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昭
和
電
線
レ
ビ
ュ
︵
︶
2008 VOL.58 NO.1
通巻114号
ISSN 0916-6718
熱電変換素子・超電導線材
【熱電変換素子・超電導線材】
熱電変換素子
廃熱を電気に変える技術
日本の総消費エネルギー量を石油に換算すると年間4億キロリットル。
そのうち、約3億キロリットルが無駄になっています。全第一次供給エネルギーの
約70%が廃熱として廃棄、約30%しか利用されていないのです。私たち昭和電線グループは、
熱電変換素子によって、廃熱を電気に変え、CO2削減に貢献したいと考えます。
発電の仕組み
広がる利用用途
熱電発電は約200年前に発見された「ゼーベック効果」
という半導体の物理現象を利用したものです。
熱電モジュールの中には、ブロック状の熱電変換素子が
並び、p型素子とn型素子を金属電極でつないでいます。
右図のように、下面を暖め、上面を冷やすと、その温度
差によって電圧が生じ、発電ができるのです。
例えば、発電所や工場、焼却場や製鉄所、
エンジン等、熱が発生するところであれ
ば、どこでもOK。
将来的には、日本国内だけでなく、世界
中で使われることを想定して、さらなる
使用用途の研究と開発を行っています。
省エネとCO2削減の「一人二役」
熱電変換素子は、廃熱を利用して電気をつくるため、発電
時に CO2 が排出されないクリーンなエネルギーです。
今後、世界中で「熱電変換素子」が使用されれば、地球環
境へ大きく貢献できるはず。また同時に、省エネやコスト
低減などにつながり、経済的な効果にも期待が持てます。
人と環境にやさしい技術
超電導線材
街には電気自動車が走り、ガソリンスタンドは充電スタンドに。ビルやマンション、住宅には
太陽光や風力を用いた発電装置などが設置され、身近に蓄電システムが確立された世界は
そう遠くありません。その中心にあるのは「超電導」
。私たち昭和電線グループは、
超電導線材の開発から未来を描き、化石燃料に頼らない社会づくりに貢献したいと考えます。
ビスマス系酸化物超電導体で
世界記録を2度樹立!
実用化されている超電導体は液体ヘリウ
ム(− 269℃)の温度で使用する金属超電
導体です。私たちは、酸化物系のビスマ
ス 2212 超電導線材を開発。2 種類の製法
で丸線と平型線の世界記録を 2 度樹立し
ました。そしてイットリウム系線材は
NEDO の再委託研究として実施、2008 年
度より新規プロジェクト『イットリウム
系超電導電力機器技術開発』への線材供
給を始めています。
未来の超電導社会へ向けて
着々と進む環境整備
地球温暖化をストップさせるための対策は緊急課題です。今後、電力ケーブルや変圧器など
の電力機器を超電導線に置き換えていけば、相当量のCO2削減効果があると考えられています。
その準備は着々と進行。私たちは電線ケーブルメーカー
として高い特性をもつ超電導線材を供給することにより、
超電導機器の開発をアシスト。ひいては地球環境に貢献
したいと考えています。
世界有数の超電導線材メーカーから
部品、機器メーカーへ
セラミックス系超電導線材を製造するメーカーの中で、イットリウム系とビスマス系の2種類の
線材を製造している企業は世界で2社ぐらいしかありません。その中の1社が昭和電線です。超
電導技術が活かされる近未来に向け、今後も先端技術の開発を続けながら、超電導線材を使っ
た部品を開発。線材メーカーとしての責任を果たすべく、エネルギー問題に果敢に取り組んで
いきます。
昭和電線レビュー
第 58 巻 第 1 号
2008 年
(通巻 114 号)
目 次
〈普通論文〉
… 37
名前
酸化物熱電変換素子の量産技術開発
酸化物熱電発電モジュールの開発
Y 系超電導線材用 CeO2 中間層作製プロセスの開発
昭和電線ケーブルシステム㈱
中 村 倫 之・日 下 雅 文 …
西岡淳一
5
昭和電線ケーブルシステム㈱
日 下 雅 文・中 村 倫 之 …
西岡淳一
9
昭和電線ケーブルシステム㈱
中 西 達 尚・小 泉
勉
兼子
敦・青 木 裕 治
長谷川隆代
㈱フジクラ
… 12
飯 島 康 裕・齋 藤 隆
譛国際超電導産業技術研究センター
高 橋 保 夫・和 泉 輝 郎
塩原 融
TFA-MOD-YBCO 線材で作製した電流リードの通電特性
昭和電線ケーブルシステム㈱
小泉
勉・引 地 康 雄
青 木 裕 治・長谷川隆代
東海大学
塩 原 敬・堺 智
大 木 茂 人・山 田 豊
太刀川恭治
… 17
気中終端接続部の開発
昭和電線ケーブルシステム㈱
足 立 和 久・高 安 央 也 … 21
新 舘 均・瀬 間 信 幸
220/345 kV ガス中終端接続部の開発
昭和電線ケーブルシステム㈱
李 鋒・高 安 央 也 … 25
瀬間信幸
22 kV 固体絶縁開閉装置用絶縁チューブの開発
三菱電機㈱
220/230 kV
笹 森 健 次・松 田 大 二
香山治彦
昭和電線ケーブルシステム㈱
… 29
荻島みゆき・今 西 晋
新舘 均
㈱エクシム 長谷川尚也
環境配慮型航空照明用ゴム被覆絶縁変圧器の開発
昭和電線ケーブルシステム㈱
田中菜穂子・吉 田 伸
… 34
岡 下 稔・池 内 忍
谷本 元
低摩擦クマゼミ防護型光ドロップケーブルの開発
昭和電線ケーブルシステム㈱
田 邉 賢 吾・坂 本 慶 一
… 39
大 貫 章・井 上 健 一
光地伸明
LAN 用ツイストペアケーブルの現状と今後の展望
冨士電線㈱
河 田 正 義・浦 卓 也
… 44
亀井 諭
自然対流シミュレーションによる防音ボックス設計支援
昭和電線ケーブルシステム㈱
成 吉 郁 馬・佐 野 茂 樹 … 49
北 村 祐・岡 下 稔
低発塵性低周波吸音材の開発
昭和電線デバイステクノロジー㈱
北 村 祐・木 田 俊 雄 … 54
谷本一浩
免震防振積層ゴムの開発
昭和電線デバイステクノロジー㈱
柳 勝 幸・福 田 滋 夫
加 藤 直 樹・青 木 伸 夫
… 57
村松佳孝
㈱竹中工務店
五十嵐信哉・鈴 木 庸 介
〈新製品紹介〉
IEC 規格準拠 110/132 kV ガス中終端接続部
63
C-GIS 用絶縁母線
64
36/40.5 kV
細径同軸ケーブル(KHCX)
65
6.6 kV 常温収縮型直線接続部〈オールインワンタイプ〉
66
QUIESCENT box
67
EL ショウマウント獏(EL-230-EX)
68
〈トピックス〉
110 kV ダイレクトモールド気中終端接続部
69
66/77 kV GIS 用 課電口の開発
70
獏
関越トンネルにショウタッチ 付き分岐ケーブルを納入
71
低周波吸音材を使用した真空ポンプの騒音対策の事例
72
QUIESCENT panel の応接室への適応
73
1 MV ホログラフィー電子顕微鏡付属真空ポンプ用防音ボックスの納入
74
錫プラグ入り積層ゴムアイソレータの公開大変形試験
76
35 MN 圧縮せん断試験機の導入
77
〈工事紹介〉
ケーブル破砕機の防音対策工事の実施例
〈社外技術発表一覧表〉
78
79
SWCC SHOWA GROUP TECHNICAL REVIEW
2008
Vol. 58 No. 1
CONTENTS
< Normal Features >
Development of the Manufacturing Process of the Oxide Thermoelectric Devices
Development of Oxide Thermoelectric Modules
5
9
Development of CeO2 buffer layer for YBCO coated conductors
12
Transport performance of HTS current lead prepared by TFA-MOD processed YBCO tape
17
Development of Outdoor Sealing End for 220/230 kV XLPE Cable
21
Development of 220/345 kV SF6 Gas Immersed Sealing End
25
Development of Insulating Tube for 22 kV Solid Insulated Switchgear
29
Development of Eco-material Rubber Mold Insulating Transformer
for Airport Lighting Circuits
34
Development of Low Friction and Cicada Protective Optical Drop Cable
39
Present Situation and Future of Twisted Pair Cable for LAN
44
Simulation of Natural Convection for Aided Design of Soundproofingbox
49
Development of low frequency sound absorbing material without dust
54
Study of Base Isolation System for Railroad Side Buildings
57
< New Products >
Gas Immersed Sealing End for 110/132 kV XLPE Cable
63
Insulated bus bar systems for 36/40.5 kV C-GIS
64
High Frequency Coaxial Cable
65
Cold Shrinkable Straight Joint “All in one” Type
66
QUIESCENT box
67
EL-SHOWMOUNT (EL-230-EX)
68
< Topics >
110 kV Direct-Molded Outdoor Sealing End
69
Development of Testing Device for 66/77 kV Gas Insulated Switchgear
70
Supply of Branch Cable with Show Touch for KAN-ETSU Tunnel
71
The example of the countermeasure of the vacuum-pump sound
by the Low Frequency Sound Absorbing Materials
72
Adaptation to the officer drawing room of the QUIESCENT panel
73
The delivery of a soundproofing box for vacuum pumps attached to
the 1 MV holography electron microscope
74
Open Test of the Rubber Bearing with Tin Plug
76
Introduction of the 35 MN compression shear test machine
77
< Construction >
Example of execution construction of soundproofing measures of the cable crusher
< List of Technologies Published in 2007 >
Published by
SWCC SHOWA HOLDINGS CO., LTD.
Tokyo Toranomon Building, 1-18, Toranomon 1-chome,
Minato-ku, Tokyo
URL http://www.swcc.co.jp/
E-mail:[email protected]
78
79
酸化物熱電変換素子の量産技術開発
5
酸化物熱電変換素子の量産技術開発
Development of the Manufacturing Process of the Oxide Thermoelectric Devices
中村倫之
日下雅文
西岡淳一
Tomoyuki NAKAMURA
Masabumi KUSAKA
Jun-ichi NISHIOKA
熱電発電技術は二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンな新エネルギー技術であり,地球的規模の対応が
求められている環境問題,エネルギー問題を解決するキーテクノロジーとして注目を集めている。弊社は低コ
スト酸化物熱電変換素子の作製プロセスとしてセラミックス押出成形機を用いた素子作製プロセスを開発し
た。具体的には,押出成形機による連続成形と常圧焼結の採用により一度に数千個以上の素子が作製可能なプ
ロセスである。
We have developed the manufacturing process of the oxide thermoelectric devices using a ceramic extruder. This
process includes the continuous molding technique by ceramic extruder and sintering technique without over pressure. In
this process, several thousands devises can be product in only one manufacturing lot.
1.は じ め に
現在,エネルギー資源の枯渇が深刻な問題となっており,
表 1 熱電変換モジュールの特徴
特 徴
省エネルギー化によるエネルギー削減が重要課題となって
メンテナンスフリー,
長寿命,連続運転
いる。また,温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)は,化
低環境負荷
石燃料を燃焼した際に多量に発生するため,地球温暖化を
防止するためにも環境への負荷が小さいクリーンエネル
内容説明
可動部がなくモジュール自体が発電するため,
他の電源・充電等の電源を必要としない。
発電時に CO2 等のガスの排出がない。
希薄分散エネルギーの回収
モジュールサイズは自由に変えられるため,
熱源に合せたモジュールを作製し
発電が可能である。
ギーの活用が急務となっている。近年,このようなエネル
ギー問題を解決する一つの手段として,未利用エネルギー
の材料から構成される。n 型半導体材料の片端に熱を加え
を有効活用できる熱電変換技術が注目されている。日本で
ると,温度が高い部分で伝導電子のエネルギーが高くなり,
は年間に原油換算して約 4 億 kl もの一次エネルギーを消費
温度が低い部分に伝導電子が移動し材料内で電位差が生じ
しているが,その約 70 %は未利用のまま廃熱として大気中
て,熱起電力が発生する。一方,p 型半導体材料は正電荷
に放熱されている。この莫大な熱エネルギーを電気エネル
を帯びた正孔が温度の高い部分から低い部分に移動するこ
ギーに変換し有効活用できれば,エネルギー・環境問題の
とで熱起電力が発生する。この現象はゼーベック効果と呼
解決に貢献できることは明らかである。しかし,廃熱の総
ばれ,n型と p 型半導体材料の電位差は逆となっているた
量は莫大ではあるが,それぞれの廃熱は分散しており,こ
め両者を直列に対とすると電流が流れ,これを外部に取り
のような廃熱の回収は非常に困難である。熱電変換による
出すことで発電機の働きを発現する。模式図を図 1 に示す。
発電はスケール依存性がなく,このような難題を解決でき
る技術の一つとして注目を集めている。
2.熱電変換モジュールの特徴と原理
2.1
熱電変換モジュールの特徴
熱電変換モジュールは,熱を電気エネルギーに直接変換
することができ,表 1 のような特徴を有する。
2.2
熱電変換モジュールの原理
熱電変換モジュールは,p 型半導体,n 型半導体の 2 種類
3. 熱電変換材料
熱電変換材料は大きく分けて金属系と酸化物系に分ける
ことができる。それぞれの材料には,使用温度限界があり
図 2 に示すような温度範囲,適用用途となっている。
酸化物系は金属系に比べ,高温大気中で酸化・分解劣化
せず安定して使用できる。また,毒性元素を含まないため
人体への安全性が高いという長所がある。しかし,発電効
率は金属系の 1/10 程度という欠点がある。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
6
Vol. 58, No. 1 (2008)
ZT =
高温
電極
+
n型素子
S:ゼーベック定数
T:絶対温度
ρ:抵抗率
κ:熱伝導率
p型素子
電位差
S2
T
ρ・κ
+
+
+ +
・・・・・(1)
[V/K]
[K]
[Ω]
[W/(m・K)]
電極
低温
る Ca3Co4O9 は焼結が起りにくく,鱗片状の粒子形状である。
Z を上げるためには粒子を緻密に焼結させ,さらに粒子を
配向させて抵抗率を下げる必要がある。図 3 に配向化の模
電流
外部負荷抵抗
式図を示す。
両端に温度差ができると,ゼーベック効果により
熱起電力が生じる。1対の起電力は小さいため直列
配向化
に接続し対数を増やし,出力を増やす。
図 1 熱電変換の模式図
温度(℃) 0
100
200
300
400
500
600
700
800
電流方向
抵抗率小
ビスマス・テルル系
シリサイド系
金属系
亜鉛・アンチモン系
熱電材料
図 3 配向化模式図
鉛・テルル系
スクッテルダイト系
酸化物系化
一般的には,緻密な焼結体の作製や焼結体の配向度を高
マイクロガスタービン,
ガスエンジン,
燃料電池(SOFC)
など
トプレス法は高温で圧力を加えながら成形体を焼結させる
小型分散電源
適用用途
めるため,ホットプレス法(加圧焼結)が選択される。ホッ
自動車
給湯器
工場炉,焼却炉,溶鉱炉
方法である。加圧することで難焼結体も緻密に焼結でき,
また加圧面に対して粒子が配向する特徴を有している。し
かし,この方法で量産性を高めるためには大型設備を要し
図 2 適用温度範囲
コストパフォーマンスに劣る。弊社は,2006 年より産業技
術総合研究所と共同研究を開始し,低コストで配向性の高
い素子を量産するプロセスの開発に着手した。
4.開 発 背 景
金属系は以前よりペルチェ効果(ゼーベック効果の逆で
5.素子量産プロセスの開発
本研究では配向化プロセスとして,押出成形を採用した。
電流を流すと素子に温度差が生じる)を利用して,CPU の
押出成形法は押出方向に粒子が配向するといった特徴を有
冷却,小型冷蔵庫(ワインセラー)等で実用化されている。
するもので,連続的に成形体を作製できるため量産性が高
2000 年に入り,ゼーベック定数の高い酸化物系材料が相次
い方法である。押出成形はスクリューにより試料粉とバイン
いで発見され,廃熱利用での観点で熱電変換素子の開発が
ダーを混合した粘土状の試料を押出して成形を行う。図 4 に
活発となった。2005 年に産業技術総合研究所が空気中
押出成形を行った成形体の断面写真を示す。
800 ℃で作動させても性能が劣化しない酸化物系熱電材料
次に焼結である。本材料は難焼結体であったが弊社の超
(p 型 Ca3Co4O9,n 型 LaNiO3)を用いて発電モジュールを開
電導技術のノウハウを活用し,焼成温度,焼成時間,焼成
発した。
熱電材料の発電性能を示す指標である「無次元性能指数
ZT」を次式に示す。
(1)式より無次元性能指数 ZT を高めるためには,S を
雰囲気等を検討することで分解せずに常圧焼結できる条件
を見出した。また,常圧焼結ができることから既存の大型
電気炉を活用し,一度に大量の成形体を焼結することが可
能である。図 5 に焼結体の断面写真を示す。
大きく,ρおよびκを小さくする必要がある。S は材料固
ホットプレス法と比較すると,押出成形−常圧焼結は緻
有の値であるため容易に上げることはできないが,ρ・κ
密ではないが,粒子は著しく粒成長していることがわかる。
は製法により下げることが可能である。p 型熱電材料であ
このことにより,抵抗率はホットプレスに近い値となった。
酸化物熱電変換素子の量産技術開発
押出成形体
7
19対モジュール
押出速度 3 m/min
n
p
外形寸法
45 mm×50 mm×8.5 mmt
粒子が押出方向に配向
押出方向
していることが確認
できる
図 4 押出成形体断面(p 型 Ca3Co4O9)
図 7 試作モジュール
加圧方向
押出方向
3
1.5
1.4 W
ΔT=528 K
ΔT=478 K
ホットプレス焼結
ΔT=419 K
1
出力(W)
押出−常圧焼結
電圧(V)
2
1
0.5
ΔT=360 K
ΔT=288 K
ΔT=228 K
ΔT=182 K
ΔT=130 K
ΔT= 79 K
ΔT= 35 K
10μm
図 5 焼結体断面
0
0
0. 5
抵抗率測定結果を図 6 に示す。
1
電流(A)
1. 5
2
0
図 8 モジュール評価結果
出力測定 産総研殿
この結果からホットプレス法と差がなく押出成形−常圧
焼結が可能であることがわかった。さらに付随して,焼結
体を素子状に切削を行うことに関してもホットプレス法は
板状焼結体のため両面と縦・横の 3 軸の切削加工が必要で
図 8 に作製したモジュールの発電評価を行った結果を示
あったのに対し,本プロセスは円柱状焼結体であることか
す。温度差 528 ℃において最大 1.4 W の出力を得ることが
ら横方向のみの 1 軸切削で良いため,素子切削工程でも量
できた。
産性を高めることができるメリットがある。
7.まとめと課題
6.モジュール開発
押出成形−常圧焼結で量産性の高い酸化物熱電変換素子
上記のプロセスで作製した素子(p型 Ca 3 Co 4 O 9 ,n 型
作製プロセスを開発できた。そのプロセスで作製した素子
LaNiO 3)を使用し 19 対モジュールを作製し発電性能評価
でモジュールを作製し評価した結果,1.4 W の発電を確認
を行った。図 7 に試作モジュールの概略を示す。
できた。
熱電変換モジュールの開発や評価技術等に関して,多く
の御助言と御助力を頂きました独立行政法人産業技術総合
抵抗率測定結果
450.0
抵抗率
率(mΩ・cm)
研究所の舟橋良次様に心より感謝申し上げます。
ホットプレス 加圧面垂直方向
500.0
参考文献
ホットプレス 加圧面平行方向
400.0
1)
(社)日本セラミックス協会・日本熱電学会:熱電変換材料,p.15
押出 押出垂直方向
350.0
300.0
(2005)
押出 押出平行方向
250.0
2)技術情報会:熱電変換システムの高効率化・高信頼性化技術,
200.0
150.0
p.203(2006)
100.0
50.0
0.0
0
100
200
300
400
500
600
温度(℃)
図 6 抵抗率測定結果
700
800
900
8
昭和電線ケーブルシステム㈱
中村 倫之(なかむら ともゆき)
技術開発センター 新商品開発グループ
熱電変換素子と熱電変換モジュールの
設計開発業務に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
日下 雅文(くさか まさぶみ)
技術開発センター 新商品開発グループ
主任
熱電変換素子と熱電変換モジュールの
設計開発業務に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
西岡 淳一(にしおか じゅんいち)
技術開発センター 新商品開発グループ
グループ長
熱電変換素子と熱電変換モジュールの
設計開発業務に従事
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
Vol. 58, No. 1 (2008)
酸化物熱電発電モジュールの開発
9
酸化物熱電発電モジュールの開発
Development of Oxide Thermoelectric Modules
日下雅文
中村倫之
西岡淳一
Masabumi KUSAKA
Tomoyuki NAKAMURA
Jun-ichi NISHIOKA
押出成型による酸化物熱電変換素子を用いた熱電発電モジュールを開発した。モジュールの構造・設計につ
いては小型・小単位化し,熱源形状に合わせて発電ユニットを構築出来るように考慮して試作を行った。この
モジュールを用いた模擬高温配管熱源による発電実験を行い,温度差: 415 ℃で開放電圧: 33.3 V,最大出
力: 30.6 W の発電電力を得た。また,直流から交流に変換,AC100 V にて出力させて一般家電品を動作させ
る事を確認した。
The thermoelectric power modules have been developed using the oxide TE devices. We focused on the compact design
and the shape optimization to fit the heat souses. At the difference temperature: 415 ℃, the power unit generates the open
circuit voltage of 33.3 V and the maximum power output of 30.6 W. The generated DC power by power unit is converted
to AC100 V for consumer electronics items working.
1.は じ め に
熱電変換発電は,金属もしくは半導体材料に温度差を生
た結果について報告する。
2.モジュール作製方法
じさせるとその間に電圧が生じ,これを回路化させると電
熱電変換素子材料には,p 型熱電変換材料として
流が流れるという現象を利用して発電する物である。この
Ca3Co4O9 , n 型熱電変換材料として LaNiO3 を使用した。こ
現象自体は 19 世紀初頭にドイツのゼーベックにより見出さ
れをセラミックス押出成型装置にて連続押出成型した後に,
れており,その名から「ゼーベック効果」と呼ばれている。
焼結・切削工程を経て 6 mm に素子化した物を用いた。
この技術自体は世界大戦前後,冷戦下等で軍事技術の一つ
モジュール構成について以下に示す。銀ペーストをスク
として開発が進み,世に知られる所では太陽電池が使用出
リーン印刷にて 10 × 100 × 1 mm のアルミナ基板上にプリン
来ない軍事衛星や太陽系外探査衛星等の原子力電池の一部
ト,高温焼成し電極回路パターンを形成させた物を高温側
1)
として使われてきた 。
に使用した。一方,低温側は銀シート電極を用いて,p,n 型
そして近年の地球温暖化問題が社会問題となるなか,一
素子を接続した。また素子/電極の接合には銀ペーストを使
次エネルギーを消費させて発生した熱源の内,有用に使わ
用し,p,n 型素子をそれぞれ 8 個を用いた 8 対モジュールを
れている 34%以外の「棄てているエネルギー: 66%」を有
組立てて発電モジュールを完成させた。この熱電変換モ
効利用する為のデバイスとして「熱電変換技術」が再び着
ジュールの写真を図 1 に示す。
目されている。また熱電変換モジュールには,他の熱を利
用するエネルギー利用方法には無い利点を持っており,熱
を直接電気に変えられる点,即ち熱交換器やタービン等の
附帯設備を伴わない点と発電に伴う排出物を一切生じない点
が利点となっており,クリーンかつ省スペースな発電手段
として知られている。そこで弊社ではこのような熱電変換
技術の利点と地球環境重視の世相を受け,2006 年より酸化
物熱電変換素子の量産化に向けた研究開発に着手した。
本報では,押出成型法で作製した酸化物熱電変換素子を
用いた熱電変換モジュールの開発と,実際の熱源,例えば
煙突,高温配管,ボイラー等の円筒形の熱源表面に発電ユ
ニットを装着する場合を想定しての模擬発電実験を実施し
図 1 8 対熱電変換モジュール
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
10
10
3.評 価 方 法
9
Vol. 58, No. 1 (2008)
⊿T=415℃(Th.=525℃ / Tc.=110℃)
(外径: 319 mm,内径: 292 mm)の高温用鋳鉄管を使用
した。その内部にシミュレーションにより配管表面温度が
可能な限り均一化するようにしてヒーターを配置させて模
擬的に円筒形高温熱源とした物を用いた。また冷却側には
電圧(V) 出力(W)
8
本実験における熱源は,前述の通り円筒形とし,300 A
y = -7.213 × +8.7042
7
6
5
4
電圧V
出力W
3
2
角型銅管(20 × 20 × 1100 mm)を用いた水冷管を導入し
1
て発電実験を行った。また発電ユニットには,先の方法で
0
作製した 8 対モジュールを水冷管 1 本に 9 個× 2 列,計 18 個
0.0
0.5
1.0
1.5
電流(A)
配した物を発電ユニットとして構築し,固定冶具を用いて
図 3 発電ユニット単体のパワーカーブ
円筒形熱源表面に図 2 のように取付けた。この時の発電ユ
ニットの取付本数は 12 本,モジュール総数: 216 個である。
流 100 V に直交変換をさせるべく発電ユニットの接続形態
を変更した。
この時のユニット構成は,既存であった直交変換回路の
定格の都合から,30 V 程度にする必要があり,発電ユニッ
ト 4 本× 3 グループを形成,それらを並列接続させて発電
させた。この時のパワーカーブを図 4,発電ユニットの回
路構成概略図を図 5 に示す。
40
図 2 発電装置外観
このようにして構築した発電装置にてモジュール上下面
に温度差をつけて発電実験を行った。この際に採集する
データは,モジュールの加熱・冷却面の温度,モジュール
の電圧値,電流値である。また熱電変換モジュールには,
太陽電池と同様に,外部の負荷の大きさによってその出力
電圧(V) 出力(W)
35
⊿T=415℃(Th.=525℃ / Tc.=110℃)
電圧V
出力W
30
25
20
15
10
5
y = -9.0723 × +33.306
0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
電流(A)
図 4 発電ユニット 4 本× 3 グループ並列時のパワーカーブ
値が変わるという特性を持っている為 2),モジュールの電
気特性を評価するに当っては,外部負荷を操作した際の各
DVD
ポイントにおける電圧・電流値,電力・電流値をグラフ上
にプロットした「パワーカーブ」を作成してその力量を評
価した。
4.実 験 結 果
レギュレータ
DC/AC
Φ
今回の発電実験では,高温側温度(Th)を 525 ℃/低温
側温度(Tc)を 110 ℃とし,モジュール上下間の温度差
+
(⊿T)を415℃として実験を実施した。この時の発電ユニッ
−
ト単体(モジュール数: 18 個)により得られたパワーカー
ブを図 3 に示す。
+
この結果から開放電圧: 7.48 V,最大出力: 2.08 W が得
られた。次に発電ユニットを 12 本直列に接続して発電実験
−
+
を実施したところ,開放電圧: 100.9 V,最大出力: 32.3 W
−
が得られた。しかしこのレベルでの直流電圧をそのまま使
用するシーンは少ない為,日本国内で最も利用しやすい交
図 5 発電ユニット回路構成概略図
酸化物熱電発電モジュールの開発
この構成にて,開放電圧: 33.3 V,最大出力: 30.6 W を
得た。そしてこれを直交変換し AC100 V で出力させ,市
販の家庭用電化製品として,ポータブル DVD プレイヤー
とアンプ付き外部スピーカー(出力合計: 16.1 W)を動作
させる事を確認した。
昭和電線ケーブルシステム㈱
日下 雅文(くさか まさぶみ)
技術開発センター 新商品開発グループ 主任
熱電変換素子と熱電変換モジュールの設計開発業務に従事
日本熱電学会員
5.考察・まとめ
昭和電線ケーブルシステム㈱
今回の実験では,モジュールの配置を工夫する事により,
円筒形状の熱源から温度差: 415 ℃で発電ユニット 4 段直
列接続× 3 グループの並列接続で開放電圧: 33.3 V,最大
中村 倫之(なかむら ともゆき)
技術開発センター 新商品開発グループ
熱電変換素子と熱電変換モジュールの設計開発業務に従事
出力: 30.6 W にて電力を得て,直交変換にて AC100 V に
て出力する事が出来た。
今後は,より大規模な発電実証試験を行うことで,実用
化に向けたシステム開発を進めていく。
そして本報告の最後になりますが,熱電変換モジュール
の開発や評価技術等について,多くの御助言と御助力を頂
きました独立行政法人産業技術総合研究所の舟橋良次様に
心より感謝申し上げます。
参考文献
1)譖日本セラミックス協会・日本熱電学会:熱電変換材料,p.15
(2005)
2)技術情報会:熱電変換システムの高効率化・高信頼性化技術,
p.203(2006)
昭和電線ケーブルシステム㈱
西岡 淳一(にしおか じゅんいち)
技術開発センター 新商品開発グループ グループ長
熱電変換素子と熱電変換モジュールの設計開発業務に従事
11
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
12
Vol. 58, No. 1 (2008)
Y 系超電導線材用 CeO2 中間層作製プロセスの開発
Development of CeO2 buffer layer for YBCO coated conductors
中西達尚
Tatsuhisa NAKANISHI
小泉
勉
Tsutomu KOIZUMI
兼子
敦
青木裕治
Atsushi KANEKO
Yuji AOKI
長谷川隆代
飯 島 康 裕*
齋 藤 隆*
高 橋 保 夫**
Takayo HASEGAWA
Yasuhiro IIJIMA
Takashi SAITOH
Yasuo TAKAHASHI
和 泉 輝 郎**
塩 原 融**
Teruo IZUMI
Yuh SHIOHARA
TFA-MOD 法を用いた Y 系超電導線材の開発を行い,200 m × 200 A/cm-width 線材の作製プロセスを 2007 年
に確立した。現在作製している Y 系超電導線材は,テープ状の金属基板(HastelloyTM)上に Gd2Zr2O7,および
CeO2 の 2 層からなる中間層,および超電導層を積層した構造を有しており,中でも CeO2 中間層の結晶粒配向
性が,その上層の超電導層の結晶配向性と臨界電流値(Ic)に大きく影響を及ぼすことが知られている。本報
では,CeO2 中間層の長尺作製プロセスを検討し,Ic が 200 A/cm-width 以上の特性の目安となる CeO2 の面内配
向性(Δφ)が 6 °以下の特性が得られ,130 m の長尺試験においても全長にわたって安定した特性が得られた
ことについて報告する。
We have developed YBCO superconductor tapes by using the TFA-MOD process, and we successfully fabricated a
200 m long tape with the end-to-end Ic values of 201 (A/cm-width) in 2007. The architecture of the YBCO coated conductor which we have fabricated consists of the two buffer layers of Gd2Zr2O7 and CeO2, and the superconductor layer on a
metal substrate. It is well known that the in-plane grain alignment of the CeO2 buffer layer has a significant influence on
that of the YBCO superconductor layer as well as the critical current properties. In this work, we examined the CeO2 deposition process for long tapes by using the reel to reel sputtering process. As a result, a 130 m long tape was obtained with
high in-plane grain alignment for its entire length. The Δφ values were less than 6 degrees. The details are reported in
this paper.
1.は じ め に
我々は,有機酸塩塗布熱分解法(Metal-Organic acid
YBCO
CeO2
solts Deposition : MOD 法)を使用した YBCO 線材の長尺
化作製プロセスの開発を行っている。MOD 法における結
GZO
晶化プロセスにおいて,バッチ式(Batch)の熱処理方法
Hastelloy
を採用していることを特長としている。炉設計や本焼条件
を最適化することにより 2007 年 1 月に 200 m× 200 A/cm-
図 1 Y 系線材の構造
width 級の線材作製に成功した 1)。
我々が,現在作製している YBCO 線材は図 1 に示した構
CeO2 中間層の役割は,超電導層と GZO 中間層間の格子整
造を採り,㈱フジクラ殿より供給された Gd2Zr2O7(GZO)
合性を良くすること,金属基板の元素拡散の抑制などが考
中間層付 HastelloyTM 基板上に CeO2 中間層と YBCO 超電導
えられ,YBCO 膜の超電導特性は CeO 2 中間層の面内配向
層を積層した構造となっている。超電導層の下地となる
性や表面平滑性などに大きく左右されることが知られてい
る。CeO 2 中間層の作製プロセスは,高速成膜の観点から
* 株式会社フジクラ
** 財団法人国際超電導産業技術研究センター
PLD 法(Pulsed Laser Deposition)が採用されることが多
い 2)。また GZO 中間層上に CeO2 膜を PLD 法で成膜した場
Y 系超電導線材用 CeO2 中間層作製プロセスの開発
13
基板加熱用
ヒータ
GZO/基板
CeO2
ターゲット
リール
図 2 Reel-to-reel Sputtering 装置の概略図
(b)PLD − CeO2
(Ra=1.6 nm)
図 4 Sputtering 膜および PLD 膜の AFM 微分像(5 μm □)
20
Δφ(deg)
(a)Sputtering − CeO2
(Ra=1.6 nm)
15
HastelloyTM リードに 20 cm 長の IBAD-GZO 基板を 10 m 間
隔で接続した模擬長尺線材を作製して行った。以後,この
タイプの試料を用いた試験をパッチ試験と呼称する。
10
作製した CeO 2 中間層膜の評価は X 線回折法を使用して
行い,結晶性に関しては(200)の強度,c 軸配向度はθ−
5
2 θで評価を行った。CeO2 中間層膜の結晶粒面内配向性は,
極点図の測定を行い,4 回対称性を示すφスキャンピーク
0
0
30
60
90
120
Deposition time(min)
図 3 CeO2 成膜時間とΔφの関係
の半値幅(Δφ)の平均値をとり評価した。
CeO2 中間層膜の表面形状と膜表面平滑性の評価は,
SEM(Scanning Electron Microscopy)および AFM
(Atomic Force Microscopy)によりそれぞれ行った。
CeO 2 膜の中間層としての有効性評価は,実際に YBCO 超
合,膜厚の増加に伴い CeO2 膜の結晶粒面内配向性(Δφ)
電導膜を TFA-MOD(Trifluoroacetates-Metal Organic
が急激に向上することが良く知られており,『自己配向:
Deposition)法により作製し,超電導膜の臨界電流(Ic)を
self epitaxy』と呼ばれている。
測定することによって判断した。Ic 値の測定は直流四端子
PLD 法は数年間隔でレーザ発振管の交換が必要となるた
法を用い,1 μV/cm の電界基準によって定義した。
め,装置のメンテナンスコストが高価であり,長時間運転
3.結 果
におけるレーザエネルギーの経時変化なども想定され,製
造時の無人運転が難しいといった欠点がある。そこで我々
3.1
スパッタ CeO2 膜の特性
は,PLD 法に比べて装置の導入コストやメンテナンスコス
図 3 は,成膜時間とΔφとの関係を示す。CeO2 中間層成
トが安価で量産に適すると考えられる RF-Sputtering 法を
膜前の基板の面内配向度は 14 °である。CeO2 成膜時間の増
CeO 2 中間層の製造プロセスに選択した。本報では,RF-
加,即ち膜厚の増加と共にΔφは急激に減少し,90 分の成
Sputtering 法による CeO 2 中間層膜の作製条件の最適化と
膜終了時にΔφは 4 °に至った。この時の膜厚は 1.3 μm に
長尺化について検討した結果について報告する。
2.実 験 方 法
相当し,PLD 法と同様に CeO2 膜の結晶粒自己配向効果を
確認できたことになる。
AFM 測定の結果を図 4 に示す。図 4(a)は Sputtering
使用した基板は,HastelloyTMC276 テープ上に GZO 膜を
法,(b)は PLD 法で作製した CeO2 膜各々の 5 μm □の領
IBAD(Ion-beam-assisted-deposition)法で成膜したもの
域における AFM 像である。表面粗さ Ra は,下地の GZO
である。
膜の Ra=1.2 nm に対し,(a),(b)どちらの CeO 2 膜も
CeO2 の成膜は,RTR 式の RF-magnetron sputtering 装
Ra=1.6 nm が得られている。
Sputtering-CeO2 層の長尺成膜
置を用い,2.3 − 10 mTorr,600 − 650 ℃の成膜条件で実施
3.2
した。自己配向の検討に使用したプロトタイプの成膜装置
20 cm 長の GZO 付き基板を 10 m 間隔で接続した全長
は,図 2 のような構造である。また,高速化を目的とした
100 m のパッチ試験結果を図 5 に示す。使用した基板の
量産機は成膜領域を拡張するためにマルチターン方式を採
GZO のΔφは 14 °,CeO 2 層の成膜時間は 50 時間である。
用し,5 回成膜領域を基板が通過できる構造とした。
長時間にわたる長尺中間層の安定成膜検討実験は,
作製した CeO2 中間層のΔφの値は,100 m の前端ではΔφ
=4 °,後端で 5.5 °の均一なΔφの分布が得られた。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
14
Vol. 58, No. 1 (2008)
Δφ(deg)
15
10
5
0
0
20
40
60
80
100
position(m)
(a)600 ℃,RF : 2.5 kW,T-S 間: 60 mm
図 5 全長 100 m のパッチ試験でのΔφの分布
(GZO のΔφは 14 °
,CeO2 膜厚: 1.4 μm)
Ic(A/cm-w)
500
400
300
200
100
(b)600 ℃,RF : 2 kW,T-S 間: 60 mm
0
0
20
40
60
80
100
position(m)
図 6 100 m パッチの Ic 分布(YBCO 膜厚: 1.4 μm)
成膜レート(nm/min)
30
25
20
15
(c)600 ℃, RF : 2 kW,T-S 間: 95 mm
10
5
0
0
1
2
3
RFパワー(kW)
図 7 マルチターン装置の RF パワーと成膜レートの関係
(d)400 ℃,RF : 2 kW,T-S 間: 95 mm
次にこの100 mパッチ試験より,0 m(前端)
,30 m,70 m,
100 m(後端)の 4 箇所のから試料を抽出し,TFA-MOD 法
図 8 sputtering-CeO2 膜の SEM 観察結果
を用いて YBCO 超電導層を形成した。基板表面に塗布した
TFA 原料溶液は,Y と Ba はトリフロロ酢酸塩で Cu はナ
フテン酸塩を使用した。それぞれの元素の比は Y : Ba :
上の YBCO 超電導層において良好な通電特性を示したこと
Cu = 1 : 1.5 : 3 とした。本焼後の YBCO 膜の I c 評価の結
から,十分に YBCO 線材の中間層として使用できることが
果を図 6 に示す。Ic 値は 390 ∼ 400 A/cm-w という高い値で
わかった。
均一な分布を示し,YBCO 膜の膜厚が 1.4 μm であること
2
から,臨界電流密度( Jc)の分布は 2.8 ∼ 2.9 MA/cm となる。
以上の結果より,Sputtering 法で作製した CeO 2 中間層
3.3
CeO2 中間層の高速化
これまでに示した結果はプロトタイプ機を用いた結果で
あり,製造速度が 0.8 m/h ときわめて遅い。我々のバッチ
Y 系超電導線材用 CeO2 中間層作製プロセスの開発
Δφ(deg)
15
15
4.
ま と め
Sputtering 法により結晶粒面内配向性(Δφ)が 6 °以下
10
の CeO2 中間層膜を長尺化することに成功し,PLD 法に代わ
り Sputtering 法でも高性能な YBCO 線材用中間層として適
5
用可能であることを実証した。さらにマルチターン機構を
有する量産用装置を導入,立上げを行い,現時点で製造速
度が 2 m/h となった。今後は,さらに当面の目標である製
0
0
50
100
position(m)
図 9 130 m パッチ試験でのΔφの分布
造速度 5 m/h に向けて開発を進める。
謝 辞
本研究は,新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)
式熱処理プロセスを使用した長尺化の工程では,将来的に
10 m/h の製造速度を得ることが必須であり,現状では CeO2
中間層膜の製造工程がボトルネックとなる事が予想される。
の委託により実施したものである。
参考文献
このため CeO2 中間層の製造速度の高速化が求められている。
1) 小泉 勉,他:昭和電線レビュー,Vol.57,No.1,p.45(2007)
製造速度を上げる手法としては,Sputtering 成膜における
2) T. Muroga, et al., Physica C 392-396 (2003) 796.
RF 印加電力を増加することによって成膜レートを上げ,製
造速度を上げることが考えられる。一方,成膜条件は現状の
ままとし,成膜領域を広げることによって時間短縮を図る 2
つの方法が考えられる。これら 2 つの考えを勘案し,RF 印
加電力を上げるとともに,成膜領域を広げるためのマルチ
ターン機構を有する装置の開発を行い,CeO2 中間層の検討
を行った。成膜条件に関してガス圧はプロトタイプ機と同じ
とし,RF印加電力,基板温度,およびT-S(ターゲット−基
板)間距離の最適化の検討を行った。まず,RF パワーと成
膜レートの関係を調べた。なお,成膜レートは成膜後の膜厚
と成膜領域を通過する時間から算出した。図 7 より,プロト
タイプ機の成膜レートである 15 ∼ 20 nm/min を得るには,
プロトタイプ機の500 Wに対して量産機では2 kW以上投入
する事が必要であることがわかる。これは,ターゲットの面
積を拡張したことに起因すると考えられる。
次に,RF パワーを 2 kW,2.5 kW の 2 条件とし,T-S 間
距離と基板温度について配向性と表面平滑性の観点から検
討した。GZO のΔφ =18 °の基板を使用した場合,CeO2 中
間層のΔφはいずれも 6 °程度であった。
しかし表面平滑性に関しては,RF パワー 2.5 kW では,
図 8(a)のように表面に突起物が多く観察された。このよ
うな突起物は RF パワーが高く,T-S 間距離が短い場合に
多く見られる。そこで,成膜レートが極端に遅くならない
T-S 間距離を調査し,その位置で RF 投入電力を調整して
良好なΔφを示し,突起物が少なくなる成膜条件を検討し
た。その結果,図 8(d)のように平滑性の良い成膜条件が
製造速度 2 m/h で得られた。
マルチターン機構を持つ量産機の長尺成膜の検討として
130 m のパッチ試験を行った結果を図 9 に示す。長手方向に
対するΔφの分布を示したものである。全長にわたり 6 °以
下(膜厚: 1.4 μm)のΔφを示し,きわめて均一に面内配
向した CeO2 中間層膜が形成されていることを示している。
16
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
昭和電線ケーブルシステム㈱
株式会社フジクラ
中西 達尚(なかにし たつひさ)
技術開発センター 超電導プロジェクト 主査 高温超電導線材の研究・開発に従事
飯島 康裕(いいじま やすひろ)
工学博士
材料技術研究所
超電導研究室 室長
昭和電線ケーブルシステム㈱
株式会社フジクラ
小泉 勉(こいずみ つとむ)
技術開発センター 超電導プロジェクト 主査 高温超電導線材の研究・開発に従事
齋藤 隆(さいとう たかし)
材料技術研究所
上席研究員
Vol. 58, No. 1 (2008)
財団法人国際超電導産業技術研究センター
昭和電線ケーブルシステム㈱
兼子 敦(かねこ あつし)
技術開発センター 超電導プロジェクト 高温超電導線材の研究・開発に従事
高橋 保夫(たかはし やすお)
超電導工学研究所 線材研究開発部
主任研究員
財団法人国際超電導産業技術研究センター
昭和電線ケーブルシステム㈱
青木 裕治(あおき ゆうじ)
技術開発センター 超電導プロジェクト長 主査
和泉 輝郎(いずみ てるお)
工学博士
超電導工学研究所 線材研究開発部 部長代理
財団法人国際超電導産業技術研究センター
昭和電線ケーブルシステム㈱
長谷川隆代(はせがわ たかよ)
工学博士
取締役
技術開発センター長
塩原 融(しおはら ゆう)
工学博士
超電導工学研究所 副所長
TFA-MOD-YBCO 線材で作製した電流リードの通電特性
17
TFA-MOD-YBCO 線材で作製した電流リードの通電特性
Transport performance of HTS current lead prepared
by TFA-MOD processed YBCO tape
小泉 勉
引地康雄
青木裕治
長谷川隆代
Tsutomu KOIZUMI
Yasuo HIKICHI
Yuji AOKI
Takayo HASEGAWA
塩 原 敬*
堺 智*
Kei SHIOHARA
Satoshi SAKAI
大 木 茂 人*
山 田 豊*
太刀川恭治*
Shigeto OHKI
Yutaka YAMADA
Kyouji TACHIKAWA
TFA-MOD 法による Ic=100 A/cm-width の YBCO 線材を 12 本使って電流リードを作製した。12 本の YBCO
超電導線を厚さ 3.0 mm のステンレス製の短冊状薄板の両面に片側 6 本ずつ並べ,両端を銅で作ったキャップ
状の端子に半田接続した。液体窒素温度中で約 10 分間にわたり 1000 A の直流電流を安定して通電することが
できた。この通電試験の最中,全ての線材において電圧が発生することはなかった。1,100 A の電流を通電す
ると,いくつかの YBCO 線材において多少の電圧発生が認められたが,クエンチすることなく,さらに 1,200 A
の電流を通電することに成功した。YBCO 線材とステンレス製薄板で構成される開発した電流リード全体での
熱伝導率は,従来の銅などの非超電導材料で造った電流リードの値と比べて非常に小さいものである。即ち,
小さな侵入に抑制できる本電流リードは超電導マグネットの電流リードとして実用上有効であると考えられる。
A superconducting current lead has been prepared using twelve tapes of the TFA-MOD processed YBCO coated conductors with the critical current (Ic) values of about 100 A/cm-width at 77 K in self-fields. The twelve YBCO tapes are
arrayed on the both sides (6 tapes on each side) of a stainless steel board with 3 mm in thickness for a board type shape
current lead. They are similarly soldered to copper caps at the both ends. The transport current of 1,000 A was stably
applied for 10 minutes in the liquid nitrogen temperature without any voltage generation in all tapes. Although some voltage in some YBCO tapes generated at the applied current of about 1,100 A, the transport current of 1,200 A was successfully applied without quenching. The overall (effective) thermal conductivity of the current lead composed of YBCO tapes
and the stainless steel board is much lower than that those of the conventional non-superconducting current leads. Consequently, the present current leads with a small amount of the heat leakage seem to be practically promising for superconducting magnets.
機出力の節約に通じる。実際,HTS 電流リードにおける一
1.は じ め に
連の研究と開発は,伝導冷却型超電導マグネットのような
大規模な応用機器用として行われてきた 1-4)。特に,HTS 電
Y 1Ba 2Cu 3O 7-d(YBCO),Bi 2Sr 2Ca 1Cu 2O 10(Bi2212)や
流リードは,冷凍機によって冷却される寒剤不要な超電導
Bi2Sr2Ca2Cu3O10(Bi2223)などに代表される臨界電流温度
マグネットシステムにとって不可欠であると考えられる 5-6)。
(Tc)が 77 K 以上を示す高温超電導体(HTS)を応用製品
本研究では,三弗化酢酸塩(Tri-fluoro-acetates : TFA)
の一つである電流リードに適用する事は魅力的なことであ
を 原 料 と す る 有 機 酸 塩 塗 布 熱 分 解 法 ( Metal Organic
る。低温で使用する超電導マグネットや装置への熱浸入量
Deposition: MOD)によって作製した YBCO 線材を電流
が小さいということは,低い熱伝導率や HTS 電流リード
リードに応用し,その電流リードの超電導輸送電流特性に
システムにおけるジュール発熱が無いということから冷凍
ついて評価した結果を報告する。TFA-MOD 法で作製した
YBCO 線材は,銀シースの丸線やテープ線材と比較すると,
* 東海大学
磁場中の特性を含めた超電導特性において非常に高い特性
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
18
を示している 7-8)。また長尺化と同様に低コストの製造プロ
Vol. 58, No. 1 (2008)
だった。12 本の YBCO 線材に関するIc 値の積算値は 1216 A
セスも開発されつつある。更に,YBCO 線材を使用した電
である。Ic 値が 100A の時,YBCO 超電導層の臨界電流密度 Jc
力応用機器における重要な要素技術の研究開発が既に開始
は概ね 2.0 × 104 A/mm2 に相当し,HastelloyTM 基板,中間
されている。大通電電流と小さな熱負荷を特徴とする今回
層,超電導層や銀の安定化層を含むエンジニアリング Je は
開発した YBCO 電流リードは超電導マグネットシステム応
185 A/mm2 となった。
用に向けて有望であると考えられる。
77 K
2.実 験 方 法
と CeO2 の 2 層から成る厚さ 1.5 μm の中間層,そして 100 μm
Ic(A)
り,厚さ∼ 1.0 μm の YBCO 超電導層,Gd 2Zr 2O 7(GZO)
101 A
100
TFA-MOD 法で作製した YBCO 線材は幅が 4.5 mm であ
50
厚の HastelloyTMC276 のテープ形状の基板で構成されてい
Total Ic:1216 A
Mean Ic:101 A
る。そして超電導層の表面には焼く 20 μm の厚さの銀層が,
熱的安定性,電気的接触の安定性,機械的強度などの向上
0
を目的として蒸着されている。輸送電流は,この銀安定化
1
2
3
4
層を介して供給される。
5
6
7
8
12 YBCO Tapes
9
10
11
12
図 2 電流リードの作製に使用した 12 本の YBCO 線材の Ic の値
幅 36 mm,長さ 220 mm,板厚 3.0 mm の形状をしたオー
ステナイト系ステンレンス(SUS304)の板材をフォーマー
として使用した。このステンレス製板材の両面に 12 本の
図 3 に YBCO 線材で作製した電流リードの 77 K,自己磁
YBCO 線材を配置,即ち片面に 6 本ずつ並べた。両端は銅
界中における通電電流特性を評価した結果を示す。12 本,
で作製したキャップ状の端子を被せた後,市販されている
全ての YBCO 線材において全く電圧を発生すること無く,
Pb-Sn 半田を用いて端子と線材を半田接続した。作製した
1000 A の通電試験に成功した。1100 A 近傍まで通電した
電流リードの外観を図 1 に示す。ステンレスの板材は,過
時に,線材の Ic 値が最も低い値である 95 A を示した YBCO
電流通電におけるシャントの役割を担い,且つ薄い YBCO
線材において YBCO 線材の発生電圧に相当する電圧 V YBCO
テープ線材における熱収縮を緩和する役割を果たす。一対
が発生したが,クエンチすること無く 1200 A 以上まで通
の電圧端子,V YBCO は電圧端子間距離を 120 mm とし,各
電電流を増やすことができた。二つの銅製電流端子間の発
YBCO 線材毎に 12 組設置した。また,もう一組の電圧端子,
生電圧 V Cu-Cu,と片端の銅製電流端子と銀の保護層間の発
VCu は両端に存在する二つの銅端子に同様にして接続した。
生電圧 VCu+ は,通電電流の増加に比例してほぼ直線的に増
試料となる電流リードはクライオスタットの液体窒素を寒
加した。1000 A 通電した時の VCu-Cu は∼ 290 μV,VCu+ は∼
剤として浸漬冷却した。
160 μV を示し,これらの値より 77 K においてそれぞれ∼
線材の臨界電流値(I c)は,通常の 4 端子抵抗法を用い
0.29 μΩと∼ 0.16 μΩという低い接触抵抗値が求められる。
て評価し,1 μV/cm の電圧基準を用いて定義した。
500
V Cu-Cu
V YBCO
V Cu+
360 mm
150 mm
105 mm
V Cu+
400
Voltage(μV)
V Cu-Cu
V YBCO
105 mm
300
V Cu-Cu
200
V Cu+
46 mm
Cu(−)
Cu(+)
35 mm
12 YBCO tapes on stainless
steel board
100
V YBCO
35 mm
0
図 1 YBCO 線材を用いた電流リードの概略図
3.結 果
3.1
YBCO 電流リードの通電電流特性
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
Transport Current(A)
図 3 77 K,自己磁界における YBCO 電流リードの通電特性
図 4 に 77 K,自己磁界中における YBCO 電流リードの連
図 2 に 77 K,自己磁界中で評価した電流リードに使用した
続通電試験の結果を示す。12 本の YBCO 線材全てにおいて
12 本の YBCO 線材の Ic 値を示す。YBCO 線材の Ic 値は 95 か
電圧を発生すること無く,1000 A の電流を 600 sec 安定し
ら 105 Aと狭い領域での分布を示し,Ic 値の平均値は 101 A
て通電することできた。1000 A の電流を通電している最中,
TFA-MOD-YBCO 線材で作製した電流リードの通電特性
160 μV を示した片端の銅端子と銀安定化層間の発生電圧,
VCu+ は,一定の発生電圧を維持した。二つの銅端子間,片
端銅端子−銀層間の低い発生電圧は YBCO 線材と銅製電流
端子間の接触抵抗が低いことに起因し,接続部分における
ジュール発熱を僅かなものとしている。
1,200
500
800
300
Voltage(Cu-Cu)
600
200
400
Voltage(Cu+)
100
SS(3 mmt)+12YBCO
400
SS(3 mmt)
350
SS(1 mmt)+12YBCO
300
12YBCO
250
200
150
100
50
1,000
Current
Transport curent(A)
Voltage(μV)
400
450
Heat Leakage of current lead(mW)
290 μV を示した 2 つの銅製電流端子間の発生電圧 V Cu-Cu と
19
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
Length(cm)
図 5 4 K から 77 K における熱浸入量と YBCO 線材とステンレス板の
長さの関係
200
Voltages(12 YBCO tapes)
0
4.
0
-100
0
100
200
300
400
500
600
700
ま と め
TFA-MOD 法で作製した YBCO 線材を用いた電流リード
Time(sec)
図 4 77 K,自己磁界における YBCO 電流リードの連続通電特性
の設計と試作を行った。1000 A の通電電流を 77 K,自己磁
界中において 10 分間安定して通電することができた。
3.2
YBCO 電流リードにおける熱侵入量の評価
YBCO線材と銅製電流端子の接続部の低接続抵抗により,両
電流リードの熱負荷は,主として電流リードを介して熱
端の電流端子間では約 300 μV という僅かな電圧発生に抑え
伝導する熱侵入と電気抵抗によって発生するジュール熱の
ることに成功した。YBCO 線材と板厚 3 mm,長さ 150 mm
二つから構成される。しかしながら,電気抵抗に起因する
のステンレス板で構成される YBCO 電流リードの 4.2 K から
ジュール発熱を除外した HTS 電流リードの熱侵入量を Q c
77 K の熱侵入量は,ジュール発熱を除外して 345 mW と概
は,次式(1)によって簡単に記述される。
算された。板厚 3 mm のステンレス板の熱侵入量は,YBCO
線材の 12 本分の熱侵入量より遥かに大きい。ステンレス板
S TH
Qc = ∫ λ
(T)dT ……………(1)
L TL
の板厚を 3 mm から 1 mm に薄肉化することによって,
YBCO電流リードの全熱浸入量は190 mWにすることが可能
ここでは S が電流リードの断面積,L は電流リードの高
である。この値は,従来の銅製電流リードの値(1.2 W/kA)
温端と低温端の間の距離,TH は高温端側の温度,TL は低
の 1/6 より小さい。低熱侵入量と大通電電流を特長とする
温端側の温度,λ(T)は温度関数で与えられる熱伝導率
今回開発した YBCO 電流リードは,低温超電導マグネット
である。
システムにとって非常に有効であると考えられる。
9)
これまでの研究 によると YBCO 線材とステンレス板に
謝 辞
関する 4 K から 77 K のまでの熱伝導率の積分値は,それ
ぞれ 44 W/cm と 3.2 W/cm と計算される。式(1)を用い
本研究は,東海大学と昭和電線ケーブルシステム㈱間で
る事によって YBCO 線材とステンレス板の長さを変えて
締結された共同研究によって実施された。研究成果の一部
TH(4.2 K)から TL(77 K)の間における熱侵入量 Qc の量を
は,NEDO のプロジェクトである「超電導応用基盤技術研
計算した結果を図 5 に示す。150 mm の長さを持つ 12 本の
究開発」の成果を利用している。
YBCO 線材(220 mm 線材の両端の 35 mm の部分は銅端子
参考文献
に半田接続されている)の熱侵入量の積算は,115 mW であ
る。YBCO 電流リードの熱侵入の総量は,3 mm 厚のステン
1) A. Hobl, et al., IEEE Trans. Appl. Supercond. 9 (1999) 495.
レス板の熱侵入量が 230 mW であることから 345 mW であ
2) Q. L. Wang, et al., IEEE Trans. Appl. Supercond. 9 (1999) 499.
ると概算できる。図 5 は,組立てに使われたステンレス板
の熱侵入量が 12 本の YBCO 線材の熱侵入量の積算値よりも
大きいことを示している。実際,YBCO 電流リードの熱侵
3) R. Heller, et al., IEEE Trans. Appl. Supercond. 12 (2002) 1285.
4) Y. Yamada, et al., IEEE Trans. Appl. Supercond. 12 (2002) 461.
5) Y. Yamada, et al., Advances in Cryogenic Engineering 40 (1994) 281.
6) K. Watanabe, et al., Cryogenics 36 (1996) 1019.
入の総量は予測することが可能であり,ステンレス板の厚
7) Y. Aoki, et al., Physica C 426-431 (2005) 945.
さを 3 mm から 1 mm に薄くすることによって,熱侵入量を
8) T. Izumi, et al., IEEE Trans. Appl. Supercond. 17 (2007) 3329.
190 mW にすることが期待できる。この 190 mW という熱
9) Y. Yamada, et al., presented in ICEC22-ICMC2008 (2008) TU-M1-
侵入量は,ガス冷却を使用する従来の銅製電流リードの熱
10)
侵入量(1.2 W/kA)に対し,1/6 より小さい値となる 。
B02.
10)J. M. Lock, Cryogenics 9 (1969) 438.
20
昭和電線ケーブルシステム㈱
小泉 勉(こいずみ つとむ)
技術開発センター 超電導プロジェクト 主査
高温超電導線材の研究・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
引地 康雄(ひきち やすお)
技術開発センター
新商品開発グループ 主査
昭和電線ケーブルシステム㈱
青木 裕治(あおき ゆうじ)
技術開発センター 超電導プロジェクト長 主査
昭和電線ケーブルシステム㈱
長谷川隆代(はせがわ たかよ)
工学博士
取締役
技術開発センター長
東海大学
塩原 敬(しおはら けい)
工学部材料科学科
修士 1 年
東海大学
堺 智(さかい さとし)
工学部材料科学科
修士 1 年
東海大学
大木 茂人(おおき しげと)
工学部材料科学科
修士 2 年
東海大学
山田 豊(やまだ ゆたか)
工学博士
工学部材料科学科
教授
東海大学
太刀川恭治(たちかわ きょうじ)
工学博士
工学部材料科学科
教授
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
Vol. 58, No. 1 (2008)
220/230 kV 気中終端接続部の開発
220/230 kV
21
気中終端接続部の開発
Development of Outdoor Sealing End for 220/230 kV XLPE Cable
足立和久
高安央也
新舘 均
瀬間信幸
Kazuhisa ADACHI
Hisaya TAKAYASU
Hitoshi SHINTATE
Nobuyuki SEMA
近年,中国,中東,インド等,海外における電力需要が増えつつある。そこで,組立作業の省力化のため,
構造を簡素化し,ケーブル処理等の組立時間が大幅に低減可能な 220/230 kV 気中終端接続部を開発した。開
発試験において本接続部は IEC62067 の 220/230 kV 級の性能を有することを確認した。
Recently the requirements of the electric power are increasing in China, India and Middle East area. In order to simplify
assembly work, we developed a new 220/230 kV outdoor sealing end which makes it possible to reduce the assembly time
drastically. It is confirmed that the outdoor sealing end has the adequate electric performance of IEC62027 220/230 kV
class by the developement tests.
1.は じ め に
近年,中国,中東,インド等の電力需要が急速に増え,
(4)金具一体型プレモールド絶縁体
海外における気中終端接続部の組立の機会が増えつつあ
プレモールド絶縁体と金具を一体化し,がい管内部の絶
る。このため,気中終端接続部の構造簡素化や組立作業の
縁混和物を完全シールする構造とした。これまでの現地施
スキルレス化が求められている。
工のテープ巻やモールドによるシール方法に比べ,シール
当社は金具一体型のシリコーンプレモールド絶縁体を適
性能が向上し,組立時間を大幅に削減している。
用することで,シール構造を簡素化し,組立作業性を向上
させた気中終端接続部を開発している。既に 110/132 kV
級は開発を終了している 1)。
上部金具類
今回,220/230 kV 気中終端接続部を開発し,IEC62067
の初期性能を有することを確認したので報告する 2)。
2.気中終端接続部の構造
磁器がい管または
ポリマーがい管
開発した気中終端接続部はがい管・金具一体型プレモー
ルド絶縁体・絶縁混和物および金具類で構成されており,
従来気中終端接続部に使用していたエポキシ座やプレモー
絶縁混和物
ルド絶縁体圧縮金具を必要としない(図 1)。
3.気中終端接続部の特長
(1)上部金具類
金具一体型プレモールド絶縁体
上部金具類を簡略化し部品数を低減することで組立て作
業性を向上させた。
(2)がい管
磁器がい管またはポリマーがい管を選択可能であり客先
の要求に応じることができる。
保護金具一体型取付金具
(3)保護金具一体型取り付け金具
がい管下部金具と保護金具を一体化することで作業性を
向上させた。
図 1 220/230 kV 気中終端接続部
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
22
Vol. 58, No. 1 (2008)
4.電 界 設 計
本終端接続部はがい管の長さを変更することにより IEC
の 345 kV 級の電気性能を有する設計とした。
電界解析を行い,プレモールド絶縁体の形状や高さを検
討し,各部位の電解が十分裕度を有することを確認した。
電界解析結果を図 2 に示す。
図 4 プレモールド絶縁体部分放電測定状況
6.
組立作業性検証
プレモールド絶縁体接触部以外は機械削りとすること
で,ケーブル処理時間が大幅に短縮できることを確認した。
従来の気中終端接続部との組立時間の比較を図 5 に示す。
下部金具 ケーブル組込 がい管
組立 絶縁油
エポキシ座 ・圧縮金具組立 上部金具
注入
・保護金具組立
組立
組立
ケーブル処理
防腐
処理
図 2 電界解析結果
ケーブル
処理
下部 プレ がい管
モールド 組立 絶縁油
金具 絶縁体 上部金具
注入
挿入 挿入 組立
防腐
処理
大幅な圧縮
5.プレモールド絶縁体の性能検証
同等処理
プレモールド絶縁体とケーブル界面の密着性を確認する
上部金具の部品点数削減により組立簡略化
ために径差 2 mm のアクリルパイプを挿入し,挿入時に巻
金具一体化プレモールド絶縁体により圧縮装置,
油止めの組立が不要
き込んだ気泡が短時間で消滅することを確認した(図 3)。
また,同等径差のケーブルに組込んで部分放電試験を行
い,IEC 規格値の 190 kV にて部分放電が発生しないことを
保護金具一体化取付金具により組立簡略化
外導削り器を使用,モールドレスによりケーブル処理省力化
確認した(図 4)。
図 5 組立作業時間の短縮
7.開発試験結果
IEC62067 に基づき 220/230 kV クラス開発試験を実施した。
初期試験では 220/230 kV の性能を確認し,さらに 345 kV 級
の性能まで確認できた。試験結果を表 1 に示す。試験状況
を図 6 に示す。
表 1.開発試験結果
項 目
図 3 密着性検証試験状況
要求特性 IEC62067
試験
結果
220 / 230 kV
330 / 345 kV
商用周波部分放電試験
190 kV / 5 pC 以下
285 kV / 5 pC 以下
良
商用周波耐電圧試験
314 kV / 30 分
420 kV / 60 分
良
雷インパルス耐電圧試験
± 1050 kV / 各 10 回
± 1175 kV / 各 10 回
良
長期課通電試験
254 kV 導体温度
95 ∼ 100 ℃←
→常温
× 20 サイクル
−
良
220/230 kV 気中終端接続部の開発
23
8.ま と め
金具一体型のシリコーンゴムプレモールド絶縁体を使用
した 220/230 kV 気中終端接続部を開発した。構造を簡素
化することで組立作業性が向上することを確認した。開発
試験の結果,IEC62067 の 220/230 kV 級の性能を有するこ
とを確認した。今後,本接続部が 220/230 kV 級の電力設
備に使用されることを期待する。
参考文献
1)高安,新舘,箕輪,瀬間:「110 ∼ 132 kV
気中終端接続部の構
造簡素化」
,平成 18 年電気学会 B 部門大会 128.
2)足立,新舘,瀬間:「220 ∼ 230 kV
気中終端接続部の構造簡素
化」
,平成 20 年電気学会 B 部門大会 140.
図 6 試験状況
24
昭和電線ケーブルシステム㈱
足立 和久(あだち かずひさ)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 技術課 主査
電力用機器の設計・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
高安 央也(たかやす ひさや)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 技術課 主査
電力用機器の設計・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
新舘 均(しんたて ひとし)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 技術課 課長.
電力用機器の設計・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
瀬間 信幸(せま のぶゆき)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 次長
電力用機器の設計・開発に従事
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
Vol. 58, No. 1 (2008)
220/345 kV ガス中終端接続部の開発
25
220/345 kV ガス中終端接続部の開発
Development of 220/345 kV SF6 Gas Immersed Sealing End
李 鋒
高安央也
瀬間信幸
Feng LI
Hisaya TAKAYASU
Nobuyuki SEMA
近年,中国,インド,中東等の海外市場では 220/345 kV 超高圧用機器の需要が増えつつある。海外では機
器と終端接続部の取り合いは IEC 規格を適用した。今回,従来のスマート技術を踏まえ,市場ニーズに応え,
高性能,簡素化した IEC 準拠完全乾式(Dry-Type)220/345 kV ガス中終端接続部の開発を行い,開発試験と
社内長期試験において要求性能を満足することを確認した。本終端接続部は今後数多くの海外件名に適用する
ことを期待する。
Recently the requirements of 220/345 kV class ultra-high voltage equipment are increasing in China, India and Middle
East area. In abroad, the connection assembly with gas equipment of the sealing end complies with the IEC standard. This
standard was newly revised as IEC60859 in 1999 to adopt a new compact size gas immersed sealing end which is a dry
type and completely insulated oil free. The equipment manufacturers in overseas have applied the connection assembly
size according to this standard widely. Aiming to the growing market of 220 kV and above class ultra-high voltage field, a
new 220/345 kV plug-in type gas immersed sealing end was developed which simplifies the field work greatly compared
with the fluid-filled type.
1.は じ め に
表 1 目標性能の設定
電力需要が伸びている中国,インド,中東等の海外市場
項目*
では 220/345 kV 超高圧用機器の需要が増えつつある。海
IEC62067
220 kV
345 kV
中国 GB
台湾 TPC
日本 JEC
目標
220 kV
345 kV
275 kV
性能
外では機器と終端接続部の取り合いは IEC 規格を適用して
部分
190 kV
285 kV
190 kV
330 kV
300 kV
330 kV
いる。本規格は 1999 年に IEC60859 として改定され,コン
放電
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
AC
318 kV
420 kV
318 kV
440 kV
525 kV
525 kV
30 分
60 分
30 分
360 分
60 分
60 分
パクト化された内部に絶縁油を使用しない完全乾式(Dry
耐圧
Type)の終端接続部の仕様が追加されている。
Imp.
今回,施工性を簡素化した超高圧クラスプラグイン方式
ドライタイプ 220/345 kV スマートガス中終端接続部を開
発したので報告する。
耐圧
*
± 1,050 kV ± 1,050 kV ± 1,050 kV ± 1,425 kV ± 1,445 kV ± 1,445 kV
各 10 回
各 10 回
各 10 回
各 10 回
各3回
各3回
部分放電:商用周波部分放電特性
A C 耐 圧:商用周波耐電圧特性
Imp.耐圧:雷インパルス耐電圧特性
2.開 発 目 標
220/345 kV スマートガス中終端接続部の開発に際し,機
3.開発品の構造
器取り合い寸法と電気性能に基いて,開発目標を設定した。
(1)機器取り合い寸法
ガス中終端接続部の本体側はエポキシと導体金具の一体
近年,世界的に標準として採用されている IEC60859
構造であり,機器との取り合い寸法は全て IEC60859
の Dry Type Cable Connection Assembly Dimensions
〈Dry type cable connection assembly 245 to 300 kV〉に
に準拠し,機器との取り合い寸法を決めた。
(2)電気性能
適合している。また,ケーブルの接続方式は実績のあるプ
ラグイン方式をベースにフレキシブル性及び大電流化の機
開発品は IEC 規格,台湾 TPC 規格,また日本 JEC 規格
能を持つ構造とすることで,現地での接続作業を簡素化し
の要求性能を満足するマルチ仕様とし,目標電気性能
ている(図 1 参照)。
を表 1 のように設定した。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
26
Vol. 58, No. 1 (2008)
(5)プレモールド絶縁体圧縮装置はスプリング圧縮長調整
機能付きフランジ一体構造圧縮装置の適用により,従
来型と比べ,圧縮力を維持したまま,大幅に簡素化,
エポキシ本体
小型化,軽量化を実現した(図 3 参照)。
620±2
プラグ
シャフトC
電極
プレモールド絶縁体
シャフトB
圧縮装置
縁切り部
シャフトA
従来構造
開発品構造
図 1 開発品構造
図 3 圧縮装置の簡略化
4.開発品の特長
5.電 界 設 計
(1)ブッシング本体の遮へい構造はモールド一体成型のベル
マウスにより,下部遮蔽金具を必要としないため,エポ
電界解析を行い,開発品各部の最適な形状を決定してい
る。本接続部全体の電界解析結果を図 4 に示す。
キシ本体は大サイズケーブルにも対応できる。
(2)内部導体,上部コロナシールドがブッシング本体に一
体構造化しているため部品数が低減され組立作業性が
向上する。
(3)開発品の縁切り部はブッシング本体と絶縁筒が一体モー
ルド成型のため,アダプターや後付けの絶縁筒が不要
となる(図 1 参照)。
(4)開発した大電流対応引留め装置付プラグは引き留めと
通電機能を分離し,通電部を強化している。更に,作
業時端子部の曲げ変形が生じてもフレキシビリティ性
を有しているため,通電引き留め部の性能が低下しな
い(図 2 参照)。
図 2 大電流曲げ対応引留め装置付きプラグ
図 4 電界解析
220/345 kV ガス中終端接続部の開発
27
なお,コロナシールド一体型電極によりトリプルジャンク
ションに電界が集中しないシールド構造とした(図 5 参照)。
トリプルジャンクション
図 6 試験組立状況
図 5 トリプルジャンクション部電界平準化
6.開発試験結果
設定した目標性能に対し,IEC62067 に基づき 220/345 kV
クラスの初期試験及び台湾 TPC345 kV,日本 JEC3408
図 7 開発試験状況
275 kV クラスの参考試験を実施し良好な結果を得た。試験
結果を表 2 に示す。また,試験実施時の状況を図 6,図 7
に示す。
表 2 開発試験結果
項目*
345 kV
中国 GB
台湾 TPC
日本 JEC
試験
220 kV
345 kV
275 kV
結果
部分
190 kV
285 kV
190 kV
330 kV
300 kV
放電
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
≦ 5 pC
AC
318 kV
420 kV
318 kV
440 kV
525 kV
30 分
60 分
30 分
360 分
60 分
耐圧
Imp.
耐圧
*
IEC62067
220 kV
± 1,050 kV ± 1,050 kV ± 1,050 kV ± 1,425 kV ± 1,445 kV
各 10 回
各 10 回
各 10 回
各 10 回
各3回
良
良
良
図 8 長期課通組立状況
部分放電:商用周波部分放電試験
A C 耐 圧:商用周波耐電圧試験
Imp.耐圧:雷インパルス耐電圧試験
7.長期課通電試験
IEC 規格 220 kV クラスの要求に基づいて,本開発品は長
期課通電試験を実施し,長期性能が問題ないことを確認し
た。試験の状況を図 8,図 9 に示す。
図 9 長期課通電試験状況
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
28
8.ま と め
今回 IEC 規格準拠(Dry Type)220/345 kV プラグイン
タイプガス中終端接続部を開発した。初期試験の結果より,
IEC62067 の 220/345 kV 級の性能を有することを確認した。
昭和電線ケーブルシステム㈱
李 鋒(り ほう)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 技術課 主任
電力用機器の設計・開発に従事
今後,345 kV の長期課通電試験及び第三者による PQ テス
トの検証を実施することより,海外超高圧部品市場への拡
昭和電線ケーブルシステム㈱
販が期待される。
高安 央也(たかやす ひさや)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 技術課 主査
電力用機器の設計・開発に従事
参考文献
1)李,高安,瀬間:「IEC 規格準拠 220/345 kV スマートガス中終端
接続部の開発」
,平成 20 年電気学会 B 部門大会,329
2)高安,瀬間:「123/170 kV スマートガス中終端接続部の開発」,
平成 19 年電気学会電力・エネルギー部門大会 3-13,129
昭和電線ケーブルシステム㈱
瀬間 信幸(せま のぶゆき)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 次長
電力用機器の設計・開発に従事
Vol. 58, No. 1 (2008)
22 kV 固体絶縁開閉装置用絶縁チューブの開発
29
22 kV 固体絶縁開閉装置用絶縁チューブの開発
Development of Insulating Tube for 22 kV Solid Insulated Switchgear
笹 森 健 次*
松 田 大 二*
香 山 治 彦*
Kenji SASAMORI
Daiji MATSUDA
Haruhiko KOHYAMA
荻島みゆき
今西 晋
新舘 均
長谷川尚也
Miyuki OGISHIMA
Shin IMANISHI
Hitoshi SHINTATE
Naoya HASEGAWA
22 kV 固体絶縁開閉装置用ゴム母線について開発を行い良好な性能を有することを確認した。本製品はエポ
キシ絶縁物との界面に平面突き合わせ構造を適用しており,これらの設計の妥当性を確認するため,面圧シミュ
レーション等の手法を用いて検討を行った。
We have developed the high-performance insulating tube for 22 kV Solid Insulated Switchgear. Since the interface profile between the developed product and epoxy bushing was a vertical flat surface, we performed various verifications to
obtain the adequate insulation performance.
1.は じ め に
絶縁栓
エポキシ絶縁物
エポキシ絶縁物間距離
22 kV 固体絶縁開閉装置(以下 SIS と記載)の更新に伴
面圧シミュレーション
範囲
い,使用環境に適合した SIS 用ゴム母線の開発を行った。
開発品の絶縁チューブおよび絶縁カバーの界面は平面突き
合わせ構造が必要なため,面圧シミュレーションなどの手
法を使って検証を行った。その結果,十分な性能を有する
ことを確認したので報告する。
絶縁チューブ
2.製 品 概 要
今回 22 kVSIS ゴム母線の絶縁チューブおよび絶縁カバー
抑え金具
絶縁カバー
図 1 22 kVSIS ゴム母線
について開発を行った。
本開発品はエポキシ絶縁物間を接続する導体を絶縁する
EP ゴム製の絶縁チューブと,エポキシ絶縁物の端部の導
表 1 使用環境および条件
体を絶縁する EP ゴム製の絶縁カバーである。
絶縁チューブおよび絶縁カバーは図 1 に示すようにエポ
キシ絶縁物と EP ゴムの平面を突き合わせ,抑え金具で界
面に圧力をかけることにより絶縁性能を得ている。
本製品の使用環境を表 1 に,仕様を表 2 に示す。
* 三菱電機株式会社
項 目
内 容
使用環境
屋内仕様
エポキシ絶縁物間距離
約 530 mm
最高使用温度
導体温度 80 ℃
周囲温度 Max 40 ℃
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
30
表 2 製品仕様
4.1
項 目
内 容
種 類
絶縁チューブ,絶縁カバー
商用周波
耐電圧特性
60 kV / 1 分
雷インパルス
耐電圧特性
± 150 kV / 各 3 回
商用周波
部分放電特性
24 kV / 5 pC 以下
Vol. 58, No. 1 (2008)
面圧の確認
面圧についてシミュレーションを行い締め代を算出し
た。また実機で測定を行ったところシミュレーションとほ
ぼ同等の結果が得られた。
①シミュレーション
抑え金具の金具締込寸法(締め代)を求めるために,図 1
の点線で囲った範囲の面圧を計算した。結果を図 4 に示す。
シミュレーションの結果,締め代 2 mm で面圧判定値の
0.2 MPa1)となった。
3.電気絶縁設計
抑え
金具
各部の構造および寸法を最適なストレスを考慮して決定
した。絶縁チューブおよび絶縁カバーの電界解析結果を
エポキシ
絶縁物
図 2,図 3 に示す。
絶縁
チューブ
絶縁物
導体
絶縁チューブ
①導体
図 4 面圧シミュレーション結果例
②実測結果
②遮へい
図 5 に示す治具を製作し,絶縁カバーと組み合わせて
③ゴム界面
締め代と面圧の測定を行った。測定方法を図 5 に,結果を
図 6 に示す。
図 2 絶縁チューブの電界解析
圧力
絶縁物
絶縁カバー
金属板
①導体
金属パイプ
抑え金具
導体
アクリル板
②遮へい
図 5 測定方法
③ゴム界面
0.45
図 3 絶縁カバーの電界解析
0.40
4.界面絶縁設計
今回の製品の絶縁ゴム−エポキシ絶縁物界面(以下ゴ
圧力(MPa)
0.35
0.30
0.25
0.20
ム−エポキシ界面と表記)は,エポキシ絶縁物と EP ゴム
0.15
の平面を突き合わせ,抑え金具で界面に圧力をかけること
0.10
により絶縁性能を得ている。
このため,抑え金具締め代と面圧,界面の残留空気の関
係をはじめ,ゴムの劣化特性,界面欠陥による部分放電の
発生などの検証を行った。
0.05
0.00
0
0.5
1
1.5
2
2.5
締め代(mm)
図 6 締め代と圧力の関係
3
3.5
4
22 kV 固体絶縁開閉装置用絶縁チューブの開発
4.2
31
界面状況の確認
荷重
界面の状況を把握するために,図 7 に示すようにエポキシ
絶縁物を模擬したアクリル板を製作し界面観察を行った。
試験の結果,締め込み直後界面に存在したボイドは 30 分
放置すれば消えることを確認した。
ゴム試料
測定装置
観測方向
図 9 応力緩和試験
表 3 応力緩和の変化
アクリル板
抑え金具
温 度
初 期
30 年後
残存率
65 ℃
551 N
527 N
95 %
80 ℃
496 N
348 N
70 %
80 ℃で使用した場合には,30 年後の残存率は 70 %程度
になると推測される。界面の性能は一旦良好な界面が形成
されると界面圧力がほぼゼロになっても絶縁破壊値は低下
しない2)。
以上のことから本製品に適用する EP ゴムは実用上十分
図 7 アクリル板試験
な性能を有している。
5.実機の特性
4.3
部分放電特性の確認
表 4 に示す開発試験を行い性能を検証した。
次に盤間距離および締め代を変化させて部分放電測定を
行った。試験回路を図 8 に示す。
初期試験,長期検証および残存性能において要求性能を
有していることを確認した。長期試験状況を図 10 に示す。
試験の結果,締め代を 2 mm 以上として 0.2 MPa の面圧
がかかれば 45 kV/1 分で検出感度以下の部分放電性能を得
られることが分かった。
絶縁チューブ
ダミー試料
絶縁台
通電トランス
検出抵抗
部分放電
測定装置
図 10 課通電試験
図 8 試験回路
6.まとめ
開発した 22 kVSIS 用の絶縁チューブおよび絶縁カバー
4.4
材料の応力緩和特性
応力緩和特性を把握するために図 9 に示すφ 30 mm,
12.5 mm 厚の EP 絶縁ゴム試料を用い,圧縮した状態で恒
温槽に入れ応力の時間変化を測定した。温度条件は 65 ℃,
80 ℃,100 ℃,135 ℃とした。
試験の結果を表 3 に示す。
について性能を検証した。性能検証の結果は以下の通りで
ある。
①絶縁性能:運転電圧,耐電圧値に対して十分な性能であ
ることを確認した。
②面圧設計:締め代を 2 mm 以上にすれば 0.2 MPa の面圧
となり,十分な性能が得られることが分かった。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
32
Vol. 58, No. 1 (2008)
表 4 開発試験
試験項目
初期
検証
長期
試験条件
結 果
絶縁チューブ
絶縁カバー
商用周波部分放電試験
24 kV / 5 pC 以下
良
良
商用周波耐電圧試験
60 kV / 1 分
良
良
雷インパルス耐電圧試験
± 150 kV / 各 3 回
良
良
一定加熱試験
80 ℃ / 96 時間
良
良
ヒートサイクル試験
− 5 ℃ / 24 h ←
→ 80 ℃ / 24 h
× 3 サイクル
良
良
長期課通電試験
25 kV
導体温度 80 ℃←
→常温× 30 サイクル
良
良
検証
参考文献
1)新井,相原,安藤,伊藤,桑木,河野:「275 kV CV ケーブル用
プレハブ接続部の開発」
,昭和電線レビュー Vol. 43,No. 24
2)
「絶縁界面の評価と改質技術」
,電気学会技術報告 第 948 号
22 kV 固体絶縁開閉装置用絶縁チューブの開発
三菱電機株式会社 系統変電システム製作所
笹森 健次(ささもり けんじ)
開閉機器製造部 技術担当部長
66 ∼ 1000 kV ガス絶縁開閉装置
(GIS)の開発設計業務に従事
三菱電機株式会社 系統変電システム製作所
松田 大二(まつだ だいじ)
開閉機器製造部 遮断器設計課 専任
発電主回路開閉装置
(GMCS)および
固体絶縁開閉装置
(SIS)の開発設計業務に従事
三菱電機株式会社 系統変電システム製作所
香山 治彦(こうやま はるひこ)
開閉機器製造部 遮断器設計課 課長
72 ∼ 1100 kV ガス遮断器(GCB)の開発設計業務に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
荻島みゆき(おぎしま みゆき)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 主査
電力用機器の設計・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
今西 晋(いまにし しん)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 主任
電力用機器の設計・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
新舘 均(しんたて ひとし)
エネルギーシステムユニット
電機システム機器部 技術課 課長
電力用機器の設計・開発に従事
㈱エクシム
長谷川尚也(はせがわ なおや)
電力機器部 配電技術課 課長
電力用機器の設計・開発に従事
33
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
34
Vol. 58, No. 1 (2008)
環境配慮型航空照明用ゴム被覆絶縁変圧器の開発
Development of Eco-material Rubber Mold Insulating Transformer
for Airport Lighting Circuits
田中菜穂子
吉田 伸
岡下 稔
Nahoko TANAKA
Shin YOSHIDA
Minoru OKASHITA
池内 忍
谷本 元
Shinobu IKEUCHI
Gen TANIMOTO
産業界において,環境に優しい製品が必要とされていることから,当社では,環境負荷の少ない製品,資源
リサイクルに配慮した製品を積極的に開発している。そこで,我々は,航空照明用部材に用いることが可能な
耐水性に優れた非鉛材料を開発した。また,部材を構成するケーブル,プラグ・レセップ,トランスは,それ
ぞれ配合検討と試作評価を行った結果,従来の鉛含有材料と同等の特性を示した。
In the industry, since the environment-friendly product is needed, we are developing positively the product with few
environmental impacts, and the product which considered resource recycling. Then, we have developed a non-lead material excellent in water resistance which can be used for the component for Airport Lighting Circuits. Moreover, the cable,
plug-receptacle and the transformer which constitute a component have showed that they were characteristics equivalent to
the conventional lead content material by the result of having performed combination examination and trial production
evaluation, respectively.
2.航空照明部材について
1.ま え が き
地球環境問題への関心が高まる中で,RoHs 指令などの
2.1
構成
ような環境や人体に影響を及ぼす化学物質に対する法規制
航空照明用ゴム被覆絶縁変圧器は,空港の滑走路,誘導
が施行されている。電線業界においても,製品の原材料・
路,進入路などの多数の灯火設備,照明設備に使用されて
部品などについて,環境への負荷が少ないものを優先して
いる。この設備は,図 1 に示すように直列点灯方式による
調達するグリーン調達活動への取り組みが急速に進んでお
照明回路であり,使用されるゴム被覆絶縁変圧器は,1 次側
り,それに伴い,原材料を供給する材料メーカーサイドに
が定電流調整器を電源とする高圧回路に多数直列に配線さ
おいても,環境負荷物質を使用しない材料への生産移行も
れ,変圧器 2 次側が灯器回路に接続されている。したがっ
進んでいる。
て,灯器が高圧から絶縁され電球の断線が生じても他の灯
一方で,航空照明用部材は過酷な環境下で使用されるこ
とから,厳しい耐水性が要求されており,その特性を満足
させるために鉛系配合剤を使用せざる得ない状況にあった。
器は正常に点灯し,同一の光度が得られることとなる。
ゴム被覆絶縁変圧器は,鉄心となるリングコアまたはカッ
トコアとホルマール線による巻線により構成された変圧器
そこで,当社では,地球環境への負荷を低減した環境配
本体と先端をあらかじめゴムモールドしたプラグまたはレ
慮型製品の開発として様々な取り組みを進めるなかで,航
セップ状コネクタを取り付けた配線用リード線(1 次側:
空照明用部材に使用していた鉛含有材料について,耐水性
単心 8 mm2 PN ケーブル,2 次側: 2 心 3.5 mm2 2PNCT ケー
に優れた非鉛材料を開発し,環境配慮型航空照明用部材の
ブル)を接続した後,変圧器の外周に黒色クロロプレンゴ
製品化に成功した。
ムコンパウンド(以下,クロロプレンゴム)を金型を用い
本報では,本部材を開発するにあたり,材料の耐水処方
に関する効果について報告すると共に,本部材を構成する
て完全に加硫被覆して一体化ゴムモールドしたものであ
る。ここで低圧分岐体との接続例を図 2 に示す。
ケーブル,トランス,プラグ・レセップ部分での配合検討お
ゴムモールドした変圧器は完全防水構造を有しているの
よび試作品での各種試験を実施したので合わせて報告する。
で,マンホールやハンドホールへの直接設置,土壌への直
環境配慮型航空照明用ゴム被覆絶縁変圧器の開発
灯器
L
L
L
L
L
L
35
L
L
L
低圧
分岐体
ゴム被覆
絶縁変圧器
定電流
調整器
直列点灯回路(灯器接続例)
図 1 直列点灯回路図
低圧分岐体
表 1 要求性能
試験項目
引張
引張強さ
熱老化
100 ℃× 96 hr
耐油
120 ℃× 18 hr
耐水
70 ℃× 20 日
単位
規格値
MPa
12.7 以上
伸び
%
300 以上
引張強さ残率
%
60 以上
伸び残率
%
60 以上
引張強さ残率
%
60 以上
伸び残率
%
60 以上
吸水率
mg/cm2
10 以下
ゴム被覆絶縁変圧器
図 2 接続例
接埋設や浸水環境下でも十分に耐え,また,若干の外力及
のように,マグネシア(MgO)とクロロプレンゴムより発
び衝撃(コンクリート面より 1.2 m の高さから底部および
生する塩酸(HCl)が反応して,吸水性の強い塩化マグネ
側面を自由落下)に対してもゴムの弾性により電気特性に
シウム(MgCl2)がゴム中に生成されるために図 3 に示すよ
変動を生じない構造となっている。
うに吸水率が大きくなる 1)。したがって,一般的に耐水性が
2.2
ゴム被覆材料について
ゴム被覆絶縁変圧器の材料として使用されているクロロ
求められる場合,耐水性配合には鉛丹などの酸化鉛系の金
属酸化物が最も効果の高い受酸剤として用いられている。
プレンゴムに対しては,表 1 に示すような航空局仕様書に
ここで,従来のような酸化鉛系の受酸剤でもなく,マグ
規定された特性が要求されている。一般的に求められる初
ネシアのような吸水性の強い物質を生成することもない耐
期特性,耐油特性に加えて,重要な特性として耐水性が
水性に有効な受酸剤として,ハイドロタルサイト類化合物
求められる。この耐水性を満たすことによって,本部材
がある。このハイドロタルサイト類化合物は,本質的には
は,先述したような浸水環境下での使用に十分に耐えら
陰イオン交換性を有しており,例えば塩酸の場合,化学構
れるものとなる。
造中にある CO32 −は Cl −によって容易に置換され,そして,
3.材料基礎検討
3.1
塩酸イオンは結晶構造のなかに組み込まれる。
Mg4.3Al2(OH)12.6CO3 ・ mH2O + 2HCl
受酸剤
→ Mg4.3Al2(OH)12.6Cl2 ・ mH2O + H2O + CO2
クロロプレンゴムは基本配合の一つに金属酸化物(マ
グネシア,亜鉛華,鉛丹など)が添加されており,この
このようにして新たに生成する塩素イオン型ハイドロタ
金属酸化物は,酸受容体,耐老化性,加工安全性,加硫
ルサイト類化合物は,水や油に溶けず,また,約 400 ℃の
速度調整などの役目を担っている。金属酸化物として,
温度になるまで組み込まれた Cl −は結晶構造から脱離しな
マグネシア/亜鉛華系を用いると,
いともいわれている。
MgO +2HCl → MgCl2 + H2O
3.2
充填剤
耐水性配合には充填剤についても考慮する必要があり,炭
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
30
30
25
25
Vol. 58, No. 1 (2008)
2
重量変化(mg/cm )
重量変化(mg/cm2)
36
鉛丹(20部)
20
マグネシア(4部)+
亜鉛華(5部)
15
10
5
20
15
10
5
0
0
20
40
60
80
0
100
0
5
10
70℃での浸漬日数(日)
20
25
時間(日数)
図 3 蒸留水での CR ゴムの吸水性
図 5 ハイドロタルサイト+シリカ配合の耐水性
30
75
A:マグネシア(4部)+亜鉛華(5部)
B:A+シリカ
(25部)
C:鉛丹(20部)
A
45
30
15
25
2
60
重量変化(mg/cm )
重量変化(mg/cm2)
15
C
20
15
10
5
B
0
0
20
40
60
80
0
100
0
5
10
70℃での浸浸日数(日)
15
20
25
時間(日数)
図 4 吸水性におよぼす鉛丹と沈降性シリカの影響
図 6 酸化マグネシウム+シリカ配合の耐水性
酸カルシウムを用いると吸水率が大きくなってしまう。ここ
ブル構成材料として考えると,物理的特性や難燃性も不可
で,特殊な充填剤として沈降性微粒子のシリカ充填剤が特異
欠な性質となる。そこで,我々は種々の検討を行った結果,
な耐水性を示す。図 4 に示すように浸漬の初期は吸水率が
ケーブルシースとして求められる全ての特性を満足する材
比較的大きいが,時間の経過とともに徐々に小さくなり一
料を見出すことができた。その特性値を表 2 に示す。
定値になる
3.3
1)2)
。
耐水性
表 2 シース材料特性
先述したとおり,クロロプレンゴムの耐水性配合は,受
酸剤および充填剤について考慮する必要がある。今回,非
項目
鉛材料の開発にあたり,受酸剤にはハイドロタルサイト類
引張
化合物を,また,充填剤にシリカを用いて配合検討を行っ
熱老化*
た。受酸剤と充填剤による耐水性への影響を確認するため
に,70 ℃× 20 日耐水性評価を行った結果を図 5,6 に示す。
耐油**
ハイドロタルサイトとシリカを添加した配合は,初期に
酸化マグネシウムを用いた配合では,耐水性が大きく劣る。
4.ケーブル
4.1
シース材料
一般
MPa
12.7 ≦
17
16
伸び
%
300 ≦
588
519
%
60 ≦
103
101
伸び残率
%
60 ≦
83
72
強さ残率
%
60 ≦
69
86
伸び残率
%
60 ≦
87
94
mg/cm2
10 ≧
10 ≧
10 ≧
−
−
−
34.6
酸素指数
*
**
難燃
強さ残率
耐水性
おいて一時的に若干水分量が増加するが,その後,水分量
が減少して 20 日後では水分量が 5 mg/cm2 となる。一方,
要求値
強さ
100 ℃× 96 hr
120 ℃× 18 hr
4.2
供試ケーブル
上記のような材料選定の結果,最適と考えられる材料を
3 項の検討により,耐水性を満足するためには,受酸剤
用いてケーブルを試作評価した。試作ケーブルの初期特性
としてハイドロタルサイト類化合物,充填剤としてシリカ
を表 3 に示す。一般仕様ケーブルおよび難燃仕様ケーブル
を用いることが有効であることが分かった。しかし,ケー
において,全ての要求特性を満足する。
環境配慮型航空照明用ゴム被覆絶縁変圧器の開発
表 3 5000 V PN1c × 8 mm2 ケーブル初期特性
項目
耐電圧試験
導体抵抗
最小絶縁抵抗
表 4 プラグ・レセップ材特性表
要求値
一般
難燃
項目
−
17000 V/10 分
良
良
引張
Ω/km
2.41 ≧
良
良
M Ω・ km
900
良
良
シース
強さ
MPa
12.7 ≦
19
19
引張
伸び
%
300 ≦
604
531
シース
強さ残率
%
60 ≦
100
104
熱老化*
伸び残率
%
60 ≦
67
65
シース
強さ残率
%
60 ≦
70
93
**
伸び残率
%
60 ≦
75
87
JIS 難燃性(水平)
−
残炎 60 秒以内
0秒
0秒
垂直トレイ
−
上端まで燃焼しない
−
合格
*
**
要求値
熱老化*
耐油**
*
MPa
12.7 ≦
14
伸び
%
300 ≦
552
強さ残率
%
60 ≦
94
伸び残率
%
60 ≦
72
強さ残率
%
60 ≦
80
伸び残率
%
60 ≦
94
mg/cm2
10 ≧
10 ≧
100 ℃× 96 hr
120 ℃× 18 hr
表 5 供試プラグ・レセップ初期特性
100 ℃× 96 hr
120 ℃× 18 hr
項目
要求値
耐電圧試験
絶縁抵抗
4.3
試験結果
強さ
耐水性
**
耐油
37
17000 V/10 分
良
M Ω/1 組
25000 ≦
3200000
−
17000 V/10 分
良
耐水試験後耐電圧***
難燃性
***
難燃仕様の場合に求められる特性として IEEE std.383 に
試験結果
−
耐水試験 70 ℃× 20 日
基づく垂直トレイ燃焼試験を実施した。試験中の状況を図 7
に示す。ケーブルは十分な難燃性を示し規格に合格した。
6.トランス
6.1
トランス用シース材料
ケーブルシース材と同様の手法により配合検討を行った
結果,トランスのシース材として求められる全ての特性を
満足することができた。その特性表を表 6 に示す。
表 6 トランス材特性表
項目
要求値
引張
熱老化*
耐油**
MPa
12.7 ≦
18
伸び
%
300 ≦
766
強さ残率
%
60 ≦
95
伸び残率
%
60 ≦
85
強さ残率
%
60 ≦
91
伸び残率
%
60 ≦
95
mg/cm2
10 ≧
10 ≧
耐水性
*
**
100 ℃× 96 hr
120 ℃× 18 hr
6.2
図 7 垂直トレイ試験状況
試験結果
強さ
供試トランス
上記のような材料選定の結果,最適と考えられる材料を
用いてトランス(LT-200)を製造した。その初期特性を表 7
5.プラグ・レセップ
5.1
に示す。非鉛材料を用いたトランスにおいて全ての要求特
プラグ・レセップ用シース材料
ケーブルシース材と同様の手法により配合検討を行った
結果,プラグ・レセップのシース材として求められる全て
表 7 供試トランス初期特性【周波数 50Hz】
項目
2 次側電流
の特性を満足することができた。その特性表を表 4 に示す。
5.2
供試プラグ・レセップ
上記のような材料選定の結果,最適と考えられる材料を
用いてケーブル付きプラグ(P-1A)とケーブル付きレセッ
試験結果
A
6.53 ∼ 6.67
6.62
短絡
A
6.6 ∼ 7.1
6.7
%
95 ≦
99.6
91.4
1 次側力率
効率
2 次側開放時
プ(P-1B)を試作評価した。プラグ・レセップ部分での評
価結果を表 5 に示す。非鉛材料を用いたプラグ・レセップ
において全ての要求特性を満足する。
要求値
定格負荷
極性
%
90 ≦
1 次電圧実効率
V
140 ≧
130
2 次電圧波高値
Vp
1000 ≧
540
開放電力損失
W
40 ≧
32
温度上昇
℃
55 ≧
38
−
減極性
良
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
38
性を満足する。
昭和電線ケーブルシステム㈱
7.ま と め
今回,環境配慮型ゴム被覆絶縁変圧器の製品化に向け,
耐水性に優れた非鉛材料の開発を目標とし,受酸剤および
田中菜穂子(たなか なほこ)
技術開発センター 基盤技術グループ
主任
電線・ケーブルの材料開発に従事
充填剤の選定,配合検討からケーブル,プラグ・レセップ
およびトランスの試作評価結果を述べたが,これらをまと
昭和電線ケーブルシステム㈱
めると以下のとおりである。
吉田 伸(よしだ しん)
技術開発センター 基盤技術グループ
主査
電線・ケーブルの材料開発に従事
・ 十分な耐水特性の非鉛シース用クロロプレンゴム配合
を確立することができた。
・ ケーブル,プラグ・レセップおよびトランスの試作お
よび評価結果より良好な特性を有することがわかった。
今後,今回開発した環境配慮型ゴム被覆絶縁変圧器が環
境に優しい製品として,広く使用されることが期待される。
参考文献
昭和電線ケーブルシステム㈱
岡下 稔(おかした みのる)
技術開発センター 基盤技術グループ
主査
電線・ケーブルの材料開発に従事
1)R.M.MURRAY, D.C.THOMPSON :「ネオプレン」p.71
2)郷田兼成:「合成ゴム加工技術全書 クロロプレン」p.58
昭和電線ケーブルシステム㈱
池内 忍(いけうち しのぶ)
電線機器部 機器電材課
主査
航空照明用部材の開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
谷本 元(たにもと げん)
エネルギーシステムユニット
技術・品質保証部 技術・品質保証 2 課
主査
産業用ケーブルの開発及び設計業務に従事
Vol. 58, No. 1 (2008)
低摩擦クマゼミ防護型光ドロップケーブルの開発
39
低摩擦クマゼミ防護型光ドロップケーブルの開発
Development of Low Friction and Cicada Protective Optical Drop Cable
田邉賢吾
坂本慶一
Kengo TANABE
Keiichi SAKAMOTO
大貫 章
井上健一
光地伸明
Akira OONUKI
Kenichi INOUE
Nobuaki KOUCHI
近年,FTTH サービスの普及に伴い光ドロップケーブルを既設管路内に通線させる必要性が増加している。
このとき光ドロップケーブルの摩擦抵抗が大きいと通線が困難となるため,ケーブルの低摩擦化および高強度
化が要求されている。一方,架空に布設した光ドロップケーブルにクマゼミが産卵管を突き刺し,内部の光ファ
イバを断線させてしまう被害が西日本の地域において頻発している。
これらの課題を解決するため,低摩擦化・高強度化した新規のノンハロゲンシース材料を開発し,布設作業
性を向上させるとともにクマゼミによる産卵管の侵入を防止する光ドロップケーブルを開発した。
In recent years, the situation of deploying optical drop cables into pipelines has been increased because of the growth of
the FTTH market. When the cable friction is high, it is hard to install the cable therefore the market demands low friction
and damageable cable. Also in Western Japan where cicada inhabit, there are reports on optical fiber breaks, caused by
cicada sticking ovipositor into the cable for laying eggs.
In order to resolve these problems, we have developed the new low friction damageable sheath, and proofed that it is
useful for deploying and protecting from cicada ovipositor.
1.は じ め に
ケーブルを実現するため,表 1 に示す項目を開発目標と
した。
近年,FTTH サービスの普及に伴い,ビルや一般住宅な
どへの光ファイバの引き込み配線が増加している。光ファ
表 1 低摩擦クマゼミ防護型光ドロップケーブルの開発目標
イバの引き込みは一般的には細径かつ軽量である光ドロッ
開発目標
プケーブルが使用されるが,宅内に引き込む場合,既設の
光ドロップケーブルの動摩擦係数が従来の半分以下である
こと
低摩擦性
管路に通線させたり曲がりの多い場所を通線させる必要が
あり,ケーブルの低摩擦化および高強度化の要求が出てき
ている。
一方,西日本を中心としたクマゼミの生息域において,
架空に布設した光ドロップケーブルへクマゼミが枯れ木の
高強度性
光ドロップケーブルの摩耗量が従来の半分以下であること
クマゼミ防護性
シース材料がクマゼミの産卵管の侵入を防護する程度に硬
いこと
難燃性
長期信頼性
伝送特性・機械特性
60°
傾斜試験に合格すること
各種耐候性試験に合格すること
従来の光ドロップケーブルと同等であること
枝と誤認識し産卵管を突き刺し,内部の光ファイバを傷つ
け断線させてしまう被害が報告されている 1)。
これらの課題を解決するため,我々は光ドロップケーブ
2.1
配合検討
ルのシース材料の配合を見直し,低摩擦化・高強度化を実
目標としたケーブル特性を得るためには,現行のシース
現すると共にクマゼミの産卵管が刺さり難い新規のノンハ
材料に滑剤を添加する等の表面改質のみでは不十分であ
ロゲンシース材料を開発した。本稿では新規のシース材料
る。低摩擦・高強度なシース材料を得るには,材料表面の
および光ドロップケーブルの特性について述べる。
平滑性を改善するとともに材料自身の物性を高める必要が
2.シース材料の検討
従来の光ドロップケーブルとしての機能を満足しつつ,
低摩擦・高強度およびクマゼミ防護性を有する光ドロップ
ある。これには,結晶化度が高く分子配向性の大きいベー
スポリマーを選定し,シース材料の硬度を高めることが有
効と考えられる。ベースポリマーとして高密度ポリエチ
レン(HDPE),超高分子量ポリエチレン(UHMWPE),
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
40
Vol. 58, No. 1 (2008)
表 2 シース材料物性値
ベースポリマー
引張伸び(%)
引張強度(MPa)
ショア D 硬度(HDD)
密度(g/cm3)
動摩擦係数
試験条件
―
JIS K 7113
JIS K 7113
JIS K 7215
JIS K 7112
JIS K 7125
現行材料
LDPE 系
670
13
43
1.3
0.34
材料 A
LDPE 系
610
14
50
1.3
0.31
材料 B
UHMWPE + PE 系
570
15
56
1.2
0.10
材料 C
PP + PE 系
560
15
60
1.4
0.17
材料 D
HDPE 系
670
18
61
1.1
0.14
材料 E
HDPE 系
740
21
62
1.0
0.14
1.0
ポリプロピレン(PP)をそれぞれ選択し,材料物性を低下
0.9
た。紫外線吸収剤,酸化防止剤,加工助剤,安定剤その他
0.8
添加剤は必要に応じて配合した。
0.7
表 2 に配合検討を行ったシース材料の物性値を示す。現
行材料と比較してシース材料 A ∼ E は引張伸びを大きく低
下させることなく高い引張強度が得られた。特に材料 B ∼
E は高い硬度(HDD)を持つとともに材料シートでの動摩
応力(相対値)
させないように配慮しながらノンハロゲン難燃剤を配合し
0.6
0.5
0.4
0.3
擦係数が現行材料の半分以下となった。
2.2
現行材料
材料A
材料B
材料C
材料D
材料E
0.2
クマゼミ防護模擬試験
0.1
新規に配合したシース材料がクマゼミの産卵管の侵入に
0.0
0
対する防止効果を有するか検証するため,クマゼミの産卵
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
変位量(mm)
管の挿入を模擬した試験を行った。図 1 に示すように厚さ
2.0 mm の材料シートにクマゼミの産卵管を模擬した直径
図 2 クマゼミ模擬試験結果
1.0 mm のニードルを押し当て,変位量に対する応力をロード
セルにて測定した。
図 2 に測定結果を示す。硬度(HDD)の高いシース材料
ほど変位量に対する応力が大きかった。
力と仮定すると,各シース材料の変位量は図 3 のようにな
る。硬度の高い材料ほど変位量が小さくなり,硬度が 56 以
過去の屋外におけるクマゼミ布設試験結果から現行材料
上であるシース材料 B ∼ E は 0.42 mm 以下となった。これ
を使用した光ドロップケーブルのクマゼミによる刺し傷最
は光ドロップケーブル断面において光ファイバからシース
大深さは 1.01 mm と報告されている。現行材料の変位量が
表面までの距離が少なくとも 0.5 mm 以上あることから,
1.01 mm のときの荷重をクマゼミが産卵するときの最大応
クマゼミの産卵管の侵入による光ファイバへの損傷を十分
低減できることを示唆する。
ロードセル
1.20
−2.8181
y=38658x
2
R =0.9369
φ1.0 mmニードル
t=2.0 mm材料シート
変位量(mm)
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
0.00
35
40
45
50
55
硬度(HDD)
図 1 材料シートを用いたクマゼミ模擬試験
図 3 一定応力下の硬度と変位量の関係
60
65
低摩擦クマゼミ防護型光ドロップケーブルの開発
2.3
押出成形試験
41
ここで,μは動摩擦係数,FD は引き抜き力,FP は法線方
各シース材料の押出成形評価を行った。
向の荷重(重り+固定盤の質量)である。
表 3 に結果を示す。硬度(HDD)の高い材料ほど平均分
子量が高く吸熱量が大きいために押出直後の加工歪が大き
固定ケーブル
い傾向であった。また,シース材料 C および E については
良好な外観を得るために成形温度を高くする必要があっ
被測定ケーブル
た。これは光ドロップケーブルを製造する上で光ファイバ
表層の揮発成分の揮散を促進させ,シース材料と光ファイ
バの界面を悪化させる可能性がある。
荷重FP
表 3 押出成形評価結果
温度の変更
加工歪
外観
材料 A
不要
小さい
良好
材料 B
不要
やや大きい
良好
材料 C
必要
やや大きい
良好
材料 D
不要
やや大きい
良好
材料 E
必要
やや大きい
良好
ロードセル
引き抜き力FD
図 5 動摩擦係数測定方法
3.ケーブル特性の評価
新規に配合したシース材料 A ∼ E の材料評価結果から,
低摩擦性,クマゼミ防護性,押出成形性に優れたシース材
測定結果を表 4 に示す。表中の値は,現行材料の動摩擦
係数を 1 としたときの相対値である。シース材料 B および
D は共に現行材料の 1/3 以下の動摩擦係数であった。
料 B および D について実際に光ドロップケーブルを作製
し,ケーブル特性を評価した。光ファイバ心線には許容曲
表 4 動摩擦係数測定結果
げ半径 R15 mm 対応光ファイバ心線を使用し,図 4 に示す
動摩擦係数(相対値)
ような構造で 4 心テープ心線を 2 枚収納した 8 心光ドロップ
現行材料
ケーブルを製作した。寸法は従来の光ドロップケーブルと
材料 B
0.30
同じく 2.0 × 6.0 mm とした。
材料 D
0.29
支持線部
ケーブル部
3.2
1.00
高強度性
ケーブルの強度を検証するため,JIS C 3005 に準拠した
摩耗試験を実施した。図 6 に示す方法で支持線部を切り離
したケーブルの先端に 19.6 N の荷重を加え,60 rpm で回
転する砥石に接触させ,1000 回転後の摩耗量を測定した。
φ1.2 mm銅線
φ0.5 mmアラミドFRP
4心テープ心線
被測定ケーブル
図 4 低摩擦 8 心光ドロップケーブル構造図
3.1
低摩擦性
管路へのケーブルの通線性を模擬するため,図 5 に示す
方法で光ドロップケーブル同士の動摩擦係数を測定した。
支持線部を切り離した被測定ケーブルを同一ケーブルから
切り出した固定ケーブルで挟みこみ,被測定ケーブルをロー
ドセルにて引張速度 100 mm/min で引き抜いたときの応力
を測定した。動摩擦係数は(1)式より算出した。
FD
μ=─ …………………………………………………
(1)
FP
砥石
直径:350 mm
粒度:36
回転速度:60 rpm
図 6 摩耗試験方法
荷重19.6 N
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
42
Vol. 58, No. 1 (2008)
表 6 ドロップケーブル布設実験結果
2005 年度
2006 年度
2007 年度
布設場所
2005.8.2 ∼ 2005.9.15
滋賀県東近江市
2006.8.14 ∼ 2006.9.11
シース材料
静岡県掛川市
2007.7.27 ∼ 2007.9.21
滋賀県東近江市
変形数*(箇所)
傷数*(箇所)
最大傷深さ
(mm)
光ファイバ断
線数(箇所)
現行材料
42
22
22
未測定
0
現行材料
116
133
35
1.01
1
材料 B
42
10
3
0.39
0
材料 D
42
7
1
0.38
0
現行材料
48
17
7
0.70
0
材料 D
20
1
0
0.24
0
ここで「変形」とはクマゼミによる試し刺しを指し,
「傷」とはφ 0.3 以上の刺し傷を指す
また,
「傷深さ」とは傷先端から外被表面までの最短距離を指す(写真 1 参照)
測定結果を表 5 に示す。表中の値は,現行材料の摩耗量
を 1 としたときの相対値である。シース材料 B および D は
現行材料と比較して摩耗量が 1/4 以下であった。
表 5 摩耗試験結果
動摩擦係数(相対値)
*
刺し傷数
総布設長
(m)
現行材料
1.00 *
材料 B
0.22
材料 D
0.06
300 回転で FRP が露出したため,1000 回転相当は計算により算出
λ=1.55 μm伝送損失変動量(dB/km)
*
布設時期
0.1
0.08
8心分の損失変動量平均値と
最大,最小の範囲
0.06
0.04
0.02
0
−0.02
−0.04
−0.06
−0.08
−0.1
20℃
−30℃
70℃
−30℃
70℃
−30℃
70℃
20℃
70℃
20℃
温度(℃)
3.3
クマゼミ防護性
図 7 シース材料 B の損失温度特性
状況を検証した。表 6 に結果を示す。硬度(HDD)の高い
シース材料 B および D のクマゼミによる刺し傷数(変形
数+傷数)は現行材料と比較して圧倒的に少なかった。ま
た,硬度が高いシース材料ほど(材料 D >材料 B)刺し傷
数は少ない傾向が見られた。最大傷深さについても現行材
料が 1.01 mm であったのに対して硬度の高いシース材料 B
および D は 0.39 mm 以下であり,十分効果があることを確
認した。
λ=1.55 μm伝送損失変動量(dB/km)
2005 年から 2007 年のクマゼミが出現する期間に実際に
光ドロップケーブルを樹木に布設し,クマゼミによる被害
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
−0.02
−0.04
−0.06
−0.08
−0.1
20℃
−30℃
70℃
A’
−30℃
70℃
−30℃
温度(℃)
刺し傷跡
図 8 シース材料 D の損失温度特性
傷深さ
表 7 伝送特性・機械特性の評価結果
A
観察面
A
写真 1 クマゼミによる刺し傷跡
3.4
条 件
材料 B
材料 D
λ= 1.31 μm
0.35 dB/km 以下
0.35 dB/km 以下
λ= 1.55 μm
0.25 dB/km 以下
0.25 dB/km 以下
曲げ特性
R=30 mm
(支持線部なし)
0.01 dB 以下
0.01 dB 以下
側圧特性
2000 N/50 mm
(支持線部なし)
0.01 dB 以下
0.01 dB 以下
0.01 dB 以下
0.01 dB 以下
A’
その他の特性
ケーブルの伝送特性,機械特性およびシース材料耐候性
についてそれぞれ評価した結果を図 7,図 8,表 7 および表
8 に示す。全ての評価において良好な特性が得られた。
伝送特性
しごき特性 135°
R = 250 mm/196 N
捻回特性
± 90°
/m
0.01 dB 以下
0.01 dB 以下
衝撃特性
300 g × 1 m
0.01 dB 以下
0.01 dB 以下
難燃特性
JIS C 3005 60 °
傾斜試験
自己消火
自己消火
低摩擦クマゼミ防護型光ドロップケーブルの開発
表 8 シース材料の耐候性評価結果
加熱老化
耐紫外線
90 ℃× 96 hrs
SUV20 年
耐水性
昭和電線ケーブルシステム㈱
70 ℃× 120 hrs
試験条件
引張強度
残率(%)
伸び残率
(%)
相当劣化後
引張強度
残率(%)
伸び残率
(%)
材料 B
80 以上
80 以上
亀裂なし
80 以上
80 以上
材料 D
80 以上
80 以上
亀裂なし
80 以上
80 以上
田邉 賢吾(たなべ けんご)
通信システムユニット 技術品質保証部
技術品質保証課 主任
通信ケーブルの研究・開発に従事
SUV :スーパー UV テスター
昭和電線ケーブルシステム㈱
4.ま と め
坂本 慶一(さかもと けいいち)
通信システムユニット 技術品質保証部
技術品質保証課 主幹 通信ケーブルの研究・開発に従事
光ドロップケーブルの低摩擦化・高強度化を目的に,硬
度(HDD)の高いノンハロゲンシース材料を新規に開発し
た。開発したシース材料を光ドロップケーブルへ適用した
結果,ケーブルとしての機能を有するとともに低摩擦性・
高強度性に優れることを確認した。同時にクマゼミの産卵
管に対する防止効果も持つことを検証試験の結果から確認
昭和電線ケーブルシステム㈱
大貫 章(おおぬき あきら)
通信システムユニット 通信ケーブル部
製造課 主査 通信ケーブル事業の開発業務に従事
した。
昭和電線ケーブルシステム㈱
参考文献
1)田中 浩,他: IEICE Technical Report OFT2006-75 (2007-03)
井上 健一(いのうえ けんいち)
通信システムユニット 技術品質保証部
技術営業課 通信ケーブルの設計・開発に従事
昭和電線ケーブルシステム㈱
光地 伸明(こうち のぶあき)
技術開発センター 基盤技術グループ
主任
高分子材料の研究・開発に従事
43
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
44
Vol. 58, No. 1 (2008)
LAN 用ツイストペアケーブルの現状と今後の展望
Present Situation and Future of Twisted Pair Cable for LAN
河田正義
浦 卓也
亀井 諭
Masayoshi KAWATA
Takuya URA
Satoru KAMEI
現在,インターネットのブロードバンド(高速・大容量通信)が一般化し,更なるネットワークの高速化が
急ピッチで進められている。そのため,LAN(Local Area Network)配線システムは,機能アップに十分対
応できることが要求され,高速データ伝送用として開発された LAN 用ツイストペアケーブルは,広範囲にわ
たって使用されている。本報では,この LAN 用ツイストペアケーブルの現状と今後の展望について報告する。
A broadband (high speed and mass communication) of the Internet generalizes, and the further speed-up of the network
is advanced rapidly now. It is demanded that LAN (Local Area Network) cabling system be able to correspond enough to
the enhance. Therefore, the twisted pair cable for LAN developed for a high speed data transmission is used in various
places. In this report, the current state of the twisted-pair cable for LAN and the view in the future are described.
1.は じ め に
また,LAN 伝送規格は,IEEE(米国電気電子技術者協
会)内に置かれた,LAN と MAN(Metropolitan Area
LAN 用ツイストペア(メタル)ケーブルは,同じ LAN
Network)の標準化推進を目的とする IEEE 802 委員会が
で使用する光ファイバケーブルと比較して,布設工事や保
あり,IEEE 802.3 ワーキンググループにて,CSMA/CD 方
守管理が容易で,しかも低コストであるため,広範囲にわ
式と呼ばれる LAN 伝送方式の標準化を行なっている。
たって使用されている。LAN 用ツイストペアケーブルに
3.伝送速度と規格の進歩
関する規格は,現在も進歩し続けており,伝送速度により
求められる性能も様々である。
2 章以降では,LAN 用ツイストペアケーブルの規格動向
や,種類・用途等,現状と今後の展望について説明する。
高速・大容量化の市場ニーズの高まりと共に,CSMA/CD
方式は,データ伝送速度を向上させるため,次々に新しい
標準を制定し,ケーブルと共に進歩してきた(表 1)。
2.L A N 規 格
LAN 配線規格には,次の 3 つの規格が存在し,ほぼ同等
表 1 伝送規格と適用ケーブル
伝送規格
伝送速度
の内容となっている。
(1)ISO/IEC 11801
10 Mbps
構内情報配線に関するケーブル規格や施工方法等を定め
適用規格
IEEE 802.3
10BASE-5
IEEE 802.3a
10BASE-2
IEEE 802.3i
た国際規格。単一又は複数のビルから構成される構内で使
用する情報配線システムが適用範囲。
(2)JIS X 5150
ISO/IEC 11801 を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式
を変更することなく作成した日本工業規格。
名称
適用
ケーブル
同軸
10BASE-T
Cat.3
100BASE-T4
Cat.3
100 Mbps
IEEE 802.3u
1000 Mbps
(1 Gbps)
IEEE 802.3ab
1000BASE-T
Cat.5e
TIA/EIA-854
1000BASE-TX
Cat.6
10 Gbps
IEEE 802.3an
100BASE-TX
10GBASE-T
Cat.5
Cat.6A
(3)ANSI/TIA/EIA-568-B
商用ビル通信配線に関するケーブル規格や施工方法等を
表 1 の通り,伝送速度は,10 Mbps,100 Mbps,1000 Mbps
定めた米国規格。B.1 ∼ B.3 の 3 つに分かれており,B.1 は
(1 Gbps),10 Gbps というように,10 倍ずつ高速化されて
一般的要求事項,B.2 はツイストペア配線コンポーネント
きた。それに伴い,適用ケーブルも高速化に対応するため,
の標準,B.3 は光ファイバ配線コンポーネントの標準となっ
要求される様々な電気特性について高周波まで厳しく規定
ている。
されている(表 2)。
LAN 用ツイストペアケーブルの現状と今後の展望
45
表 2 ケーブル主要特性比較
項 目
周波数(MHz)
1
最小 NEXT
(dB)
(dB)
Cat.6
Cat.6A
65.3
74.3
74.3
10
50.3
59.3
59.3
100
35.3
44.3
44.3
250
─
38.3
38.3
500
最小 RL
Cat.5e
─
─
33.8
1
20.0
20.0
20.0
10
25.0
25.0
25.0
100
20.1
20.1
20.1
250
─
17.3
17.3
500
─
─
15.2
1
2.0
2.0
2.1
最大
10
6.5
6.0
5.9
Insertion Loss
100
22.0
19.8
19.1
(dB/100 m)
250
─
32.8
31.1
500
─
─
45.3
NEXT : 近端漏話減衰量
RL : 反射減衰量
Insertion loss : 挿入損失
回線1
(誘導側)
回線2
(被誘導側)
図 2 2 つの回線が平行している場合
回線1
(誘導側)
回線2
(被誘導側)
図 3 2 つの回線が対撚り線でピッチが異なる場合
4.ケーブル構造と種類
LAN 用ツイストペアケーブルの基本構造を図 1 に示す。
異なっているのは,このような理由からなのである。
ケーブルは,直径 0.5 mm 程度の 8 本の銅線(導体)に絶縁
また,Cat.6 以上の漏話の要求特性が厳しい高グレード
体としてポリエチレン(PE)が被覆され,それを 2 本ずつ
のケーブルについては,4 対の対ピッチをそれぞれ変更す
対撚りし,更に 4 対を集合し,ポリ塩化ビニル(PVC)等
ることに加えて,十字型の介在を挿入している(図 4)。
の外被を施した構造となっている。
導体
対
絶縁体
十字型介在
対
外被
外被
図 4 Cat.6 ケーブル断面図
図 1 LAN 用ツイストペアケーブル基本構造
十字型介在は,それぞれの対の距離を離す目的で挿入し
LAN 用ツイストペアケーブルの対は,4 対の対ピッチが
ている。対間の距離を離すことにより,漏話を抑制するこ
それぞれ異なっており,それによって発生する漏話を抑制
とができるからである。従って,Cat.6 ケーブルは,Cat.5e
している。
ケーブルと比較して,十字型介在を挿入している分,1 mm
例えば,2 つの回線が平行している場合,回線 1 を使用
すると磁力線が発生し,この磁力線が回線 2 を通過すると,
回線 2 にも電流が誘起され,漏話が発生する(図 2)。
一方,2 つの回線が対撚りされており,更に対ピッチが
異なっている場合には,互いに異なった方向の電流が誘起
程度仕上外径が太くなっている。
ここまでは,一般的な LAN 用ツイストペアケーブルの
構造について述べてきたが,実際にはケーブルの布設場所
や用途,布設工事の効率化等,様々な要求により,使用す
るケーブルの種類は異なる。
し,交互に打ち消しあうことで,漏話が減少する(図 3)。
可とう性を考慮し,導体を撚り線として柔軟な外被を施
LAN 用ツイストペアケーブルのそれぞれの対ピッチが
したパッチケーブルや,4 対ケーブルを集合させたインナー
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
46
シース型多対ケーブル(図 5),耐ノイズ対策としてシール
Vol. 58, No. 1 (2008)
表 3 LAN 用ツイストペアケーブル主要ラインナップ
ドを施したケーブル(図 6),屋外にも布設できるよう耐水
種 類
型 名
性・耐紫外線性を考慮した LAP(Laminated Aluminum
標準(4P)
PE)シースケーブル(図 7)等,様々な種類のケーブルが
パッチ(撚線)
TPCC 5 PATCH
めがね型
D-TPCC 5 /スーパー D コイル
使用場所や用途に応じて選択され,使用されている(表 3)。
Cat.5e
4 対ユニット
図 5 インナーシース型多対ケーブル(Cat.5e)
(型名: TPCC 5 IS)
Cat.6
Cat.6A
TPCC 5 /スーパーコイル
インナーシース型
TPCC 5 IS
シールド付き
FS-TPCC 5
シールド付きパッチ
FS-TPCC 5 PATCH
高遮へい付き
HFS-TPCC 5
屋外用
TPCC 5-LAP
4P
TPCC 6 /ハイパーコイル
パッチ(撚線)
TPCC 6 PATCH
めがね型
D-TPCC 6
インナーシース型
TPCC 6 IS
シールド付き
FS-TPCC 6
シールド付きパッチ
FS-TPCC 6 PATCH
高遮へい付き
HFS-TPCC 6
屋外用
TPCC 6-LAP
シールド付き
FS-TPCC 6A
TPCC は,冨士電線株式会社の登録商標です。
シールド
5.規格最新動向
ここからは,10 GBASE-T,Cat.6A の規格最新動向につ
いて説明する。
10 GBASE-T は,2002 年 11 月,IEEE 802.3 委員会にて,
ツイストペアケーブルを用いた 10 ギガビット伝送方式のス
タディグループが発足,IEEE 802.3 an として正式に規格
化を目指し活動し,2006 年 6 月に承認された伝送規格であ
る。それまでも,光ファイバケーブルを使用した 10 ギガビッ
図 6 シールド付きパッチケーブル(Cat.6)
(型名: FS-TPCC 6 PATCH)
ト伝送方式規格(IEEE 802.3 ae)は存在していたが,ツイ
ストペアケーブルを使用することにより,デバイスコスト
を下げることが可能となり,トータルコストで光ファイバ
ケーブルを使用する場合よりも有利であることから,規格
化されたという背景がある。
当初 10 GBASE-T では,既に規格化されている Cat.5e や
Cat.6 ケーブルを使用して伝送することを目標としていた
が,10 GBASE-T 伝送方式では,500 MHz の帯域が必要で
LAP シース
ある他,エイリアンクロストークの問題があり,既存の規
格を変更することが必要となった。ケーブルの仕様につい
ては,IEEE から TIA(米国通信工業会)に依頼された。
ここで,エイリアンクロストークという言葉が出てきた
ので,それについて説明する。
図 7 屋外用 LAP シースケーブル(Cat.6)
(型名: TPCC 6-LAP)
また,近年,工場内等でも LAN 用ツイストペアケーブ
ルが使用されるようになってきており,工場設備に対する
エイリアンクロストークとは,隣接する他のケーブルか
ら受ける漏話であり,複数のケーブルを平行に布設した場
合に影響を受ける(シールド付きケーブルの場合には問題
とはならない)。
電磁妨害対策を施した高遮へいケーブルや,耐油性シース
今までは,4 対のケーブル内部での漏話の規格値は規定
を施したケーブル等,産業用 LAN ケーブルとして,更に
されていたが,10 GBASE-T では,500 MHz という高周波
使用場所・用途が拡大されてきており,今後もユーザーの
帯域が必要であるため,送信信号の減衰が大きくなると共
ニーズにより様々な種類のケーブルが使用されていくもの
に高周波ではノイズが増すことから,安定した伝送を実現
と思われる。
するために,隣接するケーブルの影響まで考慮することが
LAN 用ツイストペアケーブルの現状と今後の展望
必要となったのである。
47
求を満足させるためには,隣接ケーブルとの距離を設ける
TIA ではエイリアンクロストークの測定は,最も信頼性
の高い測定方法として 1 本のケーブルの周囲に 6 本のケー
ブルを隣接させた 6 Around 1(図 8)が採用された。
ため,ケーブル外径が太くなってしまい,配線スペースが
有効に使えないというデメリットもある。
このようなことから,Cat.6A 配線システムでは,シールド
付きケーブルが主流となっていくのではと予想されている。
6.今後の展望
エイリアン
クロストーク
これまでの LAN 用ツイストペアケーブル規格は,光フ
ァイバを用いた高速伝送規格に追いつくようにして発展し
てきた。2002 年に光ファイバを使用した 10 Gbps 伝送
(IEEE 802.3 ae)が規格化され,それに追いつくように,
2006 年には,LAN 用ツイストペアケーブルを使用した
10 Gbps 伝送(IEEE 802.3 an)が規格化されたのも,その
一例である。
現在,IEEE では,光ファイバを用いた 40 Gbps 及び
100 Gbps 伝送について,2010 年 5 月の規格化を目標として
図 8 エイリアンクロストーク
検討が進められている。今後,今までの歴史と同様に,
LAN 用ツイストペアケーブルを用いた更なる高速伝送に
ケーブルの仕様について IEEE より依頼を受けた TIA
ついても検討が始まることが予想される。また,ISO/IEC
は,ツイストペアケーブルで最大 100 m まで 10 ギガビット
11801 では,1000 MHz という高周波まで規定した Cat.7A
伝送方式を運用するための新しい配線規格として,Cat.6A
ケーブルについても規格化作業中であり,今後も LAN 用
(Augmented Cat.6)を定義する文書「ANSI/TIA-568-B.2-
ツイストペアケーブルの発展は続いていくと予想される。
10」を 2008 年 3 月に制定した。
7.ま と め
Augmented とは,拡張されたという意味である。Cat.5e
の e は,Enhanced(増強された)の頭文字であるが,今回
は,周波数帯域を拡張したことからこの名称となった。
国内での LAN 用ツイストペアケーブルは,まだ Cat.5e
が主流となっている。今後 Cat.6 が一般配線として普及し
Cat.6e という規格は存在しないので注意が必要である。
伸びていくのか,また,Cat.6A の今後の普及については,
Cat.6A の使用用途は,米国各社ではデータセンター配線
先行き不透明である。しかし,LAN 用ツイストペアケー
が主であるという見解であり,データセンターでは,信頼
ブルの用途は拡大しており,ユーザーから今後も様々な
性の高いシールド付きケーブルが選択されることが予想さ
ニーズが出てくると考えられる。
れている。
弊社では,これまでユーザーからの様々なニーズに対応
シールド付きケーブルは,エイリアンクロストークの影
すべく,製品ラインナップの拡充に取り組んできており,
響が無く,布設後の試験の手間や費用を考慮すると,シー
現在では,国内でもトップレベルの豊富なラインナップを
ルド無しのケーブル(UTP : Unshielded Twisted Pair)
整えている。今後も,ユーザーからの新しいニーズをいち
と比較して,トータルコストで有利であるとの見解が出さ
早くキャッチし,製品の研究・開発・改良に結び付けてい
れている。
きたい。
また,UTP ケーブルでは,エイリアンクロストークの要
参考文献
1)石田 修,瀬戸 康一郎: 10 ギガビット Ethernet 教科書,株式会社
IDG ジャパン(2002)
シールド
図 9 Cat.6A ケーブル(シールド付き)
(型名: FS-TPCC 6A)
48
冨士電線株式会社
河田 正義(かわた まさよし)
甲府工場 通信技術・品質保証課 技術G
LAN 及び通信ケーブルの設計・開発に従事
冨士電線株式会社
浦 卓也(うら たくや)
甲府工場 通信技術・品質保証課長
冨士電線株式会社
亀井 諭(かめい さとる)
甲府工場 通信技術・品質保証課 技術G
LAN 及び通信ケーブルの設計・開発に従事
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
Vol. 58, No. 1 (2008)
自然対流シミュレーションによる防音ボックス設計支援
49
自然対流シミュレーションによる
防音ボックス設計支援
Simulation of Natural Convection for Aided Design of Soundproofingbox
成吉郁馬
佐野茂樹
北村 祐
岡下 稔
Ikuma NARUYOSHI
Shigeki SANO
Tasuku KITAMURA
Minoru OKASHITA
精密機器製造装置への騒音対策を目的とした真空ポンプ防音のための防音ボックスが検討された。しかし防
音するための構造材料が同時に断熱材でもあるため,ポンプからの熱による温度上昇が懸念された。また,よ
り低騒音とするために冷却方法はファンなどの強制対流を用いず自然対流を適用したため温度上昇についての
見積りがさらに困難になった。
このような状況下で筆者らは,CFD(Computational Fluid Dynamics :数値流体力学)を用いた自然対流
解析を実施し,熱と流体の状況を可視化することで設計への支援と解析方法の掌握を確認した。
A soundproof box for pulsometer soundproofing which had noise countermeasure to a precision instrument production
unit for its object was considered. But a temperature rise by heat from a pump was worried about because the structure
material which had soundproofing for its object was also an insulator at the same time. Without using compulsion convection of a cooling fan, natural convection was applied, so to make it a lower noise an estimate of temperature rise became
more difficult.
Writers conducted a natural convective simulation with CFD in such situation, and the support to a design and the control of an analysis method were confirmed by visualization making the situation of the fluid and heat.
1.は じ め に
近年,熱対策は設計上の重点要素として取り上げられ,
2.解析対象モデル
図 1 と 2 に内部の概念図と外観写真を示す。
例えば小型,高密度実装化された電子デバイス等では性能
外枠鋼板
と信頼性向上の向きから熱輸送現象を把握することが大き
910
な課題点とされている。
熱輸送の形態についてはファンなどによる強制対流が考
排出口
えられるが,本来の小型化,省電力化などの観点からは望
605
ましくなく自然対流による方が簡便で採り入れやすい。本
案件においても同様の設計思想から低騒音などの利点も期
待して自然対流によるポンプ冷却を採用している。しかし,
自然対流は伝熱特性が低いことが欠点となり,設計時には
排気導出仕切り
655
伝熱と流動の特性をあらかじめ把握しておく必要がある。
ところが実際にこの要件を満たすために実験を行っても散
発的なデータしか得られず,伝熱と流動が連成する自然対
200
ポンプ
200
支持アングル
流を全体的に把握することは難しい。また,設計パラメー
モーター部
タを振ってモデルを準備することは時間とコストの点から
制約がある。
吸入口
図 1 製品内部概念図
ここではこうした問題解決のために CFD を利用したシ
ミュレーション技術を導入し,設計支援を達成するととも
に自然対流に関する解析技術の蓄積に努めた。
基本構造としては,騒音源となるポンプを吸音材で囲い
込む構成である。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
50
Vol. 58, No. 1 (2008)
筐体は防音のためにグラスウールを使用し,全体の強度
を増すために外枠として薄い鋼板を装着した。また,冷却
空気を吸排出させるために対向面に出入口を設けた。これ
は対流の特性を活かすために高低差を付けた。更に,防音
特性を向上させるために内部構造は吸入口側に一定の長さ
のダクトと排出口側に仕切りを設けて音の漏れを防止さ
せた。
対象ポンプはドライ型真空ポンプであり,筐体内にアン
グルにより設置支持した。ポンプの概略構造としてはスク
ロール機構部とそれを回転させるモーター部,さらに冷却
ファン部に分けられる。(図 3)
排気口
スクロール
ポンプ
ファン
モーター
図 4 ポンプ近傍メッシュ
4.自然対流発生の過程
図 5 に本案件のモデルによる対流の様子を流線図で示
した。
自然対流の発生は,先ずポンプ近傍の熱伝導によって空
吸音材
気が加熱され,密度の減少が起こる。これによって低温場
図 2 製品外観
図 3 ポンプ概念図
の空気よりも軽くなるため浮力が発生する。さらに温度差
拡大による密度の勾配が筐体内全般におよぶと吸入口から
3.解析条件設定
3.1
メッシュモデル
CFD を用いた解析においては実モデルの形状をメッシュ
排出口へ向けての流れが誘起される。
自然対流は流体の温度変化に起因する密度勾配によって
発生し,流れ場と温度場が相互に強く影響しあう。
煙突効果などはこれに類推する典型的な現象である。
(格子)と呼ばれる微小領域に区切ったセルに分割し,離
散化した上で解いていく。そのため,メッシュの形状や密
度に解が依存し,モデル化の際には十分な検討が必要で
ある。
図 4 は本件で使用したメッシュの一部抜粋断面を示す。
この中で,密度勾配および温度変化が大きいと予想される
ポンプ表面周囲についてはメッシュを細かくし,計算誤差
低減に配慮した。
3.2
3.2.1
境界条件
流体
流体への条件付けでその分類として層流,乱流の違いに
ついてはレイノルズ数とレイリー数,圧縮性についてはマッ
ハ数を指標として判別し,本案件では層流,非圧縮性とし
図 5 対流の様子
た。また,自然対流を誘起する浮力の計算では密度分布を
理想気体の温度依存で規定し,あわせて重力加速度を設定
5.シミュレーションの結果
した。
3.2.2
伝熱
熱源に相当するポンプの熱量については,仕様の消費電
5.1
外気温に対する依存性
図 6 に内部温度分布のコンター図を示す。
力と定格出力から無効となる仕事率分を放出される熱量と
外気温の変動とともに内部の温度も変化しており,ある
して設定した。筐体外部との伝熱面は対流境界とし,周囲
一定の依存性があることが分かる。筐体材料は断熱材であ
温度と標準的な熱伝達係数を設定した。
るため,ポンプの熱輸送が有効に進展しない場合は内部の
自然対流シミュレーションによる防音ボックス設計支援
外気温 16 ℃
(K)
51
外気温 16 ℃
(K)
外気温 20 ℃
外気温 16 ℃
(m / s)
外気温 20 ℃
外気温 20 ℃
(K)
(K)
(m / s)
外気温 30 ℃
外気温 30 ℃
外気温 30 ℃
(K)
(K)
(m / s)
図 6 内部温度
図 7 ポンプ表面温度
図 8 吸入口流線図
温度上昇がさらに顕著になると予想されるが,外気温 30 ℃
も果たしている。このダクトが無い場合,吸入口から入っ
の時でも約 315 K(42 ℃)程度になっており,自然対流に
た流れは方向が不定となり,自然対流による効果的な冷却
よる冷却効果が機能していることが確認できる。また,対
が行えないであろう。
吸入口の大きさの影響
流の流れはポンプから斜め上方向に立ち上がる温度分布の
5.2
ゆらぎから観ることができる。
吸入口のサイズは,設計当初ポンプと内壁およびダクト
図 7 はポンプの表面温度コンター図である。
が干渉(図 9 矢印部)する懸念があり,設置時の寸法上の
温度分布はモーターを取り付けてある側が高いが,これ
裕度を持たせるために検討された事項である。この際,吸
は界磁コイルの銅損発熱を考慮した結果である。また,中
入口縮小の影響から十分な冷却空気の取り入れが阻害さ
央部に観られる低温度領域は内装ファンによる冷却の効果
れ,過度の温度上昇の懸念を払拭するためにシミュレー
によってポンプ周囲の流体温度と機器内部から流出する温
ションによる確認を追加実施した。
度が混合された結果である。
ポンプからの熱輸送は対流による熱伝達のほかにアング
ルを介して設置面へ至る熱伝導があるが,結果を見る限り
熱伝導分は小さいものであり,熱輸送はもっぱら対流に依
存していることが分かる。
図 8 は吸入口からの空気の流入を可視化した流線図で
ある。
外気温の上昇にしたがって流速が増加する様子が分かる
が,これは温度の上昇とともに筐体内部の密度勾配が大き
くなったためである。
ダクト内部では流れの発達が確認できる。ダクトは本来
防音特性の向上が目的であるが,図でわかるように流れを
発達させて効果的に冷却流体をポンプの端面側へ導く役目
図 10 は吸入口サイズと解析モデル区分である。
図 11 に代表的な外気温度(20 ℃)時の内部温度と流線
の様子を示す。
内部温度については,吸入口のサイズに関わらずほとん
ど同等の様子を示しており,ポンプ表面の温度にも特に大
きな変化は見られない。したがって,本件で想定した範囲
内でのサイズ変更は,温度上昇の点では問題とならないレ
ベルである。
流線の様子は吸入口面積が減少するに従って速度の上昇
が見られる。これは,内部の密度勾配が同じであり,そこ
で同位の質量流量を得ようとするために速度の上昇で補完
されることによる。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
52
Vol. 58, No. 1 (2008)
H
w
タイプ
図 9 干渉部図示
G1
G2
200
250
W(mm)
200
150
150
40000
37500
22500
開口部面積(mm2)
図 10 吸入口サイズとモデル区分
G1
G2
(K)
G3
(K)
G1
(K)
G2
(m/s)
G3
(m/s)
(m/s)
50
50
45
45
40
40
35
35
温度(℃)
温度(℃)
図 11 内部温度と吸入口流線図 外気温 20 ℃時
30
25
G1
G2
G3
G1実測
20
15
30
25
20
15
G1
G2
G3
G1実測
10
10
10 15 20 25 30 35
外気温(℃)
図 12 立ち上がり部温度変化
G3
H(mm)
10 15 20 25 30 35
外気温(℃)
図 13 ポンプ表面温度変化
150
自然対流シミュレーションによる防音ボックス設計支援
5.3
実測値との比較
図 12 に立ち上がり部の温度プロットを示す。
立ち上がり部の温度についても外気温の上昇に従って上
がっている。また各タイプ間の比較では,最大の温度差で
5 ℃程度の開きが見られるが,全体の分散分析を行ったと
昭和電線ケーブルシステム㈱
成吉 郁馬(なるよし いくま)
技術開発センター 基盤技術グループ 主査
ケーブル部品,材料の製造に関する
シミュレーションおよび開発業務に従事
ころ有意差の無い結果であった。
図 13 はポンプ表面温度の解析結果プロットを示す。
昭和電線ケーブルシステム㈱
やはりこれについても外気温とともに値が上昇する傾向
佐野 茂樹(さの しげき)
技術開発センター 基盤技術グループ 主査
ケーブル部品,材料の製造に関する
シミュレーション業務に従事
は同じである。また,ここではタイプ間の差はほとんど見
られない。
実測値との比較では,外気温 16 ℃のポイントデータのみ
であるが,立ち上がり部およびポンプ表面ともに整合がと
れていることが分かる。
以上のことより,自然対流による冷却効果の確認と外気
温に対する傾向ならびに吸入口のサイズの影響をシミュ
昭和電線デバイステクノロジー㈱
北村 祐(きたむら たすく)
QCA プロジェクト 主査
工学博士
新製品および新事業のための企画業務に従事
レーションによって解明できた。
併せて設計支援については,温度上昇の懸念は払拭され
吸入口サイズの変更は本案件の範囲内であれば実施可能で
あるとの提案ができた。
6.あ と が き
自然対流を取り扱うシミュレーションに関し防音ボック
スを対象にして実施を試みた。
CFD を用いた解析によって有効な設計支援を行うことが
できた。また,自然対流の解析についてのノウハウの蓄積
および伝熱と対流に対する知見を深めることが出来た。シ
ミュレーション本来の利点である試験,実験の補完および
試験コストの削減によって設計プロセスの効率化に寄与で
きたのではないかと思う。
今後は解析内容を更に進展させて,より広範囲な評価設
計支援につなげていきたい。
参考文献
1)露木浩二,他:三次元空洞内に発生する自然対流の数値計算と可
視化 計測自動制御学会(1999)
2)古屋善正著:流体力学Ⅰ 共立出版㈱(1973)
3)石渡憲治,他著:冷凍空調の実務 ㈱オーム社(2001)
4)伝熱セミナーテキスト アンシス・ジャパン㈱(2007)
5)CFD 理論テキスト アンシス・ジャパン㈱(2007)
昭和電線ケーブルシステム㈱
岡下 稔(おかした みのる)
技術開発センター 基盤技術グループ長
電線ケーブルの開発に従事
53
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
54
Vol. 58, No. 1 (2008)
低発塵性低周波吸音材の開発
Development of low frequency sound absorbing material without dust
北村 祐
木田俊雄
谷本一浩
Tasuku KITAMURA
Toshio KIDA
Kazuhiro TANIMOTO
半導体市場等で需要のある低発塵性吸音材を開発した。従来の低周波吸音材と同等の吸音性能を有しつつ,
クリーンルームなどでも使用可能なレベルの低発塵性を実現した。
We developed the sound absorbing material without dust for semi-conductor retated market. The sound absorbing characteristics of the material is equal to our standard sound absorbing material.
1.は じ め に
携帯電話やコンピュータなど私たちの文明生活を支える
音材をクリーンルームでは使用することが出来ないといっ
た技術課題が生じており,クリーンルームでの使用が可能
な吸音材が求められている。
電子機器には全て半導体が搭載されている。ここ数年の IT
本報では,こういった問題を解決するために,発塵性が
環境の発達に伴い,搭載される半導体も高性能化が進めら
少なくクリーンルームなどでの環境下で使用可能な低周波
れている。半導体製造工場や検査場においては,半導体
吸音材を開発した結果について報告する。
表面に塵が付着してしまうと,微細加工した回路の断線
2.多孔質体の見直し
など重大な故障の原因となることから,こういった場所で
は天井に空調を設置して床に向かって送風し,空気中の塵
当社低周波吸音材を低発塵化するためには,多孔質体の
を追い出すことでクリーンルームとしている。したがって,
グラスウールを低発塵性のフォームに変更する必要があ
クリーンルーム内では常に空調による送風音が発生して
る。本研究においては,グラスウールと同等の音響性能を
いる。
有し,かつ自己発塵性の少ない素材の選定を行った。候補
半導体の加工精度が高くなればなるほど,高いクリーン
としては,PET フェルト,発泡 PE,エステル系発泡ウレ
度が求められることから,空調の送風量を増やさなければ
タン,エーテル系発泡ウレタンを選定し,各種性能を比較
ならず,高精度が求められるクリーンルーム内は空調によ
した。比較結果を表 1 に示す。
る騒音レベルが高い状態にある。
こういった環境下で,半導体を製造したり検査する場合,
上記の通り,吸音性能,発塵性,耐環境性,加工性,コ
ストといった製品に開発にあたって重要な要素を確認し比
従来はさほど問題にはならなかったが,半導体の微細化効
較した。その結果,エーテル系発泡ウレタンが最も優れて
果が進展するにともない,クリーンルーム内の空調などの
いることが判明したので,この素材を低発塵性の吸音材と
音の問題が発生するようになった。従来,半導体製造機器
することとした。
や検査機器は,床を伝わってくる振動を除振台や防振ゴム
などで絶縁すればよかったのであるが,空調による騒音に
より機器が音響加振され機能障害を誘発するといった問題
表 1 多孔質体の比較
が生じている。
空気中を伝搬する空気伝搬音の対策は,当社が開発した
GW
PET
フェルト
発泡
PE
低周波吸音材などの吸音素材が有効である。
しかし,当社製品を含む吸音素材はベースの材料にグラ
エステル系 エーテル系
発泡
発泡
ウレタン ウレタン
吸音性能
○
○
×
△
○
スウールが使用されている。グラスウールは硝子短繊維を
発塵性
×
△
○
○
○
加工した素材であり,繊維径は数 10 ミクロンであり,此れ
耐環境性
○
○
○
△
○
自体が発塵性を有している。そのためグラスウール系の吸
加工性
○
○
△
○
○
低発塵性低周波吸音材の開発
55
3.加工性の改良
5.吸 音 性 能
当社低周波吸音材は多孔質体の表面に,独自の樹脂皮膜
1)
吸音材として最も重要な性能である吸音率を評価した。
を形成している 。この樹脂皮膜が特定の周波数で共鳴す
吸音率は JIS A 1409 : 1988「残響室吸音率の測定方法」に
ることにより音の振動エネルギーを皮膜の共鳴エネルギー
基き当社付属設備にて実施した。それぞれの製品の吸音率
に変換することで吸収している。多孔質体の上に樹脂を
を図 2,3 に示す。
コーティングしてこの樹脂皮膜を形成しているのである。
従来の吸音材の場合,多孔質はグラスウールであるために,
1.2
多孔質体表面が硝子短繊維であるので,樹脂皮膜との接着
1.0
性が良好であったのに対し,エーテル系発泡ポリウレタン
膜の配合では樹脂皮膜と多孔質体の接着強度が低下してし
R50
0.8
吸音率
はグラスウールと比較して平滑であるため,従来の樹脂皮
R25
まう。接着力を改善するために樹脂皮膜の配合を変更する
R100
0.6
0.4
ことで,実用上問題ない樹脂皮膜を形成することが出来た。
0.2
作製した低発塵性低周波吸音材の外観写真を図 1 に示す。
0.0
63
125
250
500
1000
2000
4000
1/3オクターブバンド周波数(Hz)
図 2 低発塵性吸音材の吸音率(低周波帯域型)
1.2
1.0
吸音率
0.8
図 1 低発塵性吸音材の外観写真
0.6
0.4
25R25
25R50
0.2
4.吸音材の仕様
25R75
上記の検討内容を経て実用可能な低周波吸音材を開発し
0.0
63
125
た。当社の低周波吸音材は樹脂皮膜背面に多孔質体を配置
した低周波帯域型吸音材と,樹脂皮膜を多孔質体で挟み込
250
500
1000
2000
4000
1/3オクターブバンド周波数(Hz)
図 3 低発塵性吸音材の吸音率(広帯域型)
んだ広帯域型低周波吸音材の 2 タイプがあるが本研究では,
双方のタイプを開発した。それぞれのタイプの吸音材の仕
様を表 2,3 に示す。
いずれの製品においても 300 Hz 以下の周波数領域にお
いて高い吸音率を有していることが分かる。また,吸音材
の厚みが増えるにしたがって,低周波領域の吸音率が向上
表 2 低発塵性低周波吸音材(低周波帯域型)の仕様
型 番
R25
R50
している。
R100
上記の通り,本研究において開発した低発塵性吸音材が
従来の吸音材と同様に優れた吸音性能を有していることを
幅
mm
910
長さ
mm
1,000
厚さ
mm
25
50
100
質量
kg
1.0
1.5
2.5
確認した。
6.ま と め
クリーンルームで使用される半導体製造装置や検査装置
の騒音対策用として,低発塵性吸音材の開発を行い,以下
表 3 低発塵性低周波吸音材(広帯域型)の仕様
型 番
25R25
25R50
25R75
の知見を得た。
(1)多孔質体の素材を低発塵性のエーテル系発泡ウレタン
幅
mm
910
長さ
mm
1,000
厚さ
mm
50
75
100
質量
kg
1.5
2.0
2.5
に変更した。
(2)多孔質体の変更に伴う,加工性の低下は樹脂皮膜の配
合を見直すことで対応した。
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
56
(3)本用途では,低周波帯域型,広帯域型の吸音材の二種
類をラインナップした。
(4)開発した低発塵性吸音材は従来品と同様の優れた吸音
性能を有している。
参考文献
昭和電線デバイステクノロジー㈱
北村 祐(きたむら たすく)
クワイセントプロジェクト 主査
低周波吸音材の開発および制音新事業のため
の企画業務に従事
工学博士
1)北村 祐,他:昭和電線レビュー,Vol.57,No.1,p.36(2007)
昭和電線デバイステクノロジー㈱
木田 俊雄(きだ としお)
クワイセントプロジェクト
低周波吸音材の開発に従事
昭和電線デバイステクノロジー㈱
谷本 一浩(たにもと かずひろ)
クワイセントプロジェクト 主査
低周波吸音材の開発および制音新事業のため
の企画業務に従事
Vol. 58, No. 1 (2008)
免震防振積層ゴムの開発
57
免震防振積層ゴムの開発
Study of Base Isolation System for Railroad Side Buildings
柳 勝幸
福田滋夫
加藤直樹
青木伸夫
Masayuki YANAGI
Shigeo FUKUDA
Naoki KATO
Nobuo AOKI
村松佳孝
五十嵐信哉*
鈴 木 庸 介*
Yoshitaka MURAMATSU
Shinya IGARASHI
Yousuke SUZUKI
建築物の耐震安全性を向上する免震機能と,鉄道振動や騒音を大幅に低減する防振機能を併せもつ,天然ゴ
ム系免震防振積層ゴムを開発した。その製品特性を紹介する。
We developed the natural rubber bearing which had both protection against vibration functions to largely reduce isolation which improved with quakeproof safety and railroad vibration and the noise of the building. In this paper we introduce the characteristics of Base Isolation System for Railroad Side Buildings.
1.は じ め に
防止できる。
一方,固体伝搬音は,仕上げ材がスピーカーのコーンの
近年,鉄道の立体交差化や駅改良事業などで都市部の鉄
ような働きをして大きな騒音を放射する現象である。すな
道インフラ近接空間が急増している状況にあって,その活
わち,静粛な鉄道隣接建築を実現するためには固体伝搬音
用が注目されている。本研究の目的は,建築物の耐震安全
を防ぐ防振性能の確保が大きな課題となる。静粛性を求め
性を向上する免震機能と,鉄道振動や騒音を大幅に低減す
る従来の高架下建築では,図 2 に示す浮き構造が多く用い
る防振機能を併せもつ天然ゴム系免震防振積層ゴム(以下
られている。しかしながら,居住空間や執務空間を確保す
免震防振積層ゴム)の実用化を図り,これまで駅隣接建築
るために十分な防振仕様の採用が難しい場合が多いことや
などで敬遠されてきた事務所,保育所,老健施設,病院,
施工的な煩雑さなどの制約から,室内騒音性能の限界は一
ホテルなどの複合型建築物を実現し,周辺地域の利便性
般事務室レベルに留まっている。一方,これらの問題を解
向上や活気ある都市の発展に貢献することである。免震
決して鉄道高架下ホテルを実現した吊り免振工法も報告さ
防振積層ゴムを適用した建築物の構造形式としては,鉄
れている 3)。本報における免震防振積層ゴムを適用した建
道の上下及び周辺の建物基礎もしくは中間層において免
築物では,吊り免振工法と同様に建物支承部で振動低減を
震層を設ける一般的な免震建築形式を踏襲している(図 1
行う。従って,免震防振積層ゴムに求められる防振性能は,
参照)。本報では,免震防振積層ゴムに求められる目標性
吊り免振工法で実測された防振性能 4)に準ずる鉛直方向の
能ならびに,目標性能の達成に向けた方策を,既開発の
固有振動数 6 ∼ 10 Hz 以下を目標とした。図 3 は,鉛振直
直径 800 mm,支承荷重 1120 kN の免震防振積層ゴムを中
方向の固有振動数が 6 Hz で減衰が 3 %の免震防振積層ゴム
心に報告する 1,2)。
と,鉛振直方向の固有振動数が 15 Hz で減衰が 3 %の一般
2.基 本 構 造
的な免震積層ゴムの鉛直方向の振動伝達率を比較した結果
である。
一般的に鉄道インフラ近接空間を利用した建築物の室内
列車振動が卓越する 60 Hz における振動伝達率におい
騒音は,空気を媒介して伝わる「空気伝搬音」,列車振動
て,免震防振積層ゴムは一般的な免震積層ゴムの約 6 倍の
が建物内部に伝わり壁や天井などを振動させて発生する
防振性能になる。免震性能については,支承荷重 1120 kN
「固体伝搬音」の 2 つに分類される。空気伝搬音は建物の外
の 2 階建て建築で免震性能が発揮される周期 1.5 秒以上で,
壁やサッシュなどの遮音性能を高めることで比較的容易に
水平方向の限界ひずみ 400 %以上(一般的な免震積層ゴム
と同等)を目標とした(表 1 参照)。
* 株式会社 竹中工務店
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
58
Vol. 58, No. 1 (2008)
表 1 各ゴム支承性能と免震防振積層ゴムの目標性能
免震防振
積層ゴム
機 能
免震防振
積層ゴム
建物基礎
柔
―
(機械・交通振動など)(f=5 ∼ 10 Hz 程度)
免震積層ゴム
線路脇の例
免震性能
(水平剛性)
微振動の低減
防振ゴム
振動
防振性能
(鉛直剛性)
地震応答の低減
硬(f=15 Hz 以上)
柔
免震防振
上記 2 つの
柔:防振ゴム相当
柔:免震ゴム相当
積層ゴム
性能を両立
(f=6 ∼ 10 Hz 程度)
(f=0.67 Hz 以上)
高架下の例
薄い鋼板
免震防振
積層ゴム
厚いゴム
(1∼2層)
防振ゴム
薄いゴム
(18∼50層)
振動
免震防振
積層ゴム
中間層の例
厚いゴム
厚い鋼板 (3層)
地下鉄上の例
薄い
鋼板
図 1 免震防振積層ゴムを適用した建築イメージ
免震防振積層ゴム
免震積層ゴム
図 4 各ゴム支承の形状
50
※1次形状係数:
ゴムの拘束面積/ゴムの自由面積
45
40
35
1次形状係数
振動
空気伝搬音
防振天井
免震積層ゴム
30
25
20
防振ゴム
15
10
免震防振
積層ゴム
2重壁
5
騒音
(固体伝搬音)
0
0
5
10
15
20
使用面圧(N/mm2)
図 5 各ゴム支承の 1 次形状係数と使用面圧
浮き床(2重床)
図 2 高架下浮き構造建物
3.免震防振積層ゴム開発の方策
10
(20 dB)
従来の免震積層ゴム
振動伝達率
1
(0 dB)
6 Hz
積層ゴムの 2 タイプに機能分化している(図 4 参照)。ゴム
15 Hz
振動を約1/10
に低減
0.1
(-20 dB)
の形状的な特徴として防振ゴムは,1 次形状係数が 3 程度
振動を約1/60
に低減
以下で,層数 1 ∼ 2 程度が一般的である。免震積層ゴムは,
1 次形状係数が 30 程度以上,層数 30 前後,中間鋼板は 4 mm
0.01
(-40 dB)
0.001
(-60 dB)
これまでゴム支承は,一見して形が違う防振ゴムと免震
※減衰定数
h=3%
免震防振積層ゴム
前後の薄いものが大半である。一方,使用面圧と 1 次形状
列車振動卓越領域
0
50
振動数(Hz)
図 3 各積層ゴムの振動伝達率
100
係数に着目すると,防振ゴムは 1 次形状係数が小さく低面
圧,免震積層ゴムは 1 次形状係数が大きく高面圧になる
(図 5 参照)。
免震防振積層ゴムの開発
59
すなわち,これまでの防振ゴムと免震積層ゴムでは,1 次
5.基 本 特 性
形状係数,使用面圧,ゴム層数を相反する方向に開発する
ことで機能の違いを明確化していたため,両者の間に活
基本特性の鉛直剛性,水平剛性の算出方法を図 7,図 8 に
用されない領域が存在していた。免震性能と防振性能の
示す。また表 3 にφ 800 試験体の基本性能試験結果を,図 9,
両立を目的とした本開発では,この領域の積極的な活用を
図 10 に鉛直剛性,水平剛性測定時の荷重−変位関係を示
図った。
す。鉛直剛性および水平剛性はほぼ設計値通りの値を得た。
[具体的な方策]
また,荷重−変位関係はほぼ線形であった。これらの静的
防振性能については,目標値である鉛直方向の固有振動
数 6 ∼ 10 Hz 以下を満足するため,1 次形状係数を 4 ∼ 6 程
な剛性測定結果から算出した鉛直固有振動数および水平固
有周期は表 3 に示すように開発目標の範囲内であった。
度(ゴム 1 層あたり 40 ∼ 50 mm)の 3 層構造にすることで
鉛直方向の柔軟性を高めた。免震性能については,目標値
鉛直荷重 P
である水平方向の限界ひずみ 400 %以上を満足するため,
中間鋼板をゴム 1 層と同程度の 40 ∼ 50 mm と厚くし,曲
げ変形の抑制と局部的な応力集中の緩和を図った。また,
水平荷重Q
P1=1.3×P0
P0
Q1
P2=0.7×P0
X2
X1
中間鋼板を厚くすることは,加硫成形時の熱分布を均一化
δ2 δ0 δ1
し,製品全体で均質かつ優れたゴム物性の確保に寄与する
Q2
鉛直変位δ
と考えた。面圧については,積層ゴムの座屈荷重に対する
鉛直剛性 KV =
安全性の確保および,15 ∼ 20 %の圧縮ひずみを上限とす
る既往の防振ゴム設計法 5) を踏まえ,基準面圧を 2 ∼ 5
水平変位X
P1−P2
δ1−δ2
水平剛性 KH =
図 7 鉛直剛性の算出方法
Q1−Q2
X 1−X 2
図 8 水平剛性の算出方法
N/mm 2 以上とした。ゴム材料については,鉄道振動など
の微小振幅に対するひずみ依存性による剛性増加を小さく
表 3 基本性能試験結果
するため,カーボンブラックの少ない天然ゴムを採用した。
表 2 ゴム外径φ 800 mm,φ 1100 mm 製品の詳細構造
項 目
ゴム材料 G
免震防振積層ゴム
免震防振積層ゴム
ゴム外径φ 800 mm
ゴム外径φ 1100 mm
G=0.29 N/mm
2
G=0.29 N/mm2
ゴム外径 D(mm)
φ 800
φ 1100
ゴム内径 d(mm)
φ 80
φ 80
41.9 mm × 3 層
46.4 mm × 3 層
125.7
139.2
4.3
5.5
ゴム層
ゴム総高さ ntr(mm)
1 次形状係数 S1
2 次形状係数 S2
6.4
7.9
40 mm × 2 枚
45 mm × 2 枚
圧縮限界強度(N/mm2)
8.6
13.6
基準面圧σ 0(N/mm2)
2.25
3.5
中間鋼板
鉛直剛性(× 103 kN/m)
173
474
水平剛性(× 103 kN/m)
1.15
1.97
水平固有周期(sec)
2.0
2.6
連結鋼板
28
中間鋼板
図 6 φ 800 製品の詳細構造
28
φ800
φ1100
341.7
本体ゴム
285.7
連結ボルト
フランジ
No1
No2
No3
170(0.0%) 178(+ 0.3%) 171(− 0.1 %)
水平剛性(× 103 kN/m) 1.15 ± 15%
1.17(+ 0.2%)1.26(+ 9.6%) 1.17(+ 0.2%)
鉛直固有振動数(Hz)
[6 ∼ 10]
6.1
6.3
6.2
水平固有周期(sec)
[1.5 以上]
2.0
1.9
2.0
・試験結果欄の( )内の数値は設計値偏差を示す。
2000
鉛直荷重(kN)
示す。また参考としてφ 1100 製品の構造を表 2 に示す。
[開発目標]
鉛直剛性(× 103 kN/m) 173 ± 20%
1500
1000
500
0
0
2
4
6
8
10
12
100
150
鉛直変位(mm)
図 9 鉛直荷重−鉛直変位関係(No.1)
水平荷重(kN)
ゴム外径φ 800 mm 製品の詳細構造を表 2 および図 6 に
試験結果
設計値
項 目
4.製 品 構 造
200
150
100
50
0
−50
−100
−150
−200
−150
−100
−50
0
50
水平変位(mm)
図 10 水平荷重−水平変位関係(No.1)
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
60
Vol. 58, No. 1 (2008)
300
6.水平特性の依存性
せん断ひずみγ= ± 100%における水平剛性の面圧依存性
を図 11 に示す。横軸は各試験面圧σと基準面圧σ 0 の比率
を示し,縦軸は基準面圧σ 0 で測定された水平剛性に対す
る各試験面圧σにおける水平剛性の比率を示す。同様に基
水平荷重(kN)
200
準面圧σ0 で測定した水平剛性のひずみ依存性を図 12 に示
す。横軸は各試験のせん断ひずみγを示し,縦軸は基準面
100
σ=1.125
φ800-No2
σ=1.125,2.25,
4.50,9.00 N/mm2
γ=±100%
σ=2.25
σ=4.50
0
σ=9.00
−100
−200
−300
−400
−180
圧σ 0 におけるγ= ± 100%の水平剛性に対する各せん断ひ
ずみγでの水平剛性の比を示す。図中には表 4 に示すゴム
−120
−60
0
60
外径φ 600 mm の免震積層ゴム(以下 RB600)の結果を併
水平変位(mm)
せて示している。φ 800 試験体の面圧による水平剛性の変
図 13 面圧依存性試験結果
120
180
400
600
化率は RB600 に比べ小さくなっている。このことから免
震防振積層ゴムの基準面圧σ 0 は,免震積層ゴムと比較し
800
て水平剛性に与える影響が少ない設定となっている。一方
示す(荷重をオフセットして表示)。面圧σ =1.125 ∼ 4.50
N/mm 2 ではほぼ線形な荷重−変位関係となり,圧縮限界
強度を超えるσ =9.0 N/mm2 においても復元力を維持して
いることを確認した。図 14 はγ= ± 400%までの荷重−変
位関係を示す。φ 800 試験体はγ=300%程度までほぼ線形
な荷重−変位関係を有することを確認し,γ=400%におい
600
水平荷重(kN)
ひずみ依存性は RB600 とほぼ同等な傾向を示している。図
13 はφ 800 試験体のγ= ± 100%における荷重−変位関係を
400
200
φ800-No3
σ=2.25 N/mm2
γ=±50,±100,±150,
±200,±250,±300,
±350,±400%
0
−200
−400
−600
−800
−600
−400
−200
ても座屈・破断は認められなかった。
0
200
水平変位(mm)
図 14 ひずみ依存性試験結果
水平剛性変化率
Kh(σ)/Kh(σ0)
1.2
1.0
表 4 比較試験体諸元
0.8
免震防振用
項 目
φ 800
0.6
0.4
0.2
ゴム外径/内径(mm)
ゴム厚(mm)×層数
0.0
S1 / S2
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
圧縮限界強度
σ B(N/mm2)
面圧比率σ/σ0
基準面圧
図 11 水平剛性の面圧依存性
σ 0(N/mm2)
RB600
RB500
天然ゴム G=0.29 N/mm2
ゴム材料 G
No1
No2
No3
RB600
免震用
φ 520
800/80
520/52
600/30
500/20
41.9 × 3
27.2 × 3
4.5 × 26
3.75 × 26
4.3/6.4
4.3/6.4
31.7/5.1
32.0/5.1
8.6
8.6
49
49
2.25
2.25
10
10
水平剛性変化率
Kh(γ)/Kh(γ=100%)
1.4
1.2
7.水平特性の限界性能
1.0
0.8
φ 800 試験体で実施した高面圧または高せん断ひずみで
0.6
No1
No2
No3
RB600
0.4
0.2
0.0
0
50
100
150
200
250
300
350
の圧縮せん断試験では座屈および破断は発生しなかった。
今回の試験で実施した面圧−せん断ひずみの最大値の条件
を図 15 に示す。横軸は水平変形量δをゴム外径 D で除し
400
た変形率,縦軸は試験面圧σを圧縮限界強度(以下σ B)
せん断ひずみγ
(%)
で除した荷重載荷率を示す。なお式 16)から算出したφ 800
図 12 水平剛性のひずみ依存性
試験体のσ B は 8.6 N/mm2 である。図中には RB600 で実施
した高せん断ひずみ試験条件も併せて示した。免震積層ゴ
免震防振積層ゴムの開発
ムの安定限界変形の下限値として図 15 の破線が提案されて
ま と め
いる 6)7)。
今回の評価で免震防振積層ゴムでも免震積層ゴムと同様
に安定限界変形の下限値を適用できることを確認した。
61
免震防振積層ゴムの適用対象建物,製品構造および製品
特性について実験結果を交え紹介した。
免震防振積層ゴムは地震対策,振動対策に有効な免震部
材であり,今後より多くの免震建物へ採用されることを期
σB=ζ・G・S1・S2
6)
(式1)
S1= D−d S2= D
4tr
ntr
k
ζ=π
8(1+2kS1 2G / Eb)
待する。
参考文献
k:ゴムの硬度に応じた補正係数 Eb:体積弾性係数(N/mm2) 1) 五十嵐,鈴木他:免震防振積層ゴムの開発(その 1 ∼ 4),日本建
築学会大会(九州)
,2007
2) 五十嵐,鈴木他:免震防振積層ゴムの開発(その 5 ∼ 7),日本建
荷重載荷率(σ/σB)
1.2
φ800 400%変形相当
1
築学会大会(中国)
,2008
RB600 400%変形相当
3) 石橋他:高い静粛性を実現した吊り免振工法による高架下ホテル
0.8
の設計・施工,コンクリート工学 Vol. 42 No. 7,2004
4) 五十嵐他:吊り免振工法による鉄道高架下建物に関する研究(そ
0.6
φ800
座屈・
破断なし
RB600
座屈・
破断なし
0.4
安定限界変形
下限値
0.2
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
図 15 限界性能試験結果
8.長期耐久性(クリープ特性)
免震積層ゴムには鉛直荷重を長期間支持する間に製品高
さの低下が進行するクリープ現象が発生する。φ 520 試験
体(表 4 参照)を用いて基準面圧 2.25 N/mm2 下のクリー
プ試験を実施した。結果を図 16 に示す。また比較のため
RB500(表 4 参照)の面圧 12.5 N/mm2 での試験結果も併せ
て示す。φ 520 試験体のクリープ変位は RB500 に比べ若干
変動が大きいものの顕著な差が無いことを確認した。
クリープ変位(mm)
2.0
φ520
RB500
1.0
0.5
0.0
−0.5
−1.0
0
10
1000
時間(hr)
図 16 クリープ試験結果
学社,昭和 50 年
6) 「免震構造設計指針」
,日本建築学会,2001 年改訂 P33
7) 高山峯夫他,多田英之監修 P73 : 4 秒免震への道,理工図書,2007
1.2
変形率(δ/D)
1.5
の 3)
,日本建築学会大会(北海道)
,2004
5) 社団法人 日本鉄道車輌工業会発行,改定新版 防振ゴム,現代工
100000
62
昭和電線デバイステクノロジー㈱
柳 勝幸(やなぎ まさゆき)
免制震制音ユニット 免制震部 技術課 主査
免震装置の開発および設計に従事
昭和電線デバイステクノロジー㈱
福田 滋夫(ふくだ しげお)
免制震制音ユニット 免制震部 製造課長
免震装置の製造に従事
昭和電線デバイステクノロジー㈱
加藤 直樹(かとう なおき)
免制震制音ユニット 免制震部 技術課長 免震装置の開発および設計に従事
昭和電線デバイステクノロジー㈱
青木 伸夫(あおき のぶお)
免制震制音ユニット 免制震部長
昭和電線デバイステクノロジー㈱
村松 佳孝(むらまつ よしたか)
免制震制音ユニット長
株式会社 竹中工務店
五十嵐信哉(いがらし しんや)
先進構造エンジニアリング本部
株式会社 竹中工務店
鈴木 庸介(すずき ようすけ)
先進構造エンジニアリング本部
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
Vol. 58, No. 1 (2008)
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
新
製
品
紹
Vol. 58, No. 1 (2008)
63
介
IEC 規格準拠 110/132 kV ガス中終端接続部
Gas Immersed Sealing End for 110/132 kV XLPE Cable
1.概 要
3.特 長
中東,インド,中国などの新興国,産油国ではインフラ
ストラクチャー整備に伴い,132 kV 級(中国は 110 kV 級)
の終端接続部の需要が高まっている。当社では海外向けに
2
110/132 kV 1,000 mm 以下にサイズを限定し,施工スキル
レス化,低価格化を図った IEC 規格準拠のガス中終端接続
部を開発した。
本製品の特徴は下記の通りである。
(1)機器との取り合いは IEC60859 の 123/170 kV Fluidfilled cable connection assembly および Dry-type
cable connection assembly に適合。
(2)電気性能は IEC60840 の 132/138 kV に適合。主な開発
試験結果を表 1 に示す。
(3)適合ケーブルサイズは海外で一般的な 1,000 mm2 以下
2.構 造
に限定し,とう管のスリム化,軽量化を図った。これ
海外におけるガス中終端接続部と機器の取り合い寸法は
規格 IEC60859 に基づき標準化されており,従来非プラグ
インタイプである Fluid-filled cable connection assembly
により,施工時の取り扱いが容易になり,施工スキル
レス化と低価格化を実現した。
(4)とう管下部フランジ部分の絶縁筒を凸形状にすること
とプラグインタイプである Dry-type cable connection
により,フランジ強度と絶縁性能の向上を図った。
assembly との 2 種類が規格化されている。今回開発した終
(5)接続材料は当社の他のスマート製品と共通化した。
端接続部はこれら 2 種類のタイプの 123/170 kV に対応した
表 1 開発試験
製品である。2 種類の接続部の構造を図 1 に示す。
試験項目
試験内容
試験結果
商用周波耐電圧試験
190 kV / 30 分
良
商用周波部分放電試験
114 kV / 5 pC 以下
良
雷インパルス耐電圧試験
± 650 kV / 各 10 回
良
長期課通電試験
152 kV
導体温度 90 ∼ 100 ℃←
→常温
× 20 サイクル
良
470±1
757±1
試験規格: IEC60840 Rated voltage 132 / 138 kV
図 2 長期課通電試験の試料組み立て
問合せ先:〒 105-0001
(a) Fluid-filled
(b) Dry-type
東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ケーブルシステム(株)
海外システム営業部 海外システムグループ
図 1 接続部の構造図
電話(03)3597─7045
FAX(03)3597─7113
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64
製
新
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介
36/40.5 kV C-GIS 用絶縁母線
Insulated bus bar systems for 36/40.5 kV C-GIS
1.概 要
3.構 造
C-GIS は受電ユニットや DS ユニットなどキュービクルに
様々な単位回路毎の機器を収納した構造で,現地据付時に
はキュービクル間を電気的に接続する必要がある。
キュービクル間の接続には SF6 ガスを絶縁媒体として使
用したガス母線を使用していたが,ガス母線は現地据付時
に SF 6 ガスの処理が必要になることから,当社は CV ケー
ブルを使用したケーブル母線を 1980 年代前半に開発・製品
連結導体
エポキシブッシング
化した。
今回,更なる簡易化・スキルレス化・作業性向上を目的
として,接続作業が簡略化された 36/40.5 kV
絶縁筒
絶縁栓
C-GIS 用絶
図 3 構造
縁母線を開発・製品化したので紹介する。
2.用 途
4.特 長
本製品の特長は以下の通りである。
絶縁母線
(1)絶縁筒をあらかじめエポキシブッシングに挿入してお
き,2 つ割りの連結導体を取付け後,絶縁筒を適当な
位置にずらすことで特別な技能を必要とせず接続作業
を行うことが可能である。
(2)部品点数が少なく,接続作業が簡略である。
5.特 性
C-GISユニット
図 1 C-GIS 構成例
項 目
特 性
定格電流
1250 A
商用周波耐電圧特性
95 kV / 1 分
商用周波部分放電特性
53.8 kV / 5 pC 以下
雷インパルス耐電圧特性
± 185 kV / 各 15 回
(GB / T 11022 準拠)
問合せ先:〒 105-0001
東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ケーブルシステム㈱
図 2 取付状態
電機産業システム営業部 電機システム機器グループ
電話(03)3597─7102
FAX
(03)3597─7156
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細径同軸ケーブル(KHCX)
High Frequency Coaxial Cable
1.概 要
2.用 途
パソコンのみならず家電やゲーム機までもがネットワーク
アンテナと基板を接続する比較的短距離の内部配線に使
に取り込まれている。これらのネットワーク化には,無線
用する。
LAN の技術が必須になってきている。また,無線技術も
・ノートパソコン用などの無線 LAN
指向性が無いという特徴からテレビやゲーム機のリモコン
・携帯端末および携帯電話
にも使われ始めており,益々広がりを増している。これら
・ノートパソコン内蔵 TV チューナ
の機器は,無線用アンテナと制御用回路を接続するアンテ
・ワンセグ TV チューナー
ナ用細径同軸ケーブルが使われている。
・リモコン
当社では,過去細径同軸ケーブルを2.4 GHz 帯および 5.2 GHz
帯に対応したアンテナ用細径同軸ケーブルなどを商品化し
3.特 長
てきたが,広範な使用用途に対しバリエーションを増やし
・ノートパソコンや携帯電話等省スペース要求が強い製品
商品化し,製造販売を行っている。
の内部配線に最適。
・屈曲性に優れており,屈曲部分への配線に使用可能。
・内部導体に銀めっき軟銅線を使用し,絶縁体とシースに
表 1 構造と電気特性
は電気特性,機械特性および可とう性に優れた FEP 及び
MFA を使用,細径化と高い耐屈曲性を実現した。
ケーブル構造
導体サイズ
−
32 AWG
(低減衰量タイプ)
32 AWG 36 AWG 34 AWG 37 AWG 38 AWG
内部導体
−
導体構成
本/mm
7/0.08
銀めっき軟銅より線
7/0.08
7/0.05
1/0.16
銀めっき軟銅より線
7/0.045
絶縁外径
mm
0.70
0.70
0.40
0.90
0.73
0.66
外部導体外径
mm
0.96
0.93
0.65
1.30
0.96
0.91
シース外径
mm
1.13
1.13
0.81
1.50
1.13
1.13
最大導体抵抗
(20 ℃)
Ω/km
597
597
1,357
2,144
2,600
3,300
最小絶縁抵抗
(20 ℃)
MΩ・km
1,500
1,500
1,000
1,000
1,000
1,000
7/0.04
電気特性
耐電圧
−
特性インピーダンス
Ω
50
50
50
75
75
75
pF/m
98
98
98
64
65
64
減衰量
0.5 GHz
(標準) dB/m
−
−
−
1.6
1.5
1.5
−
−
静電容量標準
(1 kHz)
AC 500 V/1min
AC 350 V/1min
図 1 ケーブル外観
1.0 GHz
(標準) dB/m
−
2.2
2.0
2.2
2.0 GHz
(標準) dB/m
2.5
2.9 以下 5.3 以下
−
2.8
3.1
2.4 GHz
(標準) dB/m
2.7
3.2 以下 5.9 以下
−
−
−
3.0 GHz
(標準) dB/m
3.0
3.7 以下 6.7 以下
−
−
−
4.0 GHz
(標準) dB/m
3.5
4.3 以下 7.9 以下
−
−
−
昭和電線ケーブルシステム(株)
5.0 GHz
(標準) dB/m
3.9
4.8 以下 9.2 以下
−
−
−
通信システム営業部
インターコネクション G
6.0 GHz
(標準) dB/m
4.3
5.3 以下 10.4 以下
−
−
−
電話(03)3597─7117
FAX
(03)3597-7199
問合せ先:〒 105-0001
東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
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介
6.6 kV 常温収縮型直線接続部〈オールインワンタイプ〉
Cold Shrinkable Straight Joint “All in one” Type
1.概 要
昨今,火気が不要,作業性が優れている等の利点から,常
温収縮型の終端/直線接続部が広く用いられている。従来タ
イプの常温収縮型直線接続部は,絶縁筒,防水保護チュー
5
ブの拡張には,各々単体の拡径保持材(インナーコア)が
4
3
2
1
必要であったが,このオールインワンタイプの常温収縮型
直線接続部(以下オールインワン)は,1 つの拡径保持材
上に絶縁筒,防水保護チューブを一体拡張させる画期的な
特徴を有している。これにより,挿入,組立まで 1 回の収
①導体接続管 ②絶縁筒 ③外部遮へい金属層
④防水保護チューブ ⑤水密テープ
縮作業で組立が完了し,作業スペースの縮小化,作業のス
キルレス等現行品と比較し大きな利点を有したる接続部と
図 1 オールインワン構造図
なっている。
3.特 長
2.構造・組立手順
【構 造】
オールインワンを用いることで以下の利点が得られる。
オールインワンは,電気的,機械的特性の優れたシリ
コーンゴムを用いた絶縁筒,外部金属遮へい層および耐候
性,機械的特性に優れた EPDM を用いた防水保護チューブ
・ケーブルへの事前挿入部材が 1 ピース/相のみであるこ
とより,狭所な施工環境でも施工が可能である
・1 回の収縮作業で絶縁筒,金属遮へい層,防水保護チュー
を,1 本の拡径保持材上へ一体拡径を施した接続材料を用
ブの基本的装着が可能であることより,作業時間の短縮,
いることを特徴とした常温収縮型直線用接続部である。
主要管理項目の削減が図れる
・収縮作業後,折り返された防水保護チューブを引き戻す
ことで防水保護チューブの装着が完了することより,装
着位置合わせが不要となる
写真 1 接続部材(一体拡径品)
・拡径保持材が 1 本/相であることより,廃棄物が大幅に
【組立手順】
削減される
①接続部材をケーブルへ事前挿入した後,処理を施した
ケーブルの導体接続を行う。
・ケーブル導体接続にシェアボルトコネクタ,接続部の金
属遮へい処理にはんだレス工法等を取り入れることによ
②接続部材をケーブル上の所定位置に移動させた後,拡径
り,更なる工具レス,熱源レス化も可能となる
【性 能】
保持材を解き収縮させる。
収縮
解き
JEC3409『高圧(6 kV)架橋ポリエチレンケーブル用接
続部の試験方法』に準拠した試験に対して,十分な性能を
有している。
③ケーブル遮へい銅テープと接続部材の金属遮へいメッ
シュを電気的に接続させる。
④水密テープ処理を施した後,防水保護チューブを引き戻
し,組立終了。
問合せ先:〒 229-1133
引き戻し
神奈川県南橋本 4 − 1 − 1
(株)エクシム 電力機器部 配電技術課
電話(042)773─6507
FAX
(042)773─6537
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
新
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品
紹
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介
QUIESCENT box
QUIESCENT box
表 1 防音ボックスの仕様
1.概 要
項 目
真空ポンプやコンプレッサなどの機器から発生する騒音
幅
ハイスペック
スタンダード
エコノミー
1,340
1,340
1,075
(mm)
が周囲で作業する人へ影響を与えるだけでなく,周囲の精
奥行き
(mm)
770
770
770
密機器に対して影響を与えるという問題が発生している。
高さ (mm)
1,075
1,075
770
概算質量(kg)
50
140
90
*
騒音低減量(dBA)
35
33
16
排気ファン
ファンつき
ファンつき
なし
吸音材
25F50
25F50
25F50
制振材
R-3
R-3
R-3
塗装色
アイボリー
アイボリー
アイボリー
これに対して当社の防音ボックスは,当社独自の製品で
ある制振材と低周波吸音材を採用し低周波から高周波まで
の幅広い範囲の騒音の防音に有効である。図 1 に低周波吸
音材,図 2 に制振材の外観を示す。
*
真空ポンプ(消費電力 700 W)運転時の騒音レベル低減量
また,用途・予算に応じた 3 種類のラインナップを取り
揃えている。図 3 に防音ボックスの外観,表 1 に防音ボッ
クスの主な仕様を示す。
2.用 途
図 1 低周波吸音材
防音ボックスは低音から高音までの幅広い騒音を発生す
る下記の産業機器の騒音低減に有効である。
(1)真空ポンプ
(2)コンプレッサ
(3)電力機器
(4)破砕機
3.特 徴
図 2 制振材ショウダンプ R-3
当社の防音ボックスは,従来の製品と比較して以下の特
徴がある。
(1)低音を発生する機器の騒音低減効果が高い
(2)運転時に熱を発生する機器の排熱を妨げない
(3)用途・予算に応じたラインナップを選べる
クワイセントは昭和電線デバイステクノロジー株式会社の登録商標です。
ショウダンプは昭和電線デバイステクノロジー株式会社の登録商標です。
問合せ先:〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線デバイステクノロジー㈱
QCAプロジェクト
図 3 防音ボックス外観
電話(03)3597─7058
FAX
(03)3503─2107
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68
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介
EL ショウマウント獏 (EL-230-EX)
EL-SHOWMOUNT (EL-230-EX)
1.概 要
昨今の射出成型機では高出力・ハイサイクル化が進んで
きている。また工場では振動・騒音などの職場環境の改善
が要求されてきている中,振動騒音の発生源に対するさら
なる改善が要求されてきている。このようなニーズに答え
るため,当社では従来の EL ショウマウントに加えて,大
型 EL ショウマウント EL-230-EX を開発した。
2.用 途
今回,紹介する防振デバイスは,射出成型機,プレス機,
シャーリング,ベンダーや各種工作機械などで,動作振動
図 2 製品外観
を発生する産業機械を対象とした防振ゴムである。
3.特 長
レベリングボルト
(1)基礎にアンカーボルトで固定することなく,工場床上
に機械設備を簡単に設置することができる。
(2)簡単に機械設備のレイアウトを変更することができる,
上金具
下金具
レベリング機構を備えた防振マウントである。
(3)機械設備が発生する振動から床面への振動伝達防止と
衝撃の緩衝に効果がある。
(4)従来の EL-230 と同一サイズながら,許容荷重を 49 kN
から 80 kN に向上,かつ EL-230-HC と同じばね定数で
ある。
ゴム
図 1 EL-230-EX の構造
表 1 EL-230-EX の仕様
項 目
仕 様
ゴム材質
NBR
使用温度範囲
− 20 ℃∼+ 70 ℃
静的ばね定数(圧縮方向)
35 kN/mm
許容荷重
80 kN
レベル調整量
最大 12 mm
問合せ先:〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線デバイステクノロジー(株)
営業統括部 クワイセント営業課
電話(03)3597─7058
FAX
(03)3503─2107
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
ト
ピ
ッ
ク
Vol. 58, No. 1 (2008)
69
ス
110 kV ダイレクトモールド気中終端接続部
110 kV Direct-Molded Outdoor Sealing End
表 1 構造比較
1.概 要
66/77 kV の完全乾式の気中終端接続部(エポキシ表面
にシリコーンゴムをモールドした固体絶縁構造の気中終端
項 目
磁器がい管品(BC-151F)
汚損区分
重汚損
DM-EB-A
重汚損
質量(本体)
約 400 kg
約 100 kg
接続部。以下 DM-EB-A と表記)は電力会社,機器メーカ
平均直径
0325 mm
0195 mm
に広く適用されている。今回この技術に,非線形性を有す
気中部全長
2747 mm
1435 mm
る材料(以下非線形材料と表記)を付加した完全乾式の
110 kV DM-EB-A を開発し納入した。
2.構 造
110 kV DM-EB-A の構造を図 1 に示す。構造は 66/77 kV
の EB-A と同寸法で,内部に非線形材料を電界緩和層とし
て付加することで外部絶縁の電界を平準化させ,従来の
110 kV に比較して大幅なコンパクト化を実現した。
ダイレクトモールド
④
⑤
③
BC151F
①
②
①内部導体 ②シリコーンゴムモールド部
③エポキシモールド部 ④フランジ ⑤電界緩和層
4.開発試験
JEC-3408 規格にもとづく開発試験を行い十分な性能を有
することを確認した。
表 2 開発試験
図 1 110 kV ダイレクトモールド気中終端接続部
3.特 長
今回の製品の特長を以下に示す。
項 目
特 性
結 果
商用周波部分放電試験
135 kV / 5 pC 以下
良
商用周波耐電圧試験
210 kV / 1 時間
良
雷インパルス耐電圧試験
± 760 kV / 各 3 回
良
曲げ耐荷重試験
3500 N
良
105 kV
①軽量・コンパクト
大幅な軽量化,コンパクト化を実現した。
②汚損性能
長期課通電試験
導体温度 90 ℃←
→常温
× 30 サイクル
良
(内 5 サイクルは 105 ℃)
平均直径が細いため,コンパクト化しても従来品の磁器
がい管品(BC-151F)と同等の汚損性能を有する。
③環境調和
内部絶縁にガス・油を使用しないことから,環境に配慮
した製品。
問合せ先:〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ケーブルシステム㈱
電機産業システム営業部 電機システム機器グループ
電話(03)3597─7102
FAX
(03)3597─7156
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
70
ト
ピ
ッ
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Vol. 58, No. 1 (2008)
ス
66/77 kV GIS 用 課電口の開発
Development of Testing Device for 66/77 kV Gas Insulated Switchgear
1.概 要
図 3 に本課電口の外観を示す。
66/77 kV のガス絶縁開閉器(GIS)について機器単体お
よび接続されたケーブルの耐電圧試験を行う場合がある。
そこで GIS 本体にはガスレス処理を行わず,これらの耐電
圧試験に対応できるよう,専用の課電口を設けている。
当社ではケーブル終端接続部と課電口を一体化させた T 形
終端接続部をすでに開発し,多くの機器で使用されている。
今回,ケーブルの接続点が無いために T 形終端接続部を
用いない GIS 等にも耐電圧試験が可能になるコンパクトな
直形課電用終端接続部(課電口)を開発した。
図3
この課電口は,現有の T 形終端接続部で使用している課
電リードケーブルが共用でき,機器メーカーの機器設計の
3.特 長
自由度を上げることを可能とした。
①現有の T 形終端接続部のリードケーブルおよび絶縁栓が
2.構 造
図 1 に絶縁栓取付け時,図 2 にリードケーブル取付け時
の課電口構造を示す。
使用可能。
②上部シールドおよびエポキシフランジが一体形構造のた
め,部品数を低減。
③ 800 A まで通電が可能であり,66/77 kV 緊急送電用接続
部として適用可能。
④特性は JEC-2350 および JEC-3408 に準拠。
(表 1)
155±2
表 1 特 性
50±2
図 1 66/77 kV GIS 用 課電口(運転時)
項 目
特 性
試験結果
商用周波耐電圧特性
160 kV / 1 分間
(ガス圧 0.4 Mpa)
150 kV / 1 時間
(ガス圧 0.4 Mpa)
良
雷インパルス耐電圧特性
± 400 kV / 各 3 回
(ガス圧 0.4 Mpa)
± 550 kV / 各 3 回
(ガス圧 0.4 Mpa)
良
商用周波部分放電特性
(エポキシ単体)AC95 kV / 5 pC 以下
良
ヒートショック特性
0 ℃←
→ 100 ℃ 各 1 時間× 10 回
(温度差 90 ℃以上)
良
気密特性
0.65 MPa ・ G にて
ガス漏れ量 0.5 % / 年以下
良
曲げ耐荷重特性
3000 N / 1 分
良
本課電口は(株)
日本 AE パワーシステムズ殿の委託開発である。
問合せ先:〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ケーブルシステム
(株)
電機産業システム営業部 電機システム機器グループ
図 2 66/77 kV GIS 用 課電口(試験時)
電話(03)3597─7102
FAX
(03)3597─7156
昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
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Vol. 58, No. 1 (2008)
71
ス
関越トンネルにショウタッチ獏 付き分岐ケーブルを納入
Supply of Branch Cable with Show Touch for KAN-ETSU Tunnel
1.概 要
水噴霧試験にも耐えうる特長を有しています。塩水噴霧試
当社は,東京と新潟を結ぶ高速自動車国道,関越自動車
験とは,5%NaCl の食塩水を 720 時間噴霧し,性能を評価
道 関越トンネルにトンネル照明用コネクタ『ショウタッ
するもので,ショウタッチ 獏は密閉性に優れ,耐腐食性と
獏
チ 』を採用した分岐ケーブルを納入しました。
所定の電気特性を満足しています。
関越トンネルは,谷川連峰を貫き,群馬県みなかみ町と
また,ショウタッチ 獏は,分岐ケーブルにプラグが,照
新潟県湯沢町の県境を結ぶ日本最長(上り線 11,055 m,下
明器具にレセプラクルがそれぞれ装着されているため,う
り線 10,926 m)の自動車用トンネルで,新潟県側の湯沢町
す暗いトンネル内でも接続が容易であるなど,過酷な周囲
は川端康成の名作『雪国』の舞台としても有名です。
環境下での性能とともに布設時の作業性が高く評価されて
このたび当社では,トンネル全体の約 1/3 にあたる工区
います。
において,幹線数 243,分岐数 2,441 のケーブルとそれに付
随して 1,249 個のショウタッチ獏を納入しました。
図 1 関越トンネル(上り線新潟側)
2.特 長
関越自動車道の新潟県側は我が国有数の豪雪地帯にあ
り,冬期間は厳しい気象条件下におかれます。こうした背
景により,高速道路の各施設では自動車用道路としての安
全性を確保するため様々な雪氷対策が行われています。
図 2 照明器具とショウタッチ獏
例えば,凍結を防ぐため路面には融雪材が効果的に散布
されますが,一方では,道路沿いの配置物は融雪材成分に
影響を受けやすく,トンネル内の照明装置にも過酷な環境
性能が必要とされます。
問合せ先:〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ケーブルシステム株式会社
エネルギーシステムユニット 技術・品質保証部
ショウタッチ獏は IEC 規格で最も厳しい IP67 の防塵性と
技術・品質保証 1 課
防水性に合格し,また,実フィールドの塩害を想定した塩
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ス
低周波吸音材を使用した真空ポンプの
騒音対策の事例
The example of the countermeasure of the vacuum-pump sound
by the Low Frequency Sound Absorbing Materials
表 1 真空ポンプの主な諸元
1.概 要
事業場騒音の規制対象となる工場・事業場はもとより,
真空ポンプの種類
ドライポンプ
到達真空度
(kPa)
規制対象外の工場等においても,作業環境の改善が近年行
寸法(幅×奥行×高) (mm)
われる様になってきている。
質量
86 以上
254 × 608 × 269
(kg)
36
騒音源となる機器・設備は,比較的低い周波数(100 ∼
200 Hz)からの騒音が発生している場合が多い。防音対策
としては,騒音源の防振対策と騒音源をパネルや壁で完全
表 2 クワイセント・ボックスの主な諸元
寸法(幅×奥行×高) (mm)
に覆う対策を採ることが望ましいが,ほとんどの機器・設
吸音材型式
備は,換気のための開口部が必要となる。開口部を設ける
質量
505 × 880 × 774
25B25
(kg)
82
と,この部分から音が漏れ,防音効果は小さくなる。特に,
低い周波数の音があまり低減されないで外部に放射されて
しまう。これを改善するためには,防音パネル等の内部に
使用する吸音材に低い周波数帯から高い周波数帯まで,高
い吸音性能を持つ材料を使用する必要がある。
今回,工場設備の真空ポンプに対して,低周波吸音材を
使用した電動ファン付き防音ボックス(クワイセント・ボッ
クス)で騒音対策を行ったので,紹介する。
図 1 クワイセント・ボックスの外観
2.低周波吸音材の真空ポンプへの適応事例
オールパスの騒音レベル(dBA)
クワイセント・ボックスの主な諸元を表 2 に,外観を図 1
に示す。また,クワイセント・ボックスの効果を図 2 に示
16 kHz
8 kHz
4 kHz
2 kHz
30
1 kHz
40
500 Hz
吸音材 25B25 を配置。
50
250 Hz
2.真空ポンプ廻りの壁と排気通路の一部の壁に低周波
60
125 Hz
真空ポンプの下に配置。
70
63 Hz
1.設置面積を最小にするために,換気用電動ファンを
80
31.5 Hz
今回のクワイセント・ボックスとしての特徴としては,
ポンプ本体
5方向平均
防音ボックス
5方向平均
オールパスの音圧レベル(dB)
AP(A)
表 1 に示す。
音圧レベル(bB)
でも使用できるドライポンプである。真空ポンプの諸元を
90
16 Hz
今回騒音対策の対象にした真空ポンプはクリーンな環境
1/3オクターブバンド中心周波数
図 2 クワイセント・ボックスの効果
す。ここで,測定位置はボックスの各辺中心より 1 m 離れ,
高さ 1 m の位置(4 点)とボックスの天板中心より高さ 1 m
の位置(1 点)の 5 点を測定し,エネルギー平均をプロット
している。図 2 から明らかなように,従来の吸音材では対
応が困難であった 125 Hz 以上で大きな効果が見られる。そ
の結果,騒音レベル* 1 で約 25 dBA,音圧レベルで約 12 dB
の低減が得られた。
* 1 :騒音レベルは,音圧レベルを聴感補正(人は 1 kHz 以下の周波数では,
周波数が低くなるほど聞こえにくくなる)したもの
問合せ先:〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 1−1−18(東京虎ノ門ビル)
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QUIESCENT panel の応接室への適応
Adaptation to the officer drawing room of the QUIESCENT panel
1.概 要
5,000
会議室などの空間は通常音響など考慮された設計がされ
ている場合が少なく意匠性が重視されがちである。
4,000
本製品は会議室の壁面に設置するだけで部屋の残響時間
を制御し会話のしやすい空間に改善する。今回,応接室に
実際に設置し,残響時間の測定及び聴感による話しやすさ
の改善効果を確認した。
グレー色部分:パネル設置位置
2.製品概要
図 2 パネル外観図
本製品は低周波吸音材(広帯域型 25F50)をベースに木
1.0
製ウレタン塗装を施した額縁に収めており,表層には昭和
交換可能である。(表 1)
クワイセントパネルを設置した写真を図 1,外観写真を
図 2 に示す。また図 3 に応接室に設置したパネルのレイア
ウト配置図を示す。図 4 に応接室でパネル有無による残響
残響時間(秒)
電線の各事業所の航空写真及び社名ロゴを印刷している。
表層材は音響的に影響の少ない素材を使用しており容易に
0.9
パネルあり
0.8
パネルなし
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
時間の比較データを示す。低周波から高周波まで残響時間
0.2
が短くなり響きの少ない状態に改善されたことが判る。
0.1
表 1 主な仕様
吸音材
低周波吸音材 広帯域型 25F50
寸法(mm)
635(W)× 945(H)× 95(D)
額縁材
木製ウレタン塗装
表層材
印刷可能な音響的に透明な生地
質量(kg)
7.5
図 3 応接室レイアウト図
0.0
125
250
500
1000
2000
4000
1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)
図 4 周波数別の残響時間
3.特 長
クワイセントパネルの特長は以下の通りである。
(1)残響時間の制御が可能
(2)大きな工事をせずに設置が可能
(3)容易に設置場所の移動が可能
(4)広告的な機能も付加
クワイセントは昭和電線デバイステクノロー株式会社の登録商標です。
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図 1 パネル設置写真
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1 MV ホログラフィー電子顕微鏡付属真空ポンプ用
防音ボックスの納入
The delivery of a soundproofing box for vacuum pumps attached to
the 1 MV holography electron microscope
1.概 要
ナノテク分野や半導体分野において従来に増して微細な
寸法形状や構造の観察が重要となってきている。これらを
実現する理化学機器や検査装置などはその観察,検査の対
象がナノメートルからピコメートルの世界に移ろうとして
おり,その性能・機能を満たすための振動対策はもとより,
環境騒音の対策の重要性が増してきている。
(独)
理化学研究所殿では,㈱日立製作所基礎研究所殿と
共に文部科学省プロジェクト「次世代の電子顕微鏡要素技
術の開発」が実施されており,その中で日立製作所基礎研
究所殿が保有する 1 MV ホログラフィー電子顕微鏡への騒
音・音響の影響が検討された。今回,上記研究の一環とし
て真空ポンプ用防音ボックスを理化学研究所殿に納入した
のでその概要を紹介する。
図 1 電子顕微鏡の外観(写真提供:㈱日立製作所殿)
2.用 途
(1)対象電子顕微鏡
・加 速 電 圧: 1 MV
・最高分解能:格子分解能 49.8 pm(ピコメートル)
(2)防音対象
①ターボモレキュアーポンプ(TMP)
・メ ー カ:エドワーズ製
残響室法吸音率(−)
1.2
1 MV ホログラフィー電子顕微鏡(図 1 参照)
1.0
0.8
0.4
0.2
(財)小林理学研究所測定値
0.0
・型 式: STP-451
・外 形 寸 法:φ 203 × 202(mm)
②ロータリーポンプ(RP)
25F75
25F50
25F25
0.6
125
250
500
1000
2000
1/3 オクターブバンド周波数(Hz)
図 2 吸音材の基本性能
・メ ー カ:アルカテル製
・型 式: PASCAL
2021 蠢型
・外 形 寸 法: 164 × 483 × 240 mm
3.防音ボックスの特長
(1)防音ボックス内寸法: 640 × 520 × 593 mm
(2)制音デバイス:機械設備用低周波吸音材 25F50
(ガラスクロスラッピング)
(3)デバイスの基本性能(図 2 参照)
(4)ポンプ収納状態(図 3 参照)
図 3 真空ポンプ収納状態
4000
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4.効 果
(1)ポンプ騒音低減効果
2 台の真空ポンプを収納している防音ボックスの効果を
確認するために防音ボックスの開閉状態を以下に示す 2 条
件で電子顕微鏡(EM)近傍の音圧レベルを測定した。
条件 1 :上面および全面カバー開放(図 3 の状態)
条件 2 :全閉
図 4 に騒音低減効果を示す。125 Hz から 4 kHz まで最大
22 dB の音圧レベル低減が確認された。5 kHz 以上につい
ては暗騒音レベルと考えられる。
50
40
30
20
8000
12500
5000
3150
2000
800
1250
500
315
200
80
125
20
12.5
0
50
EM近傍・防音ボックス2面開放
EM近傍・防音ボックス全閉
10
31.5
音圧レベル(dB)
60
1/3 oct.バンド中心周波数(Hz)
図 4 防音ボックスの騒音低減効果
5.今 後
今後ますます進む微細構造の探求に振動,騒音対策の高
性能化,高機能化で貢献していきたい。
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錫プラグ入り積層ゴムアイソレータの公開大変形試験
Open Test of the Rubber Bearing with Tin Plug
共同開発を行っている住友金属鉱山シポレックス㈱殿お
よび㈱免制震ディバイス殿と 2008 年 7 月 29 日,30 日に相
模原事業所にて錫プラグ入り積層ゴムアイソレータの公開
大変形試験を実施致しました。
両日合わせて 60 名ものお客様が試験をご見学され,ご好
評を頂きました。
水平荷重(kN)
1.概 要
2000
1500
1000
500
0
-500
-1000
-1500
-2000
-800 -600 -400 -200
0
200 400
水平変位(mm)
600
800
図 1 水平荷重−水平変位履歴
(σ =15 N/mm2, γ = ± 100%-± 200%-± 300%-± 100%)
2.試験概要
試験体はゴム径φ 1200 mm,錫プラグ径φ 240 mm の錫
プラグ入り積層ゴムアイソレータを使用しました。試験体
の詳細を表 1 に,試験条件を表 2 に示します。試験は 35 MN
圧縮せん断試験機を用いて行いました。
試験時の水平荷重と水平変位の関係を図 1 に示します。
図 1 よりせん断ひずみγ= ± 100% -± 200% -± 300%の履歴
曲線の形状であり大変形領域まで安定した特性であること
が確認できます。
また,初期γ= ± 100%とγ= ± 300%後のγ= ± 100%の
履歴は,ほぼ一致しており大変形後も基本特性に大きな変
化がないことが確認できます。
表 1 試験体諸元
寸法など
ゴム外径 D
φ 1200 mm
錫プラグ径 d
φ 240 mm
ゴム層構成 t r ×n
9.0 mm × 22 層
装置形状
S1(*1)=32.0,S2(*2)=6.1
2
*1:S1=
図 2 試験状況(変形時)
項 目
2
D −d
4・tr・D
*2:S2=
D
ntr
表 2 試験条件
面 圧
(荷 重)
速 度
15 N/mm2
(16286 kN)
5 mm/s
せん断ひずみ
(水平変形)
サイクル数
± 100% 1 回目
(± 198.0 mm)
1
± 200%
(± 396.0 mm)
1
± 300%
(± 594.0 mm)
1
± 100% 2 回目
(± 198.0 mm)
1
※せん断ひずみγ=100%は,ゴム総厚 100%です。
今回の試験体では 9 mm × 22 層= 198 mm が 100%となります。
図 3 見学状況(7 月 30 日 30 名)
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ス
35 MN 圧縮せん断試験機の導入
Introduction of the 35 MN compression shear test machine
↓鉛直荷重
1.概 要
水平荷重→
2007 年下期に 2 軸の免震試験機としては国内最大級の
35 MN 圧縮せん断試験機を導入しました。当社の免震部材
の超高層ビルへの採用に伴い,前年の製造設備の増強に続
き,大型製品の検査・試験に対応するため約 1 年をかけて
検査設備を整えました。
2.試験機導入まで
←水平荷重
図 2 性能確認試験(圧縮せん断試験)
本試験機の導入は製造設備の増強及びφ 1300 以上の大サ
イズ積層ゴムアイソレータを使用する物件に合わせて導入
しました。図 1 に試験機全景を示します。
表 1 に 35 MN 圧縮せん断試験機の主な仕様を示します。
既存の 25 MN 圧縮せん断試験機と比べても試験力は鉛直方
向・水平方向ともに向上し,ストローク幅が大きくなった
ことにより大型の試験体にも数多く対応することが出来る
ようになりました。
表 1 35 MN 圧縮せん断試験機主な仕様と比較
新設 35 MN 試験機
鉛直
方向
水平
方向
図 1 35 MN 圧縮せん断試験機全景
本試験機は性能確認試験を繰り返し実施し,測定精度が
十分であることを確認しました。
試験力
既存 25 MN 試験機
圧縮: 35 MN
圧縮: 25 MN
引張: 3.5 MN
引張: 2.5 MN
ストローク
1000 mm
500 mm
最大速度
2 mm / sec
1 mm / sec
試験力
± 8 MN
± 6 MN
ストローク
± 800 mm
± 600 mm
最大速度
10 mm / sec
10 mm / sec
3.ま と め
この試験機の導入により今まで 25 MN 試験機で試験出来
なかった大サイズの免震部材にも対応出来るようになりま
さらに動力源の自動停止など環境への配慮を行うととも
した。さらに 2 台で運用することで使用荷重別の試験が可
に安全性も十分確保しました。性能確認試験風景を図 2 に
能となり,従来の検査効率の 2 倍以上の効果を得るまでの
示します。
検査体制を整えることが出来ました。
今後の需要拡大を見込んでいるφ 1500 積層ゴムアイソレー
タは通常の使用荷重で 2.6 × 104 kN,最大では 3.4 × 104 kN
にもなり試験機の最大能力を要する試験になります。現状
の国土交通大臣の認定では製品の全数検査は必須で,すべ
ての製品の確認を行い安全性と品質を保っています。
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工
事
紹
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介
ケーブル破砕機の防音対策工事の実施例
Example of execution construction of soundproofing measures of the cable crusher
1.概 要
近年,様々な環境問題が取り上げられる中,騒音改善に
対する施策も積極的に行われている。例えば工場では機械,
設備などが発生源となり,作業効率の低下や健康障害の原
因のひとつになっている。また,発生職場はもとより近隣
への低騒音化が強く求められている。その要求が強まるに
制振材
ショウダンプR1
防音室内部
防音室(破砕機本体用)
防音室(分離機用)
防音室内部
つれて,快適な環境に対する考え方が必要不可欠になって
きている。
昭和リサイクル株式会社殿は,廃電線等のマテリアルリ
サイクル処理を主な事業内容として限りある資源のリサイ
クルに取組み,相模原・仙台・愛知の 3 作業所にて展開し
ている。今回は,仙台及び相模原作業所内に設置されてい
るケーブル用ナゲット式電線解体装置(破砕機)を対象に
図 1 仙台作業所騒音対策実施例
制音化を実施した。
2.適応事例
今回の騒音源としては,
・廃電線が破砕機のローターにより破砕される際の衝撃音。
・破砕された廃電線が破砕機内部で内壁に衝突する際の衝
低周波吸音材
25F75
防音壁内部
防音壁(フルイ機用)
防音室(破砕機本体用)
防音壁(フルイ機用)
撃音。
・その衝撃による薄鋼板の振動による 2 次音。
・廃電線構成材料の分別回収する為のフルイ機及び分離機
の運転音等が考えられる。
その騒音対策として,
・破砕機外面への制振材ショウダンプ R1 の貼り付け。
・破 砕 機 , フ ル イ 機 及 び 分 離 機 外 周 へ の 低 周 波 吸 音 材
25F75 を使用した防音室(壁)の設置を実施した。
表 1 に騒音対策前後の騒音低減効果を示す。また,騒音
対策実施例を図 1 および図 2 に示す。
図 2 相模原作業所騒音対策実施例
3.騒音低減効果
破砕機,フルイ機および分離機の騒音対策により最大
表 1 騒音対策前後の騒音低減効果
約 15 dB(A)の騒音低減効果が得られた。現場の作業者の
単位: ALLPASS dB
(A)
No.
1
2
測定箇所
対策前
対策後
騒音低減効果
作業者 A
105.6
91.7
13.9
作業者 B
107.9
93.5
14.4
作業者 A
94.2
86.3
7.9
作業者 B
95.3
89.5
5.8
作業所
仙台
相模原
方々から「作業場での会話が容易にできるようになった」,
「工場内の浮遊粉塵が激減した」などと大変満足して頂き,
大幅に作業環境が改善された。
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社外技術発表一覧表
(2007.1 ∼ 2008.9)
昭和電線デバイステクノロジー株式会社 ……………39 件
[第 77 回 2007 年度春季低温工学・超電導学会]
昭和電線ケーブルシステム株式会社 …………………14 件
(2007 年 11 月 20 日∼ 22 日)
関係会社 …………………………………………………12 件
配向NiW基板上に形成したフィラメント状YBCO線材の電流輸送特性
・・・・・・・・・・・・・・本山皓士 3),阿比留健志 3),井上昌睦 3),木須隆暢 3),
[平成 19 年電気学会全国大会]
塩原 融 2),青木裕治,高橋保夫,長谷川隆代
(2007 年 3 月 15 日∼ 3 月 17 日)
110 kV ダイレクトモールドブッシングの開発
配向 Ni-W 合金基板の熱伝導度
・・・・・・・・・・・・・・・・・・足立和久,荻島みゆき,新舘 均,品川潤一,
・・・・・・・・・・・・・・阿部雄樹 4),加藤卓弥 4),亀卦川尚子 4),塩原 融 2),
汪 士楠,瀬間信幸
青木裕治,高橋保夫
非線形材料を使用した気中ブッシングの検討
TFA-MOD 法により作製した YBCO 線材の磁界特性とソレノイド
・・・・・・・・・・・・・・・・・・品川潤一,足立和久,荻島みゆき,新舘 均,
コイルの試作
汪 士楠,瀬間信幸
・・・・・・・・・引地康雄,小泉 勉,西岡淳一,青木裕治,長谷川隆代,
飯島康裕 5),齋藤 隆 5),中西達尚 2),和泉輝郎 2),
宮田成紀 2),山田 穣 2),塩原 融 2)
[第 76 回 2007 年度春季低温工学・超電導学会]
(2007 年 5 月 16 日∼ 17 日)
TFA-MOD 法による低コスト YBCO 線材
TFA-MOD 法による低コスト YBCO 線材(6)─長尺線材における
臨界電流向上─
・・・・・・・・・小泉 勉,高橋保夫,兼子 敦,青木裕治,長谷川隆代,
5)
5)
2)
2)
2)
2)
・・・・・・・・・小泉 勉,高橋保夫,兼子 敦,青木裕治,長谷川隆代,
2)
飯島康裕 5),齋藤 隆 5),中西達尚 2),和泉輝郎 2),
飯島康裕 ,齋藤 隆 ,中西達尚 ,和泉輝郎 ,
宮田成紀 ,山田 穣 ,塩原 融
宮田成紀 2),山田 穣 2),塩原 融 2)
TFA-MOD 法 YBCO 線材の機械特性
Batch 式焼成プロセスによる Ni-W 基板上 YBCO 線材の長尺線材の
・・・・・・・・・兼子 敦,高橋保夫,小泉 勉,青木裕治,長谷川隆代,
2)
2)
2)
2)
中西達尚 ,和泉輝郎 ,宮田成紀 ,山田 穣 ,
塩原 融
作製
・・・・・・・・・兼子 敦,高橋保夫,小泉 勉,青木裕治,長谷川隆代,
2)
中西達尚 2),和泉輝郎 2),塩原 融 2)
配向 Ni-W 合金基板を用いた YBCO 長尺線材の開発
TFA-MOD 法による Y 系線材高 Ic 化のための中間層特性向上の検討
・・・・・・・・・高橋保夫,小泉 勉,兼子 敦,青木裕治,長谷川隆代,
・・・・・・・・・高橋保夫,小泉 勉,兼子 敦,青木裕治,長谷川隆代,
塩原 融
2)
飯島康裕 5),中西達尚 2),和泉輝郎 2),塩原 融 2)
配向 Ni-W 合金基板上の LTG-Sm1+xBa2-XCu3Oy 薄膜の表面形態
[第 38 回電気電子絶縁材料システムシンポジウム]
と磁場中 Jc 特性
6)
6)
6)
6)
(2007 年 11 月 21 日∼ 22 日)
・・・・・・・・・・・・・・・・山口俊輔 ,吉田 隆 ,一野祐亮 ,高井吉明 ,
和泉輝郎 2),塩原 融 2),高橋保夫,青木裕治
66/77 kV 壁貫通ダイレクトモールドブッシングの開発・実用化
TFA-MOD 法 YBCO テープ線材の交流損失の温度スケーリング
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今西 晋,橋口 宏,瀬間信幸,佐藤干城 10)
・・・・・・・・・・・・・・・・末吉貴洋 3),禅院康弘 3),岩熊成卓 3),船木和雄 3),
屋外用ポリマー絶縁材料の表面機能と長期性能調査専門委員会活動
2)
2)
2)
鈴木賢次 ,和泉輝郎 ,塩原 融 ,青木裕治,
報告
長谷川隆代,小泉 勉
・・・・・・・・・・・・・・・・本間宏也 12),所 哲郎 13),平野嘉彦 14),植田正明
[平成 19 年電気学会 電力・エネルギー部門大会]
(2007 年 9 月 12 日∼ 14 日)
110/132 kV 縮小形 Y 分岐接続部の開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高安央也,瀬間信幸
[平成 20 年電気学会全国大会]
(2008 年 3 月 19 日∼ 3 月 21 日)
66/77 kV ダイレクトモールドブッシングのフィールド調査
・・・・・・・・・・・・・・・・・・野口 茂 15),渡辺誠吾 7),今西 晋,瀬間信幸,
山岸 明 16),大都聡一 16)
IEC 規格準拠 123/170 kV スマート終端接続部の開発
66 kV CV ケーブル用 縮小型 T 形ガス中終端接続部の開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高安央也,瀬間信幸
・・・・・・・・・・・・・・・・・・島津正毅 11),大牧寛明 11),今西 晋,瀬間信幸
【第 55 回応用物理学会】
(3 月 27 日∼ 30 日)
押出成型法による酸化物熱電変換素子の開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・西岡淳一,中村倫之,日下雅文,舟橋良次 9)
社外技術発表一覧表
80
【第 78 回 2008 年度春季低温工学・超電導学会】
[8th European Conference on Applied Superconductivity]
(2008 年 5 月 26 日∼ 28 日)
Ni-W 基板を用いた TFA-MOD 高 Ic 線材の検討
Development of the 200m long YBCO coated conductor by
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高橋保夫,小泉 勉,兼子 敦,青木裕治,
1)
長谷川隆代 ,塩原 融
(2007 年 9 月 16 日∼ 20 日)
2)
TFA-MOD process using a batch-type furnace
・・・・・・・・・・・・・T. Koizumi,Y. Hikichi,Y. Takahashi,A. Kaneko,
Batch 式焼成プロセスによる Ni-W 基板上 YBCO 線材の長尺化(2)
Y. Aoki,T. Hasegawa,T. Nakanishi2),T. Izumi2),
─ Batch 式本焼による 50 m 線材の作製─
S. Miyata2),R. Kuriki2),Y. Yamada2),Y. Shiohara2)
・・・・・・・・・高橋保夫,小泉 勉,兼子 敦,青木裕治,長谷川隆代,
和泉輝郎 2),塩原 融 2)
[20th International Symposium on Superconductivity
(ISS2007)]
[電気学会 誘電・絶縁材料研究会]
(7 月 25 日)
(2007 年 11 月 5 日∼ 7 日)
DEVELOPMENT OF TFA-MOD PROCESS USING A BATCH
主要なポリマーナノコンポジット誘電体の特性(Ⅱ)
TYPE ELECTRIC-FURNACE FOR LONG LENGTH YBCO
・・・・・・・・・・・・・・・・・・箕輪昌啓,後藤一敏 1),師岡寿至 7),津久井勤 8)
COATED CONDUCTOR
・・・・・・・・・・・・・・・Y. Aoki,T. Koizumi,Y. Takahashi,A. Kaneko,
[第 5 回日本熱電学会学術講演会]
T. Hasegawa,T. Nakanishi2),T. Izumi2),
(8 月 21 日∼ 22 日)
S. Miyata2),Y. Yamada2),Y. Shiohara2)
押出成型法による酸化物系素子及びモジュール
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日下雅文,中村倫之,西岡淳一,舟橋良次 9)
SUPERCONDUCTING PROPERTIES IN MAGNETIC FIELDS
OF LTG-Sm1+xBa2-XCu3Oy FILMS ON Ni-W TEXTURED
[平成 20 年電気学会 電力・エネルギー部門大会]
SUBSTRATE
(2008 年 9 月 24 日∼ 26 日)
・・・・・・・・・・・S. Yamaguchi6),Y. Yoshida6),Y. Ichino6),Y. Takai6),
T. Izumi2),Y. Shiohara2),Y. Takahashi,Y. Aoki,
IEC 規格準拠 220/345 kV スマート終端接続部の開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 李 鋒,高安央也,瀬間信幸
T. Hasegawa
220/230 kV 気中終端接続部の構造簡素化
DEVELOPMENT OF THE LONG YBCO COATED CONDUCTOR
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 足立和久,新舘 均,瀬間信幸
BY TFA-MOD PROCESS USING A BATCH TYPE FURNACE
・・・・・・・・・・・・・・T. Koizumi,Y. Takahashi,A. Kaneko,Y. Aoki,
T. Hasegawa,T. Nakanishi2),T. Izumi2),
[平成 20 年度関東地方発明表彰 発明奨励賞受賞](2008 年 11 月)
S. Miyata2),Y. Yamada2),Y. Shiohara2)
特許第 3744876 号 乾式ケーブル端末用ポリマー套管
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 瀬間信幸
HIGH Ic YBCO COATED CONDUCTOR ON THE CeO2/CZO
BUFFERED CUBE TEXTURED Ni-W TAPES BY TFA-MOD
[研究会名:ニューガラスフォーラム 評価技術研究会
PROCESS
第 3 回研究会 繊維状ガラス関連の最新評価技術]
・・・・・・・・・Y. Takahashi,A. Kaneko,T. Koizumi,Y. Aoki,
(2008 年 2 月 7 日)
00
T. Hasegawa,T. Nakanishi2),T. Izumi2),Y. Shiohara2)
石英系光ファイバの破断という観点でのコネクタと高屈曲性ファイ
MECHANICAL PROPERTIES OF YBCO COATED CONDUCTORS
バの信頼性
ON Ni-3at%W SUBSTRATE USING TFA-MOD PROCESS
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 森下裕一
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A. Kaneko,Y. Takahashi,T. Koizumi,
Y. Aoki,T. Hasegawa,T. Nakanishi2),
Y. Yamada2),T. Izumi2),Y. Shiohara2)
[7th International Conference on Power Insulated Cables,
JICABLE '07]
(2007 年 6 月 24 日∼ 28 日)
MAGNETIC PROPERTIES OF YBCO COATED CONDUCTOR
Development of outdoor-sealing-end of prefabricated-composite-
BY TFA-MOD PROCESS AND FABRICATION OF THE
insulator for 66/77 kV XLPE cable
SOLENOID COIL
11)
11)
11)
10)
・・・・・・・・・・・・・K. Iwasaki ,A. Tanaka ,A. Toya ,H. Satou ,
K. Adachi,N. Sema
・・・Y. Hikichi,T. Koizumi,J. Nishioka,Y. Aoki,T. Hasegawa,
S. Miyata2),T. Izumi2),Y. Yamada2),Y. Shiohara2)
社外技術発表一覧表
[International Workshop on Coated Conductor for Application]
(2007 年 11 月 8 日∼ 10 日)
81
[日本建築学会 2008 年度大会(中国)
](2008 年 9 月 18 日∼ 20 日)
免震防振積層ゴムの開発 その 5 振動測定実験
Recent Progress on R&D of Long YBCO Coated Conductor by
・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木庸介 19),五十嵐信哉 19),村松佳孝,福田滋夫
TFA-MOD Method
免震防振積層ゴムの開発 その 6 実大試験体φ 1100 の試験結果
・・・・・・・・・・・・・・Y. Aoki,T. Koizumi,Y. Takahashi,A. Kaneko,
・・・・・・・・・・・・・・・加藤直樹,村松佳孝,五十嵐信哉 19),鈴木庸介 19),
T. Hasegawa,T. Nakanishi2),T. Izumi2),
福田滋夫,柳 勝幸
S. Miyata2),Y. Yamada2),Y. Shiohara2)
免震防振積層ゴムの開発 その 7
傾斜プレート上の免震防振積層
ゴムの試験結果
[MRS Spring Meeting 2008]
(2008 年 3 月 24 日∼ 28 日)
・・・・・・・・・・・・・・・柳 勝幸,村松佳孝,五十嵐信哉 19),鈴木庸介 19),
Recent Progress on R&D of Long YBCO Coated Conductor by
TFA-MOD Method in SWCC
錫プラグ入り積層ゴム免震装置の開発 その 9 実大製品の評価結果
・・・・・・・Y. Aoki,T. Koizumi,S. Sano,Y. Hikichi,Y. Takahashi,
2)
2)
A. Kaneko,T. Hasegawa,T. Nakanishi ,T. Izumi ,
2)
福田滋夫,加藤直樹
2)
2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・開發美雪,柳 勝幸,朴 紀衍 21),安永 亮 20)
錫プラグ入り積層ゴム免震装置の開発 その 10
2)
S. Miyata ,R. Kuriki ,Y. Yamada ,Y. Shiohara
鉛プラグ入り積
層ゴムとの履歴特性の比較
・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木良二 21),朴 紀衍 21),安永 亮 20),開發美雪
[13th JAPAN-US Workshop on Advanced Superconductors]
錫プラグ入り積層ゴム免震装置の開発 その 11
(11 月 9 日∼ 11 日)
大振幅連続加振
試験結果
Development of Bi-2212 wires and cables
・・・・・・・・・・・・・・・・朴 紀衍 21),鈴木良二 21),安永 亮 20),開發美雪
・・・・・・・・・・・・・J. Nishioka,Y. Hikichi,T.Nakastu,T. Hasegawa,
粘弾性ダンパーのエネルギー吸収性能に関する基礎的研究
・・・・・・・・・・・・・・・・・・三須基規,加藤直樹,林 篤 22),吉田 一 22)
[早稲田大学理工学総合研究センタープロジェクト研究シンポジウム]
(2007 年 6 月 15 日)
17)
17)
[雑誌「機械設計」 日刊工業新聞社発行 2008 Vol.52 No.2 ∼
No.5(2 月号∼ 5 月号)掲載]
粘弾性ダンパーを用いた耐震+制振住宅の開発
18)
18)
・・・・・・・・・・・・・・山本大造 ,浦野朋春 ,高橋 治 ,國松要介 ,
入門 防振ゴムのいろいろ
・・・・・・・・・・・・・・・・共同出筆者:尾崎晃一 23),清水一弥 24),島崎俊也
植松 正,三須基規,野口一朗
[日本建築学会 2007 年度大会(九州)
](2007 年 8 月 29 日∼ 31 日)
[電設技術 平成 20 年 2 月号(No.663)
(社)日本電設工業協会]
粘弾性ダンパーを用いた耐震 + 制振住宅の開発(その 2 改良型ジ
特集 大規模超高層ビルの配電と幹線
エン系粘弾性体の材料特性)
タイトル:途中階に電気室を設置する場合の防振方法は?
17)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・三須基規,野口一朗,山本太造 ,浦野朋春
17)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・執筆者 関 雅英
免震防振積層ゴムの開発 その 1 開発の目的と方法
・・・・・・・・・・・・・・・・五十嵐信哉 19),鈴木庸介 19),村松佳孝,福田滋夫
免震防振積層ゴムの開発 その 2
[平成 19 年 電気学会 全国大会(富山大学)
]
(2007 年 3 月 15 日∼ 17 日)
積層ゴム構造のケーススタディ
と試験計画
No.7-S6-3 ケーブルの構造変遷と新技術の紹介
・・・・・・・・・・・・・・・・村松佳孝,福田滋夫,五十嵐信哉 19),鈴木庸介 19)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三浦浩二 10)
免震防振積層ゴムの開発 その 3 実大試験体の試験結果
・・・・・・・・・・・・・・・・福田滋夫,村松佳孝,五十嵐信哉 19),鈴木庸介 19)
免震防振積層ゴムの開発 その 4 水平動的載荷実験
19)
19)
[平成 19 年 電気学会 全国大会]
(2007 年 3 月 19 日∼ 21 日)
No.7-178 400 kV 級 素線絶縁 XLPE ケーブル用ゴムブロック絶縁形
・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木庸介 ,五十嵐信哉 ,村松佳孝,福田滋夫
直線接続部の開発
錫プラグ入り積層ゴム免震装置の開発(その 8)連続加振試験時の
・・・・・・・・・・・・・・・桑木亮仙 10),林 克之 10),森島浩之 10),今井則明 10)
内部温度分布評価
・・・・・・・・・・・・・・・・柏木栄介 20),山口直之 20),福田滋夫,朴 紀衍 21)
[平成 19 年 電気学会 電線・ケーブル研究会](2007 年 9 月 6 日)
EWC-07-17 地中送電線路更新における要素技術(2)
・・・・・・・・・・・・・・・戸谷 敦 11),岩崎公裕 11),尾鷲正幸 10),佐藤浩正 10)
社外技術発表一覧表
82
[平成 19 年 電気学会 電力・エネルギー部門大会]
[2008 International Conference on Condition Monitoring and
(2007 年 9 月 12 日∼ 14 日)
Diagnosis(CMD2008)
(2008 年 4 月 22 日∼ 24 日)
No.128 ゴムブロック絶縁型直線接続部の低温施工に関する検証
C-2-10 On-site Application and Improvement of Water Tree
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・桑木亮仙 10),林 克之 10),今井則明 10)
Deterioration Diagnosis for XLPE Cable by Residual Charge
Method
[平成20年 電気学会 誘電・絶縁材料/電線・ケーブル 合同研究会]
・・・・・・I. Ootaka10),M. Aoki25),S. Araki25),K. Ide11),M. Nakade11)
(2008 年 2 月 19 日)
DEI-08/47/EWC-08-1 交流に対する応答の速さを指標とした残留電
1)技術コンサルタント
荷法
2)財団法人国際超電導産業技術研究センター/超電導工学研究所
・・・大闍 巖 10),青木 勝 25),荒木章吾 25),井出謙一 11),中出雅彦 11)
3)九州大学
4)一関工業高等専門学校
[平成 20 年 電気学会 全国大会(福岡工業大学)
]
5)(株)フジクラ
(2008 年 3 月 19 日∼ 21 日)
6)名古屋大学
No.7-S7-4 特高圧 CV ケーブル劣化診断における残留電荷法の改良
7)株式会社日立製作所
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大闍 巖 10)
8)リサーチラボ・ツクイ
9)産業技術総合研究所
[第 243 回 電気材料技術懇談会]
(2008 年 6 月 13 日)
10)株式会社エクシム
11)東京電力株式会社
残留電荷法による CV ケーブル劣化診断方法の開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大闍 巖
10)
12)電力中央研究所
13)岐阜工業高校専門学校
[平成 20 年 電気学会東京支部連合研究会 電線・ケーブル研究会]
(2008 年 9 月 11 日∼ 12 日)
10)
10)
・・・・・・・・・・・・・・・桑木亮仙 ,林 克之 ,加藤賢司 ,今井則明
15)株式会社神戸製鋼所
16)株式会社日本 AE パワーシステムズ
EWC-08-13 400 kV 級 XLPE ケーブル及び接続部品の開発
10)
14)株式会社東芝
10)
17)東建コーポレーション株式会社
18)株式会社構造計画研究所
[平成 20 年 電気学会 電力エネルギー・部門大会]
19)株式会社竹中工務店先進構造エンジニアリング
(2008 年 9 月 23 日∼ 26 日)
20)住友金属鉱山シポレックス株式会社
No.328 154 kV CV ケーブル用 ゴムブロック絶縁形大サイズ異径直
21)株式会社免制震ディバイス
線接続部の開発
22)東日本旅客鉄道(株)研究開発センター 10)
10)
10)
・・・・・・・・・・・・・・・桑木亮仙 ,林 克之 ,佐藤浩正 ,丸山英之
10)
23)東海大学
24)昭和機工株式会社
[7th International Conference on Insulated Power Cable
25)三菱電線工業
(Jicable '07)
]
26)株式会社ジェイ・パワーシステムズ
(2007 年 6 月 24 日∼ 28 日)
A. 1. 1 DEVELOPMENT OF 400 kV XLPE CABLE AND
ACCESSORIES
・・・・・・・・・・・・・・・A. Kuwaki10),K. Hayashi10),K. Kato10),N. Imai10)
[CIGRE OSAKA SYMPOSIUM 2007](2007 年 11 月 1 日∼ 4 日)
Recent Technologies for Replacement of Underground Cable
Systems
・・・・・・・・K. Iwasaki11),A. Toya11),S. Nishikawa10),N. Numata26),
M. Suetsugu10),T. Nakajima27),H. Sato10),M. Owashi10)
27)株式会社ビスキャス
昭和電線グループ会社アドレス
昭和電線ホールディングス株式会社
〒105-8444
東京都港区虎ノ門1丁目1番18号(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ケーブルシステム株式会社
〒105-0001
東京都港区虎ノ門1丁目1番18号(東京虎ノ門ビル)
昭和電線デバイステクノロジー株式会社
〒105-0001
東京都港区虎ノ門1丁目1番18号(東京虎ノ門ビル)
昭和電線ビジネスソリューション株式会社
〒105-8444
東京都港区虎ノ門1丁目1番18号(東京虎ノ門ビル)
冨士電線株式会社
〒259-1146
神奈川県伊勢原市鈴川10番地
株式会社ダイジ
〒664-0028
兵庫県伊丹市西野7丁目5番
株式会社SDS
〒105-0014
東京都港区芝2丁目29番14号
■直轄事業子会社(連結)
株式会社アクシオ
〒105-0001
東京都港区虎ノ門1丁目1番18号(東京虎ノ門ビル)
株式会社エクシム
〒106-0041
東京都港区麻布台1丁目8番10号
株式会社ユニマック
〒511-0427
三重県いなべ市北勢町麻生田1326番地の1
青森昭和電線株式会社
〒038-0031
青森県青森市大字三内字丸山394番地105
株式会社エステック
〒210-0852
神奈川県川崎市川崎区鋼管通4丁目13番12号
昭光機器工業株式会社
〒229-1125
神奈川県相模原市田名塩田1丁目10番3号
昭和リサイクル株式会社
〒229-1133
神奈川県相模原市南橋本4丁目1番1号
多摩川電線株式会社
〒989-2111
宮城県亘理郡山元町坂元字堤入32番地1
宮崎電線工業株式会社
〒210-0843
神奈川県川崎市川崎区小田栄2丁目1番1号
株式会社ロジス・ワークス
〒210-0843
神奈川県川崎市川崎区小田栄2丁目1番1号
■その他事業子会社(連結)
嘉興昭和機電有限公司
中国浙江省嘉興市二環西路2895号
福清昭和成鴻電子有限公司
中国福建省福清市融僑技術開発区宏路街道大埔村
東莞昭和機電有限公司
中国広東省東莞市莞城区莞龍路段獅龍路 莞城科技園
杭州富通昭和線纜配件有限公司
中国浙江省富陽市金秋大道富通科技園1-8号
SWCC SHOWA (VIETNAM) CO., LTD.
B-8, Thang Long Industrial Park, Dong Anh Dist., Hanoi, Vietnam
香港昭和有限公司
香港九龍旺角西洋菜街168号1503室
■その他のグループ会社
石川金属工業株式会社
〒963-7881
福島県石川郡石川町字大橋2番地10
一進運輸有限会社
〒135-0016
東京都江東区東陽3丁目4番9号
エヌエスティ・グローバリスト株式会社
〒171-0014
東京都豊島区南池袋2丁目43番11号
株式会社ケイ・エス・デー
〒813-0034
福岡県福岡市東区多の津1丁目1番3号
株式会社昭和サイエンス
〒101-0063
東京都千代田区神田淡路町2丁目23番地
株式会社日東製作所
〒224-0057
神奈川県横浜市都筑区川和町628番地
株式会社フィスコ
〒259-1146
神奈川県伊勢原市鈴川10番地
天津昭和漆包線有限公司
中国天津市河西区陳塘荘東江道76号
天津宮崎電子有限公司
中国天津市河東区江都路33号
杭州富通通信技術股 有限公司
仮
汾
中国浙江省富陽市銀湖開発区
華和工程股 有限公司
仮
汾
台湾高雄縣仁武郷高楠公路30号 華榮電線電纜股 有限公司 高楠廠内
仮
汾
昭和電線電纜(上海)有限公司
中国上海市長寧区仙霞路137号 盛高国際大廈1506室
SWCC SHOWA (S) PTE. LTD.
64, SUNGEI KADUT STREET 1, SINGAPORE 729365
昭和電線
レビュー
第58巻 第1号(通巻114号)
[配布限定]
昭和電線レビュー編集部会
編集・発行人
菅井 幹夫
部会長
長谷川 隆代
発
行
日
平成21年2月20日
委 員
岡下
志賀
北嶋
菅井
半田
坂本
森下
近藤
金光
濱 発
行
所
昭和電線ホールディングス株式会社
〒105-8444
東京都港区虎ノ門1丁目1番18号
印
刷
株式会社栄光舎
稔
紀幸
祐司
幹夫
千秋
慶一
裕一
敏
大
康雅
関 雅英
三村 規之
長谷川 聡
鷹野 弘二
加藤 直樹
新館 均
尾鷲 正幸
落合 直樹
久保田 泰行
[禁無断転載・複製]
©2009 SWCC SHOWA HOLDINGS CO.,LTD.,Printed in Japan
(順不同)
本誌についてのお問合せは、昭和電線レビュー編集事務局(人事総務統括部 広報課)へお願い致します。
TEL:03-5532-1911 FAX:03-3503-4506 E-mail:[email protected]
昭
和
電
線
ビジョンを実現するグループ像
刻々と変化するマーケットへ迅速に対応していくこと。
それは、営業・提案・開発といった総合力を強化していくことです。
また、成長の見込める事業に対して経営資源を重点投入し、
開発のスピードを速めることで新たなビジネスを創造します。
昭和電線グループは、培ってきた技術と先端の技術を融合させ、
より高いレベルの「快適」と「安全」をお届けすることで、
「信頼」の輪を広げ、人と地球にとって、よりよい未来を創ります。
/
昭和電線ケーブルシステム株式会社 / 電線・ケーブル、光ファイバケーブルの総合メーカー
昭和電線デバイステクノロジー株式会社 / 精密デバイス、免震装置、振動制御機器
昭和電線ビジネスソリューション株式会社 / e-ソリューション
冨士電線株式会社 / LANケーブル、消防用電線、通信ケーブル、ビニル電線
株式会社ダイジ / 機器用電線、ワイヤハーネス
株式会社SDS / SWCCグループの総合商社
株式会社アクシオ / ネットワークソリューション
株式会社エクシム / 電力ケーブル、架空送電線、電力機器・部品、工事
株式会社ユニマック / エナメル線、横巻線
︵
︶
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