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はじめに
はじめに
これは、私達夫婦が、約 年
ヶ月を一緒に過ごした犬の話である。
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2013年 月
日(月)の午後 時過ぎ、彼女が生まれて数ヶ月の時からお世話になっていた動物
犬の名前は、敢えて書かない。雌犬だったので、「彼女」とか「あなた」とか、ここでは呼ぶことにする。
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今から思えば、彼女が死ぬまでの最後の カ月間を予感させる、いくつかの伏線は、既に ヶ月前あ
病院の手術室のベッドの上にて、私達夫婦と院長先生に看取られて、彼女は、この世界と別れを告げた。
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たりから、つまり彼女が 歳になる少し前あたりから張られていたのかもしれないと思う。
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でも、その時は、それがこの カ月間の伏線であるなどということは、微塵も想像できなかった。何
故ならその伏線は、
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歳という彼女の年齢を考えれば、まずまず相応のものであり、これを除けば、彼
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女は猛烈に元気に見えたからだ。
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目
思 い出 に かわる ま で 次
はじめに 出会い 動機 運命の犬種選び 最初の日 だるまさんが転んだ 壁崩壊の瞬間 我慢の反動? 鳴かずにひたすら待つ 20
歯がムズムズするよぉ! DNA? 特技? 36
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喧嘩の仲裁 ヤバイ、コンビニだ! 大好きなこと それ、大嫌い! 48
秘密基地 トライアングル 強くて優しい心 春の日の幸せな時間 伏線の始まり 命の山 見事な姿 あなたがくれた時間 お別れの時 少し長いあとがき 62
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私をテニスに連れてって 52
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出会い
犬の種類に「ミニチュアシュナウザー」という犬種があり、その毛色は、「ソルト&ペッパー」「ブラッ
ク&シルバー」「ブラック」「ホワイト」の 種類ある。ブリーダーさんによれば、同じ犬種であっても、
犬種の前年度の日本チャンピオンであり、 代まで遡った祖先の何れの代も、彼女の母方の両親を除き、
血統書を見ると、彼女は、「ミニチュアシュナウザー(ソルト&ペッパー)」の女の子で、母犬はこの
その毛色によって、性格や気質に違いがあるという。
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ペットショップで始めて見た時の彼女は、生後 ヶ月位の幼犬で、首から上はグレー(ソルト&ペッ
彼女の両親は、母犬がソルト&ペッパーで、父犬がブラック&シルバーであった。
母犬、父犬の両方、あるいは、母犬若しくは父犬のどちらかがどこかの国のチャンピオン犬であった。
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「すごく毛深いなー」が第一印象だった。
真っ黒なクセ毛で、カーラーで巻いたかのようにクリクリしていた。
パー)、首から下は黒白(ブラック&シルバー)で、特に背中の毛は、幼犬とは思えぬほどモサモサと長く、
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彼女は 匹生まれた小犬の内の 番目の子で、 番目の妹と共にそのペットショップで買い手(飼い
手)を待っていた。
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出会い
一緒にいた 番目の妹の方は、写真で見かけるような、全身ソルト&ペッパーの小犬だったので、比
較して見た時、その姉である彼女に対して、「いったいお前は何者?」と思ったのを覚えている。
だから、少し見栄えの良い 番目の妹の方を飼おうかと 割方決めていた。
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大抵の犬は、好きな人の手や顔を舐めるけれど、彼女のこの舐めるという行為は、後に、吠えも威嚇
め始めた。
そうすると丁度私の顎の下に彼女の頭がすっぽりと収まるため、彼女は、私の首と顎の下を際限なく舐
家に連れて帰る車の中、助手席に座って彼女を抱き上げると、私の膝の上に後ろ足二本で立ち上がり、
たのである。
これで、勝負ありだった。私は、迷うことなく彼女を選び、 日後に主人と一緒に彼女を迎えに行っ
ロと実際に音がしているのではないかと錯覚するほど、元気一杯で舐め続けたのである。
その真っ黒のクリクリが凄い勢いで寄って来て、立ち上がって、私の手を猛烈に舐め始めた。ペロペ
犬をよく見ようとして、バスケットの端に両手を掛けたとたんだった。
だけど、私の前に運ばれてきた大きなプラスチック製のランドリーバスケットの中のこの 匹の姉妹
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もせずに相手に攻撃(彼女にとって嫌な事)を止めさせることが出来る、彼女の最大の武器となる。
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動機
さて、年月を少し遡ろう。
私達夫婦は、1995年の阪神淡路大震災を経験している。
幸いなことに、私達の住んでいたマンションは、エントランス部分の一部損壊程度の被害で済んだ
年後の
のだが、この未曾有の揺れを受けた建物に対して、不安感が残った。それで、震災後に建てられた建
物の方が震災前のものよりも耐震設計もより慎重にされていて安心であろうということで、
定期的に開かれる理事会にて、たまたま管理規約について検討する機会があり、規約の中に「ぺット
それは、主人がこのマンションの管理組合の初年度の監事になったことから始まる。
ところが、全くなかったこの発想を生み出す出来事が起こる。
は全くなかった。
当時、「共同住宅でペット飼育は不可」が常識的であると考えていたので、犬を飼うなどという発想
ンに入居した。
1997年、当時建設中だった現在のマンションを予約購入し、1998年の春、完成したそのマンショ
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