...

平成22年度 共同利用・共同研究 成果報告集

by user

on
Category: Documents
32

views

Report

Comments

Transcript

平成22年度 共同利用・共同研究 成果報告集
全国共同利用・共同研究拠点 平成
年度 共同利用・共同研究成果報告集
22
全国共同利用・共同研究拠点
平成22年度
共同利用・共同研究
成果報告集
広島大学原爆放射線医科学研究所【放射線影響・医科学研究拠点】
広島大学原爆放射線医科学研究所
【放射線影響・医科学研究拠点】
目 次
平成 22 年度共同利用・共同研究採択課題一覧
i
平成 22 年度共同利用・共同研究成果報告
重点プロジェクト研究⑴
1
重点プロジェクト研究⑵
15
重点プロジェクト研究⑶
19
重点プロジェクト研究⑷
45
重点プロジェクト研究⑸
45
重点プロジェクト研究⑹
47
自由研究
48
《付録》
平成 22 年度共同利用・共同研究課題募集要項
57
採択状況
59
施設設備の利用状況
附属放射線先端医学実験施設
放射線実験系
60
動物実験系
62
遺伝子実験系
65
平成22年度共同利用・共同研究採択課題一覧
平成 22年度共同利用・共同研究採択課題一覧
採択番号 申請者(代表者)所属機関
1-1 田 内 広 茨城大学
1-2 濱 聖 司 広島大学
1-3 信 実 孝 洋 広島大学
新規継続
共同研究課題名
課題番号
原医研担当者
新規
NBS1 タンパク質による DNA 損傷
応答制御機構に関する研究
重点⑴
松浦 伸也
重点⑴
松浦 伸也
重点⑴
田代 聡
悪性脳腫瘍細胞における細胞周期
新規 関連因子と放射線感受性に関する
研究
低酸素などが及ぼす絨毛細胞の分
新規 化・機能発現に与える影響につい
て
1-4 小 林 純 也 京都大学
新規
核 小 体 タ ン パ ク 質 の 放 射 線 DNA
損傷応答における機能の解明
重点⑴
松浦 伸也
1-5 山 本 卓 広島大学
ZFN を用いたゲノム損傷修復関連
新規 遺伝子のノックアウト細胞株の樹
立
重点⑴
松浦 伸也
1-6 矢 中 規 之 広島大学
新規
ビタミン B6 摂取における大腸癌予
防効果の遺伝子解析
重点⑴
檜山 桂子
1-7 石 田 万 里 広島大学
新規
ゲノム損傷修復の分子機構に関す
る研究
重点⑴
田代 聡
1-8 河 野 一 輝 広島市立舟入病院 新規
ゲノム不安定性症候群における細
胞核微小環境の研究
重点⑴
田代 聡
1-9 井 倉 毅 京都大学
DNA 損傷応答シグナルの活性化に
新規 おける TIP60 ヒストンアセチル化
酵素複合体の役割
重点⑴
田代 聡
1-10 土 生 敏 行 京都大学
新規
p53-p31 経路による細胞生死決定機
構の解析
重点⑴
河合 秀彦
1-11 野 田 朝 男
財団法人
放射線障害修復機構への老化関連
新規
放射線影響研究所
遺伝子の関与
重点⑴
松浦 伸也
1-12 今 井 高 志
放射線によるゲノム構造変化に関
独立行政法人
新規
する研究
放射線医学総合研究所
重点⑴
飯塚 大輔
1-13 中 西 真 名古屋市立大学
新規
DNA 損傷部位へのリボヌクレオチ
ド還元酵素集積機構の解明
重点⑴
田代 聡
1-14 鈴 木 元 名古屋大学
新規
複製後修復経路における D NAポ
リメラーゼ Pol δの機能解析
重点⑴
増田 雄司
神谷 研二
1-15 小 林 正 夫 広島大学
新規
重症先天性好中球減少症における
新規遺伝子変異の同定
重点⑴
稲葉 俊哉
1-16 今 泉 和 則 広島大学
新規
細胞ストレスに対する小胞体機能
変化の解析
重点⑴
稲葉 俊哉
2-1 伊 藤 彰 彦 東京大学
新規
小型肺腺癌の悪性化に関する遺伝
子発現の網羅的解析
重点⑵
岡田 守人
2-2 浅 野 知 一 郎 広島大学
新規 RELM bの代謝調節における役割
重点⑵
稲葉 俊哉
重点⑵
川上 秀史
2-3 齋 藤 俊 行
低線量放射線がゲノム DNA のメ
独立行政法人
新規 チル化状態に及ぼす影響の評価研
放射線医学総合研究所
究
備 考
i
採択番号 申請者(代表者)所属機関
新規継続
共同研究課題名
課題番号
原医研担当者
2-4 七 條 和 子 長崎大学
新規
原爆被爆者に関するプルトニウム
と内部被曝の研究
重点⑵
星 正治
2-5 内 匠 透 広島大学
次世代 DNA シーケンサーを用い
新規 た 鬱 に 関 わ る 転 写 因 子 NPAS2 と
BMAL1 の標的遺伝子の探索
重点⑵
松井 啓隆
3-1 辻 浩 一 郎 東京大学
新規
造血関連遺伝子改変マウスにおけ
る造血細胞分化・増殖能の解析
重点⑶
本田 浩章
3-2 黒 澤 秀 光 獨協医科大学
新規
急性リンパ性白血病融合転写因子
の標的遺伝子解析
重点⑶
稲葉 俊哉
3-3 水 谷 修 紀 東京医科歯科大学 新規
DNA 修復能力個人差とがん発生の
相関解析
重点⑶
稲葉 俊哉
3-4 高 木 正 稔 東京医科歯科大学 新規
ATM 欠損の慢性骨髄性白血病悪性
化への関与の解析
重点⑶
本田 浩章
3-5 檜 山 英 三 広島大学
新規
ヒトがんにおける発がん機序と悪
性度規定因子の解明
重点⑶
檜山 桂子
3-6 泉 俊 輔 広島大学
新規
有機天然化合物のアポトーシス誘
導および介入の作用機序解析
重点⑶
河合 秀彦
飯塚 大輔
3-7 武 井 佳 史 名古屋大学
新規
原爆被爆者血液塗抹検体及び細胞
における MicroRNA の発現解析
重点⑶
三原圭一朗
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
3-8 菊 池 章 大阪大学
3-9 高 倉 伸 幸 大阪大学
3-10 竹 田 潤 二 大阪大学
3-11 自 見 英 治 郎 九州歯科大学
3-12 奥 田 司 京都府立大学
3-13 須 田 年 生 慶應義塾大学
3-14 岩 間 厚 志 千葉大学
コンディショナルノックアウトマ
新規 ウ ス を 用 い た 造 血 細 胞 に お け る
Wnt5a の機能解析
コンディショナルノックアウトマ
新規 ウ ス を 用 い た 血 管 形 成 に お け る
Cas の機能解析
新規
トランスポゾンを用いたがん抑制
遺伝子単離の試み
コンディショナルノックアウトマ
新規 ウ ス を 用 い た 破 骨 細 胞 に お け る
Cas の機能解析
ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス を 用 い た、
新規 IRES を介した Runx1 遺伝子産物の
発現およびその生物学的機構の解析
マイクロアレイを用いた造血肝細
新規 胞におけるヒストン脱リン酸化酵
素 Fbxl10 の機能解析
骨髄移植を用いた造血幹細胞に
新規 お け る ヒ ス ト ン 脱 リ ン 酸 化 酵 素
Fbxl10 の機能解析
3-15 小 田 秀 明 東京女子医科大学 新規
遺伝子改変マウスの組織病理学的
解析
重点⑶
本田 浩章
3-16 丸 義 朗 東京女子医科大学 新規
Flt1 の慢性骨髄性白血病発症機構
への関与の解析
重点⑶
本田 浩章
3-17 小 川 誠 司 東京大学
新規
コンディショナルノックインマウ
スを用いた変異型 Cbl の機能解析
重点⑶
本田 浩章
3-18 小 川 誠 司 東京大学
コンディショナルノックアウトマ
新規 ウスを用いた造血器腫瘍発症にお
ける A20(TNFAIP3)の機能解析
重点⑶
本田 浩章
ii
備 考
採択番号 申請者(代表者)所属機関
新規継続
3-19 小 川 誠 司 東京大学
新規
3-20 本 田 善 一 郎 東京大学
新規
3-21 宮 川 清 東京大学
新規
3-22 渡 邉 秀 美 代 東京大学
新規
3-23 酒 井 規 雄 広島大学
新規
3-24 菅 野 雅 元 広島大学
新規
3-25 中 村 卓 郎 財団法人 癌研究会 新規
共同研究課題名
トランスジェニックマウスおよび
ノックインマウスを用いた変異型
ALK の機能解析
コンディショナルノックアウトマウ
スを用いた自己免疫疾患発症におけ
る A20(TNFAIP3)の機能解析
トランスジェニックマウスを用い
た減数分裂に関与する遺伝子 SCP3
の機能解析
足細胞特異的 Cas ノックアウトマ
ウスを用いた糸球体上皮細胞にお
ける Cas の機能解析
トランスジェニックマウスを用い
た小脳失調症における PKC 変異体
の機能解析
トランスジェニックマウスおよび
ノックアウトマウスを用いた転写
因子 DEC1 の機能解析
疾患モデルマウスにレトロウイル
スを用いた多段階発癌の解析
コンディショナルノックアウトマ
新規 ウ ス を 用 い た 脳 神 経 系 に お け る
Cas の機能解析
Parp および Parg 発現変化による
国立がんセンター
新規 慢性骨髄性白血病悪性化への関与
3-27 益 谷 美 都 子
研究所
の解析
3-26 古 市 貞 一
独立行政法人
理化学研究所
食道癌における新たな抗癌治療感
受性因子の同定
3-28 麓 祥 一 広島大学
新規
3-29 小 林 正 夫 広島大学
新規 原発性免疫不全症の解析
3-30 犬 飼 岳 史 山梨大学
新規
3-31 白 石 一 乗 大阪府立大学
3-32 楯 真 一 広島大学
白血病原因転写関連因子の機能解
析
神経幹細胞で観察される選択的染
新規 色体分配における p53 遺伝子の役
割
細胞損傷マーカー蛋白質と受容体
新規 との相互作用解析を通した損傷シ
グナル伝達機構の解明
課題番号
原医研担当者
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
本田 浩章
重点⑶
檜山 桂子
重点⑶
瀧原 義宏
重点⑶
稲葉 俊哉
重点⑶
神谷 研二
豊島めぐみ
重点⑶
田代 聡
3-33 野 田 典 孝 広島国際大学
新規
癌細胞に対する放射線と細胞死誘
発因子との併用効果の検討
重点⑶
田代 聡
3-34 荒 木 淳 広島国際大学
新規
リンパ球に対する放射線防護剤の
併用効果の検討
重点⑶
田代 聡
3-35 高 木 正 稔 東京医科歯科大学 新規
家族性リンパ腫の遺伝的背景の探
索
重点⑶
稲葉 俊哉
4-1 泉 俊 輔 広島大学
新規
放射線被曝のバイオドジメトリー
を志向した尿プロテオーム解析
重点⑷
河合 秀彦
飯塚 大輔
5-1 大 野 芳 典 広島大学
新規 造血幹細胞制御の分子基盤の研究
重点⑸
瀧原 義宏
5-2 酒 井 規 雄 広島大学
新規
重点⑸
田代 聡
脳虚血に伴うストレス応答物質の
解析
備 考
iii
採択番号 申請者(代表者)所属機関
6-1 木 原 康 樹 広島大学
6-2 高 橋 規 郎
新規継続
共同研究課題名
新規 Wnt シグナルの解析
動物モデルを使った放射線により
財団法人
新規
誘発する循環器疾患の研究
放射線影響研究所
課題番号
原医研担当者
備 考
重点⑹
田代 聡 研究延期
重点⑹
稲葉 俊哉
F-1 栗 原 英 見 広島大学
新規
家族性侵襲性歯周炎の疾患関連遺
自由研究 川上 秀史
伝子究明
F-2 松 尾 雅 嗣 広島大学
新規
聞き取り調査にもとづくセミパラ
申請者
自由研究 星 正治
チンスク核被害実態の再構成
死亡
F-3 太 田 茂 広島大学
新規
環境汚染物質の甲状腺ホルモン撹
自由研究 藤本 成明
乱作用におけるヒトリスク評価
F-4 小 林 正 夫 広島大学
新規 代謝性疾患の解析
F-5 中 野 由 紀 子 広島大学
A キナーゼアンカータンパク変異
新規 体における心筋内カルシウム動態 自由研究 田代 聡
の解明
F-6 長 沼 毅 広島大学
新規
F-7 内 匠 透 広島大学
新規 脳機能に関するゲノム科学的研究
F-8 豊 田 新 岡山理科大学
新規
国際規格化に向けた人の歯のES
自由研究 星 正治
R線量計測方法の確立
F-9 佐 々 木 民 人 広島大学
新規
胆道系悪性腫瘍の分子生物学的解
自由研究 宮本 達雄
析
F-10 廣 田 隆 一 広島大学
新規 バクテリア変異株のゲノム解析
F-11 田 島 誉 久 広島大学
新規
微生物機能を利用したバイオプロ
自由研究 金井 昭教
セスの構築
F-12 北 村 俊 雄 東京大学
新規
慢性骨髄性白血病の急性転化に関
自由研究 稲葉 俊哉
する研究
新規
リンパ球分化を制御する遺伝子発
自由研究 稲葉 俊哉
現機構の解明
F-13 谷 内 一 郎
独立行政法人
理化学研究所
極限環境微生物のゲノム解析に関
自由研究 稲葉 俊哉 研究延期
する研究
F-14 今 泉 和 則 広島大学
新規 小胞体ストレス関連遺伝子の解析
F-15 大 段 秀 樹 広島大学
新規
iv
自由研究 瀧原 義宏
自由研究 川上 秀史
自由研究 松井 啓隆
自由研究 稲葉 俊哉
In vitro におけるヒト末梢血B細胞
研究開始
自由研究 岡田 守人
培養系の確立と応用
準備中
平成22年度共同利用・共同研究成果報告
重点プロジェクト研究⑴
1-1
1-2
NBS1 タンパク質による DNA 損傷応答制
御機構に関する研究
悪性脳腫瘍における細胞周期関連因子と放
射線感受性に関する研究
研究組織
研究組織
代 表 者:田内 広(茨城大学理学部・教授)
代 表 者:濱 聖司
原医研受入研究者:松浦 伸也
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経
(放射線ゲノム疾患研究分野・教授)
外科・研究員)
共同研究者:栗栖 薫
研究内容・研究成果・今後の展望等
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経
ナイミーヘン症候群(NBS の)原因タンパク NBS1 は、
外科・教授)
RAD50 および MRE11 と複合体を形成し、放射線照射に
西本 武史
よる DNA 二重鎖切断(DSB)形成に伴う複合体の局在お
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経
よび修復活性の制御を行うのみならず、DNA 損傷が入っ
外科・医員)
た細胞のアポトーシスや細胞周期チェックポイントなど多
原医研受入研究者:松浦 伸也
様な損傷応答経路を制御している。これらの制御は、一様
(放射線ゲノム疾患研究分野・教授)
に起動されるのではなく、損傷の程度によって変化する可
能性があることが示唆されている。例えば、NBS1 による
ATM の活性化制御は低線量では重要であるが、高線量被
研究内容・研究成果・今後の展望等
【研究内容】
ばくでは NBS1 による制御が必要とされない。そのように
悪性グリオーマ培養細胞を用いて、細胞周期調節因子
NBS1 によるシグナル制御には線量や線量率依存性がある
(p16、p21)、細胞分裂調節因子(Survivin)が悪性脳腫瘍
と考えられるので、本研究では、NBS1 が制御する DNA
細胞の放射線感受性に及ぼす影響を解析。また、細胞内エ
損傷応答経路と NBS1 タンパクドメイン、DNA 損傷量と
ネルギー代謝機構や腫瘍幹細胞関連についても検討を進め
の関係をより詳細に解析するためにガンマ線照射の線量率
てきた。
を変化させて損傷を導入し、細胞挙動やタンパク挙動を調
【研究成果】
べることを目的としている。今年度は、照射実験に用いる
放射線感受性に関わる因子の解析を進めるとともに培養
アッセイ系を検討するため、DNA 損傷に応答して引き起
細胞の条件設定を進めてきた。また、細胞内エネルギー代
こされる NBS1 のリン酸化をはじめとする翻訳後修飾の解
謝機構の実験試薬の準備を進めると共に、培養方法を検討
析を行った。その結果、NBS1 が新たな翻訳後修飾を受け
して放射線感受性の研究手法の準備を進めてきた。
ている可能性が示唆されたので、今後、その実体が何であ
【今後の展望】
るのかを確認するとともに、修飾の役割についても解析を
各種実験の準備が整い、平成 23 年度には本格的な照射
進める予定である。
実験を行う予定にしている。
発表論文
発表論文
1)Takagi, M., Sakata, K., Someya, M., Tauchi, H., Iijima, K.,
現在、データ取得中。
Matsumoto, Y., Torigoe, T., Takahashi, A., Hareyama,
M., Fukushima, M.: Gimeracil sensitizes cells to
radiation via inhibition of homologous recombination.
Radiotherapy and Oncology 96: 259-266, 2010
2)
Nakamura, K., Kato, A., Kobayashi, J., Yanagihara, H.,
Sakamoto, S., Oliveira, D. V.N.P., Shimada, M., Tauchi, H.,
Suzuki, H., Tashiro, S., Zou L., Komatsu, K.: Regulation
of homologous recombination by RNF20-dependent
H2B ubiquitination. Molecular Cell 41,515-528, 2011.
1
重点プロジェクト研究⑴
1-3
低酸素などが及ぼす絨毛細胞の分化・機能
発現に与える影響について
反応経路や関連因子の影響も大きいことが示された。今後
は syncytin-1 以外の細胞融合に関わる遺伝子や、そのヘ
テロダイマーとして作用すると考えられているアミノ酸ト
ランスポーターについて同様の実験を行い、シンシチウム
研究組織
化と栄養素取り込みの観点から子宮内胎児発育遅延などの
代 表 者:信実 孝洋(広島大学産婦人科・助教)
病態形成について検討する。
共同研究者:松山 聖 (広島大学産婦人科・大学院生)
原医研受入研究者:田代 聡(細胞修復制御研究分野・教授)
発表論文
発表論文なし、第 18 回日本胎盤学会学術集会(熊本)、
研究内容・研究成果・今後の展望等
目的:胎盤絨毛に存在する栄養膜細胞(trophoblast)は、
細胞融合によりシンシチウム化され合胞体栄養膜細胞
(syncytiotrophoblast)となり母体胎児間の境界を形成し、
妊娠維持に必要なホルモン分泌や栄養素の取り込みなどの
機能が発現される。Syncytin-1 は細胞融合にかかわる重要
な因子の一つで、臨床的には子宮内胎児発育遅延や妊娠高
血圧症候群などでその発現が低下していることが報告され
ており、シンシチウム化の障害がその疾患形成に影響を及
ぼしていると考えられている。シンシチウム化のモデル細
胞であるヒト絨毛癌細胞株(BeWo 細胞)では、forskolin
添加により PKA を介したシンシチウム化が誘導され、
syncytin-1 の発現や hCG などのホルモン分泌が増加する
ことが知られているが、syncytin-1 による細胞融合にはレ
セプター(ASCT2)が必要であり、近年 PKA を介さな
いシグナル伝達系が報告されるなど、その機能発現にはま
だ不明な点が多い。そこで syncytin-1 と ASCT2 のシンシ
チウム化に及ぼす影響について RNA 干渉法を用いて評価
し、さらに PKA 阻害剤である H-89 を用いてシンシチウ
ム化反応系を検証した。細胞融合の数的評価は、当科で確
立したフローサイトメトリー評価法を利用した。
研究成果: ① SiRNA 処理により syncytin-1 および ASCT2
の mRNA 発現は抑制され、細胞融合後に誘導される pp13
は syncytin-1-siRNA 処理で有意に抑制されたが、ASCT2siRNA 処理では抑制されなかった。Syncytin-1 RNA 発現
量と融合細胞数の間の相関は R=0.57(P<.001)であった
が、ASCT2 RNA 発現量と融合細胞数には相関がなかっ
た。② PKA(forskolin)による syncytin-1RNA 発現増加
は H-89 処理で用量依存的に減少したが、PKA の影響がほ
ぼ完全に抑制された状態であっても細胞融合数は約 50%
しか低下しなかった。③上記より ASCT2 発現変化は細胞
融合に影響を与えず、シンシチウム化には syncytin-1 以
外の因子も大きな影響を及ぼすことが示唆された。
今後の展望:シンシチウム化の際に最も重要な因子はこれ
まで syncytin-1 と考えられてきたが、本研究により他の
2
国際胎盤学会(santiago)にて学会発表
重点プロジェクト研究⑴
1-4
核小体タンパク質の放射線 DNA 損傷応答
における機能の解明
の制御機構の詳細を明らかにしたい。
発表論文
Kobayashi J, Okui M, Asaithamby A, Burma S, Chen BP,
研究組織
Tanimoto K, Matsuura S, Komatsu K, Chen DJ. WRN
代 表 者:小林 純也
participates in translesion synthesis pathway through
(京都大学放射線生物研究センター・准教授)
interaction with NBS1. Mech Ageing Dev, 131, 436-444,
共同研究者:島田 幹男
2010.
(京都大学放射線生物研究センター・研究員)
林 幾江
(広島大学医歯薬学総合研究科・助教)
原医研受入研究者:松浦 伸也
(放射線ゲノム疾患研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
反復配列で構成される ribosomal DNA が形成する核小
体には、多くの DNA 修復関連タンパク質が局在すること
が知られている。その一方、核小体タンパク質の DNA 二
重鎖切断(DSB)損傷応答における機能は不明なことから、
その役割を明らかにすることを本研究の目的とし、とり
わけ DNA 損傷応答制御における中心因子ヒストン H2AX
との新規結合因子 nucleolin、及びウェルナー早老症(WS)
の原因遺伝子産物 WRN という二つの核小体局在タンパク
質に焦点をあて、これらのタンパク質の DNA 損傷応答に
おける役割について解明を試みた。
WS 細胞は数種類の DNA 損傷誘導剤に高感受性を示す
ことから、WRN は DNA 損傷応答に機能することが示唆
されていたが、今回の研究により、NBS1 との結合を介し
て損傷乗り越え DNA 合成(TLS)を負に制御しているこ
とを明らかとした。また、WRN を欠損する WS 細胞では
TLS に依存した点突然変異が上昇していることも明らか
にした。
新規 H2AX 結合因子 nucleolin の解析では、DSB 損傷
部 位 に 集 結 す る こ と を laser micro-irradiation 法、 ク ロ
マ チ ン 免 疫 沈 降 法 で 明 ら か に し た。 ま た、nucleolin を
siRNA でノックダウンすると、ATM 依存的タンパク質リ
ン酸化が抑制され、細胞周期チェックポイントの誘導にも
異常が見られた。さらにノックダウン細胞では、DSB 修
復の主要経路である相同組換えと非相同末端結合が低下す
るとともに、DSB 損傷依存的な修復因子のクロマチン蓄
積も抑制されていた。このように nucleolin は DSB 損傷応
答に幅広く機能する因子であることが示唆された。今後、
nucleolin と DSB 損傷依存的に結合する因子を同定し、そ
の役割を解明することにより、nucleolin による DSB 損傷
3
重点プロジェクト研究⑴
1-5
ZFN を用いたゲノム損傷修復関連遺伝子の
ノックアウト細胞株の樹立
研究組織
代 表 者:山本 卓
(広島大学大学院理学研究科・教授)
3. Fujita, K., Teramura, N., Hattori, S., Irie, S., MitsunagaNakatsubo, K., Akimoto, T., Sakamoto, N., Yamamoto,
T. and Akasaka, K. Mammalian arlysulfatase A
functions as a novel component of the extracellular
matrix. Connective Tissue Research, 51(5): 388-396
(2010)
4. Okamitsu, Y., Yamamoto, T., Fujii, T., Ochiai, H. and
共同研究者:坂本 尚昭
Sakamoto, N. Dicer is required for the normal development
(広島大学大学院理学研究科・准教授)
of sea urchin, Hemicentrotus pulcherrimus. Zoological
原医研受入研究者:松浦 伸也
Science, 27(6): 477-486(2010)
(放射線ゲノム疾患研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究では、人工酵素ジンクフィンガーヌクレアーゼ
(ZFN)を利用した標的遺伝子破壊システムを利用して、
DNA 修復関連遺伝子の破壊培養細胞株を樹立することを
目的とする。
培養細胞において効率的に標的遺伝子へ変異を導入する
システムを確立するため、本年度はこれまで作製してい
るヒト MED1 遺伝子を標的とする ZFN セットを用いて、
ヒト培養細胞での変異導入を試みた。MED1 遺伝子 ZFN
セットを HeLa 細胞および HEK293 細胞に一過的に発現
させた後、ゲノム DNA を調整し、標的配列を含むゲノム
DNA 領域を PCR により増幅した。さらに、変異導入を
解析する Cel1 nuclease アッセイにより、ゲノムへの挿入・
欠失変異について解析した。しかしながら、現時点で明確
な変異導入は確認できていない。標的配列を共導入した場
合には、切断が確認できていることから、ゲノム DNA は
修飾などによって ZFN によって切断がかかりにくい状態
となっている可能性が考えられた。
今後は、導入する ZFN 構築の濃度の検討や別のヒト細
胞を使用するなどの改善を行っていく予定である。
発表論文
1. Ochiai, H., Fujita, K., Suzuki, K., Nishikawa, M.,
Shibata, T., Sakamoto, N. and Yamamoto, T. Targeted
mutagenesis in the sea urchin embryo using zincfinger nucleases. Genes to Cells, 15(8): 875-885(2010)
2. Fujita, K., Takechi, E., Sakamoto, N., Sumiyoshi,
N., Izumi, S., Miyamoto, T., Matsuura, S., Akasaka,
K. and Yamamoto, T. HpSulf, a heparan sulfate
6-O-endosulfatase, is involved in the regulation of
VEGF signaling during sea urchin development.
Mechanisms of Development, 127(3-4): 235-245(2010)
4
重点プロジェクト研究⑴
1-6
ビタミンB6摂取における大腸癌予防効果
の遺伝子解析
研究組織
Res. 55: 635-643. 2011.
2)Yanaka N, Kanda M, Toya K, Suehiro H, and Kato N.
Vitamin B6 regulates mRNA expression of peroxisome
proliferator-activated receptor-γ target genes. Exp.
Ther. Med. 2: 419-424, 2011.
代 表 者:矢中 規之
(広島大学大学院生物圏科学研究科・准教授)
原医研受入研究者:檜山 桂子
(放射線医療開発研究分野・准教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
azoxymethane(AOM)は大腸腫瘍を誘発させる発癌性
物質であり、実験動物に投与することで Aberrant crypt
foci(ACF)が発生することから、発癌予防物質の探索
や癌発生メカニズムの研究に広く用いられている。また、
以前我々は、AOM 誘発大腸腫瘍モデルマウスを用いて
vitamin B6 の投与実験を行った結果、ACF の発生率が低
下することを明らかにしている。そこで本研究は、AOM
誘発大腸腫瘍モデルマウスの ACF 形成前の初期の病態に
関与する標的分子を探索することによって、AOM 誘発
大腸腫瘍の発症メカニズムを明らかにし、さらに vitamin
B6 の予防効果を解明することを目的とした。5 週齢雄性
ICR マウスに vitamin B6 の含量の異なる実験食を自由
摂取させ、AOM を皮下投与した。大腸組織由来の total
RNA を調製後、マウスゲノムアレイに対してハイブリダ
イゼーションを行った。有意な発現変動が認められた遺伝
子群を候補因子として単離し、発現解析を行った。AOM
投与に伴って、mast cell protease などのマスト細胞の浸
潤を示す遺伝子群や CD8 や granzyme などの細胞障害性
T 細胞の浸潤を示す遺伝子群の mRNA 量が有意に増加し
た。AOM 投与によって発現量が増加するマスト細胞およ
び細胞障害性 T 細胞に関連する遺伝子群は、B6 摂取量の
増加に伴って発現量が減少した。本研究において AOM 誘
発大腸腫瘍モデルマウスの前癌病変発症前の病態において
マスト細胞および細胞障害性 T 細胞の浸潤が誘導される
可能性が見出され、ACF 形成の新たな機序の可能性を示
すとともに、食餌性 vitamin B6 の摂取による新たな効果
を示唆した。
発表論文
1)Yanaka N, Ohata T, Toya K, Kanda M, Hirata A,
and Kato N. Vitamin B6 suppresses serine protease
inhibitor 3 expression in the colon of rats and in
TNFalpha-stimulated HT-29 cells. Mol. Nutr. Food
5
重点プロジェクト研究⑴
較検討している。現在のところ、仮説に反し、二重変異マ
1-7
ゲノム損傷修復の分子機構に関する研究
ウスで動脈硬化巣の縮小を認めた。その機序に関し、現在
解析中である。
研究組織
代 表 者:石田 万里
発表論文
(広 島大学大学院 医歯薬学総合研究科 心臓
なし
血管生理医学・講師)
共同研究者:石田 隆史
(広 島大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環
器内科学・講師)
原医研受入研究者:田代 聡
(細胞修復制御研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
被爆者の追跡調査(被爆線量と動脈硬化性心疾患の罹患
率に相関あり)と早老症(ウェルナー症候群やハッチンソ
ン・ギルフォード・早老症候群)の病態をヒントに、ゲノ
ム損傷および修復異常と動脈硬化との連関に興味をいだ
き、本共同研究を実施している。
研究は、(1)ヒト動脈硬化巣において DNA 二重鎖切断
及び修復機転の活性化が認められるか、また不完全・不適
切な修復の結果としての染色体異常が認められるか否かの
検討 (2)動脈硬化(ApoE ノックアウト)マウスとゲノ
ム損傷に対する修復異常を示す Ku80 ノックアウトマウス
を交配した二重変異マウスにおける動脈硬化巣の精査(3)
修復因子の補充による治療応用 を計画した。(1)(2)に
関し下記の研究成果を得た。(3)は未施行である。
1.培養血管細胞を用いた研究により、酸化ストレスは、
ゲノムに、最も致命的な二重鎖切断を生じさせ、修復系
のシグナルを活性化し、p21 などの細胞分裂抑制因子の誘
導、つまり老化の形質をも誘導することを見いだした。ま
た、ヒト動脈硬化病変部の免疫染色により、動脈硬化巣に
DNA 二重鎖切断の存在を証明した。
2.非相同末端結合(NHEJ)の中心となる分子、DNA
依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の動脈硬化巣への
集積を証明した。また p53 の動脈硬化巣への集積も認めた。
3.動脈硬化マウス(ApoE 欠損マウス)にゲノム修復
因子である Ataxia Telangiectasia-mutated(ATM)の阻
害剤・カフェインを投与し、動脈硬化に増悪が認められる
か否かを検討した。ゲノム修復機構を阻害すると動脈硬化
が増悪した。
4.動脈硬化(ApoE ノックアウト)マウスとゲノム損
傷に対する修復異常を示す Ku80 ノックアウトマウスを交
配した二重変異マウスを作成し、動脈硬化巣の進行度を比
6
重点プロジェクト研究⑴
1-8
1-9
ゲノム不安定性症候群における細胞核微小
環境の研究
DNA 損傷応答シグナルの活性化における
TIP60 ヒストンアセチル化酵素複合体の役割
研究組織
研究組織
代 表 者:河野 一輝(庄原赤十字病院・小児科医師)
代 表 者:井倉 毅
原医研受入研究者:田代 聡
(京都大学放射線生物研究センター・准教授)
(細胞修復制御研究分野・教授)
共同研究者:井倉 正枝
(京都大学放射線生物研究センター・博士研究員)
研究内容・研究成果・今後の展望等
原医研受入研究者:田代 聡
動的な高次構造体から構築されている細胞核微小環境
(細胞修復制御研究分野・教授)
は、内的要因あるいは外的要因によりその形態および動態
が変化する。正常細胞および様々な疾患の細胞における細
研究内容・研究成果・今後の展望等
胞核微小環境の制御機構を解明することはその病態生理
本研究は、TIP60 ヒストンアセチル化酵素に着目し、放
を理解するうえで重要である。我々は、DNA 二本鎖切断
射線による DNA 損傷部位のクロマチン構造変換の分子機
(DSB)修復機構の相同組換え修復において中心的役割を
構とその意義を探ることが目的である。我々は、TIP60 ヒ
担うゲノム修復蛋白質 RAD51 に注目し、その動態解析を
ストンアセチル化酵素とユビキチン結合酵素 UBC13 の複
進めており、RAD51 が正常細胞では S 期に RAD51 フォー
合体がヒストン H2AX を損傷クロマチンから放出させる
カスを形成し、過剰発現された RAD51 が DNA 密度が粗
ことを明らかにし(Ikura, T. et al. Mol Cell Biol. 2007)、
なクロマチン間領域の一部にチューブ状の高次構造体を形
損傷領域のクロマチンが動的に変化することを見出した。
成することを明らかにした。さらに、正常細胞において紫
本共同研究により TIP60 による H2AX のアセチル化が、
外線レーザーマイクロ照射システムを用いて DSB を誘導
損傷クロマチン領域で DNA 損傷のセンサー蛋白質である
すると、チューブ状構造体に一致する部位に RAD51 が集
NBS1 の維持に関与することを見出した。
積することを見出している。今回、我々はゲノム不安定
これらのことから、H2AX のクロマチンからの放出の
性症候群の代表的疾患であり ATM の変異により発症す
役割の一つは、センサー蛋白質である NBS 1を損傷クロ
る毛細血管拡張性運動失調症(AT)の患者細胞株を用い
マチンへ誘導し、DNA 損傷応答シグナルを活性化させる
て同様な実験を行った。その結果、正常細胞と同様に AT
ことが示唆された。今後は、生化学的および FRAP など
細胞でも RAD51 はチューブ状構造体を形成したが、DSB
を用いたイメージング法により TIP60 複合体が、如何な
を誘導してもチューブ状構造体に一致する部位に RAD51
る機構で NBS1 を損傷領域に維持させるのかについて明ら
は集積しなかった。これらの結果から、ATM が RAD51
かにしていきたいと考えている。
のチューブ状構造体の形成には関与しないが、DSB が誘
導された部位への RAD51 の集積には関与する可能性が示
発表論文
唆された。今後、正常細胞に ATM 阻害剤を添加した場
1. Takaku, M., Tsujita, T., Horikoshi, N., Takizawa,
合にみられる RAD51 のチューブ状構造体の動態を解析し
Y., Qing, Y., Hirota, K., Ikura, M., Ikura, T., Takeda,
ATM が細胞核微小環境の制御機構に与える影響を解析し
S., Kurumizaka, H. Purification of the human SMN-
ていく予定である。
GEMIN2 complex and assessment of its stimulation
of RAD51-mediated DNA recombination reactions.
発表論文
Biochemistry(in press)
1. ATM Modulates the Loading of Recombination Proteins
2. Katoh, Y, Ikura, T., Hoshikawa,Y., Tashiro, S., Ohta,
onto a Chromosomal Translocation Breakpoint Hotspot.
M., Kera, Y., Noda, T., and Igarashi, K. Methionine
Jiying Sun, Yukako Oma, Masahiko Harata, Kazuteru
Adenosyltransferase II Serves As a Transcriptional
Kono, Hiroki Shima, Aiko Kinomura, Tsuyoshi Ikura,
Corepressor of Maf Oncoprotein. Mol Cell 41, 554-566,
Hidekazu Suzuki, Shuki Mizutani, Roland Kanaar,
2011.
Satoshi Tashiro. PLoS ONE (
5 10)
: e13554,(2010)
3. Sun,J., Oma, Y., Harata,M., Kono, K., Shima, H., Kinomura,
7
重点プロジェクト研究⑴
A., Ikura, T., Mizutani, S., Kanaar, R., and Tashiro,S.
ATM modulates the loading of recombination proteins
onto a chromosomal translocation breakpoint hotspot.
PLoS ONE 2010, 5, e13554.
1-10
P53-p31 経路による細胞死決定機構の解
析
研究組織
代 表 者:土生 敏行
(京都大学放射線生物研究センター・助教)
原医研受入研究者:河合 秀彦
(放射線細胞応答研究分野・助教)
研究内容・研究成果・今後の展望等
p53 はストレスに応じ様々な標的遺伝子の発現調節を
行うとされている。しかしストレスレベルに応じたそ
の応答変化をいかに行っているかは不明なままである。
p31comet(以下 p31)は我々が解析を行っている因子で
spindle checkpoint 解除に必要な因子として当初解析を
行っていたが、近年 p53 の調節因子ですそのストレスレ
ベルに応じた転写調節に関与していることを明らかにし
てきた。この調節では、トポイソメラーゼ阻害剤による
DNA 損傷、ヒドロキシウレア、UV 等による DNA 合成
阻害、rRNA 合成阻害、酸化ストレスのストレスレベル依
存的に低ストレス状態では p53-p31 結合が標的遺伝子 p21
の発現誘導を円滑に行うが、細胞死を招く高ストレス状態
では p53-p31 複合体が解消され p21 の発現誘導を停止させ
ることを明らかにしてきた。この p53-p31 複合体のストレ
スレベルに応じた変化を p53 ユビキチンリガーゼ HDM2
による p31 のユビキチン化によって行っているのではな
いかという細胞レベルでの実験で証明しつつある。このユ
ビキチンリガーゼ HDM2 による p53-p31 複合体への影響
を試験管内の反応で再構築することをこの共同研究での最
終的目的とした。
研究成果
①試験管内反応再構築のための複合体及び精製タンパク質
の調製
再構築に必要な精製タンパク質は p31 を除き、原医
研受入研究者・河合秀彦助教が調製したものを使用する
こととした。p31 精製タンパク質はバキュロウイルス 昆虫細胞の系を用いて Flag タグを付加した p31 をイオ
ン交換クロマトグラフィー及び抗 Flag 抗体ビーズを用
いて精製品とした。
② HDM2、E2 タンパク質の調製
再構築に向けて、HDM2 組換えタンパク質の精製を
大腸菌及びバキュロウイルスー昆虫細胞系を用いて試み
たが発現レベルが低く精製度の高い組換えタンパク質
8
重点プロジェクト研究⑴
の精製には至らなかった。また HDM2 に結合できる E2
タンパク質を酵母 two-hybrid アッセイにより報告され
ているもの6種類について再度検討した結果、結合が確
認されるものは 3 種類しかなかった。この三者を同様に
1-11
放射線障害修復機構への老化関連遺伝子の
関与
大腸菌を用いて組換え精製タンパク質の取得を目指した
研究組織
が、全て不溶化し精製することはできなかった。
代 表 者:野田 朝男
(財団法人放射線影響研究所遺伝学部・副部長)
今後の展望
原医研受入研究者:松浦 伸也
次年度に向けて今年度精製を試みたタンパク質を引続き
(放射線ゲノム疾患研究分野・教授)
精製の試みを行うこと、さらにバキュロウイルスー昆虫細
胞系を用いて精製条件の最適化など精製とアッセイ系の最
研究内容・研究成果・今後の展望等
適化を行っていきたいと考えている。
本研究は電離放射線による DNA 損傷、特に DNA 二重
鎖切断(DSB)に対する修復機構について、細胞老化関
発表論文
連因子がどのように関わっているか解析する目的で行っ
該当無
ている。本年度は、Hutchinson-Gilford Progeria 患者由来
細胞(HGPS fibroblasts)を用いて、放射線照射(X線)
により誘導された DSB に対する細胞修復能が、ヒト正常
細胞と HGPS 細胞で異なるかどうかを検討した。Liu ら
(Nature Medicine 11: 780-785, 2005)は、HGPS 細胞では
DSB の認識が遅く、特に 53BP1 蛋白質の repair foci への
集積が遅れるため、全般的な DSB 修復が遅いと報告して
いる。しかし、我々の解析では全般的な DSB 修復能につ
いては正常細胞と HGPS 細胞では差が見られず、その一
方でなかなか修復できない傷、つまり unrepairable DSB
(residual damages)が正常細胞と比べて有意に多くでき
てくることが明らかとなった(投稿準備中)。この分子機
構と、HGPS 原因遺伝子(核ラミン蛋白質)との関わりに
ついての解析を今後の課題として研究を継続している。
発表論文
なし
9
重点プロジェクト研究⑴
を申請した。
1-12
放射線によるゲノム構造変化に関する研究
研究組織
該当無し。
代 表 者:今井 高志
(放射線医学総合研究所、重粒子医科学セン
ター、先端粒子線生物研究プログラム・プ
ログラムリーダー)
共同研究者:道川 祐市
(放射線医学総合研究所、緊急被ばく医療研
究センター、緊急被ばく医療研究プログラ
ム・主任研究員)
石川 顕一
(放射線医学総合研究所、重粒子医科学セン
ター、先端粒子線生物研究プログラム・研
究員)
原医研受入研究者:飯塚 大輔
(放射線細胞応答研究分野・助教)
研究内容・研究成果・今後の展望等
(研究内容) 放射線を照射された細胞では DNA 損傷が生
じ、DNA 損傷修復や細胞周期調節、細胞死の制御などが
起こる。細胞内ではゲノムあるいはエピゲノムレベルの構
造変化が起き、これらの変化が生じた領域の近傍に存在す
る遺伝子発現に影響を与える可能性が考えられるが、詳細
は不明である。本研究では、放射線照射を受けた細胞にお
けるゲノム構造、エピゲノム構造の変化を、次世代シーケ
ンサーを利用してゲノム全体を塩基配列レベルの解像度に
て解析することを目的とした。
(研究成果) 本年度は、ヒト腫瘍由来培養細胞株の放射線
照射前後のゲノム DNA におけるメチル化修飾変化を、網羅
的に解析するための実験条件を検討した。具体的には、ヒ
ト膵癌由来培養細胞株 MIAPaCa-2 と PANC-1 に X 線 4Gy
あるいは炭素線 2Gy を照射し、照射前後でゲノム DNA の
メチル化が変化する領域を検出するための実験条件検討を
行った。実験には、広島大学原爆放射線医科学研究所に設
置されている次世代ゲノムシーケンサー GAIIx を用いた。
(今後の展望) これまでに我々は、上述した 2 種類の培養
細胞株で、放射線照射後に浸潤能が変化することを観察し
ている。今後は、本研究により決定した実験条件を用いて、
上述した 2 細胞株における、放射線応答浸潤能変化に関わ
る分子メカニズムの同定を目指す。本目的のために、平成
23 年度は新規共同利用・共同研究課題「ヒト腫瘍細胞の
放射線応答浸潤能変化に関与する分子メカニズムの解析」
10
発表論文
重点プロジェクト研究⑴
1-13
DNA 損傷部位へのリボヌクレオチド還元酵
素集積機構の解明
of cell division cycle 25A protein by TRB3. Biol Pharm
Bull. 33, 1112-1116(2010) (査読有り)
Niida, H., Katsuno, Y., Sengoku, M., Shimada, M.,
Yukawa, M., Ikura, M., Ikura, T., Kohno, K., Shima, H.,
研究組織
Suzuki, H., Tashiro, S., and *Nakanishi, M. Essential
代 表 者:中西 真
role of Tip60-dependent recruitment of ribonucleotide
(名古屋市立大学大学院医学研究科・教授)
reductase at DNA damage sites in DNA repair during
共同研究者:丹伊田 浩行
G1 phase. Genes and Dev. 24, 333-338(2010)
(査読有り)
(浜松医科大学医学部・准教授)
原医研受入研究者:田代 聡
(細胞修復制御研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
新たな発ガン防御機構として、DNA 修復過程における
適切な dNTPs を供給する機構を同定した。細胞内 dNTPs
濃度の制御は染色体 DNA の安定維持に重要であると考
えられていたが、dNTPs 供給の律速酵素であるリボヌク
レオチド還元酵素(RNR)が Tip60 ヒストンアセチル化
酵素依存的に DNA 損傷部位に集積することを明らかにし
た。さらに、損傷部位への RNR の集積が効率的な DNA
損傷修復に必須であることを明らかにした。
発表論文
Shimada, M., Haruta, M., Niida, H., Sawamoto, K., and
*Nakanishi, M. PP1g is a phosphatase responsible for
dephosphorylation of histone H3 at threonine 11 after
DNA damage. EMBO rep. 11, 883-889(2010) (査読有
り)
Niida, H., Shimada, M., Murakami, H., and *Nakanishi,
M. Mechanisms of dNTP supply that play an essential
role in maintaining genome integrity in eukaryotic cells.
Cancer Sci. 101, 2505-2509(2010) (査読有り)
Niida, H., Murata, K., Shimada, M., Ogawa, K., Ohta, K.,
Suzuki, K., Fujigaki, H., Khaw, A.K., Banerjee, B., Hande,
P.M., Miyamoto, T., Miyoshi, I., Shirai, T., Motoyama, N.,
Delhase, M., Appella, E., and *Nakanishi, M. Cooperative
functions of Chk1 and Chk2 reduce tumor susceptibility
in vivo. EMBO J. 29, 3558-3570(2010) (査読有り)
Murakami, H., Aiba, H., Nakanishi, M., and MurakamiTonami, Y. Regulation of yeast forkhead transcription
factors and FoxM1 by cyclin-dependent and polo-like
kinases. Cell Cycle 9, 3233-3242(2010) (査読有り)
Sakai, S., Ohoka, N., Onozaki, K., Kitagawa, M.,
Nakanishi, M., and Hayashi, H. Dual mode of regulation
11
重点プロジェクト研究⑴
1-14
複製後修復経路における DNA ポリメラー
ゼ Pol δの機能解析
発表論文
Huang QM, Tomida S, Masuda Y, Arima C, Cao K,
Kasahara TA, Osada H, Yatabe Y, Akashi T, Kamiya K,
Takahashi T, Suzuki M. Regulation of DNA polymerase
研究組織
POLD4 influences genomic instability in lung cancer.
代 表 者:鈴木 元
Cancer Res. 70:8407-8416, 2010.
(名古屋大学・大学院医学系研究科)
原医研受入研究者:神谷 研二
(分子発がん制御研究分野・教授)
増田 雄司
(分子発がん制御研究分野・助教)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は染色体2本鎖切断の発生を伴う発癌と DNA 複
製異常との関連を調べたものである。
我々は、肺癌組織 158 例の Microarray 解析の結果を用
いて、ゲノムインテグリティー関連遺伝子の mRNA 発現
プロファイルの検討を行った。その結果、POLD4 が、極
めて生物学的悪性度の高い小細胞癌で特異的発現低下を
示すことを見出した。POLD4 は DNA 複製に必須な因子、
DNA ポリメラーゼ Pol δのサブユニットの一つであると
報告されている。しかし、増殖の盛んな癌細胞で Pol δサ
ブユニットの発現低下があることは常識的には考えにく
い。そこで本当に POLD4 が Pol δのサブユニットである
かどうかを検証するため、POLD4 を含む Pol δおよび含
まない Pol δを発現精製しその活性を調べたところ、た
しかに後者において DNA 複製活性の著明な減少を観察し
た。この遺伝子のノックダウンを行い表現型を調べたとこ
ろ、DNA 修復能の低下・細胞周期の遅延・染色体断裂の
増加といった表現型を観察した。
また、この遺伝子の過剰発現下でノックダウン実験を
行い実験の特異性を調べたところ、全ての表現型につい
て相補を確認した。POLD4 の発現低下が臨床患者の予
後不良および既知の染色体インスタビリティーと極めて
高い相関を示すことより、POLD4 の発現低下が単なる
passenger 変化でないことが強く示唆された。興味深いこ
とに POLD4 の発現低下を示す肺癌細胞では放射線照射を
行わなくても染色体2本鎖切断発生頻度が亢進していた。
さらにこの染色体2本鎖切断発生頻度は、POLD4 の過剰
発現によって低下した。以上の結果は DNA 複製因子の一
つ POLD4 の減少がゲノムスタビリティーの低下を引き起
こし、発癌につながる経路の存在を示唆した。今後はノッ
クアウトマウスを作成することにより、この経路が実際に
肺癌発症に関与するか調べる必要がある。
12
重点プロジェクト研究⑴
して治療に難渋する症例も散見され、効果的な診断方法の
1-15
重症先天性好中球減少症における新規遺伝
子変異の同定
確立がよりよい治療法の開発につながると考えられる。責
任遺伝子の同定は根本的治療の選択の可能性となりうる
が、未知の責任遺伝子の同定には直接シーケンス法では限
研究組織
界があると考えられ、次世代シーケンサー(Illumina 社 代 表 者:小林 正夫
Genome Analyser 2)を併用した解析を行い、病態解明、
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科小児科
効果的診断、治療ガイドラインの確立へつなげていく。
学・教授)
共同研究者:小林 良行
発表論文
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科小児科
未発表
学・大学院生)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
(がん分子病態研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
小児期の好中球減少症は重症先天性好中球減少症
(SCN)と周期性好中球減少症(CyN)に代表される内因
性好中球減少症と免疫性好中球減少症を含む外因性好中球
減少症に大別される。好中球減少症は小児期より細菌や真
菌に対する易感染性の原因となり、特に SCN では感染症
の反復と同時に感染の重症化、慢性化が認められ、治療に
難渋する場合もある。G-CSF 製剤の投与により感染症に
対しての生命予後は改善されたが、長期の G-CSF 投与に
より骨髄異形成症候群や白血病への進展が報告されてお
り、近年では根治療法として造血幹細胞移植が行われてい
る。1999 年に好中球エラスターゼをコードする ELA2 遺
伝子のヘテロ接合性変異が SCN の半数例で同定され、以
後も 10 種類以上に及ぶ種々の責任遺伝子が明らかにされ
ている。SCN は種々の原因によりもたらされる疾患群と
考えられており、責任遺伝子を明らかにすることから、診
断方法及び治療法確立のための基盤整備を目的とした。
本研究では当院において診断された症例及び他施設より
紹介、検体提供を受けた症例について家族歴、経過、随伴
症状、治療経過などの臨床情報を収集し、これまでに特定
されていない遺伝子変異の探索のために次世代シーケン
サーを用いたシーケンスを施行した。収集された情報より、
多くの症例でこれまでに特定されている ELA2、HAX-1
の遺伝子変異を認めており、責任遺伝子が同定できていな
い 2 症例に関して、次世代シーケンサーを用いた網羅的解
析を行った。その結果、1 例で WAS 遺伝子の変異を同定
したが、機能解析を行っていく予定であり症状との関連性
は未だ不明である。今後、症例を増加するとともに解析
を継続することで、更なる成果が期待できると考えてい
る。本疾患は近年、生命予後が改善してきているが依然と
13
重点プロジェクト研究⑴
1-16
細胞ストレスに対する小胞体機能変化の解
析
研究組織
代 表 者:今泉 和則
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
共同研究者:近藤 慎一(同上 ・講師)
齋藤 敦 (同上 ・助教)
金本 聡自(同上 ・特任助教)
川崎 範隆(同上 ・研究員)
浅田 梨絵(同上 ・研究生)
岩本 秀雄(同上 ・大学院学生)
沖 真実 (同上 ・大学院学生)
宮城 秀幸(同上 ・大学院学生)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
(がん分子病態研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は、マウスに様々なストレス(低線量放射線照射
を含む)を与えた際の、小胞体機能変化を解析し、ストレ
ス応答経路の活性化分子機構を明らかにすることを目的と
する。今年度の研究成果を以下に示す。
小胞体ストレスセンサー OASIS および BBF2H7 欠損マウ
スのストレス応答解析:
遺伝子改変マウスに様々な細胞ストレスを負荷し、個体
あるいは培養細胞レベルで、小胞体ストレスセンサーの下
流で活性化する分子の同定を試みた。その結果、ストレス
負荷により小胞体ストレスセンサー BBF2H7 を欠損した
細胞では、細胞増殖が著しく低下した。BBF2H7 の転写ター
ゲットをスクリーニングした結果、転写因子 ATF5 を見
出した。ATF5 はアポトーシス抑制因子の MCL1 の発現
を促進することから、BBF2H7 遺伝子欠損により ATF5MCL1 経路が活性化されず、ストレスに脆弱になり、細胞
増殖が低下したものと考察された。今後は低線量放射線照
射による細胞増殖およびアポトーシスへの効果を調べる。
発表論文
1. Asada R, Kanemoto S, Kondo S, Saito A, Imaizumi
K.:The signaling from endoplasmic reticulum-resident
bZIP transcription factors involved in diverse cellullar
physiology. Journal of Biochemistry, 149:507-18, 2011.
2. Saito A, Ochiai K, Kondo S, Tsumagari K, Murakami
14
T, Cavener, DR, Imaizumi K.: ER stress response
mediated by the PERK-eIF2 α -ATF4 pathway is
involved in osteoblast differentiation induced by
BMP2. Journal of Biological Chemistry, 286:48094818 2011.
重点プロジェクト研究⑵
2-1
2-2
小型肺腺癌の悪性化に関する遺伝子発現の
網羅的解析
RELMb の代謝調節における役割
研究組織
研究組織
代 表 者:浅野 知一郎
代 表 者:伊藤 彰彦(近畿大学病理学・教授)
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
原医研受入研究者:岡田 守人
共同研究者:中津 祐介
(腫瘍外科研究分野・教授)
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・助教)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
研究内容・研究成果・今後の展望等
(がん分子病態研究分野・教授)
小型肺癌には胸部薄切 HR-CT 画像上すりガラス陰影
(ground-glass opacity:GGO)と非すりガラス陰影(Solid)、
研究内容・研究成果・今後の展望等
さらに両者の混在陰影がある。CT 画像上での GGO- 混在
RELMb は腸管およびマクロファージから分泌される
型 -Solid の流れは腫瘍病理学的には Atypical adenomatous
タンパクである。我々は、以前、RELMb を肝臓で過剰
hyperplasia(AAH)-Bronchioloalveolarcarcinoma(BAC)
発現するマウスを作成したところ、糖脂質代謝異常とイ
-Invasive adenocarcinoma(AD)の悪性化シークエンス
ンスリン抵抗性が引き起こされることを見出した。また、
に相当すると考えられる。小型肺腺癌の約 70%を占める
RELMb は腸管等における炎症に関与している可能性が高
混在型は悪性化シークエンスが実際に同一生体内で具体化
いと考えられた。
した理想的なモデルケースと捉えられる。小型肺腺癌の
そこで、我々は本共同研究において、通常マウスと
GGO/Solid 混在病変において進行癌成分と BAC 成分に強
RELMb ノックアウトマウスの間で、骨髄移植を行い、4
く関連する遺伝子発現を見出すために、以下の手順で実験
種類のマウス、すなわち、血球系あるいは腸管のいずれか
を行った。
一方のみを欠損するマウス、両方欠損するマウス、いずれ
(1)術前の薄切 HR- CT所見に基づき GGO/Solid 混在病
も発現するマウスを作成した。これらに、MCD を投与し、
変を有する小型肺腺癌症例を選定した。レーザー・マイ
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の発症を検討した。結
クロダイセクション法により混在病変内の BAC 成分と進
果として、NASH の発症には、両方の RELMb が必要で
行癌成分を構成する腫瘍細胞のみを選択的に採取し、全
あり、血球系あるいは腸管のいずれか一方の RELMb を欠
RNA を抽出した。
損するマウスでは NASH の発症が強く抑制されていた。
(2)得られた RNA を次世代シーケンサーで解析するこ
これらの結果から、腸管に作用し腸管上皮の RELMb の
とにより、各成分間での遺伝子発現を比較検討したが、明
発現を抑制する薬剤が NASH の治療薬として開発できる
らかな差が見いだせなかった。
可能性が示唆された。
発表論文
発表論文
なし。 未発表
15
重点プロジェクト研究⑵
発表論文
2-3
低線量放射線がゲノム DNA のメチル化状
態に及ぼす影響の評価研究
研究組織
代 表 者:齋藤 俊行
(放 射線医学総合研究所重粒子医科学セン
ター・室長)
共同研究者:森野 豊之
(広島大学原爆放射線医科学研究所・助教)
丸山 博文
(広島大学原爆放射線医科学研究所・准教授)
金井 昭教
(広島大学原爆放射線医科学研究所・特任助教)
臺野 和広
(放射線総合医学研究所放射線防護研究セン
ター・研究員)
原医研受入研究者:川上 秀史
(分子疫学研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
低線量電離放射線がさまざまな細胞機能に影響を及ぼす
可能性は長年にわたり議論が続いているものの機構論とし
ての裏付けデータは乏しい。特にエピジェネティック状態
への影響は不明である。
報告者らは本研究において、低線量放射線がゲノム
DNA のメチル化状態変化を惹起する可能性を探るために、
次世代 DNA シーケンサによるメチル化 DNA 断片の大規
模頻度解析とメチル化感受性制限酵素による DNA 断片鎖
長解析のふたつの解析を実施した。その結果どちらの解析
技術を用いた場合でも比較的低線量域(100 ミリグレイ)
の放射線曝露がゲノム DNA のメチル化量の変化を生じさ
せる知見を得た。このメチル化量変化を示すゲノム DNA
部位には減少するものと増加するものの両方が見出され
た。
報告者らは今後の研究における課題として、まず(1)別
途調製の試料をもちいて上記知見の再現性を確認するこ
と、(2)メチル化変化の線量依存性について幅広い低線量
域において調査すること、(3)メチル化変化と遺伝子発現
変化の関連を調査すること、(4)これらを総合して低線量
放射線がもたらす生体影響を考察することに取り組む予定
である。
16
未発表。ただし、データの一部を【原医研第1回国際シ
ンポジウム 2011 年 3 月】および【広島大学−長崎大学連
携カンファレンス 2011 年 6 月】にて発表した。
重点プロジェクト研究⑵
爆者体内の残留放射能を病理標本上に確認出来た結果」の
2-4
原爆被爆者に関するプルトニウムと内部被
曝の研究
学会発表を行い、マスメディアによる社会への反響は大き
かった。今後、放射能検出器を用いた核種の同定が必要で、
社会に発表できることを使命と考えている。
研究組織
代 表 者:七條 和子
発表論文
(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科原研病
1)七條和子、高辻俊宏、福本学、松山睦美、中島正洋、
理・助教)
中山敏幸、関根一郎 長崎原爆被爆者の剖検・パラフィ
共同研究者:中島 正洋
ン標本を用いた残留放射能の検出法―その2 広島医学
(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科原研病
会雑誌別冊 63(4):265-266, 2010
理・教授)
2) Matsuu M, Nakashima M, Shichijo K, Okaichi K,
原医研受入研究者:星 正治
Nakayama T, Sekine I. Basic fibroblast growth factor
(線量測定・評価研究分野・教授)
suppresses radiation-induced apoptosis and TP53
pathway in rat small intestine. Radiat Res 174:52-61, 2010
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は、人体内残留放射能の病理学的研究を行い、物
理学的に低線量プルトニウムを測定することである。原爆
被爆者における放射線障害は外部被曝線量によって厳密に
評価されている。しかしながら、外部被曝のみの範疇で入
市被爆者における染色体異常(鎌田他 2006)などの報告
を説明することは不可能で、内部被爆の人体に及ぼす重要
性が示唆される。長崎の原子爆弾はプルトニウム爆弾であ
る。1971 年、24 年経った長崎の土壌中から残留プルトニ
ウムが存在することが坂上らによって報告された。彼らは
物理学的半減期が 24000 年であるプルトニウムのアルファ
崩壊に伴う放射線量を測定した。一方、原爆被爆者につい
て人体内に放射性物質が残存することは報告されていな
い。我々は、長崎原爆被爆者病理標本の残留放射能をオー
トラジオグラフィー法で検出し、239Pu 特有のエネルギー
の確立分布とほぼ一致する結果を得ている。今回「広島・
長崎の線量評価」、「ウラングローバルフォールアウトと広
島原爆黒い雨」、「セミパラチンスク核実験周辺村落の土壌
中放射能汚染」など外部被曝・線量測定研究のメッカであ
る広島原医研でのプルトニウム測定の検討し、放射線が人
体に及ぼす内部被爆の影響を分子病理学的に解明するとい
う新領域に科学的証拠を提唱する。
研究成果:1)16th Hiroshima international symposium:
Hiroshima Black rain and other radiation studies.(Jan
12, 2011. at Hiroshima)2)Workshop on Dosimetry
Studies of Hiroshima Black Rain and Related Studies.
(Jan 13, 2011. at Hiroshima)3)1st RBRIM International
Symposium “Genome damage and non-cancerous
diseases”(March 3 to 4, 2011, at Hiroshima)で「原爆被
17
重点プロジェクト研究⑵
2-5
次世代 DNA シーケンサーを用いた鬱に関
わる転写因子 NPAS2 と BMAL1 の標的
遺伝子の探索
研究組織
代 表 者:内匠 透
(広島大学 医歯薬総合研究科・教授)
共同研究者:金井 昭教
(広島大学 原爆放射線医科学研究所・特任助教)
田ノ上 信太郎
(広島大学 医歯薬総合研究科・研究員)
原医研受入研究者:松井 啓隆
(がん分子病態研究分野・准教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
鬱や気分障害の分子メカニズムは不明であり、これを
明らかにすることは、脳機能の解明、精神疾患の治療に
つながることが期待できる。転写因子である NPAS2 と
BMAL1 のアミノ酸配列の違いにより、気分障害や季節性
鬱になりやすいことが、これまでに報告されている。
しかし、NPAS2 と BMAL1 の標的遺伝子は不明であっ
た。また、BMAL1 と NPAS2 は、生物時計機能発現に必
須の転写因子であり、この転写因子が標的とする遺伝子を
明らかにすることは、約 24 時間周期で生理リズムが生じ
る分子機構の解明の手がかりにもつながる。そこで本研
究では、BMAL1 と NPAS2 が標的とする遺伝子を ChIPDNA シークエンス(クロマチン免疫沈降 DNA 配列解析)
により、マウスの脳から同定を試みた。
BMAL1 が標的とする遺伝子として、Nup50(核輸送
蛋白質)、Kdm6b(リジン脱メチル化酵素)、Fam100a、
Dgat(Diacyl galctose transferase)、Rhebl1、Dbp1、
microRNA7a-1、period1、Rev-erb1 が、 見 い だ さ れ た。
これらの遺伝子のプロモータ領域には、BMAL1 が標的と
する配列、CACGTG、が含まれていた。NPAS2 について
は、抗体の力価が弱かったため、標的遺伝子の同定には至
らなかった。
今後の展望として、これらの標的遺伝子の脳における発
現部位、遺伝子発現の日周変動の解析、ノックアウトマウ
スの表現型を検討することで、鬱や気分障害が起こる仕組
みの解明につながる。特記すべきこととして、リジン脱メ
チル化酵素が BMAL1 の標的遺伝子として、見いだされ
たことから、エピジェネティクスと鬱や気分障害の関連が
示された。
18
発表論文
なし。
重点プロジェクト研究⑶
3-1
3-2
造血関連遺伝子改変マウスにおける造血細
胞分化・増殖能の解析
急性リンパ性白血病融合転写因子の標的遺
伝子解析
研究組織
研究組織
代 表 者:辻 浩一郎
代 表 者:黒澤 秀光(獨協医科大学医学部・准教授)
(東京大学・医科学研究所幹細胞プロセシン
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
グ分野・准教授)
(がん分子病態研究分野・教授)
共同研究者:馬 峰
(東京大学・医科学研究所幹細胞プロセシン
グ分野・特任研究員)
研究内容・研究成果・今後の展望等
急性リンパ性白血病の原因となるキメラ転写因子に関し
原医研受入研究者:本田 浩章
て、次世代シーケンサを用いた ChIP-seq アッセイをおこ
(疾患モデル解析研究分野・教授)
ない、その標的遺伝子の解析をおこなった。その結果アポ
トーシス制御因子である survivin を同定した。これらの
研究内容・研究成果・今後の展望等
結果は下記論文に発表した。今後も引き続き、このプロジェ
研究内容
クトを継続する。 受入研究者が作製・飼育した様々な造血遺伝子関連改変
マウスの造血組織(骨髄、脾臓、胸腺、リンパ節など)を
発表論文
分離し、flow cytometry やコロニー形成の手法を用いて
Okuya M., Kurosawa H., Kikuchi J., Furukawa Y., Matsui
その分化および増殖脳の変化について詳細な解析を行う。
H., Aki D., Matsunaga T., Inukai T., Goto H., Altura R. A.,
研究成果
Sugita K., Arisaka O., Look A. T., Inaba T. Upregulation
Runx1 IRES KO マウスの胎児肝において flow cytometry
of survivin by the E2A-HLF chimera is indispensable for
やコロニー形成をおこなうことにより、IRES 依存性の
the survival of t(17;19)-positive leukemia cells. J. Biol.
Runx1 発現が造血および血管形成に必須であることを明ら
Chem. 285: 1850-1860, 2010
かにした。
今後の展望
この共同研究により、初めて IRES 依存性の Runx1 発
現の生物学的意義が明らかとなった。今後も受入研究者が
作製した遺伝子改変マウスについて flow cytometry やコ
ロニー形成の手法を用いて共同研究を行うことにより、当
該遺伝子の生物学的機能が明らかになると考えられる。
発表論文(共同研究者を下線、受入研究者を 2 重下線)
Nagamachi A, Htun PW, Ma F, Miyazaki K, Yamasaki
N, Kanno M, Inaba T, Honda Zi, Okuda T, Oda H, Tsuji
K, and Honda H. A 5 ′ untranslated region containing
the IRES element in the Runx1 gene is required for
angiogenesis, hematopoiesis and leukemogenesis in a
knock-in mouse model. Dev Biol 345, 226-236, 2010
19
重点プロジェクト研究⑶
3-3
3-4
DNA 修復能力個人差とがん発生の相関解析
ATM 欠損の慢性骨髄性白血病悪性化への関
与の解析
研究組織
代 表 者:水谷 修紀
研究組織
(東京医科歯科大学医歯学総合研究科・教授)
代 表 者:高木 正稔
共同研究者:森尾 友宏
(東 京医科歯科大学大学院発生発達病態学・
講師)
(東京医科歯科大学医歯学総合研究科・准教授)
(東京医科歯科大学医歯学総合研究科・助教)
共同研究者:水谷 修紀
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
(東 京医科歯科大学大学院発生発達病態学・
教授)
(がん分子病態研究分野・教授)
佐藤 正樹
研究内容・研究成果・今後の展望等
(東 京医科歯科大学大学院発生発達病態学・
大学院生)
臨床的に DNA 修復能力に異常があると推察された小児
がん患者 2 例について、DNA 修復遺伝子発現レベルと遺
原医研受入研究者:本田 浩章
伝子異常の解析を次世代シーケンサを用いておこなった。
(疾患モデル解析研究分野・教授)
解析作業は現在も検討中であり、さらに症例数を増やして
研究を進める予定である。
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
発表論文
慢 性 骨 髄 性 白 血 病 は 融 合 遺 伝 子 p210BCR/ABL に よ
り発症する造血器悪性腫瘍である。臨床的には、分化傾
向を有する顆粒球系細胞が徐々に増加する慢性期を数年
経過した後に、不可避的に幼弱芽球が急激に増加する
急性白血病に似た病態に移行する(急性転化)。この共
同研究では、受入研究者が作製した慢性骨髄性白血病を
発症する p210BCR/ABL トランスジェニックマウスに、
DNA の 修 復 や 細 胞 周 期 の 制 御 に 関 わ る ATM(Ataxia
Telangiectasia Mutated)の欠損マウスを掛け合わせるこ
とにより、慢性骨髄性白血病の発症や急性転化における
ATM の役割について検討する。
研究成果
p210BCR/ABL トランスジェニックマウスにおこる白血
病の急性転化が ATM がヘテロに欠損することによって加
速されることが明らかとなった。このことは ATM のハプ
ロの機能不全で発がん感受性が規定されていることが示唆
され、毛細血管拡張性運動失調症保因者に疫学的に観察さ
れる、高発がん性を生物学的に裏付けることができた。
今後の展望
がん抑制分子としての ATM の機能と一般に存在する
ATM の遺伝的多型を持つ人、および発がん感受性との関
連を明らかにする糸口となると考えられる。
発表論文
なし
20
重点プロジェクト研究⑶
3-5
ヒトがんにおける発がん機序と悪性度規定
因子の解明
研究組織
が停止した。これらの遺伝子の遺伝子改変マウスの作成を
継続した。また、ヒト間葉系幹細胞に TERT を導入した
もののうち2株で、造腫瘍性が高い株が見出され、組織で
は悪性所見を示したが、分化能は維持されており、これら
の遺伝子解析を継続している。
代 表 者:檜山 英三
(広島大学自然科学研究支援開発センター・教授)
発表論文
共同研究者:外丸 祐介
Yamaoka E, Hiyama E, Sotomaru Y, et al:Neoplastic
(広島大学自然科学研究支援開発センター・准教授)
transformation by TERT in FGF-2-expandedhuman
信清 麻子
mesenchymal stem cells. Int J Oncol 39: 5-11, 2011
(広島大学自然科学研究支援開発センター・助教)
Kojima K, Hiyama E, Otani K, et al:Telomerase activation
山岡 絵美
without shortening of telomeric3'-overhang is a poor
(広島大学自然科学研究支援開発センター・研究員)
prognostic factor in human colorectal cancer. Cancer Sci
上松 瀬新(広島大学病院・助教)
102: 330-335,2011
佐藤 康成
(放射線影響研究所遺伝学部・研究員)
原医研受入研究者:檜山 桂子
(放射線医療開発研究分野・准教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は、ヒトにおける小児がん、成人がんの臨床検体、
それら由来の細胞株、さらに前がん病変を用いて、これら
の発癌とさらに悪性度を左右する因子を検討する目的で、
本年度は神経芽腫、肝芽腫を対象に、網羅的遺伝子異常の
解析、網羅的遺伝子発現解析を行い、化学療法感受性、治
療成績、生物学的悪性度、予後などの関連から、また、発
癌および悪性度規定因子の検討から、診断および治療の分
子標的を探索した。さらに、ヒトや間葉系幹細胞を用いて、
これらに TERT を導入し、増殖能、分化能、造腫瘍性の
検討を行ったものである。
小児がんの網羅的遺伝子解析では、細胞株から TERT
発現とサイドポピュレーションから得た幹細胞分画は、ス
フィンゴミエリンや AFP が抑制され、Nestin, c-kit, Bim-1
や Notch-1 の発現が上昇していた。一方、次世代シークエ
ンサーにがん幹細胞に特有の遺伝子変異を検索し、その候
補部位を 22 箇所同定した。現在、この変異箇所を詳細に
分析している。さらに候補ペプチドからのパスウェイ解析
を行い、既に解析済みの遺伝子変化や遺伝子発現変化から
のパスウェイと照合し、がん幹細胞に特有のパスウェイの
候補として Wnt シグナルと細胞増殖さらに Hedgehog 経
路が連動していた。神経芽腫がん幹細胞に特異的な発現亢
進した産物の遺伝子 2 個を細胞株にて siRNA でノックダ
ウンすると、一部で分化し、microRNA 解析データから
抑制されている遺伝子を導入すると分化とともに細胞増殖
21
重点プロジェクト研究⑶
3-6
3-7
有機天然化合物のアポトーシス誘導および
介入の作用機序解析
原爆被爆者血液塗抹検体及び細胞における
MicroRNA の発現解析
研究組織
研究組織
代 表 者:泉 俊輔(広島大学理学研究科・教授)
代 表 者:武井 佳史
共同研究者:増田 充志
(名古屋大学大学院医学系研究科 疾患モデル
(広島大学理学研究科・大学院生)
解析学・准教授)
原医研受入研究者:河合 秀彦・飯塚 大輔
共同研究者:小出 直史
(放射線細胞応答研究分野・助教)
(名古屋大学大学院医学系研究科 疾患モデル
解析学・大学院生)
研究内容・研究成果・今後の展望等
(日本学術振興会特別研究員 DC1)
カラタチ(Poncirus trifolaita)の果皮には抗腫瘍活性
林 妙
および抗肥満活性を持つ化合物、Auraptene が存在する。
(名古屋大学大学院医学系研究科 疾患モデル
本研究では、Auraptene 誘導体である長鎖アルキルクマ
解析学・研究補佐員)
リン類を合成し、ヒト白血病細胞株 Jurkat 細胞(p53 欠
大西 なおみ
損株)
、Nalm-6 細胞(p53 野生型)およびヒト結腸がん細
(名古屋大学大学院医学系研究科 疾患モデル
胞株 HCT116 細胞を用いて、合成した長鎖アルキルクマ
解析学・研究補佐員)
リン類による細胞死の誘導メカニズムを解析した。
原医研受入研究者:三原 圭一朗
そ の 結 果、 1) 長 鎖 ア ル キ ル ク マ リ ン 類 で あ る
(血液・腫瘍内科研究分野・助教)
7-Alkyloxycoumarin の 細 胞 死 誘 導 活 性 は 炭 素 鎖 長 に 依
存しており、炭素数 8 である化合物の活性が最も高いこ
研究内容・研究成果・今後の展望等
と、2)この細胞死は濃度依存的および時間依存的に進行
本研究は、原爆被爆者血液検体及び細胞から microRNA
すること、3)長鎖アルキルクマリン類の一種である 7-
(miRNA)を抽出する方法・技術を独自に確立し、さらに
(Octyloxy)- chromen-2-one は、ヒト白血病細胞株では
網羅的 miRNA 発現解析(アレイ)を行うことで、原爆被
Caspase-8 を介した経路でのアポトーシスを引き起こして
爆者に特徴的な miRNA 群を同定することを目的とする。
いることが明らかとなった。
現在までに血液細胞から miRNA を抽出する技術の確立に
成功しており、網羅的発現アレイ解析の準備中である。見
発表論文
出した miRNA 群の発現量変化と予後・特に発がん・血液
疾患発症との関係を見出していきたいと考えている。
発表論文
1. Nagano A, Ohno T, Shimizu K, Hara A, Yamamoto
T, Kawai G, Saitou M, Takigami I, Matsuhashi A,
Yamada K, Takei Y. EWS/Fli-1 chimeric fusion gene
up-regulates vascular endothelial growth factor-A. Int
J Cancer, 126:2790-2798(2010). [2010 年 6 月 ]
2. Mihara K, Yanagihara K, Takigahira M, Kitanaka A,
Imai C, Bhattacharyya J, Kubo T, Takei Y, Yasunaga
S, Takihara Y, Kimura A. Synergistic and persistent
effect of T-cell immunotherapy with anti-CD19 or antiCD38 chimeric receptor in conjunction with rituximab
on B-cell non-Hodgkin's lymphoma. Br J Haematol,
151:37-46(2010). [2010 年 10月]
22
重点プロジェクト研究⑶
3. Takei Y*, Takigahira M, Mihara K, Tarumi Y,
Yanagihara K. The metastasis-associated microRNA
miR-516a-3p is a novel therapeutic target for
inhibiting peritoneal dissemination of human scirrhous
3-8
コンディショナルノックアウトマウスを用
いた造血細胞における Wnt5a の機能解析
gastric cancer. Cancer Res, 71:1442-1453(2011). *,
研究組織
corresponding author. [2011 年 2 月 ]
代 表 者:菊池 章(大阪大学医学系研究科・教授)
4. Sakamoto K, Bu G, Chen S, Takei Y, Hibi K, Kodera
共同研究者:佐藤 朗(大阪大学医学系研究科・助教)
Y, MaCormick LM, Nakao A, Noda M, Muramatsu
原医研受入研究者:本田 浩章
T, Kadomatsu K. The premature ligand-receptor
(疾患モデル解析研究分野・教授)
interaction during biosynthesis limits the production of
growth factor midkine and its receptor LDL receptor-
研究内容・研究成果・今後の展望等
related protein 1(LRP1). J Biol Chem, 286:8405-8413
Wnt はリガンドとして機能する細胞外分泌蛋白質であ
(2011).[2011 年 3 月 ]
り、動物の発生に必須である。分泌された Wnt が細胞膜
5. Sawai A, Ito Y, Mizuno M, Suzuki Y, Toda S, Ito I,
上の受容体に結合した後に活性化される細胞内のシグナル
Hattori R, Matsukawa Y, Gotoh M, Takei Y, Yuzawa
伝達機構には、β- カテニン経路とβ - カテニン非依存性
Y, Matsuo S. Peritoneal macrophage infiltration is
経路が存在する。Wnt シグナルと炎症性疾患との関連に
correlated with baseline peritoneal solute transport
ついては、β- カテニン非依存性経路を活性化する Wnt5a
rate in peritoneal dialysis patients. Nephrol Dial
が慢性関節リウマチ患者の関節滑膜細胞で高発現している
Transplant, in press(2011).
ことが報告されているが、その意義については未だに判然
としない。一方、炎症性腸疾患は、持続または反復する粘
血便を伴う大腸における慢性非特異性炎症性疾患であり、
我が国において有病率は急増しているが、病因や病態に関
して不明な点が多い。
私共は Wnt5a により活性化されるシグナルと免疫応答、
炎症性疾患の関連を明らかにするために Wnt5a ノックア
ウト(KO)マウスを用いて解析を行っている。Wnt5a
KO ホモマウスは胎生致死であるため、Wnt5a KO ヘテロ
マウス(Wnt5a+/− )に腸管炎症を誘発するデキストラン
ナトリウム硫酸(DSS)を与え、野生型と比較検討した。
その結果、Wnt5a KO ヘテロマウスは DSS による体重減
少が野生型に比して抑制され、下痢や消化管出血等の病態
活性指標が軽度であることが判明した。また、Wnt5a KO
ヘテロマウスでは大腸粘膜層へのマクロファージや好中球
の浸潤が減少した。
既に Wnt5a コンディショナル KO(cKO)マウスを本田
教授との共同研究で作製していて、現在 Wnt5a cKO マウ
スを Mx-Cre マウス(造血組織特異的に Cre recombinase
を発現する)と交配させ、血球系にのみ Wnt5a が発現し
ていないマウスを作製している。今後これらのマウスを用
いて、DSS 依存性の腸管炎症の病態を対照マウスと比較
する予定である。
発表論文
1. Sato, A., Yamamoto, H., Sakane, H., Koyama, H., and
23
重点プロジェクト研究⑶
Kikuchi, A. Wnt5a regulates distinct signaling pathways
by binding to Frizzled2. EMBO J. 29, 41-54, January
2010
2. Sakane, H., Yamamoto, H., and Kikuchi, A.: LRP6 is
3-9
コンディショナルノックアウトマウスを用
いた血管形成における Cas の機能解析
internalized by Dkk1 to suppress its phosphorylation
研究組織
in the lipid raft and is recycled for reuse. J. Cell Sci.
代 表 者:高倉 伸幸(大阪大学・微生物研究所・教授)
123, 360-368, February 2010
共同研究者:木戸屋 浩康
3. Yamamoto, H., Oue, N., Sato, A., Hasegawa, Y.,
(大阪大学・微生物研究所・助教)
Matsubara, A., Yamamoto, H., Yasui, W., and Kikuch, A. 中岡 良和
Wnt5a signaling is involved in the aggressiveness of
(大阪大学大学院医学系研究科・助教)
prostate cancer and expression of metalloproteinase. 塩山 渉
Oncogene 29, 2036-2046, April 2010
(大阪大学大学院医学系研究科・大学院生)
4. Matsumoto, S, Fumoto, K. Okamoto, T. Kaibuchi,
K., and Kikuchi, A. Binding of APC and disheveled
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
mediates Wnt5a-regulated focal adhesion dynamics in
migrating cells. EMBO J. 29, 1192-1204, April 2010
5. Kikuchi, K., Niikura, Y., Kitagawa, K., and Kikuchi, A. 研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
Dishevelled, a Wnt signaling component, is involved in
Cas(Crk associated substrate)はアクチン制御を介し
mitotic progression with Plk1. EMBO J. 29, 3470-3483,
て細胞骨格形成の中心的役割を担うことにより、細胞分
October 2010
化、細胞増殖、細胞癌化など多彩な細胞機能に関わるアダ
6. Nishida, M., Itsukushima, S., Nomachi, A., Endo, M.,
プター分子である。しかし、Cas のノックアウトマウスは
Wang, Z., Inaba, D., Qiao, S., Takada, S., Kikuchi, A.,
胎生致死であるため、その成体における機能は不明のまま
and Minami, Y. Ror2/Frizzled complex mediates
である。この共同研究では、Cas のコンディショナルノッ
Wnt5a-induced AP-1 activation by regulating
クアウトマウスを作製し、血管内皮細胞特異的に Cas を
Dishevelled polymerization. Mol. Cell. Biol. 30, 3610-
欠失したマウスを作製することにより、Cas の血管形成に
3619, July 2010. おける機能解析を行う。
7. Kitagawa K, Kotake Y, Hiramatsu Y, Liu N, Suzuki S,
研究成果
Nakamura S, Kikuchi A, Kitagawa M. GSK3 regulates
Cas を血管内皮細胞特異的に欠失したマウスは正常に生
expression of human and mouse c-Myb via different
まれて来たが、解析の結果血管の構築、走行、および増殖
mechanisms. Cell division 5, 27, November 2010. 因子に対する反応に異常を有することが明らかとなった。
現在、その分子メカニズムについて解析を行っている。
今後の展望
血管内皮細胞において Cas を欠失したマウスを作製す
ることにより、血管形成における Cas の生物学的機能が
個体レベルで明らかになると期待される。特に、病的な血
管新生(特に腫瘍における血管新生)における Cas の役
割が明らかになれば、Cas を標的とした分子治療へと発展
する可能性が期待される。
発表論文
なし
24
重点プロジェクト研究⑶
3-10
3-11
トランスポゾンを用いたがん抑制遺伝子単
離の試み
コンディショナルノックアウトマウスを用
いた破骨細胞における p130Cas の機能解
析
研究組織
代 表 者:竹田 潤二
研究組織
(大阪大学大学院医学系研究科環境・生体機
代 表 者:自見 英治郎
能学・教授)
(九州歯科大学 分子情報生化学分野・教授)
共同研究者:堀江 恭二
共同研究者:永井 香絵
(大阪大学大学院医学系研究科環境・生体機
(九 州歯科大学 口腔機能発達学分野・大学
能学・准教授)
院生)
原医研受入研究者:本田 浩章
牧 憲司
(疾患モデル解析研究分野・教授)
(九州歯科大学 口腔機能発達学分野・教授)
原医研受入研究者:本田 浩章
研究内容・研究成果・今後の展望等
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容
腫瘍の原因遺伝子としてこれまで多くのがん遺伝子が単
研究内容・研究成果・今後の展望等
離されてきたが、がん抑制遺伝子についてはまだ不明の点
【研究の概要】大理石骨病を呈する Receptor Activator of
が多い。この共同研究では、マウス個体にトランスポゾン
NF-κB Ligand(RANKL)や c-Fos などの遺伝子欠損マ
の系を応用し、さらに染色体安定性に関与する Bloom 遺
ウスの多くは破骨細胞の分化障害に起因するものが多い。
伝子の誘導型変異体を用いることにより、両方の allele に
p130Cas はアクチン制御を介して細胞骨格形成の中心的役
おいてトランスポゾンが挿入された遺伝子を欠失させ、そ
割を担うアダプタータンパク質であり、これ迄の我々の研
の表現型の変化から新規がん抑制遺伝子を単離する。
究結果より、p130Cas は破骨細胞の骨吸収能に重要な役割
研究成果
を担っていると考えらている。しかし、p130Cas の遺伝子
トランスポゾンのトランスジェニックマウスに共同研究
欠損マウスが心血管形成不全により胎生早期に致死となる
者から供与されたトランスポゼースのノックインマウスを
ため、その成体における機能は不明のままである。本研究
掛け合わせ、トランスポゾンが染色体の様々な遺伝子領域
は、破骨細胞特異的に p130Cas を欠失した p130Cas のコ
に転移するマウスを作製する。さらに、このトランスポゾ
ンディショナルノックアウトマウス(p130Cas cKO)を作
ンによる遺伝子変異を両 allele 性にするために、誘導可能
製することにより、p130Cas の破骨細胞における機能解析
ににより Bloom 遺伝子が不活化するトランスジェニック
を行うことを目的とする。
マウスを掛け合わせ、表現型の変化を検討した。現在まで
【結果】⑴マウス骨髄細胞に野生型 p130Cas と、p130Cas
表現型の変化は認められていないため、これらのマウス
の活性化に重要な SH3 ドメインを欠失したドミナントネ
と慢性骨髄性白血病を発症する p210BCR/ABL トランス
ガティブ型 p130Cas(p130Cas DN)をレトロウィルスベ
ジェニックマウスに掛け合わせ、観察を行っている。
クターで遺伝子導入し、マクロファージコロニー刺激因子
今後の展望
(M-CSF)存在下で3日間培養し、破骨細胞前駆細胞を誘
トランスポゾンのマウス、トランスポゼースのマウス、
導した。さらに3日間、M-CSF および RANKL 存在下で
および誘導可能に Bloom 遺伝子活性を抑制するマウスを
培養し、破骨細胞を誘導すると p130Cas DN を導入した
掛け合わせ、さらに p210BCR/ABL トランスジェニック
破骨細胞では、破骨細胞の骨吸収の指標となるアクチンチ
マウスに掛け合わせることにより、新規がん抑制遺伝子の
ンリング形成が抑制された。同様にテトラサイクリン依存
単離を試みる。このアッセイにより、新たながん抑制遺伝
性に破骨細胞で p130Cas をノックダウンすると、アクチ
子の同定が期待される。
ンリング形成が抑制された。
⑵ p130Cas flox マウスと破骨細胞特異的に Cre を発現す
発表論文
るカテプシン K–Cre ノックインマウスと交配し、p130Cas
なし
cKO マウスを作製した。p130Cas cKO マウスは野生型マ
25
重点プロジェクト研究⑶
ウスと比較して成長障害は認められなかった。しかし、軟
X 線写真を撮影したところ、野生型マウスと比較して骨
端部の X 選不透過像と骨密度の僅かな上昇が認められた。
また、p130Cas cKO マウス由来の骨髄細胞を M-CSF およ
び RANKL 存在下で培養すると、アクチンリングを持た
ない破骨細胞が形成された。
【今後の展望】現在、p130Cas cKO を繁殖している段階で
あり、今後解析するマウスの匹数を増やし、p130Cas cKO
3-12
ノックアウトマウスを用いた、IRES を介
した Runx1 遺伝子産物の発現およびその
生物学的機構の解析
研究組織
代 表 者:奥田 司
(京都府立大学・医学研究科(分子生化学)・
教授)
マウスの詳細な骨形態計測をおこなう。さらに p130Cas
cKO 由来の細胞を用いて、骨吸収における p130Cas の役
共同研究者:塩見 知子
割を分子レベルで解明する。
(京都府立大学・医学部(分子生化学部門)・
研究員)
発表論文
原医研受入研究者:本田 浩章
なし
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
Runx1 は造血発生および血管発育に必須の転写因子で
ある。Runx1 は、プロモーターによる転写レベルでの制
御機構と、IRES(internal ribosomal entry site)を介し
た翻訳レベルでの制御機構が知られているが、その生体に
おける機能は明らかではない。この共同研究では、IRES
特異的な Runx1 のノックアウトマウスを作製し解析する
ことにより、Runx1 の IRES による発現の生物学的意義を
解明する。
研究成果
IRES 特異的な Runx1 のノックアウトマウスを解析し、
IRES 依存性の Runx1 の発現は胎生期の造血および血管形
成に必須であることを証明した。
今後の展望
近年、IRES を介した翻訳はがん細胞の増殖や浸潤に重
要な役割を果たしていることが報告されており、この結果
は IRES を標的とした分子治療法へと発展される可能性も
期待される。
発表論文(共同研究者を下線、受入研究者を 2 重下線)
Nagamachi A, Htun PW, Ma F, Miyazaki K, Yamasaki
N, Kanno M, Inaba T, Honda Zi, Okuda T, Oda H, Tsuji
K, and Honda H. A 5′ untranslated region containing
the IRES element in the Runx1 gene is required for
angiogenesis, hematopoiesis and leukemogenesis in a
knock-in mouse model. Dev Biol 345, 226-236, 2010.
26
重点プロジェクト研究⑶
3-13
3-14
マイクロアレイを用いた造血幹細胞におけ
るヒストン脱リン酸化酵素 Fbxl10 の機能
解析
骨髄移植を用いた造血幹細胞におけるヒス
トン脱リン酸化酵素 Fbxl10 の機能解析
研究組織
研究組織
代 表 者:岩間 厚志
代 表 者:須田 年生
(千葉大学大学院医学研究院細胞分子医学・教授)
(慶應義塾大学医学部坂口光洋記念講座・教授)
共同研究者:小沼 貴晶
共同研究者:田久保 圭誉
(千 葉大学大学院医学研究院細胞分子医学・
大学院生)
(慶應義塾大学医学部坂口光洋記念講座・助教)
原医研受入研究者:本田 浩章
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
研究内容
造血細胞においては、様々な遺伝子が協調して機能する
造血細胞においては、様々な遺伝子が協調して機能する
ことにより、造血幹細胞の複製と分化の過程を司り、造血
ことにより、造血幹細胞の複製と分化の過程を司り、造血
系の恒常性を維持しているが、各々の遺伝子の生物学的機
系の恒常性を維持しているが、各々の遺伝子の生物学的
能については不明の点が多い。この共同研究では、造血幹
機能については不明の点が多い。この共同研究では、造
細胞で発現しているヒストン脱リン酸化酵素である Fbxl10
血幹細胞で発現しているヒストン脱リン酸化酵素である
のトランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスを
Fbxl10 のトランスジェニックマウスおよびノックアウト
作製し、これらのマウスから造血幹細胞を単離してマイク
マウスを作製し、これらのマウスの造血細胞を用いて骨髄
ロアレイを行なう事により、Fbxl10 の発現上昇および欠
移植を行なう事により、Fbxl10 の発現上昇および欠失に
失による遺伝子発現変化について網羅的に解析する。
よる造血系再構築能の変化について解析する。
研究成果
研究成果
Fbxl10 のトランスジェニックマウスおよびノックアウ
Fbxl10 のトランスジェニックマウスおよびノックアウ
トマウスの造血幹細胞を単離して cDNA を作製し、東レ
トマウスの造血幹細胞を用いて骨髄移植を行った結果、2
との共同研究によりマイクロアレイを行なった。トランス
次移植においてトランスジェニックマウス由来の造血幹細
ジェニックマウスおよびノックアウトマウスの造血幹細胞
胞移植マウスは骨髄球系および B リンパ球系のキメラ率
で発現が変化している遺伝子が複数同定され、その機能解
の上昇を示し、ノックアウトマウス由来の造血幹細胞移植
析を行っている。
マウスは同系統のキメラ率の低下を示した。
今後の展望
今後の展望
ヒストン脱リン酸化である Fbxl10 のトランスジェニッ
Fbxl10 は造血幹細胞の増殖に有意に関与していると考
クマウスおよびノックアウトマウスの造血幹細胞における
えられる。この結果はヒストン修飾の見地から造血幹細胞
遺伝子発現変化を詳細に、また網羅的に解析することによ
増殖の分子機構に新たな知見を与えることが期待される。
り、ヒストン修飾の見地から造血幹細胞維持および増殖の
分子機構に新たな知見を得ることが出来ると期待される。
発表論文
なし
発表論文(共同研究者を下線、受入研究者を 2 重下線)
Honda H, Takubo K, Oda H, Kosaki K, Tazaki T, Yamasaki
N, Miyazaki K, Moore KA, Honda ZI, Suda T, Lemischka
IR. Hemp, an mbt domain-containing protein, plays essential
roles in hematopoietic stem cell function and skeletal
formation. Proc Natl Acad Sci USA 108, 2468-2473, 2011.
27
重点プロジェクト研究⑶
2. Miyazaki K, Miyazaki M, Guo Y, Yamasaki N, Kanno
3-15
遺伝子改変マウスの組織病理学的解析
M, Honda Zi, Oda H, Kawamoto H, and Honda H. The
role of the basic helix-loop-helix transcription factor
研究組織
Dec1 in the regulatory T cells. J Immunol 385, 7330-
代 表 者:小田 秀明
7339, 2010
(東 京女子医科大学・医学系研究科病理学
(二)・教授)
3. Nagamachi A, Htun PW, Ma F, Miyazaki K, Yamasaki
N, Kanno M, Inaba T, Honda Zi, Okuda T, Oda H,
原医研受入研究者:本田 浩章
Tsuji K, and Honda H. A 5′ untranslated region
(疾患モデル解析研究分野・教授)
containing the IRES element in the Runx1 gene
is required for angiogenesis, hematopoiesis and
研究内容・研究成果・今後の展望等
leukemogenesis in a knock-in mouse model. Dev Biol
研究内容
345, 226-236, 2010
遺伝子改変マウスにおいてはその遺伝子機能に応じて
4. Tazaki T, Sasaki T(These two authors contributed
様々な表現型(胎生致死、微細な器官形成不全から腫瘍発
equally to this work), Uto K, Yamasaki N, Tashiro
症に至るまで)が認められる。この共同研究では、受入研
S, Sakai R, Tanaka M, Oda H, Honda Zi, and Honda
究者が作製した様々な遺伝子改変マウスについて、組織病
H. p130Cas plays essential roles in liver development
理学的手法を用いて解析を行ない、表現型発症についての
by regulating sinusoidal endothelial cell fenestration.
原因解明を行なう。
Hepatology 52, 1089-1099, 2010
研究成果
5. Yamasaki N, Miyazaki K, Nagamachi A, Koller R, Oda
受入研究者が作製した遺伝子改変マウスの中から、興
H, Miyazaki M, Sasaki T, Honda Zi, Wolff L, Inaba
味ある表現型を呈したマウスについて共同研究で組織病
T, and Honda H. Identification of Zfp521/ZNF521 as
理学的解析を行う。本年度は、E2A/HLF inducible ノッ
a cooperative gene for E2A-HLF to develop acute
クインマウス、Cas の exon2 特異的ノックアウトマウス、
B-lineage leukemia. Oncogene 29, 1963-1975, 2010
Runx1 IRES ノックアウトマウス、Dec1 トランスジェニッ
クマウスおよびノックアウトマウス、Hemp ノックアウト
マウスについて共同で解析を行い、以下の発表論文に示す
成果を得て発表した。
今後の展望
マウスの胎児発生、臓器形成、および腫瘍発症において
幅広く体系的な知識を有する組織病理学者と共同研究を行
い、自らの教室では困難である様々な専門的な手法を用い
て解析を行ってもらうことにより、いかなる原因によりそ
の表現型を呈したかということに形態学の見地からの知見
を得ることが出来る。これらの結果は、さらにその基礎に
ある分子機構解析に発展するための重要な情報となりうる
ため、今後も共同研究を継続する予定である。
発表論文(共同研究者を下線、受入研究者を 2 重下線)
1. Honda H, Takubo K, Oda H, Kosaki K, Tazaki T,
Yamasaki N, Miyazaki K, Moore KA, Honda ZI, Suda
T, Lemischka IR. Hemp, an mbt domain-containing
protein, plays essential roles in hematopoietic stem
cell function and skeletal formation. Proc Natl Acad
Sci USA 108, 2468-2473, 2011
28
重点プロジェクト研究⑶
3-16
Flt1 の慢性骨髄性白血病発症機構への関与
の解析
発表論文
なし
研究組織
代 表 者:丸 義朗
(東京女子医科大学医学部薬理学教室・主任教授)
共同研究者:櫻井 佳子
(東京女子医科大学医学部薬理学教室・助教)
平塚 佐千枝
(東京女子医科大学医学部薬理学教室・准教授)
塚原 富士子
(東京女子医科大学医学部薬理学教室・講師)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
慢性骨髄性白血病は融合遺伝子 p210BCR/ABL により
発症する造血器悪性腫瘍である。臨床的には、分化傾向を
有する顆粒球系細胞が徐々に増加する慢性期を数年経過し
た後に、不可避的に幼弱芽球が急激に増加する急性白血病
に似た病態に移行する(急性転化)。急性転化については、
2 次的遺伝子異常の関与が示唆されているが、その機構は
不明の点が多い。この共同研究では、受入研究者が作製し
た慢性骨髄性白血病を発症する p210BCR/ABL トランス
ジェニックマウスに、受容体型チロシンキナーゼである
Flt1(fms-related tyrosine kinase 1)の細胞内チロシンキ
ナーゼドメインのみを欠失した Flt1-TK ノックアウトマ
ウスを掛け合わせることにより、慢性骨髄性白血病急性転
化における Flt1 の役割について検討した。
p210BCR/ABL ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス と Flt1-TK
ノックアウトマウスを掛け合わせた p210BCR/ABL トラン
スジェニック / Flt1-TK ノックアウトマウスから定期的に
末梢血を採取し、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、
血小板数の測定を行い、また白血球におけるリンパ球、顆
粒球の割合を調べて慢性骨髄性白血病の病態の解析を行っ
た。その結果、通常の p210BCR/ABL トランスジェニック
マウスと比較して、Flt1-TK ノックアウトマウスと掛け合
わせたことによる病態の変化は認められなかった。これら
の結果から、Flt1 の細胞内チロシンキナーゼ活性は慢性骨
髄性白血病の発症や悪性化には関与しない可能性が示唆さ
れた。今後はさらに、申請者の所有する他のノックアウト
マウス等との掛け合わせを行うことにより、慢性骨髄性白
血病の分子機構に新たな知見をもたらすものと考えられる。
29
重点プロジェクト研究⑶
発表論文
3-17
コンディショナルノックインマウスを用い
た変異型 Cbl の機能解析
研究組織
代 表 者:小川 誠司
(東京大学医学部キャンサーボード・特任准教授)
共同研究者:真田 昌
(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプ
ロジェクト・特任助教)
滝田 順子
(東京大学医学部附属病院無菌治療部・講師)
松原 亜以子
(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプ
ロジェクト・特任研究員)
加藤 元博
(東京大学大学院医学系研究科・大学院生)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
Cbl は造血細胞の増殖に関わる E3 ubiquitin ligase であ
る。近年申請者は、骨髄性白血病で高頻度にこの遺伝子が
変異していることを見いだした。この共同研究では、変異
型 Cbl を後天性に誘導可能に発現するコンディショナル
ノックインマウスを作製し解析する事により、腫瘍化にお
けるこの遺伝子変異の役割を検討する。
研究成果
変異型 Cbl のコンディショナルノックインマウスを作
製し、現在造血細胞で誘導可能に発現するために Cre マ
ウスとの交配を行っている。現在、変異型 Cbl のコンディ
ショナルノックインがヘテロで Cre(+)のマウスが得ら
れており、もう一度の交配で変異型 Cbl のコンディショナ
ルノックインがホモで Cre(+)の目的マウスが得られる
予定である。目的マウスが得られたら誘導を行い、変異型
Cbl が発現していることを確認し、表現型の解析を行う。
今後の展望
後天性に変異型 Cbl を発現するコンディショナルノックイ
ンマウスを作製することにより、Cbl 変異が造血細胞の分化、
増殖に与える影響を解析する。マウスに当該疾患が発症す
ればこの変異が疾患の原因遺伝子であることを証明出来る
とともに、疾患発症の過程を解析することにより、白血病
発症の分子機構に新たな知見をもたらすことが期待される。
30
なし
重点プロジェクト研究⑶
を証明出来るとともに、悪性リンパ腫発症の分子機構に新
3-18
コンディショナルノックアウトマウスを用いた
造血器腫瘍発症における A20(TNFAIP3)
の機能解析
たな知見をもたらすと期待される。
発表論文
なし
研究組織
代 表 者:小川 誠司
(東京大学医学部キャンサーボード・特任准教授)
共同研究者:滝田 順子
(東京大学医学部附属病院無菌治療部・講師)
真田 昌
(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプ
ロジェクト・特任助教)
松原 亜以子
(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプ
ロジェクト・特任研究員)
加藤 元博
(東京大学大学院医学系研究科・大学院生)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
A20(TNFAIP3)は NFkB 経路に関わる情報伝達因子
にである。近年申請者は、悪性リンパ腫で高頻度にこの遺
伝子が欠失していることを見いだした。A20 のノックア
ウトマウスは生後間もなく死亡するので、悪性リンパ腫
発症における A20 の役割は不明である。この共同研究で
は、A20 のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、
造血系で A20 を欠失させることにより、この遺伝子の欠
損が悪性リンパ腫を含めた造血器腫瘍発症に果たす役割を
検討する。
研究成果
A20 のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、
このマウスを造血系で Cre を発現する様々なトランスジェ
ニックマウスとの交配を行った。現在 A20 コンディショ
ナル、Cre(+)のマウスが得られており、目的造血系統
で A20 の欠失を確認すると共に、表現型の解析を行って
いる。
今後の展望
造血系において A20 を欠失するコンディショナルノッ
クアウトマウスを作製することにより、A20 欠損が造血
細胞の分化、増殖に与える影響を解析する。マウスに当該
疾患が発症すればこの変異が疾患の原因遺伝子であること
31
重点プロジェクト研究⑶
発表論文
3-19
トランスジェニックマウスおよびノックイ
ンマウスを用いた変異型 ALK の機能解析
研究組織
代 表 者:小川 誠司
(東京大学医学部キャンサーボード・特任准教授)
共同研究者:滝田 順子
(東京大学医学部附属病院無菌治療部・講師)
真田 昌
(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプ
ロジェクト・特任助教)
松原 亜以子
(東京大学医学部附属病院がんゲノミクスプ
ロジェクト・特任研究員)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
ALK(anaplastic lymphoma kinase)はもともと(2;5)
転座を有する造血器腫瘍から単離されたチロシンリン酸化
酵素である。近年申請者は、小児腫瘍である神経芽細胞
腫および Ewing 肉腫において、この遺伝子が高頻度に変
異していることを見いだした。この共同研究では、変異型
ALK を発現するトランスジェニックマウスおよびノック
インマウスを作製することにより、この遺伝子の疾患発症
における役割を検討する。
研究成果
変異型 ALK のトランスジェニックマウスは研究代表者
および共同研究者に送付し、先方で解析を行っており、変
異型 ALK のノックインマウスについては受入研究者側で
解析を行っている。変異型 ALK のノックインマウスは生
後約 1 年間観察を行っているが、これまで神経芽細胞腫の
発症は認められていない。目的遺伝子発現を確認すると共
に、神経芽細胞腫の発症に 2 次的遺伝子異常の関与が必要
かどうかに付いても検討を行う予定である。
今後の展望
変異型 ALK のトランスジェニックマウスおよびノック
インマウスを作製することにより、マウスに当該疾患が発
症すればこの変異が疾患の原因遺伝子であることを証明出
来る。また、疾患発症の過程を解析し、どの様な分子メカ
ニズムにより疾患発症に至るかを解析することにより、こ
の分子を標的とした分子治療法への発展も期待される。
32
なし
重点プロジェクト研究⑶
3-20
3-21
コンディショナルノックアウトマウスを用いた
自己免疫疾患発症における A20(TNFAIP3)
の機能解析
トランスジェニックマウスを用いた減数分
裂に関与する遺伝子 SCP3 の機能解析
研究組織
研究組織
代 表 者:宮川 清
代 表 者:本田 善一郎
(東京大学大学院医学系研究科・教授)
(東京大学医学部附属病院アレルギーリウマ
共同研究者:細谷 紀子
チ内科・講師)
(東京大学大学院医学系研究科・助教)
原医研受入研究者:本田 浩章
榎本 敦
(疾患モデル解析研究分野・教授)
(東京大学大学院医学系研究科・助教)
原医研受入研究者:本田 浩章
研究内容・研究成果・今後の展望等
(組織再生制御研究分野・教授)
研究内容
A20(TNFAIP3)は NFkB 経路に関わる情報伝達因子
研究内容・研究成果・今後の展望等
にであり、近年関節リウマチや全身性エリテマトーデスな
SYCP3(SCP3)は、減数分裂期に形成されるシナプト
どの自己免疫疾患との関連が報告されている。A20 の単
ネマ複合体の構成蛋白質であり、その発現は生殖細胞に限
純ノックアウトマウスは生後間もなく死亡するので、成
られるものと考えられていた。しかし、ヒトの各種がん細
体における A20 の役割は不明である。この共同研究では、
胞株では低レベルで発現していることが判明し、また同
A20 のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、免
様の結果が他の研究グループよりも報告されていることか
疫系で A20 欠失させることにより、この遺伝子の欠損が
ら、この分子は体細胞では正常細胞には発現せず、がんの
自己免疫疾患発症に果たす役割を検討する。
みに発現する、いわゆるがん精巣抗原の一つであるものと
研究成果
考えられる。
A20 のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、
この SYCP3 は、培養細胞においては、DNA 二重鎖切
このマウスを免疫系で Cre を発現する lckCre トランス
断に対する修復機構の一つである相同組換えの機能を低下
ジェニックマウスとの交配を行った。現在 A20 コンディ
させることを我々は明らかにした。その結果として、放射
ショナル、Cre(+)のマウスが得られており、目的造血
線などの DNA 切断作用に対して、細胞の修復機能が低下
系統で A20 の欠失を確認すると共に、表現型の解析を行っ
するために、DNA 損傷感受性が亢進するとともに、染色
ている、
体の不安定性が誘導されるものと考えられる。SYCP3 の
今後の展望
発現の機序としては低メチル化が想定されているために、
免疫系において A20 を欠失するコンディショナルノッ
エピジェネティックな原因による発現異常が、修復機能を
クアウトマウスを作製することにより、A20 欠損が免疫
阻害することによって、染色体不安定性を誘導して、がん
担当細胞の機能に与える影響を解析し、自己免疫疾患発症
発症のリスクが増加することが想定されている。
における A20 の役割が明らかになると期待される。
この仮説を動物レベルで証明するために、強制的に
SYCP3 を発現させたトランスジェニックマウスを作製し
発表論文
た。CAG プロモーターでは、全身のどこでも SYCP 3が
なし
発現し、LCK プロモーターでは胸腺特異的な発現が期待
される。この 2 種類のプロモーターを用いてマウスを作製
することに成功した。これらのマウスを観察しているが、
現時点ではがん発症による死亡率の増加は明らかでない。
そのために、放射線や化学変異原に暴露することによって
DNA 損傷を誘発して、SYCP3 のマウス個体への影響の観
察も開始している。このような研究によって、SYCP3 の
発がんへの関与が明らかになることが期待される。
33
重点プロジェクト研究⑶
発表論文
なし
3-22
足細胞特異的 Cas ノックアウトマウスを用い
た糸球体上皮細胞における Cas の機能解析
研究組織
代 表 者:渡邉 秀美代
(東京大学疾患生命工学センター・研究員)
共同研究者:鄭 雄一
(東京大学大学院医学系研究科臨床医工学教
室・教授)
南学 正臣
(東 京大学医学部附属病院腎臓内分泌内科・
講師)
藤田 敏郎
(東京大学医学部附属病院腎臓内分泌内科・教授)
内田 俊也
(帝京大学附属病院腎臓内科・教授)
本田 善一郎
(東京大学医学部附属病院アレリウ内科・講師)
波田野 典子
(東京大学大学院医学系研究科臨床医工学教
室・大学院生)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
Cas はアクチン制御を介して細胞骨格形成の中心的役割
を担うことにより、細胞分化、細胞増殖、細胞癌化など
多彩な細胞機能に関わるアダプター分子である。しかし、
Cas のノックアウトマウスは胎生致死であるため、その成
体における機能は不明のままである。この共同研究では、
Cas のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、糸
球体上皮細胞(足細胞)特異的に Cas を欠失したマウス
を作製することにより、Cas の糸球体上皮細胞における機
能解析を行うことを目的とする。
研究成果
Cas を糸球体上皮細胞特異的に欠失したマウスは正常に
生まれて来た。コントロールマウスと共に糸球体の病理学
的解析や尿タンパクの解析など行ったが、特に差は認めら
れなかった。Cas の類似分子である CasL が Cas 欠失を代
償している可能性があり、今後 CasL ノックアウトマウス
との掛け合わせについて検討を行っている。
34
重点プロジェクト研究⑶
今後の展望
今回の解析では明らかな表現型は認められなかったが、
CasL のノックアウトマウスの掛け合わせにより表現型が
出る可能性が考えられる。その場合、糸球体腎炎や膜性腎
症などのモデルマウスになる可能性も考えられる。
3-23
トランスジェニックマウスを用いた小脳失
調症における PKC 変異体の機能解析
研究組織
代 表 者:酒井 規雄
発表論文
(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科・教授)
なし
共同研究者:関 貴弘
(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科・助教)
秀 和泉
(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科・助教)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
プロテインキナーゼ C(PKC)γ分子種(γ PKC)の
変異で遺伝性小脳失調症14型(SCA14)が起こること
が知られている。この共同研究では、小脳特異的なプロモー
ターを用いて、γ PKC の変異体を誘導可能に発現するト
ランスジェニックマウスを作製することにより、当該変異
体が小脳失調症の原因遺伝子であるかどうかを検討し、併
せて病態生理の解析を行なうことを目的としている。
現在、数ラインのトランスジェニックマウスの系統が作
成され、表現型の経過観察中である。
SCA14 の病態生理に関する研究では、2糖類のトレハロー
スが SCA14 を引き起こす変異γ PKC の凝集や細胞毒性
を軽減させることを報告した。今後、SCA14 の候補薬物
の効果を、作成中のトランスジェニックマウスで検討した
いと考えている。
発表論文
(1)Toyohira, Y., Ueno, S., Tsutsui, M., Itho, H., Sakai,
N., Saito, N., Takahashi, K. and Yanagihara, N.
Stimulatory effects of the soy phytoestrogen genistein
on noradrenalin transporter and serotonin transporter
activity. Mol. Nurt. and Food Res. 54(2010)516-24.
(2)Y amamoto, K., Seki, T., Adachi, N., Takahashi, T.
Tanaka, S., Hide, I., Saito, N. and Sakai, N. Mutant
protein kinase C gamma that causes spinocerebellar
ataxia type 14(SCA14)is selectively degraded by
autophagy. Genes to Cells 15(2010)425-437
(3)Seki, T., Abe-Seki, N., Kikawada, T., Takahashi, H.,
Yamamoto, K., Adachi, N., Tanaka, S., Hide, I., Saito, N.
and Sakai, N.The effect of trehalose on the properties
35
重点プロジェクト研究⑶
of mutant
γ PKC, which causes spinocerebellar
ataxia type 14(SCA14), in neuronal cell lines and
cultured Purkinje cells. J Biol. Chem. 285(2010)
33252-33264
(4)S eki, T., Takahashi, H., Yamamoto, K., Ogawa,
3-24
トランスジェニックマウスおよびノックア
ウトマウスを用いた転写因子 DEC1 の機能
解析
K., Onji, T., Adachi, N., Tanaka, S., Hide, I., Saito,
研究組織
N. and Sakai, N. Congo red, an amyloid-inhibiting
代 表 者:菅野 雅元
compound, alleviates various cellular dysfunction
(広島大学・大学院医歯薬総合研究科・教授)
triggered by mutant protein kinase C γ that causes
共同研究者:ピョー ウェイトン
spinocerebellar ataxia type 14(SCA14)by inhibiting
(広島大学・大学院医歯薬総合研究科・大学院生)
oligomerization and aggregation. J. Pharmacol. Sci.
原医研受入研究者:本田 浩章
114(2010)206-216
(疾患モデル解析研究分野・教授)
(5)
Yanase, Y., Hide, I., Mihara, S., Shirai, Y., Saito, N.,
Nakata, Y., Hide, M. and Sakai, N. A critical role
研究内容・研究成果・今後の展望等
for conventional protein kinase C in morphological
研究内容
changes of rodent mast cells. Immunol. Cell Biol. 89 Dec1 は bHLH 型 の 転 写 因 子 で あ り、 近 年 造 血 系 や
(2011) 149-159
circadian rhythm などに様々な機能を果たしていること
(6)H arada, K., Hide, I., Seki, T., Tanaka, S., Nakata,
が報告されている。この共同研究では Dec1 のトランスジェ
Y. and Sakai, N. Extracellular ATP differentially
ニックマウスおよびノックアウトマウスを作製し解析する
modulates Toll-like receptor 4-mediated cell survival
ことにより、主として免疫系における Dec1 の役割につい
and death of microglia. J. Neurochem.(2011)in press
て検討する。
(7)Shirai, Y. Morioka, S., Sakuma, M., Yoshino, K., Otsuji,
研究成果
C., Sakai, N., Kashiwagi, K., Chida. K., Shirakawa,
Dec1 を T 細胞特異的に高発現するトランスジェニッ
R., Horiuchi, H., Nishigori, C., Ueyama, T. and Saito,
クマウス、および Dec1 を全身で欠失したノックアウト
N. Direct binding of RalA to PKC η and its crucial
マ ウ ス を 作 製 し た。 そ の 結 果、Dec1 は T 細 胞、 特 に
role in morphological change during keratinocytes
regulatory T と呼ばれる細胞の分化および増殖に必須で
differentiation. Mol. Biol. Cell(2011)in press
あることが明らかとなった。
今後の展望
免疫系の制御機構におけるに新たな機能に新たな知見
をもたらすものと考えられる。
発表論文(共同研究者を下線、受入研究者を 2 重下線)
Miyazaki K, Miyazaki M, Guo Y, Yamasaki N, Kanno M,
Honda Zi, Oda H, Kawamoto H, and Honda H. The role of
the basic helix-loop-helix transcription factor Dec1 in the
regulatory T cells. J Immunol 385, 7330-7339, 2010
36
重点プロジェクト研究⑶
3-25
3-26
疾患モデルマウスにレトロウイルスを用い
た多段階発癌の解析
コンディショナルノックアウトマウスを用いた
脳神経系における Cas の機能解析
研究組織
研究組織
代 表 者:中村 卓郎
代 表 者:古市 貞一
(財団法人癌研究会・癌研究所発がん研究部・
(理化学研究所脳科学総合研究センター・チー
部長)
ムリーダー)
共同研究者:横山 隆志
共同研究者:林 周宏
(財団法人癌研究会・癌研究所発がん研究部・
(理化学研究所脳科学総合研究センター・客
研究員)
員研究員)
原医研受入研究者:本田 浩章
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
p130Cas は、がん化細胞などにおいてアクチン制御を介
受入研究者が作製した様々な疾患モデルマウスにレトロ
して細胞骨格形成に関わるアダプター分子としてはたら
ウイルスを感染させる。疾患発症の期間や疾患の悪性度
く。脳発達期の神経細胞でも強く発現するが、脳神経系に
を呈したマウスの腫瘍組織から DNA を抽出し、inverse
おける機能的な役割は良く分かっていない。また、Cas の
PCR を用いてウイルス挿入遺伝子を単離し、その発現変
ノックアウトマウスは胎生致死であるため、成体の脳神経
化について検討する。
系における機能解析が出来ない。本共同研究では、受入
研究成果
研究者が作製した Cas のコンディショナルノックアウト
これまで受入研究者が作製した p210BCR/ABL トラン
マウスと種々の神経細胞系列で部位特異的組換え酵素 Cre
スジェニックマウス、TITAN ノックアウトマウスなどに
を発現するマウスを交配して、脳の様々な領域で Cas タ
レトロウイルスを感染させることにより、協調遺伝子の単
ンパク質の発現を欠損したの条件特異的マウスを作製し、
離を行った。これまで複数の遺伝子が単離され、その生物
その表現型を解析して脳神経細胞における Cas 機能を明
学的機能解析を行っている。
らかにすることが目的である。2010 年度は、Wnt-Cre マ
今後の展望
ウス、Emx1-Cre マウスとの交配で、それぞれ後脳と前
受入研究者が作製した疾患モデルマウスにレトロウイル
脳で特異的に Cas を欠失するマウスの開発を行い、現在、
スを感染させ、表現型の変化を生じたマウスからウイルス
表現型の解析を行っている。今後、これらの脳領域におけ
挿入遺伝子を単離することにより、多段階発癌の分子機構
る Cas の役割が明らかになると期待される。
が明らかに出来ると考えられる。
発表論文
発表論文
なし
なし
37
重点プロジェクト研究⑶
れた。細胞死の機序をさらに検討している。
3-27
Parp および Parg 発現変化による慢性骨
髄性白血病悪性化への関与の解析
今後の展望
Parp 機能阻害下で p210BCR/ABL 発現細胞が急性転化
を示した場合、Parp 遺伝子の発現変化による遺伝子不安
研究組織
定性がその発症原因と考えられ、慢性骨髄性白血病急性転
代 表 者:益谷 美都子
化機構に新たな知見をもたらすものと考えられる。本研究
(独立行政法人国立がん研究センター研究所
により慢性骨髄性白血病における増殖、分化、細胞死など
ゲノム安定性研究分野・分野長)
共同研究者:佐久間(藤森) 浩彰
の病態と Parp の役割について基盤となる情報を得られる
と期待できる。
(独立行政法人国立がん研究センター研究所
ゲノム安定性研究分野・研究員)
白井 秀徳(同分野リサーチ・レジデント)
高木 正稔
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・
助教)
原医研受入研究者:本田 浩章
(疾患モデル解析研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
慢性骨髄性白血病は融合遺伝子 p210BCR/ABL により
発症する造血器悪性腫瘍である。臨床的には、分化傾向を
有する顆粒球系細胞が徐々に増加する慢性期を数年経過
した後に、不可避的に幼弱芽球が急激に増加する急性白
血病に似た病態に移行する(急性転化)。急性転化につい
ては、2 次的遺伝子異常の関与が示唆されているが、その
機構は不明の点が多い。この共同研究では、慢性骨髄性
白血病を発症する細胞に遺伝子安定性や DNA 修復に関わ
る poly(ADP-ribose)polymerase(Parp)の機能阻害を
行い、受入研究者の協力の下に慢性骨髄性白血病の病態と
急性転化における Parp の役割について検討する。また、
慢性骨髄性白血病を発症する細胞に poly(ADP-ribose)
polymerase(Parp)阻害剤あるいは siRNA などの機能阻
害核酸を導入し、受入研究者の協力の下に慢性骨髄性白血
病の増殖、分化、細胞死などの病態に関連した指標と急性
転化におけるポリ ADP- リボシル化の役割について、遺伝
子発現レベル、及びタンパク質発現レベルで検討する。
研究成果
慢性骨髄性白血病を発症する p210BCR/ABL と Parp
-1 欠損マウスとの交配体系統を作成し、交配体を得つ
つ あ る。 ま た、 慢 性 骨 髄 性 白 血 病 細 胞 株 HL60 に お い
て PARP 阻害剤 PJ-34 単剤処理で細胞増殖が抑制された
(p<0.05)。薬剤処理 72 時間後フローサイトメトリーによ
る解析を行ったところ、アポトーシス誘導が顕著に観察さ
38
発表論文
なし
重点プロジェクト研究⑶
3-28
食道癌における新たな抗癌治療感受性因子
の同定
研究組織
予測マーカーとしてのみならず、新たな抗癌戦略となりう
ることも期待される。
発表論文
なし
代 表 者:麓 祥一
(広島大学病院がん治療センター・助教)
共同研究者:野口 剛
(大分大学医学部附属病院消化器外科・准教授)
原医研受入研究者:檜山 桂子
(放射線医療開発研究分野・准教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は、1)EMP3 の放射線感受性因子としての検討、
2)EMP3 発現制御機構の解明、3)新たな抗癌治療感受性
因子の同定、4)新規候補遺伝子の強制発現・抑制食道癌
細胞の樹立と免疫不全マウスへの移植、以上 4 項目に関
して検討を行った。各項目に対する研究成果は下記の通
りである。1)化学療法単独治療群と放射線化学療法併
用群間における EMP3 発現レベルと予後との関連性から、
EMP3 の放射線感受性因子としての可能性を検討した。
結果、化学療法単独治療においては、EMP3 発現レベル
と予後との間に関連性は示されなかったが、放射線併用療
法群では EMP3 高発現群において極めて良好な予後が確
認された。このことから、EMP3 の発現が放射線感受性
増感に関与する可能性が示唆された。2)複数の EMP3 強
制発現クローン及びコントロールベクター導入クローンを
用いたオリゴヌクレオチドマイクロアレイによる遺伝子プ
ロファイリング解析により、EMP3 発現に関連すること
が示唆される遺伝子群の抽出に至った。一方、プロモーター
領域における発現制御因子の作用部位の塩基配列からその
レプレッサーを策定するためプロモーター領域における複
数の Deletion mutant の樹立に至った。3), 4)食道癌に
対し汎用されている抗癌剤(5-FU, CDDP)を対象とした
治療感受性食道癌細胞と耐性食道癌細胞の発現プロファイ
ルの比較により、新たな抗癌戦略となる候補遺伝子群を抽
出した。それら、抽出遺伝子群のうち複数の遺伝子につい
て強制発現クローンを作製、治療感受性因子としての可能
性を検証した。中でも新たな抗癌戦略として期待される遺
伝子に関しては、その強制発現クローンを免疫不全マウス
へ移植し、腫瘍形成能について検討した。今後の展望とし
ては、本研究により食道癌における新規抗癌治療感受性因
子が同定され、その作用に関連する遺伝子群および発現制
御機構が解明されれば、放射線・抗癌剤治療に対する効果
39
重点プロジェクト研究⑶
疾患であることもあり十分な検討はされてはいなかった。
3-29
原発性免疫不全症の解析
本研究は、MSMD 発症機序を明らかにした有意な研究で
あり、さらに本症の理解を深めることにより、今後治療へ
研究組織
発展・応用していきたいと考えている。また、原発性免疫
代 表 者:小林 正夫
不全症の多くで、白血病や悪性リンパ腫などの遺伝子異常
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
に基づく悪性腫瘍が高頻度に発生することが知られてい
教授)
る。本症をはじめとした原発性免疫不全症の病態解明を進
共同研究者:梶梅 輝之
めることにより、放射線障害によるゲノム障害に基づく発
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
がん機構の理解を深めることができると期待している。
助教)
溝口 洋子
発表論文
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
現在、投稿中。
大学院生)
津村 弥来
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
大学院生)
原医研受入研究者:瀧原 義宏
(幹細胞機能学研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
原発性免疫不全症候群は出生 10 万人あたり 2-3 人の頻
度で発症する先天性疾患で、生後早期からの反復性重症感
染症が特徴である。申請者のグループは、原発性免疫不
全症候群のなかでも食細胞異常症に注目して研究を行っ
ており、慢性肉芽腫症、先天性好中球減少症、Mendelian
Susceptibility to Mycobacterial Diseases(MSMD) な ど
の疾患の解析を精力的に行っている。
MSMD は、IL-12/IFN-γ経路の異常により抗酸菌やサ
ルモネラ菌に代表される細胞内寄生菌に対して易感染性を
示す稀な疾患である。今回、多発性骨髄炎を呈し MSMD
が疑われる2症例において STAT1 の SH2 ドメインにヘ
テロ接合性新規遺伝子変異(K637E、K673R)を同定し
た。患者末梢血を用いた解析から、IFN-γに対する TNFα、IL-12 産生能の低下及び、STAT1 リン酸化の低下を
認めたため、常染色体優性遺伝を呈する STAT1 部分欠損
症と診断した。本研究では、同定変異による MSMD 発症
へのメカニズムを明らかにすることを目的に、分子生物学
的手法を用いて各種機能解析を行った。その結果、変異
STAT1 が JAK-STAT のシグナル伝達に対して優性阻害
効果を呈することを実験的に証明し、本疾患発症の一端を
担う重要な変異と考えられた。STAT1 は転写因子のなか
でも、多岐にわたるシグナル伝達に関与し、生体内で重要
な役割を果たしている分子であるが、STAT1 の異常がヒ
トにどのような影響をもたらすかについては、本症が稀少
40
重点プロジェクト研究⑶
3-30
3-31
白血病原因転写関連因子の機能解析
神経幹細胞で観察される選択的染色体分配
における p53 遺伝子の役割
研究組織
代 表 者:犬飼 岳史(山梨大学医学部・准教授)
研究組織
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
代 表 者:白石 一乗
(がん分子病態研究分野・教授)
(大阪府立大学理学研究科・助教)
原医研受入研究者:笹谷 めぐみ
研究内容・研究成果・今後の展望等
(分子発がん制御研究分野・助教)
急性リンパ性白血病の原因となる E2A-HLF 融合転写因
子に関して、次世代シーケンサを用いた ChIP-seq アッセ
研究内容・研究成果・今後の展望等
イをおこない、その標的遺伝子の解析をおこなった。その
幹細胞は生涯、分裂や周辺環境からの DNA 損傷ストレ
結果 CD33 抗原や LMO2 転写調節関連遺伝子を同定した。
スに晒される。恒常性維持のために幹細胞にはゲノムの安
これらの結果は下記の 2 論文に発表した。今後も引き続き、
定性に関わる特別な機構の存在が予想されてきた。DNA
このプロジェクトを継続する。
複製において鋳型鎖を含む染色体が選択的に幹細胞に分配
される機構もその一つである。我々はこれまでに神経幹細
発表論文
胞を含むニューロスフェアー内に選択的分配を行う集団が
1. Akahane K., Inukai T., Inaba T., Kurosawa H., Look
数%存在することを確認している。本申請研究では選択
A.T., Kiyokawa N., Fujimoto J., Goto H., Endo M.,
的分配を行う細胞が幹細胞であることと、分配機構が p53
Zhang X. , Hirose K., Kuroda I., Honna H., Kagami J., 遺伝子に依存することを示すために、広島大学原曝放射線
Goi K., Nakazawa S., and Sugita K. Specific induction
医科学研究所と共同研究を行った。
of CD33 expression by E2A-HLF: the first evidence
本年度の研究で、p53 遺伝子欠損マウスから樹立された
for aberrant myeloid antigen expression in ALL by a
ニューロスフェア細胞において染色体の選択的分配が観察
fusion transcription factor. Leukemia 24:865-869, 2010
されなかった。現在、p53 遺伝子欠損ニューロスフェア細
2. Hirose K., Inukai T., Kikuchi J., Furukawa Y., Ikawa
胞への遺伝子導入による相補試験と RNA 干渉法による阻
T., Kawamoto H., Oram S.H., Gottgens B., Kiyokawa N.,
害試験を行っている。また、これまで、染色体の不均等分
Miyagawa Y., Okita H., Akahane K., Zhang X., Kuroda
配は間期の細胞でのみ観察され、分裂期の細胞では観察で
I., Honna H., Kagami K., Goi K., Kurosawa H., Look A.T.,
きなかった。今回、微小管形成阻害剤である nocodazole
Matsui H., Inaba T., Sugita K. Aberrant induction of
を用いることで分裂後期の不均等な分配形式がはじめて観
LMO2 by the E2A-HLF chimeric transcription factor
察された。今後はフローサイトメーターで幹細胞を分収し
and its implication in leukemogenesis of B-precursor
た後、幹細胞が分裂期で染色体の不均一な分配を行ってい
ALL with (17;19)
t
. Blood 116: 962-970, 2010
ることを直接示す予定である。あわせて幹細胞への遺伝子
導入技術を用いて、分裂機構における p53 遺伝子の役割
を明らかにしていきたい。
発表論文
なし
41
重点プロジェクト研究⑶
3-32
細胞損傷マーカー蛋白質と受容体との相互
作用解析を通した損傷シグナル伝達機構の
解明
of lectin^like oxidized LDL(LOX-1).” Biochimica. et
Biophysica Acta, 1814, 345-354.(2011)
3. Murakami, C., *Ohame, E., Tate, S., Gekko, K.,
Nakasone, K. and Kato, C. “Comparative study on
dihydrofolate reductases from Shewanella species
研究組織
living in deep-sea and ambient atmospheric-pressure
代 表 者:楯 真一(広島大学理学研究科・教授)
environments. Extremophiles, 15, 165-175.(2011)
共同研究者:山田 梨紗都(広島大学理学研究科・M1)
4. Horiuchi, Y., Ohmae, E.,*Tate,S. and *Gekko,K.
編田 宏一(広島大学理学研究科・M2)
“Coupling effects of distal loops on structural
原医研受入研究者:田代 聡
stability and enzymatic activity of Escherichia coli
(細胞修復制御研究分野・教授)
dihydrofolate reductase revealed by deletion mutants.”
Biochimica et Biophysica Acta, 1804, 846-855.(2010)
研究内容・研究成果・今後の展望等
5. Murakami,C., *Ohmae,E., Tate,S., Gekko,K., Nakasako,
本研究は、細胞膜上にある受容体 LOX-1 が細胞損傷マー
K. and Kato,C. “Cloning and characterization of
カーとして細胞中から放出される HSP70 と、どのように
dihydrofolate reductases from deep-sea bacteria.”
相互作用するかの様式解明を目指して、表面プラズモン共
J.Biochem.(Tokyo), 147, 591-599.(2010) 鳴法を用いた定量的な相互作用解析を目指している。
6. Fujimoto, Y., Shiraki,T., Horiuchi,Y., Waku,T., Shigenaga,
本年度は、LOX-1 の本来のリガンドとされる酸化 LDL
A., Otaka,A., Ikura,T., Igarashi, K., Aimoto, S., Tate,S.,
を対象として Biacore-X を用いて細胞上と同程度の結合能
and *Morikawa, K. “Prorine cis/trans isomerase Pin1
を示す LOX-1 センサーの最適化を試みた。
regulates peroxisome proliferator-activated receptor
Self-assembling monolayer(SAM) 膜 上 に NTA を 持
gamma activity through the direct binding to the
つ脂質を介して LOX-1 を平面膜上に再構成する系を作る
AF-1 domain.” J.Biol.Chem. 285, 3126-3132.(2010)
ことに成功した。また、単層膜上に配置した LOX-1 を
用いることで、細胞上で観測されるのと同程度の強度で
LOX-1 が酸化 LDL を認識することを確認した。
細胞損傷マーカーとしてアポトーシスした細胞から放出
される HSP70 の組換え体を大量に調製する技術を確立し
た。HSP70 は、全体が 70kDa の巨大蛋白質であるが、ヌ
クレオチドと結合するドメイン、ペプチドと相互作用する
ペプチド結合ドメインの 2 つに大きく分けることができ
る。本年度は、全長、N-, C- 末端ドメインの大量発現・大
量生成系を確立した。
次年度は、SAM 膜上に配置させた LOX-1 センサーを用
いて、細胞上にあるのと同等な状態で LOX-1 と HSP70 の
相互作用解析を進める。
発表論文
1. Mizuno, S., Amida, H., Kobayashi, N., *Aizawa, S. and
*Tate, S. “The NMR structure of FliK, the trigger for
the switch of substrate specificity in the flagellar type
Ⅲ secretion apparatus.” J. Mol. Biol. in press(2011).
2. Ohki, I., Amida, H., Yamada, R., Sugihara, M., Ishigaki,
T. and *Tate, S. “Surface plasmon resonance study
on functional significance of clustered organization
42
重点プロジェクト研究⑶
る治療効果の改善も期待される。
3-33
癌細胞に対する放射線と細胞死誘発因子と
の併用効果の検討
なお、本研究結果の一部は、2010 年 10 月に広島で行わ
れた、日本解剖学会、第 65 回中国・四国支部学術集会に
て発表した。
研究組織
代 表 者:野田 典孝
発表論文
(広 島国際大学大学院 医療・福祉科学研究
科・学生)
原医研受入研究者:田代 聡
(細胞修復制御研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究では、より放射線障害のリスクを軽減しつつ
放射線治療効果を高めるため、TNF Related Apoptosis
Inducing Ligand(TRAIL)を放射線治療に組み合わせる
ことによる放射線増感効果、および、そのメカニズムにつ
いて検討を行った。
ヒ ト 子 宮 頸 部 扁 平 上 皮 癌 由 来 で あ る HeLa 細 胞 に 対
し、137Cs より放出されるγ線を照射した。放射線増感
メカニズムを検討するため、TRAIL が結合することに
よってアポトーシスを誘導する受容体 TRAIL-R1(DR4)、
TRAIL-R2(DR5)に着目し、RT-PCR 法によってその発
現を解析した。
本実験により、TRAIL の放射線増感効果が示唆された。
TRAIL とγ線照射との併用効果を検討した結果、TRAIL
を単独で投与した群およびγ線を単独で照射した群と比
較して明らかに細胞死が増加していた。特に照射線量を
4 Gy として TRAIL を併用した結果、非常に高い増感効
果が認められた。一方で、γ線照射後 6 時間、12 時間に
TRAIL を投与した場合、ほとんど増感効果が認められな
かったことから、高い増感効果を得るためには、TRAIL
の投与タイミングに最適な条件があることが示唆された。
また、HeLa 細胞には、DR4、DR5 ともに発現しているこ
とが確認されたが、γ線照射により、それらの発現量が増
加することも判明した。この結果から、放射線照射により
DR4、DR5 の発現が変化し、そのことが、放射線増感効
果と関連するのではないかと考えられた。
TRAIL は、様々な癌細胞に対しアポトーシスを誘導す
るが、ほとんどの正常細胞に対してはアポトーシスを誘導
しないため、本研究の結果は、放射線治療における放射線
障害リスクの低減に非常に有用である事が示唆される。ま
た、抗癌剤に対して耐性を示す癌に対し、TRAIL を併用
することにより高い増感効果を示す研究報告もあり、放射
線に対して抵抗性を示す癌に TRAIL を併用することによ
43
重点プロジェクト研究⑶
3-34
3-35
リンパ球に対する放射線防護剤の併用効果
の検討
家族性リンパ腫の遺伝的背景の探索
研究組織
研究組織
代 表 者:高木 正稔
代 表 者:荒木 淳
(東 京医科歯科大学大学院発生発達病態学・
(広 島国際大学大学院 医療・福祉科学研究
科・学生)
講師)
共同研究者:水谷 修紀
原医研受入研究者:田代 聡
(東 京医科歯科大学大学院発生発達病態学・
(細胞修復制御研究分野・教授)
教授)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
研究内容・研究成果・今後の展望等
(がん分子病態研究分野・教授)
本研究では、ラクトフェリンの培養リンパ球に対する放
研究内容・研究成果・今後の展望等
射線防護効果を検討した。
採血した健常な成人男性の血液にラクトフェリンを投与
し、ガンマセル照射装置にて
137
Cs γ線を 2 Gy 照射した。
研究内容
少数ながら家族性にリンパ腫を発症する家系が報告され
照射後、血液培養を行った。リンパ球を分離して細胞質分
ている。しかしながら現在までその責任遺伝子に関しては
裂阻害小核法(CBMN 法)にて小核発生率を求め、放射
全く明らかにされていない。この責任遺伝子を明らかにす
線防護効果を検討した。また、比較用として L- グルタチ
ることにより家族性リンパ腫の病態を解明する。これら研
オンの放射線防護効果も同様の方法で測定した。
究を介しまたリンパ腫一般においても、その発症に関与す
ラクトフェリンを投与したリンパ球の小核発生率は、濃
る遺伝子を明らかにすることができ、病態解明、治療法開
度 10 μ g/ml では 3.7 %、濃度 50 μ g/ml では 4.9 % 低下
発へと研究を展開する。
した。濃度 75 μ g/ml では 6.3 % 低下し、弱いながらも
研究成果
放射線防護効果が認められた。また、その効果は濃度に依
患者家系より血液のサンプルを採取し、ゲノム抽出行っ
存して大きくなった。L–グルタチオンを投与したリンパ
た。
球の小核発生率も、無投与のリンパ球と比較して低下する
原医研受け入れ研究者で、次世代シークエンサーによる
結果となり、放射線防護効果が認められた。その効果は、
解析を2症例で試行中である。
ラクトフェリンに認められた放射線防護効果よりも大き
今後の展望
かった。つまり、in vitro 実験系におけるラクトフェリン
家族性リンパ腫感受性候補遺伝子を同定できると考える
の放射線防護効果はあまり高いものではなかった。
本研究結果から、in vitro でのラクトフェリンの放射線
発表論文
防護効果はラジカルスカベンジャー効果によるものと考え
られたが、その効果は L- グルタチオンと比較してあまり
高いものではなかった。このことから、ラクトフェリンが
個体レベルで高い放射線防護効果を示すのは、ラジカルス
カベンジャー効果ではなく、鉄イオンのトラップ作用が主
に関与しているからであると考えられ、・OH の発生源で
ある金属イオンのトラップ作用が有力であるということが
示唆された。
なお、本研究の一部は 2010 年 10 月に広島で行われた日
本解剖学会第 65 回中国・四国支部学術集会にて発表した。
発表論文
44
重点プロジェクト研究⑷/重点プロジェクト研究⑸
4-1
5-1
放射線被曝のバイオドジメトリーを志向し
た尿プロテオーム解析
造血幹細胞制御の分子基盤の研究
研究組織
研究組織
代 表 者:大野 芳典
代 表 者:泉 俊輔(広島大学理学研究科・教授)
(広島大学医歯薬学総合研究科・助教)
共同研究者:吉岡 進(広島大学理学研究科・大学院生)
共同研究者:黒木 利知
原医研受入研究者:飯塚 大輔・河合 秀彦
(広島大学医歯薬学総合研究科・学生)
(放射線細胞応答研究分野・助教)
JANAKIRAMAN HARINARAYANAN
(広島大学医歯薬学総合研究科・学生)
研究内容・研究成果・今後の展望等
敦 芸
近年、エネルギーや医療面などにおける原子力・放射線
(広島大学 医歯薬学総合研究科・学生)
利用への需要は拡大しているが、大規模な被ばく事故や災
原医研受入研究者:瀧原 義宏
害が発生した際に、患者の被ばく線量を迅速に推定し、治
(幹細胞機能学研究分野・教授)
療方針を決定する、トリアージ法(識別救急)は未だ確立
されていない。本研究では、このような有事の際でも採取
研究内容・研究成果・今後の展望等
が容易な尿検体から、被ばく線量を推定できるバイオマー
本研究は、造血幹細胞の体外増幅法を開発するための
カーとなるペプチドやタンパク質を探索するため、被ばく
基礎理論の確立を目指し、HOXB4 による造血幹細胞制御
マウスの尿プロテオーム解析を行った。
のする分子基盤の解析を行った。HOXB4 は現在知られて
137
B6C3F1 マウス(9 週齢)に対し、 Cs を線源として 0.25
いる最も強力な造血幹細胞増幅因子であり、ex vivo にお
Gy 〜 6.0 Gy のγ線を照射した。被ばく後、経時的に採取
いて ES 細胞や iPS 細胞から造血幹細胞を誘導することも
した尿検体について HPLC 分取し、MALDI-TOF MS 測
できる唯一の因子である。そのため、HOXB4 による造血
定した結果、m/z 2821 のペプチドが被ばくマウス尿中で
幹細胞の活性制御機構についての研究が世界中で行われ
特異的に増加していた。この分子を ESI-Q-TOF MS によ
てきたが、その分子基盤について充分な理解が得られて
り MS/MS 測定し、相同性検索を行ったところ hepcidin
いなかった。申請者はすでに HOX タンパク質が DNA 複
2 であることがわかった。次に被ばく後の尿中 hepcidin 2
製ライセンス化の制御因子でありクロマチン制御を介し
の経時変化をみたところ、それらは被ばく線量と被ばく後
た幹細胞の未分化性制御の因子でもある Geminin と結合
の経過時間に依存して増加していた。さらに被ばく後 24
することを明らかにしていたが、本研究において HOXB4
時間での肝臓における hepcidin 2 の mRNA 発現量を比較
も Geminin と 結 合 す る こ と を 明 ら か に し た。 さ ら に、
したところ、その増加傾向は尿中の結果と類似しているこ
HOXB4 がユビキチンリガーゼのコア複合体である ROC1-
とも明らかとなった。
DDB1-CUL4A 複合体と結合し、Geminin に対する E3 ユ
ビキチンリガーゼ活性を持つことを明らかにした。そし
発表論文
て、HOXB4 が Geminin タンパク質の分解制御を介して
造血幹細胞へ増殖活性を付与することで造血幹細胞の活
性を制御していることを明らかにした(PNAS 2010)。申
請者は以前、HOXB4 と同じく造血幹細胞の活性を制御す
る内的因子であるポリコーム(PcG)複合体 1 も Geminin
に対する E3 ユビキチンリガーゼ活性を持つことを証明し
ていた(PNAS 2008)。造血幹細胞の活性制御における 2
大内的因子ともいえる HOXB4 と PcG 複合体 1 がともに
Geminin の分解制御を介して造血幹細胞の活性を制御して
いることから、Geminin が造血幹細胞の活性制御における
中核因子として機能していることが推測された。従って、
造血幹細胞の活性制御における Geminin の分子機能を詳
45
重点プロジェクト研究⑸
細に明らかにすることが、ex vivo における造血幹細胞の
増幅技術の開発につながるのではないかと考え、解析を進
めている。
5-2
脳虚血に伴うストレス応答物質の解析
研究組織
発表論文
代 表 者:酒井 規雄
Ohno, Y*., Yasunaga, S*., Ohtsubo, M., Mori, S., Tsumura, M.,
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
Okada, S., Ohta, T., Ohtani, K., Kobayashi, M. & Takihara,
共同研究者:田中 茂
Y. Hoxb4 transduction down-regulates Geminin protein,
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・助教)
providing hematopoietic stem and progenitor cells with
土肥 栄祐
proliferation potential. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・大学院)
107:21529-21534, 2010. *These authors contributed equally
原医研受入研究者:田代 聡
to this work.
(細胞修復制御研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
脳梗塞では血管閉塞後、様々なストレス応答と神経再生
現象が観察される。この共同研究では低酸素や酸化ストレ
スに対する神経細胞応答や神経幹細胞の分化修飾を、遺伝
子・蛋白発現解析により解明することを本共同研究の目
的としている。シャペロン介在性オートファジー(CMA)
は基質選択的なタンパク分解機構で、長期の飢餓状態や酸
化ストレス環境下で持続的に活性化され、細胞生存に寄与
することが報告されている。我々は、脳虚血環境下におけ
る神経細胞の生存と CMA の関与について、CMA の必須
タンパクである LAMP2A を指標に検討した。さらに、マ
ウス神経芽細胞腫(Neuro2A)細胞を用いて低酸素環境下
における CMA の活性を詳細に検討すると共に、細胞生存
への関与を調べた。Neuro2A 細胞を 1% 低酸素環境下に
て培養したところ、LAMP2A の発現上昇と、CMA の活
性化の指標である LAMP2A 陽性リソソームの核周囲への
集積を観察した。さらに CMA では基質の細胞質からリソ
ソームへの移行が報告されていることから、CMA の基質
の一つである GAPDH と HaloTag システムを用いてトラ
ンスロケーションの可視化を試みた。1% 低酸素環境下に
おいて、CMA 基質の LAMP2A 陽性リソソームへのトラ
ンスロケーション増加を観察し、CMA が活性化している
ことがさらに示唆された。これら CMA 活性を LAMP2A
の発現抑制により低下させると、低酸素ストレス下での
Cleaved Caspase3 の発現上昇と、Propidium Iodide(PI)
陽性死細胞数の増加を認めた。以上の結果から、低酸素ス
トレスにより CMA が活性化され、低酸素ストレスによる
神経細胞死に対し CMA が保護的に働く可能性が示唆され
ている。今後、更に CMA の神経細胞生存に対する役割や
メカニズムを解明する予定である。
46
重点プロジェクト研究⑹
発表論文
Yamamoto, K., Seki, T., Adachi, N., Takahashi, T. Tanaka,
S., Hide, I., Saito, N. and Sakai, N. Mutant protein kinase
C gamma that causes spinocerebellar ataxia type 14
(SCA14)is selectively degraded by autophagy. Genes to
Cells 15(2010)425-437
6-2
動物モデルを使った放射線により誘発する
循環器疾患の研究
研究組織
代 表 者:高橋 規郎
(広 島大学大学院・医歯薬総合研究科・創世
医科学専攻・病態探求医科学講座・客員教授)
Seki, T., Abe-Seki, N., Kikawada, T., Takahashi, H.,
Yamamoto, K., Adachi, N., Tanaka, S., Hide, I., Saito, N.
共同研究者:丹羽 保晴
and Sakai, N.The effect of trehalose on the properties of
(放 射線影響研究所・放射線生物学・分子疫
学部・研究員)
mutant γ PKC, which causes spinocerebellar ataxia type
14(SCA14), in neuronal cell lines and cultured Purkinje
村上 秀子
cells. J Biol. Chem. 285(2010)33252-33264
(放射線影響研究所・遺伝学部・来所研究員)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
Harada, K., Hide, I., Seki, T., Tanaka, S., Nakata, Y. and
(がん分子病態研究分野・教授)
Sakai, N. Extracellular ATP differentially modulates
Toll-like receptor 4-mediated cell survival and death of
研究内容・研究成果・今後の展望等
microglia. J. Neurochem.(2011)in press
研究内容;γ線照射装置を用い(4 Gy、2 Gy、1 Gy、そ
してコントロールとして 0 Gy)
。
γ線照射する。
SHRSP ラッ
トの脳卒中発症時期と血圧上昇時期の亢進、つまり寿命と
血圧変化に放射線が実際に関わっているのかを調査する。
研究成果;小規模な実験では、高線量被曝群では、脳卒中
発症時期と血圧上昇時期の亢進が認められた。
今後の展望;現在、実験動物の匹数を増やして、上記予備
実験の結果を拡大中である。
同時に、病理検索を行い、より詳しい症状に関しても探
索中である。
発表論文
47
自由研究
F-1
F-3
家族性侵襲性歯周炎の疾患関連遺伝子究明
環境汚染物質の甲状腺ホルモン撹乱作用に
おけるヒトリスク評価
研究組織
代 表 者:栗原 英見
研究組織
(広島大学医歯薬学総合研究科歯周病態学分
代 表 者:太田 茂
野・教授)
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
共同研究者:水野 智仁
共同研究者:佐能 正剛
(広島大学医歯薬学総合研究科歯周病態学分
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・助手)
野・助教)
松原 加奈(広島大学薬学部・5年生)
原医研受入研究者:川上 秀史
原医研受入研究者:藤本 成明
(分子疫学研究分野・教授)
(疾患モデル解析研究分野・准教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容・研究成果・今後の展望等
研究内容
化学物質の内分泌撹乱作用のうち、甲状腺ホルモン撹乱
家族性侵襲性歯周炎の疾患関連遺伝子を同定すること。
作用は、胎児期の発達障害などが懸念されている。我々
研究結果
は、広く環境中に存在している化学物質の中で、臭素化難
侵襲性歯周炎を発症する家系の発症者6名、非発症者2
燃剤、医療用医薬品、動物用医薬品、農薬および食品添
名から採血し、DNA を抽出した。
加物を取り上げ、thyroid hormone receptor(TR)に対
発 症 者 6 名 の DNA を 用 い て SNP タ イ ピ ン グ し、
する [125I] triiodothyrone(T3)結合競合阻害試験により、
Homozygosity Haplotype 法を用いて、この家系における
TR 結合活性を評価してきた。平成 22 年度は、TR 結合活
侵襲性歯周炎の疾患関連遺伝子の含まれる候補領域を決定
性が見られた化学物質について、アゴニスト、アンタゴニ
した。
スト作用を精査する目的で、TR 受容体発現細胞を用いた
今後の展望
高感度レポーターアッセイを構築し、これら化学物質の甲
今後、候補領域をキャプチャーシークエンスすることに
状腺ホルモン様活性を評価した。今回構築したレポーター
よって、疾患関連遺伝子の同定をめざす。
アッセイにおいて、T3 は 10−12 M でアゴニスト活性を示
しており、MtT/E-2 細胞を用い、かつ無血清培地下で評
発表論文
価することで、従来法のレポーターアッセイに比べ検出感
なし
度が増大した系を構築することができた。また、本評価系
を用いることにより、closantel、rafoxanide(動物用医薬
品)、tribromsalan(動物用医薬品)、4’-OH-BDE17、4-OHBDE42(ブロム化難燃剤)などが、甲状腺ホルモン活性(ア
ゴニスト作用)を有することを見出した。これらはヒトで
曝露される可能性もあることから、本来の甲状腺ホルモン
作用を撹乱する可能性がある。今後、in vitro 研究に留ま
らず、in vivo における甲状腺ホルモン撹乱作用を評価で
きる動物モデルを構築することを計画している。期待され
る結果を得ることができれば、より精度の高いヒトリスク
評価ができるものと考えている
発表論文
現在投稿準備中
48
自由研究
学会発表
F-4
フォーラム 2010 衛生薬学・環境トキシコロジー
平成 22 年9月9日(木)〜 10 日(金) 東京 星薬科大学
研究組織
にてポスター発表
「環境化学物質による甲状腺ホルモン応答の高感度評価」
1
2
2
3
◯松原加奈 、佐能正剛 、岩瀬恵理 、藤本成明 、浦丸
4
5
6
4
2
直人 、杉原数美 、加藤善久 、北村繁幸 、太田 茂 (広
1
2
3
4
島大・薬 , 広島大院・医歯薬 , 広島大・原医研 、日本薬大 、
5
代謝性疾患の解析
6
広島国際大・薬 , 徳島文理大・香川薬 )
代 表 者:小林 正夫
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
教授)
共同研究者:白尾 謙一郎
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
大学院生)
原 圭一
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
大学院生)
宇都宮 朱里
(広島大学大学院医歯薬総合研究科小児科学・
大学院生)
原医研受入研究者:瀧原 義宏
(幹細胞機能学研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
脂肪酸代謝異常疾患の一つ、中鎖脂肪酸アシル CoA デ
ヒドロゲナーゼ(MCAD)欠損症は空腹、飢餓ストレス
等が誘因で代謝不全を呈する先天性代謝異常症であり、突
然死や代謝不全改善後に神経学的後遺症を残す可能性のあ
る疾患である。欧米ではすでに新生児マススクリーニング
で発見されており、マススクリーニング陽性者の 90% 以
上に、MCAD をコードする ACADM 遺伝子の K329E 変
異が同定されており、確定診断がなされている。しかし、
本邦では全国規模の新生児マススクリーニング対象疾患と
なっていないため、発症頻度や病態解析が進んでいない。
我々は、代謝不全として発症後に精査となった患者、限ら
れた地域で行われている新しい新生児マススクリーニン
グパイロットスタディで陽性となった新生児の検体を用
いて、ACADM 遺伝子変異の同定、さらに患者白血球の
MCAD 比活性を健常者白血球と比較して遺伝子異常と酵
素活性の関係について評価してきた。
本邦で明らかとされた ACADM 遺伝子変異は欧米で同
定されている変異とは大きく異なっていた。それぞれの変
異の特性を知るため、HEK293 細胞に過剰発現させて in
vitro で基質と反応させ、生成物を HPLC 解析して定量し、
wild type との比活性を求めた。
評 価 し た 10 の 変 異 MCAD 蛋 白 の う ち、6 つ は 活 性 が
wild type の 10% 以下であり、Western Blotting で確認し
た蛋白発現の程度、臨床表現型からも、MCAD 欠損症の
49
自由研究
病因となる遺伝子変異と考えられた。残る 4 つの変異につ
いては健常者と同程度の MCAD 活性が見られ、うち 3 つ
は重度の活性低下を示す変異との複合変異であった。1 つ
は SNP との複合変異として見つかっているが、この SNP
F-5
A キナーゼアンカータンパク変異体におけ
る心筋内カルシウム動態の解明
は患者白血球を用いた MCAD 活性が著明な低下を示して
研究組織
いたことから、MCAD 欠損症の原因となる可能性が示唆
代 表 者:中野 由紀子(循環器内科・助教)
された。
共同研究者:槇田 祐子
今後、多数例の MCAD 欠損症の集積から、遺伝子異常
(医歯薬学総合研究科 ・循環器内科学講座)
と酵素活性を含めた表現型との関係を明らかにする必要が
梶原 賢太
あり、その結果は先天異常症の適切な説明と指導に寄与す
(医歯薬学総合研究科 ・循環器内科学講座)
るものと思われる。
徳山 丈仁
(医歯薬学総合研究科 ・循環器内科学講座)
発表論文
原医研受入研究者:田代 聡
未発表
(細胞修復制御研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
致死的不整脈である心室細動を起こすブルガダ症候群
は、心筋ナトリウム(Na)チャネルからの Na 電流の低
下により起こり、Na チャネル遺伝子α subunit(SCN5A)
に変異症例が報告されているが、全症例の 20% 以下であ
ることが明らかになっている。ブルガダ症候群症例は、副
交感神経が優位である時に心室細動発作を発症し、自律神
経の変化が発作の発症に関与していることも明らかになっ
ている。我々は、ブルガダ症候群症例において、L 型カル
シウム(Ca2+)チャネルの補助蛋白である A キナーゼア
ンカータンパク(AKAP)15 に変異のある症例を新規に
発見し、この変異は AKAP15 が心筋 L 型 Ca2+ チャネル
に結合する部位である Leucin Zipper Motif に存在した。
今後は AKAP15 変異体における交感・副交感神経刺激時
の心筋内 Ca 動態を解明していく予定である。
発表論文
50
自由研究
F-7
F-8
脳機能に関するゲノム科学的研究
国際規格化に向けた人の歯のESR線量計
測方法の確立
研究組織
代 表 者:内匠 透
研究組織
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
代 表 者:豊田 新
共同研究者:玉田 紘太
(岡山理科大学理学部・教授)
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・特任
共同研究者:星 正治
助教)
(広島大学原爆放射線医科学研究所・教授)
原医研受入研究者:川上 秀史
カシム ズマディーロフ
(分子疫学研究分野・教授)
(広島大学原爆放射線医科学研究所・特任准
教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は、ヒト遺伝学的解析により、筋萎縮性側索硬化
研究内容・研究成果・今後の展望等
症の新規原因遺伝子 OPTN を同定した。細胞生物学的解
大規模な放射線事故といった、計測用の特別の線量計素
析では、本研究で見出したナンセンス及びミスセンス変
子を持たない公衆が被曝する場面で、人の歯を用いた電子
異体は、NF-kB の活性化阻害がみられないこと、さらに、
スピン共鳴(ESR)被曝線量計測は、頭部のみの線量で
E478G 変異体では細胞内分布が異なることを明らかにし
はあるが、公衆一人ひとりの個々の被曝線量を定量できる
た。
という利点があるために重要な技術として注目され、技術
の開発が進んできた。これまでに5回の研究室間の線量計
発表論文
測の国際相互比較が行われ、その測定技術を向上させて
Maruyama, H., Morino, H., Ito, H., Izumi, Y., Kato, H.,
きた。こうした国際的な研究の流れ、また技術の重要性
Watanabe, Y., Kinoshita, Y., Kamada, M., Nodera, H.,
を踏まえて、2009 年9月に、人の歯などを用いたESR
Suzuki, H., Komure, O., Matsuura, S., Kobatake, K.,
線量計測について、国際標準化機構(ISO)による国際規
Morimoto, N., Abe, K., Suzuki, N., Aoki, M., Kawata, A.,
格化に向けた検討課題(新たな検討課題提案 , New Work
Hirai, T., Kato, T., Ogasawara, K., Hirano, A., Takumi,
Item Proposal)とすることが承認され、2013 年までにE
T., Kusaka, H., Hagiwara, K., Kaji, R. and Kawakami, H.
SR線量計測の国際規格を決定することとなった。この国
Mutations of optineurin in amyotrophic lateral sclerosis.
際規格化に向けて、本研究では、実際の事故被曝線量の計
Nature 465, 223-226, 2010.
測において差し引く必要のある、バックグラウンド線量の
定量化を目的とした。このため、福島県の住民について医
学上の理由により抜歯した歯を集め、46 本について、E
SRにより線量応答のある信号の強度を求め、標準試料の
信号強度との比較から、それぞれの歯の被曝線量を求め、
年齢との相関からバックグラウンドの年間線量率を求め
た。
試料の約 80%について 100 m Gy 以下の線量となったが、
高いものでは 250mGy という値が得られた。ばらつきあ
るものの、年齢との相関が観測され、年間の被曝線量とし
て、0.87mGy/y が得られた。これは、自然放射線による
線量率 0.33mGy/y に対して有意に高い。この差は、医療
放射線による可能性が高いと考えられる。今回得られた、
バックグラウンド線量は、放射線事故の際には差し引いた
うえで、個人の被曝線量を評価する必要がある。各年齢グ
ループについて、この有意な被曝線量の下限を計算したと
51
自由研究
ころ、例えば 60 歳代に対しては、個人の線量に対しては
5% の有意水準に対して 197mGy、同じ線量を被曝した 10
人のグループについては同様の水準に対して 109mGy と
F-9
胆道系悪性腫瘍の分子生物学的解析
なった。偶然であるが、今回、福島第一原子力発電所の事
研究組織
故により住民が被曝することになったが、この被曝線量を
代 表 者:佐々木 民人
評価する際の基礎データを提供することとなった。
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病
態制御内科学・講師)
発表論文
共同研究者:神垣 充宏
Toyoda, S., Kondo, A., Zumadilov, K., Hoshi, M., Miyazawa,
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病
態制御内科・大学院生)
C., and Ivannikov, A.(in press)ESR measurements of
background doses in teeth of Japanese residents. Radiation
原医研受入研究者:宮本 達雄
Measurements. doi:10.1016/j.radmeas.2011.05.008.
(原 爆放射線医科学研究所放射線ゲノ
ム研究分野・助教)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究はヒト胆管癌細胞株に対して、各種抗癌剤、放射
線への曝露を行い、増殖抑制試験を行いました。その結
果、Statin 系薬剤や、Statin 系薬剤と既存の抗癌剤である
gemcitabine、5Fu、cisplatin を併用することでより強い
抗癌効果が見られることが判明しました。
また、その過程で起こる細胞内シグナル伝達への影響を
western blotting により調査したところ、p-ERK の低下と
creaved caspase 3 の増加が見られました。
今後は、より効果的な組み合わせや濃度、また細胞内シ
グナル伝達への影響や、遺伝子学的相違による効果発現の
変化など、未だに多くの問題を明らかにしていく必要があ
ると考えられます。
発表論文
Kamigaki M, Sasaki T, Serikawa M, et al: Statins induce
apoptosis and inhibit proliferation in cholangiocarcinoma
cells. Int J Oncol 2011 in press
52
自由研究
F-10
F-11
バクテリア変異株のゲノム解析
微生物機能を利用したバイオプロセスの構
築
研究組織
代 表 者:廣田 隆一
研究組織
(広島大学大学院先端物質科学研究科・助教)
代 表 者:田島 誉久
原医研受入研究者:松井 啓隆
(広島大学大学院先端物質科学研究科・助教)
(がん分子病態研究分野・准教授)
共同研究者:松村 楽
金井 昭教
(広島大学大学院先端物質科学研究科・M2)
(附 属放射線先端医学実験施設・特任
原医研受入研究者:金井 昭教
助教)
(附 属放射線先端医学実験施設・特任
助教)
研究内容・研究成果・今後の展望等
環境におけるリン濃縮にはポリリン酸蓄積菌が大きく貢
研究内容・研究成果・今後の展望等
献している。申請者はバクテリアのポリリン酸蓄積メカニ
当研究室にて単離された Rhodococcus 属細菌は、環境
ズムを解明してきた過程で、驚異的なポリリン酸蓄積を示
汚染物質であるテトラヒドロフランを分解する微生物であ
す変異株の作製に成功した。リンは現在枯渇することが懸
る。テトラヒドロフランを酸化的に分解されればγ - ブチ
念されている資源であるが、この変異株作製技術はリン資
ロラクトンを、加水分解されれば 1,4- ブタンジオールを生
源問題に対処するためのリサイクル技術へ応用できる可能
成すると予想されるが、その分解経路は未知であった。い
性がある。本研究では、この技術を実際の応用段階にさら
ずれもポリマー原料として利用が期待され、どのような遺
に近づけるため、欠点である変異株の不安定性の原因を分
伝子、酵素によってその分解系が構成されているかは非常
子レベルで解明する事を目的とした。
に興味深い。そのような遺伝子が解明されれば、それらを
申請者らの研究グループでは、これまでにバクテリアの
高発現させた生体触媒によって、工業的に利用された大量
リン酸レギュロンの抑制因子である phoU が不活性化する
のテトラヒドロフランの廃棄処理に加え、ポリマー原料に
と大量のポリリン酸(無機リン酸のポリマー)が蓄積する
変換することもでき、省エネルギーな資源の変換プロセス
ことを発見した。しかしながら、phoU 変異株の多くは不
を構築することが可能となる。そこで、当該 Rhodococcus
安定であり、増殖の経過と共にポリリン酸を蓄積しなくな
属細菌のゲノムを解析し、そのドラフト配列から有用な遺
る復帰変異株(リバータント)を生じやすいという問題が
伝子配列を得ることを本研究の目的とした。染色体 DNA
あることが分かった。この問題の解決の糸口として、申
からライブラリーを作製し、調整したサンプルを次世代
請者は NTG 変異によってポリリン酸を安定に蓄積する大
シーケンサーにより配列を解析したところ、6,534 個のコ
腸菌の phoU 変異株(MT4, #29)を取得した。この株は、
ンティグとして配列を得ることができた。BLAST 等に配
多重変異により phoU 変異株の不安定性に関わる遺伝子、
列検索を行ったところ、約 8 kbp のコンティグ配列から
あるいは安定化に関わる遺伝子に変異が生じていると考え
テトラヒドロフランの水酸化に関わるモノオキシゲナーゼ
られた。そこで、本研究ではこの変異株の全ゲノム配列を
クラスターを有していることが明らかとなった。代謝物解
解読することにより、変異遺伝子を同定し、phoU 変異株
析からも水酸化の経路を示唆するデータが得られているこ
の不安定性機構を解明する事とした。
とから、モノオキシゲナーゼおよびその下流の反応として
これまでに、MT4, #29 の全ゲノム配列を解読したとこ
想定されるアルコールデヒドロゲナーゼを利用できれば、
ろ、両者の共通変異点が 15 ヶ所存在することが明らかに
効率的にテトラヒドロフランを分解できる生体触媒を構築
なった。現在、これらの遺伝子の破壊株、過剰発現株を作
することが期待される。現在、それらの遺伝子をクローニ
製し、phoU 変異株の安定性に関わる遺伝子の同定を進め
ングおよび、機能解析を行っているところである。
ている。
発表論文
発表論文
なし
なし
53
自由研究
F-12
F-13
慢性骨髄性白血病の急性転化に関する研究
リンパ球分化を制御する遺伝子発現機構の
解明
研究組織
代 表 者:北村 俊雄
研究組織
(東京大学医科学研究所 細胞療法分野 教授)
代 表 者:谷内 一郎
共同研究者:中原 史雄
(理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研
究センター・チームリーダー)
(東京大学医科学研究所 細胞療法分野 助教)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
共同研究者:田中 宏和
(がん分子病態研究分野 教授)
(理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研
究センター・基礎科学特別研究員)
研究内容・研究成果・今後の展望等
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
研究内容:
(がん分子病態研究分野・教授)
慢性骨髄性白血病の同一患者における①慢性期サンプル
と②急性転化後サンプルの両者を全エクソンシークエンス
研究内容・研究成果・今後の展望等
の手法を用いて比較し、急性転化後サンプルのみで新たに
本研究はリンパ球分化を制御する遺伝子発現機構の解明
出現した遺伝子変異を網羅的に検索することで、慢性骨髄
することを目的としている。
性白血病の急性転化の原因遺伝子変異を探索する。
T リンパ球は外部刺激に応答し、多様に分化増殖するこ
全エクソンシークエンスは、Agilent Technologies 社の
とで細胞特異的な機能を獲得し、免疫反応を制御する。
SureSelect ターゲットエンリッチメントシステムキットに
我々は T リンパ球の分化運命決定機構で重要な機能を果
より全エクソン部分のみを効率的にキャプチャし、これを
たす因子として Runx 転写因子を同定している。本研究は
イルミナ社の次世代シークエンサによって解析する。
ChIP-sequence を行い、Runx 転写因子およびその相互作
研究成果:
用因子である Bcl11b の結合プロファイルを包括的に捉え
上記の網羅的検索により、急性転化後サンプルのみで新
ることで、リンパ球分化を制御する遺伝子発現機構解明を
たに出現した遺伝子変異を複数検出することが出来た。具
促進することを目的としている。
体的には 2 症例での検索を行っており、1 症例目では 3 つ
平成 22 年度はマウス胸腺細胞を研究材料に、抗 Cbfb
の遺伝子変異、2 症例目では 2 つの遺伝子変異を検出でき
抗体、抗 Bcl11b 抗体を用いて ChIP-sequence を施行し、
た。
Runx 転写因子及び Bcl11b 転写因子の結合部位の同定を
今後の展望:
行 っ た。 既 存 の Runx 転 写 因 子 と Bcl11b 転 写 因 子 の 結
今回検出した遺伝子変異を用いて、in vitro, in vivo の
合部位への結合は確認出来ており、実験系はうまく働い
実験を行い、慢性骨髄性白血病の急性転化に関わる遺伝子
ていることが確認で来た。また新規の Runx 転写因子と
変異であるかを検討する。有意な結果が得られた場合には、
Bcl11b 転写因子の共結合部位も幾つか同定出来た。
それが慢性骨髄性白血病急性転化の原因の一つと考えられ
今後は、材料の細胞タイプを細かく別ける、他の転写因
る。
子の抗体を用いる、遺伝子改変マウス由来のサンプルを用
また必要に応じ、同様の網羅的解析をする症例数を増や
いることで、研究の発展を図りたい。
すなども検討していきたい。
発表論文
発表論文
本共同研究に関する発表論文は、現時点では無し。
54
まだありません。
自由研究
F-14
小胞体ストレス関連遺伝子の解析
研究組織
代 表 者:今泉 和則
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
共同研究者:近藤 慎一(同上 ・講師)
齋藤 敦 (同上 ・助教)
金本 聡自(同上 ・特任助教)
川崎 範隆(同上 ・研究員)
浅田 梨絵(同上 ・研究生)
岩本 秀雄(同上 ・大学院学生)
沖 真実 (同上 ・大学院学生)
宮城 秀幸(同上 ・大学院学生)
原医研受入研究者:稲葉 俊哉
(がん分子病態研究分野・教授)
研究内容・研究成果・今後の展望等
本研究は、小胞体ストレスを介したシグナル経路で働く
遺伝子を単離するため、様々なストレス(低線量放射線照
射を含む)を与えた際に、活性化される遺伝子を見出すこ
とを目的とする。今年度の研究成果を以下に示す。
初代培養軟骨細胞および網膜色素上皮細胞(ARPE-19
細胞株)に小胞体ストレスを負荷し、発現上昇する遺伝
子をジーンチップ法でスクリーニングした。その結果、
血管内皮細胞増殖因子 VEGF-A がストレスに応答して
転写レベルで誘導することが明らかになった。VEGF-A
のプロモーター解析から 5’ 上流域に存在する ER stress
response element(ERSE) お よ び cyclic AMP-response
element(CRE)がその発現上昇に重要な働きをすること
を見出した。また両配列には、小胞体ストレスセンサーで
ある ATF6、BBF2H7 および OASIS が直接結合すること
もわかった。以上から、VEGF-A の発現制御は小胞体ス
トレスを感知したセンサーが活性化し、転写因子となって
ヘテロあるいはホモダイマーを形成し VEGF-A の転写調
節領域に直接結合することにより転写が誘導されるものと
考察された。今後は VEGF-A の発現と血管新生能につい
て調べる。
発表論文
Kondo S, Saito A, Asada R, Kanemoto S, Imaizumi
K.: Physiological unfolded protein response regulated
by OASIS family members, transmembrane bZIP
transcription factors. IUBMB Life, 63:233-9, 2011.
55
《付 録》
平成 22 年度共同利用・共同研究課題募集要項
平成 21 年 11 月 10 日
関係各教育・研究機関の長 殿
広島大学原爆放射線医科学研究所長
神 谷 研 二〔公印省略〕
平成 22 年度 共同利用・共同研究の募集について
広島大学原爆放射線医科学研究所は、昭和 36 年に設置以来、原子爆弾やその他の放射線による急性及び晩発障害の研
究に加え、放射線被ばく者の疾病の診断・治療法の開発や放射線防護システムの確立といった広範な研究を行って参りま
した。最近では、ゲノム医学的研究手法による放射線障害研究と、急性障害に対する治療開発を目指した再生医学的研究
も実施しております。
本研究所は、この度、文部科学大臣より放射線影響・医科学分野の共同利用・共同研究拠点として認定を受けました。
これを受け、本研究所は、平成 22 年度よりこれまで蓄積した研究成果・資料や研究技術、及び関連情報を公開し、先端
的な各種研究施設・器機を用いた共同利用・共同研究を推進することに致しました。
つきましては、下記のとおり「重点プロジェクト研究課題」の共同利用・共同研究を募集いたしますので、貴機関所属
の研究者等に周知方よろしくお願いいたします。
なお、重点プロジェクト研究課題以外の共同研究も歓迎いたします。
記
1.重点プロジェクト研究課題
⑴ ゲノム損傷修復の分子機構に関する研究
⑵ 低線量放射線の影響に関する研究
⑶ 放射線発がん機構とがん治療開発に関する研究
⑷ 放射線災害医療開発の基礎的研究
⑸ 被ばく医療の改善に向けた再生医学的基礎研究
⑹ 被ばく者の健康影響と放射線リスク評価研究
2.申請資格:平成 22 年4月1日の時点で、大学・研究機関の研究者、大学院生又はこれらに相当する方
(見込みを含む。)
3.研究期間:平成 22 年4月1日から平成 23 年3月 31 日までの1年間
4.提出書類:円滑な研究活動が可能となるようあらかじめ所内の受入研究者と連絡を取ったうえ、
1)共同利用・共同研究申請書(様式1)
2)所属機関長の承諾書(様式2)
3)原医研受入研究員の承諾書(様式3)
をご提出ください。
5.申請締切:平成 22 年2月1日(月)(必着のこと)
6.採 否:当研究所運営委員会の議を経て所長が採否を決定し、平成 22 年3月末日までに申請者に連絡し
ます。
57
平成 22 年度共同利用・共同研究課題募集要項
7.所要経費:重点プロジェクト研究課題として採択された共同研究のうち、審査により 100 万円を上限として
経費を負担します。
8.そ の 他:採択課題は期間終了時に「成果報告書」を代表者から提出していただきます。報告書の記載要領
などについては、後日連絡いたします。知的財産権の取り扱いにつきましては、広島大学共同研
究取扱規則に準じます。
本研究所については、ホームページ(http://www.rbm.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)をご参照ください。
申請様式も同ホームページよりダウンロードしてお使いください。
送 付 先:〒 734―8553
広島市南区霞一丁目2番3号
広島大学原爆放射線医科学研究所事務室
(封筒に「共同利用・共同研究申請書在中」と記載のこと)
問合せ先:TEL 082―257―1515
FAX 082―255―8339
E-mail:[email protected]
58
採択状況
平成22年度
申請件数76件
京都大学 3
京都府立医科大学 1
大阪大学 3
大阪府立大学 1
広島大学 33
放射線影響研究所 2
岡山理科大学 1
広島国際大学 2
九州歯科大学 1
長崎大学 1
名古屋大学 2
名古屋市立大学 1
独協医科大学 1
茨城大学 1
千葉大学 1
放射線医学総合研究所 2
山梨大学 1
東京大学 9
東京医科歯科大学 3
慶応義塾大学 1
東京女子医科大学 2
癌研究会 1
理化学研究所 2
国立がんセンター 1
重点プロジェクト研究課題
(1) ゲノム損傷修復の分子機構に関する研究
(2) 低線量放射線の影響に関する研究
(3) 放射線発がん機構とがん治療開発に関する研究
(4) 放射線災害医療開発の基礎的研究
(5) 被ばく医療の改善に向けた再生医学的基礎研究
(6) 被ばく者の健康影響と放射線リスク評価研究
自由
重点1
13
重点6 3
重点5 2
重点4 2
14
5 重点2
遺伝子改変マウス 20課題
次世代シーケンサ 15課題
重点3
37
59
60
h
共同利用率(B)/(A)
1,904
80
0
67.14200832
229
90
90
22
12.02731092
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
h
共同利用率(c)/(b)
207
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
大学共同利用 民間・独立
外国の研究機関
機関法人
行政法人等
0
大学共同利用 民間・独立
外国の研究機関
機関法人
行政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
80
0
公立大学
私立大学
公立大学
1,130
1,683
9.6069869
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
860
100
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
1,413
100
ガンマセル 40 イグザクターは 137Cs 線源(74TBq)を2個使用した高線量率高精度のガンマ線照射装置であり、ガンマ線による急性障害、遺伝子突然変異、
遺伝的不安定性の誘導、実験動物の免疫分子機構の解明等に用いている。
平成 20 年度
施設・設備の
概要及び目的
設置年度
ガンマセル 40 イグザクター
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
施設・設備の利用状況
放射線実験系
低線量率ガンマ線照射装置は3種
施設・設備の
概要及び目的
h
共同利用率(B)/(A)
8,736
6
0
11.24031008
5,523
18
0
18
621
63.22115385
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
4,902
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
6
0
公立大学
私立大学
公立大学
設置年度
29
258
11.24388919
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
昭和 61 年度
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
0
5
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
229
5
低線量率ガンマ線照射装置
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
放射線実験系
61
62
h
共同利用率(B)/(A)
113,880
0
369
86.96260748
98,112
0
213
0
213
41,330
86.15384615
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
56,782
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
公立大学
0
369
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
設置年度
4,349
5,001
42.12532616
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
昭和 58 年度
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
3,398
369
稼 動 状 況
私立大学
公立大学
コンベンショナルレベルの飼育室。
放射線を用いた科学研究の中で、in vivo 実験モデル動物を用いた研究を行うことを目的とする。
施設・設備の
概要及び目的
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
4,050
369
一般飼育室(13 室)
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
動物実験系
h
共同利用率(B)/(A)
26,280
1,095
730
95.65217391
26,280
0
1,095
0
1,095
17,520
h
100
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
8,760
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
公立大学
1,095
730
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
設置年度
8,030
8,395
66.66666667
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
昭和 58 年度
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
730
4,380
稼 動 状 況
私立大学
公立大学
SPF レベルの飼育室。
放射線を用いた科学研究の中で、in vivo 実験モデル動物を用いた研究を行うことを目的とする。
施設・設備の
概要及び目的
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
1,095
4,380
特殊飼育室(2室)
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
動物実験系
63
64
h
共同利用率(B)/(A)
17,520
123
54
94.2791762
2,400
0
123
0
123
1,800
13.69863014
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
600
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
公立大学
123
54
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
設置年度
2,472
2,622
0
75
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
昭和 58 年度
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
54
2,118
稼 動 状 況
私立大学
公立大学
実験室:一般飼育室で飼育しているマウスへの操作等を行う。
特殊実験室:トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスなど遺伝子改変マウスを作製する。
施設・設備の
概要及び目的
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
204
2,118
実験室・特殊実験室
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
動物実験系
h
共同利用率(B)/(A)
1,904
0
14
86.92579505
570
0
0
0
238
29.93697479
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
332
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
0
14
公立大学
私立大学
公立大学
1,476
1,698
41.75438596
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
1,452
10
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
1,674
10
機械内訳:FACS Calibur HG(Becton Dickinson)
使用目的:細胞表面抗原および細胞内タンパク質を蛍光標識し、目的細胞の比率や細胞数を測定する機器である。本研究所においては、DNA 損傷に伴う
細胞周期の変化の観察や、白血病細胞の詳細な分類などに利用されている。
平成 17 年度
施設・設備の
概要及び目的
設置年度
フローサイトメーター
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
遺伝子実験系
65
66
h
共同利用率(B)/(A)
1,904
0
13
91.29464286
616
162
0
162
262
32.35294118
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
354
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
0
13
公立大学
私立大学
公立大学
818
896
42.53246753
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
596
47
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
674
47
機械内訳:共焦点レーザースキャン顕微鏡 LSM510/ マルチスペクトルイメージング装置 / タイムラプス装置(cell オブザーバー)/ 蛍光実態顕微鏡(Carl Zeiss)
使用目的:細胞内タンパク質を蛍光標識し、目的タンパク質の正確な局在を検討する目的で使用されている。また生細胞を用いた動的な観察も可能であ
る。本研究所においては、放射線による DNA 損傷時の修復タンパク質の振る舞いを観察する目的などに利用されている。
平成 10 年度
施設・設備の
概要及び目的
設置年度
紫外線レーザーマイクロ照射装置
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
遺伝子実験系
1,904
h
共同利用率(B)/(A)
0
0
156
96.4
0
0
0
112
8.193277311
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
44
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
0
0
公立大学
私立大学
公立大学
241
250
71.79487179
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
212
29
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
221
29
施設・設備の
概要及び目的
平成 14 年度
機械内訳:ULTRAFLEX/ 自動ゲルスポット切り出し機 ProteinnerSP(Bruker-Daltonics 社)/ データ解析用ワークステーション / 自動サンプル前処理装
置 MultiPROBEII(パーキンエルマー社)
使用目的:ペプチド断片化した微量サンプルをレーザーによってイオン化し、真空中の飛行速度を検出することによって物質の質量測定を行う機器であ
る。これにより、未知タンパク質の特定を行うことが可能であり、本研究所では放射線被ばくにともなう血中・尿中の被ばく線量依存的マーカー
の探索に用いられている。
設置年度
全自動プロテオーム解析装置(MALDI-TOF/TOF/MS)
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
遺伝子実験系
67
68
7,416
h
共同利用率(B)/(A)
0
0
38.46153846
7,224
3
0
3
3,840
97.41100324
h
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
3,384
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
0
0
公立大学
私立大学
公立大学
15
39
53.15614618
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
11
1
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
25
11
構成内訳:Genome Analyzer(illumina)/ 解析ソフトウェア用サーバー(Maze)/ アコースティックソルビライザー(Covaris)/Thermomixer comfort
(eppendorf)/ トランスイルミネーター(UVP)/ ハイブリダイゼーションオーブン G2545A(Agilent)/Series 700 Microarray Ovens(SciGene)
使用目的:DNA や RNA の配列を超ハイスループットに読み取る最先端の機器であり、他施設では利用制限がかかっていることが多いため、本研究所に
共同利用申請を介したサンプル解析が多数申し込まれている。全ゲノムにわたる DNA 変異や遺伝子発現量変化を一度に解析可能である。
平成 21 年度
施設・設備の
概要及び目的
設置年度
次世代シーケンサーシステム
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
遺伝子実験系
1,536
h
共同利用率(B)/(A)
0
0
16.49484536
1,536
0
0
0
307
h
100
(b)のうち、
共同利用に供した時間
(c)
0
その他
その他
0
0
h
共同利用率(c)/(b)
1,229
(b)のうち、共同利用以外
の研究に供した時間
(d)
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
0
大学共同利用 民間・独立行
外国の研究機関
機関法人
政法人等
稼働率(b)/(a)
h
年間稼動時間④
(b)=(c)+(d)+(e)
私立大学
0
0
公立大学
私立大学
公立大学
32
194
19.98697917
0
h
(c)
(d)
以外の利用に
供した時間⑤
(e)
計
計
①共同利用・共同研究に供する施設・設備ごとに別葉で作成して下さい。設備をシステムで使用している場合はシステムごとに別葉で作成して下さい。
②年間使用人数(A)、共同利用者数(B)については延べ人数で算出して下さい。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人の組織内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
③年間稼働可能時間とは、当該設備のメンテナンスに係る時間等を除き、電源投入の有無に関わらず、当該設備を利用に供することが可能な状態にある時間を指します。
ネットワーク型拠点の場合、「学内(法人内)」については、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学の学内について記載して下さい。
また、
「国立大学」、「公立大学」及び「私立大学」には、ネットワークを構成する研究施設を設置する大学・法人以外の大学・法人について記載して下さい。
④年間稼動時間とは、利用者が当該設備を利用するために、電源が投入されている時間を指します。
⑤
(c)
(d)以外の利用に供する時間とは、法人として研究に使用しない時間のうち、民間等に貸し出す時間等を指します。
稼 働 率 等
年間稼動可能時間③
(a)
う ち 共 同 学内(法人内) 国立大学
利 用 者 数②
(B)
32
0
稼 動 状 況
年間使用人数② 学内(法人内) 国立大学
(A)
194
0
構成内訳:Tissue-Tek(三共)/Vacuum Rotary VRX-23(サクラ)/ ミクロトーム LEICA SM 2000R(ライカ)/ パラフィン伸展器(サクラ)/Incubator
IC101(ヤマト)
使用目的:組織標本作成を行う一連の機器群である。本研究所では、放射線修復関連遺伝子などを改変したマウスを作製しており、マウスに発症した腫瘍
などから組織標本を作製し、解析に用いている。
平成 20 年度
施設・設備の
概要及び目的
設置年度
組織標本作製システム
共 同 利 用 に
供する施設・
設 備 の 名 称①
遺伝子実験系
69
平成22年度 共同利用・共同研究成果報告集
発 行 平成 24 年3月
編集発行 広島大学原爆放射線医科学研究所
〒734-8553
広島市南区霞一丁目2番3号
http://www.rbm.hiroshima-u.ac.jp/
印 刷 株式会社ニシキプリント
全国共同利用・共同研究拠点 平成
年度 共同利用・共同研究成果報告集
22
全国共同利用・共同研究拠点
平成22年度
共同利用・共同研究
成果報告集
広島大学原爆放射線医科学研究所【放射線影響・医科学研究拠点】
広島大学原爆放射線医科学研究所
【放射線影響・医科学研究拠点】
Fly UP