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Bluetooth - Keysight

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Bluetooth - Keysight
Bluetooth RF測定を今すぐ実現
Application Note 1333
ご注意
2002 年 6 月 13 日より、製品のオプション構
成が変更されています。
カタログの記載と異なりますので、ご発注の
前にご確認をお願いします。
はじめに
Bluetoothとは、無線パーソナル・エリア・ネットワークのためのオープン仕様で
す。近距離の情報機器間で、無線接続による音声やデータの交換を行います。ケ
ーブルをつなぐ手間が省け、必要なときにいつでも機器間のネットワークを実現
できます。
Bluetooth(青い歯)という名前が10世紀のデンマークの王(ハラール青歯王)か
ら取られていると聞けば、バイキングによる征服と略奪を連想されるかもしれま
せん。しかし、ハラール大王はその治世にデンマークとノルウェイとの統一を成
し遂げています。Bluetoothもまた、さまざまなテクノロジを統合しているのです。
Bluetoothを使えば、機器間のシームレスな相互接続が可能です。コンピュータと
携帯情報端末(PDA)との間で、ファイルの共有やデータベースの同期などの作
業をリモートで行えます。ノートパソコンから近くにある携帯電話に接続して、
電子メールをやりとりすることもできます。また、携帯電話のハンズフリー操作
を容易にする無線ヘッドセットが実現でき、普及が見込まれます。Bluetoothテク
ノロジを利用したアプリケーションの研究開発は、すでに世界中で行われていま
す。無線接続により利便性が高まる情報機器分野の成長を考えれば、Bluetoothの
可能性は無限であるといえます。
本アプリケーション・ノートでは、現時点でのBluetooth RFデザインのテストと検
証のための送信機/受信機測定について説明します。Bluetoothテクノロジはまだ開
発の初期段階にあり、成熟したテクノロジの場合とはテスト方法も異なります。
ボタン1つの使いやすい測定機能が用意されているわけではなく、手動操作やカス
タム・ソフトウェア制御が必要になることもあります。AgilentのBluetooth測定ソ
リューションの一覧は、付録Aにあります。本アプリケーション・ノートでは、
RF測定に関する基本的な知識を前提としています。基本的なRF測定について知る
には、本アプリケーション・ノート末尾の「付録B:推奨文献」を参照してくだ
さい。
2
目次
はじめに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
1. Bluetoothの基本概念 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4
1.1 Bluetoothn無線ユニット ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
1.2 Bluetoothのリンク制御ユニットとリンク管理 ‥‥‥‥‥7
2. 送信機測定 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9
2.1 パワーテスト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
2.1.1 出力パワー ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
2.1.2 パワー密度 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥13
2.1.3 パワー制御 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥13
2.2 送信出力スペクトル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥14
2.3 変調テスト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15
2.3.1 変調特性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15
2.3.2 変調品質 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16
2.3.3 初期搬送波周波数の許容値 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16
2.3.4 搬送波周波数ドリフト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥18
2.4 タイミン・グテスト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥19
2.4.1 バースト・プロファイル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥19
2.4.2 スペクトログラム測定 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20
3. トランシーバ測定‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21
3.1 スプリアス放射テスト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21
4. 受信機測定‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22
4.1 ビット・エラー・レート(BER)テスト ‥‥‥‥‥‥‥‥22
4.1.1 感度──シングル・スロット・パケット ‥‥‥‥22
4.1.2 感度──マルチスロット・パケット ‥‥‥‥‥‥22
4.1.3 搬送波/干渉(C/I)性能‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
4.1.4 ブロッキング性能 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
4.1.5 相互変調性能 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
4.1.6 最大入力レベル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
4.1.7 BERテスト・セットアップ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥24
4.1.8 受信機BERテストのための信号生成 ‥‥‥‥‥‥25
4.2 補助的な受信機テスト ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26
5. 電源測定‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥27
6. 付録A:AgilentのBluetooth用ソリューション ‥‥‥‥‥‥28
7. 付録B:推奨文献 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥29
8. 用語集‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
9. 記号と頭文字‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥31
10. 参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32
11. 関連文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32
3
1.
Bluetoothの基本概念
Bluetoothの最も基本的な形態は、無線通信のためのグローバルな仕様として定義
されています。ケーブルの代わりとなるものを意図しているので、低コスト、わ
かりやすい操作、信頼性が高いことが求められます。これらの要件を満たすには
多くの障害がありますが、Bluetoothはさまざまな方法を駆使してそれに対処して
います。無線ユニットには周波数ホッピング・スペクトラム拡散(FHSS)が用い
られており、低消費電力、低コストはもちろん、工業、科学、医療(ISM)用の
無線帯域を使用するため、無秩序で干渉の多いRF環境でも誤りなく動作する信頼
性が重視された設計になっています。
Bluetoothシステムの構成要素は、無線ユニット、ベースバンド・リンク制御ユニ
ット、リンク管理ソフトウェアの3つです。このほかに、相互運用性を司る上位レ
ベルのソフトウェア・ユーティリティが存在します。図1はこのタイプの周波数ホ
ッピング・システムのブロック図であり、ベースバンド・コントローラ・セクシ
ョンとRF送信機/受信機セクションが示されています。
ベースバンド
RF
送信機
バースト
変調器
コントロール/プロセッサ
DSP
ベースバンド・プロセッサ
(バースト
・モード・コントロール)
RF
フィルタ
ローパス・フィルタ
DAC
FM変調器
スイッチ・
ドライバ
RAM
16ビット・
マイクロ
プロセッサ
フラッシュ
ROM
クロック
入出力
ホストへ
受信機
しきい値
検出器/
クロック・
リカバリ
IFフィルタ
FM復調器
周波数ホッピング・コントロール
図1. Bluetoothシステムのブロック図
4
1.1
Bluetooth無線ユニット
Bluetooth無線ユニットは、図1のブロック図で送信機および受信機として示されて
いるセクションです。送信機は、ベースバンド情報を、周波数変調された搬送波
にアップコンバートする役割を果たします。周波数ホッピングとバースト化はこ
のレベルで行われます。受信機はその逆に、RF信号のダウンコンバートと復調を
行います。表1にBluetoothの主なRF特性を示します。
表1. Bluetoothの主なRF特性(1999年10月現在)
特 性
仕 様
注
2400∼2483.5 MHz(ISM無線帯域)
例外:
2445∼2475 MHz(スペイン)
2446.5∼2483.5 MHz(フランス)
2471∼2497 MHz(日本)
f=2402+k MHz, k=0,...,78
変 調
0.5 BTガウシアン・フィルタ2FSK 1Mシンボル/s
変調指数:0.28∼0.35(公称値0.32)
ディジタルFM方式
許容ピーク周波数偏移175 kHz
ホッピング
1600 ホップ/s(通常動作)1
1 MHzチャネル間隔
5種類の異なるホッピング・シーケンスがシス
テムに存在:
1) ページ・ホッピング・シーケンス
2) ページ応答シーケンス
3) 問合せシーケンス
4) 問合せ応答シーケンス
5) チャネル・ホッピング・シーケンス
最初の4つは制限付きホッピング・シーケンスで、接
続設定時に使用。通常のチャネル・ホッピング・
シーケンスは、マスタ・クロック値とデバイス・アド
レスに基づく疑似ランダム・シーケンス。
チャネル・ホッピング・シーケン
スは、各周波数が定期的に、ほぼ
同じ確率で現れるように設計され
ている。周期は23時間18分。
送信パワー
パワー・クラス1:
1 mW
(0 dBm)
∼100 mW
(+20 dBm)
クラス1パワー制御:
+4∼+20 dBm(必須)
-30∼0 dBm(オプション)
クラス2パワー制御:
-30∼0 dBm(オプション)
クラス3パワー制御:
-30∼0 dBm(オプション)
搬送波周波数
パワー・クラス2:
0.25 mW
(-6 dBm)
∼2.5 mW
(+4 dBm)
パワー・クラス3:
1 mW
(0 dBm)
動作範囲
f=2449+k MHz, k=0,...,22
f=2454+k MHz, k=0,...,22
f=2473+k MHz, k=0,...,22
10 cm∼10 m(パワー・クラス1では100 mまで)
最大データ・スループット 非同期チャネルは、最大721 kbps(戻り方向
57.6 kb/sを許容)の非対称リンクまたは、
432.6 kbpsの対称リンクをサポートします。
データ・スループットが1Mシンボ
ル/sのレートよりも低いのは、プロ
トコル固有のオーバヘッドのため。
Bluetoothチャネルは、それぞれ1MHzの帯域を持ちます。周波数ホッピングは79チ
ャネルにわたって行われます2。図2は、各地域ごとの周波数ホッピング・チャネ
ルを示しています。
1.
2.
ホップ速度はパケット長に応じて変化します。
スペイン、フランス、日本では23チャネル。
5
日本
フランス
スペイン
ヨーロッパ
(スペインとフランスを除く)
米国
図2. Bluetoothの周波数チャネル
Bluetoothシステムの変調は、2値周波数シフト・キーイング(2FSK)です。この
ディジタル変調フォーマットでは、変調された搬送波が“1”と“0”を表す2つの
周波数の間でシフトします。このため、2FSKでのシンボル1個あたりのデータ・
ビット数は1です。図3は2FSK変調の例であり、2つの離散周波数を表しています。
GSMなど他の周波数変調方式と異なり、この種の変調方式では振幅と位相は大き
な意味を持ちません。
2FSK
振幅対時間
図3. 2FSK変調
6
1.2
Bluetoothのリンク制御ユニットと
リンク管理
Bluetoothリンク制御ユニットはリンク・コントローラとも呼ばれ、デバイスのス
テートを決定するとともに、ネットワーク接続の確立、パワー効率、エラー訂正、
暗号化の役割があります。
リンク管理ソフトウェアはリンク制御ユニットと協調動作します。デバイスはリ
ンク・マネージャを経由して相互接続されます。表2は、リンク制御/管理機能の
概要です。表のあとに詳しい説明があります。
表2. リンク制御/管理機能の概要
機 能
説 明
注
ネットワーク接続
マスタ側のリンク・コントローラが接続手順
を開始し、スレーブ側のパワー・セーブ・モ
ードを設定。
リンク・タイプ
リンク・タイプは以下の2つ:
● 同期コネクション型(SCO)
、主に音声用
● 非同期コネクションレス型(ACL)
、主に
パケット・データ用
Bluetoothでは、非同期データ・チャ
ネル、最大3個の同期音声チャネル
の同時使用、非同期データと同期
音声を同時に伝送するチャネルを
サポート。
時分割デュプレックスによる全2重
動作。
パケット・タイプ
NULL、POLL、FHS ……システム・パケット
DM1、DM3、DM5 ………中速度、エラー保護デ
ータ・パケット
DH1、DH3、DH5 … … … 高 速 度 、 非 保 護 デ ー
タ・パケット
HV1、HV2、HV3 ………ディジタル化オーディ
オ、3レベル・エラー
保護
DV ………データ/音声混合
AUX1 ……その他の用途
1、3、5のサフィックスは、デー
タ・バーストが占有するタイム・
スロットの数。
エラー訂正
3つのエラー訂正方式:
● 1/3レート・フォワード・エラー訂正
(FEC)コード
● 2/3レート・フォワード・エラー訂正
(FEC)コード
● 自動再送要求(ARQ)方式(データ用)
エラー訂正はリンク・マネージャ
が提供。
認 証
チャレンジ-レスポンス・アルゴリズム。
認証は、不使用、単方向、双方向が可能。
認証はリンク・マネージャが提供。
暗号化
秘密鍵長が0、40、または64ビットのストリーム
暗号。
テスト・モード
デバイスをテスト・ループバック・モードにし、
周波数設定、パワー制御、パケット・タイプな
どを制御することが可能。
公称バースト長:
DH1………366μs
DH3………1622μs
DH5………2870μs
Bluetooth無線機は、マスタ・ユニットとスレーブ・ユニットのどちらかとして動作
します。リンク・マネージャが、マスタ・ユニットとスレーブ・ユニットとの間の
接続を確立し、スレーブのパワー・セーブ・モードを決定します。マスタは最大7
台のスレーブと同時にアクティブに通信でき、そのほかに200台以上のスレーブを
登録して、通信を行わないパワーセーブ・モードで待機させることができます。
7
この制御エリアはピコネットと定義されています。あるピコネットのマスタは、
別のピコネットのマスタに対するスレーブにもなれます。同様に、異なるピコネ
ットに属する複数のマスタから1台のスレーブを制御することもできます。このよ
うなピコネットのネットワークをスキャッタネットと呼びます。図4は、2つのピ
コネットから構成されるスキャッタネットを示します。どちらのピコネットにも
属しないユニットは、スタンバイ・モードになっています。
S
S
sb
S
S
M
S
ps
ps
M
S
sb
M – マスタ・ユニット
S – スレーブ・ユニット
ps – パワーセーブ・モード
のスレーブ・ユニット
sb – スタンバイ・
モードのユニット
図4. ネットワーク・トポロジ
Bluetoothの帯域はタイムスロットに分割されていて、各スロットが1つのRFホップ
周波数に対応します。この時分割デュプレックス(TDD)方式では、マスタは偶数
番号のタイムスロットで、スレーブは奇数番号のタイムスロットで送信します。ピ
コネット内部の音声やデータのビットは、パケットで伝送されます。マスタまたは
スレーブが送信するパケット長は、1タイムスロット、3タイムスロット、5タイム
スロットのいずれかです。図5に示すようにパケットは、アクセス・コード、ヘッ
ダ、ペイロードから構成されます。アクセス・コードは、プリアンブル、同期ワー
ド、オプションのトレーラから構成されます。ヘッダにはピコネット・アドレスと
パケット情報が含まれます。ペイロードにはユーザの音声/データ情報が格納され
ます。パケット構造の詳細については、Bluetooth System Specification[2]を参照
してください。
72ビット
54ビット
0∼2745ビット
アクセス・コード
ヘッダ
ペイロード
LSB
MSB
4ビット
64ビット
4ビット
プリアンブル
同期ワード
トレーラ
LSB
MSB
図5. Bluetoothのパケット・フォーマット
リンク・マネージャは、Bluetoothのテスト・モードをサポートする必要がありま
す。テスト・モードには、Bluetoothデバイスのテストに必要な機能が装備されて
いる必要があります。例えば、デバイスをテスト・ループバック・モードにした
り、送受信周波数、パワー制御、その他の重要なパラメータを定義したりする機
能です。
8
2.
送信機測定
この章では、Bluetooth送信機テストのフレームワークとテスト方法を提示します。
現時点でBluetoothコンポーネント/システムに対して実行可能な測定について説明
します。例を挙げ、役に立つ情報も記載します。Bluetooth RF Test Specification[1]
にはBluetooth RFレイヤの検証のためのテスト要件が記載されており、最終的な拠
り所となります。1
図6に示すのは、送信機測定セットアップの例です。送信機テストの場合、被試験
Bluetoothデバイスをループ用バック・モードにします。信号発生器からのポー
ル・パケットを受信することにより、被試験デバイスは、スレーブ・デバイスと
してのバースト・タイミングを生成する必要があります。すなわち、ディジタル
信号発生器からの信号がデバイスの受信機に伝送され、デバイスの送信機からル
ープバックされて解析されます。Bluetoothデバイスのテスト・モードは、RFリン
クで送信するプロトコルまたはデバイスの直接ディジタル制御によって実現しま
す。どちらの方法でも、何らかのBluetoothのテスト・モードの制御が必要です。
なお、Bluetoothシステムが使用する周波数帯域にケーブル損失や不整合があると、
テスト・システム内の信号レベルに重大な影響が生じます。使用するコンポーネ
ントの性能が十分かどうか確認してください。
スペクトラム・
アナライザ
ディジタル
信号発生器
ループ
バック用
被試験Bluetooth RF出力
デバイス
RF入力 (ループバック・モード)
LMPテスト・コマンド
(ホスト
・リンクまたはRF)
Bluetooth
テスト
・モード制御
ベクトル・
シグナル・
アナライザ
GPIB
PCコントローラ
(オプション)
パワー・メータ
RS-232
図6. 送信機測定用セットアップ
Bluetoothデバイスと測定機器との間をケーブルで直接接続できない場合、アンテ
ナなどの適当な結合デバイスが必要となります。この場合、アンテナ間の経路損
失を計算で考慮する必要があります。これは通常の周波数掃引テストで評価がで
きます。
1.
本ノート作成の時点では、BluetoothのRFテスト要件はまだ定義中です。最新のテスト要件については、Bluetooth RF Test Specification[1]の最新版を参照
してください。
9
表3は、送信機テストに必要なパラメータの一覧です。
表3. 送信機テスト・パラメータ
テスト・パラメータ
送信機テスト
周波数
ホッピング
テスト・モード
パケット・
タイプ
ペイロード・
データ
測定帯域幅
オン
ループバック
サポートされる
最大長
PRBS 9
3 MHz RBW
3 MHz VBW
パワー密度
オン
ループバック
サポートされる
最大長
PRBS 9
100 kHz RBW
100 kHz VBW
パワー制御
オフ
ループバック
DH1
PRBS 9
3 MHz RBW
3 MHz VBW
送信出力スペクトル
オフ
ループバック
DH1
PRBS 9
100 kHz RBW
300 kHz VBW
変調特性
オフ
ループバック
サポートされる
最大長
11110000、
10101010
指定なし
初期搬送波周波数許容値
オンおよびオフ
ループバック
DH1
PRBS 9
指定なし
搬送波周波数ドリフト
オンおよびオフ
ループバック
サポートされる
最大長
10101010
指定なし
バースト・プロファイル1
オフ
ループバック
指定なし
指定なし
指定なし
出力パワー
● 平均パワー
● ピーク・パワー
Bluetooth信号はTDDバーストのシーケンスなので、適切にトリガする必要があり
ます。信号を捕捉できるように、エンベロープの立上がりエッジでトリガします。
Bluetoothシステムは周波数ホッピングを使用するため、信号解析が複雑になりま
す。Bluetoothデバイスの機能をテストするにはホッピングが必要ですが、パラメ
トリック・テストの場合は必須ではありません。変数の数を減らし、個々の性能
特性を明確にするため、いくつかのテストではホッピングがオフにされます。ま
た、送受信チャネルをバンド端に設定し、被試験デバイスのVCOで周波数を切り
替える方法もあります。どちらの方法もテスト要件を満たすように調整されてお
り、[1]に記述されています。
テスト・ケースに応じて、3種類の異なるペイロード・データが必要です。PRBS9、
10101010、11110000の3つです。これらのパターンはそれぞれ異なるストレス機構
を持っており、測定に合わせて選択されます。PRBS9は周期29-1の疑似ランダム・
ビット・シーケンスで、ライブ・トラヒックをシミュレートすることを目的とし
ており、実際の信号に近いスペクトル分布を持つ変調信号を生成します。10101010
のパターンは、変調フィルタ用の追加テストに用いられます。このパターンは送
信機出力のスペクトル形状を変化させます。11110000のパターンは、ガウシアン・
フィルタのチェックに用いられます。4個の1と4個の0が続いた後、出力は完全なセ
トリング状態に達するはずです。
1.
仕様にはないが、トラブルシューティングに役立つテスト。
10
送信機測定のこのセクション全体を通して、ベクトル・シグナル・アナライザと
掃引型スペクトラム・アナライザの2種類の信号アナライザを使用します。ベクト
ル・シグナル・アナライザがスペクトラム・アナライザと異なる点は、入力信号
の振幅と位相の両方を捕捉することです。このため、時間、周波数、変調の各領
域での広範囲の測定に使用できます。Bluetoothテストの多くでは、どちらのタイ
プの測定器でも測定を実行できます。場合によっては、一方がもう一方よりも高
速だったり使いやすかったりします。どちらが適切かは、ユーザのニーズと製品
デザインの条件に依存します。各テストでどのタイプの機器が使用できるかにつ
いては、付録Aの表を参照してください。
RF送信機パワー測定としては、バーストの平均パワー、ピーク・パワー、パワー
密度、パワー制御があります。パワー・レベルは、ディジタル通信システムの最
も重要なパラメータの1つです。これらのテストによって、パワー・レベルがリン
クを維持するのに十分大きく、かつISM帯域内で干渉を起こしたり、電池寿命に
影響したりするほど大きくないかどうかを確認できます。
2.1
パワー・テスト
2.1.1 出力パワー
出力パワー測定は時間領域で行われます。図7に示すのは、信号バーストのパワー
/タイミング特性を時間領域で表したものです。
ピーク・パワーPPK
平均パワーPAV
(バースト時)
90%振幅ポイント
オーバシュート
3 dB振幅ポイント
バースト幅
10%振幅ポイント
立上がり時間
立下がり時間
バースト間隔すなわち周期T
図7 時間領域のパワー/タイミング解析
平均パワー測定は、バースト継続時間の少なくても20%から80%にわたって行われ
ます。バースト継続時間(バースト幅)とは、平均電力を基準とした立上がり3
dBポイントと立下がり3 dBポイントの間の時間です。平均パワー測定にはシグナ
ル・アナライザが用いられます。シグナル・アナライザを使うと、信号を時間領
域で直接解析できます。平均パワー測定のほかに、シグナル・アナライザでは過
渡信号などの意味のあるデータも表示できます。掃引型スペクトラム・アナライ
ザを使って、スパンを0に設定することにより、信号のエンベロープを時間領域で
表示します。外部トリガを使ってバースト・モード信号を捕捉することもできま
す。表示される周期の数は、掃引時間で決まります。ピーク検出モードを使い、
トレースを最大値ホールドに設定して、ピーク・サーチ機能を使えばピーク・パ
ワーが測定できます。バーストの平均パワーも、トレース・データを解析するこ
とにより求められます。すべての周波数チャネルに対して同じテストを実行しま
す。
11
平均パワーとピーク・パワーは、ベクトル・シグナル・アナライザでも測定できま
す。ベクトル・シグナル・アナライザにはトリガ遅延機能があり、トリガ・ポイン
トより前のバーストを表示できます。ベクトル・シグナル・アナライザには平均パ
ワー測定機能もあり、平均パワーが自動的に求められます。図8に示すのは、ベク
トル・シグナル・アナライザの平均パワー測定画面です。掃引時間とトリガ遅延を
調整することにより、立上がりエッジと立下がりエッジを避けながら、バーストの
平均パワーを測定できます。
図8. 89441Aの平均パワー/ピーク・パワー測定画面
(CF=2.402GHz、1dB/div、掃引時間=380μs、IFチャネル1でトリガ、遅延=1 μs)
結果はEIRP(等価等方性放射パワー)で表示されます。EIRPはシステムの放射パ
ワーの尺度なので、送信機、ケーブル損失、アンテナ利得の影響がこの測定には
反映されます。ポート間の直接接続によってテストを行う場合は、すべての測定
結果にアンテナ利得を加算することにより、システム全体としてのパワー出力仕
様を超えないことを確認する必要があります。
12
2.1.2 パワー密度
パワー密度測定では、100kHz帯域幅でのピーク・パワー密度を求めます。最初に
シグナル・アナライザで周波数領域の測定を行います、Bluetooth周波数帯域の中央
に中心周波数をおき、帯域全体を表示するのに十分なスパンを使用します。分解能
帯域幅は100kHzに設定します。最大値ホールド/ピーク検出モードにして、1分間の
シングル掃引を実行します。トレースのピーク値が見つかると、その周波数がアナ
ライザの新しい中心周波数になります。図9a1は測定のこの部分を示し、ピーク・
パワー・ポイントが示されています。
測定の次の段階では、アナライザを時間領域に変更して、1分間のシングル掃引を
実行します。図9bを参照してください。パワー密度はトレースの平均として計算さ
れます。この計算は、トレース・データを解析して結果を平均することにより、ス
ペクトラム・アナライザで実行できます。ベクトル信号アナライザには、トレース
の平均パワーを求めるユーティリティが用意されています。
(a)
(b)
図9. 8594Eのパワー密度測定画面
(CF=2.441 MHz(a)& 2.477 MHz(b)
、スパン=240 MHz(a)& 0 Hz(b)
、RBW=100 kHz、VBW=100 kHz、ピーク検出、
トリガ・フリーラン、トレース最大値ホールド、掃引時間=72ms、連続掃引)
2.1.3 パワー制御
パワー制御テストは、レベル制御回路に対してテストや校正を実行するためのも
のです。パワー制御テストは、パワー制御をサポートするデバイスに対してのみ
必要です。パワー制御の方法は平均パワー測定の場合と同様ですが、3つの離散周
波数チャネルが対象となります。パワー制御テストでは、パワー・レベルとパワ
ー制御ステップ・サイズを検証し、仕様範囲内であることを確認します。
1.
ここでは、高速周波数ホッピングが使用できない場合に用いられる、仕様化された手順を変形したものを示します。1分間のシングル掃引の代わりに、スペ
クトラム・アナライザの最大値ホールドを使い、高速掃引によって低速ホッピング周波数の信号を捕捉します(ホップ・レート >> 掃引時間)
。
13
2.2
送信出力スペクトル
送信出力スペクトル測定は、パワー・レベルを周波数領域で解析することにより、
チャネル外放射が十分小さいことを確認します。これにより、システム全体の干
渉を減らして、規格への適合を保証します。この測定では、デバイスの出力パワ
ー・スペクトルを定義済みのマスクと比較します。図4にマスクの特性を示します。
表4. 出力スペクトル・マスクの要件
周波数オフセット
送信パワー
M±[550-1450 kHz]
|M-N|=2
|M-N|≧3
-20 dBc
-20 dBm
-40 dBm
注記:Mは送信チャネルのチャネル番号を表す整数、Nは測定対象の隣接チャネルのチャネル番号を表す
整数です。
図10は、掃引モードの5 dBm搬送波によるBluetooth信号の出力スペクトル表示で
す。この図のスパンは、スペクトル・マスク全体を示すために10 MHzに設定され
ています。通常のテストは1.5 MHzのスパンで実行するので、目的の領域全体を
観察するには何回かの測定が必要です。図10には、スペクトラム・アナライザの
リミット・ライン機能を使ってマスクを解釈した結果も表示されています。この
機能は8690 Eシリーズ・スペクトラム・アナライザなどに装備されており、カス
タマイズによって合否判定を自動的に行うマスクを作成することもできます。図
10の画面は信号発生器を使って作成されたもので、実際のBluetoothデバイスでは
これほどきれいな結果は得られないかもしれません。出力スペクトルを観察する
と、データ伝送の個々の内容に起因するスペクトル表示の非対称性が見られる場
合があります。
図10. 8594Eの出力スペクトル測定画面
(CF=2.45 GHz、スパン=10 MHz、RBW=100 kHz、VBW=300 kHz、掃引時間=12 s、
ディテクタ・サンプル・モード、トレース最大値ホールド、リミット・ライン・マスク)
出力スペクトルでは、変調とパワー・スイッチングの両方の影響を観察できます。
これらが重なっている領域もありますが、500 kHz以上のオフセットでの異常はス
イッチングによる過渡信号に原因がある場合がほとんどです。これを確認するに
は、結果をバースト・プロファイルと比較します。GSMやDECTなど他の時分割シ
ステムにはゲート測定と非ゲート測定の両方があるのに対し、Bluetoothの出力スペ
クトル測定は非ゲートのみです。スペクトル測定では、バーストの周期全体とバ
ースト間の領域を捕捉して、変調と過渡信号の両方の影響を含める必要がありま
す。
14
2.3
変調テスト
Bluetoothの変調測定項目には、変調特性、初期搬送波周波数の許容値、搬送波周
波数のドリフトがあります。変調測定の結果は、変調回路の性能だけでなく、局
部発振器の安定度も反映します。変調器や電圧制御発振器(VCO)も、電源のデ
ィジタル・ノイズや送信パワー・バーストの影響を受けます。電源による周波数
引き込みを避けるため、無線機のデザインで慎重な配慮が求められます。変調特
性の検証には、各ビットの周波数が求められるように、Bluetooth信号を復調する
能力が必要です。
2.3.1 変調特性
変調特性テストは、周波数偏移の測定です。変調特性の測定では、2種類の8ビッ
ト繰り返しシーケンス(00001111と01010101)がペイロードに用いられます。2つ
のシーケンスの組み合わせにより、変調器性能と変調前のフィルタリングの両方
がチェックされます。
ベクトル・シグナル・アナライザを使って信号を復調する場合、位相とシンボル
の情報が保存されます。8ビット・シーケンスにおける各ビットの周波数が測定さ
れ、平均化されます。次に、8ビットのそれぞれに対して、平均値からの最大偏移
が記録されます。最後に、最大偏移の平均が計算されます。最大偏移と、最大偏
移の平均が結果として用いられます。この手順が、00001111のペイロード・シー
ケンスに対して、10パケット以上の期間にわたって実行されます。次に、
01010101のペイロード・シーケンスに対して同じ手順が実行されます。このテス
トはデータ・ポイント数が非常に多いため、ソフトウェア制御で実行するのが適
しています。00001111の8ビット・シーケンスを使ったときの、復調結果のバース
トの例を図11に示します。マーカは1ビットの周波数偏移を表わします。
Four 0000
00001111繰り返し
bits
シ ー ケfrom
ン スthe
内の
repeating
4つの0000ビット1
00001111
sequence1
図11. 89441Aの変調特性測定画面
(CF=2.45 GHz、復調モード、2FSK、シンボル・レート=1 MHz、IFチャネル1でトリガ、FSK測定時間、実数部(I)
、結果長=350シンボル)
1.
このアナライザ設定で測定されるノイズが結果に影響します。
15
2.3.2 変調品質
ベクトル・シグナル・アナライザには、変調品質測定に関する豊富な機能があり、
種々の信号に関する問題を検出し、定量化し、原因を突き止めるのに役立ちます。
例えば、送信機の干渉による相互変調、電源ノイズによる変調、アンテナ不整合
によるパワー安定度などがあります。FSK誤差、振幅誤差、アイ・ダイアグラム
などの変調品質測定は、Bluetooth RF Test Specifications[1]には直接記載されて
いませんが、トラブルシューティングには非常に役立ちます。図12に示すのは、
周波数ドリフトが存在する場合のBluetooth信号の復調測定を4画面表示したもので
す。周波数ドリフトは左下の画面を見ればすぐにわかります。
図12. 89441Aの復調品質テスト画面
2.3.3 初期搬送波周波数の許容値
初期搬送波周波数許容値テストは、送信機の搬送波周波数の確度を検証するもの
です。プリアンブルとPRBSのペイロードとからなる標準的なDH1パケットが用い
られます。パケットの最初の4ビット(プリアンブル・ビット)を解析することで、
中心周波数からの周波数偏移の大きさを求めます。この測定では、各シンボルの
周波数偏移を測定するために、信号を復調する必要があります。復調後、各プリ
アンブル・ビットの周波数オフセットが測定され、平均されます。この測定を実
行する際には、広帯域のBluetooth信号を正しく復調できるように、シグナル・ア
ナライザの周波数スパンを十分広くしてください。例えば、図13の測定を実行す
るには、5 MHzのスパンが用いられています。また、アナライザの搬送波中心周
波数自動補正機能はオフにしておく必要があります。図13は測定結果の例で、最
16
初の10ビットを示しています。このうち最初の4ビットが“1010”のプリアンブル
です。周波数ホッピングはオフになっています。テスト仕様では、この測定をホ
ッピング・オンとホッピング・オフの両方で実行するように定めています。どち
らの場合も、ベクトル・シグナル・アナライザは1周波数チャネルに設定します。
ただし、ホッピングがオンの場合、送信機が周波数から周波数へすばやくジャン
プするために、スルーの効果がより大きくなります。搬送波周波数がセトリング
したときに、初期搬送波周波数オフセットにスルーが見られます。ホッピングに
よるストレスの増加によって、増幅器の応答に関する問題を確認できます。
図13. 89441Aの初期搬送波周波数許容値測定画面(周波数オフセット70 kHz)
(CF=2.45 GHz、スパン=5 MHz、復調モード、FM、シンボル・レート=1 MHz、IFチャネル1でトリガ、
FMメイン時間、実数部(I)、結果長=10シンボル)
89441Aベクトル・シグナル・アナライザの復調モードには、初期搬送波周波数許
容値を測定するもっと便利な方法が用意されています。結果長を最小シンボル数
(10)に設定すると、シンボル・エラー画面に搬送波オフセットが直接表示される
のです。この最小シンボル数は4より大きいため、ノイズによる結果のバラツキが
少なくなります。重要なのは、0101パターンが継続することです。図12の画面の
サマリ表に示された搬送波オフセットの結果は、この方法により得られた初期搬
送波オフセットです。
17
2.3.4 搬送波周波数ドリフト
搬送波周波数ドリフトも、ベクトル・シグナル・アナライザを使って信号を復調
することにより測定されます。ペイロード・データは、1010の4ビット・シーケン
スの繰り返しから構成されています。測定の際には、プリアンブルの4ビットの絶
対周波数が測定され、積分されます。これによって初期搬送波周波数が得られま
す。次に、ペイロード内の連続する4ビット部分のそれぞれについて絶対周波数が
測定され、積分されます。周波数ドリフトは、プリアンブルの4ビットの平均周波
数と、ペイロード・フィールドの4ビットの平均周波数との差です。最大ドリフ
ト・レートもチェックされます。これはペイロード・フィールドの隣接する2つの
4ビット・グループの差と定義されます。この測定は、最小、中間、最大動作周波
数で、最初にホッピング・オフ、次にホッピング・オンで実行されます。さらに、
異なるパケット長でも行われます。この作業にはベクトル・シグナル・アナライ
ザが適しています。ソフトウェア制御を使えばこの繰り返し作業が簡単になりま
す。図14は、00001111の繰り返しシーケンスで、25 kHzの周波数ドリフトのある
Bluetooth変調信号の搬送波周波数ドリフト測定を行った例です。
25 kHz
図14. 89441Aの搬送波周波数ドリフト測定画面
(CF=2.45 GHz、スパン=5 MHz、復調モード、2FSK、シンボル・レート=1 MHz、IFチャネル1でトリガ、
FSK測定時間、実数部(I)、結果長=360シンボル)
18
2.4
タイミング・テスト
Bluetooth信号に対してタイミング・テストを行うこともできます。バースト・プ
ロファイルの解析、PLLのセトリング時間、その他のタイミング特性のテストが
あります。これらのテストは仕様には含まれていませんが、開発中のデザインが
製品仕様の基準を満たすことを確認するために役立ちます。
2.4.1 バースト・プロファイル
バーストの立上がり/立下がり時間は、シグナル・アナライザを使って時間領域で
測定できます。Bluetoothでは立上がり時間と立下がり時間の定義は決まっていま
せん。業界での一般的な立上がり時間の定義は、10%(-20dB)の振幅ポイントか
ら90%(-0.9dB)の振幅ポイントまで上昇するのにかかる時間です。立下がり時
間は、同じ振幅ポイントを逆方向に下降する時間と定義されます。Bluetoothと似
た標準のDECTでは、これとは異なる立上がり/立下がり時間の定義を採用してお
り、立上がり時間は-30 dBから-3 dBの振幅ポイントまで、立下がり時間は-6 dBか
ら-30 dBの振幅ポイントまでと定められています。プリトリガ機能を使えば、立
上がり時間の捕捉と測定が容易になります。バースト・プロファイルに関する定
義済みのマスク・テストは存在しません。デバイスによっては、ここに示すより
もはるかに高速な過渡応答を持つものもあります。スイッチングが速すぎると、
バーストのエッジが鋭いためにスペクトル拡散が広がり、出力仕様を満たさなく
なることがあります。図15に示すのは、バーストの立上がり時間とバーストの立
下がり時間の測定例です。その他のバースト・プロファイル特性としては、バー
ストのオン/オフ比やオーバシュートがあります(図7参照)
。
(a)
(b)
図15. 89441Aのバースト(a)立上がりおよび(b)立下がり時間測定画面
(CF=2.45 GHz、スパン=3 MHz、ベクトル・モード、IFチャネル1でトリガ、メイン時間チャネル1、対数振幅(dB)
、メイン長=20 μs)
19
2.4.2 スペクトログラム測定
図16はスペクトログラム画面で、無線送信機の電源オン時のPLLのセトリングに
問題があることを示しています。このような状態の解析にはスペクトログラムが
役立ちます。スペクトログラムは、X軸に周波数を、Y軸に時間を表示します。振
幅はカラーまたはグレイスケールで表され、明るいカラーまたはグレイが大きい
振幅に対応します。
図16. 89441AのPLLセトリング時間のスペクトログラム表示
ベクトル・シグナル・アナライザのタイム・キャプチャ機能を使えば、もっと複雑
なスペクトログラムを作成できます。これにより、リアルタイム・データを低速で
再生できます。この方法で、シンボルのタイミングとレートを解析できます。図17
に示すのは、Bluetoothバーストの最初の120 μsのスペクトログラムです。この例で
のペイロード・データは11110000であり、4個の1と4個の0が交互に現われるこのパ
ターンが、中心周波数から両側に157.5 kHz離れたところに表示されています。
Data
Bits
データ・ビット
図17. 89441Aのシンボル・タイミング/レートのスペクトログラム表示
20
3.
トランシーバ測定
3.1
スプリアス放射テスト
帯域外スプリアス放射テストは、Bluetooth無線機の動作が規格に適合することを
確認するためのものです。仕様に定められているスプリアス放射テストは、伝導
性放出と放射性放出の2種類です。伝導性放出とは、被試験デバイスのアンテナま
たは出力コネクタから生じるスプリアス放射の尺度です。放射性放出とは、被試
験デバイスのキャビネットから漏れ出すスプリアス放射の尺度です。
米国とヨーロッパでは、異なる標準が定められています。米国はFCC(Federal
Communications Commission) part 15.247標準に従います。ヨーロッパは、ETSI
(European Technical Standards Institute) ETS 300 328標準に従います。
スプリアス放射テストを実行するには、スペクトラム・アナライザを使って周波
数レンジを掃引し、スプリアスを探します。スプリアス放射の仕様は、Bluetooth
RF Test Specification[1]に定められています。必要なスペクトラム・アナライザ
の周波数レンジは、ETSI標準で最大12.75 GHz、FCC標準で最大25.0 GHzです。
CISPR(Special Committee on Radio Interference) publication 16に準拠する必要が
あるテストでは、準尖頭値検出機能を持つEMCスペクトラム・アナライザが必要
です。このテストについては、本アプリケーション・ノートでは扱いません。
EMC製品の詳細については、計測お客様窓口までお問い合わせください。
21
4.
受信機測定
4.1
ビット・エラー・レート
(BER)テスト
Bluetooth仕様で規定されている受信機測定には、以下のものがあります。
● 感度――シングル・スロット・パケット
● 感度――マルチスロット・パケット
● 搬送波/干渉(C/I)性能
● ブロッキング性能
● 相互変調性能
● 最大入力レベル
受信機性能は、ビット・エラー・レート(BER)で評価します。これらのテスト
では、さまざまな条件でBER解析を行います。表5に示すのは、受信機テストに必
要なテスト・パラメータの一覧です。
表6. 受信機テスト・パラメータ
受信機テスト
テスト・パラメータ
周波数
ホッピング
テスト・モード
パケット・
タイプ
ペイロード・
データ
測定BER
感度…
シングル・スロット・パケット
ループバック
オフ
オン(オプション)
DH1
PRBS9
0.1%
感度…
マルチスロット・パケット
オフ
ループバック
オン(オプション)
DH5
(DH3)
PRBS9
0.1%
C/I性能
オフ
ループバック
サポートされる
最長パケット
PRBS9
0.1%
ブロッキング性能
オフ
ループバック
DH1
PRBS9
0.1%
相互変調性能
オフ
ループバック
DH1
PRBS 9
0.1%
最大入力レベル
オフ
ループバック
DH1
PRBS9
0.1%
4.1.1 感度――シングル・スロット・パケット
感度をテストするには、さまざまな欠陥のある信号を受信機に送り、受信機の
BERを測定します。受信機への入力が-70 dBmになるように送信パワーを選択しま
す。最低、中間、最高の動作周波数でテストを行います。信号の欠陥はテスト手
順で定義されており、搬送波周波数オフセットの変動、搬送波周波数ドリフト、
変調指数、シンボル・タイミング・ドリフトがあります。ESG-Dシリーズ信号発
生器は、これらの信号欠陥を生成するのに理想的なツールです。この信号発生器
ファミリで生成できる信号欠陥の例を図14に示します。
4.1.2 感度――マルチスロット・パケット
マルチスロット・パケットの感度テストはシングル・スロット・パケットのテス
トに似ていますが、DH1パケットでなくDH5パケットが用いられる点が異なりま
す。DH5パケットがサポートされていない場合、DH3パケットが用いられます。
22
4.1.3 搬送波/干渉(C/I)性能
搬送波/干渉(C/I)性能を測定するには、目的の信号とパラレルに、同一チャネ
ルまたは隣接チャネルのBluetooth変調信号を送信し、受信機のBERを測定します。
搬送波信号レベルと干渉信号レベルとの比は仕様化されています。最低、中間、
最高動作周波数でテストが実行されます。このときの干渉信号の周波数は帯域内
の全動作周波数です。
4.1.4 ブロッキング性能
ブロッキング性能テストでは、2460MHzの送受信周波数が指定されています。テ
スタは、基準感度レベルより3 dB高いBluetooth変調信号を連続的に送信します1。
同時にテスタは、連続波干渉信号を送信し、受信機のBERを測定します。規格適
合試験では、30 MHzから12.75 GHzの範囲で、1 MHz刻みで干渉信号を変化させ
ます。それぞれの周波数レンジに対応する振幅は、仕様に定められています。
4.1.5 相互変調性能
相互変調性能テストでは、複数の近接信号がノンリニア・デバイスを通って干渉
することから生じる不要な周波数成分を、測定します。テスタは、基準感度より6
dB高いBluetooth変調信号を連続的に送信します。同時にテスタは、3次、4次、5
次の相互変調成分が生じる信号を送信します。この状態でBERが測定され、相互
変調歪みが存在する状態での受信機の性能が求められます。
C/Iテスト、ブロッキング性能テスト、相互変調性能テストの際には、信号発生器
が複数必要になることがあります。
4.1.6 最大入力レベル
最大入力レベル・テストでは、入力信号のパワー・レベルが仕様の最大値の-20
dBmであるときのBER性能を測定します。最低、中間、最高の動作周波数でテス
トが実行されます。
1.
基準感度レベルとは、BERが0.1%になる受信機入力レベルと定義されます。基準感度は-70 dBm(=1 dB)またはそれよりよくなければなりません。
23
4.1.7 BERテスト・セットアップ
BERテストを実行するには、信号発生器でBluetooth変調信号を生成し、被試験ユ
ニットに送信します。信号はデバイスで復調されます。復調されたデータはBER
テスタに戻されて解析されます。図18と図19は、ベースバンドBERテストの2種類
のセットアップを示します。図18は、ベースバンド・プロセッサのクロック、デ
ータ、ゲートの各出力をBERテスタにつないだ例です。ゲート信号がない場合も
あります。これらの信号が得られれば、この方法は簡単です。信号が得られない
場合、図19のセットアップを使用できます。このセットアップでは、デバイスの
FM復調器の出力を、ディジタイズしクロック・リカバリを行って、信号発生器の
BERテスタ入力に接続します。もう1つの方法として、しきい値検出器のディジタ
イズ出力をクロック信号とともにBERテスタに直接ループバックすることもでき
ます。これら2つの例は、デバイスの回路構成に直接アクセスできる研究開発用途
に最適です。
ゲート データ クロック
入力 入力 入力
Bluetooth任意波形
ファイル付きの
ディジタル信号源
+
ベースバンド
BERテスタ
FM復調器
しきい値
検出器
Bluetooth
受信機セクション
ベースバンド・クロック
データ
プロセッサ
ゲート
制御
図18. ベースバンド・プロセッサの出力を利用したBERテストのセットアップ
クロック・
リカバリ
TTLレベル
レベル検出器
クロック入力
データ入力
Bluetooth任意波形
ファイル付きの
ディジタル信号源
+
ベースバンド
BERテスタ
FM復調器
しきい
値検出器
Bluetooth
受信機セクション
ベースバンド・
プロセッサ
クロック
データ
ゲート
制御
図19. Bluetooth受信機のFM復調器の出力を利用したBERテストのセットアップ
24
3番目の方法では、Bluetooth信号の復調機能を持つBERテスタを使います。この場
合、テスト・モード・コマンドを使って、受信信号をループバックするように
Bluetoothデバイスに指示します。コマンドはRFリンクで送信することも、被試験
デバイスの直接ディジタル制御により実行することもできます。被試験デバイス
の送信機の出力をBERテスタに戻して解析します。PRBS9ペイロードを使うこと
により、BERテスタは任意の9ビットから正しいビット・シーケンスを決定し、
BERを計算することができます。図20にこの構成の例を示します。
Bluetooth
無線
信号発生器
受信
BERテスタ
(PRBS9シーケンスを
デコード)
送信
LMPテスト・コマンド
(RFまたはホスト・リンク)
PC
RS-232
Bluetooth
テスト・
モード制御
図20. Bluetoothデバイスのテスト・ループバック・モードと、
復調機能付きBERテスタを利用したBERテストのセットアップ
4.1.8 受信機BERテストのための信号生成
周波数ホッピングのないアプリケーションの場合、信号発生器でBluetooth信号を
生成する方法はいくつかあります。ESG-Dシリーズ信号発生器は、オプション
UND(内部デュアル任意波形発生器)を追加することにより、Bluetooth信号を内
部で生成できます。この機能を用いると、Bluetooth信号を定義したり、ユーザ定
義の信号欠陥を生成できます。
図21. ESG-Dシリーズ・オプションUNDのBluetooth信号構成用メニュー
25
オプションUNS(リアルタイムI/Qベースバンド・ジェネレータ+TDMA標準)で
も、パルスド2FSK信号を手動で生成し、ガウシアン・フィルタリングとペイロー
ドのカスタマイズを使うことで、Bluetooth信号をシミュレートできます。表6に、
この方法の例をステップごとに示します。
表6. ESGシリーズ信号発生器(オプションUN8付き)でのBluetooth信号の生成例
機能
設定
周波数
適当なBluetoothチャネル(2.45 GHzなど)に
設定
振幅
テストに応じて適切な条件に設定
フィルタ
フィルタ形状
フィルタBbT
ガウシアン
0.5
シンボル・レート
1 Msps
データ
周波数偏移
周波数偏移
データ・ビット
157.5 kHz(“0”の場合)
157.5 kHz(“1”の場合)
4個の“1”と4個の“0”
パルス
パルス幅
パルス周期
パルス・オン/オフ
366 μs
1.25 ms1
オン
さらに、Bluetoothのノーマル・信号と欠陥信号をシミュレートするために、ESGDシリーズ信号発生器用にカスタマイズされた任意波形ファイルが用意されてい
ます。これらのファイルを使用するには、デュアル任意波形発生器(オプション
UND)が必要です。欠陥のあるBluetooth信号を使ってデバイスの受信/復調機能に
ストレスをかけることで、Bluetooth受信機の高度な解析が可能になります。これ
らのファイルはウェブサイトから入手できます。
http://www.tmo.hp.com/tmo/datasheets/English/HPE4433B.htmlにアクセスし、HP
E4433B Technical Supportを選択してください。
4.2
補助的な受信機テスト
1.
Bluetooth RF Test Specification[1]では、周波数ホッピングは受信機テストに必須
とはされていませんが、より詳細なテストのためのオプションとして記載されてい
ます。E6432A VXIマイクロ波シンセサイザとESG-Dシリーズ信号発生器を組み合
わせて信号を変調することにより、高速な周波数ホッピングが実現できます。この
測定では、信号源、受信機、被試験デバイスを制御して、同時に周波数ホッピング
を実行させます。被試験デバイスはテスト・ループバック・モードにします。
Bluetoothデバイスはバーストの送信と受信を交互のタイムスロットで行うので、パルス周期は2タイムスロット(2×0.625 ms)と定義されます。
26
5.
電源測定
Bluetooth RF Test Specification[1]では、一部のBluetoothデバイスでは極端条件と
なる電源電圧でのテストを定めています1。電源テストと、電源ライン上のスプリ
アス信号をBluetoothデバイスが除去する能力は、多くのアプリケーションとの統
合テストで重要な役割を果たします。電源に関係する問題は、DH5バースト時の
パワー対時間の測定と周波数誤差測定の注意深いモニタリングにより解決できま
す。
Agilentでは、この種のテストに適したDC電源を各種用意しています。汎用電源の
ほかに、移動通信製品のニーズに応えるために特別に設計された電源もあります。
これらのDC電源には低電流測定機能もあり、スタンバイ中やスリープ・モードで
の消費電流を評価するのに役立ちます。
27
1.
被試験機器が他のシステムや機器の一部として設計され、そちらから電力を供給される場合には、これらのテストは不要です。
6.
付録A:AgilentのBluetooth用
ソリューション
Agilent測定器
ベクトル・シグナル・アナライザ
Bluetooth測定項目
スペクトラム・アナライザ
信号源
89400シリーズ・
ベクトル・シグナ
ル・アナライザ1
E4406
VSAシリーズ
送信機テスタ
8590 E
シリーズ・
スペクトラム・
アナライザ2
ESA-E
シリーズ・
スペクトラム・
アナライザ3
ESG-D
シリーズ
信号発生器4
出力パワー
●
●
●
●
●
パワー密度
●
●
●
●
●
パワー制御
●
●
●
●
●
出力スペクトル
●
●
●
●
●
変調特性
●
❍
❍
●
初期搬送波周波数許容値
●
❍
❍
●
搬送波周波数ドリフト
●
❍
❍
●
補助変調測定
●
バースト立上がり/
立下がり時間
●
スペクトログラム測定
●
データ復調
●
送信機テスト
●
●
●
●
●
●
トランシーバ・テスト
スプリアス放射
❍
●
●
受信機テスト
感度――シングル・
スロット・パケット
●
感度――マルチスロット
・パケット
●
C/I性能
●
帯域外ブロッキング性能
●
相互変調性能
●
最大入力レベル
●
周波数ホッピングを
使った受信機テスト
●5
●
❍
1.
2.
3.
4.
5.
テスト要件を完全に満たす。
テスト要件を完全には満たさない。特性のみ。
オプションAYA(ベクトル変調解析)およびAY9(拡張タイム・キャプチャ)が必要。スペクトログラムにはオプションAYB(ウォーターフォールおよびス
ペクトログラム)が必要。
オプション101(高速時間領域掃引)および102(AM/FM復調)が必要。
オプションAYX(高速時間領域掃引)およびBAA(FM復調)が必要。
任意波形ファイルにはオプションUND(デュアル任意波形発生器)が、2FSKディジタル変調にはUN8(I/Qベースバンド・ジェネレータ)が、受信機テストに
はUN7(ベースバンドBERアナライザ)が必要。
ホッピングにはE6432A VXIマイクロ波シンセサイザが必要。
28
7.
付録B:推奨文献
1. 『8つのヒント アナログRF信号発生器によるより優れた測定』、カタログ番
号5967-5661J
2. 『スペクトラム・アナライザ測定を成功させる8つのヒント』、Application Note
1286-1、カタログ番号5965-7009J
3. 『パーフェクトなディジタル復調測定のための10ステップ』、Product Note
89400-14A、カタログ番号5966-0444J
4. 『Cookbook for EMC Precompliance Measurements』、Application Note 1290-1、
カタログ番号5964-2151E
5. 『ESG-Dシリーズ信号発生器を用いたビット・エラー・レート測定』、カタロ
グ番号5966-4098J
6. 『Spectrum Analysis』
、Application Note 150、カタログ番号5952-0292
7. 『Testing and Troubleshooting Digital RF Communications Receiver Designs』、
Application Note 1314、カタログ番号5968-3579E
8. 『Testing and Troubleshooting Digital RF Communications Transmitter Designs』、
Application Note 1313、カタログ番号5968-3578E
9. 『Using Vector Modulation Analysis in the Integration, Troubleshooting and Design
of Digital RF Communications Systems』、Product Note 89400-8、カタログ番号
5091-8687E
29
8.
用語集
● アイ・ダイアグラム――ディジタル変調システムの同相成分または直交成分の
大きさと時間の関係を示す図。形が目に似ているところからこう呼びます。
● ホールド・モード――パワーセーブ・モードの1つで、デバイスを非アクティブ
にして、定期的にステータス・チェックを実行するために内部タイマだけが動
作している状態。
● 情報機器――ユーザに対して音声やデータを提供することを目的とする、情報
関連機器のカテゴリ。携帯電話、PDA、ディジタル・カメラなど。
● マスタ・ユニット――ピコネット内のデバイスで、そのピコネット内の他のす
べてのデバイスの同期に用いられるクロックとホッピング・シーケンスを供給
するもの。
● パケット――ピコネット内で伝送される情報の1つのまとまり。パケットは1つ
の周波数ホップで伝送され、通常は1つのタイム・スロットを占有しますが、最
大5スロットまで占有できます。
● パーク・モード――パワー・セーブ・モードの1つで、デバイスを非アクティブ
にします。デバイスはピコネットに同期しますが、トラヒックには参加しませ
ん。パーク・モードは最高のパワー効率を実現します。
● ペイロード――パケットで伝送されるユーザの音声またはデータ情報。
● ピコネット――ピコネットはBluetoothの最小単位のネットワーク構造です。ピコ
ネットは、1台のマスタと、最大7台のアクティブに通信しているスレーブ、ま
たは200台以上の非アクティブで通信していないスレーブから構成されます。ピ
コネットはホッピング・シーケンスで定義されます。
● パワー・セーブ・モード――パワー・セーブ・モードには、スニフ・モード、
ホールド・モード、パーク・モードの3種類があります。スレーブ・ユニットは
それぞれのモードで異なるスリープ状態になります。パワー・セーブ・モード
にあるスレーブ・ユニットとの間では、データの伝送は行われません。
● プリトリガ――定義されたトリガ・ポイントより前の波形を観察する機能。
● スキャッタネット――スキャッタネットは、同期していない複数の独立したピ
コネットから構成されます。デバイスはピコネットを共有できます。
● スレーブ・ユニット――ピコネット内のデバイスのうちマスタ以外のものすべ
て。スレーブ・ユニットは、アクティブにマスタと通信するアクティブ・モー
ドか、非アクティブなスリープ・モードのどちらかです。
● スニフ・モード――パワー・セーブ・モードの1つで、デバイスがピコネット内
をリスンするレートを下げることによりパワーを節約するモード。スニフ・モ
ードは最も非効率的なパワー・セーブ・モードです。
● スタンバイ・モード――ピコネットに接続されていないBluetoothデバイスの状
態。このモードでは、デバイスは1.28秒ごとにメッセージをリスンします。
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9.
記号と頭文字
● 2FSK――2-Level Frequency Shift Keying(2レベル周波数シフト・キーイング)
。
2値FSKとも呼びます。
● ACL――Asynchronous Connectionless Link(非同期コネクションレス・リンク)
。
● ARQ――Automatic Repeat reQuest(自動再送要求)データ・エラー訂正方式。
● BT(BbT)――Bandwidth-Time product(帯域幅時間積)。
● BER――Bit Error Rate(ビット・エラー・レート)
。
● CF――Center Frequency(中心周波数)
。
● CISPR――International Special Committee on Radio Interference
● CW――Continuous Wave(連続波)
。
● dBc――搬送波周波数を基準としたデシベル値。
● dBi――自由空間の等方性放射を基準としたデシベル値。
● dBm――1 mWを基準としたデシベル値(10log(パワー/1 mW)
)。
● DECT――Digital Enhanced Cordless Telecommunication
● EIRP――Equivalent Isotropically Radiated Power(等価等方性放射パワー)、ま
たはEffective Isotropic Radiated Power(実効等方性放射パワー)。
● EMC――ElectoMagnetic Compatibility
● ETSI――European Technical Standards Institute
● EUT――Equipment Under Test(被試験機器)
。
● EVM――Error Vector Magnitude(エラー・ベクトル振幅)。
● FCC――Federal Communications Commission
● FEC――Forward Error Correction(フォワード・エラー訂正)
。
● FHSS――Frequency Hopping Spread Spectrum(周波数ホッピング・スペクトラ
ム拡散)。
● GFSK――Gaussian-filtered Frequency Shift Keying(ガウシアン・フィルタ周波
数シフト・キーイング)。
● GSM――Global System for Mobile communications
● Hz――ヘルツ(サイクル/s)
。
● IF――Intermediate Frequency(中間周波数)。
● ISM――Industrial, Scientific, and Medical radio band
● LM――Link Manager(リンク・マネージャ)ソフトウェア。
● LMP――Link Manager Protocol(リンク・マネージャ・プロトコル)
。
● LO――Local Oscillator(局部発振器)。
● PDA――Personal Digital Assistant(携帯情報端末)
。
● PLL――Phase Lock Loop(フェーズ・ロック・ループ)。
● PRBS 9(PN9)――PseudoRandom Bit Sequence(疑似ランダム・ビット・シー
ケンス)またはPseudorandom Noise(疑似ランダム・ノイズ)で周期が29-1ビ
ットのもの。
● PSD――Power Spectral Density(パワー・スペクトル密度)。
● RBW――Resolution Bandwidth(分解能帯域幅)。
● RF――Radio Frequency(無線周波数)
。
● SCO――Synchronous Connection-Oriented link(同期コネクション型リンク)。
● SIG――Bluetooth Special Interest Group
● TDD――Time Division Duplex(時分割デュプレックス)。
● VBW――Video Bandwidth(ビデオ帯域幅)。
● VSA――Vector Signal Analyzer(ベクトル・シグナル・アナライザ)。
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10.
参考文献
[1] 『Bluetooth RF Test Specification』、revision 0.31, 18.06.99およびrevision 0.53r,
27.08.99
[2] 『Specification of the Bluetooth System』、Version 1.0, May 10, 1999
11.
関連文書
1. Bluetoothオフィシャル・ウェブサイト、www.bluetooth.com、8/99
2. 『BLUETOOTH ‘99 Conference Presentations』、Queen Elizabeth II Conference
Centre, London, June 9-10, 1999
5968-7746J
010003301-L/H
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