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第11章 農場実習(農作業)における安全

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第11章 農場実習(農作業)における安全
第11章
農場実習(農作業)における安全
1.農業機械の取扱い上の注意点
1)機械作業一般
(1) 作業服・作業靴を着用する。白衣などすその長いものやサンダル着用などで
作業しない。
(2) 機械の回転部などに着衣が巻き込まれないように整える。
(3) 軍手など手袋を着用する。
(4) その必要に応じて保護具・保護メガネを着用する。
(5) 学生実習の場合は、農業機械の取り扱いのすべての操作について、担当教員
の指示に従うこと。
(6) 故障および調整が必要の場合は、必ず原動機を停止して行う。
(7) 農場実習中は、担当教員の説明をよく聞いて、わからない事があった場合は、
その場で質問する。
(8) 実習中に体調を崩した場合や怪我をした場合は、担当教員に速やかに連絡す
る。
(9)トラクタおよび作業機の利用にあたっては,マニュアルなどをよく読み、適正
な操作を行う。
2)トラクタ運転関係
(1) 乗車する農業機械を点検し、その周辺に危険物がないことや人がいないか確
認する。
(2) 乗車するときは、着座左側より両手で手すりなどを掴み、慎重にステップを
登って運転席に座る。
(3) サイドブレ-キが引いてあるか、ギアはニュ-トラルかを確認する。
(4) 学生実習の際は、履修学生は担当教員の指示でエンジンを作動させる。
(5) 発進に際して、再度周辺を目視によって確認する。
(6) 急発進・急加速をしない。
(7) 降車する際は、エンジンを必ず停止し、運転席左側より降りる。
3)作業機および作業関連
(1) 作業機着脱の際は、トラクタと作業機の間に入らないようにする。
(2) 所定の作業機着脱の手順により着脱する。
(3) 作業機をトラクタ油圧で持ち上げる前に、再度懸架状態を確認する。
(4) 複数の人数で着脱する場合は、互いに確認をとりながら作業を進める。
(5) 作業機を PTO 駆動させる場合は、PTO クラッチを入れる前に、作業機の状態お
よび周辺状態を再確認する。
(6) その他の作業については、農水省農作業安全のための指針に準ずる。
2.農薬の適正使用と散布作業
1)農薬について
農薬は「農作物(樹木および農林水産物を含む)を害する菌、線虫、ダニ、昆
虫、ねずみその他の動植物またはウイルスの防除」に用いられる資材で、農業生
産の上では欠かせない資材である。この農薬を製造し、販売するには、農林水産
大臣の登録を受けなければならないとされている。また、農薬登録に際しては使
用法、安全性などに関する厳格な審査を受ける必要があり、農薬登録上の留意点
がすべての農薬のラベルに記載されている。平成 13 年 9 月現在登録されている農
薬は殺虫剤 1,699 件、殺菌剤 1,176 件、殺虫殺菌剤 567 件、除草剤 1,362 件、農
薬肥料 47 件、殺そ剤 39 件、植物成長調整剤 119 件、その他 196 件、合計 5,205
件となっている。
農薬には無機化合物を有効成分とする農薬(銅製剤、石灰硫黄合剤など)と有機
化合物を有効成分とする農薬(有機農薬)があり、大部分が有機農薬である。有機
農薬には 1)植物の成分を有効成分とする天然物殺虫剤(除虫菊、デリス、硫酸ニ
コチンなど)
、天然物殺菌剤(レシチノン、モザノン)、2)抗生物質農薬(ブラエス、
カスミン、ポリオキシン、バリダシン、ストレプトマイシンなど)、3)有機合成農
薬がある。有機合成農薬では有機リン剤、カーバメート剤、有機イオウ剤などが古
くからあるが、その他に殺虫剤では合成ピレスロイド剤(スミサイジン、マブリッ
ク、トレボンなど)やBT剤(バシレックス、ダイポールなど)、IGR剤(アタ
ブロン、ノーモルト、アプロードなど)などがある。殺菌剤では同様に、フェニル
アミド系(リドミル、サンドファンなど)やEBI剤(バイレトン、ルビゲン、バ
イコラール、トリフミンなど)などがある。除草剤ではフェノキシ系やトリアジン
系の剤が古くからあるが、最近は植物のアミノ酸の合成を阻害する各種の化学構造
をした除草剤(グリホサート、スルホニルウレア系など)が多数ある。さらに、細
菌、ウイルス、糸条菌、や天敵昆虫を防除に用いる生物農薬も農薬として登録され、
使用されている。
また、農薬を取り扱う上での注意を喚起するために、農薬の人畜に対する毒性を
動物やヒトにおける知見に基づき「毒物」
「劇物」
「普通物」に分類され、農薬に明
記されている。
(1) 動物における知見
① 急性毒性:
経口
毒物:LD50 が 30mg/kg 以下のもの
劇物:LD50 が 30mg/kg を超え 300mg/以下のもの
経皮
毒物:LD50 が 100mg/kg 以下のもの
劇物:LD50 が 100mg/kg を超え 1000mg/kg 以下のもの
吸入
毒物:LC50 が 200ppm(1hr.)以下のもの
劇物:LC50 が 200ppm(1hr.)を超え 2000ppm(1hr.)以下のもの
② 皮膚・粘膜に対する刺激性
(2) ヒトにおける知見:ヒトの事故例などを基礎として毒性の検討を行ない、判
定を行なう。
さらに、魚類に対する影響についても、下記の基準(原則)にもとづき魚
毒性が分類され、農薬に明記されている。
A類(通常の使用方法では問題ない):
コイに対するLC50 値が 10ppm を超え、かつミジンコに対するLC50
値が 0.5ppm を超えるもの
B類(養魚田、空中散布、施設など特定の使用条件では注意を要す):
コイに対するLC50 値が 10ppm≧LC50>0.5ppm、又は、ミジンコに
対するLC50 値が 0.5ppm 以下のもの
C類(水産動物に強い影響を及ぼすので、使用には注意を要す):
コイに対するLC50 値が 0.5ppm 以下のもの
(コイは 48 時間のLC50 値、ミジンコは 3 時間のLC50 値)
2)農薬散布作業上での留意点
(1) 散布作業前
① 農薬の特性を良く調べ、作物別に 1 年間の防除に使用する薬剤の散布暦を
事前に作成しておき、薬剤の選定を行う。これは、農薬の使用回数を減ら
し、合理的防除を行う上では必須の作業である。
② 使用する農薬のラベルを必ず読むこと。ラベルには適正使用上の留意点、
行為の強制、禁止事項が記入されており、必ず遵守すること。
③ ラベルに記載されている適用範囲(どんな作物に使用できるか、どんな病
害虫・雑草に使用できるか)、薬量・希釈倍数、散布方法、総使用回数(1
作期に使用できる回数)
、使用時期(作物の成育ステージとの関係や収穫前
日数など)を遵守する。すなわち、農薬を適正範囲内で使用した(使用基
準を遵守した)農作物は、農薬登録に際して提出された試験データにより、
作物残留許容基準を超えないことが保証されている。一方、農薬を適用範
囲外で使用した農作物は、法律により販売・流通させることができない。
④ 散布器具の故障や不備がないように、使用前に点検、整備しておくこと。
⑤ 散布液が対象作物以外にかからないようにするなど、周辺への危被害防止
対策を考慮して、散布ルートなどを考える。
(2) 散布時
① ぼうし、農薬散布マスク、メガネ、ゴム手袋、ゴム長靴、専用防除衣など
を着
用し、薬剤が皮膚にかかったり、吸い込んだりしないようにする。
② 作業内容に合わせて、保護衣、保護具を選び、うまく組み合わせること。
③ 夏の日中をさけ朝夕の涼しい、風の少ない時間帯を選んで作業する。
④ 希釈倍数、散布量を間違えていないか、都度確認する。
⑤ 一人作業では 2 時間程度を限度とし、また連日散布することはさける。
⑥ 作業中の喫煙、飲食はやめる。
⑦ 散布液は残さず使い切る。散布液を河川、用水などの目的外に飛散、流入
することがないように注意する。
(3)散布後
① 使用した器具はきれいに洗浄する。
② 空袋、空ビンはラベル表示に従って正しく処分する。
③ 農薬はカギをかけて保管する。
④ 一連の散布作業が終わったら、うがいをし、身体をきれいに洗い、飲酒を
控え、夜は早めにやすむ。作業に使用した衣類、下着もきれいに洗濯して
おく。
⑤ 農薬の散布記録をきちんとつけておく。
3.家畜管理作業
1)畜産施設への出入り
(1) 牛舎に入る時、靴を消毒槽で消毒する。
(2) 牛舎内は,濡れてすべる場合があるので、足元には十分注意する。
(3) 実習後や家畜への処置後は手を洗い、衣服・靴の汚れを落とす。
(4) 作業安全・衛生のため、装飾品などははずす。また、長髪の場合は束ねるな
ど作業衛生上配慮すること。
2)家畜への対応
(1) 大声、威嚇、急な動きなど家畜を刺激する行為をしない。
(2) 蹴られる危険があるため家畜の後ろにはたたない。
(3) 家畜の左右に立つときは、家畜が動いてパイプや壁との間にはさまれたり、
足をふまれたり、尻尾をはたかれたりしないように注意をはらう。
(4) 家畜の捕獲、移動、および処置する場合は、担当教員の指示に従う。
(5) 人工授精など家畜に処置を行う場合は、家畜をしっかり保定する。
(6) 妊娠および分娩前後の家畜には極力静かに近づき対応する。
3)農具などの取り扱い
(1) フォ-クやシャベルなどの農具を使う場合は、作業範囲内に他者が入らない
ように気を配るとともに、自身の足、手、指に十分配慮する。
(2) 配餌車やロ-ダ-などの作業車にむやみに近づかない。また、複数で作業す
る場合は互いに確認をとりながら行う。
(3) 農場実習中は、担当教員の説明をよく聞いて、わからない事があった場合は、
その場で質問する。
(4) 実習中に体調を崩した場合や怪我をした場合は、担当教員に速やかに連絡す
る。
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