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亜鉛欠乏による成熟および幼齢の各ラットの白血球系細胞の応答の比較

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亜鉛欠乏による成熟および幼齢の各ラットの白血球系細胞の応答の比較
亜鉛欠乏による成熟および幼齢の各ラットの白血球系細胞の応答の比較
川島 悠1、白土 健2,3、山本直樹2,4、久保孝史2、牧野友祐2、佐々木裕子2、鈴木英樹5、立屋敷かおる5、今泉和彦2
1早稲田大・人総研、2早稲田大・人間科学、3杏林大・ 医、4愛知教育大、5上越教育大
Introduction
Results and Discussion
一 般 に 、 Zn 摂 取 不 足 は metallothionein 産 生 お よ び superoxide
①総白血球
②単球
③総リンパ球
④好中球
⑤好酸球
⑥好塩基球
dismutase(SOD)活性が低下し、活性酸素(ROS)を上昇させ、各組織
にダメージを与える(Al-Gindan Y. et al., 2009)。一方、Zinc-finger構造
の遺伝因子等の発現を低下させ、NF-κBの活性を上昇させてIL-1、IL6、IL-8などの炎症性サイトカイン濃度を上昇させる(Prasad AS, et al.,
(下図)、好中球数が増加してROSレベルを低下させると同時に、骨
髄プールから好塩基球や好酸球が循環中に動員される(Prasad AS,
et al., 2002)。事実、私達はZn欠乏させた幼齢ラットを4週間飼育す
ると、脱毛が顕著になること(写真)、骨や
筋の成長が著しく抑制されること、手足が
動かず爪が薄くなること、眼球が鮮紅色か
ら薄赤色に変わること、副腎の肥大と胸腺
の退縮傾向があること、さらに白色脂肪組織量が著しく低下すること
を報告した(Someya Y, et al., 2009)。このような現象は幼齢期ラットに
White blood cell counts (×10²/µl)
2007)。その結果、生体の各部位に炎症(inflammation)を惹起させ
認められるが、成熟期ラットでも同様の現象が認められるかについ
ては不明である。この点を明確にすることは、体力医学や健康・生命
医科学の立場からみて重要である。そこで本研究では、成熟期ラッ
トを10週間Zn欠乏させたときの白血球系細胞数を経週的にしらべた。
Experimental period (weeks)
まとめ
①総白血球数: Zn欠乏2-9週ではZDF群がCON群より1.2-1.5倍相対
的に高かったが個体間の変動幅が大きかった。幼
齢ラットのように著名に上昇しない。
総白血球数とほぼ同様にZDF群がCON群より1.21.7倍高かったが個体間の変動幅が大きかった。幼
齢ラットのように著しく上昇しない。
③総リンパ球数: 実験期間を通して2群間に差がみられなかった。こ
の結果は幼齢ラットと同じであった。
②単球数:
Materials and Methods
④好中球数:
Zn欠乏6週間でZDF群がCON群より2.0-4.0倍有意に
高かった。この傾向は幼齢ラットと類似しているが、
Zn欠乏の影響は幼齢ラットがはやく出現してその程
度も大きい。
⑤好酸球数:
Zn欠乏2-9週間でZDF群がCON群より1.3-1.8倍相対
的に高かった。この傾向は好中球の変動パターン
と似ているが、その程度は幼齢ラットが大きい。
⑥好塩基球数: Zn欠乏2-9週ではZDF群がCON群より高いが、特に
6-9週ではZDF群がCON群より2.8-11.5倍有意に高
かった。しかし、個体差が大きかった。
動 物
: 10 週齢 Sprague Dawley系雄性ラット
群分け
: 対照(CON)群 vs. Zn欠乏(ZDF)群
血漿分析
: Zn濃度(Spectrophotometry)
細胞数分析 : 白血球系細胞(総白血球・総リンパ球・単球・好中
球・好酸球・好塩基球):Flow-cytometry
(Hematology analyzer, Model SF-3000, Sysmex)
統計解析
: †p<0.1, *p<0.05 and **p<0.01 (vs. CON)
Conclusion
以上より、成熟ラットのZn欠乏は獲得免疫系のリンパ球数を
変動させずに顆粒系細胞(好中球・好酸球・好塩基球)の数を
増加させる。この増加作用は幼齢ラットよりその影響の程度が
相対的に小さく、またその増加作用が出現する時期は延長する。
この増加にはZn欠乏による炎症部位の遊走に関与すると推定
されるが、この実体を解明することが今後の課題である。
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