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JP 2012-232982 A 2012.11.29 10 (57)【要約】 (修正有)

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JP 2012-232982 A 2012.11.29 10 (57)【要約】 (修正有)
JP 2012-232982 A 2012.11.29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動物において体重および大きさを調節するための方法および組成物の提供。
【解決手段】約10%∼約30%のグリシン、グリシン類似体類またはその組み合わせと
、約70%∼約90%の低カロリー食、低脂肪食、低炭水化物食またはそれらの組み合わ
せとを含む飼料組成物。グリシン類似体は、下記一般式(I)のN−アルキル化グリシン
またはグリシンアミドまたはアミノメチルスルホン酸化合物である[式中、R1および/
またはR2はHであってもよく、R1および/またはR2はMe、EtまたはPrであっ
てもよく、R1および/またはR2はBnであってもよく、R1および/またはR2は(
CH2)2∼5であってもよい。
10
【選択図】なし
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物において白色脂肪組織を低減する方法であって、動物に約10%∼約30%グリシ
ンを含む高グリシン食を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
高グリシン食がグリシン類似体cまたはグリシンとグリシン類似体の組み合わせを含む
、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動物の白色脂肪組織においてアポトーシスを誘導する方法であって、動物に約10%∼
約30%のグリシンを含む高グリシン食を投与するステップを含む方法。
10
【請求項4】
高グリシン食がグリシン類似体、またはグリシンとグリシン類似体の組み合わせを含む
、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
動物の白色脂肪組織においてアミノ酸位置136のBADのリン酸化を低減する方法で
あって、動物に約10∼約30%のグリシンを含む高グリシン食を投与するステップを含
む方法。
【請求項6】
高グリシン食がグリシン類似体、またはグリシンとグリシン類似体の組み合わせを含む
、請求項5に記載の方法。
20
【請求項7】
白色脂肪組織を低減する方法が白色脂肪細胞の大きさを低減するステップを含む、請求
項1に記載の方法。
【請求項8】
動物において体重を減少させる方法であって、動物に約10%∼約30%のグリシンを
含む高グリシン食を投与するステップを含む方法。
【請求項9】
体重を減少させる方法が、動物において腹部脂肪含量を低減するステップを含む、請求
項8に記載の方法。
【請求項10】
30
高グリシン食がグリシン類似体、またはグリシンとグリシン類似体の組み合わせを含む
、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
方法が運動計画、低脂肪食、低カロリー食、低炭水化物食、外科的介入、行動療法、薬
物療法またはそれらの組み合わせなどの補助的減量療法をさらに含む、請求項8に記載の
方法。
【請求項12】
大きさの減少した動物または体重の減少した動物を作製し、次いで、正常な大きさまた
は正常な体重に戻す方法であって、大きさの減少した動物または体重の減少した動物を作
製するために、幼若動物に高グリシン食を投与するステップと、次いで、正常な大きさの
40
動物または正常な体重の動物を作製するために、その動物に正常食を投与するステップと
を含む方法。
【請求項13】
約10%∼約30%グリシン、グリシン類似体またはそれらの組み合わせと、約70%
∼約90%の低カロリー食、低脂肪食、低炭水化物食またはそれらの組み合わせとを含む
、動物における減量のための飼料組成。
【請求項14】
低脂肪食が低飽和脂肪食である、請求項13に記載の飼料組成。
【請求項15】
大きさの減少した動物、または体重の減少した動物、または大きさが減少しかつ体重が
50
(3)
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減少した動物を作製する方法であって、幼若動物に約10∼約30%のグリシンを含む高
グリシン食を投与するステップを含む方法。
【請求項16】
高グリシン食がグリシン類似体、またはグリシンとグリシン類似体の組み合わせを含む
、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
白色脂肪細胞においてアポトーシスを誘導する方法であって、脂肪細胞に1種以上のグ
リシン類似体、またはグリシンとグリシン類似体の組み合わせを投与するステップを含む
方法。
【請求項18】
10
白色脂肪細胞においてアミノ酸位置136のBADのリン酸化を低減する方法であって
、脂肪細胞に1種以上のグリシン類似体、またはグリシンとグリシン類似体の組み合わせ
を投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる2004年11月2日に出願さ
れた米国出願第60/624,228号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
20
米国では、成人の60%が過体重または臨床的に肥満と考えられる臨床的必要条件を満
たし、毎年300,000人の死亡をもたらすと推定されている。エーベルハイト(Eberh
ardt)ら、アーバン・アンド・ルーラル・ヘルス・チャートブック(Urban and rural heal
th chartbook.)2001、ヘルス(Health)、米国、ハイアッツビル(Hyattsville)(メリ
ーランド州):NCHS.296頁、通則、過体重および肥満を防ぎ、低減するための公
衆衛生局長官の実施要請(The Surgeon Gneral’s call to action to prevent and decre
ase overweight and obesity):2001、R.M.米国保険社会福祉省(U.S. Departmen
t Health and Human Services)編、2001参照のこと。2001年に、米国の公衆衛生
局長官は、過体重または臨床的に肥満である個体の発生および蔓延を防ぎ、低減するため
の実施要請を出した。過体重および肥満を防ぎ、低減するための公衆衛生局長官の実施要
30
請:2001、R.M.米国保険社会福祉省(U.S. Department Health and Human Servic
es)編、2001。興味深いことに、この報告書では、この問題に対する薬剤によるアプ
ローチの適用または使用については何も触れられていない。しかし、産業的研究機関およ
び学問的研究機関の双方による、薬剤によるアプローチの開発は相当興味深いものである
。薬剤によるアプローチは、適用および使用がおそらく容易なために、より大きな服薬遵
守という強力な見込みがあるので魅力的である。
【0003】
世界中からの疫学的研究により、死亡と肥満症の間には論争の余地のない相関関係が実
証されている。我々の健康目標の達成において、感染症、心疾患、糖尿病および特定の癌
の予防および制御に関して過去50年以上かけてなされてきた進歩は、肥満症の蔓延の広
40
がりによって大幅に相殺された。2001年には、小児および十代の少年少女のうち約2
5%が過体重であり、これは、ちょうど20年前のパーセンテージの2倍を上回るもので
ある。現在、60%をはるかに上回る成人が、過体重または肥満であるとわかっており、
米国単独で、年に300,000人を上回る死亡が、これらの状態に直接的に起因する。
これらの発見は、あらゆる人種、年齢、民族および男女ともにまたがるものであるが、特
定の集団、特に、低い社会経済的集団が、その他のものよりもよりその傾向があることは
明らかである。過体重および肥満を防ぎ、低減するための公衆衛生局長官の実施要請(The
Surgeon Gneral’s call to action to prevent and decrease overweight and obesity
);2001,R.M.米国保険社会福祉省(U.S. Department Health and Human Service
s)編、2001。
50
(4)
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【0004】
ボディ・マス・インデックス(25∼29.9kg/m2の範囲のBMI)として定義
される過体重および肥満症(BMI>30kg/m2)は、早死に、2型糖尿病、心疾患
、卒中、高血圧症、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、喘息、種々の呼吸障害、特
定の癌、高い血中コレステロール値、妊娠合併症、高い手術危険度、心理的障害および列
挙するにはあまりにも多いその他の病状と相関している。過体重および肥満を防ぎ、低減
するための公衆衛生局長官の実施要請(The Surgeon Gneral’s call to action to preve
nt and decrease overweight and obesity);2001,R.M.米国保険社会福祉省(U.
S. Department Health and Human Services)編、2001;NHLBI、成人における過
体重および肥満症の同定、評価および治療に関する臨床ガイドライン(Clinical guidelin
10
es on the identification,evaluation and treatment of overweight and obesity in a
dults)、N.NIH,編1998、HHS、PHS、29∼41頁。肥満個体では、BM
Iが正常範囲(20∼25kg/m2)の人と比べ、すべてのこれらの原因から早死の危
険が50∼100%高い。中程度の減量(過剰の全体重の5∼15%)であっても、少な
くともこれらの疾患のいくつか、特に、心疾患について、短期的には危険因子を減少させ
る。NHLBI、成人における過体重および肥満症の同定、評価および治療に関する臨床
ガイドライン(Clinical guidelines on the identification,
evaluation and treatmen
t of overweight and obesity in adults)、N.NIH,編1998、HHS、PHS、
29∼41頁。現在の証拠から、効果はさらに長期間の利益を有し得ると示唆されている
。同書参照のこと;NIDDK,減量の健康アウトカムの研究(SHOW)の試み、NI
20
DDK、編2001、米国国立衛生研究所(Study of health outcomes of weight-loss (
SHOW) trial, NIDDK, Editor. 2001, National Institutes of Health, U.S.A.)
【0005】
過体重および肥満を防ぎ、低減するための公衆衛生局長官の実施要請(The Surgeon Gne
ral’s call to action to prevent and decrease overweight and obesity)では、高ま
る一方の貧弱な栄養源への依存および座りがちなライフスタイルの増加を伴う、過去数十
年間のアメリカ人のライフスタイルの変化を重視している。主たる実施要請は、健康的な
食事と定期的な適度な運動を奨励するよう学校および社会全体における教育を推進するこ
とである。進行中の過程におけるこの時点で、米国国民の大部分がこの重要なメッセージ
について少なくとも大まかな認識は有している可能性が極めて高いと思われる。しかし、
30
肥満症へ向かう最近の傾向は、弱まる兆しを全く見せず、実際、時間とともに悪くなると
予測されている。打開するための主な障壁は、一般市民による、指示された指針に従った
食事および運動に関する遵守の必要性であるのは明らかであるが、これは見込みのない見
通しに相当する。
【0006】
公衆衛生局長官の2001報告書の興味深い特徴は、過体重および肥満症を予防および
治療するための薬剤によるアプローチについては何も触れられていないことである。この
ようなアプローチは患者の遵守の必要性を低減できる可能性があるので、これは学問的お
よび産業的機関双方の間で注目される熱心な領域であることは明らかである。近年、エネ
ルギー蓄積の調節および分泌細胞としての両観点から、脂肪組織の役割および機能の理解
40
において、大きな進歩がなされた(フライン(Frayn)ら、インテグレイティブ・フィジオ
ロジー・オブ・ヒューマン・アティポーズ・ティシュー(Integrative physiology of hum
an adipose tissue)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・オベシティー・アンド・
リレイテッド・メタボリック・ディスオーダーズ(International Journal of Obesity an
d Related Metabolic Disorders)2003、27(8)、875∼88頁によって総説さ
れている)。浮かび上がった図式は、自律神経系の活性、物質およびホルモンからなる複
雑な混合物の送達、脂肪細胞によって分泌される自己分泌および傍分泌エフェクターから
のフィードバックおよびまた脂肪組織への血管供給を含むために極めて複雑である。また
、脂肪細胞によって分泌されるレプチンおよびアディポネクチンなどの因子は、全般的な
代謝に対する全般的な作用を有する。ゲレミロ(Guerre-Millo)、アディポーズ・ティシュ
50
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ー・ホルモンズ(Adipose Tissue hormones)、ジャーナル・オブ・エンドクリノロジカル
・インベスティゲーション(Journal of Endocrinological Investigation)、2002、
25(10)、855∼61頁、キシダ、ディスターブド・セクリーション・オブ・ミュ
ータント・アディポネクチン・アソシエイティッド・ウィズ・ザ・メタボリック・シンド
ローム(Disturbed secretion of mutant adiponectin associated with the metabolic s
yndrome)、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コニュニケーション
ズ(Biochemical Biophysical Research Communications)、2003、306(1)、2
86∼92頁、マイナー(Miner)、ジ・アディポサイト・アズ・アン・エンドクリン・セ
ル(The adipocyte as an endocrine cell)、ジャーナル・オブ・アニマル・サイエンス(J
ournal of Animal Science)、2004、82(3)、935∼41頁、ラビン(Rabin)ら
10
、アディポネクチン:リンキング・ザ・メタボリック・シンドローム・トゥー・イッツ・
カルディオバスキュラー・コンシークエンセズ(Adiponectin: linking the metabolic sy
ndrome to its cardiovascular consequences)、エキスパート・レビュー・オブ・カルデ
ィオバスキュラー・セラピー(Expert Review of Cardiovascular Therapy)、2005、
3(3)、465∼71頁、ハウスクネヒト(Houseknecht)ら、ザ・バイオロジー・オブ
・レプチン(The biology of leptin)、総説、ジャーナル・オブ・アニマル・サイエンス(
Journal of Animal Science)1998、76(5)、1405∼20頁、マントゾロス(
Mantzoros)、ザ・ロール・オブ・レプチン・イン・ヒューマン・オベシティー
・アンド・ディシーズ(The role of leptin in human obesity and disease)、最近の証
拠の総説、アナルズ・オブ・インターナル・メディシン(Annals Internnal Medicine)、
20
1999、130(8)、671∼80頁参照のこと。
【0007】
これから、上記で記載した過体重および肥満症に関する現在の問題の基礎をなす正常な
状態および病理的状態の完全な理解を得るには、極めて統合的な、全体論的アプローチが
必要であることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
研究、農業および話し相手用に、多数の種類の動物が用いられている。このような動物
の飼育および給餌の費用が高い場合もある。より小さな大きさの動物ならば、正常な大き
30
さの動物よりも給餌および飼育する費用も少ない。したがって、大きさの低減した動物お
よび/または体重の低減した動物を作成する組成物および方法は、有利であり得る。また
、コンパニオンアニマルにおける肥満症も問題である。肥満症は、寿命の短縮およびヒト
に関して上記で記載した同様の疾患および状態のうち多数を引き起こし得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、本発明は、動物に約10%∼約30%グリシンを含む高グリシン食を
投与するステップを含む、動物の脂肪組織においてアポトーシスを誘導する方法を提供す
る。高グリシン食は、グリシン、グリシン類似体またはグリシンとグリシン類似体の組み
合わせ含み得る。
40
【0010】
本発明のもう1つの実施形態は、動物に約10%∼約30%グリシンを含む高グリシン
食を投与するステップを含む動物において脂肪組織を低減する方法を提供する。
【0011】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、動物に約10∼約30%のグリシンを含む高グ
リシン食を投与するステップを含む、動物の脂肪組織においてアミノ酸位置136のBA
Dのリン酸化を低減する方法を提供する。
【0012】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、動物に約10∼約30%のグリシンを含む高グ
リシン食を投与するステップを含む、動物において脂肪細胞の大きさを低減する方法を提
50
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供する。
【0013】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、動物に約10∼約30%のグリシンを含む高グ
リシン食を投与するステップを含む、動物において腹部脂肪含量を低減する方法を提供す
る。
【0014】
本発明のもう1つの実施形態は、動物に約10∼約30%のグリシンを含む高グリシン
食を投与するステップを含む、動物において体重を減少させる方法を提供する。本方法は
、運動計画、低脂肪食、低カロリー食、低炭水化物食、外科的介入、行動療法、薬物療法
またはそれらの組み合わせなどの補助的減量療法をさらに含み得る。
10
【0015】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、大きさの減少した動物または体重の減少した動
物を作製し、次いで、正常な大きさに戻す方法を提供する。本方法は、大きさの減少した
動物または体重の減少した動物を作製するために幼若動物に高グリシン食を投与するステ
ップと、次いで、正常な大きさの動物または正常な体重の動物を作製するために、その動
物に正常食を投与するステップとを含む。
【0016】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、大きさの減少した動物または体重の減少した動
物を作製するために幼若動物に高グリシン食を投与するステップを含む、大きさの減少し
た動物または体重の減少した動物を作製する方法を提供する。
20
【0017】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、約10%∼約30%グリシン、グリシン類似体
またはそれらの組み合わせと、約70%∼約90%の低カロリー食とを含む動物における
減量のための飼料組成を提供する。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態は、約10%∼約30%グリシン、グリシン類似体または
それらの組み合わせと、約70%∼約90%の低脂肪食とを含む動物における減量のため
の飼料組成を提供する。低脂肪食は低飽和脂肪食であり得る。
【0019】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、約10%∼約30%グリシン、グリシン類似体
30
またはそれらの組み合わせと、約70%∼約90%の低炭水化物食とを含む動物における
減量のための飼料組成を提供する。
【0020】
本発明のもう1つの実施形態は、幼若動物に約10∼約30%のグリシンを含む高グリ
シン食を投与するステップを含む、大きさの減少した動物、または体重の減少した動物、
または大きさが減少しかつ体重が減少した動物を作製する方法を提供する。
【0021】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、脂肪細胞に1種以上のグリシン類似体またはグ
リシンとグリシン類似体の組み合わせ投与するステップを含む、in vivoまたはi
n vitroにおいて白色脂肪細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。
40
【0022】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、脂肪細胞に1種以上のグリシン類似体またはグ
リシンとグリシン類似体の組み合わせを投与するステップを含む、in vivoまたは
in vitroにおいて白色脂肪組織においてアミノ酸位置136でのBADのリン酸
化を低減する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
普通のアミノ酸、グリシンは、実験室動物の食餌に加えると体重の用量依存的な減量を
引き起こす効果を有することが発見されている。この効果は、いくつかの齧歯類の系統お
よびイヌにおいて観察されている。最適用量および本当に非常に最適の用量では、長期の
50
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投与の間、有害な副作用は観察されなかった。グリシンは、ほとんどの哺乳類で、正常な
中間代謝の一部として解糖系から生じるセリンから合成される非必須アミノ酸である。い
くつかの精神障害、特に、統合失調症の原因および可能性ある治療におけるその役割に関
して天然および誘導型で広く研究されてきた化合物である(例えば、ワジリ(Waziri)&バ
ルア(Baruah)、ア・ハイパーグリシナージック・ラット・モデル・フォー・ザ・パソジェ
ネシス・オブ・シゾフレニア:プレリミナリー・ファインディングス(A hyperglycinergi
c rat model for the pathogenesis of shizophrenia: preliminary findings)、シゾフ
レニア・リサーチ(Schizophrenia Research)、1999、37(3):205∼15頁、
ワジリ(Waziri)、グリシン・セラピー・オブ・シゾフレニア(Glycine therapy of shizop
hrenia)、バイオロジカル・サイキアトリー(Biological Psychiatry)、1988、23(
10
2)、210∼l頁、ワジリ(Waziri)、グリシン・セラピー・オブ・シゾフレニア:サム
・キャビアーツ(Glycine therapy of schizophrenia: some caveats)、バイオロジカル・
サイキアトリー(Biological Psychiatry)、1996、39(3)、155∼6頁、ジャ
ビット(Javitt)、グリシン・セラピー・オブ・シゾフレニア(Glycine therapy of shizop
hrenia)、バイオロジカル・サイキアトリー(Biological Psychiatry)、1996、40(
7):684∼6頁、ジャビット(Javitt)、グリシン・モジュレーターズ・イン・シゾフ
レニア(Glycine modulators in schizophrenia)、カレント・オピニオン・イン・インベ
スティゲイショナル・ドラッグス(Current Opinion in Investigational Drugs)、200
2、3(7)、1067∼72頁、ショハム(Shoham)ら、クロニック・ハイ−ドーズ・グ
リシン・ニュートリション:エフェクツ・オン・ラット・ブレイン・セル・モルフォロジ
20
ー(Cronic high-dose glycine nutrition: effects on rat brain cell morphology)、バ
イオロジカル・サイキアトリー(Biological Psychiatry)、2001、49(10)、8
76∼85頁、ジャビット(Javitt)、マネージメント・オブ・ネガティブ・シンプトンズ
・オブ・シゾフレニア(Management of negative symptoms of shizophrenia)、カレント
・サイキアトリー・レポート(Current Psychiatry Report)、2001、3(5)、41
3∼7頁、ショハム(Shoham)ら、ハイ・ドーズ・グリシン・ニュートリション・アフェク
ツ・グリアル・セル・モルフォロジー・イン・ラット・ヒポキャンパス・アンド・セレベ
ラム(High dose glycine nutrition affects glial cell morphology in rat hippocampu
s and cerebellum)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ニューロサイコファルマ
コロジー(International Journal of Neuropsychopharmacology)、1999、2(l)、
30
35∼40頁、ショハム(Shoham)ら、グリシン・アンド・D−サイクロセリン・アテニュ
エート・バキュアス・チューイング・ムーブメント・イン・ア・ラット・モデル・オブ・
ターダイブ・ジスキネジア(Glycine and D-cycloserine attenuate vacuous chewing mov
ements in a rat model of tardive dyskinesia)、ブレイン・リサーチ(Brain Research)
、2004、1004(1−2)、142∼7頁、ツオルニネン(Tuorninen)ら、グルタ
マテルジック・ドラッグス・フォー・シゾフレニア:ア・システマチック・レビュー・ア
ンド・メタ−アナリシス(Glutamatergic drugs for schizophrenia: a systematic revie
w and meta-analysis)、シゾフレニア・リサーチ(Schizophrenia Research)、2005、
72(2−3)、225∼34頁参照のこと)。これらの報告のうちいくつかで、グリシ
ン投与の効果は、試験動物または被験体の体重に対して、小さいが有意な影響を有すると
40
記されているが、この観察結果は推測またはさらなる分析の対象とは決してならなかった
。これはおそらくは、観察された効果が比較的小さく、これらの研究に用いたグリシンの
濃度および曝露時間が、本発明者らが有意なまたは著しい減量を誘導するのに必要である
と見い出したものよりも通常小さいからであろう。ペッキー(Petzke)ら、(1987)は
、グリシンは、その他のアミノ酸、糖および脂肪と比較して相対的に高い発熱効果を有し
、これが酸素取り込みの増加と相関していると報告した。ペッキー(Petzke)&アルブレク
ト(Albrecht)、[ザ・エフェクト・オブ・ニュートリション・オン・ザ・メタボリズム・
オブ・グリシン(The effect of nutrition on the metabolism of glycine)]、ナールン
グ(Nahrung)、1987、31(2)、157∼72頁、ペッキー(Petzke)ら、ユーティ
リゼーション・オブ・[1∼14C]カーボン・オブ・グリシン・オブ・ハイ・グリシン
50
(8)
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・ダイエット・フェド・ヤング・アンド・オールド・ラッツ(Utilization of [1-14C] ca
rbon of glycine of high glycine diet fed young and old rats)、ズファ(Zfa)、19
87、42(6)、323∼8頁、ペッキー(Petzke)ら、[ザ・エッフェクツ・オブ・オ
ーラル・アドミニストレーション・オブ・グリシン・オン・メタボリズム(The effect of
oral administration of glycine on metabolism)]、ナールング(Nahrung)1987、
31(3)、207∼15頁。彼のグループは、実験ラットの成長における用量依存的低
減を記したが、可能性ある機構の生化学的機序を提供できなかった。本発明者らは、以下
に記載するように、この発見を再現することに加え、成体動物が、その食餌にグリシンが
補給されると用量依存的減量を示すことを実証した。グリシンまたはグリシン類似体を使
用して、観察可能な不都合な副作用を伴わずに肥満症と闘うことができる。さらに、グリ
10
シンは、おそらくは、これまでに認識されていない経路を用いて、脂肪細胞においてアポ
トーシスを特異的に誘導するよう作用する。
【0024】
グリシンおよびグリシン類似体
グリシンは容易に入手可能な、非毒性のアミノ酸である。グリシン、グリシン類似体ま
たはその組み合わせを本発明の方法において使用できる。脂肪細胞、例えば、白色脂肪細
胞において、アポトーシスを直接的にまたは間接的に誘導するグリシン類似体はいずれも
使用できる。本発明の一実施形態では、グリシン類似体は式Iを含み得る。
【0025】
【化1】
20
【0026】
例えば、式Iでは、R1および/またはR2はHであってもよく、
R1および/またはR2はMe、EtまたはPrであってもよく、
30
R1および/またはR2はBnであってもよく、
R1および/またはR2は(CH2)2∼5であってもよい。
式Iは、例えば、以下のスキームによって合成できる:
【0027】
【化2】
40
【0028】
その他のグリシン類似体は式IIを含み得る:
【0029】
(9)
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【化3】
【0030】
例えば、式IIでは、R1および/またはR2はHであってもよく、
R1および/またはR2はMe、EtまたはPrであってもよく、
10
R1および/またはR2はBnであってもよく、
R1および/またはR2は(CH2)2∼5であってもよい。
式IIは、例えば、以下のスキームによって合成できる:
【0031】
【化4】
20
【0032】
本発明のもう1つの実施形態では、グリシン類似体は式IIIを含み得る:
【0033】
【化5】
30
【0034】
式IIIでは、R1および/またはR2はHであってもよく、かつ、R3はH、Me、E
t、PrまたはBnであってもよく、
R1および/またはR2はMe、EtまたはPrであってもよく、かつ、R3はMe、
Et、PrまたはBnであってもよく、
R1はHであってもよく、R2はBnまたはMeであってもよく、かつ、R3はMe、
Et、PrまたはBnであってもよく、
R1および/またはR2は(CH2)2∼5またはMeであってもよく、かつ、R3はM
40
e、Et、PrまたはBnであってもよい。
式IIIは例えば、以下のスキームによって合成できる:
【0035】
【化6】
【0036】
50
(10)
JP 2012-232982 A 2012.11.29
高グリシン食
「高グリシン食」とはグリシン、グリシン類似体もしくは類似体類またはその組み合わ
せが多い食餌、あるいは高投与量のグリシンサプリメント、グリシン類似体サプリメント
またはその組み合わせである。本発明の一実施形態では、グリシン類似体またはグリシン
と組み合わせたグリシン類似体は、グリシンのみを含む食餌を投与された場合に得られる
ものとほぼ同じ生理的効果を生じる。すなわち、グリシン類似体またはグリシンとグリシ
ン類似体の組み合わせは、動物に高グリシン食でグリシンを投与した場合の動物における
グリシンの生理学的濃度とほぼ同じである、動物におけるグリシンの生理学的濃度を生じ
る。場合によっては、グリシン類似体またはグリシンと組み合わせたグリシン類似体を、
グリシン単独よりも低いパーセンテージで投与して、グリシンを単独で用いる場合と同様
10
の効果を達成できる。例えば、グリシン類似体またはグリシンと組み合わせたグリシン類
似体を、食餌中、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10重量パーセント以上で投
与できる。
【0037】
グリシンおよびグリシン類似体は、食餌と混合してもよいし、またはその他の経路によ
って投与してもよい。サプリメントは液体であってもよいし、半固体であってもよいし、
固体であってもよいし、何らかのその他の形であってもよい。高グリシン食は、約5、6
、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、
25、30、35、40重量%以上のグリシン、グリシン類似体類またはその組み合わせ
を含む。本発明の一実施形態では、高グリシン食は、約5%∼約40%以上、約10%∼
20
約40%、約10%∼約30%、約15%∼約25%または約20%∼約25%のグリシ
ンまたはグリシン類似体類またはその組み合わせを含み得る。
【0038】
本発明はまた、約5%∼約40%以上、約5%∼約40%、約10%∼約30%、約1
5%∼約25%または約20%∼25%のグリシン、グリシン類似体類またはその組み合
わせ(すなわち、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、
17、18、19、20、25、30、35、40重量%以上のグリシン、グリシン類似
体類またはその組み合わせ)と、約60%∼約95%(すなわち、約95、90、89、
88、87、86、85、84、83、82、81、80、75、70、65または60
%)のカロリーの低い食餌とを含む、動物における体重低減のための飼料組成を提供する
30
。
【0039】
本発明はまた、約5%∼約40%以上、約10%∼約40%以上、約10%∼約30%
、約15%∼約25%または約20%∼25%のグリシン、グリシン類似体類またはその
組み合わせ(すなわち、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、
16、17、18、19、20、25、30、35、40重量%以上のグリシン、グリシ
ン類似体類またはその組み合わせ)と、約60%∼約95%(すなわち、約95、90、
89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、75、70、65また
は60%)の脂肪の少ない食餌とを含む、動物における体重低減のための飼料組成を提供
する。低脂肪食は、低飽和脂肪食であり得る。
40
【0040】
本発明はまた、約5%∼約40%以上、10%∼約40%以上、約10%∼約30%、
約15%∼約25%または約20%∼25%のグリシン、グリシン類似体類またはその組
み合わせ(すなわち約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16
、17、18、19、20、25、30、35、40重量%以上のグリシン、グリシン類
似体類またはその組み合わせ)と、約60%∼約95%(すなわち、約 95、90、8
9、88、87、86、85、84、83、82、81、80、75、70、65または
60%)の炭水化物の少ない食餌とを含む、動物における体重低減のための飼料組成を提
供する。
【0041】
50
(11)
JP 2012-232982 A 2012.11.29
本発明の方法
雄または雌の動物、例えば、ヒトへの高グリシン食の投与は、動物の脂肪組織、特に、
白色脂肪組織においてアポトーシスを誘導し得る。したがって、高グリシン食は、動物に
おいて脂肪組織を低減し得るか、脂肪細胞の大きさを減少させ得るか、またはその両方で
あり得る。本発明の方法は、動物において、脂肪組織においてアポトーシスを誘導するか
、脂肪組織を低減するか、脂肪細胞の大きさを減少させるか、それらの組み合わせのため
に、動物に高グリシン食を投与するステップを含む。
【0042】
特定の理論に拘束されようとは思わないが、脂肪組織におけるアポトーシスの誘導は、
グリシンの直接効果または間接効果によって引き起こされると考えられる。この作用機序
10
は、BAD、Bcl−2ファミリーのアポトーシス促進性メンバーに対してこのような食
餌が有する観察された効果によって支持される。BADの、細胞死を促進する能力は、位
置136でのリン酸化によって阻害される。高グリシン食の投与は、脂肪組織において位
置136でのBADのリン酸化を低減するか排除し、このことは、高グリシン食またはそ
の等価物を投与した場合に観察される脂肪組織の喪失がアポトーシスの誘導によって起こ
ることを示す。
【0043】
食餌(すなわち、経口による)またはその他の投与手段のいずれかによる、高濃度のグ
リシンの投与により、動物において腹部脂肪含量が低減され得る。さらに、食餌またはそ
の他の投与手段のいずれかによる、動物へのグリシンの投与は、動物において減量をもた
20
らし得る。しかし、グリシンを補給した食餌の初期の投与では、体重増加が見られる場合
がある。いずれか特定の理論に拘束されようとは思わないが、この観察結果は、脂肪組織
の喪失および筋肉組織の獲得の結果であり得ると考えられる。
【0044】
本発明の方法および組成物を用いて、大きさの減少した動物およびまたは体重の減少し
た動物を作製できる。例えば、正常な大きさの動物よりも約3%、5%、10%、20%
、30%、40%、50%、60%、70%または75%小さい動物または正常な体重動
物よりも約3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%また
は75%軽い動物。正常な大きさの動物または正常な体重の動物とは、年齢および全身の
健康状態を考慮した上で、動物種についての平均または標準的な体重または大きさの範囲
30
内に入る動物である。
【0045】
本発明は、動物に高グリシン食を投与するステップを含む、大きさの減少した動物また
は体重の減少した動物、または大きさが減少し、かつ、体重が減少した動物を作製する方
法を提供する。大きさの減少した動物のためには、幼若動物に高グリシン食を給餌する。
高グリシン食は毎日投与できる。動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス
、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、トリまたは魚で
あり得る。
【0046】
本発明はまた、上記のように大きさの減少した動物を作製し、続いて、その動物を正常
40
な大きさに戻す方法を提供する。この方法は、高グリシン食を幼若動物に投与して大きさ
の減少した動物を作製するステップと、次いで、その動物に正常食を投与して正常な大き
さの動物を作製するステップとを含む。正常な食餌とは、グリシンを補給していないが、
正常な量のグリシンは含む食餌である。
【0047】
本発明はまた、高グリシン食を成熟または幼若動物に投与して体重の減少した動物を作
製するステップと、次いで、その動物に正常な食餌を投与して正常な体重の動物を作製す
るステップとを含む、体重の減少した動物を作製し、次いで、その動物を正常な体重に戻
す方法を提供する。
【0048】
50
(12)
JP 2012-232982 A 2012.11.29
本発明のさらにもう1つの実施形態は、永久的に大きさの減少した動物または体重の減
少した動物を作製するために幼若動物へ高グリシン食を投与することによって、永久的に
大きさの減少した動物およびまたは体重の減少した動物を作製する方法を提供する。高グ
リシン食の投与は、動物の一生を通じて続けてもよいし、または通常、成長の停止と関連
している生理学的プロセスによってさらなる成長が妨げられるまで続けてもよい。
【0049】
本発明の方法および組成物を用いて、動物、例えば、幼若および成熟動物において減量
させることができる。約3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%
、70%または75%の減量を達成できる。
【0050】
10
本発明の一実施形態は、上記のように、動物に高グリシン食を投与するステップを含む
、動物において減量させる方法を提供する。動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラッ
ト、マウス、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、トリ
、魚または無脊椎動物であり得る。本発明の一実施形態では、動物は健常であり、潜在す
る健康障害または健康問題はない。本発明のもう1つの実施形態では、動物は、過体重ま
たは肥満症という健康障害だけは有するが、その他の健康障害または健康問題はない。
【0051】
高グリシン食は、補助的減量療法、例えば、運動計画、低脂肪食、低カロリー食、低炭
水化物食、外科的介入、例えば、胃形成術、胃の分割および胃バイパス、行動療法、薬物
療法(例えば、シブトラミン、メリディア(MERIDIA)(登録商標)(シブトラミンHCl
20
一水和物)、ゼニカル(XENICAL)(登録商標)(オーリスタット(orlistat))およびそれ
らの組み合わせの使用)、天然ダイエット補助食品または市販の(OTC)減量製品およ
びそれらの組み合わせとともに投与できる。
【0052】
低脂肪食は、所与の種の所与の年齢、体重および全身の健康状態に対して、通常推奨さ
れる食餌中の脂肪量よりも約3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、4
0%、50%、60%、70%または80%少ない脂肪を含む食事である。例えば、ヒト
における低脂肪食は、約0%、3%、5%、7%、10%、13%、15%、20%また
は25%の脂肪からなる食事を含み得る。
【0053】
30
低カロリー食とは、特定の種の所与の年齢、体重および全身の健康状態に対して、通常
推奨されるカロリー量よりも約3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、
40%、50%、60%、70%または80%少ないカロリーを含む食事である。
【0054】
低炭水化物食とは、特定の種の所与の年齢、体重および全身の健康状態に対して、通常
推奨されるカロリー量よりも約3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、
40%、50%、60%、70%または80%少ない炭水化物を含む食事である。
【0055】
行動療法は、食事療法および/または運動療法に関する遵守の障壁の克服に役立つ戦略
を含む。このような戦略としては、例えば、食習慣および運動の自己監視、ストレス管理
40
、刺激制御、問題解決(例えば、食事および運動に関連する問題領域の自己補正)、随伴
性管理(例えば、指定の望ましい作用に対する報酬の使用、認識再構築(例えば、現実離
れした目標および不正確な信念の修正)および社会的支援が挙げられる。
【0056】
グリシンおよびグリシン類似体は、従来の非毒性の製薬上許容される担体、アジュバン
トおよび/またはビヒクルを含む製剤を用いて、例えば、経口的に、局所的に、非経口的
に、吸入もしくは噴霧によって、または経直腸的に投与できる。本明細書において、用語
非経口とは、経皮、皮下、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内またはくも膜下腔内注射ま
たは注入技術などを含む。さらに、グリシンおよびグリシン類似体は、製薬上許容される
担体と混合することができる。グリシンおよびグリシン類似体は、1種以上の非毒性の製
50
(13)
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薬上許容される担体、賦形剤、着色剤、保存剤、矯味剤、希釈剤、アジュバントまたはそ
れらの組み合わせ、また、必要に応じてその他の有効成分と関連して存在し得る。グリシ
ンおよびグリシン類似体は、例えば、錠剤、トローチ剤(troches)、トローチ剤(lozenge)
、水性懸濁液または油性懸濁液、分散性散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、ハードカプ
セルもしくはソフトカプセルまたはシロップ剤またはエリキシル剤のような、経口使用に
適しているいずれかの形であり得る。
【0057】
本発明のもう1つの実施形態は、脂肪細胞に1種以上のグリシン類似体類またはグリシ
ンとグリシン類似体の組み合わせを投与するステップを含む、in vivoまたはin
vitroで白色脂肪細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。
10
【0058】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、脂肪細胞に1種以上のグリシン類似体類または
グリシンとグリシン類似体の組み合わせを投与するステップを含む、in vivoまた
はin vitroで白色脂肪細胞においてアミノ酸位置136でのBADのリン酸化を
低減する方法を提供する。
グリシンは脂肪細胞に、約5、10、50、75、100、200、300、400、
500、750、1000μg/ml以上という濃度で添加できる。
【0059】
本明細書中のどこかで記載されるすべての特許、特許出願およびその他の科学的記述ま
たは技術的記述は、参照によりその全文が組み込まれる。本明細書に例示的に記載される
20
本発明は、本明細書に具体的に開示されないいずれかの要素または複数の要素、制限また
は複数の制限がない場合にも適当に実施できる。したがって、例えば、本明細書における
各例において、用語「含む」、「本質的にからなる」および「からなる」はいずれも、そ
の通常の意味を維持しながら、その他の2種の用語のいずれかと置き換えることができる
。用いてきた用語および表現は、説明の用語として用いられるものであって、制限するも
のではなく、このような用語および表現の使用において、示され、記載される特徴または
その一部のいずれかの等価物を排除する意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で
種々の改変が可能であるということは認識される。したがって、本発明は実施形態によっ
て具体的に開示されているが、開示される本明細書における考えの任意選択の特徴、改変
および変法を当業者が用いることができること、およびこのような改変および変法は説明
30
および添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると考えられるとい
うことは理解されなくてはならない。
【0060】
さらに、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループまたは代替物のその他のグ
ループ分けの観点で記載されている場合には、当業者ならば、その結果、本発明がまた、
マーカッシュグループまたはその他のグループのいずれかの個々のメンバーまたはメンバ
ーの下位グループの観点で記載されているということは認識する。
[実施例]
【実施例1】
【0061】
ラットを無作為に分割し、別個にケージに入れ、水を無制限に、および食餌TD804
06食(ハーランテックラッド(Harlan Teklad)、ウィスコンシン州、マディソン)を給
餌した。飼料組成を表1に示す。TD80406食は、ラクトアルブミン成分中に存在す
る約1∼2%のグリシンを有し、無添加食(non−supplemented die
t)と考えられる。
【0062】
40
(14)
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【表1】
10
20
30
【0063】
成体(180日齢)雄フィッシャーラットを、飼料に5%または20%グリシンを含む
食餌または無添加食の各群10ラットの処理群に無作為に割り当てた。図1参照。動物お
よび飼料の重量測定を、示した研究日数で行った。重量測定を行う分析者は、観察が記録
40
されている動物の食餌に関してわからないようにされた。バーは、示した観察日での各群
のラットの体重の±1標準誤差を表す。20%グリシン食を給餌されたラットは、処理の
14∼30日間の間、5%グリシン食またはグリシンが補給されていない食餌を給餌され
たラットよりも統計的に軽かった。30日目に、20%グリシン食を給餌されたラットを
無添加食に戻すと、それらは急速に体重増加し、それらの体重は、無添加食を給餌された
ラットのものと同様になった。研究の32日目以降、対照と20%グリシン群の動物の体
重の間に統計上の差はなかった。
【0064】
研究の30日目に各処理群から5匹のラットを無作為に選択し、安楽死させた。剖検で
各ラットの腹部脂肪含量の測定を行った(図2)。測定を行う分析者は、観察が記録され
50
(15)
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ている動物の処理群に関してわからないようにされた。データは一元配置分散分析を用い
て分析し、ダネットの多重比較試験を用いる事後解析に付した。20%グリシン食を給餌
されたラットは、5%グリシン食または無添加食を給餌されたものよりも統計的に有意に
少ない腹部脂肪を有していた。
【0065】
同じ実験を雌成体(180日齢)フィッシャーラットを用いて実施した。得られた結果
は、雌では雄においてよりも、減量および腹部脂肪含量の双方に関して、グリシンの効果
が実際には幾分かより明白であったという点を除き、ほぼ同様であった(図3および図4
)。処理した雌のラットの体重は、回復相の最後までに対照動物のレベルに戻らなかった
ということ、また腹部脂肪において観察された減少は雄について観察されたものよりも大
きかったことには注目した。実験の経過中で消費された飼料または水の量においては、群
間で有意差は観察されなかった。
【0066】
飼料消費測定は、示した研究日数で行った。図5参照。これらのデータは、観察された
減量は飼料摂取の減少によるカロリー制限の結果ではないことを示す。さらに、食餌をb
omb熱量測定によって分析し(表2参照)、カロリー量に有意な差はないことを実証し
たので、観察された体重減少は、飼料のカロリー量の減少の結果ではない。
【0067】
10
(16)
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【表2】
10
20
30
【0068】
研究対象ラットの尾静脈から血液サンプルを採取し、マルチアナライトプロフィール(M
ulti-Analyte Profile)試験のためにチャールスリバーラボラトリーズ(Charles River La
boratories)に送った。これらの試験の結果は、高グリシン食のラットはその血清トリグ
40
リセリド、HDLおよびコレステロールレベルにおいて統計的に有意な(p≦0.05)
低下を示すということを示した。これらの結果は、グリシンを用いて他で実施している研
究による文献の結果と一致する。ハフィディ(Hafidi)ら、グリシン・インテイク・デクリ
ーシズ・プラズマ・フリー・ファッティー・アシッズ・アディポーズ・セル・サイズ、ア
ンド・ブラッド・プレッシャー・イン・スクロース−フェド・ラッツ(Glycine intake de
creases plasma free fatty acids, adipose size, and blood in sucrose-fed rats)、
アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー−レギュラトリー・インテグレイティブ
・アンド・コンパラティブ・フィジオロジー(American Jouranal ofPhysiology Regulato
ry Integrative and Comparative Physiology)2004、287(6)、R1387∼9
3、オースト(Aust)ら、ザ・ヒポリペミック・アクション・オブ・ア・グリシン・リッチ
50
(17)
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・ダイエット・イン・ラット(The hypolipaemic ation of a glycine rich diet in rats
)、ナールング(Nahrung)1980、24(7)、663∼71頁、スギヤマら、ダイエタ
リー・スルファー−コンテイニング・アミノ・アシッズ・アンド・グリシン・アズ・デタ
ーミナント・ファクターズ・イン・プラズマ・コレステロール・レギュレーション・イン
・グローイング・ラッツ(Dietary sulfur-containing amino acidsand glycine as deter
minant factors in plasma cholesterolregulation in growing rats)、ジャーナル・オ
ブ・ニュートリショナル・サイエンス・アンド・ビタミノロジー(Journal of Nutritiona
l Science andVitaminology)(東京)1985、31(l)、121∼5頁、センティル
クマール(Senthilkumar)ら、グリシン・モジュレーツ・ヘパティック・リピッド・アキュ
ミュレーション・イン・アルコール−インデュースド・リバー・インジュリー(Glycine m
10
odulates hepatic lipid accumulationin alcohol-induced liver injury)、ポリッシュ
・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー(Polish Journal of Pharmacology)、2003、
55(4)、603∼11頁、パーク(Park)ら、ダイエタリー・タウリン・オア・グリシ
ン・サプリメンテーション・レデューシズ・プラズマ・アンド・リバー・コレステロール
・アンド・トリグリセリド・コンセントレーションズ・イン・ラッツ・フェド・ア・コレ
ステロール−フリー・ダイエット(Dietary taurine or glycinesupplementation reduces
plasma and liver cholesteroland triglyceride concentrations in rats fed a chol
esterol-free diet)、ニュートリション・リサーチ(Nutrition Research)、1999、1
9(12)、1777∼1789頁、ヨシダら、エフェクツ・オブ・アディション・オブ
・アルギニン、シスチン・アンド・グリシン・トゥー・ザ・ボビン・ミルク−シミュレイ
20
テッド・アミノ・アシッド・ミクスチャー・オン・ザ・レベル・オブ・プラズマ・アンド
・リバー・コレステロール・イン・ラッツ(Effects of addition of arginine, cystine,
and glycine to the bovine milk-simulated amino acid mixture on the level of pl
asma and liver cholesterol in rats)、ジャーナル・オブ・ニュートリショナル・サイ
エンス・アンド・ビタミノロジー(Journal of Nutritional Science andVitaminology)(
東京)、1988、34(6)、567∼76頁、オルソン(Olson)ら、エフェクト・オ
ブ・アミノ・アシッド・ダイエッツ・アプォン・セラム・リピッヅ・イン・マン(Effect
of amino acid diets upon serum lipids in man)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ク
リニカル・ニュートリション(American Journal of Clinical Nutrition)、1970、2
3(12)、1614∼25頁、リゼンコフ(Ryzhenkov)ら、[ヒポリピデミック・アク
30
ティビティー・オブ・グリシン・アンド・イッツ・デリバティブズ(Hypolipidemic activ
ity of glycine and its derivatives)]、ボプロシー・メディトシンスコイ・クヒミー(V
oprosy MeditsinskoiKhimii)、1984、30(2)、78∼80頁、ヤガサキら、エフ
ェクツ・オブ・ダイエタリー・メチオニン、システイン・アンド・グリシン・オン・エン
ドジェナウス・ハイパーコレステロレミア・イン・ヘパトーマ−ベアリング・ラッツ(Eff
ects of dietary methionine, cystine, and glycine on endogenous hypercholesterole
mia in hepatoma bearing rats)、ジャーナル・オブ・ニュートリショナル・サイエンス
・アンド・ビタミノロジー(Journal of Nutritional Science and Vitaminology)(東京
)、1986、32(6)、643∼51頁、エミ(Emi)ら、ミスセンス・ミューテーシ
ョン(Gly−Glu188)・オブ・ヒューマン・リポプロテイン・リパーゼ・インパ
40
ーティング・ファンクショナル・デフィシエンシー(Missense mutation (GIy - Glul88)
of human lipoprotein lipase imparting functional deficiency)、ジャーナル・オブ
・バイオロジカル・ケミストリー(Journal ofBiological Chemistry)、1990、265
(10)、5910∼6頁参照のこと。白色脂肪組織(WAT)が減少する場合に予測さ
れるように、有意な傾向にあるレプチンレベルの低下が観察された。WATが減少してい
る場合に予測されるように、アディポネクチンレベルは、有意な傾向で増加することが観
察された。このデータは、高グリシン食は、肥満症の病原性についてのこれらのバイオマ
ーカーに対して正の効果をもたらすということを実証した。
【実施例2】
【0069】
50
(18)
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成体雄ズッカー糖尿病性肥満(ZDF)ラットを、飼料に20%グリシンを含む食餌ま
たは無添加食の各群3ラットの処理群に無作為に割り当てた。ZDFラットは肥満で、高
脂血症で、インスリン抵抗性である。重量測定を示した研究日数で行った。図6参照のこ
と。重量測定を行う分析者は、観察が記録されている動物の食餌に関してわからないよう
にされた。バーは、示した観察日での各群のラットの体重の±1標準誤差を表す。データ
は一元配置分散分析を用いて分析し、ダネットの多重比較試験を用いる事後解析に付した
。20%グリシン食を給餌されたラットは、無添加食を給餌されたラットと比較して、研
究の15日∼36日まで体重が統計的に有意に減少した。やはり、飼料消費においては群
間で有意差は観察されなかった。剖検で各ラットの腹部脂肪含量の測定を行った(図7)
。20%グリシン食を給餌されたラットは、5%グリシン食または無添加食を給餌された
10
ものよりも統計的に有意に少ない(p≦0.05)腹部脂肪を有していた。
【実施例3】
【0070】
成体雌スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットを、飼料に5、10、15または
20%グリシンを含む食餌または無添加食の各群3ラットの処理群に無作為に割り当てた
。図8参照のこと。重量測定を示した研究日数で行った。重量測定を行う分析者は、観察
が記録されている動物の食餌に関してわからないようにされた。バーは、示した観察日で
の各群のラットの体重の±1標準誤差を表す。20%グリシン食を給餌されたラットの体
重は、無添加食を給餌されたラットのものよりも少なかった。データは一元配置分散分析
を用いて分析し、ダネットの多重比較試験を用いる事後解析に付した。20%グリシン食
20
を給餌されたラットは、無添加食を給餌されたラットと比較して、研究の15日∼36日
まで体重が統計的に有意に減少した。
【実施例4】
【0071】
成体雌スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットを、飼料に5、10、15または
20%グリシンを含む食餌または無添加食の各群3ラットの処理群に無作為に割り当てた
。図9参照のこと。飼料消費測定を示した研究日数で行った。測定を行う分析者は、観察
が記録されている動物の食餌に関してわからないようにされた。これらのデータは、観察
された減量は飼料摂取の減少によるカロリー制限の結果ではないということを示す。さら
に、食餌をbomb熱量測定によって分析し(表2参照)、カロリー量に有意な差はない
30
ことを実証したので、観察された体重減少は、飼料のカロリー量の減少の結果ではない。
【実施例5】
【0072】
成体雌スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットを、飼料に5、10、15または
20%グリシンを含む食餌または無添加食の各群3ラットの処理群に無作為に割り当てた
。研究の30日目に各処理群のラットを安楽死させた。剖検で各ラットの腹部脂肪含量の
測定を行った。図10参照のこと。測定を行う分析者は、観察が記録されている動物の処
理群に関してわからないようにされた。データは一元配置分散分析を用いて分析し、ダネ
ットの多重比較試験を用いる事後解析に付した。5%∼20%と示されたグリシン量を含
む食餌を給餌されたラットは、無添加食を給餌されたものよりも統計的に有意に少ない腹
40
部脂肪を有していた。
【実施例6】
【0073】
スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラット、24日齢に、15%グリシンおよび8
5%TD80406からなる食餌を給餌した。15%グリシンおよび85%TD8040
6を含む食餌を6週間給餌された動物の剖検で、体重以外の肉眼的病変または処理に関連
する異常は何も報告されなかった。血液化学および完全血球数では、100%TD804
06を給餌された対照動物と15%グリシンおよび85%TD80406を含む食餌を6
週間給餌された動物の間で差異は観察されなかった。高グリシンを補給された食餌を給餌
された1匹の動物から採取した組織の組織病理学検査を実施した。切り取り、加工し、包
50
(19)
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埋し、薄切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した組織の顕微鏡検査は、脳、肺
、肝臓、副腎、腎臓、膀胱、心臓、胃、大腸または小腸について顕著な結果は何も示さな
かった。要するに、正常な組織像から顕微鏡的変化は何もなかった。
【実施例7】
【0074】
成体雄スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットを、飼料に5%または20%グリ
シンを含む食餌または無添加食の各群3ラットの処理群に無作為に割り当てた。研究の2
0日目に動物を安楽死させ、剖検で脂肪組織を採取した。脂肪組織から総タンパク質を抽
出した。高グリシン食を給餌されたラットから得た脂肪組織がアポトーシスを受けていた
ことを実証するために、対照またはグリシン含有食を給餌された動物の抽出物を、位置1
10
36でBADをリン酸化する能力についてアッセイした。図11Aおよび11Bに見られ
るように、データは、(WAT)におけるチロシン136でのBADのリン酸化の用量依
存的減少を明確に実証したが、このような減少は褐色脂肪組織(BAT)では観察されず
、このことは、高グリシン食は白色脂肪組織においてアポトーシスをもたらすということ
を示す。図12および図13は、同一動物から得た肝臓組織の抽出物(図12)または筋
肉の抽出物(図13)をアッセイした場合には、チロシン136でのBADのリン酸化状
態のこのような減少が全く観察されないことを明確に実証する。
【0075】
データは、チロシン136でのBADのリン酸化の用量依存的減少を明確に実証し、こ
のことは高グリシン食が脂肪組織においてアポトーシスをもたらすことを示す。
20
【0076】
組織抽出物の、セリン位置136でBADをリン酸化する能力についてのアッセイを以
下のように実施した:BADアガロース(アップステート(Upstate)、マサチューセッツ
州、ウォルサム)に1mgの組織抽出物を加えた。RIPAバッファー(抗ホスファター
ゼおよび抗プロテアーゼを含む)(Tris−HCl[pH7.4]50mM、NP−4
0 1%、デオキシコール酸Na 0.25%、NaCl 150mM、EDTA 1m
M、PMSF 1mM、プロテアーゼアレスト(Protease Arrest)
100μl、オルト
バナジウム酸ナトリウム 1mM、フッ化ナトリウム 1mM)を用いて反応溶液を1m
lに調節し、30℃で0.5時間インキュベートした。遠心分離(12,000×gで5
秒)によってアガロースビーズを集めた。上清を除去し、氷冷TBSでビーズを3回洗浄
30
した。40μlのサンプルバッファーにBADアガロースを再懸濁し、5分間煮沸し、遠
心分離した(12,000×gで5分)。15%ゲル(Tris−グリシン)で7μlの
サンプルを電気泳動した。ウェスタンブロッティングによってタンパク質をニトロセルロ
ースメンブランにトランスファーし、4℃で振盪しながらTTBS中5%NFMでブロッ
キングした。このメンブランをTTBS中2%NFMで洗浄した。各レーンを、ウサギ抗
ホスホBAD136抗体を(2%NFM/TTBS中1:1000)で用い、室温で2時
間ブロッティングした。このブロットをTTBSで5分間3回洗浄した。このブロットを
ヤギ抗ウサギHRP(2%NFM/TTBS中1:5000)とともにインキュベートし
た。このブロットをTTBSで5分間3回、TBSで5分間2回洗浄した。リン酸化され
たBADの可視化は、化学発光基質(ピアス(Pierce)スーパーシグナル(Super-Signal)基
40
質(商標))を用いて達成した。
【0077】
本発明者らは、観察された生物学的効果をグリシンが誘発する作用機序をさらに解明す
るために、ゲル電気泳動における2Dディファレンシャル(2D−DIGE)を用いた。
2D−DIGEは、異なる生物学的状態から得た組織のプロテオームにおける発現の相違
の迅速な評価を可能にする強力な方法である。パットン(Patton)、ディテクション・テク
ノロジーズ・イン・プロテオーム・アナリシス(Detection technologies in analysis)、
ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー・B・アナリティカル・テクノロジーズ・イン・
ザ・バイオメディカル・アンド・ライフ・サイエンセズ(Journal of Chromatography B A
nalytical Technologies in Biomedical and Life Sciences)、2002、771(l−
50
(20)
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2)、3∼31頁、ウンル(Unlu)ら、ディフェレンス・ゲル・エレクトロフォレシス:ア
・シングル・ゲル・メソッド・フォー・ディテクティング・チェンジズ・イン・プロテイ
ン・エクトラクツ(Difference gel electrophoresis: a single gel method for detecti
ng changes in protein extracts)、エレクトロフォレシス(Electrophoresis)、1997
、18(11)、2071∼7頁、ボン・エッゲリング(Von Eggeling)ら、フルオレセン
ト・デュアル・カラー・2D−プロテイン・ゲル・エレクトロフォレシス・フォー・ラピ
ッド・ディテクション・オブ・ディフェレンセズ・イン・プロテイン・パターン・ウィズ
・スタンダード・イメージ・アナリシス・ソフトウェア(Fluorescent dual colour 2D-pr
otein gel electrophoresis for rapid detection of differences in protein pattern
with standard image analysis software)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・モ
10
レキュラー・メディシン(International Journal of Molecular Medicine)、2001、
8(4)、373∼7頁参照のこと。
【0078】
対照(図14)および20%グリシン処理(図15)から得た組織から抽出したタンパ
ク質の二重標識実験の予備段階の結果が、今後の2D−DIGE実験に取り組むための調
製において得られた。対照動物の脂肪組織から得たCy3フルオロフォアで標識したタン
パク質を図14に示す。図15は、食餌中20%グリシンで処理した動物の脂肪組織に由
来するCy5フルオロフォアで標識したタンパク質を用いて得た結果を示す。黄色の円は
、対照に対するダウンレギュレーションを示すのに対し、赤色の円はアップレギュレーシ
ョンを示すことが目視検査によって認識できる。
20
【0079】
対照食または20重量%のグリシンを補給した食餌のいずれかを給餌した雌スプラーグ
・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットから得た脂肪組織の2D−DIGE分析。組織サンプ
ルを、7×110ミニチップリユーザブル・ジェネレータープローブ(mini-Tip Reusable
Generator Probe)を取り付けたパワージェン(PowerGen)1.25モデル FTH115
ホモジナイザーを用いて氷上でホモジナイズし、全タンパク質抽出(TPE)キット(ジ
ェノテック(Genotech)、米国、ミズーリ州63043−9989、セントルイス、92−
ウェルドンパークウェイ(Weldon Parkway))を用い、キットに同梱されているプロトコー
ルに従ってタンパク質を抽出した。使用に先立つ抽出および保存の間のタンパク質分解を
最小にするために、すべてのバッファーはプロテアーゼアレスト(Protease Arrest)カク
30
テル(ジェノテック(Genotech)、米国、ミズーリ州63043−9989、セントルイス
、92−ウェルドンパークウェイ(Weldon Parkway))を含んでいた。バイオラッド(Bio R
ad)2Dクリーンアップキット(カタログ番号163−2130)を用いて、抽出したタ
ンパク質を沈殿させ、Cy標識バッファー(30mM Tris−HCl pH8.5、
4% CHAPS、8M尿素)に再懸濁した。対照動物および処理動物から得た等量のタ
ンパク質(50μg)をそれぞれ、製造業者の仕様書に従い、DMFで希釈した400p
molのCy3またはCy5フルオロフォアで標識した。標識反応は、暗所で30分間、
氷上で実施し、1mMリジンを添加することによってクエンチした。標識されたタンパク
質の2つの集団を、バイオライト(Biolyte)両性電解質(バイオラッド(BioRad)カタログ
番号163−1112)および再水和バッファー(バイオラッド(BioRad)カタログ番号1
40
63−2083)とともに混合した。次いで、この混合物を再水和したIPGストリップ
(バイオラッド(BioRad)カタログ番号163−2099)上に、室温で一晩載せた。製造
業者の仕様書に従い、再水和したIPGストリップ中のタンパク質をバイオラッド(BioRa
d)タンパク質IEFゲル装置で集中させ、バイオラッド(BioRad)タンパク質スラブゲル装
置で2次元で流した。ゲル中のCy3およびCy5標識タンパク質の可視化は、535お
よび620nm励起フィルターならびに600および670nm発光フィルターを用いる
KODAKイメージステーション2000MMを用いて行った。
【実施例8】
【0080】
血液および組織(脂肪)中のグリシンの濃度を正確に測定するための高感度アッセイ
50
(21)
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脂肪組織量の減少に関するグリシンについての薬物動態モデルおよび薬力学的モデルの
開発には、投与されたグリシンの濃度を測定する正確な方法が必要となる。方法は、内因
性グリシンを入れずに、投与されたグリシンの吸着、分布、代謝および排泄(ADME)
をたどることができることが理想である。さらに、開発される方法は、グリシン類似体を
用いるさらなる研究への適用のために容易に改変できなければならない。ALC/MS法
をこの目的に用いることができる。このアプローチによって、投与されたC13−グリシン
と内因性グリシンのADMEの同時検出を可能にする研究におけるC13−グリシンの利用
が可能となる。
【0081】
手短には、この手順は、LC/MSによる分析に先立つ酸性沈殿によってタンパク質お
10
よび核酸夾雑物が除去されるサンプル精製ステップからなる。QC−サンプルを調製し、
その後、サンプルマトリックス(すなわち、未処理動物由来の血漿または透析した組織抽
出物)中に既知量のグリシン/C13−グリシンを含む各研究を開始する。サンプルの酸性
沈殿は、褐色の1.5ml微量遠心管中で、100μlの血漿サンプルに、100μlの
、1%メタリン酸を含有する氷冷10%(vol/vol)過塩素酸を添加し、これを氷
上で10分間インキュベートし、次いで、4℃、12,000×gで5分間遠心分離する
ことによって達成される。次いで、得られた上清を0.2μmのフィルターを通して濾過
し、サバン(Savant)SC110スピードバック(Speedvac)(または同等物)で真空乾燥さ
せる。研究サンプルおよびQCサンプルは、分析に付されるまで−80℃で保存する。分
析に先立って、サンプルを室温に加温し、50μlの脱イオン化LC/MS等級水(LC
20
/MS−ddH2O)50μlで再構成し、ガラス製自動注入装置バイアルに移す。これ
を、次いで、マイクロAS(サーモエレクトロン(Thermo Electron))自動注入装置に載
せる。各サンプル20μlを、ESI(エレクトロスプレーイオン化)源を介してLCQ
DECA XPイオントラップ質量分析計(サーモエレクトロン社(Thermo Electron Corp.))と連結しているサーベイヤープラス(Sureyor Plus)HPLCシステム(サーモエ
レクトロン社(Thermo Electron Corp.))の50×2.1mmハイパーカーブ(Hypercarb
)(商標)カラム(サーモエレクトロン社(Thermo Electron Corporation))上に注入する
。クロマトグラフィーによる分離は、10分でLC/MS−ddH2O中20mMペルフ
ルオロペンタン酸からLC/MS−ddH2O中15%アセトニトリルに、次いで、さら
なる10分でLC/MS−ddH2O中26%に、次いで、10分かけてLC/MS−d
30
dH2O中最終50%アセトニトリルに勾配を流すことによって達成する。条件を、LC
/MS−ddH2O中最終50%アセトニトリルおよび20mMペルフルオロペンタン酸
で10分間維持し、続いて、LC/MS−ddH2O中20mMペルフルオロペンタン酸
100%に5分間戻し、次いで注入する。
【0082】
図16は、代表的なクロマトグラムおよびグリシンの定量化に用いられる標準曲線を示
す。データは、カラムに載せた24種の一般的なアミノ酸を含む公知の標準およびグリシ
ン、プロリン、フェニルアラニン、リジンおよびロイシンについての選択イオンモニタリ
ング(SIM)を用いて得た。結果は、アッセイは、提案される探索におけるその意図さ
れる目的のための必須の感度を有していることを明確に示す。アッセイはC13−グリシン
40
を用いてさらに精密化し、確認できる。
【実施例9】
【0083】
高用量グリシンの単回投与薬物動態プロフィールおよび経口バイオアベイラビリティ
以下の実験計画を用いて、グリシンの薬物動態プロフィールおよび経口バイオアベイラ
ビリティを調べることができる。チャールスリバーラボラトリーズ(Charles River Labor
atories)から得られる、外科的に埋め込んだ頸静脈カテーテルを有し、200∼225g
の間の体重の成体(180日齢)スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットを使用で
きる。18匹のラットを6匹のラット(3匹の雄3匹の雌)からなる3群に無作為に分割
し、3つの投与群:高(5mg/kg)、中(2.5mg/kg)および低(0.25m
50
(22)
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g/kg)の各々に無作為に割り当てる。20重量%グリシンからなる食餌を給餌された
雄ZDFラットから24時間絶食した後に剖検で得られた血漿サンプルの予備分析は、1
6.9μg/mLレベルのグリシンを示した。実際の定常状態レベルのグリシンは、動物
が絶食している前はおそらくはかなり高い。本発明者らが選択した用量は、約150μg
/ml、高用量群、75μg/ml、中用量群および7.5μg/ml低用量群というピ
ーク血漿レベルをもたらすはずである。グリシンをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、p
H7.2に溶解し、まずIVボーラスによって投与する。以下の時点で、血漿サンプル(
0.1ml)を、クエン酸塩を含有する上端が明るい青色のバキュテイナ(vacutainer)管
(BD363080)に吸い込ませる。T=0分、T=0.5分、T=1分、T=5分、
T=15分、T=30分、T=1時間、T=2時間、T=4時間、T=8時間、T=6時
10
間、T=24時間およびT=4時間。各時点で採取した分離血漿を、液体窒素中で急速冷
凍し、分析するまで−80℃で保存する。動物は7日間回復させ、再度計量し、次いで、
経口経管栄養によって高、中および低投与量のグリシンで処理する。IVボーラス投与に
ついて、以下の時点で、血漿サンプル、0.1mlを先に記載したように上端が明るい青
色のバキュテイナ(vacutainer)に吸い込ませる。T=0分、T=30分、T=1時間、T
=2時間、T=4時間、T=6時間、T=8時間、T=16時間、T=24時間、T=4
8時間、T=72時間およびT=96時間。各時点で採取した分離血漿を、液体窒素中で
急速冷凍し、分析するまで−80℃で保存する。データをウィンノンリン(WinNonlin)(
登録商標)バージョン4.1ソフトウェアを用いて薬物動態解析について解析する。これ
らの実験に由来する薬物動態モデルを用いて、その後の実験に用いられる連続投与計画を
20
設計する。さらに、このモデルは、さらなる開発のために類似体を選択する際に用いるた
めの基本モデルとして役立つ。
【実施例10】
【0084】
グリシンの複数回投与薬物動態
本発明者らの予備研究では、グリシンを、試験動物の普通の食餌の一部として経口投与
した。この投与方法は、脂肪組織におけるアポトーシスの誘導に関するグリシンの作用に
ついての薬力学的モデルの構築に必要な投与量の正確性および再現性を提供しなかった。
本発明者らは、この研究に取り組むために、観察された薬理効果(すなわち、脂肪組織に
おけるアポトーシスの誘導)を本発明者らが正確に示すのを可能にする投与計画を立てな
30
ければならない。高用量グリシンの単回投与薬物動態プロフィールおよび経口バイオアベ
イラビリティを定義するための本発明者らの研究において得られる薬物動態パラメータを
用いて、高用量グリシンの連続投与計画を設計する。立てられる計画を用いて、食餌中2
0重量%、10重量%および5重量%グリシンからなる食餌を給餌された動物において観
察されたものの±10%に等しいレベルに試験動物の血中レベルでグリシンを維持する。
各投与群における動物の数およびサンプルのタイミングについての詳細な説明は、先の単
回投与研究から確かめられた薬物動態パラメータおよびにパラメータの変動に基づいて決
まる。しかし、本発明者らは、研究設計は、計画を確証するために投与群あたり10匹(
5匹の雄、5匹の雌)未満の動物を必要とすると予想する。本発明者らは、投与計画の設
計において、計画を確証するために用いられるデータを得るためにサンプリングする時点
40
を策定するためにウィンノンリン(WinNonlin)(登録商標)のシミュレーション機能を用
いる。
【0085】
ウィンノンリン(WinNonlin)(登録商標)ソフトウェアは、投与スケジュールを確証す
るための連続投与スケジュールおよびサンプリングスキームの設計においてシミュレーシ
ョンを利用するための優れたツールセット提供する。ウィンドウズ(登録商標)用グラフ
パッドスタットメート(GraphPad StatMate)バージョン2.00を用いて、各投与群の動
物数が、統計的妥当性を実証するために適切な力を達成するために必要とされるものであ
ることを確認する。ウィンドウズ(登録商標)用グラフパッドインスタット(GraphPad In
Stat)バージョン3.06 32ビットを用いて統計分析を実施する。PKパラメータお
50
(23)
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よび血中グリシンの循環レベルが実験的に得られたものと統計上有意には異ならないと実
証される場合に、投与計画は有効であると考える。
【0086】
研究の最後に、研究動物を安楽死させ、剖検を実施する。抗BADser−136抗体
を用いる免疫沈降およびウエスタンブロット解析か、親和性捕獲LC/MS分析のいずれ
かによって、脂肪組織におけるser−136でのBADのリン酸化状態を調べる。パパ
ック(Papac)&シャーロック(Shahrokh)、マス・スペクトロメトリー・イノベーションズ
・イン・ドラッグ・ディスカバリー・アンド・ディバロップメント(Mass spectrometry i
nnovations in drug discovery and development)、ファーマシューティカル・リサーチ(
Pharmaceutical Research)、2001、18(2)、131∼45頁、クリーザー(Creas
10
er)ら、イムノアフィニティー・クロマトグラフィー・コンバインド・オンライン・ウィ
ズ・ハイパフォーマンス・リキッド・クロマトグラフィー−マス・スペクトロメトリー・
フォー・ザ・ディターミネーション・オブ・コルチコステロイズ(Immunoaffinity chroma
tography combined on-line with high-performance liquid chromatography-mass spect
rometry for the determination of corticosteroids)、ジャーナル・オブ・クロマトグ
ラフィーA(Journal of Chromatography A)、1998、794(l−2)、37∼43頁
、ギャロ(Gallo)ら、ディベロップメント・オブ・ア・リキッド・クロマトグラフィー/
エレクトロスプレー・タンデム・マス・スペクトロメトリー・メソッド・フォー・コンフ
ァーメーション・オブ・クロラムフェニコール・レシデューズ・イン・ミルク・アフター
・アルファ−1−アシッド・グリコプロテイン・アフィニティー・クロマトグラフィー(D
20
evelopment of a liquid chromatography / electrospray tandem mass spectrometry me
thod for confirmation of chloramphenicol residues in milk after alfa-1-acid glyc
oprotein affinity chromatography)、ラピッド・コミュニケーションズ・マス・スペク
トロメトリー(Rapid Communications Mass Spectrometry)、2005、19(4)、57
4∼9頁参照のこと。また、脂肪組織を、活性アポトーシスのマーカーとしてTUNEL
タンパク質について免疫組織化学染色に付す。パブロフスキー(Pavlovsky)&バグンダ(Va
gunda)、[アポトーシス−セレクテッド・メソッズ・オブ・ディテクション・オブ・アポ
トーシス・アンド・アソシエイテッド・レギュラトリー・ファクターズ・オン・ティシュ
ー・セクションズ・オブ・チューモア(Apoptosis-selected methods of detection of ap
optosis and associated regulatory factors on tissue sections of tumors)]、チェ
30
スコスロベンスカ・パトロジー(Ceskoslovenska Patologie)、2003、39(1)、6
∼10頁、ヒートウォール(Heatwole)、V.M.、TUNELアッセイ・フォー・アポト
ーティック・セルズ(TUNEL assay or apoprotic cells)、メソッヅ・イン・モレキュラー
・バイオロジー(Methods in Molecular Biology)、1999、115、141∼8頁、シ
ュターデルマン(Stadelmann)&ラスマン(Lassmann)、ディテクション・オブ・アポトーシ
ス・イン・ティシュー・セクションズ(Detection of apoptosis in tissue sections)、
セル・アンド・ティシュー・リサーチ(Cell and Tissue Research)、2000、301(
l)、19∼31頁参照のこと。
【0087】
また、主要な臓器を採取し、毒性の何らかの明白な徴候について観察し、毒性の何らか
40
の明白な徴候が見られる場合にはさらなる分析のために保存する。
【実施例11】
【0088】
脂肪組織におけるアポトーシスの誘導による減量を誘導するその能力に関連するグリシン
の関連PK/PD(薬物動態/薬力学モデル)
薬力学とは、作用部位での薬物濃度と薬理学的反応との間の関係、例えば、その相互作
用に影響を及ぼす生化学的作用および生理学的作用である。シャーゲル(Shargel)&ユー(
Yu)、アプライド・バイオファルマシューティクス・アンド・ファルマコキネティクス(Ap
plied Biopharmaceutics and pharmacokinetics)、第4版、1999、ニューヨーク、マ
グローヒル(McGraw-Hill)、573∼605頁参照のこと。
50
(24)
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【0089】
薬力学モデルの形は、薬物がその薬理作用を発揮する機構に応じて異なる。したがって
、このモデルで得られる情報は、グリシンが脂肪組織においてその生物学的効果をどのよ
うに誘発するかに関して有用な情報を提供する。本発明者らは、本交付申請において提案
される研究のための本発明者らの予備段階の研究において、高グリシン食がser−13
6でBADを脱リン酸化状態にすることを実証した。本発明者らは、ser−136での
BADのリン酸化状態を、本発明者らの薬力学モデリングのためのアポトーシスのマーカ
ーとして用いることを提案する。本発明者らは、BADのリン酸化状態に対する効果に関
するグリシン作用についてのPK/PD関連モデルを構築する。PK/PD関連モデルで
は、PDモデルによって用いられる、作用部位での薬物の局所濃度をモデリングするため
10
に、固定した薬物動態パラメータを仮定する。ジャスコ(Jusko)、コルチコステロイド・
ファルマコダイナミクス:モデルス・フォー・ア・ブロード・アレイ・オブ・レセプター
−メディエイティド・ファルマコロジック・エフェクト(Corticosteroid pharmacodynami
cs: models for a broad array of receptor-mediated pharmacologic effects)、ジャー
ナル・オブ・クリニカル・ファルマコロジー(Journal of Clinical Pharmacology)、19
90、30(4)、303∼10頁、ダイネカ(Dayneka)ら、コンパリソン・オブ・フォ
ー・ベーシック・モデルス・オブ・インダイレクト・ファルマコダイナミック・レスポン
セズ(Comparison of four basic models of indirect pharmacodynmic responses)、ジャ
ーナル・オブ・ファルマコキネティクス・アンド・バイオファルマシューティクス(Journ
al of Pharmacokinetics Biopharmaceutics)、1993、21(4)、457∼78頁。
20
本発明者らは単回投与および複数回投与研究から導いた薬物動態モデルを用いて、PK/
PD関連モデルの固定PKパラメータを供給する。白色脂肪組織(WAT)のex vi
vo器官培養を用いて、PK/PD関連モデルのPD部分をモデリングする。WATのe
x−vivo培養を確立するための方法および手順は十分に記載されている。ムスタイド
−ムッサ(Moustaid-Moussa)&フリード(Fried)、カルチャー・オブ・アディポーズ・ティ
シュー・アンド・アイソレイティッド・アディポサイツ,イン・アディポーズ・ティシュ
ー・プロトコールズ(Culture of Adipose Tissue and Isolated Adipocytes, in Adipose
Tissue Protocols)、G.アイハウド(Aihaud)編、2001、ヒュマーナプレス社(Huma
na Press, inc.):ニュージャージー州、トトワ、197∼213頁、リビングストン(Li
vingston)ら、インスリン−ディペンデント・レギュレーション・オブ・ザ・インスリン
30
−センシティビティー・オブ・アディポサイツ(Insulin-dependent regulation of the i
nsulin-sensitivity of adipocytes)、ネイチャー、1978、273(5661)、3
94∼61頁、バーンスタイン(Bernstein)、インプルーブド・インスリン・レスポンシ
ブネス・イン・ラット・アディポーズ・ティシュー・ピーセズ・カルチャード・ウィズ・
チャコール−トリーティド・アルブミン・アンド・オキシジェン(Improved insulin resp
onsiveness in rat adipose pieces cultured with charcoal-treated albumin and oxyg
en)、ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ(Journal of Lipid Research)、1982、
23(2)、360∼3頁、バーンスタイン(Bernstein)、インスリン・インセンシティ
ビティー・アンド・アルタード・グルコース・ユーティリゼーション・イン・カルチャー
ド・ラット・アディポーズ・ティシュー(Insulin insensitivity and altered glucose u
40
tilization in cultured rat adipose tissue)、ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ
(Journal of Lipid Research)、1979、20(7)、848∼56頁、マロフ(Maloff
)ら、ディレクト・エフェクツ・オブ・グロウス・ホルモン・オン・インスリン・アクシ
ョン・イン・ラット・アディポーズ・ティシュー・メインテインド・イン・ビトロ(Direc
t effects of growth hormone on insulin action in rat adipose tissue maintained i
n vitro)、エンドクリノロジー(Endocrinology)、1980、107(2)、538∼4
4頁参照のこと。これらの実験には単離脂肪細胞とは対照的に、WAT器官培養を用いる
が、これは器官培養がWATの複雑な生物学をより十分に反映し、in vivo状態を
より反映する効果に対して集中したPDモデルをもたらすからである。パパック(Papac)
&シャーロック(Shahrokh)、マス・スペクトロメトリー・イノベーションズ・イン・ドラ
50
(25)
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ッグ・ディスカバリー・アンド・ディベロップメント(Mass spectrometry innovations i
n drug discovery and development)、ファーマシューティカル・リサーチ(Pharmaceutic
al Research)、2001、18(2)、131∼45頁。
【0090】
手短には、体重200∼225gの3匹の雄および3匹の雌のスプラーグ・ドーリー(S
prague-Dawley)ラットの各々から、安楽死の10分以内に、後腹膜、鼠径部および生殖腺
脂肪体の外科的切除によってWATを得る。各動物からおよそ12∼15gmのWATが
得られる。同一の性の動物から得たWATを、滅菌、室温M199(ギブコ(Gibco)−B
RL、液体、重炭酸イオン緩衝、グルタミンおよび25mM
HEPESを補給)および
50μg/mLのゲンタマイシンを含むコニカルプラスチック遠心管中で混合し、粗く分
10
割する(管あたり3g)。物質のすべてのさらなる加工は、フリード(Fried)およびムス
タイド−ムッサ(Moustaid-Moussa)(カルチャー・オブ・アディポーズ・ティシュー・ア
ンド・アイソレイティッド・アディポサイツ,イン・アディポーズ・ティシュー・プロト
コールズ(Culture of Adipose Tissue and Isolated Adipocytes, in Adipose Tissue Pr
otocols)、G.アイハウド(Aihaud)編、2001、ヒュマーナプレス社(Humana Press, i
nc.):ニュージャージー州、トトワ、197∼213頁)によって記載されるように、層
流フード中で無菌様式で実施する。ATを、鋭いはさみを用いて5∼10mg断片にさら
に分割する。組織は細かく分割すると、RTで最大1時間維持できる(他の管の組織が分
割されている間)。この組織は、この重大な時に代謝速度を高めないよう、37℃には置
かない。次いで、各管の内容物を、約500mlの瓶の頂部に置かれる(漏斗に貼った)
20
ナイロンメッシュを通して注ぐことによって、WAT器官培養物を、脂質の液滴および血
液を含まないよう洗浄する。この後、漏斗上の組織の上に、37℃で少なくとも300m
Lの滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の洗浄液を入れる。次いで、洗浄した組織を滅
菌、風袋計測ペトリディッシュに入れ、大きな血塊はいずれも鉗子で取り除く。WAT器
官培養物を含む風袋計測したペトリディッシュを無菌を維持するために閉じ、次いで、秤
量する。次いで、鉗子または有孔スプーンを用いて6ウェル組織培養プレートにWATを
等しく入れる(約0.5g湿潤重量/ウェル)。次いで、新鮮M199(ギブコ(Gibco)
−BRL、液体、重炭酸イオン緩衝、グルタミンおよび25mM HEPESを補給)お
よび50μg/mLのゲンタマイシンを直ちに加え、培養物を、5%CO2−95%大気
の雰囲気下、加湿した、37℃インキュベーター中で48時間維持して汚染がないことお
30
よび無菌性を保証する。
【0091】
上記の通りに調製した、雄および雌のスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットに
由来するWAT器官培養物を含む3連のウェルを、新鮮M199(ギブコ(Gibco)−BR
L、液体、重炭酸イオン緩衝、グルタミンおよび25mM
HEPESを補給)および5
0μg/mLのゲンタマイシンで3回洗浄する。以下の濃度のグリシンを補給した新鮮M
199培地を加えることによって実験を開始する。対照ウェルにはさらなるグリシンを添
加しない新鮮培地を与え、実験ウェルには、5種の等間隔の濃度のグリシンを補給したM
199培地を与え、最大濃度は、連続投与PK研究の最高投与群の血中グリシンの循環レ
ベルの2倍に等しくする。培地は3日の間、毎日補充する。次いで、培養物を回収し、氷
40
冷PBSで5回洗浄する。先に記載したように、LC/MS法によるグリシンの定量化の
ためにサンプルを調製する。
【実施例12】
【0092】
グリシンの生物活性類似体のスクリーニングのための迅速生化学アッセイ
高レベル(20重量%)の食餌性グリシンは、有意な減量をもたらす。この減量は、グ
リシンの、WATにおいてアポトーシスを誘導する能力の結果であり得る。これは、処理
動物のWATから得たタンパク質抽出物は、セリン位置136でBADをリン酸化する能
力を有していなかったということを実証する予備データに基づいている(図11、12お
よび13)。マスターズ(Masters)ら、14−3−3インヒビッツ・Badインデュース
50
(26)
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ド・セル・デス・スルー・インタラクション・ウィズ・セリン−136(14-3-3 inhibits
Bad- induced cell death through interaction with serine-136)、モレキュラー・フ
ァルマコロジー(Molecular Pharmacology)、2001、60(6)、1325∼31頁、
トンプソン(Thompson)&トンプソン(Thompson)、プッティング・ザ・ラップ・オン・ak
t(Putting the rap on akt)、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal o
f Clinical Oncology)、2004、22(20)、4217∼26頁参照のこと。
【0093】
先に記載したように、他の者が、グリシンが減量を誘導できることを偶然に観察してい
る。しかし、これが生じる機構は解明されていないままであった。本発明者らは、グリシ
ンは、アポトーシスの誘導を導くBADのリン酸化状態の調節を介してWATに対して直
10
接的な生化学的効果を有すると考える。これは、ser−136でのBADのこのような
脱リン酸化が、BATにおいては観察されず、BAT組織の有意な減少も生じなかったと
いう本発明者らの予備実験における観察結果に基づいている。さらに、本発明者らは、脂
肪細胞に分化した、3T3−L1細胞の培地中の高濃度のグリシンは、非処理細胞と比較
した場合に、TUNELの染色の増加を示すということを観察した。ヒートウォール(Hea
twole)、TUNELアッセイ・フォー・アポトーティック・セルズ(TUNEL assay for apo
ptotic cells)、メソッヅ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods in Molecular
Biology)、1999、115、141∼8頁参照のこと。本実施例の目的は、グリシンの
生物活性類似体をスクリーニングするために使用できる迅速バイオアッセイを開発するこ
とである。
20
【0094】
本発明者らは、雌のスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットは、食餌中の高グリ
シンの効果に対して特に感受性があり、迅速な有意な減量が起こるということを見い出し
た。したがって、グリシンの類似体の活性をスクリーニングするために、雌のスプラーグ
・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットにおける有意な減量を用いることが可能であろう。し
かし、このアッセイには時間がかかり、類似体の大規模合成を必要とし、多数の化合物を
スクリーニングするには効率的でないであろう。本発明者らは、分化型3T3−L1細胞
株を用いる迅速生物学的in vitro試験およびser−136でのBADのリン酸
化状態の測定を開発することを提案する。ゲイラード(Gaillard)ら、グロウス・オブ・プ
レアディポサイト・セル・ラインズ・アンド・セル・ストレインズ・フロム・ロデンツ・
30
イン・セーラム−フリー・ホルモン−サプルメンティド・メティウム(Growth of preadip
ocyte cell lines and cell strains from rodents in serum-free hormone-supplemente
d medium)、イン・ビトロ(In Vitro)、1984、20(2)、79∼88頁。
【0095】
このようなアッセイが信頼して用いられるために、本発明者らは、分化型3T3−L1
細胞から得た脂肪細胞が、in vitroでの脂肪細胞と同様の方法で高グリシンレベ
ルに応答することを実証しなければならない。以下の実験は、この目的のために分化型3
T3−L1細胞においてSer136でのBADの脱リン酸化を用いることの有用性およ
び妥当性を実証することを目的とする。
【0096】
40
WATの器官培養について上記に記載された精製プロセスの改変によってWAT由来の
脂肪細胞が得られる。手短には、WATを先に記載したように単離し、以下のさらなるス
テップに付して単離脂肪細胞および間質−血管画分を得る。単離脂肪細胞および間質画分
は、分割したWATを、37℃で60分間の、M199培地中1mg/mlという濃度で
のI型コラゲナーゼでの消化に付すことによって得る。次いで、コラゲナーゼ処理した組
織を、滅菌ナイロンフィルター(350μmメッシュ)を通して濾過し、滅菌遠心管に入
れる。この懸濁液を500×gで1分間遠心分離し、その結果、脂肪細胞含有画分から間
質−血管画分(ペレット)の分離を生じる。それぞれの細胞画分を、ハンクス平衡塩溶液
でさらに3回洗浄する。次いで、それぞれの脂肪細胞および間質−血管画分を計数し、新
鮮M199培地で希釈し、6ウェル培養プレートのウェルにプレーティングする。細胞を
50
(27)
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、5%CO2−95%大気の雰囲気下、37℃インキュベーター中で一晩インキュベート
する。細胞を観察し、生存力および汚染がないことを保証し、培地に以下の漸増する濃度
のグリシンを補給した新鮮M199培地を添加することによって実験を開始する。対照ウ
ェルには、さらなるグリシンを添加しない新鮮培地を与え、実験ウェルには、PD実験の
ために用いたグリシンと同一濃度のグリシンを補給したM199培地を与える。培地は3
日の間、毎日補充する。次いで、培養物を回収し、氷冷PBSで5回洗浄する。細胞を低
張バッファーに曝露することによって溶解し、遠心分離によって清澄化し、溶解物のアリ
コートを使用まで−80℃で保存するために液体窒素中で瞬間凍結する。LC/MS法に
よってサンプルの細胞内グリシン含量を調べる。BAD−Ser136についてのELI
SAか、親和性捕獲LC/MS分析のいずれかによって、Ser−136でのBADのリ
10
ン酸化状態を調べる。各サンプル条件の3連のウェルをプレーティングし、活性なアポト
ーシスを実証するためにTUNELについての免疫組織化学染色を実施する。本発明者ら
は、以下の実験により、グリシンがWATに由来する脂肪細胞に対して直接的に作用する
という決定的な証拠が提供されると考える。
【実施例13】
【0097】
グリシンは、分化型3T3−L1細胞に由来する脂肪細胞に作用して、BADの脱リン酸
化およびアポトーシスを誘導する。
【0098】
3T3−L1細胞を、標準的な方法論によって、培養液中で増殖させ、脂肪細胞に分化
20
させる。ネグレル(Negrel)&ダニ(Dani)、カルチャー・オブ・アディポーズ・プレカーサ
ー・セルズ・アンド・セルズ・オブ・クローナル・ライン・フロム・アニマル・ホワイト
・アディポーズ・ティシュー,イン・アディポーズ・ティシュー・プロトコールズ(Cultu
res of Adipose Precursor Cells and Cells of Clonal Lines from Animal White Adipo
se Tissue, In Adipose Tissue Protocols)、G.アイハウド(Ailhaud)編、2001、ヒ
ュマーナプレス社(Humana Press, inc.):ニュージャージー州、トトワ、225∼227
頁参照のこと。実験の開始に先立って、3T3−L1脂肪細胞をトリプシン処理し、dD
MEM[1g/Lのグルコースおよび110mg/L ピルビン酸Naを含有し、3.7
g/L 重炭酸Na、33μMビオチン、17μMパントテン酸塩、抗生物質(62mg
/Lペニシリンおよび50mg/Lストレプトマイシンまたは10mg/Lテトラサイク
30
リン)、17nMインスリンおよび2nM T3および10%FBSを補給]で5回洗浄
する。細胞を6ウェル培養プレートのウェルに、8.5×103個/cm2という密度でプ
レーティングする。細胞を観察し、生存力および汚染がないことを保証し、培地に以下の
漸増する濃度のグリシンを補給した新鮮dDMEM培地を添加することによって実験を開
始する。対照ウェルには、さらなるグリシンを添加しない新鮮培地を与え、実験ウェルに
は、PD実験のために用いたグリシンと同一濃度のグリシンを補給したdDMEM培地を
与える。培地は3日の間、毎日補充する。次いで、培養物を回収し、氷冷PBSで5回洗
浄する。細胞を低張バッファーに曝露することによって溶解し、遠心分離によって清澄化
し、溶解物のアリコートを使用まで−80℃で保存するために液体窒素中で瞬間凍結する
。LC/MS法によってサンプルの細胞内グリシン含量を調べる。BAD−Ser136
40
についてのELISAか、親和性捕獲LC/MS分析のいずれかによって、Ser−13
6でのBADのリン酸化状態を調べる。予備実験は、正常血中循環レベルの2倍に等しい
培地中濃度のグリシンは、3T3−L1脂肪細胞にアポトーシスを起こさせることが陽性
TUNEL染色によって証明されることを示す。各サンプル条件の3連のウェルをプレー
ティングし、活性なアポトーシスを実証するためにTUNELについての免疫組織化学染
色を実施する。
【実施例14】
【0099】
グリシン処理が、WATおよび分化型3T3−L1細胞に由来する脂肪細胞において同等
の生物学的反応を誘発していることを確認するための、2D−ゲルおよびICAT(同位
50
(28)
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体コードアフィニティータグ)分析。
【0100】
2D−ゲルおよびICAT分析を用いて、グリシン処理で誘発される差次的に発現され
るタンパク質のパターンが、グリシン処理したWATタンパク質抽出物において見られる
パターンと同様であることを実証することによって、分化型3T3−L1細胞に由来する
脂肪細胞の有用性をさらに確証する。パットン(Patton)ら、トゥー−ディメンショナル・
ゲル・エレクトロフォレシス;ベター・ザン・ア・ポーク・イン・ザ・ICAT?(Two-d
imensional gel electrophoresis; better than a poke in the ICAT?)、カレント・オピ
ニオン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology)、2002、1
3(4)、321∼8頁参照のこと。
10
【0101】
手短には、WATおよび3T3−L1細胞由来脂肪細胞を、先に記載したように得る。
対照および実験ウェルにおけるグリシンの濃度は、上記で記載したように処理する。分析
のためのサンプルは、先に記載したように調製し、等量のサンプルを、3T3−L1脂肪
細胞およびWAT由来脂肪細胞がグリシン処理に対して生物学的に同等の方法で応答して
いることを実証するために、2D−ゲルおよびICAT分析による分析に付す。ICAT
による分析は、グリシンがWATを形成する脂肪細胞においてアポトーシスを誘導する作
用機序を解明するための開始点を提供し得る。ICATは、グリシンおよび処理細胞間で
定量可能な方法で、どのタンパク質が異なるかを同定できる強力な方法である。ICAT
方法論を図17に図式的に示す。
20
【実施例15】
【0102】
グリシンの構造類似体のライブラリーの合成および3T3脂肪細胞アポトーシスを誘導
する能力についての化合物のプレスクリーニング。
【0103】
グリシンは容易に入手できる、非毒性のアミノ酸である。グリシン、グリシン類似体ま
たはその組み合わせは、WATにおけるアポトーシスの誘導によって減量を誘導するはず
である。以下の一連のグリシン類似体を合成できる:
【0104】
【化7】
30
【0105】
R1=R2=H、Et、Pr、Bn
R1=R2=Me、Et、Rr
R3=Me、Et、Pr、Bn
R1=H、R2=Bn;R1
R3=Me、Et、Pr、Bn
R2=(CH2)5
=Me、Et、PrまたはBn
【0106】
40
(29)
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【化8】
【0107】
R1=R2=H
10
R1=R2=Me、Et、Rr
R1=H、R2=Bn
R1、R2=(CH2)5
【0108】
【化9】
20
【0109】
R1=R2=H、かつ、R3=H,Me
R1=R2=Me、Et、Prおよび
R1=H、R2=BnまたはMe
R1、R2=(CH2)5またはMe、R3
式Iシリーズは、例えば、以下のスキームによって合成できる:
【0110】
【化10】
30
【0111】
上記スキームにおいて提案されるアミノスルホン酸類似体は、種々のジアルキルアミン
、例えば、ジメチルアミンをクロロメタンスルホン酸で処理することによって合成する。
40
式IIシリーズは、例えば、以下のスキームによって合成できる:
【0112】
【化11】
50
(30)
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【0113】
上記に示される類似体は、還元剤として水素化シアノホウ素ナトリウムを用いる還元条
件下で、ジアルキルアミンまたは第1級アミンをオキソ酢酸メチルエステルで処理するこ
とによって合成する。生成物はクロマトグラフィーによって精製する。式IIIは、例えば
、以下のスキームによって合成できる:
【0114】
【化12】
10
【0115】
N(アルキル)またはN,N−ジアルキルグリシンの遊離カルボキシ末端を、ジシクロ
ヘキシルカルボジイミド(DCC)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下
、アミンを用いてアミド化する。すべての場合において、生成物はクロマトグラフィーに
よって精製する。同一性、純度および量は、質量分析、NMR、分析的液体クロマトグラ
フィーおよび必要に応じていずれかのその他の分析的方法論によって確定する。
【0116】
合成された類似体を、Ser−136でのBADの脱リン酸化を促進するその能力につ
20
いての一次スクリーニングに付す。類似体を、グリシンを補給していない対照と同じ濃度
で、培地中グリシンの陽性対照と同じ濃度で、および公知の有効な濃度でスクリーニング
する。すべてのアッセイは3連で実施する。すべての可能性ある陽性類似体を反復スクリ
ーニングに付す。化学特性を確定するためのin vitro試験での同定された陽性化
合物の二次スクリーニングにより、in vivo試験のための良好な薬物候補となる。
【実施例16】
【0117】
幼若動物
図18および19はそれぞれ、幼若雌スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットの
食餌へのグリシンの添加が、体重増加および成長の用量依存的減少をもたらしたことを示
30
す。グリシンを補給した食餌で4週間処理した動物を、グリシン補給を含まない食餌に切
り換えた(図18および19、10%から0%)。これにより、迅速な成長および体重増
加がもたらされ、その結果、それらは、1ヶ月以内に、群1の対照動物と同様の大きさお
よび体重となった。図20および21はそれぞれ、幼若雄スプラーグ・ドーリー(Sprague
-Dawley)ラットの食餌へのグリシンの添加が、体重増加および成長の用量依存的減少をも
たらしたことを示す。グリシンを補給した食餌で4週間処理した動物を、グリシン補給を
含まない食餌に切り換えた(図20および21、10%から0%)。これにより、迅速な
成長および体重増加がもたらされ、その結果、それらは、1ヶ月以内に、群1の対照動物
と同様の大きさおよび体重となった。
【図面の簡単な説明】
40
【0118】
【図1】成体雄フィッシャーラットにおける体重に対する、5%グリシン食、20%グリ
シン食および無添加食の効果を示す図である。
【図2】成体雄フィッシャーラットにおける腹部脂肪含量に対する、5%グリシン食、2
0%グリシン食および無添加食の効果を示す図である。
【図3】成体雌フィッシャーラットの体重に対する、5%グリシン食、20%グリシン食
および無添加食の効果を示す図である。
【図4】成体雌フィッシャーラットにおける腹部脂肪含量に対する、5%グリシン食、2
0%グリシン食および無添加食の効果を示す図である。
【図5】成体雄フィッシャーラットにおける飼料消費に対する、5%グリシン食、20%
50
(31)
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グリシン食および無添加食の効果を示す図である。
【図6】雄ZDFラットの体重に対する、20%グリシン食および無添加食の効果を示す
図である。
【図7】ZDFラット腹部脂肪含量に対する、20%グリシン食および無添加食の効果を
示す図である。
【図8】雌スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットの体重に対する、5%、10%
、15%および20%グリシン食および無添加食の効果を示す図である。
【図9】スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットの飼料消費に対する、5%、10
%、15%および20%グリシン食および無添加食の効果を示す図である。
【図10】雌スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットにおける腹部脂肪含量に対す
10
る、5%、10%、15%および20%グリシン食および無添加食の効果を示す図である
。
【図11A−B】白色脂肪組織および褐色脂肪組織におけるチロシン136でのBADの
リン酸化を示す図である。図11A:レーン1:分子量マーカー;レーン2:陽性対照と
してのAkt−リン酸化BAD;レーン3:対照ラットから得たリン酸化BAD;レーン
4:5%グリシン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD;レーン5:20%グリ
シン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD)。図11B:レーン1:陽性対照と
してのAkt−リン酸化BAD;レーン2:対照ラットから得たリン酸化BAD;レーン
3:5%グリシン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD;レーン4:20%グリ
シン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD)。
20
【図12】高グリシン食で処理されたスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットから
得た肝臓組織におけるBADのリン酸化を示す図である。レーン1:陽性対照としてのA
kt−リン酸化BAD;レーン2:対照ラットから得たリン酸化BAD;レーン3:5%
グリシン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD;レーン4:15%グリシン食を
給餌されたラットから得たリン酸化BAD。
【図13】高グリシン食で処理されたスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットから
得た筋組織におけるBADのリン酸化を示す図である。レーン1:分子量マーカー;レー
ン2:陽性対照としてのAkt−リン酸化BAD;レーン3:対照ラットから得たリン酸
化BAD;レーン4:5%グリシン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD;レー
ン5:5%グリシン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD;レーン6:15%グ
30
リシン食を給餌されたラットから得たリン酸化BAD)。
【図14】対照動物の脂肪組織から得たCy3フルオロフォアで標識されたタンパク質の
二重標識実験の結果を示す図である。
【図15】食餌中20%グリシンで処理された動物の脂肪組織から得たCy3フルオロフ
ォアで標識されたタンパク質の二重標識実験の結果を示す図である。黄色の円は対照に対
するダウンレギュレーションを示すのに対し、赤色の円はアップレギュレーションを示す
ことが目視検査によって認識できる。
【図16A−B】グリシンの定量化のLC/MS法の代表的な結果を示す図である。図1
6A上部出力記録は、カラム上、各々78.125pMのグリシン、プロリン、フェニル
アラニン、リジンおよびロイシンについて得られた複合TIC(Total Ion Current(全
40
イオン電流))である。中央の出力記録は、グリシンについて抽出したTICクロマトグ
ラムである。下部の出力記録は、PDA(Photo Diode Array(フォトダイオードアレイ
))による複合波長モニタリングによって得られたものである。図16Bは、較正曲線を
構築するために、グリシンについての抽出されたTICのピーク下の面積が用いられた場
合の、グリシンについて得られる標準曲線を示す。較正曲線を構築するために、各較正レ
ベルで3連の注入を用いた。
【図17】(同位体コードアフィニティータグ)プロセスを示す図である。
【図18】グリシンに対する幼若雌ラット体重の用量反応を示す図である。
【図19】グリシンに対する幼若雌ラット体長の用量反応を示す図である。
【図20】グリシンに対する幼若雄ラット体重の用量反応を示す図である。
50
(32)
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【図21】グリシンに対する幼若雄ラット体長の用量反応を示す図である。
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
(33)
【図5】
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【図7】
【図8】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11A−B】
(34)
【図12】
【図14】
【図13】
【図15】
【図16A−B】
【図17】
JP 2012-232982 A 2012.11.29
(35)
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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(36)
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A23L
1/305
(2006.01)
A23L
1/305
A23K
1/16
(2006.01)
A23K
1/16
301G
(74)代理人 100114465
弁理士 北野 健
(74)代理人 100156915
弁理士 伊藤 奈月
10
(72)発明者 ヒルマン,ジェフリー,ダニエル
アメリカ合衆国 32608 フロリダ州 ゲインズビル,エスダブリュ トゥウェンティシック
ス プレイス 6424
(72)発明者 ショージニキ,エリック ダブリュ.ティー.
アメリカ合衆国 32606 フロリダ州 ゲインズビル,エヌダブリュ サーティーナインス アベニュー 5400
(72)発明者 オラガンティ,ラヴィ,シャンカー
アメリカ合衆国 32615 フロリダ州 アラチュア,ターキー クリーク 516
Fターム(参考) 2B150 AB03 AB10 DA44
4B018 MD19 MD94 ME14
4C206 AA01 AA02 FA53 GA19 GA22 JA08 MA01 MA02 MA04 MA72
NA14 ZA70 ZB21
20
(37)
【外国語明細書】
2012232982000001.pdf
JP 2012-232982 A 2012.11.29
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