...

ネリカ米の貧困削減への効果:ウガンダの事例

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

ネリカ米の貧困削減への効果:ウガンダの事例
〈ABCDE 会合〉
報告(3)
ネリカ米の貧困削減への効果:ウガンダの事例
国際開発高等教育機構リサーチフェロー 木島 陽子
要 旨
サブサハラ以南のアフリカ(SSA)における食糧不足や貧困の増加は主要な開発問題となっている。
ネリカ米はアフリカの環境に適するよう開発され、SSA の貧困世帯の農産物の収量を増やし、食糧
問題を緩和し、所得を増大することが期待されている。近年、ネリカ米の高収量性については良く知
られるようになってきたが、ネリカ米の所得や貧困への効果についての実証研究は皆無である。そこ
で本稿は、貧困削減策の一つとしてネリカ米普及プログラムが実施されているウガンダを例に取り、
ネリカ米導入の効果を実際の所得とネリカ米がなかった場合の仮説的な所得を比較し分析する。メイ
ズが植えられていたプロットにネリカ米が植えられた場合、1 ヘクタールあたりの所得は US $246 か
ら US $429 の所得増加効果があり、さらに、ネリカ米がある場合のほうが、ない場合よりも所得分
布がより平等になることがわかった。これらの結果は、ネリカ米の導入は所得分布を悪化させること
なく貧困削減に貢献しうることを示唆している。
目 次
はじめに…………………………………… 21
第1章 データ…………………………… 22
第2章 ネリカ米の特性………………… 24
はじめに
ミ レ ニ ア ム 開 発 目 標(MDGs) 採 択 後、
いかに貧困を削減するかは特に重要な問
題 と な っ て い る。 し か し Sahn and Stifel
(2003)などの研究はサブサハラ以南のア
フリカ(SSA)において MDGs が達成され
ることはほぼ不可能であろうと予測してい
る。MDGs を達成するために今こそキャパ
シティビルディング、経済政策の改善、投
資の確実なデリバリーを加速化することが
必要である。貧困層の多くは農村部におり、
その生活は農業に依存していることが多い
ため、改良品種などの農業技術の開発と普
及が早急に強化されるべき中心課題のひと
つと考えられる(NEPAD 2004, Deininger
and Okidi 2001 Pender et al. 2004a)
。
第3章 所得への効果…………………… 28
終章 結論……………………………… 31
土地が不足している地域では、肥料反応
種の開発と普及により農業生産は増加しう
る(Hayami and Ruttan 1985)
。しかし、非
効率なマーケティングシステムの下では、
現在入手可能な技術に化学肥料を投入する
ことにより利益を得ることは難しい(Pender
et al. 2004b, Otsuka and Kalirajan 2005,
2006)
。マーケティングシステムを改善し、
より収益性の高い技術の開発がなされない
限り、肥料の投入も農業生産も増加しない
であろう。
近年、ウガンダ政府はネリカ米(アフリ
カの環境に適した高収量陸稲品種 New Rice
for Africa の頭文字を取った通称)を貧困削
減策のひとつとして導入した。現在ほとん
どの農家は肥料を使わずにネリカ米を栽培
しているが、平均収量は1ヘクタール当たり
2.3トンと高く、これは SSA における従来の
2006年11月 第32号 21
陸稲の平均収量の2倍以上である(Kijima et
al. 2006)。この高収量性のため、ネリカ米は
稲作生産量と農家所得を増加させうるとし
て期待されている。
ここで重要な問題は、どの程度ネリカ米
は貧困削減や所得分布に影響があるかであ
る。なぜなら、たとえ平均的に所得を増加
させるとしても、相対的に富裕な農家がネ
リカ米の生産をより大規模で行えば、ネリ
カ米の導入が所得分布を悪化することにな
りかねないからである。本研究の目的はこ
うした問題を実証的に分析し、政策的に含
意を得ることにある。我々は2005年にウガ
ンダの10のネリカ米生産地域において家計
調査を実施し、ネリカ米栽培農家に関する
詳細なデータを収集した。
本論の構成は、第1章で使用するデータ
について説明した後、ネリカ米生産地域や
農家の特徴を整理し、第2章で既存の作物
とネリカ米の技術的な相違点を検証する。
第3章では、農業所得やネリカ米栽培面積
の決定因を計量分析し、その結果を使って
ネリカ米の所得・貧困・所得分布の効果を
推定する。最終章では結論を述べる。
第1章 データ
1. サンプリング
ウガンダの多くの地域で2つの耕作シー
ズンがある。東部では2月から6月の第1
耕作シーズンが、中部と西部では9月から
11月までの第2耕作シーズンがより長く安
定的な降雨を期待できる。ネリカ米は成熟
までの期間が短く旱魃に強いと言われてい
るが、ウガンダではネリカ米を年に二度植
えることはほとんどない。2004年の第1耕作
シーズンは深刻な旱魃により、東部地域で
ネリカ米生産が壊滅的な打撃を受けたため、
中部と西部からサンプル地域を選んだ。
サーベイの行われた2005年2月の時点で、
ネリカ米栽培農家数は政府の普及プログラ
ムがある地域において増加していたが、そ
れ以外の地域ではネリカ米栽培農家数は非
常に限られていた。2005年に実施されたよ
り広範な地域から無作為に調査地を選択し
た家計調査によると、水稲と陸稲を栽培し
ている農家の割合はそれぞれ4.6%と1.7%で
あり、ネリカ米に限っては0.7%に過ぎない
ことがわかった(Kijima and Sserunkuuma
2006)
。よって、厳密な統計分析を行うため
には意図的にネリカ米が栽培されている地
域を選択しなければならなかったのである。
10のサンプル地域は、より広範囲の地域
を網羅するよう選んだ。各地域から2004年
の第2耕作シーズンにネリカ米を栽培した25
家計を無作為に選択した。ネリカ米栽培農
家数の割合が地域によって異なるため、各
地から同数の家計を選ぶと実際の母集団よ
りもある地域のネリカ米農家を過小(また
は過大)評価する可能性がある。この問題
をコントロールするために全ての分析でサ
ンプリングウェイトを使う*1。
2.サンプル地域と
ネリカ米栽培家計の特徴
図表1はサンプル地域の特徴を示してい
る。ほとんどの地域で年間降雨量が、陸稲
生産に最低限必要といわれている1,200mm
以上ある。最寄りの町までの車での所要時
間は10分から2時間とサンプル地域間で違
いがあるが、全サンプル地域に耕作地のほ
かに休耕地や未開拓地が存在していること
が図表1からわかる。ネリカ米耕作地面積
は、2004年にネリカ米を新たに導入した地
域では0.2ヘクタールと限られているが、そ
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1 サンプリングウェイトは、地域ごとの [ 全ネリカ米生産家計数 / サンプルとして選ばれたネリカ米生産家計数 ] として計算され
る。
22 開発金融研究所報
図表 1.サンプル地域の特徴 (降雨量、最寄町までのアクセス、土地利用)
サンプル地域
Masindi
Kobaale
Kamwenge
Hoima
Luwero
Mbarara
Wakiso
Mpigi
Mubende
Kiboga
2003 年
年間
降雨量
(mm)
1294
1602
643
1530
1373
765
1460
1454
1248
818
最寄町まで
の自動車で
の所要時間
(分)
70
60
60
30
50
40
25
10
120
45
最寄町
までの
距離
(km)
21
17
16
9
17
13
7
2
25
8
一家計あたりの平均面積(ha)
耕作地
休耕地
ネリカ米
耕作地
3.42
1.88
1.57
1.36
1.95
1.20
1.08
1.70
2.11
2.63
1.65
4.04
1.16
2.12
0.99
1.25
0.97
1.71
1.60
3.29
0.32
0.54
0.41
0.34
0.41
0.19
0.32
0.32
0.22
0.29
ネリカ米
導入年
n.a.a
2001
2001
2002
2003
2004
2004
2004
2004
2004
出所)ネリカ米コミュニティー調査データ
a ネリカ米が初めに導入された年が不明。
れ以前に導入した地域では約0.4ヘクタール
に達している。
図表2は調査家計の特徴を一人当たり所
得4分位別に示している。いくつかの重要
な点を挙げると、第1に、一人当たりの土
地面積は一人当たり所得と正の関係があ
る。これは土地が所得の重要な生産要素で
あることを示唆し、伝統的な農業で見られ
る結果である。第2に、ネリカ米耕作面積
は高所得家計でより広く、ネリカ米耕作地
の全耕作地面積に占める割合は低所得家計
において高いことである。このことは、低
所得家計がネリカ米栽培に不利な立場には
ないということを示し、アジアにおける緑
の革命の経験と類似している(David and
Otsuka 1994)
。第3に作物生産が所得の
70%に寄与し、特に稲作生産は所得の36%
を占めている。また、稲作からの所得シェ
アは低所得家計(下位50%)においてより
高いことから、ネリカ米生産が pro-poor 効
果を持ちうることを示唆している。
3.ネリカ米導入による
作付けシステムの変化
肥料の投入や作付けパターンを所得4分位
別に示した図表3によると、どの所得4分位
においても有機肥料(堆肥や厩肥)
・化学肥
料はほとんど使われていないことがわかる。
有機肥料の投入を妨げている理由としては、
東アフリカにおいて堆肥の主要な源となる
改良牛の普及がウガンダではあまり進んで
い な い こ と(Otsuka and Yamano 2005)、
堆肥を投入する際に必要な労働力が不足し
て い る こ と(Sserunkuuma 2005) な ど が
考えられる。ネリカ米栽培においても化学
肥料が使われていないのは、化学肥料の価
格がアジア諸国と比べ非常に高いためであ
る(Otsuka and Kalirajan 2005, 2006) *2。
それでは、どのようにして土壌の肥沃度は
保たれているのであろうか。調査によると、
農家は主に輪作によって土壌の肥沃度を維
持する努力を行っていることがわかった。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*2 ウガンダにおける肥料の値段は他の東アフリカ諸国と比べても高く、ナイロビやダルエスサラームの2倍以上との報告がある
(Nkonya et al. 2005)
。
2006年11月 第32号 23
図表2.サンプル家計の特徴(一人当たり所得 4 分位別)
一人当たり所得 (US$)
作物所得シェア(%)
家畜所得シェア(%)
稲作所得シェア(%)
平均
170
70
10
26
1
41
75
15
27
ネリカ米栽培面積 (ヘクタール)
全土地面積に占めるネリカ米栽培面積の割合(%)
土地面積(ヘクタール)
世帯員数
家計世帯主就学年数
一人当たり土地面積 (ヘクタール)
0.47
17.5
4.1
7.7
5.6
0.56
0.39
16.5
3.0
9.1
5.5
0.33
一人当たり所得 4 分位
2
3
4
100
168
363
81
65
60
6
11
8
36
20
21
0.43
22.5
3.7
6.7
5.8
0.55
0.57
12.5
5.3
8.2
4.9
0.65
0.52
18.5
4.5
6.8
6.0
0.72
出所)ネリカ米家計調査データ
よって、第3章で作付けパターンが収量や
所得にどのような影響を与えるかを分析す
る前に、ネリカ米の導入が作付けシステム
にどのような影響を与えたかを理解する必
要があろう。
まず強調したいのは、ほとんどのサンプ
ル地域でネリカ米は初めて栽培される陸稲
であり、ネリカ米を栽培するかどうかは米
の品種の選択ではなく、米という作物の選
択であるということである。多くの農家は
ネリカ米を栽培するために、休閑中の土地
を耕地に転換した。これは従来の作物(豆、
調理バナナなど)の面積を維持するためで
ある。ネリカ米が既存の作物に取って変わっ
たのは、ごく限られた地域においてであっ
た。例えば Hoima では、第1耕作シーズン
にタバコが植えられたプロットに、第2耕作
シーズンはメイズ、キビ、ネリカ米以外の
陸稲などが植えられていたが、ネリカ米導
入後、第2耕作シーズンにネリカ米が植えら
れるようになった。
図表3には、2004年第2耕作シーズンにネ
リカ米が植えられたプロットが、その前の
第1耕作シーズンにどのような作付けパター
ンであったかを示しており、40%のネリカ
米プロットは、その前の耕作期には休閑さ
24 開発金融研究所報
れていたことがわかる。残りは豆類、タバ
コ、米以外の穀物、根菜(甘藷、キャッサバ)
などが植えられていた。低所得層はネリカ
米を休閑地に植え、高所得層はタバコが植
えられた後のプロットにネリカ米を植える
傾向がある。また、地域により作付けパター
ンが異なることがわかる。
図表4はネリカ米の収量を一耕作期前に
植えられた作物別に示したものである。休
閑地、またはタバコやマメ科の作物の次に
ネリカ米が植えられると、ネリカ米の収量
はメイズの次に植えた場合よりも高い。こ
れは、タバコ栽培に化学肥料が投入される
ことにより、次耕作期にも十分な養分が土
壌 に 残 存 し て い る こ と や、 マ メ 科 の 植 物
には空中窒素を固定する働きがあることに
よって説明されよう。
第2章 ネリカ米の特性
ネリカ米の所得への効果を分析する前に、
要素シェア分析(Factor share analysis)を
することにより、サンプル家計が栽培して
いる作物(豆やメイズ)と比べて、ネリカ
米がどのような要素をより多く使用する技
図表 3.調査家計の肥料投入と作付けパターン(一人当たり所得4分位別)
堆肥が投入
されたネリカ
米プロットの
割合(%)
平均
1
化学肥料が 化学肥料が投入
された代替作物
投入された
プロットの割合
ネリカ米プロ
ットの割合(%)
(%)
前期の利用が以下であるネリカ米プロットの
割合(%)
米以外
の穀類
豆
タバコ
休閑
地
根菜
類
9
2
18
21
15
40
6
1
1
1
1
11
1
12
12
2
0
6
13
24
19
13
17
23
20
17
23
1
8
25
23
47
47
33
34
5
5
12
3
7
0
0
0
0
0
0
3
0
0
17
8
7
12
0
0
0
24
19
22
8
4
0
0
3
0
0
0
7
4
45
29
22
0
0
25
11
5
40
55
0
33
41
5
4
0
11
5
25
0
0
8
0
63
0
25
0
0
0
15
45
25
33
26
88
25
68
65
30
30
9
4
4
5
8
25
11
25
5
0
一人当たり所得4分位
1
2
3
4
サンプル地域
Masindi
Kibaale
Kamwenge
Hoima
Luwero
Mbarara
Wakiso
Mpigi
Mubende
Kiboga
出所)ネリカ米家計調査データ
図表 4.ネリカ米収量、収入、支出、所得 前期の作付けパターン
タバコ
マメ科
休閑地
米以外の穀類
収量 (トン/
ヘクタール)
収入 (ドル/
ヘクタール)
支出 (ドル/
ヘクタール)
所得 (ドル/
ヘクタール)
3.38
(1.33)
2.64
(1.25)
2.39
(1.22)
2.42
(1.52)
946
(431)
642
(311)
660
(342)
624
(401)
106
(93)
171
(129)
168
(137)
153
(118)
840
(413)
472
(260)
491
(363)
471
(373)
注)カッコ内の数値は標準偏差。
術であるのか、どの要素が相対的により多
くの収益を得ているのかを明らかにしたい。
要素シェア分析は新しい技術や作物が導
入される際に広く使われている手法である
(David and Otsuka 1994)
。こうした比較を
するために、ネリカ米が植えられていたプ
ロットの近くで作られていた作物を「代替
作物」として選び、ネリカ米と代替作物の
生産に関するデータ(収穫物の総額、購入
された現物投入、生産に費やされた家族労
2006年11月 第32号 25
a
図表 5.作物別要素支払い(ドル / ヘクタール)
サンプル数
総収益
現物投入
所有
購入
b
資本
所有 b
雇い入れ
労働
家族労働 b
雇い入れ労働
残差 (利潤)
土地貸し出しからのレント
純利益
ネリカ米
240
731.8
(100)
52.4
(7.2)
31.7
20.7
マメ科
44
271.2
(100)
27.1
(10.0)
8.0
19.1
米以外の穀類
127
254.8
(100)
21.8
(8.7)
11.2
10.6
0.7
(0.1)
0.1
0.6
0.0
(0.0)
0.0
0.0
4.8
(0.0)
2.2
2.6
673.4
(92.0)
570.4
103.0
255.2
(94.1)
194.2
61.0
239.8
(95.8)
164.0
75.8
5.3
(0.7)
2.0
3.3
‑11.1
(‑4. 1)
0.0
‑ 11.1
‑11.6
(‑4. 6)
2.1
‑ 13.7
a 調査時点でのウガンダシリングのアメリカドルへの為替レートは Shs 1700 = US $1.00. カッコ内の数値は要素シェア(%)
。
b 家族労働は農作業ごとの市場賃金レートを使い、所有資本は市場レンタル料、前年から持ち越しの種子や無料で取得した種子や化学肥料は市場の価格で評価した。
働、雇い入れ労働・機械レンタル費用など)
を収集した。地理的に近くに位置する作物
を選んだのは、ネリカ米が代替作物よりも
肥沃度の高い土地に植えられたために、ネ
リカ米生産からの所得が高くなる可能性を
最小限に抑えるためである。よく見られる
代替作物はメイズと豆である。
図表5は、2004年第2耕作シーズンの1
ヘクタールあたりの要素支払いと要素シェ
アを表示している。ネリカ米からの収穫物
の総額は代替作物の2.7-2.9倍であり、ネリ
カ米はウガンダでは高価作物であることが
わかる。同様に、他のカテゴリーに分類さ
れる投入物への要素支払いは、代替作物に
26 開発金融研究所報
比べてネリカ米生産において高い。このこ
とはネリカ米を導入することにより、資本
を除く全ての要素投入へのリターンが高く
なることを意味する。家族労働への要素支
払い額はネリカ米生産において高くなって
いるが、労働への要素シェアは豆やメイズ
と 同 様、92-96% を 占 め て い る。 よ っ て、
ネリカ米の導入は要素中立的技術変化と類
似していると言えよう。ネリカ米生産は労
働需要を増加させるので、家族労働力が豊
富な貧しい家計の所得状況の改善につなが
ると考えられる。
図表5に見られるように、推計された土地
へのリターンはネリカ米生産において高く、
a
図表 6.ネリカ米栽培面積決定因分析 (最小二乗法)
平均
(標準偏差)
2004 年以前のネリカ米栽培年数
2004 年以前のネリカ米以外の稲作経験年数
男性世帯員(年齢 15‑5 9 歳)割合
女性世帯員(年齢 15‑5 9 歳)割合
世帯主就学年数
世帯主年齢/100
女性世帯主ダミー
世帯員数
全所有農地面積 (ヘクタール)
一人当たり所有農地面積
(ヘクタール)
家畜保有額 b
(1 億ウガンダシリング)
家計資産額 c
(1 億ウガンダシリング)
肥料・種販売業者までの距離 (km)
0.13
(0.43)
0.36
(1.76)
0.244
(0.165)
0.214
(0.147)
7.15
(4.04)
0.434
(0.138)
0.079
(0.27)
7.70
(3.56)
4.15
(4.01)
0.565
(0.482)
4.734
(8.112)
2.406
(5.997)
13.14
(14.23)
切片
地域ダミー
サンプル農家数
決定係数
ネリカ米栽培面積
(ヘクタール)
(1)
(2)
0.082** 0.100**
(3.92)
(4.64)
‑0.00 7
‑0.00 6
(1.38)
(1.19)
0.156
0.136
(1.28)
(1.01)
‑ 0.008
0.169
(0.05)
(1.19)
0.002
0.004
(0.36)
(0.76)
‑0.29 7*
‑0.16 3
(2.07)
(1.09)
0.022
0.013
(0.35)
(0.19)
0.016**
(3.00)
0.016**
(3.02)
0.021
(0.52)
0.911
3.804
(0.42)
(1.72)
2.124
1.954
(0.77)
(0.68)
0.004
0.004*
(1.77)
(2.01)
0.135
0.174
(1.09)
(1.36)
Yes
Yes
240
240
0.37
0.30
全土地面積に占める
ネ リカ米栽培面積の割合
(3)
(4)
0.007
‑0.00 7
(0.55)
(0.60)
‑0.00 7*
‑ 0.007*
(2.39)
(2.57)
‑0.01 5
0.109
(0.21)
(1.46)
0.044
‑0.06 7
(0.53)
(0.84)
0.005
0.005
(1.76)
(1.80)
‑0.21 1*
‑ 0.218**
(2.48)
(2.63)
0.077*
0.103**
(2.06)
(2.77)
‑0.00 2
(0.69)
‑0.01 6**
(4.99)
‑ 0.137**
(5.97)
‑1.26 7
‑2.5 54*
(0.98)
(2.07)
‑1.00 5
‑0.99 1
(0.62)
(0.62)
0.001
0.001
(0.65)
(1.07)
0.273**
0.282**
(3.71)
(3.98)
Yes
Yes
240
240
0.28
0.30
** , * はそれぞれ有意水準1% , 5% を意味する。
a 第1列を除くカッコ内の数値はt値。第1列の数値は標準偏差。
b 家畜には牛、ヤギ、豚、鶏が含まれる。
c 家計資産には自転車、バイク、車、携帯電話、ラジオ、テレビ、水タンクが含まれる。
これはネリカ米が代替作物よりも高い利潤が
見込まれる作物であることを示している*3。
ネリカ米の残差利潤が非常に小さい理由とし
て、ウガンダの労働市場の不完全性により、
労働雇用のコストが家族労働の機会費用より
も高く、家族労働を雇い入れ賃金率で評価し
たことにより費用が過大評価されている可能
性があることが考えられよう。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*3 生産関数が一次同次で市場が競争的であるとき、土地への要素支払いは、現物投入、資本、労働への実際の費用と市場価格で
評価した所有資産への支払いを、収穫物の総額から差し引いた残差として推計される。保有資産の場合は、各地域の市場にお
ける雇い入れ労働の賃金率(農作業、男女別)
、機械の場合はレンタル費によって計算した。
2006年11月 第32号 27
第3章 所得への効果
1.ネリカ米栽培面積の決定因
ネリカ米の所得への効果はネリカ米の栽
培面積に依存するので、はじめにネリカ米
の栽培面積がどのような要因によって決定
されるのかを分析する。我々の仮説は、貧
しい家計は土地面積あたりの労働人口が多
いため、より多くネリカ米を栽培する傾向
があるというものである。
この仮説の妥当性を検定するために、2
つの被説明変数(1)ネリカ米栽培面積、
(2)
ネリカ米栽培面積の全土地面積に占める割
合、を使用する。全サンプル家計はネリカ
米を栽培しているので、最小二乗法によっ
て分析する。各被説明変数に対して、土地
と労働の希少性を表す説明変数として、
(a)
世帯員数と土地面積、
(b)一人当たり土地
面積、を使った推定式を分析する。説明変
数の記述統計と推定結果を図表6に示す。
ネリカ米栽培面積決定関数において、一
人当たり土地面積は有意な効果はないが、
世帯員数の係数は正で有意である。このこ
とは、より多くの家族労働や土地を保有す
る家計はネリカ米をより大きな規模で栽培
することを意味するので、家族労働や土地
の入手可能性によってネリカ米栽培面積が
制限される可能性があることを示している
と言えよう。
しかし、ネリカ米栽培面積シェア決定関
数においては、労働・土地比率の係数は負
で有意であるので、一人当たりの土地が少
ない家計がよりネリカ米栽培に熱心である
ことがわかる。また、女性が家長である家
計はより貧しいことが多いのだが、そうし
た家計でより多くの土地をネリカ米栽培に
割り当てている。このように、貧困家計は
ネリカ米栽培により多くの土地を割り当て
ることにより、ネリカ米の導入は貧困の削
減と所得分布の改善につながると考えられ
る。
28 開発金融研究所報
2.生産管理の作物所得への効果
作物生産からの所得は、その作物の品種・
技術的性質のみでなく、作付けパターンな
どの管理方法によっても決定されうる(第
2章)
。しかし、ある特定の作付けパターン
の選択は、土壌の肥沃度や生産者の作付け
に関する管理能力などに依存していると考
えられる。これらの関係を切り離し、ネリ
カ米導入の純粋な効果を明らかにするため
に、各家計からネリカ米と代替作物の2つ
の隣接したプロットで得られた所得の決定
因を家計レベルの固定効果モデルを使って
分析する。実証モデルを次のように特定化
する。
y ij =βXi +δMij +αi +εij ,
そこで y ij は家計 i 、プロット j (ネリカ米
か代替作物)からの所得 ; Xi は家計 i の家計
の特徴を表す一連の変数 ; Mif は家計 i , プロッ
ト j における作付けパターンダミー ; αi は
家計 i の観察不能な特徴を表す変数 ; εij は
エラータームである。
ネリカ米と代替作物のプロットレベルの
所得は、家計の特徴とそのプロットの作付
けパターン(2004年第1・第2耕作シーズ
ンにおける土地利用により表す)の関数と
する。作付けパターン以外の管理法(植え
付けのタイミング、適切な除草など)もネ
リカ米からの所得を増加させうるので、第
2・第3の特定化では、作付けパターン以
外の管理法の代理変数として稲作経験年数
を、説明変数として使用する。家計レベル
の固定効果モデルを使用しているため、ネ
リカ米プロットダミーと稲作経験ダミー(稲
作経験があれば1、なければ0)を説明変
数として追加する。ネリカ米とネリカ米以
外の稲作経験の有無が所得に与える影響が
異なる可能性があるため、第3の特定化で
は稲作経験をネリカ米栽培経験とネリカ米
以外の稲作経験とに分ける。
図表7第1列に示された結果によると、第
図表7.プロットレベルの所得決定関数の推定結果(USD 100/ ヘクタール),
家計レベルの固定効果モデルa
作付けパターンダミー b
(2004 年第 1 期 ‑ 第 2 期作付けシーズン)
穀類
ネリカ米
豆類
ネリカ米
根菜類
ネリカ米
タバコ
ネリカ米
未開拓地
ネリカ米
休閑地
ネリカ米
穀類
豆類
豆類
豆類
根菜類
豆類
タバコ
豆類
未開拓地
豆類
休閑地
豆類
穀類
根菜類
豆類
根菜類
根菜類
根菜類
タバコ
根菜類
未開拓地
根菜類
休閑地
豆類
根菜類
穀類
根菜類
タバコ
穀類
穀類
未開拓地
休閑地
穀類
穀類
多数作物作付けプロットダミー
(1)
(2)
(3)
2.281
(1.52)
3.355*
(2.25)
2.450
(1.00)
7.630**
(4.71)
4.769*
(2.38)
3.085*
(2.12)
‑2.63 6
(‑1. 11)
1.174
(0.40)
‑2.52 1
(‑0. 99)
‑2.1 94
(‑0. 75)
‑0.5 70
(‑0. 09)
‑1.1 27
(‑0. 57)
‑1.7 12
(‑0. 62)
3.293
(1.31)
0.727
(0.37)
0.889
(0.19)
‑0.9 71
(‑0. 08)
‑1.3 12
(‑0. 63)
‑1.9 55
(‑0. 85)
‑0.5 43
(‑0. 19)
2.284
(0.79)
0.694
(0.36)
‑0.6 70
(‑0. 39)
0.232
(0.22)
0.700
(0.46)
2.068
(1.39)
0.701
(0.29)
5.140**
(2.98)
4.065*
(2.08)
2.317+
(1.62)
‑0.91 3
(‑0. 39)
3.413
(1.17)
‑2.01 2
(‑0. 81)
‑ 0.451
(‑0. 16)
0.880
(0.15)
0.960
(0.48)
‑ 1.202
(‑0. 45)
4.678+
(1.89)
0.694
(0.36)
1.692
(0.37)
‑ 1.675
(‑0. 15)
‑ 0.191
(‑0. 09)
0.105
(0.05)
1.542
(0.54)
2.539
(0.91)
2.378
(1.23)
0.805
(0.47)
0.737
(0.71)
3.798**
(3.46)
0.717
(0.46)
2.099
(1.39)
1.793
(0.73)
6.745**
(4.00)
4.540*
(2.31)
3.086*
(2.16)
‑1.85 7
(‑0. 78)
2.430
(0.84)
‑2.26 5
(‑0. 91)
‑0.7 71
(‑0. 27)
‑ 0.417
(‑0.0 7)
0.203
(0.10)
‑0.5 44
(‑0. 20)
4.780+
(1.90)
1.174
(0.61)
0.587
(0.13)
‑1.2 00
(‑0. 10)
‑0.2 77
(‑0. 13)
‑ 0.615
(‑0.2 6)
0.077
(0.03)
1.939
(0.68)
1.603
(0.83)
0.358
(0.21)
0.943
(0.89)
ネリカ米プロットダミー × 稲作経験ダミー
ネリカ米プロットダミー × ネリカ米栽培経験ダミー
ネリカ米プロットダミー×ネリカ米以外の稲作経験ダミー
サンプル農家数
決定係数
(自由度修正済み決定係数)
428
0.72
(0.26)
428
0.74
(0.31)
3.291**
(2.95)
1.294
(1.27)
428
0.74
(0.30)
a カッコ内の数値は t 値。
** , * はそれぞれ有意水準1% , 5% を意味する。
b 作付けパターンダミーのデフォルトカテゴリーは穀類-穀類。
2006年11月 第32号 29
1耕作シーズンに豆やタバコが栽培され、
第2耕作シーズンにネリカ米が栽培された
プロットにおいて、ネリカ米栽培からの所
得が、米以外の穀物が少なくとも2期続けて
植えられたプロット(推定式のデフォルト
カテゴリー)からの所得よりも有意に高い
ことがわかる。ただし、ネリカ米からの所
得は、ネリカ米が穀類の後に栽培された場
合には有意に高くはない。この結果はネリ
カ米が土壌養分に反応しやすい品種であり、
化学肥料を投入したタバコ栽培の後や、空
中窒素を固定する豆栽培の後にネリカ米を
植えることが望ましいことを示している。
第3列の結果で、ネリカ米プロットとネリカ
米栽培経験ダミーの交差項の係数が正で有
意であることから、ネリカ米栽培経験があ
る家計はより高い所得を得ていることがわ
かる。このように、ネリカ米の栽培が所得
に与える効果は、どのような作付けパター
ンが取られるかに依存しているといえる。
第3列の結果によると、作付けパターン
を「第1耕作シーズン:休閑地-第2耕作シー
ズン:米以外の穀類」から 「休閑地-ネリ
カ米」 に変えると1ヘクタールあたりの所得
が273ドル、または「タバコ-米以外の穀類」
から 「タバコ-ネリカ米」 に変えると481ド
ル増加することを示している。稲作経験が
ある場合には、これらの変化が602ドルと
810ドルに増える。サンプル家計の平均所得
が1,044ドルであったことを考慮すると、ネ
リカ米導入の所得への効果は無視できない
大きさであることがわかる。
3.貧困削減と所得分布への影響
ネリカ米導入の貧困削減と所得分布への
影響を考察するために、3つのシナリオの
下での仮説的な所得を推計する。第1のシナ
リオは、ネリカ米が導入されず、実際にネ
リカ米が植えられたプロットには代替作物
が植えられたというものである。例えば、
実際の作付けパターンが「タバコ-ネリカ
米」で、ネリカ米の代替作物が豆である家
30 開発金融研究所報
計の場合、第1のシナリオによる仮説的な所
得は、ネリカ米プロットの作付けパターン
は「タバコ-豆」となる。第3列の結果によ
ると、「タバコ-ネリカ米」 作付けパターン
からの1ヘクタールあたりの所得は、「タバ
コ-豆」 プロットからの所得よりも751.6ド
ル (6.745
[
+ 0.771)
×100] 高いことがわかる。
各家計でネリカ米栽培面積は異なるので、
得られる所得を計算する際には、各家計の
実際のネリカ米プロット面積で調整しなけ
ればならない。もしネリカ米プロットの大
きさが0.5ヘクタールであるならば、375.8ド
ル(751.6×0.5)を家計の全所得から差し引
いたものが、ネリカ米が導入されなかった
場合の所得となる。
第2のシナリオは、2004年以前にネリカ
米栽培経験が無い家計に、仮説的にネリカ
米栽培を経験させる場合である。ネリカ米
プロットダミーとネリカ米栽培経験の有無
ダミーの交差項の係数を使い、実際の所得
にネリカ米栽培経験があることによる追加
的所得 [329.1ドル×ネリカ米栽培面積(ha)]
を加えることにより仮説的所得2を計算す
る。このネリカ米栽培経験と所得の間の直
接的な効果に加えて、第3のシナリオでは、
ネリカ米栽培経験がネリカ米栽培面積を増
加させることによる間接的な所得増大効果
をも考慮する。図表6第2列によって示さ
れたように、ネリカ米栽培経験の1年の増加
は、ネリカ米栽培面積を0.1ヘクタール増や
す効果がある。
図表8は実際の一人当たり所得と推計さ
れた仮説的所得を比較している。仮説的所
得1は実際の一人当たり所得よりも平均で8
ドル少なく、全ての家計が少なくとも1年の
ネリカ米栽培経験があった場合の仮説的所
得2は実際の所得よりも16ドル(間接的な
効果を含めると40ドル)ほど高い。しかし、
これらの平均的な所得増大効果はネリカ米
導入が貧困を減らすことを意味しない。シ
ナリオ1によると、ネリカ米が導入されな
かった場合の貧困者比率は、ネリカ米が導
入された場合のものよりわずかに高い程度
図表8.実際の所得と仮説的所得からの貧困・不平等指標 一人当たり所得(US ドル)
貧困ライン = US 128 ドル
貧困者比率
貧困ギャップ比率
二乗貧困ギャップ比率
不平等指標
ジニ係数
タイル指標
対数分散
実際の
所得
155
仮説的 a
所得 1
147
仮説的 a
所得 2
171
仮説的 a
所得 3
195
50.8
24.3
15.4
52.1
26.7
18.0
43.6
18.1
10.8
33.3
13.5
7.5
0.411
0.290
0.822
0.428
0.311
0.825
0.392
0.269
0.655
0.373
0.250
0.526
b
a 仮説所得1はネリカ米が導入されず、代替作物がネリカ米プロットで栽培された場合の所得、仮説所得2は2004年以前にネリカ米を栽培した経験がない家計が、少なくとも1年
の経験があったとした場合の所得、仮説所得3は仮説所得2に加えて、ネリカ米栽培経験がネリカ米栽培面積を0.1ヘクタール増加させる間接的な効果を考慮した所得をさす。
b 貧困ラインは Yamano et al.(2004)で計算されたものを UBOS(2005)の消費者物価指数を使い、2005 年の物価水準に調整した。
だが、シナリオ2と3においては、全ての
貧困指標でネリカ米の導入が貧困を大きく
減少させる効果があったことがわかる。
不平等度の指標として用いたジニ係数、
タイル指標、対数分散の全てにおいて、ネ
リカ米の導入が所得分布を平等化する効果
があったことがわかる。これは、貧困家計
がより多くの割合の土地を、労働集約的な
ネリカ米生産に割り当てたためだと考えら
れる。
終章 結論
本稿は、ウガンダにおけるネリカ米をケー
スに取り、新しい農業技術がサブサハラ以
南のアフリカにおける貧困農家家計の所得
に与えうる影響を分析した。ネリカ米は一
人当たり所得の10-25%に相当する所得を
増加させる可能性があることが示された。
この結果は、伝統的な農業において、高収
益技術の導入が最も効果的な貧困削減策で
あるというシュルツの仮説(Schultz 1964,
1979)を支持する。しかし、我々の分析が
示したように、ネリカ米の所得増大効果は、
土壌肥沃度の維持に寄与する適切な作付け
パターンを用いることによってのみ実現さ
れうる。また、
稲作経験を積むことによって、
作物所得がさらに増加するという分析結果
を得た。これらの結果は、高収量・労働使
用技術の開発とともに、効果的な新技術の
普及、栽培方法などの情報の伝授が、貧困
家計の所得増大にとって必要不可欠である
ことを示している。
ウガンダは比較的雨量の多い地域が多い
こと、急速な都市化と人口増加による米需
要の増加により米価が比較的高いこと、タ
バコやコーヒーなどの伝統的な換金作物と
異なり米は食べることができるため、貧困
削減だけでなく食糧安全の点からも好まし
いと考えられていることなどから、国全体
にネリカ米が普及する可能性がある。しか
し、目下、ネリカ米を栽培している家計の
割合は国レベルで1%以下と非常に低く、
ネリカ米の導入に深刻な制約があることを
示 唆 す る。 考 え ら れ う る 制 約 の 一 つ は ネ
2006年11月 第32号 31
リカ米の種子の不足や非効率な extension
サービスである(Kijima and Sserunkuuma
2006)。この研究はネリカ米が導入された地
域において、ネリカ米による貧困削減効果
が大きいことを示したが、ウガンダの多く
の地域ではネリカ米による恩恵を享受する
に至っていないことを注意しておきたい。
また、我々の分析は一時点のデータに基づ
いており、ネリカ米の所得や貧困への長期
的な影響については分析範囲を超えている。
しかし、アジア諸国で収量の飛躍的な増大
を実現した緑の革命に相当しうる「ネリカ
米革命」がアフリカにおいておこるために
は、いかに土壌の肥沃度を維持するかが重
要となることをこの研究は示唆している。
ネリカ米生産において最も費用効率的でか
つ持続可能な土地管理法が何かは知られて
いない。ウガンダにおいてネリカ米による
持続可能な貧困削減を達成するためには、
土壌肥沃度への効果についての注意深い研
究が必要であろう。
<参考文献>
[ 英文文献 ]
David, Christina, and Keijiro Otsuka,.
(1994). Moder n Rice Technology and
Income Distribution in Asia . Boulder:
Lynne Rienner.
Deininger, Klaus, and John Okidi.
(2001).“Rural Households: Incomes,
Productivity, and Non-farm Enterprises,”
in R. Reinikka and P. Collier(eds.)
,
Uganda’s Recovery: the role of farms, firms,
and government , Washington, DC: The
World Bank.
Estudillo, Jonna P., and Keijiro Otsuka.
(1999).“Green Revolution, Human
Capital, and Off-Farm Employment:
Changing Sources of Income among
Farm Households in Central Luzon,
1966-94.” Economic Development and
Cultural Change 47(3)
, 497-523.
Hayami, Yujiro, and Vernon W. Ruttan.
32 開発金融研究所報
(1985)
. Agricultural Development: An
International Perspective. Baltimore, MD:
Johns Hopkins University Press.
Kijima, Yoko, and Dick Sserunkuuma.
(2006)
.“The Adoption of NERIC Rice
Varieties at the Initial Stage of the
Diffusion in Uganda.”mimeo, Foundation
for Advanced studies on International
Development.
Kijima, Yoko, Dick Sserunkuuma,
and Keijiro Otsuka.(2006)
“
. How
Revolutionary is the“NERICA
Revolution”
? Evidence from Uganda.”
Developing Economies 44(2)
, 252-267.
NEPAD,(2004)
. Implementing the
Comprehensive Africa Agricultural
Development Programme and Restoring
Food Security in Africa.
Available at(accessed on May 25, 2006)
http://www.sarpn.org.za/nepad_1.
php?id=48
Nkonya, Ephraim, John Pender, Crammer
Kaizzi, Kato Edward, and Samuel
Mugarura.(2005)
. Policy Options
for Increasing Crop Productivity and
Reducing Soil Nutrient Depletion and
Poverty in Uganda. Environment
and Production Technology Division
Discussion Paper No. 134, International
Food Policy Research Institute,
Washington, D.C.
Otsuka, Keijiro, and Kaliappa Kalirajan.
(2005)
.“An Exploration of a Green
Revolution in Sub-Sahara Africa.”Journal
of Agricultural and Development Economics
2, no. 1, 1–6.
Otsuka, Keijiro, and Kaliappa Kalirajan.
(2006)
.“Rice Green Revolution in
Asia and Its Transferability in Africa.”
Developing Economies 44(2)
, 107-122.
Otsuka, Keijiro and Takashi Yamano.
(2005)
.“The Possibility of a Green
Revolution in Sub-Saharan Africa:
Evidence from Kenya.”Journal of
Agricultural and Development Economics 2
International Development, Tokyo, Japan.
(1), 7-19.
Pender, John, Pamela Jagger, Ephraim
Nkonya, and Dick Sserunkuuma.
(2004a).“Development Pathways and
Land Management in Uganda,”World
Development 32(5), 767-792.
Pender, John, Sarah Ssewanyana, Kato
Edward, and Ephraim Nkonya. (2004b).
Linkages between Poverty and Land
Management in Rural Uganda: Evidence
from the Uganda National Household
Survey, 1999/2000. Environment
and Production Technology Division
Discussion Paper No. 122, International
Food Policy Research Institute,
Washington, D.C.
Sahn, David, and David Stifel, (2003).
“Progress Toward the Millennium
Development Goals in Africa.” World
Development 31(1), 23-52.
Schultz, Theodore W., (1964),
Transforming Traditional Agriculture. New
Haven: Yale University Press.
Schultz, Theodore W.,(1979). “The
Economics of Being Poor.” Journal of
Political Economy 88(4), 639-651.
Sserunkuuma, Dick.(2005).“The
Adoption and Impact of Improved maize
and Land Management in Uganda.” Journal of Agricultural and Development
Economics 2(1),67-84.
UBOS,(2005). Consumer Price Index
August 2005. Press Release. Uganda
Bureau of Statistics.
Yamano, Takashi, Dick Sserunkuuma,
Keijiro Otsuka, George Omiat, John
Herbert Ainembabazi, and Yasuharu
Shimamura,(2004). The 2003 REPEAT
Survey in Uganda: Results. FASID
Development Database 2004-09-01,
Foundation for Advanced Studies on
2006年11月 第32号 33
Fly UP