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第4回検討委員会資料 [PDFファイル/1.27MB]

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第4回検討委員会資料 [PDFファイル/1.27MB]
第4回
大分県美術館構想検討委員会
日時
資料
平成22年7月27日(火)
13:00~16:00
場所
大分県庁新館
51会議室(5階)
1
県立美術館の機能について
…
P 1
2
県立美術館のコンセプトについて
…
P 6
3
県立美術館の整備について
…
P11
4
県立美術館の運営について
…
P19
…
P23
参
考
○芸術会館の収蔵品等
○指定管理者の状況
…資料1
…資料4
○ 芸術会館・大分市美術館の現況
…資料5
県立美術館の機能
1.機能とデザインの調和
○建築の善しあしは、美術館の評価に大きく関係します。周囲の街と調和の取れた魅力ある
外観を持ちながら、美術館としての個性と機能性を備えた親しみのある建物、来館者がワ
クワクするような仕掛けのある建物となるような配慮が求められます。先進事例の状況な
どを踏まえると、延べ床面積は少なくとも11,000㎡程度が必要と考えます。
【延べ床面積】
芸館(現状)7,302㎡
1県1施設平均10,843 ㎡
平成以降平均11,012㎡
青森21,222㎡
広島19,926㎡
宮城15,203㎡
石川12,290㎡
静岡12,262㎡
岡山12,208㎡
高知11,724㎡
千葉10,664㎡
三重10,656㎡
宮崎10,333㎡
長崎10,092㎡
福島9,690㎡
2.展示機能
○展示スペース
幅広い美術芸術との出会いは、大分県の未来を担う子どもたちの豊かな感性と創造性
を育むとともに、多くの人々に安らぎや感動をもたらします。県民が質の高い本物の芸
術文化に触れる機会を充実するためには、展示スペースを十分に確保する必要があり
ます。先進事例の状況などを踏まえ、少なくとも3,000㎡程度が必要と考えます。
芸館(現状)1,234㎡
1県1施設平均2,975 ㎡
平成以降平均3,046㎡
青森5,054㎡
静岡4,251㎡
広島4,093㎡
石川3,291㎡
岩手3,187㎡
長崎2,993㎡
山梨3,818㎡
宮城3,551㎡
①常設展示スペース
芸術会館には、購入と寄贈による約 4,500点もの収蔵品があります。特に、田能村竹
田を中心とする近世絵画、福田平八郎や高山辰雄など、大分県にゆかりの充実したコ
レクションを所蔵しています。また、寄託品として田能村竹田の重要文化財をはじめ展
示可能な作品を数百点を預かっており、これら県民の貴重な財産である収蔵品の一部
を常時展示することができる専用スペースが必要です。
-1-
②企画展示スペース
観覧者が中に入ったときに日常から切り離されて、特別な空間に入るという期待感、ワ
クワク感を感じるとともに、あらゆる形態・大きさの作品にも対応できる空間を確保する
ことが必要です。これは、常設展示スペースにもあてはまります。
③県民ギャラリーとしてのスペース
多くの美術関係者が待ち望む県民ギャラリーとして、グループ展やワークショップなどの
成果発表ができる貸し出し可能なスペースが必要です。県民ギャラリーに隣接して、主
催者控え室や少人数のレクチャースペース等があればさらに機能的になります。
○その他効果的な展示に必要な設備
展示室内を24時間一定の温湿度に管理できる空調システム、調光機能のついた照明、
可動式壁面(パーテーション)などは、最近建設された美術館に標準整備されており、
展示室の機能として備えておくべきだと考えます。また、低反射ガラスを用いたウォー
ルケースの設置についても増えており、検討の余地があります。
3.収蔵機能
○収蔵庫のスペースと必要な機能
収蔵品を適切に管理できる十分なスペースを確保するとともに、耐震・免震機能や十分
なセキュリティ機能を持つことが必要です。文化庁文化財保護部が示した「文化財公開
施設の計画に関する指針」によると、収蔵庫の床面積は、展示室の床面積の半分を目
安とするが将来を見越して十分なスペースをとることが望ましいとされています。また、
本県の特性である豊後南画、竹工芸品等の収蔵品の保管には、湿度調整が可能など
独立した収蔵庫が望ましいことなどを考慮すると、他県平均よりも大きくなりますが、収
蔵庫にはおおよそ1,500㎡程度が必要と考えます。さらに、収蔵庫周辺には、梱包材
の収納庫や荷解き場、資料を写真撮影するための場所を確保するとともに、作品等の
搬出入にあたって、十分なトラックヤードと搬出入口を確保する必要があります。
芸館(現状)685㎡
1県1施設平均1,039 ㎡
石川2,232㎡
平成以降平均1,039㎡
広島1,580㎡
山梨1,470㎡
沖縄1,206㎡(博物館・美術館)
-2-
岩手1,457㎡
埼玉1,352㎡
4.教育普及機能
○子どもたちの芸術との出会いの場、高齢者等県民の生涯学習の場として、多彩な活動
が展開できる機能を確保する必要があります。具体的には、ワークショップや造形活動
など様々な活動の展開を可能とするアトリエや講堂・会議室、美術に関する図書コーナ
ーの設置などが挙げられます。図書コーナーでは、年報や紀要、図録などを発行、販
売できる仕組みづくりの検討も必要です。
5.県民が気軽に立ち寄れる憩いの場や交流の場としての機能
○さまざまな人々の交流の場としてゆったりとくつろぐことができるロビー等のオープンス
ペースやカフェ等の憩いの空間が必要です。また、ミュージアムショップなども設置する
ことが望ましいと考えます。
6.ユニバーサルデザイン等への対応
○多様な人々が利用する施設として、ユニバーサルデザインをはじめ、地球環境に優し
いエコにも十分に配慮する必要があります。また、メンテナンスの容易さなど、ランニン
グコストにも配慮が必要です。
7.情報発信機能の充実
○ホームページを活用し、収蔵品情報の検索など、いわゆるバーチャル美術館のような
機能や県立美術館にふさわしい情報発信機能を持つことが望まれます。資料のデータ
ベース化を進めるなど、多様な情報通信技術・メディアを活用して積極的な情報発信が
望まれます。
8.時代の流れに対応できるフレキシビリティ
○県民の様々なニーズや芸術の表現方法の変化などにも対応できるフレキシビリティが
これからの美術館には求められます。
9.展開する事業活動
○資料の収集と保管、活用
コンセプトに基づき、計画的な資料の収集を行うとともに、収集した資料は、常に安全で
良好な収蔵環境のもとで保管し、貴重な財産として次世代に引き継いでいきます。収蔵
資料の目録等を整備し、多くの人々が資料を活用できるようにし、収蔵資料を効果的に
活用するために他館との間での資料の貸借を促進します。
○調査・研究
コンセプトに基づいた調査・研究を行い、その成果を地域社会はもとより幅広く人々の
活動や学術的な研究に役立てます。美術館の機能向上を図るため、展示や教育普及
活動とともに管理運営などに関する調査・研究も積極的に行います。
-3-
○展示、教育普及活動
コンセプトに基づいた展示や教育普及活動のための方針を定め、所蔵資料の特色を生
かして、計画的に常設展示を行います。特別展、企画展を開催するにあたっては、社会
状況や県民のニーズを考慮します。展示については、学芸員やボランティアによる展示
解説を実施するなど、誰もがわかりやすく楽しむことができるように配慮するとともに、
外国人、高齢者、障がいのある方等の利用にも配慮します。展示や所蔵資料に関連し
た講演会や講座などを積極的に実施し、県民の多様な学習活動を支援するとともに、
県立芸術文化短期大学や大分県芸術文化振興会議等と協力して、子どもたちの心を
とらえて離さない、魅力あるプログラム作りを積極的に進めていく必要があります。
○県民の参画
県民の意見を美術館運営に反映させるため、利用者や関係者が参画する協議会など
を設置するとともに、利用者のニーズや満足度を把握するアンケート調査などを実施し
ます。
○大学との連携・若手芸術家の育成
大分県の持つ美術ポテンシャルを持続的に開花させ続けていくため、県内大学との連
携を図り、子どもたちに創造の楽しさを経験して貰うための場としての役割を果たすととも
に、若手芸術家の育成や情報発信の仕組みづくりを構築する必要があります。
-4-
各委員の意見
「9.展開する事業活動」の「展示、教育普及活動」においては、一部大学名を記名するの
ではなく、県全体で盛り上げるためにも、県内大学とした方がよい。〔金村委員〕
ほぼ皆さんの議論でコンセンサスを得た内容が盛り込まれていると思います。ただ、少し
気になるのは、これを全て満たそうとしたときに、予算との関係でどの機能も中途半端にな
ることです。上記問題から、諸機能の優先順位付けも必要となるような気がします。勿論全
部十分にできればそれに超したことはありません。〔中山委員〕
ここに挙げられたどの機能も新しい美術館にとって不可欠なものと思われますので、理念
的にはすべて実現してほしいものばかりだと思います。
大学との連携については、大学だけでなく、小中高校の授業などでも積極的に美術館を
使うことで若手育成につながると思いますし、ひいては子供たちから親世代、大人へと広が
り県民全体の有効利用につながると思います。
交流の場としてのスペースに、例えば音楽の演奏など、他の芸術活動と組み合わせた企
画ができるようなスペースが確保されるとよいと思います(カフェなども利用して)〔以上山口
(真)委員〕
1、常設展示室は美術館の顔として最も重要。大分県人のアイデンティティーとして県民全
てが再認識し、誇りと自信を取り戻す場として位置づけたい。
①田能村竹田、福田平八郎、高山辰雄等々、平面作家彫刻家、工芸家など日本的な郷
土出身作家の代表作品を展示する部屋。
②県下各地に点在する遺跡や文化財及び先哲資料館などの紹介コーナーを特設。
①②により県民の心のルーツを辿れるものにしたい。
③将来的に首藤コレクションの里帰りを想定したスペースも考慮したい。
2、子どもの遊べる部屋
造形・美術をベースにした遊びの空間。右脳刺激のテクスチャー遊具その他、色や形遊
びなど、先ずは、子どもたちに親しみを持ってもらうことが大事。親や友達を誘ってやってく
る。遊びの中で美術に関心を持ち、鑑賞力・想像力が身につく。〔以上渡辺委員〕
-5-
県立美術館のコンセプト
大分らしい美術館「自分たちの応接間」
○大分には美術も音楽も過去から蓄積されたものがあります。「大分スタイル」のどこにも
ない美術館を生み出すだけのポテンシャルを備えています。県民の皆さんに美術館に
親しんでもらうためには、美術館が生活の延長にあり誰もが利用しやすい場所であり、
その一方で、体験する誰もが普段の生活とは異なった楽しみや感動を得ることができ
る場所であることが求められます。そこには、自分たちが参加できる企画もあれば、見
に来る、聞きに来る参加の仕方や自分たちが何かを手伝う参加もあります。いろんな参
加のかたちを提供することで地域に密着し、県民の皆さんに「自分たちの応接間」だと
思っていただけるような美術館を目指します。
「成長する」美術館
○子どもたちは柔らかいスポンジです。非常に素朴で素直に何でも吸収していきます。そ
の子どもたちに創造の楽しさを経験してもらう場所としての役割を果たし、次代を担う大
分の子どもたちの感性や創造性をはぐくみます。また、高齢者を対象にした企画を実施
するなど、県民の皆さんの生涯教育の場所としての役割を果たします。県立美術館も
一つの大きなスポンジのように、いろんなことを吸収し、次代を担う大分の子どもたちや
県民の皆さんと一緒に成長していきます。
「四季を感じる」美術館
○大分県には全国に誇れる多様で豊かな自然があります。その豊かな自然に囲まれて、
県内には美術館や文化施設が各地に点在します。県内の美術館や文化施設を組み合
わせて巡れば、それは「芸術の旅」となります。旅の途中で見る風景は、高山辰雄や福
田平八郎などの芸術家を輩出し、題材にされてきた大分の自然であり、同時に自然の
キャンバスに描かれた作品でもあります。県立美術館を中心に水の波紋のようにネット
ワークを拡げ、大分の四季を感じることのできる美術館を目指します。
「五感を刺激する」美術館
○美術館の来館者は自分の世界が日常から切り離されて、そこで特別の世界、異空間に
入っていくというような期待感・ワクワク感を膨らませて訪れます。県民の皆さんが美術
館に足を運び、絵画や彫刻を観る。それが音楽と結び付く場合もあるし、映像としてつ
ながっていくような可能性があります。人間の五感というのは芸術全般をお互いに感じ
合うほどに繊細で、それでいてキャパシティーの大きいものです。県立美術館は常に訪
れる人の五感を刺激する場所であり続けることを目指します。
-6-
各委員の意見
心に残る素晴らしい美術館に共通するところは、余裕ある空間を持ち合わせているところ
のように思います。又、展示スペースにおいても充分な空間にあるその絵画や芸術品は、観
る人びとの心や目の動きをスローにしてくれます。ゆっくりと思いのままに過ごし、人それぞ
れの楽しみ方をみつけることが出来ます。空間のゆとりを考慮した美術館であって欲しい。
〔板井委員〕
素晴らしいキャッチだと思います。実現を夢見てワクワクする想いです。〔中山委員〕
どのコンセプトも具体的で大分らしさも実現できる素晴らしいコンセプトだと思います。特
に「成長する美術館」というコンセプトには、子どもたちだけでなく、大分県民を構成する各世
代を意識することが重要で、子ども世代(成長という将来社会を作る世代に大きな影響を与
える)や高齢者(これまでできなかったゆとりの時間の中で再び社会にかかわるきっかけと
なる)だけでなく、働いている若い世代にとっても、忙しい日常的な時間を忘れられる非日常
的な空間として美術館を利用することで、やすらぎの時間となったり、日常では得られない
仕事への刺激も得ることができると思われますので、子どもと高齢者に限らず、幅広い世代
の「成長」を盛り込んでいただければと思います。〔山口(真)委員〕
豊の国は、国東の地に六郷満山の仏教文化が華開き、八幡神宮総本山の宇佐八幡、南
蛮文化の地、空前の南画王国をはじめ、幕末の先哲の輩出など、日本の文化・芸術はかつ
て豊の国が正に発信地の観を呈していた時代もあった。
県下各地には、そうした関連の文化施設や小美術館も多いが、この際、県都の玄関口に
歴史と夢の未来型県立美術館を建設し、〃大分からの風〃〃大分の平成ルネサンス〃とし
て新たな発信基地を象徴するシンボルモニュメントになることを願いたい。〔渡辺委員〕
-7-
事務局提案
県立美術館のコンセプト~「竹」をテーマとした美術館~
大分らしい美術館
「大分スタイル」のどこにもない地域の美術館
県民が「自分たちの応接間」と思える美術館
「成長する」美術館
インタラクティブな活動
相互に作用する活動が生まれてくる
美術館
「五感を刺激する」美術館
「四季を感じる」美術館
竹をテーマとした美術館
-8-
1.大分の竹材・竹工芸品の現況
○大分県は、マダケの生産量が全国一です。また、国の伝統的産業にも指定されている
別府竹細工や、全国唯一の竹工芸の人材育成機関が存在するなど、「竹」は大分を代
表する地域資源です。
【参考資料】
マダケ生産量
年次
(単位:千束)
1位
2位
3位
4位
5位
大分県
山口県
茨城県
滋賀県
福岡県
18
114
大分県
19
71
山口県
101
大分県
20
52
茨城県
97
44
45
茨城県
43
山口県
28
25
滋賀県
16
福岡県
25
京都府
15
福岡県
22
13
国の伝統的産業の指定
昭和54年
通商産業省(現
経済産業省)から「伝統的工芸品」の指定を受ける。
大分県竹工芸・訓練支援センター
竹工芸の技術者育成、試験研究のために、大分県によって設立された大分県工業
試験場別府工芸指導所( 1954年大分県別府産業工芸試験所に改称)が前身。
職業能力開発校として、伝統的工芸品としての竹工芸並びに高齢化社会のニーズ
に対応できる、介護サービスの技術と専門的な知識を保持した人材の養成等を行って
いる。
2.県出身の主な竹工芸作家
生野祥雲斎
(1904~1974)
岩尾光雲斎
(1901~1992)
門田
二篁
(1907~1994)
市原華雲斎
(1916~1995)
別府市の生まれ。昭和 42年、竹工芸で最初の重要無形文化財保持
者に認定される。昭和 44年、紫綬褒章を受賞。
別府市の生まれ。長年にわたって別府の竹製品業界の振興・発展と
後進の指導・育成に尽力し、昭和47年勲六等単光旭日章を受章。
広島県福山市の生まれ。18歳の頃別府市で岩尾光雲斎に師事して
花籠を制作し、昭和55年伝統工芸士に認定される。
杵築市の生まれ。大阪で山口竹代斎に師事し、戦後は地元で制作。
昭和55年伝統工芸士に認定される。
-9-
3.芸術会館で開催した竹関係の展覧会(過去3年)
年
度
展
平常展Ⅰ
19年度
20年度
21年度
覧
会
名
四季の美を描く
開館30周年記念
コレクションの精華
平常展Ⅴ
工芸
その技と美
平常展Ⅴ
大分の伝統美
平常展Ⅴ 特集展示:動物や鳥を愛した作家たち
創る、出会う、拓く-竹の世界
4.芸術会館所蔵の主な竹に関する作品
分
野
作品数
主な収蔵品等
作家名
南
画
24
作
品
名
田能村竹田
「筍蕈図」、「梅花宿鳥図」
田能村直入
「竹渓幽客図」、「十長生図」
日本画
4
福田平八郎
「竹」
竹工芸
233
生野祥雲斎
「時代竹編盛籃 心華賦」
「ホールのための置物
その他
小
計
2
初代田辺竹雲斎
「古矢竹鎧綴花籠
飯塚琅
「果籃
斎
待虎」
鈴木春信(浮世絵)、楢原長甫(漆芸)
263
- 10 -
梟将」、 「陽炎」
弥生」
県立美術館の整備について
1
想定される対応案
①芸術会館のリフォーム
各委員の意見
リフォームで100 %の成果が達成できないのであれば、意味が無いように思います。
〔板井委員〕
リフォームしても使いづらいのは変わらない気がします。収蔵庫か、分室にする方がよ
いのでは。〔金村委員〕
構造的には可能性があるという専門家の意見なので、検討の余地はある。しかし、上
記の機能・コンセプトを具現化するには、現状の設計を大きく改変し交通や動線、その他
種々のサービスに対応する必要が出てくる。結果的に新設とリフォームとどちらが妥当で
あるのか、専門家による試算を願いたいところである。
現芸術会館をリフォームして、サテライト型県立美術館の1ゾーンとして再利用する意
見もある。リフォームして再利用するのであれば、そのほうが現実的ではなかろうか。〔以
上佐藤委員〕
立地条件が厳しすぎると思います。来館者は、その目的のみのために来て、帰ることと
なり、ついでにあれもこれもといった買い物などへの興味も無関係になります。
賑わう街の復活にも寄与しません。リフォームであれお金を使うだけの費用対効果が
小さすぎると思います。来館者の統計が各県の美術館に比べて一段と低いのは、単にス
ペースの問題ではなく、そもそも人が集まりやすい仕組みができていないことが問題なの
だと思います。〔以上中山委員〕
立地環境が変わらないということは、これまでに議論されてきた新しい美術館に求めら
れている機能面での改善が不可能のように思います。
また仮にリフォームによっていくつかの機能が実現されたとしても、出費も少なくなく、や
はりリフォームでは限界があるように思います。〔以上山口(真)委員〕
リフォームには限界があり、大改造は出来ないと思われる。すなわち、改造では全く斬
新なイメージは生まれにくいと思われる。〔渡辺委員〕
- 11 -
②現在地に美術館を整備
各委員の意見
望ましい面積が取れずに、様々な制限のなかでの建設になってしまう恐れがあると思
います。〔板井委員〕
土地の整備等の期間、所蔵品をどうするのか等、問題もはらむのでは。大分駅から近
い牧駅ではあるが、近寄りにくいのも事実。加えて、常に混雑し、収容することのできない
駐車場の問題が絡む。〔金村委員〕
交通や周囲の環境も含めた環境設計も十分考慮されたい。〔佐藤委員〕
上記(①芸術会館のリフォーム)理由で反対です。〔中山委員〕
立地環境不変かつ、用途地域の制限がありながら、求められる美術館像を実現できる
のか疑問です。というのも現在芸術会館が抱える問題には、単に建物の老朽化にとどま
らず、公共の交通機関で利用しにくいために県民の利用の妨げにもなっているという根本
的な問題も含まれているからです。私は、リフォームも含めて現在地での新しい県立美術
館の構想は、避けた方がよいように思います。〔山口(真)委員〕
現在地はアクセス面から不適。〔渡辺委員〕
③別の場所に美術館整備
各委員の意見
大分駅も新しく開発予定ですが、現存と未来の文化施設との相乗効果を期待したい。
「歩いて廻って文化のかおる町づくりおおいた」を実現して頂きたい。〔板井委員〕
駅から近い所でないと近寄りづらい。市との話し合いも必要になるが、渡辺先生の言わ
れた城址公園であれば、となりにアートプラザもあるため、大分市美とのつながりやアート
プラザを利用する方々との関係が見いだせるのではないでしょうか。
一般の方が話しを持ちかけてくださったのですが、以下の2点の意見を頂きました。
①せっかく、緑丘と芸短が側にあるのだから、芸短の南側で利用されていない土地を利用
できないか。
②いっそ、大分市美術館と墓地公園との間に美術館を建てて、常設展や企画展を共同で
行うことができるようにしてみては。〔以上金村委員〕
郊外型と都市型が想定される。公共サービスという視点に立つと、文化施設の一極集
中は県民が受ける公共サービスの機会の均等において、地方と都市の格差を広げる懸
- 12 -
念がある。一方、利便性は都市型のほうが優位にある。公共交通機関の稼働率も立地に
よって左右されることから、教育施設としてエコの観点にも考慮することが望ましい。実際
には候補地は限られるであろうから、要件によってはソフト面や別途施策よって補完され
たい。〔佐藤委員〕
美術館だけを考えるのではなく、より多くの観客にとって魅力のある施設であり、アクセ
スに便利であるという観点が不可欠だと思います。その意味で交通の集中する場所に立
地すべきです。
貴重な収蔵作品はありますが、それを見に来るだけでは人は集まらないと思います。
他の用事で人が集まる場所ならば、気軽にちょっと素敵な空間で時間を過ごしてみようと
いうお客様が増えると思います。
遠方からのお客様にはバスや鉄道のような公共の交通機関が近くにあることが不可欠
です。車社会のようにお考えの方が多いかと思いますが、そうではない方の方がはるか
に多いことを認識すべきです。もし車だというなら、今の芸術会館でも全くスペースは不足
しています。
子供達のワークショップなどの場合、交通のアクセスが更に重要度を増します。車を持
たない家族は予想外に多いのではないかと思います。(あっても通勤用に使っていて、日
中の子供達の用事に使われないことも考えられます。〔以上中山委員〕
新しい用地の確保と跡地の利用についての問題は生じるものの、選択肢が広がり、こ
れまでの構想を実現できる可能性がかなり高いと思います。また大分市内中心部に移転
することによって、美術館のみならず、大分駅周辺の開発とも連動して、さらに中央地区
の商店街を含めた相乗効果が期待できると思います。〔山口(真)委員〕
多くの人たちが利用しやすく、周辺環境にも調和した新たな県立美術館を整備するべき
だと思う。立地場所として、多くの県民が訪れやすい大分市の中心部・城址公園内に美術
館(本館)を整備することで多くの人たちの参加や活用が期待できる。〔山口(正)委員〕
心機一転、「平成の夢の美術館」を想定し、大分の未来を象徴するような美術館創出に
は、別の場所を探すのがいいと思う。〔渡辺委員〕
- 13 -
2
立地条件の検討
①施設・敷地の規模
各委員の意見
県の提案にあるように、最低限の展示空間や収納庫の規模は確保したい。その上で周
囲の環境(美術館の敷地である必要はないが)を整備し、県民共有の文化ゾーンとして提
供する。〔佐藤委員〕
一部複数階にする、地下室を作るなどもあり、また予算の上限もあって、規模を一概に
示すことはできません。〔中山委員〕
施設・敷地とも必ずしも大きい必要はなく、これまでの構想の実現可能性を高めるに
は、むしろ立地条件の方を優先すべきだと思います。例えば、パルコのように駅前の空き
ビルのフロアを美術館にする場合などは、初めから建物の容量が制限されますが、その
ことによって場所が手狭になった場合には、サテライト方式にして、パートナー館との連携
を密にしたり、所蔵などは芸術会館を有効に利用する方法もあると思います。〔山口(真)
委員〕
展示と収蔵・教育普及機能の分散を図ることで、施設・敷地の規模についても現実的な
選定が出来ると思う。〔山口(正)委員〕
延べ床面積11,000㎡以上を確保するとき、希望想定場所が仮に建坪面積的に狭小
であれば、重層構造にすることで都市型美術館となる場合も考えられる。〔渡辺委員〕
②文化芸術振興拠点や教育機関等との連携
各委員の意見
他の文化施設と複合する美術館も他県には見られるが、ソフト面でしっかり連携が取れ
ていれば、立地条件として特に考慮する必要はないと思われる。〔佐藤委員〕
非常に大切だと思います。芸短は大いに寄与できると思いますが、余りにも遠くだと、
学生達が気軽に行き来できない恐れがあります。〔中山委員〕
大分市美術館や大分県立芸術短期大学がある上野地区、広い意味では大分駅周辺
が好都合だと思います。交通の便のよいこの場所することで、芸術短期大学だけでなく、
他の大学や学校などとの連携も容易になると思われます。〔山口(真)委員〕
芸文短大及び県下各大学、専門学校、小・中・高校との連携、さらには高齢者や県外
旅行者等のアクセスからすれば、交通拠点としてJR大分駅周辺を念頭に置くことがベタ
ーだと思う。〔渡辺委員〕
- 14 -
③多くの県民が利用しやすい場所
各委員の意見
市街地、又市街地にほど近い場所。ホール、文化施設が遠からず存在する場所であっ
て欲しい。〔板井委員〕
大分駅裏か、城址公園〔金村委員〕
公共交通機関の利便性や駐車場の確保が課題となろう。〔佐藤委員〕
大分駅周辺しか考えられないと思います。
オアシス周辺までは徒歩10分以内ですので許容範囲だと思います。
列車、バス、高速、空港からのアクセス、その全てで大分駅周辺はベストです。〔中山委
員〕
「都市型」がよいと思います。たしかに「郊外型」で、大分の雄大な自然を生かす方法も
あると思いますが、公共交通機関では行きにくいという芸術会館の現状が抱える問題を
解決するには、大分駅周辺に移転する「都市型」がよいと思います。
「都市型」では、②のような各機関との連携に加え、さらに大分駅という大分の玄関に近
いことで大分県の文化的な面を他県の観光客にアピールできます。
また駐車スペースについては、現在商店街が行っているような共通の駐車券などを利
用することで、解決できるのではないでしょうか。〔以上山口(真)委員〕
多くの人たちが様々な目的で集まってくる街の中心部に美術館施設を整備することで、
誰もが参加活用しやすく、また周辺にある文化施設との連携も期待できる。
駐車場の確保が課題となるが、県立図書館のような地下と屋外に整備することも参考
になるのでは。(※大分市側の協力が不可欠)〔以上山口(正)委員〕
車社会である今日、関連施設としての駐車場の設置は欠かせない。一方、美術館が街
の中心部になればなるほど駐車場スペースの確保は困難となり、公共交通機関の利用を
余儀なくされることになる。〔渡辺委員〕
④本県を訪れる観光客にも利用しやすいこと
各委員の意見
大型バスなどで移動する観光客を考えれば、かなり広い駐車スペースが必要なのでし
ょう。しかし、話題性があり、すばらしい美術館であれば他の交通機関を利用してでも訪
れると思います。〔板井委員〕
- 15 -
観光客と限定するなら、別府か湯布院。しかし、県民のことを考えるとやはり大分駅付
近がよいのでは。〔金村委員〕
公共交通機関の利便性の高い立地場所。他の大分の文化施設の利用や観光の動線
上に立地。〔佐藤委員〕
県外のお客様が来にくい美術館にはすべきではないと思います。〔中山委員〕
③と同じ理由で、大分駅周辺がよいと思います。現在行われている大分駅南側の開発
や、そこに新しく作られるホールとうまく連動してできると相乗効果が期待できるように思
いますが、関連づけることは可能なのでしょうか。〔山口(真)委員〕
県外からの観光客の利用や県内高齢者、児童生徒の利用を考えると、公共交通機関
でのアクセスが容易であるJR大分駅周辺が望ましい。〔渡辺委員〕
⑤美術館の目指す方向性と調和の取れた場所
各委員の意見
緑の中の美術館は存在しているだけで絵になっており、時間の許す限りいつまでも居
たいと思う。鑑賞の合間に、大きなガラス越に見える自然は上気した心を沈めてくれます。
市街地に近く、緑あふれる場所に立地できれば
県民の感性も育まれ大分の収蔵作品も
さらにいきいきとして来ると思います。〔板井委員〕
五感を刺激する、四季を感じる美術館であるには、周囲の自然環境は豊かに整備した
い。〔佐藤委員〕
③と同じ理由で、大分駅周辺がよいと思います。現在行われている大分駅南側の開発
や、そこに新しく作られるホールとうまく連動してできると相乗効果が期待できるように思
いますが、関連づけることは可能なのでしょうか。〔山口(真)委員〕
大分市の中心部にある城址公園は、かつて旧県庁舎が在った場所でもあり、県立美術
館が立地する場所として相応しい環境だと思う。また、コンセプトにある大分スタイルのど
こにもない「自分たちの応接間」として、四季を感じる調和の取れた美術館が実現できると
思う。〔山口(正)委員〕
都市型、郊外型の分類ではなく、街の中にあって水あり、緑あり、しかも歴史的
にも由緒ある文化ゾーンがあれば最高である。〔渡辺委員〕
- 16 -
3
整備手法
各委員の意見
プロポーザル方式でよいが、選定者がどうなるのかが問題であることにかわりはない。
また、どの範囲で募集をかけるのかも合わせて考えていっていただきたい。〔金村委員〕
施主である県民の思いに十分に耳を傾け、理解し、施工後の責任も果たせるのであれ
ば方式は問わない。県民としてはどちらの方式にしても選定の透明性や情報公開を望
む。また、美術館は長く在り続けるが故に、時の流れとともに意匠が都市や自然空間のな
かで乖離したり、施工後間もなくひび割れや雨漏りが生じる、デザインのために機能が割
愛され、結局施主にとっては使い勝手のわるい施設となったという話も耳にするので選定
にあたっては留意されたい。設計者との疎通については、どちらの方式においても必要不
可欠な最低限の態度・姿勢であり、施主と十分なコミュニケーションが取れないような設計
者は県民として遠慮願いたい。どちらの方式にしても、施主である県民の声を代弁する県
と十分な疎通を持つこと、持とうとすることは、県や設計者の心持ちの問題で方式の条件
とはなりえないと考える。他に県民としては大分にゆかりのある設計者に関わってもらい
たいとも思う。〔佐藤委員〕
プロポーザル式は絶対に反対です。若手建築家によるコンペ方式にすべきだと思いま
す。これだけのことを行うのに、簡便に対応できることを優先するなど絶対に反対です。特
に、この美術館は県立として我が国でも最後に近いプロジェクトですから、日本中が注目
します。構想をよく説明し、それに沿った案に、建築家独自の考え方を盛り込むことに成
功するなら、客は全国から来ます。プロポーザルではそのような望みはほぼ100%断た
れると断言しても言いすぎではないと思います。
コンペの場合、審査員が肝心です。磯崎さんは審査員としては世界でも有数の成功例
を挙げており、引っ張りだこですので、まさに適任でしょう。
プロポーザル式は、既視感のあるどこもが過不足のないものはできるでしょうが、次世
代に残る施設にはなり得ません。〔中山委員〕
プロポーザル方式でよいと思います。「企画」「設計」「建設・維持保全」「運営」の区分に
ついて、どこかに民間の手法を取り入れたらと思いました。運営に関して、学芸員の主体
性を確保するという点を考えれば、建設・維持保全を民間で行う方式がよいのではないで
しょうか。〔山口(真)委員〕
大分県に何らかの接点のある建築家依頼のプロポ-ザル方式が良い。
ただし、大分県の歴史や文化・芸術等の概要や現在の抱える諸課題を理解される方。
建築界での実績のある新進作家に期待したい。〔渡辺委員〕
- 17 -
4
新たに整備する場合の芸術会館の取扱い
各委員の意見
収蔵庫や分室として利用〔金村委員〕
海砂を使った芸館は今後もどんどん痛んでくるでしょう。むしろホールは山砂だと伺って
いるので、ホールを最低限整備すれば舞台芸術団体(アマチュアも学生もプロも)の稽古
場として大変重宝するのではないでしょうか。ブラスバンドや演劇集団には有り難い施設
になると思います。
美術館側は、美術品修復センターにする、ワークショップの会場にするなど、また芸術
団体のオフィスとして分割貸与するなどの利用方法はあると思います。〔以上中山委員〕
現在の展示棟を改修して、収蔵品の十分なスペースの確保とその他設備の充実にあ
てたらと思う。また、ホール棟についても、教育普及活動の施設(別館)として再活用でき
ればと思う。〔山口(正)委員〕
私は「現状のまま底地も含めて処分」がよいと思います。たしかに現在の芸術会館の老
朽化は激しいですが、あれだけの器を壊すにも経費がかかるわけですから、専門の利用
ということではなく、例えばホールは市民の文化活動に提供し、美術館は収蔵庫として利
用するという目的の補修を行い利用できればと思います。
現在、音を出す音楽などの文化活動では、その多くが大分市の公民館を利用している
ようですが、音を出せる部屋は限られており、またそのたびにトラックでの運搬が必要にな
る大きな楽器の移動などの問題が生じます。ですが、芸術会館のホールを利用すること
によって(舞台や楽屋は練習場として、客席は倉庫として利用など)これらの問題が解決
し、さらに解体費用がかからずに、売れ残る心配もないというメリットが考えられます(実
際、彦根市では、新しい「ひこね市文化プラザ」で従来のプロの公演も含めた公演を行い、
旧市民会館は舞台練習場として利用しています)。
デメリットとしては、文化活動での使用料などの収益で、芸術会館をどのくらい維持でき
るかという問題があると思います。〔以上山口(真)委員〕
現状のまま、底地も含めて処分(競売にすることで、利用価値ありとする希望者の可能
性も)。〔渡辺委員〕
- 18 -
県立美術館の運営について
1
管理運営主体
各委員の意見
指定管理者制度の導入は経費削減の施策であると思われるが、美術館運営の根幹に
関わる人事は、長期にわたる見とおしをもって文化事業を遂行するため、責任をまっとう
できる雇用体制を保障して欲しい。〔佐藤委員〕
指定管理者は、長期計画に基づく経営ができません。直営は反面規則だらけになりが
ちで重点利用のための優先度などの思い切った利用方法をセットで考えないと、使いにく
い施設になる恐れがあります。
単にどちらの管理運営方法かを考える前に、どのような運営をすべきなのかをきちんと
考えるべきと思います。〔中山委員〕
「教育普及部門など一部に直営体制の残る指定管理者制度の導入」がよいかと思いま
す。維持していくためには利益も考えた民間の手法も必要になる一方で、あまり利益追求
に走ってしまうと「大分県の」美術館としての特性が失われたり、長期的な目標が立てにく
いという問題も生じると思いますので、美術館のコンセプトに基づいて、両者のバランスを
考えることが重要になってくると思います。〔山口(真)委員〕
県立美術館は、貴重な財産(お宝)の収集・管理・調査・研究に携わる専門職員を置き、
常駐して継続的にその職務に携わることが重要で、他の専門職と異なる職性・任務を負っ
ている。大分県の歴史や文化・芸術を熟知しながら大分を愛し、大分の未来を展望できる
専門スタッフを抱えた美術館はやはり県立でなければならない。
指定管理者制度では、効率化・採算優先となったり、また管理者が変われば一貫した
理念の継承もおぼつかない。〔以上渡辺委員〕
2
館長やスタッフに求められる人物像
各委員の意見
(館長)県の考え方(美術について基本的な知識のある人。県内外に幅広い人脈を持
つ人。強いリーダーシップと経営感覚をもつ人)に加えて、美術に偏らず、あらゆる芸術に
対し感性をお持ちの方。性格は温厚で人間味あふれる方。〔板井委員〕
美術、もしくは作品制作に携わっていた方が望ましい。システムで物事を考えることしか
できない方がなってしまえば、育つ文化も育たない。県民や県議会を説得しようとする意
欲や熱意を持っている方が望ましい。
- 19 -
大分の地から、若い世代をはじめとして美術文化を育てようと努力する方、理解のある
方、地域を巻き込んで美術を広めるための企画力を有する方が望ましい。〔金村委員〕
澄川委員の提案のように館長を世界に公募する等の思い切った人事を敢行し、世界の
どこでも大分県立美術館について誇りをもって語ることのできる施策と人格を持つ館長を
願う。教育力を持ち、美術館スタッフや県の行政方や県民と積極的に関り、大分県の美術
のポテンシャルを引き出す発信できる人物である。
スタッフとしては、しっかりとした専門を持ちつつも偏りすぎず、様々な県民のニーズに
応えられる柔軟性を持った人物を望む。表現者としての経験のある学芸員、教育者として
才覚のある学芸員を強化し、大分の美術を世界に発信し若い才能を育てて欲しい。郷土
の文化価値を真に理解し、情報に左右されない審美眼をもち(ネームバリューや流行を追
うのではなく)、世界中のキュレーターと交流できる国際感覚をもって欲しい。〔佐藤委員〕
ケースバイケースで何とも申し上げられません。但し、柔軟な運営をできる、先を見通
せる方であって欲しいと思います。〔中山委員〕
大分県を理解し、大分の未来をイメージしながら新しい、夢あふれる大分新美術館を創
出できる人材。〔渡辺委員〕
3
展示運営のあり方
各委員の意見
まず所蔵品を学芸員のさまざまな専門性や切り口で県民に紹介してもらいたい。同時
に県の美術愛好者や芸術家、またその卵の作品発表の場として、援助し育てるという姿
勢で、偏りのなく機会を与えることを望む。〔佐藤委員〕
常設展の運営は重要だと思います。日本画は長期の展観は傷みの問題があり難しい
ので、定期的な入れ替えが不可避です。
反面、それは豊富な収蔵品をお客様に広く見て貰うためには、適度の頻度で入れ替え
することが必要ですので、専門家による検討にお任せすべきだと思います。〔中山委員〕
じっくりと鑑賞できる親しみやすい名画・彫刻などの展覧会と意外性のあるコンテンポラ
リーな展覧会など、変化に富んだ企画展の組み合わせ。時には生活造形(美術)展など
も。展示スペースが広くなれば、展示方法も自在に変化をもたせて魅力ある鑑賞空間を。
郷土作家コーナーの設置。田能村竹田、福田平八郎、高山辰雄、宇治山哲平、朝
倉文夫、生野祥雲斎など日本的な郷土出身作家の作品をダイジェストに見せる展示
室を設置。〔以上渡辺委員〕
- 20 -
4
関係機関等との連携のあり方
①学校との連携
各委員の意見
常設展示、企画展示にかかわらず、申請なしに小・中・高生は無料にし、未来ある子ど
もたちにこそ文化の享受を促していくことで、保護者の来館等も含め、県全体の文化レベ
ルをあげてはどうか。
大分市とその他の地域とでは、文化伝播の差が大きい。学芸員や資料等を学校等へ
派遣することにより、地方の小・中・高生にも美術文化を享受できるとよい。もしくは、県内
の大学生にも協力を仰ぐことが考えられるのでは。〔金村委員〕
学校との連携は欠かせない。子どもが芸術に触れる機会に格差のないように配慮して
欲しい。〔佐藤委員〕
小中学校、高校との共催プログラムは重要だと思いますが、学校側の硬直的な管理意
識(ただでさえ忙しい)のために、思うような連携は得られないケースも想定されます。そ
の場合は、ジュニアオーケストラと同様に、希望者の募集によるクラスの編成が効果的だ
と思います。
大学との連携は、面白い成果を生み可能性があります。美術の専攻を有する大学な
ら、どこも喜んで色々なプロジェクトを組める可能性があります。
同じ県立であることもあり、芸短はかなり前向きのご協力ができると思います。〔中山委
員〕
芸文短大・大分大等との共同企画によるアートイベント。
大学企画による小中学生対象のワークショップへの場の提供。
企画展事前鑑賞会「美術教師対象の特別鑑賞教室の開催」など。〔以上渡辺委員〕
②市町村との連携
各委員の意見
多くの芸術家、美術館が点在している市町村との情報交換、指導を積極的に行って欲
しい。〔板井委員〕
コア館とパートナー館という位置づけは、是非実現してほしい。〔山口(真)委員〕
市町村との相互交流では市町村文化担当者の美術館研修又は公民館文化サークル
への美術館スタッフによる出前講座などにより、企画展・収蔵品展を含めた美術館の広報
活動。
市町村老人会をローテーションにより、特定の展覧会に招待する。又は、希望により高
齢者優待券を発行する。〔以上渡辺委員〕
- 21 -
③ボランティアの育成・連携
各委員の意見
都心だけでなく、地域へ美術を広めるために、芸術文化短期大学が竹田に地域拠点を
置くように、他大学でも出張美術教室やワークショップなどの協力要請はできないでしょう
か。特に教員免許を取得しようとする学生にとって有意義なものになるのでは。その際の
バックアップを県立美術館がしていってはどうでしょうか。〔金村委員〕
県民の参画、成長する美術館という観点からもボランティアスタッフの育成・活動は要で
ある。美術館はいつもそこにあり何か美的体験を与えてくれる一方的なものではなく、自
分たちで興し創っていくという意識を県民に持ってもらいたい。県民が一方向に与えられ
るサービスから、双方向の互助的なサービスへの転換を期待する。〔佐藤委員〕
これは非常に重要だと思います。無償でも、尊重される人になりたいと思う方たちを育
成するのが良いと思います。〔中山委員〕
大学・短大などとの連携により、学生ボランティア募集。大学ではこれを単位化する。
〔渡辺委員〕
④企業や商店街等地域との連携
各委員の意見
商店街の空き店舗や通りを利用して、大学生や若い世代の作家たちに展覧会を開催し
てもらう。その際、企業から資金を集めてはどうか。〔金村委員〕
銀行や店舗などでアマチュアの個展をするゾーン〔中山委員〕
商店街で買い物をしたら美術館の割引券がもらえたり逆に美術館を利用することで商
店街共通の駐車券のサービス(2時間無料など)を受けられたり、相互の連携が目に見え
るわかりやすい形で実現されるとよいかと思います。〔山口(真)委員〕
地元商店街・企業と提携して企画展関係の PRコーナー常設。ミュージアムショップを設
置。地元作家の小品販売も。〔渡辺委員〕
- 22 -
資料1
芸術会館の収蔵品等
芸術会館は、種類別としては表1、主な作家別としては表2のとおり、大分県にゆかりの
ある作家の作品を中心に 4,500点以上の収蔵品をコレクションしており、収蔵品の購入額は
38億円を超え、寄贈品等の評価額も36億円に上る。
〔表1〕
H 20年度末
種
日本画
別
現在
H 21年度中
H 21年度末
購 入
寄 贈
小 計
現在
備
考
近世
361
0
1
1
362
平成16~20
近代
293
0
5
5
298
年度は購入実
468
0
5
5
473
績なし。
素描 ・下絵
1,730
0
1
1
1, 731
版画 ・写真
771
0
17
17
788
彫刻 ・立体
152
0
0
0
152
工 芸
359
0
2
2
361
62
0
1
1
63
9
0
0
0
9
346
0
9
9
355
4,551
0
41
41
4, 592
洋 画
書
典 籍
その他資料
合 計
〔表2〕
主な作家名
収蔵点数 (伝及び合作含む)
田能村竹田
書
画22
資
料35
高橋草坪
書
画16
資
料 4
帆足杏雨
書
画19
資
料 5
福田平八郎
絵
画74
版
画 2
資
料589
高山辰雄
絵
画59
版
画60
資
料140
片多徳郎
絵
画27
資
料 9
糸園和三郎
絵
画25
版
画 1
資
料 14
生野祥雲斎
竹工芸49
資
料 1
宇治山哲平
絵
画94
版
画33
資
料265
佐藤敬
絵
画27
資
料 2
注1:これら以外に 寄託品として田能村竹田の重要文化財をはじめ数百点を保管
- 23 -
①日本画(近世)
田能村竹田をはじめ、弟子の高橋草坪ら豊後南画を代表する画人の書画、資料を体
系的に収蔵するとともに、歌川派をはじめとする浮世絵版画コレクションも所蔵
②日本画(近代)
大正から昭和の京都日本画壇で活躍した福田平八郎 (大分市出身)、日展を舞台に戦後
の日本画をリードした高山辰雄(大分市出身)の初期から晩年に至る代表品を収蔵
③洋
画
大正洋画壇で注目を浴びた片多徳郎 (豊後高田市出身)、パリ美術界で活躍した佐藤敬 (大
分市出身)、抽象絵画のパイオニア荒井龍男 (中津市出身)、詩情溢れる作風の糸園和三郎
(中津市出身)、日本的抽象様式を確立した宇治山哲平 (日田市出身)らの代表的作品を収蔵
④彫
刻
明治末から昭和期の彫刻界をリードした朝倉文夫 (豊後大野市出身)、昭和戦前期に新た
な彫刻の可能性を追求した日名子実三 (臼杵市出身)らの代表作を所蔵するとともに、反
芸術運動「ネオ・ダダ」を主導した吉村益信(大分市出身)の前衛的作品等も収蔵
⑤工
芸
竹工芸の人間国宝・生野祥雲斎 (別府市出身)の代表作に加え、風景文様を巧みに取り込
んだ陶芸の河合誓徳 (国東市出身)の日展出品作、更に小鹿田焼や日田漆器なども収蔵
⑥大分県関係作家以外の作品
頼山陽の書や葛飾北斎の浮世絵、川合玉堂や前田青邨の日本画、梅原龍三郎、坂本
繁二郎の洋画、平櫛田中の木彫等を収蔵する他、W.ターナーやG.ルオーの連作版画、
バーナード・リーチが小鹿田で制作した陶器、ロダンやブールデルの彫刻なども所蔵
- 24 -
資料5
芸術会館と大分市美術館の比較表
比較項目
芸
術
会
館
1
運営方針
優れた芸術作品を紹介する。
優れた芸術作品を紹介し、県民に鑑賞の場を提供することに
よって豊かな県民性を培う。
2 総合文化施設として、芸術・文化の創造活動を促す。
鑑賞者が創造活動に参加できるようにするとともに、芸術・
文化の総合的な深化を図る。
3 自主的な学習の場を提供する。
芸術・文化活動を実践する人々が、自ら学習することのでき
る環境整備に努める。
4 調査・研究・情報提供活動を行う。
芸術・文化活動の基礎となる調査・研究活動を行い、広く県
民に情報を提供する。
5 コミュニケーションの場とする。
芸術・文化活動を通じて、県民の交流を深め、豊かな人間関
係を作るコミュニケーションの場とする。
1
資料収集方針
近世以降現代に至る間の大分県出身、ないしは大分県に関係
深い著名作家の秀作、並びに資料的価値のあるもの。
2 近世以降現代に至る間の我が国美術史上、重要な役割を果た
していると判断される作家の秀作、並びに資料的価値のあるも
の、および一定の重要な美術事象を示す資料。
3 美術史上、重要な役割を果たしていると判断される国外の作
家の作品。
4 中世以前における大分県に関係した美術作品並びに資料的価
値のあるもの。
・田能村竹田をはじめとする近世・近代初期の書画
・福田平八郎・高山辰雄を中心とする近・現代の日本画
・竹工芸を中心とする染織、陶芸漆芸などの工芸
・県出身作家をはじめとする近現代の洋画
・その他、浮世絵、近現代版画、立体・彫刻、外国版画等
大
主な作家別
田能村竹田
高橋草坪
帆足杏雨
福田平八郎
高山辰雄
片多徳郎
糸園和三郎
生野祥雲斎
宇治山哲平
佐藤 敬
平成20
平成21年度
種
別 年度現在
購入 寄贈 小計
合 計
日本画
近世
361
0
1
1
362
近代
293
0
5
5
298
洋
画
468
0
5
5
473
素描・下絵
1,730
0
1
1 1,731
版画・写真
771
0 17
17
788
彫刻・立体
152
0
0
0
152
工
芸
359
0
2
2
361
書
62
0
1
1
63
典
籍
9
0
0
0
9
書簡その他資料
346
0
9
9
355
合
計
4,551
0 41
41 4,592
平成22年3月31日現在
(注)平成16~20年度は購入なし。
書 画22
書 画16
書 画19
絵 画74
絵 画59
絵 画27
絵 画25
竹工芸49
絵 画94
絵 画27
収蔵点数 (伝及び合作含む)
資 料35
資 料 4
資 料 5
版 画 2
資 料589
版 画60
資 料140
資 料 9
版 画 1
資 料 14
資 料 1
版 画33
資 料265
資 料 2
3,832,000,000 円
美術品購入総額
(注)平成16~20年度は購入実績なし
市
美 術
館
大分市美術館は、緑豊かな上野丘公園内に位置し、
「たのし
んで・みて・まなぶ」美術館として、だれもが気軽に美術を楽
しめる場と機会を提供する。
年間を通じて所蔵の美術品が鑑賞できる常設展やさまざまな
優れた分野の美術を紹介する特別展の開催、各種講座・講演会
の開催など、子どもから大人までが生涯学習の施設として「幅
広く楽しめる」美術館の運営をめざす。
特色ある地域の美術文化情報を広く発信するとともに、開か
れた美術館として市民との協働による運営を推進する。
収集保存活動をはじめとした、調査研究活動、展示活動、教
育普及活動、広報活動という5つの活動を通じて、幅広く芸術
文化の振興につとめる。
1 豊後南画をはじめ、大分市にゆかりのある作家の優れた作
品
2 美術史的展望に立ち近・現代を中心とした芸術的に価値の
ある内外の作品
3 将来的方向として重要視される環太平洋地域の美術につい
ての作品
4 歴史的文化遺産として貴重な美術資料
・田能村竹田をはじめとする豊後南画作品
・福田平八郎・高山辰雄を中心とする近・現代の日本画
・佐藤敬らを中心とする近・現代の洋画作品
・生野祥雲斎を中心とする竹工芸作品
・その他、国内外の版画作品及び現代美術作品等
ジャンル別点数
主な収蔵品
分
ジャンル別点数
種
別
日本画
洋 画
彫 刻
工 芸
書
写 真
版 画
水 彩
素 描
デザイン
資 料
その他
合 計
平成20
年度現在
457
313
149
63
55
481
764
9
20
0
11
45
2,367
書 画54
書 画 3
書 画31
絵 画38
絵 画50
絵 画 4
絵 画 6
竹工芸32
絵 画 8
絵 画61
平成21年度
購入
寄贈 小計
合 計
15
6
21
478
9
34
43
356
1
0
1
150
5
6
11
74
0
0
0
55
0
0
0
481
9
0
9
773
0
0
0
9
1
0
1
21
0
0
0
0
1
1
2
13
0
0
0
45
41
47
88 2,455
平成22年3月31日現在
収蔵点数 (伝及び合作含む)
資 料 0
資 料 0
資 料 0
版 画 0
資 料0
版 画89
資 料0
資 料 0
版 画 0
資 料0
資 料 0
版 画 0
資 料0
資 料 0
4,504,163,000 円
資料3
設計者選定方法の比較
種別
施設外観
※どちらの場合にせよ、募集要綱の作り込み次第で、相互の利点を可能な限り取り込むことができる。
施設名称
設計者
審査委員長
作品提出件数 募集~決定
構造・規模
延べ床面積
工事費
(本体)
それぞれの特徴
選定方法
長崎県立美術館
(公募型)
日本設計・
隈 研吾
26
4ヶ月
RC造+SRC造
(一部S造)
地上3階
10,092
特徴(長所、短所)
63億
プ
ロ
ポ
ー
○設計体制、実施方法、これまでの実績、
プロジェクトに対する考え方などの技術提
案書を求め「設計者」を選ぶ。
ザ
ル
方
式
○コンペに比べると発注者が詳細な設計条件
を設定しなくて良い。
○設計者選定後の設計作業に利用者の意見
を取り入れる自由度が高い。
○具体的な設計提案は求めず、組織と人を ○実績や人員の多い大手組織事務所が比較
選ぶことを目的とする。技術提案書作成に 的有利。(中小設計事務所には多少不利)
必要な時間と費用が軽減される。
○主に書面による技術提案書の評価であるた
めデザイン能力の評価がしにくい。
十和田市現代美術
館
西沢 立衛 北原 啓司
(指名型)
青森県立美術館
青木 淳
伊東 豊雄
5
3ヶ月
S造
地上2階
2,078
8億円
393
7ヶ月
RC造+S造
地上5階
地下1階
22,682
110億
○具体的な設計提案が提出されるので、設計
○「設計案」を選び、その提案者を設計者に 者のデザイン能力を評価できる。
指名。設計条件などをあらかじめ発注者が ○中小設計事務所から大手事務所まで幅広
提示する。
い設計者の参加機会が得られる。
コ
ン
ペ
方
式
○発注者が利用者の意見を設計条件に取り
○具体的な「設計提案」作成に必要な時間 入れるなど、コンペの事前準備に時間が必
と応分の費用を発注者が用意する。
要。(面積や所要室などの細かい設計条件の
設定が必要)
金沢21世紀美術館
妹島 和世
西沢 立衛
5ヶ月
RC造+S造
地上2階
地下2階
17,093
113億
Fly UP