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第5回

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第5回
キャリアの分布が求められると,拡散電流を求めることができる.
半導体エレクトロニクス−④
ダイオードの電流電圧特性
熱平衡状態の pn 接合では,接合界面に生じた電位差(① )のために,キャ
リアの拡散が抑えられている.
下の図に示したように,この状態では,p 形の伝導帯(下端)
のエネルギーより高いエネルギーをもつ電子は,電位差のため n 形側でも同数となる.した
がって,この状態では電流は流れない.
これより高いエネルギーの
電子は左右で同数のため,
電流は流れない.
⎛ qφ ⎞
n n 0 = n i exp⎜ n ⎟
⎝ kT ⎠
qVbi
Ec
Ei
qφp
qφn
Ec
Ei
⎛ qφ ⎞
n p 0 = n i exp⎜ p ⎟
⎝ kT ⎠
⎛ qV ⎞
= n n 0 exp⎜− bi ⎟
⎝ kT ⎠
Ev
左右の電子濃度
が電位差で関係
づけられる.
Ev
空乏層
(空間電荷領域)
図 3. 7 熱平衡状態の pn 接合のエネルギーバンド図
この電位差を小さくするようなバイアスを加えると,キャリアの拡散が(②増加・減少)し,電
流が流れる.
⎛ q(Vbi − VD ) ⎞
n p (0) = n n 0 exp⎜−
⎟
⎝
⎠
kT
⎛ qVD ⎞
= n p 0 exp⎜
⎟
Ec
⎝ kT ⎠
np(0) は点線より高いエネ
ルギーの電子濃度に相当.
qVD
np(0)
p 形層に拡散する電子の濃度は,拡散方程式を解くこと
によって求めることができる.
dn p ( x )
dt
= Dn
d 2n p ( x )
dx
2
−
n p ( x) − n p 0
τn
qVbi
Ec
(4. 3)
このように,順方向バイアス (VD > 0) を印加すると拡散電流は指数関数的に増大すること
がわかる.順方向バイアスでは,接合の電位差が Vbi から(③ )に(④増加・減
少)するため,np (0)(⑤ )np0 の関係が成り立つ.逆方向バイアス (VD < 0) 時には,こ
れらの関係が逆になるだけで,上で求めた式はそのまま成立する.上式の符号は,順バイア
スで電流が x の負の方向に流れることを示している.
同様にして,ホールの拡散電流を表す式を求めることができる.
⎛ ⎛ qV ⎞ ⎞
D
J p = q p pn 0 ⎜exp⎜ D ⎟ − 1⎟
(4. 4)
Lp
⎝ ⎝ kT ⎠ ⎠
したがって,ダイオードの全電流は電子およびホールの拡散電流の和として,次式で表される.
⎛D
⎞⎛ ⎛ qV ⎞ ⎞
⎛ ⎛ qV ⎞ ⎞
D
(4. 5)
J D = J p + J n = q⎜⎜ p pn 0 + n n p 0 ⎟⎟⎜exp⎜ D ⎟ − 1⎟ = Js ⎜ exp⎜ D ⎟ − 1⎟
Ln
⎝ ⎝ kT ⎠ ⎠
⎝ Lp
⎠⎝ ⎝ kT ⎠ ⎠
ここで,Js は飽和電流密度とよばれる量であり,次式で定義される.
⎛D
⎞
D
J s = q ⎜⎜ p pn 0 + n n p 0 ⎟⎟
Ln
⎝ Lp
⎠
(4. 6)
順方向バイアス印加時には,通常 VD(⑥ )kT/q であるから,JD ≈ Js exp(qVD/kT) と
近似することができる.一方,逆バイアス時には,exp(qVD/kT)(⑦ )1 であるから,電流
JD =(⑧ )となる.
このように,ダイオードに流れる電流は小数キャリアの拡散を考慮することによって求める
ことができる.
x
log n, p
(4. 1)
定常状態の解は.左辺を0として求めることができる.
その結果,np (x) として次の解を得る.
⎛ x⎞
n p ( x ) = ( n p (0) − n p 0 ) exp⎜ − ⎟ + n p 0
⎝ Ln ⎠
⎛ ⎛ qV ⎞ ⎞
dn p ( x )
n (0) − n p 0
D
= −qDn p
= −q n n p 0 ⎜ exp⎜ D ⎟ − 1⎟
dx x = 0
Ln
Ln
⎝ ⎝ kT ⎠ ⎠
練習.次の図は,pn 接合中の多数キャリア,小数キャリアの分布を示す図である.ただし,縦
軸はキャリア濃度を対数で表示している.左の図は熱平衡状態に対応するもので,電子の分
布を示してある.ホールの分布を描きなさい.ただし,ND = 1 x 1023 m-3, NA = 1 x 1025 m-3
であるとする.さらに,右の図に順バイアス時のキャリア分布を描きなさい.
np(x)
Ln
J n = qDn
ND
log n, p
ND
1020
ni
ni
1010
(4. 2)
1010
x
n 形中性領域
1020
空乏層
p 形中性領域
x
n 形中性領域 空乏層 p 形中性領域
ダイオードの接合容量
ダイオードの拡散容量
pn 接合界面には(⑨ )が形成され,イオン化した(⑩ )や(⑪ )が存在している.
その電荷の量はダイオードに印加される電圧によって変化するた
め,ダイオードは容量として働く.これを空乏層容量とよぶ.空乏層容量は,特に,電流が流れ
ない逆方向バイアス時に重要である.
ダイオードに印加した電圧 V が V + ΔV に
ΔQ
−ΔQ
なった場合,空乏層幅の変化を ΔW,電界強度
の変化分を ΔE,空乏層内の電荷の変化を ΔQ
であらわすと,次のような関係が成り立つ.
W
ΔV = WΔE
W + ΔW
(4. 7)
E
面積が電圧
空乏層容量は ΔQ = CΔV の関係から次の
ΔE
に相当
ように求めることができる.
ΔQ
ΔD εsε 0ΔE ε sε 0
(4. 8)
C=
=
=
=
ΔV WΔE WΔE
W
x
この結果は,空乏層が誘電体となって,電極
図 3. 8 接合内部の電界分布
間距離が W の平行平板コンデンサの容量と一
致している.ただし,ダイオードの接合容量は,
印加電圧によって空乏層の幅 W が変化するため,
可変容量コンデンサとして働くことに注意
すること.
pn 接合に,逆バイアスを印加すると,空乏層を誘電体とした容量を示す.これは,外部か
ら印加した電圧に応じて,空乏層の電荷が変化するからである.一方,順方向バイアス時に
は,小数キャリアの注入がおこり,バイアス電圧の変化に応じて,注入されているキャリアの
数も増減する.この過剰少数キャリアの蓄積により生ずる容量を拡散容量とよぶ.
p’n(x’)
pʹn ( x ʹ) = pn ( x ʹ) − pn 0
p’n(0)
⎛ xʹ ⎞
= pʹn (0) exp⎜− ⎟
⎝ L p ⎠ Qp
x’
Lp
n’p(0)
n’p(x)
n ʹp ( x ) = n p ( x ) − n p 0
Qn
Ln
⎛ x⎞
= n ʹp (0) exp⎜− ⎟
⎝ Ln ⎠
x
図 3. 9 pn 接合の過剰少数キャリア分布(蓄積電荷分布)
図 3.9 では n 形から p 形に注入された電子による電荷が Qn で示されている.この過剰
少数キャリアの総量は n’p (x) を積分して求めることができる.
∞
Qn = q ∫ n ʹp ( x ʹ) dx ʹ
0
= qLn n ʹp (0)
⎧ ⎛ qV ⎞ ⎫
= qLn n p 0 ⎨exp⎜ D ⎟ − 1⎬
⎩ ⎝ kT ⎠ ⎭
(4. 9)
さらに,式 (4. 3) の Jn を使って書き直すと,次のようになる.
Qn =
L2n
Jn = τ n Jn
Dn
(4. 10)
したがって,p 形中での電子の蓄積による拡散容量は次のように与えられる.
CDp =
2
⎛ qV ⎞
dQn q Ln n p 0
=
exp⎜ D ⎟
⎝ kT ⎠
dVD
kT
(4. 11)
さらに,qVD /kT >> 1 であれば,exp(qVD /kT) >> 1 であるから,
CDp =
q τn
Jn
kT
となる.同様に,n 形中に蓄積したホールによる拡散容量は
qτ
CDn = p J p
kT
となる.
(4. 12)
(4. 13)
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