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Title 仏典の中の樹木 : その性質と意義(2)

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Title 仏典の中の樹木 : その性質と意義(2)
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仏典の中の樹木 : その性質と意義(2)
満久, 崇麿
木材研究資料 (1973), 7: 18-63
1973-03-31
http://hdl.handle.net/2433/51284
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
総 説 (
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仏
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典
中
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樹
木
- そ の 性 質 と 意 義- (
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1 緒
言
本文 は第 1報 (
木材研究資料 6,1
972) に引続 き,国訳一切経中の法華部,華厳部,および阿含部にあ ら
われる樹木 とあ らたに本綾部,般若 邦,寅積部,浬磐 邦,大集郵および経集部について調査 した樹木を取 り
まとめたものである。
樹木の配列順は大体第 1幸鋸こ準ず るが,今 回 はある程度,用材樹,果樹,香花香木な どのブル-プにまと
めた。
写真は第 1報の各植物園や試験場,温室な どで撮影 したものの外,新宿御苑,武 田薬品工業株式会社京都
試験農園に もお世話にな った。 また伊豆薬用植物栽培試験場の宮崎場長には特 に御配慮をいただいた。 これ
らの方 々には深い感謝の意を表す る次第であるL
,
2 総
論
「
縁な き衆生は変 し難 し」 とい う諺がある。本来仏教に由来す るものであろ うが, このよ うな衆生の こと
を一間提 とい う。
大般浸磐経一巻 9,如来性品第 4の 6に
「
サーラ,ニカラは枝葉を断ず るも,続生す ることもとの如 し。 クーラの生ぜ ざる如 くな らず。衆生 もこ
の経を聞 くことをえば五無間 (
地獄) といえ どもなおよ く菩提の因縁を/
生ず。一関提 は しか らず。 この妙典
を聴受す ることを うるとも菩提の遺因を生ず ることあたわず」
また,巻33,迦葉菩薩品第 1
2の11に
非ず。射 管な りといえ ども常 住に して変ず ること
「衆生は ことごとく仏性あ り。 この仏性は無に して索
酎こ
な しO しかるに一間提 は業 あるもすべて これ邪業な り.因果を求めざる故な り。- リタキの根茎枝葉花実の
ことごとく菩 きが如 し」
これ らは タ- ラ Bo
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rの 頭を きれば再生せず (
第 1報参照), - リタキ Te
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a にはタ ンニ ン成分の多い ことを引用 したものである.
同 じく巻10,-上
井大衆諸問品第 5に
「マ ンゴーの果実をたべ,その核を被 ってか ら, これを大地 にまき一心に育てて も芽は出ない. これ と同
一 間捉に対 して)
/
汗I
とい う言葉があるO この言葉はあま り広 くは使われていないようであるが,たとえ破
戒悪 行があって も,外見は折 目正 しく善裾 故の如 く見え,多 くの衆_
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が これによって善根を うるよ うな比丘
* 本質材料学研究 部門
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- 1
8-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
のことである。
大乗大笑地蔵十輪経一巻 3,無依行品第 3の 1に
「
商人,無数の衆生を殺 してその日をえ ぐり,マダナ果 と和合 して 目の宝薬 となす。
諸の衆生の目無 く,または盲なるもの, この宝薬を日中に塗 らんに明浄の目をえん。 破戒の比丘 も また 然
り。律において屍戸 となす も, しか も出家の威儀形相を有 し,よく無量の衆生の しば らくも見 ることをえた
るものを して清浄の智慧の法眼をえせ しむ」
とあり,破戒の者 もなお清浄で,一関提にまさることを教えている。つま り一関堤 は度 し難 く, もはやす く
いは無いが,屍戸にはまだす くいがあるとい う訳である。
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um DC. (タマツナギ ?)
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z. (ミロバ ラ ン)
ハ リタキ Te
ニ カ ラ
マ グ ナ Da
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um L. (シロバ ナヨウシュチョウセ ンアサガホ)
大方等大笑経の中で仏陀が欲界 と色界 との中間にある大宝坊にあって,菩薩や如来 について説 く物語 りは
極めて幻想的であるが, ここでも樹木が引用 されている。すなわち,菩薩の利他の行たる八方使 (
方便 :他
人を導 くこと,その根本に慈悲がある)の 1つで ある 諸陰の 方便 (
五陰 :個人を 構成す る要素で,色 〔
身
体〕,受 〔
感覚〕
,想 〔
表象〕
,行 〔
一般的精神作用〕,識 〔
行を統括す る心の作用一判断〕
)について
「
陰は沫の如 く,泡の如 く,熱の如 く,層の如 く,芭蕉樹の如 く,幻の如 く,夢の如 く-・
-,我 に非ず,
命 に非ず,衆生 に非ず,人に非ず,--。か くの如 くに知る。 これを菩薩の陰を観ず る方便 とい う」 (
巻2
8
,
無尽意菩薩品)
。
芭蕉 (
キャグ リー)は普通
バナナ Mus
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um L.(
Kadal
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) をさし, 仏典ではもろ くて柔かな ことの比境に, またイ ン ド
古典文学ではその冷たい菜かさが女体の比職によ く用い られる。上文の真意は一文不知 ともゆ うべき筆者に
はよく理解できないが,単純化すれば,芭蕉は葉が相重なってできでお り,むけどもむけども以外何物 も存
ぜぬ (
空)性質を引用 したものであろう。
仏陀はまた,菩薩摩河薩 は衆生を教化するために如意神通であらカ
封まな らぬとしている。
「
衆生ありて 巳身には大勢力ありと憶慢を起 こさんに,菩薩はか くの如 き衆生を調伏せんがために大力を
示現せん とし,スメール山 (
仏教的世界の中央にある山,高 さ1
6
万 8千 ヨ-ジャナ)を 3指を もってあげ,
巻3
0
,鯉尽意菩薩品)
0
他方無量の世界に投置す ること,たとえば阿摩勤果を投げうつ如 し」 (
∫
α sp・バナナ (
台湾,草屯附近のバナナ畑)
写真 1 〟〟
- 1
9-
木 材 研 究資料
第 7号 (
1
97
3)
また,大般浬磐経 では
「カヂ ラ,パ ラ- シャ, ニ グ ロ-ダ, ウ ドンバ ー ラの和合を林 とな し, これを離れて外 に林な し。 --=四
姓の和合を名づ けて大衆 とな し, これを離 れて外 に史 に別 の衆な きが如 し。衆生 の我 もまた是 の如 く五 陰を
離れて外 に別我な きな り。如来 の常住を則 ち我 とな し,如来 の法身は広大不滅 に して, 8自在 (自在 は解
脱
の嬰 を さし,如来 の大我 には 8自在 が ある)を うる。 これを (
貢)我 となす」 (
巻3
2,獅子軌菩薩品)0
阿摩 勤樹
カ
ジ
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aL.(ア ンマ ロク)
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d.(アセ ンヤ クノキ)
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aRoxb.(- ナモ ツヤ クノキ)
パ ラ- シャ Bu
解脱 もまた多 くの樹木 で説明 されて い る。
「
解)
鋸 ま如来 な りC如来 は清浄 に して汚穣 あ る ことな し。
分陀利華 の本性清浄な るごとし。 ・
・
・
-解脱 は無動
な り。
,婆 師迦の如 し。 =-・
解脱 は堅実な り。 怯陀羅 (カ ジラ),栴檀,沈水 のその性堅実な る如 し。 解脱 は
大般浬
不可取 な りo阿摩勤果 の如 きは人取持すれ ども解脱 は取持すべか らず。すなわち,不可取持な り」 (
磐経一巻 5,如来性品第 4の 2)。
分 陀利 華
NymPhae
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usL.(スイ レン, 白花)
婆
Jas
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num Samb
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.(マツ リ*)
師
迦
「
戒を犯 せば解脱を害す。 解 脱 なければ浬磐を害す。 あたか も樹 の如 し。 もし根を害せ ばすなわち茎幹,
心節,枝葉,華美皆成 るをえず。戒 を持すれ ば解脱 を習 う。根 を害せ ざれ ば茎幹,心節,枝葉 ,
華美 皆成 る」
(
中阿含経-巻1
0,習相応品第 5,戒 経)0
識 は本来 認識 あ るいは心 の作用を意味す るが,仏教 では広 くいろいろ複雑な意味を もち, その真意 は筆者
な どに ほ到底理解 で きそ うに もな いが, 大宝積経-巻1
0
9,賢護長者会第 3
9や大 乗顕識経ではニ グローダ,
・
l
jドンバ - ラ, 7-ム ラ, ア-マ ラカ, コ- ピグー ラ, チャ ンバ カあるいは ナツメヤ シ,ザ クロな どが識 の
解 説に登場す る。 た とえば
「ニ グロ- ダ, ウ ドンバ ー ラの種 子は小 さいが,やがて (
形 を変 えて)大樹を!
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:
.
じ,大樹 はまた種子 を/
午
ず る。すなわち種子 はその形 をすてて, また他 の場所 に生ず る如 く,識 も徴紬 こして一定の形 な く,種 々の
形 を作 り, またすてて,別 の形 をなす」。
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aL.(ア ンマ ロク)
ア - マ ラ カ Ph
コ- ビダ- ラ Ba
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aL. (フイ リソシ ンカ)
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, 隻陀羅樹 ,波
利質多羅樹。
第 1報の総論 でのべ た f
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Rowe
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s)の代表樹 として, 高 さ 100ヨ- ジャナの巨大な マ
ンダー ラヴァの木 が スメール山上 にあ り, その樹下 では3
3天 (
天 の神霊-
霊 的存在 の衆生)が遊 び (
法華
天品, その他),極楽世界 をは じめ, ガ ンデス河 の砂 の数 ほ ども ある 仏 国
経,法師功徳昂,長阿含経 , 柏iU
土 を飾 る荘 厳樹 で もあるO またその花, 豊陀羅華 は菩薩 や如来 の瞬恩や悟 りを祝 う慶祝花 として, マ ンジュ
ンャカや栴檀,沈水な どの抹香 とともに天か らよ りそそ ぐ。 おそ らく仏典 に最 もよ く現われ る花樹 の 1つで
あろ う。 したが って,花 には悦意華,天妙筆,適 意華な ど,木 には門生樹,昼度樹 な どいろいろの仏典漢訳
名がつけ られてい るo
教義上 の比 暁 と して は, た とえば華厳経一入法界品第 3
9に
「
苦薩 の菩提 心 は波利 質 多羅樹の如 し。波利 質多羅樹 の樹皮 の香気 は婆師迦,謄蘭,蘇摩那の花 のあ らゆ
る香気 も及ぶ あたわずO 苦薩 o
j苦提心 もか くの如 し。波利質多羅樹のまだ華 を俳J
I
かず といえ ども, 正 に知 る
- 2
0-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
ベ し。 これ無量の諸花の出生の所なるべ し。菩薩の菩提心 もか くの如 し。 まだ智の 花を 開発せず といえ ど
も, これ無数の天人衆の菩提の華の出生の所な り」。
もちろん樹皮の香気 とい う表現は c
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e としての形容で,実際には香気 はない。
8,獅子帆菩薩品第1
1の 3には次のよ
また中阿含経一巻 1,七法品第 1,昼度樹篠第 2や大般浬築経一巻2
うな意味の波利質多羅樹の教がある。
「
天のパ- )-チャック の葉が しおれて黄色になると, 33天の衆たちはその葉 が間 もな く落ちるであろ う
と歓喜す る。葉がすでに落ちると,今度 は間 もな く新葉が出る (
還生)であろ うと喜 び,新薬が出れば間 も
な く雷が出る (
生網)であろ うと喜 び,雷が出れば間 もな く烏の壕のように (
如烏啄)ふ くらむ と喜 び,壁
如烏啄になると間 もな く鉢の如 く開 く (
生如鉢) と喜 び,生如鉢になると間 もな く満開 (
開敷)近 しと喜 び
か くして関数すれば,光の照す所,色の映ず る所,香の薫ず る所 1
00ヨー ジャナに及ぶ。 これは丁度,仏弟
子が出家す ることを思い (
葉黄),僧形 とな り修行 し (
葉落)
,思念を こらし欲悪を ほなれた 初禅を え (
還
生網),第 3禅 (
生如烏唆), 第 4禅 (
生如鉢)をえて,ついに 真如 (
尽開敷)をえ,
坐)
, さらに第 2禅 (
もろもろの煩悩を解脱 して阿羅漢 となる段階に似 る」
「陳葉 (
古葉)
すでに落ち枝条滋澗 (うるお う)せば,衆人 "新薬栄華 まさに出づ ること久 しか らざるべ し
いと歓喜す。菩薩 もまたか くの如 し。 この甚深般若波羅蜜多経を きくことをえて信解すれば (
落葉 の如 く煩
大般若盤波羅蜜多経一巻300,初分難問功徳品第3
9,巻363,
悩を脱 しえて)久 しか らず して菩提をえん」 (
初分実説品第6
2,巻55
9,第 5分不思議品第1
0の 1)
0
また
「
葉のおちたパ - リ-チャッタの木のよ うに,在家 としてのいろいろの しるLを除 き去 って,出家 して犀*
Sutani
pat
a:中村元訳, ブツダの言葉,岩波文庫)
0
の角のように独 りで歩め」 (
t
中阿含経一遊行経第 2には例外的にマ ンダーラヴァの花を 弔華 として用いている。
釈迦の弟子 マ--カッシャパ (
摩言
可迦葉)がまだ師の入滅を しらず,500人の比丘 と共に クシナガラに急
ぐ途中, 1人の ジャイナ教徒が手 にマ ンダーラヴァの花を もっているのに出会 う。
私の師を知 っているか」 「
知 っている」 「
師は健在
「
君 はどこか ら来たのか」 「クシナガラか ら来 た」 「
か」 「
入滅 してか ら 7日,私 はクシナガラで この天草をえたのだ」。
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aL.デイ コ (古曽部温室)
写真 2 Er
*独覚こひとりで悟りをひ らくこと-をよ く犀に比す る
- 21-
木材研究資料
第 7号 (
1
9
7
3
)
デイ コは樹高1
5
-1
8mに達す る落葉 の喬木で,葉 は広卵形 の 3出複葉,樹幹 にはかたい棟がある。初夏に
0c
m の総状花序につ き,非J
舶 こあざやかであるo イ ン ド, ビルマ, ジ
賀紅 色か ら紫紅色 の花が,長 さ 約 3
ャ ワ,南 ポ リネシア諸島に広 く分布 し, 日本 で も南 部の温暖の地 には露地 に生育す る。デイ コは沖縄県の,
また同属 のカイ コウズ (ア メリカデイ コ) は鹿児島県の県花,県木 として賞用 されてお り,庭樹,街路樹 に
3
5
, 箱材料な どにす ることもあ るが, 一般 にはあま り利用
もよ く用い られ るo 材 は白色軟質で気乾比重 0.
しない,
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何れ も花 に芳香あ り,有名な香水の原料 である。
2
)ウ ドンゲ ノキ Fi
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a Roxb.Udumbal
a,優曇鉢羅樹
ウ ドンゲの華 とい う言葉 は仏教を介 して, 日本人 には随分親 しまれているが, さてそのイメー ジをえが こ
うとして も,華 はもちろん,葉 について も,木について も出て こないのが現実 であるoニ グロ-ダ,イ ン ド
ボダイ ジュ, プ ラクシャと共 にイチヂ ク属 の木 で樹幹盾径 3m以上 に も達す る常緑の大喬木 とな り,枝 が多
いo葉 は卵形,長楕 円形。第 1報の総論 で説明 したよ うに果実 は幹生 で,T度 ブ ドウの房が太い幹 にぶ らさ
m の梨形紅色 で,甘味があ り食用 とな る。 イチヂ ク属の特長 として花 は壷
が るよ うな形 でつ く。直径約 3c
0
0
0
年 に一度花が咲 くとされ,非常に珍 らしい ことの比 陰
状 の花托 にか くれて外か ら見 えないが,仏教 では3
0
0
0
年を週期 として この榔 ま乱れ,五濁の悪世 とな り,再
に用い られてい る。 それ とともに釈迦入滅の後,3
びウ ドンゲの華 ひ らく時,仏陀や転輸聖王が この世 に出現 して 世直 しをす るとい う思想や, このままではす
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a Roxb.ウ ドンゲ ノキ
写真 3 Fi
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aDun,および Dr
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iの御好意 によ る)
まぬ,何かが起 こるのではないか とい う末世思想が一部 に生れて きたO今や釈迦入滅後2
500年, それ こそガ
ンデス河 の砂 の中か らのわずかひと握 りほどの知識をえただけで思いあが り, 自然界に汚蘭をまき散 らし,
その調和を乱 して とどまる所を知 らなか った人類が,今 自然界か ら思い もかけぬ手痛い打手替を うけて,そ
の代償がいかに高価な ものであるかを思い知 らされた。確かに 「
何かが起 こった」 のである。 これが読めな
0
0年間,人類 がその英智 ?に よって よ く
か った所 に,人間の智慧の浅 さがお しはか られ る。 あと残 された5
この火宅か ら脱出 しうるか どうか。
- 2
2-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
さてウ ドンゲノキはイ ン ドの ヒマラヤ山麓,イ ン ド西北部,中南部か らセイロン, ビルマに多 く,神聖樹
であり,よき縁陰樹でもある。
ビルマではタパ ン (
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ha
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n)
,またはニヤウン (
nya
ung) とよび,材質は軟か く,気乾比重0.
4
8
位で灰色
を呈す る。家具,農具,一般建築,梱包用材 として用い られる。
仏典にあらわれるウ ドンバーラほ, もっぱ ら,その花のえ難 く,会い難い こと,丁度菩薩や如来の この世
-の出現のよ うであるとい う比愉に用い られている。その一節を紹介す ると
生彼仏国諸菩薩等,--猶如蓮華,於諸世間,無汚染故。---如尼拘類樹,普覆一切故。如優曇鉢羅,
希有難退散。 (
仏説無量寿経巻下)。
(
仏国土に生れたもろもろの菩薩は,--・
一切の世間に汚 されない こと蓮華の如 く,--・
一切の衆生を
保護す ることニグロ-ダの如 く,---あい難い ことウ ドンバ-ラの華のようである)o
この外,第 1報の総論でのべたようにパ ンの実 と共に人間の平等をとく比倫 として も用い られ,過去六仏
の第五仏拘那含仏の菩提樹でもある。
中阿含経-優曇婆羅経第 8では学林 としてのウ ドンバ-ラ林が王舎城外にでて くる。
3
) フイリソシンカ Ba
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a,拘稗 陀羅樹
Ce
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s の 1つで,マ ンダーラヴァと共にスメール 山上に この大木があるとされているが,仏典
ではこの木の花を香花 として扱 っている場合が多い。
「この経を信ず る人は,天の華パー リジャーク, コ- ビダ-ラ,マ ンダ-ラヴァ,マ ンジュシャカの香を
かぎわけることができる」 (
法華経一法師功徳品)。
また Sut
t
a
ni
pa
t
a(
前出)には
「
葉の落ちたコ- ビダ-ラの木のように在家 としての しるLを棄て,束縛をたちきって,勇者は唯一人歩
め」
とい う意味の詩句があるO前述 したようにパ- リ-チャッタの木について も同じような詩句がある。樹木
学的には落葉樹のパー リ-チャッタがナチュラルであるが,常緑の コ- ビダ-ラの葉をふ るいおとすには,
異常な大勇断を要す るだけに,信仰上か らはこの方が力強 さがあ らわれる。
さて, フイ リソシンカは高 さ 6m 位までの常緑の小喬木で,葉 は写真 4で わかる よ うに特長的な 深裂の
ある-ー ト形または腎臓形である。早春葉 にさきがけて,紫 に紅色または黄色の斑点い りの 5弁の美 しい花
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aL.フイ リソシンカ
写真 4 Ba
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,BuddhaJ
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iMemo
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- 23-
木 材研 究 資料
第 7号 (
1
9
73)
が,膜壁 の短 か い総状花 序 に数個 つ く.芳 香が あ り,薯 を食 用にす る こと もあ るO
ヒマ ラヤ西 邦か らビルマ, 中国 まで分布 し, マ ラヤや シ ンガポール で は街路 樹 に利 用 されてい るO 材 の利
用 価値 はあま りない0
4
)ムチャ リンダ Barr
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angul
aGaertn.?Mucal
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nda,目貫 隣 陀樹
TheVi
nayaPi
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aka に よれ ば, 釈 迦が 悟 りを ひ らい た後, 第 3週 目に この樹下 にお もむ き 1週間頃想 し
て い る。樹木名 について はあい まいな点 が 多いが, 次の 3樹種 が有 力 で あ る。
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Pt
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Pt
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しか し,
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um は死語 で kar
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kar
a とされてい る ことが多 い ことや P.s
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um が
樹形 ,性 質 が
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um に似 て い る ことな どか ら,結 局ムチ ャ リンダを B.ac
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an
gul
a と考 え るの
が妥 当な よ うに思 われ る。
この木 は樹高 10- 15m に達 す る常緑 の中喬 木 で,葉 は写 頁 5でみ るよ うに長楕 円状契形 を して,一般 に枝
写真 5
Bar
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頂 部 に群/
圭す るO
花 は白または帯 亦 白色 で,下 垂す る総 (
徳 )状花序 につ くO イ ン ド全 域, セイ ロ ン, シ ンガポ-ル まで分
布 して い るが, と くにイ ン ドベ ンガル州 に多 いo
材 は黄 褐色 で, 諸器具用,薪 な どに利 用す る程度 で あ る。
ビル マで はキイ (
kyi
)またはチ ックナム (
C
hi
c
kna
m),サバ で はブ タ ソ ト (
put
at
) とよび,枝 低 く幹 が
54- 0.
7で あるが,木理 が均一 で光沢 が あ り,板 物,造 作用, と くに
短 かい。 材 は白色 で軟 質,気 乾比重 0.
木理 の よい もの はキャ ビネ ッ トに使 う こと もあ る。
5
)ロ
ネ
ホ
Buc
hananl
aLat
i
fol
i
a Roxb・Raj
ada
na,pi
yal
a
TheVi
na
yaPi
t
aka によ る と釈 迦 はムチ ャ リンダのつ ぎ, つ ま り解脱 後第 4週 目に この木 の下 で 瞬想す
る。 この木の学 名 について も
Mi
mus
o
PsKaukiLi
nn.(サ ワノキ)
But
e
afr
ondo
s
aRoxb・(- ナモ ツヤ クノキ)
な ど諸 説が あ るが ,B.La
t
i
fo
l
i
aが最 も有 力で あ る。樹 高約 15m,
- 2
4-
樹幹 直径 約
30c
m に達 す る半落葉喬
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
木で,葉 は広楕 円形無柄,淡緑色の花が長 さ約 2
5c
m の円錐花序につ く。
イ ン ド中央部 と西部か らビルマにかけて分布 している。
イ ン ドでは ピャール (
pi
yal
) またはテ ロ リ (
chi
r
ol
i
)
,ビルマではル ンボ (
l
unbo) と呼ぶ。 材 は灰色か
46
位で家具,寝台用材, ビルマ産 は0.
5
3で一般建築,家具用材 となる
ら褐色を呈 し,イ ン ド産は気乾比重0.
が,用材 としてほ重要な樹種ではない。
6)七
葉
樹
AI
s
t
onl
as
c
ho
l
ar
i
sBr.Sapt
apat
t
r
a (ジタノキ)
釈迦 と関係の深いマガタ国の主都 ラー ジャグ リ- (
王舎城)は周囲を 5山にか こまれ,東北のダ リドラク
書 閣 堀山)が有名であ り,南にヴェバ-ラ山 (
昆婆羅山)がある。 このヴェバ- ラ山の七葉樹林 の
ータ山 (
中に石窟があ り,釈迦はよ くここに滞在 した。
雑阿含経-安眠経,穫化加経には石窟内の釈迦の瞬想,安眠を邪げようとして,悪魔がたびたび現われ る
ことが記載 されているが, この石窟 (あるいは この種の石窟の 1つ)の直前に七葉樹の巨木があったので こ
れを七葉樹窟 と呼び,釈迦入滅の後, マ-←カッサバ,ア-ナ ンダ らが議長 とな って, ここで第 1回の集会
を開 き (
長阿含経一散陀那経第 4),釈迦の教えを編集 して最初の経 と律が作 られたと伝え られている。
死語 Sa
pt
apat
t
r
a は七葉 という意味であ り, 中国語 の七菓樹は普涌 トチノキ属 Ae
s
c
ul
us にあて られて
いるか ら, この点か ら
イ ン ドトチノキ Ae
s
c
ul
usi
ndi
c
aHi
e
r
n.
も考え られ るが,仏典の内容か らはきめ手がない。 ここでは諸文献か ら一応 A.s
c
ho
l
ar
i
sとしてお く。
七葉樹はイ ン ドの ヒマ ラヤ西部,アッサム地 区およびセイ ロン, ビルマ,タイ, マ ラヤ, フィ リピン,イ
0m,樹幹直径 1.
0m に達す る常緑喬木で
ン ドネシアおよびオース トラ リアまで広 く分布 している。樹高約2
写真 6のように広披針状へラ形 の葉が輪生す る。
写真 6 AI
s
t
o
ni
as
c
ho
l
ar
i
sBr.七葉樹
(
W.Paki
s
t
a
n,Lo
ho
r
e,Laur
e
nt
h Gar
de
n)
東南ア ジア地 区の AI
s
t
oni
aspp.にはかな り沢山の種類があ り,比重 も 0.
4-0.
7の広 い範囲にわたって
いるが, A・s
c
ho
l
ar
i
sは低比重の種類に属 し,イ ン ドでは チャティア ン (
Chat
i
a
n),ビルマでは レ トック
(
l
e
t
t
o
k) とよび,材 は白色で軽軟な割に撤密,気乾比重 0.
4-0.
5で,一般家具, 箱物家具のパ ネル芯材,
di
t
a) と呼び, これがそのまま 日本語化 し
とくにマッチの軸木 として利用が大 きい。 フィ リピンでは ジタ (
t
i
npe
t
t
)といいかな り蓄積が多い。材 は淡黄褐色で,家具,
箱類の外,
天井
ている。 タイではティンペ ッ ト (
板や荷造 り用材 に も使 うOニューギニアでは whi
t
ec
he
e
s
ewood,イ ン ドネシア,サ ラワクでは pul
aiと
- 2
5-
木材研究資料
第 7号 (
1
9
7
3
)
よび, コンク リ- 卜枠板 として利用 しているようであるo
AI
s
t
oni
aSpp.は東南ア ジア地域では,園や地 区によってよ く pul
aiOO,pul
aixx とよばれ
J
el
t
o
ng
Dyer
ac
o
s
t
ul
at
aHk.f
.
Jo
ngkong Dac
t
yl
oc
l
aduss
t
e
no
s
t
ac
h
ysOl
i
v.
と共 に現在相当量が 日本に輸入 され,AI
s
t
oni
a と Dyer
a は婚礼家具の主役である和 タ ンス,洋 タ ンスな
t
yl
oc
l
adusは後出の
どのパネル芯材や婦人靴 の ヒール用材 として,また Dac
Bi
nt
a
ngur Cal
o
Ph
yl
l
um spp.
と共 にベッ トその他の家具構造材 としてな くてはな らぬ材であるoBi
nt
a
ngur もまた仏教に関係が深いo
こうしてみると,一見仏教 には無縁のようにみえる現代 っ娘の榔 型に も仏教二千数百年の縁起の存在を感
ず る。
7)キャダンパ Ant
hoc
e
phal
usc
adamb
a Mi
q.Kada
mba,迦曇波樹
大荘厳 (
紘)請-巻 9の第5
4によると,ある時魔王が尊者 ウバ グタを悩 まそうとして,かえ って尊者の神
通力によって束縛 され
「
身毛皆 さかだち迦曇波華の種 々に触 悩を起すが如 し」
と述懐す る。
これはキャダ ンパの花が丁度栗のいがに似た形を していることを引用 した ものであるが,イ ン ド古典文学
写真 7 An
t
hoc
e
Phal
usc
adamb
aMi
q.キャダ ンパ
(
Del
hi
,DuddhaJ
aya
nt
i
,Me
mor
i
alPar
k)
にあ らわれるキャダ ンパの花の香は恋情をかきたて,恋の仲介者である。
キャダ ンパ は世界の珍種 ともいわれ,葉 は楕 鞘 杉,長楕 円形 または卵形,花 は黄 白色の叢生卵形で一見い
がのような形を している。和名 クビナガタマバナは これか らL
T
i
はこものであろう。 とくに夜間に芳香を放つ。
da
nbar
r
iは この果実か ら作 られたと伝え られている。樹 皮
果実は肉質の球形集巣で食用 とな る。 古酒 Ka
は薬用。
ヒマラヤか らセイロン,マラッカに 自生または栽培 されてい るが, ビルマ, タイ,スマ トラ, ボルネオに
も分布 している。
イ ン ドではキャダ ン (
ka
da
m) といい,ア ッサム,ベ ンガル州 にとくに多い。材 は黄 白色 または淡黄褐色
で,気乾比重0.
42-0.
55, 怪構造材,天井板,合板 に使われ る外,一般板材,荷造用材,あるいはパルプ原
mau1
e
t
t
a
ns
he
) とよび
料 としてイ ン ドでは重要樹梓である。 ビルマで もキャダ ンまたはマウレック ンシ (
- 2
6-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
マッチの軸木,パルプ用材 として安定 した用途があるが,一般建築,箱物材料に も使用 され る。マ ラヤでは
ケ レンパヤ ン (
kel
empaya
n)
,カ リマ ンタ ンではクランペヤ ン (
kl
ampeya
n)
,北 ボルネオ,サバではララン
(
l
a
r
a
n)
,サ ラワク, ブルネイではセ リンポ (
s
el
i
mpo
h) とよび主 に茶箱,マッチの細木, パルプ原料 とに
用い られている。
8
)イン ドチャンテンノキ Ce
dr
e
l
aTo
onaRoxb.Kacchapa
第 1報の 5大樹の教えに出るカッチャパ は樹高2
0m以上,樹幹直径 8
0c
m 以上に達す る 常緑の大樹であ
る。 葉 は披針状小葉 か らなる羽状複葉 で,蜜 のような芳香を もつ白色の花が咲 く。 ヒマラヤ山麓,イ ン ド
中,南部および ビルマ原産で, ジャワ,オ-ス トラ リアに分布 している。
o
n とよぶ。材 は切削直後は c
e
dar類に似 た香気があ り,心材 は淡い煉瓦色である
イ ン ドでは一般 に To
ho
ga
ny に似ているので I
ndi
a
nma
h
が空気にさらされると次第に暗色をおびて くる。板 目の木理が ma
0 -
ga
ny ともよび,選材すれば突板や高級家具材 とな る。気乾比重0.
48
-0.
5
9で柔かい触感がある。昔 は独木
船 によ く用い られたが,現在 は室 内造作,建具,彫刻その他工業用材 として利用 されている。 また湿気 に敏
感なので茶箱用材 として珍重 される。東南ア ジアで も t
oo
n が通 り名であるが, ビル マではシ トカ ド (
t
hi
-
t
ka
do) といい第 1級の家具,葉巻箱用材である。 タイでは ヨムホム (
yomhom)
, ビル マ では イェダマ
(
ye
da
ma) とい う。ニューギニアでは New Gui
ne
ar
e
dc
edar と呼び,樹高 40m,樹幹直径 1.
5m の巨
木 となる。
気乾比重0.
7
4位でやや重 く,芳香がある。いずれ も一般建築以外葉巻箱,家具,頑具用に使われている。
写真 8は同属 のチャ ンチ ンノキ Ce
dr
e
l
as
i
ne
n
s
i
sA.Juss.で中国原産,葉 は t
oona によ く似ているが,
やや大 きい。葉 とくに新薬 には特有の臭気があるが,中国,朝鮮では新芽を好んで食べる。
9) イン ドキワタ Ce
i
b
ape
nt
andr
aGaert
n.Kar
pas
a,(
パ)Ka
ppas
a,衣樹,劫波育樹
「
階をえて局を望む」 のは衆生の本性か もしれぬが,釈迦はある時祇園精舎で弟子のアーナ ンダ達 に人間
dr
e
l
as
i
ne
n
s
i
sA.J.チャンチ ンノキ
写頁8 Ce
(
京大理学部植物 園)
- 2
7-
木材研究資料
第 7 号 (1973)
の欲の限度を知 って命終 るものの少ない ことを説 き次のような話をす る。
「
昔,イ ン ドに頂i
l
_
:
.
とい う王がいたo勇猛有徳 の明君ではあったが,一国だけで満足せずつ ぎつ ぎに†
矧 玉t
Ut
t
ar
akur
u*)を攻めた時, はるか遠 く地平線上に 樹木が整
を征服 した。 たまたま三
Eがウッタラクル園 (
然 とはえそろっているのが見えた,王は家 臣たちにいう `
`
あれはカッパーサ とい う木だo ウヅタラクル人 は
あれか ら衣を作 り身につけている。お前達 もそれにな らった らよい"」。頂生王 はその後際限な く領土を広
め,ついには帝釈天の座を とり天界を も文配 しようと考えた。 しか し, この不遜な考えをいだ くや否 や王は
忽ち重病 にかか り命を終えたが,臨終にあたって彼 は際限な く欲望をお こし,結局何事 に も満足せず命を終
7,中阿含経一四州
えることを後悔 して =決 して他人事 と思 うな"と教えているO (
増毛阿含経一安般品第 1
経第 3)
ビャクダ ンの項 で述べたように,釈迦は臨終 の際アーナ ンダに
「
私の遺体は転輪王 と同様に香油で洗い,新 しい劫波育樹衣で幾重に も包み,金棺におさめ胡麻油をそそ
ぎ, さらに第 2の鉄棺でおおった後,栴檀作 りの棺にお さめ,香木を積んで茶枇にふせよ」 (
長阿含経一遊
行経第 1,増壱阿含経一非常品第5
1)
と命 じている。
巴英 辞典 によると Kappas
a は si
l
k cot
t
o
nt
r
e
e とされている。俗に s
i
l
k cot
t
on と呼ぶ樹木は数種あ
るが,イ ン ドキワタが代表的である。 しか し,Ka
ppas
a に対応す る死語 Kar
pas
a は イ ン ドワタ Go
s
s
y-
Pi
um he
rb
ac
e
um L.であるo イ ン ドキワタの繊維 は俗にカポ ックと呼ばれ,枕, フ トン, 椅子あるいは
救命具などの詰物 として古 くか ら用い られているが,糸 に紡 ぐことがで きないといわれているか ら, これだ
8
0
0年 か
けでは織物にはな らない。綿織物は麻, 絹 あるいは毛織物などの中で最 も新 しい織物で, 紀元前 1
ら前8
0
0年のr
l
鋸こイ ン ドで初めて作 られたと伝え られているか ら,釈迦在世当時すでに織物 として存在 して
いた訳で,その点か らは劫波育樹衣 はイ ン ドワタの綿毛で作 られた ものと考えるのが順当であるが, この辺
写真 9 Ce
i
b
ape
nt
andr
a Gaer
t
n・イ ン ドキワタ
(
古曽部温室)
*仏教的世界観によれば,柑界の中央 にスメール山がそびえ, これを とりまいて九山八海があ り,その最外
周の東西南北 に次の四国がある。
東
ヴ ィ デ ー - (
Pubbavi
de
ha,弗婆提)
酉
コ ダ - ニ ヤ (
Godani
ya,倶那尼)
Ja
mbt
l
dvi
pa,閣浮提)
南
ジャ ン プ ドグ ィパ (
北
ウ ヅ タ ラ ク ル (
Ut
t
ar
akur
u,優単 日)
- 2
8-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
が少 しあいまいである。
それはとにか く,イ ン ドキワクはいわゆる ka
po
kt
r
e
e で,樹高約 1
5m,樹幹 1.
0m 以上 になる落莫喬
木で枝が水平 には り,樹冠の広いのが特長である。葉 は写真 9でみ られ るように特長のある長柄の掌状葉,
薪果の中に繊維 に包 まれた種子がある。 この繊維がカポ ックで強 くはないが,長 くて光沢があ り,耐久,耐
水性 にとむ。
熱帯地方 に広 く分布 しているが,イ ン ドではベ ンガ ル地 区に多 く,通常 ka
po
k, ベ ンガルでは s
c
hwe
t
-
s
e
mul とよび,材 は淡い灰白色か ら灰褐色で,辺,心材の差があま り明瞭ではない。気乾比重0・
1
4- 0・
3
5
で非常に軽 く,
独木札 カ ヌ-,
頑具 ,
マッチ,
箱類の材料 とな り,
選材すれば b
al
s
a の代用 として パ ネル類 の
コア材料に通す る。樹皮 は生薬, ゴム材料の原料 となる。また種子油は料理用や機械油,石鹸などの工業原
料である。 ビルマではシ ンポ レ トパ ン (
t
hi
nb
aw1
e
t
pa
n)と呼び,カポックとマッチ軸用 として有用である。
1
0
)キ ワ タ Bombaxmal
abar
i
c
um DC.白魚l
ma
l
i
奈良康 明訳アブァダ-ナ, 仏典 Ⅰ) でキ ンナラ の 王女 マノーハ ラが スダナ王
sudha
na
kumar
ava
da
na (
子の道中安全のため,いろいろの注意を仙人 に ことづける詩 に
ア-シ-ヴィシャ-には:
声
'
・
種多様の蛇
ヴェ- トラナデ ィー河 に'
,
i鋭い糎のあるシャール マ リー樹が生えている。
とうたっている。
真1
0のようにイ ン ドキワ
シャ-ルマ リ-は樹高 3
0m, 樹幹直径 1.
0m 以上 に達す る落葉喬木で,葉 は写
0 Bombaxma
l
ab
ar
i
c
um DC.キワタ
写真1
(
伊豆薬用植物栽培試験場)
タのそれ と全 く同 じで,外側が黄 白色,内側が燈紅色の 5弁 の きれいな花が咲 く。薪異 は成熟す ると 5裂に
ひ らき中か ら白色の種毛をだす。 これがいわゆ るパ ンヤで枕などの詰物に用いるが,イ ン ド, セイ ロン,ス
マ トラ, ジャワ, ビルマなどに広 く分布 し,耐風力があるので防風林に作 られ,並木,庭樹 と して も利用 さ
s
e
mul
) とよび,材 ははじめ ク リ-ム色であるが,次第 に黄褐色か ら灰褐色,
れ る。イ ン ドではセム-ル (
時には淡紅色に変 る。比重0.
2
-0.
5の軽軟材で,腐朽,虫害,変色を うけやすい。マ ッチ軸木,マッチ箱用
材 と して有名であるが,果物箱,天井板 , 軽家具類など広 い範囲に利用 され る有用材で,合板 に も適す る。
かつてプ ロペ ラボス用の C
P
mpr
e
g に利用 されていたが,今後複合材料 としての用途開発が期待できようo
仏典 に,芙かい こと,修行未熟で精神の動揺 しやすい ことの比倫に都羅綿 (
Tnl
a)という言葉がよ くでて
- 29-
木材研 究賓
料
第7号 (
1
9
7
3
)
くるが, これは上記 のワタ属 またはキワタ属 の綿毛を さしてい るのであろう。
「もろ もろの菩薩,前 世において般若波羅蜜多を聞 き, よ くその意を解 しえて も,修行 に精進せ ざるが故
に,今世 において般若波羅蜜多を き くも,その心動揺 して進退不恒 な ること都羅綿 の風 において親転す る如
し」 (
大般若波羅蜜多経一巻 5
6
1
,第 5分甚深相品第 1
3
,巻3
1
1
,初分衆愉品第4
4の 1な ど)0
「
仏 陀の眉間の自宅 (
白色の細 いまき毛),柔軟 な ること兜羅綿の如 し」 (
大般若波羅蜜多経,過去現在因
果経な ど)
o
Po
ec
yno
s
ur
o
i
de
sRet
z イネ科 ポア属吉 祥草「クサ軍 (
仏 陀 や 菩薩達が坐禅をす る時 に敷 く, 1年
または多年生草木で,宗教的神聖草 とされ,丁度 日本のサカキに相当す る)の柔軟な ること都羅綿 の如 し」
(
衆許歴詞常経-巻 5,人菩提道場 ,降摩道場)0
s
uaf
e
r
r
e
aL.Nagakesar
a嚢識頂沙羅樹
ll
) セイロンテツボ ク Me
Vaj
r
asnci:中村元訳
ヴァ ジラス-チ (
金剛の針 仏典 Ⅰ)で人間の平等を強調す るために 引用 されて
5m前後,樹幹檀径 0.
8m に達す る常緑の喬木で,樹幹通商,
い るナ-ガケシャラ (
第 1報参照)は樹高2
葉
は披 針状,春 か ら夏 にかけて白色または赤 白の花が咲 き,芳香があるのでよ く乾燥 して枕 にいれ る。
イ ン ドの ヒマ ラヤ東 邦,ベ ンガル州 山地, セイ ロン, ア ンダマ ン諸島か ら広 く東南ア ジアに 分布 して い
る。神聖樹 と してパ ゴダ等の矧卿 こ植え,並木,庭樹 と して も用い られ る。
mes
ua) と呼 び,辺材 は灰色 または淡い ピンク色,心材 は煉瓦色で,名 前の示す よう
イ ン ドではメスア (
.
9
3
-1.
2
4
。 イ ン ドの最 も堅重な樹種の 1つである。耐久性 はかな りよいが交 錯木 理 の
に非鼎 こ使 く,比重0
多いのが欠点 といえよう。
建築,橋梁用の柱,桁 あるいは鉄道の枕木 としての利用が最 も多いが,その他,電柱,木煉瓦,銃床な ど
gamgaw),タイではブンナ ック (
bumnak), カ ンポ ジャではボス
に も利用 され る。 ビルマではガ ンゴー (
bosne
ak),マ ライではペナガ (
penaga),イ ン ドネシアではナガサ リ (
nagas
ar
i
)な どと呼んで
ネア ック (
い る。
1
2) ナンバ ンサ イカチ Ca
s
s
l
ahs
t
ul
aL.Revat
a
釈迦の高弟で智慧第一・
といわれ るシャ- リブ トラ (
舎利
弗)の実弟 レバ ク
(
流
麗) と同名 の樹木 で花樹,
用材樹 として有名であるO
5m,樹幹直径 0.
6m に達す る落葉喬木で,卵形 または楕 円形小葉か らな る羽状後楽を もつ。 早
樹高約 1
写真11 Me
s
uafe
rr
e
aL.セイ ロンテツボク
(
Ceyl
on,Par
ade
ni
ya,RoyalBot
ani
calGar
de
ns)
-3
0-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
写真 1
2 同
(
同
写真 1
3
前
前)
Cas
s
i
aj
i
s
t
u
l
aL.ナ ンバ ンサ イ カチ
(
W.Paki
s
t
a
n,Laho
r
e,Laur
e
nt
h Gar
de
n)
春 か ら夏 にか けて, 直径約 5c
m 淡黄 色 5弁 の花が長 さ 30-50c
m の厳 生下垂 の総 状花序 について咲 きほ
こ り,一名 Go
l
de
ns
howerとよび一般 にな じみが深 い。 薪呆 は長 さ 1mに も達 し,果 肉,種子 は薬用 (
下
刺 ) に用 い られ る。 イ ン ド原産 , セイ ロン, ビル マ, マ ラッカか ら中国, - ワイ に も分布 し庭樹,街路樹 と
して愛用 され る。 セイ ロンでは仏 花 と して有 名 で あ る。
イ ン ドで はア マル タス (
a
mal
t
as
)
, タイで は ク ン (
khun)
, ビル マで は ヌ グ (
ngu) と呼 び,心材 は赤褐
- 31-
木
材研 究 資 料 第7号 (
1
9
7
3
)
色 を是 し,気乾比重 0.
98位,耐久性 が あ り1
出癖,車輪,農 器具,工 具の柄な どに利用す るが,広 く交錯 した
par
e
nc
hyma を もち, きれいな木理 (
par
t
r
i
dgemot
t
l
i
ng ウゾ ラ杢)を示す ものはキャ ビネ ッ ト,高級家
具類 に使われ る0
1
3
)コ ネ .
y シ Hol
ar
r
he
na ant
l
dgs
e
nt
e
r
l
c
aWal
l
.Kut
aj
a,責 任迦樹
マ- -ナ-マ長老が修行 の苦 しさか ら, ネ-サーダヤ山で 自殺 しようとして,悟 りをえた時 の詩 に
「クタ ジャ樹 とサ ッラッキ樹 の多 いネーサ -ダヤ山か ら私 の邪心 は放逐 され た (
Ther
a
gat
ha:早 島 鏡正
訳
長老 の詩
仏典 Ⅰ)。
とい うのが あ るO また大荘 厳 (
紘)論巻 1
4
=
に
「シ リダック (
バ ラモ ン教徒) の作れ る屋 舎,清浄鮮潔な る ことクタジャ樹 の如 しJ
と述 べてい るo シ リダックは粁計 によ って釈 迦を殺害 しよ うと したが,釈 迦の行 う奇蹟 によ って仙 判 こ帰 依
した ことが大荘厳 (
経)論 に伝え られて い る。
写頁1
4 Ho
l
ar
r
he
naant
i
dys
e
nt
e
ri
c
aWal
l
.コネ ッシ (中央)
(
伊豆薬用植物栽培試験場)
ク タジャは ヒマ ラヤ地域, ビルマ, タイ,北 部マ ラヤに分布す る洗 本性 の低木で,樹皮や種子 に有毒成 分
コネ ッシ ンを含む。 ビルマでは レ トックギイ (
l
e
t
t
o
kgi
) と呼 び, 気乾比重 0.
6
4で比較的業か く, 材 は白
也,木理均一 であ る。大荘厳 (
経)論 は この性 質を 引用 した ものである。彫刻,価 , 頑具 , 旋盤細工 な ど多
kur
c
hi
) と呼 び, 古 くか らシッ ソ- (
S
i
s
s
oo) と共 に燃料 と し
方 面 に使用 されてい るO イ ン ドではクルチ (
s
t
i
napur
a遺跡 には, 当時 これ ら
て重 要な位 置を 占めてお り, ア- リア人 の最初 の屈留地 の 1つである Ha
の樹木 が炭 または薪 と して使用 されていた痕跡 がみ られ るとい う,
1
4) イン ドガキ
Dl
o
s
pyr
o
sEmbr
yo
pt
e
r
i
sPers.Ti
mbar
u ,Ti
nduka,鉄頭 迦樹
「
盛 りをす ぎた男が, テ ィンパ ル果 の ように もり上 った乳房を もった若い女 を ひ きいれて, かの女へ の嫉
妬 か ら夜 も寝 られないO これ は破滅- の門であ る」 (
Sut
t
ani
pat
a:前 出)0
これは釈 迦が祇園精 舎で,破滅 についてのべた偶の一節 であ るが, いや全 く年寄 の冷水 はいけません。
イ ン ドガキはその 名の示す通 りカキノキ科 。屈 の木 で,葉 は長楕 円披針状,写 真 1
5の白黒 では実感 が でな
L
1
のぞいてい るさまは,乳房
いが,緑 の基 の中か らビワの実 のよ うな穫黄∼燈紅 色の小粒のかわいい実が 沢 L
とい うよ りも乳首 とい うにふ さわ しい。
)乳房 はむ しろタ- ラ (
第 1報, オーギヤ シ) の方 で,サ ンス ク リッ
Raml
1
ya
na)で コ-サ ラ1
月の王子 ラーマが クー ラの実 を見 るたびに,妻 シー ク
ト古典叙事詩 ラ-マ-ヤナ (
- 3
2-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
写真 1
5 Di
o
s
Pyr
o
sEmbr
yo
Pt
eri
sPe
r
s.イ ン ドガ キ
(
W.Paki
s
t
a
n,Laho
r
e,Laur
e
nt
hGar
de
n)
写真1
6 前
同
(
同
前)
-の盛 り上 った乳房を幻想 してい るo
ヒマ ラヤ地 区か らセイ ロ ン, マ ラヤ に 分布 し, イ ン ト
で は ベ ンガル 州 に多 いO
わが国で古 くか ら唐木 と して有名な黒檀矧 まこの属 で
本
黒
檀
Di
o
s
pyr
o
se
b
e
num Ko
e
n.
縞
黒
檀
D.phi
l
o
s
ant
her
a BI
c0.
-
33
-
木材研究資料
第 7号 (
1
9
7
3
)
D.rumphi
iBakh.
苫
黒
檀
D.c
ho
l
o
xyl
on Roxb.
D.mo
l
l
i
sGr
i
f
f
.
な どが有名である。 また D.mar
mor
at
aPar
k.は Ze
br
awoo
d または Mar
bl
ewood (イ ン ド) と呼ば
e
br
awoo
d はア フ リカ産 マメ科の Mi
cr
o
be
r
l
i
nabr
az
zaui
l
l
e
ns
i
s
れているが, E
l本 で突板 として有名な z
であるO
イ ン ドガキの材 は秋色で撒密 であるが,心材 には,縞黒檀 に似 た黒色の縞が不規則に走 り,地域 によ って
は黒檀 として通用 しているようである。強度,耐久性 に秀れ,高級家具,彫刻, 床 (とこ),小物入 れな ど
に広 く利用 されている。 イ ン ドでは黒檀 と同 じく e
bo
ny と呼んでい る。
1
5
)ナガ ミパ ンノキ Ar
t
oc
ar
pusl
nt
e
gr
l
fol
i
usÅut
h.Pa
nas
a,波推蜜樹
第 1報総論でのべたように, マ ンゴ-の実 と共 に人間の平等を と く場面 に引用 されている。仏典 Ⅰ (中村
元
訳,仏伝 に関す る章句)や仏本行集経な どによると,当時の道徳否定論者 プー ラナカ ッパ は 「
果報につい
,
て質問 され ると 丁度マ ンゴ-の実 について質問 されたのにパ ンの実について説明 し,パ ンの実 について質
写真1
7 Ar
t
oc
ar
pusi
nt
e
gr
i
fo
l
i
usAut
h・ナガ ミパ ンノキ
(
W
.Pa
ki
s
t
a
n,Laho
r
e,Laur
e
nt
h Gar
de
n)
聞 されたのにマ ンゴーの実 について説明す るように,.
糾 こ無作用 の説を といた」 そ うである。 どこかで もよ
く聞 くような話 ではある。
nt
e
gr
ト
パ ンノキにはいろいろの種類が あるが, イ ン ドか ら東南アジアにかけては, イ ン ド原産の A・i
:
.
柿,栽培種 と もに樹高 2
0m, 樹幹 直径 1.
0m あるいはそれ以上 に
f
ol
i
us (ナガ ミパ ンノキ)が多い.野EL
0
年で樹幹盾径 0.
5m に達 した記録が ある。葉 は写真 1
7にみ るように長橋
達す る常緑の喬木で,生長が早 く1
0-6
0c
m,長 さ 4
5-60cm の楕 円形の果実が幹生 して,熟す ると黄褐色 にな るo
p
j
J
r
・
;で,頂径 3
パ ンに似 た味が して,蛋 白買, ビタ ミン A ,C に富む といわれ る。焼 いて食べ るほか,砂糖演に した り,
乾か して野菜代 りにカ レ-などにいれ る。種子 も食用 にな る (
強吐剤 )O
イ ン ドでは ka
t
l
l
al
,j
ackwood とよび,材の新 しい切 口は レモ ン色 であるが, 次第に暗色にな り ma
ho
一
ga
1
y に似 た色調 にな るので,本来は果樹であ るが,表具構造材,一般木工 , 刷毛木地, ロクロ細工 な どに
もよ く用い る。
比重0.
5-0.
5
8,古代 ベ ンガルでは s
al(
Shor
e
dr
ob
s
t
a)
,t
e
ak (
Te
c
t
onagr
andi
s
)
,gamar
i(
Gme
l
i
a
- 3
4
=-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
写真 1
8 Ar
t
o
c
Dr
Pusi
nc
i
s
aL.マル ミパ ンノキ
(
Ceyl
o
n,Col
o
mbo,Vi
har
aMa
haDeviPar
k)
ar
b
or
e
a)と共に秀れた造船用材であった。 ビルマで も j
ack と呼び, 材か ら黄色染料を とり, 僧侶の衣
kho
nor
pr
ey),
(ころ も)を染める。一般家具,木工用材で もある。 タイ,カ ンボヂャではクノールプ レイ (
c
he
mpe
dak) と よびやは り家具,寄木細工, ロクロ細工, 彫刻な どに用い ら
マライではチェ ンペダック (
れている。
Ar
t
oc
a7
・
pusI
T
Wi
s
a L.(マル ミパ ンノキ)は原産地 について諸説があるが,南大平洋説が有力で,イ ン
ドで も古 くか ら栽培 されている。樹高約2
0m,樹幹直径 1m以上に達す るもの もある。葉は写真1
8のように
特長のある,大 きな鋭尖羽状中裂形で,果実 は球形 または卵形 である。生食 もで きるが普通石焼 きにす る。
A.i
nt
e
gr
i
fo
l
i
us よ り味が よい。ポ リネシャ諸島には種無 し改良種が多 く, 主食 として重要であ り,家 の
周囲に早生種, 晩生種を適宜植えておけば, 半年 ぐらいは食べ続 けることが出来 るとい う 責重な 果樹であ
る。 材は白蟻に強 く,一般建築や独木舟に用いる.
樹皮乳液は トリモチにな り,樹皮 の靭皮繊維か らタパ
(
t
a
pa) に似た布を作 るなど,利用価値の高 い樹種である。Ar
t
o
c
ar
puss
pp.は最近わが国に も輸入 され,
合板 その他に利用 されている。
1
6) アンマロク Phgl
l
ant
hz
E
SEmb
uc
aL.Amal
a
ka,阿摩勤樹
仏典 に最 もよ く現われ る果樹の 1つである。樹高約 1
0m の落莫喬木 で,写真 1
9のように, 線状長楕円形
鈍頭の葉が枝 に 2例に並 び,一寸モ ミ (
Ab
i
e
ss
pp.
)の枝 に似ている.果実 は直径 1-2c
m,肉質の扇球形
で成熟す ると紅色になる。酸味があ り生食で きるが,砂糖漬や塩漬に もす る。 マラヤ原産 といわれ,イ ン ド
全域, セイ ロン, マ レ-シァ, 中国に分布す る。 ビルマではジ ビュ (
zi
byu)とよび,気乾比重 0.
83位で,
赤色を呈 し,木理密で堅 く耐久性 にとみ家具,農器具材に適す る。
amal
aka)
-漢訳仏典ではマ ンゴー (
a
mal
aka)とな っているが,サ ンスク リッ ト語 の方を
「ア ンマ ロク (
とる-またはパ ンの実を食べたいと思 う時,まずその種子を良地 に植え, よ く世話をすれば漸次生長 して花
果がで き,ついに果実が熟す る。丁度 そのように菩薩が菩提をえようとす るな らば,まず六種の波羅蜜多を
学 び,また衆生に対 しては四摂法 (
菩 薩が衆生救済の時にとる四種の基本的な態度一布施,愛語,利行,同
事)により般若波羅蜜多に安住せ しめ,安t
i
;
_
L終 らば- L
)
J
の生老病死 の解脱をえん」 (
大般若波羅蜜多経-巻
3
5
6
,初分多聞不二品第6
1の61
,大蔵厳 (
経)諭巻 1
5)
。
仏典ではよ く一 目瞭然たることを "掌 中の阿摩軌朱をみ る如 し日という。
「
如来の天眼は最 も清浄,一 切の世界の一 切の有情 (
衆生)の色相 (
すがた)の差別および余の ものの種 々
-
3 5
-
木材 研究資料
第 7号 (
1
973)
写真 1
9 Ph
yl
l
ant
huse
mb
l
i
c
a L.ァ ンマ ロク
(
伊豆薬用植物栽培試験場)
の不 同をみ ること (
その本質をみて ことごと く分別す ること), 掌 中の阿摩動果 を観 るごと く, 諸 の人天 の
眼 の及 ぼ ざる所 な り」 (
大般若波羅蜜 多経巻 5
68,万広大荘厳経巻 1
0,出曜経巻 1
4な ど)
0
J lは相貌見 , 2には了了見な りO 了 了見 は
「
見 (
見解- よ く考慮推求 して事を決す る こと) に 2種 あ りr
眼の色を見 るが如 し。人 の眼根 の活浄 に して壊 せず , 白か ら掌 中の阿磨勤果 の如 し。菩薩摩詞薩 の明かに,
道,菩提,浬磐を見 る もまた是 の如 し」 (
大般浬磐経一巻1
7,兜行品第 8の 3)。
a) によ って もな されてい るO
しか し, 同 じ意味の表現が,奄羅果 (
マ ンゴ-,Amr
大空積経巻7
0
)
0
「
如 来は真実 を放 し給 うこと掌 中の奄羅朱 の如 し」 (
r
如来 は鮭 ヒ智を獲得す。 この故 によ く業の因果を知 るC --・
如来 の知見 は障礎な く掌 中の奄 推果 をみ る
如 し」 (
大方等大築経巻 3)
。
しいて考 えれ ば,当時両者共 に用 い られていた ととれない事はないが,常識的には何れか一方 であろ う。
こう した混乱は発音 のよ く似 た 言葉 にいろいろの音訳語が あて られてい る場合 に, よ く起 りうる。 ア ンマ ロ
ク, マ ンゴーな どが その好 例で,参考 のため にその類似語を ひろ ってみ ると
gi
fer
ai
ndi
c
a,Amr
a 奄躍,奄摩経,奄没羅
マ ン ゴ ー Man
ア ンマ ロク Ph
yl
l
ant
husEmb
l
i
c
a,Amal
a(
ka) 阿摩動,奄 摩勤, 阿摩洛,奄維
タマ リン ド Tamar
i
ndusi
ndi
c
aL.Aml
a,Aml
i
ka
アム ラノキ
SPo
ndi
uspi
nnat
a,Amrat
a(
ka)奄漠羅,阿未 鉦
な どが あ り,漢訳仏典 では これ らが ときどき混乱 してい るのが見 うけ られ る。末節 の場合 もその原典 に さか
l
mal
a(
ka) が 多い ことか ら,-一
応 ア ンマ ロクを とっ
のぼ らなければ是非の判断はつけ られないが,訳註 に E
てお く。果物 と して は当時すでにマ ンゴ-の方が 味, 形 と もにア ンマ ロクよ りは るかにす ぐれていた といえ
よ うO
筆者 のよ うな信仰心 の浅 い人刷は, いづれ は 地獄行 きであろ うが,「閣魔城 には四 面に鉄塔が あ り, その
鉄門の左右 には憧 (
ふ き流 し)が あ って,尖 端 に人頭 を安 田 してい る。 この人頭 は問題城 にお とされた人 肌
をみ ること掌 中の奄 羅果 の如 く」 (
仏 説地織 菩薩 発心因縁十王経),絶対 に うそはつけぬ とい う0
1
7) ミロバ ランノキ Te
r
mi
nal
l
ac
he
bul
a Ret
z.Hari
t
aki荊梨助樹
ミロバ ランは果 樹,共闘 と して仏典 によ く引用 されてい るが,材 もまたイ ン ド,東南 ア ジアでは重 要な樹
木 である。 樹 高 1
0-2
5m,樹幹迫径 0.
5-1.
0m に連す る常緑喬 木, 果実 は核果 で直径 3-5cm の長楕 円
一
一 36一
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
0 Te
r
mi
nal
i
ac
he
b
ul
a良.ミロバ ラン
写真2
(
伊豆薬用植物栽培試験場)
40-50%)
,軽皮や 染色用原料 として イ ン ド
形,成熟す ると黄金色 にな る。果皮 はタ ンニ ンの含有量多 く (
の重要林産物である。種子 は食用。古 くか ら生薬 として有名で,解熱,下痢,下痢止 めに効果 があるといわ
れてい る。
可梨勤晃を とり仏 に奉 ぐれば, 風病直ちに 止 む」 (
衆
「
釈 迦成道後 7日に して,風病を発す るも,帝釈天言
。
許摩言
可帝経巻 5)
「
熱病の下葉には詞梨勤采を以てす」 (
金光明経巻 3
2
)
0
イ ン ドのベ ンガル州, デカ ン高原か ら セイ ロン, ビルマ, マラヤに分布す る。 イ ン ドでは ミロバ ラン
(
myl
obal
an),ビルマではパ ンガ (
pa
nga),カ ンボヂアではタオール (
t
aour
) と呼 び,気乾比重 0.
95位,
褐色で木理 は ラワンにかな り似通 っている。堅 くて強 く,建築,家具,車幅用材, と くに工具の柄 に愛用 さ
れている。
マ ラヤで も第 2級用材 として用途が広 い.Te
r
mi
nal
i
aspp.の比重 は 0.
3-0.
9の広 い範囲にわ た ってい
るが,低比重 の ものは最近 日本 に もかな り輸入 され,合板 その他 に使用 されは じめている。
同属 の T.c
at
aP
Pa L・(モモ タマナ) は I
ndi
anal
mond と呼ばれ,E
L
:
.
食,焼食 して美 味である0
1
8)ベ ル ノ キ Ae
gl
eMar
me
l
o
sCorr.Bi
l
va,昆醸勤呆 ?
r
oni
ae
l
e
Phant
um と共 に 仏
イ ン ド原産 の ミカ ン科の落葉小喬木 で,いままでの所, ナガエ ミカ ン Fe
典 にあ らわれ る唯 2種類の柑橘類である。
柑橘類は現代のイ ン ドでは重要な果樹であるが,古代 イ ン ドではあま り知 られていなか ったようである。
葉 は写真21でみ るように 3出複葉で,樹 枝 に棟を もち,花 に芳香がある。果実 は直径 5cm 前後の球形 また
は楕 円形 で,芳 香があ り生食, シャーベ ッ ト, マ-マ レー ド,塩漬にす る。 マルメ ロシ ンを含み赤痢 の良薬
といわれてい る。果皮 はイ ン ドサ ラサの黄色染料の原料 である。
- 37-
木 材 研 究 資 料 第 7号 (
1
97
3)
写真2
1 Ae
gl
eMar
me
l
o
sCor
r
. ベル ノキ
(
W .Pa
ki
s
t
a
n,La
ho
r
e,Laur
e
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h Gar
de
n)
ビル (
Ba
el
) と呼 びイ ン ド全域 に 自社 または栽培 されてい るが, ヒマ ラヤ西部, アッサム州 に多いO寺院
によ く植 え られ る。
9位,伐木 の時 には芳 香を発す る。建築,彫刻, その他細 工物用。社 長の度
材 は白色 で堅 く,気乾比重 0.
合 が変 化 して も比重 にあま り変 化のないのが特 長であるO
いままで数種 の果樹 について説明 したが, これ らの果 実を主題 に した 2,3の仏語 を紺介 しよう。
イ ン ドボダイ ジュの下 で 借 りを ひ らいた釈 迦は,神 々のすすめ に従 って ヴァ-ナー ラシ (
現 ベナ レス) の
ム リガダーバ (
鹿野苑) で,5人 の比丘 に 自己のえた 真理 について 最初の説教を し, ついで, カー シャパ
(
迦楽)兄弟の もとに滞在す る。
あ る朝,迦葉が朝食 の準備 ので きた ことを しらせ に きた時,釈 迦は迦葉を先 に食堂 に行 かせ,彼 がそ こに
ゆ きつ く前に, 閣浮提 にお もむ き閣浮果 (ジャ ンボ ランの果実)を とって帰 り,迦葉 にすすめ る。 迦葉 は釈
迦の神 通 力に内心大いに驚 いたが, それ位 ではまだまだ心服 しないC 次の 日の朝,釈 迦 は同 じよ うに して 邦
婆提 か ら阿摩勤果 (
ア ンマ ロクの果実)を と って きて迦葉 にすすめ,3日目には拘 那尼 か ら詞梨軌果 (ミロ
バ ランの果実)杏, 4E
l目には欝単 日か ら天然 の うるち米を とって きて迦葉 にすすめ る。釈 迦 はその他 いろ
いろの奇精 を示 したので, さすがの迦葉 も, その偉大 な る神通力を認識 して釈 迦に帰依す る. この物語 りは
叶嗣 革,方広大荘厳経な どに収録 されて い る有名な話 であるが,仏典
仏 本行集経,過去現在因果経, 衆 許摩言
によ っては上記 の 四州 とス メ-ル山, 阿摩 動巣 と奄羅果 , 詞梨勤巣 と昆憾 助果 な どがいれかわ ってい るの
もあるO
戦前派の 人には,次の話 はな じみ深い ものであ るが,果実の名 はあま り知 られていない。
封こ
,大晦 に ミヅチ (
竜の 1種) の夫婦が住んでいた。妻 の ミヅチが病気 にな り,手長猿 の生肝 が食べ た く
な ったO一旦 そ う思 い こむ と,心常 に安 らかでな くそのため顔色 は悪 くな り, その身 は次罪 にやせ細 った。
夫の ミヅチが心配 して たびたび原 因を たずねて も, 伸 々打明けなか ったが,ついにその真相を話す。愛妻家
たる夫の ミヅチは甫 ちに/
辛.
肝 を求 めて 淘 岸 にお もむ く.T 変よい具合 に 1匹の手 長猿 が 1本 の ウ ドンゲの大
本の上 でその実を食べてい るのかみえた。 「や あ先生,樹上 で何を してい るのか」 「ウ ドンゲの実 を食べて
い るのだ」 「む こう岸 には大 きな森 があ るO そ こには奄維果 (
マ ンゴーの 実),閣 浮 果 (ジャ ンボ ラン の
実),頗 那婆果 (
パ ンの実),鎮頭 迦果 (
イ ン ドガキの実) な どが無数 にな ってい るC どうだ連れてい ってあ
- 3
8-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
げようか」
。手長猿は大喜 びで ミヅチの背にの って海を渡 るが, 愚鈍な ミヅチは途 中でその寅の 目的を話す。
「それは残念な ことを した。 はじめにい って くれればよか ったのに。肝 はウ ドンゲの枝 にかけて きた」。 とい
う訳で元の海岸に もどって しまう。
この話は仏本行集経や六度集経にでている物語 りで, もちろん仏 と仏を害す るもののたとえ話 であるが,
熱帯の名果,薬巣がそろって登場する一幕 である。
「
衆生あ り。過去の業の故に盲とな らば, 正に陀羅尼を抄写 し,その業を悔過 し,言
可梨勤果,阿摩動果,
昆醸羅果,甘草等 5種の薬 と蜜で業を調合 し,眼上 に塗 り,77日仏を念 じ発願すれば,悪業 消滅 して清浄の
眼をえん」 (
大方等大笑経一巻44, 日蔵分中 3相済竃品第 1
2)
0
「
若小なるも,壮なるも老ゆるも皆死 に帰す ること猶巣の熟 して, 自然地 に落つ るが如 し」 (
菩薩本縁経
巻 中)
。
1
9
)ア サ ナ Te
r
ml
nal
i
at
ome
nt
o
s
aBedd.As
a
na,阿裟那樹
方広大荘厳経-巻 1,兜率夫君品第 2でア ソカ, コ- ピグー ラ, サ-ラ, ムチャ リンダ, パ ーク リ (
級
也)
,カルニカーラ (
後出) と共 に,天宮を飾 る宝樹である。
樹高約3
0mに達す る喬木で,葉 は楕 円形 または卵形 で互生。イ ン ドか らビルマにかけて生育 し,イ ン ドで
は全土 に分布す る重要樹種である。普通 ロ- レル (
l
aur
el
) とよぶ。チャ ンプ (
c
hamp, Mi
c
he
l
i
ac
ham-
PakaL.
) と共 に,生長が遅い と por
eが多 く, 組織が海綿状に弱 くな る性質があるが,健全材は気乾比重
8
5で比重の割に加工性がよい。辺材はク リーム色,心材は淡褐色または赤褐色であるが,黒色の斑条 の
約0.
あ らわれた ものは非常にきれいで,高級家具やキャ ビネッ トに用い られ る。一般 に材質が強 く,構造材に好
適 であ り,事柄,電柱,枕木,杭木,農器具あるいは工具の柄 として も利用 されている。
ビルマで も 1
aur
elまたはタウクヤ ン (
t
a
ukkya
n) とよび,樹高 3
0m,樹幹直径約 1.
0m に達す る重要
r
o
kf
a) とよび, よ くチークと混生 しているが,気乾比重0.
9でやや重い。
樹種である。 タイではロクファ (
いずれ も木理が wal
nutに似ているが,伸縮が大 きく接着技術 に注意を要す るとされている。
2
0
)アル ジュナ Ter
mi
nauaAr
junaBedd.Arj
una,Ka
kubha,阿順那樹,何倶婆樹
仏本行集経一向菩提樹品第3
0によると
「
釈迦は苦行 6年の末,ナイランジャナ-河をわた り,イ ン ドボダイジュの下へ進 もうとす るが,身体衰
弱 して渡 りきることができない。 これを見てアル ジュナの樹神が枝をたれ,釈迦を助けて河を渡 らせた」 と
写真22 Te
r
mi
nal
i
aAr
junaBedd.アル ジュナ
(
W ・Pa
ki
s
t
a
n,La
ho
r
e,Laur
e
nt
h Gar
de
n)
- 3
9-
木 材;
研 究 資料.
:第 7号 (
1
97
3)
いっ。
Te
r
mi
nal
i
aspp.の一種 カ- ラカ (
Kal
aka,迦羅 迦樹) について もこれ に似 た話 が あ り (
過去現 在因果
経 一巻 4,化三 迦葉 , 中本起 経 -還致 図品第 6), しば しば釈 迦の 難儀を たす けて い るO
大般 浬盤経-巻 6,如来性品第 4の 3にはカー ラカが次の よ うに引用 されて い るo
「カー ラカの林 の 中に 1本 のテ ィ ンパ ル (イ ン ドガキ) の木 が あ ったO この両樹種 の果実 はよ く似 て い る
刊がつ けに くい。果実 が熟 した ころ, 1人 の女 性 が きて これを と って市場 で売 ったが,小供達 や凡 愚
ので 区 夕
縁起 によ って牲 ず る現象, た
は区別 が つかない ままカー ラカの実 を買 って食 べ命終 る。大衆 中の八 不浄 法 (
縁起
とえ ば煩悩 な ど) もまた, これ と同 じで あ る。 衆中の 多 くは この八 法を うけ るが , 唯 1人 の清浄 持戒 (
を脱 した もの, た とえ ば解 脱) は この法 を うけず。 しか も互 に離れな い。 丁度 カ- ラカ林 中のテ ィ ンパ ル果
の よ うな もので あ る」。
-25m に連す る喬 木 で,葉 は長楕 円形, イ ン ドの ヒマ ラヤ地 区か らデ カ ン高原,
さて アル ジュナ は樹高 20
arj
un) とよび,
セイ ロンに生育 し,広 く東南 ア ジア, ア フ リカ に分布 して い るo イ ン ドで は アル ジュ ン (
重 要樹種 の 1つで,辺材 は帯 紅 白色,心材 は褐色 で あ るが, よ く暗色 の斑条 が あ らわれ るので,選材すれ ば
75-0.
8, 衝 撃やせん 断 に強いO 一般 建築用材 で あ
高級 家具 や キャ ビネ ッ トな どに利 用で きるcJ気乾比重 0.
るが,地 区的 に車 軸,農 器具,杭 木,工 具 の柄な どに も利用 して い るO
2
1
) ナガエ ミカ ン Fe
7
'
ot
uae
l
e
phant
um Correa,Kapi
t
t
ha,迦塔 多羅 樹
5m, 樹幹直径
第 1報総 論 の五樹 の 1つで あ るカ ピックーはそれ ほ ど大木 にはな らな い。樹 高 はせ いぜ い 1
0.
3m までの落葉樹 で,葉 は羽状複葉。 セ リ科 の ウイキ ョウ (
薗 香) に似 た芳 香を もってい る。果 実 は球形
で食 用 にな り, ジェ リ-に もす る。
象が この実 を好 む ことか ら e
l
epha
ntappl
eと もい う。 仏典 にあ らわれ る数 少 ない柑橘 類 の 1つで あ る。
写真23 Zi
z
yphusju
jub
eMi
l
l
.サ ネ ブ トナ ツメ ?
(
京都市 内)
- 40-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
イ ン ド全域 か らセイ ロン,東南 ア ジアにかけて 自生 し,栽培 されてい る。材 はあま り利 用 しないが, ビル
マで はチ ィ (
t
hi
) と呼 び,気乾比重 0.
8位 で一般建築 に用 い る。
2
2
)イヌナツメ Zi
zyphusJujubaLam.Kuval
a東樹
教義 よ りもむ しろ大小 の比較 に引用 されて い る場合 が多 い。
「
始終 な き輪遇 の世界 に輪遇 す る者 の父母 の数 は,全 イ ン ドの大地を東 の種子 ほどの丸 さに して もおいつ
Ther
i
Gat
a:早 島鏡正訳
きません」 (
l
i
t
avi
s
t
ar
a(
渡辺照宏訳
また,La
長老尼 の詩
仏典 Ⅰ)。
仏教, 岩 波文庫 )や仏所 行讃 によると, ゴー クマ菩薩 はナ堆 ラ ンジ
ャナー河畔 の ウル ビルバ -で断食 して はげ しい苦行 にはい るが,
「は じめ は 1日にナツメの実 を 1粒 づつ,次 には米 1粒 づ つ, さ らにつ ぎにはゴマの実 1粒 づうを と り,
最後 に全 く食物を断つ」
5m,樹幹直径0.
3-0.
4m にな る喬木 で有粗
イ ヌナ ツメは樹高約 1
菓 は長楕 円形葉脈が 3太 きれい に流 れ
てい るのが特 長で,家畜 の飼料 にな る。花 は静緑 白色で芳香が あ り,果実 は長楕 円形 で生食 で き,種子,棉
皮 は薬用O イ ン ド, セイ ロン,東南 ア ジア, 中国, オ-ス トラ リアな どに広 く分布 してい るが, イ ン ド, ビ
t
e
afr
o
ndo
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a,Sc
hl
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at
r
i
juga (
後 出) と共 に シェ
ル マ, タイな どで は果実を 目的 とす るほか,Bu
ラック樹脂の原料 とな るラック虫の培養を 目的 と して植栽 してい る。
be
r
)
,ビル マで は ジイ (
j
i
) とよび,材 は気乾比重 0.
7
7位 でろ くろ細工 に適 す る。紀元
イ ン ドで はベル (
0
0
0
年 Ha
r
appa人 は当時すで にこの木が衝撃,磨 耗 に強 く,丸太 のまま乾燥 しやす い ことを知 って い
前約3
3は同属 のサ
た らしく, その遺跡 か らは, 臼や乳鉢な どに この材 を使 っていたあ とが発見 されてい る。写 真2
ネ プ トナツメ Z.j
ujubaMi
l
l
.(中国原産) ?で,葉,果実 と もにイヌナ ツメによ く似 てい る。
2
3
)タマ リン ド Ta仇ar
l
ndusi
ndi
c
aL.Aml
a,
5m,樹幹直径約 1.
0m に 及 ぶ マメ科 の常緑喬木 で 1属 1
第 1報 の総論 で述 べ たタマ リン ドは,樹高約 2
種,葉 は写貢の よ うに偶数羽状複葉 であ る。春 か ら初夏 にかけて淡黄色 の花が膿生総状花序 につ き,秋 にマ
メ科特有 の萌巣 がで きる。 この顔巣 は柔か い果 肉でで き,甘 く酸味が あ り,生食 で きるが,乾燥 して貯蔵 し
あるいは粉末 に して清涼飲料剤 に もす る。古代 イ ン ド時代 か らの主要 な食料 の 1つで あ るが,材 も重要 であ
る。
i
ml
i
),ビルマ で は マギイ
ア フ リカ原産 ?であるが広 く 熱帯地方 に分布 して い る。 イ ン ドで は イム リ (
写真2
4 Tamar
i
ndusi
ndi
c
aL.タマ リン ド
(
Ce
yl
o
n,Par
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ya,Ro
yalBo
t
a
ni
c
alGar
de
ns
)
- 41-
木 材研究資料
第 7(
,
i
J(
1
9
73)
写真25 同
前
(
Ceyl
o
n,Co
l
o
mbo,Vi
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aMahaDeviPar
k)
写 真2
6 Coc
o
snuc
i
fer
aI
,
.ココヤ シ
(
台湾 ,向井朝彦氏写)
(
n
l
a
gyi
),と リピンで はサ ンバ ロック (
s
a
mpal
ok) とよぶ。 気乾比重 1.
0
位 で鋸 3
=
i
:
材 中で も重 い方 に属 し,
耐久性 よ く農器具 用によ く使われ る0
2
4
)ヤ シ (ココヤ シ) Cocosnuci
f
e
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aL.L紬gal
i
n,Nal
i
ke
r
a,楳伽利樹
原産地 について は 諸説があ り, は っき りしていないが, 熱帯 の侮岸地域 には広 く分布 し, 植栽 されてい
5m以上 に も達 し,基 は頂/
生 羽状 複葉, オーギヤ シと共 に熱帯 の万能有用樹 で,葉 は屋根茸用,
る0本
5
滴 は2
カ ゴ, ム シロな どの材料,幹 は建築,工芸 用,未熟果 は飲用,熟果 の コプ ラか らはヤ シ油が とれ,食料,化
粧品,石鹸, 医薬工業品 の原料 とな る。
仏典 にはたびたび登場す るが, た とえば
「ス メ-ル山に上妙 の薬 あ りo拐伽利 と名づ く0人 これを服すれ ば念 々に滅す といえ ど も薬力の故 を以て
患害 にあわ ざる如 し。
Sr
o
t
apa
nna:仏弟 子の到達 しうる初等の階位 の 1つ, 三界 の見 恵を 断 じえた る者) の人 もか く
須 陀垣 (
1
の如 し。悪 因に牲ず といえ ど も遺 力を もっての故 に悪業 をな さず」 (
大般浬集経一巻 29, 獅 子軌 菩薩品第 1
の 3)0
25
) ジ ン コ ウ Aqui
l
ar
l
aAgal
l
oc
haRoxb.Agar
u,Agur
u 沈水
古 くか ら香木 と して有名な和名沈香,別名伽羅が本種 であろ うと推定 されてい る (
イチイ科 ・属 のキャ ラ
ボ ク Ta
xusc
us
Pi
dat
aS.e
tZ.var
.nanaRe
hd.は別種)。香木 の方 は重 くて水 に沈む ことか ら沈水 ま
たは沈水 香 とよばれ,漢訳仏典 は主 に沈水 の名ででて くる。サ ンス ク リッ ト語 a
gar
u も また水に沈 む とい
う意味を もって い る。
イ ン ドの ヒマ ラヤ東 邦, ア ッサ ム州原産,樹高 3
0m 以 上,樹 幹厄径 1.
0m に も達す る常縁喬木で ある。
葉 はほぼ披針形 で,小 さなかわいい白色の花 が 散形 花序 につ く,
-4
2-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
写真2
7 Aqui
l
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aAgal
l
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haRoxb.ジ ン コ ウ
(
Pr
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,Fo
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e,De
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aDun,
および Dr
.D.Nar
a
ya
namur
t
iの御好意による)
イン ドでは al
o
ewood とよび,気幹比重 0.
4位の憧軟材で,木肌 は淡黄 白色を呈 し樹脂分を含み芳香を
もつが, とくに樹脂精油分の多い部分は変色 して,重 く,強い芳香を発 し,香木 として栴檀 と共に珍重 され
る。イン ドや中国では古 くか ら仏塔や寺院に建材 として用い られていた らしく,家具,器物,彫刻,薫香材
料 として も広 く利用 されている。
第 1報の総論に述べたように,仏典では他の香花,香木 と共に神話的表現への引用が多 く,
セ ン ダ ン ∫αがα
/
∽ α/
占〟m L.Candana
タ
ガ
ラ Ta
b
er
nae
mont
anac
or
onari
aWi
l
l
d.Ta
gar
a
と共に極楽世界を象徴 し (
大無量寿経),如来の解脱や教え, 経を信奉する人 々への慶祝樹 である (
法華経
その他)
。
「1管に 4種の香, 1に沈水, 2に 多伽羅, 3に牛頭栴檀, 4に 多摩羅 葉番を 盛 らんに 4香合 して 4両
(
両 は重 さの単位)あり0 4姓 (
バ ラモ ン,王族,庶民,隷民)の人 , 4種の衣を篭中におき,数 日を経て
各 自持去 るに, 4香は錬両 (
僅かの重 さ) もおれず, しか もこれ らの表中に香ある如 く, もし菩薩 あって四
無量 (
普,悲,善,揺-いずれ も利他の心)を修せんに,所住の国にしたがい,その土の人民各 々種 々の功
3
虚空 目分中四無量心品第 4)
0
徳を成就 して, しか も菩薩において指滅す る所な し」 (
大方等大集経一巻 2
奈良県談山神社拝殿の 格天井 は寺伝では キャラで作 られているが, これはイチイ科の キャラのようであ
る。
2
6
)アンソクコウノキ St
ur
axBe
nzoi
n Dryand.Kal
anus
ar
i
n,安息杏樹
樹高 6-1
0mの落葉小喬木で,葉は卵形 または楕円形で互生。 7月 ごろ黄色または淡紅色の花が厳生総状
花序につ く。樹皮 は茶褐色で,秋 に樹皮に傷をつけて溶出する樹脂を採取,乾燥す る。 これを安息香 (
Be
n-
z
oi
n,gum be
nj
a
mi
m,(
兜) Guggul
a) といい,安息香酸を主成分 とし芳香を もち, 薫香または 香水を作
- 43-
木 材 研 究 資料
写 真2
8
第 7号 (
1
97
3)
St
yr
a
xBe
n
z
o
i
nDr
y
a
nd.ア ンソク コウノキ
(
京都市 内)
る。 イ ン ド, タイ, スマ トラ, ジャ ワに分布 し,香料,薬用 と しての利 用が主 で,材 はと くに利用 されな
ol
i
ba
num :Bo
s
u
)
e
l
l
i
aspp.の樹脂) その他 の董 香, 香水 と共 に,古 く紀元前 1300年
い.安息 香 は乳 香 (
ごろか ら, 中 近 東, イ ン ドあ るい は中国 の王 宮や寺院で邪気 を払 う もの と して盛 ん に愛用 され, タイ, ビル
マあた りか ら輸入 して い たよ うで あ る。安息 香薫 香 には樹皮 を まぜ てい るため黒 っぽ いが,安息香 自体 は白
っぽ い ものが良質 で, タイ産が最上 , カルカ ッタ産 が これ に次 ぐといわれ てい る, また安息香酸 には防腐 ,
殺 菌性 が あ り,現在 は主 に合成 品 が ジュース, シロップ,醤酒 な どの防腐 剤 と して使用 されて い るC
,
仏典 で は神話 的な取扱 いが多 く, 第 1報総 論 でのべ たよ うに, クマ- ラ, ウ ラガサ - ラチ ャ ンダナ, タガ
切衆珪喜見 菩薩 が頃想 に はい るや,堅黒純株栴檀 香 と して マ ンダー ラ
ラな どと共 に極 楽世界 に薫 じ, また一.
錬 :蛋
ヴァの花, ウ ラガサ - ラチ ャ ンダナ と共 に虚 空 に満 ちて これを慶祝す る. この香 の価値 た るや 6錬 (
さの単位 ,0
.
6
7gr といわれてい るo僅少 の意 味) を もって, この婆婆世界 に匹敵す るとい う。 (
法華経一
葉王菩薩本事 品)。
弟 1報で も説 明 したよ うに, 漢訳仏典 で随時檀 香,紬 抹 堅黒栴檀 と訳 されて い るカ ー ラーア ヌサ ー リンチ
ャ ンダナ はカー ラ-ア ヌサ ー リン (
安息 香) とチ ャ ンダナ (
栴檀 ) に分 けた方 が ナチュ ラルで あ ると筆 者 は
思 う0
2
7
)イ ン ドニュー コー ノキ Bo
s
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uas
e
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a(
t
hur
l
f
e
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a) Roxb.Kundur
u,Kundur
a,薫 陸香樹
0
-1
5m,樹幹直径 0.
4-・
0.
6mにな る喬 木 で,葉 は
仏典 にたびたび現 われ る香料樹種 の 1つで あ る。樹 高1
披 針形 また は卵形 の小葉 か らな る奇数 羽状 複葉。花 は 白色ま た は紅 色で芳 香を もつ。 樹皮 か ら柔 かい,芳 香
を もつ粒状 の樹脂 を分泌す るO これを乳 香 (
ol
i
banum,(
兜)Tur
us
ka,兜 楼婆 ) と呼 び,安息 香,栴檀 ,
多伽 羅,電脳 と和合す るとす ぐれ た薫 香をえ, 白芋 香 あ るい は霞香 とい うの は これを指す といわれてい る。
ヒマ ラヤ西部森林地帯 に 自主
L
:
_
し, ど--ル州 , デ カ ン高原 に多 い,
2
8
)パ
ー タ リ
Cal
o
phyl
l
um i
no
phgl
l
um L.?Pat
al
i
(
a)
, 波托利樹 ,波羅 々樹
「
(この経を信奉 す る もの)清浄 の鼻根 を以て, スマナス, ジャーテ ィカ, マ ツ リカ, チ ャ ンバ カ,パ - メ
リの花 の香,亦 蓮華 , 青蓮華, 白蓮華 の香,栴檀 ,沈水,多摩羅葉,多伽羅 の香, その他 もろ もろの香を こ
と ごと くか ぎわ けて分別 せん o(
丁度 その よ うにすべ ての ものを分別 せん )
」(法華経一法 師功徳 品)0
「も しこの経巻 を書 きて, チ ャ ンバ カ, スマナス,パ ー タ ラ, ヴァ-ル シカ, ナ ヴァマー リカの花 の 香油
を以て供養せ ば, うる所 o
)功徳 また無量 な らん 」(
法華経-薬王 苦薩本事品 )
-・4
4-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
「
私の両腕 は,以前は円いかんぬ きにも似て立派であったが,今や老いのために,パ ーク リの花の しぼん
The
r
i
Gat
ha:早 島鏡正訳 長老尼の詩 仏典 Ⅰ)
0
だように弱 った。真実を語 る人の ことばに誤 りはない」 (
など,大体花が主役であるが,イ ン ド古代文学で も花の香がよ く引用 されてい る。
パ-ク リの学名については,いろいろの説があるが,結局
St
er
e
o
s
Pe
rmum s
uave
o
l
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nsDC.(センダ ンキササゲ) と
Cal
o
Ph
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)
h
yl
l
um L.(テ リ-ボク)
が有力で, とくに後者 とす る説が強い。
畢
S・s
uaue
o
l
e
ns は樹高 1
0
-,
2
0h,ゐ常緑喬木で,葉 は竜野密 シに似て広楕 円形鋭尖の小葉 よ りな る奇数羽
状複葉,淡紫色または晴紫色の花が沢山咲 き,芳香を発す る。イ ン ド全域, セイ ロンに生育 し,イ ン ドでは
par
al
) またはパ ドリ (
padr
i
)
, ビルマではキウェマギオ レン (
kywe
magyol
ei
n) とよび,材 は嵩
パ ラル (
黄褐色で耐久性があ り,気乾比重約0.
7
4。一般建築用材 として使われている。
C.i
no
phyl
l
um は樹高 1
5
-1
8m,樹幹直径 1m 以上 に達す る喬木で,葉 は長楕 円または卵形o初夏 に小
さな雪 白色の 4弁の花が総状花序につ き, とくに開花時に強い芳香を発す る。 種子か らほ 油を 採 り灯油 と
し,樹皮は煎 じて駆虫薬 とす る。 したが って, この木の方が仏典 の内容 に近 いといえよう。
イン ド全域か らマラヤ,大平洋諸島,台湾,小笠原諸島に分布す る。ポ リネ シア諸島では神聖樹 と して寺
院に植栽す る。
poo
n) とよび, 心材 は切削直後は淡黄褐色か ら赤褐色であるが, 空気 に さらされ る
イ ン ドではプ- ン (
と, きれいな赤褐色 にな り,交錯木理による リボ ン状の杢をだす。気乾比重 0.
6
5-0.
75で,重 さの割に強 く
て堅 く,耐久性があ り,加工 もしやすい。建築,土木構造材,船のマス ト,独木舟,漁船, カヌーな どに用
いる。杢 目の きれいな ものは高級家具用。
po
nnye
t
)
,マラヤでは ビンタンゴール ラウ ト (
bi
nt
a
ngorl
aut
)
,イ ン ドネ シア
ビルマではボ ンネッ ト (
nj
a
npl
ung)
,と リピンでは ピタオ ブ (
bi
t
ao
g)な どと呼んでいる。
ではニヤ ンプル ン (
最近 日本で家具,合板用材 と しておな じみにな った Bi
nt
a
ngur(
Bi
nt
angor
) という名 は,イ ン ド, マ レ
l
o
Phyl
l
um spp.の総称で,種類が多 く,気乾比重 も0.
4-0.
9の範囲に
ーシア,イ ン ドネシア地 区での Ca
9 St
er
e
o
s
Pe
rmum s
uaue
o
l
e
nsDC.セダ ンキササゲ
写真2
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i
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ut
e,De
hr
aDun,
および Dr
.D.Nar
aya
namur
t
iの御好意による)
- 45-
木材
研究資料 第 7号 (1973)
写 貢3
0 Cal
o
Ph
yl
l
um i
no
phyl
l
um L.テ リ- ボ ク
(
Si
ngap(
)
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e,Bo
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a
ni
c
alGar
dens)
わ た ってい るが,家 具構造 用材 と しての ビンタ ングルは,C.i
no
ph
yl
l
um な どの中比重 の もので, 前述 し
たように J
o
ngko
ng とと もに現在 I
]本の家 具用材 と して かかせ ぬ樹種で あ る。 木 肌が ma
ho
ga
ny に 似て
dr
e
l
aToona とと もに I
ndi
a
nma
ho
ga
ny と呼 ばれてい る。
い るので ,Ce
通 称 ma
ho
ga
ny には多 くの種類 が含まれてい るが,本来 は Swi
e
t
e
ni
amaho
gan
yで,1
T
]
南米産O樹 高
5
0m ,
樹 幹値径2
.
0mに達す る巨木で,気乾比重約 0.
6
,力学 的性 質がす ぐれてお り,
家具 構 造材 ,突板 と して
r
o
Ph
yl
l
a は中南米か らジャ ワにはい った樹種で,現在東南 ア ジ
代表的樹種 の 1つで あ る。同属 の S.mac
アか ら輸入 され る通称 ma
ho
ga
ny はほ とん ど この樹種 と考 え られてい るO材 質 が S.maho
gan
y よ りや
や劣 り,光 沢が少 ないO通称 Af
r
i
c
anmaho
ga
ny は Kha
yaspp.で あ る。
西半球で は Ca
l
o
Ph
yl
l
um spp.を総称 して Sant
aMar
i
a と, い う もや さ しき名をつけてい るそ うで あ
る。
2
9
) ビル マ ネム ノキ Al
bl
zzl
aLe
bbe
k Bent
h.Si
r
i
s
a,戸利 沙樹,印度合歓
イ ン ド, セイ ロンか ら東 は ビルマ, マ ラヤ, 中国, オース トラ リア,西 はア フ リカまで分布 してい る鮎 昔
樹 で,樹高約 1
5m,樹幹直径 60c
m に達す る落葉喬木で あるO葉 は長楕 円の小葉 か らな る マメ科特有の羽
状複葉 で,初 夏に 2
5mm 位の細 い粧芯が長 くつ き.
I
ll
.
た,岸緑黄色か ら銀 白色 の花 が 其き芳香を発す るO庭
]
別、
o イ ン ドで は 普通 に あ る樹木で, コソコ (
ko
kko) または シ リス
樹 や並木 に利用す るが浅根性 で風 にf
(
s
i
r
ュ
s
) とよび,気乾 比重 0.
6-0.
7。心材 が wal
nutに似てい るので I
ndi
a
nwal
nut ともいい家只, 内装
材料 と して重要 な樹種で あ る.波状木理,交錯木理が多 く,切削1
柚 こ特有 の縄斑 が あ らわれ る ものは高級家
貝 に用い られ る。製材 の際 にの どを刺激す るが, これ は 1時 的で有害 で はない といわれてい る。樹腰 か ら香
料が とれ る。 ビルマで も ko
kko,タイで はプル ク (
pr
uk) とよび, 比重 はイ ン ド産 よ りやや軽 く,家具,
二
巾
凋す
,羽 目板 用材 とな る。
- 46-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
写真31 Al
b
i
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z
i
aLe
bb
e
kBe
nt
h.ビルマネムノキ
(
De
l
hi
,BuddhaJ
a
ya
nt
iMe
mo
r
i
alPa
r
k)
第 1報総論の人間平等論で は この花 の特長が引用 されてい る訳であるが,仏教詩人 マ- トリチェ一夕の讃
t
a
pa
ac
as
a
t
ka (
奈良康 明訳
仏詩集 Sa
百五十讃,仏典 Ⅰ)で も
どんな ものに もゆ るぎない
あなたの匝1
い決意の前 には
たとえ大地 は重 くて も
シ リー シャの薬の先の軽 さとちがわない
と, その特長が うたわれてい る。
シ リーシャ も仏典 によ く顔を出す樹木の 1つであ るが,仏本行集経や出曜経によると,
昔,一団の行商が羅剃女の術策にお ち, あやぶ くみな ごろ Lにされ ようと した時, 1人 の貿 こい商人が シ
リーシャの木 に登 り,羅剃女 の好計を観望 して難をのがれ るが,案外昔 か ら偵察樹木 と して利用 されていた
2には次のような話 もある。
のか もしれない。また,衆許摩河経巻 1
Sunda
r
a
ma
nava
ka) とい う貧乏 で正直な若者がいた。 ある時 ガール フ レン ドか
昔, スンダ ラマヌバ カ (
ら花を とって くるよう頼 まれ, うれ しくて うれ しくて夜半寝 ることがで きず, 明方 にな って ぐっす りと熟睡
して しま う。- ツと眼を覚 ま した時 には,すでに 日は高 く昇 り, あわてて花を探 したが, きれいな花 はすで
にみな摘み取 られて しま ってい る。買 うお金 もない。仕方 な くシ リーシャの花を持 って彼女 の許 にお もむ く
が,彼女 は喜 ばず, 1日中花を求 めて走 りまわ されたあげ く,す っか り愛想をつか されて しま う。彼 はその
後 出家す るが, これが落語 だ とソンダ ラマヌけなバ カな話 はない とい う落 ちになろう0
3
0
)キンコウボ ク Mi
c
he
l
i
ac
hampakaL.Campaka,陪萄,金厚朴
香花,香油樹木 と して,今 までたびたび紹介 したが,樹高約 3
0m, 樹幹直径 1.
0m に達す る常緑の大木
で,葉 は披 針状卵形,花 は黄色∼黄燈色で芳香があ り香水 の原料 とな る。樹皮や葉 に も芳香がある。 イ ン ド
ヒマ ラヤ地 区原鼠
c
ha
mp),ビルマで はサガ ワ (
S
a
ネパ ールか らジャワに分布す る。イ ン ドで はチャ ンプ (
,タイ, マ ラヤで はチャ ンバ カ (
c
ha
mpa
ka) とよぶ 。 イ ン ドではア ッサム, ベ ンガルに多 く, 心材
gawa)
5位,木理通商で加工 しやす く,高級家具, キャ ビネ ッ ト,室 内造 作用 として
は黄褐色を呈 し,気乾比重 0.
重要な樹種である。
「
人 の陪萄林 に入 りて唯瞭衛をか ぎて,余香をかが ざるが如 し。是 の如 くに,若 しその室 にいれば仏の功
徳 の香のみをか ぐ」 (
維摩詰所説経一観衆生品第 7)。
- 4
7-
木材研究 資料
第 7号 (
1
97
3)
写真3
2 Mi
c
he
l
i
achamPaka L.(キ ンコウボク)
(
Ceyl
on,Par
adeni
ya,RoyalBot
ani
calGar
dens)
写 真33 Mi
che
l
i
al
ongi
fo
l
i
aB】
ume.ギ ンコウボクの花
(
京都柄物 園)
「
須 曇,膳蘭,阿題 目多 伽 (
Gaert
7
1
er
ar
aC
e
mO
S
aRoxb.
) の薫油を以て, 常に これを燃 さば,か くの如
法 華.
'
経一分別功徳昆)O写真33は同属 r
⊃
く供養す るもの,無量の功徳をえん」(
c
he
l
i
al
oT
a
gi
fol
i
aBl
ume
ギンコウボ ク Mi
で,ギ ョクラ ンともいい,花が少 し白 っぽい ことを除いて,チャ ンバ カとほとん どかわ らない。
3
1) ミムソープ Mi
mz
L
S
O
PSe
l
e
nglL.Bakul
a,薄拘羅樹
石約 1
2m, 樹 幹頑径 6(
)cm 位の常緑高木で, 白色の小 さな花をつけ る。 花には新酒の
なか有用であ る。木
狛三
香 りがあ り,美人酒を舎みてそそげば忽ち花皿 く〔 故に酔花 とい うといわれてい るO香水の原料O 果実 は食
9用,種 子か ら油, 樹皮か らはタ ンニ ンを とる。 また辺材 は赤褐色, 心材は暗褐色を皇 し, 気乾 比 重 0.
1
.
0で重 くて強 く,耐久性 もあ り, 上木,建築構造材 に適す るとい う万能選手であ る。
-4
8-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
写真3
4 Mi
mus
o
PsEl
e
ngiL.ミム ソ-ブス
(
伊豆薬用植物栽培試験場)
kaya)
, イ ン ドネ シアで は ミム ソープ ス
イ ン ド, ビルマ, セイ ロンに分布 し, イ ン ド, ビルマで はカヤ (
(
mi
mus
ops)またはタ ンジュ ン (
t
a
ndj
ung) と呼ぶ。
3
2
)カル二カー ラ Pteros
per
mum ac
e
r
l
f
ouum W i
l
l
d.
?Kar
ni
kar
a,迦尼 迦羅樹
カル二カー ラの花 はイ ン ド古代文学 では恋花 と して, また仏典 で は香花 と して よ く引用 され るが, その樹
木 名については諸説があ り
Pt
er
o
s
pe
rmum ac
eri
fo
l
i
um Wi
l
l
d.(
モ ミジバ ウラジロ)
〟
s
ub
er
i
fo
l
i
um Lam.
Cas
s
i
afs
t
ul
a L.(ナ ンバ ンサイカチ)
な どが あげ られてい るが,前者が巌 も有 力で あ る。 しか し, 中阿合経一第 1得経第 4によ ると
「
頻頭歌羅華黄 に して黄色 あ り,黄 にみえ黄 に光 る如 く,迦尼 迦羅 華赤 くして赤色 あ り,赤 にみえ赤 に光
e
r
o
s
per
mum spp.の花 がほ とん ど白色 または黄 白色系で あ る こととつ じつま
る如 く, ・
.
-・
」 とあ り,Pt
が あわない。 また頻頭歌羅華 は Pe
nt
aPe
t
e
sPho
e
ni
c
e
a L.(アオギ リ科, ゴ ジカ) で,花 は本来赤色で あ
7
)漢訳 自体 に も問題 があ りそ うだが, ここで は一応 P.ac
er
i
fo
l
i
um
り, これ もつ じつまが あわぬか ら,上 C
と してお く。
「諸比丘,仏 の淫楽近 きを きき,悲嘆す るさま萎 れ しカル ニカ- ラの花 の如 し」 (
仏所行 讃一 離車辞別品)O
「魔女 ,菩薩 を姐惑す ることの不可な るを知 り, カルニカー ラ, チャ ンバ カの花 を菩薩 の上 に散 じ,右遠
三 匝 して去 る」 (
方広大荘 厳経一巻 9,降魔品第21
)
。
P・ac
e
r
i
fo
l
i
um は樹高201
nに達す る常緑高木で,葉 は写 真3
5でみ るよ うに羽状 中裂形 でかな り大形 で あ
る。花 は純 白で芳香が あ り, イ ン ドの ヒマ ラヤ 西北部 の 山麓 か ら東パ キスタ ン, ビル マ, ジャ ワに分布す
る。 イ ン ドでは-テ ィパ イ ラ (
hat
hi
pai
l
a) とよび,材 は赤色 をおび気乾比重約 0.
72で,厚板,包装 あ るい
t
aungpe
t
wun)
, イ ン ドネ シアで はマイ エ ン (
maye
ne)と
は合板用材 であ る, ビル マで はタウンペ トウ ン (
よぶ。Pt
er
o
s
per
mum spp.は最近 わが国に も輸入 されてい る。
P・s
ub
e
r
i
fo
l
i
um は P・ac
er
i
fo
l
i
um によ く似てい るが,樹形がやや低 い。 イ ン ドデ カ ン高原北東部か
らオ リッサ州 内陸, マ ドラス東 部海岸, セイ ロンに多 く, 用途 は P.ac
er
i
fo
l
i
um と ほぼ同様で あ る。
Cas
s
i
aj
i
s
t
ul
a についてはすでに説 明 した。
- 49-
木材 研 究 資 料
第 7'
J
三
・(
1
97
3)
写真3
5 Pt
er
o
s
Per
mum ac
er
i
fo
l
i
um Wi
l
ュ
d.モ ミジバ ウ ラジ ロ
(
W.Paki
s
t
a
n,Lo
ho
r
e,Laur
e
nt
hGar
den)
写真3
6 同
(
同
前
前)
今まで たびたび説 明 した よ うに,仏典 には非常 に多 くの 香花が 引用 されてい る。 この 申 こは用材 と して必
ず しも重要 でないが,仏教樹木 と してか くことので きぬ樹種 もあ るので, 以下 これ らの グル ープを ま とめて
謝り
ル てお く。
3
3
) ジ ャ ス ミン属 Jas
mi
num spp
・
1) マ ツ リ カ J.Sa
mb
acAi
一
. Mal
l
aka莱 利迦,VE
l
r
S
ka婆利師迦 ,Nava
mal
i
ka那婆摩利 迦
-一
・.
5日・
1
→
満久 :仏 典 の
車
の 樹 木
写真3
7 Jas
mi
num SambacAi
t
.マツ 1
)カ
(
京都植物園)
仏典 に最 もよ く引用 され る香花で,樹木名 も多彩である。樹高 1- 3m の常緑潅木で,葉 は楕 円形。初夏
か ら秋 にかけて黄 白色の花が短かい散形花序につ く。芳香があ り, これか らジャス ミン油を とり香水の原料
にす る。
大般 浬柴経一巻 2
4
,
「
陸生華中婆利師迦を最上 となす如 く, 諸の善法中不放逸の法を以て最 となす」 (
光明遍照高貴徳王菩薩品第 1
0の 1) とあるよ うに, 仏典香花中の最勝 と されているが,実際に も クチナシ
Gar
de
ni
a spp.
,チ ョウジ Euge
ni
ac
ar
yo
♪h
yl
l
at
aW i
l
l
d.(
Lavar
pga) とともに最高の香水花 とされて
いる。
イ ン ド, アラビア原産で,ペルシャ, セイ ロンか ら広 く東南 アジアに分布 し,イ ン ドでは仏花 として仏前
に供養す る。中国の花茶は, この花を乾燥 して茶 にまぜた ものである。台湾の観光特急でサ- ビスされ る分
厚いガラスの コップの花茶 には,は じめは一寸辞易す るが,二度,三度 となれて くると,その独特の香 りと
味がなつか しく忘れがたい。
2) ソ ケ
イ J.0
,
6
i
c
i
nal
eL.Sumanas須未那,蘇歴那,素馨
日本 で広 く信奉 されてい る法華経,華巌経,浄土三部経などに, とくによ く引用 されてい るスマナスは,
mi
num とされているが, この属の中か らイ ン ド (
原)産で芳香のあるものを選ぶ
多 くの又献では単 に Jas
と J.o
bi
c
i
nal
e とな り,漢訳仏典で も須摩那,素馨が混用 されていることか ら,まず この種 に間違いない
と考え られ るO花を悦意花,妙意花 ともよぶ。樹高 1- 3m の常緑潅木,葉 は楕円鋭尖形 の小葉か らなる奇
数羽状複葉で,
対生。
春か ら秋 にかけてマツ リカの花に似た白色の 5裂星状花冠 の花が,頂生散形花序につ き芳香を放 つ。花か
ら香水を とるが,その香マツ リカにおよばず とされている。
700m の高地 に生ず
イ ン ドの ヒマラヤ, カシ ミール原産で,アフガニスタ ン,ペル シャに分布 し,900-2,
る0
3
) タイワンソケイ J.gr
andi
j
l
orum L.Jat
i
,閣提
漢訳仏典では宝準,金銭草とい う花の名で もで る。高 さ約 1m に達す る常緑の低木で,葉 は楕円形 または
卵形 の小葉か らな る奇数羽状複葉。花は ソケイに似てい るが大輪で, ジャス ミン属 中点 もきれいであるとい
われている。 ヒマラヤ,ネパール原産で香水の原料 として各国で栽培 されているが,耐寒性が弱い。
-
51
-
木材研究資料
第 7号 (
1
97
3)
写真3
8 Jas
mi
num gr
andi
Porum L.タイ ワ ンソケイ
(
伊豆薬用植物栽培試験場)
写貢3
9 Jas
mi
num gr
ac
i
l
l
i
mum Hook・f・ジャ ワソケイ
(
占曽肘且室)
4
)ユ ー テ ィ カ
Va
hl
・YGt
hi
ka,1
用是迦
写 真3
9は同属 の ジャ ワ ソケイ J.gr
ac
i
l
l
i
mum Hook・f・で と くに芳 香 が強 い といわれてい る。
3
4
) ヒツ リキ カ Nyct
ant
he
sAr
bor
t
r
i
s
t
l
sL・Se
phal
i
ka,畢力 迦樹
弟 1報総 論 の-・
切 衆生 吉見菩薩焼 身 の物 語で薫陸杏樹,兜 楼婆 とと もに顔を 出す撃 力迦樹 には
Nyc
t
ant
he
sAr
bor
t
7
'
i
s
f
i
sL・(ヨル ソケイ)
J.a
uri
c
ul
at
um
一 52-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
Vi
t
e
xNe
gundoL.(タイワンニ ンジンボク)
Eu
ge
ni
ac
ar
yo
ph
yl
l
at
aWi
l
l
d.(
チョウジノキ)
gundo には I
ndr
a
などの諸説があ り,仏典の内容か らはそのいずれをとるべ きか判断 しかね るが,V.Ne
ndhuvar
a,E.c
ar
yo
Ph
yl
l
at
a には Lavar
pga とい う発語が 定着 しているようであり,
ha
s
t
a または Si
N.Ar
b
or
t
r
i
s
t
i
sには Sephal
i
ka とい う地方名があるところか ら, これが本命 と推定 され る。
写真4
0 Nyc
t
ant
he
sAr
b
o
r
t
r
i
s
t
i
sL. ヨル ソケイ
の葉 と花
(
Pr
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s
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de
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,Fo
r
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s
tRe
s
e
a
r
c
hI
ns
t
i
t
ut
e,De
hr
aDun,
.D.Na
r
a
ya
na
mur
t
i
の御好意による)
および Dr
写真41 同
前
(
同
前)
樹高約 3mの常緑的落葉潅木であるが,時には樹高1
0m位の喬木になることもあ り,枝に4陵があるのが
特長である。葉は卵形対生,夏か ら秋にかけて鮮憧色の花筒,滞 白色の花弁の,小 さなたかつき形の花が頂
生散形花序につき,夕方 に満開 して芳香を放つ。
イ ンド原産,各国に栽培 されている。
3
5
)チョウジノキ Euge
nl
ac
ar
yo
phul
l
at
aWi
l
l
d.Lava
r
pga,丁香,丁子
5mの常緑の喬木,葉は卵形対生で,芳香を もつ。秋 に淡紅 ま
古 くか ら香料 として有名な木で,高 さ 4-1
たは白色か ら深紅色に変 る 4弁鐘形の花が頂吐散形花序につ く。芳香があ り,膏を蒸溜 したものが有名な丁
香油で,香料 として菓子,酒,化粧品などに用いるが,欝を乾燥粉末に して用いることもある。モルッカ諸
島原産で広 く東南アジアに分布 している。
丁香はすでに紀元前30
0
0
年頃には中国で使用 していたことが伝え られているか ら,イ ン ドで もその頃東方
か ら輸入 していたものと考え られ る。材は気乾比重 0.
7-0.
9で,強度が大 きく,造 船, 橋梁その他の構造
材,農器具,工具の柄等にも用い られ る。
3
6
) タイワンニンジンポク Vi
t
e
xNe
gundoI
.
・I
ndr
a
ha
s
t
a因陀羅可悉多, Si
ndhuvar
a 辛頭 波羅
常緑の潅木で葉にも花に も香気があ り,仏典では香薬32味中第 7に位置す るといわれ,白皮薬 ともい う。
披 針状の小葉か らなる掌状複葉 (
主に 3葉)を もち,写真43のように,小 さな,鮮やかな淡紫色の花が,良
一 53-
木 材 研 究 資 料
第 71
号(
1
973)
写 頁42 Eu
ge
ni
ac
ar
yo
Ph
yl
l
at
aW i
l
l
d. チ ョ ウ ジノ キ
(
Ceyl
o
n,Par
adeni
ya,RoyalBot
ani
calGor
dens)
写真43 Vi
t
e
xNe
gundoL・タイワンニ ンジンボク
(
伊 豆薬 用植物栽培 試験場)
さ 2
0-30cm の円錐花序につ く。 果実は球形黒色で薬乱
イ ン ド,マラヤ, とリピン,中国に分布す るo
わが国で も暖地では露地に社台す るO
以上,今まで仏典 にあ らわれた主な香花,香木について人体説明 したが, これ ら実在の杏樹および神話的
香樹によって展開 され る絢燭たる一節を紹介す ると,
以足清浄 鼻叔
聞於三千大千 世界 J
+F内外 種種諸香 須馴
波躍羅華香 赤蓮華香 宵蓮華香
香 及千万種利香
天上
諸天之呑
若抹若丸
白蓮華香 華樹杏
若塗香
持是経者
押
香
閣提華香
末利華 香
瞭葡 準 香
葉樹香 栴檀 香 沈水香 多摩,
W・
飯香
於此間住 悉能分別-・
・
・
満 足経者
附 i
:
於此
多伽羅
亦聞
波利質多羅 拘 稗陀羅樹 香 及L
Er
3
J
と羅華香 摩言
可望陀羅華香 里殊沙華香 摩詞隻殊
沙準香 栴檀沈水 種種抹 香
諸姉準香
如 是等天香 和 合所 出之香 無不階倣二
I
o
法華経一法師功徳品)
(
一
一 54-
ノ
1
ト
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
3
7
)アセンヤクノキ Ac
aci
aCa
t
e
c
huW i
l
l
d.Khadi
r
a,矧 乾擢樹
阿含経一法提羅経で釈迦はい う。
「
四諦 (4つの真理 :人生は苦であ り,苦の原因は煩悩であるo煩悩を消滅 した状態が理想境であり, こ
れを実現す る方法は 8つの正 しい実践一八正道-にあるとい う真理)をは っきり了解せずに,苦を完全に追
求 しようといえば, これは根拠のないことである。丁度,カージラの葉を集めて器を作 り, これに水をも っ
てゆ こうとい うのが根拠のない ことであるのと同様である。 これに対 して,四講をよ く了解 して苦を完全に
追求 しようとい うのはよい。それは丁度,蓮華の葉を集めて,水を盛 ってゆきたいとい うのと同じである。
理屈にあうか らである」
カ-ジラの葉は写真4
4でみるようにマメ科特有の,ほそい小葉の 2回羽状複葉で, これでは如何に苦心 し
て も水を盛 ることはで きないであろうo また J
at
aka (
平川彰訳 本生経 仏典 Ⅰ)では,北パ ンチャ-ラ
(
釈迦時代のイ ンド1
6大国の 1つ)の竃閣城の大池に住む竃の子妙生が,人間に変身 して猟師- ラカに,南
写真4
4 Ac
ac
i
aCat
e
c
huWi
l
l
d.アセ ンヤクノキ
(
Del
hi
,BuddhaJ
aya
nt
iMe
mo
r
i
alPar
k)
パ ンチャーラの呪師ヂュダが私をとらえようとして池の周囲にカーヂラの杭を うち,いろいろの色の紐をは
りめ ぐらそ うとしているか ら, これを防 ぐように依頼す る。 これはカージラの木が堅 く,杭 に適する性質を
引用 したものであろう。
アセ ンヤクノキは樹高 1
0-1
2m,樹幹直径 40-50c
m に達す る常緑喬木。葉 は 2回複葉で葉柄の基部に
1対の鈎形の棟がある。 5, 6月頃に淡黄色の花が咲 く。辺材はク リ-ム色,心材は暗紅色で, この蒸気抽
H
j
物を乾か したものをカテク (
c
a
t
ec
hu) といい,タ ンニ ン40-60%,カテキ ン30-40%を含み,鞍皮剤お
よび染料 として利用 され る。局法阿仙薬はこの成分カテキ ンで,健 胃,止血剤 として用い られ る。イ ン ドの
ヒマラヤ地区か らマラヤまで分布す る。
イ ン ドではカイル (
khai
r
)または クッチ (
c
ut
ch),タイではシシャ トヌア (
s
i
s
i
at
nua)
,ビルマではシャ
ー (
s
ha) とよび,阿仙薬を とるのが 目的で,用材 としてはそ う重要な樹種ではないが, 気乾比重 0.
9-1.
0
位で,非常に硬 くて強 く,耐久性があるので農器具,車輪,工具の柄などに使用され る。
3
8
)ハナモツヤクノキ But
e
af
r
o
ndo
s
aRoxb.Pal
a!
a,Ki
r
p昌
uka堅叔迦樹
キムシュカについて も諸説があるが,大体 B・
fr
o
ndo
s
a と考えて差支えないようである。喬木性 と蔓性
の 2種があるが,喬木性の ものは樹高 1
2-1
5m,樹幹直径 60c
m に達 し,葉 は写貢45では一寸わか りに く
1 55-
木材研究 資料
第 7号 (
1
9
73)
写真4
5 But
e
afr
ondo
s
aRoxb.- ナモ ツヤ クノキ
(
Ce
yl
o
n,Col
o
mbo,Vi
har
aMahaDeviPar
k)
写真4
6 Sc
hl
e
i
c
her
at
r
i
jugaWi
l
l
d・セイ ロ ンオ- ク
(
W.Paki
s
t
a
n,Lahor
e,Laur
e
nt
h Gar
de
n)
いが ほぼ円 形の小葉 か らな る 3出複葉 ,淡紅 と濃紅 の ツ- トンカ ラーの花が,総 状 花 序 につ くO
シェ ラッ ク樹 脂 を 分泌す る ラ ・
ゾク虫 が 寄隼す るので ,樹 脂 の採収 を 目的 と して イ ン ドの カ ル か ソタ, ア ッ
サ ム地 区, ビル マ, タイにか けて
Sc
hl
e
l
c
he
r
at
r
l
jugaW i
l
l
d.(セイ ロ ンオ- ク)
Zi
z
yPhusJujub
a La
m.(イ ヌナ ツ メ)
- 56-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
ngalki
no,par
as
uki
noとよぶ ゴム質を とる。
とともに栽培 されている有用樹種である。 また,樹液か ら be
pal
as
) とよぴ, 材 は灰色を星 し,比較的軟か く,気乾比重 0.
5
4。箱物,器物の柄な ど
イ ン ドではパ ラス (
に用いる。
その紅い花の美 しさが第 1報のよ うに, ヴァタ, ヴァクラ, クマ- ラ等 とともに,カス ト否定論 の中に引
用 され, また観無量寿経や法華経では修行者たちの想念の世界 に現われて くるが,教義的には雑阿含経一緊
獣愉経の 「キムシュカの愉」が有名である。
釈迦が祇園精舎 に滞在 していた時,ある比丘が,何を知 り,何を見れば見清浄 (
心身の汚れを去 った,す
みきった浄 らかな精神状態)を うることができるだろ うか と思 い, まわ りの比丘 たちにきいたが,その答 は
人 によって皆異な っていた。彼 はそのどれが正 しいか判断に迷い,釈迦に教えを乞 う。釈迦の答 は次のよう
である。
「
昔,ある人が まだキムシュカを見 た事がな く,その有様を人 々にたずねたところ,ある人 はその木 は真
黒で火に焼 いた杭のよ うであると答え,他の人 は長 く垂れ下 るさまが丁度 シ リーシァの木のよ うであ ると答
え, さらに他の人 はその葉は青 く,木 は大 きくニグローダのよ うであると答えた。 これは人 々がその時 々に
見,感 じたままを話 したか らである。 これ と同様,比丘達の話 もそれぞれの力によって煩悩を断 じ,悟 りを
ひ らき,おのおのその見 る所 に従 って説明す るのである。帰す るところは一つであるが,その過程 に相異が
ある.だか らお前 も自分のみ るところに従 って修行すべ きである」
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なお,S.t
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9とい う堅 く重い材で,加工やや困難であるが,車輪 とくにこしきゃ工具の柄などに用い,旋
盤加工に適す る。
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海に人 らん とす るものは,先ず海に行 く経路をよ く知 ることが必要であ る。海岸 に達 して も,そ こには
摩 陀那 とい う果樹があるが, これを食べてはいけない。 これは酔 (
人)果 ともよび,食べ ると狂酔 して珍宝
[
即荏経一巻 7,放逸品第 5の 2)
。
を うることばできぬ」(
これは悟 りへの道に もマダナ菜の如 く修行者を まどわす ものの多 い ことを訓えた ものであろ うO
マグナの学名について も諸説があるが, S
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um は ギ リシャ語でキチガイナス どの 意味であ り, こ
7のように卵形で,葉縁 は大 きい不規則な鋸歯。イ ン ド原産で, ヒマ
の点仏典の内容に-・
致す る。葉は写真4
写真4
7 Dat
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um L.シロバナ ヨウシュチョウセ ンアサガオ
(
京都市内)
- 5
7-
木材研究資料
第 7号 (
1
9
73)
写真48 Ano
nas
quamo
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eL.バ ンレイ シの果実
ラヤ, カシ ミール, シッキムに多い。 熱帯 では樹高 3m に達す る落葉潅 木 にな るが, 日本では一年牲草木
であ るO 直径約 1
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m の朝顔に似 た白色の花が 失く, 果実 は卵形でその表面 には写真でみ るよ うに太 い刺
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相 または8
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種好 に 「
頭,摩 陀那果の如 し」 とあるの
が密生 して,あたか も仏頭 の螺髪の如 くみえ る〔仏身3
nas
quamos
a L.の果実 (
写 貢48) で
は この ことである。 しか し,俗に仏頭果 とい うのはバ ンレイ シ Ano
実際 にマグナ果が総論 でのべたよ うに目の宝薬であ るか どうかについては後 口の調査 にまちたい。種子 は
ア ル カロイ ドを含み,食べ ると狂人 のよ うにな る。
草間育州 の妻」で,青州 の妻加恵が薬草畑で
有吉佐和子著 「
「この気運茄子 は何に効 きます のやろ」
と姑 の於継 に質問す るO
「ああ, それを平川では気違茄子 とい うのか し。 な るほど葉の形, 枝 の形 は茄子 によ う似ていますわの
写真4
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s・チ ョウ セ ンアサ ガ オ
(
京都市 内)
-
一58-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
し。けど川向 うでは朝鮮朝顔 とい うのや して。花 の形が朝顔にそ っくりやよってそ うい うのですやろの--。お父 さん らは里陀羅華 と呼んでな さるわの し。え らい毒の強い ものやか ら間違 うて も口にいれた らいか
ん と注意 されて ますのや して。笑いが とまらず に狂い死 しますのや とし。気違茄子 とは うまい ことつけた名
ァか しれ ませんの し」
と於継が答え る。
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esは高 さ 1m位の草木で,花 は白色, 1名里陀羅華 ともい う。
このチョウセ ンアサガオ Da
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小説では青州 は世界最初の人体麻酔薬通仙散 にこの花を使 っているが, もちろん Er
陀羅華 とは別物である。 しか しなが ら,前者が人を して欲界的悦惚 た らしめ,後者 は無色界的悦惚 た らしめ
る点において,共通す るものを持 ってい るといえよ う。案̀外 こんな ところか ら朝鮮朝顔を豊陀羅華 と呼ぶの
か もしれぬ。
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落葉の潅木 または藤本性 で,前者 は高 さ約 1m に達す る。葉 は卵形 または長楕 円形で, 白色 5弁の,花筒
を もった可愛 いい花が咲 く。 全株有毒であるが, 葉根 は皮膚病などの 民間薬 として 利用 され る。 学名の
写真5
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(
京都植物園)
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go には鉛毒を除 くとい う意味があるとい う。
アフ リカ,イ ン ド, マラヤなどの熱帯地方 に自生す るが,栽培 している所 もある。
「
昔,一風変 った老婆がいて,山か ら波経の葉を採取 しては, これを売 って生活 していた。役人が これを
知 って税金をかけようとす るが,老婆 はなかなか気が強い。お前のよ うな こつば役人では話 にな らぬ。王様
の所へつれて行 けとい う。そ こで王様は老婆 にたずね る。
=お婆 さん。なぜ税金を納めないのか"
"王様,あなたは○○比丘を知 っていますか"
=ああ,よ く知 っている。彼 は阿羅漢だ"
'
日では ××比丘を知 っていますか'
=ああ,よ く知 ってい る。彼 もまた阿羅漢だ"
`
`
それでは△△比丘 もまた知 っていますか"
=ああ,彼 もまた阿羅漢だ"
-5
9-
木 材 研究 資 料
第 7号 (
1
97
3)
そ こで老婆 は声 を は り上 げてい う
"この 3比丘 は皆私 の息 子 たちです。大王 は彼等か ら無量 の功徳 を うけてお られ る。 これ は大 工 に税金
を払 って い るよ うな ものです。 その上 さ らに私 か らも税 金を とろ うとされ るのですか"
"ああ, わか った,わか ったO もうよい"
とい う訳で,三
日ま老婆 の税 金を免除す る」
これ は大荘厳 (
経)論巻 4に出て い る仏語 であ るが,古今東西を とわず,われわれ庶民 に とって,税金が
一番悩 みの種 であ ることにかわ りはないよ うで あ る。 それ に して も話 のわか った王様 の爪 のあかで も煎 じて
のんで買 いたいよ うな話 であ る0
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1) ビ
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第 1報 で説 明 したよ うに,仏陀 や転輸三
付 ま32相を そなえねはな らぬが, これ に随伴 して 80種 の相 (
80種
好 ,80随形)を もかね そなえていなけれ ばな らぬo この 中 に
「口唇 の色は頻婆 果の如 く赤 くなければな らぬ」
とい う 1条 が あ る。
また仏本行集経一度怖菩薩 品で は, イ ン ドボダイ ジュの下 で喫想す る ゴ- クマボサ ツを誘惑 しよ うと し
て,天 女 に変 身 した魔女 が,次のよ うにか き口説 いてい る。
「
私達天女 の身体 は香潔な蓮華, また層 の赤 く輝 く色 は頻婆果,舌 は蓮華 の葉 のよ うに薄 く,両乳の百 折
精 妙な ること石棺巣 のよ うで あ ります 」
大 方等大集 経-巻41
, 日蔵分 中星品第 8の 2で殊致羅婆菩薩が 2
8崖宿 (
屋座), その姓,その属す る天,
然 るべ き供物 な どを説 明 してい るが, その南方第 2星宿 た る張宿 には頗婆巣を供 え,西方第 4星宿 た る箕宿
にはニグ ロ-ダの樹液を祭 る。張宿 は十 日に事 を用い, この E
=こ病 む者 は頗婆果 と生蘇 (
午 ,羊 の乳 を温 め
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写 真51 Mo
(
伊 豆薬醐 漬物栽培 試験 場)
- 60-
満久 :仏 典 の 中 の 樹 木
か
た もの)を神に祭れば, 7日に して癒をえん。 また箕宿 は四 日に事を行な う。 この 日に病をえば,麻廉 (
ゆ?),尼拘陀子 (ニグローダの果実)を以て水神に祭 らんに 8日に して癒をえん と述べてい る。
2
8
星宿 は紀元前 5世紀頃に中国で完成 された赤道区分法 とされてい るが,イ ン ドで もヴェ-ダにすでにそ
の名がでてお り,その起源が中国かイ ン ドか まだ明かではない。 日本では平安朝か ら江戸時代 にかけて一般
に用い られ,京都の祇園祭 りの長刀鉾の欄干 には東西南北 にこの星座が飾 られてい る。
ビンバ はアフ リカ,イ ン ドか らマラヤまで分布す るウ リ科 ツル レイシ属の植物で,葉 は 5裂鳥足状,花 は
1は 日本で もおな じみの同属
白色,果実は光沢のある紅色を墨す る円筒形閉巣で,表面 は平滑である。写真5
のツル レイシ Mo
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aL で, 果実は先端が噴状 にな ってい るO熟巣 は黄赤色で開裂 して
中に紅色の果肉に包 まれた種子があ らわれ る。果肉は甘いが,果皮 はにがいので一名 ニガウ リともい う。
(
未完)
参
考
文
献
須藤 彰司,南
洋 材 地球出版 (
秩) (
昭和45年)
その他 第 1報 に同 じ。
-6
1-
木材 研究 資料
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