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学校図書館活性化のための取組

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学校図書館活性化のための取組
学校図書館活性化のための取組
三田市立武庫小学校
教諭 安富 つかさ
はじめに
本校は平成23・24年度の2年間「読書活動推進校」として「読書活動推進教員」の
配置があり、この2年間は専任司書教諭として活動してきた。本校児童は、一斉読書の時
間静かに読書する姿が見られるが、読書傾向は個人差が大きく、読書好きな児童であって
も選ぶ本にはかたよりが見られる。自分の言葉で表現することやコミュニケーションに課
題のある児童が多い。当初、多くの学校がそうであるように休憩時間の学校図書館は、限
られた本好きな児童やそこを遊び場としている児童が来る場所であり、学習に十分活用さ
れているとは言えない状況があった。
「本の魅力、図書館の魅力を伝える」ということを念頭において取組を進めてきた。本
や図書館の楽しさ、便利さを実感すると、本に対する興味がわき、図書館も活用できるよ
うになる。それが生涯学習にもつながっていくと考える。休憩時間を含め、児童の登校時
から下校時まで図書館におり、1∼4年生は週1時間、5・6年生は年間数時間図書館で
の授業を担当している。
図書館教育担当は前々任校より15年以上続け、三田市図書館教育担当者会の幹事も長
年つとめてきた。現在幹事の立場は後進に譲っているが、指導的立場で幹事会に出席し、
三田市の図書館教育を推進している。
1
取組の内容・方法
(1)図書館の環境整備
活用の少ない図書館が居心地のよい身近な空間になるよう、学習や読書等に活用しや
すくなるよう考え、人や本の動きを見ながら環境を整備している。廊下には季節の飾り、
間違い探し、新着本の紹介など、児童が立ち止まりた
くなるような掲示を工夫し、室内には読書についての
著名人のことばや、心に響くようなことばをさりげな
く掲示したり、ぬいぐるみを置くなどして、ほっとす
る雰囲気作りを心がけている。児童から「図書室大好
き」
「図書室に来るとほっとする」という声が聞かれる。
他の図書館の利用も考え、多くの公共図書館で採用
されている日本十進分類法を基準に配架し、ボランティ
アの協力を得て、分類表示を工夫したり9分類の書架
には作者名を表示したりしている。
分類表示
(2)読書意欲を高めるために
ア 本の紹介の工夫
本は背表紙だけが見えているより表紙が見えている方が目につき手に取りやすい。
書架の棚の一部を表紙を見せて置く場所にしたり、季節や行事、学習に関連した本を
展示したりしている。手作りポップとともに展示している本もある。
季節に合わせた展示。飾りはボラ
ポップをつけて紹介している本
ンティアの協力を得ている
はよく借りられる
読書タイム等に読む本や学習に関連した本を選んでブックトラックに乗せ学年・学
級に届けることで身近に本がある状態を作っている。一定期間が過ぎると本が入れ替
わるので、新鮮な気持ちで本を選ぶことができる。
イ 図書館での授業を通して
図書の授業では、読書の幅を広げたり、調べ学習のための力をつけたりすることを
目指して指導を行っている。全学年、成長段階に応じて分類や配架、マナー等につい
て指導する。図書の時間の初めには季節や行事、学年の学習内容や進度を意識して読
み聞かせやブックトークをして本を紹介する。
各教科等の導入にもブックトークをすることがある。その学習に関連した本をそろ
え学習が深まるようにしている。ブックトークを楽しんだ後、準備しておいた関連の
本を読む時間を設定すると、どの学年の児童も読書に集中する姿が見られる。その後
ブックトラックに乗せて学年に届ける。
調べ学習の助けになるように、漢字辞典、国語辞典、図鑑、百科事典等の使い方、
目的に合った資料の見つけ方や活用の仕方を指導する。
児童が「帯作り」
「ブックトーク」に取り組み、児童同士本を紹介する機会を設けて
いる。このようにして紹介した本はよく借りられる。
読書感想文の書き方も図書の時間を使って指導している。本の選び方について指導
し、ワークシートを使って書き方と推敲の仕方を指導する。そのワークシートや方法
を使って各学級で読書感想文を仕上げる。
3年生が作った帯を巻いて本を展
示している。これらの本は次々借り
られていった。
(3)家庭・ボランティアとの連携
家庭へは「図書だより」を配布し学校の取組を知らせている。保護者からの声を募集
すると毎回数人の返信がある。それを次回の「図書だより」で紹介することで啓発して
いる。保護者にも読書に関心を持ってもらうことをめあてに「親子読書週間」を設定し
呼びかけた。
ボランティアは週2回図書館で本の修理、飾り作り、本の並べ替えや表示作り等図書
館の環境整備のお手伝い、年数回の工夫を凝らしたイベント(ブックフェア、サイエン
スフェア、しおり作り)の企画・運営など、それぞれの得意を生かしながら熱心に取り
組んでくださっている。
以前は、授業中であるためボランティアの活動時間に図書館まで足を運ぶことが困難
で、ノートを通じて連絡し合うことが多かった。この2年間は常にボランティアと顔を
合わせることができ、意思の疎通ができ活動がしやすいというボランティアの声もある。
担当としても直接伝えることができるよさを実感している。
(4)三田市図書館教育の推進
前々任校において初めてボランティアを募集し、ボランティアの協力を得て図書館の
改良を行った。その際児童が本を探しやすく返しやすくするため、背ラベルを色分けし
た。その時に決定し、使用した色が現在三田市内全公立小・中学校において採用されて
いる。数年前、多くの学校において使用されていた代本板をなくしていくよう担当者会
で提案した。日がたつうちに代本板を置いた所を児童が忘れてしまったり、代本板その
ものが本の移動につれて移動してしまったりして、本ではなく代本板を見つけるために
時間がかかってしまうことがよくあった。そのようなことが続くと本そのものに対する
興味が薄れてしまう恐れがあると感じたからである。
市内の担当者の顔ぶれは毎年入れ替わりがある。慣れない担当者も見通しを持って仕
事ができるよう「図書館教育担当者年間予定表」を作成し配布している。担当者会から
の「おすすめ図書」を児童・生徒に向けて発信するための取組を始めている。三田市で
は数年前から図書館はデータベース化されているが、その機能は十分に生かされている
とは言えない。今回専任になったことでいろいろな機能があることがわかり、使ってい
るので、担当者会でもそれを伝えている。
担当者会での研修において、
「読書感想文の書き方」を提案しワークシートも配布した。
公民館主催、児童向け「読書感想文の書き方講座」の講師もつとめている。市内の研修
において図書館教育の取組を発表した。県・近畿の図書館教育研究大会において司会を
つとめ、県・近畿・全国の研究大会において実践発表を行った。他校の図書館経営や図
書購入、読書感想文の書き方等についての相談にのることもある。
「三田子どもの読書推進計画」策定委員として原案作成段階よりかかわり、
「子どもの
読書意識調査」アンケートを作成し資料提供も行っている。
2
取組の成果
「三田子どもの読書意識調査」において「あなたは本がすきですか?」という問いに対
して「大すき」または「すき」と答えた児童の割合を三田市平均と比べてみると、どの学
年も大きな差が見られる。それは次の通りである。
1年
2年
3年
4年
5年
6年
三田市平均
84%
83%
81%
76%
69%
68%
武庫小学校
99%
97%
87%
97%
86%
75%
以前は本をうまく見つけられない児童が多かったが、配架や展示、紹介の工夫、授業を
通して、本を探せるようになり、読書の幅が広がったり、図書館の利用が増えた児童も多
い。また、一人一人の読書傾向をとらえることができ、その子に合った読書のアドバイス
をすることができた。また、自分からアドバイスを求める児童も増えている。
わからないことや知りたいことがあると、図書館で調べようとする児童が増えている。
授業中だけでなく、休憩時間にも図鑑や百科事典で調べる姿が見られる。
学習に関連付けたブックトークや資料の選定など、学習内容がわかり図書館内にある資
料についても常に図書館にいて把握しているからこそ、短時間で選びだし提供することが
できる。児童が必要な資料を探すために図書館を利用する際にも司書教諭がいるので、教
師は安心して児童を送り出すことができ、児童もすぐに尋ねることができるので、図書館
を利用しようという意欲につながっている。
職員間で児童の読書の様子が話題になることが多くなり、図書資料を積極的に使ってい
こうとする教師も増えている。図書館の資料提供やブックトークの依頼が増えている。
「図書だより」等を通じて家庭や地域へ発信することができ、関心を持ってくださる方
が増えた。来校された際に図書館の様子を見に来られたり、わが子が本好きになったとお
礼を言いに来られたりすることが度々ある。夏休みの開館時には親子で図書館を訪れ、読
書感想文や自由研究のための本選びの相談をされる方もある。
担当者会の研修「読書感想文の書き方」で配布したワークシートや指導方法は市内で活
用されている。その後もワークシートの提供依頼や書き方等についての相談を受けること
がある。読書感想文支部審査会において、年々指導の充実を感じる作品が出品されること
が増えてきた。読書感想文以外にも他校の担当から図書館教育や図書館の経営その他のこ
とについて尋ねられたり相談されたり依頼されたりすることが多くなった。
ボランティアと常に意思疎通ができるので、お互いの思いが伝わり、ともに作業する中
でいろいろなアイデアが湧いてくることもある。協力して図書館を創り上げていることが
実感しやすく、それがボランティアの達成感、意欲にもつながっている。長年に渡り本校
の図書館にかかわってこられたからこそ図書館が活性化し、児童によい影響を及ぼしてい
ることを肌で感じ、大変喜んでくださっている。
3
課題及び今後の取組の方向
本に興味を持つ児童は確実に増えてはいるが、定着には至っていないと思われる児童も
多い。少数ではあるが、
「本はおもしろくない」と思い込んでいる児童もいる。定着させる
ための手立てが必要である。
授業時数や校務分掌の軽減もなく、担任等をしながらの担当にもどる。この2年間の経
験を生かして実践していきたい。他の教師にも伝え広げていくことが必要である。今後も
三田市全体の図書館活性化のためにできることを考え発信していきたい。
全く読書に興味のない家庭もあるので、今後も発信していく必要がある。
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