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第7歌章―第10歌章 - Kyoto University Research Information

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第7歌章―第10歌章 - Kyoto University Research Information
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訳注 ヘーリアント(救世主) : 〈第7歌章―第10歌章〉
石川, 光庸
ドイツ文學研究 (2003), 48: 1-40
2003-03-29
http://hdl.handle.net/2433/185462
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
訳註ヘーリアント(救世主)
〈
第 7歌章一第 1
0歌章〉
石川光庸
以下は 9世紀前半に古低ドイツ語(古ザクセン語)で著わされた宗教叙
救世主」全 7
2歌章の、第 7歌章から第 1
0歌章、 537行から
事詩 Heliand I
8
5
8行までの翻訳と註釈である。訳註の基本方針は第 6章までを扱った前著
(
W古ザクセン語へーリアント(救世主 )
J2002年大学書林)と変わらず、
翻訳はできるだけ原文に忠実に、註釈は語源・語誌的記述を中心とした。
ただし本稿では前著よりも『ヘーリアント』詩人独自のキリスト伝編集視
点や独特の表現法を見出そうと努めたつもりである(多くは女で、扱った項
目
)
。
紙数の都合上、本稿には原文をのせなかったが、テキストは ATB,
Nr.
4
の
HaliandundGenesisの 1
0版(19
9
6
) であり、註釈に使用した参考資料類
/7強に
も上述の前著に掲げたものと同じである。前著と合わせても全体の 1
しか過ぎないが、ゲルマン語最古かつ最大の頭韻詩型によるキリスト伝を
直接原文で読もうとする方々には、恰好の手引となり得ると思う。ここま
でを通読されれば後は独力で読み進められるであろうから。
〈第 7歌章東方の三博士の到来〉
清らかな心の人はだれであれ
キリストのことを知ったのに、
救い主に対する良き思いを
この話は伝わらなかった。
5
3
7
王の宮廷にあって
心の中にいだかぬ男たちには
そこで彼らにはこの出来事の一切が、
言葉においても行為においても
知られぬままであったのだが、
1-
5
4
0
訳註へーリアント(救世主)
遂にある日、東方からの男たちが、
立派なもののふ三人が、
長い道のりを
たいそう学識すぐれた
この人々のところにやって来た。
はるばると間七を横切って。
ひとつの輝くしるしの後をたと って
清らかな心で探し求めたのだ
御子の前にひざまづき、
弟子として仕える決意を述べようと望んだ c
そして彼らが
5
4
5
神の御子を
ε
神の定めたようにしたのである。
権勢豊かなへロデ王に、
言葉もとげとげしく
腹立ちやすき大王に
主
廷臣居並ぶ大広間で拝謁した H
この男は常に殺毅を好んだー
彼らは王に対して吋然あるべきように
うやうやしく、
その広間の王の前にへり Fった態度で
いかなる大事が
5
5
0
挨拶をした。すると王は
このもののふたちをはるばる遠く
つらい異国へ旅立たせたのかと問うた
「そなたたちは誰かへの
みやげとして黄金細工をたずさえておるのか? 何故にはるばる
5
5
5
ここまでやって参ったのか? はて、いずことも知れぬ遠い異国の
つわものたちであろうが。
見るところそなたたちは高貴な生まれ、
良き一族の出であるようだ。
わが国にはいまだかつて異国から
そなたたちの如き使いが参ったことはない、わしがこのもののふどもを、
この広大な国を治めるようになって後は
勇士たちの間前で、
そこで答えて
そなたたちはここに居並ぶ
5
6
0
東方からの男たち、
I
私どもはあなたさまにいささかの
言葉に長じた者たちは言った
隔意もなく、
できます、
J
C1iJに参ったかわしに真実を語るがよい。」
何故にこの 1
私どもの意[;;¥[のほどを申しあげることが
何故にこの地の東のかなたからはるばる御地へ
参りましたかを
5
6
5
かつて%高い方々が居られました。
良き言葉を語る人々で、
天の帝のお救いについて
私どもに多くの良きことを、
真実なる言葉をもって
約束してくれたのでありました。
その中にもひとりの賢者は
老熟にして多識であり、一これははるか昔のことでありますがー
この地から遠く東の図において私どもの先祖でありました。
かつて誰も
彼の後にこれほど言民に敏かったためしはありませなんだが、
御言葉を伝えたのです。
というのも、人々の主である御方が、
ー
2-
5
7
0
1
皮が神の
訳註へーリアント(救世主)
の御言柴を聞きとる力を
天の全能の判l
この大地に居ながら
それゆえに神に仕えるこの者の
彼にお与えになっていたからです。
知恵も考えも広大でありました 。
止の楽しい営みをも
人の l
多くの一族の者たちも、
捨て去 って
575
さてこの方が自分の家屋敷も、
別の世の光を求めて旅立つこと になった時、
相続人たちを自分のそば近く呼び寄せ、
彼は弟子たちゃ
その立派な男たちに向かい
真心 こめて
580
語ったのです: ーその後に事実この世にやってきたすべて、
出現したすべてのことを。
彼はこう言いました、賢明なる主者が、
名高くカある玉が、
最も良き家に生まれた御方がこの人間界に
来られるだろうと。
また言うには、それこそ神の御子であると、
更に言うには、彼こそこの世界を、
また 言う には、その聖なる御方を
ここであれ、
御母がこの人の世に
正にその同じ日に、
(と彼は言うのでした)
白い天の星が。
5
8
5
治めるであろうと。
永劫にわたって
生み出された
天をも地をも
東のか訟たに ー箇の輝きが現れる、
それは、いまだかつて私たちのだれもが天地の聞に、
590
また他のいずこであれ、体験したことのないもの、
そのような 子 も、そのようなしるしも。
そして彼はお命じになりました ・
御子を拝礼しに一族の中から三人の者が旅立つ ようにと。
彼らはいつもよく気
じをつけていて、
東から神のしるしが
現われて 空に昇るのを
彼は命じたのです、そして
見たなら、すぐさ ま旅の支度をせよと、
私たちは、彼に命じられたのです、
595
そのしるしが前方に現われて
この世界の西のかなたへ進むのに従うようにと。
神の御力によって
一れになった
このすべてが本当であったとわかりました. 王者がお λ│
のです、 勇敢で強い王が来られました 。
私たちはその方のしるしが
天の星今の中から明るく輝くのを見ました 、 竪にして力ある 主が
みずからそうして下さったと私にはわかります。
あの明るい星が大きく輝くのを見、
朝ごとに私たちは
そしてその後を慕って御当地まで
道をたどり森をも越えてずっとやって参りました。
私どもみずからが
この御方にお目にかかることができたら、この帝国のどこにこの王がおられるか
- 3-
0
0
6
訳註へーリアント(救世主)
知ることができたら、これに勝る喜びはありません o
お生まれになったのか、
するとへロデの
どの一族から
605
お教えくださいませ
胸の内に
心のあたりに苦悩が生まれた; 彼の,思いは波立ちはじめ、
怒いが心にあふれた。
自分の仁に
なにしろ彼は聞いたのだから、
主君ができたということを、
貴い生まれの
6
1
0
もっと権勢ある王者が
もっと幸いに恵まれた l
ー
が
彼の民の中にいますことを。
そこで彼はエルサレムにあらん限りの
弁舌の術に最も秀でた人身、
たくわえている
日干び集め、
良き男たち、
胸の中にまことに多大の学識を
賢き人々のすべてを
はっきりと口に出して尋ねたのであった、
敵意に満ちたこの男、
6
1
5
この人身の王は
3をこめて、
大いなる熱 1
平和をもたらす御方たちの
いったいとこにキリストは、
最善の人はこの世界の
どこに什ーまれることになっているのかを。
本当にこのように言ったのである:
すると人々は答えて
自分たちは良三知っているのだが、
6
2
0
キリストはベツレヘムでお生まれになるはずである、「私どもの聖なる書物に
そのように書かれであるのです、
かくも賢い人身が、
子言者たちが、
神の御力によって
あの多くの知恵をそなえた人キが、
すなわちベツレヘムから
かつてこう語ったそのように。
町々の守り主であり、
この国の慕わしき支配者たる御方が
この世の光の中に現われると。
力強き裁き手にして主である御方が。
この方こそユダヤの民を
正しく治め、
まことに寛大に
6
2
5
この地上世界の多くの民に
恩賞を分け与えてくださるのだと。」
〔福音書その他との対応 15
3
7-5
4
1行は自由補足。 5
4
1-5
6
1行は「マタイ J2章 1節と 2節
J
j
.
i
h
i、5
6
2-5
9
7行は同 2節と Hrabanusにもとづ
にもとづき、 Hrabanusの註解を援用して '
9
7-6
0
5行は同 2節そのもの、 6
0
6-6
1
1行は同 3節
、 6
1
1-6
1
9i
Jは
同 4節
、
く彪大な敷街、 5
6
1
9-6
2
8行は同 5節と 6節(それぞれ Hrabanusを多く援用)、 6
2
8-6
2
9行は自由補足。
[Tatianとの対応 18章 l節から 3節まで
G
- 4一
訳註へーリアント(救 I
!
t主)
第 7歌 章 註 解
5
3
7
) Thoh :刷文を導く従属接続詞(英 [
a
l
J
t
h
o
u
g
h
J。定動詞は接続法となる (
a
n
t
k
e
n
d
i
)。
次行の並列接続詞 thoh 主
(l
(
d
o
c
h
) と結んで「
であるのに、しかしながら」の怠
gihuilic
h品lagman 第 6歌章のシメオンをはじめとする信仰篤い人々のこと。 539行以下の宮延周辺の
心正しからざる人々に対比
u
5
3
8
) antkendi:接続法過去。過去の事象を表わす。
ゆ絞り怖
hobe:s
t
m
.hof1
宮廷 J (
独 Ho
f)の
独 hoch,英 h
i
g
h
) と同根で、1(安全性や快 j
商きの故に)高みにある家
「高い Jhoh (
や庭」が原義行古ノルド語や古英語では「神殿」をも意味した。英語においてはアングロ・サク
o
u
r
tに取って代わられた。
ソン時代の終おとともに仏語系の c
5
3
9
) gimarid:s
ωv
.marian 1
告げ知らせる」の過去分臼L 269、5
35行に既出の αd
j・mari
f
名高い、立派な」と同系。この詩の原義は「大きい、立派な」と忠われ、したがって「大言壮語
する」の意ともなる
民1義は「名前山、話 J
) や人名 Diet-mar (
1立派な、名高い戦
独 Mar-chen (
) などに残る。
士J
im 前行の K'
i
s
t 次行の hold (ある人に)好意をいだく」と結ぶ一
皿
,
r
odsebon:241、386行に既出の mod-sebo 1
胸中、心中」のl)1.数与裕一
5
4
0
) holde :
αd
j
.h
o
l
d(
独h
o
l
d
l の複数主絡。
bihaldan:s
t
v
.(
V
I
I
l
lb
i
h
a
l
d
a
n1
保持す
e
h
a
l
t
e
n
lJの過去分詞であるが、既に 435行で見たように「隠されたままでいる」の意
る(独 b
が強い。
女
ここまでは T
atianや註解吉にもない自由補足。東方の三博士登場までの「つなぎ」の役を
果たしている。
r
541
) ostanαd
v
. 東方から J
o
than-an (
2
7
6行他 li
そこから!と同じく由来を示す按尾
辞:
'
n
eによる造語。ちなみに方向を示す接尾辞は a
rで
、 o
s
t
a
r,t
h
a
rなと (
5
!
虫の地名 O
s
t
e
r
r
e
i
c
h
に残る)。
現代独 Ostenはこの αdvが名詞に転じたもので、無語尾の Ostは更に新しく 1
5世紀
訪問と同根である。
頃から。この語の原義は「明るくなる」で、ギリシャ語的s、ラテン語 au
5
4
3
)s
n
e
l
l
e :<s
n
e
li
勇敢な」。
*
現代独 s
c
h
n
e
l
lへの意味推移については 202行註を参照 c
r
東方の三博士を t
hegnoss
n
e
l
l
e 勇猛なもののふ」と称するのは適切でない。
頭韻の必
n
e
lを用いたのは、まだゲルマン的感性を強く保持していたザクセン
要性もないのであるから、 s
人聴衆の耳になじみ深い表現を思わず使ってしまったと考えられるコ後にシモン・ベテロが剣を
振う箇所
<
rヨハネ J18-10) でもペテロは snelsuerdthegan (4866fi'),
thegnosnel
10
s
t(
5
0
2
7
行)と呼ばれている
5
4
4
) uueg:s
t
m
.(
独 Weg
,英 way)
どに原義が残る)。
ゲルマン共通語で原義は「動くこと J (
独b
e-wegenな
一般的な「道路、道のり Jにはこれを用い、広い舗装路にはラテン借用語の
r
s
t
r
a
t
a(
独S
t
r
a
s
e,英 s
t
r
e
e
t 原形は v
i
as
t
r
a
t
a 人工的に敷設した迫 1
) を用いるという区別は、
既に『へーリアント jにも定着している
5
4
5
) folgodun:s
w
v
.f
o
l
g
o
nr
従う J (
独f
o
l
g
e
n,英 t
of
o
l
l
o
w
) の過去 3人称複数。主語は束
5-
訳 註 へ ー リ ア ント (
救 世主)
方の三博士。
岳nun
不定冠詞ではなく、数詞 enの中性与格と考えるべきであろう。この時代、
不定冠詞は未発達であった
bokne:s
t
n
.bokan Iし る し 前 兆 J(
英 be
a
c
o
n
) の単数与格。
3
7
3行に既出。b
e
r
h
tbokan i
輝くしるし」 とは「マタイ J(
2,
2と9
) の 「東方の星 Jのこと 。
5
4
6
) hnigan:s
t
v
.(1) I
身を傾ける :拝礼する J(
独n
e
i
g
e
n
)。方向規定の αd
u
.t
oと与格名
詞をともなって 「
ーに 拝礼する、おがむ」。
5
4
7
) gehan:s
t
u
.(V) I
言明する; (人の与絡 とともに)ある人の説を信奉すると表明する」。
ここでは t
eiungrun (
j
u
n
g
a
r
oの複数与格)をともなっ て「自分を弟子として 名乗る 」の意。
g
ehanの原発は 「口に出して言う」で、中島独語 jehenまでは一般的だったが、後に sagenによ
って取って代わられた。古くから宗教・法律的色彩を帯びていたら しく 、たとえば独 Bei
c
h
t
e
I
告解、さんげjは b
i寸i
h
t
.b
i
g
i
h
tが原形で、 「聴聞僧のもとで はっ きりと言明す るこ とJだった ご
また G
i
c
h
tI
痛風Jも同根で、魔女などが「ロに出して呪うこと、呪誼Jによって生ずる病と考
えられたからである。この点で日本語の「宣る、祈る、罵る、名乗る、祝詞」な どの根にある
「のる J(=声に出し て言う)とよく似た 語である
dribun :s
t
u
.(1)dribun I
おこなう、 実
行する J(
英t
odrive,秒、 treiben)の 過 去 複 数 。 与 格 の 再 帰 代 名 詞 (im) をとも なう。
giscapu 複数対格 I
(神の)定め J
o 127行に既出。
5
4
8
) Erodesan 人名 ErodesI
へロ デJ(原義は「英雄的な者 J
) の弱変化対格。弱変化は対
格にのみ表われている戸 イエスの誕生当時のユ ダヤ の王だった大王 CBC37-AD4) で
、 残忍 な
ことで知 られた。 なおアクセン トは r
o
司にあるが、 これについては 6
0行註を参照。
5
4
9
)s
e
l
i :s
tm.I
広岡 J(
独S
a
a
[
) の単数与栴
客間」 として既出。
2
2
9行に win
s
e
l
iIワイ ンを飲むための広閥、
sliduurdeanαdj
.s
l
i
dw
u
r
d
iI
邪悪 な言辞の Jの男性単数対格。s
l
i
d
i
「邪悪な Jはゴート語に も登場するが (
s
l
e
i
t
s)
、語源不詳。 古ラテン語 s
t
l
i
sI
不和」や独 l
e
idと
関係づける説もある。 w
u
r
d
iは s
t
n
.word (
英 wor
d、独 Wort)から作られた αの。
5
5
0
} modagna :
αd
j
.modag I
怒り つ
'
;
1
:
'
,
,
',興奮性の」の男性単数対格
A
頻出する名詞 mod
「
心、気分」の αd
jであるが、独立した αd
j
ーとしてはこの例のように「怒りや敵意を帯びた」とい
う狭い 意味 に限定されて用いられる 。(これに l
よし接尾語と しての -modagは「日切の気分の J
)
。
名詞はゴート語 mot、古ノルド語 modrなとにおいて「気分Jよ り「怒り」の意味が濃いので、
古ザクセ ン語 môd も元来は「怒り、興 1!~ J が主たる.~味だったと思われ、その証拠のひとつがこ
の modagではなかろうか。
mo
宣
des:s
t
n.mord I
死;死刑 J(
彼 Mo
r
d、英 murde
r
)の単数
属格 α
(d
j
.g
e
r
nが腐格目的語を要求する ため ご9
2行註参照 )0
mordはラテ ン誇 mors,morIな
どと 同棟。
女
ヘ ロデの邪悪さや 、殺人や処刑を好んだことは Ta
t
i
a
nや諸註解にはな く、後の幼児殺しの
伏線として、また聴衆の緊張感を高めるために詩人が工夫したものであろう。
5
5
1
) quaddun・<quedan. cusco αd
u
. Iうやうや しく、へり下って ム
ラテ ン誇 c
a
n
-
s
c
i
u
s I(
自分の罪 を)意識している、後めたし、」は早い時期に南西ドイツの修道院の言語に k
u
s
k
i
- 6-
J へーリア ン ト(救世主)
訳s
c)にまで
s
u
c
として取り 入れられ、次いで北部の占ザクセ ノ訴に、そ してそこから更に古英語 (
hまでは「へり下った、道徳的な、貞節 なJという多義認で
c
s
u
i
k
l
. 中高生l
i
k
s
u
至 っ た 。 占 ,:~j ~~l k
あったが、現代独 keuschはもっぱ ら性的貞節に意味が限定されている
cuninguuisun
8行註を参
8
isaについては 2
王侯にふさわしい行後、行動」の単紋'j.佑 w
fkuning-wisa i
.
w
/s
t
s
。
照
0行に既出。
5
) の単数与格 c 1
t
広問、客間 J(守英日 a
ii
t
t
1e
.f
n
l
e :s
i
t
t
e
l
)f
2
5
5
e :線放対桁
i
)s
3
5
5
外へ、外国へん
.1
αdv
a:
也t
nの後続法過
a
i
g
n
e
r
b
)
i
g
gibrahti :(
去 3人材、単数。現代独語のような接続法完了形はこの当時未発展。
akは「追い
への行路jの単数対絡ιwr
国外追放の旅、異民l
d1
i
s
k
a
r
) uuracsid slm.w
4
5
5
復刊 する j、
chen 1
a
r
l
owreak. 主l
rgeoも陶線)、英 t
出す、迫害する j を原義とし(ラテ ン語 u
1J~w reck
dは『へ
i
s
.
k
a
r
: rakの原みから w
-w
B
2行に既 t
2
道、旅」は 1
id 1
難破j などに残る。 s
1
aについて用いられ、単なる「奥歯
r
o
p
s
a
i
函追放やユダヤ人の例外離散 D
1
ーリア ント j において 4
の旅」はこ の l例のみ、
もしろここにおいても「凶外追放者のような 辛い旅
という合意を
r
5行註参照)のと
4
3
みじめな」;二変化した 1
end 1
i 外 国の」が el
d
n
e
l
i・
l
感ずる べ きであろう。 e
同じ発想がここにも認められるつ
*
外追欣の
dにおけるような、 医l
e
i
l
s
d
n
a
r
b
e
d
l
i
更には、ちょうと 『ヒルデプラ ン トの歌 JH
勇者の帰還に際して国境で生じる緊張と悲劇といったゲルマン践が愛好したテ ーマが、『へーリア
ン トj詩人の諮り口にこのような表現を取り込ませたのかもしれな い
聴衆に対するある値のサ
ービ スとも 言えよう。
huueder hwedar疑問接続詞「
rJ 元来は疑問代名詞で 了 円の
e
h"th
失w
j(
か(どうか )
、
'か
うちの 一方 」を表わしたが、後に l
・か」という選択の疑問詞に転じた。現代制~wede r も
床 は 元 来 つ い て い た 否 定 辞 の nlが 脱 落 し て 生 じ た も の で あ る
同 語 源 だ が 、現今の,(J:I
導く、ともなう
. ledian1
日
剖
iad :
d
e
l
行く」の使役動詞
n1
a
d
i
.l
v
l
行に初出の s
過去分詞「曲げられた 、編まれた」 。
4
5
). 1
n
e
it
e
l
. 妙、
d
a
e
ol
英t
(献七物を)持参する J(
5行既出)の
1
4
t【'. windan (
uundan wundan. s
余や銀をねじり編ん で腕輪や指輪などを作ることを
windanと言 う。「編まれた黄金Jは 『ベーオウルフ jや [ヒルデプラントの歌jなどの古歌訴に
の代表が金銭の腕輪・指輪頒だった。
喝
Wi
しばしば見られる表現。 ゲルマン人が愛好 した I
r
fgebaの単放与格
.
t
o gebuは s
egebu: 献上物とし てJ
5)t
5
5
札
unは単数 与f
lc
o hwi
「もののふたちの誰かに J
hwatの具格っ
huilicungumono
o hwiは
何のために、何故に J
ehui: 1
t
)c 明権な語源は未詳。
s
u
h
英t
このようにして J(
.1
thusαdv
行程、道のり
ng 1
stm. ga
o
J(独 Gang) の単数与格ロ angangaで「旅をして J
ganga
く
gifaran
nkommenなとと同構造の最古例のひ
e
r
h
a
f
e
kumanと結ぶ過去分詞「旅をしてやって来る」。独 g
ranをも不定形と解
a
f
i
ngankumanの ように不定形である。も っともこの g
とつ。 一般的には ga
iーのついた不定形と過去分詞とが同形の ケースか
することも十分可能であり、正にこのような g
一一 / 一一
訳註ヘーリアント(救世主)
5
0
3行註を参照)0
ら、現代独語の用法は発生したのである (
fodiu:s
t
n
.f
a
d
iI
道、行路 J
(
独 Pfad、英 p
a
t
h
) の単数与格。語源不詳 oanf
o
d
i
uて「道をたどって」ほどの意。なお「足J
はf
o
tで f
aむと関係はない
huat:hwat,疑問代名詞ではなく間投詞と解すべきだろう:
だに、まことに」。現代の低独語でも wat!は よ く 感 嘆 詞 ・ 間 投 詞 と し て 用 い ら れ る 。
n岳thuuanan = net-hwannanく n
iwethwannan I
私の知らぬいずこから J (
独 [
i
c
h
lw
e
i
s
ほとんど αめ?と化した省略文。
n
i
c
h
tvonwannen)。
ferranαd
v
.I
遠〈かも」。 αd
v
.f
e
rI
速く J (
独f
e
r
n、英 f
a
r
) に「…から離れて」の意の按尾
a
n
(
e
)のついたもの。前の hwannanもこの接尾辞を持つコ実は現代独の f
e
r
nも、本来の古高独
辞l
i
f
if
p
r
r
o、中高独語 v
e
r
(fP) にこの接尾辞がついた「遠くから J(
f
e
r
r
a
n
a
.v
e
r
r
e
n
) が、新高独語
gisihu
期に「遠く」の意に転用されたものである。
<gisehano
ediligiburdiun :s
t
f
.ediligiburd I
高貴な生まれ」の桜数与格。具格機能を帯びた与格である
r
刈1
t
な血筋をそなえた者で」。
5行の例と同じ
点
、 6
1
5
5
8
) cunnies・s
t
n
.kunniのいわゆる述語的属格。
とも強変化とも取れる。
foncnoslegodun godunは弱変化
cumana… wurdun 9
4行註を参日目
cumanaは過去分詞 cumanの
男性複数主格形で、 αd
jとしての意識が強いことを示す 9
5
5
9
) 針 i:s
t
m
.針「使者」の複数主格。ゴート語 alfUS以来の古語。 1
2
1、2
8
2、5
5
3行に既出
の arundi I
用件、使い J (
英 errand) と関連することは確かだが、それ以上の語源は不明 c
thesase
r
l
o (複数属怖 I f
o
l
k
e
s 次行の r
i
k
e
a
sとともに、伊 uualdanの属格目的語。
.
'
J6
(
)I t
euuarun
I
本当に、いつわりなく J
os
t
n
.
/
fwarの慣用表現。 warunは複数与格
5
6
1
) thesun t
h
e
e
e刀中性単牧与俗
thesumu,thesum. thesamoなどの形が見られる。
l
i
u
d
i
of
o
l
k:l
i
uおはラテン語 l
i
b
e
rと同根で「自由民である男、自分の武器をもって戦う独立し
た戦士」が原義、 f
o
l
kはラテン話 p
l
e
b
s,populusと同恨で「軍勢、戦士集団 Jが原義であること
は
、 6行と 6
1行の註で述べた。どちらも非常に戦闘的合意が強い。この筒所では「家臣団 Jほと
の意。
合
bihuuI =tehwi (
1
7
6行に既 1
1
1
)
'
0
s
I
n wesanの接続法現在複数。
5
5
4行から 5
6
1行までのへロデ王の長口舌は作者による補足ハおそらくこのような形でゲル
マンないしザクセンでは外国からの使者拝謁がおこなわれたのであろう。
5
6
2
) ostronea:ad
j
.o
s
t
r
o
n
iI
東方の」の男性複数主格。 5
4
11f既出の o
s
t
a
nは「東方から J
、
5
7
1行に出る o
s
t
a
rは「東方へJ
oo
s
t
r
o
n
iは方向を示すこの o
s
t
a
rに更に a
n
iという語尾がついた
a
s
t
e
r
n
.
もので、古英語、古ノルド語、古尚独語、古ザクセン語のすべてに用いられた(英 e
western等、現代ノルウェ一語 austron等)。
しかし高地独語では早〈消失し、 o
s
t
l
i
c
h
.
w
e
s
t
l
i
c
h等となっている。この a
n
i (古英語 n
e、市ノルド語 o
n
) という語尾はラテン語の
a
n
e
u
sをなぞったものという説もある
5
6
3
) uuordspabe ad
j
.word-spah I
弁舌巧みな、雄弁な j の複数主栴
s
p
a
h
iという表現が既出。
8
1
2
5行に wordun
訳註へーリアント(数世主)
気楽
o 376行の od-modir謙虚き j の前半部に見られる αdj.odi !
容易に J
) odo:adv.r
4
6
5
0)
π
e
f
u
たとえばラテ ン語 a
.(
運び去る、空虚にする」意の印欧祖語、u
o r
・
な、谷易な Jの αdv
r
e なにも
d
にもとづき、「残りなしきれいさっぱりと、腹蔵なく Jが原義と思われる。現代敏 o
ない、荒涼とした」もこの系統。
高貴な種属」の単数腐格。集合名詞として「貴族」の窓にもなる。
ir
l
.ada
n
t
) adalies :s
6
6
5
odsprakeagumonからもわかるように、出自よりは粉神的高貸さ
しかしこの箇所では、次行の g
の意味が濃いようである c
日約の預言者
良き言葉を語る、雄弁な j の複数主格。 l
ir
k
a
r
p
s
d
o
.g
αdj
7)godsprakea:
6
5
のことであるが、雄弁であることは古 ゲルマ ン人の間で美徳のひとつでもあった。武器を取って
の一騎討ちも、多くはその前の多弁なる舌戦を前提とすることは
ーベルンケンの歌 j、また
ヒルデプラントの歌 jや『ニ
I
サ ガjが証明するところである c このゲルマン的美意識が
エ ァゲj r
f
この節所にも残存していると見てよいだろう。
) の過去 3人材、佐数
n
e
s
i
e
h
r
e
独v
約束する J(
nr
a
t
e
h
i
) gihetun:g
8
6
5
uuarumuuordun 具格機能の与俗(頻出)
).
9
6
5
0
o
賢い J
gr
i
t
i
w
i
.g
j
giuuittigα d
gや
i
z
t
i
賢明さ」などの関連語。現代独の対応語 w
tr
i
w
i
賢い」、 g
isr
知っている」、 w
witan r
tの影響下に新た
i
tや英 w
i
r
p
s
7世紀以降フランス語 e
Witzの「機知(に寓む)Jという意味は 、 1
に生じたもので、以前はやはり「知恵、分別 Jを意味した。
*569
laam)
行以下に語られるこの賢者とは、 メソポタミ 7 出身の異教徒預言者パラム(Ba
のこと。モアプ王の命によってイスラエル人を呪わんとしたが、神の霊により逆に祝福した(民
2)によって詩人は記述しているのであ
4章).Hrabanusの注解 者 (正マタイ寸 2,
3、2
2、2
数記 2
。
る
n
r
e
.f
.217行既出の αdj
以前、かつて J
.r
v
αd
.forn:
多織の J
sr
i
w
u
l
i
.f
j
αd
s:
i
u
u
u
l
i
)f
0
7
5
nr(雪やワインが)古い j なども同系)。
r
i
万年雪」、 f
nr
r
i
独F
.(
v
「この前の」の αd
) の比較
d
t,英。I
l
独a
古い、老いた J(
dr
l
。 a
先祖、祖先」の単数主格
.r
即m
o :s
r
i
d
l
)a
1
7
5
)。
p独 Elternr両親 J
s, c
r
e
d
l
級の名詞化で(したがって弱変化)、「古老、先人」が原義(英 e
o -arr…の方角へ」、 -anr…の方角から」等の語尾は頻出。
東方へ向かつて J
.r
v
ostarαd
。
rhinanで「当地からすれば東方において J
a
t
s
o
. rekkien
複数属格)に関しでかくも賢い J
言辞・弁舌 (
) sprakonosospahi:.r
2
7
5
、 そ
)で
n
e
k
c
e
独r
物語る、説く Jの不定形。第 3行に既出。原義は「まっすぐ延ばす J(
.r
ωv
s
)。
支配する J
er
r
e
g
e
こから「正しく説く、判断する、導く、支配する」等の意が生じた(ラテン語 r
ここでも単に話すのではなく、耳にしたことを「正 しい表現によって話す Jこと。
.
n
t
l:s
e
p
s
喜ばしい知らせ」として既出》
lr
e
p
s
l
i
9行に w
1
言葉、話」の単数対格。 5
「
) の過去分詞。語根
n
e
h
i
e
l
r
e
独v
授ける、貸与する J(
nr
a
h
i
l
r
a
.(1)f
v
t
) forliuuan :s
3
7
5
0を越してひとつ
l
く r
n(
e
v
e
l
,英 e
f
l
llJ独 e
uーは「後に残す」意で、数詞 r
k
i
e
l
の印欧祖諮 *
-9-
訳註ヘーリアント(救世主)
)や r
1
2
J の後半部も同系であるぞこの f
a
r
l
i
h
a
nは次行の t
h
a
t以下を受けて「・・す
余ったもの J
るカを授けていた」の意。
r
5
7
4
) up:
αd
v
. 上方へ j (
独a
uf
,死
,u
p
)。前の f
o
nの意味を補充する機能を持つ。
r
r
5
7
5
) bithiu:
αd
v
. それゆえに J
othiuは thatの具格。 176行の bihuui なにゆえに」の註を
参照 σ
5
7
6
)g
i
t
h
a
h
t
i :複数主倍。
5
7
7
) afgeban:s
l
v
.(
nr
放棄する、立去る J(
独 aufgeben,英 t
og
i
v
eu
p
)0
slm.g
ard
r
(単数で)畑、敷地;
(複数で)家、住居、家族」の複数対格マ
gardos:
5
1行以下に登場す
r
r
i
d
d
i
l
g
a
r
d 現世、この世」の後半部にも見られるこの gardは、印欧祖語 *
g
h
e
r
- 囲い込む、
るm
っかむ」に由来し、「柵で図った住居と畑地」が原義だった。牧畜や畑作、狩猟を共同で行なった
ゲルマン人は、自分の家のまわりを柵で囲って自家用の畑作と家畜放牧に用いた。このことから
gardには早くから「家、住居、家族」と「敷地、家屋敷;庭園、庭」との意味分化が生じた。英
yard、独 Gartenに残るが、ただし英 gardenはフランク語から古仏語に採用されたものが(仏
r
j
a
r
d
i
n
)、再び英語に再輸入きれた形である o へーリアント jでは「庭」には弱変化の g
a
r
d
oが
r
ard 居住地、家屋敷、畑地」とはっきり区別されている。
用いられ、強変化の g
gadulingo:slm.g
a
d
u
l
i
n
gr
同族の者、近親」の複数属格。語源は 2
2
1行註を参照。
gimang:sln. r
多勢、群れ J(
独 Menge,Ge-menge 守 英 a
-mong) の単数対格。
5
7
8
) drom :slm. r
楽しい営み、にぎやかな喜び」の単数対格。 3
16行既出の「夢」の drom
とは別語と思われるが不詳。従来は「睡眠中の楽しい営み」が即ち「夢」であると解釈されてき
た
。
l
i
o
h
todar: r
別の(世の)光」、即ち「あの世、彼岸」。
r
5
8
2
) giuuard:<gi-werdan 起きる、生じる」。
この前の quamとともに直接法過去であ
ることに注意ご実現した事実として、『へーリアント jの作者が補足的に口添えしている雰囲気で
ある。
r
r
(世俗的意味で)
r
(倫理的な)英知をもった」が合流し
uuiscuning slm.wis-kuning 賢王、資帝」。ゲルマン人が評価する
賢明な、才智に富んだ」に、キリスト教的・古典古代的な
isである。 wiskuningという合成語はこの l例のみ。
たものが w
5
8
4
) bezton = b
e
s
t
o
n。
r
5
8
6
) euuandaga:stm. ewan-dag 永遠(の日 )
Jの単数与格。常に t
eと共に用いられる。
αd
j
.ewar
泌w
in/ewig (独 ewig) は同義だが、 êwan は合成語を作るのが普通。 ~n 欧祖語*剖u
r
一
r
生、永遠」に由来し、ギリシャ語 a
i
o
n
. ラテン語 aevum,ゴート語 aiws 時、永遠」などが同
r
系語である z 頻出する αd
u
.e
o,i
o,g
i
o 常に、いつか、かつて」も同語源で、英 e
v
e
r
. 独j
e,
l
r
n
m
e
rなどに残る。 t
eewandagaという表現は、教会ラテン詩の perd
i
e
ss
e
m
p
i
t
e
r
n
o
sという慣
用句をなぞったものと恩われる(Ilkow)
5
8
7
) the:dagを受ける関係副詞(独 d
a
)。
5
8
8
) gidrogi:s
l
v
.(
羽)♂ dragan r
運ぶ;生む J(
独t
r
a
g
e
n
) の接続法過去 3人材、単数。 g
i
-
-10-
訳註
へーリア ント(救世主)
en: i
ただ
b
e
r
a
nと同じく、完了相化の接頭苦手gI・の機能が強〈働U,¥ 、ている。
ω
だけ」。次行の
h
i
m
i
l
t
u
n
g
a
lにつく強調的 αd
v
.だが、M 写本にはなし、。
5
8
9
) skinan:5tV. (1
)i
蹄く j (
独s
c
heinen.英 t
os
h
i
n
e
)。 他の印欧語では 「どんより L
た郷き、影J をも意味したが(臼本語の「かがやき J と 「
かげJの関係をも想起させる)、ゲルマ
ン語では常に太陽や星の明らかな湖l
きを表わした。
5
9
0
) himiltungal :5tn.i
天体、天の星 J
, tungalはゴート語 t
u
g
g
l
. 古英語 tungol.古ノ
ルド語 t
u
n
g
lで、すべて「天体」を表わす。語源未詳だが、天体から発するチカチカしたま車きを
「舌状」と見て *
t
u
n
g
l
a(
独Z
u
n
g
e
. 英 ωngue. <p独 z
凸n
g
e
l
n
. 英t
o
n
伊 l
e
t
) と表現したという説
、
(
J
. Grimm. O
. Schade) が興味深 L
huitαd
j
.hWIt i
白い j (
笑 wh
i
t
e
. 独 weisJ
。
habdin:接続法過去 l人称複数。ラテ ン話や現代独語なら 接続法完了形にな るはずのところ 。
5
9
1
) undartuisc:prap. (
対格支配) u
n
d
a
r
t
w
iski
..の間に J (
独z
w
i
s
c
h
en
. 英 between)
。
数詞 t
weneの派生語であることは明白。
んで h
a
b
d
i
nの対格目的語
odar: i
別のもの、第 2のも のJ
。前行 s
u
l
i
cs
o・と結
i
私たちがこの地で未だかつて持ったことがない類の(白い皇)、どニ
かしらでまた別のものも未だもったことがないような(白い星 )
j。
意味の上からは「こ の地で
あれ、またどの地であれ」に近くなるだろう。 o
darを一種の αd
v
.と解せばよい。
huerigin
αd
u
.=hwargini
どこかしらに j (
2
5行に既出)。
5
9
2
) nes
u
l
i
cbarn…:星と並べて barnを出すのはやや無理があるが、押韻のため
貴
5
6
2行からここまでは Tatianや福音書にもとづかず、 Hrabanusの 「マタイ」註解をもと
に f
ヘーリアント j詩人が自由に補足した詩行。学問的、あるいは教会説教的解説と言っていい
だろう。
bedu :s
t
f
.beda i
拝礼、祈り:1
穎
し
、 J(
独 Gebet.B
i
t
t
e
J の単数与格。既にゴート語に b
i
d
aが
霊場。おそらく印欧祖語、h
edh- i
曲げる J に由来する c 祈るために膝や身を折りかがめるから
だろう。 6
7
2行 k
n
i
o
b
e
d
ai
膝ま づいての拝礼」参照 c 英 t
ob
i
dや bead i
ビーズ玉、数珠玉J (
数
珠で祈りの回数を数えたところから)も関連語である
f
o
r
i
n
5
t
V
.f
a
r
a
nの接続法過去。
5
9
3
) thenkean:hetanと結ぶ不定詞。ここでは「考える j よりむしろ「思いをこらす、注意
する j ほどの意。
5
9
4
) huan畠r: i
いつ(はじめて )
j。 岳rは冗語。 1
0
5行に既出。
つける、気づく」の接続法過去。
gisauuin:g
i
s
e
h
a
ni
見
sidogean =SIdon i
行く j (
4
2
5行既出)。この不定詞の主
体は次行の boc
組。
5
9
5
) garuuuian:5山 v
.garuwian i
準備する 」
ーα
d
j
.g
a
r
ui
準備のできた Jの派生請。2
7
3行
註を参照。
5
9
6
) uui := w
i
o5
9
3行の t
h
r
eamanが即ち自分たちであることをこの唐突な wiが物語る。
いささかドラマ性を感じさせる語り口である。
so :従属接続詞=独 wenn,英 i
f
. when。
f
u
r
i:
αd
u
.i
前方に、先立つて j (
量
重v
o
r
a
u
s
. 英b
e
f
o
r
eJ
o
1
1一
uurdi werdanの接続法過去。
1 へーリアント(救世主)
1
,
{
J
,
Jち 「前方に進 uJの意。
l
t
iと結んで「しるしが前方に生じる Jf
r
u
f
九4行に
7
giuu晶rod:3
につき、進行する星の方向を示す。 訴
riuurdi
u
) uuestar 前行の f
7
9
5
be
悦
狙!
独
既出 (
dl,古ゲルマンの英雄に好んで冠される常套的
ol
英b
.I大胆な、勇気ある J(
V
d
9) bald:αの
引
9
ω
5
l i ボール J などと問 +l~で「強く膨れること」と恩われる。古高独語、
l
a
修飾語。原義はおそらく B
oは 「吟敢に」から「ためらわずに即刻、すぐ
d
l
a
.b
u
tも「勇敢な」であったが、αd
l
中高独語 ba
dIまもなく」に主っている。これに対応するように「勇敢な」の
l
a
さま 」 に転じ、現代独語の b
おか
dI
l
o
b
z
t
i
nや名詞 W
i
u
d
l
a
、 ケは 人名 B
(って代わら れ
;
[
rにJ
e
f
p
a
tは kuhnや t
l
a
.b
d
l
a
j.b
d
a
。
)
厳格な J
P独 strengI
trong.C
英s
強力な J(
.I
j
trang:ad
s
しな奴」なとに残るのみである
0行に既出。
7
3
明る く、元気よく
αdu.I
) hedro :
0
0
6
)
ter
J(独 hei
0
7行の magad0
0行の iugud-h岳d.5
8
07行註 で略述した
、 語源についても 5
(輝かしし、)身分、状態 」 と同系 で
h岳dに現われ る h岳d I
輝く」に由 止し 、ゲルマン認では
iI
a
すなわち印欧祖語 ヰk
明るいもの、はっきりした状態 Jを
tという
i
. 独 占e
d
o
o
h
_など多くの意味をもち、英 1
N
ki
出発点 として「人、身分、名得、家系、Ii
del-heidなとにも残 る
接尾辞や 、人名 A
」
Iっているように。
I
一私か A
fon
cuuet:
…の中で、問で」の意。 soi
i
三博 tの 11はこれまですべて Wlで語られてきたので、この lCは唐突
へーリ
である 。頭績の必要性 もなく 、そもそもこの文は内容上も重要でない。 ひょっとすると 『
)か ?
j見 (し、わゆる「草子地 J
アント j詩人自 身の .
しかし文脈からは三博士の(ひとりの)言
としか考えられず、いささか推敵不足の観がある 3
8行註を参照。
2
o1
定める、決める J
)marcoda: f
01
6
独
朝J(
.morgan f
m
t
morgno s
I詞的
s自身は国J
e
k
i
l
i
u
h
i
g
sにかかる (
e
k
i
il
u
ih
Morgen.英 morn. morning)の段数凶格で次の g
',11, 1件
morgen は令ゲル マン共通語で 、 ~I l[孜佐u告 白 mer-
きらきら輝く Jに由 来する。
i
h
c
e
青白い」、Bl
hi
c
i
e
l
蝉く、 ぴかぴか光 る」の不定形。独 b
ni
a
k
i
l
. (1)b
t
t
) blican:s
2
0
6
白い」な どと同
ci
n
a
l
漂白する」、仏 b
hi
c
a
e
l
ob
1まなざし」、 英 t
kc
i
l
、 B
」
鉛
ii
e
l
ブ リキ」、 B
「
恨。
r)の単数対格。印欧語共通と言ってよい
a
t
. 英s
n
r
e
t
独S
星 J(
oi
r
r
e
t
sterron swm.s
ほどの広が りを持つ 単語である。
3)uuegasendiuualdas
0
6
。 副詞的機能の対格。 uualdasは
道をた どり森を担えて J
f
d)の複数対格。語源、未詳だが、樹木や草のほうぽうと繁る とこ ろから独
独 Wal
森J(
di
wal
stm.
r
dとの関係も推測きれる つ古英語 wealdは今
l
Wolle 羊毛 Jとの関連が指摘 され、また英 ・独 wi
荒れ野、森林地借
eald i
もw
tや woodとは趣の異った森林に用いられることから
s
e
r
o
として、 f
dとの共通性は肯定できる 。『へ ーリアント』の時代の waldはおそ らく原外 林に
l
i
eや w
l
l
o
、 W
も
近く通行困雛だったろうから、このフレーズも「道なき道を踏み分けて」というニュアンスが濃
い
) の綾数与格。副詞的に 「その
e
l
i
h
. 英w
e
l
独 Wei
l(
[a
.hwil
f
t
0行に既出の s
7
huuilon 1
時その時に」 → 「その間ずっと」の立
t以下を先取りする指示代名
a
h
That:次行の後続詞 t
- 12-
;J~'; 主へーリアント(救 l吐主)
i
.
I
l
J
uuari wesanの接続法過去。
mestaにかかる。
uuilleono s
即 m
.w
i
l
l
e
oI
喜び」の複数属格。次の
mesta:a
d
j
.mil口l の~~ J
:級
、 w
i
l
l
e
oと結ぶので男性単数主格(独 m
e
i
s
t,英
m
o
s
t
)。
6
0
4
)皿 o
stin =独 konnteno
ul
且i
s
s
i
n
witanの接続法過去、
i
'
.請は WI
6
0
5
) kesurdoma:s
t
m
.kesur-dom I
帝国 J(
独K
aisertum) の 単 数 与 栴 後 半 部 -dom (
独
t
u
m
. 英 -dom) については 490行註を参照 c
*
cuninganthesumkesurdomaとL、う表現はまず何より頭韻の必要上作られたものである
urの法制ヒの相違 (
6
2行の註参照)はきちんと踏まえている。つまり kuning
が
、 kuningとk岳s
は天地双方の王たり得るが、 k
esurは地上の一部分の支配者たるに過ぎないという相違である。
6
0
6
) Erodesa:I
j併
ここではアクセントは Eーにある。
innanbriostun b
r
i
o
s
tカミ常に
複数で用いられることについては 1
7
4行註を参照。
6
0
7
) harm:s
tm/
凡「市悩」の単数主格っ αd
j
.ではなし '
0
uuidherta 対格支配の widは
「・・のあたり、ーの周辺 Jの怠味を持つことがあるつたとえば 3
6
8
8行では C写本が umi
sh
e
r
t
e
.
M写本が widi
sh
e
r
t
eとなっている。
uuallan:s
t
v
.(
W
I
)I
波立つ、沸き立つ J(
独w
a
l
l
e
n
.
W
e
l
l
eI
波J
) の不定形。ラテン語 volvareとも同根で、「回転」するが原義
6
0
8
) gihordeseggeantho:
I
(博士たちがこう)言うのを聞いた(のだから )
J。完了相表
lの機能が多少残っているように感じられる g
i
h
o
r
i
a
nである。
示の接頭辞 g
6
0
9
) obarhobdon:swm.obar-hobd(i)oI
首領、主君 J(
独O
berhaupt) の単数対格 o I
頭部I
J
を「首領」の意味に用いるのは、日本語、中国語はもとより、どの言語にも共通しているが(英
h
e
a
d
. 仏t
e
t
e
. 経c
a
p
u
t
)、obar-hobdioとし寸話形にはラテン請の supremumc
a
p
u
tが影響して
いる可能性が高い(Ilkow)0
s
c
o
l
d
i 運命・宿命を表わす s
k
u
l
l
a
no
6
1
0
) craftagoronαd
j
.kraftag I
力強い、権勢ある J(
独 kra
仇i
g
) の比較級、男性単数対
格
。
6
1
1
) gisidea :1
8
5、344行に既出。本来は「仲間、従者、家族 Jなどを意味するが、ここで
は「自らの民」ほとの窓 c
6
1
2
) sohuuatso:437行に既出。部分属格であるが d
a
r
omannoと結び「ありとあらゆる良
き人々」の意。
脅
この行の頭韻は huuat- H
i
e
r
ーがーで、口蓋摩擦音という点が共通音韻と感じられている
わけである (gーは軟口蓋音)。
6
1
3
)a
l
l
a
r
ospahostonspracono
I
言辞に関して最も賢明なる者たち」。
文頭に関係代
名詞 t
h
eやめが略されていると考えてよ¥..¥0 a
l
l
a
r
oは前行の godaroと同格の部分属格ともとれる
v
.(
独 aJ
le
r
) となっていると考えられる。したかっ
が、しかしここでは既に最 k級を強める αd
てs
p
a
h
o
s
t
o
nはαd
j
.spahiの最上級、複数主格 c spraconoは「言辞、弁舌に関して」の窓味の複
数属格で、 s
p
a
h
iとの結びつきは 5
7
2行に初出
1
3一
訳註ヘーリアント(救世主)
6
1
4
1 bokcraftes:s
t
f
.bok-kra氏「書物による(書物に関する)知識、学識」の単数属格で次
r
a
f
tを、このような知的・精神
の mest (中性単数対格)と結ぶ。本来は肉体的な力を意味する k
的力に用いるのは古英語 c
r
a
f
tの特徴であり、ここにも英国布教団の孟語が『へーリアント jに
及ぼした影響を見ることができる。詩人は前行の「言辞に長じた者たち Jをもって、「マタイ」
(
2,
4
) の「祭司長たち」を、この「書物の力を持つ者たち」によって「学者たち」を表わそうと
したようである。 3
5
2行に b
o
k
s
p
a
h
iI
文筆の技に長じた」があったが、これは読み書きに強い役
人たちのことであった。
6
1
5
)仕 agn:s
t
v
.(
i
l
l
2
)仕 egnanI
尋ねる」の過去形。同義の s
ωv
.仕agon/
仕a
g
o
i
a
n (独企a
g
e
n
)
はf
regnanの過去形から新たに作られたもので
f
へーリアント j ではこの弱変化の新形の方がは
るかに多く、古形の合egnanは 3例のみ。
6
1
6
) nidhugdig:
αd
j
.nid-hugdig 敵むをいだいた J
, nid (独 Neid) については 28行註
を参照。 hugdigは h
u
g
iI
思し通」から。
6
1
8
) uueroldrikea:s
t
n
.w
e
r
o
l
d
r
i
k
.
itH:界(帝国)J(
独W
e
l
t
r
e
i
c
h
) の単数与格。教会ラテ
/諾 regnummundiの翻訳語と恩われ、「人の世、現世、地上世界」の合意がある
6
1
9
) fridugumono s
山m
.fridu-gumo I
平和の人」の複数属絡で b
e
z
tと結ぶ。 4
5
0行の
frudu-barn I
平和をもたらす御子 J(即ちキリスト)と同発想の語。ただし「ルカ J(
2,
1
4
) のキ
リスト生誕の讃歌「し‘と高きところには栄光が神にあれ。地には平和が御心にかなう人にあれ」
の後半部が意識きれていたとすると、「御心にかなう人 Jhominesbonaev
o
l
u
n
t
a
t
i
sということに
なろう。しかし文脈からやはり「平和をもたらす人
の方が妥当と思われる。
6
2
1
) bokun:bokの複数はほとんど常に(旧約)聖書を表わす。
6
2
2
) giuuritan s
t
v
.(gi)-writan (
英t
ow
r
i
t
e
) の過去分示l 外来語系の skriban (
独
s
c
h
r
e
i
b
e
n
) と翻訳借用語である土着系の writanの頻度差などについては 2
3
3行註に記したが、
g
i
s
k
r
i
b
a
nとglwntanが並記されているこの箇所を見れば、両者間にもはや意味の差がなくなっ
ていることがわかる。
数主絡
uuarsagon swm.war-sago I
預言者;占い師 J(
独W
ahrsager) の複
一応はギリシャ系ラテン語 p
ro-phetaの翻案借用語と見なされ得るが、しかし記、ずしも
キリスト教導入期の新造諾と限定しなくともよく、異教時代の「占い師」を表わす古い用語と考
えることも可能。 1
4
2
2行に登場する f
o
r
a
s
a
g
oの方がむしろ p
r
o
p
h
e
t
aの直訳借用語なのではある
まいか? もちろんこの warsagonが「マタイ J(
2,
6
) の出典(ミカ書)に登場する旧約の預言者
たちを指していることは言うまでもないことであるが。
6
2
3
)b
igodescrafta: I
神の力によって」。この意味の b
i(
英b
y
l については 2
3
0行註を参照 C
6:W 釦 rnαd
v
.= f
o
r
n
. 5
7
0行参照。
6
2
5
) burgohirdi: I
町々の牧者、守り
f
J。
6
2
7
) radgebo:s
ωm.rad-gebo r
助言者、庇護者;支配者 J(
独R
a
t
g
e
b
e
r
)。 元来はゲルマ
ン古来の法律用語で「判定者、法主手J だったらし~ '.このあたり
1
4一
一
(
T
a
t
i
a
n8ふ「マタイ J2
,
6
)
,~m
へーリアント(救世主)
r
はラテン原文でも i
u
d
e
x,q
u
ir
e
g
e
tpopulum'" 民を治める支配者が一となっていて法律的用語
が多く、 『へーリアント j詩人も多少はそれに影響されたものであろう。
r
i
h
t
i
e
n s
w
v
.r
まっ
すぐに立てる;正しく治める、支配す るJ
ー印欧但語句e
g
rまっすぐなこと Jを根源とし、「正義、
法律、支配搬、右側 Jなと多岐にわたる意味を持つ(独 auf
r
i
c
h
t
e
n,r
e
g
ie
r
en,r
e
c
h
t,英 r
i
g
h
t
等)0 3
0
8行註を参 1
1
ι
r
6
2
8
) gumskepi :s
t
m
.gum-skepi 人々 、民」の単欽対悩
ほほラテン精 p
o
p
u
l
u
sの訳語と
r
考えてよいだろう。 gum-の原形 gumoについては 7
3行設を参照。他の類例:gum-kunni (男系
r
の)高貴な家系」、 gum-kunst 男らしさ Jなどー endii
sgeba 前行の関係文の続き。主語
r
は関係代名詞 t
h
eで定動詞は s
c
a
lである コi
sgeba 贈り物、恵み」は女性単数属格 ι 次行の αd
j
m
i
l
d
iは入の与格 (managunt
h
i
o
d
u
n
) と物の属格とをともなって「ある人に対しである物に関
して寛大である、気前がし叫 ‘
Jの意であり、かつ常に人を主語とする。 したが って 628行の
wesanは前行の s
ca
lに支配きれる不定形。一見そう思えるように g
ebaが主語ではなし、ことに註
意己
責
6
2
8行以下は詩人の自由な補足 立:である
世俗的な「気前の良さ J(とりわけ主君の臣下に
対する)という意味をまだ多分に残す m
i
l
d
iを用いることによって、ゲルマン英雄説のような聴
衆の耳に快い言葉を歌章の最後に効果的に響かせようとしたのではあるまいか
貴賓
この歌章は詩人に よる~大な補 足や敷桁が見られるのが特徴的である。主に Hrabanus
の註釈にもとづく 旧約学的補足は説教的目的 のためであろう 。また東方の三博士の諮りは冗長で
素朴、かつやや荒けずりで、 口承歌謡の未完成段階を見る趣がある。
〈第 8歌章三博士の拝礼と帰国〉
すると私が聞いたところでは、
この預言者たちの言葉を
彼ら、遠い国の
邪念をいだいた王はただちに
異 国 の 勇 士 た ち に 伝 え た そうである、
身分良き武士にして、
はるばるやってきた彼らに。
それから王は尋ねた、
いつ彼らが東の国において
はじめてかの王者の星の
天に現われるのを見たのか、
あのしるしが燦然と
空に光り輝くのを。
す る と 彼 ら は い さ さかも包み か く さ ず
誠 実 にすべてを彼に語った。
御子 の 到 来 に つ い て の
命じた。
630
そこで王は彼らに行って
彼 ら の 使 命 を すべ て 果 た す よ う に
それから王はみずから
-15-
635
訳註へーリアント(救世主)
きわめて真剣な調子で、
賢者たちに命じた、
このユダヤ人の王は
、
すなわち彼らが商の国から旅立つ前に
必ず自分に、いずこに行けば
教えるようにと。
6
4
0
かの王者に会えるのかを
彼はこうも言 った、 自分もそこに供を連れて
おもむき、拝礼をしたいのであると。
実の ところは、剣の鋭い刃をもって
御子の殺害者たらんと欲したのであった。
ところが万能の主なる神は
6
4
5
この事態をも考えておられぬはずがなか った : 彼はこの世の光にあって
はるかに多く成しとげることができたのだ。
神のみわざのおきとしは。
雲の間を燦然と。
これは今後も末永く明々白々、
さて再びあのしるしが動きはじめた、
すると賢者たちも
またすぐそれに従うのだった。
勇んでその場を立ち去った。
彼らの使命に忠実に
探し求めようとしていたからである。
3人だけではあったが、
っき従う者もなく
そんな事につい ては心得のある者たちだった、
ささげ物をたずさえたこの 3人は、
賢明なる彼らの目は、
6
5
0
神の御子をみずから
まことの賢者であったから。
雲のひろがる さ
を
の下へと、
あるいは雲の上なる高い天へと、
6
5
5
白く輝く星の動きを追っていた、
一一それが神からのしるしであると彼らは知っ た一一←キリストのために
この世に作り出されたしるしであると 。
星を追った。
この男たちは真心をこめて
一一一そ うさせる力をお持ちの方が彼らを前進させ一一
ついに彼らは、
歩み疲れた男たちは、
輝く神のしるしが、
キラキラと天に光を放ちつつ
静止したのを見たのだった。
その家の上で輝いた。
その星は明るく、白く、
そこには聖なる御子が
みずからの意志でとどまっており、
あの女性、あの乙女が
心をこめて御子の世話をしていた。
するとつわものたちの心は
喜びで明るくなった。
わかったからである。
6
6
5
このようなしるしによって、
今や自分たちが神の平和の御子を、
裂なる天の王を 見出したと
それで彼らは、
数々のささげものをもった
家の中に入った。
6
6
0
東方の男たち、旅に疲れた人々は
するとたちまち彼らには支配するお方が、
キリストがわかったのだ。
異国の勇士たちは
- 16-
6
7
0
訳 註 へ ー リ ア ン ト ( 救 世 上)
御子の前にひざまづき、
王者に対する仕方で
その良き人に拝礼をして、
黄金と乳香とを
それからささげものをささげた、
神のしるしとして、
またそれに没柴をそえて。
この男たちはそれを済ますと
つつしみ深く彼らの主の前に立ち、
いつくしみつつ抱きあげた。
それか らこの賢者たちは、
もののふたちは宿へ、
長旅につかれた男たちは
旅宿へとおもむいた。
すると神の天使が夜中に
眠っている彼らに
ひとつの夢を見せた、
夢の中にあるまぼろしを。
6
8
0
それは主みずからが
支配者である御方が望んだことであった リ
すなわちだれかが彼らに
言葉をもってはっきり命じたように恩われたのだ
別な道によって祖国に帰るべしと、
ヘロデのところに再び
語り始めた ι
そのの士たちは
そしてあの邪悪な
もどってはならぬと、
あの怒れる王のところには。
この世界を訪れて、
675
それからみずからの手で
6
8
5
さて輝かしい朝が
賢者たちはたがし、にその夢について
そしてみずからそれが万能の御方の
言葉であると悟ったのだ、
というのも、彼らの胸中の英知は
たいそう大きなものだったから。
彼らは h物の支配布、
崇高なる天の 1
.
に祈りをささげ、
今後も神の恩砲を、
神の御意志を実現で きるように願い、
また自分たちがすべての思いを、
心のありたけを 毎朝神にささげてきたと ;
i
:げた。
東方のもののふたちは、
その後彼ら、
神の使いが言来でもって教えたように、
そこを立去った . 別の道をとって
神の教えに従ったのである。
東方の使者たちは、
6
9
0
6
9
5
ユダヤ人の .
'
1には
御子の生誕についてはなにひとつとして、
長旅に疲れたこの男たちは、
語ろうとはしなかった
彼らはみすからの決意のままに立ち去った
-17一
訳註へーリアント(救世主)
〔福音書その他との対応 16
3
0ー(叫」行は「マタイ J2{
;
n 節と 8節
、 6
4
4-6
4
8行は詩人の自
由補足、 6
4
8-6
6
5行は炉]9節
、 6
6
5-6
6
8行は同 1
0節
、 6
6
8-6
7
5行は同 1
1節
、 6
7
5-6
7
9行は
自由補足、 (
IiI-6
86行は岡 1
2節 に も と づ く 大 巾 な 敷 街 、 686-693行 は 自 由 補 足。 各所で
Hr
abanusl
i
J
:解を利用している 。
(Tatianとの対応 1 8章 4節から 8節まで
第 8歌 章 註 解
6
3
0
) Thogifragni
c:語り手(作者}である詩人が直後顔を出 している「われ聞きおよびけ
るは」形式 こ口承文芸の伝統的機式のひとつ。 2
8
8行に初出。
r
slidmod:a
d
j
.s
l
i
d
m
o
d 邪念
をいだく、 立腹した J
o549行に slid-wurdiI邪悪な 言 辞の」が既出。
6
3
1)therouuarsagono へロ テが召集した祭 司長や律法学者たちを指す。 uuordは複数対
H~ :
uurekkiun:s
ωm.wrekkio I 呉国から の~ 士 J (
主
主 Recke)の複数り絡 , 束 }
J内三 博士
r
r
のこと。 5
54行既出の w
r
a
k
s
i
d 国外追放;呉邦への旅Jに含まれる wrak 追放、迫害 Jを諮恨
としており(守独 r
achen, I;~ t
owreak)、したがって「国外追放者;異邦旅行者」 が原義。自国
のi
去の庇護を受けぬ w
rekkioは心身ともに強くあらねばならず、またそ の智lの男たちの多くが呉
P
邦の君主に武勇で仕えたことから、「勇士 Jという u:
1
二した(独 R
よか派 '
ecke)。
同時に 「まと
もで ない者、 無頼?英、 みじめな者 J( ヲ~ w
r
e
t
c
h
) という .
ul
I
A
、
に もなり得たことは 、容易に理解で
きる。
r
6
3
2
)e
l
i
l
e
n
d
i :s
t
n
.e
l
iーl
e
n
d
i 呉邦、外国 Jの単数対情。語源は 3
4
5行設 を参照
6
3
3)ferran .
:
.
S
6行註を参照。
尾をとっている 。
gifarana f
a
r
a
nの過去分詞であるが、 αd
j複数主絡の語
r
a
f
t
a
rthiu: それか ら
、 その後 J(
]I
l
:行参1
/
1
11
r
6
3
4
) ostaru
且
¥e
gun:slm. o
s
t
a
r
w
e
g 東方(への道)Jの複数与倍。 o
s
t
a
rは「東方へJが原
義であるが (
5
4
1、5
6
2行註参照)、ここでは方向指示性は弱く、 *方で、 東の k地で」ほとの意
r
s
凸d
a
r
l
i
u
d
i 南 方 の人々 J(
3
0
3
61
i
l という類例もある
町や村 Jという 含みであろう 。
wegが複数なのは「あちこちの土地
、
gisahin:I
g
ト )
sehanの接続法過去 3人称復数。 現代語の接
続法完了の機能をもっ ご
6
3
5
) cuningsterron swm. k
u
n
i
n
g
s
t
e
r
r
oI
王 者の星」の単数汁栴
「マタイ J2
,
2の三博士
の言葉 U
bie
s
tq
u
inatuse
s
tr
e
xIudaeorum?Vidimuse
nims
t
e
l
l
a
me
i
u
si
no
r
i
e
n
t
e.
.
.I
ユダヤ
人の王としてお生まれになった 方 はとこにおいでになりま す か
を見たので
私たちは束のほうでその方の星
Jの stellameius (=rex)を倒択し た ものと考えてよいだろう 。
cumbal =
kumbl
. kumbal
.s
t
n
. Iしるし 」 の '
p紋 ( 綾 数 行 対 十告白 古英語、古ノルド語、古高独語にも存
在するが、話源不 祥
イ、定形
r
l
i
u
h
t
i
e
n =l
i
o
h
t
i
a
n,s
ωv
. 光る J(独 leuchten,英 t
oI
ig
h
t
[
e
nJ)の
訳註ヘーリアント(救世主)
6
3
6
) hedro:600行に既出。
照)と結んで
ぉ :人材、代名詞中性単数属絡。行末の e
o
u
u
i
h
t(
2
2
2行註参
f
それについてなにひとつも J
o helen: = h
e
l
a
n.s
t
u
.(
I
V
)r
かくす J (
独[
v
e
r
J
-
hehlen)の不定形。 「
つつみかくす J という印欧祖語 *
k
e
l
ーに由来し、ラ テン誇 c
ela.~Halle.
H
o
l
l
e.Hulseなども同系。
r
6
3
8
)a
l:
αd
u
. 完全に J
o
r
undarfundin:s
t
u
.(
i
l
l
l
)u
n
d
a
r
f
i
n
d
a
n 究明する、児出 す
」
の接続法過去 3人称複数。
r
6
3
9
) umbi: …に関して、をめ ぐって J
o cumi 常に被数で現われ、しかも神とキ リス ト
の到来に関してしか用いられないことは 4
8
9行註でふれた
r
6
4
0)hardlico:= h
a
r
d
l
i
k
o.
αd
u
. きびしく J (
独h
a
r
t
. 英h
a
r
d)
o
641
)f
orin f
a
r
a
nの接続法過去。
uues
tan・ 「商から」。写本は M、Cとも u
u
e
s
t
a
rと誤
記。
r
6
4
3
) seldon :s
t
f
.s
e
l
i
da 家、住居Jの複数与十台一戸に複数の住居合間があることを江謙
する故か常に複数形で用いられ、必然的に扶 i
I
な邸宅 という合意があ る
ゴー ト語以来の古いゲ
ルマ ン語。 2
2
9行 win
s
e
l
i
. 549行の s
e
l
i(
独 Saa
l
、仏 s
a
l
o
o
) の註を参照。
r
6
4
4
) bedan: (M写本では bedon)s
w
u
. 符礼す る、おがむ J (
独b
e
t
e
n.<P英 t
ob
i
d
J の不
r
定形。 s
t
u
.b
i
d
d
i
a
n 乞い願う J (
独b
i
t
t
e
n)から作られた新造語。 592行に既出の名詞 bedaが先
に作られ、それから更に動詞ができたもの。 bedonはp
rap.t
eをとも なって 「ある人に対し拝礼
、
hogda:s
ωu
.h
uggian r
考える J (
くh
u
g
i)の過去 3人称
をなす J と用いられることが多 L
単数。同義の g
i
h
u
g
g
i
a
nは 1
6
1行に既出。ここでは不定訂'
J
w
e
r
d
a
nと結んで「企てる、 意図する j
im:幼児キリ ス トを指す。
の意。
banon
刷
'
m
.b
ano I
殺人者 Jの単数与絡。
banonwerdanで「彼 (=幼児キリ スト)の殺害者となる、彼 を殺す J
.
7
1m匝
r
打ち殺す」意のゲル
ン祖語放 banに由来し、詩語として古英語、古ノルド語、古高独語でも頻用された 。英(詩)
ba
ner
死、悲嘆」に残る。
r
6
4
5
) uuapnes :s
t
n
.wapan 武器、剣 J (
5
.
<
!
!Wa
f
f
e
. 英 weapon) の単数属格。 501行に既出 。
r
eggiun:s
t
f
.eggia 刃 J (
英e
dge)の 複 数 与 俗 (=具格機能)。
r
印欧祖語 *
ak
-.'
o
I
<
- 鋭い」
r
に由来し、ラテン語 a
c
i
ぉ「刃 、武力」、 ギリシャ話 akm
色[頂天」、主l
l
E
c
k
e かど、 すみ
J
などと
l
司系。
r
6
4
6)uuidthemthinga: この事態に対 して J
o widは「
与絡っ
を防ぐべく 」、t
h
i
n
g
aは単数
athengean :s
w
u
_a
t
h
e
n
g
i
a
n
l
a
n
t
h
e
n
g
i
a
ni
実行す る、なしとげる Jの不定形。 2
5
3
r
r
行の g
i
t
h
i
han 成長する、栄える J (
独g
e
-d
e
i
h
e
nl と同根, 栄えるようにさせる」が原義っ
r
6
4
7
) anthesumI
iehte = この世において J
c
skinαd
j
. (wesa
n
. werdanととも に
r
述語的にのみ用いられて) 明白な J
o589行既出の s
kinan (
独s
c
h
e
i
n
e
n,英 t
os
h
i
n
e
) の αd
J・
r
6
4
8
) gicudidc
r
a
f
tgodes: 告知 された神の力」。 前行 t
h
a
tの説明 ο
世
644行後半ーから 648行前半ま では作者 による補足。特 に 647行後半は現在形を用いていて、
-1
9-
訳註へーリアント(救世主)
作者自身の説教のような趣がある 。
6
5
0
) fusaαd
j.f
u
s ["準備ができた Jの被数主格 o S
ωu
.f
u
s
i
a
n ["努める」の関連語で、 s
l
u
.
t
efaranne:F
!
}
J名詞の与格形。
f
i
n
d
a
nと同根かと思われるが不詳 c
giuuitun:3
5
6行
註参照。
6
5
2
)g
isideas merと結ぶ部分属格 コ
6
5
3
) uuissun
<stu.witan,
(
独 B←
s
c
h
e
i
d)の単数対格。
また「
thingo 後数属格。
gisked:s
l
n
. ["情報、消息」
独B
e
s
c
h
e
i
dwissenと問機に動詞 witanないし kunnanと結んで、
r
についての j を表わす属格 (
t
h
i
n
g
o
) と共に用いられる 。動詞 s
kedan 分ける、分別す
るJ(
独s
c
h
e
i
d
e
n・ c
p英 toshed)の派生語で 「わけ知り、分別、弁別 Jが原義 c
6
5
4
) im:与格の再帰代名詞(1湖心の与栴)コ
geba 複数対格。
leddun:554行に既出
のs
ωu
.I
岳d
i
a
nの過去複数形。
655) skion s
lm. skion "
['
1
; ;雲に おおわれた空 J(
C
P英 sky) の単数対格 。印欧祖語
句5
)
keu
ー「おお
r
r
うJに由 来し、ラテ ン3
¥
iOb-5cUru5 おおわれた→暗い j、古英語 5
C邑o 雲j
、古ノ
ルド語 sk
主「雲」、英 s
hadow, '
1
1Schattenなとと同系。 (ちなみに英 5kyは中英語期に北欧語か
らとり入れられ、しだいに意味拡 大 されたもの 。)したがって wolknesskionは
、 4289行の
wolkanskionと共に一種の同義反復語である
r
wo
l
k
n
e
ss
k
i
o
n 雲のかかった(低し、) ~J
次行の hohhi
milは「雲 のない高い天空」で、
と| 正 別 されている。
なお、 undarthanaw
o
l
k
n
e
s
s
k
i
o
n,
upt
ethemhohenh
i
m
i
l
eで、動いて 行く星 の様子がよく 活写きれていると言ってよ しh
6
5
7
) thatcumbal,
thiu.
.
.:写 本に混乱がある
t
h
i
ucumbal,
t
h
i
u であるべきとこ ろ
J
r
thurh: ーのためを思って」の意の prap. (
独 um…w
i
l
l
e
n
)0
6
5
8
) giuuarht
6
5
9
)s
i
e :複数対格 o
行),
Kr
i
s
t
a 特殊な単数対格形。
<gi-wirkian,
ITumide
i文俊した J frummianの第 l義は「前進きせる J(4
themahte: r
それができるお方が J
otheは指示代名詞男性単数主格であり、かつ関
係代名詞の機能をも含む(独 d
e
r
j
e
n
i
g
e,d
e
r
)一
mahteは助動詞 muganの過去 3人材、単数。
r
6
6
0
) siduuorigeαd
j
.s
i
d
w
o
r
i
g 旅に 疲れた 」の複数主格。後半 w
o
r
i
gは英 wearylこ残る e
r
古英語 w
orian さまよう、ゆれ動く Jと関連すると恩われるが、それ以上は A,
,
;
f
661
) berhtbocan 単数対格 c前行 g
isahnの目的語、内容上は次行 gistandanの主語。
b
l
岳c α d
j
. ["明るく輝く」の単数主格
602行の b
l
i
k
a
nの項を参照。
独b
l
e
i
c
h, B
l
e
c
h, B
le
.
i
英t
ob
l
e
a
c
h,仏 b
l
a
n
cなども問機 4
r
r
J
.
して J(英独 s
t
i
l
l
)
6
6
2
)s
t
i
l
l
o:
αd
u
. 静かに、静
0
定形 og
J
ーの完了相化機能が多少残存し ている コ
gistanden:s
l
υ."
[
立ちど まる jの不
r
liohto:
αd
u
. 明るく
J
o sken
くs
l
v
s
k
i
n
a
n(
5
8
9行参照)。
6
6
4
) uuonode:s
山 u
.wonon,wunon ["とどまる 、居住する J(
独 wohnen) の過去 3人称単数。
佃
u
u
i
l
l
e
o
n s
ωm.wi
l
l
i
oの 単数与格とも 対怖とも解せる
←
2
0ー
r
みずからの意志の まま にJ
。
訳註へーリアント(救│止i:J
r
6
6
5
) githiudo :
αd
v
. それにふさわしく、手あつく J
。ゴート誠 t
iuti
善」と同系で、古ノ
ルド語、古英語、古高独語などにも類語があるが、語源ははっきりしない。
6
6
6
) bocna:bokanの単数与格。
6
6
8
) an-inn
田 1 :1
0
3、1
1
4行註参照 ι
r
6
7
1
)f
e
l
l
u
n :s
t
v
.(
V
1
11
)伝 l
l
a
n 落ちる、 f
j
Jれる J(
独f
a
l
l
e
n,英 t
of
a
ll)の過去 3人称被数。
6
7
2
) kneobeda :s
t
fknio-beda r
ひざまづいての拝礼」の単数対格。「マタイ J(
2,
1
1
) では
r
p
r
o
c
i
d
e
n
t
e
sa
d
o
r
a
v
e
r
u
n
t ひれ伏して拝んだ」とある。異教時代のゲルマン人がひざまづいて祈
る賀慣をもっていたかとうか、定かではない
kow)0
あろう(Il
おそらくキリスト教改宗後とり入れられた方法で
r
ancuninguuisa: 王侯にふさわしいやりかたで J(
5
5
1行に既出)。
6
7
3
) godan :前行 maの同格説明語、「彼を、その良きお j
jをJ
0
grottun:s
ωv
.g
r
o
t
i
a
n
「呼びかける、あいさつする J(
独g
r凸s
e
n
. 英t
og
r
e
e
t
) の過去 3人称複数。
drogun:<
dragan,
r
6
7
4
) gold :s
t
n
. (~虫 Gold ,英 gold) 0 輝く」意の印欧祖説本g
h
e
lに由来する。黄金の名称は
民族によって異るので、多様な名称が存在しているところを見れば各地で係掘きれ尊重されたこ
とがわかる。タキトゥスの
f
ケルマニア J(5市)によると、ゲルマン人は黄金をあまり尊重しな
いとある。当時の拝金主義ローマに批判的なデキトゥスが、ゲルマン社会を理想化して描いた点
を考慮しでも、当時のゲルマン人の(以前の青銅器時代や鉄器時代に比して)黄金軽視は事実だ
にも賞金崇拝の風潮が起こり、ニーベルンゲ
ったようである。後にローマ文化の影響で彼らの!自l
ン伝説に見られるような、民族移動期における桜伐の黄金 r~ 重に至る。
uuîhrôg
stm
r
w
i
h
r
o
k,w
i
r
o
k 香、乳香 J(
独W
eih-rauch) 1
0
6行に既出。キリスト教とともに呑を用いる
習慣もゲルマン人に伝わったが、ゴート語、市英語、古高独語、それぞれ別な表現を用い、 ド
イ
i
h
r
o
u
c
h/
w
i
h
r
o
kが全国通用語となって、今日の Weih-rauchに
ツでは中・南部にまず定着した w
およんでいる。
b
igodestecnun
r
神のしるしとして J
。
6
7
5
) myrra:s
t
fi
没薬、ミルラ J(
独 Myrrhe,英 m
yrrh)。 ヘブライ→ギリシャ→ラテン
話からの外来語。死体に油を注ぐ場合に用いる」穏の防腐剤。
i
r
'
i
i
:
薬 Jは myrraを中国で音訳
したものー蛇足ながら「木乃伊」という単語は元来、ミイラを意味する蘭語 mUillle又は仏語
momie (<アラビア語 mumiya) の漢音訳であったが、後にミイラ製造に必要な没薬ミルラと混
同され、「ミイラ」と発音されるようになった
garouuaαd
j
.garuの複数主格
J
6
7
6
)i
t:中性単数対格、幼児キリストのこと。直前に h岳r
r
oとあるので厳密には m とすべきと
」ろ。
6
7
7
) antfengun:<a
n
t
f
a
h
a
n。
6
7
8
)s
e
g
g
i:s
t
m
.segg ['男、戦士」の複数王佑
、
古英語 s
e
c
g,古ノルド語 s
e
g
g
r, 印欧祖語
r
e
k
u
-[
'
従
う Jを語根とし、羅 s
e
q
u
o
rや s
o
c
i
u
s 仲間 Jなとと同族。
派な家 Jというニュアンスがあることは 6
4
3行註でふれた。
-21一
t
eseldon: ['邸宅、立
訳註へーリアント(救世主)
6
7
9
)g
a
s
t
s
e
l
i :s
t
m
.g
a
s
t
s
e
l
i1
貧客室、客間;旅宿」の単数対格。 2
2
9行註で述べたように、
s
e
l
iはどちらかというと領主などの館の宴会用広間(客人の宿泊室をも兼ねる)を表わした。だ
からこの筒所の g
a
s
t
s
e
l
iを普通の旅人街と見なすのは少々ためらわれる。専門的な旅宿がまだ存
在しなかったと思われる古ザクセン社会の聴衆は、東方の三博士は幼児イエスの生まれた宮殿に
賓客として泊まったか、あるいはその近くの宮家などに宿泊したと考えたのではなかろうか。
*
東方の三博士が幼児キリストを腕に抱いたこと、その後旅宿におもむいたことは福音書や
註解曹に も出ていない。ひょっとすると
I
へーリアント j詩人はピザンツ・カロリング系の綿密
画写本に親しんでいて、その影響でこのシーンをリアルに描写したかったのかもしれな し
九
6
8
0
) slapandiu
且:s
t
v
.(Vll-l)slapan1
限る J (
独自h
l
a
f
e
n,英 t
os
l
e
e
p
) の現在分詞、複数与
格。前行の imと同格で「眠っている彼らに J
o
suueban s
t
m
.sweban,swef
n1
限り ;夢j
の単数対格。 ラテン語 somnus1
眠り j、somnium i
夢」と 同系の古語。英秒、等の西ゲルマン語で
は後に s
l
a
p系統(原義は「ぐったりとすること J
) が優勢となったが、北ゲルマン語では今日ま
でこ の系統が用い られている.アイスラ ンド語 s
v
ef
n,ノルウェ一語 s
v
e
v
n,svemn、スウェーデ
ン語 somn、デンマーク語 s
o
v
n。
6
81
)g
idrog:s
t
n
. Iまぼろし J (守 独 Trug1
たぶらかし J
) の単数対格。 2
6
4行の d
r
u
g
it
h
i
n
g
「ごま か し」の d
r
u
g
i
-と近い関係にあり 、古ノル ド語 draugr 1
幽霊」、 3
1
6行既出の d
r
o
r
n1
夢J
(
英 dream,独Traum) とも同根。この g
i
d
r
o
gは前行 swebanと同義の言い換え (
Va
r
i
a
t
i
o
n)で
はあるが、しかし swebanでは「眠り J と「夢」が未分化なのに比して、 g
i
d
r
o
gには 「まぼろし j
のニュアンスヵ、
ずっと強 u、
。
6
8
2
) thuhte:<s
w
v
.thunkian (非人材、動詞 )0
詞 manに近い用法。
man
1
誰かがJ
。 現代独の不定代名
gibudi:回以odanの接続法過去。
6
8
3
) im:faran は与格再帰代名 ~~J をともな うことが 多い。
ôdran
uueg 副詞的対絡
「別の道を通って」。
6
8
4
) lidodin:s
ωv.lidon 1
もっていく; (対格再帰代名詞とともに)行く、おもむく」の接
続法過去 3人称複数。 1
5
4行既出の s
t
v
.l
i
d
a
n1
行く」から作られた s
w
v
. s
i
e 再帰代名詞 、 3
人称複数対格。
lande この l
a
n
dは「 自分の園、祖国 j の意 (
1
マタイ J2
,
1
2 i
nr
e
g
i
o
n
e
m
s
uam)
.
6
9
0)barun :s
t
v
.(N) beran 1
身につけて持つ、荷う J (
英t
ob
e
a
r, <p妙、
g
e
b
a
r
e
n)の過去
3人材、複数。 badun
く
b
i
d
d
i
a
no
6
9
1)h畠ronαd
j
.1
気高い、崇高な J (
独 heh
r
)の男性単数対格。元来 「
灰色の」を意味し、
後に「白髪の、老成した」から「崇高な」に転じた九 ラテン語 s
enex 1
老いた」の比較級 s
e
nlOf
が「老成した人;主君;神」としてこの頃月j¥,、られていたことと連動して、意味桜、大が生じたと
恩われる。この αd
jの比較級名詞化 h
e
r
r
o(
独H
e
r
r
)
. 仏 mon-sieur,伊 slgmorなと'の関係につ
いては 1
0
0行註を参 1
!
".
mostin =f~i d
u
r
f
t
e
n
. konnteno次行 giuuirkean 1
(努力して)
-22-
訳 誼 へ ー リ ア ン ト{救 I
I
U
.
:
_
)
{
専
る Jにかかる。
6
9
2
1 uuilleon: r
(
神の)笈z顧 j
。
6
9
3
1 morgangihuuem
r
毎朝J
。男性単数 号怖(具怖機能 1
0
6
9
5
1 uuordun 見物機能の似放 1
]
一
時
6
9
6
1 lerun :l
e
r
aの複数与栴 fulgengun (
くf
u
l
g
a
n
g
a
n
l の目的語。
6
9
8
) giouuiht:C写本では niouuiht,
6
9
9
1 uuendun swv.wendian 1
(
1
1 まわす、転ずる 。 (
2
1 (自動詞)ヲ│き返す、 立ち去る」
(
独 wendenlの過去 3人材、複数。 この例がそうであるように 1
21の場合、 与絡の再帰代名詞を
とるのが普通 (iml。正木 s
t
v
. windan の使役 [~J 詞 だっ た ことは 220 行註に言 及
an iro
uui
1
lion:664 行 ~I を参照。
肯
6
8
6
1
1以下 、I
マデイ J(
2,
1
2
) の簡潔な記述を補足説明する詩行が続く 。特に6
8
6-6
9
3行
は東方の三博士の青動をリアルに描いて独特である 。そもそもこの第 8歌章は他の欧軍に比して
詩人(作者)ののびやかな筆致がより 目、
γつように感じられる。
〈
第 9歌章
嬰児殺害とエジプト逃亡〉
するとその後、
支配者である担1の
i
却使いがヨセフの夢に現われて、
Jのi
J
1
1
使いが
邪まな思いを L'だいた王が
探し出して
計│困していると。
御 f
ーをエジプトの
「だからお前は
そこの人身の問にととまらねばならない。
地にお連れして
お前の耳に届き、
わかるま で は.J
そこを発ち、
いつ の 日 か お 前 の 主 の 言 葉 が
ふ た た び こ の 中 な る御
お商jの 主 で あ る こ の 御 方 を
悟ったのだ。
705
かの心正しき乙女とともに
かの閑 の民の中にとどまるのだ、
飛びおきて、
その佼 11l~っている彼に
こう三ったのだ:や1の f
卵子を
その命を奪おうと
神の御子と
700
fを
、
連れもと会
っ てよいと
旅の宿でこの夢を見たヨセフは
すぐさま神の命令を.
そこでこのつわものはあの乙女とともに
大きな山を越えて
-23-
710
訳註へーリアント(救世主)
異国へとおもむいた。
神の御子を
敵から救おうとしたのである。
7
1
5
後になって
ヘロデ王はこのことを聞き知った、
自分の領国にし、た
あの賢者たちが
この西国から東へと身を転じ
彼らの故国へと
別の道によって帰ってしまったことを。
王は悟った、資者たちは
王の居所にもと守って
報告することを避けたのだと。
心は嘆きに沈んだ。
王の思いは悩みに満ち、
こうしたのだ、あの武士たちは、と。
遂に憤怒で胸がしミっぱいになって、
自分にはもっと良い
わしはその子がこの地上では、
7
2
5
決して成長することはないように
してやることができるのだ。」
この地の民の玉は
そしてこの国の支配者ヘロデ、
若武者たちに出動の厳命を発し、
多くの子供の
首を彼らの腕で打ち落とせと
命じたのであった。
生まれ、
こうして暗溶として座っていたが、
I
かの者の年令を知っておるのだ、
別の思案がわいたと告げた
年の数がわかっておるのだ。
この民の聞では
7
2
0
彼は言った、あの者どもは自分を侮辱せんとして
ベツレヘムの周辺で
7
3
0
2歳以下である子は
ひとりももらさず。
王の家来たちは。
すると凶暴なる行いをなしたのである、
数多くの幼い男の子が
罪なくして死ぬことになったら
幼い男の子たちが
これ以前もこれ以降も
これより哀れな死を遂げたことはなかった。
多くの母親が
7
3
5
これより悲惨な破滅を、
女たちは泣き叫んだ、
息子の殺されるのを見なければならなかった。
自分のもろ手で
愛する小さい子を
もろ腕で母は我子を、
抱きしめたのだが、
助けることはできなかった。
子供は母親の目の前で
命を捨てなければならなかった。
悪人どもは一向に気にせず
残忍と悪虐のかぎりをつくした。
剣の刃をもって
大きな悪事をなしたのである。
7
4
0
幼い男の子が
数多く死し、
母親たちは幼な子の死を
嘆き悲んだ。
ベツレヘムは嘆きに満ち、
7
4
5
24
訳 註 へ ー リ 7 ン ト(救世主)
悲しみの声は限りなく大きかっ た。
たとえ母親たちの心臓を
剣でまっぷたつに切ったとしても、
彼女らにとってこれ以上の苦しみは
この世に起こり得なかった 。
ベツレ へムのこの多くの交たち、
委である者たちにとっては。
彼女たちの自の前で我子が、
無残な死をとげるのを見なければならなかった、
幼い男の子が
罪のない多勢の子を。
この男たちはこん な悪行につい て
彼らはひたすらあの権勢高き
いささかのためらいも見せなかった 。
キリストご自身を殺そうとしたのである。
だが力ある神は
すなわち夜の聞にそこから
彼らの敵意から御子を救われた。
5
5
7
勇士たちが彼を連れ出したのだ、
エジプト人への国へと
男たちが ヨセフとともに、
かの緑なす沃野へ、
この地上の最善の地へと。
そこは 一本の大河が、
北の海へと流れている地である、
大いなるナイル川が
川の中で最も美しきものが。
その地に神 の平和の御子は
心のままに住んだのだった、
遂に宿命が
そしてこの領国の支配権を
かのたけだけしき男が人の営みのもとを。
にぎったのはへロデの後継者。
その 名をアルケラーウス
と言い、兜をいだく者たちの
統率者として
5
6
7
ユ ダヤの民を、人々を
この男がイェルサレムの一帯の
治めることとなった。
0
6
7
彼が人の 子たちのもとを去らねばなくなる時まで、
へロデ王をつかみ取り、
すると御言葉がエジプ トにいた
あの高貴な男のもとに達した。
ヨセフに向かつて
主なる御方の使いはこう語って
その神の天使、
命じたのだ、
0
5
7
殺人鬼たちは殺しまくった、
血まみれで母親の腕の中で。
770
再び御子をそこから
故地にお連れせよと。
へロデ王は今や」と彼は言った、
r
「この現世 の光から離れた。
お命をねらったあの王は。
かつて御子に筈意をいだき、
だから何の 気づかいもなく
御子を汝らの一族のもとにお連れせよ、
もう生きていないのだから。」
みしるしを悟り、
王は、あの不遜なる武士は
ヨセフは即座に神の
いとまを置かず旅の準備を整えた、
あの乙女とともにこの勇士は。
ふたりが御子 とともに
-25-
5
7
7
訳註ヘーリアン卜(救世 I
て
)
この地を去ろうと望んだその時すぐに。
支配者たる御方の意志を、
命じられた
彼らははえある天の定めを
rI柴 の ま ま に 成 し 遂 げ た の だ っ た 。
〔福音書その他との対応1700-7
1
0
1
1は「マタイ J2章 1
3節
、 710-714行は同 1
4節
、 7
1
5
732行は同 1
6節
、 732-7H行までは作者詩人による自由拡大よ、 744-754行までは同 1
8節
にもとづくが、大部分は自由補足文、 754-763行はほぼ問 1
4節にもとづくか、エジプトに
ついての自由補足が多し、。 763-770行は同 1
9節
、 770-775行は同 20節
、 775-779行は同
2
U
i
l。
[Tatianとの対応 19章 1節
第
3節
、 1
0章 l節
、 3節
、 1
1章 1節と 2節
。
9歌 章 註 解
7
(
)
(
l1 I
osepe I
o
s
e
p
hの与格。
7
0
1
) suuefne :<swefn=sweban,
7
0
1
1 ahtean :s
w
v
.ahtian i
追う、つけ狙う」の不定形。現代独 Achti
(法の庇護外への)追
放」、品chten i
追放刑に処する」の関連語。ケルト語とゲルマン語に共通するこの法律用語の語
i
原は未詳 この刑に処せられると一切の i
去の庇護を失なうことになり、したがって誰に殺害され
3
てもよいわけであった。この箇所でも窓味の比重は「命をつけ狙う、復讐として殺害する」にあ
る。なお a
htianは目的語として物の属怖をとる
1
i
sa
l
d
r
e
s
)0
人牛、老年 J(独Alt
e
r
) の単数属格 (
4
5、1
4
2行に既出),
aldres s
t
n
.aldari
生命:
Aegypteo 複数属格。 l
a
n
dと結ん
で匡l
名を作る
7
0
5
)a
ntl
岳dean s
ωv
.a
n
t
l
e
d
i
a
n Cj
l
iぶ、移す J
o 1
岳d
ianは554行に既出 c
7
0
7
1 uunon wonon,wunon, untthat
=a
n
t
t
h
a
t(
3
3
6行他に既出 )0
thi:与格っ
cume kumanの接続法現在 3人科 L
j
i紋
7
0
8
) h岳 町on 単数属格ご
7
0
9
) motis motanの接続法現在 2人称単紋
7
1
0
) ansprang = a
nt-sprangこ
7
1
1
1 berg:s
t
m
.i
山J(
独 Berg、 c
p
英b
arrow) の単数対絡。なお bredanbergは「巾広い山」
というより「巨大な山」ほとの,:5
1
:
'1,であろう。
f
へーリアント j には hohasb
e
r
g
o
sが 2例見られ
e
r
g
'
"b
r
在de
n
d
iho (
4
2
2
5行)という例もある。もちろん頭韻の束
る I
S
3
2
8、5663行)ほかに、 b
縛がこの表現の最大の埋由ではあろうが、まったく不自然な表現ではなかったにちがし‘ない c
7
1
5
) 白undun 複数与格。
るJ(守口独 ent-fuhren)0
SU't'
antforian
sU'['.
i
ーから(人の与格)逃がれさせる、速さけ
f
o
r
i
a
nは s
t
v
.faranから新たに作られた他動詞(独 fuhren
f
a
h
r
e
n
)。
7
1
7
) gihuuorban :s
t
v
.(gilhwerban の過去分 Il~J .~語源等は 282 行註を参照。但しここでは自
-26
訳註ヘーリアント(救世主)
動詞。
7
1
8
) odranuueg:6
8
3行註参照。
7
1
9
) uuisse:く witan,
7
2
0
) thes: f
そのことについて 4 それゆえに J
。
7
2
1
) mornondi s
w
v
.mornian. mornon i
つらく思う、嘆き悲しむ J(
英t
omourn)の現在
分詞
印欧祖語 mer
-i
思いわずらう」に由来し、 ラテン諾 memor
rを忘れない」と同系。
dedin 不規則動詞 donの接続法過去 3人材、
似数
i
r
7
2
2
) hondun :s
t
fhonda 信号事、朗笑 J(
独 Hohnl の綾数与格。 t
ehondundonで「侮与
r
する、物笑いの積にする」 。ゴート語 haunjan お と し め る 」 を 辰 古 例 と す る 動 詞 (古英語
h
i
e
n
a
n
. 古低独語 p・
h
o
n
i
a
n
. 古高生担語 honen. 現代独 v
e
r
h
o
h
n
e
n
) から作られた抽象名詞 c 原
義はゴート語 haunsに見られるように「低い J
o tho:従属桜続詞。
r
hriuuigαd
j
.h
r
i
w
i
g
.
r
h
r
i
w
i 情然とした、怒しんだ J
ohriwon 悲しむ」の αdj 現代英・重量誇てはー後悔 J に意味が
r
r
r
限定されて独 Reue 後悔 J
、r
euen 後悔する J
、英 t
or
ue 後悔する j等に残るが、オランダ語
rouwenは今も「嘆く」を表わす。
r
7
2
3
) balg:s
t
v
.(
田
ー2)b
e
l
g
a
n (対格再帰代名詞とともに)怒る、憤激する」の過去 3人称単
r
数。原義は「怒りで身体が ふくれあがる j ことらしく、そうだとする と独 Balg ふ い ごj、英
r
r
r
b
e
l
l
y 腹」、 bellow ふいご」などと同系という ことになる 。剃lb凸s
e 立脱した、邪悪な」も
r
「怒りで身体がふくれる」が原義で、 Busen 乳房 J
、英 bosomと近い関係にある。
代名詞対絡。
lna.再帰
r
i
s: このことについてん
7
2
4
) githenkien :s
ωv
.f
思いつく
J(独 er-denken), 他動詞である点が thenkianと異る。
nu 次行の nuと結んで「今やーなので Jの意の接続詞(英 nowt
h
a
t
) とも、また単なる副詞と
も解釈できる 。
can この時代 kunnanの本動詞的機能と助動詞のそ れが未分化であったこと
は2
0
8行註でふれた亡
r
7
2
5
) uuintargitalu :s
t
n
.wintar-gital 冬の欲、年敬、年令」の緩 数対格。 C写本 では
w
i
n
t
r
o
g
i
t
a
l。 冬を「年 Jの意味で用いることについて は 1
1
S行註を参照。
giuuinnan t
h
a
t
以下のニとを「やりとげる、 成就する」ほどの意で
、 1
4
3行に先行例がある。
r
(
7
2
8
) rinkos :stmιrink 若い)戦士、男 Jの後数対格 z 古いうJ ルマン語で、古英語英雄詩
『ベーオウルフ』なと主として詩に用いられるはお行既出)。
r
7
2
9
) kinda:複数属格。次の日 1
0 多数」という中性単数対格代名詞と結ぶ。
7
3
0
) handmagen :s
t
n
.hand-magan.-megin i
手の力、腕力、暴力」の単数 対格, hand
k
r
a
f
tの同義語。司
magan. -megmは動詞 mugan (
独 m凸g
e
n
. 英 mayi、名詞 maht (
独M
a
c
h
t
.英
m
i
g
h
t
J と同根で、「力、能力」の意。
hoddu:,,1m hobid r
頭、首 J(
独 Haupt
,英 h
e
a
d
)の
単数具格。奪格の機能をもち 、次の b
i
n
i
m
a
nおよび前行の kindaf
i
l
oと結んで「子供の多くをそ
の頭から奪い去る Jが直訳。 3
0
6行に先行例。
binamin b
i・
l
l
l
m
a
nの接続法過去 3人称複数。
-27-
訳註へーリアント(救世主)
7
3
1
) sof
i
l
oso:ト・である限りすへて l
7
3
2
) antu
岳m g
erun
wurdi 接続法過去 3人材:単数乞
r2級以下の j
or
マ亨イ j(
2,
1
6
) によれば「その年令は博士たちから
突き止めておいた時聞から割り出したのである J
。へロデは「一歳以下にては満足せずに二歳以下
の嬰児に及び、ベツレヘムのみにては不安であってその近辺にまで及ぼした J(黒崎幸吉 『
註解新
約聖占
マタイ伝 j
)0
atogan:s
t
u
.(
I
I
)at
i
o
h
a
nr
育てあげる、主主脊する J (
独a
u
ι
z
i
e
h
e
n,
e
r
z
i
e
h
e
n
. 英t
oe
d
u
c
a
t
e
l の過去分詞。 前行末の u
u
r
d
iと結ぶ。
tionon swm.t
i
o
n
or
悪事、
罪悪」の複数(単数?)対格)古~~昔 têona . 古ノルド語 tjón 。
現代英語(詩語)にも t
e
e
n
「悲哀、不幸」として残る。『へーリアント jには s
ωv
.g
i
t
i
u
n
i
a
nr
危害を加える J (
18
1
9行)も
見られるが、語源ははっきりしない。
7
3
3
) kindisk:
αd
j.r
幼い、若い j (
独k
i
n
d
i
s
c
h.k
i
n
d
l
i
c
h}
ok
i
n
d
i
s
kman r
幼い男の子jで
はじめて 、へ ロデが殺したのは男児だけ だったことがわかる <
rマタイ J2
1
6、には p
u
e
r
o
sr
男
の子」とある)。
7
3
4
) sueltan :s
t
v
.(m2
)s
w
e
l
t
a
nr
死ぬ」の不定形
すでにゴート語に s
w
i
J
t
a
nがあり 、古
英語、古ノルド諾等にも類語があるが、語源未詳。 5
1
1
s
c
h
w凸Jr
むし暑い J
、英 t
os
w
e
J
t
e
r i掃さ
にうたる」と関連づける説もある。
属格 (
8
6行に既出 }
o
sundiono:s
t
.
fsundia r罪 J (独 Sunde. 英 sinl の複数
l
o
s 属格支配の αd
j 詳しくは 8
7行註を参照。
sidαd
v
.s
i
dr
それ
以降 j (
守 独 自i
t
d
e
m
.英s
i
n
c
e[
くs
i
t
h
e
n
s<s
I
ddan])。
頻出する同義の s
i
d
o
rは実はこの
s
idの比較級である (
独s
p邑t
町
、 英l
at
E
'r
'
:
"
jも阿僚に比較級},
nogαd
v
.noh rまた ・も・な
、
しj(
秒
、n
och,英 n
o
r
)。同構造のラテン話 n
e
q
u
eからもわかるように印欧祖語考'
n
e
k
u
eに由来し、
ゴート語 n
i
hをはじめとしてすべてのゲルマン 諸に見ら れる αd
v
.
r
今なお、まだ」の n
o
c
hとは
語源が異る (
4
6行註参照)。低地ドイツ誇では nekという語形の方が正統であり、事実『へーリ
アント jでは nek8例に対し、 nohは 2例に j
f
aぎな L。
、 nohという形は「今なお」の n
ohとの混
同によって生じたのだろう。
7
3
5
) giamarlicaraαd
j
.j
a
m
a
r
J
i
kr
悲惨な J (
独j
a
m
m
e
r
l
i
c
h
) の比較級、単数主格。西ゲ
ルマン語のみに見られる単語で、語源不詳 o
forhang:s
t
m
.
f
o
r
-(=f
a
r
)gangr
没務、死去j
の単数主絡 (<
p5
1
1v
e
r
g
e
h
e
nr
過 ぎ去る、死去する J
)o iungaroαd
j
.jungr
若い J (
独j
u
n
g,
英y
oung)の緩数属格。
7
3
6
) armlIcaraα d
j.a
r
m
l
i
k r民れな j (
守主主 a
r
m
l
i
c
h
) の比較級、単数主格。7
9行 e
r
b
i
生
(lE
r
b
e
) の註で説いたように 、語源は 「孤児のように哀れな 、貧乏な Jであった。
dod:
s
t
m
.r
死J (
独 Tod,~death)o s
w
v
.d
o
i
a
nr
死ぬ J (~to d
i
e
) とともに、原義は「意識・感覚の
なくなること」で、独 t
a
u
b
. Dunst. dumm. t
alJなどと同根であるらしい。ドイツ語圏ではこ
の動詞は中世末まで用いられたが、後に s
t
e
r
b
e
n系統に取って代わられた 乞英 t
od
i
eは北欧諸系
である
uuiopoun s
l
v
.(
V
J
I
2
lwopian r
l
嘆き悲 しむ J (
英t
oweep) の過去 3人称被数。ゴー
ト語 w
opianr
大声で叫ぶ jの用例から見て 、おそらく擬音語であろう。
-28-
訳註ヘーリアント(救│吐主)
7
3
7
) modar:後数主格。
s
p
i
l
d
i
a
n:s
叩 v
.
megi:maguの被数対栴 (
1
6
5行註参照)0
「打ち殺す、殺害する Jの不定形
古ノルド語、古英語、古高独語にも類語があり、語源はおそら
く「打ちJ!l
J
Iる、裂く Jで、独 s
p
l
e
i
s
e
n
.S
p
l
i
t
t
e
r
. 英t
os
p
l
i
tなどと同根 r この文は、 modar'"
r
の意で、
g
i
s
a
h
u
n
l
'
"g
i
s
i
d
o
si
r
omegis
p
i
l
d
i
a
n 母親たちは家恥たちが我が子を殺すのを目にした J
g
i
s
i
d
o
sが略きれていると考える。
7
3
8
)s
i
u:女性単数主格。多くの母親の行為を単数形で代表させている (
s
i
n
g
u
l
a
r
百 p
r
ot
叩旬)。
im:単数(?)与格。次行の barnとも前行の megiともとれる。
r
ともに) …を助ける」の不定形。白川よぷ
う、支持する」と関連するか?
giformon sωυ(与格と
r
r
古英語の f
eorm 栄養、食事、利点」、 f
e
o
r
m
i
a
n 養
thoh :従属接続制。 7
4
0行の thohは副詞。
fadmon
s
t
m
. (複数) fadmos r
(のばした)両手(両腕)Jの与格。「手をのばす」意の印欧祖語、e
t
-に由
r
r
(
1
)"
,
.
;
,
、
athom 尋〔ひろ )
J (水深単位、両手をひろげた長さ)、独 Faden
来し、現代英語 f
(2)
糸(元来はー尋の長さの糸 )
Jに残る。したがって本来は「のばした腕」をな味したと思われるが、
『へーリアント jでは既に単なる「両手、両腕Jとなっている c
7
3
9
) armun 前行の fadmonとともに midに支配され、複数与格。 fadmosの言い換え 3
b
i
f
e
n
g
i:b
i
f
a
h
a
nの接続法過去。
r
7
4
0
) simbla:
αd
v
. 常に、いつも」が原義だが(77行設参照)、「いつにせよ→いづれにせよ」
を経て「しかしながら」という逆説の意をも帯びるようになった(独 lmmer→ immerhinを想起
させる)。
7
4
1
) menes 8
.
+行註参照。次の sehanとの関係で .1;1,怖になっている
sahun sehanは
属格の目的語をとって「考慮する j
。
7
4
2
)u
u
i
t
i
e
s:1
6
4行註を参照。
r
uuamscadon s
即m
.wam-skado 悪人、無法者」の複
r
r
数主格。 s
t
n
.wam 悪事、犯罪」と s
ω m.skado 悪人」とから成る
前半部の、ゴート語
r
wamm 欠点、汚点」をはじめとしてすべてのゲルマン語に見られる wamの語源ははっきりし
r
r
ないが、「汚物、傷 J(たとえばラテン語 vomo へとを吐く
J
) が原義とする説が魅力的である。
kat(j)an 危害を加える」から作られた行為者名詞。独
後半の skadoは、ゲルマン祖語不 s
r
r
S
c
h
a
d
e
(
n
l 損害」、英(古) s
c
a
t
h
e 損害」などに残るこ wam-skadoという類語反復的表現は
50、2993行など)。
「悪人」の他に「悪魔」や「悪霊」の意にもしばしば用いられている(10
uuapnesaggiun:6
4
5行に既出。
7
4
3
) firinuuerc s
t
n
.f
i
r
i
n
w
e
r
kの語源は 2
8行註を参照。
r
7
4
4
) ma
♂liungeαd
j
.ma思l
j
u
n
g 幼し、男子の、幼童の Jの複数主格二
I
4
5
) kindiunagaro 1
6
7行の例と同じく、名詞化形容詞、複数属格
r
r
qualm.s
t
n
. 死
、
r
殺害」の単数対格。「刺す;刺すような痛み」を原んとし、独 Qual 苦痛」、 q
ualen 責めさい
r
なむ」、英 qualm めまい、吐き気、良心の痛み Jなとに残る。
c
a
r
e
)。
29-
cara 4
9
9行に既出(英
訳註へーリアント(救世王)
」
嘆き叫ぶ
hioban r
n)
r
.(
u
t
a 嘆き の声」の総数属格。s
n
f
o
fh
l
) bofno:s
6
4
7
から作 られた
名詞 。既にゴート語 hiufanに見られるこの語は、 karaと同じく擬音だったと思われる 。
r
d)の最上級、単数主格。
u
o
fl
J
.1
t
u
a
独l
hlud 声高の J(
.
bludost:αゅ;
man 不定代名詞ー
o
r
綴数与格、いわゆる「所有の与格」で、母親たちを指す。ただし C写本にはなし、。 i
im 0;
r
o antue :390行註参照。
herton: 彼女たちの心臓を J
r
独 schneiden) の 接 続 法 過 去 3人称単数。語源不詳。
. (1) 切る J(
u
l
7471snidi s
. 英 sword)の単 数 具 格 語 源 不詳
t
r
e
独 Schw
剣J(
.swerd r
n
t
suerdu s
j
岳raraαd
s
痛苦」以来この系統の語は
rr
i
a
e)の比較級、単数主格。 ゴート語 s
r
o
英s
、 つらい J(
痛い
err
s
r
.verehr 痛 く→ひ とく →非常に J
全てのゲルマン語に共通に存在する c ドイ ツ語では αdu.s
心が痛い 、遺憾な j に残る。
口γ 「
o
傷つける j に、 また英 s
ehrenr
s
r
rudiun 委 Jとともに 複紋与総
ï~8 ) uuIbun 次行の b
前行の imの具体的説明語 3
r
) biforan: わが目の前で」。
9
4
7
皿 u 具格。
) qual
0
5
7
r
nに
r
a
) の中性複数対格で、 749行の b
y
d
o
o
l
ig.英 b
t
u
独 bl
. 血まみれの J(
j
αd
) blodag:
751
対する補語となる。
aで、男性複数対格形、したがって 750行の manの補語とい
g
a
d
o
l
,)本では b
.
c
うことになる τ
barmun 216行に既出 ψ
banon :644行に既出 。
uUItnodun
1行に既出。
0
5
r
) の単数対陥
g
i
d
l
u
h
c
s
n
ig 罪のなしづ(独 u
d
l
u
k
s
n
21unsculdig:adJ.u
5
7
gは名詞
i
d
l
u
k
s
r
.
l
l
a
h
英s
kulan (
dの双方と もに動詞 s
l
u
k
g.s
i
d
l
u
k
(:罪Jの派生語であるが、更に s
'
d 負h
l
u
k
s
n等の締約 された新形である
a
ol
c
lan.s
nは sku
ole
) に由来する。ちなみ に怨 s
en
l
ol
独s
この語
は元来、主に金銭(や行為)についての債務を表わしたが、後にキリスト教の普及によって精神
的・宗教的な義務、f.'(務、また過失、罪、をも表わすようになった。犯した罪に罰金を払うとい
う教会の慣習は従来のケルマン人の法慣行にも合致したから、いっそう容易にこの意味拡大はお
こなわ れた 。
r
.skola 多勢」の単牧対格 IC写本は scola)。
f
t
scole:s
.
l
a
o
h
現代英語 s
r
す校→教
ai
l
o
h
c
l (魚の)群れ ;群衆」 に残るこの諾の由来を悶ugeは、後期ラテン語の s
o
o
ch
s
J
e"
l
u
ch
S
師や生徒の集団→一族郎党、軍勢 j から説明している(Wb."
)
1
.(
u
t
biscribun:s
r
nとの関係
a
h
i
r
k
FくJs
l
ban 考慮する、自制する、控え目にする」の過去 3人称稜数。 ,
i
r
sk
ib
はわかりづらいが.古英語 scñfan にも全く問機に 「 考 ~~まする 、気づかう J の 意味があ り 、 I ヘー
「司祭が規則を書い て示す→ (書式 によって)償い
リアント jのこの箇所への影響が想像される 。
の苦行を課す→告解を課す→告解に行く、~!lを悔いる→気づかう」というような経過をたどった
罪を告解する 」と して残ってい
er
v
i
r
h
os
anは現在 t
f
i
r
c
のではなかろうか三 この意味の古英語 s
nなども参考になろう。
e
b
i
e
r
h
c
s
r
o
. 独v
e
b
i
r
c
s
e
r
る。英 p
,
iskribanと結んで 「ーに関 してJ
) umbi :b
3
5
7
r
-werk 悪事」
凡 m岳n
t
menuuerk s
4行註を参照。
idなどが関連語)につい ては 8
e
in英 mean.独 Me
の単(複?)数対格むm岳n (
- 30-
訳註
へーリア ン ト(救世主 )
r
7
臼 )a
quellian swv. 殺害する J
o745行の qualm r死、 ~i: ';りの 11\1 連結 で Mquälen にも近
、
し
合
7
3
3-7
5
4行まで 2
0行余の生々しい嬰児殺害の揃写は 、福音書や註解、また T
a
t
i
a
nにもも
とづいておらず、作者の独創性がよく I
f
lている筒所である つ (後の O
t
f
r
i
dも大巾に内幸子をふくら
ませ、とりわけ母親の悲しいあらがし B を活写 した 36行におよぶ詩節を作ってい る,) 詩人の筆
は冴え、多くのゲルマン系頭鯛語を司、々と駆使してリズミカルであり、戦闘描写 に長じたゲルマ
ン古詩の一部を聞く息いすらする 。 同じことは第 5
8歌章でベトロか大祭吉]の下男の耳を切り落す
(
4
8
7
1行以下
r
ヨハネ J1
8,
1
0
) 場面にも当てはまる。組めて簡潔な福音書本文以外の資判
、
た
とえば造形芸術からの影響が強いと思われる 。 もっとも嬰児殺しのモチーフは、初期中世におい
てはロー 7 のサ ン
・ 7 ジョーレ教会のモザイク画、 ピザンツの象牙細工などに見られるが、まだ
数は少い。 このテーマが盛んになるのは盛期中世以降である 。少々深読みをすれば、残虐 なサ ク
セ ン戦役の記憶がまだ生々しい聴衆を意換した 詩人が、いっそうの効果をねら ってこのように作
詩したとも考えられよう。あるいは、新約笠 !
;
J
でほ緩めて f
R
iな闘争場面に当って、ゲルマン詩人
として畿の走りを押さえることができなか った のかもしれない。
r
7
5
4
) gineridan:s
山v
.(
g
i
)
n
e
r
i
a
n 救 う」の過去分詞、男性単数対格形
f
直訳は「神が彼を
救われた者 として持った」。完全な過去完了時制にはまだ至っていない格文である(ただし C写本
はg
i
n
e
r
i
dとなっているん nenanの語源等は 5
2
0行の neriandas,g
i
n
i
s
tについての 註を参照。
uuidi
r
onide
照
。
r
彼らの敵意にさからって、防いで J
onid (
独N
e
i
d
) の語源等は 2
8行註を参
inan i
n令高地ドイ ツ語形で
、 M写本にこの 1例のみ見られる 。 nahtes:4
2
5行に既
出。
7
5
6)e
r
l
o
s
'
" gumon
からとも 考え られる
あたかもヨセフた ち に多くの従者がし、たかのようである 。 ~.!i在員の必要
antleddun :< 問 中 an
t
I
e
d
i
a
n,
r
7
5
7
) groneonα d
j
.groni 緑の J(
独g
run. 英 g
r
e
e
n
) の男性単数対格。おそ らく英 t
o
grow (古高独 gruoen,中高独 g
r
u
e
j
e
n
) の関連語で、原義は「成長する 草の(ような )
Jであっ
たろ う ここから 「
緑の」となり、またそれは春の色であることから「希望の 、喜 びの」という
p
意味をももった。この箇所もそのようなニュアンス を帯びている。
r
uu
姐 g:
s
tm.
wang 野
、
r
草地、平野J
。語源等については 2
7
5行 heban-wang 天国jの註参照。すでにゴート語において
waggsは「天国 j を意味しており、この箇所においても「天国に類する緑したたる沃野 Jという
ニュア ンスがある 。
7
58
) aha:s
t
f
.r
水、流れ、川、湖水」。 印欧祖語格 a
qua- r
水」に由来し(ラテン 語 aqua)
、
ゴート語 ahwa以降すべてのゲルマン諸に笠場する。ドイツ語では河川名
Ach,Aach. S
a
l
z
-
r
a
c
h
.F
u
l
d
aなどに残る。また関連誇として Auや Aue 水辺の地、草地、半島、島 J
、Gau (<
r
G
e
a
u
) 沃野地帯→地方、州、ガウ」がある 。サンスクリット諾から日本語にも仏教用語として
「関伽」が入 っているのは周知の通り。
r
f
l
i
u
t
i
d:s
t
v
.(n)f
l
i
o
t
a
n 流れる J(独自i
e
s
e
n
.英t
o
-31一
訳註へーリアント(救世主)
f
l
e
e
t)の現在 3人称単数。
7
5
9
) Nilstrom s
t
m
.N
i
l
s
t
r
o皿 「ナイル川 J
ostrom=独 Strom、英 streamo
nord
αd
v
.r
北方へん方向指示の接尾辞ー o
d
.r
o
dは既に頻出 (
h
e
r
o
d
. thar-od等
、 62行註)。
s
晶uua s
t
m
.s
e
o・s
e
ur
海、湖 J (
独S
e
e
. 英s
e
a)の単数与格。
語源のはっきりしないこの語
はすべてのゲルマン語において男性名詞だ ったが、古英語、中低独語では女性となることも稀で
はなか った 。ゴート語 s
a
l
W
Sは「湖」で、 mareisr
i
毎」とは区別されていたが、他のすべてのゲ
r r
ルマ ン誇では(ちょうど日本語の「うみJiみず うみ」のように) 海J 湖」の双方を表わしてい
た。現代独の d
i
eSee r
海J
、d
e
rSee r
湖」という区別は 1
6世紀以降で、この時代に南北の交流
がおこかそれまで r
i
胡j しか知らなか った高地独語が r
i
毎J を指す新語として低独語の d
i
eS
e
e
を取り入れてからである 。
7
6
0)伺odo:s
t
f
l
m
. r(
大量の水の強い)流れ、河川 1
;洪水 J (
独F
l
u
t
. 英f
l
o
o
d
) の複数属絡。
758行の f
l
i
o
t
a
nと同 i
原 作p
l
e
u
-r
流れる J
)0
r
強い水流 Jが原義であることは 、今 日でも
F
lut
e
nd
e
sRheins r
ライン )
1
1の治々たる流れ」などの表現にうかがわれる 。
*
756、7行ではヨセフを助ける仲間の武者たち、あるいは従者たちがいたかのような筆致に
なっている。ザクセン貴族を主体とする聴衆の耳に快いような堂々とした「撤退」に模様変えし
だ方がよいと、詩人は判断したのだろう。 757行から 760行までの、エジプトをまるで地上の楽土
(
ゲルマ ン人にとっては「緑の沃野 Jg
r
o
n
iwang)であるかのごとく描く数行も、 「マタイ」等 に
は見あたらなし、。 f
へーリア ン トj作者はこの肥沃なナイ J
レ平野について、相当の知識と好感とを
もっていたよう である 。ひょっとすると彼の身近に 、エ ジプトを実際に訪れたことのあるアング
ロ ・サクソンかフランク族の修道士仲間でもいたのかもしれなし、
7
6
1) anu
uilleon 664行註参照。
uurd:8tf
.wurd r宿命、運命 J (英 weird)0 127行、
1
9
7行に wurd
トgIs
capuとして既出 。E
印
H欧祖語
U
i
千
!
円
巴
「有為車転王変」坤か‘ら「宿命、運命」になったと思われる。古ノルド語には運命の女神 Urdrが登場し、
ローマ神話の f
a
t
aのごとく、固有名詞とも普通名詞ともつかぬ働きをする。あるいは『へーリア
ント j においても、 wurdにはそのようなニムアンスが含まれていたのかもしれない。
forna
皿 :s
t
v
.(
N)far-niman r
取り 去る、奪い取る Jの過去 3人称単数。
762)e
ldeobarn:408行に既出。
763)modag:
αd
j
.男性単数主格。前行 heの説明語。 drom 単数対絡 ・「人の営み、人生 J
o
5
78行既出。
marca s
t
f
.marka r国境、辺境、領土 J (
独 Mark. 英 mark)の単数属格。
「国境のしるし」が原義で、ラテ ン諸 margo r
境界、へり J と同系 。 Den-mark'
(
>Mark
Brandenburgなどの国名や地名に残るが、 ドイ ツ語においては「国境」という普通名詞としては
スラヴ語系の Grenzeによって取って代わられた(中世末期 )0 r
国境のしるし(を定める)→し
るし(をつける)Jという変化を経て、「刻印が押された金銀ののベ棒」→「マルク J(通貨)、
Marke r
商標」、 m
arkierenrしるしを つける」などに至っている。ただし後の 2例はゲルマン語
-32-
訳 註 へ -1)7ン ト(救世主)
r
8行に
2
.(giJmarkon 定める Jは 1
ωv
からいったんロマンス話に入ったものの逆紛入総である 。s
既出。
。へロデ大王 とサマリア女性との間の 子ュ紀元前 4年から
chelaus:人名 「アケラオ j
) Ar
4
6
7
後 6年まで在位。
r
) helmberandero:名詞的現在分詞 helm-berand 兜をかぶっている者、戦士」の複数
5
6
7
属格。「戦士」の詩的な言いかえ(いわゆるケニン クkenning) としてはこの他に、 helm-
8行に既出 c 古英語や古ノルド語にもよく見られるゲルマン
旬。「兜の同盟者、従士団」が 5
s
o
r
t
i
g
的表現
iと呼ばれている)。
r
e
b
m
l
a
j
dinが H
エ ッ ダ jでは主神 O
(
r
. 男性単敏与格e
j
) Egypti :与格。m は次の manneにも かかる ー ediliunαd
8
6
7
) that:指示代名詞、中性対格。前々行の wordを受ける 。
9
6
7
loC写
i
g
n
se
he = gode
eはない。
本にはこの h
4行註を参照。属格目的語をとる 。
0
) ahtien:7
2
7
7
3行に出た合在日「危険、
6
o2
害する;つけねらう J
. (属格目的語をとって) r
ωv
) 仕岳 80n s
3
7
7
危害」の近縁語だが語源不詳。
lの所有代名詞
) euua iuwaとも。 2人称複数 g
4
7
7
接続詞・「今ゃ
3行の nuとは呉って従属
7
nu 7
。
なのでJ
r
)0
g
i
.obar-modig 不遜な、供倣な J (独首ber-m凸t
α dj
5)obarmodig:
7
7
obar-modとも c
sの影響でできたとは必ずしも言えないが、この語が否定
u
i
b
r
e
p
u
.s
a
i
b
r
e
p
u
この語がラテン語 s
的意味をもっているのには、教会ラテ ン語の影響が大きかったであろう。
r
n 仕度させる 」の過去 3人称単数。対格再婦
a
i
w
)
i
.gar(u)wian.ger(
v
w
iuuide:s
・
r
e
)g
6
7
7
) をともなって「仕度する、準備する J。
a
n
i
代名詞 (
r
o
. すぐさま、即刻 J
v
sniumoαd
) barnu:具格。
8
7
7
73行、595行註 に既出 c
語源等は 2
7行に笠場。
3
oという語形で 1
m
u
i
l
s
nの過去複数。
a
i
t
s
e
lestunく l
thiuberhtongiscapu
輝
r
7行に既出の表現。
6
かしい(天の)定め」べ 3
) 針 :M写本では than。
9
7
7
安
4年)の
81
へロデ王の死をめぐる描写の中に 、ザクセン人の宿敵だったカール大帝の死 (
),
9
2
Murphy. p.
記憶がひそんでいるという説もある (
〈第 10歌章神殿のイエス〉
さてヨセフとマリアは
天の 帝 の
ふたたびガリラヤにもどった、
あの聖なる一家は。
-33一
780
訳 註 へ ー リア ン ト (救世主)
そこで救い主キリストは
そしてナザレの町に住んだ。
その地の民の聞で成長し、
町ちた。
i
叡智にi
神の恵みが彼の tにあり、
母方の親族の誰にも
愛された 。
5
8
7
その子は立派さという点で
2歳の年数を
彼が 1
他のどの男児も比べようがなかった
数えたとき、
あの時期がやってきた、
イェルサレ ムにおいて
すなわちユダヤの民が
神のお望みになることを
彼らの大いなる神に仕え、
その時にはイェルサレムにある
果たすべき時が。
ユダヤの人キの
かの神殿の中に
そしてマリアも
大群衆が集まったのだ。
彼女の息子、
みずからその人々とともにあり、
神の御子も母とともにあった 。
彼ら、その 高貴 な人々は、
国のならわしのままに
彼らの律法が定めているとおりに、
勇者たちは、予定のとおりに 。
ところがその神殿にとどまったのだ、
母親の方はそんなこととは
強力なる神の御子は。
-iに知らなかったのであり、
、l
本
人々とともに先発したと信じていた、
この後、翌日になってはじめて
母親の知友にまじって。
貰い生まれの女性、
0
0
8
聖なる乙女は
知ったのである。
彼が一行の中にいないことを
心配で7満ち、
胸は悲しみで閉さされた、
かの聖なる御子の姿を
人々の 聞に見出せなかった その時に。
嘆き悲しんだ。
5
9
7
ふたたび、その所を去った 、
犠牲をささげ終えると、
マリアの心は
0
9
7
神のしもべである乙女は
5
0
8
かくして再び彼らはイェルサレムにもとcった、
彼らの息子を探すために。
息 fを見たのである。
そして神殿の中に座している
そこでは賢き男たちが、
非常な英知をもてる者たちが、
この世を創 造 されたお方に対し、
讃美をおこなうべきか、
は、どの ようにして
律法を読んで、
彼らの言葉をもって
0
1
8
学んでいるところであった。
その一番中央にいる者たちの中に
神の力強き御子、
すべてを治めるキリストは座していたが、
この神殿を守る人のだれひとりとして
34-
へーリアン ト(救陛主)
訳註
気づいてはいないのだった。
その子の何者たるかに
熱意もあらわに賢人たちに
そして子供は
5
1
8
彼らはみないぶかしく思った、
賢い言葉を問うていた。
そのような言葉を
いかなるわけで、こんな幼童が
みずからの口で発することができるのかと。
母はその人身の中に
人々とともにいる我子に、
息子が座っているのを見ると、
このような言葉で呼びかけた:
賢き人である息子に
0
2
8
この母に
「最愛の子よ、お前はどうして
こんな悲しいことをする気になったの? 私はとてもつらい思いで、
この町の人々の聞を
あわれな打ちひしがれた状態で
お前を採し歩いたのだよ。 J するとその子は母にこう答えた、
賢い言葉をもって
何ですって、
I
ぼくがもともと喜んで住むはずの
5
2
8
ιころに、
治めているところに、
力強いお父さんが
もうとっくに
そこにぼくが行っていることは、
わかっているはずでしょうに。 J そこに居合わせた男たちには、
なぜ彼がそんな言葉を口にしたのか
神殿の人身には
マリアは息子が語ったすべてを、
わからなかったが、
ひとつも忘れることなく
その賢い言葉の逐ーを
それから再びヨセフとマリアは
胸の奥に収めたのだった。
後にした。
イェルサレムの町を
ともな って。
主なる神の御子を
ありとあらゆる子供の中で
これまで人間の母が生んだ
神みずからの御子であるその子も
へりくだ、った気持をいだいて
この近親の者たちに、
いつも従順でありつづけた。
子供であったその聞は
人命に自分の大いなる権力を
知らせようとはしなかったのだ、
つまり自分がこのiiJ:に対して
かくも大きな力を持っているということを。
おとなしくこの世の人身の問で
その後はじめて
5
3
8
彼らはその子に対し
最善の子を連れて。
心清らかに愛情をそそぎ、
彼の両親に、
0
3
8
むしろみずから進んで
30年の間待ったのである。
ひとつのしるしを世に示し、
35一
840
訳註へーリアント(救世主)
人身に、彼こそが
すべての人の主であることを
神の聖なる御子は
あらゆる知識の
語ることになった。
このようにして、バ葉も叡智も
最大のものをも、
またきわめて明敏な思いをも
隠しておられたのだ、った。
だれひとりとして彼の語ること、
そんな叡智の持主とは、
気づきはしなかった。
合図を待っていた。
彼の言葉を聞いても
8
5
0
この少年がそんな思いを持っているとは
こうして彼はつつましやかに輝やかしい
いまだその時は至っていなかったのだ、
この地上世界において
自分の身を明らかにし、人々に
信仰の保ちかたと神の意志の実現とを
しかしこの国の中には
教えるべき時は。
彼がこの世の光の中に到来したことを
知っていた人は少なくなかった〔
だれもはっきりと
8
4
5
この世界における
8
5
5
彼みずからが明らかにする時まで
識ることはなかったのではあるが。
〔福音書その他との対応) 7
8
0-7
8
2行は「マタイ J2章 2
2、2
3節
、 7
8
2-7
8
5行は「ルカ J2
章 40節
、 786-789行は同 4
2節
、 790ー 792行は解説的補足、 793-802行は同 4
3、4
4節
、
8
0
6-8
0
7行は同 4
5節
、 8
0
7-8161
fは同 46節
、 8
1
6-8
1
8行は同 4
7節
、 8
1
8-8
2
4行は同 4
8節
、
8
2
4-8
2
8行は同 4
9節
、 8
2
8-8
3
0行は同 5
0節
、 8
3
0-8
3
2行は同 5
1節後半、 8
3
2-8
3
9行は同
5
1節前半、 8
4
0-8
5
8行は Bedaの「ルカ」註解なとによる補足。
(Tatianとの対応 )11章 4節
、 1
2章 l節 -9節まで
J
第 10歌 章 註 解
7
8
1
) hiuuiski 1
6世紀に f
a
m
i
l
i
aという外来語がゲルマン語に定着する以前のこの話の使用
5
6行註を参照。 h岳l
a
gh
i
w
i
s
k
iI
聖家族 J(=S
acraf
a
m
i
l
i
a
) という表現は 5
3
3行にも
については 3
登場。
7
8
2
) im:いわゆる「関心の与栴」こ
7
8
3
) uuohs :<wahsan
ぅ
g
i
u
u
i
t
t
i
e
sf
u
l f
u
lが属格目的目苦をとることについては 2
6
1行
註を参照。 g
i
w
i
tは単なる知恵ではなく、キリスト教の理想としての叡智。
7
8
4
) an:wasanimuであるべきところニ anとa
n
s
t,a
l
l
u
nに頭韻を踏ませるために文頭に置
6
1行註を参照
いたか? anst 独 Gunstとの関連については 2
7
8
5
) modarmagun stm.modar
-36
allun 複数与格。
訳註へーリアント(救世主)
rI
縁組みによる親戚」を見ると、「義理の親族Jが原義だっ
「義理の息子、婿」、古ノルド語 m品g
たように恩われるが語源未詳。古英詩 magや古高独語 magでは古ザクセン語と同じく「親戚一
般」となっている。さてこの箇所で、イエスが「母方の身内に愛された」と記されていることに
) タキトゥスが『ゲルマーニア J(
2
0章)で市いているように、ゲルマ
ついては諸説があるが、 1
ン人の聞では母系制の名残りが強かったこと、 2) 新約聖;1;:の IJi~述はヨセフに薄〈マリアに厚いが、
f
ヘーリアント jはいっそうこの傾向が強いこと (
4
3
8行註参照)、などが理由として考えられる。
7
8
6
) godi :fI
立派さ J(
独G
ute), g
'
岳r
t
a
l
o:8tn. g
eト t
a
lまたは 8
t
.
fger-talaI
年数J(
独
Jahreszahl) の複数属格。類似表現として thesgeresg
i
t
a
lが 1
9
8行に、 w
i
n
t
a
r
g
i
t
a
lまたは
w
i
n
t
r
og
i
t
a
lが 7
2
5行に既出。
7
8
7
)t
u
u
e
l
i
b
i:数詞 t
w
e
l
i
fが名詞として 1一変化したもの。
7
8
9
) thiodgode: I
万民の神」。単数与格。 t
h
i
o
d
-のじ I
q
、については 2
8
5行註参照。
7
9
2
) 皿 ancraft:8ff man-kraft I
多数、多勢 J
oI
多勢」の意の k
ra
氏は既に 4
1
5行に登場。
7
9
3
) angisidea:8tn.g
i
s
i
diI
多くの人々、一族の人たち Jの語源等は 1
8
5行註に既述。
7
9
5
)岳 山 岨
8tm 色o I
律法」の単数与格。 3
0
7、5
2
9行註を参照。
gibod:♂
ーb
i
o
d
a
nの自
動詞的用法「命じられている J
o529行に既出。
7
9
6
)g
i
l岳s
t
i
d:7
9
4行末の habdunと結ぶ過去分詞。
「その国の流儀、風習」の(弱変化)単数与格。
i
皿
landuuisun 8t
,
.
f 8山
正 land-wisa
f
a
r
a
nはしばしば与格再帰代名詞をとも
なう。
7
9
7
) afstod:<aιstanまたは a
f
s
t
a
n
d
a
n1
)
苦手主る」。
7
9
8
) so :結果を示す(~虫 so d
a
s
),
7
9
9
)n
iuuissa:前行の i
n
a.
.
.
t
h
a
rと結んで「彼がそこにいるとは知らず」。
8
0
0
) 仕iundun: I
愛する者Jとし寸原義 (
4
1
0行註)から、ここでは「親戚、縁者」。
8
0
3
) Mariun:与怖
8
0
4
) hriuuig:7
2
2行に既出。
8
0
5
) gornoda :<8WU. gornonまたは g
n
o
r
n
o
n
. grornonとも。「嘆き悲しむ」。
語源未詳。
擬音語か?
8
0
7
) sokean:目的的不定詞(独 umzus
u
c
h
e
n
. 英国 o
r
d
e
rt
os
e
e
k
)。
8
0
8
) theuuisaman 複数だから wisunのはずで、事実 C写本はそうなっている。
8
1
0
) lasun :8tU.れ )l
e
s
a
nI
読む J(
独l
e
s
e
n
) の過去複欽
「読む」といっても恐らくは音読
だったろう。ラテン語 l
e
g
oI
拾い集める;読む」の翻訳語であり、 l
e
g
oと同じく「拾い集める」
が原義(独 A
u
s
l
e
s
eなど )0 I
文字をひとつずつ目で拾し¥それを音読する」ことだったが、印刷j
術の発展とともに黙読に転じたと考えられる。
t
ol
e
a
r
n
) の過去複数。原義は
linodun 8
ωu
.l
i
n
o
nI
学ぶ J(
独l
e
r
n
e
n
.英
I
(前人の)足跡をたどる」で、 I
邑s
t
i
a
n(
独l
e
i
s
t
e
n
)
.l
e
r
i
a
n(
敏
l
e
h
r
e
n
).現代独語のGle
i
sI
軌道、レール」などとも向語源。
3
7一
訳註へーリアント(救世主)
eの先行詞。
h
) the皿:指示代名詞、男性単数与絡で関係代名詞 t
1
1
8
giscop
)
I
V
.(
u
t
くs
r
)。
e
p
a
h
os
n,英 t
e
f
p
o
h
c
独s
n 創造する j (
a
i
p
p
e
k
s
i
g
まん中にいる、中央の jの名詞化複数与待。つまり厳密
ir
d
d
i
.m
j
2)山 ldar皿iddiunαd
1
8
には 「中央にいる人々の聞に」の意であるが、ほとんど「人々のまん中に」に近し、
) 何ひとつーなかった」。
s
i
ところが彼らはキリストについて (
..uuiht: r
.
stheani
) soi
3
1
8
eの先行詞。
h
aは賢者たちを指す指示代名詞であり、同時に 次行の関係詞 t
e
h
t
) thesuuihes:wardonの属格 目的語。
4
1
8
awordo)をとる
r
e
s
i
w
e) と物の属格 (
i
s
) fragoda :人の対栴 (
15
8
αdu
o:
c
i
l
t
i
u
u
i
r
i
f
r
)
i
r
i
f
du 原義は「前もって (
t 知識欲、好奇心Jの a
i
w
i
r
i
.f
n
t
os
知識欲旺盛に j
oi
k
i
l
t
i
w
i
r
i
f
)j であるが、後には
t
wi
知ること (
必要以上に )先ばしって知りたがること Jのよ うな喜子定的
(
r
r
g
i
z
t
i
w
r
u
g,f
i
z
t
i
w
r
o
j.v
orwitz (不謹慎な)好奇心、出すさ jやその αd
意味を術び、現代独の V
などに至って いるε
,
(賢者たちの)賢い言葉を求めて J
r
」 の名詞。
言う
.quedanr
u
t
6行に初出の s
1
言辞、言説」の複数対情。 1
.r
m
t
) quidi:s
7
1
8
思
nr
a
i
n
e
m
)
i
g
.(
v
w
岳nean s
gim
。
独 Mund,英 mouth) の具格
) 皿色 du mud (
8
1
8
nの 目的語)
o
g
a
r
f
6)uuiserauuordo 複数属倍 (
81
独 melnen,英 ωmean) の不定形。
う;話す j (
r
n泣
a
t
o
i
r
g
u.
t
grusen,英 ωgreet) の過 去三s
主U
声をかける j (
ni
a
i
t
o
r
.g
ωu
) grotta:s
9
81
くJと同根で、原義は
相手に)声を発せしめる 」だったらしい。古英語や古高独・中高独語で
(
i
壊する j の意味もあり、決して単なる「挨拶 j の域にとどまるものではなかっ
挑発する :攻!
は 「
。
こ
T
j または名詞化 「賢者」で、 sunuの同格説明と
d
0)uuisan:前行のIrQ sunuにかかる a
2
8
考えてもよい。単数対格。
) liobosto:呼びかけ。 mannoの manは「人間」の意で「男」ではあるまい。
1
2
8
r
. (ある人に)ある仕打ちをする、おこなう」。ゴート語や古前独語に
山 v
) gisidon :s
2
2
8
決める 」の意で同様と思われる動詞が存在するが、それ以上の語
遂行する 」の意で、古英語に 「
「
源は未詳。
時
r
r
r痛
e
7行に 既出の s
4
gは 7
a
r
e
os
.serag-mod つらい思いで j
j
ragmodαd
e,soπy等)と附根 コ
r
o
,英 s
r
h
e
守 独s
い、つら いj (
.huggianの過去
υ
ω
ugdigはs
。後半ー h
哀れな 思いの J
j.arm-hugdigr
αd
) armhugdig:
3
2
8
分詞からできた接尾辞。
con
品s
r
r
n 要求す
e
h
c
s
i
e
,独 h
oask
英t
ωu.eskon 尋ね求める j (
s
no
o
c
s
i
nに影響されて後に ついたもので、古高独語では e
e
s
i
e
nの か は h
e
h
c
s
i
e
)。独 h
るj
r
i 城下町の人々」の与格。ここでは「イエルサレム
d
u
i
l
g
r
u
.(複)b
m
t
) burgliudiun:s
4
2
8
の町の人々」の意。
6行に初出)。
5
5
5)huuat:間投詞「まったく、 実に、確かに j(
2
8
1)では常に
4
2,
ルカ j (
2行以下この箇所に至るまで、またも や父ヨセフ の不在が目立つ ,i
9
女7
-38-
へーリアン卜(救世主)
訳訂
「両親」と記されている箇所も、あたかもマリアひとりがそこにいるかのように占かれている 。マ
リア崇拝の進展がうかがえる。
詞。
J
7行も )は関係自I
2
8
. 後の thar (
.
u
harは αd
) thar,…thar 前の t
6
2
8
girisu
r
nは現代
a
s
I
i
r
)
i
g
n 妥当である、 ふさわしい$ に属する 」の現在 l人称単数 o(
a
s
I
r
)
i
g
(
(1)
.
u
t
s
e,回目eと同系で「身を起こす」が!阜み
s
i
or
英t
birehton
で至る。
旅をする」にま
nI
e
s
i
e
「動く、移る」を経て独 r
r
独
.reht.正義,権限;義務 J (
n
t
o rehtonは s
I正当性をも って J
t)の桜数与絡
h
g
i
t,英 r
h
c
e
R
r
ergenJの過去単数。原:&は「安全な
独b
n 収める;隠す J (
a
g
r
e
b
i
g
J
V
I
u.(
t
) gibarg;s
1
3
8
」
gJに保れする 。
r
=Burg,Be
ところ (
oと結ぶ腐怖 ー
ohuuats
) uuisarouuordo 前行 s
2
3
8
) には「しかし 両親に はイエスの言葉の意味がわからなか った」 とあるのを 詩
0
5
責「ルカ J(2,
人 は故意に無規する 。 これもマリ 7 ~長持のプ ロセス のひとつだろう。
4行に既出。
3
o5
同行者、同伴者として→をともなって J
egisidea: r
Jt
4
3
8
aを受
t
z
e
eは b
h
obarnoを先行詞とする関係代名詞桜数属格、 t
r
a
l
l
oは a
r
e
h
) therothe:t
5
3
8
eの補足で「息子 として」の意。
h
はt
思1
ける関係代名 詞単数主倦。次行 ma
彼に対して」
:r
o
t
.
.
.
m
)i
6
3
8
5行の modar-magに既出。
8
21行に 、magは 7
土2
.gaduling-magI
m
t
) gadulingmagum:s
8
3
8
Inunによってわかる 。
ns
o
r
d
l
両線」の意であることが、次行の a
ここでは 「
) の単数与格 2
t
i
e
h
d
独Kin
少年期 J (
.r
) kindiski :f
0
4
8
)marean
1
4
8
司
9行に既出。
3
,5
告げ知らせる J
ωυmarianr
,
力、能力 J
.r
n
t
megin:s
J などと
t
h
g
i
.英m
t
h
c
a
妙M
、
独 mogen.~may ) , maht (
・に由来し 、mugan (
印欧視語 *magh
同系 o
ehta eganの過去単数。
3行に既出。 ここでは与十件再帰代名詞 1mをともなっている。
0
idan, 1
:く b
) b岳d
2
4
8
. 665 行に~出
u
αd
) githiudo:
3
4
8
g岳ro
数詞につ く惚数属格 。
叡知 J (~wis-dom ,独 Weis-heit J 。 援尾辞 -dòm については 490 行の
.r
m
t
) uuisdom:s
8
4
8
domの註を参照
o m岳はにかかる複数民絡 r
e
t
t
且i
gim
竪閲な」と同根。古英語 と宙サクソ ン諸 には
sr
u
g
l
u
非常に」。ゴート話 t
.r
u
d
) tulgo:a
9
4
8
見られるが、高地ドイツ語には存在しない。語源未詳
t以下を先取りする人材、
a
h
s 次行 t
i
iwarが属絡目的語を要求するから。
代名詞比の属格。 g
J,werdanおよび wesanとと
e
r
a
w
e-wahr,英 a
独g
気づく、認める J (
.r
j
αd
) giuuar;
0
5
8
もに 用いられ、属格目的語をと る
r
0行に註記したgJ.・
0
. waraの関連語で、3
f
l
用心、 防御 jの s
「
r
o 用心深<Jなども同系。
k
i
l
o
r
a
wardon 注意する」、 w
) thegan :前行 heの同格説明語。
1
5
8
) の複数対格 3
e
町u<
d
e
独g
fgi-thaht (
.
t
i:s
t
泊l
h
t
i
g
nの目的語である複数属格。
a
d
i
) torhtarotecno b
2
5
8
QU
訳註へーリアント(救世主)
8
5
3
} ina:再帰代名詞対格。
8
5
4
}1
岳r
ian s
ωu
.r
教える J(
独l
e
h
r
e
n
)。現代主主 l
e
h
r
e
nと同じく、人と物の目的語を対絡に
とる,8
1
0行の l
i
n
o
n(
独l
e
r
n
e
n
.英t
ol
e
a
r
n
) とも近い関係にあり、原義は
たどらせる J
o
8
5
6
) aftar:
r
(
前人の)足あとを
gilobon:swm.g
i
I
o
b
oの単紋 i
.
J
伶
rの中のあちこちでj。
r
8
5
7
) cudlico:
αd
v
. はっきりと」。 αd
J
.kud (
独k
und). s
山v
.kudian (
独v
e
r
k
u
n
d
e
n
)の
関連務。
ankennian =ant-kennian
r
8
5
8)ina...seggean: みずからを(キリストであると)告知する J
。
世 i\~n
i
J
以下 1
8行は福音書にはない自由な補足文である。「ルカ J(
2.
5
2
) では「イエスはます
ます知恵が進み、背たけも大きくなり、神と人と に愛された」とあるのみ
1
2歳の時の「神童J
ふ りに比して、その後長いあいだ 3
0歳に達するまで何の目立った事蹟もないことが、『ヘーリア
ン ト』作者には物足らなく恩われ、何らかの説明を入れる必要を感じたのであろ う。Bedaや
Hrabanusの聖書註解も r
3
0歳にしてバプテスマを受け、その後教えはじめ…」という補足をこ
のあたりにほどこしている。
-40-
Fly UP