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〔総説〕脳梁と神経学的微細徴候の関係に関する試論

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〔総説〕脳梁と神経学的微細徴候の関係に関する試論
-435大阪市立大学生活科学部紀要 ・第3
8
巻 (
1
9
9
0
)
〔
総説〕脳梁と神経学的微細徴候の関係に関する試論
坂本吉正 ・萱村俊哉 ・多治見悦子
Aproposoftherelation betweenthecorpuscallosum
andtheneurologicalminorsigns
YOSHIMASASAKAMOTO
,TOSHIYAKAYAMURAa
ndETSUKOTAJIMI
脳梁 c
orpuscallosum,
Ba
l
ken,
corpc
a
l
l
e
u
x,一名,
された F
ultonの神経生理筈(19
4
9
)叫でも,脳梁につ
脱抵体(へんちたい) ,は左右大脳半球を連絡する交速
いては..側頭葉の視覚領野からの皮質問投射賂は,脳
commissureと呼ばれる中枢神経系の一部である。脳
梁を通って,対側の視覚野に達するが,大部分の 繊維は
梁についての記述は,後で述べるような理由で簡単なも
a
r
c
u
a
t
es
u
l
c
u
sにある Area8と後頭葉 l
u
n
at
es
u
l
c
u
s
のが多く,用語すら.今なお混在している。このため,
内の Area1
9と連絡して い る " つ ま り Suger等11) が発
脱梁を中心に左{5両脳をつなぐ交速に関する最近の知見
表した,視覚皮質と前頭葉,後頭葉の眼球野 e
y
ef
i日l
d
s
を整埋した上で,神経学的微細徴候 (
n
o
u
r
o
l
o
g
i
c
a
l
と密接な関係を述べるにとどまり,大分な神経生理学 8
minors
i
g
n
s,
NMS) との関連について,我々の 考えを
(
3
6
2頁)のうちの数行の記載を見るだけである 。
述べてみたい。
このような今から見ると閑却視とも 言え る状態が生じ
1 脳梁研究の進展
た理由は,結局のところ最近迄,脳梁そのものの解明が
7
世紀, W
i
l
l
i
s(
16
6
4
) が解剖学的研究を始
脳梁は, 1
不十分であった為である。脳梁の旧学名である脱抵体と
amilton(
1
8
8
5
) によって肉眼的形態の大要が記
め
, H
は,勝抵(へんち) ,すなわち,指などにみられる刺激
述された後,繊維の投身す路は M
ingazzini(
19
2
6
)によっ
で皮膚が角質化して固くなった 「たこ Jの意味であり,
て,ほぼ解明されたとされているの川。 しかし,左右大
解剖の際,肉眼的に繊維が多いため触れると弾力性で硬
脳半球をつないでいる脳梁が,厳密には,どのように連
c
orpus,体) ,とい
く 「たこ Jに似た感触を持つもの (
絡し,どのような働きを持っているかについては,戦後
うだけで,解音IJ的に見ても極めて素朴な命名に過ぎない。
しばらく,厳密にいえば最近まで
脳梁が形態的にも,機能的にも脚光を浴び出したのは,
ほとんど問題にされ
なかった。というよりも,学問的には無視に近く,興味
この円分の一世紀以来の事である。
2
.脳梁の働きと神経学的微細徴候の関連づけ
の対象外といってよい状態に置かれていた。
最近迄のこうした経過を,幾つかの事実について見る
と,次のようになる。
戦前,たとえば,神経学の臨床家にとって必須とされ
本論で脳梁を含む交速の働きを,神経学的微細徴候と
の関係から特に取り上げるのは,以下に述べる機能との
関連からである。
e
j
e
r
i
n
eの神経徴候学の著書(初
た千二百頁にも及ぶ D
これを簡単な事例で考えてみよう 。 たとえば ,紙 をー
版1
9
1
8
)聞で、は,脳梁の項同はなく,戦後暫くの間もよ
枚与えて丸く円を切るように命名した場合 ,この命令
く使われた, S
chaltenbrandの神経学書 (
1
9
6
9
)叫 に
はどのような過程で実行されるであろうか。図式化
alkenの項目はなく,脳梁については
おいても脳梁 B
schematicして考えると次のようになる。
Komissurensystemunds
e
i
n
eSyndrome (交連系
被験者が 「右利き 」 であれば,紙を左手に.鉄を 右手
7
3-3
7
6
頁)の中に一部記載を見るにす
とその症候群, 3
に持つのがふつうである。命令は,左大脳の W
ernicke
ぎない。
感覚性言語中枢に淫して 「丸く切る 」 という理解がなさ
一方,機能的,生理学的方面からも ,戦後もよ く引用
れる。これは同側,つまり左頭頂葉にある角田 Gyrus
(1)
-436-
人間福祉学
a
n
g
u
l
a
r
i
sで「丸く切りなさい」という運動性の命令
説明もなされていない。我々は,この徴候出現の一因と
roca運動性言語中枢に至り ,さ
に転換されて,左の B
して,何らかの降害で,この連絡の円滑さが失われた場
らに,その後部にある左中心前回の運動野から鐙体路を
合,神経学的微細徴候が現れると考えている。それには,
通って反対側,すなわち右手にまで達して欽を使って円
F
l
e
c
h
s
i
gの髄鞘化仮説削 や Na
s
sの脳梁抑制説37) をも
を切る。
考えねばならないが,本論では,小児では実際にはどの
ところが,円を正確に丸く切るには,欽を持った右手
ような過程でおこなわれるか,その基礎となる形態的な
の運動に合わせて,紙を持った左手を回して行かなくて
関連はどうか,発達との理論的な考察はどうか,などに
はならない。この左手の運動は,右の大脳半球にある中
ついての論述を意図したものである。
心前回の運動野から発したインパルスによって動かされ
3 脳梁の形態と発達
る
。
左右両大脳半球の連絡に関係する神経組織は,脳梁だ
しか
mlssur
a,さらに中間
けでなく,脳梁を含む交通 com
も協調した強さで連動しなくてはならない。そして命令
nt
ermediaといわれる友右を連絡する組織
質 massai
を発する場所はーカ所の「左 JBroca運動性言語中枢
が関係し,その構造も複雑で,理解も不十分である 。 そ
この左と右の運動野から発する命令は,同時に,
のため,脳梁を中心とした交通の基本的な事項を簡単に
であり,左と右の命令の連絡は,交連,図式的に言えば
脳梁を介して行われている。すなわち,
i
左 JB
roca
述べた後,最近の知見と考え方を整型してみる。
の運動性言語中枢から出た命令は, 二つ に分かれ,左と
A
. 交連の概観。晴乳類の終脳の左右半球を述絡する
右の運動野に達し,それぞれから出た命令が,両手に達
ef
i
b
e
r
sは,海馬交速,前交速と,
交連繊維 commissur
する。そして,左右インパルスの大脳半球閣の連絡経路
ここでの主題である脳梁が含まれる。その形態の大要を
として,脳梁を含む交速がその役割を行う。
緩めれば以下のようになる。
脳梁は左右半球をつなぐ神経繊維の連絡路,すなわち
一方,神経学的微細徴候については後述するが,その
神経学的な病理機構については,今まで,ほとんど何の
交速のうち最大の組織で,嘆脳,海馬ラ号回,これに援す
①脳梁吻
②悩梁膝
③脳梁幹
Fig.l
④脳梁膨大部
(2)
坂本ほか.脳梁
-437-
る側頭葉を除く両大脳、ド球を述絡し,一名,級大交連
小さな繊維点と,もう 一つは.s
!
I
J
i
Jj策聞を結ぶ大きな繊
Commissuramaximaとも呼ばれている 。 n
T4梁中の
維束である。後必は,両側側頭集の巾,下部に連絡し,
繊維は,大脳半球中に放散し,脳梁政線 r
a
d
i
a
t
i
oc
o
r
-
E
南乳類では. I
詰交述の中で最大の繊維を形成するとされ
p
o
r
i
scallosi
る
。
を形成する (~Il) .
.
。
この脳梁は,大脳の縦断面でみると「つ J のf.形をな
3) 脳梁 corpuscallosumo Iお次脳機能が最も良く
o
r
p
o
r
i
sc
a
l
l
o
s
i
.
し.前より後ろに,脳梁吻 rostrumc
発達している人間では,両側の新皮質をつなぐ脳梁は.
脳梁膝 gcnuc
o
r
p
o
r
i
sc
a
l
l
o
s
i
. 脳梁幹 t
r
u
nc
u
sc
o
r
-
全動物中,故大の発育をしている則。
ここを.iiIiる繊維は,両半球の主要な新l
皮質相互を結ぶ
p
o
r
i
sc
a
l
l
o
s
i
.脳梁膨大部 s
p
l
e
niumc
o
r
p
o
r
i
sc
a
l
l
o
s
i
を区別する。すなわち,その前端は脳梁吻であり,吻板
述絡路であるが,繊維は,純粋に l
司、│三球をi1!絡する交述
laminar
o
s
l
r
a
l
i
sを作って前交速の直前で終盤に終わ
l
lに
繊維のほか,役射路や連絡路も合まれる。興味深い '
る。脳梁の後端は,前述のように脳梁膨大部で,総果体
は,脳梁は正常でも個人差が甚だ大き L、。しかも,これ
らの神経繊維は,多少の無縫繊維を含んではいるものの,
と蓋仮を上から包んでいる。
大部分は後程の論述と重要な関わりのある街髄繊維であ
この他に左右半球の連絡路としては,脳梁本体だけで
なく脳梁の上,下側にある,灰白層と脳弓がある。
る。
脳梁の上面,すなわち背側は薄い灰白質の府,灰内層
脳梁は先述のように,前より後ろへ,脳梁青i
j
方の細く
indusiumgriseumによって複われ,その中を二対の
なった脳梁吻,脳梁膝,脳梁体,脳裟膨大部に分けるが,
有儲繊維,すなわち内 ・外側縦条 s
t
r
i
al
o
n
g
i
t
u
d
i
n
a
l
i
s
これらは,脳室前角と側脳室体部の度線,そして側脳室
m
e
d
i
a
l
i
se
tl
a
t
e
r
a
l
i
sが走り,嘆覚の伝導路である。
下角の側墜を作る。組J
I
脳室後中角上部にある脳梁の放射
灰白扇の左右は,脳梁泌の両端で帯状回に移行し前は
繊維からなる天蓋部を壁板 tapelumという 。大脳半球
終仮芳固と脳梁下野に,後ろは小帯固に速なる。また,
の前極と,さらに広く後極へ神経繊維が到達した場所を,
灰白屑が包む,内外縦条の前端は終板努回に,後端は脳
図 lのように.それぞれ前鮒子状部 a
n
t
e
r
i
o
rf
o
r
c
e
p
s
.
梁膨大部の後下s!
I
I
の小都凶 g
yrusf
a
s
c
i
o
l
a
r
i
sをへて
後鉛チ状部 po
s
t
e
r
i
o
rf
o
r
c
e
p
sと名づけている。
歯状回 g
yrusd
e
n
l
a
r
t
u
sに速なる。
脳梁の血行支配は,脳梁前 2/3は前大脳動脈,後 l
/3は後六脳動脈によって支配されている問。
C
. 交速を通る神経連絡
これに対して,脳梁下面に沿っては,脳弓 f
o
r
n
i
x
.
Gewlbeが走っている。│日名,弓隆,弓穫とも呼ばれた
ように,脳弓は乳i
J1体と海馬芳回鈎との聞に位置する弓
左.o両脳聞の神経繊維の連絡,交叉については,脳幹
形の神経組織である。
部での錐体路交叉.上体路交叉(係蹄交文)が有名であ
B.各交速の憐造。
までは祝索交叉や,本
る。しかし,そのほかに,大脳半 I
交通は,さきにidSべた機に 3つの組織の総称であり,
論の主姻である交連系による交叉があることを考慮に入
それぞれをさらに誹しく見ると,以下のようになる。
れねばならない。
1)海馬交速 hippocampalc
ommissure。海馬から
脳梁はこうした脳交連系中で最大のものであり,両大
出,恐らく 一側の海鳥回からの繊維,梅馬采 f
i
m
b
r
i
a
脳の新皮質を結んでおり,続論的には,次のような神経
を通って.脳梁膨大部の下部に達し,対側に至るか,脳
投射系を作っている。
すなわち,前頭葉前部(この中には.運動性言語中枢
弓の後角に入って脳弓系に分布する。正中灰白質からの
に終る。
繊維も脳弓に入り海馬交i!l!で一部交差後,語読書5
からの繊維を合む)は,脳梁前 1/3を通過する川。脳
2)前交連 a
n
t
e
r
i
o
rcommissur
e
。これには a
.延
梁前部の中では, ことに脳梁吻を通る神経繊維が大切で,
髄間,結節間成分. b
.脳斡の梨状膨隆部前 (
p
r
e
p
y
r
i
-
前頭前野 p
r
e
f
r
o
n
t
a
la
r
e
a
. 前運動野 premotora
r
e
a
form) .扇挑骸間.海馬問回の成分. c 視床分界条成
の繊維は脳梁吻の中腹部に集中して左.fj半球を連絡する。
分. d 新皮質成分,から成っている。このうち a は
前政策後部と頭頂葉から出る神経繊維は脳梁幹部を,
輔乳頬では発育が極めて悪く,小さい。 b
.は二 つの半
通過するとされる。この ほか,前交述は,両半球の側頭
正低側方の扇挑核相互の述絡は密で,盆長
球海馬回問. 1
集,ことに川桃核を結ぶとされており,また,すべての
績での発育は良好である。 C.視床分界条成分の繊維は
人で一致した所見で、はないが,脳梁の巨大な繊維は,両
尾状核に沿う唆糸核に並んで交述まで下りて行き,対側
半球皮質を結ぶと同様,灰白交i!l!が辿絡し両視床を結ん
の扇桃核に至る。 d
. 新皮質成分は
でいる。さらに,後交速は間脳の咳と中脳の核を結ぶと
2つの部分よりな
り,表在性の口腔方にある前頭葉皮質からの外包を通る
されている。
(3)
人間福祉学
一4
3
8-
A
n
t
e
r
i
o
rf
o
r
c
e
p
s
前鮒子
C
o
l
l
a
t
e
r
a
lo
fc
o
r
t
i
c
o
s
p
i
n
a
l
f
i
b
e
r
皮質脊髄繊維卸!副路
C
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n
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a
lf
i
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C
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r
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lf
i
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r
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中心裂
中心裂
C
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s
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a
lf
i
b
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c
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s
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i
n
gthroughbody
o
fcorpusc
ollosum.
T
y
p
i
c
a
lcommisuralf
i
b
e
r
そ
i
nbodyo
fcorpusc
a
l
l
o
s
u
m
.
脳梁幹を績断する
皮質脊鑓繊維
脳察幹内の典型的交速繊維
Colla
t
e
r
a
lo
fa
s
s
o
c
i
a
t
i
on
f
i
b
e
r
交連繊維側副路
P
s
t
e
r
i
o
rf
o
r
c
e
p
s
後鉛子
Fig
.2 脳察水平断函での連絡路 (Crosbye
ta1
.1
9
6
2川)
5)側頭葉繊維(前線状野 pr
o
s
t
r
i
at
ear
e
aを除く)
ところが,大脳皮質からの投射系神経繊維は脳梁内で
の走行が複雑に重なり合い,十分解明されていない。さ
と島領域の繊維は脳梁体の後部を占める。
6
)脳梁膨大部の半球繊維は後頭葉に,また前線状野
らに,脳梁が傷害された時,このような交連繊維が結ぶ
個々の機能の異常がどのように現われるかの結果は一定
へ行く。
していない。
Geschwind
)と と も に 脳 の 高 次 機 能 を 見 て い る
'
Harvardの Pandyaら21) は. 7匹のアカゲザルで脳梁
このように両脳半球聞の連絡路は,模式図化すると ー
見簡単であるが,脳梁内での経路は複雑にからみあって
いるので,神経繊維の果たす機能と結ひ ついての研究,
F
を切断,鍍銀染色体で両半球皮質投射繊維の連絡を調べ
ことに言語など動物実験が不可能な領場では,まだ未解
た。これらをまとめると,人聞についての結果では ない
決な部分が多く残されている。
D.交速の発達。
が以下の通りである。
1)脳梁前半分は前頭葉の色々な部分へ投射。
2)脳梁後 ろ半分は頭頂葉,側頭葉,後頭葉と島 ・弁
脳梁繊維は二千万本の神経繊維からできたヒト左右脳
半球間最大の連絡路とされている川。その発達を見る
u
l
oopecul
a
rr
e
g
i
o
n
) と連絡する。
蓋領成 (
ins
3)脳梁後半分は,頭頂葉繊維が側頭葉樹仕に比べて,
より前方を占める。
4)中心前弁蓋 (
p
r
e
c
e
n
t
r
a
lo
p
e
r
c
u
l
a
)への繊維は,
脳梁後半部を横切る 。
と交述板 c
omissuralp
l
a
t
eは,胎生 1
4日以後出来,脳
梁の発達は,それ以後,胎生 8週から 2
0
週の間で形成さ
れる九 最初に脳梁膝,次いで脳梁斡,脳梁膨大部と前
から後ろへ形成され,最後に一番前方の脳梁吻が出来上
がる。
(4)
坂本ほか:脳梁
一4
3
9ー
osm伊
J
I
" 引と, 人為的に脳梁を傷 1
fした脳の手術例,
脳梁の発達は,透明巾隔腔 cavums
e
p
t
ipercidum
たとえばてんかん治療としての脳梁切断 d
i
s
c
o
n
n
e
c
t
i
o
no
fcorpuscallosum例 8) 17; 掛が中心になる。こ
の発達に続いて起こる。異常発達もしばしば起こるが,
発生時期のずれから,点.の発達異常か血管附;yや他の機
造異常によるものかを灰別できる 3) 18J。半i
求が完全に分
うした症例ではどのような欠落症状が見られるかによっ
離せず,僅かに繁っている例も小数であるが存復する。
て,逆に脳梁の機能を推定しようとする。ところが.こ
紙面 mids
a
g
i
t
t
a
lplaneに海馬情造
憎一脳窒や中央商j
うした自然、の実験 e
xper
i
e
n
c
enature
l
l
eからすると,
が見られる事がある。逆に,異常形成の時間的ずれから,
脳梁では,全部が全部異常を来すわけではない,すなわ
透明中隔腔の残途,後方への進展, Vergae腔などは日
major) 障害はないとされてきた。
ち大きな (
常生活では何ら隙宮が見られない正常人といわれる人で
脳梁の生理的機能の応用は,正常人を使って電気的に
も見られるのはこのためである。
も利用されている。たとえば.神経体制感覚誘発電位
ヒトではなく.動物での研究であるが,神経繊維の発
達については,胎児マウスと幼若マウスを使って脳梁吻
somatosensoyevokedpotenua
,
lSEPが脳梁繊維が
切断されていても刺激同側から SEPが記録できること
$の脳梁繊維,'f;f.孔繊維を渡銀法で調べた研究がある。
から,対側の中心 ・頭頂部からも獲られる娠幅の低い S
それによると,胎生 1
6円で, 2つの終脳繊維(脳梁繊維,
~孔繊維 perforating
EPは , 脳 梁 を 介 す る の で は な し 容 量 伝 導 volume
f
i
b
e
r
) は,すべての胎維を有す
conductionによって電位分布が広がったにす ぎない
という知見 16) も,脳梁の機能の応用である。
る動物に見られる 19)。 この時期,穿孔繊維は交叉しない
が,同側投射路をそれぞれの半球で作っている。これら
しかし.脳梁の機能を最も良く示すものは,脳梁の欠
を見ると交述繊維の発達は極めて早くから形成されてい
慣や降~で.どのような機能異常が起こるかの研究であ
ることが分かる。その後は交速の量的な培大につれて繊
ろう。最初に,先天的に脳梁の一部,あるいは全部が欠
維は発達して L、
く
。
慣している症例についてみると, Crosby
川は,
このよ
也の脳の一部が釘傷を来していない限り
うな脳梁でも. I
E.
髄鞘化の発述。
髄鞘と神経活動とが僚接な関係を持つことを指摘し,
哀の知的障符はない,脳梁の陣~があっても若名な臨床
神経系の各部分によって髄鞘化の経時的な去を追ったの
症状は示さない,と 言 っている。つまり.欠落症状より
はF
l
e
c
h
s
i
g
聞が披初である。彼は W
eigertの髄鞘染色
n
o
rf
u
n
c
t
i
o
n (小機能)と理解し,
見て脳梁の機能を mi
法を用いて.神経系各部の鎚鞘化には時間的 Aがあるこ
major (大機能)ではない,とするのである。
と,その完成と神経活動との間には密接な関係があると
しかし,隊吉例,ことに先天的な欠鍋.腫湯,血管障
する考え,すなわち髄制化 m
y
e
l
i
n
i
z
a
t
i
o
nの学説を提
害についての観察には,大きな陸路がある 。 なぜなら,
唱したのである。
純粋に脱梁だけが傷害されることはなし大抵,近傍の
しかし,実際に染色傑本を見ると,染色のす三技にもよ
組織も侵される ' I~が多いからである。
るが,濃度だけでは髄制化の時期の判定は困難のことが
すなわち,脳梁傷害の徴候は, I
脱梁そのものの傷害と
多い。こうしたことから, 1
9
6
7
年
, Y
akovlev,
P
.l
.ら却
言うより,他の場所と連絡している時に著明に現れる。
yelogeneticcyc
Je(
髄鱗化週期)の考えを導入し
はm
たとえば, Broadmannの4
.6野と,優位脳(普通左)
た。胎児の脳が軽く灰向色に染まる時を,髄鞘化の始ま
の運動野,運動前野と逮絡した繊維の隊-gでは,患者は
2
8
歳男性の脳が濃青灰色に染まる時を髄鞘化終
右上肢の不全麻癖,左手の失行症を示す。普通は近接す
りとし,
了の標準とし,その聞を供神経系における髄鞘化の週期
る脳梁膝や帯状回 c
i
n
g
u
l
a
t
egyrusなどの皮質も障害
c
y
cl
eと考えたのである。
される。脳梁吻郎の障害では記憶附告では記憶障害も来
この基準で脳梁の鎚鞘化 m
y
e
l
i
n
i
z
a
t
i
o
nを検討する
すと言う。脳梁後方障害では里i
f
f
f
f,知的障害が起こると
3- 4カ月から始まり,
言う1)9)が.はっ きりした証拠はなく, こうした働きの
脳梁後部から前方の吻部へ向かつて成熟していく。そし
ある皮質との関連が示唆されている。麟梁先天欠損では
7歳過ぎにはほぼ完成する。しかし,
後方 (
c
a
u
d
a
l
) 海馬にも障害が及ぶ。 脳梁吻が発達し
と,脳梁のそれは,出生直後,
て,脳梁髄鞘化は,
多少の遅速を考慮すると,設終的に脳梁の髄鞘化が完了
ない場合,海馬は短くたE り,~球正巾表面に沿って脳梁
するのは約 1
0
歳とされているか刊
の後ろに位置する。
脳梁欠拡J
a
g
e
n
e
s
i
so
fcorpu
scallosumを,脳梁の
4
.脳梁機能の発達
脳梁機能の研究は,脳梁障害を基に進められてきた。
ほか, 前交述 a
n
t
e
r
i
o
rcommi
s
s
u
r
e
.
n
厳
重
手p
sal
t
e
r
i
u
m
.
g
e
n
e
s
i
so
fcorpusc
a
l
l
これには,先天的な脳梁欠領 a
透明中隔の欠釦と広義にとって見ると次の様になる。
(5)
-4
4
0一
人間福祉学
関係があるのでないか,という指摘は興味深し、。
脳梁の先天異常を病理解音J
Iの函から検討すると,上紀
の異常が見られ るほかに,帯回 g
yrusc
i
n
g
u
l
iの欠損,
動物実験では,純粋に交連交叉だけの機能を見るため,
発達の遅れが起こる。脳梁の部分的欠損の時は,交連仮
Meyers(
1
9
6
2
)閣は,猿を使って,錐体路, ヒ錐体路
comissuralp
l
a
t
eが胎生 1
4日以後出来るので,哀の発
を除く ,交巡を含むその他全部の交差路を,実験的に切
達異常か血管障害や他の機造異常によるものかを区別で
e
r
B
u
c
y症候
断することに成功した。その結果, Kluv
きる (Marburg)
。半球が完全に分離せず,僅かに繋っ
群類似の症状(両側前部側頭葉障害で視覚失認など)が
ている例も小数であるが存在するし,単一脳室や中央前
出現することを見ている。
額面 mids
a
g
i
t
t
a
lplaneに海馬構造が見られる繕造異
人で脳梁切断をしても,運動や知的,感覚的な粗大な
常も報告されている,)。
(
g
r
o
s
s
)障害はおこらない事は, Dandy (
19
3
1
) らに
脳梁欠損以外の異常(水頭症,小田症 mlcrogyna,
1
9
4
0
),
よって言われ,その後 VanWagenen (
反復性低体温 r
e
c
u
r
r
e
n
thypothermia) を伴う事が多
A
k
e
l
a
i
t
i
s(
19
4
4
),
Sperry(
1
9
6
5
) たちが確かめてい
し
、
。
る。脳梁だけで無く Gazzanigaら引は,前交通,中間
一般に脳梁の先天異常には 2型が区別されている"。
質,河馬交速の切断を行い, S
perryは,脳梁切断によっ
すなわち,①単に半球聞に連絡がないもの。これには
て起こる障害は.高度に洗練された検査法でなら分かる
正中線部異常 m
i
d
l
i
n
eanomaly,といわれるもので,
が,普通見られる脳梁疾患での粗大な障害とは向じでな
o
n
g
i
t
u
d
i
n
a
lb
u
n
d
l
eは対側半球へ神経
従東神経繊維 l
い,と言う凶。しかし,病気で起こった脳梁陣容は,実
刺激は行かない。この形は特別な異常を欠くこともある
験的な研究の結論の証拠とされることが少なく無い 。
が,時には半球側壁の異常では,軽度から中等度の知能
Dる
j
e
r
i
n
e(
1
8
9
1
)叫は,左線条体皮質,脳梁吻の梗塞
遅滞,建軍医,視覚,運動,両手の協調運動障害を伴う。
l
i
n
d
n
e
s
sと右同倶J
I
性半盲 homonymで,語盲 wordb
c
i
n
g
u
l
a
t
eg
y
r
u
s
)欠損,透明中隔欠損などで
帯状東 (
oushemianopsiaが起こった例を報告している。この
は,障害は軽いとされ,発作,精神遅滞などを示す。半
場合,脳梁吻部の障害によって,左半球の 言語中枢と ,
球聞のみならず,同側に繋がる繊維も欠くことがある。
視覚の中枢がある右後頭葉は連絡が絶たれるので,障害
他の一つは②細胞増殖などの奇形を伴うもので重症で
の無い左視野に入った諮を読む事ができない。ところが,
icrogyria,灰白質の異所性 h
e
t
e
r
o
ある(小脳回 m
左手で文字を跡づける事ができた。つまり,左手からの
l
o
p
i
aなど)。重疲精神遅滞,点頭てんかん発作を伴う
触覚刺激は右感覚中継に達したはずであるが,左から右
2
1・
0
も.この脳梁先天異常の一つ
A
c
a
r
d
i
'
ssyndrome
への伝導はどうなっていたのか。おそらく刺激は脳梁体
である。
部の障害されていない神経繊維を通って左半球の言語領
一方,脳梁切断による研究は,そう新しいものではな
野と接触している右感覚皮質に達したであろう 。
い。古くは Z
inn(
17
4
9
) が犬に行って,運動や感覚に
Foix(
1
9
2
5
) は同憾な例を報告し, T
r
e
s
c
h
e
r(
1
9
3
7
)
は隊容がなかった,としている。しかし,脳梁の機能に
,
Masps(
1
9
4
8
) は脳梁膨大部を切断して左半分の視野
関する知見が飛躍的に進んだのは, S
perry研究室での
で読ませて失読症が起こっている事を確かめた則。しか
し,これが正確に失読症であるかどうかは疑わしい。
分離脳の研究からである。
脳梁の切断をされたヒトでは,コトパは左半球に達し
Sperry (
19
6
5
) は,脳梁切断すると ,右利きの人で左
た情報だけを処理する"とされ,脳梁切断で,右半球は,
半分の視野に入った語に対しては失読症が起こるが,右
コトパの表出 v
e
r
b
a
le
x
p
r
e
s
s
i
o
nには関係が無くなっ
半球では見えているし,その語を理解する事実を見出し
てしまう。さら に Meyers(
1
9
5
6
)附は,脳梁や交述を
た1)。この場合,普通の物品を左視野の中で点滅させる
切断した分離脳では,それぞれの半球の知覚や, 記憶,
と,言葉が言えなくても左手で,その物を触って見せる。
脳梁症候群は,精神障害(行為,動作の奇矯性,記憶
学習能力i
こは変化はないが,一つの半球から他の半球へ
の高次 (
h
i
g
h
o
r
d
e
r
)学習能力の転送に障害が起こる
障害,知的障害.時に術語障害であるが,純粋の脳梁障
事を見いだした。その後, M
ikle(
19
6
0
) ,T
r
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v
a
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t
h
e
n
害によるかどうか不明である),失行症 (Denny-Brown
(
1
9
6
5
) は,前交逮,視東交叉は切断しでも,必ずしも
は脳梁だけの障害では起こらず,左半球の病変が必要と
単純な視覚的情報の転送障害は起こらない事を見てい
した),失認症(脳梁膨大部の病変で脳梁連合繊維が障
る3
9
¥有袋類では利き側もなく知恵 (intelligence) も
害されるため),そのほか平衡障害や括約筋障害も現わ
高くないが,この動物には脳梁が無く,代わって肥大し
れることがある。
このように.脳梁の働きに関する研究は,最初の臨床
た前交速が左右脳の情報移送をしているに過ぎない事と
(
6
)
-4
4
1ー
坂本ほか脳梁
的無視の状態から,最近の活発な報告,それも,高次神
制系が成熟する 1
0
歳以後には鏡像運動は見られなくなる
経機能までにおよぶ多岐にわたるようになり,問題とさ
というである(図 3参照)。
れる項 gは次第に広がって焦点はぼやけて来ている。こ
さらに.一側半球障害の場合,鏡像運動は鍵側の手に
のため,本論では,直接.脳梁抑制に関する事項だけに
強く出現し障害側には減少するという.一見,矛盾し
しぼって述べていきたい。
た徴候が出る。この非対称の説明として図 3に示すよう
5.
脳梁抑制仮説による共同運動の説明
に,障害側半球から脳梁を通って対側の陣 3手に行く抑
脳梁抑制の仮説を用いて,共同運動のひとつである鋭
制神経繊維は障害のため作用せず,健側半球からの抑制l
像連動にみられる非対称の説明を試みたのは Nass (
1
9
8
5
) である 3η。彼の考えの骨子を述べると 以下のように
だけが同側正中錐退路 だけを抑制するため,健側手だけ
に鋭像運動の減少が現れると考えるのである。
私たちは, こうした NassのJg"え,ならびに脳梁髄革1'l
なる。
主要な運動繊維である錐体路の大部分は延髄で交文し
化の発達の資料をもとに,得られたデ ー ターについて,
いて,反対側の運動(たとえば独立した迅速な指の運動)
々察した結果,次節に示すような仮説を立てたのである。
を支配するのが普通である。これに対して交叉すること
なく同側を下って,より近位の同側肢を支配する細く,
6 神経学的微細徴候と脳梁仰制仮説
より脆弱な錐体路(正中錐体路)は,交叉路にくらべて
われわれは,永年,幼児から学童期の小児を対象に神
早〈成熟する。この正中錐体路が,未成熟な小児では筋
経学的微細徴候 n
e
u
r
o
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o
g
i
c
a
lminors
i
gnsの出現濯
トーヌスに強直性に作用し, これが鋭像運動を引き起こ
を調べてきた。神経学的微細徴候の意義の詳細について
す。しかし,成熟すると,非交叉性の錐体路は反対側、ド
は,既出論文則 却 を参照して頂きたく,
ここでは再論
ま消え
球からの仰制支配を受けるようになり,鏡像運動 l
しない。 ただ,一言,神経学的微細徴候について触れれ
る。この抑制l
のインパルスは.脳梁を通 じて対側IJの半球
minimalb
r
a
i
n
ば.これは,微細脳機能障害 MBD,
を抑制しているとするのである。反対に脳梁の異常,た
dysfunc
t
i
o
n,最近,不器用な子供,議ち省きのない f
,
l
i
p
p
e
l
F
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i
l症候群などの奇
とえば先天性脳梁欠損, K
に関する論議で使われている注意欠釘症候鮮 a
t
l
e
n
l
l
o
n
l
動
形,先天性,後天性半身不全麻薄などがあると鋭像五i
d
e
f
i
c
i
tsyndromeの基盤を構成しているとされる徴候
は著明に現れる。そして 1
0
歳以後での鏡像運動消失は銅l
である。
伽!を受けている。すなわち,幼児期には見られた鋭像運
神経学的微細徴候としては,運動機能,感覚機能,認
動も,年齢が進むにしたがって対側半球から ,脳梁を通
知機能など多岐にわたっているが,われわれが,特に入
じて /
:
i
.
1
5半球からの同制IJ性錐体路(つまり正中錐体銘 )
念に調べたのは,片足立ち,開口手指伸展現象,変換運
抑制により,その出現が抑制されるようになる。その抑
動
, Fog'
st
e
s
tなどの運動機能,さらに立体認知,僧に
グ一
j/
事L
;
2
ご
グ------~-------宍\
Cr
os
s
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dPyramidalTr
ac
t
交差性錘体銘
Uncros
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dPyramidalTrac
t C
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b
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ySys
t
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非交差性鍾体路
一一 一 一
脳集抑制系一---_.
.
_
Fig.3 脳梁の御伽l
における錘体路 と半球の関係. (
Nass,R
.'
T
;
)
(7)
-4
4
2-
人間福祉学
(単位 :秒)
2
0
シ
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,
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づロ
ー
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1
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1
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j
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1
2
1
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6yr
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8yr
9yr
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1
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0
2
0.
0
2
0
.
0
Fi
g
.4 小児の片脚立ち.平均時間の推移 . (坂本ら掛)
位置鑑別などの認知機能である。
のでないかと考えている。
0
歳を
その結果,図 4に例示したように,その多くが 1
ただ一つの問題になるのは,この理論には,今のとこ
変換点として,それ以前とそれ以後とでは,出現率の著
J
的な裏付けを欠いている。神経学的 「微細 J
ろ病理解音 I
明な変化を見ている。しかも,両側の協調を要する溺合
徴候は,微細なるがゆえに,剖検で確かめるような機会
この傾向は著し い。
は,将来 を待っても来ないであろう。剖検するほど大き
その理由として,我々は脳梁抑制仮説と脳梁成熟との
ards
i
g
n
s (明瞭な徴
な障害なら「微細」どころか.h
関係を考えている。すなわち,脳梁髄鞘化の完成がほぼ
候)を示すと考えられ,それでは神経学的微細徴候とは
(7-) 1
0
歳であること.神経学的微細徴候の多くが 1
0
言えないからである。
歳前後に変化すること,つまり,その多くが脳梁成熟の
しかし,脳梁に異常のある症例を見出して,その症例
時期と共に消えていく(または円滑になっていく)こと,
の神経学的微細徴候を調べ,間接的に,この仮説の裏付
である。
けを取ることなら可能であり,髄鞘化が見られる M RI
さらに,こ の考 えは, 二種類ある聞と考えられる神経
などでの確認も,機会さえ待てば不可能ではなし、。 われ
学的微細徴候の理解に有用である。 二種類のうちの一つ
9
I
J
数を地やし脳梁仮説を検証していきたい
われは今後. {
as
t
e
l
は,どんな小児ででも見られるもので,いわゆる p
と考えている。
s
i
gn
sであり成熟によって消えるとされる徴候である。
7
.まとめ
他の一つ が軽か脳性麻療などに見られる真の神経学的微
神経学的微細徴候の理論的基礎として,脳梁研究の現
細徴候とされるものである。 lOi~が変換点という辛頃は,
状を延べ,我々が唱えている脳梁抑制仮説と脳梁成熟と
J
I
i
j
者の現象の説明にもちろん有用である。しかし,後省
の関係から,微細脳機能障害との関連を概説した。
の「病的な」精神学的微細徴候,たとえば半身(麻煉)
文 献
i
a
d
o
k
o
k
i
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s
i
sなどの徴候の説明
徴候群に見られる d
と診断にも有力な武器になる制 ー
叫
1
. DeJong.
J
.
G
.
:
T
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cNeurologicExamination
さらに,この考えはかつて微細脳機能障害 MBDと
C
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lNeurology. North-HollandPub
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.
2
. DeJong,
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hecorpus
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d (不器用な子供)な
いわれ,最近では.ClumsyC
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nd
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c
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ts
y
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どを含む注意欠損症候群 A
romeと呼ばれる小児の理解に有用である。知能も正常
で,はっきりした神経隙審もないのに,なぜ普通に行動
calosum,
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e spasms.ocular anomalies
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ssynrome) トJ
できないかの説明も,すべてとは言わない迄も,ある程
3.Menkes,
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ssyndrome:
(
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43-
坂本ほか:脳梁
Systemo
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gMan.Vol
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9
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Ann.Neuro1
5
. 里見知夫ほか"自分の手"徴候 を示した脳梁欠損
Macmillan.NewYork,
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9
.Meyers,
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ldominance.Baltimore,
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71
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0
. 平山慈造:神経徴候学。文光堂. 1
目
の 2症例。臨床神経. 2
9
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Kaplan,
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