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ネットワーク・アナライザ 測定を成功させる 8つのヒント

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ネットワーク・アナライザ 測定を成功させる 8つのヒント
Hints
ネットワーク・アナライザ
測定を成功させる
8つのヒント
Application Note 1291-1J
ご注意
2002 年 6 月 13 日より、製品のオプション構
成が変更されています。
カタログの記載と異なりますので、ご発注の
前にご確認をお願いします。
エンジニアのためのインピーダンス測定
本書は、ネットワーク・アナライザと
その機能について概要を説明し、また
ネットワーク・アナライザの使用方法
を理解し、その使用方法の改善につい
て様々なヒントを説明します。
内容
ヒント 1. ハイパワー・アンプの測定
ヒント 2. ケーブル測定でのタイム・
ディレイ補正
ヒント 3. 反射測定の改善
ヒント 4. ミキサ/コンバータ/チューナ
測定での周波数オフセットの
使用
ヒント 5. 挿入できないデバイスの測定
ヒント 6. 位 相 / ディレイ・フォーマット
でのエリアジング
ヒント 7. VNA校正のクイック・チェック
ヒント 8. リアルタイムで正確な自動測定
ネットワーク・アナライザの概要
ネットワーク・アナライザは、増幅器、
ミキサ、デュプレクサ、フィルタ、結
合器、減衰器などの能動・受動回路網
の、インピーダンスやSパラメータ特
性を評価します。これらのコンポーネ
ントはポケットベルなどの一般的で低
価格なシステムから、通信システムや
レーダなど複雑で高価なシステムま
で、様々なシステムで使用されていま
す。またこれらのコンポーネントは、
1ポート(入力または出力)または、複数
のポートを持ちます。各ポートの入力
特性、あるいはポート間の伝送特性を
測定することにより、設計者は、より
全体的なシステムでのコンポーネント
を適正に使用できます。
ネットワーク・アナライザの種類
ベクトル・ネットワーク・アナライザ
(VNA)
VNAは最もパワフルなネットワーク・
アナライザで、5Hzの低周波から最高
110GHzまで測定できます。VNAは、
ネットワークの振幅および位相の特性
を測定し表示するため、設計段階から
製造の最終テストまで幅広く使用され
ています。このような特性にはSパラ
メータ、伝達関数、振幅と位相、定在
波比(SWR)、挿入損失/利得、減衰、群
遅延、反射減衰量、反射係数などがあ
ります。
入 射
伝 送
DUT
信号源
反 射
信号分離
入射
(R)
反射
(A)
伝送
(B)
レシーバ/検出器
スカラ・ネットワーク・アナライザ
(SNA)
SNAはSパラメータの振幅のみを測定
し、これにより伝送利得/損失や反射減
衰量、SWRなどの測定が得られます。
VNAを使って設計し、生産ラインでの
良否判定をSNAで行うことがよくなさ
れます。SNAは低コストで大きな効果
が得られます。SNAでも内部または外
部の掃引信号源、および信号分離テス
ト・セットが必要ですが、複雑(で高
価)な同調検出器でなく、シンプルな
振幅のみの検出器(安価)を使用しま
す。
ネットワーク/スペクトラム・
アナライザ
ネットワーク/スペクトラム・アナライ
ザは、ネットワーク・アナライザおよ
びスペクトラム・アナライザに共通す
る回路の節約ができます。周波数カバ
レージは、10Hz∼1.8GHzです。このコ
ンビネーション測定器は、増幅器やミ
キサなどの能動コンポーネント測定に
適し、設計やテストに、効率よく使用
できます。
VNAのハードウェアは、掃引信号源
(通常は内蔵)、順方向/逆方向テスト信
号を分離するテスト・セット、および
マルチ・チャネルで高感度の同調受信
器から構成されます。RFおよびマイク
ロ波帯での典型的なパラメータはSパ
ラメータと呼ばれ、これらはCADでも
一般的に使用されます。
プロセッサ/表示
ネットワーク・アナライザ・ブロック図
2
HINT
ハイパワー・アンプ測定時の、
信号レベルの増幅/減衰方法
ハイパワー・アンプの測定では、テス
トに必要な信号レベルがネットワー
ク・アナライザのパワー・レンジを超
えるために、注意が必要です。ハイパ
ワー・アンプを実際の動作と同様の条
件下で特性評価するには、高い入力レ
ベルを必要とする場合が多くありま
す。またこのような条件下では、アン
プからの出力パワーが、アナライザの
レシーバの圧縮/焼損レベルを超える可
能性もあります。
ネットワーク・アナライザが供給でき
る以上の信号レベルが必要な場合は、
プリアンプを使用して、被測定アンプ
(AUT)の前段で信号を増幅することが
できます。また、ここではプリアンプ
の出力で結合器を用いて、ブーストさ
れた入力信号を分岐し、アナライザの
基準チャネルとして使用できます。こ
のようなセットアップを使用すれば、
プリアンプの周波数応答/ドリフトによ
る誤差を取り除くことができます。こ
れにより、AUTのみの正確な測定が可
能となります。
また、AUTの出力レベルが、アナライ
ザのレシーバの入力圧縮レベルを超え
る場合には、何らかの減衰が必要とな
ります。これを行なうには結合器、ま
たは減衰器、あるいはその両方の組合
せを使用します。損傷させずにAUTか
らハイパワーを吸収できるようなコン
ポーネントを、注意して選択しなけれ
ばなりません。小信号用のほとんどの
負荷は、約1ワットくらいのパワーし
か処理できません。それ以上のパワー
の場合は、大パワー用の特殊な負荷を
使用する必要があります。
減衰器や結合器の周波数特性の結果
は、適切な誤差補正を用いて誤差を除
去あるいは最小にすることができま
す。また減衰量の大きな校正を行なう
場合に、レシーバへの入力レベルが低
いことが問題となり得ます。正確な測
定のためには、パワー・レベルはレシ
ーバのノイズ・フロアよりも十分高い
ことが必要です。このためハイパワ
ー・アプリケーションでは、狭帯域の
同調レシーバを持ったネットワーク・
アナライザが多く使用されます。この
ようなネットワーク・アナライザは一
般に、-90dBm以下のノイズ・フロアを
持ち、また広範囲のパワー・レベルで
優れたレシーバの直線性をもっていま
す。
ネットワーク・アナライザには、フル
2ポートのSパラメータ測定機能を持つ
ものがあります。これによりAUTの逆
特性を測定して、2ポートの誤差補正
を行なうことが可能です。また、もし
アナライザの出力ポートに減衰器など
による減衰がある場合は、より高いパ
ワーのレベルを逆方向から加えて、S22
およびS12測定におけるノイズの影響を
抑えます。多くのVNAはテスト・ポー
ト・パワーのアンカップリング機能を持
ち順方向/逆方向での様々なレベルによ
る測定を可能にしています。
1
8753ES
ACTIVE CHANNEL
ENTRY
RESPONSE
INSTRUMENT STATE
STIMULUS
R
L
T
R CHANNEL
基準入力
S
HP-IB STATUS
H
PROBE POWER
FUSED
8753D
30 KHz-3GHz
NETWORK ANALYZER
PORT 1
PORT 2
結合器
AUT
プリアンプ
ハイパワー
負荷
3
HINT
ケーブル測定を向上させるタイム・
ディレイ補正
2
1:Transmission
&M
Log Mag
0.5 dB/
Ref
ネットワーク・アナライザは信号源の
周波数と同調レシーバを同時に掃引し
て、スティミュラス-レスポンス測定
を行ないます。これに対して瞬間的に、
DUTからの信号の周波数とネットワー
ク・アナライザの周波数が完全に一致
しないために、測定に誤差が生じる場
合があります。例えばDUTがタイム・
ディレイTを持つ長いケーブルで、ネ
ットワーク・アナライザの掃引速度が
df/dtのとき、ケーブル端(ベクトル・ネ
ットワーク・アナライザのレシーバ入
力)における信号周波数は、アナライ
ザのソース周波数からF=T×df/dtだけ
ズレることになります。この周波数シ
フトがネットワーク・アナライ
ザのIF検出帯域幅(一般に数kHz)
と比較して無視できない大きさ
のとき、測定結果ではIFフィル
タのロールオフ分の誤差が発生
します。
0.00 dB
2:Off
HP 8714C
dB
1SEC VS 0.129SEC
2
1.5
1
.5
1:
-.5
-1
-1.5
M1
-2
1
Start 10.000 MHz
Stop 3 000.000 MHz
図1
CH1
*
PRm
S21 &M
Log MAG
HP 8753C
0.5 dB/
Ref
0.00 dB
100mSEC WITH & WITHOUT EXTENSION
Cor
図1はAgilent Technologies 8714ESネッ
トワーク・アナライザを使用して、12
フィート長のケーブルの伝送特性を測
定した場合の、上記のような影響を示
しています。上側のトレースは、掃引
時間1秒で測定し、ほとんどこのケー
ブルの真の応答を示しています。下側
のトレースはデフォルトの掃引時間
129ミリ秒を使用したもので、ケーブ
ルによる周波数シフトに起因する、
約-0.5dBの誤差が示されています。従
ってこの掃引時間は、このDUTに対し
て速すぎることになります。
図2の下側のトレースは8753ESを使用
して、100ミリ秒の掃引速度により同じ
ケーブルを測定したもので、より複雑
な影響が示されています。ここではト
レースに誤差があるだけでなく、ある
複数の周波数で誤差の大きさが急にジ
ャンプしています。これらの周波数は
8753ESのバンド・エッジ周波数で、こ
のアナライザの掃引速度(df/dt)が帯域に
よって変化したためにトレースがジャ
ンプしています。ここではケーブルに
おいて異なった周波数シフトが発生し、
したがって異なった誤差幅が示されて
います。このような場合には掃引時間
を増す代わりに、8753ESフロント・パ
ネルのRチャネル・ジャンパを外して、
DUTと同じ長さの別ケーブルを接続す
れば解決できます。これで基準および
テスト経路のディレイがバランスされ
て、周波数シフト誤差を生じません。
図2の上側のトレースは、同じ100ミリ
秒の掃引時間を使用し、Rチャネルで
マッチング・ケーブルを接続した場合
の測定結果を示しています。
Hld
Start .300 000 MHz
Stop 3 000.000 MHz
図2
4
HINT
適切な終端は反射測定改善の鍵
2ポート・デバイスに対して、伝送/反
射(T/R)ベースのアナライザ(8712/14E
ファミリRFアナライザなど)を使用し
正確な反射測定を行なう場合は、測定
しないポートの適切な終端が必要とな
ります。これは特にフィルタ通過帯域
やケーブルなど、低損失の双方向デバ
イスでは重要です。通常、T/Rベース
のアナライザは、反射測定のための1
ポート校正が用意されています。これ
は方向性、信号源マッチング、周波数
特性による誤差を校正しますが、負荷
マッチに起因する誤差は校正されませ
ん。
1ポート校正は負荷マッチが校正され
ないため、被測定デバイスのポート
2(測定を行なわないポート)の適正な終
端を前提としています。これを行なう
方法の1つに、ポート2に高品質の負
荷(例えば校正キットに付属のものな
ど)を接続する方法があります。この方
法により、高価なSパラメータ・ベー
スのアナライザによるフル2ポート校
正に匹敵した、測定確度を得ることが
できます。
しかし、デバイスのポート2をネット
ワーク・アナライザのテスト・ポート
に直接接続した場合には、前提となる
適正負荷で終端するという条件は満た
されません。この場合には、ポート2
とテスト・ポートの間に減衰器(例え
ば6∼10dB)を挿入することによって、
かなりの測定確度の向上が期待できま
す。これにより減衰器の値の2倍、ア
ナライザの実効負荷マッチングが向上
します。
図1では、これの実例を示しています。
挿入損失1dB、反射減衰量16dBのフィ
ルタの測定を行なうとします(図1A)。
負荷マッチング18dB、方向性40dBの
アナライザを使用すると、ワースト・
ケースの測定不確実さは-4.6dB、
+10.4dBの反射減衰量誤差となります。
これはかなりの変動であり、仕様に達
しないフィルタが合格し、良品のフィ
ルタが不合格となる可能性がかなりあ
ります。これに対し図1Bでは、高品質
(例えVSWR=1.05、32dBリターン・ロ
ス)の10dB減衰器を加えることにより、
アナライザの負荷のマッチングが
29dB[(2×10+18)dBと32dBとの合算]ま
で向上しています。これで、ワース
ト・ケースの測定不確実さは+2.5dB、
-1.9dBのより妥当な値まで改善しまし
た。
3
方向性:
40dB(0.010)
アナライザ・ポート2マッチ:
18dB(0.125)
DUT
反射減衰量16dB(0.158)
挿入損失1dB(0.891)
0.158
減衰器を必要とせずに、1ポート校正
を非常に効果的に適用できるのは、高
い逆方向アイソレーションを持った増
幅器のようなデバイスの入力整合を測
定する場合です。この場合には増幅器
のアイソレーションが、不完全な負荷
のマッチングの影響を除去します。
0.891*0.126*0.891 = 0.100
測定の不確実さ:
–20 * log (.158 + 0.100 + 0.010)
= 11.4 dB (–4.6dB)
–20 * log (0.158 – 0.100 – 0.010)
= 26.4 dB (+10.4 dB)
図1A
負荷マッチ:
18dB(0.128)
方向性:
40dB(0.010)
10dB減衰器(0.316)
SWR = 1.05 (0.024)
DUT
0.158
反射減衰量16dB(0.158)
挿入損失1dB(0.891)
(0.891)(0.316)(0.126)(0.316)(0.891) = 0.010
(0.891)(0.024)(0.891) = 0.019
ワーストケース誤差 = 0.01 + 0.01 + 0.019 = 0.039
測定の不確実さ:
-20 * log (0.158 + 0.039)
= 14.1 dB (-1.9 dB)
-20 * log (0.158 - 0.039)
= 18.5 dB (+2.5 dB)
図1B
5
HINT
ミキサ/コンバータ/チューナの正確な
測定のための、周波数オフセット・
モードの使用
4
ミキサ、チューナ、コンバータなどの
周波数変換デバイスの測定では、入力
と出力の周波数が異なるために、他に
はない問題が発生します。これらのデ
バイスを測定する従来の方法に、広帯
域ダイオード検波によるものがありま
す。この方法はスカラのみが測定可能
で、中程度のダイナミック・レンジお
よび測定確度が得られます。
より高確度な測定を行なうには、
8753ESや8720ESなどのベクトル・ネ
ットワーク・アナライザを使用しま
す。これらの持つ周波数オフセット・
モードでは、内部RF信号源の周波数を、
アナライザのレシーバから任意でオフ
セットすることができます。このモー
ドによって狭帯域検波が可能になり、
高いダイナミック・レンジと測定確
度、および位相と群遅延の測定機能が
得られます。
FREQ
ON off
LO
MENU
基準入力
1
DOWN
CONVERTER
2
|
UP
CONVERTER
RF > LO
|
RF < LO
スタート: 900 MHz
ストップ: 650 MHz
VIEW
MEASURE
スタート: 100 MHz
ストップ: 350 MHz
RETURN
固定LO: 1 GHz
LOパワー: 13 dBm
図1A
ACTIVE CHANNEL
INSTRUMENT STATE
STIMULUS
R
L
T
R CHANNEL
基準入力
S
HP-IB STATUS
H
8753D
基準出力
PROBE POWER
FUSED
30 KHz-3GHz
NETWORK ANALYZER
PORT 1
PORT 2
基準ミキサ
RF
10 dB
広ダイナミック・レンジの振幅測定の
場合には、基準ミキサが必要になりま
す(図1B)。このミキサは位相同期のた
めに信号をRチャネルに提供しますが、
測定経路内にはないため、DUTの測定
には影響しません。
位相および遅延の測定に対しても、基
準ミキサの使用が必要です。基準ミキ
サとDUTは位相の一貫性のため、共通
のLOを使用する必要があります。
ENTRY
RESPONSE
8753ES
この周波数オフセット・モードを使用
できる基本的な構成には、次の2つが
あります。最もシンプルなのは、ミキ
サやチューナの出力を直接アナライザ
の基準入力に取り込む方法です(図
1A)。この方法では、最大ダイナミッ
ク・レンジ35dBのスカラ測定のみが可
能です(これ以上のダイナミック・レ
ンジでは、レシーバ入力レベルが低す
ぎて、アナライザの信号源は適正に位
相同期できません)。ミキサの場合に
は、外部LOが必要になります。フロ
ント・パネルから測定IF周波数範囲、
LO周波数を設定します。すると、ア
ナライザは、適切なRF周波数範囲を計
算してRFテスト信号を発生します。上
側LOの場合のように、必要に応じて
逆方向にRF信号を掃引させることもで
きます。
IF
LO
10 dB ローパス・
CH1 CONV MEAS
log MAG 10 dB/
REF 10 dB
フィルタ
10 dB
LO
DUT
3 dB
ミキサをテストする場合には、どちら
の方法でもIFフィルタが必要になりま
す。これによりミキサの不要な混合積
や、RFおよびLOの漏洩信号を除去し
ます。
信号発生器
START 640.000 000 MHz
STOP 660.000 000 MHz
図1B
6
HINT
挿入できないデバイスの測定確度向上
フル2ポート誤差補正により、最良の
確度でRF/マイクロ波コンポーネント
を測定できます。しかし挿入できない
デバイス(例えば両ポートがメス・コネ
クタのものなど)の場合には、校正にの
ときにそのテスト・ポートをスルー接
続できなくなります。このような場合
にスルー接続を行なうには特別な工夫
が必要です。このことは、特に増幅器
や低損失のデバイスなど、出力整合の
劣ったデバイスを測定するときに大切
です。
挿入できないデバイスに対しスルー接
続を行なう場合の、誤差を減じる方法
には、一般に次の4つがあります。
1.非常に短いスルーの使用
これにより、誤差をほとんど無視でき
ます。校正においてポート1とポート2
を接続するとき、アナライザは2つめ
のポートの反射減衰量(負荷マッチ)と、
伝送タームを計算します。校正キット
定義にスルーの長さが含まれていない
場合、負荷マッチの測定で誤差が発生
します。またポート1とポート2間の接
続にバレルを使用した場合、ポート2
マッチの測定は正しい位相情報を持た
ないため、誤差補正アルゴリズムは不
完全なポート2インピーダンスによる
影響を除去できません。
この方法は、スルーによる接続が非常
に短い場合にのみ使用できます。一般
的なネットワーク・アナライザでは、
「短い」とは波長の100分の1以下をい
います。もしスルーが(問題とする周
波数で)波長の10分の1の長さである場
合は、補正後の負荷マッチは生の負荷
マッチ
(補正前)より良くなることはあ
りません。スルー長が波長の4分の1に
近づくにつれて、残留負荷マッチは生
の負荷マッチより6dBも悪くなること
があります。1GHz測定において、波
長の100分の1は3mmです。
2.スワップ・イコール・アダプタ法の使用
この方法では、同じ電気長を持った2
つのマッチング・アダプタを使用しま
す。1つはオス/メス・コネクタ、もう1
5
つは被測定デバイスにマッチするアダ
プタです。
一対のテスト・ポート・ケーブルのよ
うに計測器のテスト・ポートが両方オ
スで、デバイスが2つのメス・ポート
を持つ場合を考えます。この場合に通
常ポート2にメス|メス・スルー・ア
ダプタを装着して、伝送校正を行ない
ます。4つの伝送測定の後、オス|メ
ス・アダプタと交換して(これにより2
つのオス・テスト・ポート)反射校正
を行ないます。2つのアダプタは電気
長が同じ(たとえ、物理長が異なって
いても)ですので、デバイスの測定が
可能となりました。
3.スルー・ライン標準の変更
目的のアプリケーションが製造テスト
の場合は、「スワップ・イコール・ア
ダプタ法」はアダプタを必要とする欠
点があります。この方法の代わりとし
て、校正キット定義をスルー・ライン
の長さを含むように変更します。校正
キットがスルーによる損失や遅延を計
算に入れるように変更されていれば、
負荷マッチを正しく測定できます。オ
ス|オス・スルー、およびメス|メ
ス・スルーのこれらの値は、簡単に求
めることができます。最初に、両メス
または両オス・テストポートを必要と
する場合の、スワップ・イコール・ア
ダプタ法による校正を行ないます。次
にスルーを測定し、S 21ディレイ(帯域
の中央値を使用)と1GHzにおける損失
を見ます。この値を使用して、校正キッ
トを変更します。
スワップ・イコール・アダプタ法の使用
ポート 1
ポート 1
DUT
アダプタ
A
ポート 1
DUT
挿入できないデバイス
1. アダプタAを使用し、
伝送校正。
ポート 2
アダプタ
B
ポート 1
ポート 2
ポート 2
アダプタ ポート 2
B
2. アダプタBを使用し、
反射校正。
アダプタの長さは等長。
3. アダプタBを使用し、
DUTを測定。
4.アダプタ・リムーバル法
いくつかのアジレント・テクノロジー・
ベクトル・ネットワーク・アナライザ
は、スルー・アダプタのすべての影響
を除く、アダプタ・リムーバル法を用
意しています。この方法は2つのフル2
ポート校正が必要となりますが、最も
正確な測定結果が得られます。
7
HINT
位相/ディレイ・フォーマットでの
エリアジングのチェック
6
1: Transmission
2: Transmission
Delay
Phase
500 ns/
100
/
Ref
Ref
0s
0.00
Meas1:Mkr1 140.000 MHz
–1.1185
51 POINT TRACE
s
基準 = 0秒
1:
1
遅延が負として
表示
2:
Start 130.000 MHz
Stop 150.000 MHz
図1
1: Transmission
2: Transmission
Delay
Phase
500 ns/
100
/
201 POINT TRACE
1
Ref
Ref
s
遅延が正と
分かる
基準 = 0秒
1:
2:
Start 130.000 MHz
図2
0s
0.00
Meas1:Mkr1 140.000 MHz
–1.3814
Stop 150.000 MHz
長い電気長を持った被測定デバイス
(DUT)を測定する場合、測定パラメー
タの選択には注意が必要です。VNAは
データを特定の周波数ポイントでサン
プルし、ディスプレイ上で見やすいよ
うに「点を結んで」表示します。これ
に対し隣接する周波数ポイント間で、
DUTの位相シフトが180゚を超えて変わ
るとき、位相スロープが逆になって表
示されることがあります。このような
場合データのサンプル数が少ないた
め、エリアジングが発生しています。
これは例えば動いている馬車の車輪を
フィルムに撮るとき、一般に車輪の動
きを正確に撮るにはコマ数が少なすぎ
るため、車輪が逆回りしているように
映るのに似ています。
またVNAは、位相データから群遅延
データを計算します。ここで位相のス
ロープが反転していると、群遅延の符
号が変わります。例えばあるSAWフ
ィルタが負の群遅延を持つように見え
たとすると、これは明らかに正しくあ
りません。もしエリアジングの発生が
疑われるときは、次のようなシンプル
なテストを行ないます。つまり周波数
ポイント間の間隔を狭くして、VNA
の画面に変化があるか確かめます。こ
れにはポイント数を増やすか、または
周波数スパンを狭めます。
図1は8714ES VNAを使用した、SAW帯
域フィルタの測定を示しています(51
ポイントによる表示)。表示された群
遅延は負であり、これは物理的に起こ
り得ません。ここでポイント数を201
に増やしてみると(図2)、VNAの設定
がエリアジングを起していたことが明
らかとなりました。
8
校正のクイック・チェック
デバイスを測定した後に測定値が正し
くないように思えたり、あるアナライ
ザの確度や性能が疑わしいときには、
次の「クイック・チェック」を行なっ
て、そのアナライザの校正や性能を検
証してください。いくつかの校正標準
のみが必要です。
反射(S11)測定の検証
ソース・ポート(ポート1)上の反射(S11)
測定の検証は、次の様な方法で行うこ
とができます。
1.最初のクイック・チェックとして、
ポート1を開放したままにして、S 11の
大きさが0dBに近いことを確認します
(±1dB以内)。
2.ポート1に負荷校正標準を接続しま
す。S11の大きさが、アナライザ仕様の
校正された方向性以下であることを確
認します(代表的に-30dB以下)。
伝送(S21)測定の検証
1.ポート1からポート2ヘ、スルー・ケー
ブルを接続します。S21の大きさが、0dB
に近いことを確認します(数10分の1dB
以内)。
HINT
7
2.S21のアイソレーションを検証するに
は、ポート1に1つ、ポート2に1つの、
2つの負荷を接続します。S 21の大きさ
を測定して、仕様されたアイソレーシ
ョン以下であることを確認します(代
表的に-80dB以下)。
これらの測定に対して、より正確な範
囲については、アナライザの仕様を参
照してください。また上記のようなチ
ェックを校正のすぐ後に行なえば、校
正の品質を検証できます。
3.ポート1に、開放または短絡校正標準
を接続します。S 11の大きさが、0dBに
近いことを確認します(数10分の1dB以
内)。
9
HINT
8
リアルタイムで正確な自動測定
製造部門で行なうRFデバイスのチュー
ニングやテストは、多くの場合ネット
ワーク・アナライザにスピードと確度
を要求します。しかし高速の掃引速度で
は、アナライザの最適な確度は得ること
ができません。しかしセーブ/リコー
ル・レジスタの使用により、測定の高速
化と高確度の両方を得ることができま
す。
セーブ/リコール・レジスタの使用
例えば帯域フィルタのパスバンド/スト
ップバンド・リジェクションを調整す
る場合、まずアナライザによる基本測
定をセットアップします(スタート/ス
トップ周波数、パワー・レベルなど)。
次にIF帯域幅を増加させ、データ・ポ
イント数を減らして(トレースのスピー
ド・アップのため)、これをステート1
としてセーブします。
次にIF帯域幅を減少させ、データ・ポ
イント数を増やします(測定の確度向
上のため)。
最後にリミット線を加え、これをステー
ト2としてセーブします。この後これ
らの2ステートを交互に呼び出すこと
によって、フィルタをリアルタイムで
調整し、その仕様を正確に検証できま
す。
機器設定のハンドフリー切り替え
8712/14Eファミリなどのネットワー
ク・アナライザは、フットスイッチを
接続できるBNC入力を持っています。
フットスイッチを使用して、2つの(ま
たはそれ以上の)設定を切り替えるこ
とが可能です。
計測器の自動化
最終テストのようなさらに複雑なテス
トでは、IBASICプログラミング機能を
持ったアナライザ(8712/14Eファミリ、
E5100、8751など)が、複雑な計算や制
御が可能なため、測定の自動化を容易
にします。
IBASICプログラムの使用は、難しいプ
ログラミングの経験を必要としませ
ん。各テストやテストの組合せは、簡
単にカスタム化できます。ソフトキー
やフットスイッチによりテストを開始
させることができます。
10
Agilent Technologies ネットワーク・アナライザ・ガイド
Agilent 4396Bネットワーク/ス
ペクトラム/インピーダンス・アナラ
イザ
4396Bは、研究や製造の分野で優れた
RFベクトル・ネットワーク、スペクト
ラムおよびインピーダンス(オプショ
ン)の測定を行なうことができます。1
台で、電子部品や回路の利得、位相、
群遅延、ひずみ、スプリアス、CN比、
ノイズなどを測定し評価できます。
4396Bはベクトル・ネットワーク・アナ
ライザとして、100kHz∼1.8GHzのレン
ジで使用できます。またテスト・セッ
トと組み合わせて、反射減衰量、定在
波比、Sパラメータなどの反射測定が
できます。
Agilent E5100A/B高速ネット
ワーク・アナライザ
Agilent 8712/14Eファミリ RF
ネットワーク・アナライザ
E5100A/Bは特に高いスループットを必
要とする、共振子やフィルタのメーカ
のために設計されています。数々のオ
プションが用意されているので、最少
の投資で目的のアプリケーションへの
最適化が可能です。周波数レンジは、
10kHz∼300MHzです。他にも0.04ms/
ポイントの測定スピード、波形解析、
ローノイズ、IBASICによる自動化など
の機能があるため、E5100A/Bは製造ラ
インの生産性向上に大きく貢献しま
す。
8712/14Eファミリは、大量生産の電子
部品のテスト用の経済的なネットワー
ク・アナライザ・ファミリです。例え
ば50Ω/75Ωシステム・インピーダン
ス、内部60dBステップ減衰器など、
数多くのオプションにより大きな柔軟
性をもっています。一部のモデルでは
振幅、位相、および群遅延の測定も可
能です。また高速CPU、大型VGA互
換ディスプレイ、IBASICによる自動
化、LANによる相互接続などが、本フ
ァミリは最新の充実した機能を提供し
ます。周波数レンジは、300kHz∼
1.3GHzまたは3.0GHzです。
11
Agilent Technologies ネットワーク・
アナライザ・ガイド (続き)
Agilent 8753ES RF
ネットワーク・アナライザ
Agilent 8510Cマイクロ波
ネットワーク・アナライザ
豊富な測定機能と優れたパフォーマン
スおよび確度によって、Agilent 8753フ
ァミリは他のアナライザを測定するた
めの標準となっています。Sパラメー
タ・テスト・セット内蔵、優れたダイ
ナミック・レンジ、オフセット周波数
の測定機能、3つの独立した同調レシー
バなど、最高の性能を提供します。ま
たタイム・ドメイン(TDR機能含む)、
6GHz周波数レンジ、SAW測定のため
の高安定信号源、75Ωなど数々のオプ
ションは、8753ESを多用途のネット
ワーク・アナライザにしています。
1985年の発売以来、8510シリーズ・マ
イクロ波ネットワーク・アナライザは、
ネットワーク・アザライザの性能の標
準的な役割を果たし、その地位を築い
てきました。このファミリは45MHz∼
50GHzのレンジで、能動/受動ネットワ
ークのリニアな動作特性の評価に対し
て、ソリューションを提供します。オ
ン・ウェーハ測定、ミリ波測定、パル
スRF測定、広帯域バイアス、校正な
ど、8510はこれらすべてを行ないます。
さらに校正、110GHzまでの周波数、
ミキサ測定のための周波数コンバータ、
マルチ・テスト・セットのサポートな
ど、数々のオプションにより8510はど
のようなニーズにも対応できます。
Agilent 8720ESマイクロ波
ネットワーク・アナライザ
マイクロ波周波数に対し、8720ESファミ
リ・マイクロ波ネットワーク・アナライザ
は、優れた性能を提供します。コンパクト
で使いやすい本ファミリは、8753ES RF
ネットワーク・アナライザと同じコントロ
ールおよびインタフェースを持ちながら、
50MHz∼13.5GHz、20、または40GHzの
周波数レンジをもっています。オプション
には、オン・ウェーハなどの非同軸測定で
のフルTRL/LRL校正のための4サンプラ・
アーキテクチャ、ハイパワー・テスト・セ
ット、ダイレクト・サンプラ・アクセス、タ
イム・ドメインなどが用意されています。
5965-8166J
040003304-L/H
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