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放射線と放射能
放射線と放射能 原子の構造と放射壊変の仕組 原子の構造と放射壊変について学び、放射壊変の 法則(壊変律)と放射能について説明できるようにな る。また、電離放射線の種類を列挙し、それらの物 質との相互作用について説明できるようになる。 また、核反応および放射平衡について学び、原子核 反応や放射性同位元素の製造法について概説でき るようになる。 原子と原子核の構造及びエネルギー • 物質(分子)の基本単位は原子である。原子 は軌道電子と原子核から構成される。 • 放射線と放射能は、原子が直接関与する現 象である。 (軌道)電子 核 1 軌道電子とX線 自由電子 軌道電子 軌道 電離 核 M殻 K殻 L殻 核との間に拘束されている軌道電 子が電離して自由電子となるため には高いエネルギーを必要とする。 こういった高エネルギーの電子が 関係した電磁波が放射線のX線で ある。 X線には、軌道電子が関与した 元素に特有な線スペクトルを示 す特性X線と、自由電子が関係 し連続スペクトルを示す連続X線 とがある。 原子核の構造及び質量とエネルギー(1) • 原子核が、整数Z 個の陽子と、N 個の 中性子が核内で結合しているという原 子核構造模型により、放射能などの現 象を説明できる。 • 陽子の数Z は原子番号であり、通常は 元素記号で表され数値は省略される。 • 質量数A=Z + N とすると、個々の核は Z とA及びエネルギーの状態で決定で きる。 • それら個々の核を「核種」と呼び、その 記号表示には元素記号の左肩に質量 数を与えた記号を用いる。例えば、12C、 14C、137Csのように示す。 陽子 核 中性子 ~10-12 cm 原子 電子 ~10-8 cm 分子 2 原子核の構造及び質量とエネルギー(2) • 原子の質量は、小さな原子核に集中している。 • 質量は物質に固有の物理量であり、原子や分 子を扱う分野では「原子質量単位」を用いる。 それは12C原子の質量を 12 u とすることを基 準としている。 • 質量は不変なものではなく、エネルギーと等 価なものである(特殊相対性理論)。 • 放射線と放射能を扱う分野では、エネルギー の単位として電子ボルト[ eV ]を用いる。 放射壊変 • 同じ元素に属する質量数の異なる核種群を示 す言葉として「同位体」があるが、核種とほぼ 同意語として用いられている。 • 同位体は元素が同じなので化学的性質(同位 体効果)の差は小さいが、原子核の性質であ る放射能は大きく異なっている。 • 同位体は、放射壊変する放射性同位元素 RI と、安定同位体の2種類に分類できる。 – RI:radioisotope, radio active isotope • 『放射能』は、原子核が放射線を放出する核 種の性質であり、RI自体を指しても用いられる。 3 原子核の安定性と放射壊変(1) • 放射壊変する原子核はその構造、すなわち核 子(陽子や中性子)間の結合がエネルギー的 に不安定なものと考えられる。 • 原子核の安定性は基本的には核を構成する 陽子と中性子の数のバランスに依存している。 • 結合エネルギーが小さく不安定な原子核が、 より安定な原子核に自発的に変換する原子核 反応の性質が放射能である。 • こうのような変換を放射壊変とよび、一般に余 剰のエネルギーが放射線として放出される。 原子核の安定性と放射壊変(2) • 放射壊変する核種を「親核種」 、壊変により生 成する核種を「娘核種」とよぶ。 • 放射壊変の際、親核種の質量と娘核種の質量 との差は、壊変エネルギーとよばれ、放射能の エネルギーと関連している。 α壊変 放射壊変 βー壊変 β壊変 軌道電子捕獲 γ転移と核異性体転移 β+壊変 自発核分裂 放射壊変の主な形式 4 放射壊変の形式(1) α壊変 原子核からα粒子(ヘリウムの原子核:4He2+)が放 出される放射壊変で、一般に質量数の大きな原子 核で起きる。α壊変によって親核種は原子番号が 2、質量数が4だけ減少した娘核種となる。 A Z X A-4 Z-2 X’ + 42 He (α線) 原子核から放射されるα線の運動エネルギーは 一定値の線スペクトルを示す 放射壊変の形式(2) β壊変 原子核内の陽子と中性子が電子を仲介にして相互 交換する過程をβ壊変と総称する。 β壊変では親核種と娘核種の質量数は変化しない。 放射されるβ線の運動エネルギーは連続スペクトル を示す。これは一定であるはずの壊変エネルギーと 矛盾するが、β壊変の際に中性微子(ν:ニュートリ ノ)が壊変エネルギーの一部を持ち去るためと説明 されている。 β壊変は、更に、βー壊変、軌道電子捕獲、β+壊変 の三つの形式に分類される。 5 放射壊変の形式(3) βー壊変 核内中性子の1個が陽子1個に変換される壊変で あり、その際、電子が原子核外に放出される。 原子核から放出される電子はβー線と表現される。 A Z X A Z+1 X’ + βー + ν 放射壊変の形式(4) 軌道電子捕獲 陽子が、核外にある軌道電子を取込み、中性子に 変換する壊変である。軌道電子捕獲により原子番 号を1減少した娘核種となる。その際にはK殻の軌 道が捕獲されることが多い。 軌道電子捕獲により空位となったK殻の軌道に外 殻の軌道電子が移動する際、娘核種の特性X線 が放射される A Z X + e- A Z-1 X’ + ν 6 放射壊変の形式(5) β+壊変 原子核内の陽子が、陽電子(positron)を放射して中 性子に変換する壊変である。 原子核から放射される陽電子はβ+線とよばれる。 A Z X A Z-1 X’ + β+ + ν 陽電子は核から放射された後、その運動エネルギーを失っ た状態で電子と結合し消滅する。その際、180°をなす2方 向へ、0.511 M eVのγ線が放射される(消滅放射線)。 また、一般にβ+壊変はある程度の割合で軌道電子捕獲を 伴い、壊変エネルギーが比較的小さい場合には軌道電子 捕獲が主体となる。 放射壊変の形式(6) γ転移と核異性体転移 α、β壊変と同時に原子核からγ線が放射される場合がある。 これはα、β粒子を放射した直後の娘核種が励起状態にあり、 その状態から更に安定な状態にエネルギー転移する際に、γ 線が放射されるもので、γ転移とよばれる。核の励起状態は一 般に非常に短く、γ転移を独立した壊変形式とはしないで、親 核種のγ放射と表現することが多い。 一方、娘核種の励起状態が長い原子核や、励起状態から直 接α、β壊変する原子核も存在する。それらは基底状態の娘核 種とは別核種として区別される。すなわち原子核が励起状態に あり、1秒以上の寿命を持つような原子核を核異性体とよぶ。例 えば、99mTc、113mInのように基底状態の99TC、133Inとは別核種と して表す。核異性体の大部分はエネルギー準位間のγ転移、 すなわち核異性体転移(IT)で壊変する。また、γ線のエネル ギーは総て線スペクトルである。 7 放射壊変の形式(7) 自発核分裂 原子番号90以上の原子核では中性子などの衝突 がなくとも核分裂反応が自発的に起きることが知 られている。これを、自発核分裂という。 自発核分裂の娘核種は、通常2個の質量数75~ 155程度の原子核である(より安定な二つの核種 に分裂する)。 原子番号が93以上の超ウラン元素では自発核分 裂が主となる核種も多い。 放射壊変の法則(壊変律)と放射能(1) 統計的性質 半減期 放射壊変する原子の数が半分に減少する のに要する時間 T を半減期とよび、一般 的には寿命と表現している。 1.0 相対放射能(A/A0) 対数目盛 放射能とは、放射壊変する原子核の性質を 表すと同時に「単位時間に壊変する原子の 数」と定義される物理量をも表す。その場合、 放射能は時間の関数であり、寿命を持つ。 放射壊変する原子が初めに多数あり、ある 時間経過後に残存する原子の数との間には、 統計確立的な指数法則が成立する。 放射能の時間変化を表示した図を減衰曲 線といい、対数で示すと直線となる。 0.5 32P 半減期 8.02日 14.3日 0.2 0.1 0 131I 20 40 t (日) 減衰曲線の例 8 放射壊変の法則(壊変律)と放射能(2) 放射能の単位と量 国際単位系(SI)では放射能の量の特徴を表すのにベクレル(Bq)の単 位名称が与えられている。1 Bq = 1 s-1 であり、1秒間に1個の放射壊 変をする放射性核種の原子数を表す。これにより放射能Aは無担体状 態(RIがその元素の安定同位体などと共存しないで100%純粋に存在 するとした状態)での放射性核種の質量wと半減期Tにより、次式で表 すことができる。 A 〔Bq〕 = 〔 〕内は単位 原子質量M は質量数で 近似できる 4.17 x 1023 x w 〔g〕 M 〔u〕 x T 〔s〕 比放射能 単位質量当たりの放射能を比放射能といい、放射性核種の純度ある いは希釈度の指標として用いられ、MBq g-1などの単位で表される。 比放射能は標識化合物(分子)へも準用され、単位物質量(mol)当た りの放射能を表し、kBq nmol-1などの単位が用いられる。 放射壊変の法則(壊変律)と放射能(3) 壊変図式 放射性壊変にとって壊変形式、放射線のエネルギー、壊変の 確立と半減期などの情報は重要である。これらの情報を一見し てわかるように工夫して図式化したものを壊変図式とよぶ。 1/2+ 99Mo 66 h β- 0.45, 17 % 3/2+ β- 1.23, 81 % 74 % 26 % 5/2+ スピンとパリティー 1/2- 0.921 0.181 99mTc 6.2 h 0.1426 IT 99+ % 9/2+ 99Tc 2.14 x 105y 励起エネルギーレベル 核 種 半減期 壊変形式 最大エネルギー 壊変割合 β- 0.29, 100 % 5/2+ 99Ru 9 電離放射線と物質との相互作用(1) • 電離放射線の種類 – 電離放射線:物質を直接あるいは間接に電離する 能力(陽イオンと電子をつくる作用)をもつ原子核、 中性子、電子などの粒子線と、電磁波。 電磁放射線の分類と代表的な線種 粒子放射線 電離放射線 原子核粒子線:α (電価:+2) 電子線:β-、β+ (電価:-1) 中性子線:n (電価:なし) 電磁波放射線(光子線):γ、X (電価:なし) 電離放射線と物質との相互作用(2) 放射線は、人間の五感では感じ取ることが出 来ないエネルギーの一種であり、直接または 間接的に空気を電離する作用を持っている。 放射線の持つ作用には、電離作用、励起(蛍 光)作用、写真(感光)作用、透過作用などが あり、電離作用、励起(蛍光)作用、写真(感 光)作用をまとめて「放射線の物質相互作用」 という。 10 電離放射線と物質との相互作用(3) • α線と物質との相互作用 – 本体:陽子2個、中性子2個(Heの原子核) – 物質相互作用:極めて大きい – 飛程(放射線が物質内で到達できる距離;cmま たはg cm-1):小さい(空気中で約 9 cm未満) – 透過力:極めて小さい(厚紙程度で遮蔽可能) – スペクトル:線スペクトル(核種により一定値) – 代表的放出核種:226Ra、222Rn、239Pu、238U、 210Poなど 電離放射線と物質との相互作用(4) • β-線と物質との相互作用 – 本体:電子1個(陰) – 物質相互作用:α線より小さい – 飛程:α線より大きい(~数 m) – 透過力: α線より大きい(厚めのプラスチック板で 遮蔽可能) – スペクトル:連続スペクトル – 代表的な放射核種 • 低エネルギー:3H、14C、35P • 高エネルギー:32P、90Sr、40K • γ線も放出:60Co、131I、137Cs 11 電離放射線と物質との相互作用(5) • β+線と物質との相互作用 – 本体:陽電子(ポジトロン)1個 – 物質相互作用: + β 線自身には着目しない(陽電子 消滅の際に生成する消滅γ線の相 – 飛程: 互作用や透過力を考慮する) – 透過力: – スペクトル:連続スペクトル – 代表的な放射核種:11C、13N、15O、18F、22Na 電離放射線と物質との相互作用(6) • γ線と物質との相互作用 – 本体:壊変直後の励起状態の原子核から放出され る電磁波 – 物質相互作用:極めて小さい – 透過力: 極めて大きい – 飛程:この概念は当てはまらない – スペクトル:線スペクトル – 代表的な放射核種 • α改変に伴うもの:222Rn、226Ra • β壊変に伴うもの:60Co、131I、137Cs • EC(軌道電子捕獲)に伴うもの:123I、125I 12 電離放射線と物質との相互作用(7) • γ線と物質との相互作用 – 高エネルギーの電磁波であるため、そのエネル ギーは振動数または波長でも表現される。 – 光電効果:総てのエネルギーを軌道電子に与えて 消滅する。軌道電子は電離し(光電子)電子線とし て物質と相互作用する。 – コンプトン効果:エネルギーの一部を軌道電子に与 え、自身は長波長へとエネルギー減少しながら散 乱し、弾かれた電子は電子線として振舞う。コンプト ン散乱ともよばれ、ガンマ線の粒子性を示す。 – 電子対発生:エネルギーが1.022 MeVを超える場 合、原子核近傍のゆがんだ電磁場で電子と陽電子 の対を生成してγ線自身は消滅する。 電離放射線と物質との相互作用(8) γ線と物質との相互作用 光子 光電効果 核 光電子 コンプトン電子 光子 コンプトン効果 核 散乱光子 陰電子 電子対生成 光子 1.022 MeV以上 核 陽電子 0.511 MeV 0.511 MeV 消滅放射線 13 電離放射線と物質との相互作用(9) • X線と物質との相互作用 – 本体:波長の短い電磁波 – 物質相互作用:極めて小さい – 透過力: 極めて大きい – 飛程:この概念は当てはまらない – スペクトル • 制動X線;連続スペクトル • 特性X線;線スペクトル 電離放射線と物質との相互作用(10) • 中性子線と物質との相互作用 – 無電荷の中性子は物質の軌道電子と相互作用す る確率がほとんど0なので、物質を直接には電離し ない。 – エネルギー損失は物質の核との衝突であり散乱す るが、その確率も低いため飛程は長くなる。 – 通常、中性子線は物質による吸収として扱われる。 – 中性子と原子核との衝突による反動または核反応 で二次的に発生する原子核粒子線が物質を間接 的に電離する。 14 電離放射線と物質との相互作用(11) 放射線の物質による吸収 γ線をはじめ、中性子線や高エネルギーの電子線な どの透過力の強い放射線と照射を受ける物質との間 の相互作用は、吸収として扱われる。 これら放射線の吸収は近似的 入射 透過 吸収物質 に(γ線の光電効果では厳密 放射線量 放射線量 I0 d I に)指数法則に従う。 I = I0 e-μd μ:放射エネルギーと物質によって決まる線吸収係数(cm-1) または質量吸収係数(cm2 g-1) 電離放射線と物質との相互作用(12) 入射と透過放射線量の関係を、 吸収物質の厚さの関数として 表した図を吸収曲線といい、対 数で表すと直線となる。 I = I0 e-μd I ln I =-μd 0 半価層の値が小さいほど、吸収 物質の放射線遮蔽効果が高い 相対透過放射能(I/I0) 対数目盛 放射線の物質による吸収 1.0 0.5 半価層 0.2 0.1 d 〔cmまたはg cm-2〕 15 電離放射線と物質との相互作用(13) 放射線量とその単位 放射線量は単位質量の物質が吸収した放射線のエネ ルギーで定量できる。国際単位系ではグレイ(Gy)の単 位名称が与えられている。 1Gy = 1 J kg-1である。例えば、吸収線量4.2 Gyは水1 kgを0.001℃だけ温度上昇させる放射線量であるが、ヒ トの半致死線量の値に近い。 吸収線量は物質種や線量の相違を問わない物理量で あるが、放射線障害など放射線の影響を評価する量を 表すにはやや不適当である。そのために線量当量が用 いられ、シーベルト(Sv)単位が使われる。それは線量 に対応し、1 Svは、β-線とγ線では1Gy、中性子線で 0.1 Gy、α線で0.05 Gyとしている。 電離放射線と物質との相互作用(14) 放射線による被曝 ヒトは1年間に世界平均 2.4 mSvの自然放射線(40K、 222Rn、226Raなど)により被曝を受けている。 体内被曝と体外被曝 体内被曝の生体効果(物質相互作用の大きい放射線 ほど危険) α線 > β線 > γ線 体外被曝の生体効果(透過力の大きい放射線ほど危 険) γ線 > β線 > α線 16 電離放射線と物質との相互作用(15) 放射線(能)の組織集積性 骨 :32P、45Ca、90Sr、226Ra 甲状腺:123I、125I、131I 全身 :3H、14C、137Cs 放射線の感受性 放射線の感受性は、細胞分裂が盛んであるほど、また未分化 な組織であるほど高い 高感受性 リンパ組織 骨髄、脾臓 胸腺、生殖器 胎児の組織 中感受性 皮膚 眼 消化器 低感受性 筋肉 結合組織 更に低感受性 脂肪細胞 神経 電離放射線と物質との相互作用(16) 放射線の影響 { { 急性影響 { 身体的影響 晩発影響 } 皮膚の紅斑、不妊 白血球減少、脱毛 確定的影響 白内障 しきい線量がある } 白血病、がん 確率的影響 遺伝的影響・・・・・・ 代謝異常、軟骨異常 しきい線量がない しきい線量:一定の線量以下の放射線では影響が出なくても、 その一定量を超すと何らかの影響が発現するような線量 17 放射性核種の薬学領域における利用(1) • トレーサー法:注目する物質と同じ挙動をする 放射性同位元素(RI)またはRIで標識された 物質を添加して、放射能を目印にしてその物 質を追跡し、更に定量解析する方法。用いら れるRIまたはRIで標識(ラベル)化された化合 物をトレーサーという。 CH3COOH 標識化 cold 14CH COOH 3 hot 3H、14C、32P、35Sなどの主にβ-線放射核種が用いられる 放射性核種の薬学領域における利用(2) • ラジオイムノアッセイ法:競合的抗原抗体反応 (免疫反応)を利用した微量定量法。試料にRI で標識した一定量の抗原を添加して、試料中 に含まれる抗原物質と競合的に抗体と反応さ せ、放射能測定から試料中の未知量の抗原物 質の量を求める。生体微量成分(ホルモン、タ ンパク質、酵素)や薬物の定量に用いられる。 125I などが用いられる 18 放射性核種の薬学領域における利用(3) • ラジオイムノアッセイ法の概略 競合的 抗原抗体反応 放射能測定 抗体 標識抗原物質 BF分離 試料 + 沈殿 上清 放射性核種の薬学領域における利用(4) • 放射線滅菌法:RIを含む線原からのからのγ 線や、電子加速器からの電子線などを照射し て微生物を殺菌する。手術用手袋、縫合糸、注 射針などの滅菌や消毒に用いられる。加熱を 避けたい滅菌・消毒に有効。 60Co などが用いられる 19 放射性核種の薬学領域における利用(5) • 放射医薬品 – 放射医薬品とは、放射性核種を含んだ無機 化合物か、若しくは放射性核種が共有結合 など何らかの形で結合した化学物質(標識 化合物)で、それぞれの核種が放出する放 射線を利用して病気の診断(X線検査、核医 学検査)や治療(がん等)に用いられる薬剤 である。 放射性核種の薬学領域における利用(6) • 画像診断 – X線CT:X線をいろいろな角度から照射し、透過したX線を 測定し画像処理する。 – シンチグラフィー:核医学検査の一つで、放射性医薬品を 投与しシンチレーションカメラで撮影することで、特定の 臓器や全身に分布したRIを外から計測記録する。 – ポジトロン断層撮影法(PET):11C、13N、15O、18Fなどの長 短寿命の陽電子放出核種を用いる。消滅γ線が双方向 の検出器に到達する時間からその距離を求めることがで きる。がんの病変部の大きさや形状などの情報が得られ る。 20 核反応及び放射平衡と放射性同位元素の製造(1) • 自然放射性同位元素と人工放射性同位元素 – 薬学の領域で利用されているのは、ほとんどが人 工放射性同位元素 • 原子核反応(核反応) – 原子核に外から他の原子核や陽子、中性子、光 子などを衝突させるときに起こる反応で、人工的 に放射性同位元素を製造する際には積極的に利 用される。 • 放射平衡 – 娘核種の半減期が親核種の半減期よりも十分短 い場合、娘核種の放射能は時間の経過とともに、 見かけ上、親核種の半減期で減衰するようになる。 核反応及び放射平衡と放射性同位元素の製造(2) • 原子炉を利用した製造 – 核分裂生成物から取り出す方法と、中性子を照射 して製造する方法とがある。 – 3H、14C、32P、35S、125Iなど • 加速器を利用した製造 – 陽子、重陽子、電子などの荷電粒子を電場や交 流磁場で加速して運動エネルギーを与える。 – 加速器としてはサイクロトロンなどがある。 – 67Ga、201Tl、123I、111In – 15O、18F (PET用) • ジェネレーターを利用した製造 21 核反応及び放射平衡と放射性同位元素の製造(3) • ジェネレーターを利用した製造 – 放射平衡にある親核種と娘核種から、娘核種のみ を分離して取り出す。→再び親核種から無主目核 種が生成されて放射平衡が成立する。→娘核種 のみを取り出す。これを繰り返す。 – こういった操作を「ミルキング」(雌牛から乳絞りす る操作に似ている)とよぶ。ジェネレーターを「カウ (cow)」と言う。 – 半減期の短い放射性同位元素を得るのに有効 – 99Mo→99mTc 放射線の測定と測定原理(1) • 放射線は人間の五感には直接感じないため、物質と の相互作用により物質に生じる変化を利用する • 電離作用(電離電荷検出方式) – 一次電離作用:電離箱、半導体検出器 – 電子流れ現象:比例計数管、ガイガー・ミュラー(GM)計数 管 • 励起作用(発光検出方式) – 励起直後の発光:シンチレーション係数装置、チェレンコフ 検出器 – 蓄積励起エネルギー:イメージングプレート、蛍光ガラス線 量計、熱ルミネッセンス線量計 • 化学作用(照射効果検出方式) – 写真作用:写真乳剤 – 酸化・還元反応:化学線量計 22 放射線の測定と測定原理(2) • 放射線は人間の五感には直接感じないため、物質と の相互作用により物質に生じる変化を利用する • 電離作用(電離電荷検出方式) – 一次電離作用:電離箱、半導体検出器 – 電子流れ現象:比例計数管、ガイガー・ミュラー(GM)計数 管 • 励起作用(発光検出方式) – 励起直後の発光:シンチレーション係数装置、チェレンコフ 検出器 – 蓄積励起エネルギー:イメージングプレート、蛍光ガラス線 量計、熱ルミネッセンス線量計 • 化学作用(照射効果検出方式) – 写真作用:写真乳剤 – 酸化・還元反応:化学線量計 放射線の測定と測定原理(4) • 電離電荷検出方式 – 電離箱:比較的光線量の放射能測定に利用され る。α、β、γ、X線。 – 比例計数管:入射した放射線の種類やエネル ギーを区別して測定可能。α、β、γ、X線、中性 子用などがある。 – ガイガー・ミュラー(GM)計数管:比較的エネル ギーの高いβ線の測定に有効。γ線やX線の測 定も可能だが、低エネルギーのα線の測定は難し い。放射線のエネルギー測定は出来ない。 – 半導体検出器:α、β、γ、X線。 – ガスフロー計数管:α線や低エネルギーのβ線の 測定が可能。 23 放射線の測定と測定原理(5) • 発光検出方式 – 液体シンチレーション計数管(カウンタ) 放射線エネルギー→溶媒→溶質→光電子増倍管 低エネルギーβ-線(ソフトβ線)や微弱放射線の測定に 有効 放射線のエネルギー分析が可能 – NaI(Tl)シンチレーション計数管(カウンタ) 固体シンチレーションカウンタの一つ γ線、X線の測定に適している 多検体の自動分析に適用可能 – イメージングプレート 輝尽性蛍光体を塗布したプレートに放射線エネルギーを蓄 積させた後に、レーザー照射による蛍光を観察する。 放射線の測定と測定原理(6) • 放射線測定の必要性 – サーベイ、環境モニター • 放射線防護の目的で放射線の線種、線質、強弱を探査す ること • 放射性核種による表面汚染、水や空気の汚染の有無や 程度を測定すること • この目的で使用される小型の可搬型測定器を「サーベイ メータ」という • 電離箱式、GM管式、比例計数管式、NaI(Tl)シンチレー ション式など – 個人の被爆線量測定 • 放射線に関わる業務(教育、研究を含む)に携わる個人の 外部被爆の測定 • 蛍光ガラス線量計(ガラスバッジ)、フィルムバッジ、ポ ケット線量計、熱ルミネッセンス線量計など 24