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宝塚歌劇団 - 株式会社アールリサーチ

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宝塚歌劇団 - 株式会社アールリサーチ
Bomb Marketing
アール・リサーチ News Letter
093 号
文責
柳本信一
110901
「宝塚歌劇団」100 年続く仕組み
拝復
一ヶ月ぶりになります。夏休みを頂戴しました。大停電を心配しましたが、台風やら豪
雨のおかげで比較的涼しい夏だったのではないでしょうか。何とか乗り切ったようです。と、油
断をしていると、よくあるのは 9 月に入ってから猛暑再び
、というケースが過去にも何
度もありました。油断禁物。
政情では「菅」さんがようやく降り、野田財務大臣が新首相として就任をしました。早速人事
できな臭い話がプンプンしています。さて、今度の内閣はいつまで持つのか。それというのもマ
スコミが就任をするとそれまでに取材してあった醜聞・形式的な違反の数々を記事にします。新
聞を中心とするマスコミは「これこそが自分たちの生きる道」と考えているようですが、大きな
勘違いであることに早く気がついて欲しい。世界経済はいま、とんでもない局面を迎えています。
内容については NewsLetter91 号をご覧ください。大丈夫か日本。重大な局面です。
http://r-research.co.jp/pdf/nl91.pdf
さて、本日のお題ですが 3 年後に結団 100 周年を迎える「宝塚歌劇団」を取り上げたいと思
います。先日ブログで落語について触れました。伝統芸能の存続の危うさを説いたのですが、歌
舞伎・能・落語・相撲などの伝統芸能がいずれも絶滅危惧文化になっている中で、
「宝塚歌劇団」
がとてもうまくいっているように見えたのです。以前帰宅途中の日比谷で物凄い数の女性に取り
囲まれたことがあります。もちろん私ではなく、ある宝塚のスターの「出待ち」でした。調べて
みると「へぇ~」と驚くことの連続でした。お時間のある時にゆったりとお読みください。今号
はゆっくりネタです。(宝塚が伝統芸能かどうかは議論があると思いますが)(笑)。
一代で阪急帝国を築いた明治の大勲です→
「宝塚歌劇団」設立は 1914 年。阪急電鉄の創業者小林一三
が温泉地の中に作っ
た劇団がスタートです。大衆芸能が 100 年続くことは稀。会社にたとえるとわかりやすいかも
しれませんが、100 年続く企業は稀です。100 年間、社会の動きに自らをアジャストしなければ
1
なりません。
言うまでもなく宝塚の最大の特徴は出演者全員が女性である、ということです。なぜ
女性だけなのかというと創立時には男女が同じ舞台に立つことが法律で許されていなかったの
です。しかし、太平洋戦争が終結し、男女が同権となった時代にあっても、その伝統は変わって
いません。小林一三は「江戸時代は庶民のものであった歌舞伎のような「国民劇」を再び創生
したい」と語っています。私の母は来年 80 歳を迎えますが、「娘時代にはね、越路吹雪さんの
←♪あなたの、燃える手で、私を抱きしめて~♪
大ファンだったの」
と今でも楽しそうに話します。確かに庶民だ(笑)。
劇団としての「宝塚歌劇団」には他にいくつか特徴があります。日本の劇団としては唯一専門
の劇場を二つ(宝塚、日比谷、合計で 4500 席)持っています。これは非常にリスキーです。
「歌
劇」に絞らなくても、およそ「劇」といわれるものは「当たるも八卦当たらぬも八卦」という
くらいにわからないものなのです。ブロードウェイがそうですね。ファンドを組んで物凄い資金
をかけて上演します。ロングランになれば大もうけですが、ひどいときには一週間で打ち切られ
ます。さらに宝塚は専任のオーケストラを有します。また、5 組で年間 10 公演をこなしますが、
一部のロングセラー(ベルバラとか)を除けば全て新作です。一言で言ってしまえば「宝塚歌
劇団」は非常な高コスト体質を自ら選択をしているということになります。おそらく稼働率が
90%を超えないとペイしない。余程出演者のギャラが安いのか、これはいくら調べてもわかり
ませんでした。
「宝塚歌劇団」にはもう一つの大きな特徴があります。それは劇団員全員が「宝塚音楽歌劇学
←♪すみれの花、咲くころ~♪
校」
の卒業者であることです。2 年の間に、歌・踊り・着付け・日本舞踊・バレエ・
ピアノ・琴などを徹底して鍛えられます。一年生は毎朝 6 時 50 分に登校し、校内清掃が義務付
けられています。人間教育のスローガンは「清く、正しく、美しく」。上下関係も非常に厳しく
叩き込まれる。しかし現在でも入学希望者が絶えず、競争率は 40 倍を越え。卒業をすると正式
に団員となるのですが、この時点で既に明確な順位がついています。首席からビリまで「将来の
トップ候補」かどうか、戦いは既に学内から始まっています。もちろん恋愛はご法度です。
こうして無事に入団をするとご挨拶公演をした後は自分の実力次第。新人公演などを通じて劇団
内での序列を争います。
「宝塚歌劇団」のもう一つの特徴として、
「トップシステム」を取り
入れていることがあります。劇団は 5 つの組に分割されています、この中でそれぞれの組のト
ップの男役が固定しているのです。トップでいるうちは通常公演の主役は常にトップ男役。その
2
←トップ男役のイメージ^^;。
他の団員が主役を勤めることはありません。
一つの例外もなしに。序列第二位は「セ
カンドの男役」、第三位は「娘役トップ」。トップが引退するまでは他の人がトップに代わること
はありません。序列第四位以下はかなり流動性が高いようです。一端トップに着くと退団まで平
均 5~8 年くらい。チャンスはなかなか巡ってきません。ただしトップが引退となった時に、セ
カンドが自動昇進かというと、さにあらず。ここで●年抜きといった人事が行われます。
最近では天海 祐希さんが入団 7 年目で 4 年頭を超えてトップに就任しています。黒木瞳さんは
娘役トップに入団 2 年という超ハイスピード出世をしています。なおトップになるのには当然
ながら激烈な競争を勝ち抜かねばならず、1981 年から 2009 年までの入団者 1238 人に対してト
ップに成れたのは 26 人しかいません(2%)。会社であれば一端社長になれば出来るだけ長くそ
の座を保ちたいと考えるのが普通でしょうが、宝塚のトップは「卒業」をすることが不文律にな
っている。トップスターの就任と卒業という新陳代謝が「宝塚歌劇団」の人気と組織活性を支え
ている。(ここが歌舞伎ともっとも異なる点です)
こうした「宝塚歌劇団」を支えるファンはこれまた女性が圧倒的です。実は私自身一度も見たこ
とがありません。今号を書くに当たって BS で公演を見ましたが、やっぱり私にはちょっと(笑)
。
ファンクラブは劇団員一人ごとに作られています(ない人もいます)。このファンクラブ、普通
のファンクラブとは全く異なります。
「入り待ち」
「出待ち」の際のガード役に参加。団員を守り
ます。規律も厳しい。不定期に催される「お茶会」ではスターが来てくれることもあるようです。
しかし、ファンクラブの代表と主要スタッフとなれば、その劇団員が卒業をするまで全精力を傾
けて支えなければなりません。送り迎え、身の回りの世話、買い物、差し入れ、各方面への連絡
代行、チケットの販売など。本来これはプロのマネージャーの仕事です。が、彼女たちに給与が
支払われることはありません。あくまでボランティアなのです。何が彼女たちを、その行動に走
らせるのか。ここが今回の最大の謎だったのです。
私はある仮説を組み立てたのですが、それはファンクラブを通じて彼女たちは「育成ゲーム」
を楽しんでいるのではないかという考えです。彼女たちは音楽学校の卒業と同時
に将来トップになりそうな生徒を物色し始めます。新人公演に通い、普段の公演の序列を見、ポ
スターの写真の大きさから常に誰が将来のトップに近いかを探します。その中でいよいよ有望と
目をつければファンクラブを結成し、そのプライベート・ライフを捨ててまで劇団員に尽くしま
す。劇団の発するあらゆる徴候を見逃さないのも彼女たちの仕事。人事の情報には私も会社員時
代、ずいぶん振り回されましたが、それ以上のようです。まんま、子育て。身を削りお金を削っ
てわが子が有名大学に入れるかどうかを競う教育ママのようです。運がよければトップの身の回
3
りの世話まで全て行い、トップの引退まで滅私奉公するのです。トップが無事に引退をすると次
のトップ候補の物色を始めるわけです。ここにサイクルがある。しかし経営は高いリスクと超ヘ
ビーなファンに負っています。ファンクラブの見返りは劇団員との近さとチケットの入手。しか
し、それだけではないはず。100 年続いた秘訣は何なのか。
それは、私は「女の園」という言葉に答えを導きたいと思います。最近女子会
が盛んに
行われていると聞きます。女子だけのほうが気楽なのです(笑)。化粧をすることもいら
ないし、可愛い子ぶりっ子も必要ない。それだけといったら怒られそうですね。
面倒な男を排除して、女同士で心置きなく戦える場所なのではないでしょうか。トップになれる
かどうかは、男性新入社員が社長になれるかどうかと同レベルでしょう。独特の習慣は外からは
わかりにくいのですが、ひとたび分かると麻薬的なまでに面白い。劇団の人事、配役の発表、来
年のカレンダーで何枚目に乗るか、ポスターの中の写真の大きさはどうか。常に耳をダンボのよ
うにしていなければなりません。その徴候に気がつき、当たるとうれしい。会社と同じです。
人事と出世と派閥。こんな楽しいゲームが男抜きで出来るのです。これに勝る楽し
みを見つけることは難しい。違いますか?(笑)。
ここまで書いてきて気がついたことがあります。これってあれにそっくりですよね。AKB48
です。秋元さん絶対に宝塚を研究しています。もちろん芸の確かさや踊りのレベルで比べるのは
「宝塚歌劇団」に対して失礼です。しかし、システムはよく似ているのです。
AKB48 も内部では年齢や年功による序列は保たれています。年に一回選ばれる総選挙ではファ
ンが身を投げてお金を投げてメンバーを応援します。そしてそこで選ばれるトップ、
「前田敦子」
を応援していたファンはこれに尽きる冥利はないわけです。一方、新規入団者にも気を配り、将
来トップになりそうな娘を鵜の目鷹の目で探しています。また、新曲をトップにするために一人
が何十枚という CD を購入する。これは宝塚の方法論のコピーそのもだと思うのです。
さて、馴れないことを書くと大変でした。参考文献です。
・ Wikipedia 「宝塚歌劇団」←Wiki にはいつもお世話になっております。
・ 宮本直美「宝塚ファンの社会学」スターは劇場の外で作られる 真弓社
・ 中本千晶「なぜ宝塚劇場に客は押し寄せるのか」 小学館新書
ファンの方には失礼な表現等もあったかもしれませんが、お許しを。
ブログも毎日更新しています!(週休二日で)
(笑)。http://rresearch.blog103.fc2.com/
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