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69
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問
題
第1問
プロダクト・インテグリティについての説明のうち、最も適切なものはどれか。
ア プロダクト・インテグリティは、製品開発を統合化することである。
イ プロダクト・インテグリティは、製造工程の垂直統合を進めることである。
ウ プロダクト・インテグリティは、製品属性の全体的な調和を図ることである。
エ プロダクト・インテグリティは、多様化した製品分野を集約する技法のひとつ
である。
オ プロダクト・インテグリティは、不合格製品を生産ラインから除去する管理技
法のことである。
第2問
事業戦略を展開する場合、他社の模倣や追随を受けにくい競争優位を織り込むこ
とが重要である。そのような対応として最も適切なものはどれか。
ア
これまで練り上げてきた生産システムや販売システムを一貫性のある全社的
な事業システムとして構築する。
イ 熟練が必要な手間のかかる工程を合理化し、工場を自動化して生産能力を増強
する。
ウ 将来性のある独自な製品事業分野であっても現在の収益に貢献していない場
合は資源配分を制限する。
エ 製品ラインを絞り込み、複雑な分業工程をやめて、汎用機械による量産を促進
する。
オ ブランドの強化を図るために、コスト優位を発揮してシェアを追求するべく量
販店での販売キャンペーンに注力する。
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第3問
近年、技術の事業化をめぐって「ダーウィンの海」と呼ばれる現象が問題になっ
ている。その説明として最も適切なものはどれか。
ア
医療技術がITやロボット工学と融合して医療ベンチャーが誕生する現象を
いう。
イ 最新の技術で開発された製品が市場競争を通して生き残ることが難しい現象
をいう。
ウ ナノテクノロジー分野で微細加工技術をめぐる熾烈な競争が起こっている現
象をいう。
エ 半導体産業で新規な技術が突然変異的に出現して市場で既存製品を駆逐する
現象をいう。
オ ベンチャー企業が市場競争を通じて多産多死する現象をいう。
第4問
戦略的な意思決定が実施される状況に関する次の記述のうち、最も不適切なもの
はどれか。
ア 計画に沿って戦略的な課題領域を細分化して、担当部署ごとに意思決定権限を
与え、現場での課題解決を求めるようにする。
イ 全社的にビジョンの共有を図り、戦略的な課題を細分化して、担当部署に主体
的な意思決定権限を与える。
ウ 戦略策定専門スタッフが、高度な分析を通じて戦略的な意思決定事項を詳細に
計画し、実行についても厳密な統制を行う。
エ 戦略的な意思決定は企業の環境に関わる問題なので、できる限り意思決定権限
をトップに集中させて、トップの側近である戦略スタッフが意思決定のサポート
を行う。
オ 戦略的な意思決定は、予測不可能で不確実な問題解決になるので、フィードバ
ックループを通して、逐次的に不確実性を削減する。
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第5問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
全国各地に様々な産業が集積している。戦後の工業化の過程では重工業を中心に
した工業地帯が生まれ、その分散配置を進める中で① 新産業都市やテクノポリスな
どの集積地が登場した。工業化が進むにつれて、人口の都市への集中が起こり、都
市の消費を支える中心商店街などの商業集積がみられるようになった。
しかし、産業構造が高度化し、生活スタイルや消費行動が変化するようになると、
②地方都市では商店街は困難に直面するところとなった。また、先端技術分野では
③異業種の企業が連携して新たな産業集積が生まれつつある。
(設問1)
文中の下線部①の新産業都市やテクノポリスの実態について最も適切なもの
はどれか。
ア アジア、とくに中国の工業化が急進展していたので、地方の企業誘致は中国
との競争にさらされるようになった。
イ 行政は地場企業の工業用地への入居を優先したので、大企業の地方分散は進
まなかった。
ウ 工業団地を整備するにあたって、行政は企業の要望を取り入れたので、どこ
も入居は順調に推移した。
エ 産業の集積には、企業のみならず、技術や人材を供給する大学、自治体の支
援、そして便利で良好な生活空間などが一体となって相乗効果を発揮すること
が望ましいことが指摘された。
オ 大企業が生産拠点を地方に分散するにともなって、工業力の乏しい地方都市
にも中小のサポーティング・インダストリーが多数生まれ、第1次ベンチャ
ー・ブームが地方から起こった。
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(設問2)
文中の下線部②の商店街をめぐる問題として最も不適切なものはどれか。
ア 郊外型の大型店に客を奪われ、商店街の売上が激減している。
イ 商店街の経営者が高齢化して後継者不足になっている。
ウ 商店街への大型店出店への反対運動が激しく、大型店は郊外出店を余儀なく
される例が続出している。
エ タウン・マネジメントを使った商店街の再開発は大きな成果を生み出せない
でいる。
(設問3)
文中の下線部③の新たな産業集積の説明として、最も適切なものはどれか。
ア エレクトロニクスや自動車産業における水平型のネットワークによる技術
連携が代表的であり、ネットワークの中心となる企業の名を冠した産業集積が
みられる。
イ 社会的な分業が特定地域に集中して地域の特産品が生まれてきている。
ウ この例として先端技術分野の異業種が空間的に集積し、ネットワーク型の連
携をとっている例がIT分野などにみられ、しばしば産業クラスターと呼ばれ
ている。
エ この例として注目されるのは、ハイテク団地をつくり、先端技術企業を集団
立地させて産業集積をつくるものであり、手法的には古典的であるが、M.ポ
ーターの提唱に沿って産業集積のダイヤモンド・モデルと呼ばれている。
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第6問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
先端技術分野では技術革新のスピードが速く、 A
の法則が指摘するように
半導体では集積度が2年ごとに4倍になる現象がみられる。また、先端技術は異種
技術が複合的に駆使されており、単独の企業がすべての技術を独占することが難し
くなった。例えば半導体のアセンブラーは大手電機メーカーであるが、その生産プ
ロセスに動員される技術は、写真焼付け技術、金属微細加工技術、セラミック技術
などエレクトロニクス以外の分野のものが多く、これらすべてを電機メーカーが自
社技術としてカバーできるものではない。このことは、独自技術を持つ中小企業に
も参加の可能性を広げるものであり、これがベンチャー創造に結びついている。特
にアメリカでは、IT産業をめぐっていわゆる「
B
フィーバー」と呼ばれた
ベンチャー企業の活発な活動が見られる。
しかし、早い技術革新にあわせて先陣争いを繰り広げると、需給のミスマッチが
起こりやすい。その結果、一世代前の技術による製品にも一定の市場が残されるこ
とがあるので、 ① 後発企業にも後発のメリットを生かしながら市場に参入するチャ
ンスが生まれる。また、技術革新のスピードにあわせるために、企業は応用研究に
重点をおいて、基礎研究がおろそかになりやすい。このため、 ② 日本では企業は基
礎研究を大学に求め、産学連携を強めている。しかし、企業の内部には、基礎研究
と応用研究をうまく連結して製品化するプロセスが進まない、 C
という問題
を抱えることが少なくない。
(設問1)
文中の空欄Aに入る最も適切なものはどれか。
ア
エ
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オーム
パーキンソン
イ
オ
クルーグマン
ムーア
ウ
ショックレー
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(設問2)
文中の空欄Bに入る最も適切なものはどれか。
ア ケンブリッジ
エ シリコンバレー
イ コロラド
オ ソーホー
ウ シックスシグマ
(設問3)
文中の空欄Cに入る最も適切なものはどれか。
ア イノベーション・ジレンマ
エ 情報の粘着性
イ 技術崩壊
ウ 死の谷
オ プロジェクト・ジレンマ
(設問4)
文中の下線部①の後発のメリットの説明として、最も不適切なものはどれか。
ア 旧式になった製造装置を安価に調達できる。
イ 技術が標準化されている部分が少なくないので研究開発負担が少なくてす
む。
ウ このような競争では製品ブランドが成立しにくいので、品質と価格を武器に
グローバルに営業できる。
エ 市場で製品内容が既によく知られているので、セールス・エンジニアリング
による技術情報提供の負担が少ない。
オ 先発メーカーの知財管理が厳しいため、当該製品の市場価格が高く保たれて
おり、参入のメリットは大きい。
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(設問5)
文中の下線部②の現象が起こる要因の説明として、最も不適切なものはどれか
。
ア
1990 年代の不況の中で、企業は基礎研究の負担能力を削いできたので、大学
にそれを求める傾向を強めている。
イ 企業は大学との連携によって、大学の基礎研究能力のみならず、研究人材に
ついても調達可能性をもつことができる。
ウ 国立大学法人の教員の兼業規定が緩和され、企業の顧問に就任したり自らベ
ンチャー企業を起こすなどの活動が可能となり、企業は大学との連携を図りや
すくなった。
エ 大学は知的財産対策を強めており、パテント供与先の企業に全学の施設を自
由に利用することが義務づけられた。
オ 理工系学部を持つ国立大学では、国立大学法人化にあわせて外部資金の調達
が求められるようになり、産学連携を強めている。
第7問
企業は戦略的適応を図るために、既存のドメインを見直し、それを再定義するこ
とが重要であるが、再定義されたドメインで事業がうまく進展しないことがしばし
ばみられる。これにはいくつかの理由が考えられるが、その理由として最も不適切
なものはどれか。
ア 既存の事業の仕組みを再構築するのに時間がかかるから。
イ 再定義されたドメインが以前のものほど魅力的ではないから。
ウ 再定義するドメインがライバル企業のドメインと協調的であるように業界団
体の指導を受けるから。
エ ドメイン再定義にともなう事業活動の変更について顧客の理解を得るのが難
しいから。
オ 慣れ親しんだ仕事の仕組みを変更することへの従業員の抵抗が起こるから。
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第8問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
1960 年代半ばの米国上場大企業では①経営者支配の会社が数多くなっていた。と
ころが、1960 年代後半には一転して第3次企業合併ブームと呼ばれるほどにM&A
が活発化した。当時のM&Aは② 関連性のない企業を買収するものが多く、これに
よって一挙に巨大な会社が誕生することがみられた。1970 年代になると買収にかわ
って、③ 事業分割による事業売却が多く見られるようになった。買収にしろ売却に
しろ、米国では企業や事業の売買は日常的になり、1980 年代半ば頃には、株式市場
は④ 企業価値を最大化するための事業ポートフォリオの組み換えの場となったので
ある。
(設問1)
文中の下線部①についての説明として、最も適切なものはどれか。
ア
一般株主が取締役を解任できないほどに広範囲に株式所有が分散し、専門経
営者が経営権をもつようになった会社をいう。
イ 金融機関や事業会社などの法人によって株式が所有され、株主に代わって法
人株主が専門経営者を任命するようになった会社をいう。
ウ 専門的な経営能力をもつ大株主から選出された取締役が、取締役会の過半数
を超え、経営権を掌握するようになった会社をいう。
エ 従業員から取締役を選び、彼らに経営を委託する会社をいう。
オ 従業員に創業者一族がいなくなった上場大企業をいう。
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(設問2)
文中の下線部②のような多角化は何と呼ばれているか、最も適切なものを選べ。
ア アマルガメーション
ウ コンソーシアム化
オ レバレッジド・バイ・アウト
イ
エ
コングロマリット化
ストック・ホールディング化
(設問3)
文中の下線部③のような現象がみられるようになった背景として、最も不適切
なものはどれか。
ア 戦略的提携がM&Aに代わって登場してきたので、M&Aが下火になった。
イ 多様な現業部門を血の通わない数値データで管理する傾向が強くなって、経
営成果が上がりにくくなり、多角化のコストが上昇した。
ウ 買収した異業種企業の統一的な管理が難しくなり、管理が困難な企業や事業
を切り捨てた。
エ ファンド・マネジャーやファイナンス専門家が企業価値を厳格に評価するよ
うになり、被買収企業の業績が短期的に問われるようになった。
オ 無秩序な買収の資金コストの負担を軽減するために、売却可能な事業を切り
売りした。
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(設問4)
文中の下線部④のような企業価値の考え方は米国の資本主義の性格ともいえ
るが、それがもたらした現象の説明として、最も不適切なものはどれか。
ア 各種のファンドや投資会社がM&Aを繰り返しながら投資収益の増大を追
求したので、株式市場が活性化した。
イ 資産と負債の総合管理(アセット・ライアビリティ・マネジメント:ALM)
を重視した経営が展開されるようになり、資産の運用リスクが高まった。
ウ 小規模企業でも金融機関からM&A資金を簡単に調達できたので、M&Aを
通じて大企業を手に入れて新興大企業にのし上がることが見られた。
エ 短期的な利益志向を強め、企業の持続的な成長を支える組織的な経営能力は
軽視される傾向が強まった。
オ 買収によって一株当たり利益を高め、上昇した株価をてこに新たな資金を調
達して、次の買収を行うという企業価値追求がみられるようになった。
(設問5)
1990 年代までのわが国では米国に比べてM&Aは非常に少なかった。この説明
として最も不適切なものはどれか。
ア 1957 年の資本自由化を契機に株式の相互持ち合いが進み、買収に必要な株式
取得が困難になった。
イ 財閥が復活し、その系列企業の結束が固くなって、買収ができない状況にな
った。
ウ 終身雇用に代表される日本的経営が強く、M&Aを嫌悪する経済的、社会的
気運が強く存在した。
エ メインバンク制による系列融資が企業間の結束を強めたので、系列への外部
からの参入を阻止できた。
オ わが国では米国のような株式市場の整備が不十分であり、M&Aを目的とし
たファイナンス会社も少なかった。
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第9問
企業の業績が悪化しているにもかかわらず、管理者が自ら行った意思決定を修正
できず、逆にその意思決定に固執するようになってしまう場合がある。このような
現象が起こる原因に関する記述として最も不適切なものはどれか。
ア 過去の意思決定が誤っていることを認めると、これまでの投資が埋没費用とな
ってしまうため。
イ 環境の構造が複雑な場合、過去の意思決定が現在の業績にどのような影響を与
えたか、その因果関係が分かりにくくなるため。
ウ 管理者がその企業を代表する人間として、対外的に業績について説明責任を持
つ度合いが低いため。
エ 業績の悪化に対する対応策として、過去にその企業に成功をもたらした戦略を
繰り返したほうが、まったく新しい戦略をとるよりも無難であると考える傾向が
あるため。
オ 現在の業績の悪化は、外部環境の予期せざる変化に起因すると認識し、自分た
ちが行った意思決定そのものは間違っていないと考える傾向があるため。
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第 10 問
我が国でも労働力の流動化が高まり、従業員のキャリア開発の重要性が増してき
ている。キャリア発達におけるキャリアアンカーに関する記述として最も適切なも
のはどれか。
ア キャリアアンカーとは自分の能力・価値観・動機などを含む自己イメージを意
味し、個人が最初に企業に入社するまでに形成される。
イ キャリアアンカーとは自分が生涯にわたって尊敬する人物を意味し、さまざま
な意思決定場面で見習うべき手本として考える対象である。
ウ 管理能力をキャリアアンカーとしている者は、自分が分析能力、対人関係能力、
情緒的能力といった3つの能力を組み合わせて持っていると認識する傾向にあ
る。
エ 技術的・職能的能力をキャリアアンカーとしている者は、特定領域での創造性
を発揮できる機会を求め、企業の創業者に典型的に見られる傾向にある。
オ 自律性をキャリアアンカーとしている者は、より高い地位や報酬を求めて、企
業間を移動しやすい傾向にある。
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第 11 問
企業組織は利害関係者集団との資源取引においてその貢献に見合う十分な誘因
を支払うだけでなく、利害関係者集団から正当性を獲得しなければ存続していくこ
とはできない。企業組織と正当性に関する記述として最も不適切なものはどれか。
ア 安定的な配当政策や商品の品質管理、長期雇用政策などは、組織が生み出す成
果の信頼性を高めるため、正当性の獲得に貢献する。
イ 企業組織が安定的な構造を持つのは、それが利害関係者からの正当性の獲得に
貢献するからである。
ウ 企業の会計責任は、投資家から正当性を獲得するために重要な貢献をしている。
エ 企業は法や社会規範を遵守することを通じて、社会からの正当性を獲得するこ
とができる。
オ 他の企業とは異なる組織形態や積極的な差別化戦略を採用し、急速に成長して
いる企業組織の正当性は高くなる。
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第 12 問
組織における職務デザインにおいて、職務、責任、権限の関係を明確に理解して
おく必要がある。職務デザインと職務・責任・権限関係に関する記述として、最も
適切なものはどれか。
ア 権限とは、職務を遂行するための、組織内の諸資源(ヒト、モノ、カネ、情報
など)を一定の自由裁量の範囲内で使用する権利を意味する。
イ 職務エンリッチメント(enrichment)とは、複数の職務について責任権限を持
つように職務をデザインする方法である。
ウ 上司が部下に権限を委譲することがあるが、それに伴い責任も上司が負う必要
はなくなる。
エ 責任とは職務を遂行する義務であるから、職務は他者の行動から独立に設計す
ることが望ましい。
オ 高い成果を上げている組織では、すべての職務について、職務・責任・権限は
一致している。
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第 13 問
経営組織構造をデザインするには、職務の設計、部門化、コントロールの範囲、
指揮命令系統の確保、権限-責任の配分、公式化の程度などを決める必要がある。
これらに関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 同じ企業内でも職務によって公式化の程度が異なり、公式化の度合いが高くな
ると従業員の自由裁量の幅は広くなる。
イ 機能別に部門化する方法は、類似の専門能力を持つ人々をひとつの部門に集め
ることで、範囲の経済性を達成しようとするものである。
ウ コントロールの範囲を広くすることによって管理階層をフラットにするには、
部下に十分な権限や情報を与えるとともに、問題解決スキルを教育しておくこと
が重要である。
エ 分散処理型の情報システムを導入すると、責任-権限の分権化が進み、指揮命
令系統の一元性を維持することが容易になる。
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第 14 問
職務設計を行うには、その職務の困難さが従業員の動機づけにどのような影響を
与えるかを考慮に入れなければならない。図A、B、C、Dは、職務の困難さと職
務成果の関係を仮説的に表したものである(ただし報酬の影響は考慮に入れていな
い)
。これらの図について、下記の設問に答えよ。
A
B
高
高
職務成果
職務成果
中
低
中
低
低
中
職務の困難さ
高
低
C
中
職務の困難さ
高
D
高
高
職務成果
職務成果
中
中
低
低
低
中
職務の困難さ
高
低
中
職務の困難さ
高
(設問1)
動機づけの理論のうち、期待理論を前提としている図として最も適切なものは
どれか。
ア A
イ B
ウ
C
エ
D
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(設問2)
動機づけの理論のうち、達成動機理論を前提としている図として最も適切なも
のはどれか。
ア A
イ B
ウ
C
エ
D
第 15 問
一般に事業の海外進出の程度によって、企業経営は、国内経営段階から、国際化
段階、多国籍化段階、グローバル化段階の順で高度化していくと考えられている。
企業経営のこうした発展段階にしたがって、その戦略に適した組織構造や経営管理
システムを構築していかなくては、企業はその経営資源を有効に活用することはで
きない。
国際化段階、多国籍化段階、グローバル化段階の各段階における組織構造や管理
システムの特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 国際化段階は事業の海外進出の初期段階であり、主に商社などと提携した製品
輸出が中心であるため、社内には海外業務を専門に管理する部門はまだ形成され
ていない。
イ 多国籍化段階では、進出した各国の事情に合わせて製品仕様などを変えていか
なくてはならないので、海外業務を専門に扱う国際事業部のような組織がおかれ、
全社の海外業務を集中的に管理する。
ウ 多国籍化段階では、国もしくは地域別の事業部制をとることが多く、それぞれ
が各国の市場にあわせた事業戦略をとることができる。
エ グローバル化段階では、進出したそれぞれの国や地域で十分大きな規模で企業
活動を展開しているため、それぞれの海外子会社ごとに独立の戦略的意思決定が
できるよう十分な責任・権限が与えられている。
オ グローバル化段階では、地域別・製品別のマトリックス構造をとることが多い
が、進出した各国間の文化の差などに十分配慮して、地域ごとに異なる人事評価
規定などが導入される。
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第 16 問
企業組織においてほとんどの職務は集団を単位に行われている。集団の機能やマ
ネジメントに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア
環境が安定している場合には集団内部では同調行動を促す強い力が働くため
コンフリクトが起こりにくいが、外部環境が悪化すると集団の凝集性が低下しコ
ンフリクトが起こりやすくなる。
イ 凝集性が高い集団が、あまり慣れていないタイプの問題解決に直面し、時間的
に早く結論を出すようなプレッシャーを受けると、「集団思考(group think)」
に陥りやすい。
ウ 集団の意思決定の方が、個人の意思決定に比べてリスクの高い選択を行いやす
い傾向にあるのは、個人が決定に対する説明責任を負う可能性が低いからである。
エ 集団の凝集性が高く、集団の目標と組織の目標が一致する度合いが高くなると、
組織の生産性は高くなる。
オ 集団を小規模に設計し、メンバーが長い時間にわたって経験を共有するように
なると、集団の凝集性は高くなり、組織文化が生まれてくる。
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第 17 問
企 業 組 織 を 活 性 化 す る 方 法 の 一 つ と し て 「 組 織 開 発 ( Organizational
Development)
」と呼ばれる手法が注目を浴びてきた。組織開発に関する記述として
最も適切なものはどれか。
ア 組織開発は、計画・組織・指揮・統制という管理プロセスの中で行われる従業
員能力開発手法の一つで、主にジェネラリストを養成するために、管理プロセス
の全体を経験させることを通じて行われる。
イ 組織開発は通常の業務を遂行中に「行動を通した学習(learning by doing)
」
によって行われる能力開発であり、自己啓発セミナーなどと組み合わせて行うと
効果がある。
ウ 組織開発のチェンジエージェントとして行動科学者が活用され、参加的・協力
的な組織文化を重視する傾向にある。
エ 組織開発プログラムが構造改革への介入を行う場合には、権限を集権化し管理
者の数を減らすことを通じ、人件費削減といった経済的効果を組織にもたらす。
オ 組織開発ではチームビルディング手法がよく使われ、集団圧力を使ってメンバ
ーが落ちこぼれることがないように訓練する。
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第 18 問
近年わが国でも雇用形態の多様化が進み、年功序列型賃金体系が企業の人件費コ
ストを圧迫するようになり、一方で成果主義賃金制度の有効性に疑問が投げかけら
れるなど、賃金管理システムを見直す動きが盛んになっている。賃金管理に関する
記述として、最も適切なのはどれか。
ア 一般に職務給を導入するには、正確に職務分析を行う必要があるが、成果主義
賃金制度は、結果としての成果に注目するので職務分析をする必要はない。
イ 企業業績が上昇しているときには、ベースアップの形で社員にその成果を還元
することが、短期的な環境変動の観点から見て適切である。
ウ 職能給を採用すると、職務給の場合と比べて配置転換が難しくなり、成果に対
する人件費が高くなる傾向にある。
エ 職務能力が経験年数にともなって上昇するような業務が減ってきて、むしろ勤
続年数の長さが新しい職務を学習することに不適合を起こす場合には能力給は
採用せず、年功給を採用すべきである。
オ 成果主義賃金として職務給が制度化される場合には、担当職務を社員の希望に
沿ったものにするため、自己申告や社内公募制などを取り入れるのが一般的であ
る。
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第 19 問
労働基準法において定められている、労働者名簿、賃金台帳、記録の保存、時効
に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を
除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で
定める事項を記入しなければならない。
イ 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び
賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しな
ければならない。
ウ 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働
関係に関する重要な書類を2年間保存しなければならない。
エ 労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く。
)、災害補償その他の請求権は
2年間、退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅
する。
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第 20 問
労働契約の期間等について定めた労働基準法第 14 条第2項の規定に基づき、「有
期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が平成 16 年1月1日から適用
されているところである。その基準の内容について、最も不適切なものはどれか。
ア 使用者が有期労働契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労
働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しな
ければならない。
イ 使用者は、有期労働契約の締結後に契約を変更する場合には、当該契約を締結
した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。
ウ 使用者は、有期労働契約の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満
了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。
エ 使用者は、有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨を明示されてい
るものを除く。)を更新しない場合には、少なくとも当該契約期間満了の2週間
前までにその予告をしなければならない。
オ 使用者は、有期労働契約(あらかじめ当該契約を更新しない旨を明示されてい
るものを除く。)を更新しない場合には、労働者が更新しないこととする理由に
ついて証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
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第 21 問
労働安全衛生法において定められている、「事業者」および「事業者等の責務」
に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 事業者とは、法人企業であれば当該法人の代表者、個人企業であれば事業経営
主を指す。
イ 事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力しなければならな
い。
ウ 事業者は、機械・器具その他の設備の設計・製造等に際して、これらの物が使
用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならな
い。
エ 事業者は、労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環
境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保す
るようにしなければならない。
第 22 問
職業安定法の第3条(均等待遇)に定められている、職業紹介、職業指導等に関
し、差別的取扱いとされないものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
92
社会的身分によるもの
人種によるもの
信条によるもの
年齢によるもの
労働組合の組合員であることによるもの
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第 23 問
雇用保険法第 10 条において定められている、失業等給付に含まれないものはど
れか。
ア 求職者給付
ウ 雇用継続給付
オ 就職促進給付
イ 教育訓練給付
エ 日雇労働求職者給付金
第 24 問
厚生年金保険法において定められている、標準報酬月額の対象とならないものは
どれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
基本給その他各種手当
傷病による休職期間中に支給される休職手当
賞与(年4回以上)
解雇予告手当および退職手当
通勤手当
93
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第 25 問
プロモーションは、最終消費者向けのものの他に、流通業者向けのプロモーショ
ン活動がある。これに関して、最も不適切なものはどれか。
ア 期間限定の値引きプロモーションを行うと、その期間に販売可能な数量以上を
仕入れる傾向がある。
イ 業者をある基準で選定して、その業者にだけ値引きプロモーションを行うと、
他店や他業態に当該商品を転売される傾向がある。
ウ 現在、プロモーションの決定に大きく影響するチャネルリーダーシップは、流
通業者からメーカーに移行する傾向がある。
エ メーカーが供給した支援金が、その目的どおりに使用されない傾向がある。
オ メーカーが指示したエンド陳列などのプロモーションを、流通業者がその通り
に実施しているのかが確認しにくい傾向がある。
第 26 問
製品ライフサイクルを、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4期に分ける場合、
その段階ごとに、プロモーションの目的、手法などが異なる。導入期におけるプロ
モーションに関する説明で、最も不適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
94
売上に対するプロモーション費用の割合が他の期よりも高い。
店頭で試用を目的とするデモンストレーション販売が行われる。
認知を主目的としたプロモーションが用いられる。
パブリシティの獲得のための活動が重要である。
ロイヤルティ向上を狙った販売促進が行われる。
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第 27 問
マーケティングの定義としてアメリカ・マーケティング協会のものがしばしば引
用される。1960 年の定義である「生産者から消費者もしくは利用者への財の流れを
方向付ける企業活動の遂行」は、1935 年の定義を実質的に受け継いだものである。
1985 年に全面的に定義の改定が行われた。この定義は、①その期間のマーケティン
グおよびマーケティング研究の変化を反映したものであった。
そして、2004 年に同協会から新定義が公表された。それは、
「マーケティングは、
組織的な活動であり、顧客に対し価値を創造し、価値についてコミュニケーション
を行い、価値を届けるための一連のプロセスであり、さらにまた組織及び組織のス
テークホルダーに恩恵をもたらす方法で、 A
するための一連のプロセスであ
る。
」というものである。これも 1985 年からのマーケティングの変化に基づいたも
のといえる。
(設問1)
文中の下線部①のマーケティングおよびマーケティング研究の変化として、
1960 年から 1985 年にかけて特に議論されはじめた研究テーマとして、最も不適
切なものはどれか。
ア
ウ
社会的責任のマーケティング
ダイレクト・マーケティング
イ
エ
戦略的マーケティング
非営利組織のマーケティング
(設問2)
文中の空欄Aに最も適切なものはどれか。
ア
ウ
オ
技術を管理
差異性を増大
ブランド資産を管理
イ
エ
顧客関係を管理
戦略的同盟関係を構築
95
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第 28 問
メーカーが自社のマーケティング政策を効果的・効率的に実施するために、流通
チャネルの構成メンバーである流通業者に対して流通系列化政策を行うことがあ
る。これに関して、最も適切なものはどれか。
ア 系列店になった流通業者に対しては、他のメーカー系列へのスイッチング防止
のために、強力なセールスが常に必要である。
イ 系列店になることによってその店舗独自の、顧客からみて多様で魅力的な商品
構成を展開しやすくなる。
ウ マーケティング政策を、業務命令として、チャネル全体へ浸透させるルールが
できあがっている。
エ メーカーが系列店へ販売した商品は、売れなかった場合には、直営店の場合と
同様に返品を受け入れる必要がある。
オ メーカーは系列店へさまざまな支援をするが、基本的に系列店自らの資金によ
って販売拠点を設置できる。
第 29 問
新製品を市場導入する際の価格決定方針としては、「市場浸透価格政策」と「上
層吸収価格政策」の2つを考えることができる。この2つの価格決定方針の説明に
ついて、最も適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
上層吸収価格政策は、市場シェアの獲得を目指して採用されやすい。
上層吸収価格政策は、補完的価格設定とともに採用されやすい。
市場浸透価格政策は、需要の価格弾力性が高いときに採用されやすい。
市場浸透価格政策は、短期間で次の新製品を市場導入する予定のときに採用さ
れやすい。
オ 市場浸透価格政策は、独自性の高い製品のときに採用されやすい。
96
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第 30 問
新製品を市場導入する際に、期間を限定して、メーカー希望小売価格よりも低価
格(「お試し価格」などの名称が使われる)で販売されることがある。このような
価格が採用される場合について、最も不適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
新製品が低価格の場合
新製品が反復購買される可能性が高い場合
新製品の嗜好性が高い場合
新製品の特性を容易に認知できる場合
新製品へのブランドスイッチングを狙う場合
第 31 問
受発注業務や物流業務を行うに際しては、新しい考え方や技術が用いられてきて
いる。このことに関して、最も適切なものはどれか。
ア CRP(Continuous Replenishment Program)では、補充発注は顧客企業側が
行う。
イ サードパーティ・ロジスティクスは、荷主や荷受人と物流業者が共同して行う
物流である。
ウ サプライチェーン・マネジメントでは、各企業内という視点で最適化が図られ
る。
エ モーダルシフトとは、トラックから鉄道や内航海運への移行を意味している。
97
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第 32 問
メーカーは一度確立したブランドを別の新しい製品群に利用することがある。こ
れは、ブランド拡張と呼ばれている。このことについて最も不適切なものはどれか
。
ア 消費者が既存ブランドに対して信頼感をもっているので、トライアルを獲得し
やすい。
イ 消費者が既存ブランドのイメージをもっているので、別の新しい製品群の位置
づけを容易にできる。
ウ 新製品が消費者の期待以下の場合には、既存の製品群にも悪影響がでる。
エ 新ブランドをゼロから立ち上げるよりも、コストを低く抑えられる。
オ 製品群を増やすと、既存ブランドの持っていた位置づけがより明確になる。
第 33 問
商品を購買行動から3分類して、最寄品、買回品、専門品とした場合、それぞれ
についての説明として最も不適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
98
買回品は購買においてブランドが事前に決定される。
買回品は同種の商品の販売店が近接することがある。
専門品は購買についての努力をいとわない。
専門品は購買頻度が低い。
最寄品は最小限の努力で購買しようとする。
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第 34 問
ラジオ広告は、マス媒体の一つとされている。媒体別の広告費の調査によると、
インターネット広告のほうがラジオ広告よりも広告費が上回ったといわれている
が、いまだに重要な媒体の一つであるラジオ広告について、最も不適切なものはど
れか。
ア
イ
ウ
エ
オ
一過性であるため、メッセージ生命は短い。
時間帯などによりターゲットを限定しやすい。
ドライバーが聴取するので自動車関連広告に適している。
番組と連動したキャンペーンなど広告主の要望を取り込みやすい。
パーソナル媒体であるので広告効果を測定しやすい。
第 35 問
広告を種類分けすることには、いろいろな視点が用いられてきている。広告の種
類のうちの一つである企業広告について、最も不適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
新しいマークの採用などCI活動の一環として利用される。
企業イメージの形成や向上を目的としている。
経営理念や新事業の告知として利用される。
ビジネスの一環として商品・サービスを購買する主体を訴求対象としている。
文化芸術活動への支援などメセナ活動への取り組みを訴求する。
99
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第 36 問
企業は、市場全体を一括してマーケティングを行うこともあるが、通常は市場を
小さなセグメントに分割して、そのセグメントごとに欲求を満たすことが行われる。
この市場細分化について、最も不適切なものはどれか。
ア 細分化することによって、製品の種類が増えるので、それに応じてコストがか
かる。
イ 細分化することによって、それぞれのセグメントのニーズに応じた対応が必要
である。
ウ セグメントごとに、適切なマーケティング・ミックスを形成する必要がある。
エ セグメント内部では、あるマーケティング活動に対して反応の差が大きい方が
よい。
オ それぞれのセグメントは、ある一定の市場規模が必要である。
第 37 問
現在の日本においては、さまざまな商品が自動販売機で販売されている。多品種
の商品を高機能の機械が扱っている。自動販売機が日本で普及してきた理由につい
て、最も不適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
100
屋外に設置しても、盗難などのトラブルが比較的少ないから。
自動販売機それ自体が宣伝媒体となり、商品販売に貢献するから。
自動販売機メーカーが、自社の負担で自動販売機を小売店に提供したから。
手近な場所で、時間にかかわらず商品を購入でき、そのことを消費者が求めて
きたから。
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第 38 問
メーカーが流通チャネルのメンバーの数をどういう方針で決定するかには、3つ
の方法があり、開放的チャネル政策、専属的チャネル政策、選択的チャネル政策が
ある。このうち、選択的チャネル政策について、最も適切なものはどれか。
ア
イ
ウ
エ
オ
競争企業の製品の取り扱いをさせない。
自社の製品をどこでも買ってもらえるようにする。
市場カバレッジは広いが、チャネルコントロール力が低い。
新規事業で流通業者を探しているときに採用される。
メーカーと流通業者の間で強い結びつきが必要である。
第 39 問
消費者行動を規定する要因には多々あるが、その中の心理的要因に関して、最も
不適切なものはどれか。
ア
関与とは、特定状況下における刺激によって想起された、個人的な重要性ない
しは関心に対する知覚水準のことである。
イ 選択的注意とは、自分の信念を裏付けてくれるような情報は覚えている傾向に
あることを指している。
ウ 知覚とは、人が与えられた情報を選別し、編成し、解釈し、そこから意味のあ
る世界観を形成するプロセスのことである。
エ 動機とは、人間をある行動に駆り立てる原動力である。
オ ライフスタイルとは、個人が所属する集団の諸要因を反映した生活パターンで
ある。
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第 40 問
消費者向けプロモーションの一つとして、スタンプ、ポイントを利用したものが
ある。これに関して、最も不適切なものはどれか。
ア 商店街組織のスタンプ事業で、消費者がスタンプを現金に交換するときの金額
は、商店街組織が小売店などに販売したスタンプ金額と同一にすることが定石で
ある。
イ スタンプの押印によるポイント制では、住所・氏名などを記入してもらう場合
は、スタンプの台紙の配布時よりも特典交換時の方が効果的である。
ウ 台紙にスタンプを押印したり、スタンプを貼ることによって、達成感をもたら
すことができる。
エ 電子的にポイントを管理すると、顧客の購買履歴を得ることが容易となる。
オ ポイントを特典に交換するのに足りない場合に、ポイントそのものを販売する
ことがある。
102
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解答・解説
第1問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
C
正解率
26.8 %
【解説】
「プロダクト・インテグリティ」という語句の定義を問うことを通して、競争優位性を築く方
法を考えさせる問題である。
消費者が製品に求めるニーズは一定ではなく、時代の移り変わりとともに変化する。また、製
品に対するニーズは高度化したり、複雑化したりする。なぜならば、消費者は使用という経験を
積むことによって、製品に対して求めるものの質やレベルが変化するからである。つまり、ニー
ズは進化する。このような消費者ニーズの進化という前提に立つと、製品の供給側が競争優位を
築くためには、消費者の進化に合わせて、自社の競争力や商品力を常に向上させ続けていかなけ
ればならない。
「プロダクト・インテグリティ」とは、製品統合性のことであり、製品が持つ多様な製品属性
の全体的な調和・一貫性を指す。この定義の根拠として、次の出典がある。「進化した消費者にと
って商品力の決め手は、メッセージの一貫性、ユーザーの生活感覚へのフィットなどである。筆
者はこれをプロダクトインテグリティ(製品統合性)と呼ぶ」(藤本隆宏『能力構築競争』中公新
書 56 頁)。よってウが正解である。
「プロダクト・インテグリティ」という語句を知っていた受験生は少なかったであろうし、イ
ンテグリティという英語の意味から類推するにしても選択肢を絞り込むことが難しかった。この
問題はマイナーな知識を問うものであり、重要度は低い。知っていれば他の受験生に差をつけら
れる問題であるが、間違えても合否には影響しない問題である。
第2問
【解答】
ア(配点4点)
重要度
B
正解率
71.3 %
【解説】
競争優位を築く方法を具体的に考えさせる問題である。単なる知識ではなく、その知識を診断
士の実務に当てはめた場合にどのように使うことができるかという実践的な力および考える力が
問われている。
アは、これまで築き上げてきた独自の生産システムや販売システムを一貫性のある全社的な事
業システムに転換することで他社の模倣や追随を受けにくくなるので、正しい。その根拠として、
次の出典がある。「ビジネス・システムは、それを築くためには長い時間と継続的な投資を必要と
するが、いったんそれが築かれてしまえば、製品・サービス・レベルの差別化と比較して、より
持続力のある競争優位性を発揮しやすい」(大滝精一他『経営戦略』有斐閣アルマ 182 頁)
。
イは、熟練が必要な手間のかかる工程を合理化し、自動化することは暗黙知を誰もが扱える客
観的な形式知に変換することでもあるので、他社から模倣されやすくなる。よって不適切である。
104
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企業経営理論
ウは、将来性のある独自の分野ほどそれが確立されれば模倣や追随を受けにくくなるので、た
とえ現在の収益に貢献していなくても将来性を考えて資源を配分することは充分にあり得る。よ
って誤りである。
エは、汎用機械による量産を促進することで他社の追随や模倣を受けやすくなる。他社はその
汎用機械を導入すれば簡単に追随、模倣が可能になるからである。よって誤りである。
オは、販売キャンペーンそのものは模倣されやすい。よって誤りである。
選択肢を読めば、文脈からでもアを正解に選ぶことができる。また消去法を使っても、イ~オ
は不適切と簡単に判断できる。考えさせる問題であるものの、選択肢のレベルは容易なので間違
ってはいけない問題である。
第3問
【解答】
イ(配点4点)
重要度
C
正解率
47.5 %
【解説】
「ダーウィンの海」という語句の定義を問うことを通して、技術を事業化することの困難さを
確認させる問題である。最近話題のMOT(Management of Technology:技術経営)に関連する
出題でもある。
「ダーウィンの海」とは、ハーバード大学のブランスコム教授が示した概念であり、新しい技
術を事業化に結びつけることの困難さを示すものである。新技術を製品化することに成功したと
しても、それを事業化して利益をもたらす1つの柱にするためには、外敵(競合製品や競合他社、
代替品)が数多くいる海を泳ぎきらなければならず、多くの製品がその海を渡りきれずに淘汰さ
れてしまうことを意味している。よってイが正解である。
「ダーウィンの海」という語句を知っていれば正解肢を選ぶのは容易であるが、知らなければ
難しい問題である。MOTに関連する出題は、第6問でも問われている。また、新規事業開発に
おいても今年度の本試験で出題された。平成 18 年度以降も企業経営理論で繰り返し出題される可
能性がかなり高いテーマであり、受験生は今後とも、しっかりと学習しなければならない分野で
ある。
第4問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
B
正解率
41.3 %
【解説】
戦略的な意思決定について、実践的な知識を問う問題である。戦略的意思決定が実務において
どのように実施されるかが理解できているか、もしくはイメージできるかが問われている。ここ
数年の出題傾向である、実務的内容に沿った出題である。
アは、プロセス型のボトムアップの意思決定を意味しており、適切である。
イは、アと同様に現場からの主体的かつ創発的な意思決定を求めるものであり、適切である。
ウは、「意思決定事項を詳細に計画し」という箇所が誤りである。理由は、戦略的な意思決定は
105
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企業経営理論
通常、不確実性のかなり高い状況下で行われるものであるので、詳細に計画することがそもそも
難しいからである。その根拠として、次の出典がある。「アンゾフによれば、(略)
、非反復的で不
確実性の高い部分的無知の状況というのは、戦略的決定において支配的である」(大滝精一他『経
営戦略』有斐閣アルマ8頁)。
エは、戦略的意思決定は外部環境の変化に対応した意思決定であり、企業にとっては重要な意
思決定になることが通常であるので、意思決定権限をトップに集中することは間違いではない。
オは、戦略的意思決定における不確実性を解消する方法を述べており、適切である。
選択肢の中に分析型経営戦略論の考え方とプロセス型経営戦略論の考え方が混在しているので、
一見すると判断に迷うかもしれない。しかし、各選択肢をしっかりと読めばその表現から正誤を
判断できる問題でもある。経営における意思決定の方法については、唯一絶対的に正しい方法が
あるわけではなく、状況や重要度に応じて方法を変えることは実務において充分にあり得る。こ
の問題は他の受験生と差をつけることができる問題である。確実に正解しておきたい。
第5問
【解答】
(設問1)エ(配点4点)
重要度
B
正解率
78.7 %
(設問2)ウ(配点4点)
重要度
A
正解率
85.2 %
(設問3)ウ(配点4点)
重要度
C
正解率
74.9 %
【解説】
(設問1)
産学連携、異業種交流、新連携など、異分野の事業者や公的機関、大学等がそれぞれ得意な
ものを持ち寄って協力することで新しい事業や価値を生み出そうというプロジェクトは、昨今
注目されている。それらプロジェクトの中で中核的な役割を果たすことが期待されているのが
中小企業診断士である。この設問は、診断士に求められる役割という観点から、実務的な内容
が出題されている。
新産業都市とは、新産業都市建設促進法において、「産業の立地条件及び都市施設を整備する
ことにより、その地方の開発発展の中核となるべき」(第1条)として指定された地域のことで
ある。また、テクノポリスとは、「産業、学術、住空間が有機的に統合された新しいまちであり、
産学官の協力によって地域に先端技術産業を集積させ、地域活性化を図っていこうとするもの」
である(大滝精一他『経営戦略』有斐閣アルマ 250 頁)
。よって、エが正解である。
テクノポリスについては、平成 15 年度の企業経営理論においても出題されている。過去問を
しっかりと学習してきた受験生にとっては簡単な問題であったと思われる。
(設問2)
地方都市における商店街の現状についての設問であり、この設問も診断士の実務に近い内容
である。
問題文において注目しなければならないのは、「生活スタイルや消費行動が変化」という箇所
と、「地方都市」である。両者から思い浮かぶのは、モータリゼーションである。そこから、地
方都市において商店街が困難に直面するようになった大きな原因は、大型店が近隣に出店した
106
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企業経営理論
ことも確かにあるだろうが、それ以上にモータリゼーションが進み、郊外店に顧客を奪われた
ことが原因であると推察できる。よってウが最も不適切である。
アは、郊外型の大型店に顧客を奪われていることは否定できないので、適切である。
イは、経営者の高齢化という問題は、都心と地方都市の両者に共通の大きな問題であり、適
切である。
エは、経営者の高齢化やモータリゼーションの進展等の複合的な要因により、中心市街地の
再開発は思うような成果を生み出すのが難しい。よって、適切である。
商店街の現状や活性化という課題は、『中小企業白書』などで頻出のテーマであり、受験生に
とってもなじみのあるテーマである。選択肢の内容も迷わせるようなところが無く、容易に正
解を選ぶことができる設問である。絶対に落としてはならない設問である。
(設問3)
産業集積、産業クラスターなど、(設問1)、
(設問2)と同様に、時事的かつ実務的な観点か
らの出題である。
ウの産業クラスターとは、ポーターによると、「ある特定の分野に属し、相互に関連した、企
業と機関からなる地理的に近接した集団」(M.E.ポーター『競争戦略論Ⅱ』ダイヤモンド社
70 頁)と定義される。最終製品を生み出す企業を中心に、専門性の高い供給業者、サービス提
供者、金融機関、大学やシンクタンクなどの関連機関等が協力し補完し合うことで、相乗効果
により新しい価値を生み出すことを狙うものである。よってウが適切である。
エのダイヤモンド・モデルとは、同じくポーターによって提唱された概念であり、競争にお
いて成功を収めるための成功要因のことである。産業集積の成功モデルを意味するのではない
ので誤りである。
産業クラスターは、診断士試験における必須のキーワードである。しかし、「空間的に」など、
ウの表現に迷わせる箇所があったために迷った受験生もいたことであろう。また、選択肢エの
「ダイヤモンド・モデル」の定義を知らなかった受験生もいたであろう。これらの点から、難
易度を高めようという意図が見える設問である。産業クラスターや産業集積については今後も
繰り返し出題されることが予想される。しっかりと理解すべきテーマである。
第6問
【解答】
(設問1)オ(配点2点)
重要度
B
正解率
69.6 %
(設問2)エ(配点2点)
重要度
A
正解率
82.1 %
(設問3)ウ(配点2点)
重要度
B
正解率
20.5 %
(設問4)オ(配点4点)
重要度
B
正解率
72.0 %
(設問5)エ(配点4点)
重要度
B
正解率
93.7 %
【解説】
MOT(技術経営)や産学連携など、時事的なテーマに基づいた設問である。ベンチャー企業
の創造もテーマになっており、今後も繰り返し出題されることが予想される重要なテーマである。
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(設問1)
「ムーアの法則」とは、半導体素子に集積されるトランジスタの数は、24 ヶ月で倍増すると
いう経験則による半導体技術の進歩に関する予測である。インテルの創設者の1人であるゴー
ドン・ムーアが 1965 年に発表した。よってオが正解である。
(設問2)
シリコンバレーとは、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコの南側地域の俗称であ
り、半導体メーカーを始めとしたハイテク企業が数多く集積している地域のことである。また、
「シリコンバレー・フィーバー」とは、ロジャーズとラーセンの著書のタイトルでもある。よ
ってエが正解である。
シリコンバレーは、ほとんどの受験生が知っており、本のタイトルを知らなくても、文脈か
ら容易に正解を選ぶことができた設問である。
(設問3)
「死の谷」とは、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国標準
技術局)が示した概念であり、基礎研究を製品開発に結びつけるまでの間に深い谷があり、そ
の谷を乗り越えることが困難であることを示している。多くの基礎研究やアイデアは製品に結
びつく前にその谷に落ちてしまい、製品化まで至らないことが多い。その理由として、①基礎
研究を製品開発に結びつける段階は、不確実性が高いために事業化の見極めが困難であること、
②基礎研究を応用研究に発展させるための資金が不足しがちであること、等があげられる。
「死の谷」は、第3問で問われた「ダーウィンの海」と近い概念である。
「死の谷」が、アイ
デアや基礎研究を応用研究に結びつけたり、製品化するまでの段階にあるリスクを示すもので
あるのに対し、
「ダーウィンの海」は、製品化されたものを事業化したり、会社の利益の柱の1
つに成長させるまでの段階にあるリスクを示すものである。
この設問は、「死の谷」という言葉の定義を知っていれば容易に正解できるが、知らなければ
全くお手上げという設問である。文脈から推測することも不可能であり、その意味では難易度
は高い。「死の谷」や「ダーウィンの海」の概念はしっかりと理解しておきたい。
(設問4)
後発のメリットを問うことを通して、新規事業の遂行の方法のメリットとデメリットを考え
させる設問である。新規事業への参入は、他社よりも早く行う(先発)か、他社よりも遅く行
う(後発)かの2つの方法がある。先発、後発ともにそれぞれメリットとデメリットがある。
平成 15 年度は、スピードの経済(タイムベース戦略)が出題され、先発の優位性が問われた。
今年度は、もう一方の後発の優位性が出題された。
ア、イ、エについては、適切な選択肢であるとすぐに判断できる。迷うのは、ウとオである。
ウは適切である。「このような競争」とは先陣争いの競争を指していると思われるが、その場
合、確かにブランドが成立しにくいといえる。例えば、薄型テレビの競争を考えてみると、液
晶ディスプレイとプラズマディスプレイが技術革新をもとにシェア争いをしているが、両者が
拮抗している段階であり、どちらもまだ市場におけるブランドを獲得できていない。その隙に、
従来からあるプロジェクター技術を用いた製品が台頭し、「品質と価格を武器に」世界市場にお
いて一定のシェアを獲得している。早い技術革新にあわせて競争するということは、差別化を
108
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企業経営理論
追及するということであり、価格面を犠牲にせざるを得ない面もある。いずれ価格は下がるで
あろうという期待から消費者が様子を眺めているうちに、後発企業が参入する余地が生じるの
である。
オは適切とも不適切ともとれる。まず、不適切ととれる理由だが、先発メーカーの知財管理
が厳しいと参入に必要な技術を使用することができないので、参入が難しいといえる。つまり、
知財管理が参入障壁になる場合である。一方、適切と判断できる理由だが、先発メーカーの知
財管理により、市場価格が高く保たれているので、後発企業から見ると魅力的な市場が残って
いるといえる。例えば、次世代DVDの規格競争を考えてみると、後発であっても書き込み速
度が速いとか、書き込める容量が大きいという特徴があれば参入できる可能性があり、参入の
メリットも大きい。理由は、①先発企業によって市場がすでに形成されていることと、②市場
価格が高いことである。後発企業に高い技術力があれば、このような市場に参入するメリット
は大きいといえる。オは、解釈によって適切とも不適切ともとれるが、ウが明らかに適切なの
で、消去法でオが正解になる。素直に読めば迷わずにオを正解とすることができるだろうが、
考え始めると判断に迷う設問である。難易度を高めるために表現をあえてわかりにくくしたの
であろうが、そのことによって適切とも不適切ともとれる選択肢が生じてしまった設問である。
(設問5)
昨今注目されている産学連携に関する出題である。この設問も診断士の実務に関連の深い分
野から出題された。
エが明らかに誤りである。パテント供与先の企業に全学の施設を自由に利用することが義務
づけられたことはない。産学連携について全く知らなくても、選択肢の文脈から簡単に判断で
きる設問である。間違えてはならない設問である。
第7問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
A
正解率
92.1 %
【解説】
ドメインの再定義とは、ドメインを見直すことである。次の出典がある。
「企業が現在のドメイ
ンを超えて成長をはかるためには、ドメインの見直しと再定義が必要である。これまで多くの企
業がドメインの再定義を行っているが、成功しているケースは必ずしも多いとはいえない」(大滝
精一他『経営戦略』有斐閣アルマ 46 頁)。
中小企業においてこそ、成長の段階でドメインを再定義することが重要となる。その場合に中
小企業診断士がサポートすることは充分あり得るし、また、そのような役割を期待されてもいる。
上記出典のようにドメインの再定義が成功しにくいのならばなおさら診断士が必要である。その
意味でも、診断士の実務や期待される役割に基づいた出題であるといえる。
正解肢を選ぶのは容易である。文脈からでも簡単に判断できる。ドメインの再定義に関して、
ライバル企業と協調的であるように業界団体の指導を受けるなどあり得ないからである。よって
ウが最も不適切である。ドメインの再定義については、繰り返し出題される可能性が高いテーマ
であるので、その意味や狙い等をしっかり理解しておきたい。
109
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企業経営理論
第8問
【解答】
(設問1)ア(配点4点)
重要度
A
正解率
55.0 %
(設問2)イ(配点4点)
重要度
A
正解率
89.6 %
(設問3)ア(配点4点)
重要度
C
正解率
67.7 %
(設問4)イ(配点4点)
重要度
B
正解率
63.9 %
(設問5)イ(配点4点)
重要度
B
正解率
82.7 %
【解説】
この1年間、にわかに注目を集めたM&Aに関連する問題である。M&Aを問うことを通して、
株式会社の特徴や企業戦略等まで幅広い知識を確認する設問構造になっている。米国の事例をあ
げているため、一読しただけではピンとこないような選択肢が多いが、落ち着いて取り組めば、
一般的知識や文脈から正解肢を選択できる設問が多い。また、すべての設問が配点4点であり、
難易度も高くないので確実に正解して得点源にしたい問題である。
(設問1)
所有と経営の分離の概念を思い出すことができれば、容易に解くことができる。経営者支配
とは、株式の分散と小口化により、本来の会社所有者である株主の発言権が弱くなり、株主か
ら経営を委託されている専門経営者の方が相対的に力を持つことをいう。例えば、次のような
出典がある。経営者支配の状態とは、「最大株主の持ち株比率が極度に小さくなると、企業が危
機的状態に陥らないかぎり株主は経営者を解任できないような状態」(塩次喜代明他『経営管
理』有斐閣アルマ 21 頁)である。よってアが正解である。
(設問2)
アンゾフが提唱した多角化ベクトルを思い浮かべれば容易に解ける。関連性のない分野へ進
出する多角化を集成的多角化(コングロマリット的多角化)という。コングロマリットは、
「1950
年代から 1960 年代末にかけてアメリカ産業界を吹き荒れた第3次企業合併の嵐の主役として
華々しく登場し」た(『経営学大辞典 第2版』中央経済社 332 頁)。以上のことから、イが正解
であると判断できる。
コングロマリットという言葉は、診断士受験生であればなじみ深いキーワードであり、多角
化に関連する用語という意味でも容易にイを選ぶことができたであろう。確実に得点したい問
題である。
(設問3)
1960 年代後半から 70 年代にかけてのアメリカにおける現象を問うており、なじみのない分
野からの出題である。しかし、問題文の文脈から正解を導くことができる。問題文の3行目に、
「関連性のない企業を買収するものが多く」とある。すなわち、「事業分割による事業売却が多
く見られるようになった」のは、1970 年代になり、関連性のない企業買収のコストが顕在化し
てアメリカ企業の負担になってきたからである。(塩次喜代明他『経営管理』有斐閣アルマ 33
頁参照)
アは、上記から不適切である。戦略的提携が登場してきたからM&Aが下火になったのでは
なく、それ以前の無秩序な企業買収によるコスト負担が顕在化したからである。
110
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イは、適切である。その根拠として次の出典がある。「本社の経営者は、買収した部門や子会
社の技術・市場についての専門的知識も経験ももっていなかったために、(略)、血の通わない
データに頼ることになってしまった」(塩次喜代明他『経営管理』有斐閣アルマ 33 頁)。
ウは、適切である。上記の説明から判断できる。
エは、適切である。ファンド・マネージャーは、短期的な投資収益を得ることに主眼を置く
ことが多い。なぜならば、運用成績によって自己の報酬や処遇が変わるからである。また、当
時の投資家も短期的な利益を求めた。そのため、企業価値を厳格に評価するようになった。
オは、適切である。上記説明の通りである。
よってアが正解である。つかみどころのない、判断に困る設問であるが、問題文にあるヒン
トをもとに正解したい設問である。
(設問4)
アセット・ライアビリティ・マネジメント:ALMとは、「金融機関がリスクを抑えながら最
大の収益をねらう総合的な取り組みのこと」(『日経経済用語辞典』日本経済新聞社)である。
イは、「資産の運用リスクが高まった」とあり、この点が誤りである。
ALMという用語を知っているかどうか、知っていれば簡単に解ける、という問題であり、
難易度を調整するためにマイナーな用語を問うた設問である。ALMという用語を知らなかっ
た場合、イの文脈から正誤を判断せざるを得ない。資産と負債の総合管理を行うことで、資産
の運用リスクは“低下する”というのが素直な文脈であり、
「運用リスクが高まった」という箇
所に違和感がある。その点に気づくことができたかどうかが、正解、不正解の分かれ目となっ
た。文脈から判断して正解を選ぶことができた設問である。
(設問5)
一般常識で容易に解くことができる。イの「財閥が復活し」という箇所が明らかに誤りであ
る。イ以外の選択肢は、日本企業の特徴を示しており、消去法でも容易にイを正解に選ぶこと
ができる。落としてはならない常識問題である。
アの「資本自由化」とは、諸外国からの日本に対する直接投資を認めることである。これを
きっかけに、外国資本による乗っ取りを防止するため、株式の相互持合いによる安定株主対策
がとられるようになった。
第9問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
B
正解率
76.6 %
【解説】
コミットメントの上昇(コミットメントのエスカレーション現象)に関する設問である。コミ
ットメントの上昇とは、「マイナスの情報があるにもかかわらず、前の意思決定に我を忘れて引き
ずられて、抜き差しならなくなってしまうことである」
(ステファン.P.ロビンス『組織行動のマ
ネジメント』ダイヤモンド社 132 頁)。人間は、誤りの原因が自分にあると認識した場合に、誤り
を修正できないばかりか、その誤りに固執してしまう傾向があることを示す概念である。
アは、適切である。埋没費用とは既に支出してしまって取り返すことのできないコストのこと
111
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である。これだけ投資してきたのだから「今までの投資を無駄にしたくない」
、という理由で以前
の意思決定を続けることはあり得る。
イは、適切である。過去の意思決定と現在の業績との因果関係がわかりにくいと、以前の意思
決定を覆すことが難しい。つまり、以前の意思決定に固執してしまう。
ウは、不適切である。
「対外的に業績について説明責任を持つ度合いが低い」から以前の意思決
定に固執するのではなく、説明責任を持つ度合いが高いからこそ、以前の意思決定に固執するの
である。なぜならば、意思決定を覆すことは、自分の誤りを認めることになるからである。
エは、適切である。「組織は新しい対応策よりも、従来慣れ親しんできて、経験も豊富な対応の
方を選択する傾向がある」
(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ 312 頁)。だからこそ、
以前の意思決定を続けてしまう。
オは、適切である。「曖昧な状況下で人々は、失敗の原因を、内部ではなく外部環境へ帰属させ
る性向をもっている」(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ 312 頁)
。だからこそ、以
前の意思決定に固執してしまう。
よってウが正解である。この問題は、組織変革への障害というテーマの一環として出題された。
組織変革への障害については、試験委員の著書(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ)
から平成 15 年度、16 年度と連続して出題されている。平成 15 年度は「不完全な学習サイクル」
(同書 303~307 頁)が出題され、平成 16 年度は、「有能性のワナ」(同書 310 頁)や「ゆでガエ
ルシンドローム」(同書 313 頁)が出題された。試験委員対策をしっかりと行った受験生にとって
は、出題が予想されたテーマであったこともあり、容易に解くことができたであろう。準備をし
っかりしたかどうかによって差がついた問題である。
第 10 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
C
正解率
38.2 %
【解説】
シャインのキャリアアンカー理論から出題された。キャリアアンカーとは、「働く個人のキャリ
アの拠り所を診断するために構築した理論的構成概念」(『経営学大辞典
第2版』中央経済社
188 頁)である。
ここでいうところのキャリアとは、①自分には何ができるか(コア・コンピタンス)、②自分の
望むものは何か、何をしたいか(ドメイン)、③自分は何をするべきか(理念や価値観)、という
要素からなる内面的なイメージである。そしてこの内面的なイメージは、次の5つのカテゴリー
に分けられるという。①技術的・職能的能力、②管理能力、③安定、④自律性、⑤創造性、であ
る。
アは、不適切である。キャリアは、「個人が最初に企業に入社するまでに形成される」ものでは
なく、その後の仕事生活を含めた長期的なものである。
イは、不適切である。「自分が生涯にわたって尊敬する人物」を意味するものではない。
ウは、適切である。5つのカテゴリーの中の管理能力に関する説明である。
エは、不適切である。技術的・職能的能力をキャリアアンカーとしている者は、研究開発者や
112
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デザイナーに多く見られる傾向がある。また、企業の創業者に典型的に見られるのは、創造性を
キャリアアンカーにするタイプである。
オは、不適切である。自律性をキャリアアンカーにする者は、組織に縛られることを嫌い、マ
イペースで仕事をこなす環境を求めている者である。具体的には、フリーの作家や大学教授に多
く見られるタイプである。高い地位や報酬を求めて企業間を移動するタイプではないので誤りで
ある。
よってウが正解である。キャリアアンカーという言葉を知っていても、5つのカテゴリーまで
知っている受験生は少なかったはずである。また、選択肢の文脈から容易に正解を導くことも難
しく、悩んだ受験生が多かったであろう。難易度調整のための出題と思われ、不正解であったと
しても気にする必要のない問題である。
第 11 問
【解答】
オ(配点4点)
重要度
B
正解率
68.4 %
【解説】
組織均衡論、および組織慣性に関する出題である。この問題も出題委員の著書『組織論』から
出題された。組織均衡とは、
「組織がその参加者に対して、継続的な参加を動機づけるのに十分な
支払を整えることに成功していること、すなわち組織が生存に必要な経営資源の獲得・利用に成
功していること」(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ 42 頁)である。また、組織慣
性とは、外部環境が変化しても自己を変化させずに元の状態を保つ傾向があることを示す概念で
ある。慣性が強いほどステークホルダーの信頼を獲得しやすく、組織均衡を保ちやすい。
アは、適切である。安定的な配当政策や商品の品質管理、長期雇用政策などは、ステークホル
ダーの信頼を高め、組織へ参加させることを促す効果がある。
イは、適切である。その根拠として、次の出典がある。「現代社会では、(略)、一定期間以上に
わたって高い信頼性(たとえば安定した配当とか雇用の安定等)と会計責任(財務諸表や品質基
準の開示等)を維持しなければ、その組織は社会に存続する正当性を確保することができない。
こうした信頼性や広義の会計責任を確保するには、頻繁に組織内の活動や手続き(プログラム)
を変更しない方が望ましい」(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ 109 頁)。ここから、
組織内の活動や手続きを変更せずに安定的な構造を持つことにより、正当性を獲得しやすくなる
ことがわかるので、適切である。
ウは、適切である。上記イの解説から明らかである。
エは、適切である。法律や社会規範を遵守することにより、ステークホルダーの信頼を得るこ
とができる。
オは、不適切である。急速に成長している企業は、組織内の活動や手続きが頻繁に変更される
ことが予想される。そうすると慣性が失われて組織の正当性は低くなる。
よってオが正解である。組織均衡、組織の正当性、組織慣行はここ数年繰り返し出題されてい
る組織間関係の範疇に該当する内容である。新制度の試験科目内容にも組織間関係は載っており、
来年度以降も繰り返し出題される可能性が高い分野である。
113
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第 12 問
【解答】
ア(配点4点)
重要度
A
正解率
83.5 %
【解説】
職場における権限・責任一致の原則を実務の視点で考えさせる問題である。消去法でも解くこ
とができる基本問題であり、落とすことのできない問題である。
「権限」とは、与えられた職務を遂行するために必要な力であり、その中には一定の強制力を
もって組織内の経営資源を使用することが含まれている。よってアが正解である。
イの「職務エンリッチメント」とは、職務の充実化のことである。本肢の「複数の職務につい
て」という箇所が誤りである。複数の職務を与えるのは、職務の拡大である。本肢は、職務の充
実と職務の拡大が混在してしまっている。
オは、「すべての職務において」と言い切っている点が誤りである。どんなに高い成果をあげて
いる組織であってもすべての職務で責任と権限が一致しているとは言い切れないからである。こ
の選択肢のように「すべての~」という表現を使っている選択肢は誤りであることが多い。
第 13 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
A
正解率
88.8 %
【解説】
組織構造のデザインについて実務の視点を交えて問うことにより、実践的な力と組織論の基本
事項が身についているかを確認する問題である。問われている内容は簡単なので、間違えてはな
らない問題である。
アは、不適切である。「公式化」とは、「あらかじめ用意された規則や責任-権限関係等によっ
て対応できる程度」(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ 85 頁)のことである。よっ
て、公式化の度合いが高くなると従業員の自由裁量の幅は狭くなる。
イは、不適切である。機能別に部門化することによって、「範囲の経済性」ではなく、「規模の
経済性」を達成しようとするものである。
ウは、適切である。管理階層をフラットにすることにより、上位者の統制範囲は広くなる。そ
の状態で組織を機能させるためには、部下への権限委譲と部下のスキルアップが不可欠である。
そうしないと上位者の負担が増加してしまう。
エは、不適切である。分散処理型の情報処理システムの導入により、指揮命令系統の一元性を
維持することは難しくなる。
よってウが正解である。選択肢の内容は“考えさせる”ものであるが、組織原則や組織構造の
ポイントをしっかりと理解できている受験生にとっては、難なく正解を選べる基本問題である。
114
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企業経営理論
第 14 問
【解答】
(設問1)イ(配点4点)
重要度
B
正解率
24.7 %
(設問2)ウ(配点4点)
重要度
B
正解率
21.7 %
【解説】
職務設計と動機づけ理論の関係性について考えさせる良問である。モチベーション理論の本質
をしっかりと理解できていないと正解できない問題であり、難易度はかなり高いといえる。
(設問1)
職務の困難さと期待理論の関係性を考えさせる設問である。期待理論とは、「期待」(やれば
得られる確度)と「誘意性」(得られるものの魅力度)を掛け合わせたものの大きさが動機づけ
を決定づけるという理論である。その立場に立つと、仕事が困難になるほど「期待」は小さく
なる。なぜなら、難しい仕事ほど達成することが困難になるからである。よって、仕事の困難
さの程度が高くなるほど成果が低くなるグラフを選べばよい。Bのグラフが正しい。
(設問2)
達成動機理論とは、マクレランドやアトキンソンらによって提唱された、皆が優れた目標だ
と認めるものを達成したい、しかもそれを高い水準で達成したいという気持ちがモチベーショ
ンにつながるという理論である。この考え方では、皆が優れた目標であると認めるものは達成
するのが困難なものであることが多くなるので、仕事の困難さが高くなるほど成果が高くなる
右肩上がりのグラフを選べばよい。なぜなら、達成動機をもつ人は困難な仕事ほどやりがいを
感じるからである。ただし、達成動機を強く持ちすぎると、失敗を恐れてモチベーションが下
がることに注意する必要がある。以上から、基本的には右肩上がりのグラフであるが、職務の
困難さが高すぎるとモチベーションが下がり、成果が下がるグラフを選ぶ。よってCのグラフ
が正しい。
グラフや図を読み取らせたり、それをもとに考えさせたりする設問が組織論分野において平
成 15 年度から3年連続で出題されている(15 年度、16 年度はともに組織形態に関する出題)。
平成 18 年度以降もこの傾向が続くことが予想されるので、組織形態、モチベーション理論、そ
してリーダーシップ理論については、その仕組みや本質に至るまでしっかりと理解しておく必
要がある。
第 15 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
C
正解率
36.2 %
【解説】
海外進出の段階と組織構造の関連性についての問題である。海外進出が、①国内経営段階、②
国際化、③多国籍化、④グローバル化と進むにつれて、組織構造や管理システムがどのように変
化するかを考えさせる問題である。しかし、国際化、多国籍化、グローバル化のはっきりとした
定義が書かれていないために単語から意味を類推して考えなくてはならず、難易度が高い。正解
肢を選ぶのに苦労する問題である。
115
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企業経営理論
アは、不適切である。商社などと提携して輸出を行うケースは戦前から戦後しばらくのうちは
よく見られたが、最近では中小企業であっても商社を通さずに自社で直接輸出を行うケースが多
くなっている。その場合には自社内に輸出を専門に行う部署を設けて行う。「商社ばなれは今後も
その進行はとまらないと思われる。(略)製造企業の大部分は自分の輸出部門をもって直接輸出を
行ない、商社依存の間接輸出はすくなくなっていくだろう」
(吉原英樹『国際経営』有斐閣アルマ
166 頁)。
イは、不適切である。国際事業部のような組織を置く理由は、「出向者の管理、技術移転、部品
や原材料の現地調達などが必要で、これらの仕事は輸出部門によって行うことはむずかしい」(吉
原英樹『国際経営』有斐閣アルマ 167 頁)からである。選択肢にあるように、「進出した各国の事
情に合わせて製品仕様などを変えて」いくためではない。
ウは、適切である。地域別の事業部制をとることによって、各国の市場にあわせた事業戦略を
とることができる。「世界的な地域別事業部制の場合、(略)
、地域戦略を立てて、地域オペレーシ
ョンを展開しやすい」(吉原英樹『国際経営』有斐閣アルマ 171 頁)。
エは、不適切である。それぞれの海外子会社に十分な責任・権限が与えられているのではなく、
グローバル化段階の海外子会社は国内の事業部の管轄の下で活動を行う。事業部は国内だけでな
く、海外子会社を管理することを通して世界的な視点で活動を行うことができる。
オは、不適切である。地域別・製品別のマトリックス組織が注目されたことはあったが、実際
にマトリックス組織を採用した企業は少なかった。マトリックス組織のワンマンツーボス制とい
う特徴が指示命令系統を混乱させたからである(吉原英樹『国際経営』有斐閣アルマ 176 頁参照)。
よって、「マトリックス構造をとることが多い」という箇所が誤りである。
国際経営は、大企業に限られた経営課題というわけではなく、中小企業にとっても身近な課題
である。また、繰り返し出題される可能性が高いテーマである。本年度は国際経営と組織構造に
関する問題であったが、今後は戦略やマーケティング、生産に関する出題も予想される。
第 16 問
【解答】
ア(配点4点)
重要度
B
正解率
17.6 %
【解説】
集団凝集性を中心に、集団行動を問う問題である。集団行動は組織活性化や組織文化といった
重要テーマの一環であり、集団凝集性は平成 15 年度から毎年繰り返し出題されている。今年度は
集団傾向(グループシフト)、集団思考(グループシンク)が同時に問われたため、難易度が高く
なった。
アは、不適切である。外部環境が悪化するということは集団にとって危機である。その危機に
対し皆がまとまって対応することはあり得る。つまり、集団の凝集性が高くなることが考えられ
る。その根拠として、次の出典がある。「集団間コンフリクトは、内部で凝集性を高め、外に対し
て一致団結の行動を示すという効用さえある」(桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論』有斐閣アルマ
263 頁)。集団間コンフリクトとは、集団同士の対立や葛藤のことである。
イは、適切である。集団思考(グループシンク)とは、集団の意思決定が正常な意思決定にな
116
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企業経営理論
りにくい傾向を示す概念である。具体的には、集団の圧力によって少数派の意見が脇へ押しやら
れ、多数派の意見が大勢を占めるようになることをいう。「集団のメンバーたちが意見の統一に夢
中になるあまり、(略)、さまざまな行動の選択肢の現実的評価や、とっぴな意見や少数派の意見、
不人気な意見の十分な表現が妨げられる現象」(ステファン.P.ロビンス『組織行動のマネジメン
ト』ダイヤモンド社 162 頁)である。集団凝集性が高かったり、時間的なプレッシャーを受ける
ほど集団思考に陥りやすい。よって正しい。
ウは、適切である。集団傾向(グループシフト)に関する記述である。集団傾向とは、個人の
意思決定と集団の意思決定は異なるものになることを示す概念であり、集団思考(グループシン
ク)の具体的な事例の1つである。集団の意思決定の方が個人の意思決定よりもリスクが高い選
択肢を選ぶ傾向があることは、集団傾向(グループシフト)で説明できる。その理由として、次
の出典がある。
「集団では責任が拡散されることである。集団による決定では、個々のメンバーは
集団の最終的選択に対する説明責任を負わずにすむ」(ステファン.P.ロビンス『組織行動のマネ
ジメント』ダイヤモンド社 165 頁)。よって適切である。
エは、適切である。集団凝集性が高く、かつメンバーが高い業績目標を持てば(集団目標と組
織目標が一致すれば)、組織の生産性は高まる。
オは、適切である。集団凝集性を高める方法として、集団を小規模に設計することやメンバー
が経験を共有することがあげられる。それ以外に、他の集団と競争したり、その集団へ参加する
ことが特別なことであるように(選ばれた者だけが参加できる)思わせることも有効である。
集団行動は、今後も繰り返し出題される可能性が高い重要テーマであり、集団凝集性、集団思
考、集団傾向をしっかりと理解しておく必要がある。
第 17 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
B
正解率
36.6 %
【解説】
人的資源管理の分野から組織開発が出題された。人的資源管理の分野はどのテーマが多く出題
されるというわけではなく、試験範囲全体から満遍なく出題されている。今年度は組織開発であ
った。どの選択肢も内容は難しくないのでしっかりと得点しておきたい問題である。
アは、不適切である。組織開発は、行動科学の知識や技法を使って組織全体を活性化させるも
のである。ジェネラリストを養成するものではないので誤りである。
イは、不適切である。業務遂行中に行なわれるのは組織開発ではなく、OJTである。
ウは、適切である。組織開発は行動科学の知識や技法を用いて行なう。
エは、不適切である。組織開発プログラムが組織にもたらす効果は、人件費削減といった経済
的効果ではなく、組織全体の活性化である。
オは、不適切である。組織開発は組織を対象とし、組織を計画的に変化させることを目的にし
ている。集団圧力を使ってメンバーが落ちこぼれないように訓練することとは内容が異なる。集
団圧力とは、集団の規範に同調するように働きかける集団の有形無形の力のことである。
よってウが正解である。
117
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第 18 問
【解答】
オ(配点4点)
重要度
A
正解率
70.8 %
【解説】
賃金管理システムの見直しという時事的なテーマからの出題である。職務給、職能給、成果主
義賃金に関する知識の視点と、賃金管理システムを構築する際にどのようなことに気をつけなけ
ればならないかという実務の視点の両方が問われている。
アは、不適切である。成果主義賃金制度であっても職務分析をする必要がある。職務分析をし
ないとその職務の困難さや必要とされる能力などを把握することができず、賃金の額を決めるこ
とすらできない。
イは、不適切である。ベースアップは長期的な観点から行なうものである。
ウは、不適切である。職能給とは職務遂行能力によって決まる賃金であり、配置転換等により
職務が変わっても賃金は変わらないのだから、配置転換を行なうことそのものが難しくなること
はない。
エは、不適切である。このような場合こそ、能力給を導入するのが望ましい。理由は、能力給
の導入により、新しい職務を学んだり、能力を高めようとする意欲を刺激することができるから
である。年功給では、モチベーションアップを期待できないばかりか、新しい職務を学習するこ
とに不適合を起こしていることを助長することになりかねない。
オは、適切である。成果主義賃金として職務給を制度化する場合は、自己申告制度や面接制度、
社内公募制度などを取り入れるのが通常である。理由は、①具体的な目標を設定しなければ社員
の納得性を得られないことと、②社員が仕事を選べるような仕組みを導入しないと不公平感が生
じるおそれがあること等である。
よってオが正解である。選択肢の表現に紛らわしい箇所はあるが、しっかり学習してきた受験
生にとっては正解肢を選ぶのはさほど難しい問題ではない。確実に得点したい問題である。
第 19 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
B
正解率
49.0 %
【解説】
頻出法律である労働基準法からの出題であるが、内容は診断士試験にとってはマイナーである。
ここまで細かい知識を学習した受験生は多くないと思われ、正解肢を選ぶのに苦労したであろう。
難易度を調整するためにあえてマイナーな分野から出題したと思われる。
書類の保存義務は、「2年間」ではなく、「3年間」である(労働基準法第 109 条)。よってウが
正解である。
118
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第 20 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
B
正解率
64.7 %
【解説】
第 19 問と同じく、労働基準法からの出題である。内容はやはりマイナーであるが、一般常識か
らある程度正解肢を選べる問題である。
使用者が有期労働契約を更新しない場合の予告は、契約期間満了の「2週間前」までにではな
く、「30 日前」までにしなければならない(平成 15 年 10 月 22 日厚生労働省告示 357 号)。よっ
てエが正解である。
第 21 問
【解答】
ア(配点4点)
重要度
C
正解率
54.1 %
【解説】
頻出法律である労働安全衛生法からの出題である。内容を知らなくても、選択肢の文脈から消
去法で正解を選べる問題である。
労働安全衛生法における事業者とは、「当該法人の代表者」ではなく、法人企業であれば法人そ
のもの(利益の帰属主体)を指す(労働安全衛生法第2条3号、昭和 47 年9月 18 日発基 91 号)。
よってアが正解である。イ、ウ、エは常識の範囲内の内容を述べており、文脈から適切と判断で
きる。
第 22 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
B
正解率
66.6 %
【解説】
診断士試験においてはこれまで出題のなかった職業安定法からの出題である。「差別的取扱い」
という表現から正解肢を絞り込むことができる。
「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であ
ること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない」(職業
安定法第3条)
。よってエが正解である。
第 23 問
【解答】
解なし(配点4点)
重要度
C
正解率
100.0 %
【解説】
失業給付に関する問題であり、これも診断士試験としてはマイナーな分野から出題された。難
易度を高める目的で出題したと思われるが、出題ミスで正解肢のない問題となった(診断協会が
誤りを認め、この問題に関しては全ての受験生を正解とした)。
119
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企業経営理論
雇用保険法第 10 条は「失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続
給付とする」となっている。給付のそれぞれの内容は次のとおりである。①求職者給付(基本手
当、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当、高年齢求職者給付金、特例一時金、日雇労働求職者給
付金)、②就職促進給付(就業促進手当、移転費、広域求職活動費)、③教育訓練給付(教育訓練
給付金)、④雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金、育児休業基本給付
金、育児休業者職場復帰給付金、介護休業給付金)。
したがって、失業給付に含まれないものは選択肢にない。
第 24 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
B
正解率
42.3 %
【解説】
厚生年金保険法の総則から出題された。内容はマイナーであるが、常識の範囲内で選択肢をあ
る程度絞り込むことができる。
厚生年金保険法における報酬の定義は、次の通りである。
「賃金、給料、俸給、手当、賞与その
他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対象として受けるすべてのものをいう。た
だし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りではない」
(厚生年
金保険法第3条3号)。よってエが正解である。
厚生年金保険法や雇用保険法は今後も出題される可能性はある。しかし、あまり細かな内容ま
で覚える必要はない。その理由は、①常識である程度正解肢を絞り込むことができることと、②
科目合格制になるため、細かな知識を覚える必要がなくなる(戦略的に捨て問を作ることが可能
になる)こと、である。
第 25 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
C
正解率
68.2 %
【解説】
流通業者向けの販売促進活動を実務的な観点から考えさせる問題である。選択肢の1つひとつ
の正誤を判断せよ、といわれると判断に迷うものばかりである。しかし、決定的に誤りである選
択肢が1つあるので、それを見抜くことができれば容易に正解できる。
チャネルリーダーシップは、現在、メーカーから一部の大規模な流通業者へ移行している。そ
の理由は、マーケティング活動に最も重要な消費者ニーズという情報を、日々消費者と接してい
る流通業者(特に大規模小売業者)が持っているからである。売れる情報を持つ方がリーダーシ
ップを発揮するようになるのは想像に難くない。ウは、「チャネルリーダーシップは、流通業者か
らメーカーへ移行する傾向がある」となっており、この点が誤りである。コンビニエンスストア
や大手家電量販店などを思い浮かべればよい。よってウが正解である。他の選択肢はウと比較す
ると誤りであるといえる程度が弱い。
ここ数年の出題傾向として、単なる知識ではなく、実務の視点でマーケティングの理論を考え
120
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企業経営理論
させる問題が多く出題されている。そのような問題を解くコツは、他の選択肢と比較してどの選
択肢が相対的に最も適切であるか、もしくは不適切であるかを、現場をイメージしながら判断す
ることである。また、消去法も充分に有効な手法となる。考えさせる問題は他の受験生と差がつ
く問題でもあるので、しっかりと得点しておきたい。
第 26 問
【解答】
オ(配点4点)
重要度
A
正解率
92.2 %
【解説】
製品ライフサイクルとプロモーションを組み合わせて問うものであり、本試験でよく見られる
出題パターンである。内容はいたって簡単であり、確実に正解しなければならない問題である。
アは、適切である。導入期は認知度を高める必要があることと、売上高が少ないことの2点か
ら、他の期と比較すると売上に対するプロモーション費用の割合が高くなる。
イは、適切である。使用を目的とするデモンストレーション販売によって、認知度を高めるこ
とを狙う。
ウは、適切である。選択肢の通りである。
エは、適切である。導入期は、新商品紹介の記事やテレビ番組の新商品コーナーで取り上げら
れる可能性が比較的高い。また、パブリシティを獲得できれば認知度向上とそれに伴った売上増
加が期待できる。
オは、不適切である。ロイヤルティとは忠誠心のことである。ロイヤルティ向上を狙うのは成
長期や成熟期のプロモーションである。導入期の第一の目的は、認知度向上である。
よってオが正解である。導入期のプロモーションの目的を理解していれば容易に解けるし、消
去法でも解ける問題である。
第 27 問
【解答】
(設問1)ウ(配点4点)
重要度
C
正解率
27.9 %
(設問2)イ(配点4点)
重要度
B
正解率
54.3 %
【解説】
マーケティングの基礎概念から出題された。市場成熟化が進み市場拡大が限界に近づいたこと
を受け、マーケティングは、標準品をマス市場に供給するマス・マーケティングから顧客1人ひ
とりとの関係性を重視する維持型マーケティングに移行しつつある。このような変化を受けての
出題である。
(設問1)
アの「社会的責任のマーケティング」およびエの「非営利組織のマーケティング」は、とも
にアメリカで 1960 年代後半から展開された概念である(和田充夫他『マーケティング戦略』有
斐閣アルマ)。なお、社会的責任のマーケティングについては、ケネディ大統領が 1962 年に発
表した「消費者の利益保護に関する特別教書」が有名である。
121
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企業経営理論
イの「戦略的マーケティング」は 1970 年代後半から展開され始めた。その根拠として、次の
出典がある。「どの製品のマーケティング・マネジメントを強化すべきか、などといったことを
全社的視野から決め、個々のマーケティング・マネジメントを統合するために上位概念との連
動が必要となったのである。この上位概念が、1970 年代の末あたりから台頭してきた戦略市場
計画である」(上原征彦『マーケティング戦略論』有斐閣 99 頁)。戦略市場計画とマーケティン
グ・マネジメントを連動させたものが、戦略的マーケティングの概念である。
よってウが正解となる。ダイレクト・マーケティングは、具体的には通信販売やインターネ
ット販売等、流通業者を利用せずに消費者と直接取引する形態のことを指す。ダイレクト・マ
ーケティングはITの進展により実行しやすくなった。すなわち、最近の研究テーマである。
(設問2)
アメリカ・マーケティング協会(AMA)が 2004 年に更新したマーケティングの定義から出
題された。定義が更新された背景には、マーケティングの中心が、マス・マーケティングから
個との関係性を重視するマーケティングへ移行しつつあることがあげられる。問題文の「1985
年からのマーケティングの変化に基づいたもの」という表現から、マーケティングの今日的な
流れを思い浮かべることができれば、新しい定義を知らなくても正解を絞り込むことができる。
AMAの新定義は次の通りである。「Marketing is an organizational function and a set of
processes for creating, communicating and delivering value to customers and for managing
customer relationships in ways that benefit the organization and its stakeholders.」。
この定義から、空欄に入るのは、「顧客関係を管理」になる。よってイが正解である。
第 28 問
【解答】
オ(配点4点)
重要度
C
正解率
52.5 %
【解説】
メーカーの流通チャネル戦略に関する出題である。単なる言葉の意味を問うものではなく、実
務の視点から流通系列化政策を考えさせる問題である。流通系列化の具体的行為としては、専売
店制や一店一帳合制、リベートなどがある。
アは、不適切である。「強力なセールスが常に必要」という箇所が誤りである。「セールス」が
販売そのものを指すのか、販売促進活動も含まれるのかは文脈だけでは判断できないが、実務に
おいては必ずしも必要とは言い切れないので、誤りと判断できる。
イは、不適切である。系列店になることはそのメーカーの商品を重点的に扱うということであ
り、店舗独自の商品構成は展開しにくくなる。
ウは、不適切である。流通業者とメーカーは互いに独立した企業である。よって、
「業務命令と
して」という表現はそぐわない。
エは、不適切である。「返品を受け入れる」ことが流通系列化の条件ではない。「返品を受け入
れる必要がある」と言い切っているので誤りである。
オは、適切である。系列店はメーカーとは別資本の独立企業なので、基本的には系列店自らの
資金で販売拠点を設置できる。
122
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企業経営理論
よってオが正解である。正誤の判断を迷わせる選択肢が多く難問であるが、使われている語句
や語尾の表現から誤りと判断できるものが多い。
第 29 問
【解答】
ウ(配点4点)
重要度
A
正解率
88.7 %
【解説】
新製品の価格政策に関する基本問題である。
アは、不適切である。「市場シェアの獲得」を目指すのは「市場浸透価格」である。
イは、不適切である。「補完的価格設定」とは、本体を補完する機能に別価格を設定することで
ある。具体的には、定期的に必要となる消耗品がある場合である。この場合、本体の価格を低く
設定しても消耗品に高い価格を設定することで利益を確保することができる。よって、補完的価
格設定とともに採用されやすいのは、「市場浸透価格」である。
ウは、適切である。「需要の価格弾力性が高い」場合、価格によって需要が変動する度合いが大
きいので低い価格を設定して需要を刺激する。
エは、不適切である。本肢の場合、短期間で利益を充分に稼ぐ必要があるので、「上層吸収価格
政策」が採用されやすい。
オは、不適切である。独自性の高い製品は差別化ができており競合品が少ないので、
「上層吸収
価格政策」が採用されやすい。
ここ数年は心理的価格政策や販売促進的価格政策が出題されたが、今年度は新製品の価格政策
が問われた。価格政策は毎年出題される頻出テーマであり、また今年度は基本的な問題だったの
で、しっかり得点したい。
第 30 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
C
正解率
39.0 %
【解説】
新製品の発売の際に採用されることがある「お試し価格」について、考えさせる問題である。
1つひとつの選択肢の内容を実際の販売現場で行なわれていることとしてイメージできるかどう
かがポイントである。
アは、適切である。
「お試し価格」が採用されるのは、低価格の最寄品であるケースが多い。最
寄品は購買頻度が高いため、「お試し価格」でブランドスイッチングに成功すればその後の利益に
つながる。
イは、適切である。理由は、アと同様である。発売当初に低い価格を設定することで、他社製
品を使用している顧客を自社製品へ切り替えること(ブランドスイッチング)を狙う。反復購買
によりその後の利益が期待できる。
ウは、適切である。嗜好性が高い製品の場合、とにかく顧客に試してもらい、知ってもらうこ
とが市場導入時の最大の目的になる。嗜好性が高いだけに、一度試して気に入ってもらえればそ
123
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企業経営理論
の後の反復購買につながることが期待できる。
エは、不適切である。特性を容易に認知できる製品の場合は、使ってもらわなくも商品コピー
や広告などの手段で製品の特徴を訴求することが可能である。「お試し価格」は必要ない。
オは、適切である。選択肢の通りである。
よってエが正解である。どのような場合に「お試し価格」が採用されているかについて、自分
の買い物経験などから推察することができれば正解に到達できる。比較的簡単に正解を選べる人
とそうでない人が分かれる問題である。正解すれば他の受験生に差をつけることができる。
第 31 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
A
正解率
58.0 %
【解説】
物流や受発注に関する新しい用語の定義を確認する問題である。知っていれば容易に解けるし、
知らなければお手上げ、という問題だが、全ての用語を知らなくても消去法で選択肢を絞り込め
る問題である。
モーダルシフトとは、「物流分野における二酸化炭素排出量の削減等に資するために、環境負荷
の少ない大量輸送機関である鉄道貨物輸送・内航海運の活用を図ること」
(国土交通省のホームペ
ージより引用)である。よってエが正解である。
平成 16 年度に続き、物流に関する時事的な知識が問われた。この背景には、環境負荷の少ない
輸送・物流手法を拡大したいという出題者の意図が見える。平成 18 年度以降も、物流手法、特に
環境負荷の少ない手法については繰り返し出題される可能性がある。
第 32 問
【解答】
オ(配点4点)
重要度
A
正解率
89.1 %
【解説】
ブランド拡張の知識を前提に、選択肢の1つひとつの内容を考えさせる問題である。単に知識
を問うのではなく、その知識をもとに考えさせるパターンはここ数年のマーケティングに見られ
る出題傾向である。
アは、適切である。販売シナジーに関することを述べている。
イは、適切である。消費者は既存ブランドから新商品の概要をイメージすることができる。
ウは、適切である。ブランド拡張のデメリットを述べている。
エは、適切である。既存のブランドを活用するので、ブランドを構築する費用は新しいブラン
ドを立ち上げるよりも少なくて済む。これもシナジーに関する説明である。
オは、不適切である。製品群を増やすことにより、既存ブランドの位置づけは不明確になる。
よってオが正解である。教科書水準の基本問題であり、落としてはならない。
124
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企業経営理論
第 33 問
【解答】
ア(配点3点)
重要度
A
正解率
83.8 %
【解説】
消費財の3分類である「最寄品」、「買回品」、「専門品」に関し、語句の定義をもとに選択肢の
内容を考えさせる問題である。基本問題であり、間違えられない問題である。
アは、不適切である。買回品は消費者が複数の店舗を見て回り、比較して購入する製品が該当
する。よって、
「ブランドが事前に決定される」ことは少ない。
イは、適切である。例えば、ショッピングセンターやロードサイドにおいて衣料品店同士や家
電量販店同士が近接しているのをよく見かける。
ウは、適切である。専門品は高価で購買頻度の少ない商品であり、消費者にとって思い入れや
こだわりの強い商品である。よって購買についての努力をいとわない。
エは、適切である。上記説明の通り、専門品は一般的に高価であり、購買頻度が低い。
オは、適切である。最寄品は生活必需品が該当し、情報探索や意思決定に時間や労力をかけな
い商品である。
よってアが正解である。
第 34 問
【解答】
オ(配点4点)
重要度
A
正解率
82.3 %
【解説】
プロモーション戦略に関し、広告の1類型であるラジオ広告が出題された。試験要綱記載の平
成 17 年度の「試験科目内容」では「広告(種類、媒体計画)」があげられており、試験科目内容
に基づいた出題といえる。広告の種類、媒体に関しては、平成 15 年度に雑誌が出題された。
アは、適切である。ラジオ広告は通常、聞き流されてしまう一過性のものであり、メッセージ
生命は短い。
イは、適切である。時間帯や番組によってリスナーが異なるので、ターゲットを限定しやすい。
ウは、適切である。ラジオは自動車を運転しながら聴く人が多いので、本肢の内容は否定でき
ない。
エは、適切である。商品プレゼントやイベントと組み合わせて活用されることは実務上よく行
なわれている。
オは、不適切である。ラジオ広告が売上にどれだけ結びついたかを明確に測定することは難し
い。売上が上がる要因は複数あり、ラジオ広告はその中の一要因に過ぎないからである。
よってオが正解である。ラジオ広告の特徴をイメージできれば容易に解くことができる問題で
ある。確実に正解したい。
125
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企業経営理論
第 35 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
A
正解率
77.9 %
【解説】
企業広告に関する出題であり、第 34 問同様、「試験科目内容」に沿った出題である。
企業広告とは、
「企業イメージの創成を目的とした広告」
(『マーケティング辞典』同文館 45 頁)
であり、企業イメージを高めることを目的とする。すなわち、企業広告の訴求対象は、自社製品
を購入してくれる直接的な顧客だけでなく、将来顧客になってくれる可能性のある人を含めたス
テークホルダー全般である。よってエの「商品・サービスを購買する主体を訴求対象としている」
という点が誤りである。企業広告の訴求対象はもっと幅広い。
アの「CI活動」とは、コーポレート・アイデンティティのことであり、ステークホルダーに
対するコミュニケーション活動のことをいう。よって、企業広告の範疇に入る。
オの「メセナ活動への取り組みを訴求」についても、企業イメージの向上につながるので、企
業広告の範疇に入る。
エの表現に注意すれば容易に解くことができる問題である。確実に得点したい。
第 36 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
A
正解率
73.0 %
【解説】
市場細分化について理解度を確認する問題である。市場細分化の意味を知っているだけでは正
解肢は選べない。細分化の意味をしっかりと理解できているかどうかで正誤が分かれる問題であ
る。
アは、適切である。市場細分化とは、ターゲット顧客を絞り込み、より的確にターゲットのニ
ーズに応えていこうとする試みのことである。セグメントとは、同類のニーズを要求するであろ
うと考えられる顧客グループのことである。以上のことから、細分化を行いセグメントが複数生
じれば、セグメントごとの異なるニーズに応えるために製品の種類が増える。そして、マーケテ
ィングにかかるコストも増える。
イは、適切である。上記アの説明の通りである。
ウは、適切である。上記アの説明の通りである。
エは、不適切である。セグメント内部では、あるマーケティング活動に対する反応の差が小さ
い方が好ましい。それは、反応の差が大きいと、どのようなマーケティング・ミックスを提供す
ればよいかの判断ができなくなるからである。つまり、反応の差が大きいようでは細分化した意
味がない。効果的にマーケティング活動を行うためにも、セグメント内部のニーズや反応は同様
になるようにしなければならない。
オは、適切である。セグメントに一定の市場規模がないと、充分な利益を上げられない。コト
ラーは、市場細分化の条件の1つとして、利益確保可能性をあげている。利益確保可能性とは、
「市場セグメントが、製品やサービスを提供するのに十分な規模と収益性を有している」
(フィリ
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企業経営理論
ップ.コトラー『マーケティング・マネジメント(ミレニアム版)』ピアソン・エデュケーション
社 342 頁)ことである。
よってエが正解である。
第 37 問
【解答】
ウ(配点3点)
重要度
B
正解率
71.9 %
【解説】
日本において自動販売機が普及した理由を問うものである。教科書の記述レベルからの出題で
はなく、実務レベルからの出題であるが、一般常識の範囲内で正解できる問題である。
日本では、自動販売機メーカーが自動販売機を設置するのではなく、ボトリングメーカー(飲
料メーカー)が費用負担して行なうのが一般的である。よってウが不適切である。他の選択肢は
常識の範囲で適切と判断できる。
第 38 問
【解答】
エ(配点4点)
重要度
B
正解率
66.2 %
【解説】
メーカー主導の基本的流通チャネル政策について実務の視点から問うものである。選択肢の中
には正誤の判断に迷うものもあるが、消去法で解くことができる問題である。
アは、不適切である。専属的チャネル政策の説明である。
イは、不適切である。開放的チャネル政策の説明である。
ウは、不適切である。開放的チャネル政策の説明である。
エは、適切である。判断に迷う選択肢であるが、①専属的チャネル政策は自社製品のみを扱う
流通業者を構築するものであり、簡単には構築できないこと、②たとえ専属的チャネルを構築で
きたとしてもそのチャネルにどのくらいの販売能力があるか不明であり、既に販売チャネルを持
っている既存の流通業者を探した方が売れる可能性が高いこと、③開放的チャネル政策は条件が
合う相手全てに販売するものであるから、「流通業者を探している」状態にはそぐわないこと、等
の理由により不適切と判断できる。
オは、不適切である。専属的チャネル政策の説明である。
よってエが正解である。エは一見すると、開放的、専属的、選択的の全てに当てはまるように
思える。この選択肢だけで正誤を判断するのは難しいかもしれないが、他の選択肢が明らかに選
択的チャネル政策以外の政策を示しているので、消去法で不適切と判断できる。
127
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企業経営理論
第 39 問
【解答】
イ(配点4点)
重要度
C
正解率
24.5 %
【解説】
消費者行動に関連するキーワードの意味を問うものである。瑣末な内容を問うており、難易度
を調整するための問題だと考えられる。
イの「選択的注意」とは、人は毎日膨大な情報に触れているが、その全ての情報に注意を払う
わけではないことである。すなわち、自分が興味のある情報や注意を引く情報以外は気に留めな
いことを示すものである。本肢の記述内容は、「覚えている」とあるので、「選択的注意」ではな
く、「選択的記憶」である。選択的記憶とは、「人は学習したことの多くを忘れてしまうが、自分
の態度や信念を裏付けてくれるような情報は覚えている傾向」(フィリップ.コトラー『マーケテ
ィング・マネジメント(ミレニアム版)』ピアソン・エデュケーション社 216、217 頁)のことで
ある。本肢は、
「注意」と「記憶」の違いを問うものであり、非常に瑣末な出題である。
オの「ライフスタイル」とは、
「活動、関心、意見などに現れる人それぞれの生活パターンのこ
と」(フィリップ.コトラー『マーケティング・マネジメント(ミレニアム版)』ピアソン・エデュ
ケーション社 210 頁)であり、この定義を広げて解釈すると、本肢の通りとなる。その根拠は次
の出典である。
「個人の生活様式は社会的に規定された、したがってまた同じ社会の他の諸個人に
も共通して見られる、いわば社会そのものの生活様式(way of life)に従う構造部分を、その深
層に横たえている」(小松章編著『ライフスタイル・マネジメント』文眞堂3~4頁)
。
よってイが正解である。この問題は難しい。特にオの「ライフスタイル」は、例えば希求集団
など自分が所属していない集団からも影響を受けて成り立つものなので、不適切と判断してしま
いがちである。しかし、ライフスタイルを深く考えてみれば、自分が生きている社会全体から何
かしらの影響を受けて構築されるものであり、オを不適切とは言い切れなくなる。一方、イは明
らかに誤りなので、イが正解となる。
第 40 問
【解答】
ア(配点4点)
重要度
C
正解率
27.3 %
【解説】
スタンプやポイントに関して、実務の視点で考えさせる難問である。
商店街組織のスタンプ事業では、商店街組織が小売店などに販売したスタンプ金額よりも少な
い金額で、消費者には交換するのが一般的である。例えば、スタンプ事業で有名な東京都世田谷
区のある商店街では、商店街組織が小売店に販売した 700 円分のスタンプ金額で、消費者には 500
円分の金額と交換している。この差額 200 円分を商店街組織がストックし、イベントの費用に充
てることにより、小売店に余分な負担を強いることなく、魅力的なイベントを行なうことができ
る。イベントが充実することにより、来街者がさらに増加し、小売店の売上が増加するという相
乗効果が生まれる。
この問題は、事前に知識を備えておくのではなく、その場で考えて解く問題である。スタンプ
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企業経営理論
やポイントの仕組み、イベントの原資などを想像することができたかどうかが、正誤の分かれ目
になる。万が一わからなかった場合は、文章表現から判断することもできる。アは、「定石である」
と言い切っており、全ての商店街で同じ仕組みでスタンプ事業が行われているとは考えにくいの
で、誤りと判断することもできる。ただし、この方法はどうしても分からなかった場合の、最後
の手段である。
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企業経営理論
【総括】
本年度の総問題数は、戦略論 18 問、組織論 17 問、マーケティング論 17 問の計 52 問となった。
総問題数は昨年度の 66 問と比較して 14 問も少なく、量の面では、取り組みやすくなったと言える。
一方、内容面においては、昨年度よりも難易度が高くなった。その傾向は特に戦略論と組織論に表
れている。
戦略論はいわゆる伝統的な戦略論(フレームワーク)からの出題がほとんどなく、製品開発や集
積、M&Aといった実務的かつ時事的な内容について問われた。特に、昨今注目されている「MO
T(技術経営)
」の視点からの出題が顕著に見られた。具体的には「死の谷」や「ダーウィンの海」
などの時事的な用語の意味が問われた。
組織論は、15 年度、16 年度と同様、出題委員である桑田耕太郎の著書『組織論』
(有斐閣アルマ)
からの出題が多く見られた。頻出テーマである組織間関係や組織行動等が出題されたが、著書に目
を通しただけでは解けないものが多かった。その意味では難易度は高く、試験委員対策を充分に積
んだ受験生とそうでない受験生との差が生じたと考えられる。また、6問出題された労働関連法規
の問題では、職業安定法や雇用保険法、厚生年金保険法といった、これまで出題されていないマイ
ナーな分野から出題された。
マーケティング論は、例年同様のオーソドックスな問題であり、難易度も低かった。出題内容面
も、例年通りの傾向であり、選択肢の内容を実務的な視点で考えさせるものが多く見られた。選択
肢1つひとつの正誤の判断に迷ったとしても、消去法や他の選択肢との比較で容易に解くことがで
きる問題が多かった。
全体的な出題傾向としては、実務的かつ実践的な知識や思考能力を試す問題がますます多くなっ
ている。また、書籍等で有名になった時事的な用語についても多く出題されている。この傾向は新
試験制度下においても継続されると考えられる。
以上を踏まえると、新試験制度において企業経営理論で合格点を取る方法は次の4点であるとい
える。
①基本的で、繰り返し出題される可能性の高い問題は絶対に間違えないようにする。難易度が上
がったとはいえ、正答率が6割を超える問題が全体の6割弱もある(解答リサーチ分析による)。
②捨て問を意識的に作る。科目合格制となるので、飛び抜けた高得点はいらない。よって、瑣末
な知識、細かなテーマについて学習する必要はない。本年度の労働法規のような問題は捨てて
も構わない。
③時事的なテーマや新しい用語に敏感になり、日頃から収集を心がける。特にMOTに注意する。
④考えて解く力をつける。これは2次試験を突破するためにも不可欠の力である。
メリハリをつけて学習するとともに、学習の初期段階から、考える力を身につけることを意識す
ることが重要である。知識を単なる知識としてインプットするのではなく、試験会場で使える“道
具”にできるようにする学習に心がけるように。そのためには、学習の初期段階から2次試験を意
識した学習をお薦めする。特に企業経営理論は2次試験に直結する科目であるので、真の実力を身
につける王道学習で突き進んでいただきたい。
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