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紀行文(後半)

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紀行文(後半)
りの・・・」と上の句を言われ、ムムム・・・。バッタの季語は秋、今は冬、バッタ
はこの後いつまで生きられる、思いを巡らせ暫し推敲。食事のあと茶木さん、
松本君と共に 50 段ほどの階段を登り奥の院に参拝、鐘を撞く。紅葉した楓が静
かに風に揺れている。阿弥陀堂の前から東京方面を眺めるも、ここでも東京ス
カイツリーは確認できない。全員で出発前に本堂脇で記念撮影。
子の権現 バッタゆっくり 陽を浴びて (岡田さん
秋空に 映える子の山 散る銀杏 (宇賀君 作)
小春日に 子の権現で うたた寝し (石川君 作)
冬日受け バッタ静かに 命つぐ (国見 作)
作)
子の権現を後に別ルートで吾野駅に向かう。舗装道路を下るとすぐ右脇に浅
見茶屋の幟があり、道路標識は吾野駅の矢印。杉の巨木に囲まれた九十九折れ
のゆったりした下りの坂道。秩父御嶽神社から子の権現までのきついアップダ
ウンを考えると天国と地獄のような違い。幾組かの若いグループが私達を抜き、
先を急ぐ。若い女性 3 人組のグループ、聞くともなく話しを聞くと浅見茶屋の
うどんに引かれ先を急いでいると言う。自然の景観を愛でるよりも食欲が優先、
若さが羨ましい。
杉林を下りきると山道脇に「大麟山天龍寺子の権現」の大きな標石があり、
渓流にコンクリート製の小さい太鼓橋が架かっている。橋名を見ると「降魔橋」
昭和 10 年製とある。降魔橋とは奇妙な名前、伝承によるとその昔この山に住む
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悪鬼が、山頂に寺を建立しようとこの地に辿りついた子の聖を阻むため、山に
火を放ったが、子の聖が腰から下に火傷を負いつつも退治した場所という。こ
の橋から下が俗界、上が神域との見方もあるらしい。杉林の深い森は深閑とし
て音を吸収する。橋の下を流れる沢の水音が一層静けさを引き立てている。
宇賀君が「緩やかな下り、木漏れ日が侘しさを誘う」と文学的なことを言う。
杉の森 暗く侘しい 冬の午後 (宇賀君 作)
橋から下は舗装道路になっている。暫らく下っていくと安政 2 年建造・囲炉裏
のある古民家を使った浅見茶屋(昭和 7 年創業)がある。ここの手作りうどん、
腰のある麺は喉越しが良く美味しさは天下一品と言うが、帰りの電車が気にな
りそのまま通過。道路左側の庭で数本の背の高い皇帝ダリアが薄紫の大きな花
を付けている。宇賀君が花の形と大きさが勲章に似ていると言う。「ここから
吾野駅まで 3.5km」との標識。古い石垣の間でユキノシタの小さな葉がひっそり
と来春に備えている。
浅見茶屋 皇帝ダリアも 出迎えて (国見 作)
不動堂、青場戸付近には道路脇に馬頭観音や庚申塔があり、往時の賑わいを
偲ばす。築 350 年の古民家という豊山荘の由緒ある建物も今は無人のように見
える。家の裏に植えられた柚子の実が黄色く色づいている。カンナが花を落と
し冬枯れの姿を際立たせている。塀が崩れ、壁が朽ちた古い民家の前を過ぎ芳
延参道を経て更に下る。人家横の土手には猪か鹿が通った獣道が幾つもあり、
蹄の跡まで残っている。暫らく進むと、突然今朝通った東郷公園の横に出た。
公園横の小川では青サギが人目も気にせず、じっと魚を待って佇んでいる。
せせらぎに 青サギも待つ 祭りかな (宇賀君 作)
吾野駅近く往路と同じ吾野川の河岸まで来た時、突然岡村君が大腿部の攣っ
た痛みを訴える。岡田さんが伝家の印籠から秘伝の妙薬を取り出し、一口飲ま
せると痛みはたちまち霧散、元気に駅まで歩くことが出来た。
陽が山間に落ち少し肌寒さを覚える頃、路上を綿虫が静かに漂い、農家の庭に
は寒菊が咲き残っている。時間の関係で武蔵野観音霊場三十一番札所・曹洞宗
補陀山法光寺の十一面観音像を参拝する余裕はなかった。
夕映えに 綿虫の飛ぶ 吾野郷 (国見 作)
寒菊の 庭に残れる 岨間の家 (国見 作)
吾野駅に到着したのは 16 時に 5 分前。宮君が待つ「清龍」へ急ごうとの声に
促され、着替えもしないまま 16 時 4 分の電車に乗って池袋に向かう。今日の歩
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数(吾野駅往復)は約 2 万 4 千歩(約 12km)、起伏に富む中級者向きのコースで
した。岡田さんの事前偵察と緻密なコース管理により、途中で足を痛めた森君
や足を攣った岡村君を含め、無事に大きな事故もなくトレックを完了できたこ
とに感謝です。
君がため 急ぐ清龍 冬の宵
わが肌絹は 汗に濡れつつ (宇賀君 作)
池袋の清龍本店、宮君が久しぶりに元気な姿を見せて、打上げは弥が上にも
盛り上がります。乾杯後、打上げの前半は宮君の怪我当時の状況と埼玉県ドク
ターヘリでの救出や手術の模様、リハビリなどを詳細に説明。リハビリの結果、
現在の足の調子は、登りはほぼ大丈夫、今後下りの訓練が必要と言う。来年は
元気な姿でトレックに参加できそうで、安心です。
打上げ後半は、初参加の森君。令嬢達とパリでの凱旋門賞ダービーを見物に行
った所見。昨今の経済情勢と国際金融について、湧くがごとき知識を駆使した
解説。銀行に勤める松本君もオタオタの様子。1 時間半の制限時間が来なければ、
議論はいつまでも続きそうでした。
編集後記:晩秋から初冬へのギザギザ・ハート
俳句(東洋の暦)では立冬(今年は 11 月 7 日)~立春(H27 年 2 月 4 日)前までを冬
(お正月は新年、冬と区別)とし、12・1・2 月を冬とする現在の概念よりかなり早
い。このため紀行文の編集に当たり今回トレック(11 月下旬)の季語を「冬」と
した。これに対し宇賀君から当日のチャットを取り込み、小倉百人一首猿丸太
夫の和歌を引き合いに「先導役の山ガールの淑女、小生『咎なし』とは言わぬ
も厳しき指摘の数々、《子の山に紅葉踏み分け行く君の声(叱声)聞く時ぞ秋は
悲しき》」とのざれ歌を寄せ、紅葉狩りの今の季語は秋ではないかとモガリま
す。確かに紅葉は秋の季語。他方、今回トレックの日を譬えるにふさわしい「小
春日和」は、晩秋から初冬にかけて移動性高気圧に覆われた、穏やかで暖かい春
に似た陽気の日。俳句では「小春日和」・「小春」は冬の季語。しかも、温暖化で晩
秋を示すモミジの紅葉が遅くなった自然の変化と俳諧の落差。理工学や数学の
ようにスパッと切り分けることが出来ないギザギザのところが、文学的と言え
そうです。そう言えば、東郷公園のモミジは山の斜面を利用して段々に植えら
れていましたね。ここでジョークを込めて一句。
照る紅葉 小春日和に だんだんに (国見 作)
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参加者の感想
#1 岡村圭祐君
11/22(土)トレッキング参加の皆様。昨日は、ありがとうございました。
岡田さんには、直前に下見までしていただき、ありがとうございました。また、
帰路の吾野駅到着直前、脚の突然の痛みで歩行不可の時に、「妙薬」をいただ
き、効果抜群、すぐ痛みは消え、誠にありがとうございました。
東郷神社の紅葉はちょうど「紅葉まつり」の初日で、絶好のタイミングで、素
晴らしかったです。子の権現までの往路は、数回の上り・下りの繰り返しでし
たが、適宜な休憩時に山の清涼な空気に活力をもらい、無事、子の権現にたど
り着いたときには、安堵しました。
帰路は、危なげの無い下りで、全員無事、順調に下山でき、何よりでした。
今回は、新たに、森さんが参加してくださり、大いに盛り上がりました。
池袋の「清龍」では、宮さんも参加され、談笑に花が咲き、賑やかでした。
宇賀さん、1年間の世話役、ご苦労様でした。大変お世話になり、ありがとう
ございました。岡崎さん、岡田さん、にも、宇賀さんとご一緒に、1年間お世
話になり、ありがとうございました。
#1~3 宮 侑司君
1 年ぶりに皆さんと再会し いつもの賑やかで楽しい打ち上げに参加して骨折し
た時の痛みとしんどいリハビリ作業を忘れた 2 時間でした!
また昨日メンバーの中に 足を故障された森さんと骨折経験者の茶木さんがお
られたことは事故以降弱者経験を重ねてきた小生にとって理解者がいるといな
いとでこんなに違うものか!と感無量でした。明大英語部の同級生には一人も骨
折経験者がいなくて何を話しても実感が伝わらず苦労しました。
宇賀さんの打ち上げ欠席は残念でしたが、この 10 ヶ月間は宇賀さん、岡田さん、
岡崎さんの三人の幹事さんに大変お世話になり、ありがとうございました。小
生が関わっているトレッククラブ4チームのうち学芸と明大クラブは代わりの
幹事さんのご協力で継続しておりますが、クラスと業界のトレックチームは小
生の復帰まで即休みと様々な態様です。
そんな中で学芸の幹事三人衆は三人とも提案型の前向きなタイプなので恐らく
小生の知らない世界でも同様に活躍されておられることと拝察致します。
来年小生が幹事復活しましても種々HELP をお願いすることがありそうで、その
節はなにとぞよろしくお願い申し上げます。
現在 10 月以降のリハビリ第 3 期に入っておりますが、来年 1 月のレントゲン検
査を含む最終診察で 300M以上のトレックOKの診断が出る見込みです(出なけ
れば引退止むを得ず)。
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リハビリ中に考えたことですが、3 月から 11 月までの間の 5 月頃に「大霧山;
766M;小川町」はどうか、9 月の初めに「大菩薩峠の逆回り」(風景が全く違
う・・・)はどうか等々思案してきましたので年内中に幹事各位とご相談の上、
2015 年のスケジュールを発表できれば、と考えております。
*松本さんから「日曜日ならトレック参加したい」声もあるやに伺いましたの
で、試験的に偶数月の 4 月の日曜日に国見宗匠お薦めの天覧ルートか日和田ル
ートで実施して様子を見るのもいいかなと思います。
#3 岡田美奈子さん
森先輩が膝痛をこらえて歩いてくださったので何とか無事にトレッキングを終
了することができました。よろしくお伝えくださるようお願い申し上げます。
#3 代表世話人代行 宇賀康健君
岡田さん;おはようございます。昨日は先導の大役ありがとうございました。
秩父御嶽神社から子の権現へのルートは下りては登り、登りては下りの連続で
したが、帰路のうって変わって平坦な下りの山道に救われての踏破ができまし
た。これもひとえに心やさしき「山ガール」が事前調査をなさった上でのルー
ト選定のたまものと大いに感謝しています。
「清龍」では「感謝」「感謝」の大合唱であったことと推察いたします。不参
加、ごめんなさいね。鬼が笑うかもしれませんが、来年も楽しくお付合いくだ
さいね。「キツイ」言葉もたまにはかまんきねえ。
ちょっと早いが、「佳いお年をお迎えください」(今回は禁句だったらゴメン)
#3 岡崎恭久君
11月22日(土)の学芸高校里山トレッキングの会の本年、最後の企画は少
し、強行軍でしたが我が同期の山ガール岡田さんの案内で無事,終了できました。
今回、東郷公園の紅葉祭り見物&埼玉秩父御嶽神社参拝を提唱したのは自分で
あり宇賀君よりも案内役の一端を担うよう要請が有りましたが、後半の子の権
現コースには不案内のまま、結局全面的に岡田さんに頼ってしまいました。
改めて彼女に厚くお礼を言います。
東郷公園内の紅葉の見事さは皆さん、百聞は一見にしかずで、実感いただけ
たかと思いますが子の権現往復のルートが加わっていたために、園内での散策
時間が充分取れずに、斜面の迂回路にあるロシア製大砲や、乃木大将の像や東
郷元帥周りだけではない赤や黄色の紅葉や楓の群生をたっぷり鑑賞してもらう
までは行きませんでした。
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神社(奥社)からの吉田山のコースは結構、タフなコースでしたね。アップダ
ウンが次から次へと有り、山道の土と砂が細かく、若干滑りやすいので、踏み
こたえながら歩を進めねばならず、今回、初めて持参のステッキが充分、役に
たってくれました。(酷使したせいか、帰りに畳めなくなりましたが・・・)
初参加の森先輩には,だいぶきつかったかと思います。足の痛みと疲れが早く
取れることを祈念します。小生の感想では、このハードさは学芸トレックの奥
多摩のコースで一、二番を争うなあと思いました。岡田さん、このコースを下
見も含め1週間に2回もよくぞ歩きましたね。流石山ガールの健脚と感心です。
杉木立の尾根道なので、当日の絶好の好天の秋空はあまり拝めませんでした
が、森林のオゾンの空気と清浄さはたっぷり感じられるコースでした。 師走
間近の冬らしくない気温の高さに、汗ばみながらの行進でしたね。 吉田山か
ら小床峠に至るまでの時間が長く、久しぶりにまだかな? まだかな?と心待
ちでした。その時、2 度ほど聞こえてきた子の権現からの?鐘の音は微かですが
耳に心地よく、疲れも少し和らぎました。
子の権現は去年とは逆コースから到達した形でしたが、上りがきつかっただ
けに、本殿脇の石段に全員が並んで座っての昼食は腹も減っていて格別でした。
たっぷり休憩してからの下りは、吉田山コースと違って下り中心の楽な道で、
比較の問題でしょうが楽勝でしたね。森先輩は上りで足を痛めてしまっていた
ので、全然楽ではなかったでしょうが痛みをこらえての全コース完走、お疲れ
様でした。それにつけても、最高年令の国見先輩の元気なこと!跳ぶように下
って、随分先行されました。後続の誰かが、先輩は昼飯が足らずに、浅見茶屋
に一刻も早く行って、美味いといううどんを味わおうとしちゅうがやないかえ
と口さがない噂をして疲れをとっていました。口が滑って ゴメンなさい。
兎に角、足を痛めた方はいましたが全員無事に下山し、いつもの通り、清龍
に直行、一年ぶりの宮 兄との再会を果たした上で、楽しい打ち上げが出来ま
した。奥方からの連絡で、急に宇賀君が帰宅せざるを得なかったのは残念でし
たが、今年、一年本当に世話役代行お世話様。岡田さんの宮兄に代わっての現
地案内垂範ぶりも流石。 改めてお礼を言いたいと思います。小生は、石川君
と帯同しての鋸山の案内だけでしたが、なんとか今年一年、宮さん不在の一年
を乗り切りましたね。勿論、全回参加の、宗匠國見先輩の毎回の名紀行文(要
所に散りばめる俳句)が有って、この会を一段と高めてくれています。
宮さんが復活を果たした来年は、楽しい、得難い交流の場でもあるこの会を
(今年の経験を生かして全部、彼に頼るのではなく宇賀君、岡田さんのサポー
トも得ながら)盛会に持っていきたいものです。
皆さん 来年もよろしくお願い致します。
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#6 茶木佳子さん
PCを開くと皆様からのメールがいっぱい、文才の無い私はいつも感心しなが
ら読んでいます。
宮さんの提唱で23年11月26日に始まった奥武蔵里山トレッキングからは
や3年が経ちました。毎回自然の豊かさ・美しさを体験できてありがたく思っ
ております。それにもまして皆様の優しさや親切な心遣いにふれることが何よ
りの喜びで、深く感謝しております。
とりわけ岡田さん・宇賀さん・岡崎さんお世話様でした。
今年初めて5回参加することができました。打上げにも今年からです。
宮さんも順調に回復され、小笠原さんもお元気になられたとのことで本当に良
かったです。来年も恙無く参加できることが願いです。よろしくお願いします。
#20 松本直人君
皆様、昨日はお世話になりありがとうございました。いつながら、季節にぴっ
たりのコース選定と周到な下準備に感動、そして感謝もうしあげます。
当日私が撮影した写真を一部お送りいたしますのでご笑納ください。容量の関
係で数枚となりますこと、ご容赦ください。
なお、フェイスブックの「にひはり会」、「関東支部」へは今回ご報告と、新
たなる加入者を期待するメッセージを投稿させていただきました。
来年もよろしくお願いいたします。
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