...

SURF 特徴量を用いた表情認識

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

SURF 特徴量を用いた表情認識
平成 24 年度
学士学位論文
SURF 特徴量を用いた表情認識
Recognition of Facial Expression Based on SURF
1130402
吉本 貴幸
指導教員
岡田 守
2013 年 3 月 1 日
高知工科大学 情報学群
要 旨
SURF 特徴量を用いた表情認識
吉本 貴幸
人間同士がコミュニケーションを取る上で, 表情は感情を伝えるメディアとして重要な役
割を持ち, 対人的コミュニケーションの中心的役割を担っている. 表情によるメッセージ伝
達は, 対話全体の約 55%を占めるといわれており, 表情は円滑な対話を行うために欠かせな
い要素である. もしコンピュータが人間のように顔の表情から相手の感情を推察できるよう
になれば, 言葉によらない人間の意図をくみ取って対応してくれるような高度なヒューマン
インタフェースの実現が期待できる.
そこで本研究では, SURF(Speeded Up Robust Features) を用いて, 4 表情 (無表情, 笑
顔, 驚き, 怒り) の表情認識実験を行い, SURF 特徴量が表情認識に有効か検討した. 表情認
識実験を行った結果, 認識率はそれぞれ, 無表情 84%, 笑顔 96%, 驚き 28%, 怒り 32% の認
識率を示した. 無表情, 笑顔に関しては, 高い認識結果になったため, 本手法が有効であると
考えられる.
キーワード
SURF, 表情認識
–i–
Abstract
Recognition of Facial Expression Based on SURF
Takayuki Yoshimoto
An expression plays a very big part in the human communication. It is said that the
expression occupies about 55% of the whole dialog. And the expression is an element
indispensable in order to perform a smooth dialog. If a computer becomes able to
guess feelings from an expression, realization of high human interface understanding a
human thought. Therefore, using SURF, I performed the recognition of facial expression
experiment of 4 expressions (deadpan, smile, surprise, anger) and SURF characteristic
quantity was effective for recognition of facial expression or, in this study, examined
it. The result of deadpans 84%, smile 96%, surprise 28% and anger 32% have been
obtained. Because it became a high recognition result about a deadpan, the smile, it is
found that this technique is effective recognition to facial expression.
key words
SURF, Recognition of Facial Expression
– ii –
目次
第1章
序論
1
1.1
研究背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.2
研究課題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
1.3
研究目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
1.4
本論文の構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
研究内容
4
2.1
SURF
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
2.2
実験の処理手順 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
表情画像取得
6
3.1
撮影機材 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3.2
撮影環境 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
3.3
環境設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
3.4
撮影する表情 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
3.5
平均表情 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
平均表情算出方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
第2章
第3章
3.5.1
第4章
実験
12
4.1
実験環境 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
4.2
実験内容 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
4.3
ユークリッド距離
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
4.4
閾値 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
4.5
認識率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
4.6
実験結果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
– iii –
目次
各閾値の認識率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
15
第5章
考察
16
第6章
結論
17
4.7
謝辞
18
参考文献
20
– iv –
図目次
3.1
カメラ本体写真 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.2
撮影環境 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
3.3
無表情の平均顔 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
3.4
笑顔の平均顔
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
3.5
驚きの平均顔
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
3.6
怒りの平均顔
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
4.1
各閾値の認識率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
15
–v–
表目次
3.1
撮影機材一覧
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3.2
デジタルビデオカメラ仕様 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.3
気泡管型水準器仕様 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
4.1
認識結果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
– vi –
第1章
序論
1.1
研究背景
私たちは日常生活において, 多くの他者と顔を通してコミュニケーションをはかり, 相手の
内的感情を類推, 認知している. 身振り, 接触, 姿勢, 歩行などの人間の非言語行動 (ノンバー
バル行動) の中でも, 顔に表われる表情は特に情報量が多いとされており, 対人コミュニケー
ションの中心的役割を担っているといえる [1]. また, 直接対面してコミュニケーションを行
う事を face-to-face communication と呼ぶように, 顔のもつ情報が視覚を通じて円滑な意思
疎通に大きく寄与していることは明らかである.
人が他人から受け取る情報の割合を示したものに, マレービアンの法則 [2] と呼ばれるも
のがある. アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士によって行われた実験で, 人の
コミュニケーションから感情や態度の重要度を検証したものである. その結果, 言葉が 7%,
声が 38%であるのに対し, 顔の表情は全体の 55%を占めており, コミュニケーションにおい
て大きな役割を担っていることが報告されている.
近年, 情報ネットワークや情報システムの処理技術の飛躍的向上により, ヒューマンインタ
フェースを活かしたシステムやアプリケーションが実現されるようになってきた. 使いやす
いヒューマンインタフェースを開発するためには, コンピュータを人間らしくすることが重
要となる. 人間らしさを与えるためには, 私たち人間がコミュニケーションをとる上で無意識
的に行っている感情表現やノンバーバル行動をコンピュータに理解させる必要がある.
もしコンピュータが人間のように顔の表情から相手の感情を推察できるようになれば,
人間が顔の表情を媒介として意図的あるいは無意識的に発信している様々な情報を, コン
–1–
1.2 研究課題
ピュータも人間と同様に視覚というチャネルを通じて自然に獲得することが出来るようにな
る [3].
1.2
研究課題
人間同士や人とコンピュータの相互関係において表情は円滑なコミュニケーションを取っ
ていく上で重要である. 顔画像処理によってコンピュータが人間の感情を認識できれば, 人
間が表情を介して言葉によらずに発信している種々のメッセージをコンピュータも読み取れ
るようになり, ユーザにとって自然で負担の少ないインタフェースが実現されるという期待
がある [4]. 顔表情を介して自然にやり取りしている感情情報をコンピュータで読み取れるよ
うにすることで, 機械が言葉によらない人間の意図をくみ取って対応してくれるような高度
なヒューマンインタフェースの実現が表情認識の最終目標となる [5].
1.3
研究目的
本研究では, 4 表情 (無表情, 笑顔, 驚き, 怒り) を対象とする. 人間の表情は, 表情毎に特徴
が異なり, 特に目や眉, 口などの箇所の変化が激しい. SURF アルゴリズムを用いて特徴点の
特徴ベクトルを抽出し, 平均表情と未知の顔画像の特徴ベクトル間でマッチングを行う. 平
均表情は, 通常用いられている年齢や性別ごとの平均表情と違い, 被験者の 4 表情を平均顔
ツールを用いて作成する. 本研究で用いる SURF とは, 画像中から特定の物体を検出する技
術で, 監視システムや ITS など多岐に渡る分野で実現が期待されている SIFT を高速化した
アルゴリズムである. この SURF 特徴が表情認識に有効か検討することが本研究での目的で
ある.
–2–
1.4 本論文の構成
1.4
本論文の構成
本論文の構成は, 本章を含め全 6 章である. 第 2 章では, SURF や実験の処理手順について
述べる. 第 3 章では, 本研究で対象とした顔画像の撮影環境について述べる. 第 4 章では, 実
験し得られた結果について述べる. 第 5 章では, 結果に対しての考察を述べる. 最後に, 第 6
章では, 本研究のまとめを行い, 今後の課題について言及する.
–3–
第2章
研究内容
2.1
SURF
SURF は, 照明変化や回転, 拡大縮小に不変で頑強な特徴量を抽出できるアルゴリズムで
ある [8]. 特定物体認識の分野では,SIFT が注目されているが, 処理コストが高いため実用
化の際, リアルタイム処理が困難である. そこで, この問題を解決するために,Speeded Up
Robust Features(SURF) が提案された. SURF は,SIFT のアプローチの第一段階である
キーポイントの検出を, 高速化した手法である.
–4–
2.2 実験の処理手順
2.2
実験の処理手順
以下に実験の処理手順を示す.
1. 顔画像抽出
撮影した画像から顔画像を抽出する. 無表情, 笑顔, 驚き, 怒りの 4 表情を撮影し, それ
ぞれ顔抽出を行う.
2. 平均顔作成
FaceTool を用いて, 4 表情の平均表情を作成する.
3. SURF 特徴量抽出
SURF アルゴリズムを用いて, 画像中から特徴点と特徴ベクトルを抽出する.
4. 特徴ベクトル同士のユークリッド距離の算出
平均表情の特徴ベクトルと入力画像の特徴ベクトルとのユークリッド距離を閾値を設
けて算出する. 入力画像の特徴ベクトルと最も距離が小さい特徴ベクトルを多く持つ平
均表情を認識結果とする.
5. 閾値の設定
ユークリッド距離の閾値を, 0 から 1 までの範囲, 0.1 刻みで閾値を変化させ認識率を
比較する.
–5–
第3章
表情画像取得
3.1
撮影機材
顔画像データ撮影にあたり, 撮影に必要なカメラシステムの構築を行った. 今回の実験で
は, デジタルビデオカメラを三脚に固定して撮影した. 実験に用いた撮影機材は表 4.1 の三点
である. 撮影に使用した各機材の仕様を表に示す.
表 3.1
撮影機材一覧
機材
説明
デジタルビデオカメラ
SONY HDR-TD10
三脚
カメラの固定に使用
気泡管型水準器
三脚雲台の水平調整に使用
なお, 今回使用した機材は, いずれも特に高性能な部類のものでなく, 量販店でも比較的安
価に入手可能な民生用のものを使用している.
–6–
3.1 撮影機材
表 3.2 デジタルビデオカメラ仕様
型名
SONY HDR-TD10
撮像素子
1/4 型 CMOS センサー (総画素数 約 420 万画素)
動画時 265 万画素
撮像エリア
静止画時 354 万画素
F1.8∼F3.4
レンズ
f=2.9-34.8mm(35mm 換算 27.4∼328.8mm)
記録方式
映像:MPEG-4 AVC/H.264
音声:Dolby Digital 2ch/5.1ch
信号方式
NTSC カラー,EIA 標準方式
記録媒体
内臓メモリー,メモリースティック,SD カード
表 3.3
気泡管型水準器仕様
感度
1mm/m=0.0527 °
精度
± 5.25mm/m=± 0.2999 °以内
図 3.1 カメラ本体写真
–7–
3.2 撮影環境
3.2
撮影環境
撮影には, 研究室の一角を使用した. 光源は, 研究室内の自然光 (蛍光灯) と, スタジオ右側
にある窓からブラインドを下ろした状態での太陽光がある. しかし, 撮影時間は一定ではない
ため, 太陽光の強さは一定である保障はない. パーティションに暗幕をかぶせたものを背景と
して, カメラの正面に椅子を配置し, 被験者を座らせた状態で顔画像データの撮影を行った.
撮影環境の状態は図 3.2 のようになる.
カメラの光軸は, カメラが人物の中心を捕えるように配置する. カメラの高さは, 被験者の
体格に合わせて三脚のエレベータ機能を利用して調整するため, 特に指定しない.
カメラ
背景
被験者
図 3.2
撮影環境
–8–
3.3 環境設定
3.3
環境設定
カメラを三脚に取り付ける際に, 水準器を用いてカメラが水平になるように雲台を調整す
る. 調整を行った後, 雲台に固定する.
カメラの液晶モニターに背景を映し出し, 目標物をモニターの中央に捕えるようにカメラ
の調整をする, 目標物との高さが合わない場合は, 三脚のエレベータ機能を使用して高さを合
わせるようにする.
3.4
撮影する表情
本研究で用いる表情は, 無表情, 笑顔, 驚き, 怒りの 4 つとした.
3.5
3.5.1
平均表情
平均表情算出方法
男性 5 名を被験者として表情画像の撮影を行った. 平均表情の作成には, 顔情報処理ツー
ル FaceTool[6], FaceTool の拡張ツール [7] を用いる. FaceTool は, 顔画像から 3 次元モデ
ルを生成し, 加工・演算を行うための基本ツール群である. IPA(情報処理振興事業協会) の
プロジェクトとして作られた複数の MS Windows 用アプリケーションから成っており, フ
リーソフトとして公開されている.
作成した平均表情を図 3.3, 図 3.4, 図 3.5, 図 3.6 に示す.
–9–
3.5 平均表情
図 3.3 無表情の平均顔
図 3.4
笑顔の平均顔
– 10 –
3.5 平均表情
図 3.5
驚きの平均顔
図 3.6
怒りの平均顔
– 11 –
第4章
実験
4.1
実験環境
被験者 5 人の表情データを取る. 表情データの内容は, 無表情画像 5 枚, 笑顔画像 5 枚, 驚
き画像 5 枚, 怒り画像 5 枚, 計 20 枚の画像を 1 人につき取得する. 表情パターンは大まかに
統一し, 表情の強弱の度合いは個人により変化するものとする. 顔の角度は, 可能な限り胴体
と垂直な状態に保ち, 正面を向いている表情を取得する.
4.2
実験内容
実験環境から 5 人分, 計 100 枚の画像を取得する. 取得した画像に顔抽出を行い, 注目すべ
き表情以外の部分を排除する. FaceTool を用いて作成した平均表情 4 枚に SURF を行い,
表情の特徴部分を抽出し, 128 次元の特徴ベクトルを算出する. 算出した平均表情 4 枚の特
徴ベクトルをそれぞれ DB に登録する.
実験環境から取得した 100 枚の画像を入力画像として実験を行う. 入力画像に SURF を
行い特徴ベクトルを抽出し, DB に登録された平均表情の特徴ベクトルとのユークリッド距
離を計算する. この際, 閾値の設定をし, 閾値内の数値の場合, 特徴同士が似ているとみなす.
この計算をすべての特徴ベクトル間に対して行い, 入力画像の特徴ベクトルと最も距離が小
さい特徴ベクトルを多く持つ DB に登録された平均表情を認識結果とする.
– 12 –
4.3 ユークリッド距離
4.3
ユークリッド距離
v
u 127
u∑
F =t
(xi − yi )2 < T
(4.1)
i=0
X = (x0 , x1 , ..., x127 ) : DB 登録表情の特徴ベクトル
Y = (y0 , y1 , ..., y127 ) : 入力画像の特徴ベクトル
T : 閾値
平均表情の特徴ベクトルと入力画像の特徴ベクトルとのユークリッド距離を基に, 実験を
行う. DB に登録されている平均表情と入力画像が同一の表情の場合, それぞれの特徴ベク
トルは限りなく近くなる. そこで, DB に登録されている平均表情と入力画像の特徴ベクトル
同士のユークリッド距離を調べることで, DB に登録されている平均表情と入力画像の表情
が同一であるかどうかの, 表情認識を行うことができる.
ユークリッド距離を各特徴ベクトルごとに算出し, その総和の絶対値を取った値が最小と
なる DB に登録されている平均表情が, 入力画像の表情と同一であると出力する.
4.4
閾値
特徴ベクトルのユークリッド距離を求める際に用い, 適切な閾値を設定することで, 認識率
を向上させる. 0 から 1 までの範囲, 0.1 刻みで閾値を変化させ認識率を比較する. 閾値を高
く設定した時, それぞれが異なる特徴量の場合であっても, 似ている特徴量を持つと判断され
る. また閾値の設定を低くした時, 似ている特徴量の場合でも異なる特徴量と判断される.
– 13 –
4.5 認識率
4.5
認識率
入力画像に対応した平均顔が出力された回数
× 100
入力画像 25 枚
(4.2)
認識率は, 入力画像 25 枚 (1 表情につき 25 枚) が, DB に登録された平均表情に合致した
比率を示している.
4.6
実験結果
閾値を 0.4 に設定した際, 実験より以下の結果が得られた.
表 4.1
認識結果
無表情 笑顔 驚き 怒り
84% 96% 28% 32% – 14 –
4.7 各閾値の認識率
4.7
各閾値の認識率
各閾値の認識率を以下に示す.
図 4.1 各閾値の認識率
– 15 –
第5章
考察
各閾値の認識率より, 無表情と笑顔の認識率は右肩上がり, 驚きと怒りの認識率は閾値 0.3
を頂点として右肩下がりの認識率となった. 閾値 0.3 の時, 驚きと怒りは最高の認識率を示
している. 一方閾値 0.3 の時, 無表情と笑顔の認識率は上昇途中で, 閾値 0.4 にかけての伸び
が大きい. その後, 笑顔の認識率は閾値 0.7 の時に 100%へ達するが, その他の表情の認識率
は低く, 怒りの認識率は 0%へと低下している. そこで, 閾値 0.4 の時, それぞれの表情の認識
率は最高点ではないが, 認識率が最高点付近となる適切な閾値だと考える. 閾値 0.4 の認識
率はそれぞれ, 無表情 84%, 笑顔 96%, 驚き 28%, 怒り 32%を示した.
今回の表情認識実験において, 無表情, 笑顔は認識率が高く, 驚き, 怒りは低い認識結果と
なった. 驚き, 怒りは, 笑顔の表情と誤認識されることが多くあったことから認識率が低く
なったものと考えられる. SURF アルゴリズムを用いて, 顔画像から特徴点を抽出した際, 目
元と口元から多くの特徴点抽出が行われた. 驚きと笑顔では, 口が開き, 歯が見えている点が
互いに似ており, 誤認識が起きたと考えられる. また, 怒りと笑顔では, 目元が細くなる点が
互いに似ているため, 誤認識が起きたと考えられる.
– 16 –
第6章
結論
本研究では, SURF を用いて, 4 表情 (無表情, 笑顔, 驚き, 怒り) の表情認識実験を行い,
SURF 特徴量が表情認識に有効かを検討した. DB に登録された平均表情の特徴ベクトル
と, 入力画像の特徴ベクトルとのユークリッド距離を計算することで, 表情の認識を行った.
ユークリッド距離を算出する際, DB の特徴ベクトルと入力画像の特徴ベクトルとの距離が
最小となるものを似た特徴としていたが, 誤認識の発生が考えられたため, ユークリッド距
離の閾値を設定し, 閾値ごとの認識率を考察した.
各閾値の認識結果より, 閾値 0.4 を設定することで, 無表情 84%, 笑顔 96%, 驚き 28%, 怒
り 32%の認識率を示した. 無表情, 笑顔の表情では, 高い認識率を示したが, 驚き, 怒りの表
情では, 笑顔と誤認識されることが多くあり, 認識率が低い結果となった. 驚きでは口元が,
怒りでは目元が笑顔と似ているため誤認識が起きたと考えられる.
この問題点の解決策として, 平均表情の作成方法を改めることが挙げられる. 人間の骨格は
皆同じではなく, 表現される表情の強弱も個人で異なるため, 平均表情の作成は困難である.
今回の FaceTool を用いた平均表情は, 目元や口元で多少のブレが見られ, 本来の表情が持つ
純粋な特徴が得られていない可能性がある. また, 本研究での被験者は 5 名であったため, 被
験者数を増やし実験を行う必要があると考える.
– 17 –
謝辞
本研究を行うにあたり, 主査である情報学群岡田守教授に, 終始, 親切かつ丁寧なご指導と
ご教授頂いた事に対して, まず深く御礼申し上げます. 研究室に配属されてより 2 年間にわ
たり, 岡田守教授には大変お世話になりました. 輪講に始まり, 就職活動や卒業研究に至るま
でご指導頂き, 本当にお世話になりました. 私はこの研究室に配属されてより, プレゼンテー
ション能力が向上したと感じます. 配属前の私は, 物事を相手に解りやすく伝えるにはどう
言いまわせば良いか, 言葉を選定することばかりを考えていました. しかし, 輪講を通じて言
葉だけでは相手に上手く伝えることは難しいことを分からせていただきました. ことわざに
ある”百聞は一見に如かず”の通り, 耳から得る情報よりも目から得る情報の方が多いように,
言葉だけを用いた説明は分かりにくく, 相手に伝わりにくい. 岡田教授は, 図やグラフ, 数値
を用いて説明することの大切さを教えてくださりました. また詩吟を通じて発声練習を稽古
して頂き, 声の大きさや発音, 間の取り方等を学ぶことができました. 学外での飲み会の席で
は, 数々の人生の教訓を教えていただきました. 岡田教授自身の苦労話から始まり, 結婚観や
大学時代のお話までしていただき, 大変参考になりました. 今後, 岡田教授より頂いた教訓を
思い出し, 辛いことにも屈せず, 成長していきたいと思います.
岡田研究室で過ごした 2 年間は短い期間でしたが, 輪講や詩吟, キャンプ, 飲み会, 就職活
動, 卒業研究が盛り込まれた濃い 2 年間でした. この 2 年間は, 私の一生の財産です. この貴
重な時間を与えてくださり, 本当にありがとうございました.
続いて, お忙しい中にもかかわらず副査としてご指導してくださった, 繁桝博昭准教授なら
びに吉田真一講師にも, この場を借りて御礼申し上げます. 梗概の添削の際には, 分かり易い
御指導をしてくださり, 本研究をさらに向上させることができました.
また, 岡田研究室でお世話になった皆様にも感謝いたします. 昨年卒業された, 山本圭太氏,
柿内優佑氏, 清水滋仁氏, 松下誠司氏, 三本三音氏には大変お世話になりました. 特に山本圭
太氏, 清水滋仁氏には, 就職活動のサポートからパソコンの組み方まで丁寧に教えて頂き, 大
– 18 –
謝辞
変お世話になりました.
そして, 同学年である枝重歩氏, 岡村憲樹氏, 香川晃輝氏, 清水直人氏, 田中里枝氏, 山崎勇
也氏には研究室配属から 2 年間お世話になりました. 枝重歩氏はムードメーカー的な存在で,
席を温める暇も無いくらい動き回り, 皆に話しかけ, 研究室の雰囲気を明るくしてくれまし
た. 岡村憲樹氏は口数は少ないものの, 輪講には遅刻欠席なく, 関心させられました. 香川晃
輝氏は行動力があり, 考えるより即行動をして, 常に皆の先陣を切ってくれました. 清水直人
氏は皆のことをよく気に掛け, 研究に関して鋭い意見をくれる頼もしい存在でした. 田中里枝
氏は男だらけの研究室を陰ながら支えてくれる研究室のお母さん的な存在でした. 山崎勇也
氏は研究室のマスコットキャラクターで, いつもユニークな発言をして皆を笑わせてくれま
した. また川上崇仁氏は他の研究室でありながらも, プログラムの製作に関して沢山の協力を
してくださいました. 氏の協力がなければ, 本研究は完成しなかったと感じます.
最後になりましたが, 私を今まで育ててくれた両親に心から感謝いたします. 私が今まで
不自由なく過ごしてこれたのは, 両親のサポートがあってのことだと思っています. 小さい頃
は, 両親の言うことを聞かず迷惑をかけてしまうことばかりでした. そんな私を見捨てず面
倒を見てくれた恩は決して忘れることはありません. 大学へ進学できるのも当たり前ではな
く, 学費や生活面で, 陰ながら支えてくれていた両親のおかげだと思います. 今まで育ててく
れた両親には, 返しきれないほどの恩がありますが, 早く社会人として一人前となり, この恩
を返していきたいと思っています.
そして最後に, ここに記載できなかった全ての方に, もう一度心から感謝し, 謝辞の言葉と
させて頂きたいと思います. 皆様,4 年間本当にありがとうございました.
– 19 –
参考文献
[1] 竹原卓真, 野村理朗, ”顔研究の最前線”,2004.
[2] ”ノンバーバルコミュニケーション”, http://noncommu.tants.biz/(参照 2013-2-2)
[3] 赤松茂, ”人間とコンピュータによる顔表情の認識” 電子情報通信学会誌 Vol.85 No.10,
pp.766∼771 (2002).
[4] 赤松茂, ”人間とコンピュータによる顔表情の認識” 電子情報通信学会誌 Vol.85 No.12,
pp.936∼941 (2002).
[5] 赤松茂, ”人間とコンピュータによる顔表情の認識” 電子情報通信学会誌 Vol.86 No.1,
pp.54∼61 (2003).
[6] 「感性擬人化エージェントのための顔情報処理システムの開発」, http://nae-lab.
org/project/face/IPA/
[7] 「PC 版 顔 情 報 処 理 ツ ー ル「FaceTool」の 拡 張 ツ ー ル 」, http://nae-lab.org/
project/face/HeikinTool/
[8] 西村考, ”画像局所特徴による対応点マッチングとその応用に関する研究”, 平成 21 年度
修士論文, 2009.
– 20 –
Fly UP