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第3回日蘭学生会議報告書 - WordPress.com

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第3回日蘭学生会議報告書 - WordPress.com
序章
団体概要……………………………………………………………………………………………5
団体の沿革…………………………………………………………………………………………6
日本側代表挨拶……………………………………………………………………………………7
オランダ側代表挨拶………………………………………………………………………………9
顧問挨拶……………………………………………………………………………………………10
関係者挨拶…………………………………………………………………………………………11
第1章 第3回日蘭学生会議について
概要…………………………………………………………………………………………………14
詳細日程……………………………………………………………………………………………16
参加者名簿…………………………………………………………………………………………17
第2章 事前活動
第2回日蘭学生会議報告会………………………………………………………………………20
冬期英語会…………………………………………………………………………………………22
春期英語会…………………………………………………………………………………………23
授業「英語で考える」 ……………………………………………………………………………25
夏期英語会…………………………………………………………………………………………27
学内発表会…………………………………………………………………………………………28
第 3 章 本会議
The relation between youth and traditional culture in modern culture………………30
Nationalism in Japan and the Netherlands…………………………………………………32
Exporting culture as a means of the national strategy…………………………………34
Living together: multiple cultures or integrated unique one? …………………………37
第 4 章 講義
“Intercultural Communication” by Mr. Jeffrey Berglund……………………………40
“Sake brewing” by Mr. Ad Blankestijn………………………………………………………42
2
団体概要
日蘭学生会議は、2009 年 11 月に日本とオランダに関心のある学生が英語で真剣に議論
できる場をつくること、及び、両国を中心とする文化・学術交流を促進することを目的と
して、大阪大学の学生とオランダ・グローニンゲン大学の学生によって設立された。
日本とオランダの関係は 17 世紀初頭まで遡ることができ、江戸時代に日本に取り入れら
れた「蘭学」は、19 世紀以降の日本の発展を担った人材育成で多大な役割を担った。この
ように、日本とオランダの関係は他国に比べても密であった。日蘭学生会議では、国際化
が進む中で、もう一度この日蘭関係に立ち返り、両国に関心のある学生が様々な議論を通
して、今後の日蘭関係、そして国際関係を捉え直していく。
本団体は、”Develop, Exchange and Propose the Idea”(下図)を理念として掲げてい
る。この理念に基づき、日本とオランダ、いずれの社会でも生じている普遍的な問題に対
して、自らの考えを深め、議論を通して見つめ直し、そして社会に発信していくことを目
指している。参加者は会議に関する活動を通して、広く国際感覚を身につけ、自分と異な
る背景を持つ人々と対話する力を身につけていくとともに、この会議を通して得た成果を、
社会の発展のために役立てていく。
会議テーマについて事前に研究し、
より深く、多角的に考察することで
自分のアイデアを磨く。
Develop, Exchange の過程を経て考
え出されたアイデアを学内外に発
信する。様々な人からアイデアに対
する意見をもらうことで、新たな探
究、発展へつながる。
会議において、発表と議論を行う。両国の制
度、現状を相互の視点から捉えなおすととも
に、学生独自の視点で検討し、より洗練され
たアイデアを生み出す。
団体の沿革
2009 年 11 月
日蘭学生会議(Holland - Japan Student Conference)発足
2010 年
4月
第 1 回日蘭学生会議
7月
関西日蘭協会年次総会にて第 1 回会議の成果を報告
8月
在大阪・神戸オランダ領事館、大阪府、大阪市を訪問し、成果を報告
10 月
英語の団体名を JNSC(Japan-the Netherlands Student Conference)に
変更
在大阪・神戸オランダ領事館とともに、日蘭同窓会ネットワーク(The
Japan Netherlands Alumni Network: JANAN)事業開始
2011 年
1月
「国立大学法人 大阪大学 80 周年記念事業学生イベント」に採択
大阪大学内にて第 1 回日蘭学生会議の成果を報告
9月
11 月
第 2 回日蘭学生会議
第 2 回日蘭学生会議の学内報告会を開催
大阪・中之島にて第 2 回日蘭学生会議の学外報告会を開催
12 月
GLOCOL プレゼンコンテスト審査員特別賞受賞
冬期英語会(~2012 年 1 月)
2012 年
3月
春期英語会(~4 月初旬)
4月
大阪大学にて一般教養科目「英語で考える」開始
7月
夏期英語会(~8 月上旬)
8月
学内中間発表会
学内発表会
第 3 回日蘭学生会議
9月
第 4 回日蘭学生会議の開催を日蘭双方の意思で決定
11 月
第 3 回日蘭学生会議の学内報告会を開催
12 月
大阪・中之島にて第 3 回日蘭学生会議の学外報告会を開催
日本側代表挨拶
私たち日蘭学生会議は、今年で発足 3 年目を迎え、3 回目となる会議は大阪大学で開催
された。今回の会議で得たことを伝え、今後も当活動を続けていくため、報告書として本
書を作成する。多くの方に本書を手に取って頂けたら幸いである。
私は、2 年前に日蘭学生会議のメンバーとなり、昨年度オランダで開催した第 2 回会議に
も参加した。元々、国際交流に関心があったが、「全活動を学生主体で企画・運営する」と
いうモットーに、他の国際交流団体とは異なる魅力を感じ、参加を決めた。学生主体とい
うものは、想像以上に難しく、活動費を捻出するために財団の助成金へ申請を行うことや、
場所の手配、講演者の方への依頼など、学生生活ではなかなか体験できないことが多くあ
り、その度にメンバー全員で頭を抱え、挑戦を続けた。年に 1 度の会議を開催するため、1
年程の準備期間を要し、時にはアルバイトや学業等との兼ね合いに各々が悩むこともあっ
たと思う。しかし、同時に私は昨年の第 2 回会議に参加した際に、異なる背景を持つ人と
の意見交換の面白さを改めて実感し、また、昨年築くことのできたオランダ人学生とのネ
ットワークが、切れることなく第 3 回会議へと続いていくことを非常に嬉しく思い、代表
としてより多くの人を当活動に巻き込んでいきたいと考え、活動に参加していった。
今回のテーマは、”National identity in the modern, globalized world”であった。グロ
ーバル化が進む今日を生きる私たちにとって、その国特有の文化、アイデンティティとは
どのような存在なのか、どのようであるべきなのか、日本・オランダ双方の事情を知り、
意見を交わし合うことで、文化の混在が広がり得る将来に向けて学生目線の考えを持つこ
とが重要だと思い、このテーマを設定した。
テーマを決定する際に、私たち日本人にとって「国民性」という言葉はあまり馴染みがな
く、議論することが難しいのではないかという意見が出た。確かに、日本は島国であり、
他国と陸続きで国境を有しているオランダと異なり、他国の文化に接する機会があまりな
いため、日常的に自らの国民性を意識することが少ないと考えられる。しかし、そのよう
なテーマであったからこそ、会議を通じてオランダと自国を照らし合わせ、日本について
もより深く考えることができたのではないかと思う。
現在では、インターネット等を使い、他国の文化に容易に触れることができる。そのよ
うに多くの文化が混在する世界を、”problem”と捉えるのか”chance”と捉えるのか、会議
の最後に問いかけてみたところ、ほとんどの学生が”chance”であるという意見を持してい
ることを知った。移民問題や、文化政策等様々な問題があるが、それらの解決策を模索し
つつも、多様な文化に触れることのできる世界をポジティブに捉えていくことが重要であ
第 3 回日蘭学生会議概要
2012 年 8 月、14人のオランダ人学生が来日し、大阪大学の学生と共に学生会議及びス
タディツアーを実施した。その概要を以下に記す。
日時
:2012 年 8 月 18 日~2012 年 8 月 24 日(7 日間)
場所
:日本(大阪、京都、奈良、広島)
メインテーマ:National identity in the modern, globalized world:
a problem or a chance ?
<目的>
1.文化とは何か、どう使うべきなのか、そして何を導くのか
グローバル化が進む中、人の生活圏は益々広がっていく。それにより様々な文化を知り、
新たな体験を得て、新たな世界が開けていく。しかし、文化の接触は時に大きな摩擦を引
き起こしている。勿論日本も例外ではなく、アジア系移民の増加、伝統文化の衰退など様々
な問題がある。そこで、イスラム系移民の増加などの文化的問題を抱えるオランダの学生
達と率直な意見交換を行うことで自分たちの考えを鮮明なものしていく。更に日本の文化
的側面が表れている地域を訪問することで、
「文化」を実際に体感し、机上の議論では得ら
れない深い理解を導く。そして、我々は自国及び他国の文化を今後どのように扱っていく
べきなのか、今回の試みを通して得られた様々な見識を学生の視点から社会へ提言してい
く。
2.国際社会で活躍できる人材の育成
参加者は、会議での議論やスタディツアーを通して、広く国際感覚を身につけ、自分と
異なる背景を持つ人々と対話する力を養う。国際社会で活躍するためには、英語力は勿論
のこと、自国の文化や状況にも精通し、また、多様性を受け入れる心構えも必要となると
考えられる。そこで、本会議を通してできる限り早期に「場数を踏む」ことでそれらの必
要性を実感し、将来様々な場所で、日本という枠に捉われることなく活躍する人材を育成
する場を提供する。また、会議参加者だけでなく、それ以外の学生や社会人にも視野を広
げる機会を提供する。具体的には、学内・学外で報告会を開催し、学生だけでなく、社会
人を巻き込んで議論を行う。更に、今回の会議では東京大学など他大学の学生の参加を募
集することで、国内の学生がお互いに刺激を与え合い、より一層の成長が期待できる。
3.日蘭を中心とする学生主体の文化学術交流の促進
日本とオランダの関係は深く、19 世紀以降の日本の発展を担った人材育成に「蘭学」が
果たした役割は非常に大きい。大阪大学は「地域に生き、世界に伸びる」をモットーに世
界各国の大学と国際交流を行っているが、中でもオランダのグローニンゲン大学との関係
は歴史的に古い。2002 年に正式にグローニンゲン大学との交流協定を締結し、さらに 2005
年にグローニンゲン大学内に欧州研究の拠点としてグローニンゲン教育研究センターを開
設するなど、強い結びつきを持っている。しかし、これまで企業間や研究者間での交流は
着実に進められてきたが、学生による交流は依然部分的な活動に留まっているものが多か
った。そこで、本会議を通して学生主体の交流を促進し、日蘭関係の更なる発展を目指す。
<内容>
第 3 回日蘭学生会議は、本会議、特別講義、スタディツアーの 3 つで成り立っている。
本会議では、メインテーマに関連する 4 つのディスカッションテーマが設けられ、それ
ぞれについて日蘭双方からのプレゼンテーション及びディスカッションが行われた。ディ
スカッションテーマは“The relation between youth and traditional culture in modern
culture”,“Nationalism in Japan and the Netherlands”,“Exporting culture as a means
of the national strategy”,“Living together : multiple cultures or integrated unique
one?”の 4 つである。特別講義では、Jeffrey Berglund 氏によるワークショップ形式の講
義や老舗日本酒屋の海外市場セールス取締役の Ad Blankestijn 氏による講義を受けること
ができた。また、スタディツアーでは日本の文化的・歴史的背景に直接触れることを目的
に大阪だけでなく京都や奈良、広島を訪れ、日蘭の文化的な違いや共通点について学んだ。
これらの活動を通じて、オランダの学生たちと親睦を深めると同時に、上記の目的の達
成を図った。この 3 つの活動の詳細は別章に記す。
詳細日程
日付
8/18
8/19
スケジュール
場所
11:00~11:30
開会式
大阪
12:00~14:30
和菓子作り体験
15:00~18:00
特別講義① Jeffrey Berglund 氏
18:00~
歓迎会
9:45~17:30
スタディツアー
京都
(平安神宮、清水寺など)
8/20
10:30~11:45
特別講義② Ad Blankestijn 氏
13:00~17:30
本会議
① The
relation
between
youth
大阪
and
traditional culture in modern culture
② Nationalism in Japan and the Netherlands
8/21
9:55~16:40
本会議
大阪
③ Exporting culture as a means of the
national strategy
④ Living together: multiple cultures
or
integrated unique one?
8/22
17:00~17:30
閉会式
17:30~
送迎会
9:00~
スタディツアー
大阪
(コリアタウン、オランダ総領事館)
8/23
7:35~21:45
スタディツアー
広島
(原爆ドーム、平和記念館、宮島、酒造通り)
8/24
10:00~17:30
スタディツアー
(興福寺、東大寺、格子の家など)
奈良
参加者名簿
1. 日本側参加者
氏名
所属
学年
役職
宮原 翔子
人間科学部
B4
代表
高木 彩奈
歯学部
B2
副代表
中村 穂佳
外国語学部
B1
会計
川谷 真以
外国語学部
B2
渉外
久保田 彩
人間科学研究科
M1
大西 史香
外国語学部
B4
藤本 隆史
工学部
B4
安部 真由香
基礎工学部
B3
清水 和希
外国語学部
B3
中村 麻莉奈
経済学部
B3
西本 慎之介
文学部
B3
古川 恵子
工学部
B3
KIM HALIM
人間科学部
B2
斉藤 理沙
法学部
B2
辻 葉子
外国語学部
B2
水川 佐保
人間科学部
B2
光井 友里
外国語学部
B2
米田 晃子
外国語学部
B1
西山 慧太
人間科学部
B1
由谷 晋一
文学部
B1
大辻 香澄
東京大学
M2
横山 寛和
岐阜大学
B4
2.オランダ側参加者
氏名
学年
Filip Vedder
M2
Anne Pruim
M2
Noor Wessels
M1
Renée koolschijn
M1
Corné Bekkers
B3
Dirk Jelle van der Zee
B3
Gidon Gerrits
B3
Lisa Pama
B3
Lisa Schäfer
B3
Mark Venema
B3
Roelof Hars
B3
Thijs Lepstra
B3
Thomas Eshuis
B3
Anne van Elteren
B2
冬期英語会
<概要>
日 時:2011 年 12 月 27 日、2012 年 1 月 8 日
場 所:大阪大学豊中キャンパス GLOCOL STUDIO
大阪大学豊中キャンパス 総合図書館
テーマ:”I” dentity ~What makes me myself?~
<内容>
本プログラムは、日蘭学生会議の活動の一環である「自分と異なる背景をもつ人との対
話」を目的として、大阪大学の冬季休暇中に2日間の日程で開催した。プログラムは「死
刑廃止」
・「小学校英語教育」・「外国人参政権」についてのディスカッションとディベート
で構成した。具体的には、1日目にアイスブレーキングアクティビティと各テーマに関す
るディスカッションを行った。参加者同士の交流を深めるとともに、テーマに関する意見
交換を図った。2日目は、各テーマで賛成・反対に分かれてのディベートとグループディ
ベート内容の発表を行った。それぞれが自分の意見をぶつけながらも、相手の意見に耳を
傾け、議論を深めた。
年末年始の多忙な時期にもかかわらず、プログラムを通して 15 名程の参加があった。参
加者の中にはプログラム日程外にもグループミーティングを設け、ディベート準備を行う
などして積極的な姿勢が見られた。英語でのディスカッション、ディベートに不慣れな学
生が四苦八苦する場面も見られたが、それでも自主的に議論に参加しようとする姿勢が見
られた。実際、
「ディベートをするにあたり、多くのアドバイスをもらえたことやボキャブ
ラリーを増やせたこと、知識や興味を得られたことがとっても貴重で、有意義な時間にな
った。
」
、
「死刑の議論の際、人によって感情や人権など優先するものが異なることが驚きだ
った。
」といった参加者の声があった。また、プログラム 2 日目にはアメリカ人英語教師を
招いてディベートのジャッジを担当して頂いた。ジャッジに加え、各々の英語に関する指
摘を頂き、参加者だけでなく運営側にとっても今後の英語勉強の指針を得ることが出来た。
今回の英語会の運営は1、2年生が主体となって行った。企画を主体的に進めた経験の
少ないメンバーが多く、プログラム準備や進行で課題に直面したものの、よりよい運営の
在り方について考えるよい経験となった。同時に、団体を運営する自覚をそれぞれが持ち
始める良い機会ともなった。
(文責:木下)
春期英語会
<概要>
日 時:2012 年 3 月 26 日、29 日、4 月 2 日、8 日
場 所:大阪大学豊中キャンパス 開放型セミナー室
テーマ:Media and Communication
<内容>
本英語会は、
「英語でのディスカッション・プレゼンテーション技術の上達」・
「様々な背
景や考え方を持つ学生との議論を通じて自らの視野を広げること」を主な目的として日蘭
学生会議のメンバー以外の学生を含む 16 名で行った。そして、全 5 回を通じて「メディア
とコミュニケーションの在り方」に焦点を当て、英語を用いて活動を行った。1 日目はグル
ープ分けや最終日のプレゼンテーションのテーマ分け、さらに初対面の学生も数多くいる
為、アイスブレーキングを通じて自己紹介を行った。2 日目からはグループ毎に別れてプレ
ゼンテーションの作成を行った。各グループはメインテーマである「メディアとコミュニ
ケーションの在り方」から派生した幾つかのサブテーマのうち、「メディアリテラシー」・
「SNS などの新メディアと旧メディア」などをプレゼンテーションのテーマとした。最終
日には各グループが作成したプレゼンテーションを発表し合い、その発表に基づき議論を
深めた。
授業「英語で考える」
<概要>
日
時
:2012 年 4 月~7月 毎週木曜日
場
所
:大阪大学豊中キャンパス
タイトル
:英語で考える
サブタイトル:Thinking about Culture and Identity
<内容>
2011 年前期、日蘭学生会議は大阪大学の共通教育の中で、大阪大学初となる学生主体の
授業を開講した。それに引き続き 2012 年前期、日蘭学生会議の理念である“Develop,
Exchange, Propose the idea”を実践する場を設ける為、また、第 3 回日蘭学生会議での
議論内容を生かしてより深い議論を行う為に、2 回目となる授業の開講を行った。形式は「コ
ンパクトな議論を行う」、「次世代へ活動の継続を図る」という点から、少人数ゼミである
「基礎セミナー」の形を採用した。授業は受講生 14 名と日蘭学生会議のメンバー10 名の
計 24 名によって行われた。
授業は主に、4つのグループに分かれてのグループワークで構成された。各グループの
テーマは、本授業が第 3 回日蘭学生会議での内容につながることを念頭に置き、以下のも
のとした。
1. The relation between youth and traditional culture in modern culture
2. Nationalism in Japan and the Netherlands
3. Exporting Culture as a means of the national strategy
4. Living Together : multiple culture or integrated unique one?
本授業では、発表はもちろん毎回のディスカッション等、相当な事前準備・学習が必要
とされ、受講生にとっては非常にハードなものであった。全てが英語で進行する授業に当
初は戸惑いを感じていた受講生もみられたが、議論を重ねていく中で各々が自らの課題を
見出し、最終的にはどのグループも非常に高度なプレゼンテーションを行った。
また、昨年に引き続き 2 回目の基礎セミナーの開講であったが、運営メンバーにとって
も、1 つの授業を運営することの難しさを感じさせられた。しかし、壁にぶつかりながらも
この貴重な経験を通じ、多くのことを学ぶことができた。
本授業は、受講生・運営メンバー双方にとって、英語運用能力向上の機会にとどまらな
い、非常に有意義なものであったといえるだろう。
<授業の目的>
「文化とアイデンティティ」に関する様々な問題について、英語を用いて議論・発表で
きる力を養う。グローバル化が進む今日、国や国民性、文化といったアイデンティティと
は一体どのようなものなのか問い直されている。このような状況の中で、島国である日本
と他の国と陸続きであり多くの移民を受け入れているオランダにおいて、文化とアイデン
ティティがどう考えられているかを調査し、グローバル化が進行する現代においてこれら
はどういったものであるべきかを考える。
<到達目標>
深く研究する力、独自のアイデアを相互に検討する力、発信する力。以上の 3 つの力を
養うことを目標とする。
<講義スケジュール>
日時
内容
日時
4/12 オリエンテーション
6/14
4/19 3枚のスライドで自己紹介
6/21
4/26
5/10
講義「プレゼンテーションの作り方」
グループワーク
グループワーク
ディスカッション
5/17 トレーニングセッション(構想発表)
5/24
5/31
グループワーク
”cultural issue”についてのディスカッション
グループワーク
ディスカッション
6/29
7/5
7/12
内容
グループワーク
ディスカッション
中間発表
グループワーク
ディスカッション
講演
グループワーク
ディスカッション
7/19
最終発表①
7/26
最終発表②
(文責:斉藤)
学内発表会
<概要>
学内中間発表会
日 時:2012 年 8 月 5 日
場 所:大阪大学豊中キャンパス 開放型セミナー室
学内最終発表会
日 時:2012 年8月 12 日
場 所:大阪大学豊中キャンパス 開放型セミナー室
<内容>
本発表会は、本会議に先立ち、プレゼンテーションの向上という目的のもと、計 2 回開
催された。発表会では、プレゼンテーションを行い、質疑応答ののち、グループ毎に発表
の仕方やプレゼンテーション内容についての改善点などを話し合った。緊張や準備不足で、
おもうようにいかないことも多々あったものの、問題点や課題点が浮き彫りになり、それ
をもとにしてプレゼンテーションを更に向上させることが出来た。
(文責:藤本)
<ディスカッション・考察>
オランダと日本の家族構成について話し合った。日本では 3 世代家族よりも核家族が主
流なってきているのに対し、オランダでは昔から、親と子の 2 世代で生活する家庭が多い
ということであった。そこで、3 世代家族と核家族についてどちらが好ましいのか議論した。
すると日本側は、3 世代家族では祖父母の知恵を学ぶことができ、年上の人を敬う気持ちが
育つといった意見や、母親が働いていても祖母が子供の面倒を見てくれるという意見など、
3 世代家族を支持する人が多かった。しかし、オランダ側は歴史的に 3 世代で構成される家
族構成に馴染みがないようで、祖父母世代との価値観などの違いを心配する声が上がった。
また、職場と家が近い家庭が多いため、共働きでも父親・母親の両方が、学校から帰宅し
た子供の面倒を見る余裕があり、3 世代で暮らす必要性をあまり感じていないようだった。
さらに、オランダ側のプレゼンテーションで取り扱われていた「伝統」に関しても議論した。
日常において若者が伝統文化を強く感じることは少なく、どちらかと言えば現代的な文化
に惹かれてしまうという点は、オランダ側と日本側において共通のものであった。かとい
って、長く培われた伝統文化を捨てても良いという意見はなく、催事や祝日といった特別
な日に少しでも伝統文化に立ち返れば良いのではないか、という意見で一致した。
(文責:安部・由谷)
Exporting culture as a means of the national strategy
<日本側のプレゼンテーション>
テーマ「戦略的文化輸出」を「他の自国産業に有益な波及効果をもたらす文化の輸出」
と定義づけ、これからの文化輸出の要として独自のコンテンツ産業でありかつ世界で大き
な広がりを見せるアニメに着目。まず、その持つ可能性が十分に発揮されていない現状を
米仏韓といった自国文化振興色の強い国々と比較することで、日本のアニメ産業に対する
政府による煩雑な管理システム(アニメという一つのコンテンツに対し三つの省庁が管理
を分担している状況)に問題があると分析し、その統括によって輸出のスムーズ化が可能
になるであろうと指摘。それを前提に、次いで他の自国産業を利する案を提示することで
理想的な“戦略的輸出”の姿を構想した。一方で他国への影響を顧みない過度な文化普及活動
の危険性を指摘し、節度をわきまえた戦略的文化輸出の実現を目的にすることが望ましい
とする。
<オランダ側のプレゼンテーション>
歴史的に多民族国家であり国際化を方針に置くオランダでは、政府、芸術、科学それぞ
れが独立した分野として鼎立し互いに直接的な干渉をせず、よって政府が文化的事業に関
わる際はそのほとんどが補助金をそれぞれの専門的な機関に委託するといった形で行われ
る。オランダ側のプレゼンではまずそうしたオランダ社会の実態について説明し、次いで
水利事業、ダッチデザイン、そして観光業といったオランダを代表する文化の輸出がどの
ように戦略的に行われているかについて述べた。前者の二つについてはもとよりの名声を
利用した輸出を実現させており、それぞれの技術を受け継がせていくための教育機関や寄
付のシステムについて紹介。観光業については広報部や観光業者が国によって異なるオラ
ンダのイメージを分析し、それぞれに沿った広告やイベントを行うなど、需要に合わせた
供給という効率的な文化発信のあり方を述べ、三者の仕組みのどれもが政府からの補助金
に依るところが大きいとする。
<ディスカッション・考察>
日本とオランダ、それぞれ“単一民族国家”
・
“多民族国家”という対照的な社会状況や、ある
いはそれに少なからず関連して違いを生み出す双方の価値観。それは国民の意思を反映し
た各々の政府のスタンスの形成に直接的に影響し、文化輸出に対する姿勢の相違点を生み
出している。日蘭双方のプレゼンの対照から見られるこの決定的な政府の立ち位置の違い、
ダ国内でイスラムを非難する著名人は多い。自国の文化を維持し続けるイスラム系が、文
化の異なるヨーロッパで共存していくことは可能だろうか。今後のオランダへの移民とし
て増えてくるのはアフリカ系だと彼らは述べた。また、EU に所属している限り移民の増加
は防げないとも述べた。今後彼らはどうしていくべきであるのか、この点がオランダ側の
疑問点であった。
<ディスカッション・考察>
他民族が共生していくか、1つの文化に融合させるべきか、という問いに対して、日本
人もオランダ人もほとんどの人が共生していくべきだと答えた。益々グローバル化してい
く社会において、他民族と関わりあってお互いを尊重しあって生きていくことは必須であ
ると考えたからだ。しかし、一部の日本人は文化を尊重するために融合させるべきだと答
えた。また、日本人側のプレゼンテーションにおいて、韓国人が日本社会で過ごしていく
ために、民族学級(韓国人のための授業を開講している日本の学校)か、朝鮮学校(日本にあ
る朝鮮人のための学校。生徒は皆朝鮮人)のどちらを増やすべきか、という問いに対して、
民族学級を増やすべきと全てのチームが答えた。韓国人を日本の文化に強制的に融合させ
るのではなく、日本人が韓国人の文化を過度に尊重するのでもなく、韓国人、日本人双方
が互いの文化を尊重しあって生活していくべきだという結論に至った。これは日本と韓国
だけでなく、全世界全民族に対して言えることだ。オランダ側のプレゼンテーションで提
示されていたが、オランダ国内でイスラム系移民が非難されている。それはイスラム系が
オランダの文化を無視し自国の文化を誇示し続けているからだという。
(文責:古川・中村麻莉奈)
京都
日
時:8 月 19 日
概
要:約 8 人毎にグループに分かれて、観光名所を巡る
参加人数:日本側 18 人、オランダ側 14 人
〈ねらい〉
日本側の学生と一緒に京都という日本の伝統が根深く残っている場所を見てまわること
で、オランダ側の学生に日本の長い歴史を肌で感じてもらう。また、伝統的な文化だけで
なく新しくできた日本の文化、日本人の日常生活をオランダ人に知ってもらう。
同時に日本人側も日本の伝統的な建築物や慣習を説明したり、普段顧みることもない日
常生活の中の文化を改めて考えたりすることで、新たな気づきを得る。
オランダと日本の文化の共通点や相違点を知り、アイデンティティについて考える。
大阪
日
時:8 月 22 日
概
要:生野コリアンタウン見学→オランダ総領事館表敬訪問
参加人数:日本側 18 人、オランダ側 14 人
<ねらい>
本会議において、日本側のプレゼンテーションで取り上げられた大阪生野区にあるコリ
アンタウンを訪れ、
「多文化共生」の在り方について学ぶ。続いて、オランダ総領事館を表
敬訪問し、日本で働くオランダ人の講演を聞き、オランダと日本の交流について学ぶ。
<行程>
JR 鶴橋駅から徒歩で生野コリアンタウンへ向かった。韓流ブームやスポーツ選手の活躍
により、コリアン文化がますます身近になる中で、我々はそこに行けば「本物」のコリア
ン文化に出会えるのではないかという期待を少なからず抱いていた。
しかし、その考えは間違っていた。実際にコリアンタウンに足を踏み入れると、ハングル
で書かれた看板を掲げた店が立ち並んでいるものの、日本語が併記されているものも多い。
昼食のために入った料理店の店員は、朝鮮語も日本語も流暢に話していた。
午後に行われたオランダ総領事館への表敬訪問では、領事館業務でお忙しい中、急な依
頼にも関わらず約 2 時間にもわたり私たち学生に講演と質疑応答を行っていただいた。講
演内容は、本会議の主テーマである「文化とアイデンティ」に沿ったもので、日本という
「外国」に住む 1 人の「外国人」という視点から、自分自身や子供のオランダ人としての
文化やアイデンティティを保ちつつ、外交官として日本に適応していく難しさを実体験も
含めてお話していただいた。その中でも、自分の子供がオランダの文化や言語を保ちつつ
も、周りの日本人の子供たちと特に問題なく仲良く生活をしているというお話は、多文化
共生を考える上で非常に興味深いものであった。
<感想>
今回のスタディツアーにおいて、コリアンタウンを日本の文化として体験できた。これ
は、オランダ側の学生と共にコリアンタウンを訪れたことによるところが大きい。我々は
「多文化共生か、統合か」ということを議論してきたが、コリアンタウンには歴史的な現
実としての共生がある。そこには、日本文化とコリアン文化が混じり合った、多様な文化
奈良
日
時:8 月 24 日
概
要:興福寺五重塔→からくりおもちゃ館→格子の家→ささやきの小径→東大寺
参加人数:日本側 10 人、オランダ側 14 人
<ねらい>
からくりおもちゃ館や格子の家を訪ね、日本人の伝統的な生活様式を直接手に取って見
ることで、日本人のアイデンティティを肌で感じてもらう。また、世界最大の木造建築で
ある東大寺やその周辺を見て回り日本の伝統建築についても考えてもらう。
第三回日蘭学生会議を振り返り
外国語学部 清水 和希
猛暑の中、両国学生が熱い議論を繰り広げた約 1 週間を中心に、準備や勉強会そして報
告会などを含めると 1 年間にも渡る大きな事業が幕を閉じた。私は今、この長期にわたる
事業に企画から運営にいたるまで中心メンバーとして参加できたことを誇りに思う。また
同時に、まだまだ未熟な私たちを支えていただいた先生方や後援企業、領事館関係者の皆
様そして同じ目標のもと共に協力し助け合ってきた日蘭学生会議のメンバーに感謝したい。
本振り返りではこうした感謝の意と共に今回の会議を通して私が得たものを紹介し振り返
っていく。
まず、今回の会議で私は今回の会議テーマでもある「文化とアイデンティティ」を、会
議全体を通して肌で感じることができた。このことは今回の会議での私の得た最も大きな
収穫であると思う。日本人とオランダ人という文化や価値観が全く違うもの同士が一緒に
同じものを作っていくうえで様々な問題点に直面した。第一に、
「言葉」である。お互いに
母国語ではない英語を使ってのコミュニケーションでは、どうしても英語という言葉では
完璧にはお互いの感情を伝え切れなかった。しかし、そうした局面でも私たちは同じ若者
として英語という言葉だけではなく、自分の持ちうるすべての方法を使って感情を伝えよ
うと努力した。また自己主張の仕方の違いは会議中各場面で現れ、私たちに困難さを感じ
させると共に、異文化・他言語間のコミュニケーションの本質を垣間見ることができた気
がした。
また今回サブリーダーとして、会議全体の管理をさせていただいたことで、国の文化や
アイデンティティとは関係なく各々個性をもった人の集団で、ものごとを達成することの
大変さを感じた。言うまでもなく、人にはそれぞれ得意不得意、そして好き嫌いがある。
そうしたなかで、意思の統一をはかり会議を順調に進めるという仕事は非常に困難な部分
もあったが、達成感もあり自分自身を成長させる良い経験となった。
このように、第三回日蘭学生会議で得たものは、達成が容易ではなかった分、私の今後
の人生においても素晴らしい糧となる経験であった。末筆ながら、この日蘭学生会議が今
後も、学生たちが自由に考えを深め議論し社会に還元していける場所として繁栄し続けて
いくことを祈っております。
日蘭学生会議という団体に所属したことで学んだこと
人間科学部 西山 慧汰
私は、英語で大きなことにチャレンジできることを魅力に感じて、この日蘭学生会議に
参加しました。この会議は、自身の未熟さを様々な点で痛感させられる場となりました。
至らなさを感じた点を大きく分ければ、英語力、事務処理能力、発表能力の3つです。
まず英語力については、会議初日にオランダ側の学生たちとコミュニケーションを図ろ
うと試みて、彼らの話す英語が想像以上に聞き取れず戸惑いました。他愛のない会話をす
るにも何度も聞き返してしまうことや、ディスカッションで相手の主張が理解できずに円
滑な進行に支障をきたしてしまうことがあり、相手に申し訳なかったです。会議を通して
自分の英語がまだコミュニケーションツールとして不十分であることを痛感しました。
しかし、英語力以外にも自分の未熟な部分が露呈する場面はたくさんありました。参加
当初は、自分が英語を駆使してオランダ人と議論を行うという点にのみ目が向きがちでし
たが、実際に運営に携わる中で、この会議のような1つの企画を運営するためには、多く
の事前準備や事後処理が必要だということを知りました。例えば会計や場所の手配、スケ
ジュールの管理など、どれも目立つものではありませんが 1 つでも欠ければ会議そのもの
が成り立たなくなってしまいます。そして、これらを円滑に進めるために必要なことは、
早めの行動やこまめな連絡といったごく当たり前のことの積み重ねであることを知りまし
た。第 4 回会議に向け、少しずつ団体内で自分が担う責任が大きくなっていく中で、第3
回会議で学んだことを生かしながら自分の仕事に真摯な姿勢で取り組んでいきたいと思い
ます。
3つめの発表能力については、自分が調べたことから何らかの結論をだし、それに至る
までの論理を明確にし、他者に伝わるように資料を作成して発表を行う、この一連の流れ
が非常に難しく感じました。プレゼンテーションの事前準備の中で、先輩方の力を借りな
ければ発表内容を満足に固めることもできない自分に苛立ちをおぼえることもありました。
会議そのものもとても有意義なものでした。ディスカッションはもちろん、会話を通し
ても、自分の持つ常識が日本という狭い場所でのみ通じるものであり、国が違えば考え方
が大きく異なることを思い知らされました。この先、外国の方と関わる機会は何度もある
と思いますが、自分の常識にとらわれるあまりに、相手の考え方に理解を示せないという
ことだけは無いようにしたいです。
オランダ側の学生と親交を深めることができた約 1 週間はとても楽しいものでした。会
議に参加していたオランダ側の学生たちは気さくな方ばかりで、話していて楽しかったこ
第3回日蘭学生会議報告会
1.学内報告会
<概要>
日
時:2012 年 11 月 12 日 16:30~18:00
場
所:大阪大学豊中キャンパス スチューデント・コモンズ
テーマ :What should we do in the globalized world?
参加人数:15 人
<内容>
まず日蘭学生会議という団体やその活動内容についての説明を行った後、私たちが第 3
回日蘭学生会議から学んだことを発表するプレゼンテーションを 2 つ行った。各プレゼン
テーションの後には参加者と日蘭学生会議のメンバーで発表内容についてのディスカッシ
ョンを行い、活動の雰囲気を知ってもらうとともに更なる知見を深めた。
1 つ目のプレゼンテーションは国家政策と文化輸出をテーマとした。近年、文化や自国の
サブカルチャーを海外に伝える文化輸出が、ソフトパワー、つまり国際社会に対する信頼
や、発言力を集める力を獲得する手段として注目を浴びている。日本は経済産業省が主導
する“Cool Japan”政策として文化産業、特にポケモンに代表されるサブカルチャーの海外
展開を行っており、大きな経済的効果を上げている。一方で、
“Cool Japan”政策とは別に外
務省や、法務省も文化輸出政策を行っており予算の無駄遣いと非効率性が問題となってい
る。オランダでは国家が主体の文化輸出政策は特に行われていない。移民の存在や活発な
国際貿易、宗教の自由といった伝統が開放的な風潮を生み出し、国民が国家による介入を
望んでいないことが主な原因である。政府から独立した“council of culture”と呼ばれる機
構が援助金を個人や団体に分配し、文化の保存発展に貢献している。
2 つ目のプレゼンテーションではボーダレス化する世界と国民国家をテーマとして扱っ
た。国民国家は 19 世紀以降に生まれた、ある地域において共通の文化や言語を持つ人々が
生み出した一種の共同体である。会議では日本側のメンバーからは現在の日本人は、自分
自身が日本という国民国家に所属していることをあまりアイデンティティとして意識して
いないという意見が出たが、オランダ側からは、むしろ日本人は「日本人が~~だ」と考
えることを好み、むしろ日本人であることを強く意識しているように見えるという意見が
出た。ただし、近年では移民の増加に伴い国家の中で共通の文化を保つことが難しくなり、
2.学外報告会
<概要>
日 時 :2012 年 12 月 8 日 19:00 – 21:00
場 所 :京阪なにわ橋駅
アートエリア B1
テーマ :国を愛するとは?―オランダと比較して
参加人数:37 人
<内容>
ここ近年の間に、教師の国歌斉唱時の起立・不起立問題や領土問題に伴う各国での抗議
デモといった出来事があったことを反映し、今回の学外報告会では第3回会議で扱われた
テーマの中の一つである、
「ナショナリズム」に焦点を当て、学生以外の様々な世代や性別、
背景を持つ方々とのディスカッションを行った。
普段、意見を交わすことが少ない「ナショナリズムや愛国心とは何なのか」という問い
かけに対して、2 時間という時間の中でお互いの意見を交換し、ナショナリズムと愛国心と
はどのようなものであると自分は考えているのか認識し、そして自分の考え方や感じ方と
は異なる意見を参加者全員で交換できれば非常に有意義な議論に出来るのではないか、と
いう考えに基づき内容を設定した。
当日の進行は次のとおりである。まず、最初の 20 分ほどは、我々が本会議で得た結論と
して、
「愛国心」と「ナショナリズム」の定義・関係性についての仮説をプレゼンテーショ
ン形式で発表した。次に、その仮説の中心的論点である愛国心とナショナリズムの定義、
そしてそれらの関係性を切り口に、個人にとって「愛国心」とはどのようなものであるか、
という問いかけに対する議論を行った。
議論では、参加者からの意見をベースに、主に 2 方向から「愛国心」と「ナショナリズ
ム」にアプローチすることになった。ひとつは個々人にとっての主観的な捉え方、もうひ
とつは 19 世紀以降、
「国家」という概念が成立して以降の歴史と照らし合わせながらの考
え方である。前者のアプローチで出された意見の中には、愛国心は「なくても困らないけ
ど、何かに使うのではないかと取って置いているいわばゴミのようなもの」といった意見
や、
「富士山が見えた時やスポーツ選手が勝った時に嬉しくなるのは愛国心で、それについ
ては良し悪しの議論は必要ないものの、ナショナリズムは排外的な意味合いを帯びたり、
国家に対しての妄信的な運動になったりすることもあり議論が必要である」といった意見
が出された。一方で後者の歴史的アプローチで出された意見では、「ナショナリズムは近代
国家(Nation-States)が成立して以降使われるようになった概念であり本来は、国民一人ひ
とりの独立と主権の行使が国家の反映のために必要である、という意味で唱えられていた
が、その後帝国主義と結びつくことによって悪い意味で使われるようになった」
、という意
見が出された。その他にも、
「近代国家成立以前の江戸時代における各藩においても、愛国
心とナショナリズムといった概念は存在していたのではないか」という意見なども出され、
活発な議論が行われた。
今回、取り上げたテーマはデリケートで、かつ専門知識がない状態では結論が出しづら
いものであったものの、我々の仮説をもとに多くの参加者からこのテーマについて活発な
意見が出され、当初目的としていた、「タブー視されがちなこのテーマについて、敢えて時
間を作り有意義な意見交換をする」ことは達成することが出来た。
(文責:山田・辻)
お世話になった方々
第3回日蘭学生会議の開催にあたり、以下の方々には大変お世話になりました。この場
を借りて、厚く御礼申し上げます。また、ここにお名前を記載しきれませんでしたが、本
団体の活動を様々な形で応援してくださった多くの方々にも、心より御礼申し上げます。
<助成団体(アルファベット順・敬称略)>
独立行政法人 国際交流基金
<後援団体(アルファベット順・敬称略)>
御菓子處 絹笠
カフェフィロ
賀茂鶴酒造株式会社
グローニンゲン大学
グローニンゲン大学 日本研究センター
KLM オランダ航空
国立大学法人 大阪大学
国立大学法人 大阪大学 グローニンゲン教育研究センター
国立大学法人 大阪大学 グローバルコラボレーションセンター
在大阪・神戸オランダ領事館
<協力頂いた方々(アルファベット順・敬称略)>
氏名
所属・役職
赤井 久純
大阪大学 グローニンゲン教育研究センター センター長
大澤 玄
大阪大学 インターナショナルカレッジ 特任事務員
片山 歩
大阪大学 グローバルコラボレーションセンター 特任職員
亀山 里津子
大阪大学 文学研究科 学生
木下 拓真
大阪大学 工学部 学生
Janny de Jong
Associate professor Modern History; Director of Studies
Erasmus Mundus MA Euroculture/ Director of the Center
for Japanese Studies
Julien Rikkoert
在大阪・神戸オランダ領事館 職員
瀧本 裕美子
大阪大学 人間科学研究科 学生
中岡 成文
大阪大学 文学研究科 教授
中野 生穂
大阪大学 グローニンゲン教育研究センター 副センター長
新居 良太
大阪大学 理学研究科 学生
藤原 守
岐阜大学教育学部 准教授
本間 直樹
大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター 准教授
松川 絵里
大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター 特任研究員/
カフェフィロ
宮原 暁
大阪大学 グローバルコラボレーションセンター 副センター長
山田 大貴
大阪大学 法学部 学生
Rien T.Segeers
Professor and Director, Center for Japanese Studies,
University of Groningen
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