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芝の家 - G-SEC

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芝の家 - G-SEC
昭和の地域力再発見事業「芝の家」
芝地区の新たなコミュニティ創造事業に関する調査研究報告書
2010 年度
|慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所
|慶應義塾大学武山政直研究室
|三田の家有限責任事業組合
昭和の地域力再発見事業「芝の家」
芝地区の新たなコミュニティ創造事業に関する調査研究報告書
2010 年度 | 慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所
| 慶應義塾大学武山政直研究室
|三田の家有限責任事業組合
-------------------------------------------------------------------
2
1)拠点運営
-------------------------------------------------------------------
5
2)イベント
-------------------------------------------------------------------
13
はじめに
実施事業
3)小さな地域活動
4)地域への参加
------------------------------------------------------------------ 30
------------------------------------------------------------------
58
考察
-------------------------------------------------------------------
63
資料
-------------------------------------------------------------------
77
論文、出版、報告書、その他
講演、学会発表など
視察、研修などの受け入れ
メディア掲載一覧
1
はじめに
2
はじめに:芝の家の役割とこれから
武山政直(慶應義塾大学経済学部教授、グローバルセキュリティ研究所上席研究員)
2009 年度は、地域において芝の家の認知を高めることと、芝の家やそこで活動するスタッフと地域
生活者の間に、そしてまた芝の家に訪れる人々どうしの間に交流と信頼関係を育むことが重要なテー
マであった。2010 年度は、芝の家において築かれた、そしてまた新たに築かれ続ける信頼関係を基盤
として、地域力の再生に資する様々な活動が生み出された1年であったといえる。本報告書の本論に
も記されているように、芝の家の来訪者は昨年度に比べ、数の上でも年齢構成の上でも、大きな広が
りを見せている。特に大人や高齢者層の来訪者が増加したことにより、また芝の家を運営するサポー
トスタッフに学生以外に地域住民や社会人が加わることによって、芝の家が地域コミュニティの中の
多様な生活者の交流拠点としての存在を確立できたと言える。
それでは、このように一定の認知と来訪者が見込まれるようになった芝の家は、本事業の目標であ
る「新たなコミュニティ創造」にとっていかなる役割を果たすことができるのか。2010 年度の活動の
最も大きな成果として、芝の家が、運営スタッフと来訪者や各種団体メンバーの交流をもとに、数多
くの「小さな地域活動」を生み出す孵化器としての役割を持つことが明らかになった。本論で詳しく
解説される通り、そのような数名規模の参加者からなる各種の地域活動の創発には、公(public)とは
異なる共(common)の領域に関心を持つ人々の、緩やかで(weakly tied)開かれた(open)なつな
がりと信頼(ソーシャルキャピタル)が基盤となっている。また、そこでの活動は、メンバーの創意
工夫のもとに地域の特性が活かされたユニークな内容のものが多く、参加するメンバーにとっても無
理なく楽しみながら継続できるものとなっている。それは地域の問題解決への取り組みという切迫し
た意識や義務感よりも、むしろ地域の共の利益に資する新たな価値創造への参加の喜びという動機に
支えられている。このような一つの交流拠点から自発的に形成される小さな地域活動の発展のモデル
は、芝地区が目標とする新たな地域コミュニティの創造を具現化するものであるだけでなく、次第に
関心が高まっている我が国の他の地域におけるコミュニティの再生にとっても少なからず示唆を与え
るものとなるだろう。
今後は、このような小さな地域活動がさらに多く生まれるための環境を整えていくとともに、芝の
家の拠点機能を安定的に持続させるためのキーパーソンや運営スタッフの人材育成が大きな課題とな
る。それらの点も踏まえ、本事業の総合的な評価を行うことで、そこから導かれた知見を芝地区をは
じめとする各地の地域コミュニティの創造に役立てられることに期待している。
3
実施事業
1)拠点運営
2)イベント実施
3)小さな地域活動
4)地域への参加
4
1)拠点運営
「芝の家」オープン実績と来訪者数
2010 年 4 月∼2011 年 3 月
2010 年度も引き続き、毎週月・火・木曜日(11 時
水・金・土曜日(13 時
16 時)を「コミュニティ喫茶月火木」として、
18 時)を「駄菓子と昔遊びのあるオープンスペース」として、週 6 日間オー
プンした。
芝の家のオープン日
毎週月・火・木曜日(11 時
16 時)
コミュニティ喫茶月火木
毎週水・金・土曜日(13 時
18 時)
駄菓子と昔あそびのあるオープンスペース
休室日:日曜・祝日および、お盆、正月、5 月の連休
【 来訪者数 】
2010 年度の合計開室日数は、284 日。総来訪者はのべ 9,753 人で、前年(9,113 人)と比較して 7.2%
増加した。一日の平均来訪者数は 34.3 人と、前年の 33.4 人から 1 人弱増えている。図 1 は、月別来
場鵜者数の推移である。
図1
月別来場者数(子ども、大人、お年寄りの 3 属性区分、2008 年 10 月
日ごとの来訪者の推移および開室実績は、以下の通りである(表 1)。
5
2011 年 3 月)
表 1:オープン日と来訪者数
6
7
図2
子ども、大人、お年寄りの割合
子ども、大人、お年寄りの属性別の内訳は、子ども:3,399 人(34.9%)、大人:5,048 人(51.8%)、
お年寄り:1,306 人(13,4%)であった(図 2)。子どもは、乳幼児から中学生、大人は、高校生から
65 歳未満、お年寄りは 65 歳以上の来場者を指す。
来訪者の属性別の割合の変化をみると、2009 年度はそれぞれ 42%、46%、12%であり、大人とお年
寄りの割合が増えていることがわかる。子どもの述べ来場者数がわずかに減少しているが、それ以上
に、大人、お年寄りの来場者数が伸びている。大人の増加の理由として、高校生、乳幼児の親、介護
職など、これまでに増して多様な立場や世代の人々が訪れるようになったこと、来場者同士で取り組
む地域活動が活発化したことによる来場頻度の増加が挙げられる。また、見学や取材が多くあったこ
と、青山学院大学の社会人向け講座など研修の受け入れを通年で行ったことも、来場者数の増加と多
様化につながっている。
図3
来訪者数の推移の属性別比較
8
これまで課題のひとつとして挙げられていた、お年寄りの来場促進については、2009 年度の 1,088
人から 1,306 人と、20%増加している(図 4)。お年寄りの来場が多くなった理由としては、学生スタ
ッフが多かった以前と比較して、近隣在住のシニア世代の運営スタッフが増えたことで、より抵抗無
く訪れることが可能になったこと、近隣施設との関係が構築されたことによって、ヘルパーやケアマ
ネジャーの紹介で訪れるお年寄りが増えたこと、またリーフレットの作成により、これまで「芝の家」
を知らなかった層への認知度が高まったことが考えられる。
さらに、10 月
3 月の 6 ヶ月間の前年同月比をみると、お年寄りの来場者数は 41%の増加している。
2011 年度に向けて、さらに高齢層の来場者数の増加が予測される。
図4
2009 年度と 2010 年度のお年寄りの来場者数の比較(前年同月比)
来場者数は、増加しているとはいえ微増で、周年イベントや長期休暇のない月については、およそ
700 人
1,000 人で安定している。1 日あたりの来場者数は、特にイベントの無い日で 20 人から 45 人
程度の日が多い(図 5)。イベントの開催日では、50 名を越える日もある。さらに来場者数が増加する
ことが好ましいのか、現在の来場者数が適正規模なのかを判断するのは難しいが、40 人以上の来場が
ある日は、よく言えば賑やかで活発だが、反面、静かに過ごしたい人には落ち着かないと感じられる
可能性がある。今後、お年寄りや心身に不自由のある人など、来場者の多様性が増していくとすれば、
大勢の人で賑わう日もあれば、少人数で静かに過ごせる日もあるという現在の来場者数から大幅に増
加することは、おそらく必ずしも有効ではないだろう。あくまで観察からの想定であるが、月平均 1,000
人弱程度の来場者数が適正規模ではないかと考えられる。
9
図5
来場者数別の開室日数
10
運営の概要
【 運営体制 】
本年度も、
「芝の家」は学生から地域住民まで様々な立場の人々の手によって運営された。主に担い
手として携わったのは、32 名。それぞれ、立場や関心に応じてたような関わり方をしている。このほ
か、様々な形で近隣住民の方々や、大学生に協力を仰ぎながら、日々の運営やイベントなどが行われ
た。
研究代表者
1名
常勤研究者
1名
常勤スタッフ
1名
運営スタッフ(有償)
21 名
運営スタッフ(無償)
2名
その他ボランティア(無償)
7名
合計
32 名
運営スタッフは、日々の「芝の家」の運営にあたるスタッフである。大学生だけではなく、高校生
から 70 代の近隣住民までと、昨年度と比較して年齢や立場などの幅が広がったのが今年度の特徴であ
る。有償スタッフの内訳は、高校生(1 名)、学部生(9 名)、留学生(1 名)、大学院生(3 名)、地域
住民(2 名)、その他卒業生や様々な縁で「芝の家」に参加した人々(5 名)。学部生の所属学部はまち
まちで、経済学部 3 名、文学部 2 名、薬学部 2 名、商学部 1 名、通信教育課程 1 名であった。慶應義
塾大学のほか東京藝術大学の大学院生も参加している。無償の運営スタッフには、子どもと一緒に事
務作業を手伝いに来てくれている近隣で子育て中のお母さんもいる。
その他ボランティアには、日々の運営以外の作業を手伝う近隣の方々のほか、地域活動への取り組
みなどを通じて、学生から社会人まで多様な人が参加している。
【 スタッフミーティングの開催 】
運営関係の新たな取り組みとして、スタッフミーティングの開催が挙げられる。2010 年 10 月の「い
ろはにほへっと芝まつり」の開催後、スタッフの数名からの提案を受けて開催されるようになった。
スタッフミーティングの目的は、日々の運営面の課題だけではなく、中長期的な課題や目標の議論、
スタッフそれぞれの希望や期待の共有、活発になってきた各地域活動間の情報交換などである。これ
まで基本的に月一回、できるだけスタッフ全員が集まり、それぞれが議論や相談したい議題、共有し
たい情報を出しあって、話し合う場となっている。これまで「芝の家」の運営方針は、スタッフそれ
ぞれの希望はできるだけ取り入れていたものの、主として毎週行われる定例ミーティングや常勤スタ
ッフによって決められて来た。スタッフミーティングの開催は、各スタッフがより主体的に、それぞ
れの持ち味を活かして「芝の家」に参加し、ともにつくりあげていく契機になると思われる。
11
【 運営面の課題 】
高校生から 70 代までの多様なスタッフが、それぞれの個性を生かし自発的に活動することで、「芝
の家」の運営は概ね問題なく行われているといってよい。ただし、常に運営全般を把握して様々な課
題や要望への対応をコーディネイトしているのは、現時点では、事実上常駐スタッフ 1 名と常勤研究
者 1 名である。継続的に安定した運営体制を築くためには本来、少なくともさらに 1
2 名の常駐もし
くはそれに準じるスタッフがいることが望ましいと考えられる。とくに、次々年度以降は、常勤の研
究者の配置が難しくなることから、常駐スタッフが何かしらのトラブルで業務を果たせなくなった場
合、事業全体が滞ってしまう危険性がある。
今年度は、運営を担う近隣住民の増加、近隣会社員の積極的な活動への参加、子育て中のお母さん
の事務作業への貢献など、これまでに増して、多様な形での協力体制が見られるようになった。こう
した流れのなかから、事業全般の舵取りについても主体的に参画するような人材が現れることが期待
される。前述のスタッフミーティングの開催が示すように、スタッフ一人ひとりの関わりの深度は次
第に深まっているが、こうした意志を活かせるように、今後は人件費の確保など事業予算の配分につ
いても見直しが必要となるかもしれない。また、次の節で述べるように、地域の居場所づくりに関心
を持つ層が増加している。こうした人々が「芝の家」で居場所づくりを体験できる機会を積極的に設
けることで、日々の運営の負担を減少させるとともに、
「芝の家」の運営を担う人材育成にもつなげら
れる可能性がある。
次年度は、事業の成果のみならず、運営を担う人材の育成や長期的な地域社会からの支援なども含
めて、持続可能な運営体制の構築に向けた検討が必要となる。
【 研修受け入れ 】
本年度は年間を通じて、青山学院大学の社会人向け講座「ワークショップデザイナー育成プログラ
ム」の受講生の研修を受け入れた。この他にも、コミュニティカフェの立ち上げ準備をしている人や、
芝の家の運営に関心を持つ人の、1 日から数日間の「スタッフ体験」を行った。「芝の家」の運営手法
を他の事例に活かす機会であるとともに、
「芝の家」のスタッフにとっても、外部の人々がどのように
「芝の家」を感じるかを聞けることは、現状の運営手法を客観的に理解し、今後につなげていくため
によい機会となった。巻末の資料編に受講生の感想を掲載する。
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2)イベント実施
SID コミュニティ勉強会
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 4 月 1 日(木)19:00
参加者数
32 人
2010 年 7 月 2 日(金)19:00
参加者数
会場
21:30(開場 18:30)
参加スタッフ 5 人
21:00
29 人、参加スタッフ 8 人
(キャンセル待ち 13 人)
芝の家
主催
芝の家、Social Innovation Dialogue
講師
坂倉杏介(慶應義塾大学教養研究センター/芝の家)
SID(ソーシャルイノベーションダイアログ)という活動を行っている吉村春美氏と共同で「エネルギ
ーの枯渇しないコミュニティを創る」をテーマに、ワールドカフェという手法を用いて地域コミュニ
ティ形成のためにひとりひとりができることを考え、話す場づくりを行った。
第一部では、講師の坂倉から芝の家の紹介と「枯渇しないコミュニティをつくる」についての話を聴
き、第二部のワールドカフェでは、「あなたのまわりにエネルギーの枯渇しないコミュニティを創る
には?」について、5 人程度のグループをつくり、話し合うことを、グループのメンバーを入れ替えな
がら、15 分ずつ 3 回繰り返した。
開催日時を平日の夜に設定し、近隣住民だけではなく、近隣の会社員などこれまで「芝の家」のイベ
ントに参加する機会の少なかった層との関係づくりも意識した。また、コミュニティ活動に関心の高
い地域外の方々に、「芝の家」の実践を知ってもらう機会にもなった。
4 月に開催した SID[003]では、20 名近くの方に参加いただくことができなかったこともあり、7 月に
も再度芝の家で同テーマにて開催した。
13
14
ハーブ喫茶
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 4 月 10 日(土)来場者 18 人、参加スタッフ 4 人、プロジェクトメンバー11 人
5 月 8 日(土)来場者 14 人、参加スタッフ7人、プロジェクトメンバー5 人
6 月 12 日(土)来場者 12 人、参加スタッフ 6 人、プロジェクトメンバー3 人、慶應
義塾高校生7人
7 月 3 日(土)来場者 7 人、参加スタッフ 5 人、プロジェクトメンバー4 人
8 月 21 日(土)来場者 4 人、参加スタッフ 4 人、プロジェクトメンバー3 人
9 月 18 日(土)来場者 14 人、参加スタッフ 4 人、プロジェクトメンバー4 人
会場
企画、実施
芝の家
縁をつなげるすこやかプロジェクト:えんす
2010 年 2 月から続けているえんす
ぷ(芝の家健康づくりプロジェクト)
ぷが取り組んでいる最初の企画。
訪れる人の身体やこころの状態に合ったハーブティを提供し、心身を癒すハーブに親しんでもらうと
同時に、訪れた人に自分の身体やこころとの対話を促して、健康に対して意識を向けてもらうのをハ
ーブ喫茶の目的としている。8月まではえんす
ぷメンバーが利用者の体調に合ったハーブをブレン
ドしていたが、9月にはハーブの効能を説明した後、利用者自身にハーブを調合してもらい、オリジ
ナルハーブティーを楽しんでもらう方式に変更した。
普段、なかなか意識しないが気になっていること(体質の変化など)に関して、利用者がえんす
メンバーに話すなど、健康について話すきっかけとなっていた。
15
ぷ
アロマハンドマッサージ
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 4 月 24 日(土)参加者 14 人
5 月 13 日(木)参加者 9 人
6 月 19 日(土)参加者 16 人
7 月 15 日(木)参加者 10 人
9 月 25 日(土)参加者 7 人
10 月 14 日(木)参加者 6 人
11 月 13 日(土)参加者 5 人
11 月 25 日(木)参加者 6 人
12 月 9 日(土)参加者 5 人
1 月 29 日(土)参加者 4 人
2 月 17 日(木)参加者 8 人
会場
芝の家
主催
芝地区総合支所区民課保健福祉係、芝の家
協力
NPO 法人日本アロマテラピー活動サポートセンター
アロマオイルを用いた指先から肘までのアロマテラピーハンドマッサージを毎月一回実施。
施術を担当したのは NPO 法人に本アロマテラピー活動サポートセンターのみなさん。
植物のやさしい香りの中でほっと一息、手の温もりと香りの安らぎがまさに潤滑油となり、参加者に
笑顔とゆったりしたコミュニケーションの時間をもたらしていた。高齢者に来場いただくいい機会に
なったと同時に、乳幼児を連れた子育て中の母親の利用も多く見られた。
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コミュニティアワー
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 5 月 8 日(土)18:00
20:00
参加者合計 21 人(内、参加スタッフ 7 人、えんす
6 月 12 日(土)18:30
ぷ 3 人)
20:00
参加者合計 17 人(内、参加スタッフ 6 人、えんすーぷ 2 人)
7 月 24 日(土)18:30
21:30
参加者数 10 人(内、スタッフ7人)
11 月 27 日(土)19:00
21:30
参加者数 27 人(内、スタッフ 10 人)
会場
芝の家
主催
芝の家
参加者数
上記
芝地区のコミュニティ活動に関心のある人たちの交流の場である「コミュニティ・アワー」。
5 月 8 日と 6 月 12 日は、芝の家の各プロジェクトの活動報告をメインにすえての実施。植物を通して
地域との交流を深める「コミュニティ菜園プロジェクト」、健康について考える「縁をつなげる健や
かプロジェクト:えんす
ぷ」など、実際の活動内容を参加者も交えてお互いに情報交換することで、
芝の家で何が始まっているのか、より深く知ってもらうことができた。
7 月 24 日は、10 月に予定している「いろはにほへっと芝まつり」のキックオフとして、昨年のまつり
の様子を振り返る写真のスライドショーや報告書を見てもらい、今年に向けての 期待や意見などを話
し合った。町会の方が参加してくれたほか、都合が合わずに参加できなかった方の中には手紙でコメ
ントを寄せてくださった方もいた。
今回は「芝の家2周年
いろはにほへっと芝まつり」を振り返り、感想や反省、次回に向けての抱負
などを共有する時間とした。ポストイットを活用して、
協力し合って実施したイベントを後日改めて一緒に振り返ることで、参加者の繋がりというものをよ
り一層実感することのできる、貴重な時間となった。
11 月 27 日の会は、いろはにほへっと芝まつりの振り返りをテーマに行った。付箋紙を用いて、子ども
から大人まで皆が感想や意見を出すことができ、若い人が町会という組織に感じている疑問など、お
まつりのことに限らず地域の課題にも話題は発展した。自分の担当の催しにつきっきりでほかの開場
の様子を見られなかった人には写真のスライドショーも好評であった。協力し合って実施したイベン
トを後日改めて一緒に振り返ることで、参加者の繋がりというものをより一層実感することのできる、
貴重な時間となった。
毎回、軽食とドリンク(参加者が実費を負担)も準備し、歓談の時間は和やかに過ぎていった。
17
18
朗読会
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 5 月 31 日(月)14:00
会場
芝の家
出演
吉田元恵、行田夏枝
主催
芝の家
参加者数
22 人
15:00
参加スタッフ 6 人
去年に引き続き行われた朗読会。花のよめさま、雪隠成仏、ソメコとオニ、おくりびとなどジャンル
の異なった多彩な物語が読まれ、年齢に関係なくみなが楽しめる内容となっていた。2人の朗読者で
ある吉田さんと行田さんによって作られた空間に引き込まれ、聞き手にとってとても心地よい時間と
なった。また、開催直前の行田さんの大道具作りに近所の小学生が協力するという世代間交流を生む
きっかけになった。
行田さん本人の感想として「いらしたお客様にさらに楽しんでもらうために、朗読して欲しい著書や
ジャンルの希望を今後聞いていきたい」と次回の開催に早くも意欲を燃やしていた。
19
レコードコンサート
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 7 月 3 日(土)18:00
21:00
参加者 35 人(内、支所 2 人、スタッフ 9 人)
11 月 6 日(土)18:40
21:10
参加者 24 人(内、スタッフ 6 人)
2011 年 2 月 26 日(土)18:35
20:45
参加者 41 人(内、支所 4 人、スタッフ7人)
会場
芝の家
講師
杉山光敬(亭久五マスター/北四国町会長)
主催
芝の家
毎回好評のレコードコンサートは 2 月の回で 7 回目の開催となる長寿イベント。各回毎に「アルトサ
ックス特集」や「ヴォーカル特集」などのテーマが設定される。
7 月は、夏の夕べに響くアルトサックスの音色に、常連さんから子どもまで、ゆったりと浸ることので
きたひとときであった。
リピーターが少しずつ増え、楽しみにしている人も多いこの企画。2 月の回は満員御礼で、講師を務め
ている杉山光敬さんも会場の賑わいに驚きと喜びの表情を浮かべていた。
20
持ち寄りランチパーティもぐもぐ
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 7 月 10 日(土)12:00
会場
芝の家
主催
芝の家
参加者数
6人
14:00
参加スタッフ 5 人
ご近所さんが一品持ち寄り形式で集まって、食事をしながら楽しくおしゃべりする会「もぐもぐ」。
一汁三菜が見事に揃い、夏バテ知らずの元気いっぱいな食卓になった。
美味しい食事に会話も弾み、終始なごやかなムードに。参加者からは、大家族のようで楽しいという
感想が聞かれた。
21
打ち水月間
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 7 月 23 日(金)
会場
芝の家、いろは通り
主催
芝の家
8 月 23 日(月)16:00 頃
この夏の猛暑はケタ違い。そこで盛夏の一か月間、「打ち水月間」と銘打ち、子どもたちとともに毎
夕、井戸水を通りに打ち水する試みを実施。芝の家からほど近い北四国町会会館前の井戸水をくみ、
柄杓でまくことに子どもたちは大興奮。暑さをもろともせず、元気そのものであった。その光景にひ
かれ、地域の方々も自然に足をとめて会話をしたり、打ち水の輪に加わる方もいた。打ち水後は実際
に体感温度が一度前後下がり、楽しさと効果の両方を体験することができた。
8 月 20 日(金)には規模を少し大きくして、実施。チラシのポスティングなどで周知し、近所の人た
ち約 20 人が参加。
22
うたの住む家
残暑お見舞いライブ
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 8 月 29 日(日)開場 14:30/開演 15:00
会場
芝の家
出演
即興からめーる団とうたの住む家メンバー
ゲスト:スズ&コウヂ、高橋裕(チャーリー)、出演者総数 20 人
主催
参加者数
即興からめーる団、芝の家
来場者数
24 人
参加スタッフ 5 人
芝の家での三回目の「うたの住む家」ライブ。うたの住む家メンバーが、70 回に及ぶワークショップ
を重ねて作ったうたをにぎやかに披露した。14 時半の開場から 15 時の開演までの時間には、来場者の
みなさんと出演者で打ち水を行った。
近所の小林さんが、ライブ前にうたづくりワークショップに数回参加し、自分で作詞作曲した曲を弾
き歌い、ワークショップではその曲への返歌が生まれました。当日も、小林さんによる弾き語りとう
たの住む家による返歌が披露された。
様々なバックグラウンドをもった人々が、飛んだりはねたりしながら演奏して、楽しい音楽に癒され
た一日となった。
23
はじめての英語絵本
親子で楽しむ英語の読み聞かせ
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 9 月 30 日(月)11:00
会場
芝の家
出演
サイラス・望・セスナ
企画
大野早織(芝 3 丁目住人)
主催
芝の家
参加者数
12:00
10 組 19 人(大人 10 人、子ども 7 人)
近隣に住む0歳の男の子のお母さんが、自身の息子さんにしてあげたいことを、ほかの親子ともいっ
しょにできたらと企画してくれたイベント。乳幼児向けのイベントは今回が初めてだった。
以下は、企画者の大野さんがイベント後にウェブサイトに宛てて書いてくださったレポート。
「好きになるきっかけ」になれば・・・。そんな思いを込めて開催しました。
「第 1 回
はじめての英語絵本親子で楽しむ英語の読み聞かせ」
朗読は“江戸っ子”Cyrus Sethna さん。東京生まれ東京育ちのイギリス人です。
俳優としても活躍する Cyrus さんのわかりやすく楽しい英語朗読とレッスン。
寒い雨の中集まってくれた 0 歳から 4 歳までのお友達もとっても楽しんでくれたようです。
ご近所の Grandma(おばあちゃん)たちも集まってくれました。
Thanks to all!
英語だって日本語と同じ言葉。
伝えたいことを伝えるツールなのです。
みんなでもっと自由に、気楽に英語に親しんでいけたら。
24
絵手紙教室
∼みんなで年賀状を書いてみよう∼
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 11 月 29 日(月)14:00
会場
芝の家
主催
芝の家、日本郵便芝支店
参加者数
16:00
14 人(内、お年寄り 5 人、子ども 4 人)
日本郵便芝支店から提案いただいた絵手紙教室。昨年に引き続き2度目の開催。講師からコツを教え
てもらって本格的な絵手紙ができるため、子どもから年輩の方にまで好評であった。コミュニティ喫
茶の日の午後に開催し、年輩の参加者にも参加してもらいやすいようにした。
教室開催中には、この地区を担当する配達員の方々が芝の家に立ち寄り、参加者との交流を楽しんだ。
普段から地域の各家庭や商店、企業をまわっている郵便配達員の方々と顔見知りになっておくことは、
地域住民にとっても、芝の家スタッフにとっても、地域の中に頼れる存在が増えることにつながった
のではないか。
25
雑煮会/クリスマスリースづくり
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 12 月 4 日(土)雑煮会 10:00
会場
芝の家
主催
芝会議コミュニティ部会
15:30/リースづくり 13:00
17:00
参加者数 ・雑煮会参加者 21 人(まちの魅力発掘する部会約 15 人含む)、芝会議コミュニティ部会 5
人、支所 5 人,スタッフ 2 人
・リースづくり参加者 16 人、参加スタッフ 3 人
2010 年も残りわずかとなった師走の上旬、芝地区の家庭に代々伝わる「東京のお雑煮」を作り、
地元の食文化を体験するこの試み。鶏だしにかまぼこや小松菜をトッピングするスタイルに加え、冬
晴れのもと、縁側で七輪で焼くお餅は、いっそう風味と食欲を増す調味料となった。
お雑煮を堪能したあとには、クリスマスリース作りも実施。芝公園で採取してきた木々や木の実に、
子どもから大人まで楽しんで親しみ、自分だけのオリジナルリースを仕上げていた。
26
芝んち Radio クリスマス編
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 12 月 23 日(木)13:00
会場
芝の家
出演
下村博文
主催
芝の家
参加者数
16 人
宜保和美
16:00
※祝日のため通常オープンはせず
山本美玖
参加スタッフ 7 人
「いろはにほへっと芝まつり」から生まれた「芝んち Radio」が単独で行った初イベント。
テーマはクリスマス。中学生やサラリーマンのトーク、クリスマスに合わせたドラマや絵本の読み聞
かせを行った。また、近所にお住まいのお年寄り・河合さんも放送中は自宅でラジオを流してくれた。
多世代による交流を感じることができた。
スタッフの感想として、「マイクを通すことで出てくるあるいは引き出せる会話というものが確か
にあり、これはやはり地域がつながる『みんなが話せる芝んちRadio』として大切な点だ。」「今後、
地域の方からお話を伺うと面白そう。」などが挙げられた。次に向けての課題が見えてきたこともよ
かった。
27
百歳王美術館 in 芝の家
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 3 月 22 日(火)
会場
芝の家
主催
3 月 27 日(日)
芝の家
写真家の小野庄一さんが撮り続けた、百歳以上の方々の写真の特別展示を芝の家で開催。
人生の先輩方のいきいきとした表情に、来場者からスタッフまで、多くの人が魅入り、元気をもらっ
た。一週間弱という短期間ではあったが、いつもとは少し雰囲気を変えた芝の家で、生きる力とその
尊さを肌で感じられるような展示会であった。「開催中です」という旨のメールニュースを見て来場
された方も多く、予告以外での広報の手応えがあったことで、今後の広報の参考になった。
28
一日写真館
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 3 月 27 日(日)13:00
会場
芝の家
撮影者
小野庄一(写真家)
主催
芝の家
参加者数
大人2人
小人1人
17:40
お年寄り9人
プロの写真家、小野庄一さんがその人らしい笑顔を撮影してくれる「一日写真館」。
お年寄りから小学生まで、幅広い年代の参加者のきらきらした表情が印象的であった。撮り終えた写
真を選ぶころには、みなが自然と輪になり、会話も弾んでいた。写真の入ったキーホルダーを後日進
呈する際、それを楽しみに芝の家を訪れてくれる方々の笑顔は、その写真に負けないくらい、素敵な
ものであった。
29
3)小さな地域活動
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4)地域への参加
1)ふれ愛まつりだ、芝地区!
[ 実施記録 ]
日時
2010 年 6 月 5 日(土)10:00
会場
区立芝公園
主催
港区芝地区総合支所
参加者数
スタッフ 6 人、えんす
15:00
ぷ 3 人が参加
港区芝地区総合支所主催のイベントに出店。芝の家は、テント2つ分のスペースの中で次の2つの企
画を実施。
1)ハーブ喫茶(手作りのゴマ入りクッキーとハーブティーを販売)
2)ミニ芝の家(パネルと黒板を使って芝の家を PR したほか、テント前に縁台を設置し、ベーゴマや
剣玉ができるようにした)
「ハーブ喫茶」はえんす
ぷ(縁をつなげるすこやかプロジェクト)メンバーが準備し、好評のうち
に完売した。また、
「ミニ芝の家」には、子どもからお年寄りまでたくさんの方々が集まった。昔を懐
かしむ大人たちが初対面の子どもたちに昔遊びを教える芝の家らしい場面も多々見られ、世代を超え
た交流が生まれていた。
58
2)みなとキャンプ村
[ 参加記録 ]
日時
2010 年 8 月 8 日(日)
会場
平山キャンプ場(奥多摩)
主催
港区青少年対策三田地区委員会、港区
参加スタッフ
10 日(火)
3人
みなとキャンプ村は、青少年が自然に親しむ機会と野外活動の体験を通して、自主性・協調性・創造
性を養い、団体生活のマナーを学ぶ場として毎年開設されている。区が、夏休みの一定期間(2 泊 3
日の 2 ローテーション)のキャンプ場と地区ごとの往復バスを借り上げ、同行看護師依頼、寝具等の
手配、食器・調理器具等の貸し出し等を行い、野外炊飯、川遊び、ハイキング、キャンプファイヤー
や花火大会など、都会で普段は味わえない体験の機会を青少年に提供している。
各地区委員会のリーダーや育成者等が参加者募集やプログラムの企画・実施をする。芝の家の近所に
住む地区委員から、女性スタッフが不足しているということで参加の依頼があり、芝の家スタッフが 2
名参加し、主に子どもたちの見守りと野外で行うアクティビティの実施を担当した。
59
3)春日神社例大祭(北四国町会縁日)
[ 参加記録 ]
日時
2010 年 9 月 4 日(土)18:00
会場
北四国町会会館「四季」
主催
北四国町会
参加スタッフ
20:30
参加スタッフ 5 人、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラムからの研
修生 4 人)
春日神社例大祭にあわせて、各町会がそれぞれ縁日を開く。芝の家スタッフは北四国町会の縁日(4
日夜)のゲームコーナーにお手伝いとして参加。普段芝の家に遊びにくる子どもたちやその保護者ら
と芝の家以外の場所で会うことができた。
5 日には、御神輿の担ぎ手として、スタッフ 1 人が参加した。
60
4)北四国町会歳末夜警パトロール
[ 参加記録 ]
日時
2010 年 12 月
会場
芝3丁目一帯
主催
北四国町会
参加スタッフ
2月
毎週水曜、土曜 9:30
平均 3 人
北四国町会の歳末恒例、夜警パトロールに参加。芝の家によく来ている高校生の男の子も芝の家スタ
ッフとともに積極的に参加し、町会のみなさんに可愛がられていた。パトロール中にまちのことや町
会役員の仕事についてなど色々なお話を伺うことができたのもよかった。
5)北四国町会餅つき大会
[ 参加記録 ]
日時
2010 年 12 月 26 日(日)9:00
会場
北四国町会会館「四季」前庭
主催
北四国町会
参加スタッフ
12:30
7人
北四国町会の餅つき大会に参加。餅つきのほか、調理やドリンク販売のお手伝いをした。夜警に参加
していたことで、町会のみなさんと芝の家スタッフがすでに顔見知りになっていたため、前年に比べ
てお手伝いもスムーズにできた感がある。
61
考察
62
評価と展望
「つながり」から「小さな地域活動」へ:ソーシャル・キャピタルを育む地域の居場所
坂倉杏介(慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所特任講師)
開設 3 年目を迎えた本年度、事業の最も大きな展開として挙げられるのは、複数の新たな地域活動
が、
「芝の家」で出会った人々の協働によって始まったという点である。子育て環境の整備、近所づき
あいを育むソーシャルメディア、ミニ FM 局など、そのテーマは幅広く、しかも地域住民や学生など
多様な立場の人々が協力しあい自発的に取り組みはじめた活動である。
これまで「芝の家」は、地域コミュニティ形成の拠点として、まずは近隣との信頼関係を構築し、
子どもから高齢者までより多くの人が利用できる環境を整えることを初期段階の目標としてきたが、
新たな地域活動の広がりは、そこからさらに一歩前進し、本事業の最終的な目的である「近隣同士の
あたたかい人間関係の創出による地域力の向上」の実現に向けたひとつの形を示しているといってよ
い。さらに、「新たなコミュニティ創造事業に関する調査研究」をテーマとする本研究の視点からは、
「芝の家」というコミュニティ拠点の設置が、どのように周辺の地域コミュニティの(再)創出に影
響を与えていくかという過程を考察するための貴重な事例であるとともに、芝地区の他事業のみなら
ず、今後全国で広がるであろう同様の地域政策にとっても有益な資料をもたらすはずである。
本論では、本年度の事業評価と次年度以降の展望を、
「芝の家」ではじまった地域活動に注目して考
察する。これらの地域活動の特徴は、3 名から 10 名程度のグループによって担われ、行政からの要請
でも私的利益の追求でもない公益的な活動であるという点である。NPO や町内会などの地縁組織と比
較して小規模なグループによるこれらの活動を、ここでは「小さな地域活動」と位置づけ、まずそれ
らの事例を紹介し、ソーシャルキャピタルの視点から新たな地域の力を支える現象として評価する。
さらに、芝の家という「地域の居場所」がどのようにこうした「小さな地域活動」を促進するかを考
察した上で、次年度以降の事業展開への指針を示す。
1. 多様な「つながり」から「小さな地域活動」へ
昨年度の事業報告書では、「芝の家」の開設以降、「芝の家」のスタッフや近隣住民同士に共助的な
関係がみられるようになったこと、来場者層と利用形態が多様化していること、事業の認知度が上が
るにつれて様々な組織・施設間の連携がはじまっていることの 3 点から、
「芝の家」がどのような形で
地域コミュニティ形成に寄与しているかを考察した1。これらの傾向は本年度もさらに強まり、近隣同
士の互助的関係、来場者層と利用形態の多様化、近隣施設間の連携はそれぞれ質量ともに拡大してい
る。この結果、様々な水準でスタッフや近隣住民、来場者同士、近隣組織や施設スタッフの「つなが
り」が育まれ、小さな地域活動が自然発生的起こりはじめたのが本年度の大きな変化である。くわえ
て、小さな地域活動の開始が、さらに互助的関係、利用形態の多様化、施設間の連携を促進させると
いう循環が生じている。
1
慶應義塾大学武山政直研究室、三田の家有限責任事業組合『昭和の地域力再発見事業「芝の家」2009 年度事業
報告書』、2010 年。
63
以下、昨年度から実施されている「芝の家コミュニティ菜園プロジェクト」、「縁をつなげるすこや
かプロジェクト『えんす
ぷ』」の概要を本年度の進捗状況とあわせて改めて紹介しつつ、新たにはじ
まった小さな地域活動を概観する。
「芝の家コミュニティ菜園プロジェクト」
「コミュニティ菜園プロジェクト」は、近隣の子どもからお年寄りまで、一緒に花や野菜の鉢植えを
育て、軒先にそれを設置していくという活動である。2009 年夏、斎藤彩(文学部、スローフードクラ
ブ所属、20 代)と杉山光敬(北四国町会長、60 代)を渡辺久美(芝の家専従スタッフ,20 代)が引
き合わせたことがきっかけとなり、2010 年度から本格的な取り組みが始まった2。現在では、学生と
地域住民が混在した 30 名以上のメンバーが集まり、鉢植えを設置する「里親」も 20 軒近くを数える
ようになっている。植物の世話を通じて様々な年齢・所属の人々の交流機会になり、街路の環境緑化
にもつながっている。本年度の活動としては、北四国町会と連携した植え付け会(4/11、5/2、5/16、
11/7)、慶應義塾大学薬学部薬用植物園と見沼田んぼ福祉農園への遠足(6 月)、料理会(8/28、11/27)、
看板作りワークショップ(10/2)など、芝の家スタッフ・渡辺久美や、杉山光敬北四国町会長を中心
に積極的な活動を行った。次年度以降は、植物の里親制度や植物の世話をする近隣有志の組織を、地
域の防犯活動に発展させていくという方針もあがっている。
「縁をつなげるすこやかプロジェクト『えんす∼ぷ』」
「えんす∼ぷ」は、
「地域の健康づくり」をテーマに、若い医師や栄養士、医学生や薬学生たちによっ
て進められる活動である。これまで「ハーブ喫茶」
(医学生や薬学生が、健康状態を聞いておすすめの
ハーブティーを「処方」する)や、子どもを対象にした生命や身体をテーマにしたワークショップな
どを開催しているほか、近隣のデイケアセンターへのハーブ喫茶の「出前」や、幼稚園でのワークシ
ョップなど、福祉施設や教育機関との連携も行われている。2009 年 12 月、原田成(研修医,20 代)
が芝の家を訪れたことがきっかけとなり、医学生や薬学生が集まり、近隣福祉施設のケアマネージャ
ー、幼稚園教諭、社会保障を専門とする高校教諭など専門性を持つ人とのつながりが広がっている。
「Connecting Neighborhood Project(つながるご近所プロジェクト)」
「Connecting Neighborhood Project(つながるご近所プロジェクト)」は、ヤン・リンデンベルク(デ
ザイナー、ドイツ出身、20 代)、中村真梨子(デザイナー、20 代)によるデザインリサーチプロジェ
クトである。高齢化に向かう社会において、近所付き合いを支援するソーシャルメディアの新しい形
を、住民参加型ワークショップを通じて探る。2010 年 10 月から、週一回芝の家でワークショップを
行い、コミュニティマッピングなどの調査を経て、
「持ちつ持たれつお互いさま掲示板」、
「ご近所新聞」
など実験的なソーシャルメディアづくりを実施している。ワークショップには学生や地域のシニア層
が参加するほか、島田茂都子(高輪在住、芝の家スタッフ、70 代)、狩谷俊介(経済学部 4 年、芝の
2
この取り組みは,文部科学省大学教育・学生支援推進事業大学教育推進プログラム
育を通して行う教養言語力育成」事業の一環として実施されている。
64
慶應義塾大学「身体知教
家スタッフ、20 代)らが中心となって進めている。2011 年 1 月より実験的に設置している「持ちつ
持たれつお互いさま掲示板」は、近隣同士の物品や情報、技能などを互いにシェアしあう行動を支援
することを目的につくられた掲示板である。潜在的なニーズを可視化することで、実際に、物品交換
や貸し借り、英会話や音楽の習いごと、家の片付けの手伝いなど、日常的な互助的関わりあいが生ま
れ、定着しつつある。これまでは、食べ物の差し入れや不要品の提供など、主にスタッフと近隣住民
の信頼関係のなかで行われていた助け合いの行動が、掲示板を介して出会う初対面の人同士にも広が
っているといえる。
写真 1、2:「コミュニティ菜園プロジェクト」(左)「Connecting Neighborhood Project」(右)
「『芝でこそ』芝で子育てしたくなるまちづくりの会」
2010 年 11 月、加藤亮子(元幼稚園教諭、芝の家スタッフ、博物館勤務、30 代)と渡辺久美の発案
で始まった。子育てのしやすいまちをつくるために、親だけではなく地域に関わる多様な人が子ども
との活動に関心を持ち、参加することを通して互いにつながっていく仕組みづくりを目指すプロジェ
クトである。学生のほか、下村博史(近隣会社員、社会福祉士、40 代)、大野早織(芝三丁目在住、 0
歳児の母、30 代)らが加わり、見学会や勉強会などが行われ、近隣の子育て支援施設の職員なども参
加している。これまで、神奈川県立三ツ池公園への視察(12/19)、「芝で凧作り&凧揚げ」(2/26)を
はじめとして、近隣のメンバーが集まる相談会や子どもの遊び場づくりを行っている。2011 年度は、
キリン福祉財団3の助成が決定し、講演会やワークショップなど積極的な活動を予定している。
「芝んち Radio」
2009 年に実施された「ほへっとまつり」で始められたミニ FM 局を、おまつり以外の時期にも継続
的に開催する活動。学生時代、コミュニティ FM の活動を行っていた小川直也(芝の家スタッフ、20
代)と下村博史が中心になり、2010 年 12 月「芝んち Radio クリスマス編」を開催。中学生から近隣
会社員までが参加し、普段の縁側での団らんにちょっとした非日常の会話をはさみこむ仕掛けとして、
井戸端会議のにぎわいを形成している。今後も継続的に開催する予定である。
「芝にコレクティブハウスがあったらいいなプロジェクト」
3
キリン福祉財団 www.kirin.co.jp/foundation/
65
芝の家スタッフ・狩谷俊介が個人的に始めた地域のリサーチがきっかけとなり、地域とのつながり
のある暮らし方のできる「コレクティブハウス」を、芝の家の周辺地域にどのように実現できるかを
探るプロジェクト。賛同する地域住民がメンバーに加わるなど、コレクティブハウスの実現のために
相談を続けている。実際に具体化するには時間がかかるだろうが、地域や住まい方の未来を想い描く
きっかけになっている。
上記以外にも、毎週火曜日に数人の高齢者が集まりパッチワークを楽しむ「パッチワークの会」、ス
タッフ・島田茂都子が卒業した明治学院大学チャレンジコミュニティ大学の卒業生による自主的な活
動「チャレンジコミュニティクラブ」、五島渚(芝三丁目在住)と北四国町会の夜警に参加した芝の家
スタッフが中心になってラジオ体操と夜警を行う「早起き夜警クラブ」など、様々なテーマ、形態に
よる小さいグループの活動が行われるようになった。
他には、港区芝地区総合支所高齢福祉課の主催する「アロマテラピーハンドマッサージ」を月 1 回
(合計 12 回)開催した。毎回 2 名のボランティアによって、十数名の参加者にハンドマッサージを提
供する事業である。参加者は、高齢者のみならず、子育て中の親や介護中のシニア層、ヘルパーや民
生委員など、ケアする人のケアとしても有益な事業であった(図 1)。また、マッサージ中のみならず、
待ち時間や終了後にもお茶を飲みながら他の来場者との会話が行われるなど、来場者同士のコミュニ
ケーションのきっかけづくりにもなっていた。この事業は、住民が協力して進める活動とは異なるが、
他の組織や施設との連携が深まることによって実現した事業と位置づけられる。
図1
アロマテラピーハンドマッサージの参加者属性
これまでも芝の家では、
「レコードコンサート」や「護身術講座」など、地域住民の発案や特技にも
とづいたイベントを開催してきたが、本年度より顕著になった「小さな地域活動」の特徴は、より継
続的であり、数名のグループによって担われる活動だという点である。こうした活動は、行政からの
要請でもなく、また私的利益の追求でもないという点で公私の「中間」の活動であり、3 名から 10 名
ほどの「小さい」グループによって担われている。旧来の地縁組織内の活動ではないが、そうした組
織とゆるやかな連携を保ち、地域に根ざしながらも地域外の参加者の関心や知識を活かして発展して
66
いる。
2. ソーシャルキャピタルの視点からの評価
「小さな地域活動」を、地域コミュニティの形成という文脈でどのように評価できるだろうか。そ
れらは、一般的な地域づくりの事業としては、町内会や商店街などの地縁組織や、NPO の活動と比較
して小規模であり、一つひとつの活動範囲や効果は低いと考えられるかもしれない。しかし、ソーシ
ャル・キャピタル(社会関係資本)の見方からは、地縁組織や NPO がそれぞれ単独で行う大規模な事
業よりも、むしろ「小さな地域活動」が数多く生じる地域環境こそ、本質的な意味での地域力が高い
と考えられるのである。
近年ではソーシャル・キャピタルという視点から、住民同士の「ネットワーク」、
「社会的信頼」、
「互
酬性の規範」を高めることが、地域社会での助け合いや課題解決力の向上につながると指摘されてお
り、政策レベルにおいても住民同士の関係性の力が注目されている4。地域の力はこれまで、産業や税
収といった地域経済、歴史資源や伝統工芸などの文化資本、また地域づくりを担う人的資本などを中
心に考えられてきたが、ソーシャル・キャピタルとは、これに加えて、地域に暮らす一人ひとりの住
民や組織間の協力関係などのありようも、地域の発展を大きく左右する資本だと位置づける考え方で
ある。ソーシャル・キャピタルの要素は、
「ネットワーク」、
「社会的信頼」、
「互酬性の規範」といわれ、
「ネットワーク」とは住民同士や地域の組織間の「つながり」が十分にあるかどうか、「社会的信頼」
とは他人を信頼して行動できる環境があるかどうか、
「互酬性の規範」とは個人の利益の最大化ではな
く互いに助け合いながら地域全体の利益を高めていける風土があるかどうかという指標である5。これ
らの条件が整った地域とそうでない地域では自ずと自発的な課題解決や発展の度合いが異なり、公共
セクターが同規模の事業を実施することによる波及効果にも差がでるだろう。こうした意味で、ソー
シャル・キャピタルは地域が力を発揮するための根本的な条件であり、これを蓄積していくことが今
後の地域づくりの大きな課題になると考えられている。
ソーシャル・キャピタルの住民同士の関係性の面に注目すると、
「公̶共̶私」の「共」の領域での住
民一人ひとりの活動や関係の質と量と考えることができる。図 2 のように、かつては、町内会や子供
会といった地縁に基づく互助的組織や、学校などの公共サービスは、地域に住む住民同士の「共」的
関係性が十分にあることによって機能を果たしていた。たとえば、町内会の活動は、役員と一般住民
と完全に別れているのではなく、一人ひとりが町内会の成員として時と場合の応じて活動に参加して
いた。また学校の教員は、公的サービスの担い手であると同時に地域を構成する一人の住民として生
活をしていた。ところが、戦後から高度成長期を経て、一方で行政による垂直的な管理の進行と公的
サービスの拡充、他方では個人の利益追求や核家族化によって公私の両極化が進み,共の関係性が希
薄になっているのが、現代の都市コミュニティの現状である6(図 3)。久田邦明によれば、学校教育や
4
内閣府「コミュニティ機能再生とソーシャル・キャピタルに関する研究調査報告書」,内閣府
経済社会総合研究所,2005 年。
5 R. D. Putnam, Robert Leonardi, Raffaella Y. Nanetti, “Making democracy work : civic traditions
in modern Italy”, Princeton University Press, 1993.
6
田中重好『共同性の地域社会学』,ハーベスト社,2007 年。
67
青少年教育は本来、地域の支え合いの力を前提に制度化されていたのだが、高度成長期以降、地域の
力が低下するに従って様々な問題が生じるようになったという 7。敷衍すれば、町内会、社会福祉協議
会、民生委員といった地域組織が以前ほど十全に機能しなくなった背景にも、同様の構図がみてとれ
る。地域住民は、地域の担い手であるというよりもむしろ、個人の利益のみを追求する消費者になり、
こうした事態は、地域の問題解決能力を低下させるのみならず、高齢者の孤独死やドメスティックバ
イオレンス、幼児虐待といった新たな問題を生み、さらにその解決を阻む状況を作り出している。
図2
図3
「共」領域の人間関係が支えるかつての地域社会
「共」領域の活動が低下した現代の都市コミュニティ
ソーシャル・キャピタルが地域力の根本的な資源であり、
「共」領域の関係性を(再)構築すること
が地域コミュニティの本質的な課題だという視点から、再度、
「芝の家」の「小さい地域活動」を見て
7
久田邦明『生涯学習論―大人のための教育入門』,現代書館,2010 年。
68
みよう。図 4 のように、
「芝の家」は、港区の事業ではあるものの、特定のサービスを提供する他の公
共施設とは異なり、近隣住民や来場者とともにつくられていく拠点である。こうした点で「共」の領
域に存在する場であるといってよい。そこで始まる「小さい地域活動」は、行政からの要請ではなく、
また職業上の義務でもなく、参加者一人ひとりが地域に関わる主体として自発的な意志に基づいて始
めた活動である。参加者は、近隣の住民から、町会役員、学生、地域外の関心をもつ人々、学校や子
育て支援施設の職員、行政担当者まで多様である。つまり、
「芝の家」という「共」的な場に、住民や
公共施設の職員が集い、生活者としての私的な利益追求ではなく、また職業や専門性といった公的な
役割からでもなく、地域の公益的な課題に向けて、複数の人々が個人的な関係を築き上げながら進め
ているのが、「芝の家」の「小さな地域活動」だといえる。「ネットワーク」、「社会的信頼」、「互酬性
の規範」という要素それぞれについてみるなら、こうした活動が進むとともに当然のことながら、一
人ひとりが持つ地域の人的ネットワークの量は増え、立場も年齢も異なる人々同士が信頼関係を築く
契機となり、さらに自分だけの利益ではなく互いに助け合いながら関わるという規範が広がる、とい
うことである。
「小さな地域活動」が地域コミュニティにとって重要なのは、活動そのものの成果や効
果のほかに、それ自体が活動し続けることで、結果的に現代の都市コミュニティに欠如している「共」
領域の多様なソーシャル・キャピタルを再構築していくという点にほかならない。
「芝の家」はこれま
でも、日々「共」領域のソーシャル・キャピタルを来場者の間に生み出してきたが、
「小さな地域活動」
は、その蓄積を明示的に示す現象であるといってよいだろう。
図4
新たな「共」領域を形成する「芝の家」
3. 地域の居場所「芝の家」の果たす役割
「小さな地域活動」は、本年度になって唐突に起こり始めたわけではない。それに先立つ 2 年の間に
「芝の家」を通じて蓄積された地域のつながり(これもソーシャル・キャピタルである)が、多様な
人と人との出会いを容易にし、
「小さい地域活動」を生む条件を整えていたといってよい。そして、
「小
さな地域活動」の一つひとつが発展し、活動相互の関係や近隣施設との関係を広げていくことによっ
て、さらにソーシャル・キャピタルの蓄積は進行し、ここから再び新たな「小さい地域活動」が次々
69
と生まれてくると予測される。
図 5 は、2008 年 10 月の開設時から 2011 年 3 月までの月ごとの来場者数の推移と、各「小さな地
域活動」のスタート時期を重ねたグラフである。来場者数が急激に伸びているわけではないが、時間
の経過に伴って来場者ののべ人数が増え、ある段階まで達した時に複数の活動がスタートしはじめる
という相関関係が想定できる。すなわち、1 日平均 30 名以上の来場者が集まり、週 6 日間、年間約 280
日オープンしていることによって、訪れる人同士の顔見知りが増え、そのなかで問題意識や悩みを共
有する人と出会い、その仲間が複数いることが確認されるなかで、何かしらの偶発的なきっかけによ
って活動が始まる。このような経緯が予測可能である。現時点では、こうした現象を量的に分析する
ことはできないが、少なくとも、地域の居場所となっている「芝の家」という仕組みが、大きな力を
発揮しているということはできるだろう。地域内に自由に集まる場所があることで、あらかじめ課題
を提供せずとも、幅広いテーマの地域活動が自発的に始まるといえるのである。
図5
月別来場者の推移と「小さな地域活動」の開始時期
とはいえ、単に様々な人が集まることができれば、どのような場所でもこうした地域活動が始まる
かというと疑問が残る。例えば、公園や公共施設のロビースペースには、多様な人々が出入りしてる
ものの、そこから「芝の家」と同じような密度で活動が生じるとは考えにくい。では、こうした現象
を促進する要素は何だろうか。ここでは、
「弱い紐帯への開かれ」、
「クラスター状に人をつなぐ働き」、
「根源的共同性と場の共同性」の 3 点から、「芝の家」が果たす役割を考察してみたい8。この 3 点は
芝の家が提供するサービスや機能ではないが、芝の家という地域の居場所が持つ特有の性質である。
1)弱い紐帯への開かれ。
「芝の家」は地域内外に開かれている。そこに集うのは、地縁や血縁にもと
づく近い関係の人だけではなく、在勤者や学生、外国人や特定のテーマに関心を持つ様々な人も含ま
8
坂倉杏介「地域の居場所からのコミュニティづくり―芝の家の『中間的』で『小さい』グループ生成を事例に
―」、『慶應義塾大学日吉紀要社会科学』Vol.21、慶應義塾大学、2011 年。
70
れ、多様な人間関係が準備されている。社会的ネットワーク分析では、家族や伝統的な近隣づきあい
などの親密な関係(強い紐帯)と、それよりも相対的に縁遠い顔見知り程度の関係(弱い紐帯)とを
区分し、後者の方が有用な情報をもたらす可能性が高いとされている(弱い紐帯の強み)9。例えば職
を得るための情報は、近親者よりも「弱い紐帯」からもたらされることが多い。近い関係の人同士は
すでに似たような価値観や情報を共有しているために、新しい情報は、よりつながりの弱い人間関係
から得られやすいということである。地域内だけでは発想できなかった幅広い取り組みが生まれるた
めの要素の一つに、芝の家の弱い紐帯への開かれた構造があるといってよいだろう。
2)クラスター状に人をつなぐ働き。日本では一般的に、強い紐帯への信頼度が高く、初対面の人を
信頼しない傾向があるとされる10。通常は、多様な人との接触機会の増大が、直接的には有効な人間関
係の拡大にはつながらないのである。芝の家では、一般の喫茶店などとは異なり、スタッフが居合わ
せた人同士を紹介したり(図 6)、来場者が他の来場者に別の人を紹介したりということが日常的に行
われている。それゆえ、来場者は、訪れるごとに顔見知りの人数を増やしていくことになる。このと
き重要なのは、単に顔見知りの人数が増えるというだけではなく、
「自分の知り合いと知り合いが、知
り合いである」という関係が構築されていくことである。人が人間関係に安心感を覚えるのは、知人
数の絶対量よりも、図 7 右のように、三者が互いに知っているというクラスター状(房状)の関係に
あるときだといわれている11。こうした関係の編み目が密になることで、世代や立場の違う馴染みの薄
い人同士にも信頼関係が生まれやすくなり、やがて、そのなかの数名の人の関心の合致が起こり、関
心グループのような形で小さい集合(クラスター)が形成される。おぼろげながらも関心の中心が形
づくられると、さらにそのグループのメンバーに後続の人を紹介しやすくなり、グループは自己生成
的に拡大、組織化されていく。こうした小さいグループが複数生まれ、活動を始めているのが、現在
の芝の家の状態である。芝の家での小さいグループ生成の二つ目の要因は、来場者の増加と多様性の
拡大のほかに、来場者同士の関係性の量を増加させていく(クラスター状に人を結びつける)働きが
あるといえよう。
図6
来場者同士を知っているスタッフが両者を紹介し、結びつける。
9 M Granovetter, "The Strength of Weak Ties", American Journal of Sociology, Vol. 78,
No. 6., 1973, pp 1360-1380.
10 山岸俊男『信頼の構造―こころと社会の進化ゲーム』東京大学出版会,1998 年。
11 増田直紀
『私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する』,中央公論新社,2007 年,89-92
頁。
71
図7
放射状の人間関係(左)よりも、クラスター状の関係(右)の方が安心感を感じられる。
3)根源的共同性と場の共同性。上に述べたようなグループは、相互の利益を追求するビジネスパー
トナーのような関係にもあてはまるだろう。芝の家の事例がそれと異なるのは、私的利益を目指すの
ではなく、地域の公益性を志向した活動が自然に生じているという点である。こうした志向は、芝の
家における人間関係の規範が関係していると考えられるのだが、田中重好による共同性の 4 つの階層
構造からこれを考えてみたい。4 つの階層構造とは、すなわち、人間同士の本質的な共感力に基づく
根源的共同性、地域をともにしているという潜在的な場の共同性、ひとつの共同体に属しているとい
う認識を共有している自覚的共同性、ある目的をともにする目的的共同性である12。注目すべきは,目
的的共同性は、前者から後者への段階的に進展した最終形として成立するという点である(図 8)。し
かしながら田中は、地域的公共性を形成するための今後の課題として、
「公共性なき私性」の克服を挙
げている13。この観点から芝の家で
のグループ生成をみると、芝の家はまず、目的、能力、知識の有無を問わず、どんな人もいたいよう
に過ごせる場である。そこでは、競争的な関係ではなく互いを尊重し合うという規範が定着している。
つまり、芝の家で出会うということは、前提として人間同士の根源的な共同性に基づくのであり、芝
の家という場を共有しているという潜在的な共同性をも分かち合っている。自覚され目的を持つ共同
性の段階へゆるやかに発展するなかにも、そうした規範が持ち越され、それが私的利益の追求ではな
い公益的な活動へと自然につながっていると考えられる。芝の家の「誰もがいたいようにいられる」
という場の規範は、一見、目的志向的な活動にはそぐわないように見えるが、しかし、活発な活動が
「公共性なき私性」に陥らないための基盤を確保する一因になっていると考えられるのである。
12
13
田中重好『地域から生まれる公共性―公共性と共同性の交点―』ミネルヴァ書房,2010 年,64-71 頁。
田中,前掲書,263-265 頁。
72
図8
4 段階の共同性の構造
田中重好『地域から生まれる公共性——公共性と共同性の交点——』より引用。
このように、
「芝の家」の多様な来場者に開かれた環境、来場者同士を結びつけていく働き、そして
誰もがいたいようにいられるという根源的共同性をわかちあう規範が、
「小さな地域活動」を活発に生
じさせていると考えられる。こうした小さな地域活動が網の目のように広がることは、ソーシャル・
キャピタルの蓄積としての地域コミュニティの力の向上につながるはずだ。そのうちのいくつかが
「種」となって、やがて NPO や新たな地域協働体などへ発展していく可能性が高い。
「芝の家」とい
う地域の居場所が、豊かな地域コミュニティ形成のために果たす役割とは、その萌芽的段階を支援す
る培養器としての機能であるといえるだろう。
4. 地域コミュニティ形成に向けた政策面の展望
本年度の事業成果から、
「芝の家」が近隣のコミュニティ形成に果たす役割が明確になってきた。で
は、本事業の成果をより広域的な地域政策に活かすことはできるだろうか。
「芝の家」の来場者の居住
地域は、徐々に拡大しているとはいえ、その中心は徒歩圏にあたる、芝二、三、五丁目、三田一、二
丁目の範囲である。この地域の人口は、約 18,000 人。年間のべ 10,000 人近くが訪れる「芝の家」が
継続的に運営され、ここを拠点に今後も各種の地域活動が発展すると考えれば、当該地域内において
さらなるソーシャル・キャピタルが蓄積され、充実したコミュニティ形成が期待されることは確実で
ある。とはいえ、活動の発展により多少の地域的拡大が見込まれるにせよ、芝地区全体をカバーする
事業とはなり得ないことも確かである。このことは、公共施設としての波及効果が不十分であるとい
うことを示すのだろうか。筆者はむしろ、民間が運営する「地域の居場所」の全国的な広がりとその
公共的な意味合いや、住民から行政へ寄せられる要望の変化などから、
「芝の家」のような小地域を対
象としたコミュニティ事業は、今後益々重要度が増すと考える。またそれは、新たな地域政策への形
を示すともいえるのではないだろうか。
「芝の家」は、少なくとも、広域的に均質なサービスを平等に提供するという従来型の公共施設のあ
り方とは異なっている。齋藤純一は、公共性には、official、common、open という 3 つの意味が含ま
73
れると指摘している14。official とは、行政が提供する公的サービスで、すべての市民に公平に分配さ
れることを特徴とする。common は、共同体の公益的な利益や共有財産の維持を指し、より小規模の
共同体が対象となる。open は、情報や空間へのアクセス権が広く開かれているという意味での公共性
である。
「地域の居場所」の建築学的な調査を手がける小松尚は、齋藤の公共性の分類を援用し、公共
施設と住民が主体的に設立する「地域の居場所」の違いと関係を整理している15。すなわち、公共施設
の公共性とは official なサービスで広域的な対応が可能であるかわりに、地域コミュニティの特性にあ
わせた個別的で柔軟な運営は困難である。一方「『居場所』とは行政や公的組織の支援を受け、また公
的なサービスや空間の補完をしているという点で official な性格も帯びうるが、ある一定の範域内の共
通(common)課題を扱い、その範域内では利用や運営の仕組み、物理的な空間が柔軟に開かれてい
る(open)」空間であることから「地域住民が求める公共の場のあり方の一端を運営者自ら実現したも
の」であり、
「提供サービスの一定水準の確保と平等な分配がまず前提となるこれまでの公共施設とは
対照的な存在」である(図 9)。
「芝の家」は、港区の事業であるものの、従来の事業と比較して common、
open の比重が高く、それゆえ、地域の潜在的な力を引き出す契機になり得ていると考えられる。
図9
日本建築学会編『まちの居場所
公共施設と居場所
まちの居場所をみつける/つくる』より引用。
他方、民間の手で「地域の居場所」が各地で設置されているということは、地域内にそれだけのニ
ーズがあることを示している。またそれは、公共セクターではカバーできない課題を、住民の自助的
な努力で解決しようとする意志の表れでもある。こうした傾向は、芝地区においても共通しているの
ではないだろうか。例えば、筆者も参加している市民参加型の地域づくりの場である芝会議で、市民
から出される要望のなかには、多世代交流の場の創出や公園の住民による自主運営の仕組みづくりな
ど、従来の行政による official なサービスだけでは解決し得ない(あるいは地区全体で実施するなら莫
14
齋藤純一『公共性』岩波書店、2000 年。
小松尚「居場所が変える都市と建築」、日本建築学会編『まちの居場所
東洋書店、2010 年、175-176 頁。
15
74
まちの居場所をみつける/つくる』、
大なコストがかかる)ものが多く含まれている。こうした要望は、待機児童数を削減するための保育
施設の拡充のように、一つの課題を解決するたに一つの事業で対応することは困難な種類の課題であ
る。また本質的には、それは行政が一手に担うべきものではなく、市民の担い手による地域ごとの柔
軟な課題解決力を育み、それを支援する公的事業という、市民との協働を前提とした新たな公共サー
ビス像が求められているといえるのではないだろうか。
以上のことから、芝地区全体のコミュニティ形成や、市民との協働による地域づくりに向けて、
common と open の要素を含むコミュニティ拠点が、地区内に複数設置されることが有効であると考え
られる。拠点の形態は、
「芝の家」のような単独事業でなくとも、例えば既存の公共施設内のスペース
確保や、また民間の運営者への支援といった形も想定されるだろう。地方都市や郊外と比較して東京
都心部は賃料も高く、民間の事業ベースでの運営が難しいことから、何かしらの形で行政が支援する
効果は高いと考えられる。
しかし実際のところ空間の確保以上に課題となるのは、小地域内の課題に取り組み、物理的にも心
理的にも開かれている拠点を、誰がどのように運営するかという点であろう。こうした拠点の運営は、
従来の official な公共施設と同じような管理型の施設運営では、柔軟に対応可能な運営体制が十分に確
保できないと考えられるからである。
「居場所」の特徴として橘弘志は、訪れやすいこと、多様な過ご
し方ができること、柔軟であることなど 11 の要素を挙げている16が、このなかに「キーパーソンがい
ること」という項目が含まれている。キーパーソンは「その場にしっかりと根を下ろした存在で、そ
の場所の運営に責任をもって活動している人」であり、
「キーパーソンの居場所に対する一貫した考え
方、さまざまなアイデアを形にしていく実践力とセンス、いろんな人と関わるコミュニケーション力
などが、多くの居場所の成立を支え、居場所の魅力を醸し出している」という。キーパーソンの考え
方やスキルが、居場所の開かれ方や柔軟性を左右するのである。こうした環境をそのまま、従来の指
定管理者委託制度などで実現するのは難しいと言わざるをえない。
こうした課題の参考として、地域コミュニティの拠点を設置し、同時にそれを運営する担い手も育
てるという事業形態は、財団法人世田谷トラストまちづくりが実施している。「地域共生のいえ」は、
民間の住宅を地域の居場所として解放するための改装費やイベント費などを援助する制度で、これま
で 10 拠点以上が開設され、運営されている。あわせて、地域づくりを担うコーディネイター養成事業
として「世田谷トラストまちづくり大学」を開講、受講生や卒業生が「地域共生のいえ」の運営に携
わるという循環が起こっている。拠点整備事業で課題となる運営主体の不足と、人材育成事業の課題
である受講後の地域活動への参加機会の不足を、両事業を連携させることで補完しあっている事例で
ある。
今後、地区全体を視野に入れたコミュニティ事業を進めるために、
「芝の家」という先行事例を活用
できる点として、次の二点が挙げられる。ひとつは、既に実施されている「芝の家」の運営ノウハウ
を活かし、他の拠点の担い手が経験を積む機会を提供できること。次に、大学との連携事業である点
を活かし、地域の担い手として必要となる知識やスキルを身につけられる人材育成講座を開講するこ
16
橘弘志「居場所にみる新たな公共性」、日本建築学会編『まちの居場所
東洋書店、2010 年、180-194 頁。
75
まちの居場所をみつける/つくる』、
とである。後者はまだ提案の段階に過ぎないが、港区と慶應義塾大学が連携することによって、実現
はそれほど困難ではないのではないかと考えられる。「芝の家」の事業をこうした視点から捉えると、
事業単体の効果や価値以外に、今後の他地域で展開されるコミュニティ形成事業にとっても、拠点整
備と人材育成の両面で有益な貢献が期待できるのではないだろうか。
5. 次年度に向けた展望
最後に、次年度に向けた展望をまとめる。
「芝の家」の運営については、これまでの流れを活かした
継続的なコミュニティ形成を推進する。とりわけ、本年度から顕著になってきた「小さい地域活動」
の促進が重要な要素になると考えられる。既に立ち上がった活動を広げていくこと、他の活動や近隣
施設などとの有機的な協力関係を構築することなどを通じて、それぞれの活動の幹を太く育てていく
ことが次年度の目標になる。また、活動のテーマについても、コミュニティ菜園から防犯活動への発
展など広がりを見せているが、現状では取り組みの少ない高齢者向けの活動がスタートすることが望
ましい。
また、委託研究の最終年度にあたる 2011 年は、本事業の 3 年間の評価と分析を行う予定である。本
年度は準備段階のみで実施までいたらなかったヒアリング、アンケートを通じた来場者の意識調査や
きめ細かいニーズの把握、さらに地域の居場所がどのように地域コミュニティ形成に寄与するかとい
う包括的な調査研究を進めたい。
さらに、本年度も多くの講演活動や視察の受け入れを行うなど、全国的な本事業への注目は高まっ
ている。次年度は、学会誌への投稿など学術的な発表を含め、より積極的な提言活動も進めて行きた
い。
76
資料
論文、出版、報告書、その他
講演、学会発表など
視察、研修などの受け入れ
メディア掲載一覧
77
論文、出版、報告書、その他
熊倉敬聡、長田進、坂倉杏介、岡原 正幸、望月良一、手塚千鶴子、武山 政直 『黒板とワイン―もう
一つの学び場「三田の家」』慶應義塾大学出版会、2010 年 10 月
坂倉杏介「地域の居場所からのコミュニティづくりー芝の家の『中間的』で『小さい』グループ生成
を事例にー」、「慶應義塾大学日吉紀要
社会科学」第 21 号、2011 年 3 月
芝の家編「小さな地域活動のすすめ 『芝の家』プロジェクト記録:2010 年度」、慶應義塾大学教養研
究センター、2011 年 3 月
坂倉杏介「市民としての社会参加」、小原芳明編『大学生活ナビ(第二版)』、玉川大学出版部、2011
年3月
78
講演、学会発表など
坂倉杏介「アートと地域、アートとコミュニティ」、「CCD PLATFORM 001 」女子美術大学、 7 月 14 日
「トーキョー協働空間見学ツアー」東京ボランティア・
坂倉杏介「芝の家:昭和の地域力再発見事業」、
市民活動センター、9 月 9 日
坂倉杏介「コミュニティカフェを創る」、第 1 回「まちづくり塾」まちカフェ、9 月 25 日
坂倉杏介「誰にでもはじめられる居場所づくり
地域の共助型コミュニティ形成と『芝の家』 」、
「 福
祉・助け合い、子育て支援交流会 」全国生活協同組合連合会、10 月 14 日
坂倉杏介「地域の共助型コミュニティ形成と『芝の家』」、 せたがやトラストまちづくり大学 、11 月
4日
坂倉杏介【パネルディスカッション司会】
「居場所としての取り組み」、
「コミュニティカフェ・フェス
タ in 熊本」熊本居場所&コミュニティカフェネットワーク、11 月 3 日
坂倉杏介「日本的コミュニティセンターのかたち?
グ・ネイバーフッズ
港区『芝の家』の実践」、「トランスフォーミン
東京/ベルリン」、iidj、11 月 7 日坂倉杏介「芝の家の実践から学ぶ、地
縁型の場づくり」、「ワークショップデザイナー育成プログラム」青山学院大学、6 月 26 日、10
月 30 日、11 月 6 日
坂倉杏介「コミュニティと大学の協働空間
地域貢献と教育研究の共生に向けて」、まちなかカフェ/
立命館アジア太平洋大学、11 月 19 日
坂倉杏介「文化をつくる境界の場所
アートと地域、対話空間のデザイン」、まちなかカフェ/立命館
アジア太平洋大学、11 月 20 日
坂倉杏介「暮らしがつながる場づくりから、地域の未来を考える」、
「平成 22 年度広島県小地域福祉活
動推進セミナー」広島県社会福祉協議会、1 月 12 日
坂倉杏介【パネルディスカッション司会】
「多様な子育てコミュニティカフェの可能性」、
「子育てコミ
ュニティカフェフォーラム
子育てコミュニティカフェの可能性と広がり
」公益社団法人長
寿社会文化協会、1 月 15 日
坂倉杏介「つながりを育むまち、つながりが育むまち」、「ベイエリアのまちづくりを考えるワークシ
ョップ」港区港南地区総合支所、2 月 19 日
坂倉杏介「有縁社会のなかの<無縁>の場
つながり直し、学び直す場としての『三田の家』と『芝
の家』」、財団設立 70 周年記念シンポジウム「人をつなぐ
法人日本女性財団、3 月 3 日
79
学びをつなぐ
未来をつむぐ」財団
視察、研修などの受け入れ
4/6(火)
視察:江戸川総合人生大学地域デザイン学部国際コミュニティ学科、簑浦さん
4/26(月)
視察:サードプレイス研究会(慶應、東大などの研究者による研究会)、9 名
4/28(水)
視察:さわやか福祉財団、4 名
4/30∼6/12
研修:青山学院大学「ワークショップデザイナー育成プログラム」研修生受け
入れ、計 27 名
6/24(木)
視察:株式会社日立情報システムズ、近野さん他 1 名
7/12(月)
視察:福島市商工観光部、佐々木真奈美さん他2名
7/13(火)
視察:富山居場所&コミュニティカフェネットワーク、加藤さん他2名
7/15(木)
研修:慶應義塾高校生徒 4 名が、芝の家 1 日体験
7/16(金)
視察:NHK 報道局宮野さん(クローズアップ現代担当)
7/21(水)
研修:慶應義塾高校生徒 2 名が、芝の家 1 日体験
7/26(月)
視察:アートアソシエイツ八咫(やた)露口さん他2名
7/27(火)
視察:東京都市大学・室田昌子教授
8/5(木)
視察:明治学院大学ボランティアセンター、学生 4 名とスタッフ 1 名
8/18(水)
視察:港区コミュニティカフェ、ヒューマン・サービスセンターでインターン
中の和光大学 3 年生・加藤さん、丸山さん
8/16∼20
研修:iSB 公共未来塾からインターン受け入れ。黒澤さん、鑓田さん
8/23、25
研修:iSB 公共未来塾からインターン受け入れ。山本惠男さん
8/23(月)
視察:千代田区職員(富士見こども館担当者)、3 名
9/9(木)
視察:東京ボランティア市民活動センター主催「トーキョー協働空間ツアー」、
15 名
9/4∼10/6
研修:青山学院大学「ワークショップデザイナー育成プログラム」研修生受け
入れ、計 26 名
9/17、18
視察:立命館アジア太平洋大学 3 年生、立垣さん(まちなかカフェ@別府)
9/22(水)
視察:株式会社ブレイン・コミュニケーションズ・三田さん
9/24(金)
視察:三井住友海上社会貢献室、インターオフィス研究所社員、4 名
9/29(水)
研修:さわやか福祉財団・小澤氏、芝の家一日体験
10/2(土)
研修:日本ユネスコ協会連盟・黒沢氏、芝の家一日体験
10/8(金)
視察:杉並三田会、三田散策の途中で立ち寄り、43 名
10/19(火)
視察:芝浦の高齢者児童交流プラザ担当者、3 名
10/20(水)
視察:JHP 大平氏および学生
10/29(金)
視察:明治学院大学こぞって子育て懇談会 10 名(+子ども1人、明学の職員 2
名含む)
11/4(木)
視察:世田谷トラストまちづくり大学受講者、約 20 名
80
11/4(木)
視察:早稲田大学学生、3名
11/11(木)
研修:中村傳啓さん(青学 WSD 受講生)一日体験
11/12(金)
研修:高平陽子さん(青学 WSD 受講生)一日体験
11/13(土)
視察:PARC「コミュニティカフェをつくろう」講座受講生、約 30 名
11/22(月)
視察:広島県社会福祉協議会地域福祉課、丸山さん
11/29(月)
視察:大阪府立大学大学院社会福祉学専攻博士前期課程、三村さん
12/9(木)
視察:江戸川総合人生大学、箕浦さんほか 5 名
12/24∼2/9
研修:青山学院大学「ワークショップデザイナー育成プログラム」研修生受け
入れ、計 25 名
2/10(木)
視察:日本地域福祉学会関係者、6 名
3/23(水)
視察:東京都青少年・治安対策本部安全・安心まちづくり課、2 名
【「青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム」受講者の感想】
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2010 年 2 月 15 日訪問
N さんより
芝の家のような場所が、近所にあったら楽しいと思いました。
いろんな人が訪ねてきて、そこで思い思いの時間を過ごす。子供たちは昔ながらの遊び(ベーゴマ、トランプ
等)をしたり、携帯ゲームで遊んだり。宝探し ゲームでは、部屋中を駆け回りながら探していて、「あまった体
力を発散しているな∼」という感じでした。やっぱり、ずっと室内にいるから、身体をつかった 遊びが楽しそう。
芝の家を拠点に、ときに公園に遊びに出かけたりという子どもがいるのも、よく理解できます。場の構築がうま
くいっていると感じました。
板倉先生の研究スペースが、書斎のようになっているのも、よい空間だなと思いました。ふつうの家庭から書
斎が絶滅しかけているいま、「知的な空間にいる 大人」の存在を肌で感じるのは、よい経験だと思いました。そ
のスペース(子どもは入れない異界のような存在)をときどき覗きこむことも、楽しい経験でしょう。
ふらっと訪ねてくる大人(NECの人や近所のおじいさん)も、本当に自然体で遊びに来ているという感じで、
その場に馴染んでいる感じが素敵でした。みんなを迎え入れる常駐スタッフのベベさんもまた、自然体でいい味
わい。常連の方と対等の関係と、場のコントロールを維持し、しかも力が入っていないという状態。「若いのに、
やるな!」と注目していました。
私が訪れた日は、ちょうど、三田の家にやってきたアーティストが、部屋を金色に装飾し、翌日はそこで歌を
つくるというワークショップを開催していたため、ときどきそこに見物にいったりしました。金色のケン玉はそ
の成果物で、それを見て子どもがびっくりするやら、興奮するやら。こういう偶然がまた楽しい∼。また、隣り
の漬物やで年末の漬物づくりのバイトをしている学生さんが、大勢でご飯を食べにきたりしていました。なんと
なく、その場を拠点に、いろん な出会いが構成されている感じがして、「まるで平田オリザさんの一幕ものの劇
のようであるなぁ」と感心していました。
世の中に無くてもよいかもしれないが、でもやっぱりあったら楽しいもの。三田の家にやってきたアーティス
81
トも芝の家も、まったく肩に力は入っていません が、きっとそれは一種の戦略なのでしょう。いつの間にか忍び
寄ってきて、ひたひたと人々の身を浸していくような、静かな力を備えています。
「いいことをするときは恥ずか
しそうにやったほうがいい」
(注)とは糸井重里さんの言葉ですが、それに近い感覚が芝の家にも三田の家にも感
じられます。
素晴らしい経験をさせていただき、ありがとうございました。
(注)社団法人全国保健センター連合会「Monthly 保健センター」2010 年 8・9 月合併号より
子どもの曜日ではない、高齢者中心の曜日も見てみたかったので、別の曜日に、芝の家を再訪しました。高齢者
のほかにも、幼児連れのお母さんが遊びにきたりして、今回もまた、温かい時間が流れていました。高齢者から
幼児まで、幅広い世代が集い、話し合うことができて、かつ、それがあの穏やかな空間に影響を受けて、自然と
柔らかな話し合いになって。場のもつ力(もちろんそれはスタッフ等に支えられている)を 改めて感じた再訪で
した。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
2010 年 1 月 26 日訪問
B さんより
芝の家のゆったり感、まったり感、縛られない時間と空間が、とても心地よかったです。そして、地域の中に
拠点があること、隣近所の人たちの生活を感じることができる昔ながらの路地や町並みがあることの安心感が心
に染みました。
今回、私たちが学んでいるワークショップは、綿密に企画され、多くの配慮が盛り込まれた形で進められてい
きます。一見、芝の家とは対局にあると感じがち ですが、芝の家の見学を通して、ワークショップ参加者の気持
ちのゴール点が「ここに存在しているのでは?」と感じています。
ワークショップ実施側がどんなに企画を作り込んだとしても、配慮をしたとしても、参加者にとって、心地よ
い時間と空間にならなければ、ワークショップを 通して得た経験も学びも意味が薄くなってしまうのではないで
しょうか。そういう意味で、芝の家は、人間本来が求める「心地よさ」を疑似体験できた貴重な機 会でした。
ところで、芝の家の取り組みは見た目は緩やかですが、ここに立ち寄る人たちが居心地の良さを感じたり、
「ま
た来よう」と思ったりするような仕掛けと工夫がいたるところにあり、また、スタッフの方々の温かい対応があ
るからこそ、成り立っていることも肌で感じました。
子どもたちにとっても、大人たちにとっても、芝の家が提供する「自分を解き放せるような無条件の心地よさ」、
ワークショップが提供する「学びほぐしの心地よさ」の、どちらも社会が「豊かさ」を醸成していくためには必
要不可欠なことを教えてくれました。
すばらしい体験を研修にセットしていただき有り難うございました。また、芝の家の皆様にも、この場を借り
てお礼を申し上げます。有り難うございました。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
82
2010 年 12 月 24 日訪問
M さんより
芝の家。心地よい時間が流れていました。
非構成の場。居たいように、居ること。自分を大切にすること。 そうでないと、他人を大切にはできないから。
"マニュアルやルールではなく、文化を作る"ということばが印象的です。その時その時に、集まった人の中で、
自然に起こることを楽しむ。その中で定着していくことが、文化になる。何を感じるかもそれぞれ。
昼食中、銭湯から帰ってきたとなりのとなりのおじいちゃんが、縁側から話しかけてきたり。学校帰りの小学生
が、通信簿を報告してきたり。会社員の方が、お昼休みにだけお弁当を食べに来たり。待ち合わせ場所に使われ、
そのまま会合をはじめていたり。散歩途中のおばさまが、50 年の地域の歴史を語り出したり。ベビーカーを押し
たママが、今日この子誕生日なんです∼と言ってきたり。ベーゴマもけん玉も、オセロも知恵遊びも、うまく出
来ない私は、こどもたちに遊んでもらっていたような気がします。なにげない日常のひとコマひとコマが、とて
も愛おしく目に映りました。
お客さん
ではなく、空間を共有する
人
と
人 。地域の中の、共同の居場所。そこでは、ゆっくりと築か
れてゆく関係性がありました。"拠り所"ということばをしみじみ感じた日となりました。
こどもたちと、クリスマスの飾りつけをしました。文字の並べ方を、わらっていいとも∼!風に。楽しい思い出
となりました。ありがとうございました。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
2011 年 1 月 14 日訪問
R さん
芝の家で感じたことはというと、
人は人とのかかわりの中で生きていて、かかわりの中でより成長していくということでしょうか。そういう場が
減ってきた中、非構成でありながら、構成された空間。構成された場を提供しているというのが印象です。便利
になった世の中、他人とコミュニケーションをとらなくても楽しい時間を過ごすことが昔に比べてできるように
なってきたと思います。
人が成長して、社会に出て働いて、人として生活していくには人とのかかわりは一生、続いていきます。その質
を向上させていくことが現代において必要とされて、その一端を担えるのが芝の家なのではないでしょうか?
人間はすぐには変わらないし、成長できないのです。人間は野菜のように促成栽培はできないのです!色々な出
会い、関わり、経験がその人を作っていくのだと思います。その人を育てる、つまり「自分の頭で考えて、自分
の考えをもち、自分の足で歩いて行ける人」に育てるのがワークショップの目的だと考えています。そのために、
芝の家があったり、沢山のワークショップがあるのではないでしょうか?
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
2010 年 12 月 25 日訪問
Y さん
83
芝の家に行ったとき、最初は結構緊張していました。
子供たちとどんな風に関わったらいいのか、この長い時間をどうすごせばいいのか、
などなど。でも、いつの
間にか時間が過ぎて、子供たちも家に帰りだし、なんとなく疲れたなあ∼と感じた頃、
何とも言えず心地良さを感じている自分がいました。
あの空間そのものが、人を受け入れる空気を作り出していたように思います。私は今家族と共に暮らしています
が、一人暮らしをしていた頃、何とは無しに孤独を感じるときがありました。
そんなときに、芝の家みたいな場所があってここに行けば誰かに会える、ホッとできる、そう思えたら、もう少
し違った気持ちでいられたかなあと思います。
一人でいることは楽だけど、人とつながっている、という思いは人を強くさせてくれると思います。
そんなことを考えさせてくれる場所でした。
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2011 年 2 月 9 日訪問
H さん
「居たいように居てください」チェックインミーティングのときにべべさんから言われたルール。
「居たいように居る」。シンプルだけど結構難しい。
地域の子どもが遊びに来る場なので、遊び道具とかゲームとか持っていく?とご一緒したゆみちゃん、COZY さん
と前日に話していたものの、結局 3 人とも丸腰、手ぶらで行きました。でも、これが正解だったかも。
子どもを楽しませようなんて思わなくてよくて、自分が居たいように居る。
芝の家の研修当時はかなり忙しかったので、
「とにかくゆったりしたい。忙しくて脳みそが飽和しているのを解放
したい」とチェックインミーティングでお話しし、ほんとうその通りに振るまいました。
不思議な体験でした。
がんばらなくていい、役割を意識しなくていい空間と時間の心地よさ、すべてを解放した感じを受けました。め
のらさんが書かれているように「あるがままを受け入れてくれる」場所のように感じます。
もちろん子どもは全力で遊びに来ているし、それを受け止める/付き合うオトナ(スタッフ)も必要だけれども、
テンションが上がらなければ付き合って遊ぶ必要もないのかな?と思わせる、そんな空気感がありました。
あの空気を職場や家庭でどうしたら醸し出せるのかな―?
しつらえはいくらでもマネすることはできるけれど、
「居たいように居られる」空間の心地よさ、また体感したいです
>追伸
当日、取材にいらしていたメトロミニッツにかなり大きく取り上げられていました。
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2010 年 12 月 25 日訪問
Y
仕事でも、今まで経験をしたボランティア活動などでも、
「この場では∼をする」と明確な役割をもって場にいる事がほとんどであったので、
「居たいようにいる」という
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事が逆に不自然に感じられてしまい、自分が何をしたらいいのか・・・と考えてしまいました。例えば、男の子
が3人集まってゲームをして遊んでいたのですが、せっかくお友達と集まっているのにゲーム??何か別の遊び
に誘った方がいいんじゃないかしら??
いやいや、好きな事をしていいんだから、それって余計なアクション?紙相撲が出来たらいいなぁって準備をし
てきたけれど、そんな雰囲気でもないか?私、どうすればいいの???この時は結局なんのアクションも起こさ
ずに時間が過ぎてしまったのですが、それから、三田の家の「何でも金色に塗っちゃう」ワークショップに参加
させても らい、女の子たちに誘われてオセロをしたり、マニキュアを塗ってもらたっり(お祭りの時のお姉さん
たちがやっていた事の真似ごとのようです)、クリスマス リースを作ったり、一緒に行った仲間とお茶タイムを
したり・・・知らぬうちに肩肘張らずに自然に過ごせるようになっていました。そして、最後にはその場にいた
大人も子どもも皆でお掃除タイム。ここまできてやっと気づきました。芝の家のスタッフがホストで子どもたち
やここに集う方々はお客様ではないのよねと。みんな同じようにここに集う仲間。もちろん、大人として子ども
に伝えなくてはいけない事はあるけれど、それは、いわゆる先生対子どもみたいな関係ではなくて、近所のお兄
さん・お姉さんやおじちゃん・おばちゃんが子どもたちを見守り、時に教えたり、叱ったり、一緒に遊んだりす
る自然な関係。ご近所付き合いみたいな感じなんだろうなぁ∼と。子どもにとっても大人にとっても、学校とか
会社とかいつものしがらみから解かれて、安心して自分らしくいられる場になっている方が沢山いるんだろうな
ぁと思いました。
大人も子どもも、地位のある人もない人もみんな同じ。
ワークショップと一緒だなぁ∼って訪問後2か月経った今気付きました。
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2010 年 12 月 25 日訪問
F さん
田町駅前の雑然としたビル街の路地を少し抜けていくと、なんだかとても懐かしい雰囲気の家並みの角に「芝
の家」がありました。そして家の中に入るとピアノ演奏が静かに奏でられ、ご飯のにおいがして・・・すっかり
子供の頃にタイムスリップした気分になりました。聞いてみるとやはり芝の家の外装も内装も映画『ALWAYS 三丁
目の夕日』のような家を意識されて改装されたこと、床や机もその当時の物を意識して揃 えられたとか・・。通
りに出て見上げてみると本当にそこに出来かけの東京タワーが現れてくるような感じでした。
『芝の家』をどんな
思いで作られたかそれだ けで伝わってくるように思いました。芝の家が「常連」の子供達や大人達だけでなくい
ろんな人が出入りできるスペース(不用品を誰でも持っていける・・)があっていいなと思いました。あそこ で
見つけた物を介して「これもって行っていいの?」とか「これどうやって使うの?」と知らない人と会話が出来
る面白さを感じました。近所のおじいちゃんやおばちゃんが顔を出してくれるのは本当に嬉しいですね。私が子
供の頃によくお隣に「すみません。おしょうゆ貸してください」とか「電話ですよ」とか『これ頂き物ですけど
食べて下さい』なんて行かされていたのを思い出したりしていました。すみません回想録になっちゃいました。
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2011 年 1 月 29 日訪問
M さんより
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M です。1/29 に訪問させていただきました。
わたしが感じたことを、つらつらとですが、書いてみます。
● なつかしさ
子どもたちが三々五々やってきて芝の家のなかで遊んだり、外に出かけて行ったり、近所の人が子ども連れてお
昼のハンバーガーもって現れ一日過ごしていたり、お散歩中のおじいさんが窓から顔を出したり。いろんな人た
ちがアポもなく気ままに出入りする様子を見ているうちに、何だかなつかしい気持ちになってきました。このな
つかしさって何だろうと考えてみたら、昔、鹿児島の農村地帯にある祖母の家によく泊まりがけで遊びに行って
いたころ、近所の人が別に用事があるわけではなく、ふらっと現れて、入り口に自分家でとれた野菜を置いてい
ったり、土間に座って話していったり、部屋に上がり込んでお茶を飲んでいったりしていた、あの感じだなあと
思いだしました。
いまの自分の生活では、アポなくふらっと気軽に人の家に行ったり、友人やまして近所の人が我が家にふいにや
ってきてこちらも自然に迎え入れる状況がまったく想像できないなあと考えたりしました。
● 自分の心と身体の状態をみつめて、そのままの自分でいる
ご飯を食べたあとの最初のミーティングで、べべさんが、先にいるわたしたちの雰囲気、空気感が、あとから来
る人たちのそこでのあり方、居心地を決めるという話をしてくれたときに、「ああ、そうだ!」と目からうろこ。
言われてみれば確かにそうなんですが、意識していませんでした。
そのうえで、べべさんたち芝の家のスタッフも含め、全員が、今の自分の心と身体の状態をゆっくり話していき
ました。実は、その頃仕事がものすごく忙しく、身体的にも精神的にも疲れがたまっていることを、ことばにす
ることでより自覚することができました。そこで、べべさんが、本当に丁寧に、一人ひとりがそのままの自分で
いていいんだということを語ってくれて、
「そうかあ、今日のこの疲れてる私なりのいかた、過ごし方をしていい
んだな」と不思議なくらい楽な気持ちになったのをはっきり覚えています。それがなければ、これは実習だから
(疲れてるけど、若くないけど)、身体と心にムチ打ってテンションあげて子どもたちと関わるんだ∼!とがんば
っていたと思います。
このゆったりとした、でも丁寧なミーティングのおかげで、わたしなりに、駄菓子の会計やったり、お母さんた
ちと話したり、みんなと一緒に編み物をしたりと、自分に無理をしない形で芝の家の一日に関わることができま
した。
●毎日、とにかく納得いくまで話す
終わった後のリフレクション。たっぷり 2 時間くらい話しました。とにかく、毎日、それぞれがモヤモヤやひっ
かかるものを残さないで、口に出して、とことこん話す。結局、これを毎日やっていくことが、お互いの信頼関
係をつくりつづけ、方向性を共有していく(正確にはもう少し別のことばだったかもしれません)唯一の方法だ
という結論にいたったんですという話を聞きました。
「すごいなあ!!!」「やっぱり、とことん話すことがわかりあうための大前提なんだよなあ」と思う反面、自分を
振り返って、「自分は職場でこれができるだろうか・・・」と考えて、「うーん、できてない。それができる気持
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ちの余裕がない。これからもできるだろうか・・・」と、ちょっと罪悪感のようなしんどい気持ちも正直わいて
きました。
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メディア掲載一覧
新聞
日付
2010 年 3 月 25 日
掲載誌
内容
東京新聞
ハーブティー囲み健康・友達づくり
港区の交流施
設『芝の家』
2010 年 11 月 4 日
公明新聞
地域の交流深める「芝の家」が好評
区と大学が連
携し運営
雑誌等
日付
2010 年 4 月 10 日
雑誌名
内容
アートミーツケア学
レポート: 2009年度大会「記憶の居場所」
会
渡辺久美
News+Letter
by
Vol.6 2010 spring
2010 年 11 月号
2010 年 11 月 15 日
『めむろ社協だより』
No.282(平成 22 年 11
「ふれあいの居場所」とは/さわやか福祉財団が進
月号)、社会福祉法人
めている「ふれあいの居場所」の考え方に合致した
芽室町社会福祉協議
2 つも拠点を紹介(NPO 法人ふらっとステーション・
会
ドリーム/芝の家)
新日鉄都市開発・社内
特集「サードプレイスとは?
報『リビ
オ NSCP 'S
ディングによる新たな付加価値創出を目指した空間
in-house
journal
コミュニティ・ビル
開発」の中で紹介される
Livio』2010 No.55、
株式会社新日鉄都市
開発
2010 年 11 月
『コミュニティカフ
コミュニティカフェ全国連絡会共同代表対談「人と
ェネットワーク・ガイ
人とがつながるコミュニティカフェ」河田珪子[う
ドブック
ちの実家]
2010』、長
坂倉杏介[芝の家](p.1-4)
寿社会文化協会 WAC
2011 年 1・2 月号
『Tomoniile (ニチイ
[介護特集]より充実した生活のための社会資源の
の医療・介護情報誌
活用法(p.16-19)、
「気軽に話せる仲間がほしい」コ
と も に ー る ) 』
ミュニティ・スペース[芝の家](p.19)
vol.11(2011 年 1・2
月号)、株式会社ニチ
イ学館
2011 年 2 月号 (2011
『いきいき』vol.170
特集「ひとりで暮らしても、ひとりにならない生き
年 1 月 10 日)
2011 年 2 月号 (2011
方を。」 コミュニティカフェ「芝の家」 都市の真
88
年 1 月 10 日)、いきい
ん中で、人と出会うことのできる場所。(p.52-53)
き株式会社
2011 年 2 月 20 日
『メトロミニッツ』
特集「新しいふれあい社会を考える」人と人とのつ
vol.100(2011 年 2 月
ながりが住民参加の地域づくりにつながる
20 日)、スターツ出版
[ 特 集 ] 東 京 お ち つ く ト コ ロ 100/no.63 芝 の 家
株式会社
(p.40)
日付
TV
放送局
2010 年 8 月 6 日
番組名
東京 MX テレビ
TOKYO MX NEWS 特集「変わる大学
地域との連携を
求めて」
2010 年 11 月 9 日
NHK
「クローズアップ現代」
住まいを
シェア
して
みませんか(No.2961)
2010 年 11 月 16 日
みなとケーブル
「港区広報番組
30 日
d!」
やっぱりみなと
芝の家二周年記念
ぐぐっとGoo
いろはにほへっと芝ま
つり
2011 年 2 月 4 日
NHK
日付
ラジオ
2011 年 1 月 14 日
「NHK 四国羅針盤」「シェアで絆が生まれる」
放送局
番組名
FM BIRD(インターネ
Brand New Vision Real20 ( 2 0 代 の 若 者 が 送 る
ットラジオ)
PODCAST 番組)
日付
サイト
記事タイトル
2009 年 6 月 3
品川経済新
芝に地域交流の場「芝の家」‐慶応大学が港区と連携、サイトも開設
日
聞
http://shinagawa.keizai.biz/headline/604/
2009 年 6 月
moonlinx
大学と地域をつなげる、「三田の家」と「芝の家」
WEB
18 日
http://moonlinx.jp/headline/architecture/000467.php
2009 年 10 月
品川経済新
芝の交流の場「芝の家」が 1 周年イベント‐「ご近所付き合い」盛ん
15 日
聞
に
http://shinagawa.keizai.biz/headline/765/
2009 年 10 月
慶應義塾大
[報告] いろはにほへっと芝まつり開催
26 日
学
http://www.community.keio.ac.jp/news/notice/091021170926.html
社会・
地域連携室
2010 年 3 月
湖山医療福
「芝の家」メンバーが芝高齢者在宅サービスセンターを見学
15 日
祉グループ
http://koyama-gr.com/?p=3449&cat=3
-ヘルスケ
89
ア・デザイ
ン・レポー
ト
2010 年 1 月号
元気がつな
「人が触れ合うあたたかいコミュニティづくり」
がるウェブ
http://www.sofia-inc.com/magazine/special/vol21.html
マ ガ ジ ン
Vol.21
90
【新聞】
東京新聞(2010.3.25)
公明新聞(2010.11.4)
91
【雑誌等】
『アートミーツケア学会
News+Letter』 Vol.6 2010 spring
92
『めむろ社協だより』No.282(平成 22 年 11 月号)
93
『リビオ NSCP 'S in-house journal Livio』2010 No.55、新日鉄都市開発
94
『コミュニティカフェネットワーク・ガイドブック 2010』、長寿社会文化協会 WAC
95
『Tomoniile (ニチイの医療・介護情報誌 ともにーる)』vol.11(2011 年 1・2 月号)、株
式会社ニチイ学館
96
『いきいき』vol.170 2011 年 2 月号、いきいき株式会社
97
『メトロミニッツ』vol.100(2011 年 2 月 20 日)、スターツ出版株式会社
98
【ラジオ】
FM BIRD「Brand New Vision Real20」(2011.1.14)
99
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