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セミコンジャパン2015に初出展 和歌山工業高等専門学校

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セミコンジャパン2015に初出展 和歌山工業高等専門学校
セミコンジャパン2015に初出展
和歌山工業高等専門学校
電気情報工学科 教授 山口 利幸
1.はじめに
は図1のようになっています。ガラス基板の上に、裏面電
極の Mo、活性層の Cu2ZnSn(S, Se)
4( 略 し て CZTSSe) や
平成27年12月16日~18日に東京ビッグサイトで開催され
Cu2SnS(同
CTS)など、バッファ層の CdS、透明導電膜の
3
たセミコンジャパン2015の「The 高専@ SEMICON」に、
ZnO、表面電極の Al の順に積層しています。厚さ1mm の
株式会社荏原製作所のご支援をいただき、和歌山高専とし
ガラス基板上に、厚さ3μm 程度、面積25mm2の太陽電池を
て初めて出展しました。本校は和歌山県中部の御坊市に位
10個作製できます。これらの層は、本研究室の設備を用い
置し、知能機械工学科、電気情報工学科、物質工学科、環
てすべて形成できます。
境都市工学科の本科4学科とメカトロニクス工学専攻、エ
Al電極
n-ZnO
i-ZnO
CdS
CZTSSe, CTS
Mo
ガラス基板
コシステム工学専攻の専攻科2専攻からなり、学生数は約
850名です。その内約600名が寮生で、1年生・2年生には
全寮制による全人教育を行っています。本校の教育理念は、
創造力と問題解決能力を身に付け、豊かな人間性と国際性
を備えた人材の育成であり、様々な取り組みを行っていま
す。特に、テレビ放送でもお馴染みの高専ロボコンでは、
全国大会に10年連続出場中で、内3回の準優勝を記録して
います。さらに、次代を担う小中学生の科学技術への興味・
関心を高めるために、和歌山県や御坊市等と共同して、全
日本小中学生ロボット選手権をメイン企画とする「きのく
にロボットフェスティバル」
(後述)を毎年開催しています。
今回のセミコンジャパンでは、半導体産業と密接な関係
があり、卒業研究や特別研究で取組んでいる薄膜太陽電池
に関する研究を紹介しました。
2.出展内容
エネルギー問題や地球温暖化などの環境問題を背景とし
図1 次世代薄膜太陽電池の基本構造
本研究室で次世代薄膜太陽電池と位置づけて取組んでい
るのは、以下の3テーマになります。
一 つ 目 が、CZTSe 薄 膜 太 陽 電 池 で す。 本 研 究 室 で、
CZTSe 化合物をまず作製します。これを蒸着材料に用いて、
ています。一般的に用いられる、プリカーサ形成工程と電
て、 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム の 普 及 拡 大 が 進 ん で い ま す。
NEDO の太陽光発電ロードマップでは、2050年の国内の1
業生産に向いたプロセスになっています。
次エネルギー需要の5~10%を太陽光で賄うことが挙げら
二つ目が、CZTSSe 薄膜太陽電池です。6族元素をセレ
れています。また、福島原発事故以来、議論されていまし
ンと硫黄の混晶にしたものです。混晶にすることで、バン
た「エネルギーミックス」について、経済産業省が2030年
ドギャップを1.0eV~1.5eV まで変化させることができ、太
には、太陽光発電を含めた再生可能エネルギーが22~24%
陽光スペクトルに整合した理論的に最適なバンドギャップ
と公表しました。これを達成するには Si 太陽電池を補完す
約1.4eV に調節可能となります。展示では、真空蒸着で積
る太陽電池が必要で、Cu(In, Ga)
Se2(略して CIGS)太陽
電池などが市販されていますが、希少元素の資源的制約か
作製例を紹介しました。硫化・セレン化の雰囲気を調整す
ら、新規な太陽電池の開発が課題となっています。本研究
ることで、薄膜中の S と Se の割合を制御できます。現状、
室では、ポスト CIGS を見越した研究を進めています。そ
開放電圧は世界最高水準の値が得られています。一方、短
こで、今回は「次世代薄膜太陽電池の開発」と「世界最高
絡電流の値が低いのが問題で、その改善に現在取組んでい
効率の次世代型 CTS 薄膜太陽電池」について出展しました。
本研究室で開発している次世代薄膜太陽電池の基本構造
40
SEAJ Journal 2016. 1 No. 152
三つ目が、構成元素から Zn の比率をゼロにした CTS 薄
高専/高校セミコン
膜太陽電池です。NaF、Cu、Sn の積層プリカーサを作製後、
します。高専ロボコン全国大会で優秀な成績を収めたロボッ
Sn と S 雰囲気中で熱処理することによって CTS 薄膜太陽
トも登場し、全国大会さながらの素晴らしい動きを実演し
電池を作製し、プリカーサ中への NaF 添加と熱処理時の温
ます。詳しくは本校のホームページ
度プロファイル(プロセス A、プロセス B)による太陽電
池特性への影響を調べました。太陽電池の開放電圧、短絡
電流は、プロセス A、B ともに NaF の添加量が増加するに
つれて改善しました。特に、プロセス B で NaF 添加量7.5%
の時に、本研究において最も高い太陽電池特性(VOC =
283mV、ISC=37.3mA/cm2、FF=0.439、効率 =4.63%)が得
入場無料
第9回 きのくに
ロボットフェスティバル
ものづくり 人づくり 町づくり
Physics Express 8(2015)042303で公表)
。
スーパー
ロボット
ショー
2015
12月20日 日
平成 年
られ、これが現在の世界最高効率になっています(Applied
◆全日本小中学生
ロボット選手権
◆きのくに高校生
ロボットコンテスト
◆スーパー
ロボットショー
27
御坊市立体育館 9:20~16:15
【自律走行型ロボット Reborg-Ⅹ】
全日本小中学生ロボット選手権
ロボットコンテスト
小学生は4年生以上
小学生部門 「スカラベ巣に急げ大作戦」~ボール移動ゲームロボットコンテスト~
中学生部門 「ボトル輸送作戦!」~ペットボトル移動ゲームロボットコンテスト~
きのくに高校生ロボットコンテスト
【感情を持ったロボット Pepper】
「灯りをポンポンポン☆大作戦!」~リレーゲーム自動・手動ロボットコンテスト~
スーパーロボットショー
研究機関・企業等ロボット 感情を持ったパーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」
(ソフトバンクロボティクス(株))
自立走行型ロボット「Reborg-X(リボーグエックス)」
(ALSOK)
高専チーム 和歌山工業高等専門学校及び全国高専ロボコン2015出場の優秀チームなど
海外(韓国)からの参加ロボット
(予定)
図2 展示ブースでの様子
主 催 きのくにロボットフェスティバル実行委員会
(和歌山県、和歌山県教育委員会、御坊市、御坊市教育委員会、御坊商工会議所、和歌山工業高等専門学校、和歌山工業高等専門学校産官学技術交流会)
共 催 小山工業高等専門学校、岐阜工業高等専門学校、近畿大学工業高等専門学校、舞鶴工業高等専門学校、大阪府立大学工業高等専門学校、
明石工業高等専門学校、神戸市立工業高等専門学校、奈良工業高等専門学校、松江工業高等専門学校、都城工業高等専門学校、
徳島県立あすたむらんどこども科学館
後 援 文部科学省、経済産業省、消防庁、近畿経済産業局、国立高等専門学校機構、全国高等専門学校連合会、中小企業基盤整備機構近畿本部、
和歌山県商工会議所連合会、日高郡町村会、和歌山県経営者協会、和歌山県産業教育振興会、和歌山大学、和歌山県立医科大学、
南紀熊野産官学技術交流会、NHK和歌山放送局、(株)テレビ和歌山、(株)和歌山放送、日高新報社、紀州新聞社
協 賛 ソフトバンクロボティクス株式会社、ALSOK、株式会社アオキ、株式会社サクラクレパス 協 力 株式会社オーム社/ロボコンマガジン
お問い
合わせ
3.きのくにロボットフェスティバル
本フェスティバルは、高専ロボコン2006全国大会で本校
ルール等
の詳細は
実行委員会事務局(御坊商工会議所)℡.0738-22-1008 和歌山県教育委員会義務教育課 ℡.073-441-3662
和歌山工業高等専門学校総務課
℡.0738-29-8205 県立学校教育課 ℡.073-441-3681
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500200/h27/kou/robocon/robocon.html
この印刷物は地球環境に優しい再生紙、
植物油インキを使用しています。
図3 きのくにロボットフェスティバルポスター
チームが準優勝したことを契機にして、子供たちにものづ
くりや科学技術に興味を持ってもらい、和歌山県や日本の
発展を支える人材に育ってほしいとの趣旨から、和歌山県、
御坊市、和歌山高専などが実行委員会を組織して、2007年
から毎年12月に御坊市で開催しています。後援には、文部
科学省、経済産業省、(独)国立高等専門学校機構等も入っ
ていただき、文部科学大臣賞や経済産業大臣賞などの表彰
がある全国規模の大会です。本フェスティバルのメイン企
画である「全日本小中学生ロボット選手権」では、小学生
の部と中学生の部のそれぞれに競技課題が設定され、関東、
東海、近畿、中国、四国、九州の17ブロックと全国から出
場可能な全国ブロックで予選を勝ち抜いた代表による決勝
大会が行われます。競技課題は毎年変わりますが、素晴ら
しい出来映えのロボットが毎回登場し、小中学生の創造力、
技術力に感嘆します。また、スーパーロボットショーでは、
図4 全日本小中学生ロボット選手権中学生の部
企業や研究所等の最先端ロボットや海外のロボットが登場
SEAJ Journal 2016. 1 No. 152
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http://www.wakayama nct.ac.jp/sisetsu/robot_center/
てであったので、当初は戸惑いました。特に、専門用語を
robot_center.htm や和歌山県のホームページを
使うと、説明が分かりにくくなることが分かりました。そ
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500200/h27/kou/
のため、二日目以降は分かりやすい平易な説明を心掛けま
robocon/robocon.html ご覧いただければ幸いです。
したが、うまく説明できたか心配です。今回の経験から、
少子化や理工系離れが進む中、技術立国日本の将来を支
対象となる聴衆に対応した話し方が重要であることを認識
える人材の育成が重要な課題となっています。人材育成で
しました。今後、社会人になり、色々な方に話しをする機
は幼少期の体験が重要であり、スポーツや芸術などの分野
会が多くなる学生にとって、今回大変貴重な経験ができた
では多くの機会が提供されています。一方、科学技術の分
と思います。また、多くの企業の展示を拝見して、今後の
野ではそれほど多くないことから、ロボットを題材に子ど
就職活動に大変参考になりました。
もたちに考え工夫してもらう競技会の開催を企画しました。
2016年12月には第10回のフェスティバルを開催する予定で
すが、このようなロボット選手権を体験した子どもたちが、
5.おわりに
セミコンジャパンに出展し、多くの企業の方に高専での
将来、企業等で活躍する人材に成長するために、多くの企
研究を紹介することができました。次世代の太陽電池の研
業にご協賛いただきたくことをお願い申し上げます。
究は今後も益々重要になってくる分野であり、企業との共
同研究に発展することを期待しています。
4.参加学生の感想
最後に、今回の出展の機会をご提供いただきました株式
太陽電池の研究者が集まる学会での研究発表の経験はあ
りましたが、一般の方が対象となる展示会での発表が初め
会社荏原製作所ならびに本イベントの関係者の皆様に深く
感謝申し上げます。
図5 太平洋を望む和歌山高専の校舎
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