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米国DOEのバイオリファイナリー・プロジェクトの最新状況(4)

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米国DOEのバイオリファイナリー・プロジェクトの最新状況(4)
石油エネルギー技術センター
JJP
PE
EC
C レ
レポ
ポー
ートト
第 11 回
2012年度
平成 24 年 6 月 29 日
米国DOEのバイオリファイナリー・プロジェクトの最新状況(4)
~バイオケミカル法・藻類原料等によるバイオ燃料生産技術~
米国では次世代型バイオ燃料の技術開発および事業化
がエネルギー省(DOE)および農業省(USDA)の強力な
支援により行われており、統合化バイオリファイナリー・プロ
ジェクト29事業が進行中である。最終回の今回はバイオ燃
料生産技術としてバイオケミカル法3プロジェクト、藻類原料
3プロジェクト、メタセシス(Metathesis)反応1プロジェクトの
最新状況を報告する。
【 内容】
1.
各 PJ の状況概要
p.1
2.
バイオケミカル法
p.2
3.
藻類原料
p.4
4.
メタセシス反応
p.7
5.
6.
第四報のまとめ
DOE-PJ のまとめ
p.8
p.8
1. 各プロジェクトの状況概要
表1に、今回報告する7事業の概要を示す。
表1 各プロジェクトの前回報告時と現在の状況概要
主企業名と実施場所 前回報告時の状況(2011年1月)
Myriant
ルイジアナ州
Lake Providence
現在の状況
変性大腸菌を用いて、デモ規模の 計画内容の変更は無いが、装置の
装置でモロコシの粗挽き穀物を原 建設は遅れており、2013年初頭か
料として琥珀酸を製造する。
らデモ運転を開始する予定。
2011年7月から建設を開始してお
Red Shield
バイオケミカル法を用いて、デモ規
り、完成までに2年程度掛かる可能
模の装置で木質系バイオマスを原
Acquisition
性有る。目標製品を多様化して、経
メイン州 Old Town 料にブタノールを製造する。
済性の改善を図る。
Amyris
Biotechnologies Inc.
カリフォルニア州
Emeryville
Sapphire Energy
ニューメキシコ州
Columbus
Algenol Biofuels
フロリダ州
変性酵素と微生物を用いる発酵法 プロジェクト期間は本年6月末で終
により、パイロット規模の装置でトウ 了予定。年間1億トンの原料処理能
モロコシを原料にディーゼル油を製 力を持つ商業設備の検討に注力し
造する。
ている。
藻類を原料として、デモ規模で
ジェット燃料を製造する。
現在建設中、2012年6月中には完
成し運転開始の予定。基本計画に
変更は無い。
Fort Myers
藻類を原料として、パイロット規模 フロリダ州の研究施設の近くに設
でエタノールを製造する。テキサス 備を建設することになり、2011年10
州とフロリダ州の2ヶ所で検討中。 月に着工し2012年中に完成予定。
Solazyme
ペンシルベニア州
Riverside
米国海軍の艦船や民間航空会社
光合成を行わない藻類を用いて、
で、藻類由来の油と石油製品とのブ
パイロット規模の培養槽で藻類油
レンド品を用い実証試験を実施して
を製造する。
成功。製造設備は継続して増強中。
Elevance Renewable
メタセシス反応を用いて、R&D規模 既に幅広い原料油を処理してデー
Sciences
で天然油からディーゼル油やα-オ タ採取を実施中。実験結果の公開
イリノイ州
レフィンなどを製造する。
はない。
Bolingbrook
1
石油エネルギー技術センター
2.バイオケミカル法を用いたプロジェクト
バイオケミカル法を用いたプロジェクトは、デモ段階プロジェクト2件、パイロット段階プロジ
ェクト1件の合計3件である。
(1) Myriant Technologies, LLC(Myriant 社)
Website:http://www.myriant.com/
本社:マサチューセッツ州 Quincy
事業場所:ルイジアナ州 Lake Providence
事業内容:デモ段階プロジェクト
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:モロコシのあらびき穀粒、リグノセルロース(日量 50 乾燥トン)
製造規模:琥珀酸 年産 3,000 万ポンド(13,620 トン)、その他有機酸、硫安肥料
DOE の補助金枠:5,000 万ドル(2010 年 3 月)
【事業概要】Myriant 社は 2010 年 12 月、2011 年初めから既設プラント敷地内にデモ装置
の建設を開始し2012年半ばに完成予定と発表していた。2012年3月の報道では、完成
時期が遅れ2013年初頭から商業運転を開始する予定。完成後は、世界最大のバイオベ
ースの琥珀酸製造プラントとなる。
【技術概要】Myriant 社の技術は、琥珀酸および樹脂や溶媒の原料となる有機化学品を製
造できることが特徴である。琥珀酸は特殊化製品の製造原料や製造中間体として使用が
可能であり、既設商業プロセスの製品と直ちに置き換えることも可能である。
Myriant 社の主要ベース技術は、変性大腸菌(非遺伝子組換作物の Escherichia
coli)を用いて琥珀酸を製造することである。一連のプロセスはパイロット規模で実証運転
を行っており、本プロジェクトでは商業規模へのスケールアップ因子を把握することが目
的である。発酵プロセスは、D-乳酸やリボフラビン(Riboflavin)などの類似のバイオ系の
商業生産設備の経験を持つチームにより、開発済みである。
本プロセスでは反応試材として二酸化炭素を用い、パイロット規模では石油ベースの
プロセスよりエネルギー消費が少ないことが実証されている。
【参考情報】Myriant 社は、2008 年 6 月から高耐熱性樹脂であるポリ乳酸の製造用にD-乳
酸を商業規模で製造している。また、次のステップとしてバイオ-アクリル酸の製造を計
画している。
(2) Red Shield Acquisition, LLC(RSA 社)
Web.Site:http://www.oldtownff.com/
本社:メイン州 Old Town
事業場所:メイン州 Old Town
事業内容:デモ段階プロジェクト
採用技術:バイオケミカルプロセス
2
石油エネルギー技術センター
投入原料:木質系バイオマス
製造規模:n-ブタノール 年産 136 万ガロン(5,148KL)、酢酸 年産 229 万ガロン
(8,668KL)、ギ酸 年産 81.5 万ガロン(3,085KL)、
アセトン 年産 40.1 万ガロン(1,518KL)
DOE の補助金枠: 3,000 万ドル(2010 年 1 月)、最新資料では 3,390 万ドル
【事業概要】本プロジェクトは、メイン州 Old Town にある Old Town Fuel & Fiber 工場
(1882年稼動後に種々の改造やプロセス変更などを経てきたパルプ工場)の再生プロジ
ェクトである。プロジェクトが成功した場合は、同様な取り組みを全国に展開可能としてい
る。
2011 年7 月に DOE から環境評価報告書が出されており、「環境への影響を抑制しな
がら将来の商業設備への適用に関して技術評価、経済評価を行い、他所への技術展開
のために尺度を確立する」ように求めている。このパルプ工場は、環境基準をたびたび
逸脱して指摘を受けている背景がある。
業界情報ではデモ装置の建設は 2011 年 7 月からスタートしており、完成までに 1 年
半から 2 年を見込んでいる。
【技術概要】メイン大学の技術指導を受けて取り組んでおり、Kraftパルプ製造プロセスの上
流側にメイン大学と共同開発した木材チップからのヘミセルロース抽出プロセスを設置し、
抽出液をろ過、分離、濃縮の各工程で処理する。ヘミセルロースから糖類を分離し、バイ
オケミカルプロセスで化学品を製造する。
参考:
http://energy.gov/sites/prod/files/EA-1888-DEA-2011.pdf
(3) Amyris Biotechnologies, Inc.(Amyris 社)
Website:http://www.amyrisbiotech.com/
本社:カリフォルニア州 Emeryville
事業場所:カリフォルニア州 Emeryville
事業ステージ:パイロット段階プロジェクト
目的製品:ディーゼル油および化学製品
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:Sweet sorghum(糖分の多いモロコシ)日量 1.8 トン
製造規模:ディーゼル油 年産 1,370 ガロン(5.2KL)、化学製品
DOE の補助金枠:2,500 万ドル(2009 年 11 月)
【事業概要】Sweet sorghum から発酵処理にて得られた糖類を、変成酵母で処理することで
工業原料中間体のファルネセン(Farnesene、C15H24 異性体混合物)の製造や、ディー
ゼル油などと性状が同様な炭化水素製品を製造する。C15 発酵中間体から、潤滑油、樹
脂および石油化学製品などの二次製品の製造も行う。プロジェクト期間は2年半で、2012
年 6 月末に終了予定である。
プロセス的にはサトウキビを原料として確認済みであり、原料種を拡大して製品化可
3
石油エネルギー技術センター
能かを確認するプロジェクトである。現在は、Sweet sorghum を原料として年間 1 億トン
超の処理能力を有する工場の計画検討中である。
【技術概要】変性酵素と微生物を用いて発酵法により糖類を炭化水素に転換し、発酵段階で
出来る水への不溶解油分は次工程で水素化することでディーゼル油を製造する。糖分を
含む発酵残渣は嫌気性分解によりバイオガスに転換されたあと、メタン水蒸気改質により
水素を発生し、各種製品の最終処理に用いられる。
【参考情報】Amyris 社は 2010 年 6 月にフランスの Total 社と戦略的パートナーシップ協定
を結んでおり、更に 2011 年 11 月に取り組み範囲を拡大する契約を行っている。Total 社
の助成額は、合計で約 3 億 9000 万ドルの計画である。
参考:
http://www.amyrisbiotech.com/en/newsroom/120-total-and-amyris-to-build-a-stra
tegic-partnership-for-biomass-based-fuels-and-chemicals
http://www.amyrisbiotech.com/en/newsroom/218-total-and-amyris-partner-to-pro
duce-renewable-fuels
3.藻類を原料とするプロジェクト
藻類を原料とするプロジェクトは、デモ段階プロジェクト1件、パイロット段階プロジェクト2件
の合計3件が進行中である。
(1) Sapphire Energy, Inc. (Sapphire 社)
Website: http://www.sapphireenergy.com/
本社:カリフォルニア州 San Diego 事業場所:ニューメキシコ州 Columbus
事業内容:デモ段階プロジェクト
採用技術:Algae/二酸化炭素
投入原料:二酸化炭素 日量 56 トン
製造規模:製品 年産 100 万ガロン(3,785KL)
(ガソリン、ジェット燃料、ディーゼル油 100BPD)
DOE の補助金枠:5,000 万ドル(2009 年 12 月)
【事業概要】耕作に適さない土地の 300 エーカーの培養池で藻類を育て、日量約 56 トンの
二酸化炭素を吸収させて生成した藻類油を精製してガソリン、ジェット燃料とディーゼル
油を製造するプロジェクトである。
本プロジェクトの目的は、藻類ベースのバイオリファイナリーに関して経済的に望まし
い規模でのデモを行うことと、採取されるデータで 2015 年稼動計画の商業規模バイオリ
ファイナリー(藻類油で将来は年産 1 億 5,000 万ガロン 567,816KL)の経済性を検討す
る。
DOE から 5,000 万ドルの補助金枠を得るとともに、米国農業省から 5,450 万ドルの債
務保証を得ている。資金的には、Bill Gates の Cascade Investment やロックフェラー
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石油エネルギー技術センター
家の設立した Venrock などの有力な投資会社の支援も受けている。
本プロジェクトは、2011 年 6 月から建設工事を開始している。Sapphire 社は 2012 年
5 月初め、第一フェーズ(約 20 エーカー=8ha)の建設は 2012 年 6 月後半には完了し、
6 月中には運転を開始すると発表した。夏の間を試運転期間として継続運転を行い、設
備の問題点などを把握する予定。2013-2014 年には 100 エーカー(40ha)まで拡大し、
2018 年までに商業規模での操業、2025 年までに年産 100 万ガロン(3,785KL)の藻類
油の製造を目標にしている。生産量の目標は、2015 年までに 100BPD の達成、2018
年までに 5 千~1 万 BPD の達成を掲げている。
【技術概要】Sapphire 社のコア技術は、塩水中で栄養剤を用いながら油分を多く含む藻類
の栽培と収穫を行うことで、培養池は 10 エーカー毎に仕切られた 100 エーカーを一区画
とし 3 区画から構成されている。藻類からの油は共同事業者の Dynamic Fuels, LLC(本
社:ルイジアナ州)により精製される。残留固形バイオマスはバイオリファイナリーのエネ
ルギー源として嫌気性消化プロセスによりメタンガスの製造に用いられ、一部は栄養剤と
して栽培池に戻される。
【参考情報】2008 年にオクタン価 91 のガソリンの製造に成功しており、更に 2009 年 1 月に
は藻類油由来のジェット燃料を用いて Boeing 737-800 で 2 時間の試験飛行を成功させ
ている。
参考:
http://www.sapphireenergy.com/news-article/827868-sapphire-energy-biofuel-in-mot
ion
(2) Algenol Biofuels, Inc.(Algenol 社)
Website:http://www.algenolbiofuels.com/
本社:フロリダ州 Bonita Springs
事業場所:フロリダ州 Fort Myers
事業ステージ:パイロット段階プロジェクト
目的製品:エタノール
採用技術:Algae/二酸化炭素
投入原料:二酸化炭素/藻類/海水、二酸化炭素 日量 2 トン
製造規模:エタノール 年産 10 万ガロン(379KL=6.5BPD)以上
DOE の補助金枠:2,500 万ドル(2009 年 12 月)
【事業概要】本プロジェクトは当初二ヶ所のサイトで計画され、メインサイトは共同取組み先の
Dow Chemical Company (本社:ミシガン州)の Freeport Complex 敷地内に設置され
る予定となっていた。
Algenol 社は 2010 年11 月、「Dow Chemical 社の同意を得て Algenol 社の研究施設
のあるフロリダ州 Fort Myers にパイロット規模実証設備を集約して建設する」ことを発表
した。研究開発の効率化により、経費削減が期待できるとしている。
2011 年10 月にパイロット規模の設備建設がスタートしており、2012 年中には完成の予
5
石油エネルギー技術センター
定である。36 エーカー(15ha)の敷地に商業化モジュールに組んだ 3 千の光バイオリアク
ターを設置(17エーカー,9ha)し、年産10万ガロン(379KL)の燃料グレードのエタノール
を製造する予定である。Dow Chemical 社との共同取組は解消されたが、共同取組によ
り開発した光バイオリアクター用の特殊樹脂やフィルムの取り引きは継続する。他の戦略
的パートナーである NREF、ジョージア工科大学などとの取り組みは継続する。2009 年
時点での建設費は、5,900 万ドルと報道されていた。
【技術概要】天然に広く存在する酵素の遺伝子を Blue-Green Algae に持たせることで、藻
類の細胞内に光合成により出来た糖類を同一細胞セル内でエタノールに転換させ、過剰
のエタノールを細胞壁から培養液である海水中に溶解させて回収する技術である。温室
状のバイオリアクターの中で藻類の光合成を行い、生成したエタノールは細胞壁から培
養液中に放散され、更に培養液からの蒸発によりリアクター表面で結露したものが回収さ
れる。回収されたエタノール水溶液は蒸留により燃料用エタノールとなる。
【参考情報】Algenol 社は、藻類の品種改良により1エーカー(4,047m2)当り年産 6,000 ガロ
ン(22.7KL)のエタノール製造を目標にしている。
参考:
http://www.algenolbiofuels.com/sites/default/files/press_releases/1024_2011_PR_b
iorefinery.pdf
(3) Solazyme, Inc. (Solazyme 社)
Website:http://solazyme.com/
本社:カリフォルニア州 South San Francisco 事業場所:ペンシルベニア州 Riverside
事業内容:パイロット段階プロジェクト
採用技術:変性 Algae
投入原料:トウモロコシ由来の蔗糖、都市の草木ゴミ、スイッチグラス 最大 日量 13 乾燥トン
製造規模:精製藻類油からのディーゼル油 年産 30 万ガロン(1,136KL)
DOE の補助金枠:2,180 万ドル(2009 年 12 月)
【事業概要】Solazyme 社の技術は、特殊な株種を使用して光合成を用いないで培養容器内
で藻類を成長させることに特徴がある。Solazyme 社では、培養容器の容積当りの油分
生産量は非常に多く、経済的に光合成を用いるプロセスよりも優れているとしている。
Solazyme 社は藻類由来の各種燃料の実証実験を盛んに行っており、2011 年6 月に
は米国海軍のシーホーク・ヘリコプターで石油由来と 50/50 ブレンドのジェット燃料の試
験飛行成功、2011 年 11 月にはユナイテッド航空のボーイング 737-800 で石油由来
60%のブレンド品ジェット燃料の試験飛行成功、2012 年 3 月には米国海軍のフリゲート
艦で石油由来と 50/50 ブレンドのディーゼル油の試験航海に成功したと発表した。
Solazyme 社は、製品油を燃料用だけでなく高付加価値用途へ幅広い展開を検討し
ている。
【技術概要】ある種の藻類は乾燥時の重量比で 75%もの油分を含んでおり、Solazyme 社の
6
石油エネルギー技術センター
プロセスでは太陽光が無く暗い工業用培養槽の中でも非常に高い油分濃度が得られる。
藻類で生成したトリグリセライドは植物油に性状が似ている。一日当りの生成油量は培養
槽の容積と同程度である。藻類から高収率で回収された油分はエステル転移反応により
バイオディーゼル油へ、水素化処理により再生可能ディーゼル油やジェット燃料となる。
【参考情報】2011 年 11 月の発表の中で、それまでに微生物由来のマリン軽油とジェット燃料
を 37 万 5 千リットル(約 10 万ガロン)以上出荷したと報告している。同じ発表の中で、
2015 年までに製造能力を年産 50 万トンまで拡大すると報告しており、2014 年からユナ
イテッド航空との間で年間最大で 2 千万ガロン(約7 万トン)を納入する LOI を締結したと
報告している。
参考:
http://solazyme.com/media/2011-11-07
http://solazyme.com/media/2012-03-13
4.メタセシス反応を用いるプロジェクト
メタセシス反応を用いるプロジェクトは、R&D段階プロジェクトが1件進行中である。
(1) Elevance Renewable Sciences, Inc.(Elevance 社)
Website: http://www.elevance.com/
本社:イリノイ州 Bolingbrook
事業場所:イリノイ州 Bolingbrook
事業ステージ:R&D 段階プロジェクト
採用技術:メタセシス反応
投入原料:天然油(藻類油、種油、動物油脂など)
目的製品:ディーゼル油、α-オレフィン、メチルエステル他
製造規模:ベンチ・スケール
DOE の補助金枠:250 万ドル(2009 年 12 月)
【事業概要】Elevance社の技術は、既存の工業プロセスの組み合わせ(メタセシス反応、エステ
ル交換反応、水素化)で構成されており、再生可能な植物由来の油から、従来の石油化学プ
ロセスが持つ環境リスクを排除して特殊化学製品などを製造するものである。
本プロジェクトは、燃料油や化学品を製造するための幅広いデータ採取を目的としており、
藻類油を原料として用いた場合の経済性を検討する。Elevance社のバイオリファイナリーは、
原油価格が1バーレル45ドルで採算が取れるとしている。
【技術概要】既設のバイオリファイナリーを改造して、新技術を適用することを検討している。原
料油は、ブテンとノーベル賞受賞の Grubbs Olefin Metathesis 触媒とともにメタセシス反応工程に
投入され、次の蒸留工程でオレフィンとエステル類に分離される 。直鎖α-オレフィンはそのまま製
品となり、他のオレフィン類は水素化工程でジェット燃料やグリーン・ディーゼル製品となる。
エステル類はメタノールとTrans-esterification工程で処理され、特殊化学品、潤滑油ベース
オイル、バイオディーゼル油、グリセリンなどの製品となる。
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石油エネルギー技術センター
参考:
http://www.elevance.com/technology/biorefinery/
5.第 4 報のまとめ
バイオケミカル法と藻類を用いるプロセスは、DOEのバイオリファイナリープロジェクトの中
でも将来のための技術開発と考えられる。どちらも生産量の拡大を図るためには培養槽のスケ
ールアップ技術の確立や広大な用地の確保などの難しい課題を解決しなければいけないが、
目標製品を石油代替の高付加価値製品などにも広げて経済性の改善を図ろうとしている点に
特徴がある。既に小規模では技術の実証が出来ているものが殆どであるので、経済性を考慮
した競争力のある商業プロセスに仕上げることが出来るかが鍵になると考えられる。
燃料用エタノールの様にガソリンの市況価格が製品価格決定の大きな制約要因となる場合
は、価格競争力の確保にはスケールメリットを活かす規模の拡大が必要になり、初期投資も大
きく資金調達が大きな課題となる。
バイオケミカルプロセスや藻類プロセスでは、二次処理装置は当初から処理能力を考慮して
設置が必要であるが、培養槽や培養池に関しては順次増強・増設しながら規模を拡大すること
も可能であり、投資リスクを多少は下げることが可能と考えられる。
今後本格的に立ち上がってくるプロジェクトも多いので、10年先の将来技術として経済性と
市場競争力を確保できるかを注視していく必要がある。
6.DOEプロジェクトのまとめ
DOEが推進している統合化バイオリファイナリー・プロジェクト29事業に関して最新状況を報
告してきたが、既に破綻したプロジェクトもあり順風満帆とは言えない状況である。
実証できていない新技術の採用を前提とするプロジェクトや経済性に不安のあるプロジェク
トでは、USDAの債務保証枠の確保や民間からの資金調達に苦慮しており、今後も経済的な
面でプロジェクト中止に追い込まれるプロジェクトが出てくる可能性がある。
しかし、世界的企業や米国の石油企業などが積極的に参画して資金的にも援助を行うプロ
ジェクトも多く、この様なプロジェクトの中から将来のバイオリファイナリーの本命技術が出てく
ると期待できる。今後はDOE推進プロジェクト以外も含め、主要プロジェクトの動向把握に注
力する予定である。
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected]
までお願いします。
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