安定性の良さに起因する好適な繰り返し表示再現
性を有する電気泳動を達成した。
20
黒表示
反射率(%)
白表示
50μm
コントラスト比
2.3
10
5
0
50μm
印加電圧50V,周波数0.1Hz
15
10
20
30
時間(sec)
(b) 電気泳動による表示切替状況
(a) 電気泳動による表示切替状況
0
図 9 プロジェクト開発粒子内包カプセルを用いた電気泳動表示特性
(4)
a)
カプセル粒径・膜厚評価法の確立
光散乱測定装置の開発
カプセル粒径及び壁厚みによって散乱強度の散乱角度依存性が理論的に厳密に規定されること
から、散乱法を用いることにより非破壊にてカプセルの粒径及び膜厚みを測定することが可能であ
ると考えられる。そこで、カプセルという複雑な構造を有する物体の構造解析に適した二波長光源
を有するゴニオフォトメーター型光散乱装置の基本構想を作成し、開発を N 社に依頼した。N 社と
の協業により、測定の精度向上検討、光学的な散乱強度補正技術の構築を行った。
相対散乱強度
1.0E+07
1.0E+05
1.0E+03
実験曲線
理論曲線
1.0E+01
1.0E-01
1.0E-03
1.0E-05
0
10
20
30
40
媒質中の散乱角(º)
カプセル断面
40μm
10μm
理論散乱曲線の計算条件
・サイズ
外径
19.88μm
膜厚み 5.9μm
・屈折率
芯材
1.515
壁
1.52
図10 光散乱実験結果・解析条件及び測定対象のマイクロカプセル
b)
マイクロカプセルに対する光散乱測定
マイクロカプセル分散液に対する散乱測定を行い、そこから理論的に解析された粒径・壁厚みが、
電子顕微鏡により観測した粒径・壁厚みとほぼ一致することを確認した。上記検討から、光散乱法
を用いることにより、マイクロカプセルの粒径計測のみならず、カプセルを破壊することなく壁厚
- 36 -
みの計測が可能であることを明らかにした。
(5)
プロジェクト方式電気泳動表示への対応
a)白色微粒子分散型 1 粒子移動方式電気泳動表示
イ) 電気泳動粒子とその内包化
プロジェクト独自の表示方式である 1 粒子移動方式の電気泳動表示を達成するため、高屈折率
(1.69)を有するポリビニルナフタレン粒子(白色微粒子)とリコー開発品である黒色電気泳動粒
子のシリコーンオイル分散液のカプセル化について、追加検討を行った。
ジイソプロピルナフタレンの内包に最適化された本研究の転相乳化においては、シリコーンオイ
ル(比誘電率 2.28,SP値 7.3(cal/cm3)1/2)の内包化には即座に対応できないため、ゼラチン-アラ
ビアゴム複合コアセルベーション法によるカプセル化を検討した。但し、転相乳化法の原理を応用
した乳化法の改良や壁材組成の最適化、更には攪拌やpH条件を吟味することにより、柔軟性に優れ
且つ均一な薄壁を有するカプセルを収率良く得ることに成功した。
上記のカプセル化プロセスの最適化に加え、分級による単分散化を行った結果、図 11 に示すよ
うに電極上のデッドスペースを極小化することが可能となったため、表示特性の向上が期待される。
カプセルスラリー
電極への充填状態
100μm
カプセルスラリー
100μm
(a) プロセス最適化前のカプセル及び配列状態
図11
電極への充填状態
100μm
100μm
(b) プロセス最適化後のカプセル及び配列状態
プロセス最適化前後におけるカプセル化状況と電極への配列状態
ロ) 電気泳動性の確認
上記電気泳動粒子内包カプセルを 2 枚の ITO 電極板間に配列して電圧を印加し、更にカプセル粒
径が表示特性(反射率・コントラスト)に与える影響を考慮した結果、100μm 程度が粒径の最適値
であることを見出した。
表示特性として、図 12 に示すように、印加電圧 20V において白色反射率 31.7%・コントラスト
比 11.7 を達成した(プロジェクト目標コントラスト比:10)。
黒表示
400μm
反射率(%)
白表示
400μm
(a) 電気泳動による表示切替状況
60
50
40
30
20
10
0
印加電圧20V,周波数0.1Hz
コントラスト比
11.7
0
5
10
15
20
時間(sec)
(b) 電気泳動による表示切替状況
図 12 1 粒子移動方式電気泳動粒子分散液の内包カプセルを用いた電気泳動表示特性
- 37 -
b)2 粒子移動方式電気泳動表示
イ) 電気泳動粒子とその内包化
上記、1 粒子移動型電気泳動粒子内包カプセルの調製に適用したカプセル化技術を活用すること
により、2 粒子移動方式の電気泳動粒子内包カプセルの作成を試みた。ここでは、樹脂修飾された
酸化チタン顔料(白色微粒子)及びカーボン顔料(黒色微粒子)のアイソパー分散液を用い、これ
を内包するマイクロカプセルを作成した。
ロ) 電気泳動性の確認
ポリビニルナフタレンと比較して、酸化チタンが極めて高い屈折率(ルチル型:2.71)を有する
ため、上記 1 粒子移動方式の表示に比べて高い白色反射率を得た。更に、各種カプセル特性の最適
化により、印加電圧 30V において、同様の表示方式を採用する E-ink 社の性能(白色反射率 36%・
コントラスト比 9)や反射型液晶を用いた表示性能を凌駕する、白色反射率 53%・コントラスト比
19.5 を達成することに成功した(図 13)。
黒表示
400μm
反射率(%)
白表示
400μm
(a) 電気泳動による表示切替状況
60
50
40
30
20
10
0
印加電圧30V,周波数0.1Hz
コントラスト比
19.5
0
5
10
15
20
時間(sec)
(b) 電気泳動による表示切替状況
図 13 2 粒子移動方式電気泳動粒子分散液の内包カプセルを用いた電気泳動表示特性
以上の検討により、電気泳動マイクロカプセルインクの表示品位を向上させるためには、電気泳動
粒子の性能のみならず、カプセルへの柔軟性付与・壁の薄化/均一化・粒径の単分散化・カプセル
粒径の最適化が重要であることを明らかにした。
2.1.1.4
成果の意義
当社は、本プロジェクトにおいて、転相乳化法を活用した新たなマイクロカプセル成形技術の開
発に成功した。
当社開発の新規プロセスでは、樹脂設計が容易で透明性や耐光性に優れたアクリル系樹脂からな
るカプセル壁を形成でき、特殊な装置を使用することなく比較的斉一なカプセル粒径制御が可能で
ある。
また、早期の実用化をも鑑み、量産化の容易な技術として構築した。ナノ機能粒子(電気泳動粒
子)の内包化についてはプロセス上困難な面があったが、基本技術として内包性と粒子の疎水性と
の相関を明らかにした。
さらに、開発カプセルは電気泳動粒子分散液に限らず、様々な着色材料や接着剤等も容易に内包
可能であるだけでなく、顔料等の固体材料の内包にも応用可能であることなど技術的な汎用性にも
秀でており、リライタブルペーパーのみならず、従来カプセル市場の拡大と新たな市場の創造も期
待できる。例えば、得られた乳化技術を従来カプセル化プロセスへ応用することにより、1 粒子移
動方式電気泳動表示への対応もスムーズに行うことが出来た。
- 38 -
一方、上記の研究に並行して、汎用性のある新たなカプセル特性評価技術(構造解析・強度解析)
を構築し、物性の見極めとカプセル作成の効率化に適用した。
以上、当社は新規カプセル調製プロセスからカプセル特性評価法の確立まで、多岐に亘るプロジ
ェクト成果を得た。
- 39 -
2.1.2
MC 法、IJ 法による単分散エマルションの調整およびそのカプセル化
JCII
2.1.2.1
岡山集中研
岩澤
昭→山内
健一郎(平成 16 年 10 月 1 日より担当者変更)
研究目標
一般に単分散なポリマー粒子を得る方法としては、多分散の粒子を篩により分級する方法と直接
単分散粒子を調製する方法の 2 つがあるが、前者では目的粒子以外のものは廃棄物となり、収率や
生産性の点で問題がある。
そこで本研究では、マイクロチャネル(MC)装置およびインクジェット(IJ)装置を用いて単分
散なエマルションを調製し、引き続きカプセル化を行うことで単分散なマイクロカプセルを調製す
る技術検討を行った。
フルカラーデジタルペーパーに適用するためのカプセルの詳細目標を以下に示す。
中間目標(値)
1.カプセル粒径
:10~100μm
2.カプセル壁膜厚
:100~5000nm
3.カプセル径分布
:CV20%以下
4.カプセル強度の評価法の開発:カプセル径・カプセル膜厚およびそれらの比とカプセル強度
との関係の明確化(上記1.2.のカプセルを対象)
最終目標(値)とその設定根拠
1.カプセル粒径
:1~100μm
着色粒子(各色)とその分散液をカプセルに内包させる。
2.カプセル壁膜厚
:50~5000nm
膜透明性・内包物質の機能性発揮。
3.カプセル径分布
:CV10%以下
カプセル分散性・機能の均一化・鋭敏化。
4.屋外耐光
:3ヶ月以上
用途展開のひとつである携帯電話の更新期間(約1年)内における要求耐光性。
5.透過率
:80%以上
6.添加芯物質内包率
:90%以上
目標達成度と技術の適用範囲
達成度
60~70%
特性値
技術の適用範囲
1.カプセル粒径:10~100μm
2.カプセル壁膜厚:100~5000nm
白黒デジタルペーパー
塗料用硬化剤カプセル化
3.カプセル径分布:CV20~15%
70~80%
1.カプセル粒径:10~100μm
2.カプセル壁膜厚:100~5000nm
白黒デジタルペーパー
塗料用硬化剤カプセル化
3.カプセル径分布:CV10%以下
100%以上
1.カプセル粒径:1~100μm
2.カプセル壁膜厚:50~5000nm
3.カプセル径分布:CV10%以下
4.屋外耐光
:3ヶ月以上
5.透過率:80%以上
6.添加芯物質内率:90%以上
- 40 -
フルカラーデジタルペーパー
2.1.2.2
目標の達成度
(1)カプセル粒径
:(IJ 法)インクジェット吐出電圧、分散相と連続相の
粘度により 15~50μm で制御可能であることを確認
(MC 法)貫通孔サイズの異なる MC 基板の使用により
45~100μm で制御可能であることを確認
(2)カプセル壁膜厚
:100~800nm で制御可能であることを確認
(3)カプセル径分布
:(IJ 法)CV 値 3.1%(メイン粒子)を達成
(MC 法)CV 値 4.3%を達成
:曝露試験 3 ヶ月経過後、ヘイズメーターによる全光
(4)屋外耐光
線透過率が 97.0%から 95.6%へ変化することを確認
(透過率 80%以上を維持)
(5)透過率
:ヘイズメーターによる全光線透過率が約 97%を達成
(6)添加芯物質内包率
:芯物質内包率 96%を達成
(7)カプセル強度の評価法の開発 :評価法の確立およびカプセル強度の制御因子を明確化
2.1.2.3
研究成果内容
(1) 単分散なエマルションの調製手法とカプセル化プロセス
a) 単分散なエマルションの調製手法
分散相
イ)IJ 法による単分散なエマルションの調製
Ink-jet Head
制御PC
図 1 に示すように、IJ 装置(HEK-1:コニカミノルタ
IJ 社製)を用いて、インクジェットヘッド(318SL:
連続相
吐出量 42pl、512 ノズル)を連続相中に浸漬させた状
態で分散相を吐出し、エマルションの調製を行った。
ロ)MC 法による単分散なエマルションの調製
図 1 インクジェット装置
図 2 に示すように、貫通型 MC 装置(イーピーテック社製)を用いてエマルションの調製を行っ
た。連続相はシリンジポンプにより一定圧力で供給し、分散相の供給は分散相液面/MC 基板間の
水位差を調節して行った。
分散相
連続相
エマルション
モジュール
孔サイズ
貫通型MC基板
ガラス板
56×14μm
図 2 マイクロチャネル装置(左)と MC 基板の表面写真(右)
b) カプセル化プロセス
本研究で用いたカプセル化プロセスを図 3 に示す。
スチレン(ST)とメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)からなるアクリル樹脂をカ
プセル壁用樹脂として、芯物質溶媒であるジイソプロピルナフタレン(DIPN)に溶解し分散相とし
た。これを IJ 法または MC 法により連続相のポリビニルアルコール(PVA:重合度 500)水溶液中
に分散して O/W 型エマルションを得た。引き続き緩やかな撹拌のもと 1,2-ビス(2-アミノエトキシ)
エタン(BAEE)水溶液を添加し、加熱して界面重合によりマイクロカプセルを得た。
- 41 -
分散相(O)
分散相(O)
(2) カプセル粒径/カプセル径分布の制御技術
芯物質+カプセル壁用樹脂
芯物質+カプセル壁用樹脂
a)IJ 法
連続相(W)
連続相(W)
分散安定剤水溶液
分散安定剤水溶液
IJ法 or MC法
一般に IJ 装置で吐出を行う場合、オリフィスから液滴
が尾を引きながら吐出され、尾が切れてメイン粒子とサ
単分散エマルション(O/W)
単分散エマルション(O/W)
テライト粒子が形成される。IJ 法で調製したエマルショ
架橋剤添加
ンの液滴径は、低粘度の分散相を使用した場合に二峰分
加熱(50℃×60min)
布を示したが、分散相の粘度を高くすることで大幅に改
善された(図 4)。
単分散マイクロカプセル
単分散マイクロカプセル
図 3 カプセル化プロセス
0.4
分散相粘度:1.55mPa・s
0.3
Frequency[-]
Frequency[-]
0.4
0.2
0.1
0
0.3
分散相粘度:8.13mPa・s
0.2
0.1
0
2
6 10 14 18 22 26 30 34 38 42 46 50
Diameter[μm]
2
6 10 14 18 22 26 30 34 38 42 46 50
Diameter[μm]
図 4 分散相の粘度調整による単分散性の改善
また、図 5 に示すように IJ 法により調製されるエマルションのメイン粒子の液滴径は、吐出電圧
と連続相の粘度によって制御可能であることを見出した。
吐出電圧の影響
40
分散相:DIPN
30
連続相:1wt%SDS 水溶液
平均液滴径 [μm ]
平均液滴径 [μm ]
50
20
35
連続相の粘度の影響
30
分散相:DIPN
25
連続相:PVA 水溶液
吐出電圧:11V
20
5
7.5
10
12.5
15
0
吐出電圧[V]
図5
2
4
6
8
連続相の粘度 [mPa・s]
IJ 法によるエマルション液滴径の制御因子
吐出電圧(左)、連続相の粘度(右)
IJ 法により調製したエマルション及びマイクロカプセルの光学顕微鏡写真と粒径分布を図 6 に示
す。分散相には ST/MOI 比=8/2 樹脂の DIPN 溶液を、連続相には 2wt%PVA 水溶液を使用した。イ
ンクジェットの吐出条件は、周波数:100Hz、吐出電圧:11V、吐出時間:24μs にて行った。メイ
ン粒子の平均粒径と CV 値は、カプセル化を行った後もほとんど変化せず、CV 値 10%以下の単分散
なマイクロカプセルを調製することができた。
Frequency[-]
0.8
0.6
エマルション
0.4
(30μm 以上のメイン液滴)
0.2
平均液滴径:42μm
0.0
100μm
2 6 10 14 18 22 26 30 34 38 42 46 50 54 58
Diameter[μm]
CV 値:4.2%
Frequency[-]
0.8
0.6
マイクロカプセル
0.4
(30μm 以上のメイン粒子)
0.2
平均粒径:45μm
0.0
100μm
図6
2 6 10 14 18 22 26 30 34 38 42 46 50 54 58
Diameter[μm]
CV 値:3.1%
IJ 法により調製したエマルション(上)およびマイクロカプセル(下)
- 42 -
b)MC 法
図 7 は、分散相に DIPN、連続相に 5wt%PVA 水溶液を用いて、孔サイズの異なる MC 基板(孔の
アスペクト比はいずれも 4)でそれぞれエマルションを調製した場合の平均液滴径と CV 値を表して
いる。エマルションの液滴径は貫通孔の短辺の長さにほぼ比例して大きくなり、いずれも優れた単
分散性を有していた。従って、カプセルの粒径は孔サイズの異なる MC 基板を使用することで制御
5
80
4
60
3
40
2
20
1
平均液滴径[μm ]
100
48×12μm
孔サイズ:40×10μm
0
56×14μm
7.5
図 7 貫通孔の短辺と平均液滴径および CV 値の関係
10
12.5
CV 値[%]
可能である。
0
17.5
15
貫通孔の短辺[μm]
IJ 法と同様に、MC 法による単分散エマルションおよびマイクロカプセルの調製は可能だった。
そこで、MC 法により電気泳動粒子分散液のマイクロカプセル化を試みた。調製したエマルション
およびマイクロカプセルの光学顕微鏡写真と粒径分布を図 8 に示す。分散相には ST/MOI 比=6/4
樹脂の DIPN 溶液に白色粒子を分散したものを、連続相には 5wt%PVA 水溶液を使用した。平均粒
径と CV 値はカプセル化後にほとんど変化せず、CV 値 10%以下の単分散なマイクロカプセルを調製
することができた。
Frequency[-]
0.8
エマルション
0.6
0.4
MC 孔サイズ:56×14μm を使用
0.2
平均液滴径:87μm
0.0
100μm
0
20
40
60
80
100 120 140
CV 値:4.0%
Diameter[μm]
Frequency[-]
0.8
100μm
マイクロカプセル
0.6
0.4
平均粒径:86μm
0.2
CV 値:4.3%
0
0
20
40
60
80
100 120 140
Diameter[μm]
図8
MC 法により調製したエマルション(上)およびマイクロカプセル(下)
(3) カプセル壁膜厚の制御技術
1000
をそれぞれ DIPN で所定の固形分濃度(5、10、15、20wt%)
に希釈して分散相とした。連続相には 2wt%PVA 水溶液を用
いて、IJ 法によりマイクロカプセルを調製した。
粒径 40μm のカプセルの断面を SEM で観察して壁膜
厚を計測した。カプセル壁膜厚と樹脂濃度の関係を図 9
に示す。
膜厚は樹脂濃度の増加と共に厚くなり、同一樹脂濃度
- 43 -
MOI 20%
MOI 30%
800
Thickness [nm]
ST/MOI 比の異なる樹脂(ST/MOI=8/2、7/3、6/4、5/5)
MOI 40%
600
MOI 50%
400
200
0
0
5
10
15
Prepolymer concentration [%]
20
図 9 膜厚と樹脂濃度の関係
では、MOI 含有率の増加に伴い薄くなった。以上より、
カプセル壁膜厚は 100~800nm の範囲内でカプセル壁用樹脂の濃度とイソシアネート量によって制
御可能であることが明確になった。
(4) カプセル強度の評価法の開発およびカプセル強度の制御技術
微小硬さ試験機を用いてカプセル 1 個の圧縮試験を行った。押し込み深さ/荷重曲線の微分値が
最大になる点を降伏点と仮定し、その荷重(降伏荷重)をカプセル強度の指標とした(図 10)。評
価には、粒径 40μm のカプセルを使用した。カプセル強度は MOI の含有率には大きな影響を受けず、
カプセル壁用樹脂の濃度に依存することが明らかになった(図 11)。
Indenter
MC
①Non-contact → ②Deformation → ③Yield point → ④Break down
③
②
30
Depth [μm]
25
20
15
-:測定曲線
-:微分曲線
10
MOI 20%
2.5
④
Yield load [ mN]
①
3.0
MOI 30%
MOI 40%
MOI 50%
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
5
0
0
0
1
2
3
4
5
5
10
15
20
25
Prepolymer concentration [%]
6
Load [mN]
図 10 カプセルの変形過程(上)測定曲線例(下)
図 11 降伏荷重と樹脂濃度の関係
(5) 透過率の評価
ヘイズメーターを用いて全光線透過率を測定し、透明性の指標とした。測定光学系を図 12 に示
す。試験板の作製は以下の手順に従った。
・試験板作製手順
①電着用樹脂を用いて ITO ガラス電極上にカプセルを配列する。
②スペーサーを設け、もう一枚の ITO ガラス電極を用いてカプセルを挟む。
③電極間の隙間にカプセルの芯物質と同一溶媒を充填して試験板とする。
界面重合法で調製したカプセルの透過率を表 2 に示す。透過率はカプセル粒径に影響を受けず、い
ずれも約 97%の透過率を達成した。
入射光
透過光
ST/MOI=6/4
カプセル壁用樹脂組成
表 2 カプセルの透過率
架橋剤
BAEE
芯物質
DIPN
カプセル粒径
40~90μm 90~125μm
透過率
96.87%
96.91%
100
透過率 [%]
図 12 透過率の測定光学系
(6) 屋外耐光性の評価
95
90
85
80
透過率測定に用いた試験板の曝露試験を行い、
0
1
2
3
時間[月数]
透過率を追跡評価した。時間経過に伴いわずかに
透過率に変化が見られるものの、初期値 97.0%に
- 44 -
図 13 曝露試験結果(透過率変化)
Fly UP