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概要 - 岐阜県

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概要 - 岐阜県
魚類相の概要
本県は海に面しておらず、大きな天然の湖もないが、標高 3,000 m を越える
河川の源流部から海抜 0m の水郷地帯まで、さまざまな水環境を有している。
そのため、冷水性の渓流魚から温暖な環境を好む汽水魚まで多様な魚種が分布
している。また、県内の河川水系は太平洋側と日本海側に大別され、両者間で
魚類相が異なる。太平洋側を流れる揖斐川、長良川、木曽川、土岐川、矢作川
の5水系の中で、一般に木曽三川と呼ばれる揖斐川、長良川、木曽川は、源流
部の山岳渓流から中流部の田園地帯を経て、下流部で水郷地帯を形成し、伊勢
湾に流入する規模の大きな河川であり、県内でも特に多くの魚種が見られる。
日本海側の神通川(宮川、高原川)、庄川、九頭竜川(石徹白川)の3水系につ
いては、本県に属する水域は源流部から上流部の比較的低水温域に限られてい
る。また、本県より下流部にダムがあるため、通し回遊魚が日本海から遡上す
ることは不可能である。しかし、太平洋側の河川には見られないヤマメや、太
平洋側とは斑紋の異なるアジメドジョウが分布している。
河川本流には主として流水を好む魚種が生息し、太平洋側の河川では海から
遡上するアユやハゼ類、カジカ類などの通し回遊魚が生息する。木曽三川下流
部では過去に多くの汽水魚が県内でも確認されているが、現在は汽水域の残さ
れた河川にわずかに見られるのみである。丘陵地や平野部のため池や河跡湖、
水田地帯の水路には止水性の魚種が生息しており、特に南部の水郷地帯には小
型の淡水魚にとって格好の住処となる河跡湖や水路が残されている。河川上流
部に造られた大規模なダム湖にも止水性の魚種が生息するが、その多くは国外
および国内の他地域から持ち込まれた外来魚である。
過去の記録を精査して検討した結果、県内には 104 種の魚類が確認されてい
る。このうち、自然分布は 80 種であり、国外外来種は 15 種、国内外来種は 9
種であった。
選定種の状況
今回の改訂にあたり、岐阜県内に現在生息している魚種を明確にする作業を
行った。20 編の文献と環境省及び国土交通省の報告書などを集約して得られた
156 種の魚名リストから、複数種の混同した記録や誤同定と考えられるもの(19
種)を排除し、長良川の河口部など県外の記録と考えられるもの(33 種)も除
いた結果、104 種が本県内に生息すると考えられた。この中から国外外来種 15
種と国内外来種 9 種を除き、本県内に自然分布する 80 種を評価対象種として選
定した。これらの中には、和名および学名が未確定だが生物学的に独立した種
として考えられるもの(スナヤツメ北方種とスナヤツメ南方種など)も含まれ
ている。
選定された 80 種すべてについて、過去の採集状況や今回新たに行った採集調
査の結果から、現在の生息状況を判定した。その結果、レッドリストへの掲載
を検討すべき 32 種を決定した。これらのうち既掲載種(13 種)については、
状況が悪化あるいは改善している場合にカテゴリーの変更を行った。また、今
回新たに掲載した種については、過去と現在の生息状況に基づいてカテゴリー
を決定した。
今回の改訂により、絶滅危惧 I 類 8 種、絶滅危惧 II 類 5 種、準
絶滅危惧 14 種、情報不足 4 種の合計 31 種を選定した。全体として前回の掲載
種 13 種に比べ 18 種増加した。これは、各魚種の生息状況が改善されていない、
あるいは悪化していることと、前回検討されなかった汽水域の魚種について検
討を行った結果である。
絶滅危惧 I 類として、イタセンパラ、ウシモツゴ、ハリヨのランクは現状維持、
カワバタモロコ、イチモンジタナゴ、シロヒレタビラ、ネコギギは状況悪化に
よりランクアップ、前回情報不足であったデメモロコは今回の調査によって危
機的状況にあることが判明しランクインした。これらの多くは濃尾平野の水郷
地帯の細流に棲む小型魚であり、環境の悪化や魚食性外来魚による被食のほか、
タナゴ類については産卵に必要な二枚貝の減少も生息状況悪化の原因とみられ
る。
絶滅危惧 II 類として、カマキリ(アユカケ)は状況悪化によりランクアップ、
シラウオ、クルメサヨリ、カジカ小卵型が新たにランクインした。スナヤツメ
北方種は、前回の準絶滅危惧種であるスナヤツメが最近の研究によりスナヤツ
メ南方種との2種に細分化したものであり、両種の生息状況を個々に検討した
結果、北方種は II 類に相当すると判断された。カマキリ、カジカ小卵型、シラ
ウオ、クルメサヨリは川と海とを行き来する通し回遊魚や汽水魚であり、移動
の阻害や下流域の淡水化などが生息状況の悪化を招いている。
準絶滅危惧種として、ドンコのランクは現状維持、ホトケドジョウは新たに
多くの生息地が見つかったことでランクダウン、今回新たに独立した種として
検討したスナヤツメ南方種を含め、残りの 12 種は今回新たにランクインした。
これらの大半は細流などに棲むコイ科の小型魚と汽水魚である。
情報不足として、ツチフキ、サクラマス(ヤマメ)、カワアナゴ、オオヨシノ
ボリの 4 種が新たに掲載された。一方、前回情報不足とされたスジシマドジョ
ウ小型種東海型(スジシマドジョウ)については、今回の調査から多数の生息
が確認され、リストから除外した。
<魚のからだ各部の名称>
魚類各種のページはこちら
http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11264/sizen/red_data2/fish.html
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