...

第 13 回中国塾 - オフィスホームページサービス

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

第 13 回中国塾 - オフィスホームページサービス
日中産学官交流機構
第 13 回中国塾
日
講
時: 2016 年 4 月 2 日
師: 田中 修氏(塾頭 日中産学官交流機構特別研究員)
テーマ: 「政府活動報告及び第 13 次五ヵ年計画要綱のポイント」
3 月 5 日、開催の全人代で、李克強総理が述べた政府活動報告と第 13 次五カ年計画
要綱の主なポイントについて説明したい。
I. 政府活動報告
1.
2015 年の回顧
(1) 成長・構造調整・リスク防止に力を入れ、三層のコントロールを実施。「区間コントロール」と「方向を定め
たコントロール」、さらに 2015 年 8 月以降の株式・金融市場混乱に「タイミングを見計らったコントロール」
で対応。
(2) 改革の成果
①「ばらまき式の景気刺激を行わず、構造改革を推進」とその成果を列挙、①財政・金融制度改革、②
価格改革、③行政の簡素化である。
(3) そして、下記の経済、社会の抱える困難・試練を列挙、①2015 年の輸出入目標(6.0%)が-8%と未達、
②低調な投資と過剰な生産能力、③財政収入の減少、株式市場の不安定化で金融リスクが発生、④
医療、教育、養老、食品、薬品の安全、所得分配、環境汚染等の問題である。
2.
2016 年の総体的手配
(1) 2016年の総体要求
報告は「小康社会全面的実現の決戦段階のスタート」と位置づけ、2015 年の党 5 中全会で提起された新発
展理念(イノベーションによる発展、協調した発展、グリーンな発展、開放した発展、共に享受する発展)によ
り発展をリード。「サプライサイド構造改革」に力を入れ、生産能力削減・在庫削減・脱レバレッジ・コスト引き
下げ・不足補充の五大任務に取り組むとしている。
(2) マクロ経済の主な目標
①GDP 成長目標 6.5~7%、②消費者物価上昇率 3%前後、③都市新規雇用増 1000 万人以上、④都市登
録失業率 4.5%以内、⑤輸出入の目標は立てない、⑥経済成長と同程度に個人所得を伸ばす、⑦GDP 単
位当たりエネルギー消費を 3.4%以上引き下げ、主要汚染物質排出量を引き続き減少させる。
3.
マクロ経済政策の安定化
(1) 積極的財政政策
財政赤字の対 GDP 比率を昨年の 2.4%から 3.0%に拡大させ、減税等で企業負担を 5000 億元軽減。地方
政府の債務対策として、特別地方債を 4000 億元計上し、2016 年に満期到来の地方政府債務 5 兆元は借
換地方債発行で対応。
(2) 穏健な金融政策
不安定な金融市場の動向に合わせて臨機応変にきめ細かく対応。金融制度改革は監督管理体制の一元
化が大きな課題。
4.
サプライサイド構造改革の強化
サプライサイドの構造改革は昨年 11 月習近平が五大任務を提起、同 12 月中央経済工作会議で精緻化、
報告では李克強総理の主張を盛り込んだ内容に変更。(1)規制緩和、(2)イノベーション、(3)過剰生産能
力の解消、(4)財・サービス供給の改善、(5)国有企業改革、(6)非公有制経済の活性化である。
5.
内需の拡大
需要拡大、需要構造の調整・改革として、(1)養老、ヘルスケア、インターネット等新消費の創出、(2)道路、
鉄道、水利、発電・送電等、投資の高度化、(3)新しい都市化として、①都市住民と同等の義務教育・医療・
雇用等の公共サービスを与え、農民の都市住民化を進める、②バラック住宅改造・都市新住民への公共賃
貸住宅提供で余剰住宅の解消等が掲げられている。
6.
そのほかには、(1)農村人口の脱貧困、(2)ハイレベルな対外開放、(3)厳しい数値目標の環境対策、
(4)大卒生 765 万人、ゾンビ企業の整理による失業者の訓練・再就職問題などが盛り込まれた。
II.第 13 次五カ年計画要綱
1.
政府要綱の責任者、李克強総理の説明
(1) 第 12 次五カ年計画の成果
①GDP の年平均成長は 7.8%、総量は世界 2 位、世界第一の貿易大国、対外投資大国となった、②構造調
整、③インフラ水準、④科学技術のイノベーション、⑤人民の生活レベルなど第 12 次五カ年計画の主要目
標は概ね達成。
(2) 第 13 次五カ年計画期間の主要目標・任務と重大措置
①経済の中高速成長の維持、産業のミドル・ハイエンド化。経済成長は 6.5%以上、②イノベーションによる
生産性向上、③新しい都市化と農業の現代化。三つの 1 億人の実現、④グリーンな生産・生活方式を推進
し、生態環境の改善加速、⑤改革開放、⑥民生福祉の増進、脱貧困の実現。
主要経済目標は絶対達成が求められる拘束性指標と予期性指標に分類。農村貧困人口の脱貧困・都市バ
ラック地区改造・資源環境などは拘束性。
2.
計画期間の発展環境
今後 5 年間、国際経済は不安定・不確定要因が顕著に増え、国内でも有効需要の不足、構造矛盾、脆弱な
農業、過剰生産能力などリスク・試練は大きく、厳しい状況だが、克服できると報告している。
3.
指導思想
全体像は発展を第一とし、五大発展理念を貫徹実施し、サプライサイド構造改革を主線としている。
4.
五大発展理念は五カ年を超える長期に亘る理念で、サプライサイドの構造改革と融合し、新しい指導
理念として再構成されていくものと思われる。
詳 細 に つい て は 日中 産 学 官交 流 機 構の ホ ー ムペ ー ジに 掲 載し て おり ま すの で 、ご 参 照 下 さい 。
http://www1a.biglobe.ne.jp/jcbag/tanaka_report160318.pdf
http://www1a.biglobe.ne.jp/jcbag/tanaka_report160324.pdf
報
告: 楊 舸氏(行知学園株式会社 代表取締役)
テーマ: 「中国人留学生市場と日本の留学生の受け入れの現状
2014 年の中国人留学生総数は 46 万人、日本のセンター試験受験者数 53 万人に迫る。中国人学生が選ぶ
留学先はアメリカが 30 万人とアメリカの受け入れ留学生 100 万人の 3 割を占める。在日中国人留学生は
10.5 万人に過ぎない。日本での留学費用、中国人との相性、距離、文化、経済、歴史を考えると、中国人学
生の留学先としての日本の潜在力は大きい。また、中国人留学生一人あたり年間約 300 万円を日本で消費
しているとする試算もあり、少子化で学生数が減る日本の大学にとって中国人学生は垂涎の的になりつつあ
る。特に優秀な学生は欧米の大学から引く手数多の状態。
行知学園では設立の 2009 年以来、中国人留学生の抱える問題に寄り添い、大学受験指導、就職斡旋、
関連情報の提供で、東大、京大をはじめとする超有名大学への合格者を輩出、指導学生数も年 1200 人を
超える規模になった。この体験から、「中国人留学生市場と日本の留学生受け入れ状況」について話した
い。
1.
中国人学生の留学情報入手ルート
留学にあたって、留学先国(留学制度、ビザ、生活費、物価、言語、税制等)、大学(大学の種類、専門、学
歴認定、教育環境、学費、奨学金制度、宿舎、アルバイト、就職など)、入試の比較(言語学校、学習期間、
試験内容、対策、合格の可能性、受験費用、出願方法、卒業難易度など)、多くの情報が必要となる。最近
の中国人学生は、①SNS、②口コミ、③留学展示会、④留学仲介、⑤PC ページから情報を集め、最終的に
は親が決定している。(親が出資者)
2.
中国人留学生の抱える問題
(1) 外国人留学生として日本の大学に入学
学部には、センター試験、留学生試験、交換留学で入学する方法がある。大学院には上記以外に研究
生として大学入学後受験する方法がある。
(2) 私費留学生の受験内容
学部受験には日本留学試験、TOEFL、出願、筆記試験、小論文、面接、大学院受験には研究計画書、
筆記試験、面接、TOEFL、日本語能力試験あるいは日本留学試験が必要となる。
(3) 日本留学試験
目的は日本の大学での勉強に対応できる日本語力と基礎学力の測定で、文系は日本語、数学、加え
て歴史、地理、政治をみる総合科目があり、理系は日本語、物理・化学・生物から 2 科目選択、数学とな
っている。その中身は中国の中高校での教育科目にない日本独特のものがある。
(4) 日本語学校に対する留学生の不安
①日本語以外に日本留学試験、TOEFL,TOEIC、小論文、面接、志望理由書、研究計画書の準備が
必要、②日本留学試験の結果からは、どの大学に出願できるのか判断できない、③どんな大学があっ
て、どんな学部があるのか等、大学受験に関する情報が少ない、④受験指導のノウハウがない。一方、
日本語学校の講師にとっても、①大学、大学院の情報、入学情報が乏しく、教えられない、②学生の日
本語能力不足で十分な指導が出来ない、③学生の志望する専門的知識がなく指導できないといった
問題がある。
(5) 留学生に必要な予備校
大学留学の前に殆どの中国人留学生が習う日本語学校では大学入学に必要な情報提供、勉強指導
ができない。そのため、大学入学のための予備校が必要。
3.
行知学園の運営
行知学園では留学生の抱える問題に即した運営を心がけている。
(1) 学生のリクルート
毎年中国 20 都市で 80 回以上の日本留学セミナーを実施、現地教育機関(専門学校、高校、大学、予
備校など)、仲介業者と共同で日本留学誘致活動を行っている。また、日中双方で日本留学の SNS 媒
体を運営し、情報を発信。また WEIBO で日本留学を宣伝、中国語 HP の作成、留学関連サイトを利用
した集客活動、東大、慶応など日本の有名大学の中国語プロモーションビデオを作成、学生と電話、
チャット、QQ で個別対応し集客。
(2) 大学・大学院受験指導
留学試験、TOEC,TOEFL 対策、国公立大学試験対策などを指導。
(3) 就職支援
中国人留学生には、日本企業への就職に関する情報が不足しており、現在、行知学園では留学生へ
の就職支援に着手している。
中国人留学生が生み出す市場価値は 4.7 兆円という試算もあり、各国は優秀な中国人人材の獲得に乗り出
している。日本も留学生受け入れ 30 万人計画を福田首相が 2008 年に打ち出したものの、20 万人強に留ま
っている。鍵は中国人を少なくとも 15 万人以上取り込むことであろう。他国に留学する学生の一部でも日本
に連れてくることが出来ないか日々努力している。
講
師: 竹原
美佳氏(石油天然ガス・金属鉱物資源機構 調査部
エネルギー資源調査課長)
テーマ: 「中国のエネルギー政策」
(「改革・開放」以降の中国におけるエネルギー政策)
中国のエネルギー政策は、1979 年の改革開放以降、外資導入のため国営石油会社三社(CNOOC(1982
年)、SINOPEC(1983 年)、CNPC(1988 年))が設立され、現在も独占企業として特権的地位を享受。1993
年に中国は原油の純輸入国となり、価格面では市場化(原油 1995 年、石油製品 1998~2013 年)が進められ、
1998~2000 年に国営石油企業改革、2002 年に発送電分離を実施。2004 年に国家エネルギー指導グルー
プが設立され、11 次五カ年計画で省エネルギー・環境保護が国策となり、拘束力のある目標を設定。12 次
五計で大気汚染がクローズアップされ、2014 年 11 月に米中で排出削減、気候変動問題対処の共同声明。
2015 年 6 月、INDC(Intended Nationally Determined Contributions、気候変動対応計画)を国連に提出し、
今年 3 月には 13 次五計を承認。
10 次五計で国家石油備蓄が決められ、国家統計局は 2015 年 11 月には、8 基地で 1.9 億バレルの備蓄
(2015 年の原油純輸入量 1 カ月分相当)を発表。13 次五計の国家備蓄は 3 億 6500 万バレル(純輸入量の
2 ヶ月弱分)と言われ、経済減速で石油需要が落ちるとしても、備蓄需要は続く。
国有石油企業改革については、1998 年に三大国営石油会社から行政機能を分離、CNPC と SINOPEC は
垂直統合、CNOOC はそのまま存続。更に、世界に伍する企業育成のため、ニューヨーク等で石油企業の
株式を公開。
(12 次五カ年計画期のエネルギー・産業政策)
12 次五計では 6 つのエネルギー政策があった。
① エネルギー効率向上、排出抑制
GDP 単位当たりのエネルギー消費(16%削減)と非化石エネルギー比率(11.4%拡大)は目標達成。2013 年、
大気汚染防止行動計画が出され、重点都市における石炭消費抑制策(石炭火力発電所や石炭ボイラーの
新設禁止、産業用燃料の天然ガスへの置換等)や石油の硫黄含有量削減策(ガソリン、自動車用軽油の硫
黄含有量の基準を 2017 年までにユーロ V 相当を目指す)を導入。中国のエネルギー消費は石油換算で 10
億トン(2000 年)が 30 億トン(2015 年)に増え、一方、2015 年の GDP 当たりのエネルギー消費効率は 2005
年比で 34%向上、エネルギー消費の伸びは 2000~2010 年の年平均 9%が 2015 年には 0.9%まで低下。
2015 年のエネルギー源別の消費は石炭が 64%に下がり、非化石エネルギーが 11.7%に増加。発電電力の
非化石化率は 25%に増加。内訳は水力が 18%、原子力・風力が各 3%、太陽光などが 1%。
② 産業業構造調整(国有企業独占打破)
天然ガス・原油は三大国有企業が 8~9 割、精製事業の 7 割は国有企業が占め、政府は独立系企業が直接
原油を輸入、精製処理できる政策を打っている。
③ インフラ整備
中国の石油輸入比率は 6 割、天然ガス 3 割、今後天然ガス輸入を拡大方針で、ロシア・中央アジアからのパ
イプラインを増設、天然ガス長期輸入契約を締結。
④ 資源価格・税制見直し
天然ガスの輸入価格よりも北京・上海市に卸価格はかなり高く、硬直的な価格統制で天然ガスの需要は伸
び悩んでいる。
⑤ 供給多角化
国有石油企業が輸入だけでなく対外投資の拡大による調達を図っている。国外の生産量は 2014 年には
250 万バレルまで拡大。また、石油企業の対外投資に対し、国家開発銀行や輸出入銀行による融資や国家
ファンドの出資で後押し。ロシアの原油供給は拡大しており、東シベリア~黒龍江省の原油パイプラインでロ
シアの原油供給は大幅増。陸路調達の原油を 2 割程度維持。天然ガスもトルクメニスタン、ウズベキスタン、
カザフスタン~新疆のパイプライン建設の資金を中国が拠出。天然ガス消費の 3 割を占める輸入の半分を中
央アジアに依存。中長期的にはロシアからの輸入が拡大見通しで、東シベリア・パイプラインガスは売買契
約完了、アルタイのパイプラインガスは交渉中、ヤマル半島の LNG は契約締結済み。
⑥ 技術革新・国産化
12、13 次五計の共通政策で、12 次では深海探鉱開発を重点分野とし、LNG や原油運搬船の大型化と自主
設計の国産化を進めている。自主開発の深海掘削船(海洋石油 981)は南シナ海で活動。
(13 次五カ年計画期のエネルギー・産業政策の方向性)
13 次五計のエネルギー政策は、石炭消費の削減、スマートグリッド等で電力効率の向上、原子力の発展、
石油・天然ガスは体制改革と市場化改革により国有企業の独占打破という方向性が見られる。
中国は、2030 年を見据えた CO2 排出削減、非化石エネルギー比率の向上、石炭消費のピークアウトなど
の目標を設定、現行政策の継続・強化の方向。
一次エネルギー消費に占める石炭消費量を 2015 年から
2020 年に 5%削減。石炭を減らして、クリーンで CO2 の排出が少ない天然ガスを増やし、非化石エネルギー
を拡大。原子力発電は 2020 年に 100 万kw級で 58 基、5800 万 kw を稼働。更に 3000 万 kw、8800 万 kw
の計画があり、2030 年には 100 万 kw 級が 100 基以上の体制。水力、再生可能エネルギー比率を更に増加
する方向に中国のエネルギー政策は進んでいくと見られる。
Fly UP