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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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Author(s)
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オンライン同位体分離法によるNd偶々核の系統的研究(
Abstract_要旨 )
藤, 暢輔
Kyoto University (京都大学)
1999-03-23
http://hdl.handle.net/2433/181946
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【9
0】
氏
名
議
詣
(
理
学)
遠
学位 (
専攻分野)
博
学 位 記 番 号
理
学 位 授 与 の 日付
平 成 11年 3 月 23 日
学位授 与 の要件
学 位 規 則 第
研 究 科 ・専 攻
理 学 研 究 科 物 理 学 ・宇 宙 物 理 学 専 攻
学 位 論 文 題 目
オ ン ラ イ ン 同位 体 分 離 法 に よ る N d偶 々 核 の 系 統 的 研 究
論 文 調 査 委 員
教 授 川 瀬 洋 一
士
博
2027 号
第
4 条 第 1項 該 当
(
主査)
論
文
内
教 授 笹 尾
登
容
旨
の
要
教 授 前 田
豊
原子核構造の実験的研究において,原子核 を構成す る陽子 または中性子 の数 が, 自然界 に存在す る安定な原子核 に比べて
極端 に多い,いわゆるエ キゾチ ックな原子核 は,提唱 されてい る原子核論 の検証や新 しい核種 の探索な ど,重要かつ興味あ
3
5
t
J
な どの原子核分裂反応 に よ り,効果 的に生成 され るが,その寿命 が短
る研究対象 である。 中性子数が多い不安定核 は,
.2
いため,分離抽 出 して実験 を行 うためには,高度 な技術 が要求 され る。京 都大学原子炉実験所 では,ガス ・ジェ ッ ト方式 に
50近傍 の希土類元素 に属す る放射性 同位 体 を効率 よく取 り出 し, この領域
よるオ ンライ ン分離装置 を関発整備 し,質量数 1
の核種の系統的研究 を先駆的に行 ってい る。
5
2
pr(
半減期 -3.
6秒),1
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4
Pr(
半減期 -2.
3
本研究 は,陽子数 60のNd同位体 の核構造 を明 らかにす るため,その親核 で ある1
秒)のオ ンライ ン同位体分離 を行い,得 られた放射性核 か ら放 出 され る γ線 ,内部転換電子 な どの測定 による核分光的手法
を駆使 して,Nd偶 々核 の励起準位 について,系統的に研究 を行 った もので ある。 この領域 の原子核 に特徴 的な性質 として,
いわゆる球形か ら変形 に移行す る遷移領域 に属 し,集 団運動 によ り励起 され る回転バ ン ド,ベー タバ ン ド,ガ ンマバ ン ドな
どのスペ ク トル が中性子数 の増加 に伴 い, どの よ うに変化 してい くかを研 究す ることは原子核構造 を理解す るために重要で
ある。
1
5
2
Ndにおいては, これ までの報告 で幾つ かの励起準位 お よびそれ らのス ピン,パ リテ ィが特定 も しくは推 定 され ていた
が, よ り詳細 にその構造 を調べ る必要性 があった。今回の実験でガ ンマ線角度相 関測定 によ り 6つの励起準位 のス ピン,内
部転換電子測定 によ り2つのガ ンマ転移 の多重極度 ,三重同時測定によ り 3つの励起準位 の寿命 を特定 した。 また,得 られ
5
2
Prの基底状態 のス ピン,パ リテ ィを推定 した。 これ らに よ り,各バ ン
た結果 をもとに幾つかの励起準位 のパ リテ ィと親核1
ドの変化 を系統的に考察す るにあたって重要な情報 が得 られた。
5
4
Ndにおいては,その測定の困難 さか ら基底バ ン ド以外 の励起準位 は全 く知 られ ていなかったので,ガ ンマ線 スペ ク ト
1
ル の精密測定お よびガンマ線 同時計数測定 を行い, 3本 の新 しいガ ンマ線お よび 7つの新 しい励起準位 を見 出 し,1
5
4
Pr
の崩
壊 図式 を構築 した。 また, 「
相互作用す るボ ソン模型」 による理論値 との比較 を行 い,適 当なパ ラメー タを設 定すれ ば実験
で得 た励起準位 を良 く再現 され る事 を示 した。励起準位 のス ピンお よびパ リテ ィが特定 されていない ことか ら,Nd偶 々核
の各バ ン ドの変化 を系統的に考察す ることは出来ないので,ガ ンマ線角度相 関測定や 内部転換電子測定 を行 い,それ らを特
定す ることが今後の課題 とされ る。
論
文
審
査
の
結
果
の
要
旨
学位 申請論文 「
オ ンライ ン同位体分離法 によるNd偶 々核 の系統的研 究」 は,原子核構造 をよ り深 く理解す るため,安定
な原子核 に比べて 中性子の数 が極端 に多いNdの同位体 について,放射線測定 に よる実験 的研究 を行 った ものである。 この
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4
9-
領域 の原子核は,いわゆる球形核か ら変形核-の遷移領域 にある と理解 されているが,中性子数が増加す るとともに,その
半減期が急激 に減少 し,人工的に生成 ・抽 出す ることが非常に困難 となる。そのため,実験的研究はほ とん ど行 われてお ら
ず,原子核構造 についての議論が不可能 に近い状態であった。最 も効率 よく生成す る方法 としてはウランの原子核分裂反応
が唯一の手段であ り,半減期が 2- 3秒であることか ら,必然的にオンライ ン同位体分離法が必要 となる。
申請者 は,京都大学の研究用原子炉 に設置 されたガス ・ジェ ッ ト型オンライ ン同位体分離装置 を用いて,Ndの親核であ
r
の放射性 同位元素 を効率 よく分離 し,放 出 され るガ ンマ線 の精密測定によ り,Nd核 の励起準位 について新 しい知見を
るP
得た。
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2
Ndの励起準位 について研究 を行 うため,1
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2
Pr(
半減期 -3.
8秒)の分離 を行い,そのベータ崩壊 に伴 うガンマ線の
まず,1
同時計数測定,角度相 関測定,内部転換電子測定,お よび励起準位 の寿命測定を行 った。その結果,新たに1
9本 のガンマ線
を兄い出 し, 4つの励起準位 を確立 した。また,角度相 関測定の結果, 6つのス ピンを決定 し,原子核構造 を理解す る上で
重要な知見が得 られた。 さらに,内部転換電子の測定か ら遷移の多重極度 を初 めて確定 し,励起準位の寿命測定の結果 と合
わせて, レベルのパ リテ ィについても新たな提案 を行 ってい る。
1
5
4
Ndのガ ンマ線 は 10本 同定 されていたが,励起準位 に関 しては基底バ ン ドの励起準位 のみが知 られていた。 スペ ク トル
3本のガンマ
多重 シングルス測定,ガ ンマ線 同時計数測定を行い, 3本のガンマ線お よび 7つの励起準位 を新 たに見出 し,1
線 か らなる1
5
4
pr
の崩壊 図式 を構築 した。 また,得 られた励起準位 と 「
相互作用す るボソン模型」 による理論計算値 との比較
を行い,適 当なパ ラメー タを選べば,理論的にかな り良 く再現できることを示 した。
以上のよ うに,申請者 はオンライ ン同位体分離装置 と核分光学的手法を駆使 して,実験的に非常に困難な極短寿命の不安
定核種 についての系統的研究を行い,原子核構造を理解す る上で重要な実験結果 を得 ることに成功 した。 この研究成果は,
世界的にも他の研究機 関では遂行できない貴重なものであ り,論文内容 とそれに関連 した 口頭試 問を行 った結果,合格 と認
めた。
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