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Ⅲ 苗木づくり事例紹介

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Ⅲ 苗木づくり事例紹介
Ⅲ 苗木づくり事例紹介
苗木を育てている人たちや団体は道内に数多くあり、育てている本数や方法、
理由もさまざまです。
ここからのページでは、そのうちの3つの団体の活動をご紹介します。
種
拾
い
プランターへの種まき
−33−
芽を出したミズナラ
手稲さと川探検隊
∼種拾いを楽しみ、芽が出る驚きを感じ、育てることを楽しむ∼
札幌市の手稲の川と森林をフィールドに、子どもも大人も一緒になって、生き
物に触れ遊び感じ癒され育まれるよう、そして自然を保全していこうと自然体験
活動と調査活動を展開している団体です。
会員の半数が小学生などの子どもたちで、毎月1回から2回、手稲の川の生き
物調べや森の生き物調べなどいろいろな活動を行っています。
代表の鈴木玲さんに、手稲さと川探検隊が行っている苗木づくりのお話を伺い
ました。
Q 育てた苗木はどうしているのですか?
昨年は、札幌市の山口緑地に植樹したり、中渓宏
一さんという、木を植える活動をしている人に提供
しました。
手稲は昔は、湿地だったところで市街地にはあま
りみどりが残っていません。川も直線に改修されて
いるところが多いです。けれど、手稲山のふもとに
は、緩やかな丘があり楽しく遊べる森林が広がって
います。育てた苗木は、手稲の川辺や山に植えて手
稲山と石狩の海岸林をつなげて、動物も行き来でき
るようにしたいですね。
Q 何故、苗木づくりをしているのですか?
森林は、何百年も生き続けます。種を拾い植えることで
100年前を思い、100年後を考えることができます。
時の流れや時間を考えることができるからです。
理屈を言うとそういうことですが、芽が出るとビックリ
するし嬉しいからですね。枯れてしまうこともあるし、芽
が出ないこともあります。種を植えた次の年に芽が出ない
種を播いて、翌々年に忘れてしまっていることもあります
けれど、とにかく、芽が出ると嬉しいし、育てるのが楽し
いからですね。
Q どんな種類の苗木を育てているの
ですか?
Q
苗木は、どこでどんな風に育てているのですか?
育苗箱とポットです。畑は草取りが大変ですから。
育苗箱は、私が自宅で管理しています。ポットは、
自分で育ててみたい会員が、自宅に持ち帰っていま
す。会員には、芽が出るための最低限のことをアド
バイスしています。種の上にかける土の量とか水や
りを欠かさないようにとか家の中に入れないで外に
置くようにとか、凍らないように雪をかけておいた
方がよいとかですね。
月2回程度、会の活動を行っているので、子ども
たちが、こんな風になったと教えてくれます。枯れ
てしまっているのでは?というときもありますが、
水はやってみようと継続してます。
いろいろな苗木を育てています。森に種拾い
に行くときも、今日は、この種を何個とる!と
決めてやっているわけではありません。目当て
の種子があるか事前に下見に行ったりはします
が、子どもたちは、興味のあるものを拾ってき
ます。この種は何?と聞かれます。わかるもの
は答えますが、わからないときは、「それでは
植えてみよう」といって植えることもあります。
一つのポットに何種類も播く子もいます。
お話をうかがって・・・・
良い意味でがんばらない、楽しんで取り組ん
でいらっしゃるんだな∼というのがとても印象
的でした。
失敗してもそれはまた、次のうれしさや楽し
みにつながっていくんだと感じました。
−34−
弟子屈町立川湯小学校
阿寒国立公園の川湯地区にある弟子屈町立川湯小学校では、
みどりの少年団「川湯少年少女グリーンクラブ」の5∼6年
生が、苗木づくりに取り組んでいます。
・苗木づくりを始めた年ときっかけ
∼ 平成17年から。全国植樹祭の協働の苗木づくり。
・いままでに育てた樹種∼ノリウツギ、ミズナラ、ナナカマド
・育てている場所
∼学校菜園のとなりの10㎡位の苗床。
・育てている本数
∼平成20年は、ミズナラやナナカマドの苗を
100本くらい育て、ミズナラのタネも
200粒くらい播いている。
・苗木を植樹した場所∼ 阿寒国立公園内の「川湯園地」
・指導者
∼ 川湯エコミュージアムセンター
環境省釧路自然環境事務所 川湯自然保護管
事務所
釧路支庁林務課
<子どもたちの声>
楽しかったこと
・ドングリ拾いが楽しかった。ドングリを見つけても、穴が
空いたりしたけど、探すのは楽しかった。
・一つ一つのドングリに特徴があって見ておもしろかった。
・ドングリを拾って、埋めるのが楽しかった。
・土を掘るのが楽しかった。
・みんなでにぎやかにやって、苗木を植えるのが楽しかった。
など
苦労したこと
・ノリウツギをエコミュージアムセンターの近くに持って行く
のは、すごくきつかった。
・土をスコップなどでほるのが苦労した。
・どんぐり拾い
など
−35−
学校の苗床
苗木をほりとって植栽場所に
<先生の声>
・今年は、苗床にどんぐりを植えました。どんぐりがどんな木な
のかどんなところに落ちているのかなどを楽しく教えてもらいな
がら、子どもたちも一生懸命種を集めてくれました。割れていな
いドングリの大きさを競いながら楽しく活動したのですが、目標
の個数を集めるのはなかなか難しかったです。
グリーンクラブの活動は、森林の保護や環境問題について考え、
体験していく良い機会となっています。関係団体の方々も活動に
ついてその都度きちんと指導してくれるので、担当者としてもと
ても助かっています。
川湯小学校教諭 大庭 寛明
・ドングリを植えた時に、子ども達が集めたドングリを植える前
に水につけておくことや、どのような向きで植えればよいかを教
えていただき、無事植えることができました。また、来年度に植
樹をするミズナラの床替えの際にも、苗をいつ、どのように動か
せばよいかなどのアドバイスをいただき、植樹に関して全く無知
な自分にとって、良い経験になったと共に、助かりました。
グリーンクラブで植樹の活動をすることは、子どもが自然環境
に目を向けるとても良い機会でした。こうした活動を積み重ねた
結果、森や動植物を守るために、ゴミを拾う、減らす、節水をす
ると言った、環境保護を目的とする活動へと発展していきました。
関係団体の方々にはとてもお世話になり、感謝の気持ちでいっ
ぱいです。
川湯小学校教諭 本澤 敦
どんぐり・ネット北海道
別海町で種からの苗木づくりに取り組んでいる団体。
団体に参加し、活動中の谷川さんご夫妻にお 聞きしました。
Q 活動の実績は?
苗木が育った平成19年に40本、平成20年に28本を別海町の植樹祭で
植えました。
Q 活動を始めたのは?
どんぐり・ネット北海道の活動は、平
成15年(2003)の11月からです。
Q 楽しいことは?
Q きっかけは?
地域の仲間が集まったときに「みんな
で何か良いことをしたい ね!」という話
になり、地球全体が森林が減少している
という環 境問題に対して、自分たちも何
かできないかと考え「地域にあるミズナ
ラの木の種を取って、庭先などで苗木を
育て、毎年町で行っている植樹祭の苗木
として使いたい!」と考えました。
気楽に取り組めるので、日々苗木の成長などを見て、本当に楽しんでい
ます。
この活動によって毎年仲間が集まる機会があることもうれしいですね。
Q 失敗談は?
種を取りに行ったら、例年より早く寒くなった年で、全く取れなかっ
たことも…。あと、冬に家 の周りを除雪したら間違って苗畑までやって
しまい、せっかく芽が出た苗をダメにしちゃいました(笑)
Q 始めてみて良かったことは?
木を育てることで自然にも接し、自分たちの心を和ませてくれます。
またこの活動は世代に関係なく、おじいちゃん、おばあちゃんや未来を
担う子供たちも参加できるので、3世代が一緒になって活動しています。
子供たちの森林教育にもなっていますよ。
谷川裕喜子さんと谷川博孝さん
(夫婦仲良く経営しているお店の前で)
Q 最初は?
別海町にある森づくりセンターに相談したところ、職員の方が講師を引き
受けてくださり、採取した種の良し悪しの判別方法や播き方などを教えても
らいました。
Q 活動の内容は?
年1回、仲間や地域に声をかけ、尾岱沼にあるミズナラからドングリを取
り、自宅の庭先などにその種を播いて苗木を育てています。参加できない人
は自宅近くにあるミズナラの木から種を取って行なっています。
また、毎年春に行う町の植樹祭にも参加し、自分たちが育てた苗木を植栽
しています。
ただし、これらの活動は決して強制ではなく、それぞれの事情にあわせた
活動としており、基本的に各自自由な取り組みとしています。
Q 何かわかったことは?
大切に育ててみても、多くの種から少しの苗木しか育たないことがわか
り、以前はあることが当たり前と思えたまわりの木々でしたが、木が厳し
い自然環境の中で育つことの難しさ、また、強く育ってくれた木々の大切
さが本当にわかりました。
Q お二人の今後の活動は?
育てる数などにはあまり捉われず、少しの量でもいいから、楽しみなが
ら気長に今の活動を継続していきたいと考えています。
Q これから始めたい方へのアドバイスは?
種も苗木も私達人間と同じ生き物です。一生懸命育てても、自然の厳し
さなどにも左右され、うまく育たないこともあります。木が育って行くに
は、人間の子供と同じように長い時間と何よりも愛情が必要です。
うまくいく、うまくいかないに左右されずに、まずは自分自身が楽しむ
ことを目標にやってみましょう。
Q 種や苗木の数は?
種や苗木などの数は決めずに、それぞれが自分のペースで自由にやって
います。
−36−
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