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87 Table.4-1-1 History of Batteries.

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87 Table.4-1-1 History of Batteries.
4.ニッケル水素二次電池の正極材料解析
4-1 緒言
二次電池は, パソコンや携帯電話をはじめとした小型の電子機器やハイブリッド車(EV)等
の電源に使用されている. 近年, 世界的に低炭素社会を目指す傾向にあり, 環境を考慮した次
世代エネルギーの一つとして二次電池が注目を浴びている. 二次電池は一次電池とは違い,
繰り返し充放電が可能であり, 高出力, 長寿命である.
これら電池の歴史は古く,約 2000 年前のイラク̶バグダッドから始まっている. 当時の電
池は壷に銅筒, 鉄棒を入れ, ビネガー等を電解液にしたものと言われている. 1) それから長い
空白期間経て, 1791 年のイタリアで Luigi Galvani がカエルの筋肉にメスを触れさせたとこ
ろ筋肉の収縮が起こる事を発見した. 1) その後, Volta が塩水に 2 種の金属を浸漬させたとこ
ろ電圧の発生を確認し, 組み合わせる金属により電圧の大小があることが発見された. そし
て, 1800 年には, 希硫酸に亜鉛と銅を漬けたボルタ電池が作られた. このボルタ電池が作ら
れた事で, 水素や酸素の製造, 金や銀のめっきが行われ始めた. その後, 1836 年にダニエル電
池, 1866 年にルクランシェ電池が発明され, 1887 年には, ガスナーがマンガン乾電池を開発
し, ドイツにて特許を取得し, 生産を開始した. この頃, 日本でも屋井先蔵が乾電池を発明し,
1892 年アメリカ万国博覧会に出品している. 1)
最初の二次電池は 1859 年 Gaston Planté が鉛電池の原形を発明し, 1881 年に Camille
Alphonse Faure が改良し, 自動車に搭載するバッテリーを開発した. 1)
1964 年にニッケルカドミウム電池, 1990 年には更なる高性能化が進みニッケル水素二次電
池が登場した. さらに翌年にリチウムイオン電池が実用化された. 1) , 2)
Table.4-1-1 History of Batteries.
B.C.
250
Baghdad battery
A.C.
1791
Galvanic cell
1800
Volta cell
1836
Daniell cell
1859
Lead–acid battery
1866
Leclanché cell
1885
屋井乾電池
1887
Gassner cell
1964
Nickel-Cadmium rechargeable battery
1990
Nickel-metal hydride battery
1991
Lithium-ion rechargeable battery
87
1960 年代, 二次電池としては鉛蓄電池, ニッケルカドミウム電池が販売開始となった
35).
し
かしながら, Pb をはじめとする Cd や Hg を含む電池は環境汚染の原因となることから,
RoHS 指令(電気電子機器の有害物質使用制限指令: Restriction of Hazardous Substances in
electrical and electronic equipment),WEEE 指令(廃電器電子機器指令:Waste Electrical and
Electronic Equipment)や ELV 指令(廃自動車指令:End of life vehicles)などにより使用に関して
制限され,
2), 3), 4)
有害物質を含まないものづくりが必要不可欠となった. そのため, 電池分野で
も環境問題に対応した製品が求められた. 1990年代に入ると, ニッケル水素電池, リチウムイ
オン電池が実用化され, 販売を開始した. これらの電池は主にパソコンや携帯電話に搭載す
る電池として必要とされた. 現在, 携帯電話の普及が爆発的に進み, 携帯電話,スマートフォ
ンの普及率は 100%(総務省:統計資料より)を超えていると言われている. また, 最近の傾向
として, EV 車(電気自動車), HV 車 2), 5), 6), 7) など, 駆動力用電池, 家庭用蓄電池の需要の拡大と
共に小型のセルから大型のセルへと市場を移し始め, これにより, 国内電池メーカー, 海外
電池メーカーの動きが活発化している 7).
今日, エネルギー分野において, 世界的に環境を考慮した研究開発が行われており, これは
低炭素社会を目指した動きであり, なかでも, 電池はエネルギー分野の中でも重要視されて
いる. 世界各国で電池の開発競争が繰り広げられており 7), その理由として, EV, HEV 等に搭
載する二次電池・蓄電用電池の需要の増加があげられる. また, 『スマートグリッド』の主要
な構成要素となっている事から, 大規模な市場の拡大が見込まれている 2). この様に電池の開
発と市場の視点から見た場合. 従来からの電池に加え, EV 向け電池, 住宅用電池の拡大が予
想されている.
ニッケル水素電池は, ニッケルカドミウム電池の代替として開発されてきた. この電池の
特徴として, 作動電圧はニッケルカドミウム電池と同じ, 約 1.2V であるが, エネルギー密度
を比較すると, ニッケルカドミウム 20~70 Wh/kg2), ニッケル水素電池 40~110 Wh/kg2)で
あり, ニッケル水素電池はニッケルカドミウム電池よりも性能が優れている. 1). 正極に水酸
化ニッケル, 負極に水素吸蔵合金, 電解液にはアルカリ水溶液を使用している. また, 引火性
の高い物質を使っていないことから安全性が高いと言える. リチウムイオンと比べ, エネル
ギー密度が低く, 電圧が低いものの, 安全性やサイクル特性が優れているため HEV 車に使
用されている. しかし, メモリ効果の発生により容量が低下する現象が起こる問題を抱えて
いる. これらの問題を改善することにより, サイクル特性がさらに良くなるなどの期待もあ
る 5).
本研究では, 焼結式ニッケル正極内部の活物質に着目し, メモリ効果と活物質との関係に
ついて明らかにするために, 充放電時における電極界面の EDX による元素マッピング TEM
による微細構造の解析をおこなった.
88
4-2 理論
ニッケル水素電池(Ni-MH)は, Ni(OH)2/NiOOH 対を酸化還元反応系を正極に, 水素吸蔵合金を
負極に, 水酸化カリウム水溶液を電解液に用いる二次電池である. カドミウムフリー, 高エネル
ギー密度(50 80Wh/kg), 高パワー密度( 1000W/kg), 多リチャージサイクル( 2000 回),
トリックル充電可能といった特徴があり, 電子デバイスからハイブリッドカーにまで使用されて
いる 9), 10). Ni-MH 電池の正極における反応は, 充電により 型水酸化ニッケル(Ni(OH)2)が 型
オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)になり, 放電時はその逆の反応になるのが基本である.
Ni(OH)2 + OH+
NiOOH + H2O +e
しかし, 過充電などにより, 型オキシ水酸化ニッケルや他の反応も生じることが報告されてお
り, 基本反応のみが生じているとは限らず複雑である. Bode 等は, オキシ水酸化ニッケルの酸化
還元反応には 4 つの主な相が存在することを示した. (Fig.4-2-1 を参照)8). また, Ni-MH 電池は
メモリ効果を生ずるという欠点がある. メモリ効果とは, 全容量を使い切らないで充電する操作
を繰り返すと, 全容量は変化しないにもかかわらず放電電圧が低下, 使用可能時間が短くなると
いう劣化現象である. メモリ効果は深い放電を行った後に再び充電することを繰り返すことによ
り解消(リコンディションニング)される. メモリ効果は実用上支障をきたすので, そのメカニ
ズム解明や性能向上に関して多大な努力が費やされて来た
10-28).
しかし, 数多くの研究にもかか
かわらず, メモリ効果の発生メカニズムは明らかにされたいない. メモリ効果の発生メカニズム
は, 幾つか提案されており, (i)活物質/集電物質間に形成される絶縁性バリヤ層による電圧降下
10-12), (ii)放電電位の低い
-NiOOH の生成 16,23,26,28), (iii)化学量論的組成の絶縁相の存在などがある.
Fig.4-2-1 Bode’s diagram of nickel hydroxides.
89
ニッケル水素電池の基板材料をみると, 機械的強度が高く, 低温度特性, 高効率充放電に優れた
焼結式ニッケル基板が使用されている 8).
焼結式ニッケル基板は, 多孔度約 80 %, 細孔径 10 m であり, エネルギー密度の向上が困難
であるが, 安定性に優れる. しかし, 細孔に活物質を充填する際に, 濃厚なアルカリ溶液と酸性
溶液に交互に浸漬させるため, 心材である鉄が腐食することがある.
発泡ニッケル基板は高多孔度で細孔径が大きな発泡ニッケル基板の使用が増加している. この
発泡ニッケル基板は, 多孔度約 96 %, 細孔径 100 ~ 400 m であり, 活物質の充填量が非常に大
きい 8). しかしながら, ペースト状の電極は充填法により, 充放電が出来る容量が変わりやすく,
安定しない. よって, 本研究では安定した充放電を行うために, 焼結式ニッケル基板を使用して
いる.
90
4-3 実験操作
使用機器
安定化電流電源
TPO35-2D TAKASAGO
走査型電子顕顕微鏡
VE-8800
KEYEMCE(株)
透過型電子顕微鏡
RINT2000 リガク (株)
X線回折装置
導電率計
恒温機
TR-2A
AS ONE
マルチメーター
CD M-170 カスタム
電子天秤
FX-40 島津製作所
マグネティクスターラ
HS-50D AS ONE
使用薬品
水酸化カリウム
特級 和光純薬工業(株)
B
A
D
C
E
F
A:reference electrode B:salt bridge C:sintered nickel electrode D: 6M-KOH
F:electrolysis solution
G
E:cotton
G:Luggin capillary H:sintered nickel electrode(Sample)
Fig4-3-1 Cell image
91
H
本研究では, はじめに, 使用する焼結式ニッケル正極板の安定容量を得るため,深い充放電
試験を繰り返した. 容量の安定が確認できた後, 再度充放電を行い, 分析用に充電状態と放電
状態の極板からサンプルを切り出した.
次に,焼結式ニッケル正極板にメモリ効果を生じさせるため, 特定の条件で充放電試験を繰
り返した. 容量の低下を確認してから, 分析に用いるサンプルとして, 充電状態と放電状態の
ものをそれぞれ切り出した.
次に, 焼結式ニッケル正極板にメモリ効果を生じた, メモリ効果を解消させるため, 特定の
条件で充放電試験を繰り返し, 容量の回復を確認してから, 分析に用いるサンプルとして,充
電状態と放電状態のサンプルを切り出した.
容量試験
試験極には,焼結式ニッケル正極板(4.5×5.0cm2)を 1 枚用い, 対極には同面積の焼結式ニッ
ケル正極板を 2 枚用いた. 電解液は, 5M-KOH を用い,浴温は 30℃で行った.また,参照電極は酸
化水銀電極を用いた. なお, 充放電条件は 1 CA で行い, 充電時のみ,理論容量の 140 %の充電
を行った. 電圧の測定は,端子電圧および酸化水銀参照電極基準の正極電位について行った.
メモリ効果試験
焼結式ニッケル正極板に, メモリ効果を生じさせる充放電試験の条件は, 使用した焼結式
ニッケル正極板の理論容量を基準とし, SOC(State Of Charge) 80 %までの充電と, SOC 20%ま
での放電を行った. これに端子電圧の上下限値(充電+0.4V, 放電−0.4V)の制限を加えた.
メモリ効果解消試験
焼結式ニッケル正極板に生じた, メモリ効果を解消させる充放電条件は, メモリ効果試験
終了時に, 正極板に残した SOC 20 %分の容量を完全に放電させた後, メモリ効果試験で最後
に行った放電時間の 140 %の充電を行った. その後, 容量試験と同様に放電を行い, 放電時間
の 140 %の充電を行った. この操作を, 容量が回復するまで繰り返した.
分析する試料は, 未処理, (i) 正常な電極充電, 放電, (ii)メモリ効果有り充電, 放電, (iii)リコ
ンディショニング充電, 放電の7つとした.
92
4-4 結果および考察
4-4-1 ニッケル水素電池の正極の充放電特性と構造変化
はじめに, 電極の充放電状態およびメモリ効果を発生させ, 活物質の変化を知るため, 充放
電を行った. Fig. 4-4-1-1 に, 活性化時の充放電曲線を示す. この活性化は, SoC 0 ~ 140 %にて
充放電されており,正極の電圧を測定したものである. 充放電開始後, 3 cycle をこの図に示した.
3 cycle 目の充電にて, 最後に電圧が上昇したため, 活性化を終了した. 次にメモリ効果を発現
させるため,活性化した電極を SoC 20 ~ 80%にて浅い充放電を行った. その充放電曲線を Fig.
4-4-1-2 に示す. 50 cycle まではメモリ効果の発生は確認出来なかった. 50 cycle を超えると, 充
放電される時間が短縮されていく傾向が現れた. これは充放電プロセスが不完全になり, メ
モリ効果が現れた. Fig. 4-4-1-3 にメモリ効果が発生している電極を再び SoC 0 ~ 140 %にて充
放電をおこない, リコンディションをした. 2 cycle 程度まで, 放電容量の回復が見られなかっ
たが, サイクル数の増加にともに放電容量が増加した. よって, この電極が, 研究に適してい
ることが明らかとなった.
93
Fig. 4-4-1-1 Initial activation charge-discharge curves of the samples. Cycling number is presented in curve.
The charge-discharge is tested through out the SoC range from 0 to 140%.
Fig. 4-4-1-2 Charge-discharge curves of the activated samples for the memory effect tests.
The repeated shallow charge-discharge is tested through out the SoC range from 20 to 80%.
94
Fig. 4-4-1-3 Charge-discharge curves of the samples shown the memory effect.
The charge-discharge is tested through out the SoC range from 0 to 140%.
95
Fig.4-4-1-4 に得られた試料の X 線回折パターンを示す. 黒丸( )は, -Ni(OH) 2 を表し, 白丸
( )は, -NiOOH 30)アスタリスク(×)は, 試料ホルダーにサンプルを固定するために使用し
た粘度のピークを示している. 全ての試料から -Ni(OH)2 と -NiOOH は確認されなかった.
-Ni(OH)2 は正常な放電状態の試料とリコンディションした放電状態の試料(Fig.4-4-1-4 (a)お
よび(c)の上段)で観察された. 充電を行った結果, Ni(OH)2 のピークは消失し, -NiOOH のピー
クが確認された(Fig.4-4-1-4 (a)および(c)の下段). メモリ効果が発生している試料では, 充電後
と放電後では大きく変化した点はみられなかった. これは, -Ni(OH)2 に充電しても -NiOOH
に構造が変化していない事を示している. この結果, メモリ効果は電極内に残留する未反応
の -Ni(OH)2 が引き起こしている可能性が示唆された.
Fig.4-4-1-5 にサンプルから得られた Ni 2p3/2 XPS のスペクトルを示す 31)-37). 全てのサンプル
より, Ni 2p3/2 の光電子スペクトルは 6 eV の周りのエネルギースペクトルで確認ができた. Ni
2p3/2 のメインピークは~855, サテライトピークは~861 eV の位置している. メインピークとサ
テライトピークのエネルギー差は全てのサンプルでほぼ同等の値となった. メインシグナル
の波形は充電とともに若干変化が見られた. また, Ni 2P3/2 のメインピークの XPS ライン形状
は 4 ガウス分布の和でフィッティングすることができた(Fig. 4-4-1-6). 実験で得られた結果は
黒丸で示し, 点線及び実線は, それぞれのガウス曲線で 4 ガウス分布の和より, フィッティン
グした結果を示す. Ni 2P3/2 のシグナルを解析した結果, Ni は酸化状態である事が確認された.
Ni 2P3/2 のピークのスペクトルは解析により, 金属 Ni, NiO, Ni(OH)2 , NiOOH の4つのピークに
分離される. 各ピークの強度等はガウス曲線の組み合わせに実験曲線をフィッティングさせ
た後に積分から推定した. Fig.4-4-1-7 にXPS 測定から推定されたニッケル化合物の強度比を示
す. 上から通常の電極, メモリ効果が確認された電極. リコンディションした電極で確認され
たニッケル化合物の強度比を示している. メモリ効果が発生している電極とリコンディショ
ンした電極の NiOOH の/の Ni(OH)2 のピーク強度比は, ほとんど変化が見られない. これら
の結果は, メモリ効果が放電した状態での NiOOH の残りによって引き起こされている可能性,
未反応のNi
(OH)
2 が充放電を阻害している可能性を示唆している. しかし,XPS の結果はXRD
の結果と異なった.その理由を次に説明する. Fig.4-4-1-8 に各試料から得られたラマンスペク
トルを示す. サンプルのスペクトルは, メモリ効果のみ, 正常および再調整されたサンプルの
ものと異なって示された.メモリ効果のみ, 結晶状態が低いため, スペクトルの強度が弱い. 充
電側のサンプルは主要なピーク二つは470と550 cm 1 に確認され, それらは以前の結果と一致
いている38–42). これらのピークは, 以前のNi(OH)2 の酸化生成物であるNiOOHのためにNi-OH
及び Ni= O の伸縮振動に当てはまる.40) 470 cm 1 のピークは, 正常な電極とリコンディション
した電極では, 放電すると減少する傾向が見られた. それと対照的に, メモリ効果を示した電
極では, 放電しても 470 cm 1 のピークは, 変化しなかった.
96
Fig.4-4-1-4 XRD patterns of positive electrode of Ni-MH batteries : (a)normal, (b) shown the memory
effect, and (c) reconditioned. Solid circles denote the -Ni(OH)2 and open circles denote the -NiOOH.
Asterisks indicate a peak from clay to fix the samples on the sample holder.
97
Fig.4-4-1-5 Ni 2p3/2 XPS spectra for positive electrode of Ni-MH batteries: (a) normal, (b) shown the
memory effect, and (c) reconditioned.
98
Fig. 4-4-1-6 Deconvolution of the Ni 2p3/2 XPS spectra for positive electrode of Ni-MH batteries.
99
Fig.4-4-1-7 Intensity ratio of nickel compounds estimated from XPS measure- ments.
Fig.4-4-1-8 RamanspectraforpositiveelectrodeofNi-MHbatteries : (a)normal,
(b) shown the memory effect, and (c) reconditioned.
100
4-4-2 EDX によるニッケル水素電池の正極表面分析
Ni-MH 電池の正極には, 充放電時に電極が膨張防止やクラック発生などを防ぐため, 様々な
金属を入れる事がある. また, それらや水酸化ニッケルがどのように働いているか知見を得る
必要がある. よって, 各試料を組成分析した.
充放電前の電極表面の SEM と EDX のマッピング画像を Fig. 4-4-1-1 に示す. 様々な元素が
含まれていたが, 本研究に関連のある主なものを示している. コバルトは, 水酸化ニッケルの
導電性低下を防ぐ効果がある. 放電時活物質がオキシ水酸化ニッケルから水酸化ニッケルへ還
元する際に, 活物質と集電体の距離が大きくなり, ニッケルの酸化数が2.2以下で急激に導電性
が低下する 8). そのため, コバルトは活物質同士を接続し, 導電性を向上させるために添加され
る. イットリウムは, 活物質に添加することにより, 酸素発生電位を貴にシフトさせる効果が
ある. これにより高温領域にて充電効率を高めることが出来る 8). アルミニウムは充放電によ
る電極の膨張収縮を防ぐために添加させている 8). これらの理由により, 市販の電極にはニッ
ケル化合物のみならず, コバルト, イットリウム, アルミニウムなど含まれている.
コバルトが電極全体に均一に分布しているのに対し, ニッケル, アルミニウム, イットリウム
には不均一な分布がみられた. さらに, それらの分布は酸素の分布と逆になっている傾向が見
られた.
Fig. 4-4-2-2, 4-4-2-3 に正常な試料の充電後および放電後の電極表面の SEM と EDX のマッピ
ング画像を示す. 充放電前の試料と同様にコバルトが電極全体に均一に分布しているのに対し,
ニッケル, アルミニウム, イットリウムは不均一な分布が見られた. さらに, それらの分布は充
放電前の試料と同様に酸素の分布が逆になっている傾向が見られた.
Fig.4-4-2-4, 4-4-2-5 にメモリ効果が生じている試料の充電後および放電後の電極表面の SEM
とEDX のマッピング画像を示す. Fig. 4-4-2-4 充電時, Fig. 4-4-1-5 は放電時の像である. 正常な試
料と同様に, ニッケルとアルミニウムの分布は酸素分布と逆になっている傾向が見られた. Fig.
4-4-2-4, 4-4-2-5 の SEM 像の特徴は, 電極表面上にロッド状の析出物が発生していることである.
Fig4-4-1-4 右部, Fig. 4-4-2-5 左下部の白色部分である. また, EDX 元素マッピング分析の結果,こ
のロッド状の析出物はイットリウムが主成分の凝集体であることが確認された. イットリウム
からなる, ロッド状の部分に対応するニッケルマッピング図は黒色に反転していることから,
ロッド状析出物におけるニッケル濃度は極めて低い事がわかる.
Fig. 4-4-2-6, 4-4-2-7 にメモリー解消後の試料の充電後および放電後の電極表面の SEM と
EDXのマッピング画像を示す. 正常な試料と同様にニッケルとアルミニウムの酸素の分布と逆
になっている傾向が見られた. メモリー解消後, 充放電後および放電後どちらにおいても電極
表面ではロッド状の析出物は確認されなかった. メモリ効果の解消により可逆的に消滅したと
考えられる. 一方, 正常な試料とは異なりイットリウムは酸素の分布とは明瞭な相関が見られ
なくなった.
101
Fig. 4-4-1-1 SEM and EDX images of as positive electrode of Ni-MH batteries.
102
Fig. 4-4-1-2 SEM and EDX images of normal positive electrode of
Ni-MH batteries in charged state.
Fig. 4-4-1-3 SEM and EDX images of normal positive electrode of
Ni-MH batteries in discharged state.
103
Fig. 4-4-1-4 SEM and EDX images of positive electrode of Ni-MH batteries
showed memory effect in charged state.
Fig. 4-4-1-5 SEM and EDX images of positive electrode of Ni-MH batteries
showed memory effect in discharged state.
104
Fig. 4-4-1-6 SEM and EDX images of reconditioned positive electrode of
Ni-MH batteries showed memory effect in charged state.
Fig. 4-4-1-7 SEM and EDX images of reconditioned positive electrode of
Ni-MH batteries showed memory effect in discharged state.
105
4-4-3 SEM と TEM によるニッケル水素電池の正極表面形態
EDX によるニッケル水素電池の正極表面分析により, 電極表面にロッド状のイットリウムを
確認した事から, 詳しく調査する必要がある.
Fig.4-4-2-1 にメモリ効果が発生している電極表面の SEM 像を示す. 電極表面にロゼット状
(rosettelike structure)の析出物が確認出来る. これからの析出物を試料表面から分離させ, 各々の
TEM-EDX 分析を行った.
Fig.4-4-2-2,に析出したロゼット状のニッケル系物質の TEM 像を示す.ロゼット状の析出物は,
Ni 82.5 wt%, O 13.1 wt%, Co 4.4 wt%の組成を示した. これはニッケルと酸素のモル比は 1:0.6 で
あり, 一部金属ニッケルが存在すると推測される.よって, これらからロゼット状の析出物はβ
-Ni(OH)2 結晶である可能性が高いと考えられる 32), 31).
Fig.4-4-2-3 にロッド状の析出物の TEM 像を示す. TEM で観察したところ, ロッド状の析出物
は管状構造をしている事が明らかになった. この管状構造は外径 200 nm, 厚さ 30 nm であった.
この管状構造の析出物の組成を EDX で測定したところ, Y 99.1wt%, Al 0.90 wt%を示した. こ
のことから, ロッド状の析出物は金属イットリウムであると考えられる. 管状構造としては,
自己組織化ナノチューブは, 希土類酸化物が報告されている 28-35). 水酸化イットリウムと酸化
物が熱水的に生成される 33). これらのナノチューブは, 80 30 nmの200 nmの壁厚の範囲の外径
を有する. これらの値は, 我々の結果と一致している. Fig.4-4-2-3 の(b)より, 薄い酸化膜が管状
構造の表面に 5 μm 程度確認できた. さらに, 原子像に対応する明るいドットが確認された.
特定の単結晶構造はほぼ全域に見る事が出来る. イットリウム単結晶の析出は, メモリ効果を
示したサンプルにおいて見出された. したがって, これらの結果は, イットリウム単結晶の溶
解と析出が正常な充放電が行われる電極とメモリ効果状態の電極との間で可逆的に発生してい
ることを示唆している.
106
Fig.4-4-2-1 SEM image of positive electrode of Ni-MH batteries showed
memory effect in discharged state.
107
20 nm
(a)
5 nm
(b)
Fig.4-4-2-2 TEM image of positive electrode of Ni-MH batteries showed
Memory effect in discharged state.
108
100 nm
(a)
5nm
100 nm
(b)
(c)
Fig.4-4-2-3 TEM image of positive electrode of Ni-MH batteried showed memory effect in discharged state.
109
4-4-4 XPS によるロッド状析出物の解析
Fig. 4-4-4-1 に得られたサンプルについての Y 3d XPS スペクトルを示す. Y 3d スペクトルは
2つの構成要素をもっており, 不対スピンと軌道角運動量の間にあるスピン軌道結合に起因
する2.1 eVより3d5/2 と3d3/2 に分離される. 実験データは着色された線により示されている. 点
線および黒い実線はガウス曲線をそれぞれガウスの和でフィッティングした結果を表してい
る.
充電の試料の Y 3d5/2 および 3d3/2 のピークをそれぞれ, 157.3 eV と 159.4 eV に表示されます.
これらは Y2O3 の中の 3d5/2 と 3d3/2 の二つのピークの 156.8 と 158.9 eV の公称値より, 0.5 eV で
のポジ型の化学シフトが示された. 観察されたポジ型の化学シフトは, 試料中の Y 原子は過
剰酸素などのより電気陰性の元素と結合している可能性がある. サンプル中の金属イットリ
ウムの量が少なすぎるため, XPS 測定から, 金属の Y3d ピーク 156.0 eV は確認されなかった.
全てのサンプルの Y 3d スペクトルはフィルム中のイットリウムが酸化されている事を示す.
すべてのサンプルについて Y 3d スペクトルは, フィルム中のイットリウムが酸化されること
を示している. 放電状態の結果, Fig 11(b)に放電したサンプルの Y(OH)3 に起因する 158.8 と
160.9 eV の Y 3d の二つの線が存在を示している. Y2O3 は, 通常の試料で観察されているが,
Y(OH)3 はメモリ効果が発生している試料から観察された. また, リコンディションした試料
から Y2O3 と Y(OH)3 観察された. 言い換えると, メモリ効果のサンプルより減少が進んでい
る.
結晶化は, 液相および気相から個体結晶の析出の形成が可能である. 結晶化の一般的な方
法は冷却と蒸発結晶である. これは, イットリウム単結晶を形成が可能なメカニズムは以下
の通りである:(i)過電圧による水素発生はサンプルの局所に供給される. (ii)サンプルの電極表
面の水素イオン濃度が増加した. (iii)電極表面近傍のpHが上昇する. (iv)イットリウム化合物は,
pH の局所的低下により溶解される. (v)放電中にY3+は還元される. (vi)金属イットリウムは電気
化学的に析出する. 金属イットリウムの析出はメモリ効果が発生したサンプルのみ見られた.
したがって, メモリ効果を示す試料の表面近傍の局所的な pH 低下は, メモリ効果の発現に関
与すると推定される.
電極表面の部分的な pH 低下の発生のメカニズムを確認するために, イットリウムの電気
化学的析出の pH 依存性を調べた. 10 mol/m3 Y(SO4)3 8H2O を含んだ溶液を pH 2 or 6 に保つた
めに硫酸を使用した. サンプルは室温にて銅基板上に25 mA/cm2 の電流で電析させた. 薄膜の
厚さが薄いので, 試料を XPS で測定した. XRD のデータはサンプルの最表面から数ナのメー
ターのところに起因しており, イットリウム薄膜の厚さは, 数ナノメートル未満の厚さであ
ると考えられている. Fig. 4-4-4-2にサンプルから得られた(a)Y 3d, (b)Y 2p, (c)O 1sのXPSスペク
トルを示した. その説明は Fig. 4-4-4-1 と同じである. メインシグナルの線形は pH の変化にと
もない変形した.酸化イットリウムのピークは低い pH の溶液にて得られた. それとは対照的
に酸化イットリウムと水酸化イットリウムは高い pH 溶液析出したサンプルから観察された.
110
Y 3d5/2 と 3d3/2 のピークは pH の低い溶液から得られたサンプルのスペクトルからそれぞれ
158.2 eV と160.3 eV に現れた. これらはY2O3 中のY 3d5/2–3d3/2 の二つの線156.8 と158.9 eV の
値から 1.4 eV プラスの方向に化学シフトしている事が示されている. 観察されたポジ型の化
学シフトは サンプル中の Y 原子を過剰な酸素の様な電気的陰性元素に結合することができ
ることを示しており, 高 pH 溶液中に析出したサンプルの結果, 162 と 164 eV に見られた Y 3d
の二つの線はYOOH および/またはY(OH)3 に起因するであり, Fig.12 において観察された. Fig.
12 (c)により, Y2O3 のY 3p3/2–3p1/2 の二つの線は, 低いpH溶液中で析出したサンプルにて観察さ
れ, Y2O3 と YOOH および/またはY(OH)3 の Y 3p3/2–3p1/2 の二つの線は高 pH 溶液中に析出した
サンプルから観察された.Fig12(c)に低いpH 溶液中に析出したサンプルのO 1s の主な二つのピ
ーク 530.5 と 532.0 eV(酸化物および水酸化物に渡された)を示した. 一方, 532.3 および 535.5
eV の 2 つのピークは, 高 pH 溶液にて析出したサンプルで観察された
(水酸化オキシまたは吸
蔵水に渡された). また, これらは高 pH 溶液中に析出した膜が完全に水酸化した事を示して
いる. これらの結果は, イットリウム化合物が電気化学的に析出し, 化合物の種類は溶液の
pH に依存している事を意味している. イットリウムは, 空気中で容易に酸化されるので, こ
の酸化イットリウム, 析出後のイットリウム金属の酸化によるものである可能性がある. し
たがって, この結果は, 局所的な pH 低下が電極の表面近傍に発生する可能性があることを示
唆している.
111
Fig. 4-4-4-1 Y 3d XPS spectra for positive electrode of Ni-MH batteries:
(a) normal
(b) shown the memory effect
(c) reconditioned.
112
Fig. 4-4-4-2 XPS spectra for the yttrium thin films by electrochemical deposition method:
(a)Y 3d
(b)Y 3p
(c)O 1s.
113
4-5 結語
本研究では市販のニッケル水素電池正極について, 充放電時, メモリ効果, リコンディショ
ニング時の電極表面を XRD, XPS, EDX マッピング, TEM を用いて解析した.
その結果, 全ての試料の XRD 結果から -Ni(OH)2 と -NiOOH は確認されなかった.しかし,
XPS による解析から, NiOOH のピークが確認出来た. メモリ効果が発生している電極とリコ
ンディションした電極の NiOOH/Ni(OH)2 のピーク強度比は, ほとんど変化が見られない. よ
って, メモリ効果が放電した状態での NiOOH の残りによって引き起こされると考えられる.
または, 未反応の Ni(OH)2 がメモリ効果を引き起こしている可能性も考えられる.
メモリ効果が生じている電極表面には, ロゼット状およびロッド状の析出物が確認された.
ロゼット状の析出物はβ-Ni(OH)2 結晶と金属ニッケルが主成分であり, ロッド状の析出物は,
イットリウムが主成分であり単結晶であった. これらの析出物はリコンディショニングする
ことにより可逆的に消滅した.
イットリウムの単結晶はイットリウム化合物が電気化学的に析出したと考えられる. TEM
で観察された酸化皮膜は析出後のイットリウム金属の酸化によるものである可能性があると
考えられる.
114
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