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8. 世界一の携帯電話市場 9. 中国生産の 7 割は輸出向け

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8. 世界一の携帯電話市場 9. 中国生産の 7 割は輸出向け
表7-1 中央交換機市場
表7-2 VOIP機器市場
表7-3 ブロードバンド機器市場
メーカー
占有率
メーカー
占有率
メーカー
占有率
上海ベル
29%
シスコ
44%
Huawei
46%
Huawei
27%
Clarent
27%
ZTE
23%
BISC
22%
Huawei
22%
上海ベル
14.4%
ZTE
7%
UTスターコム
4.6%
大唐
4%
シーメンス
2%
NEC
3%
表7-4 光ファイバー伝送機器市場
表7-5 ATM機器市場
メーカー
占有率
メーカー
占有率
ルーセント
33%
ノーテル
29%
Huawei
13%
ルーセント
21%
アルカテル
9%
上海ベル / アルカテル
14%
WRI
8%
Fore
10%
マルコニ−
7%
ニューブリッジ
6%
ノーテル
6%
(出所はいずれもTDAPのインテル社2001年資料)
機器市場、ブロードバンド機器市場、ATM 機
器市場、光ファイバー伝送機器市場(2001
年)の企業別シェアはそれぞれ下表 7-1 7-5
の通りである。
表 8
メーカー
ノキア
外資では、上海ベル(アルカテル)、シ
スコシステムズ、ルーセント(現在は古河電
工がコーニング・グラスに中国ルーセント・
テクノロジー所有の光ファイバー部門を売
却)、ノーテルの健闘が目立つ。中国民族メ
ーカーのHuawei(華為)、ZTE の躍進はブロー
ドバンド機器市場(2 社で約 7 割の市場占有率)など
で顕著である。
投資計画
今後3年間に10∼12億ドル
モトローラ
今後5年間に100億ドル
エリクソン
今後5年間に50億ドル
ノキア、モトローラ、エリクソン大手 3 社の今後の投
資計画は下表 8 の通り積極的であるが、モトローラの
場合は半導体投資も含まれる。
9. 中国生産の 7 割は輸出向け
8. 世界一の携帯電話市場
中国情報産業部は外資メーカーに対して、(1)
50%の輸出比率、(2)60%の現地調達比率、(3)中
国人従業員の育成、(4)研究開発の現地化、などの
行政指導を行っており、中国が世界の生産基地プラス
輸出基地になるのは遠い将来ではない。なお、携帯電
話の部品のかなりは松下、シャープ、エプソン、オン
デン、京セラなど進出日系メーカーからの供給に依存
している。2001 年実績でノキアが、モトローラをつ
いに抜いた模様だ。また、生産品の国内市場対輸出の
比率は 3 対 7 と輸出志向である。
次に、チャイナ・モバイル(中国移動)とチャイ
ナ・ユニコム(連通)の機器調達メーカー別シェアは
表 9-1、表 9-2 の通りである(2000 年)。エリクソン、
シーメンス、ノキア、モトローラ 4 社が圧倒的に強い。
米国を抜き、世界最大の市場となった中国の 2001
年末の加入者数は約 1 億 4500 万。前年比 1.7 倍で、
同年だけで 6 千万人の新規加入者を記録した。毎月
500 万人のペースで増加した。第 10 次 5 カ年計画の
最終年(2005 年)に加入者数は 2 億 6 千∼9 千万人を
目標にしている。今のペースなら実現可能と専門家は
見ている。2002 年は 5500 万人の新規加入者を予測し
ている。従って、2002 年末に固定電話と携帯電話は
約 2 億人ずつの普及人口で同水準になる(注 5)。
こうした急成長の環境下、世界トップの端末メーカ
ーのノキアの場合、国別製品売上では中国市場が
30.65 億ユーロ、対世界市場でのシェア 10.1%と米国
市場(売上 53.12 億ユーロ、シェア 17.5%)に次ぐ
大得意先となっている。ノキアの好調が米国、中国市
場傾斜型なことがわかる。ノキアの 2000 年末までの
累計対中投資額は 17 億 3000 万ドルにのぼる。なお、
5
表9-2 ユニコム
表9-1 チャイナ・モバイル
メーカー
占有率
メーカー
占有率
エリクソン
38%
シーメンス
26.6%
ノキア
27.3%
モトローラ
25.9%
モトローラ
17.4%
エリクソン
14.4%
シーメンス
4.4%
ノキア
12.9%
アルカテル
4.3%
ノーテル
11.9%
ノーテル
4%
Huawei
2.9%
出所)China Electronic News
表10 省市別携帯電話の普及2001年(単位:万人)
省区
加入者
普及率(%)
昨年の増加数
1
広州
2399
33.2
1041
2
淅江
1231
26
551
3
江蘇
1115
14.9
496
4
遼寧
863
20.3
364
5
福建
672
19.1
230
6
黒龍江
605
16.5
266
7
上海
575
33.2
213
8
北京
545
38.4
197
出所)人民郵電
そこで、中国が抱える課題を列挙してみた。
(1) 金融機関、国有企業の不良債権問題
−人民銀行総裁の発表によると、4 大商業銀
上位 8 地域の携帯電話の普及を下表 10 にまとめて
行(中国銀行、農業銀行、工商銀行、人民建
みたが、広州だけで 2000 年 1 年間に倍近い1千万台
設銀行)の全貸出の 27%が不良債権になって
の増加を記録するなど、急増ぶりが伺われる。また、
いる。おもに国有企業、それも製造業の赤字
北京や上海市の普及率は米国平均値並みであり、IT
分だ。しかし、格付機関スタンダード・アン
生産国から消費国の仲間入りをしている。それも中国
ド・プアー社は、不良債権比率は 50%近い、
の東部、沿岸部、4 億人が一大消費市場を形成してい
と指摘する。
ることがわかる。
−解決策は 7%以上の経済成長維持である。
(2) 沿岸・東部対内陸部・西部の地域間格差の拡
大阻止
−解決策は西部大開発計画の遂行
11. 中国ビジネス・リスク問題
(3) 朱首相の三大改革公約の実行度である
(4) 構造的な財政赤字の解消
巨大化する中国経済の死角は何かを考えてみよう。
−失業・年金対策、社会保障制度の財政負担な
米国が好・不況や自由貿易対保護貿易を繰り返してき
どの隠れ債務もあり、政府債務は 70%の試算
た様に、中国が WTO 加盟後にどういう経済政策・改革
もある程深刻である
を行うかは、2002 年秋の新指導者選びとリンクして
(5) WTO 加盟で直面した国際競争力のある産業構
いる。もちろん、WTO 加盟による市場開放メリットは
造の構築
世界経済にとって大きい。世界銀行試算では、自動車、 (6) 効率的な資金配分システムの確立
パソコンの関税率が引き下げられるなど日本は貿易上
(7) 三農問題(農民、農村、農業)の解消
年間 600 億ドルの最大恩恵を受ける国であると発表さ
−農村での余剰労働力は 1 億 5 千万人にのぼ
れた。
るとの試算あり
10. 携帯電話普及は東部に集中
6
(8)
人民元レートの維持 −円安批判、人民元切
り下げ論
(9) ASEAN との競合と共存
−世界からの直接投資(2000 年)先は中国へ
約 400 億ドル、ASEAN へ約 110 億ドルと両者の
格差が歴然とついている
(10) 中国の株安、株式市場の低迷
−株バブル崩壊のリスク
(11) 共産党のビジネスへの介入や官僚、政治家、
軍の腐敗防止問題
(12) 輸出品のブランドネームの弱さ
以上が中国経済が直面する諸課題である。こうした
ビジネス・リスクは中国脅威論と異なり、対中進出で
の危機管理の重要性を再確認させる。世界第 7 位の経
済力、7%の高経済成長、2000 億ドルにのぼる外貨準
備、世界の生産及び消費基地化をはじめ急成長経済が
抱える中国問題は山積みされている。北京大学教授は
「2008 年の北京オリンピックまで安定」と説明する。
対中ビジネスの成功は一筋縄ではいかない点は、80
年代だけに一足早く中国市場で事業展開した欧米産業
の盛衰が物語っていよう。
12. WTO 加盟後の中国進出に際しての課題
中国ハイテク産業、市場が世界トップに浮上したこ
とにより日本企業の対中進出は WTO 加盟を契機に急速
に拡大している。そこで、中国現地の日系企業へのヒ
アリングで確認した問題点、課題を下記のごとく整理
してみた。
第一に、中国政府は最終的に国産化、国産品愛用政
策を基本にしている。進出企業はその方向性を含めた
中長期的視点が望まれる。
第二に、人民元の切り下げの有無が中国経済、進出
企業の将来性を左右する。実質的な相場では約 1 割切
り下げが静かに進んだ。今後、政府高官の条件付き利
下げ否定発言の真意を注意する必要があろう。日系金
融機関も対中融資で不良債権、為替差損の実害が出て
おり、日本政府の予防的警戒対策(アーリー・ウォー
ニング・システム)が急務といえる。
第三に、日系企業の中国市場での成功例は NEC、富
士通、コマツをはじめ幾社も存在する一方、「中国で
は儲からない」との不満も日系企業に強いことは否定
できない。しかし、本稿で論述しているように、外資
企業の利益率は着実に向上している。欧米情報通信企
業の成功例は、大型交換機‐ネットワーク機器、GSM
端末機器‐IP ネット機器といった流れのごとく、マ
ス市場の醸成とそのシェア拡大に奏功している点が大
きい。
第四に、中国政府はともかく、地方政府(省、県、
市)の政策決定メカニズムは不透明との意見が多い。
その点、行政対共産党並びに軍との政治力学をよく研
7
究することが望ましい。役人の縁故主義、汚職が問題
視されているだけに内部動向に注意を有する。
第五に、WTO 加入は外資参入、通商ルール、知的所
有権保護、調達ルール、投資ルールなどのグローバ
ル・スタンダード化推進という意味で歓迎できる。し
かし、日米欧との調整、交渉プロセスはかなりハード
なものにならざるをえない。
第六に、米企業の対中ビジネス・アプローチの成功
には、人脈的結合の強さが見逃せない。例えば、中国
系米人や留学生登用、華僑のパイプ活用、大使館の利
用と政府(商務省、国務省、通商代表部)のバックア
ップなどが有効に働いている。
第七に、日系企業の現地駐在員の大半は、営業ない
し技術部員で、マクロ経済、政治情勢の分析が弱く、
かつそのためのスタッフも不足している。また、中国
に関する統計資料の正確さの是非も議論の余地があろ
う。業界団体、政府機関との有機的協力関係の強化が
必要である。
第八に、北欧諸国の対中アプローチは、エリクソン、
ノキアに見られるごとく、小国ゆえに官民一体となっ
て数少ない戦略企業の中国市場開拓に全力投球の施策
を意味する。官民連携のチームプレーは日本にも参考
になろう。
第九に、中国市場を輸出市場及び国内消費市場と括
えるだけでなく、高付加価値製品も含め日本、ロシア、
東欧、ASEAN、中央アジア諸国への輸出生産基地とし
ての重要性認識に理解をすべきであろう。
第十に、中国進出のボトルネックは、研究開発シフ
トは着実に行われているが、中国側のハイテク製品の
研究開発戦略の欠如である。同様に、新プロジェクト
に対するフィージビリティ・スタディの不足も障害に
なっている。技術移転、アフターサービス、人材育成
など両者の不足をカバーする経営思考が必要になろう。
中国への研究開発拠点化は注 6 に付記した。
第十一に、欧米企業の参入実績に比べ、日系ハイテ
ク産業の対中進出はやっとここ 2 年位頃で本格化した
が、出遅れている。フラッグ・キャリアの NTT の海外
進出の遅れがその底流に存在する。今後はキャリアと
ベンダーのチームワーク作りも大切な課題である。
第十二に、対中 ODA に IT 分野の比重を高めていく。
特に、IT 産業育成、情報化、農村開発、空港といっ
たプロジェクトに IT 分野の役割が大きい。
第十三に、今後は日系企業の事業展開と欧米企業、
台湾メーカーとの連携、合弁形態で図るのも一考に値
する。
中国がシリコンバレー型の地域レベルの北京・中閑
村ハイテクパーク建設(注 7)に熱心になっている。
日本の筑波、横須賀、京阪奈など学術研究地区との連
携も有効であろう。
13. まとめ
中国は「人治国家」と皮肉られるが、人脈、ネット
ワークが重要視される。その点、地方政府、地方経済
界の政策決定メカニズムを熟知することが現地事業の
前提条件となろう。WTO に加盟したとはいえ、グロー
バル・スタンダードの相当な痛みが中国側に必要なだ
けに、外国企業の直面するトラブルがすぐ解消できる
とは思えない。
中国は政治体制は共産党一党支配、経済活動は資本
主義、市場経済導入という壮大な実験を行っている。
10 年後にアジア経済の主役が日本から中国に代わる
シナリオ予測も看過できない。今回の調査分析で明示
したように、情報通信分野が生産、消費、両面で世界
のトップ水準に急成長した意義を日中産業の国際競争
力視点で確認すべきであろう。中国の情報通信産業は、
第一段階‐外資の生産基地→第二段階‐巨大化する消
費市場→第三段階‐研究開発拠点、に移行する過程を
経て、名実共に世界のトップクラスの情報通信産業立
国に成長する諸要素を形成している、との結論に達し
た。
従って、本稿冒頭の 5 つの命題は、現在中国の予想
以上の経済発展と WTO 加盟による法的改善の効果など
の進捗で、日本側の認識と異なっている点が多く判明
した、と回答したい。
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
中国通信市場研究調査委員会は著者を委員長
に中国に進出している大手通信企業 7 社の代
表から構成された。
「チャイナ・テレコム 2002」ホノルル会議は
2002 年 1 月末にホノルルで開催され、中国の
情報通信分野の専門家約 100 人が 3 日間にわ
たって市場動向などを討議した。
ITU バ ン コ ク 会 議 は ITU の Center of
Excellence 運営委員会が 2002 年 3 月に 2 日
間開催し、ITU アジア地域が抱える諸問題を
議論した。著者は副委員長を務めている。
2.5G の GPRS、cdma2000lX は欧州では前者、
米国が後者の方式を主に採用し、各キャリア
が次世代携帯電話として普及に務めている。
共に 2G の改良型でコストが安い。
中国の電話普及はめざましく、固定電話では
米国を抜いて世界一、携帯電話も近いうちに
世界一になる予測が出ている。第 10 次5ヵ
年計画の推進で情報通信分野は飛躍的な発展
が期待される。
モトローラ、マイクロソフト、ノキア、エリ
クソン、GE、シーメンス、IBM など世界の一
流企業約 100 社が研究開発拠点を中国に構え
8
注7)
ている。エリクソンは中国総合研究院を北京
に建設し、国際開発拠点を上海に建設すると
発表した。モトローラは現在、北京、上海な
ど 5 都市に研究開発センターを有し、世界市
場向けの製品開発に従事している。マイクロ
ソフトは上海に拠点を置いている。日本勢で
は、松下、富士通、三菱電機、東芝などが IT
開発センターを設置している。
中閑村は清華大学、北京大学をはじめ 39 大
学が集積し、インキュベーション施設では税
制上の優遇措置がある。一般企業の所得税
33%が、15%に減免される。中閑村は世界の
IT 企業の主要研究開発センターの位置付けに
なっている。国務院は 99 年に中閑村科技園
区に名称を改めた。
主な参考・引用文献
(注:中は中国語、日は日本語、英は英語資料)
中国対貿易経済合作部外資導入統計(中)
中国対外経済貿易年鑑(中)
国際貿易(中)
中国電信年報(中)
中国計算機報(中)
人民郵電(中)
新華社電(中)
人民日報(中)
日系企業アンケート調査(2000 年 3 月)日中投資促
進機構(日)
Financial Times(英)
Telecom Today(英)
E-Asian Issue(英)
Monthly IT Briefing(英)
China IT Report(英)
US-China Business Council Report(英)
World Telecommunication(英)
Telecommunication Development Asia-Pacific(英)
China Electronics News(英)
China Economic Information(英)
USITO Newsletter(英)
Asia Week(英)
通商弘報(日)
大蔵省通関統計(日)
日中経協力ジャーナル(日)
中国経済(日)
チャイニーズ・ドラゴン(日)
ニュースネット・アジア(日)
アジア・エコノミックス・レビュー(日)
経済日報(中)
中国電子工業年鑑(中)
中国郷鎮企業年鑑(中)
中国商業報(中)
国際商報(中)
中国統計摘要(中)
www.aats.com./chinatc/orgstr.htm(英)
www.bdaco.com/features/map/index.html(英)
www.chinamotion.com/corpifo/press990125ericsson.htm(英)
www.246.ne.jp/ ron-e/09-company.html(英)
www.nokia.com.cn/(英)
www.chip.org(英)
www.motorola.com.cn(英)
www.ericsson.com.cn(英)
www.lucent.com/what/intenational/asia/china.html
(英)
www.mii.gov.cn/news/yazfz.html(中英)
www.cnd.org/CND-China.98-11-01.html(英)
www.mii.gov.cn/news/news990305.htm#8(中英)
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