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低炭素社会実現に向けた 再生可能エネルギーの高度利用システム P-28

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低炭素社会実現に向けた 再生可能エネルギーの高度利用システム P-28
P-28
資源・エネルギー
低炭素社会実現に向けた
再生可能エネルギーの高度利用システム
■ はじめに
東日本大震災以降、安定したエネルギー供給の重要
性が社会全体からの視線を集め、再生可能エネルギーは
再び世間の脚光を浴びている。一方で、再生可能エネル
ギーは供給面における不安定性や、貯蔵・輸送の困難性
などの問題がかねてより指摘されてきた。これら諸問題を
解決し得る技術は着実に開発・実用化され始めているが、
コストに代表される残された課題が再生可能エネルギー
利用の大規模な普及に対して大きな妨げとなっている。
これに対し、産業技術総合研究所では平成26年4月1日
に「福島再生可能エネルギー研究所」を福島県郡山市に
開所し、再生可能エネルギーの早急かつ広域な普及を実
現するための様々な研究課題に取り組む。本内容では、
水素キャリアを基軸とした再生可能エネルギーの高度利
用システムについて概説する。
■ 水素キャリアを用いたエネルギーシステム(図1)
1.システム概要
本システムでは、太陽光や風力など自然エネルギーに
より生成された電力を用いて水を電気分解する。電気分
解により製造された水素は水素キャリアの一つであるメチ
ルシクロヘキサン(以下、MCH)として液体貯蔵される。水
素利用時にはMCHから水素を取り出し、ディーゼルエン
ジンに供給して電力・熱へとエネルギー変換される。
2.システムの特徴
本システムでは既存技術の高度利用による再生可能エ
ネルギーの早急かつ広域な普及を目指す。
(a) 再生可能エネルギーからの水素製造
再生可能エネルギー由来の電気を用いて水を電気分解
し、水素を製造する。再生可能エネルギーの供給変動に
応じて稼働させる電解槽を最適化することにより、高効率
な水素製造を実現する。
(b) 再生可能エネルギーの貯蔵・輸送
再生可能エネルギー由来の電気や水素を大量貯蔵す
るためには大型の蓄電池あるいは高圧ガス容器が必要で
ある。しかしながら、エネルギーの大量貯蔵及び輸送を考
えると、これらは現実解とは言い難い。
本システムでは触媒を介してトルエンと水素を反応させ、
常温・常圧下で液体であるMCHとして水素を貯蔵・輸送
する。エネルギー利用時にはMCHから水素を取り出し、ト
ルエンはMCH製造時に再利用する。トルエンは化学製品
として既に広く普及しており、必要な資源量は十分に確保
代表発表者
所
属
松本 雅至(まつもと まさし)
(独)産業技術総合研究所
新燃料自動車技術研究センター
新燃料燃焼チーム 特別研究員
問合せ先
〒305-0032 茨城県つくば市並木 1-2-1
TEL:029-861-9334 FAX:029-861-7863
[email protected]
されて、また燃料として使用せずリサイクルして使用する
ため、環境負荷が小さい。以上より、本システムでは既存
設備の大幅な変更を必要とせずに大量の水素を容易に
貯蔵・輸送することが可能である。
(c) 再生可能エネルギーの高度利用
熱電併給システムとしてディーゼルエンジンを採用する
ことで技術的信頼度が確保され、加えて低コストかつ長寿
命が期待される。水素が不足した際にもディーゼルエンジ
ンはバイオ燃料や天然ガス・軽油といった様々な燃料で
駆動可能であるため、緊急時におけるエネルギー供給の
安定性も高い。また、排熱を触媒反応に利用することでエ
ネルギーロスを低減可能であり、全体的に高効率なエネ
ルギー供給システムとなる。
■ 関連情報等(特許関係、施設)
施設:産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所
(福島県郡山市待池台2丁目 郡山西部第二工業団地)
(a) 水素製造
電気
H2
電解槽
水素
(b) 水素貯蔵・輸送
水素吸着触媒
C7H8+3H2? C7H14
MCH
トルエン
トルエン貯蔵
C7H8
(MCH)
MCH貯蔵
C7H14
MCH
MCH
トルエン
脱水素触媒
C7H14? C7H8+3H2
水素
排熱利用
バイオ燃料等
H2 (c) 水素利用
電気
ディーゼルエンジン
図 1 水素キャリアエネルギーシステム
■キーワード: (1)再生可能エネルギー
(2)エネルギー貯蔵・輸送
(3)水素キャリア
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