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学んだことを活用し,豊かに表現する子どもを育成する国語科の指導Ⅲ

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学んだことを活用し,豊かに表現する子どもを育成する国語科の指導Ⅲ
平 成 25 年度
Ⅰ
吉野 小学 校 職員 研 修「 テー マ 研究 」ま と め
研究テーマ
学んだことを活用し,豊かに表現する子どもを育成する国語科の指導Ⅲ
~自己の読みを深化させる授業の創造~
Ⅱ
研究経過
1年次(平成23年度)
研究内容
1
2年次(平成24年度)
3年次(平成25年度)
・「 読 むこ と 」の 学 習の ・ 子どもが主体的に読むため ・読み取ったことを書いて
基 礎研 究
の手立て
表現するための手立て
・言語活動の設定の仕方
(
「読むこと」の学習)
・基本的な学習過程
・ 単 元 に お け る 言 語 活 動 ・授業力向上のための手立て
・授業力向上のための手立て
の位置付け
・学習の進め方
・ 授業力向上のための手立て ・研 究 のま とめ
テーマについて~昨年度の成果と課題から~
本校では,昨年度までの2年間,「学んだことを活用し,豊かに表現する子どもを育成する
国語科の指導」を研究テーマに,実生活で生きてはたらく表現力をつけるための授業展開に
ついて研究・実践を行ってきた。
研 究 内 容 と し て , 一 昨 年 度 は ,「 読 む こ と 」 の 学 習 の 基 礎 研 究 , 言語活動の設定の仕
方,基本的な学習過程の工夫について,昨年度は,子どもが主体的に読む手立て,単元にお
ける言語活動の位置づけ,授業力向上のための手立てについて共通理解を深め,実践を行った。
そして,昨年度の成 果 と 課 題 と し て , 以 下 の よ う な こ と が 挙 げ ら れ た 。
【成果】
単元のねらいを達成するために,言語活動をどのように位置づけていくのかを意識しな が
ら,教材研究を行い,授業に生かすことができた。また,子どもが主体的に読む手立て とし
て『交流』を取り入れたり,ワークシートを工夫したりすることで,子どもたちが進 んで,
読みを深めていこうとする積極性や互いの思いや表現のよさに気づくことができる 子どもが
見られるようにな った。
【課題】
子どもが,さらに読みを深めるための『交流』のさせ方やワークシートの工夫について 考
えていかなくてはならない。また,子どもが,読み取ったことをもとに,豊かに表現で きる
よう にする にはど のよ うな手立てが必要な のかも考えていか なくてはならない。 その ためには,
教師の授業力の向 上も 欠かせない。
本 年 度 は , 研 究3 年 目 で ま と め の 年 で ある と い う こ とで , 昨年 度 まで の 理論 研 究や 実 践
を 生か しなが ら, より 「豊 かに表 現す る」 ことを 意識 した 研究を 進め るこ とにし た。
豊 か に 表 現 す る た め に は , こ れ ま で と 同 様 ,「 主 体 的 に 読 み 取 る こ と 」 が 必 要 で あ り ,
「 読 み 」 の あ り 方 や 言 語 活 動 と の 関 連 ,『 交 流 』 や ワ ー ク シ ー ト の 工 夫 な ど を 考 え な が ら
授 業 を 構 成 し た 。 そ れ に 加 え て ,「 書 く 活 動 」 を 効 果 的 に 取 り 入 れ , 読 み 取 っ た こ と を も
と に, ノ ー ト や ワ ー ク シ ー トに 「 書 く 」 こと に よっ て ,子 ど もが 自 分の 読 みや そ れに 対 す
る 考 え を 確 認 ・ 整 理 し , 進 ん で 表 現 さ せ る よ う と 考 え た 。 そ の た め に ,「 書 く 活 動 」 の 取
り 入れ方 ,「書 き方」 の指 導法 ,表現 力を 高め る手立 て等 の研 究が必 要で ある 。
2
本年度の取組について
こ の よ う に , 本 年 度 も 「 読 む こ と 」 の 学 習 に 焦 点 を 当 て ,「 言 語 活 動 の 位 置 付 け 」 や
「 主 体 的 に 読 み 取 る こと 」 と い っ た 昨 年 度 ま での 研 究 を 生 か し て い きな が ら , 思 考力 ・ 判
断 力 ・ 表 現 力 を 高 め ,学 ん だ こ と を 生 か し て 表現 で き る 子 ど も を 育 てて い く た め に, 次 の
よ うな 内容 につい て研 究を 行うこ とに した 。
(1)単元を貫く言語活動の位置付けと単元構想
(2)子どもが主体的に読み取ったことを書いて表現に生かすための手立て
① 子どもが主体的に読み深めるための指導の工夫
ア 子どもの思考を促すための学習の手引き
イ ワークシート
ウ 発問の工夫
② 読みを深めるための「書く」活動の位置付けや活動の方法,交流活動の工夫
(3)表現力を高める手立て
(4)授業力向上を図る手立て
(5)研究のまとめ
- 1 -
【年間計画】
月 日 曜
研
容
4 22 月 Ⅰ
本年度のテーマについて
5 27 月 Ⅰ
研究の方向性,共通実践事項等
6 24 月 Ⅰ
研究視点の確認,言語活動事例紹介等
7
授業研究会(全体研究授業) ◎中学年部(4年)
【講師招聘】 学年相互授業参観
1
月 Ⅰ
22 月 Ⅰ
8 29 木 Ⅰ
10
7
月 Ⅰ
11 11 月 Ⅰ
25 月 Ⅰ
12 12 月 Ⅰ
2
※
Ⅲ
3
月 Ⅰ
Ⅱ
究 内
年間研修計画案
今後の研究(中学年部研究授業から)
学年実践事項の確認
Ⅱ
Ⅱ 学年テーマ研究
Ⅱ 学年テーマ研究
教材研究,指導案作成
学年テーマ研究内容,言語活動指導例
授業研究会(全体研究授業) ◎低学年部(1年)
【講師招聘】 学年相互授業参観
ワンペーパー授業
授業研究会(全体研究授業) ◎高学年部(5年)
【講師招聘】
今後の共通実践(低・高学年部研究授業から)
テーマ研修のまとめ
Ⅱ
Ⅱ
学年授業のまとめ
次年度の研究テーマについて
全体 研究授業を 年間で3 回行った。 また,授業 研究会では,ワークショップ型討議を取り入れ,全職
員が積極的に発言しながら研究を深めていけるようにした。
研究内容
子どもが主体的に読み取ったことを書いて表現に生かすための手立て
1
単元を貫く言語活動の位置付けと単元構想
指 導 事 項 , 子 ども た ち の 実 態 を 踏 ま え て, 言 語 活 動 を位 置 付け , 単元 構 想を 行 い, 言 語
活動を重視した授業づくりを行う。
→ 単元を通して,子どもたちにどんな力を身に付けさせたいかを明確にして,子ど
もたち自身も何ができるようになったかを実感できるような授業づくりをする。
【単元構想の手順】
手順① 単元で身に付けたい力を明らかにする。
〈視点〉
○ 取り上げる指導事項を確定する。
○ 3領域とどのような関連があるのかを考える。
○ 単元の系統を考える。
(各学年の系統と同学年の中での系統)
・これまでにどんな言語活動を経験し,どんな力が子どもたちに身に付いてきたか。何
がまだ身に付いていないか。
手順② 明らかにした身に付けたい力が身に付く言語活動を設定する。
〈視点〉
○ 子どもの実生活とどのような関連があるのかを考える。
○ どのような教材を中核教材とし,どのような教材を副教材とするのかを考える。
手順③ その言語活動を行う上で必要な具体的な能力を洗い出す。
〈視点〉
○ 単元でどのような指導を重点化していくかを考える。
○ 子どもにすでに身に付いているどのような能力を活用していくかを考える。
○ 次の同じ領域の学習でどのような指導を重点化していくのかを考える。
手順④ これまでの手順で明らかにした能力を身に付けられるように単元を構想する。
〈視点〉
○ 導入の工夫,関連教材の選定,ワークシートの工夫などを考える。
○ 「読むこと」と表現との関連を考え,読み方を確定する。
- 2 -
【単元の基本的な学習過程】
過程
学
習
活
動
と
留
意
点
1 課題の設定
課題と直結する言語活動を行わせる
・教材文を読んだ感想を書く。
・教材文から情景描写や行動描写などを書き抜く。
・読書紹介カードを書く。
作品等から自己の学びの必要感を引き出す
・教科書教材を読んで,関連活動を行う。
(読み聞かせを聞く,登場人物の魅力について話し合う,説明していることについて知っ
ていることを一覧にする,初発の感想を交流するなど)
・既習の学習経験について振り返る。
(既習教材と読み比べる,既習教材の学び方を想起させ,学習に生かせないかを話し合う,
既習教材を使って読み取りの観点などを明らかにするなど)
・周辺作品から読む。
(シリーズや同一作者の作品などのブックトークを聞く,同じテーマの作品を並行読書するなど)
・完成作品を見る。
(ゲストティーチャーの話を聞く,前年度の子どもが行った読書紹介カードや自分の考え
を主張した文章などを読むなど)
第
自分の実態を自覚させる
・読書や表現の経験を想起する。
(あるテーマの作品を読み,そのよさについて話し合う,今までの読書経験を基にあるテ
ーマについて話し合うなど)
・自分の経験したことを想起する。
(出会いや別れなどの体験を思い出し,短い作文を書く,説明していることに関連する自
分の経験を箇条書きで書くなど)
一
次
(
導
入
)
2 学習計画の協議
学習課題をどのように解決していくのかを話し合う。子ども自身が学習のプロセスを理解する
ことで,主体的に学習にかかわることができるようにする。学習計画を協議するためには,子ど
もが課題を解決するために,どのように読むのか,書くのか,話すのかを考えさせていく必要が
あり,教師は,子どもがそれらの観点を導き出せるように助言していく必要がある。高学年にな
るほど,子ども中心に学習計画を協議していく。具体的には,以下の内容を話し合う。
〈学習計画を協議する際の観点〉
① 学習目標
低 学 年
② 学習方法と順序
③ 学習資料
中 学 年
④ 日程
⑤ 評価
高 学 年
何をするのかを教師と
導入部,展開部,終末
今までの学習を生かして,単元
いっしょに話し合う。
部のつながりを意識させ のゴールを実現するために,どの
て,教師と話し合う。
ように学習を進めていけばよいか
を考えさせる。
〈導入のポイント〉
導入において,過去の学習がどのように生かされるのかを子どもに考えさせます。
これまでの学習やこれからの学習の系統を教師が把握し,何が活用できるのかを分
析する必要があります。単元の特性や子どもの発達の段階に応じて,教師が一覧と
して示したり,子どもに気付かせたりすることが大切です。
・○○の単元では,どんな学習をしたかな。
・4年生で学習した場面を比べて読む読み方が生かせそうだ。
- 3 -
3 読みの展開
多様なテキストを用いて,指導事項の重点化を図り,設定した言語活動との関連を図りな
がら,目的に応じた読みを行う。同時に本の選択や必要な情報を検索する能力も身に付けさ
せるようにしていく。
(比べ読み,重ね読み,並行読書,指定読書,音読,朗読,劇,動作化など)
4 これまでに身に付けた能力(引用,要約,リライトなど)を活用できるようにし,設定し
た言語活動を具体化する。
(感想,紹介,書評,報告,討論,劇,映像など)
読
み
第
観
二
点
次
(
展
開
学
び
方
)
言
語
活
動
例
説 明的な 文章
の
文 学的な 文章
【読みの観点,学び方の重点化】
低学年(1・2年)
どのような
中学年(3・4年)
どのような
・ことがある・ことをする
・時
・場 ・出来事
・ことを言う・人がいる
・人物 ・行動 ・動作
・語り口である(リズム)
・会話 ・表情
どのような
どのような
・もの ・こと
・段落の関係
・順序 ・文の続き方
・筆者の考え
・まとまり
・組み立て ・述べ方
・問い,呼びかけ
○ キーセンテンスを取り出
○ キーワードを取り出して
して読む。
読む。
○ 比べて読む。
○ 比べて読む。
・挿絵と
・人物を
・自分と
・出来事を
・前と後とを
・場面を
・作品を
高学年(5・6年)
どのような
・人称視点
・場面構成
・情景
どのような
・因果関係
・事実と意見
・例示等の効果的
な表現
○ キーワードを取り出
して,関連付けて読む。
○ 比べて読む。
・作品を ・作者を
・他者と
・音読発表会 ・感想の交流
・読み聞かせを聞く
・紙芝居 ・人形劇
・説明文を読む
・感想を書く ・本の紹介
・伝記を読む
・意見文,解説文を利
用する
・新聞を読む
・広告,パンフレット
などの推薦の文章
・感想の交流
・記録や報告の文章,図鑑や
事典などを読んで利用する
・記録や報告の文章を読んで
感想をまとめる
・本の紹介
・目的に応じた読書
〈展開におけるポイント〉
単元の学習内容を分析し,子どもが何を活用して学習を進めるかを考えます。また,読ん
だことを表現へとつなげていくために,読んだことが整理できるようなワークシートを工夫
したり,最終的な表現へとつながる表現のモデルを 学習させながら読んだりします。
【第2次をダイナミックに展開するために】
第2次では,第3次の言語活動を意識しながら,
その言語活動を行うのに必要な力を身に付けさせ
ていく授業を展開していく必要があります。その
ためには,各時が,単元の中のどのような位置付
けであるのかを明らかし,どのような読み方を展
開していくのかを考えた授業づくりを行う必要が
あります。
・分かりやすい説明の構成に気付いたよ。
・この作者は他の作品でも同じようなテーマで書いているな。
作者が伝えたいことが表れているね。
- 4 -
5 交流
交流することにより,自他のよさを実感させ,自分の読みや表現に生かすことができるようにする。
6 評価
これまでの自分の学習を振り返り,単元をとおしてどのような力が身に付き,何ができる
ようになったのか,また,何が課題なのかを明らかにし,次の学習へとつながるようにする。
第
三
〈終末におけるポイント〉
終末には,お互いの伸びを実感させ,これからの学習計画や読書計画について期待感を
もたせていく必要があります。そのため,自己評価・相互評価を行う際,展開部分で読ん
だり表現したりした学習内容を評価の観点として,子どもに理解させる必要があります。
子ども全員が同じ評価の観点を共有し,自己評価・相互評価を行うことにより,読んだこ
と表現したことがさらに深まっていきます。
次
(
・学んだことを生かして読むことができたな。
・○○くんの考えは,とても参考になったな。自分に生か
してみたいな。
終
末
学んだことを活用しようとする意識をもって学習を進
)
めることで,子どもは,活用するよさを実感したり,さ
らに学んだことを活用したりするようになると考えます。
そこで,学習の過程や解決のためのヒント,これまでの
児童作品等を提示したり,振り返りカードを生かしたり
して,子どもが学んだことを活用しようとする意識を高
めます。
振り返りカードは,学習計画表と一体となったものを使
用しました。子どもは,自分が今どのような学習活動を
しているのかを的確に把握しながら,活用できたことや,
今後活用してみたいことなどを単位時間の終末で,
振り返りの欄に書き込みます。
〈評価の例〉
2 子どもが主体的に読み深めるための指導の工夫
(1)ワークシート・発問の工夫
① ワークシートについて
教 師 が 子 ども た ち に ど の よ う に 書 かせ た い の か ,ど の よう に 書け た らよ い のか と い
う こ と を 明 確に し , さ ら に , 子 ど も たち が 何 を 手 が か り に 書く の かを 想 定し な がら,
子どもが思考しやすいワークシートを作成した。
ま た , 書 く活 動 に お い て , 教 師 が 意図 的 に ( 何 文字 が 適当 か を踏 ま えた ) 字数 制 限
を 加 え る こ と に よ っ て , 文 章 の 型 を 意 識 し な が ら , 引 用 箇 所 の 選 定 ( 程 度 ), 理 由 付
け の 必 要 性 等を 考 え な が ら 書 か せ る こと が で き た 。し か し, 書 くこ と が苦 手 な子 ど も
たちへの手立てを考えながら使用していく必要がある。
ポイントシート 学習に必要な知識・技能を知る。
書くことに関するポイントを示しているので,板書の時間を短縮できたり,必要
に応じて何度も確認ができたりして,活動の時間を十分に確保できる。また,チェッ
クポイント形式であれば,振り返りにも利用できる。
→ どの程度のポイントを示すのか,配布のタイミングはいつか。
ワークシート 知識・技能を生かして追究し,深める。
子どもの思考を促すのに適している。
→ 何のために,何をどのように,どんな条件で書かせるのか。
(例)全文ワークシート
全 体 を 一 目 で 見 ら れ るこ と に よ っ て, 筆 者の 論 の進 め 方, 文 章の 特 徴
を捉えることができる。
→ ライン・マーキングの観点,書き込ませること,添付資料は何か。
- 5 -
チェックシート 学習して身につけたことを確認し,さらに深める。
本 時 の学 習 を 振 り 返 っ て , 読 み取 っ た こ と をも と に一 言 感想 を 書い た り, 自 己
評 価 を した り す る こ と に よ っ て ,子 ど も 自 身 が本 時 の学 習 でど ん なこ と がで き る
よ う に なっ た か , 読 み が ど の よ うに 変 容 し て い っ た か を確 認 する こ とが で きる。
ノ ー ト と 比 べ て , 教 師 が 意 図 的 に 作 成 す る こ と に よ っ て , 学 習 効 果 は 高 ま る が,
基 本 的 な ノ ート 指 導 が で き な い 点 や 振り 返 り ・ 蓄 積が し にく い 面が 考 えら れ る。 ワ ー
ク シ ー ト を 使う べ き 場 面 を 見 極 め て 使用 す る こ と やフ ァ イリ ン グを し て学 習 の積 み 上
げ が 実 感 で きる よ う に す る こ と 等 を 考慮 し な が ら ,効 果 的に ワ ーク シ ート を 活用 し て
いく 。
②
発問について
活動に入る前に,学習の進め方やゴールの確認する。その際は,ボード等に掲
示をする等,視覚的にも理解しやすい工夫をして,子どもたちが見通しをもって
活動に取り組めるようにしていった。
ま た ,「 ど の 言 葉 か ら 分 か り ま す か 」 等 , 根 拠 を 問 う 発 問 に よ り , 叙 述 に 即 し た
読 み を 展 開 し た り ,「 ○ ○ さ ん の 考 え と 比 べ て ど う 思 い ま す か 」 と 考 え を 比 較 さ せ
る等,思考方法(比較,仮定,関連づけ等)をはっきり示す発問をしたりするこ
とにより,子どもたちが,積極的に思考活動に取り組み,読みを深めさせるよう
にした。
(2)「読み」を深めるための「書く活動」の位置付けや活動方法の工夫・改善
学習指導要領には,
「読むこと」の言語活動例として,
「書く活動」が関係している例が紹
介されている。指導事項を分析し,ねらいに応じて,このような言語活動を取り入れていっ
た。
キ ー ワ ー ド を 取 り 出 し 関 連 づ け た り ,場 面 や 前 後 の 表 現 ,自 分 や 他 者 と 比 べ た り ,条
件 を つ け て 考 え さ せ た り し な が ら ,予 想 や 分 か っ た こ と ,自 分 の 考 え や 意 見 ,感 想 等 の
「 書 く 活 動 」を 効 果 的 に 取 り 入 れ て い く こ と で ,文 章 を 正 確 に 捉 え ,内 容 を 理 解 す る こ
と に つ な が り ,単 元 や 単 位 時 間 の ね ら い に 効 果 的 に 迫 る こ と が で き た 。そ し て ,交 流 し
合うことで,読みを深め,自分の思いや考えを明らかにしていくことができた。
(3)交流活動の工夫・改善
子どもが豊かに表現する場として,
『 交 流 』が あ る 。今 年 度 も 昨 年 度 に 引 き 続 き 交 流 活
動 を 取 り 入 れ る こ と で ,子 ど も た ち 一 人 一 人 が ,読 み 取 っ た こ と を も と に 自 ら の 思 い を
豊 か に し ,そ の 思 い を 伝 え 合 う こ と で 読 み を 深 め ら れ る よ う に し て い っ た 。ま た ,自 分
の 読 み や 考 え を 整 理 す る た め に「 書 く 活 動 」を 取 り 入 れ る こ と に よ っ て ,子 ど も た ち が
さ ら に 自 信 を も っ て 表 現 す る こ と が で き る よ う に な っ た 。そ し て ,
『 交 流 』の 中 で ,進 ん
で 表 現 し よ う と す る こ と で ,読 み を さらに深め,様々な意見や表現方法に触れ,豊かに表
現できる子どもたちが増えてきた。
【交流に関する指導】※
学習指導要領より
(低学年)
文章の内容と自分の経験を
結び付けて,自分の思いや考
えをまとめ発表できる。
(中学年)
文章を読んで考えたことを
発表し合い,一人一人の感じ
方に 違い があ ることに気づ
く。
- 6 -
(高学年)
本や文章を読んで考えたこと
を発表し合い,自分の考えを広
げたり深めたりすることができ
る。
【交流活動の流れ】
① 自分の考えをもたせる。(個による思考活動の充実)
言 葉に 着 目さ せ ,交 流 を活 性 化さ せ るた め に一 人 調べ を 十分 に 確保 し ,ノ ー ト, ワ ー
クシート等にしっかり自分の考えを書かせ,交流する内容をしっかりもたせておく。
②
交流の目的(ゴール),意見の伝え方,形態(人数),時間の確認をする。
ア 目的(ゴール)
まとめる交流
a 結論を出す。 b 共通点・相違点を見つける。 c 解決する。 d 対比する。
e 新しいものをつくる。
f 考えを深める。
【教師の指示】
・ 「意見を発表し合い、一番よいと思った意見を一つ選びましょう。」
・ 「グループで出された意見のよいところを組み合わせて一つの意見にしましょう。」
比べる交流
g 発想を広げる。 h 共通点・相違点を見つける。 i 参考にする。
j 対比する。
k 確認する。 l 意見を求める。 m 考えを深める。
n 検証する。 o 他視点から検討する。
【教師の指示】
・ 「お互いの意見を紹介し合い、参考になった言葉をメモしましょう。」
・ 「 ○分間でできるだけたくさんの考えを出し合いましょう。
」
・ 「 グループで出された意見を比べて,同じところと違うところをまとめましょう。
」
イ
ウ
意見の伝え方
書いたものをもとに・・・
a 口頭で述べる。
b
形態(4人)
a ノーマル型
読み合う。
b T字型
c
並べて比べ合う。
c
風車型
子 ど も 同士 の 距 離 , 活 動 場 所 の 確保 の 面 か ら ,本 校 では , まと め る交 流 ,比 べ る
交 流 , い ずれ も T 字 型 で 行 う こ と にし た 。 ま た ,1 年 生は 「 ペア で の交 流 に慣 れ さ
せてから人数を増やしていく」といった各学年の発達段階も考慮して行った。
③
役割分担をする。(一人一役)
一 人 一 役 , 全 員 が全 て の 役 割 を 経 験 で きる こ と を 原 則 と し た が ,1 年 生 は 「 司 会 者
だ け 決 め る → 役 割 を 増 や す 」「 教 師 の 意 図 的 分 担 → 輪 番 」 と い っ た 各 学 年 の 発 達 段 階
を考慮して行った。
ア
司 会 → 話題にそって交流を進めていく。(発達段階,交流の目的に応じた話形の工夫)
<話形>
1 交流内容を確認する。
「これから○○について交流します」
2 指名をして意見を出させる。 「はじめに,○○さん,お願いします」
※ 根拠を明らかにしながら意見を述べさせる。
まとめる交流→(例)よいところを組み合わせて1つの意見にまとめるとき
3 意見を整理し,グループの意見をまとめる。
「それぞれの意見でよいところ(○班の意見に取り入れたいところ)
を発表してください」
「 ○ ○ さ ん と △ △ さん の 意 見 は 似 て い る ので ~ ~ ~ と まと め てい い です か 」
「どの意見を○班の意見に決めますか」
4 グループの意見を確認する。
「○班の意見は~~~~です。発表者の○○さん,よろしくお願いします。」
- 7 -
イ
ウ
エ
比べる交流→(例)互いの意見や考えを紹介し参考にするとき
3 それぞれの意見に対して質問させる。また,必要に応じて,司会が質問する。
「出された意見について質問はありませんか」
「なぜ,そのように考えたのですか」
4 自分の意見を見つめ直させる。
「交流したことをもとに,自分の考えをもう一度まとめましょう」
計時→時計を見ながら,時間内に交流の目的が達成できるように働きかける。
記録→交流の過程や結論を記録する。(記録させる内容を事前に確認)
発表→記録用紙を見ながら決まったことを発表する。(発表内容,話形の確認)
交流のしかたカード
【下学年用】→話形を中心(見ながら進行)
【上学年用】→進め方を中心(ヒントカードとして利用)
役割分担のための掲示
- 8 -
④
目的(ゴール)に向かって交流する。(練り上げの意識づけ→集団による思考活動の充実)
ノ ー ト や ワー ク シ ー ト に 書 き 込 ん だこ と を 友 達 に伝 え るこ と で全 体 交流 の 場で も 発
言 し て も 大 丈夫 だ と い う 安 心 感 を も たせ る と と も に, 友 達の 考 えを ヒ ント に 考え を 広
げ る こ と が でき た 。 ま た , 自 分 と は 別の 見 方 や 考 え方 を 知る こ とで 自 分自 身 を振 り 返
り,考えを修正することもできた。
⑤
グループ交流の結果を発表する。全体交流をして深め合う。
口頭で発言させる場合,発表者が全体を見渡しながら発表できる場所で発表さ
せる。また,記録用紙を提示(用紙・ボード等)させる場合は,学習者全員が見
ることができるように,拡大表示したり移動させたりして,全体で共通点(キー
ワード等)を考えさせる等,さらなる深まりが得られるように配慮する必要があ
る。
3
○
○
○
○
表現力を高めていくための手立て
子どもが自分の思いや考えを書いて表現できるようにするためには,
「書かせ方の工夫」や「何をどのように書けばよいのか」という「書く方法」の指導
自分の考えを支える「読みの根拠」が明らかにできる手立ての工夫
語彙力を高める手立ての工夫
「読むこと」の授業以外の時間での取組,指導
が大切であり,身につけた力が「学ぶ力」にもなっていく。
(1)「書く方法」の指導
「 ~ を ま と め ま し ょ う 」「 ~ を 書 き ま し ょ う 」 と い っ た 活 動 指 示 だ け で は , 子 ど も は 十
分 な 表 現 が で き な い 。 よ っ て ,「 何 」 を 「 ど の よ う に 」 書 け ば よ い の か と い う 具 体 的 な
指 示 を 行 う 必 要が あ る 。 ま た , こ の 積 み重 ね が , 今 後に 生 きる 書 く方 法 を身 に つけ さ せ
ていくことになった。
【例】要約文を書く場合の具体的な指示
表現方法→5W1H,書く観点→筆者の問い,○○の特徴,筆者の主張
(2)「読みの根拠」を明らかにできる手立て
自 分 の 考 え を支 え る 「 読 み の 根 拠 」 を明 ら か に で きる よ うに す るに は ,子 ど もの 読 み
へ の 姿 勢 が 大 き く 関 係 し て い る 。 子 ど も が 学 習 材 に 接 し た と き に ,「おや?」
「えっ?」 と
い う つ ぶ や き とと も に , 考 え た い と 思 う課 題 に 出 会 わせ る こと が 必要 で ある 。 そう す る
こ と で , 子 ど もを 思 考 さ せ る こ と へ 向 かわ せ る こ と がで き た。 そ して , 子ど も が考 え た
こと を書く ことによって,より明確にとらえ,集団によって表現し合い,個々の考えを高め合
っていけたようである。
(3)語彙力を高める手立て
表 現 の も と にな る の は 語 彙 力 で あ る 。国 語 辞 典 を 積極 的 に活 用 させ た り, 表 現に 必 要
な 学 習 の 手 引 き( ポ イ ン ト カ ー ド , 語 彙表 等 ) を 作 成し , 効果 的 に活 用 させ た りし て い
く こ と で , 語 彙力 を 高 め て い く こ と に した 。 ま た , 国語 辞 典の 活 用に つ いて , 一般 研 修
で 確 認 し て い った こ と で , 子 ど も た ち は付 箋 を 使 い なが ら ,意 欲 的に 語 彙を 増 やす こ と
ができたようである。
(4)授業以外の時間の取組
国 語 の 「 読 む こ と 」 の 領 域 だ け で は な く ,「 書 く こ と 」 の 領 域 に も 広 げ て い く こ と は
必要であった。また,授業以外の時間の取組を各学年で考え,共通実践していくことで,
さらに表現力を高めていくことができた。
特 に 「 自 分 の 思 いや 考 え を 書 く 」 と い う こと に つ い て は , 日 記 指導 が 重 要 視 され る こ
と が 多 く あ る 。効 果 的 に 書 い て 表 現 す る力 を 高 め て いく に は, 日 記の テ ーマ の 設定 や 書
き 方 の 指 導 も 大切 で あ る が , 何 よ り も 日記 を 書 く 側 の子 ど もも 日 記を 読 み, 指 導す る 教
師 も , 書 く こ と, 読 む こ と に 対 し て , ゆと り を も っ て真 剣 に取 り 組め る よう に する 必 要
があった。例えば,発達段階や子どもの実態によっても異なるが,日記の提出のさせ方,
取 り 組 ま せ 方 を工 夫 し て み る と , 子 ど もが 書 き た い と思 っ たこ と を書 き ,教 師 も丁 寧 な
コメント入れたり書く指導ができた。
- 9 -
効果的であった”表現力を高める”ための手立て
【1年】
・ 「さくぶんちょう」の指導→目,口,鼻,手等で感じたことを書けるようになって
きた。
・ 朝のスピーチ→すらすらと話せるようになってきた。
・ 本の紹介
・ 教科書の本文や挿絵を載せたワークシート→他の教科でも意見が書けるようになる等,書く
力がついてきた。
【2年】
・ 読書ボランティア等による読み聞かせを子どもたちは興味深く聞き,表現したいと
いう意欲につながった。
・ 国語の時間に学習した表現を日記やスピーチの中で使うようにさせた。言語への関
心が高まるとともに,表現の仕方を定着させるのに役立った。
【3年】
・ 朝の会,帰りの会で,スピーチをさせたことで,人前で話すことに慣れてきた。
・ 学年に応じた感想語彙表を作成し,他単元・他教科の授業でも感想を述べさせる際
に参考にさせたり日記で活用させたりしたことで,以前よりは意欲的に表現できるよ
うになってきた。
【4年】
・ 「今日の言葉」(宿題)を毎日活用した。(意味調べや短文作り)
・ 発表の段階で接続詞等を紹介し,活用させた。
・ 「話し合いの手順シート」で,話し合いに慣れ,スムーズに表現できている。
【5年】
・ 自分の考えを書く際に条件をつける。(100字のワークシート)
・ 語彙表の活用。
・ グループ活動を中心に授業をつくる。
・ 言語活動を行うための知識を整えて言語活動を行う。
・ 事前の意味調べ(子どもの意識を整える)
【6年】
・ 共通実践の授業後,評価文型式の日記を書かせた。段落を3つに分け,描写・事実・評
価とし,それぞれ書く内容を決めて書かせた。そうすることで評価文を書くのに慣れてきた。
・ 朝の会,帰りの会での1分間スピーチをしてきて,上手にできた子を賞賛すると,
それをまねして,うまくスピーチできる子が増えた。
・ 単語会話をやめ,文章会話をするように指導している。
- 10 -
4
授業力向上のための手だて
本校では,研究のテーマについて,全体だけでなく,学年部でも研究を進めてい
った。研究授業を行う学年だけでなく,他の学年においても,学年テーマを設定し,
学年相互授業参観を通して,研究を深めていった。また,教科や研究テーマと関係
なく,個人の授業力を高めるための取組として「ワンペーパー授業」を行った。こ
の取組は,教師が自主的に指導略案(自由形式)を作成し,授業を公開し合い,学
び合う目的で設定した。こうすることにより,多くの教師が,日々の授業改善・教
師の授業力の向上を図ることができた。
【ワンペーパー授業指導略案】
- 11 -
Ⅳ
各学年の授業実践
【1年】
<単元名>
こえにだしてよもう
「くじらぐも」
1 研究の視点
(1)単元を貫く言語活動の位置づけ
「くじらぐも」では,言葉をもとに想像を楽しんでは声に出して読み,声に出して読んで
はまた,想像を深めることを大切に考えた。そして,想像を膨らませ,声に出して読んだ後
は,それを生かして,くじらぐもへお手紙を書く活動を行った。
「手紙」を書く活動を計画す
ることにより,相手意識を明確に持って文章を書く学習を進めることができると考えた。
(2)読みを深めていくための「書く活動」の位置づけや活動方法のあり方
① 子どもの思考を促すための手立て
ア ワークシートの工夫
本文や挿絵が載ったワークシートを準備し
た。挿絵には,吹き出しをつけ,その場面の
子どもたちが,どのような気持ちで,どんな
話をしたか,自由に書くことができるように
した。
また,最後に本時の内容を生かし,一言手
紙を書く欄をつくり,最後のくじらぐもへの
お手紙に生かせるようにした。
イ
②
音読の工夫
自分で考えたセリフを交流し,グループで本文のどこ
に,そのセリフを入れるか話し合ったものを生かして,
音読の活動を取り入れた。読み方の工夫や,どんな話を
しているかを考えることによって,より物語の想像を膨
らませていくことができた。
交流活動との関連
書いたセリフをグループで交流し,本文のどこにそのセリフを入れるかを話し合わせ
た。その際に,本文を大きく書いたものを準備し,自分が考えたセリフを書いた付箋を
貼りながら,交流するようにした。友だちの書いたセリフを聞いたり,本文のどこに合
うかを話し合ったりすることで,想像が膨らみ,手紙を書くことができた。
(3)表現力を高めるための手立て
・ 宿 題 で 「 さ くぶ ん ち ょ う 」 に 取 り 組 んだ 。 最 初 は あま り 書け て いな か った が ,テ ー マ
や 視 点 を 与 え て, 取 り 組 ま せ る こ と に より だ ん だ ん と, 目 ,鼻 , 手な ど で感 じ たこ と を
書けるようになってきた。
・ 国語コーナーを設け,日記や感想文,手紙などを継続して掲示し,子どもたちの表現
意欲が高まるようにした。
・ 朝や帰りの会でスピーチしたり,おすすめの本の紹介をしたりすることにより,話す
力が向上してきた。
- 12 -
2 考察
【成果】
・ いろいろな方法を試した授業が参観できて,良かった。
・ 毎 時 間 , 国 語 の 授 業 で 自 分 の 考 え を 書 か せ た こ と に よ り ,「 書 く 力 」 が つ い て き た 。 他
の教科でも,考えや意見をまとめて書けるようになってきた。
・ 毎 時 間 , 交 流 の場 を 設 定 し た こ と に よ り, 自 分 の 考 えを 人 に話 す こと に 自信 が もて る よ
うになり,進んで発表する子が増えてきた。
【課題】
・ 1年生の交流のさせ方。
・ 付箋の活用の仕方。(色分けなど。)
・ 読みとりや,自分たちの気持ちを発表させる時間が足りなかった。
・ 自分たちの気持ちを書いたセリフの挿入が本文の文脈に合っていたか,妥当であったか。
・ グ ル ー プ で い っし ょ に セ リ フ を 入 れ た 本文 を つ く っ たが , 個人 ご とに セ リフ を 入れ た 文
をつくる方法もあったのではないか。
・ 最初に気持ちを考えさせる場面を指示する方法もあったのではないか。
【2年】 <単元名> 読んで,せつめいのしかたを考えよう 「しかけカードの作り方」
1 研究の視点
(1)単元を貫く言語活動の位置づけ
単元を貫く言語活動を「読んで,せつめいのしかたを考えよう」とし,各単位時間では,
「 し か け カ ー ド を作 る た め に は , ど の 言 葉や 文 章 に 気 を つ け て 読め ば いい か を考 え させ,
叙 述 に 即 し て 正 しく 読 み 取 る 」 活 動 を 位 置づ け た 。 そ こで , 段落 ご とに 読 み取 っ てい く 中
で , 筆 者 の 「 せ つめ い の こ つ 」 を 見 つ け ,ま と め て い く活 動 を取 り 入れ た 。そ し て, こ の
活動を自分の説明書を書く時に生かすようにさせた。
(2)読みを深めていくための「書く活動」の位置づけや活動方法のあり方
① 子どもの思考を促すための手立て
読みを深めていくために,筆者が書いた作り
方の説明の仕方で分かりやすかったところに気
づかせるようにした。そのためには,言葉の特
徴やきまりに関する事項を大切にさせた。具体
的には,音読や視写,キーワードを確認するた
めのメモや,キーワードやセンテンスのライン
引きなどを取り入れた。その結果,筆者の説明
で分かりやすかったところを「こつ」として,
次の4つをワークシートにまとめさせた。
【一斉音読とライン引きの様子】
・ 順序 を表 す言 葉(まず・つぎに・それから・こんどは・さいごに・これでできあがり)
を使う。
・ 写真(絵)と文を合わせて書く。
・ 数字を使う。
・ 作るときにすることと気を付けることに分けて書く。
ま た , 教 材 文全 体 を 通 し て 説 明 の 「 こつ 」 を 見 つ ける 段 階で は ,前 書 き〈 ざ いり ょ う
と ど う ぐ 〉〈 作 り 方 〉〈 つ か い 方 〉 の 4 つ の 部 分 で で き た 文 章 の 組 み 立 て に 気 づ か せ る よ
うにさせた。そして,最終的に,次の8点をまとめさせた。
・
・
・
・
②
組み立てのこつ
・ 前書きのこつ(何を作るか)
前書きのこつ(写真や絵)
・ 作り方のこつ(順序を表す言葉)
作り方のこつ(写真や絵を文に合わせて)
・ 作り方のこつ(数字を)
作り方のこつ(することや気をつけること) ・ つかい方
交流活動との関連
分かりやすく説明するための「こつ」を見つけるために,まず,しかけカードを作っ
たときの成功例・失敗例をもとに考えさせ,各自で,書いてあって良かったなあと思う
ところにラインを引かせた。そして,それを互いに伝え合い,どんなことに気をつけて
読んでいけ ばいいかと いうことに 気づかせる 目的で交流 活動を取り入れた。(グループ)
- 13 -
【交流活動とその後の発表の様子】
(3)表現力を高めるための手立て
読み取った説明の「こつ」をうまくまとめられるように,分かりやすい板書に心がけた。
順序を表す言葉や大切なところにライン引きしたものを提示したり,「こつ」を色分けし,
視覚的にもとらえられるように工夫したりした。その後,黒板で整理したものをワークシ
ートに箇条書きでまとめさせた。また,自分の説明書に生かす活動へとスムーズにつなげ
るために,まとめたものを読ませたり,本文の中で再確認させたりした。
【板書の様子】
自 分 の 説 明 書 を書 い た 後 に は , そ れ を 友達 と 互 い に 交換 さ せ, 読 み合 い ,気 づ いた こ と
や感想を伝え合い,交流させた。(ペア)
【自分で書いたおもちゃの作り方の説明書と,それに寄せられた感想文】
2 考察
【成果】
・ 読みを深めるために,言葉の特徴やきまりに関する事項を大切にすることで言語への関心や
理解が深まった。特に,音読や視写,キーワードを確認するためのメモ,キーワードやセンテ
ンスのライン引きなどが,自分の説明書を書く段階で役立った。視写に関しては,実際に説明
書を書く用紙を使って書かせたので,作文用紙の使い方や文量を把握しやすかった。
・ 板書を工夫することで,説明のこつを整理しやすく,分かりやすくまとめることができた。
・ おもちゃをしぼって,全員に作らせたことが,説明書を書くのに効果的だった。
・ 交流活動は,ペアやグループと教材の特性や児童の実態等に応じて変化を持たせながら臨機
応変に取り入れた。そのことで,書けない子への支援の場となることもあった。児童が互いに
アドバイスしながら,説明書を完成させたので,達成感を味わわせることができた。
【課題】
・ 毎時間の授業ごとに,授業内容等をしっかりふり返る時間をもつと,さらに良かった。
・ 見本の文章から,自分が使えそうな表現を選んで生かしていく選択力を養っていくことも大
切だ。
・ 授業で学習した内容が分かるワークシートやノートのとり方を研究すると良い。
・ 本単元で学んだことを,生活科や学級活動等さまざまな場面で生かしていく方法を考えてい
かなければならない。
・ 形式的な交流でなく,深まりのある交流活動を追究していきたい。
- 14 -
【3年】
<単元名>
物語の感想をまとめよう
「ちいちゃんのかげおくり」
1 研究の視点
(1)単元を貫く言語活動の位置付け
単 元 を 貫 く 言 語 活 動 を 「 物 語 の 感 想 を ま と め よ う 」 と し , 各 単 位 時 間 で は ,「 場 面 の 様
子 や 登 場 人 物 の 気持 ち を 考 え , 自 分 と 比 べて 読 む 」 活 動を 位 置付 け た。 そ こで , 場面 ご と
に 読 み 取 っ て い く中 で , 心 を 打 た れ た 場 面に 気 づ き , その 場 面を 中 心に 感 想文 を 書か せ る
という活動を取り入れた。
(2)読みを深めていくための「書く活動」の位置付けや活動方法のあり方
① 子どもの思考を促すための手立て
初発の感想一覧,感想語彙表,感想ポイン
ト&ワークシート(字数制限付・読み取るこ
とができたかのチェックもできる)を毎時間
使用していくことで,後の学習活動への積み
重ねをしていこうと考えた。
また,感想文を書く際には,場面の様子や
登場人物の様子,気持ちをしっかり理解する
ことで,心を打たれた場面とその理由がはっ
きりし,感想文が分かりやすくなっていくと
考えたので,一の場面と四の場面のかげおく
りを比較した後,読み取りの目標を決め,全
文ワークシートを活用しながら場面ごとの読
【初発の感想一覧】
み取りを行った。
【全文ワークシート】
【感想ポイント&ワークシート】
②
交流活動との関連
感想文を書いた後,自分と他者との考えや表現方法
の違いやよさに気づかせる目的で交流を取り入れた。
また,交流の際は,司会,計時,記録,発表の係を決
め,役割分担をさせて臨んだ。
【交流活動の様子】
- 15 -
(3)表現力を高めるための手立て
学年に応じた感想語彙表を作成し,子どもたちが
通常から日記の表紙裏に添付し,使った語彙に印を
付けたり,新たな語彙を考えて記入させたりする等
して活用させた。
【感想語彙表】
2 考察
【成果】
・ 子 ど も 一 人 一 人の 感 想 を 一 覧 に す る こ とに よ っ て , 読み の 視点 を 絞っ て いく こ とが で き
た 。 ま た , 学 級 全体 で 広 げ る こ と に よ っ て, 友 達 の 感 想の よ さに 気 づく と とも に ,自 分 の
考えや思いも広げることができた。
・ 一 人 一 人 が 役 割を も っ て 交 流 す る こ と によ っ て , 他 者に 任 せっ ぱ なし に せず , 自分 の 意
見 を 学 級 全 体 で は発 表 で き な い 子 ど も も ,グ ル ー プ 内 で役 割 を果 た して い くこ と によ っ て
認められる場面ができた。
・ 感 想 文 ワ ー ク シー ト を 毎 時 間 活 用 す る こと で , ポ イ ント を 押さ え なが ら 感想 文 を書 か せ
る こ と が で き , 子ど も た ち 自 身 も 感 想 文 の書 き 方 が 身 につ い てき て いる こ とを 実 感で き て
いるようだった。また,「感想+理由」の文型を子どもたちに定着させることによって,自
分 が ど こ に 焦 点 に当 て た の か , 何 を 根 拠 に考 え た の か を明 ら かに し なが ら 書か せ るこ と が
できた。
・ 一 単 位 時 間 ご とに 感 想 を 書 い て い っ た こと に よ っ て , 本 時 の 学 習を 振 り返 る とと も に,
ち い ち ゃ ん の 気 持ち に 自 分 が ど の よ う に 感じ た の か を 叙述 を もと に 考え る こと が でき , 読
みの変容に気づかせることができた。
・ 感 想 語 彙 表 を 普段 の 日 記 指 導 か ら 活 用 した こ と で , 子ど も たち が 楽し ん で新 し い語 彙 を
使 お う と す る 姿 勢が 見 ら れ , 進 ん で 表 現 する 様 子 が う かが え た。 ま た, 一 つ一 つ の語 句 に
対 し て の 意 味 を 確認 し な が ら , 自 分 の 表 現に 取 り 入 れ てい こ うと す る意 欲 を喚 起 する こ と
ができた。
・ 学 年 会 等 で , 単元 を 見 通 し た 教 材 研 究 を行 う こ と で ,教 師 同士 の 情報 交 換が 盛 んに 行 わ
れ,授業力向上につなげることができた。
【課題】
・ 交流のさせ方について,互いの感想文をより具体的にしていくこと,理由をはっきりさせて
いくことを目的にする方法もあったかと思った。そうすることで,その根拠となる『場面の様
子やちいちゃんの様子』から,子どもたち自身でちいちゃんの気持ちを想像し,読み深めてい
け た の で は な い か , グ ル ー プ の 役 割 分 担 や 論 点が は っ き り し た 交 流 に なっ た の で は な い か
と思った。
・ 単 元 を 貫 く 言 語活 動 を 「 感 想 を ま と め る」 と 位 置 付 けた が ,読 書 活動 を 広げ て いく こ と
とのつながりをもう少しもたせていくべきだった。(並行読書はしていたが・・・)
- 16 -
【4年】
<単元名>
物語を読んでしょうかいしよう
「一つの花」
1 研究の視点
(1) 単元を貫く言語活動の位置づけ
本 単 元 の ね ら いは , 本 の 紹 介 を す る こ とで あ る 。 教 材「 一 つの 花 」は , テー マ 性の 強 い
物 語 で あ る 。 本 単元 は , 時 代 設 定 , 人 物 どう し の 関 係 , キ ー ワ ード な どが と らえ や すく,
着 目 し た 観 点 に 沿っ て 伝 え る こ と を 整 理 した り , 本 を 紹介 し たり し やす い もの と なっ て い
る 。 本 学 年 で は ,本 単 元 を 3 つ に わ け 場 面ご と に 学 習 し, そ れを 比 較す る こと で ,テ ー マ
に 迫 り 紹 介 文 を 書か せ て い っ た 。 子 ど も たち へ の 指 導 とし て は, こ の比 較 読み や 題名 読 み
を他の本でも生かせることを指導し,表現力の充実を図った。
(2) 読みを深めていくための「書く活動」の位置づけや活動方法のあり方
① 子どもの思考を促すための手立て
全文ワークシートを使用し,子どもの思考が明確になるように色分けで線を引かせた。
そ の 色 分 け は 子ど も の 思 考 が つ な が る よう に , ど の 場面 で も同 じ 色で 行 った 。 また , 場
面ごとに色分けした内容を比較し検討させることができた。
【全文ワークシート】
②
交流活動との関連
子 ど も た ち が自 信 を も っ て 授 業 に 取 り組 め る よ う に, 一 人( 書 く) → グル ー プ→ 全 体
と い う 形 態 を とっ た 。 ま た , グ ル ー プ 活動 で は そ れ ぞれ の 児童 に 司会 や 発表 者 など の 役
割 を 決 め て 交 流が ス ム ー ズ に 進 む よ う に手 立 て を と った 。 この 交 流活 動 を通 し て, 友 達
との意見の共通点や相違点を見つけることができ,考えを深めることができた。
【交流活動の様子】
(3) 表現力を高めるための手立て
・ 朝の会でのスピーチ活動・・・スピーチの目的を明確にした活動
・ 発表話形の活用・・・本校の発表話形を中心として活動
・ 音 読 カ ー ド の 活用 ・ ・ ・ 毎 月 発 行 す る 音読 カ ー ド に 取り 組 ませ る とと も に, 早 口言 葉 や
詩の朗読にも挑戦させる。
・ 他 教 科 で の グ ル ー プ 学 習 ・ ・ ・ 国語の学習で活用したグループ活動を他の教科でも意識的
に行い,各教科における基本的な表現力も身につけていく。
- 17 -
2 考察
【成果】
・ 学年部全体で,今回の研究授業に取り組むこと
によって,本単元のねらいを共有することができ,
学年全体の実態を改めて再確認できた。また,今
回の研究授業を機に交流学習のあり方を学年でも
考えることができた。
・ この活動が国語以外の教科でも活用をできるた
め,表現力の育成を他の教科からも図ることがで
きた。
・ 紹介文を書くためのワークシートを活用するこ
とで,その型を学ばせるとともに,書く楽しさ(文
章を書ける喜び)を味わわせることができた。
【課題】
・ 今 回 の 授 業 に おい て , 大 き な 課 題 は 「 叙述 に 即 す 」 とい う 点で あ る。 も う少 し 本文 の 内
容や文章に時間をさけると,もっと深い内容の紹介文が書けたかもしれない。
・ グ ル ー プ 活 動 内に お い て , 文 字 数 や 文 章量 の 制 限 を 工夫 す るこ と で, よ り活 動 の効 率 化
や活性化を図れたかもしれない。
【5年】
<単元名>
説明のしかたを考えよう
「天気を予想する」
1 研究の視点
(1)単元を貫く言語活動の位置づけと単元構想
本 単 元で は ,右 の よう な 指導 計 画を 作成 した 。
本単 元 は, 表 やグ ラ フ, 写 真と 文 章の 対応 に気 付
き, 筆 者が 何 をど の よう に 述べ て いる のか を分 析
し, 交 流し て いく こ とで , 筆者 の 論の 進め 方や 説
明の工夫について考えることをねらいとした。
単 元 を貫 く 言語 活 動と し て, グ ラフ が使 われ た
資料 を 読み , グラ フ の意 図 や効 果 ,説 明の 仕方 に
つい て まと め る活 動 を設 定 した 。 この 活動 を通 し
て, 教 材で 学 んだ 力 が発 揮 でき る よう に単 元を 構
想した。
【指導計画】
(2)
①
読みを深めていくための「書く活動」の位置づけや活動方法のあり方
子どもの思考を促すための手立て
ア 第1時
「 天 気 を予 想 する 」 の表 や グラ フ ,写 真 な
ど を す べて 取 り除 い た全 文 と教 科 書の 文 を
比 較 し た 。 子 ど も た ち か ら ,「図や表が無
いと意味がわからない。」「気象衛星と言われ
てもイメージしづらい。」などの意見が出た。
そこで,「表やグラフ,写真が使われた資料
を読んで,その意図と効果について考えよう。
」
という単元の目標を立て,学習計画を話し合
った。
【学習計画】
- 18 -
イ
第2時
筆者 が 表を 使 って 説 明し て いる 所を 空欄 に
し た ワ ー ク シ ー ト を 準 備 し た 。「 的 中 率 が 上
が った 」 とい う こと を 説明 す るた めに ,自 分
な らど の よう な キー ワ ード を 使っ て説 明す る
か を考 え ,友 達 や教 科 書と 比 べる こと で, 筆
者 がね ら いに 応 じて 表 の必 要 な部 分を 短く 文
章 にし て いる こ とに 気 付く こ とが でき るよ う
にした。
【表から分かることが空欄になっているワークシート】
ウ
第3時・第4時
第 3 時 で は, 問 い と 答 え の 関 係 を 考え る 活 動 を 通し て ,文 章 構成 を 捉え ら れる よ う
に し た 。 ま た ,「 問 い → 答 え → 答 え を 受 け て の 問 い → 答 え 」 と な っ て い る こ と で , 相
手に納得させやすくなっているという筆者の工夫に気付くことができた。
第 4 時 で は, 第 1 時 で 使 っ た ワ ー クシ ー ト に 写 真や 表 など を 貼り 付 ける 活 動を 通 し
て , 筆 者 の 論理 展 開 の 仕 方 を 考 え る こと が で き る よう に した 。 ワー ク シー ト の前 半 に
写 真 や 表 が 集ま っ て い る こ と か ら , 筆者 が 前 半 か ら中 盤 で表 や グラ フ を使 っ て事 実 を
説 明 し , 後 半 で は 自 分 の 考 え を 述 べ て い る こ と か ら ,「 具 体 → 一 般 」 の 形 で 展 開 し て
いる事をおさえた。
写真や表などを貼り付ける活動を通して,筆者
の論理展開の仕方を捉える。
「問い」と「答え」の関係を考える活動を通し
て,文章構成を捉える。
エ
第5時
筆者の考えや説明の仕方などの妥当性について,自分の考えや経験をもとに話
し合い,300字程度でまとめることを通して,今まで読み取った説明の工夫に
ついて自分の今後の読みに生かせるようにした。
- 19 -
オ
②
第6時
身近なものから,グラフが使われた文章を読み,グラ
フの意図や効果,説明の仕方についてまとめ,友達と交
流した。子どもたちは,これまでに学んだ文章構成の工
夫やグラフの意図,効果などを自分で読み,まとめてい
っ た。こ れまでの ワークシー トを見直し たり,「天気を予
想する」との違いを比べたりしながら,学んだ力を使っ
てまとめることができた。
交流活動との関連
毎時間交流の時間を設定し,自分の考えとの共通点や相
違点を考え,皆の意見を統合して,グループの意見を考え
るようにした。個人で考える時間で,意見がまとまらなか
った子どもも,友達の力を借りながら,グループの意見を
まとめるために話合いを行うことができていた。
話合いの際には,司会・タイムキーパー・書記・発表者
の役割分担を徹底した。また,時間制限や文字数制限とい
った制限をかけたり,話合いの目的を明確にした指示を出
すようにした。
【交流活動の様子】
2 考察
【成果】
・ 筆者が表について説明している部分を空欄にしたワークシートを活用し,表の説明を探
す 活 動 で は な く ,文 章 を 考 え る 活 動 を 取 り入 れ た こ と で, 表 につ い ての 説 明を 短 く端 的 に
書 く と い う 経 験 をさ せ る こ と が で き た 。 この よ う な 経 験が , 他教 科 等に お いて も 自分 の 言
葉でまとめる活動につながっていくと考える。
・ 全体を一目で見られるワークシートを活用し,線を引いたり,書き込ませたり,写真や
表 な ど を 貼 り 付 けた り す る こ と で , 筆 者 の論 の 進 め 方 や文 章 の特 徴 を捉 え させ る こと が で
きた。
・ 交流活動では,役割分担を徹底したことや時間・文字数を制限したこと,話合いの目的
を 明 確 に し た 指 示を 出 し た こ と で , 子 ど もた ち の 話 合 いに 対 する 意 欲や 話 合い の 仕方 に 高
まりが見られた。
【課題】
・ 記述力を高めるために、条件に合わせて書く力を高めていく必要がある。
・ 読書活動へと繋がる学習計画を検討していく必要がある。
・ 交流の目的を明確にした話合いを他教科にも広げる必要がある。
【6年】
<単元名>
読み取ったこと,感じたことを表現しよう
「 ものの 見方を広 げよう /この絵、わ たしはこう見る」
1
研究の視点
(1) 単元を貫く言語活動の位置付け
前 教 材 の 「『 鳥 獣 戯 画 』 を 読 む 」 か ら こ の 教 材 ま で の 単 元 を 貫 く 言 語 活 動 を 「 自 分 が
選んだ絵の解説文を書く」とした。古典的な屏風絵と現代抽象的絵画の2作品からど
ちらかを選び,自分なりの感じ方やものの見方を大切にして,自分らしい批評文や鑑
賞文を書かせるという活動を行った。
- 20 -
(2)
読みを深めていくための「書く活動」の位置付けや活動方法のあり方
①
子どもの思考を促す手立て
絵を間近に見ながら感想が書けるように,教科書の絵をカラー印刷したものを,ワ
ークシートに貼らせて感想や気付いたことを書かせた。また,どのようなことについ
て書くのか視点を示し,その視点についてどのようにかかれているかをワークシート
に書き込ませる方法をとった。ワークシートに書き込んだことをもとに文章を書く際
に も ,「 書 き だ し の 工 夫 」「 描 写 と 考 え の 区 別 」「 読 者 を 意 識 し た 表 現 」「 文 末 表 現 」 と
いった視点を与えてよりよい文章が書けるように工夫した。
【ワークシート】
②
【絵の評価文】
交流活動との関連
ワークシートに感想や気付いたことを書
いた後,グループ内で読み合って友達との
違いに気付かせたり,友達の感想・気付き
を参考にして書き加えたりさせた。交流活
動を行う際には,何のためにグループ学習
を行うのかはっきりさせるために,資料を
配付して学習を進めさせた。
【交流活動指導資料】
(3) 表現力を高めるための手立て
ワークシートに書き込んだことをもとに文章を書く際に,「書きだしの工夫」「描写と考えの
区別」「読者を意識した表現」「文末表現」といった視点を示し,よりよい文章が書けるように
工夫した。また,朝の会や帰りの会で,1分間スピーチに取り組んできた。次第に慣れて上達
してきている。上手に出来た子どもを賞賛すると,それをまねて上手くスピーチできる子ども
が増えてきている。
- 21 -
2 考察
【成果】
・ 教科書の絵をカラー印刷したワークシートを作成して使ったことで,子どもたちは感想や気付いた
ことが書きやすそうだった。
・ 交流活動を行う際に,交流の目的を伝えたり,目的が大きく分けて2通りあることなどを指導した
りしたことで,交流活動の成果が上がった。教師も交流の目的をしっかり児童に伝えることの大切さ
が分かった。
・ 子どもたちが交流活動の時に,自分たちで役割分担をして活動できるようになってきている。
・ 本時をそろえて授業参観したり,指導案交換したりしたことで,書く視点の与え方や声掛けを工夫
して行うことができた。
【課題】
・ 交流活動のための時間確保と児童が交流活動に慣れることが難しい。席替えなどでグループメンバ
ーが替わるとなお難しかった。今後,交流活動の指導資料を活用して,目的意識をはっきりもたせな
がら交流活動の経験を積ませていくことで,児童を交流活動に慣れさせたり,グループ編成を行うと
きに交流活動を念頭に置いて編成していく必要がある。
・ 自分の考えや思いを上手く伝えることのできる表現力を高める必要を感じた。今後,感想語彙表を
活用して感想を書かせたり発表させたりしていきたい。また,1分間スピーチを今後も継続すること
で,発表に慣れさせ,発表力の向上につなげていきたい。
Ⅴ
研究のまとめ
今 年 度 は , 3 年 間の 研 究 の ま と め の 年 と いう こ と で , 昨年 度 まで の 理論 研 究や 実 践を 踏 ま
え , さ ら に 子 ど も たち が 読 み を 深 め , 表 現 力を 高 め て い ける 手 立て を 研究 し た。 ま た, 学 年
テ ー マ 研 究 , ワ ン ペー パ ー 授 業 等 , 全 職 員 が主 体 的 に 研 究を 進 め, 授 業力 向 上に 努 めた 。 今
年度の成果と課題は以下の通りである。
成 果
・ どの単元でも,
「単元を貫く言語活動」を意識して
取り組むことができた。
・ 単元を貫く言語活動がどういうものなのか,どのよ
うに授業を進めればよいかが分かり,普段の授業に生
かせるようになった。
・ 物語や説明文で「書く活動」の位置付けや活動方法
について研修を深めることができた。
・ 書く活動でマス目を使い,字数を指定するのも効果
的だった。
・ それぞれの学年でどのような交流活動がされている
か分かった。
・ 交流活動の時,児童への指示カードが使われていて
参考になった。
・ 切り口のおもしろい斬新な授業が行われていた。
・ 研究の視点を絞り込み,固定していたことにより,
研究授業の回数を重ねるごとに研修が深まっていった。
課 題
・ 偏りがないように,様々な言語活動ができるよ
うにしたい。
・ 単元を貫く言語活動について今ひとつ理解でき
ていない。分からないことは分からないと声を出
していくことも大切である。具体的に,ワークシ
ートやノート指導等の研究に絞るのもいい。
・ 交流でどこまでさせるか,学年間の系統性を考
え,全体的なものを決めておくとよいと思った。
・ 交流活動の進め方を学年や教材の特性に応じて
研究して行けたらよい。
(ベースだけでも)また,
発表話形についても考えていけたらよい。
こ れ ら の 研 究 の 成 果と 課 題 を 踏 ま え , 言 語 活動 や 交 流 活 動の 充 実を 図 りな が ら, 思 考力 ・ 判
断力・表現力を高め,学んだことを生かし進んで表現できる子どもたちを育てていきたい。
Ⅵ
参考文献
本研究で参考にした主な文献は以下の通りです。
1 文部科学省『小学校学習指導要領解説 国語編』東洋館出版社,2008
2 白石範考『書く活動が確かな読みの力をつける』学事出版,2007
3 高木まさき『国語科における言語活動の授業づくり入門』教育開発研究所,2013
4 藤田伸一『「読みの力」を育てる文学・説明文の授業』学事出版,2011
5 井上一郎『誰もがつけたい説明力』明治図書,2005
6 井上一郎『知識・技能を活用した言語活動の展開』明治図書,2009
7 樺山敏郎『実践ナビ!言語活動のススメ』明治図書,2013
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