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「河川流量観測の新時代」の発刊にあたって 本論文集のタイトルに「河川

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「河川流量観測の新時代」の発刊にあたって 本論文集のタイトルに「河川
「河川流量観測の新時代」の発刊にあたって
本論文集のタイトルに「河川流量観測の新時代」と大層な名前を付けた。iPS 細胞を利用
した再生医療は新しい医学を創造し、小惑星探査機「はやぶさ」は史上初めて地球外物質
を持って帰ってきた可能性があるなど科学の発展はめざましい。このような科学の発展を、
例えば家庭用テレビの3D 化などによって直接的に一般市民も享受している。このような
他分野の最先端科学と比較すれば、まだまだかもしれないが、年々、新しい河川流量観測
の方法が研究されている。それを広く PR したいがためにこのようなこのようなタイトルを
付けた。
ご存知のように、河川の流量を測定するためには、特に洪水時には、浮子(ふし)とい
う浮きを利用して流速を測定し、断面を測量する必要がある。何も知らない一般市民にし
てみれば、「え!?まだそんなことしているの?」と思うであろう。実際、高校生への大学
模擬講義中、この話をしたら驚かれた。しかし、様々な制約条件の下に浮子による流量観
測技術が確立されていることは河川技術者であれば当たり前に知っていることである。近
年になって、ADCP に代表されるような最新技術によって、これまでに計測できなかった
ことが可能になりつつあるのが実情である。
“河川流量”という値は、各河川流域における河川計画や水資源計画の核となる数字である。
にもかかわらず、「困難だから」という理由で、「浮子による流量観測」で技術開発がスト
ップしてしまってはいないだろうか。”できる”技術に甘んじて、”やらなければならない”技
術・研究開発を怠っていないだろうか。そのような疑問から本研究グループは活動してい
る。もちろん、様々な機関や研究者・技術者が、新しい河川流量観測技術を研究・提案し
ている。本書は、現在どのような研究開発が行われているのかを研究者のみならず実務者
にも広く周知するために刊行するものである。
本書の刊行にあたって、執筆者には次のようなお願いをした。完成された研究・技術は
きっとどこか立派な論文集に提出されているので、本書には、研究・開発過程における失
敗談やボツネタを書いて欲しいとお願いした。技術の発展には”失敗”研究さえも広く公開す
ることが必要だと考えた。また、観測や測定に使用した機材や備品の品名や製造会社、必
要な人員等の詳細も記載して欲しいとお願いした。なぜなら、立派な論文集の研究論文に
おいても、「本当に何を使って、どうやって観測したの?」と観測自体がブラックボックス
になっていることがある。さらに、観測手法や観測技術の研究なら良いが、本来は観測結
果を研究すべきにもかかわらず、観測することがいつのまにか目的になってしまっている
こともある。観測で四苦八苦(混乱)することなく(四苦八苦するのは当たり前なのだが)、
測ったデータをちゃんと議論しよう、という気持ちも込めて本書を発刊した。
さらに、モデル研究中心の研究者においても、使用する河川流量データがどうやって観
測・計測されたのか、はたまた何かの近似式から得られたものなのか、全く知らない場合
がある。河川流量データがまるで本当の真値だと勘違いして、それに合わせるようにモデ
ルパラメータをチューニングしている場合もみうけられる。是非、こういう方々に河川流
量観測の現場を良く知ってもらいたい。もちろん、実務者においては、本書からより良い
技術を知っていただき、実際の現場に活用していただければ幸いである。新しい技術は使
われなければ意味がない。
予算に制約があったため、出版物は白黒印刷とせざるを得なかった。しかし、下記ウェ
ブサイトに論文をダウンロードできるようにしたので、カラー図についてはここを参照し
ていただきたい。
http://www.pu-toyama.ac.jp/EE/tebakari/newQobs/journal.htm
本研究会では、来年度に次号を発刊することを決定した。ご執筆いただける方は是非と
も本研究会にコンタクトを取っていただければ幸いである。
最後に、各執筆者におかれましては、大変お忙しい中を原稿料もなくご執筆いただいた。
ここに記して深く感謝いたします。
水文・水資源学会 研究グループ
「河川流量観測高精度化研究会」
代表
手計太一
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