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平成23年度 川崎市岡本太郎美術館 事業報告・評価書

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平成23年度 川崎市岡本太郎美術館 事業報告・評価書
平成23年度 川崎市岡本太郎美術館
事業報告・評価書
川崎市岡本太郎美術館協議会
目 次
1.展覧会事業
(1)企画展
①生誕 100 年「人間・岡本太郎」展(前期・後期)・・・・・・・・・・・・ 1
②岡本太郎生誕100年記念展「芸術と科学の婚姻
虚舟-私たちは、何処から
来て、何処へ行くのか」展 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
③「第 15 回岡本太郎現代芸術賞」展 ・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(2)常設展
①「生誕 100 年、あっぱれ太郎 岡本太郎の仮面」展・・・・・・・・・ 5
②「生誕 100 年、あっぱれ太郎 歓喜のシャーマニズム」展・・・・・・ 5
③「生誕 100 年、あっぱれ太郎 女と男と岡本太郎」展・・・・・・・・ 6
④「生誕 100 年、あっぱれ太郎 岡本太郎のパブリックアート」展・・・ 6
2.岡本太郎生誕 100 周年記念事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
3.資料収集・整理、調査研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
4.作品の保存・修復、貸出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
5.教育普及・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
6.広報活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
7.施設・設備の整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
8.入館者数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
9.入館 100 万人記念イベント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
23年度事業報告
事業名
生誕 100 年「人間・岡本太郎」展(前期・後期)
会期
前期:2011 年(平成 23 年)4 月 16 日(土)~7 月 3 日(日)
後期:2011 年(平成 23 年)7 月 7 日(木)~9 月 25 日(日)
目標
内容
岡本太郎は戦後日本において、
「美術」の領域だけでなく、様々なジャンルで活動し、様々
な人々と交流した。生誕 100 年を機に「美術」
「建築」
「写真」など様々な領域で、岡本太郎
と深く交流し、ともに活動した人たち、また強い影響を受けた人たちを、作品・映像・資料
等で紹介し、その交流から逆照射され、見えてくる新たな岡本太郎像を探っていき、来館者
にわかりやすく提示する。
展覧会は前期・後期の二期に分けて開催。前期は岡本太郎と実際にともに仕事をした人た
ちや、深い関わりがあった人たちを中心に紹介する。後期は岡本太郎の(直接的、あるいは
間接的に)影響を受け、岡本太郎の精神を継承する人たちを中心に紹介する。
また、本展は初めて展示のアドバイザーとして建築家に協力してもらい、展示設計を行い、
各領域を「建築室」
「美術室」
「岡本家」
「書斎」
「館長室」
「写真室」
「大衆室」の小部屋に分
けてそれぞれ関係の作品・映像・資料の展示を行う。
さらに岡本太郎と交流した関連の映像は NHK を中心に借用し、貴重な G・バタイユや M・
エリアーデなどは INA(フランス)から借用し、岡本のプライベートな映像も上映する。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
岡本太郎生誕100年を記念し、岡本太郎の多面性を建築、写真、思想など様々な領域の人たちとの
交流から岡本太郎の人間像を逆照射する試みを行った。各領域を小部屋に分けるという展示設計を建築
家・眞田大輔氏に依頼し、展示趣旨がわかりやすい展示空間を作ることができた。主催に NHK 横浜放
送局が加わり、NHK で取り上げられたほか共同で関連イベント(トヨダヒトシのイベントや TARO 賞受
賞者オルタのワークショップ)を開催し、広報の上で大きな効果があったものと考えられる。また、市民
ミュージアムと協力し、
「太郎の愛した映画たち」を共同で開催し、幅広い年齢層から好評だった。さら
に出品作家であるマンガ家タナカカツキ氏や文化人類学者の今福龍太氏による講演会を行った。二人の
講演で岡本太郎の芸術や人物像に新たな側面から光をあてることができた。
入館者数は前後期合わせ 49,076 人となり、当館の展覧会では歴代 2 位(1 日平均では第 4 位)となった。
メディア等に取り上げられる機会も多く、東京国立近代美術館で当館も主催となり開催(3 月 8 日~5 月 8
日)した「生誕 100 年岡本太郎展」の効果も大きかったものと考えられる
入館者数:前期 22,681 人(有料 15.340 人 無料 7,341 人) 会期 67 日 (1日平均 339 人)
後期 26,395 人(有料 13,462 人無料 12,933 人) 会期 70 日 (1日平均 377 人)
計
49,076 人(有料 28,802 人無料 20,274 人) 会期 137 日(1日平均 358 人)
[課題・反省等]
展覧会図録については、震災後の館内対応や編集方針の変更等により、後期のレセプションに合わせ
る形で発行した。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など) [A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・岡本太郎の多面性を具体的に指し示すことを意図した好企画。開館以来の研究成果を盛り
込んだことも評価に値する。生誕 100 年の記念展として適切であった。
・大変貴重な資料が見られて参考になった。
・近年の岡本再評価がはっきりと示された。
・生誕 100 年という絶好機をとらえ、内外の組織と連携し岡本像に新たな 1 ページが加えら
れた。7室の小部屋に分けた提示も新鮮であった。
・各領域での個性的な展示が非常に印象的。岡本太郎の作品・人生の流れを様々な切り口か
ら描き出した展示だった。
・岡本太郎美術館ならではの展示になっていた。
・来館者数が多かった点も評価できる。
・展覧会開始時に図録が間に合わなかったのは残念であり、反省材料。
1
A
23年度事業報告
事業名
会期
目標
内容
岡本太郎生誕100年記念展「芸術と科学の婚姻 虚舟—私たちは、何処から来て、何
処へ行くのか」
2011 年(平成 23 年)10 月 15 日(土)〜2012 年(平成 24 年)1 月 9 日(月・祝)
本展は、戦後の旗手、大野一雄、岡本太郎、澁澤龍彦、土方巽、三島由紀夫を、画家・篠
﨑崇と写真家・細江英公の手により表象した作品と、下記の現代作家 9 人の科学を視野に入
れた制作を展示するとともに、その背景として「宇宙」
「細胞」
「脳」という3つの分野の最
先端の研究成果を、国立天文台、東京大学数物連携宇宙研究機構、理化学研究所などの気鋭
の研究者からの協力を得て、大画面の映像で紹介する。
第1部=鬼才たちの肖像
大野一雄、岡本太郎、三島由紀夫、土方巽、澁澤龍彦を、画家・篠﨑崇と写真家・細江
英公の作品により紹介する。
第2部=科学を結ぶ現代作家たち9人
新見隆氏によるキュレーションによる、科学と芸術を横断する現代作家たち 9 人の
代表的な作品を展示する。
粟野ユミト、岩崎秀雄、植田信隆、杉本博司、多田正美、銅金裕司、戸田裕介、
能勢伊勢雄、藤本由紀夫
第3部=「宇宙」
「細胞」「脳」
馬淵晃氏のディレクションにより、国立天文台、東京大学数物連携宇宙研究機構、理化
学研究所などの気鋭の研究者の協力を得て、以下の3つの分野を最先端の研究成果を表
す大画面の映像とともに紹介する。
[宇宙]
宇宙の始まり・見えないものをどうイメージするか。
[細胞] 私たちをいかすもの・細胞の仕組みをどう解き明かそうとしているのか。
[脳]
人間たらしめるもの・脳研究の多様さ、深さをどう見るか。
総合監修=村田慶之輔(川崎市岡本太郎美術館館長)
総合プロデュース/アート・ディレクション=馬淵 晃(デザイナー/アート・ディレクター)
ゲスト・キュレーター=新見 隆(武蔵野美術大学芸術文化学科教授)
主催=川崎市岡本太郎美術館、芸術と科学の婚姻展実行委員会
助成=芸術文化振興基金
協力=国立天文台、東京大学数物連携宇宙研究機構、武蔵野美術大学芸術文化学科、理化学
研究所
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
次のとおり、多彩な関連イベントを開催した。
・9 月 3 日プレシンポジウム「科学・芸術・イマジネーション」
・10 月 15 日トークショー「芸術と科学の婚姻」シンポジウム「社会へ開かれる、美術以外のジャンル
へ開かれる、新しいアートのあり方」
・11 月 27 日音のワークショップ「音・体験教場」出品作家の多田正美氏による子供を対象にした音の
ワークショップ
・12 月 11 日ワークショップ「ティンクトゥーラで描く岡本太郎」出品作家の能勢伊勢雄氏による一般
向けのワークショップ
・1 月 8 日クロージングイベント 大野慶人×永田砂智子「祈り」
パーカッショニスト・永田砂知子氏による「波紋音」の演奏とともに舞踏家・大野慶人氏が踊った。
演奏後、永田氏、大野氏と村田館長によるトークショウも行った。
本展では、国立天文台、東京大学数物連携宇宙研究機構、理化学研究所という科学の最先端の研究施
設の協力を得ることができ、科学の展示部門(宇宙・細胞・脳)において最新の研究成果を馬淵氏のデ
ィレクションにより、展示することができた。また、併せて、新見氏のディレクションによる芸術(現
代美術)という、二つのジャンルを横断する、美術館として新しい試みを行うことができた。
入館者数 16,944 人(有料 9,576 人 無料 7,368 人) 会期 68 日
この時期の企画展としては、平均的な入館者数であった。
[課題・反省等]
2
(1 日平均 249 人)
科学の分野の展示が非常に難しかった。宇宙・細胞・脳の各パートの説明はカタログで詳述するように
し、展示室内には導入となる「詩」をつける他はなるべく解説をせず、馬淵氏によるデザインの画像(映
像)から来館者がイメージを受け取るように展示を行った。しかし、来館者に各パートを見るための導
入や説明について、もう少し工夫が必要であったと思う。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・美術の枠を越えるともに、外部の協力を取り込んだ意欲的な展覧会であった。
・複雑な要素があり、展覧会として一つにまとめ上げていくのに大変な苦労があったと思う。
・意欲的な取組で新鮮な驚きがあった。科学をテーマに理屈抜きで視覚に訴えるということ
を表現しており興味深かった。
・芸術と科学のドッキングという発想そのものがユニーク。異能の人を加えた展示で通常に
はないおどろおどろらしさを演出。
・科学の展示については、理解することが難しかった。
・大きなテーマ性のある展示で岡本太郎を中心にするダイナミズムのある展覧会であった。
・子どもには、直観的に見て面白い展覧会だったようだ。
・要素が多すぎ展覧会としてのまとまりや訴えたいことが散漫になった。
・それぞれの分野は興味深く鑑賞したが全体的に理解することは難しかった。
3
B
23年度事業報告
事業名
「第 15 回岡本太郎現代芸術賞」展
会期
2012 年(平成 24 年)2 月 4 日~4 月 8 日
目標
「岡本太郎現代芸術賞」は、岡本太郎の精神を継承し、自由な視点と発想で、現代社会に鋭
いメッセージを突きつける作家を顕彰するため設立された。今年で 15 回目をむかえる本賞
を通し、21 世紀における芸術の新しい可能性を探る、意欲的な作品を紹介する
内容
「岡本太郎現代芸術賞」は、応募者から提出された応募書類により第 1 次審査を行い、その
中から 20 点前後の入選作品を決定する。入選者は当館の企画展示室等に作品を展示し、さ
らに展示作品により第 2 次審査が行われ、
「岡本太郎賞」
「岡本敏子賞」
「特別賞」の各賞を
決定する。本展は、「岡本太郎現代芸術賞」の受賞作品及び入選作品を当館・企画展示室等
に展示し紹介するものである。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
第 15 回の今年は、応募総数 797 点の中から 24 組の入選作品が決定した。搬入設置も問題なく終了し、
1 月下旬の二次審査で太郎賞・敏子賞各 1 名、特別賞 2 名の受賞者も決定した。応募作品全体の傾向と
して、直接・間接的に東日本大震災を意識した作品も見られ、世相を反映する内容が多かったことがあ
げられる。
岡本太郎生誕 100 年の余波、当館の入館 100 万人イベント等も重なったこともあり、例年以上の入館
者数となり、当展覧会として初めて 14,000 人に達した。雑誌等のメディアにも比較的多くご紹介頂くこ
とができ、滞りなく展示も終了した。
入館者数 14,000 人(有料 7,823 人 無料 6,177 人) 会期 55 日 (1 日平均 255 人)
[課題・反省等]
運営面では前年度の問題点を応募要項作成時に改めたことで比較的スムーズに実施が行えたが、細か
い実務レベルでの記載事項で漏れがあったため、16 回太郎賞の要項に反映できるよう引き継ぎを行った。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・回を重ねるたびに定着してきた感がある。
・若手の登竜門として意欲的な作品が出品されるようこれまでの成果をしっかりアピールし
てほしい。今までの総括的な展覧会があってもよい。
・完成度が高くなっている。賞の方向性ができていて、応募者に理解されてきているのでは。
今後、マンネリ化しないようにする大きな戦略も必要か。
・若い作家にとって人気のある賞に成長している。
・この賞は、今どき珍しくエネルギッシュさに満ちている。入選率はわずか3%。こうした
自由な表現に若い人が飢えている状況がみてとれる。
・東日本大震災以降の若いアーティストの作品の様子をみることができ、例年に比べ静かで
落ち着いたクオリティの高い印象深い作品が多く興味深くみた。
・選にもれた作品をどのように紹介していくかが今後の課題と思われる。
・15 回という区切りの開催であったことを考慮し、今後のありかたを検討されるべきでは
ないか。
4
A
23年度事業報告
事業名
会期
目標
内容
常設展①
「生誕 100 年あっぱれ太郎 岡本太郎の仮面」展
2011 年(平成 23 年)4月7日(木)~7月3日(日)まで(75 日)
東京国立近代美術館での「生誕 100 年 岡本太郎展」に主要作品がほぼ貸し出し中となるが、
当館企画展「人間・岡本太郎」展と同時に行う常設展として、岡本太郎の作品や思想をしっ
かりと来館者に伝えることができるよう、工夫した展示にする。
岡本太郎が制作・執筆をする上で、強い関心をよせたテーマに「仮面」がある。岡本の絵
画には戦後から多様な顔が登場するが、とりわけ後期には顔や目が中心的なモチーフとなっ
ていく。国内外をめぐったフィールドワークの写真にも仮面に注目したものがあり、また日
本万国博覧会の《太陽の塔》における地下展示室においては、世界各地の仮面を集めて展示
するなど、長きに渡って「仮面」は岡本の強い関心対象であり続けた。
岡本のことばは独自の思想をもち、それだけを切り離してみても十分な強度を持つものだ
が、作品と併せ見ると違った深度や呪術性を帯びる。本展では、作品とともに「仮面」につ
いての岡本の文章も並置し、その作品世界に踏みこむ手掛かりとする。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
東京国立近代美術館での「岡本太郎展」と時期が重なり、いわゆる目玉となる作品は 1 点(重工業)
をのぞきすべて貸出中という状況となったが、岡本の文章と作品を併せて展示するなど、工夫を凝らし
た内容とした。今回は常設展単独の広報はしなかったが、生誕 100 年として話題が集まる時期でもあり、
企画展とともに新聞記事や雑誌で常設の内容についても紹介もされるなど反響も大きかった。
[課題・反省等]
5 月8日までは主要作品は東京国立近代美術館での「岡本太郎展」で見ることが可能だったが、その
展覧会が終了した後、当館での主要作品の展示について、電話等での問い合わせが多く寄せられ、岡本
太郎への関心が高まった時期だけに当館で展示がされていないことを残念だという反応もあった。
事業名
会期
常設展②
「生誕 100 年、あっぱれ太郎―歓喜のシャーマニズム」展
2011 年(平成 23 年)7 月 7 日(木)から 9 月 25 日(日)まで(70 日)
目標
岡本太郎を理解する上で不可欠なキーワードの内、
「歓喜」と「シャーマニズム」に
焦点を当て、作品に込められた意図を開示し、来場者の理解の深化に資すること。
内容
岡本太郎の創作活動の背景となった思想として、ルーマニア出身の宗教学者ミルチャ・エ
リアーデの存在に注目が集まっている。川崎市岡本太郎美術館は岡本旧蔵書の欧文書籍を
391 冊所蔵しているが、その中にエリアーデの著書 6 冊があり、多数の下線が確認できる。
岡本は、エリアーデの著書に中でも、特にシャーマニズムに関する研究、そしてそこから生
じるエクスタシー(「歓喜」の意)に強い興味があったようである。
本常設展では、岡本芸術理解のためのキーワードとも言うべき「歓喜」と「シャーマニズ
ム」に着目し、岡本旧蔵のエリアーデの書籍をもとに、岡本作品の解明を試みた。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
常設展ながら、インターネットのブログやツイッター等を中心に、これまで知られなかった新たな岡
本太郎像が提示された展覧会として、好評だった。
生誕 100 周年を記念して川崎フロンターレのユニフォームのデザインとして使用している岡本太郎
《挑む》も展示した。
[課題・反省等]
掲示パネル等の解説文のコピー等を要望される来場者が多く、常設展用の配布資料等を毎回準備する
ことも、今後、検討する必要があるように思う。
5
事業名
会期
目標
内容
常設展③
「生誕100年、あっぱれ太郎―女と男と岡本太郎」展
2011年(平成23年)9月29日(木)から2012年(平成24年)1月8日(日)まで(82日)
岡本太郎が表現する人間の姿の一面を作品により紹介する。
戦後、男尊女卑がまだまだ当然のようにまかり通っていた時期から岡本太郎は女性の存在
のすばらしさ、男女の役割とその重要さを語っている。そして男女の中にありながら、自身
は子どものようにふるまい続けた。
その思想は作品にも現れている。女性、男性の姿、自画像のような子どもの姿、そうした
作品を紹介し、岡本太郎が表現した人間の姿を伝える。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
人間の姿をテーマにすることによって、岡本太郎が表す人間の内面の姿もからめることができた。
岡本作品によく登場する顔も人間の姿の一部として取り入れ、
《ツラ》を当館初展示した。
岡本自身が語るコメントを絡め、岡本が捉える人間の姿を紹介した。
[課題・反省等]
「解説があって良かった」との来館者の声が聴かれた。調査を重ね、展示テーマに合う資料の提示を
充実させる必要を感じた。
事業名
会期
目標
内容
常設展④
「生誕100年、あっぱれ太郎 岡本太郎のパブリックアート」展
2012年(平成24年)1月17日(火)から4月8日(日)まで(71日)
岡本太郎のパブリックアート作品について、首都圏の作品を中心に紹介する。
岡本太郎の生誕100年を迎える本年は、日本の各地で岡本のパブリックアートを見直し、
修復を行うなどの動きが出て来ている。
当館で制作した首都圏版のパブリックアートマップでとりあげた作品を中心に、日本各地
の岡本太郎のパブリックアートについて紹介する。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
本展は、岡本のパブリックアートをまとめて紹介する初めての企画として、首都圏にある岡本の作品
を紹介する良い機会になった。展示方法としては、所蔵作品と併せて設置場所の情報と画像をパネルで
紹介。岡本パブリックアート作品に足を運ぶきっかけとなったのではないか。首都圏以外のパブリック
アート作品についても、映像で紹介した。
[課題・反省等]
今後は、首都圏以外の作品についても、調査を続けていきたい。
6
常設展全般について
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・多面的な作家を多面的に紹介しながら楽しめる岡本入門にもなっている。
・岡本太郎は生前よりも死後の方が正当な評価を受けていると思う。マンガやフィギュアと
いったポップカルチャーの中に、彼に通じる要素がいくつもみつけられるといった現象から
もわかる。そうしたベースに展開された常設展はいずれも興味深いものであった。
・常設展は岡本太郎の内実を問う展示であり、4 つの常設展は成功していたと思う。特に③女
と男と岡本太郎展はよほど研究しないと思いつかない内容であった。
・東京国立近代美術館での回顧展に全ての代表作が貸し出されたなかで、様々な工夫をし、
魅力的な常設展を開催したことを積極的に評価する。今後、中長期的な見通しをたてること
が必要と考えられる。
・いずれの常設展も企画展と程よく連動していた。特に③女と男と岡本太郎展は企画展とし
てテーマを深めたら面白い。
・パブリックアートの現状をみるためにも岡本太郎のパブリックアートへの貢献なども検証
を深めるべきテーマかと思う。
・いずれの常設展も非常に魅力的で、太郎のエッセンスを伝えていたと思う。
・館外の岡本作品の所在を確認するためにも重要な切り口となるだろう。
(④パブリックアー
ト展)
・いずれの常設展も岡本太郎の様々な側面を照射しており理解がしやすかった。特に④パブ
リックアート展は、親しみやすい内容で実際に見に行こうと思わせる展示だった。
7
A
23年度事業報告
事業名
目標
内容
岡本太郎生誕100周年記念事業
2011 年(平成 23 年)は、岡本太郎生誕100年の記念すべき節目の年であり、これを記
念し、岡本太郎記念企画展及び記念イベントを幅広い世代が共感できる事業として開催し、
岡本太郎生誕100年を広く伝えるものとする。これらの記念事業の実施を通じ、岡本太郎
と岡本太郎美術館の魅力を発信し、認知度を高めるとともに、地域と共に推進し、地域の活
性化につなげていく。
1 岡本太郎生誕 100 年記念企画展「人間・岡本太郎展」の実施 (別掲)
2 岡本太郎生誕100年記念イベント
(1)ダンス公演「TARO と踊ろう!」
ア 内容・趣旨
岡本太郎生誕 100 年記念ダンス公演として、現代舞踊界で人気と実力を備えたアーティ
スト・ダンサー3 組(上田遙作品・白河直子作品・小池博史作品)が当館企画展示室におい
て、岡本作品とコラボレーションするという試みである。岡本作品と同じ空間で繰り広げ
られる踊り。常に時代に先駆け、時代の閉塞に挑戦を続けてきた「岡本太郎」の作品と対
峙し、挑み、共鳴することにより、岡本太郎の精神が改めて新鮮な芸術表現として生き続
けていくものと考えられる。
イ 開催期間
(ア) 開催期間 2011 年(平成 23 年)10月1日(土)~10月2日(日)
ウ 公演回数及び公演開始時刻、公演時間、定員
(ア) 公演回数 1 日3回 計6回
(イ) 公演開始時刻 1回目11時・2回目14時・3回目17時
(ウ) 公演時間 各約 1 時間
(エ) 定員 各回 200 人
(2)トークショー「TARO と踊れば!」
ア 内容・趣旨
22年度に実施した岡本太郎生誕 100 年プレイベント「TAROと踊ろう!」に参加し
た振付家及びダンサー、今年参加予定の振付家・ダンサーが「太郎と踊れば!」をテーマ
に熱いトークバトルを繰り広げる。10月に開催する「TAROと踊ろう!」の告知も兼
ねて行い、イベント全体の連動を図る。
出演者
振付家/舞踊家 上田遥 広崎うらん 伊藤千枝 舘形比呂一 小池博史 白河直子
舞踊評論家 伊地知優子
イ 開催日時
(ア) 開催日時 2011 年(平成 23 年)7月3日(日)
13時30分開場 14時開演
16時終了
(3)川崎フロンターレとのコラボレーション企画「TARO×フロンターレ」
ア 内容・趣旨
今年川崎フロンターレのユニフォームに岡本太郎の「挑(いどむ)」の書がデザインさ
れたことから、川崎フロンターレホームグランドでの川崎市制記念試合前に、催し物広場
(エンタの広場)で川崎フロンターレと連携して下記イベントを実施し、岡本太郎生誕1
00年と岡本太郎美術館をPRする。
イベント内容:川崎市内のダンス教室によるキッズダンス、TAROクイズ、生誕10
0年イベントチラシ等の配布 その他大型スクリーンでの岡本太郎美術館のPRも実施
イ 開催日時・会場等
(ア) 開催日時 2011 年(平成 23 年)7月9日(土) 17時~ 18時~ 各30分
(イ) 会場
川崎市等々力陸上競技場エンタの広場
(ウ) 参加費無料 当日の来場者を対象とする。
(4)市民参加型アートイベント「キッズTARO」展
ア 内容・趣旨
岡本太郎の生誕100年を祝い、市内小学生を対象に、川崎フロンターレのユニフォー
ムに描かれた「挑(いどむ)」をテーマに、今年挑戦したこと、これから挑戦したいこ
とを絵に描いて応募してもらい、応募作品を岡本太郎美術館内に展示し、こどもたちに
アートに触れる機会と表現する喜びを体験してもらう。
8
イ 参加対象・応募方法
川崎市内在住もしくは川崎市内の小学校に在籍する児童
四つ切りサイズ(380×540mm 縦横自由)画材は自由 ひとり1点 所定の応募用
紙を作品の裏に貼り、岡本太郎美術館に送付する。
受付期間:2011 年(平成 23 年)9月3日(土)~9月25日(日)
(必着)
ウ 展示
展示会場:岡本太郎美術館内ギャラリー
展示期間:2011 年(平成 23 年)12月1日(木)~24年1月9日(月)
(5)サブカルチャーイベント「芸術は爆発だ!」
ア 内容・趣旨
日本発のサブカルチャーとして世界中に席巻しているコスプレ。岡本太郎生誕100年
にちなみ、「芸術は爆発だ」をテーマに、岡本太郎美術館周辺に岡本太郎氏をリスペクト
するコスプレイヤーが集まり、生誕100年に華をそえ、盛り上げる。
イ 開催日時・会場等
(ア) 開催日時 2011 年(平成 23 年)11月3日(祝・木)
10時30分開場 14時開演
16時終了
(イ)会場 岡本太郎美術館敷地内
(6)生誕 100 年記念「コンサート 太郎の愛したクラシック」
ア 内容・趣旨
生誕 100 年のフィナーレとして、岡本太郎が愛したモーツァルトの楽曲を中心に、弦楽四
重奏とトークを交えながら 101 歳の誕生日を祝う。
イ開催日時・会場
(ア)開催日時
2012 年(平成 24 年)2 月 26 日(日)開演 15:30 終演 16:45
(イ)会場 岡本太郎美術館ギャラリー
・会場:美術館ギャラリースペース
・観覧料:無料
演奏:テアトロ・ジーリオ・オーケストラ弦楽四重奏団
門野由奈 川城千秋:ヴァイオリン 池辺 真帆:ヴィオラ 加藤 泰徳:チェロ
曲目:モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハト・ムジークより 第 1 楽章
モーツァルト:ディヴェルティメント K563 より 第 6 楽章
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第 17 番 K458「狩り」より 第 1 楽章
ハイドン:弦楽四重奏曲 第 77 番「皇帝」より 第 2 楽章
ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲 第 12 番「アメリカ」より 第 2 楽章
ほか、加藤泰徳氏による岡本太郎をイメージしたオリジナル曲など
2 広報推進
地元商店会等の協力を得て、街路灯タペストリーを設置する。
小田急・南武線等ポスター駅貼り
向ヶ丘遊園駅前大型掲示板設置への対応
9
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
岡本太郎生誕100年記念イベント
(1)ダンス公演「TARO と踊ろう!」
昨年度に続き2回目となる「TARO と踊ろう」は、出演者が変わっているが、昨年度の効果もあり、
満席になる回もあった。3演者それぞれ岡本太郎の作品と絡みながらも、全く違う世界をつくり、観覧
者を楽しませた。昨年(720 名)を大きく上回る 892 名の参加者を数えた。
(2)トークショー「TARO と踊れば!」
参加者約 70 名。熱心なファンが多数参加し会場のガイダンスホールは満席となった。
今年の TARO と踊ろう!のプレス発表も兼ねて実施し、PR として効果的なイベントとなった。
(3)川崎フロンターレとのコラボレーション企画「TARO×フロンターレ」
計画どおり実施。このイベント及び当館の展覧会の PR をフロンターレ後援会誌にも掲載し、広報の
上で効果があったものと考えられる。
(4)市民参加型アートイベント「キッズTARO」展
市内の小学生から作品を募集し、100点程度を想定していたが、340点の応募があった。
(5)サブカルチャーイベント「芸術は爆発だ!」
様々なコスプレをした参加者(約 40 名)が館内外を練り歩いた。作品と一緒に写真を撮れるコーナーを
設け、カラフルな衣装と作品とが合わさり、サブカルチャーらしい不思議な空間を作っていた。多数の
取材が訪れるなど、メディアの注目も集め、参加者からは岡本太郎作品のある美術館でコスプレができ
たことが好評だった。
(6)生誕 100 年記念「コンサート 太郎の愛したクラシック」
岡本太郎の思い出とクラシックの話を、岡本太郎美術館館長 村田慶之輔とテアトロ・ジーリオ・オ
ーケストラ事務局長の熊谷仁士氏による対談形式で進め、話題にちなんだ楽曲を四重奏の生演奏で楽し
んでもらった。生誕 100 年のフィナーレと 101 歳の誕生日を祝うイベントとして大いに盛り上がった。
参加者 170 名
広報推進
藤子・F・不二雄ミュージアム、川崎フロンターレと連携し、地元商店会の協力を得ながら向ヶ丘遊園
駅・登戸駅・宿河原駅の周辺などに岡本太郎生誕 100 年を祝うタペストリーを掲示した。(7 月中旬~)
また、 向ヶ丘遊園駅前に生田緑地博物館の掲示板が設置され、企画展等の広報で効果をもたらした。
[課題・反省等]
生誕 100 年の各種イベントを通じて得られた様々な連携を今後の美術館活動に活かしていくことが重
要と考えられる。広報推進などの取り組みは今後も継続し充実させていきたい。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・生誕 100 年を機に、岡本太郎及び岡本太郎美術館を周知するために様々な取組を行なった
ことを評価する。人手と予算と効果について、この経験を今後に生かして欲しい。
・多くの新しい観客を得られたことは意義が深い。こうした新しい観客をリピーターにして
いく方策も考えるとよい。
・美術ファン以外にアピールができて成果もあった。
・ダンス、音楽、トークショー、フロンターレといずれも岡本太郎らしくなってしまうのが
不思議。そこを巧みに衝いた 100 年記念事業であったと思う。
・「TARO と踊ろう!」は人気があるイベントとして定着しつつあると思う。
・様々な芸術イベントや社会教育にたいへん熱心に取り組まれており、今後も継続が期待さ
れる。ダンスについては、地域活性化の観点から、今後学校とアーティストの架け橋になる
ような企画があってもよいのではないか。
・サブカルチャーイベントは今後も期待したい。
・「キッズTARO」展もすばらしかった。
10
A
23年度事業報告
事業名
目標
内容
資料収集・整理、調査研究
当館に寄贈された岡本太郎関連の映像、写真資料、スクラップ記事、関連作家(北代省三)
資料について、整理とデジタル化を行うとともに、それに付随した調査研究を昨年度に引き
続いて推進する。
今年度は、映像や写真、関連作家資料を中心に整理・デジタル化を進める。
作品資料収集に関しては、岡本太郎や同時代の関連作家資料について調査を進め、購入寄
贈もふくめて検討をしていく。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
引き続き、今年度も映像や写真、関連作家資料を中心に整理・デジタル化を進めた。年度の後半期か
ら収蔵品データベースを新規システムに切り替えたことで、より効率的な整理作業が行える環境となっ
た。また人的体制についても後半期から整えたことで、今年度のデジタル化の作業は予定以上に順調に
進めることができた。
[課題・反省等]
昨今のフィルム市場の縮小に伴い、デジタル化のための高性能スキャナー等が製造中止となり、現行
機器での運用で終了するとの予測もある。未だデジタル化されていないフィルム・映像類については、
早急に対応しないと今後数年で作業自体が不可能になる可能性が高い。優先順位を検討するとともに、
前倒しで業務を行うための予算化を行っていく必要がある。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・デジタル化は非常に重要で早期に実施すべき。補助金等支援が得られればよいが。
・報告内容では作業の進捗状況がみえない。収集品の整理が順調に進んでいるとは思えない。
地味だが美術館の根幹をなす作業であり遅滞なく進めてほしい。
・所蔵資料の整理、活用が徐々に図られていることは望ましいが、収集費が乏しい状況は美
術館にとって致命的なことであり、早急に改善を求めたい。
・デジタル化とともに旧来のフィルム保存も考慮したらよい。
・引き続き様々な資料のデジタル化・アーカイブ化を進めるとともに、どのような資料がど
こにあるかをわかるようにし、資料を一般に活用することが期待される。
11
B
事業名
目標
内容
23年度事業報告
作品の保存・修復、貸出
2011 年(平成 23 年)3 月 8 日から 5 月 8 日まで東京国立近代美術館で開催した「生誕 100
年 岡本太郎展」への貸出を中心に、当館での展示にも支障が生じないように所蔵作品の状
態等を把握しながら調整を行っていく。
作品・資料の保存・管理業務を定期的に行い、適切な処置を施し、館内の良好な環境の維
持に努める。
岡本太郎作品を中心に、当館で所蔵する作品・資料の保存及び作品の状態を考慮した作
品・資料の貸出を行うもの。
作品調書整備、作品修復業務、くん蒸業務など作品の保存・管理業務を定期的に行い、適
切に処置する。
環境調査、酸アルカリ調査、温湿度調査、収蔵庫とその周辺の清掃作業など定期的に行い、
館内の良好な環境を維持する。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
[作品保存]
環境調査、酸アルカリ調査、温湿度調査、収蔵庫とその周辺の清掃作業などを定期的に行った。
[作品修復]
《花びらの椅子》
《手の椅子》計 2 点の立体作品の修復と、油彩作品 11 点の額装について修復を行った。
[作品貸出]
・岡本太郎作品 80 点、書籍 4 点を「生誕 100 年岡本太郎展」
(会期 3 月 8 日~5 月 8 日、東京国立近代美
術館)に貸出
・岡本太郎作品 2 点、岡本太郎写真 12 点を「森と芸術展」(会期 4 月 16 日~10 月 23 日、東京都庭園美
術館、福井県立美術館、札幌芸術の森美術館)に貸出
・岡本太郎作品 9 点を「岡本太郎 顔は宇宙だ展」
(5 月 20 日~12 月 5 日)
・岡本太郎作品 32 点、岡本太郎写真 35 点、資料 1 点を「岡本太郎と沖縄展」
(会期 5 月 31 日~6 月 26
日、沖縄県立博物館・美術館)に貸出
・北代省三コレクション(実験工房資料、関連写真)51 点を(会期 9 月 8 日~10 月 29 日、BETONSALON)
に貸出
・北代省三コレクション(実験工房資料、関連写真)13 点を「MOT Collection 特集展示・福島秀子」展
(会期 H24 年 2 月 4 日~5 月 6 日、東京都現代美術館)に貸出
・《太陽の塔》を「特集展示 太陽の塔 黄金の顔」展(会期 H24 年 2 月 21 日~5 月 20 日、江戸東京博
物館)に貸出
[課題・反省等]
貸出については、東京国立近代美術館での「生誕 100 年 岡本太郎展」を中心として要望が集中し、当館
での常設展示も含めた作品調整が非常に難しい時期だったが、各所と細かく調整を行うことで、滞りな
く貸出を行うことができた。他館で展示を行うことで、岡本太郎や当館所蔵資料について、広範囲にア
ピールすることができた。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・生誕 100 年という年で様々な求めがあったとのことだが、適切な対応ができたと思う。
・見えにくい作業であるが重要、ただし予算が少額である。
・重要な業務で大きな成果をあげている。
・活発な貸出し状況で、岡本太郎の評価が高められたと思う。
・作品貸出について、様々なやりくりをして生誕 100 年を乗り切った功績は大きい。
12
A
23年度事業報告
事業名
教育普及
会期
通年
目標
内容
・より多くの来館者を館に招くとともに、来館時に美術館の魅力を伝え、再来館につなげる。
・学校教育と連携し、学校現場の実情・要望を踏まえた鑑賞プログラムによる教育普及活動
を推進する。
・団体利用数の10%増を目指す。
・来館者に美術館をより楽しんでもらうための工夫や、来館したことの無い方が足を運ぶよ
うな企画、広報を行う。
・学校等の団体見学の案内(教育カリキュラムに合わせた見学の実施)
・教育機関で活用する教材の開発・管理・活用
・キッズTARO、美術館探検ツアー、鑑賞ツアー、ワークショップ等の普及事業を開催し、
美術館の魅力を伝える。
・ 教育関係研究会、実技研修会、出張授業等において美術館の魅力を伝える。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
イベントや教育機関への広報により、来館者の増加を図った。来館者には、展示を含め、施設の良さ
を感じてもらえるよう努めた。
新指導要領に合わせ、学校教育機関との連携強化に努めた。3年目になる美術館での教員の研修も定
着しつつあり、参加者が学校行事で取り上げてくれる事も多い。各種教材については、実際に活用して
いる様子を知ってもらうことで、利用の増加へとつなげた。現在市外からの要請が増加している。
夏休みに課題として美術館を取り上げている学校も多く、課題も兼ねてイベントに参加する方も多く
なっている。生誕100年ということもあり、他都市からの問い合わせも増えた。
市民まつりでの生田緑地紹介ブースにて、美術館を紹介するとともに、造形体験をしてもらった。
125人の来訪者が体験し、延1,200人以上に館を紹介した。
11人の作家で組織されているイレブンガールズアートコレクションによるワークショップを開催。
それぞれが、作家としての技法や表現スタイルを持っているこのグループは、多様なワークショップが
開催できるのが魅力である。今回は5つの異なる内容の講座を同時開催。自分の参加したワークショッ
プだけでなく、すぐ隣で全く違う制作をしている様子を見る楽しみも加わり、会場が盛り上がった。
それぞれの講座で、使っている材料も技法も普段プロとして作家自身が使っているもので、画材メー
カーと協力し、材料を提供してもらうことで、参加者は手ぶらで参加できるものになっている。各講座
定員を超える参加があり、参加者からは再開催を望む声が聴かれるなど、ニーズを強く感じた。
[課題・反省等]
図工・美術の年間活動時間の少なさや、鑑賞へ割り当てる時間の関係上、美術館のみで校外学習を組
むことは難しく、緑地内の他館の受け入れ状況に影響を受けている。
南北に細長い川崎の地理的要因もあり、川崎区、幸区からの来館が少ない。短時間での鑑賞を可能に
することや出張授業で美術館の魅力を伝え、今後の来館につなげる。
昨年度と比較し、青少年科学館の改築工事による休館の影響で10月以降の団体が減少した。美術館の
みでの校外学習が難しいという状況を踏まえ、生田緑地の他館との連携を図る必要がある。
利用10%増を目標にしていたが、増加と言うところまではいかず、過去の統計から見ると多いほうで
はあるが、昨年度と同程度の利用に留まった。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・現在の人員とコストの中で、大変頑張っている。
・教育機関との連携や社会教育活動に熱心に取り組んでいる。
・教員研修、各種教材の作成についての成果が具体的にみえない。
・美術館の立地や社会情勢を踏まえ着実な活動が行なわれている。ベースとなる市民を更に
啓発し、親しみをもってもらうために必要な事業である。
・学校教育との連携については、生田緑地の他館や他教科等との連携(例えば地理や世界史)
を模索することが望まれる。
13
B
23年度事業報告
事業名
目標
内容
広報活動
・広報媒体の工夫(B1ポスターの作成により駅貼り広告を増やす等)
・市民文化室等関係課等との連携強化
・地域等との連携強化
などにより企画展を中心とした美術館活動と生誕 100 年の効果的な広報を行い入館者増に
つなげる。
有料広報活動
代々木上原駅看板、向ヶ丘遊園駅生田緑地看板、小田急線等へのポスター駅貼り、
新聞広告(虚船展)など
無料広報活動
プレスリリースによる新聞雑誌等の広報、川崎駅地下街アゼリア広報コーナー、市内全域
広報掲示板、市政だより、かわさきアートニュース、展覧会チラシ・ポスターの美術館等へ
の配布・掲示、地元商店会等との連携による広報、庁内連携による広報、JTB コミュニケー
ションズによる生田緑地広報、川崎フロンターレとの連携による広報(後援会報など)
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
23 年度は生誕 100 年ということで様々な工夫で効果的な広報に取り組み、入館者増につなげることが
できた。
有料広報活動
代々木上原駅、向ヶ丘遊園駅看板について継続して掲出した。
「人間・岡本太郎」展では B1 ポスターの駅貼り、秋の企画展「芸術と科学の婚姻」展については、
朝日新聞夕刊への広告と B1 ポスターの駅貼りを行った。
(駅貼り対象駅は、主に小田急線各駅と JR 南
武線及び東急田園都市線。
)
無料広報活動
プレスリリースを通した各種広報媒体への掲載、各企画展のアゼリア広報コーナーへの広報掲出、市
政だよりへの掲載、展覧会チラシ・ポスターの配布等、例年通り行った。
小田急・JR 東日本・東急の協力により、小田急線の向ヶ丘遊園他多摩区を中心とする各駅、南武線
の登戸駅他多摩区各駅、東急沿線各駅に生誕 100 年記念展や「TARO と踊ろう!」のポスター掲示をす
ることができた。今回新たな試みとして、市民・こども局の映像コンテンツ推進事業による「かわさき
公共CM」に参加し、
「岡本太郎生誕 100 年と館PR」というCMを作成、アゼリアビジョン(川崎駅)、
区役所、図書館等で放映した。
地元商店会等の協力を得て向ヶ丘遊園駅・登戸駅周辺等にタペストリーを設置した。また、向ヶ丘遊
園駅前の生田緑地博物館掲示板の設置により企画展等の広報を行った(P9 参照)
多摩図書館、高津図書館に岡本太郎コーナーを設置し、生誕 100 年をアピールした。
庁内に岡本太郎生誕 100 年連絡会が設置され。多摩区、高津区、シティセールス等関連各課と情報共
有した。多摩区、高津区でも独自に太郎生誕 100 年イベントを行い、当館も資料提供などで協力する形
をとった。
[課題・反省等]
・生誕 100 年で得られた様々な連携を今後も活かしていくことが課題と考えられる。
・インターネットを活用した広報活動等、継続可能なものについては引き続き実施に努めたい。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・生誕 100 年の年に、様々な連携や工夫により効果的な広報に取り組まれた。
・限られた予算の中で適切な広報が行われている。
・今後はもう少し広報予算をかけ積極的に PR することが必要と考えられる。
・公立美術館はこの分野が弱くなりがちで一層の強化を目指すべきと考えられる。
・インターネットの活用を広げることを期待する。
・都内への PR など広報活動の活性化が課題と考えられる。
14
A
23年度事業報告
事業名
目標
内容
施設・設備の整備
(1)外壁補修工事を効果的に実施するとともに、利用者への影響を最小限に留めるように工夫
する。(工期予定11月から12月末日)
(2)常設展示室映像装置(樹人システム)を魅力的な演出を行う新システムに更新する。
(工期予定1月中旬)
(1)岡本太郎美術館の既存のコンクリート擁壁(外壁)について、経年劣化によるクラックの発
生が著しくなっており、そのクラックにより雨水等が侵入し、作品に損害を与えたり、崩壊
により利用者に危険が生じる恐れがあるため、クラック等の補修及び擁壁の強度をあげるた
めの整備を 22 年度から開始し本年度は 2 箇年目にあたる。
(2)常設展示室映像装置更新:常設展示室「樹人」コーナーに設置している映像装置が機器の
劣化により不具合が多いため、新システムに更新する。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
(1)コンクリート擁壁(外壁)の損傷が多かったが、設計より参画し、施工・行程の調整を図り、当初の予
定どおりに完了した。
(2)常設展示室「樹人」コーナー新システムの更新にあたり、各関係者・部署との調整し、スライドプロ
ジェクターからビデオプロジェクターにシステムを交換し、コンピューターによる制御ができるように
なり、より多彩な映像による演出が可能になった。
[課題・反省等]
(1)コンクリート面の補修は計画通りおこなったが、石板面やタイル面の経年による汚れやシミ、階段部
分等の劣化や汚れなど美観上の問題については今後の課題である。
(2)プロジェクター装置を更新することによって多彩な映像表現が可能になったため、展示室の照明設備
等を含めたより効果的な演出について検討し実施していくことが課題である。
今後、長期的視野に立って、施設・設備の計画的な整備が必要であり、既に作成している今後 10 年間
の大規模補修計画を毎年確認し、状況に応じて修正し整備していきたい。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など) [A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・適切な対応が行われていると判断される。
・建築躯体は今後も計画的に適切な対応が必要である。
・十分な予算が投入されるべきである。
・計画的なメンテナンスが行なわれているが、今後は空調等の設備機器の更新を検討すべき
である。
・工事の際、利用者への影響(休館等)が避けられたようでよかった。
・臨時休館の際は、駅前や緑地入口等で外国人向けの掲示も検討されたい。
15
B
23年度事業報告
評価項目
目標
内容
入館者数
生誕 100 年を迎え、新聞、テレビ、雑誌等様々なメディアで取り上げられる機会も増え、
東京国立近代美術館での「生誕 100 年 岡本太郎展」開催、地域との連携等の効果もあり、
展覧会等各種事業の充実を図り、22 年度を大幅に上回る入館者数を目指す。
(参考)最近 3 年間の入館者数
(1 日平均)
20 年度 71,988 人 有料 42,545 人 無料 29,443 人(245 人)
21 年度 75,447 人 有料 44,541 人 無料 30,906 人(258 人)
22 年度 70,033 人 有料 38,422 人 無料 31,611 人(247 人)
予測される増減要素として、9 月 3 日に開館した藤子・F・不二雄ミュージアムから生田
緑地入口までのシャトルバスによる回遊性による効果がプラス要因として期待される。
一方、青少年科学館改築、中央広場整備、ビジターセンターなど公園内の工事による影響
で公園全体の利用者が伸び悩むことが予想されること、年度当初の震災の影響もマイナス要
因として考えられる。生誕 100 年事業等の推進により、例年を大きく上回る入館者数を目指
す。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
23 年度 88,042 人 有料 50,053 人 無料 37,989 人(307 人) 詳細は別紙のとおり
前年を大きく上回る入館者数を数えた。(前年比+26% 18,009 人増)
年間入館者 88,042 人は、開館以来第 2 位となるもので、岡本太郎生誕 100 年とその関連事業の実施等
により、当館の認知度が高まった成果と考えられる。
[課題・反省等]
24 年度は青少年科学館のリニューアルオープン、東口ビジターセンターのオープンなどもあり、これ
ら生田緑地の文化施設等と効果的に連携して、今後も多くの方に利用されるよう努めていきたい。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・震災後という中で、これだけ入館者数が伸びたのは驚異的である。特に、年度前半の健闘
が大きかったと思う。十分な成果がある。
・生誕 100 年の注目度に加え様々なイベントを積極的に行なったことが入館者増につながっ
たものと思われる。
・溝口行き路線バス、藤子ミュージアムからのシャトルバスの本数が増加するとよい。
・生誕 100 年の後の今年度からが重要で、この流れを続けていければよいと思う。
・緑地広場から美術館までの導線をどうするかの検討が必要
16
A
前年度(H22)
平成23年度 川崎市岡本太郎美術館
月別入館者数
月
開館
日数
入館者
数
有料
月
無料
計
一日
平均
開館
日数
入館者数
前年比
入館者
数
有料
無料
計
一日
平均
4月
24
4,645
2,153
6,798
283
+43%
4月
24
3,043
1,706
4,749
198
5月
25
6,966
3,379
10,345
414
+18%
5月
26
5,965
2,780
8,745
336
6月
26
4,680
2,416
7,096
273
+14%
6月
26
4,298
1,943
6,241
240
7月
25
4,489
3,969
8,458
338
+45%
7月
25
3,068
2,777
5,845
234
8月
26
5,424
5,009
10,433
401
+45%
8月
26
3,689
3,511
7,200
277
9月
24
4,794
4,936
9,730
405
+50%
9月
23
2,811
3,692
6,503
283
10月
26
4,790
4,916
9,706
373
+44%
10月
27
2,786
3,952
6,738
250
11月
24
3,721
2,476
6,197
258
+ 7%
11月
24
2,883
2,903
5,786
241
12月
24
2,065
1,878
3,943
164
-8%
12月
23
1,787
2,509
4,296
187
1月
12
2,047
1,790
3,837
320
+19%
1月
15
1,711
1,515
3,226
215
2月
25
2,830
2,355
5,185
207
-9%
2月
24
3,332
2,370
5,702
238
3月
26
3,602
2,712
6,314
243
+26%
3月
21
3,049
1,953
5,002
238
284
38,422
31,611 70,033
247
合計
287 50,053
37,989
88,042
307
17
+26%
合計
23年度事業報告
事業名
目標
岡本太郎美術館入館 100 万人記念イベント
平成11年 10 月 30 日に開館した川崎市岡本太郎美術館は、開館以来の入館者数が、24
年3月下旬ころに 100 万人に達する見込みとなったため、入館 100 万人に向けて各種イベ
ントを開催し、これまでのご利用に感謝するとともにあらためて岡本太郎と当美術館の魅力
を伝え、100 万人達成を広く伝え、更なる入館者増を図るものとする。
内容
○記念品プレゼント
3月17日~3月31日(休館:毎週月曜及び 3 月 21 日)について、当日展覧会をご覧い
ただいた皆様には、毎日先着200名様に岡本太郎美術館入館100万人記念メモ帳をプレ
ゼントする。
○入館100万人目の方には、特別記念品を贈呈する。
○観覧料の割引
3月17日~3月31日の期間、開催中の企画展「第15回岡本太郎現代芸術賞(TARO
賞)
」展、常設展「生誕 100 年あっぱれ太郎-岡本太郎のパブリックアート」展の観覧料を
2 割引とする。
一般 600 円→480 円 65 歳以上・大学生 400 円→320 円 (ただし、他の割引との併用はで
きない。)
○もうすぐ100万人記念トークショーの開催
・3 月20日(祝・火)14:00~15:30 ガイダンスホール
「TARO鯉とオタマトーン」 明和電機代表取締役社長 土佐信道氏
・3 月25日(日)14:00~15:30 ガイダンスホール
TARO賞作家による記念トークショー「岡本太郎精神を引き継ぐということ」
中山ダイスケ氏(第 1 回)藤井健仁氏(第 8 回) 関口光太郎氏(第 15 回) 千葉和成氏(第 15 回)
○100万人達成日の週当てクイズ
入館100万人に達する週を予想し、的中した方の中から抽選により25名の方に岡本太郎
美術館ペア招待券及び記念品をプレゼントする。
内部評価(自己点検)
[実施状況・成果等]
年度内に達成できるか微妙な状況の中、職員全体でイベントの開催、広報発信に努め、新聞等への紹介、
多摩区役所と連携し多摩区の町会の協力を得て町内掲示板にチラシを掲示するなど広報に努め、3 月 27
日に達成することができた。記念品贈呈式の様子は主要新聞各紙に大きく取り上げられ、100 万人達成
を広く伝えることができた。
もうすぐ 100 万人記念トークショー
3 月 20 日参加人数 100 名
3 月 25 日参加人数 80 名
100 万人達成日の週当てクイズ
応募者数 259 名
[課題・反省等]
年度当初から計画的に準備が進められればよかった。
[外部評価]意見(評価できる点や課題など)[A:十分に達成 B:概ね達成 C:達成に至らず]
・生誕 100 年とあわせ、記念となる事業を展開し、アピールできたことを評価する。
・100万人達成の前に広報を積極的にされて良かったと思う。
・様々なイベントを積極的に展開されたと判断される。今後も継続的にアピールに努めるこ
とが期待される。
・よい話題提供になった。
・50万人まで(6 年 3 ケ月)よりもそのあとの50万人(6 年 1 ケ月)の方がペースが速くなっ
ている点評価される。
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