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Community Reintegration
19.Community Reintegration
Katherine Salter BA, Robert Teasell MD, Sanjit K, Bhogal MSc Norine Foley MSc
Key Points
大きな社会的支援ネットワークの存在と有効性は,脳卒中者の身体的回復と生活の質にお
いて肯定的な影響を持つ。
社会福祉事業介入は,自立や社会活動の増加と関連しない。
脳卒中患者の社会的支援ネットワークを含む社会的支援介入は,機能的回復や質的,量的
または支援の種類(形式)における改善と関連しない。
デイサービス事業は余暇活動における参加が増加するよう援助する。
在宅支援と訪問での介護管理は知識と満足感を向上させるという結果をもたらすかもしれ
ないが,それらは社会活動や生活の質,心的状態の向上と必ずしも関連があるわけではな
い。
活動的なケースマネージメントは,社会的活動の増加を援助する可能性がある。
脳卒中の介護者は,身体的,精神的健康の減尐や社会との接点,社会活動の減尐,鬱の危
険性の増加に苦しむ。
脳卒中患者への介護の経験を共有できるような介護者による支援は,介護者自身にとって
良好な結果をもたらす可能性がある。
脳卒中患者は良よく機能している家族とともに良好に向かう。
情報提供と教育の介入は,結果への肯定的な影響を持つ。
基本的な看護技術を含む実用的な技術練習は,介護者と脳卒中者の両方の鬱,不安を減尐
させ,生活の質の増進(強化)する可能性がある。
社会的そして余暇活動の低下は,脳卒中後に一般的にみられる。
1
余暇療法は,余暇活動改善の結果になる可能性がある。しかしながら,脳卒中後の余暇療
法の効果は,最終的には証明されていない。
性活動における減尐は脳卒中後において非常に一般的に認められる。そして,身体イメー
ジの変化や自尊心の減尐,配偶者とのコミュ二ケーションの欠落と関連しているようであ
る。
性の問題は,リハビリテーションとそれに続く地域社会への移行時に議論されるべきであ
る。
脳卒中後,運転する能力について懸念を持つ患者に対しては,適切に評価される必要があ
る。
視覚的注意の再練習は,伝統的な視覚的知覚の再練習以上に,脳卒中者において運転の遂
行を改善させない。
運転の適応度(適性)は,シミュレーター練習プログラムの使用を通して改善する可能性
がある。
脳卒中発症前に雇用されていた脳卒中者は,仕事に復帰する可能性に対して評価されるべ
きである。脳卒中者の仕事復帰を支援する職業上のリハビリテーション戦略は,発展し,
評価される必要がある。
2
Table of Contents
Key Points ........................................................................................................................... 1
Table of Contents ............................................................................................................... 3
Community Reintegration ................................................................................................. 4
19.1 Social Support and the Stroke Patient ..................................................................... 5
19.1.1 Social Support and Discharge Destination ............................................................... 5
19.1.2 Social Support and Functional Status ..................................................................... 6
19.1.3 Social Support and Quality of Life ............................................................................ 9
19.1.4 Social Support Interventions....................................................................................11
19.1.4.1 Social Work Interventions.....................................................................................12
19.1.4.2 Specialized Social Support Network Interventions .............................................. 13
19.1.4.3 Day Services ....................................................................................................... 15
19.1.4.4 Home-Based Support and Care Management .................................................... 16
19.1.4.5 Active Case Management.....................................................................................22
19.2 Family and Stroke .................................................................................................... 23
19.2.1 Effects of Caregiving on the Caregiver .................................................................. 23
19.2.2 The Family Caregiver and Social Support Interventions ........................................ 41
19.2.3 Family Interactions and Stroke .............................................................................. 45
19.2.4 Information Provision and Family Education .......................................................... 48
19.2.4.1 Perceived Needs for Information, Education and Training .................................. 61
19.3 Leisure........................................................................................................................65
19.3.1 Social and Leisure Activities Post Stroke ............................................................... 65
19.3.2 Leisure Interventions and Social Participation ....................................................... 70
19.4 Sexuality......................................................................................................................74
19.4.1 Decreased Sexuality Following Stroke .................................................................. 75
19.4.2 Hypersexuality Following Stroke ............................................................................ 81
19.5 Driving.........................................................................................................................82
19.5.1 Driving Assessment.................................................................................................85
19.5.2 Interventions and Driving Performance ..................................................................92
19.6 Returning to Work Post Stroke ............................................................................... 94
19.7 Summary ................................................................................................................... 98
References .......................................................................................................................102
3
Community Reintegration
地域社会への再建(社会復帰)
脳卒中は,個人の身体機能だけでなく,個人の“機能する社会的役割に対する容量”も変化
させる(Palmer and Glass 2004)。脳卒中患者の多くは地域社会へ戻るものの,日常生活活
動の回復による完全な復帰および十分な心理・社会的な復帰については非常に大きな課題
である可能性がある(Palmer and Glass 2004)。
許容可能な生活様式への復帰のための能力において,社会と家庭内の活動の両方における
参加が,脳卒中後の患者の満足と認識する生活の質において重要であることが分かってき
た(Clark and Smith 1998; Kim et al. 1999; Mayo et al. 2002; Jaracz et al. 2003)。脳卒中患
者における生活の質を確認するために重要な項目に関する研究では,言語能力,屋外移動
能力(単純な移動能力を含む)
,余暇活動を遂行する能力,自身の生活における自立もしく
は管理できる能力,他者へ貢献,ストレス,性生活そして重要な仕事を有していないとい
うような項目が評価されている。
(Kim et al. 1999; Robinson-Smith et al. 2000; King 1996)。
その上,多くの脳卒中者は,乏しい社会的統合,社会的接点の喪失,社会的隔離,そして
以前の社会的役割の喪失を報告する(Pound et al. 1998; Kersten et al. 2002; Hopman and
Verner 2003)。
Boden-Albalaらによる最近の研究では,最初の脳卒中に続く社会的隔離は脳卒中再発の危
険や死亡と有意な関連があるということを報告されており,その社会的な隔離とは“彼ら
の自宅によく訪問するのは3人未満”と定義されている(HR=1.4, p=0.02)。著者らは,社
会的な隔離がストレスや鬱,乏しい治療の継続と健康的活動への参加減尐に関連している
のではないかと示唆している。実際に,地域社会において適切な支援の動員ができないこ
とは,脳卒中リハビリテーションの最も良い効果や結果を無効にする。地域社会への移行
についての議論において,脳卒中リハビリテーションのためのACHPR
(Gresham et al. 1995)
臨床ガイドラインの要旨では,
“脳卒中による急性期の入院後や入院中のリハビリテーショ
ンプログラム後の地域社会住居への復帰は,脳卒中患者と同様に家族にとっても困難なも
のであると指摘している。同時に,必要な支援を提供する家族や他の介護者は,入院で設
定される支援的環境の欠乏における自立機能のための負担増加を負わなければならない。
サービスの継続は,この時期,重要である。そして,患者と家族へのカウンセリングは,
家族の機能の促進に必要であり,結果を改善する可能性がある。脳卒中者を隔離し続ける
参加に対する身体的そして心理学的障壁は,脳卒中後の個人のために個人の自主性と社会
的再建(社会復帰)を増進するために取り組む必要がある(Pound et al. 1998; Kersten et al.
2002)。教育とリハビリテーションにおける地域社会の関係は,有給雇用や社会的活動にお
ける参加への脳卒中者の能力に否定的に影響する恐怖と無知の態度を改善するために役立
つ可能性がある(Kersten et al. 2002)。
4
19. 1 Social Support and the Stroke Patient
社会的支援と脳卒中患者
Glass and Maddox (1992) によると,脳卒中の経験は以下のような心理学的変化として
みることができるとしている:(1)脳卒中とは短期間に起こり,しばしば前兆なく起こる;
(2)社会的役割を機能させるための能力が変化する;(3)機能的自立の喪失のリスクは,自己
の新しい定義と機能的な制限,自身の重大な(生命に必要な)能力を喪失させるような社
会・認知機能における調整が必要とされる。このように,脳卒中の経験による変化は,新
たな個人として残存する障害を統合した機能的自立の再獲得が必要とされる。
このモデルを使用して,Glass and Maddox(1992)は脳卒中というイベントの観点から離
れ,喪失に伴うコーピングの効果に注目するというコーピングプロセスの挑戦とその時間
的順序への適応が,脳卒中患者に対して“あるアイデンティティ”から“別のアイデンテ
ィティ”へと移行するための架け橋が作り上げられることを明らかにした。彼らは,社会
的な支援が,脳卒中の経験による変化そして回復の促進を容易に手助けできると示唆して
いる。
この社会的支援とは“人への愛と介護,評価と尊厳,必要であれば他者へ頼ることができ
るという経験または情報である”と定義されている。
19.1.1 Social Support and Discharge Destination 社会的支援と退院先
Meijyer ら(2004)によると,社会的支援は脳卒中患者の良好な在宅復帰に対し,重要であ
り,複雑で多次元的概念である。以下のような特有の社会的領域について考えられるべき
である;銃後(自宅における人の構成と財政上の手段)
,社会的状況(利用可能な看護と社
会的ネットワークの質),そして居宅(個人の必要性への適応性)。このモデルを用いた退
院先のための社会的支援要因の予後を明らかにする試みにおいて,Meijer ら(2004)は 6
つのコホート研究をレビューした(Table 19.1)。それぞれの研究において,データの不足
や研究の不均一性,そして方法論的欠点によりメタ分析は不可能と考えられた(Mijer et al.
2004)。
5
Meijer ら(2004)のレビューに含まれた 6 つの研究すべては,社会的支援や結婚の状態,
自宅における人の構成,退院住居,そして社会的ネットワークのような社会的領域につい
てのアウトカムを評価していた。これよりも下位領域の枠組みの範囲で社会的支援を調査
した研究は一つもなかった。レビューでは,全体的に,退院の状態を予想するには,患者
の社会的状況が重要であることが確認された。退院先の予想において最も重要として結び
つけられる特徴は結婚の状態であり,十分に支援されていると感じる大きな社会的ネット
ワークを受ける患者と同様に,既婚患者では自宅に退院する傾向がある。
大きな社会的ネットワークと実際に受ける社会的支援は,より良い身体的機能とも関連
していた。著者は尐ない研究におけるレビューにおいて,すべての研究において方法論が
不十分であると明らかにし(Pedersen ら(1996)の研究を除けば)
,さらに,このレビュ
ーの限界として予後因子を明らかにするには至らなかった。
19.1.2 Social Support and Functional Status
社会的支援と機能的状態
Meijer ら(2004)のレビューにより確認されたように,大きな社会的ネットワークの存
在と社会的支援の認識の存在は,脳卒中後の個人の身体的機能において肯定的な影響を持
つ。多くの研究では,機能的状態における社会的支援の影響についての調査に焦点を当て
てきた(Table 19.2)。
6
7
Discussion 考察
脳卒中による苦労とは,残存と損失の直面において患者の仮定的な独自性(assumptive
identity),自己概念そして役割容量(role-capacity)に挑むことである。患者は機能的能力
低下に対して適応しながら,これら課題(challenge)に対し順応する必要がある。脳卒中
の経験が心理社会的変化として考えられる場合,脳卒中リハビリテーションにおける社会
的支援の役割が重要となる。残念なことに,社会的支援は急性期リハビリテーションの段
階では有効性は制限されるようであるため,身体的リハビリテーション期間中は過小評価
される可能性がある。しかしながら,Glass and Maddox(1992)によって指摘されるよう
に,社会的支援の有効性は,脳卒中後最初の 1 ヶ月後まで現れないようである。そして患
者はしばしば退院し,地域社会の中で復帰を試みる。今後,退院のアウトカム測定は,退
院時の最終アウトカムの予想として必要がない可能性がある。全体的に,より高い水準の
支援は,より低い水準の鬱や改善した心的状態,そして社会的関与と同様に回復した機能
8
的利得(Glass and Mddox 1992, Glass et al. 1993, Colantonio et al. 1993,Tsuouna=hadjis
et al. 2005)と関連があるようである(Tsouna-Hadjis et al. 2005)。
Glass and Maddox(1992)は,社会的支援の過程となる形式とそれらの役割の間を識別
する必要性を強調した。中等度の量の有益な支援と高い量の精神的支援は脳卒中患者にと
って最も有益であるようである(Glass et. 1993)。加えて,Knapp and Hewison(1998)
はまた,密接に信頼する関係と社会的ネットワークの関係の有効性(言い換えれば,精神
的支援)は,のちの鬱に対する防御のために供給した。そして同様に,機能的結果が改善
する結果となった。Tsouna-Hadjis et al.(2005 )は,家族(家庭)支援の異なる形式と関
連した異なる効果を報告した。より高い水準の有益な支援は,脳卒中後最初の 6 ヶ月にお
ける機能的そして社会的状態の両方において有意で肯定的な効果を持つ。しかし,精神的
支援は異なる様式の影響を持つにもかかわらず,鬱における影響は尐ない。より高い水準
の精神的支援は,脳卒中後,最初の 3 ヶ月において鬱と社会的状態の両方で有意な影響を
持つ。そして,3~6 ヶ月の機能的状態において鬱と社会的状態の両方で有意な影響を持つ
(Tsouna-Hadjis et al. 2005)。
19. 1. 3 Social Support and Quality of Life
社会的支援と QOL
QOL は,脳卒中リハビリテーション研究において関心が高まっている複雑で多次元的な
概念である。Bays(2001)は,文献の統合を実施し,脳卒中からの回復過程での脳卒中者
の QOL に焦点を当てた 39 の文献を再検討した。その再検討において,脳卒中患者では脳
卒中後の経過期間によって変化がみられ QOL が様々であったが,脳卒中者の QOL は,比
較した集団より一貫して低いことが分かった。多くの変化は,脳卒中者の QOL において肯
定的な影響を持つとしてみなされた。これらは,ADL における自立や機能的能力,社会的
支援,そしてヘルスケア資源を含んだ。鬱,認知機能障害,脳卒中重症度,失語症は QOL
において,否定的な影響を持つとして明らかにされた(Bays 2001)。脳卒中者の QOL にお
ける社会的支援への影響の調査を含む個々の研究は,Table 19. 3. に表示する。
9
10
Discussion 考察
脳卒中者の QOL は,一般の住民におけるグループとの比較より低い一方,積極的に社会
式支援の存在によって影響される可能性がある。機能的状態は,脳卒中者の QOL において
考慮されるべき重要なものであることを証明されてきた。しかしながら,個人が受ける社
会的支援の程度は,個人の QOL における能力低下と社会的不利の影響を和らげる可能性が
ある(Kim et al. 1999; Gottlieb et al. 2001)。加えて,社会的ネットワークと彼らが認識す
る質や効果の規模は,Kim et al.
(1999)や MacKenzie と Chang(2002),Clarke et al.
(2002)
によって報告されたような脳卒中後の QOL に影響を及ぼす。彼らの支援において,効果的
であると彼らが認識しているより大きな社会的ネットワークを持った個人はより良い QOL
を持である。
Conclusions Regarding Social Support and the Stroke Patient
社会的支援と脳卒中患者に関する結語
社会的支援ネットワークの認識される有効性と同様に,社会的支援のネットワークの存在
と規模は,脳卒中後の身体的回復と QOL に肯定的な影響を持つ。高い水準の支援は,より
大きな機能的利益,鬱の減尐と改善した心的状態,社会的相互作用と関連する。社会的支
援ネットワークの規模と認識される有効性は,退院先の重要な予測因子である。
大きな社会的支援ネットワークの存在と有効性は,脳卒中者の身体的回復と QOL にお
いて肯定的(好ましい)な影響を持つ。
19. 1. 4 Social Support Interventions
社会的支援介入
Martin et al.(2002)は,脳卒中後 6 から 9 ヶ月の脳卒中者 179 名を面接した。脳卒中患
者によってあげられた問題は,医療システムにより見捨てられた感じや心理学的支援への
乏しい利用する権利,再開する社会的活動における自信(信頼)の欠如,家庭(家族)内
11
での変化した役割の影響,そして別の脳卒中への心配を含んだ。脳卒中者に対するこれら
の問題の重要性は,地域社会への脳卒中患者復帰後の社会的活動とサービスにおける関与
の促進と同様に,患者教育と支援を改善する介入の必要性を強調する(Martin et al. 2002)。
以下の章は,地域社会の中で脳卒中患者と家族の介護者のための支援を供給するために計
画された様々な介入の影響を調査した無作為化比較試験からの結果を示す。現在の再検討
(調査)(review)の目的のために,介入は社会福祉事業,専門化した社会的支援ネットワ
ーク介入,デイサービス,在宅支援,ケース(事例)(症例)管理,そして在宅リハビリテ
ーションサービスを含むケース(事例)
(症例)管理のように分類した。
19. 1. 4. 1 Social Work Interventions
社会福祉事業介入
社会福祉事業介入の効果を調査した 2 つの RCT が確認された。
これらの研究は Table 19.4
に要約する。
12
Discussion 考察
Table 19. 4 に記述された社会福祉事業介入は両方とも,資格を与えられたソーシャルワ
ーカーによって提供された。そして,必要に応じ情報,教育,カウンセリングの提供のた
めの自宅訪問の予定を含んだ。どちらの介入も,自立や活動について介入と関連した有意
な効果を報告しなかった。社会福祉事業介入における参加は,医療と地域資源の利用の両
方において変化と関連しなかった。しかしながら,有意な効果が測定されなかったにもか
かわらず,Christie and Weigall(1984)によって述べられた研究における多くの参加者は,
介入への満足感を報告した。
Conclusions Regarding Social Work Interventions 社会福祉事業介入に関する結語
脳卒中患者と患者家族のための情報と教育とともにカウンセリングを提供する社会福祉事
業介入は,自立や社会的活動の測定における改善と関連がないという強い(Level 1a)根
拠がある。
社会福祉事業介入は増加した自立や社会活動と関連がない。
19. 1. 4. 2 Specialized Social Support Network Interventions
専門化した社会的支援ネットワーク介入
確認された RCT において,2 つだけが脳卒中者と彼の/彼女の全体の日常の社会的支援
ネットワークやシステムを標的にする介入の供給に焦点を当てた。彼女の全体の社会的支
援ネットワークやシステム(体系)を標的にした介入の供給に焦点を当てた。両方の研究
について,Table 19. 5 に要約する。
13
Discusion 考察
ここに述べた研究はどちらも,脳卒中患者の社会的支援システムを含む社会的支援介入
と関連する有意な利益を報告していない。しかしながら,Friedland and McColl(1992)の
み,他の心理社会的変動に加えて,認識される社会的支援の評価を含んだ(心理学的スト
レスと健康状態)
。Glass et al.(2004)による研究は,脳卒中後の家族や全体の社会的支援
システム(付加的な友人と専門の介護者を含む)によって直面した情報,社会的,精神的
そして行動課題を標的にするために計画された心理社会的介入の効果を調査した。不運に
も,第一の(主な)研究結果は,バーセルインデックスによって測定されたような機能的
回復や身体的回復であった。そして 6 ヶ月の介入後クループ間での有意な違いはなかった。
著者が指摘するように,バーサルインデックスは,このケースにおいて研究結果を評価す
るための適切な選択でなかったか可能性がある。すべての研究参加者の 40%以上は,研究
14
の終わりまでに最大のスコアに達した。これはかなりの天井効果を示し,2 つの研究条件の
間の観察された相違を制限する(Glass et al. 2004)。
Conclusions Regarding Specialized Social Support Network Interventions
専門化した社会的支援ネットワーク介入に関する結語
脳卒中患者の社会的支援ネットワークを含む専門化した社会的支援ネットワーク介入は,
改善する認識された社会的支援や機能的な回復において効果的でないという中等度(Level
1b)の根拠がある。
脳卒中患者の社会的支援ネットワークを含む社会的支援ネットワーク介入は,機能的回
復や質,量そして支援の種類において改善と関連がない。
19. 1. 4. 3 Day Services デイサービス
一重盲検無作為化比較試験は,18 歳から 55 歳の脳卒中の個人のクループにおける心理社
会的結果において,一日の計画の影響を述べた。(Table 19. 6)。
Discussion 考察
デイサービスでの早期の出席は,より遅れた出席では,より多くの余暇活動における参
加と関連があるのに対し,仕事を実行する能力の増加や,活動実施に伴う満足感,そして
余暇活動における定期的な参加と関連があった。
15
Conclusions Regarding Day Services デイサービスに関する結語
予備的な計画を調査した一つの RCT に基づいて,デイサービスでの出席は,余暇活動にお
ける参加の改善と関連があるという中等度の根拠(Level 1b)がある。
デイサービスプログラムは,余暇活動における参加を増加させる可能性がある。
19. 1. 4. 4 Home-Based Support and Care Management
在宅支援とケア管理
8 つの RCT は,在宅支援の有効性とケア管理プログラムを調査した。一般に,これら介
入のそれぞれは,必要性を確認(識別)するためや利用可能な資源の使用によって,これ
らの実現を助けるために,医療専門家や練習を受けた個人と脳卒中患者(彼らの家族)の
間の一連の接触(接点)を提供した。(Table 19. 7)。
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17
18
Discussion 考察
一般に,介入は通常,急性のケアや入院患者のリハビリテーションからの退院の頃に始
められ,接触(接点)は,6 週から 12 ヶ月の期間以上継続した。研究の大多数において,
接触(接点)の数と内容は規定されていない。しかし,患者/家族の必要性の評価に基づ
いて,支援ワーカーによって決定された。研究は,患者の自立,精神的苦痛や心的状況(介
護者と患者)
,社会的活動(介護者と患者)
,健康関連 QOL(介護者と患者)
,介護者の負担
を含む様々な結果における介入の影響を調査した(Table 19. 8)。
19
上記に要約された 8 つの研究のうち 4 つは,イギリスにおける国際脳卒中協会
(NtionalStroke Association)によって設置されたサービスである家族支援組織者(Family
Support Organiser)の有効性を調査した。FSO の主な役割は,日常的作業の実行と他のサ
ービスとの接触に関して情報と助言の両方を提供することである(Harding and Lincoln
2000)。一般に,これらの研究結果は,一貫性がなかった。介入を支持し,比較的尐数の有
意な効果は指摘された。脳卒中について改善された知識,サービスに伴う増加した満足感
(Lincoln et al. 2003, Tilling et al. 2005)は除き,FSO のサービスを受けている患者は,支
援グループや脳卒中クラブのような資源(援助)をより使用する傾向が強い可能性がある
(Mant et al. 2000)。脳卒中を持った個人の日常の介護者は,社会的活動や QOL の分野に
おいて利得を経験するかもしれない(Mant et al. 2000)。加えて,Tilling et al.(2005)は,
FSO プログラムに参加している介護者は,誰がそれらを聴き,地域社会の中で適切な資源
(援助)をどのように入手するべきか知る傾向を感じることを証明した。FSO の患者の認
識の質的研究において,Lilley et al.(2003)はプログラムの受容者は,FSO がサービスへ
のアクセス,適切な利益(援助)を要求できること,情報源の継続に関して,有益なサー
ビスであると報告している。Dennis et al.(1997)による初期研究は,FSO サービスの使
用は学習性無力感のような不利な(反対の,逆の)効果と関連がある可能性を示唆したが,
その後の研究において確認されていない。
とりわけ,Burton and Gibbon(2005)は,看護支援活動介入は精神的苦痛と社会的孤立
において,有意な肯定的効果と関連があると報告した。加えて,介入を受けている患者は,
身体的能力の悪化が尐ないことを経験し,健康の認識が改善した。奉仕活動介入に登録し
た個人の介護者は,より低い水準のストレスを経験する。しかし効果は長期間持続しなか
20
った(12 ヶ月)。
脳卒中患者は入院患者リハビリテーションサービスを認められる間,脳卒中看護師は,
学際的ケアチームのための中心的役割を果たす。Burton and Gibbon(2005)は,病院での
滞在そして地域社会全体にわたって,脳卒中患者や彼らの家族への情報,教育と支援の提
供を含む看護介入の通常の限界を超えて拡大する彼や彼女の従来の役割の効果を調査した。
全体的に,著者は彼らの研究の結果は,病院から地域社会への移行を通して,介護(看護)
と関係の持続を促進するような脳卒中サービスの機関に対する包括的視点は,脳卒中患者
の認識する健康を改善する可能性がある。持続的ケアに対するこのアプローチはまた,こ
の期間中,介護者のストレスが減尐するために役立つかもしれない。
Conclusions Regarding Home-Based Support and Care Management
在宅支援とケアマネージメントに関する結語
在宅支援とケアマネージメント介入は社会的活動,心的状態,QOL や身体的自立と関連が
ないという強い(Level 1a)根拠がある。家族支援組織者(Family Support Organiser)
との関係は,脳卒中についての知識とサービスとの満足感の増加と関連があるという強
い(Level 1a)根拠がある。
21
社会的支援介入は,介護者の責任や負担において減尐と関連があるという相反した(Level
4)根拠がある。
在宅支援とケア管理の訪問は,知識と満足感の改善をもたらす可能性があるが,それら
は改善した社会的活動,QOL,心的状態と必ずしも関係がない。
19. 1. 4. 5 Active Case Management
活動的ケース管理
構造化された active case management プログラムの影響を調査する A single study にお
いて,すべての参加者は,治療的レクリエーションや社会福祉事業,心理相談を含む必要
な在宅治療に加えて,計画的な接触(電話や訪問)を受ける(Goldberg et al. 1997)。
Discussion 考察
Goldberg et al.(1997)によって述べられた active case management プログラムのプロ
グラムは,いくつかの方法において以前の在宅支援介入と異なる。患者との関係は通常は
計画され,より頻繁である。それぞれの症例は,潜在的問題を確認(識別)するために,
そして,特有な(具体的な)活動計画を作りだすためにリハビリテーション医,心理学者,
レクリエーション療法士そして症例管理者/ソーシャルワーカーを含む治療チームによっ
て,2 ヶ月に 1 度再検討された。患者は教材,そして付加的支援の利用に加えて,必要に応
じ,在宅でレクリエーシ,社会福祉事業そして心理的サービスを提供される。
全体的に,active case management プログラムは,対照条件と比較したとき 6 ヶ月で社
会的活動における改善と関連があった。しかし,これは 1 年で有意な違いは持続しなかっ
22
た。active case management プログラムにおける参加者の大部分(80%)は,有益である
と分かったが,参加は QOL において有意な改善と関連がなかった。介護者のストレスと鬱
は時間とともに発展し,そして社会的支援システムよりむしろ患者機能における相違と関
連があった(Goldberg et al. 1997)。
Conclusions Regarding Active Case Management
active case management に関する結語
active case management は,社会的活動の改善をもたらす可能性がある。さらに研究が
必要とされる。
active case management は社会的活動の増加を援助する可能性がある。
19. 2
Family and Stroke 家族と脳卒中
個人にとって,身体的存在だけでなく社会的存在においても,脳卒中は機能の能力を変
化させる。心理社会的役割の良好な回復は複雑で,困難な過程である。この過程は,主と
して脳卒中者の家族から起こる有益なそして精神的支援に依存している(Palmer and Glass
2003)。この移行は,脳卒中者と家族の他のメンバーの両方のニーズを受け入れるための家
族の変化の中での役割,反応,様式のように適応過程としてみることができる。
(Palmer and
Glass 2003)。システムとして家族をみると,脳卒中は,脳卒中者個人だけでなく家族シス
テム全体において深刻(広範囲)な影響を持つことが明確になる。現在のところ,調査は,
介護者-患者の対において,家族内で復帰する脳卒中者の効果を強調してきた。
19. 2. 1 Effects of Caregiving on the Caregiver
介護者における介護の効果
脳卒中者の長期間の介護の大きな負担は,家族の介護者に降りかかる。そして,通常,
特に一人の主な介護者に降りかかる。虚弱高齢者に提供される介護の再検討(調査)にお
いて,Silberstone and Horowitz(1987)は,家族介護システムがない。むしろ,一人の家
族のメンバーが主な介護者の役割を占め,そして,直接的な介護援助の提供者であるとい
うことを指摘する。多くの場合,主な介護者は患者の配偶者である。もしこれが不可能で
あれば,脳卒中者の介護は娘や息子の降りかかる可能性がある。Sit et al.(2004)による最
近の研究では,102 名の主な介護者を面接し,61%が配偶者で,31.3%が脳卒中者の子供で
あったということを報告した。配偶者や子供の不在では,他の血縁者や友人そして隣人で
さえ,主な介護者として務めるかもしれない。しかし,これは比較的まれな事象である。
第一の介護者を除いて,他の家族のメンバーは,小さい役割を果たす傾向がある(Horowitz
1985, Tobin and Kalys 1981)。Sit et al.(2004)は,脳卒中者の直接の家族のメンバー(第
23
一の介護者以外の)は,精神的支援の重要な提供者として機能する。一方,友人や隣人は
具体的なまたは役立つ支援と社会的交流のための機会を提供する傾向にある。同じ研究に
おいて,医療専門家は,看護者処置や技術についての技術的支援と情報を含む役立つ支援
と情報を提供するとみなされた(Sit et al. 2004)。Brocklehurst et al.(1981)は,友人と血
縁者は,自宅に退院後,短期間的に重要な支援(脳卒中患者の移動介助と監視)となる第
一の介護者となるが,脳卒中後,次の 1 年は,ほとんど援助がなかったということを指摘
した。もし新しい介護の要求が起こるならば,それらの要求に合わなければならないのは
家族(一般的に第一の介護者)であると指摘した(Silverstone and Horowitz
1987)。
脳卒中リハビリテーションのための ACHPR(Gresham et al. 1995)ガイドラインは,
“重
度の能力低下を持つ人のケアは,大変な課題(仕事)である。
”移動性における機能障害は,
高齢な配偶者の身体的強度と耐久性に負担をかける。そして,認知的,精神的,そしてコ
ミュニケーション問題はしばしば家族と社会的関係において,広範な効果(影響)を持つ。
Evans(1986)によって指摘されたように,介護者は認知的や精神的制限(限界)以上に,
より身体的制限(限界)に耐える。しかしながら,健康で献身的な介護者でさえ,週 7 日,
一日 24 時間,提供する支援の持続的な負荷から“燃え尽きる(burn out)”かもしれない。
リハビリテーションから脳卒中者の退院後 12 週で,Sit et al.(2004)は,介護者は相当多
くの身体的病気を経験し,40%が医師の診察にかかる。長期介護施設では,介護要求の増
大によるものよりも,介護者の健康の悪化または持続的なストレスに直面した報酬の喪失
のために生じることが多い(Boxell and McKercher 1990, Colerick and George 1986)。介
護者は介護におけるキーポイントとして,脳卒中患者の管理において必要となる定常性と
警戒の義務を満たすための十分な休息または時間を確保できないことを 挙げている
(Stewart et al.1998)。休息の機会は非常に重要である可能性がある。(Gresham et al.
1995;Stewart et al. 1998)。
脳卒中者のための介護を提供している家族のメンバーはしばしば,脳卒中者の要求に対
応するために,彼らの個人の要求を犠牲にすることを必要とされる。Smith et al.(2004a)
は,脳卒中後 1 年の 90 名の介護者と面接した。その研究では,介護者は介護の供給におい
て 1 週間につき 7 日間費やし,そして 90 名の介護参加者のほぼ半分(47.8%)は,介護活
動において 1 週間につき 160 時間以上費やすと報告した。(範囲=4-168,平均=104)
。報
告は,65 歳より下の介護者の 25%以上は,
彼らが仕事で費やす多くの時間を減尐させるか,
家族の財政の健全性において大きな影響を持つであろう愛する人のために提供する介護に
ついて,多くの要求を操作(調整)するために完全に仕事を離れることを示唆することは
驚くことではない(NFCA 2002 は Grant ら 2004c になかで引用した。
)
。最近の研究では,
Ko et al.(2007)は,働いている介護者のかなり大きな割合(36%)が,彼らの家族のこと
を思い,彼らが増加した仕事の時間を減尐させるか,完全に仕事から離れるということを
24
報告した。
介護者は,非常に必要とされる社会的支援のために,彼ら自身の機会が減尐するのと同
様に,余暇のための時間の減尐と社会的活動のための時間の減尐に直面するかもしれない。
(Stewart et al. 1998;Palmer and Glass 2003;Smith et al. 2004,Coombs,2007)
。彼
らの 2004 年の研究において,Sit らは,面接した介護者の 65%は,監禁状態の感覚がある
ことを報告し,そして,将来の余暇時間のための機会を予測できないということを報告し
た。相互作用のための機会は失われ,同時に介護者は彼ら自身の健康不安によってますま
す制限される彼らの社会生活や興味が減尐する彼らの世界を認識する(Smith et al. 2004)。
脳卒中後 ,3-8 年における脳卒中者と彼らの配偶者の研究において Coughlan and
Humphreys(1982)は,患者の 41%と配偶者の 32%は“人生の楽しみがずっと尐ない”と
報告したということを指摘した。配偶者にとって,楽しみの損失の主な原因は,交友の減
尐や増加した家庭内の責任や余暇や社会活動への支障であった。Webster and Newhoff
(1981)は,脳卒中患者の妻は,以前は配偶者に割り当てられた義務とみなされたり,打
ち明けたり話す人の不足や一人の個人の時間の不足といった様々な良くある問題を経験す
るということを指摘した。配偶者の介護者は,余暇時間や自由の不足そしておそらく最も
難しい側面である結構相手の喪失を含む脳卒中後の深い喪失感を経験する。介護者は脳卒
中者のための介護において,新しい役割と責任を学びそして適応しなければならないだけ
でなく,彼らは彼らの配偶者と新しい関係に適応しなければならない。
表 19. 10 は,介護者における介護の効果とこれらの効果に影響を与える要因の両方を明
確にすることを試みた研究の要約を提示する。
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29
30
31
32
Discussion 考察
多くの研究は,主な家族の介護者における脳卒中者のための介護の効果を調査してきた。
多くは横断的アプローチであり,私たちに,同定された効果を抑える要因の識別(確認)
と同様に(に加えて)
,介護者における介護の効果の断片を提供する。いくつかは長期的な
アプローチを行い,そして,時間とともに効果と影響を与える要因の変化の調査を含む。
変化している効果と要因の調査は,介護と家族の適応の過程において,どちらの介入が様々
な時に最も役立つかを決定することにおいて役立つことができる。例えば,脳卒中患者の
退院直後,負担(責任)の経験は,脳卒中の重症度による影響が大部分である可能性があ
る。しかし,時間の経過とともに,他の患者の特徴が,より影響が大きくなるかもしれな
い(Tompkins et al. 1988,Schulz et al. 1988)。FINNSTROKE Study(Kotila et al. 1998)
の報告において,外来患者リハビリテーションと支援サービスの存在は,これらのサービ
スを提供した地区と提供していない地区とを比較したとき,脳卒中後 3 ヶ月後で介護者間
に報告される鬱の率では効果がない。しかしながら,12 ヶ月までにそのようなサービスの
不足は,より多くの重度の鬱状態の介護者と関係がある。近年の長期的な研究 は
(Franzen-Dahlin et al. 2007),脳卒中後 6 ヶ月までに,GP や地区看護婦のどちらかから
のより頻繁なサービスの必要性は,介護者側の低下した身体的健康と関連がある。Blake et
al.(2003)は,介護者の負担の量は,脳卒中後 3~6 ヶ月は必ずしも変化しないが,負担に
寄与する項目は変化する。脳卒中後 6 ヶ月までに,尐数の家族(家庭)の変化は報告され
る。しかし一方,動揺する行動,監禁感,増加する財政上の問題はよりしばしば起こる。
Tool et al.(2005)は,脳卒中リハビリテーションからの退院後,6 ヶ月から 1 年の期間を
超えて介護に費やされる時間の量が変化するだけでなく,介護者によって行われる課題(介
護)のタイプも変化するということを示唆した。6 ヶ月と比較したとき,介護者は,旅行や
余暇活動において,脳卒中者を支援する時間に費やす。そして,薬剤や財政を管理する時
間が尐なくなる。著者は,このことは脳卒中者の身体的,認知(認識)的機能における継
続した改善を反映する可能性があることを示唆する(Tool et al. 2005)。
長期的には(脳卒中後 2 年以上),QOL と鬱の経験は両方ともより安定するようになるか
33
もしれない(Berg et al. 2005, Jonsson et al. 2005)。しかし,White et al. (2003)は,女
性の間で時間とともに負担は増加していると報告した。Visser-Meily et al.(2008)は,報
告される負担は,脳卒中後,1 年と 3 年の間でかなり減尐する一方,生活の満足感と社会的
支援は低下するということを報告した。鬱的症状は,時間とともに不変的に残存する
(Visser-Meily et al.)。
残念ながら,全体として表 19.10 における研究を検討するとき,評価の時期には一貫性
がなく,時間の効果は十分に記述されていない。表 19.11 は,介護の確認されている効果の
要約を示す。そして,それらの効果に大いに影響を与える要因を示す。Variables における
variation は評価され,評価において測定手段(道具)を使用したにもかかわらず,介護の
過程は介護者における計り知れない影響を持つということは明らかである。
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35
36
上記の要約された研究から,介護者における介護のもっとも一般的に確認されている影
37
響は,介護者のストレス,緊張,責任の増加,認識される健康状態(身体的,精神的両方
とも),社会的接触(接点)と活動の減尐,増加する鬱の危険,そして QOL における全体
的減尐を含む。介護者の健康状態,鬱そして社会的接触(接点)の不足のようなこれらの
多くは,介護の他の結果に影響を与える要因としてもまたみなされる。患者の特徴の影響
に関する報告は,質問における影響によって異なる。しかしながら,年齢,脳卒中の重症
度,そして脳卒中に関連した機能障害,患者の機能的状態,認知の状態は,全て介護者の
結果に影響を及ぼすとして報告されてきた。
Caregiver Burden 介護者の負担
Bakas et al. (2004)は,どの仕事が介護者にとって最も大きな負担を生むか,そして,
介護者の心的状態,社会的機能,主観的幸福感,身体的健康の決定において最も影響力が
大きいかを明確にすることを試みた。精神的支援の提供,移乗の提供,財政の管理,脳卒
中に関連した法案と形式,家事の実施は,最も時間を費やす仕事として確認された。同時
に,これらの課題は,介護者の心的状態について有意に予測的であったが,しかし評価さ
れた他の介護者の結果とは,尐しも予測しなかった。課題は,行動上の問題の管理,精神
的支援の提供,家事の実行と財政的管理,脳卒中に関連した法案と形式を含む最も困難な
ものとして同定した。困難な課題は,否定的な介護者の心的状態と結果の両方を予測した。
介護の結果として,社会的機能の低下,主観的幸福感,身体的健康の低下の有意な予測
因子のみである一方,行動の管理,精神的支援の提供,そして財政の管理の困難さは,否
定的な心的状態に対する有意な独立予測因子であった(Bakas et al. 2004)。介護のストレ
スに最も寄与する特有な課題の明確化は,介護による心理社会的アウトカムを改善するた
めの介入の決定に役立つかもしれない。
Social Contact and Activity 社会的接触(接点)と活動
より小さな社会的ネットワークで,社会的接触(接点)における満足感の減尐と同様に,
社会的接触(接点)と活動の減尐は,介護の影響(効果)と鬱のもっとも著明な危険や鬱
症状の兆候のような他の影響の調整剤として確認されてきた。ソーシャルネットワーキン
グと相互の信頼関係の減尐は,介護者における負担感と絶望感に寄与する(の原因となる)
ことができる(Schulz et al. 1988)。
脳卒中患者がいったん家に帰り,帰属意識が減尐すると,さらに困難な新しい役割に適
応させることで,介護者の社会的孤立に寄与する可能性がある(Grant et al. 2004b)。介護
者(n=20)との話し合いの中で,Stewart et al. (1998)は,多くの介護者は,友人や家族
は基本的に利用可能で,役立つ支援でさえある一方で,彼らは適切な精神的または情報的
支援を提供しないと感じているということを発見した。Sit et al. (2004)は,身近な家族
38
は精神的支援の主な提供者であり,具体的な支援と社会的交わりは,友人と隣人によって
主に提供される傾向があるということを立証した。その研究において,具体的な支援は精
神的支援や社会的交わりのどちらかの提供は尐なかった(Sit et al. 2004)。Sit et al. (2004)
はまた,実際の介護者支援ネットワークは,認識されているネットワーク(すなわち,介
護者が利用可能であると考える人数)より小規模である傾向があるということを報告した。
もし,介護者が彼らの現在の社会的ネットワークに不満を経験するならば,認識された不
満は,社会的ネットワーキングにおける実際の減尐と同程度に介護者を心理的に病的状態
にさせることに寄与することができる(Tompkins et al. 1988)。
Mental Health and Risk for Depression 精神的健康と鬱の危険
Coughlan and Humphreys(1982)によれば,人格変化は,脳卒中後 3~8 年で,脳卒中
者の 3 人中 2 人に介護者によって指摘された。その変化は,5%で肯定的,82%で否定的,
そして 13%ははっきりしなかった。報告される第一の否定的な変化は,興奮性と自制心の
減尐,低い欲求不満への耐性,精神的不安定性,自己本位,自発性の減尐であった。
主に介護者としての行為は,一般的に(全体的に)健康(身体的そして精神的両方)に
おける相当な犠牲と生活の中断無しでは存在しない。鬱への増加した危険は,相当である。
文献の範囲内で,介護者の鬱の有病率は,介護していない集団(12%から 16.5%)と比較
したとき,脳卒中介護者においてより高い(39%から 52%)と一貫して証明されてきた。
(Kotila et al. 1998, Anderson et al. 1995, Draper et al. 1992, Carnwath et al. 1987, Schulz
et al. 1995, Silliman et al. 1986, Wade et al. 1986; Han and Haley 1999)。しかながら,ほと
んどの脳卒中介護研究は,比較的標本の大きさが小さく,自主選択に基づく日和見性の標
本の使用と関連した弱点(欠点)に悩まされる可能性がある(Han and Haley 1999)。
Suh et al. (2005)は,225 名のうち介護者の 41.1%は,Center for Epidemiological Study
Depression Scale(CES-D)によって確定された鬱を示したと報告した。その研究において,
認識される介護者の負担と介護者の支援に加えて,介護者の鬱は患者における脳卒中後の
鬱とより高く有意に関連した。Berg et al. (2005)は,その研究における介護者の 30-33%
はフォローアップ期間中,鬱状態であったと報告した。両者の研究において,鬱の率は患
者間よりも介護者間でより高かった。Sit et al. (2004)は,心理社会的健康の水準が脳卒
中者の依存の水準,受けている具体的/役立つ支援の量,そして社会的交わりの機会と有
意に関連していると報告した。鬱の危険が最も高い介護者は,配偶者がより若く,より低
い世帯収入である重度障害の患者の介護であり,介護の頻度が多い小さな社会的ネットワ
ークであり,将来への希望と期待が低い水準であるという傾向がある。加えて,Grant et al.
(2004a)は,鬱のリスクが社会的機能に加えて,問題を解決することおよび介護者の覚悟
との負の方向性に関連していることを明らかにした。問題解決に対して否定的な方向性を
39
有する介護者は,介護の役割に関連したストレス要因と期待によって,より簡単に圧倒さ
れる(打ちのめされる)可能性がある。
(Grant et al. 2004a)。脳卒中を持つ個人によって
経験する精神的健康や精神的問題はまた,普段の(日常の)介護者において否定的な影響
を持つ可能性がある。Draper et al. (1992)は,無気力,興奮,徘徊や気分障害のような
脳卒中の結果の心理学的側面(状況)が,介護者の負担に寄与するということを指摘した。
Grant et al. (2004c)によって実施された面接において,認知的な,行動の,精神的な変
化は,退院後最初の 1 ヶ月の間に直面する最もストレスの多い介護の課題(問題)を確認
した。Smith et al. (2004)によって実施された面接における介護者の参加者は,脳卒中者
の精神的,認知的問題は,対応し,さらに医療専門家が主としてとりあわない最も困難な
問題であるということを指摘した。
Positive Outcome 肯定的結果
介護の効果を調査する研究における中心は,否定的な結果に置かれるが,介護に関連し
た肯定的な結果もまた報告されてきた。Smith et al. (2004)は,介護者は気分転換,ユー
モア,ストレス解消,個人的な信念体系に頼るような戦略を使用することで肯定的な態度
(前向きな姿勢)を維持しようとすることを報告した。その研究において,大部分の介護
者(>90%)は,手入れが行き届いた脳卒中の個人が,彼や彼女自身を楽しむことができ,
彼や彼女の個人の威厳を維持することをみる事への満足感を報告した。脳卒中を持つ個人
のための介護は,介護者が愛と情熱の両方を表現(伝達)する手段のように考えられた。
Schulz et al. (1988)による先行研究において,介護は,夫婦関係において否定的な影響
と同様に肯定的な影響と関連した。
Summary 要約
介護に関連した多くの効果と和らげる要因は,文献において確認されてきた。オランダ
の National Heart Foundation により承認された最近のクリニカルガイドラインは,リハビ
リテーションの過程における早期に,負担のための危険がある介護者は特定されるべきで
ある。そして,負担について反復した評価を含め,継続した相談が退院後提供されるべき
であるということを示唆する(van Heugten et al. 2006)。介護者はリハビリテーションの
過程において密接に含まれるべきである。加えて,著者はまた,定期的な情報の提供,支
援団体の形成,カウンセリングに焦点を当てた介入を推奨する(19. 2. 4 節参照)。与えら
れた中心的役割は,脳卒中者のための結果における日常の介護者によって行われ,脳卒中
後の介入の焦点は,介護者を含むために,そして/または対象とするために拡大されるべ
きである。
40
Conclusions Regarding Effects of Caregiving Post stroke
脳卒中後の介護の影響に関する結語
一般に,介護者における介護の確認された影響は,健康の低下(身体的と精神的の両方),
社会的接触(参加)と活動の低下,鬱の危険の増加,介護者のストレスや緊張,負担の増
加,全体的な QOL の低下を含む。社会的接触(参加)と活動それ自体の低下は,介護者の
負担の増加,鬱の危険性の増加,生活の満足感の低下に寄与する可能性がある。患者の特
徴の影響についての報告は,質問における影響に伴って変化する。しかしながら,年齢,
脳卒中の重症度,脳卒中に関連した機能障害,機能的状態,認知的状態は,看護者の結果
に影響するとして報告されてきた。
脳卒中介護者は身体的,精神的健康の低下,社会的接触(参加)と活動の減尐,鬱の危
険性の増加に苦しむ。
19.2.2 The Family Caregiver and Social Support Interventions
家族介護者と社会的支援介入
社会的機能(社会的役割)と支援ネットワークを改善するために計画された介入は,社
会的活動の増加と介護者の生活の満足感の改善と同様に,鬱に対する危険性において有益
な効果を持つ可能性がある。脳卒中後の家族による介入に関する 1998 年のレビューにおい
て,Korner-Bitensky et al. は,社会および余暇活動を維持するための介護者への援助は,
介護者の満足のいく状態をもたらす可能性があるという結論を出した。患者と介護者の両
方に対し提供された社会的支援の介入を報告した研究は,19. 9 を通じて,表 19. 4 に要約
される。家族介護者への提供される支援においてのみ焦点を当てた介入は,表 19. 12 にお
いて要約される。
41
42
43
Discussion 考察
家族介護者へ向けた介入は,肯定的に受け入れられ,有益で必要なものとして認識され
ているようである。Stewart et al. (1998)と Stewart et al. (2006)の両方の研究におい
て,ピアサポート(友人などで互いに助けること)や経験した介護者による供給は,支援
の認識を高める。介護者は,基本的な一般的経験が,精神的,肯定的支援の提供において
重要であると報告した(Stewart et al. 1998, Stewart et al. 2006)。これは似通った状況にお
いて,他の介護者と結びつくために提供されるサービスを使用するインターネットに基づ
いた研究の再検討によって支援されているようである(Pierce et al. 2004)。しかしながら,
量的な結果は,あらゆる場合において,介護者の結果に対する関連と示されていない。加
えて,脳卒中患者個人に与えられる役割と家族の一員としての介護者に与えられる役割と
いう,どちらも含まれる方法としての支援を提供することがより適切であるようである。
友人などによる介入のケースでは,一人で介護を提供するという困難さが報告されている。
(例えば,脳卒中患者の側における不快や嫉妬など)(Stewart et al. 1998)。その場合,介
護者/患者の関係の一部として,脳卒中患者を含める必要性は認められる。そして,脳卒
中者のための同様の介入の追加が提案された。Stewart et al. (2006)において,peer helper
(同等の人の援助)の介入は,直接(直に)よりむしろ電話を経由して提供される。脳卒
中患者におけるこの実施の影響や,介護者/患者の関係における影響は報告されていない。
single study において,成人介護者のセルフケアの有効性と満足できる状態(幸福)におい
て心理教育的介入の有効性を調査した(Won et al. 2008)。全体的に,参加者は,健康の危
険と幸福において改善を示した。しかしながら,65 歳以上の介護者はより小さな改善を示
した。加えて,介護受給者の病気の負担(苦労,心配)は,より大きな負担が,尐数の変
化と関連するような,健康の危険行動における変化と関連した。
Conclusions Regarding Social Support Interventions for the Caregiver
介護者のための社会的支援介入に関する結語
Peers の介護によって提供される支援は,介護者において肯定的な効果を持つ可能性があ
る。社会的支援介入において,介護者と脳卒中患者両方を含むことが重要である。
看護師と他の介護者の両方と連絡を通した情報の提供と支援の提供するオンラインプログ
ラムにおける参加は,認識する精神的支援,身体的援助や介護者の健康の改善と関連がな
44
い,という中等度(Level 1b)の根拠がある。
構築された心理教育的プログラム(例えば,介護のための powerful tools)における参加
は,健康(幸福)を改善し,身体的健康の問題へ導く行動を減尐させる可能性がある。
脳卒中者のための介護の経験を共有する同僚から受ける支援は,介護者において肯定的
な影響を持つ可能性がある。
19. 2. 3 family Interactions and Stroke
家族相互作用と脳卒中
家族は,脳卒中患者のリハビリテーションや地域社会への復帰において重要な役割を果
たすということは明白なようであるが,家族の相互作用と,または脳卒中患者の機能とリ
ハビリテーションの間の関係を調査した研究は尐ない。必ずしも介護者でない親密な家族
のメンバーは,脳卒中後,最初の 1 年間は身体的,社会的そして精神的機能の低下を経験
する(Schote et al. 2006)。脳卒中患者の近親者 64 名の標本において,Schote et al.(2006)
は,患者が入院患者のリハビリテーションに関わっている間,健康関連 QOL において最も
認識される低下を報告した。6 ヶ月までに改善されるが,脳卒中後 12 ヶ月までに,近親者
は精神的,身体的健康の両方の低下を経験する。加えて,脳卒中のように家族のメンバー
の突然の能力低下に直面した時,家族の機能は,脳卒中者の長期間の介護と支援のために
責任を負うようになる時,著しく変化する(Clark and Smith 1999)。親密な家族のメンバ
ーの有効性,精神的支援の提供,家族のコミュニケーション,家族の問題解決,脳卒中に
苦しむ家族のメンバーに対する家族の心構えはすべて,回復過程に影響を与える(Palmer
and Glass 2003; Bleiberg 1986)。脳卒中患者の日常生活活動状態と家族の態度との間の関
係において,Adker et al.(1969)による先行研究を引用した Bleiberg(1986)は,120 名
の脳卒中患者と彼らの家族において調査した。患者の ADL スコアに対する肯定的に関係す
ることが発見された家族の態度は,神経質でないような患者の家族認識,患者がより活動
的になるという家族の願望,患者が可能な限り自立して ADL を実施する家族の願望,患者
が負担でなく,再入院を回避するための家族の願望という家族の認識を含んだ(Alder et al.
1969; Bleiberg 1986)。脳卒中後,家族機能を調査した研究は,表 19.13 に要約される。
45
Discussion 考察
脳卒中後の家族の相互作用に注目すると,ある研究は,脳卒中の家族と健康な家族の間
において,意欲,couple functioning(夫婦機能),そして健康状態に関して尐し異なるとい
うことを発見した(Bishop et al. 1986)。しかしながら,仕事,輸送,社会化,役割の変化
のような脳卒中の結果として遭遇する問題は,一般的な家族の機能に負担をかける(Bishop
et al. 1986, Silliman et al.
1986)。Clark and Smith(1999a)は,評価された患者の半分以
上と配偶者の 40%は,脳卒中後 12 ヶ月で一般的な機能不全として彼らの家族を評価したこ
とを報告した。12 ヶ月の期間を超えると,家族機能においての変化は次の領域において観
46
察される。;家族の中と外の両方における問題解決能力,家族のコミュニケーションにおけ
る低下,新しい役割と責任への適応における問題の増加,行動制御のより柔軟な形態の導
入,そして情緒的な関与における改善(Clark and Smith 1999a)。
Clark and Smith(1999a)は,配偶者と介護者が,家族の機能不全の状態に関して一致す
る一方で,家族間における認識された家族機能の違いを知らせるであろう長期的な傾向に
おける違いが存在するということを指摘した。解決が困難な家族の責任について広がる期
待(予想)のような問題は,リハビリテーション段階と患者が家族(家庭)に復帰すると
きに再度,取り組むべきである。さらに患者と介護者にとって,争いと長期的な問題の原
因となる認識における違いは,介護者の負担と家庭(家族)の機能不全に寄与する脳卒中
患者の能力の認識において異なるので,識別する必要がある(Kinsella and Duffy 1980,
Knapp and Hewison et al.
1999)。
家族(家庭)の機能は,治療とリハビリテーションの固守において直接的な影響力を有
している。Evans et al. (1987a)によって指摘されたように,乏しい家族(家庭)機能は
治療の固守の乏しさに寄与し,機能的容量の低下あるいはさらなる家族機能の干渉におけ
る悪化という結果をもたらす。加えて,家族の変動は患者の再入院に 28%以上の割合にて
寄与する傾向がある(Ecans et al. 1987b)。治療原則へ固守する家族の特徴は,下記のよう
に要約される。
(1)彼らは明確で直接的に情報を交換する。
;
(2)彼らは効果的に問題を解
決する。
;(3)彼らは互いに強く,感情的な関心を示す(Ecans et al. 1987b)。これらは,
リハビリテーション過程を促進すし,再入院の予防と同様に,良好な家族機能の特性であ
った。
家族機能と治療への固守との間に関連性があり(Evans et al. 1987),ADL 機能および社
会的機能を増大させ(Clark and Smith 1999b),そして,脳卒中後の介入では家族関係に
取り組み,その関係を明らかにするように計画されるべきである。介入に焦点を当てた家
族(家庭)の発展は重要である一方,家族(家庭)機能に介入するための,評価の実施や
試みにおける困難さが認知されるべきである。評価や介入の試みは,立ち入った,そして
リハビリテーションの活動範囲外であるように思われるかもしれない(Clark and Smith
1999a)。家族機能における脳卒中の効果と家族のカウンセリングへの対応に関する包括的
情報は,再統合(復帰)の過程に適応することにおいて家族を支援する(Clark and Smith
1999a)。
47
Conclusions Regarding Family Interactions and Stroke
家族(家庭)介入と脳卒中に関する結語
認識された家族機能の不全は脳卒中後に一般的なものである。しかしながら,家族機能は
治療の固守,ADL の遂行,社会的活動に影響を与える。脳卒中患者は良好な家族機能に伴
ってより良くなっていく。良好に機能する家族を特徴づけるものとしては,有効なコミュ
ニケーション,良好な問題解決または良い適応的対応,そして強い感情的な関心である。
脳卒中患者は良好に機能する家庭に伴ってより良くなる。
19. 2. 4 Information Provision and Family Education
情報提供と家族教育
家族の適応における脳卒中のもたらした影響,そして介入としての家族教育の有効性は
かなりの重要性を得ている。Cassas(1989)は,退院前の家族教育と家族の適応の間の関
連が存在するかどうかを見いだそうとした。調査手段として,“Experience in Cpoing with
Stroke”が開発され,166 名の脳卒中の家族(家族)に郵送した。Cassas は,脳卒中患者
の家族に提供された教育と家族の適応との間に有意な相関関係を検出できなかった。しか
しながら,回答者の大部分はより多くの情報の必要性を示し,情報が彼らの状況により良
く立ち向かうために彼らを支援することを感じるということを示した。Bakas et al. (2002)
は,家庭の環境に退院した 6 ヶ月以内の患者の介護者への必要性,戦略,助言を調査する
ため脳卒中者の家族の介護者 14 名の女性と面接を実施した。これらの面接から,必要性と
関心の 5 つのテーマが確認(識別)された。
;情報,感情と行動,身体的介護,手段的介護,
介護に対する個人的反応。
重要であるにもかかわらず,家族教育介入の課題に関しては問題が残ったままである。
Stein et al.(2003)は,リハビリテーションを経験する脳卒中患者の 50 の家族のメンバ
ーを調査した。著者らは,脳卒中リハビリテーションを受ける患者の家族メンバーの脳卒
中の病因と機能的アウトカムに関する知識が限定されているということを観察した。
退院における機能的アウトカムを予測する家族のメンバーの能力は,現在の機能的状態の
知識以上に悪い。Stein et al. (2003)は,さらなる努力(試み)でリハビリテーションを
経験する患者の家族のメンバーの知識の水準を高めなければならないと推薦している。イ
ギリスにおける調査では,脳卒中についての情報供給(特に自身の脳卒中について)
,最も
頻繁に対処されていない若年患者の経済的必要性,介護を伴わない支援(社会活動)
,知的
満足感,適応,移動手段,社会生活そして理学療法が明らかにされた(Kersten et al. 2002)。
より最近の研究では,尐人数のグループにおける脳卒中患者とその介護者へのインタビュ
ーが行われた(Harer et al. 2005)。収集されたデータから,下記の 3 つのテーマが明らか
にされた;顕著で持続している心理学的,感情的問題,患者と介護者のための情報の不足,
48
地域社会におけるサービスとの接点を促進するプライマリーケアの重要性。一般的に,参
加者は,より多くの情報は,脳卒中,脳卒中との共存,他の人とのかかわりの機会や環境
適応,有益な助言を含む広範囲の問題に加えたサービス利用について必要であると感じた。
全体的に,患者は利用可能な資源によって対処されない情報と支援のための必要性を含ん
だ固執した要求を表す(Hare et al. 2005)。どんな情報が脳卒中患者に日常的に提供されて
いるか,この情報が専門家の観点から適切で/または効果的であると認識されるかどうか
を究明するために,Hoffman et al. (2007)は学際的脳卒中チームの 20 名のメンバーを調
査した。大部分の参加者は,彼らの患者の 25%またはより尐ない患者に対して情報を提供
した。一方で,約 1/2 は介護者に対して情報を提供した。情報は最もしばしば文書の形式で
提供された(個人によって,地域に基づいた組織によって,運動シートのような形式上の
資料によって作られる)。しかし,頻繁に,文書で書かれた情報は言語で提供された情報を
補うために使用された。情報の提供が,回復と医療の効果(結果)において肯定的な影響
を持つと認識される一方,大部分の参加する専門家は(90%)は,患者と介護者はめった
に適切な教材を入手しないということを考えた。脳卒中チームの参加者は,急性期の処置
中の重要なトピックは,脳卒中自身に関する情報(脳卒中は何か,その原因は何か)とリ
ハビリテーション中に何を予期すべきかを含むということを考えた。退院後,専門化は,
患者は脳卒中支援団体と地域社会の資源,家族/結婚における脳卒中の影響,さらなる支
援/情報をどこで得るべきかに関して情報を受けるべきと感じた。
脳卒中後の家族(家庭)の介入を記載する 10 の研究の 1998 年におけるレビューでは,
ほとんどの介入は情報提供に焦点を当て,教育の介入は脳卒中について介護者の知識を改
善させるものであるということを指摘した。支援の社会的側面を含む研究は,より小さい
最終的な結果のみ提供した。おそらく,より乏しい計画やより主観的な結果の使用が原因
である(Korner-Bitensky et al. 1998)。コクランレビューでは,情報提供の効果と/または
脳卒中についての知識の主な結果における教育と脳卒中サービス,そして健康と心的状態
における影響に着目した 17 の完了した試験を確認した(Smith et al. 2008)。表 19. 14 は,
そのレビューに包含された研究一覧である。
49
確認された研究からのデータに基づいて,Smith et al. (2008)は,全体的に,情報提供
や教育状況における参加は,脳卒中についての知識の改善と関連がある。そして,いくつ
かの入手する情報で満足感が増加するということを結論付けた。加えて,より相互に作用
する方法における情報の提供介入,患者と介護者の側における関与のためのより多くの機
会の提供の介入は,患者の鬱や不安に関して,受け身の介入以上により効果があるという
いくつかのエビデンスがあった。分析は,研究結果を評価するために一貫して使用される
方法の欠乏(不足)によって制限された。統合分析(Pooled analyses)では,知識,心的
状態,死亡率,そして満足感に関するいくつかの特有の質問の結果のため可能であった。
残る結果は,質的に評価された。
多くの RCT は,情報提供と/または患者と家族のための結果を改善するための手段とし
て家族(家庭)への教育,練習について調査した。これらの研究は,表 19. 15 において要
約される。
50
51
52
53
54
55
56
Discussion 考察
上記に要約では,介入の方法と評価項目の両者おいてかなりのバリエーションが示され
ている。一見したところ,脳卒中患者とその家族へ情報提供と教育の有用性に関するエビ
デンスは混乱が生じている。しかしながら,基本的な介入方法(一括の情報や資料の提供,
57
相互作用的教育,関連スキルの特別なトレーニングの提供)に基づく効果による有効性を
提供することは容易であろう(表 19.16)。すでに証明されているように(Forster et al. 2004,
Visser-Meilly et al. 2005, Smith et al. 2008),有効性の量的または統合的な概観は,研究間
におけるアウトカムの不均一性が認められ困難である。
58
59
用いられた介入方法に基づいてエビデンスを見た場合,情報提供や教育の試された様式
のすべては,一般的に評価された結果の変化において肯定的な効果を持つようである。単
なる情報提供ではもっとも効果が限られたものであった。しかしながら,家族の支援ワー
カーやカウンセリングのどちらかの付加は,情報資料の提供に関連した肯定的な効果を増
加させる可能性がある(Mant et al. 2000,Clark et al. 2003)。情報の提供を脳卒中者と主要
な介護者の特有の必要性にあわせることは,この戦略(方法)の効果を強化する可能性が
ある(Hoffmann et al. 2007)。
情報資料と同様に,グループ教育セッション(Group education session)は,脳卒中に
関連した知識の水準を増加させる可能性がある(Evans et al. 1988; Rodgers et al. 1999;
va den Heuvel et al. 2002, Schure et al. 2006, Green et al. 2007)。加えて,グループ教育セ
ッションは,鬱の減尐,自己効力感の改善,認識される精神的支援の増加(Schure et al.
2006),適性の力の増加,介護者の負担の減尐(Hartke and King 2003)させるような付加
的な肯定的効果と関連がある可能性がある。特殊な技術練習はまた,介護者(Grant 1999;
Grant et al. 2001,Kalra et al. 2004)と患者の結果の両方において肯定的な影響を持つよう
であった。そして,常に,鬱の減尐と関連した。特に,基本的な看護や日常の介護の援助
における実践本や実習の介護者への提供は,鬱や不安,QOL を含む範囲において,介護者
と患者の両方の結果を改善する結果となった(Kalra et al. 2004, McCullagh et al. 2005)。
介護者の技術練習もまた,入院期間の短縮と健康および社会支援コストに使用する資源の
減尐に関連した(Patel et al. 2004)。
60
Conclusions Regarding Information Provision and Education Intervention
情報提供と教育の介入に関する結語
介入形式の多様性を通して,情報と教育の提供に関連した肯定的な利点の強いエビデンス
(Level 1a)がある。教育セッションは,情報資料のみの提供以上に,結果においてより
大きな効果を持つ可能性がある。
技術練習は,鬱の減尐と関連するという強いエビデンス(Level 1a)がある。基本的な看
護技術における練習は,介護者と脳卒中患者の両方の鬱,不安,QOL の結果を改善すると
いう中等度のエビデンス(Level 1b)がある。
情報提供と教育の介入は,結果において肯定的な影響を持つ。
基本的な看護技術を含む実用技術の練習は,鬱,不安を減尐させ,介護者と脳卒中者の
両方の QOL を強化する可能性がある。
19.2.4.1 Perceived Needs for Information, Education and Training
情報,教育,練習のための認識される必要性
介護者は,提供する適切な介護と支援において経験がほとんどない場合,脳卒中者に対
する熟練した看護支援を提供するべきということに気づくであろう。彼らはしばしば練習
や教育を受けておらず,それゆえに,試行錯誤によって新しい役割の中で何が彼らに必要
とされるか学ぶ以外に選択がない(Silverstone and Horowitz
1987)。介護者の役割は,一
般に認められた義務のように単純に認識されるかもしれない(Sit et al. 2004,Hare et al.
2005)。脳卒中患者への適切な介護と支援をどのように行うべきかの学習に関する要求は,
介護者によって圧倒的に認識されるであろう(Grant et al. 2004a)。患者と介護者の認識さ
れる必要性に関する情報の提供を調査する研究は,表 19.17 に要約される。
61
62
家族や日常の介護者はしばしば,役割に対して準備できていないと感じる。介護者は,
適切な介護や支援の提供において経験がほとんどない場合,脳卒中者に対して熟練した看
護支援を提供しなければならないということに介護者自身が気づくであろう。彼らはしば
しば,彼ら必要とする情報がほとんどなく,トレーニングや指導も受けることがない。そ
れゆえに,介護者は,施行や誤りによって,新しい役割において彼らが何を必要とするか
学習する以外に選択はないかもしれない。尐しの教育を受けた介護者は,一番小さな情報
の支援を受ける傾向がある,おそらく一般的に使用される書面での情報が原因であると思
われる(Sit et al. 2004)。Hoffmann et al. (2004)は,脳卒中患者と介護者に提供された
書面情報の大部分は,受け取った人の平均読書を上回る言葉で書かれており,それゆえ使
用が制限されるということを示唆した。
情報と教育の提供は,脳卒中患者と彼らの介護者によって明らかにされる重要な必要性
であるが,しばしば十分実現されていない。患者と家族/介護者は,脳卒中の危険,再発
と二次的予防,患者の安全,認知と精神的問題,脳卒中の特有でそして個別的な結果,薬
剤管理,コミュニケーション困難,地域社会資源と脳卒中支援団体の分野での情報の必要
性を最もしばしば確認する。医療専門家,特に一般的に実践している者,神経科医,理学
療法士などは,患者とその介護者にとって第一の情報提供者とみなされる(Sit et al. 2004,
Wachters-Kaufmann et al. 2005)。
脳卒中患者に対し,日常的に何の情報が提供されるか,そしてこの情報は医療専門家の
視点から適切で/または効果的に認識されているかどうかを決定するために,Hoffman et al.
(2007)は学際的脳卒中チームの 20 名のメンバーを調査した。ほとんどの参加者は,彼ら
の患者の 25%またはそれより尐ない患者に情報を提供した。一方,参加者の約 1/2 は,介
63
護者へ情報を提供した。情報は最もしばしば,書面の形式(個々の団体によって作成され
たもの,地域に基づいた組織(団体)からのエクササイズシートのようなハンドアウトの
形式のもの)で提供された。しかし,頻繁に,書面での情報は言葉で提供された情報を補
足するため使用された。情報提供が回復と健康の結果において肯定的な影響を持つと認識
される一方で,ほとんどの参加する専門家(90%)は,患者と介護者は適切な教育的資料
をめったに受け取らないと考えた。脳卒中チームの参加者は,急性期の処置中の重要なト
ピックは,脳卒中自身に関する情報と(脳卒中は何か,その原因は何か)とリハビリテー
ション中に何を予期すべきかを含むということを考えた。退院後,専門家は,患者は脳卒
中支援団体と地域社会の資源,家族/結婚における脳卒中の影響,さらなる支援/情報を
どこで得るべきかに関して情報を入手すべきと感じた。これは,患者中心の研究において
確認される情報の必要性と対照的である。
King and Semik(2006)による最近の研究では,脳卒中後 2 年間をこえる 93 名の介護者
に対して,満たされていない必要性の分類を報告した。入院中と脳卒中後自宅での最初の 2,
3 ヶ月において,介護者は,必要性が満たされなかった重要な領域として介護(スキルとマ
ネージメントに関する助言のための同僚とのコンタクトを含めたケアとそのスキルの学習)
のための準備を報告した。全体的に,在宅医療,精神的支援,脳卒中の予防的情報,同僚
と話すこと,余暇サービス(患者の)
,職業上のサービス(患者の)
,カウンセリング,支
援団体,ストレス管理と休息は,介護者の参加者の 1/2 以上によって重要なサービスとして
評価される(みなされる)
。重要と評価するにもかかわらず,多くの支援サービスはまれに
しか使用されていない。例えば,同等の人と話すことは,参加者の 83%によって重要とし
て評価されるが,実際は 32%しか,そのような資源を利用しなかった。同様に,休息とス
トレス管理のような支援サービスは,重要と評価されたが,まれにしか使用されていない。
もっとも頻繁に使用されている地域社会支援サービスは,在宅医療と精神的支援であった。
不運にも(残念なことに)
,サービスの重要性とその利用頻度の間における不釣り合いの理
由については述べられていなかった。
Conclusion Regarding Perceived Need for Information, Education and Training
情報,教育,練習にとって認識される必要性に関する結語
情報の受取は,脳卒中患者と彼らの家族/介護者にとって非常に重要であるが,重要であ
ることを認識する項目について,受け取る適切な情報は比較的尐ない。介護者は,脳卒中
者の介護にとって必要とする技術において適切な練習をめったに受けない。
脳卒中介護を含む医療専門家は,患者と介護者のための教育の重要性を認めるかもしれな
い。しかしながら,受け手の必要な情報に基づいた適切な情報提供は比較的尐ない。加え
64
て,書面による資料(材料)は,対象とする受け手の教育/読解レベルを適合させる(合
わせる)べきである。
情報と教育は非常に重要であると認識されるが,日常の(普段の)介護者はめったに彼
らが必要とする適切な情報と練習を受けない。
19.3 余暇 Leisure
19.3.1 Social and Leisure Activities Post Stroke 脳卒中後の社会的または余暇活動
脳卒中患者とのインタビューでは、社会的隔離の報告に加え余暇活動への参加減尐が明
らかとなっており、その双方が患者やその非公式な介護人にとって問題を引き起こす可能
性がある(Pound et al. 1998)。社会活動や余暇活動に関して脳卒中の影響を調査している
個々の研究を Table 19.18 に要約した。
65
66
67
Discussion 考察
社会活動や余暇活動の減尐は、脳卒中発症後では一般的である。Niemi ら(1988)は、調査
した脳卒中患者では余暇の領域において 80%の悪化を報告していることに言及した。
Belanger ら(1988)は、退院後6ヶ月にサンプルに含まれる脳卒中患者 129 人の 50%以下が
定期的な身体活動に参加しており、50%以上の者は屋外での余暇活動に参加してないと報
告した。コントロール群と比較すると(定義されていないが)、テレビ観賞はコントロール群
より脳卒中患者によって頻繁に行われていたが、クラフトへの参加や雑務をするような
個々の余暇活動はほとんど行われなかった(Belanger et al. 1988)。そのような悪化はしばし
ば将来の不確かで暗い展望によって特徴づけられ、結果として幸福感が尐なくなるかもし
れない。ほとんどの場合女性や高学歴のある者は、脳卒中後の社会活動や余暇活動に従事
しそうにない(Labi et al. 1980)。Labi(1980)らは、body image や社会的地位(脳卒中後双方
とも起こる)に偉大な価値を置いている女性や高学歴者は社会活動での関与の続いて起こる
不足の一因となると提案する。Davidson と Young(1985)も、若い脳卒中患者は対人関係や
余暇生活でより大きな損失を多く経験しそうである言及した。Lawrence と Christie (1979)
は、脳卒中患者にとって自身の身体的 disability は、他の disability の反応よりあまり重要で
はないと述べた。さらに同居している配偶者・介護者がいる患者やニードに関心を向いて
もらえる患者は、頻繁に社交的に携わる傾向になかった。患者は日中のほとんどを何もし
てないことを指摘され、家庭での活動に関与なかった (Puttervill et al. 1984)。興味深いこと
に患者が身体的依存から回復した後でさえ、通常の社会生活へ戻らなかった(Labi et al.
1980)。Puttervill(1984)らは、この関与不足がそのような責務を実施できない原因ではない
が、患者は身体的 disabilities があるためにそのような責務を管理する方法を知らないと言
及した。家を離れることを必要とした新たな社会活動を引き受けることは、見知らぬ施設
やたいていの厄介な施設でトイレを心配する多くの患者にとって危険があると思われた
(Davidson and Young 1985)。したがって患者は、在宅にいる傾向にあり、言い換えると多
くの脳卒中患者にとって隔離と孤立になるかもしれない(Davidson and Young 1985)。さら
に活動の損失はしばしばうつ状態と直接関連し(Feibel and Springer 1982)、幸福感を減尐さ
せた(Sveen et al. 2004)。
うつ状態自体が脳卒中後の主な心配事であるとすると、人間関係や余暇生活の悪化は、
脳卒中後のうつ状態が発展していくさらなるリスクを回避するために取り組んでいく必要
がある(このレビューの Chapter 18 depression の discussion を参考)。脳卒中患者が地域で
再び差別がなくなり始めた時、彼らは以前の社会活動や余暇活動を再開したり適応してい
くのに必要な技術・新たな興味に従事するのに必要な技術を習得しなければならない。そ
のような習得や適応は、日常生活での機能的自立の発展だけでなく、body image や社会的
68
地位の変化の理解に取り組むことを必要とする。
社会不活動の危険性のある脳卒中患者の早期発見を促すためにSchepers (2005)らによる
最近の研究では、Frenchay Activities Indexで評価されるものとして社会不活動の予測に使
用される単純なルールを作ろうとした。リハビリテーションでの入院や19点のcut-offスコア
(Table 19.19参考)で得られた情報を使用して、提案された手段は脳卒中後1年において、社
会の不活動/活動の予測で82%の感度と76%の特異性(AUC=0.85)があった。
FAIスコアの解釈は注意して行わなければならないと言及している(Schepers et al. 2005,
Salter et al. 2005)。スケールの多くの項目は家事活動と関連があり、それは従来の家庭モデ
ルである女性によって行われる。これは女性でFAIスコアが高騰し、(それらの活動に必ずし
も関わらないかもしれない)男性でFAIスコアが低下する結果となるかもしれない。この徴候
の補助となるさらなる評価が必要となる。
Conclusions Regarding Leisure Activities Post-Stroke
脳卒中後の余暇活動に関する結論
社会活動や余暇活動の悪化は脳卒中後によくみられ、女性や若者や高学歴者で最も多くみ
られる。どのように他者が彼らのdisabilityをみるかについての認識と彼らが脳卒中後にど
のように対処できるかについての認識は、経験される社会的孤立の程度に影響するかもし
れない。
社会活動や余暇活動の悪化は脳卒中後によくみられる。
69
19.3.2 Leisure Interventions and Social Participation
余暇への介入と社会的参加
包括的な作業療法(OT)介入の影響における2003年の解析では、ADL・extended ADL・社
会参加で尐しではありながらも有意で良好なOT介入の影響が確認された(Steultjens et al.
2003)。余暇療法も総合的な作業療法介入の一部であるかもしれないが、余暇療法に関連し
た特異的効果とは断定されなかった。加えて、2003年の解析を含む研究では非常に異質で
あった;介入は、研究方法・期間・強度・outcomeの評価という点で異なった(Landi and
Bernabei 2004)。その上、社会参加の評価はあまり明確にされなかった。より最近のメタア
ナリシスが、Walker(2004)らによって行われ、脳卒中患者での余暇に基づくものの影響、
コミュニティ、ADL、extended ADL 、余暇活動における作業療法が評価された。
Walker(2004)らは9つの完成したRCTsを確認し、ADLと余暇療法の両方もしくはどちら
か一方の条件を盛り込んだ。データが得られ8つの研究を盛り込んだ(Table 19.20)。一次判
別outcomeは、Nottingthem Extended Activities of Daily Living Scaleでのextended ADL
(EADL)スコアであった。ほかのoutcomesは、Barthel Index (personal ADL or PADL)の得点・
General Health Questionnaire・ Nottingham Leisure Questionnaire・死亡するまでの介入や
研究を含んだ。集まった解析を使って、地域の作業療法を受けた655人の患者のデータが検
討された。そのうち174人の患者は余暇療法の介入を受け、481人の患者はADLの具体的な
介入を受けた。全体的に地域の作業療法(OT)は、extended ADLのスコア(加重平均差=1.30)
の増加と余暇活動のスコア(加重平均差=1.51)と関連があった。介入タイプが検討されたと
き、余暇療法は余暇活動スコアの改善と関連があった(加重平均差=1.96)が、extended ADL
やpersonal ADLとは関連がなかった。ADLの介入は、extended ADLスコアの増加と関連が
あり(加重平均差=1.61)、余暇活動の増加に関連がなかった。評価方式とNottingham Leisure
Questionnaireでの余暇活動スコアとの間の有効な相互作用は、バイアスが発生する原因の
1つとみなされた。社会参加での余暇療法介入の影響を調査している研究は、Table 19.21
で要約する。
70
71
72
Discussion 考察
余暇療法を調査している3つのRCTsの1つだけが、従来の療法もしくはコントロール療
法と比べて余暇療法の有益で持続的な効果が証明できた(Drummond and Walker 1995)。
Jongbloed and Morgan(1991)とParkerら(2001)の双方の研究は、それぞれ5回・10回と限
定された治療期間の長期にわたって実行された。さらに双方の研究からセラピストは、ADL
もしくは余暇に基づいた療法のはっきりとした区別を主張することは困難であると報告し
た。余暇療法に賛成した意義ある成果を証明しているDrummondとWalker (1995)の研究だ
けで、前者の社会活動や脳卒中リハビリテーションの回復に関して余暇活動の影響とは、
はっきりとした結論が出せない。それら3つのRCTsからのデータを組み合わせている集め
られたデータのメタアナリシスの結果は、実際には報告された余暇活動に関して余暇療法
に関連した適度な利益があると提案した(Walker et al. 2004)。しかしながら、この集められ
た解析に含まれる多くの患者はまだかなり尐なかった(n=174)。加えて中程度レベルの不
均一性は、介入の終わりにoutcome measuresと関連し、測定バイアスの可能な原因が確認
された。余暇活動の改善を目的とした特有の療法は、余暇活動だけを改善するということ
を指摘したことは興味深い。余暇活動の利益は、extended ADLやpersonal ADLに及ばなか
73
った(Walker et al. 2004)。
1つのRCT(Desrosiers et al. 2007)は、個人の自己啓発を通して余暇活動と経験をさらに
良くするために考案された在宅余暇教育プログラムの影響を調べた。プログラムは、余暇
に関する個人の自主性を促すための認識の発展と特異的な能力の発展に焦点を合わせる。
プログラムの終わりまでに参加者は、期間や回数の点からみて活動の改善を経験した。し
かしながら、これは介入を終わるための条件の1つが「彼女/彼の生活での有意義な余暇活
動」の統一をしたので必ずしも驚くことではない(p.1096)。介入への参加者は幸福感や健康
に関するQOLの改善に関連しなかったが、コントロール群と比べたときにうつのわずかな
兆候の存在と関連した。地域に密着したグループエクササイズもまたその有効な社会的利
益が調べられている。身体的パフォーマンスでの満足感と同様に身体的機能の向上に効果
的である一方、グループエクササイズは、Reintegration to Normal Living Indexでの測定に
よると満足感を改善する手段としてand/or社会的パフォーマンスや個人的な関係で安心さ
せる手段として効果がないとみられる(Eng et al. 2004)。
さらなる調査によって余暇療法の役割を確立することを要求し、社会活動や余暇活動に
従事する地域住民の脳卒中患者を助ける介入と関連づける。余暇療法介入の有効性を関連
付けるものとして余暇療法の強度と継続の役割も調査されるべきだ。
Conclusions Regarding Leisure Therapy Intervention Post-Stroke
脳卒中後の余暇への治療的介入に関する結論
個々に考慮していくと、脳卒中後や退院後の余暇療法の利益に関して不一致なエビデンス
(Level 4)がみられる。しかしながら、同じRCTsから集められたデータを使用した最近のメ
タアナリシスは、余暇療法に関連した余暇活動の適度な改善を報告した。
認識と能力の発展に焦点を合わせた余暇教育プログラムへの参加は、活動の回数や継続で
の改善・うつ症状の減尐に関連があると適度なエビデンス(Level 1b)がある。
余暇療法は結果として余暇活動の改善となるかもしれない、しかしながら脳卒中後の余暇
療法の利益は決定的には示されていない。
19.4 Sexuality 性行為
1975 年に、World Health Organization は性的な健康の重要性を認めた。それは「性行為
の身体的、感情的、知的、そして社会的な側面の統合、つまりそれは明らかに質を向上し、
個性、コミュニケーションと愛情を促進する方法」と定義した。50-92 歳の個人における
研究で Gott ら(2003)は、このグループの高齢者の間で、性交は密接な感情的な関係にお
74
ける重要な要素を保持すると報告した(Gott et al. 2003)。しかしながら、性交は優先順位
が低く、それ自身加齢に起因するだけでなく、能力障害や、性的活動に対する障壁を作る
ような健康上の問題による(Gottee et al. 2003)。脳卒中後の性交の機能障害は、脳卒中患
者の幸福感に有意な影響を持つような問題であることが報告されている。しかしながら脳
卒中患者に対して重要であるにもかかわらず、それはリハビリテーション中にしばしば過
小評価されるか、あるいは単に無視されている(Buzzelli et al. 1997; Murray and Harrison
2004)。
19.4.1 Decreased Sexuality Following Stroke 脳卒中以降の減尐する性行為
18 歳から 65 歳の 315 人の脳卒中生存者の英国の調査は(Kersten et al. 2002)、233 人が
脳卒中発生以降、
彼らの性生活の変化に関する質問に回答した。233 名の回答者のうち、64%
は困難さを報告した。脳卒中発生は、存在する親密な関係性に負の影響を持つかもしれず、
新たな関係性を獲得できないように見える。脳卒中発症 2 年後の脳卒中生存者へのインタ
ビューにおいて、Murray and Harrison は(2004)、脳卒中生存者が負の自尊心を抱いてい
る傾向があり、彼らが魅力を感じることができる他者を信頼できないことを発見した。ロ
マンスや性的関心は、脳卒中生存者や彼らの重要な他者に対して重要であると認識されて
いるような問題である(Buzzelli et al. 1997; Murray and Harrison 2004)。しかしながら、
脳卒中生存者の性的な関連性について実施された研究は尐なく、性機能や脳卒中以降の関
係性や親密さを改善させるような記述はさらに尐ない。
脳卒中発生以降の性機能の変化を調査したような観察的な研究は Table 19.22 にサマライズ
されている。
75
76
77
78
Discussion 考察
Table 19.22 でサマライズされている研究から、性的な活動の減尐あるいは禁欲は、脳卒
中以降一般的である。幾つかの研究では、参加者の 80%以上が性行の頻度の低下を報告し
ている(Buzzelli et al. 1997)。Fugl-Meyer ら(1980)は、この研究で評価された脳卒中生
存者のうち約 3 分の 1 が性交を完全に止めたことを報告した。Leshner ら(1974)は、45%
の患者が完全に行為を中止したことに付随して、成功の頻度の有意な低下を記述した。
Kinsella and Duffy(1980)は、失語症患者のうち 83%が、脳卒中後性的な関係を持つこと
を中止したことを報告した。幾つかの研究は、性欲は変化しないことを報告している(Bay
et al. 1981)一方で、他の研究は脳卒中患者の実質上の数の減尐を報告している(Carod et
al. 1999; Cheung 2002; Choi-Kwon and Kim 2002)。
もし一人が参加できなかった場合、脳卒中後の性的な不満足感の普及は非常に高い。
Carlsson らによる近年の研究(2007)によると、脳卒中患者と彼らのパートナーの 50%は、
双方ともに自分たちの性生活に不満足感を抱いていた。双方のパートナーは、25%の夫婦
のみが満足していると感じていることを報告した。性的な不満足感に対する理由は複雑で
あり、必ずしも目に見える機能の低下に関連しない。社会的または心理学的な要因は、性
交の頻度や性行為に伴う満足感の低下に重要な役割を演じている(Korpelainen et al. 1999;
79
Cheung 2002; Carod et al. 1999)。Cheung(2002)は、年齢や機能的な能力障害の増加、
脳卒中が性行為に影響を与えるという確信、性的な満足感が低下することに関連するよう
な、自分のパートナーとのコミュニケーションの不足や参加することへの気の進まなさを
識別した。陰茎の勃起、腟の潤滑や性的興奮の機能不全は脳卒中後に一般的に見られる。
Monga らは(1986)、自分の研究における男性患者のいない脳卒中の前に、性的な問題を
有していることを認め、そのほとんど全ては勃起であった。脳卒中後、男性患者の 38%の
みが勃起でき、58%は、性的な問題を持っていることを報告した。女性患者の 43%が性的
興奮を経験し、7%のみが脳卒中を患う前に性的な問題を報告した。脳卒中後 11%のみが性
的興奮を経験し、ほぼ 1/2 が性的な問題を持っていることを報告した(Monga et al. 1986)。
しかしながら 2,3 の研究(Sjogren and Fugl-Meyer 1981)は、不満足感に対して覚醒機能
障害が直接的に関連した。
パートナー間での性的な活動性の低下は、一部分、自分の配偶者との性的関心を討議す
る、自分の無能力さや性的関心に対する全般的な姿勢、性的行為に参加することへの気の
進まなさに起因するだろう(Korpelainen et al. 1999; Cheung 2002; Giaquinto et al. 2003)。
もちろんこれは、患者のボディイメージや自尊心の低下や患者の能力障害や配偶者による
身体の変化を受容することの困難さの結果である。失語症を伴う人は、減尐した性的活動
を始めるための能力あるいはそれとなく自分のパートナーとの性的な合意をとりつける困
難さに加えて体験するかもしれない(Lemieux et al. 2001)。Giaquinto ら(2003)は、それ
は性的活動の中断と考えられるような医学的なファクターよりもむしろ心理学的なファク
ターであることを観察した。Giaquinto ら(2003)と Buzzelli ら(1997)によって記述され
たように、患者のパートナーは性的活動の低下の一因である。多くは再発や苦悶の恐怖、
刺激の不足、または性的活動を励ますことを彼らが邪魔をすることへの嫌悪でさえ経験し
た。しかしながら、自分のパートナーを伴う性的な関係性の再開は、多くの脳卒中生存者
にとって重要である(Bray et al. 1981; Cheung 2002; Buzzelli et al.1997; Murray and
Harrison 2004)。脳卒中後の性行為に関する治療的介入の影響に関するデータはない。それ
ゆえわれわれは、根拠に基づいた治療に関する結論を導き出すことができない。
それでもなお幾つかの治療は、経験を基礎として行われる。性行為についての開かれた
質問はリハビリテーション中にされるべきであり、社会の中に移った後に繰り返し再検討
されるべきである。Edmans(1998)は、退院前に提供される知識やアドバイスは、脳卒中患
者とその配偶者に有益であるように自覚される。また、一般的に夫婦は、性的な活動の話
題をリハビリテーションに含めるべきであると感じていたことを報告した。開かれた論議
は、近年、一部が公表されているオランダの臨床ガイドライン(van Heugten et al. 2006 –
see Table 19.23)で作成された勧告が基礎である。介入研究の不足は、これらの勧告が、
限られた、そして一致したレベルのエビデンスの基礎とされる(van Heugten et al. 2006)。
近年、AHA/ASA に支持されている実践ガイドラインもまた、リハビリテーション中と再び
社会へ戻った時の双方で性的な問題の議論を推奨している(Duncan et al. 2005)。患者と配
80
偶者は、性的活動が差し支えないこと、満足感と親密さを獲得できること、そして性的活
動は他の脳卒中の結果ではないという自信を取り戻すべきである。しかしながら、セルフ
ケアのような主要な生活活動の依存度や、性的活動の低下に起因する触れるための障害さ
れた exteroception は、脳卒中患者において顕著であった(Sjorgen and Fugl-Mayer 1982)。
それゆえに、患者と配偶者の双方は運動、感覚、注意障害、易疲労性、そして最も重要な、
身体イメージと自尊心の変化を認識することや適応することが求められている。効果的な
コミュニケーション、関心事の共有や体位や前戯における適応可能なアプローチの開発、
疲労を避けるタイミングの重要性に関する介入が指摘されている(McCormick et all. 1986,
Sjogren and Fugl-Meyer 1982)。McLaughlin と Cregan(2005)による近年の研究は、脳卒中
リハビリテーションの範囲内のヘルスケアにおける専門家(n=13)を調査し、性行為また
は性的な活動に関連する患者からの問い合わせがあるにも関わらず、そのほとんどが適切
なトレーニングの不足のため、これらの主要な問題に言及するのが困難であることを報告
した。筆者らは、性へのリハビリテーションは脳卒中以降、個人の重要な項目として再認
識される必要があり、多職種からなる脳卒中リハビリテーションチームのメンバーは、性
へのヘルスケアにおける適切で包括的なトレーニングを受けるべきであることを指摘した。
19.4.2 Hypersexuality Following Stroke 脳卒中以降の性的過活動
脳卒中以降の性的過活動 hypersexuality に関して 2,3 の研究が行われている。Monga と
Ostermann’s ら(1995)のレビューでの記述によると、患者の性的過活動の興奮性もまた、
倒錯した性行為、半社会的行為の経験であり、食習慣の変化が特徴であった。性的過活動
の患者の管理は困難であり、しばしば性的過活動を受け入れ対処することの患者とパート
ナーの困難さゆえに不幸なリハビリテーションのアウトカムに関連する( Monga and
Ostermann 1995)。脳卒中後の性的過活動を調査した研究は、Table 19.24 に概括されてい
81
る。
Discussion 考察
稀ではあるが、脳卒中以降の性的過活動の 2,3 の事例が記録されている(Monga et al.
1986, Korpelainen et al. 1998)。しかしながら性的過活動のメカニズムや正確な原因は知ら
れていない。
Conclusions Regarding Sexual Activity Post-Stroke
脳卒中後の性的活動に関する結論
性的活動の減尐は、脳卒中後非常に一般的である。性的な意欲はいまだに存在し、性的な
活動に対する主要な障壁は、とりわけ、変化した身体イメージやコミュニケーションの不
足といった身体的な機能障害と心理学的なファクターである。脳卒中後の性的過活動はま
れであり、よく理解されていない。確認された性的な機能障害の治療における研究はなか
った。
性的な問題は、リハビリテーション中に議論されるべきであり、脳卒中の生存者とその重
要な他者に用意がある場合、地域に移った後も再び言及されるべきであるという一致した
意見がある(Level 3)。
性的な活動の減尐は、脳卒中後に非常に一般的であり、身体イメージの変化や、自尊心
の現象、自分のパートナーとのコミュニケーションの不足に関連しているようである。
性的な問題は、リハビリテーション中に、また地域へ移ってからも議論されるべきであ
る。
19.5 Driving 運転
運転能力は、自立性を表す重要な指標である。
「運転能力の回復が、しばしば自立や、共
同体の中への再統合に向かう最終段階を表す」と Churchill(1998 年)によって示されたよ
うに。
82
運転を再開しない脳卒中患者について、その決定が社会的な活動と福祉に消極的な影響を
与えたと報告している(MacKenzie and Paton,2003)。しかしながら、運転能力は、しばし
ば脳卒中に伴う知覚・認知・そして身体的な障害によって危うくされるかもしれない、良
好な視力と反射反応、速い意志決定と鋭敏な記銘力に依存する。
カナダの医師は、法的に運転するために安全ではない患者を識別することに責任がある
一方、そのような評価を基礎づけるためのガイドラインあるいは特定の手段はほとんど存
在しない。更には、ガイドラインは運転における視覚、問題解決、記憶能力や視覚的不注
意などの変化の影響を汲み取ることにしばしば失敗する(Korner-Bitensky et al. 1990)。
セクション 9 の、カナダ医師会が運転への適性について定めたものの 6 版(2000)による
と、
「脳血管機能不全は、発見することが困難な不可能症状の原因となり得る。 もし問題
を疑う理由があるなら、運転することへの適性を判断することにおいて、きめ細やかな経
過と現在の能力低下の程度の評価がおそらく最も良い方法である。その方法が利用できる
には、訓練された作業療法士による評価が最適であろう。 路上試験は、同じく助けになる
かもしれない。しかし、症状の変動的性質により、能力低下の真の程度を明らかにするた
めにそれに頼ることが常にできるというわけではない。
」とある。
同じ文書は、こうも付け加えている。
「脳卒中を持っていた患者は、尐なくとも 1 カ月間は運転するべきではない。その間に、
彼らは彼らの担当医による評価を必要とする。もし機能的に可能であり、しかも神経学的
評価が突然の再発やどんな内在的な原因に関しても、明白な危険性がないと適切な治療と
共に記述されて明らかにされれば、彼らは運転することを再開するかもしれない。筋力の
残存に損失がある場合には、路上試験が必要とされるかもしれない。この評価は、評価機
関、あるいは自動車免許当局によって実施されるかもしれない。自動変速機やあるいは改
良された制御装置が設置された自動車を運転するように、その人を制限することは必要で
あるかもしれない。医師は、脳卒中患者において有意に運転の能力に影響を与える性格、
危機管理能力、あるいは意志決定能力(微妙で首尾一貫しないが)のどんな変化にでも気
付くために、特別の注意を払うべきである。それらの患者は、ある日は上手に運転するが、
翌日には無能となるかもしれないのである。」
視力と注意力は安全な運転のために必要な要素である。認知的な、そして知覚欠損の残
存は、しばしば脳卒中経験に追従し(第 12・13 章参照)、そして、Fisk ら(2002)によっ
て示されるように、脳卒中生存者の視力と注意力というものは、しばしば損なわれている。
Smith-Arena ら(2006)による最近の研究では、リハビリテーションからの解放後の路上
外での運転評価における不成績は、リハビリテーションへの入院時に評価されたより重篤
な認識機能障害と筋力低下と関連性があったと報告している。脳卒中患者は、健康な個人
83
よりもより大きな運転能力の欠陥を示し(Heikkila et al. 1999)、そして、個人の健康状態も
含めると、脳卒中患者は過失事故も含むより大きな危険性を孕んだ状態にある(McGwin et
al. 2000)。MacKenzie と Paton(2003)は、彼らの研究に含まれた失語症患者 18 人のうち
14 人が、道路標識認知と理解の測定において、年齢よりも、また教育と何年もの運転に取
り組んだ対象群よりも低い得点であったにもかかわらず運転することを再び始めたと報告
した。この研究に参加している、失語症をもつ脳卒中患者のグループ(MacKenzie and Paton
2003)の中で、運転することを再開した患者としなかった患者との間で道路標識の認知と
理解に有意差がなかったことは指摘されるべきである。
運転のように、しばしば繰り返されて、そして個人の自律性にしっかりと関連づけられ
る作業は、自己観念の側面として組み込まれているのかもしれない(Scott et al. 2008)。ほ
とんどの普通に運転している成人は、それと反対の証拠であるにもかかわらず、彼らが実
際そうであるよりもずっと良いドライバーであると信じる。同じことが脳卒中の個人につ
いても言えるかもしれない。しかしながら、 脳卒中後の運転能力に関する自己評価もまた、
障害された認知と自己認識によって影響を受けているのかもしれない(Scott et al. 2008)。
Patomella ら(2008)は、脳卒中後約 1 年を経過した 38 名に対して運転疑似装置を使用し
て運転能力を評価し、運転能力低下の認知評価と脳卒中運転者の資格審査を行った。
大多数の患者(75%)が、患者が完全に気が付かなかった尐なくとも 1 つの大きな間違い
が示す、動作と認知との間の尐なくとも 1 つの大きな相違が証明された。Scott ら(2008)
は、
「平均的な運転手」と比較された際、脳卒中生存者が彼らの運転能力を評価することに
おいて有意な偏見が証明されたと報告した。 彼らが彼ら自身を彼らの大切な人物と比較す
るように求められたとき、彼らは彼らの仲間の能力を高めることによって償う傾向があっ
たが、彼ら自身の能力を過大評価する偏見はそれほど目立つことはなかった。加えて、運
転することを決定する際に重要な要素を識別するよう尋ねられた際、脳卒中生存者はただ 1
つの簡単な領域だけを識別し、一方、大切な人物は認識能力、身体機能と専門的な助言が
重要であったと感じた。
Fisk ら(1997)は、明白な欠損にもかかわらず、多くの脳卒中生存者が、彼らが専門的
な助言そして(あるいは)評価なしに運転することに関して決定することを報告している。
これまでは、脳卒中患者が彼らの運転を自分で規定し、そして彼らの「運転の表面化」を
減尐してきたのかもしれないことが観察されてきた(Fisk et al. 2002)が、彼らはまた、単
独運転、並列駐車、直行通過する際の左折、ラッシュアワー時の運転などのような難しい
運転状況を取り扱うことにおいて、非脳卒中運転者よりも多くの問題点を報告している。
MacKenzie と Paton(2003)は、既に運転することを再開し、脳卒中後に慎重さが増加し、
かつ運転頻度や距離が減尐した状態の失語症患者での、変化した運転癖を報告している。
しかしながら、リハビリテーションの専門家は脳卒中生存者と彼らの家族との取引を行う
84
際、運転の問題にもっと多くの時間と手段を捧げるために、慎重になるべきであろう(Fisk
et al. 1997)。
19.5.1 Driving Assessment 運転の評価
リハビリテーションの専門家が直面する問題の 1 つが、運転の能力あるいは適性の測定
である。運転そして運転に関連した能力の評価により作成され、その評価の予測値は多く
の最近の研究で検討されてきた(Table 19.25)。
85
86
87
88
89
Discussion 考察
Lincoln ら(1993)は、認知検査の結果を得、 GP によるものは患者のたった 56%にの
み路上試験の結果を予測することが可能であったことを示した。 一方、Heikkila ら(1999)
は、多くの学問領域による神経学チームが確実に運転の能力を評価することが可能であっ
たと述べている。Akinwuntan ら(2002)は、運転に対する患者の適性に関係する彼らの研
究チームの結論では、予測精度が限定されていた(R2=0.53)とした一方、路上試験の予測
する能力はさらにより低かった(R2=0.53)と述べている。道路運転免許試験は効力をもつ
尺度であるように思われるかもしれないが、試験を評価するための標準的手段がなかった
ように、その試験は比較的主観的なものであった。 追跡研究において、Akinwuntan ら(2005)
は、脳卒中患者のための 13 項目のチェックリストに基づく路上試験が、受容できる相互信
頼度と、国家で登録された評価法によって行なわれた試験との良好な一致性を有する信頼
性が高い手段であることを述べている。加えて、路上外での評価結果では、Stroke Driver
Screening Assessment は、試験をした個人の 78.9%の路上試験結果と一致した
(Akinwuntan
et al. 2005)。
運転することは、非依存と共同体での生活への帰還の両方を表す。 しかしながら、脳卒
中生存者が運転を再開する以前に、運転の適性あるいは能力の評価が実行されている必要
がある。 路上外(神経心理学的評価)
、そして路上試験の組み合わせが、運転能力の最も
90
正確な予測を提供するであろうことが示唆される(Akinwuntan et al. 2002, Akinwuntan et.al.
2007)。 理想的には、路上外での評価が路上試験への準備を予測するために使われるであ
ろう。路上試験に先行して脳卒中生存者の運転能力を予測するための多くの審査手続が、
これまで評価されてきた。
Mazer ら(1998)は、審査の過程が路上試験のための準備ができていない脳卒中患者を
識別するのに有用であることを指摘している。 そうすることによって、脳卒中生存者の路
上試験に関連する出費と危険性は減尐し得る。最近の文献では、Marshall ら(2007)は脳
卒中発症後の運転能力について、最も一貫した予測指数を確認しようと試みた。著者は、
そのために主要な結果が路上試験についてのものであった計 11 の研究と、加えて運転の休
止について評価した 6 つの研究を確認した。確認された 111 の可能な予測指数の中の、特
に Trail Making Tests(A and B)や Rey-Osterreith Complex figure design のような認知的な
審査試験は最も高頻度で使用され、そして運転評価結果の一貫した予測指数となってきた。
道路知識試験(道路標識と危険認知試験)や反応時間と同様に、 Motor Free Visual
Perceptions Test や、Useful Field of View test を含む、更なる有用であるかもしれない試験
が確認されている。
著者は、大多数のこれらの試験において、脳卒中母集団内の使用に適した適切な敏感性
と特殊性を有するカットオフポイントの開発をほとんどの研究が報告しなかったことを指
91
摘している。
Akinwuntan ら(2002)は、運転の適性予測において、あまりにも神経心理学的あるいは認
知的な検査に単独で頼ることへの注意声明をもたらした。 著者は、すぐに運転するのに適
当ではないと判定した患者が、神経心理学的検査では良好に遂行し、道路運転免許試験で
は不成績を示したことを指摘した。 同様に、Soderstrom ら(2007)は、 路上試験の成績
と神経心理学的評価の結果間に関連性がないことを報告した。加えて、一度失敗したがそ
の後路上教育を提供された患者は、彼らの認知機能試験の得点では対応する改善がなくと
も路上試験を通過したのである。
Akinwuntan ら(2002)は、運転前の評価での、より現実の路上に関連する試験を含むこと
が必要であったことを示唆した。
Conclusions Regarding Assessment of Driving Ability
運転能力の評価に関連する結論
運転能力について関心がある患者は、識別され、そして適切な評価と事前治療が必要であ
る。 運転能力の決定は、単に神経心理学的な検査あるいは路上試験に頼るべきではない。
どちらかと言えば、患者は最初に路上試験に参加するための準備ができているかについて
審査される 2 段階のプロセスが勧められる。
脳卒中後の運転能力について関心がある患者は適切に評価される必要がある。
19.5.2 Interventions and Driving Performance 介入と運転能力
脳卒中生存者の運転能力を評価するかを決定することへの努力にもかかわらず、何の介
入が脳卒中生存者の運転能力を改善するかもしれないかということに払われてきた注意は
非常に尐ないものであった。
脳卒中後の、運転能力への治療介入の有効性を調べている 2 つの無作為化比較対照試験が
確認されている。
(Table 19.26)。
92
Conclusions Regarding Driving Ability Treatment Interventions Post-Stroke
脳卒中後の運転能力への治療介入に関連する結論
視覚の注意力再訓練プログラムは、伝統的な視覚の再訓練より脳卒中患者の運転能力を改
善することへの効果が低いという中等度(Level 1b)の根拠が存在する。
93
適切な介在物の使用を含む模擬訓練プログラムや、実生活に類似した複雑な状況下で運転
することが、運転の適性改善と路上試験での合格に関連するという中等度(Level 1b)の
根拠がある。
視覚の注意力再訓練は、伝統的な視覚の再訓練に比し脳卒中生存者の運転能力を改善
しない。
運転の適性は、模擬訓練プログラムの使用を通して改善されるかもしれない。
19.6 Returning to Work Post Stroke 脳卒中後の仕事への復帰
仕事復帰に関して報告している研究の 2002 年のレビューで Wozniak と Kittner は、有意
義な活動の再開からフルタイムやパートタイムである有給雇用への回復まで“仕事”や“仕事
復帰”に合った定義で多くのバリエーションがあるということを言及した。再調査された研
究内で定義した“仕事”の範囲を前提として、報告された仕事復帰する患者の割合は 90~
91%の範囲であるということは驚くものではなかった。加えて、仕事復帰する 23~92%の
患者では、仕事時間の短縮、雇用の変換や仕事の再編(リストラ)のような調整が復帰を促進
させると報告した(Wozniak and Kittner,2002)。レビューに研究の不均一性があるにもかか
わらず、Wozniak と Kittner(2002)は神経的や機能的な disability が脳卒中後仕事再開の大き
な要因になると確認した。
UK において若い脳卒中患者(mean age = 57)の満たされない needs の最新調査では、仕
事復帰しない者らは仕事復帰した者より満たされない needs を持っていることを報告した
(Kersten et al. 2002)。仕事復帰はまたより一層の個人的な幸福感や人生の満足感と関連し
ている(Vestling et al. 2003)。重大なことにもかかわらず、脳卒中患者の職業リハビリテー
ションを取り囲む問題はほとんど研究されていない。
脳卒中後患者の仕事復帰を調査した研究は、Table 19.27 に要約した。
94
95
Discussion 考察
観察研究では、多くの脳卒中患者は仕事ができるかもしれないが、かなりの割合で仕事
復帰してないかもしくは就業時間や就業場所の変更をしなければならないと示される。脳
卒中患者の仕事復帰は、いくつかの要因で左右される。脳卒中発症前の患者の教育や職業
96
状況は仕事復帰の可能性に大きく影響を及ぼす。Smolkin と Cohen (1974)によって述べら
れたように、あまり教育を受けていない脳卒中患者では仕事復帰が困難であった。
同様に、肉体労働者や農業労働者が仕事復帰できる可能性は脳卒中発症前専門的管理職
に従事していた者より高くなかった(Howard et al. 1985)。Vestling et al. (2003)は、専門タ
イプ(事務職 vs 肉体労働職)で仕事復帰が予測できると発表した。仕事復帰の可能性が増え
ることに加え、事務職での雇用は高水準で主観的幸福と生活満足度がある最も重要な確認
された決定要素であった(Vestling et al. 2003)。
脳卒中の二次的な残存欠損が、患者の仕事復帰の可能性に影響を及ぼす。運動機能の機
能障害を持った患者(Fugl-Meyer et al. 1975)、認知機能障害や麻痺の存在(Kotila et al. 1984)
はしばしば仕事復帰を困難にすると思われる。Weisbroth らによって記されるように、歩
行・麻痺側上肢・非言語的抽象的推理力は、左麻痺患者の仕事復帰の可能性の増加と関連
するすべての要因であり、そして言語的認識の不足やコミュニケーション欠損が右麻痺患
者の仕事復帰の可能性を増やす。同様に Vestling ら(2003)は、歩行能力と認知障害の欠如が
仕事復帰を予測できる重要なものとみなした。
脳卒中発症後、仕事を再開する個々の能力に関連する要因を認識できるにもかかわらず、
生産的仕事の役割を再び始める脳卒中患者の能力を改善するであろう特定の職業リハビリ
テーション戦略は何も研究されていない。入院患者の脳卒中リハビリテーションは、職場
復帰をサポートするよりむしろ日常生活活動での機能を促し身体機能を回復するのが目的
とされる働き盛りの脳卒中患者によって明らかにされる(Medin et al. 2006)。Leng(2008)は、
地域密着型機関から雇用サービスを受けた過半数の者(55%)は有給雇用への復帰に成功し
ていると報告した。しかしながら、それらの者は肉体労働職から事務職へ雇用形態を変更
する傾向にあった。poor outcome の理由は、さらなるリハビリテーションが必要な者・評
価に来なかった者・仕事に不適任な者を含んだ。
最近の clinical practice guidelines (Duncan et al. 2005)は、"優秀な専門家の意見・症例報
告・専門委員会"から得た不十分な証拠に基づく脳卒中後の仕事復帰に関する提案を次に述
べる。
1.患者の状態が受け入れられるなら、すべての患者は仕事復帰する可能性のために評価
されることを推奨されるよう勧められる。
2.以前働いていたすべての患者は、仕事復帰支援のために職業カウンセリングを参考に
するよう勧められる。
3.仕事復帰を考えているが心理的バリア(例えば、モチベーション・感情的・精神的の不
安)を持つ可能性のあるすべての患者は、職業的カウンセリングや精神的なサービスのよう
な支援サービスを参考にするよう勧められる。
97
Conclusions Regarding Return to Work Post-Stroke
脳卒中後の仕事への復帰に関する考察
脳卒中発症前に働いていなかった脳卒中患者の多くは、仕事復帰していない。仕事復帰に
影響を与える要因は、身体的認知的機能障害・年齢・教育レベル・脳卒中前の雇用形態の
程度がある。脳卒中以前に働いていた脳卒中患者は状況が受け入れられるなら、仕事復帰
の可能性のために評価してもらうべきであるということは意見の一致(Level 3)である。
脳卒中発症前に働いていた脳卒中患者は、仕事復帰の可能性のために評価されるべき
である。脳卒中患者の仕事復帰を支援するための職業的リハビリテーション戦略は、
発展させ評価される必要がある。
19.7 Summary 要約
1.社会支援ネットワークの明らかにされた効果だけでなく社会支援ネットワークの存在や
規模も、
脳卒中後の身体的回復や QOL に前向きな影響を及ぼす。
支援のより高いレベルは、
より良い機能的進歩・より尐ないうつ状態・気持ちの改善・社会的相互作用と関係してい
る。社会支援ネットワークの規模や明らかにされた効果は解放目的の重要な兆候となる。
2.脳卒中患者とその家族へ情報や教育とともにカウンセリングを提供する社会福祉活動は、
自立や社会活動の尺度に関する進歩と関連していないという有力なエビデンス(Level 1a)が
ある。
3.脳卒中患者の社会支援ネットワークを含む専門的な社会支援活動は、認められた社会支
援や機能的回復を改善させるのに効果的ではないと適度なエビデンス(Level 1b)がある。
4.デイサービスへの出席が余暇活動への参加の増加に関連するパイロット研究を調査して
いる1つの RCT に基づいた適度なエビデンス(Level 1b)がある。
5.在宅を基盤とするサポートやケアマネージメント活動はより一層の社会活動・雰囲気・
QOL もしくは身体的自立と関連がないという有力なエビデンス(Level 1a)がある。Family
Support Organiser での関わりは、脳卒中についてのさらなる知識やサービスに対する満足
感と関連するという有力なエビデンス(Level 1a)がある。
6.社会サポート活動が介護人の負担や緊張感の減尐と関連する相反するエビデンス(Level
4)がある。
98
7.活動的なケアマネージメントが、結果的にさらなる社会活動となるかもしれないという
適度なエビデンス(Level 1b)がある。更なる研究が求められる。
8.一般的に知られている介護者における介護の影響は、健康低下(身体的や精神的と共に)・
社会的接触や活動の減尐・うつへのリスク増加・介護ストレスや緊張感や負担・QOL の全
体的な減尐を含む。その社会的接触や活動の減尐が、介護者の緊張感増加・うつのリスク
増加・人生の満足感減尐となる一因となるかもしれない。患者特性の影響に関する報告は、
質問の趣旨に伴って変わる。しかしながら、年齢・脳卒中の重症度・脳卒中に関連する
impairments・機能状態・認知状態は、影響を受けている介護者の outcomes として報告さ
れている。
9.介護をする仲間(peers)によって提供される支援は、良好な効果をもたらすかもしれない。
社会支援活動には介護者と脳卒中患者の両者を含むことが重要である。
10.看護師や他の介護者との接触を通して情報やサポートを提供するオンラインプログラ
ムへの参加は、認められた主観的支援・身体的援助・介護者の健康の向上に関連しないと
いう適度なエビデンス(Level 1b)がある。
11.スケジュールに基づいた精神教育的プログラム(例えば Powerful Tools for Caregiving)
への参加は、さらなる幸福をもたらし身体的な健康問題となる行動パターンを減らすかも
しれない。
12.認められた家族の機能障害は、一般的には脳卒中後である。しかしながら家族の機能
は、治療厳守・ADLs のパフォーマンス・社会活動に影響を及ぼす。脳卒中患者は良好に機
能している家族とうまくやっていく。お互いに、効果的なコミュニケーション・正しい問
題解決や適応可能な対処・強い気持ちでの関心は、良好に機能している家族の特徴である。
13.さまざまな介入タイプを通して情報や教育の提供に関連した有益で有力なエビデンス
(Level 1a)がある。教育セッションでは、情報資料だけの提供より outcome でより大きな影
響を及ぼすかもしれない。
14.技術トレーニングが、うつ症状の減尐と関連があるという有力なエビデンス(Level 1a)
がある。基本的な看護技術のトレーニングが、介護者と脳卒中患者の両者にうつ症状・不
安・QOL の outcome を改善するという適度なエビデンス(Level 1b)がある。
15.情報の受け取りが、脳卒中患者やその家族・介護者にとても重要であるが、それに比
99
べ彼らが重要であると分かるトピックスについての十分な情報はあまり受けない。介護者
は脳卒中患者へのケアで必要とする技術での十分なトレーニングをほとんど受けない。
16.
17.脳卒中ケアにかかわる医療従事者は、患者や介護者のための教育の重要性を受け入れ
るかもしれない;しかしながら相対的に受取人必要とする情報に基づいた十分な情報をほ
とんど提供しない。加えて書面での資料は、この先受取人の教育/読取レベルに適していな
ければならない。
18.情報や教育はとても重要であると思われるが、インフォーマルの介護者はニーズにお
ける十分な情報やトレーニングをほとんど受けていない。
19.社会的活動や余暇活動の低下は通常脳卒中発症後であり、よく教育された女性や若者
に最も顕著である。他者がどのように能力障害を見るかについての認識や彼らが脳卒中後
をどのように対処できるかについての認識は、経験のある社会的孤立の度合いに影響を及
ぼすかもしれない。
20.個々にみていくと、脳卒中後や退院後余暇セラピーの利点に関して矛盾するエビデン
ス(Level 4)が見られる。しかしながら、同様の RCT からプールされたデータを使っての最
近のメタアナリシスでは、余暇セラピーに関連する余暇活動において小さな改善が報告さ
れた。
21.認識や能力の発展に集中した余暇教育プログラムへの参加は、活動の回数や期間の改
善とうつ症状の減尐に関連があるという適度なエビデンス(Level 1b)がある。
22.性行為の減尐は脳卒中後、とても一般的となる。特に変化した body image やコミュニ
ケーション不足によって、性的衝動がまだ存在し性行為への主要な障害が身体的
impairments や心理的要因となるということは、一般的な見解である。脳卒中後の性欲過剰
は珍しくあまり理解されない。判明された性的機能不全への治療の研究はなかった。
23.脳卒中患者や大切な人の覚悟があるならば、性的な問題はリハビリテーション内で議
論されるべきであり、地域社会へ戻った後も努力しなければならないという意見の一致
(Level 3)がある。
24.運転能力に不安のある患者は特定されて適切に評価・治療が開始される。運転能力の
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判定は、神経心理学テストや路上試験の評価だけをあまり信頼すべきではない。むしろ
2-step process としては、患者は最初に路上評価へ参加する準備のために選別されることを
推奨する。
25.視覚的 attentionretraining プログラムは、脳卒中患者の運転パフォーマンスを改善する
のに伝統的な visuoperception retraining より効果的ではないという適度なエビデンス(Level
1b)がある。
26.適正な適合の使用を含み、実生活と類似する複雑なシナリオを通して運転する simulator
training プログラムは運転適性の改善や路上評価での成功と関連するという適度なエビデン
ス(Level 1b)がある。
27.脳卒中発症前に働いていた脳卒中患者の大半は仕事復帰しない。仕事復帰に影響を及
ぼす要因としては、身体的や認知的 impairment の程度・年齢・教育レベル・脳卒中前の雇
用形態がある。脳卒中発症前に働いていた脳卒中患者は状況が受け入れられるなら、仕事
復帰の可能性を評価していくことを勧められるべきであるという意見の一致(Level 3)があ
る。
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