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1.モントリオール議定書多数国間基金の動向

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1.モントリオール議定書多数国間基金の動向
1.モントリオール議定書多数国間基金の動向
1-1.モントリオール議定書各会合での注目テーマ
1-1-1
オゾン層破壊物質の破壊
破壊については、以前から非 5 条国の消極的な発言が多く、事務局においても議定書の
遵守に直接寄与しない旨の記載をするなどの状況のなか、第 45 回 ExCom では日本から、
議定書の生産量や消費量の定義に照らして直接遵守に寄与するとの主張を行った。
第 25 回公開作業部会において、TEAP のプログレス・レポートで破壊技術の検討必要性
が主張されたのに関連して、5 条国から製品廃棄時の困難の更なる増大に直面しているこ
とから再利用や破壊効率についての検討、見積の必要性が主張され、第 17 回締約国会合で
検討されることとなった。
第 46 回 ExCom において日本は破壊に関するガイドライン策定の必要性を主張したが、
議論は平行線をたどったため、日本から第 47 回 ExCom に調査のための TOR を提出する
こととなった。
第 47 回 ExCom においては、不用 ODS について破壊を含めた調査に関連して、5 条国に
存する現在及び将来不要になる ODS の収集・廃棄について 2006 年 2 月に専門家会合によ
る必要性評価をまず行ってから、第 48 回 ExCom にて最終的な TOR 案を検討することに
なった。
第 17 回締約国会合においては、2006 年-2008 年の資金補填規模に関して ODS の破壊プ
ロジェクト経費として 5 条国から TEAP 試算の$108M では足りないとしたのに対し、非 5
条国は不要とのまったく逆のスタンスであり、結果として破壊デモンストレーションプロ
ジェクトには$4M をあてることで決議された。
今後も非 5 条国側からの強い抵抗が予想されるが、今後平行線の均衡を破る方策が講じ
られなければ、予算があっても個々の案件が承認されないという事態が起こる可能性があ
る。
1-1-2
HCFC の削減
HCFC の削減についても非 5 条国は消極的であり、資金補填の可否について第 46 回
ExCom にて議論を決することとなった。UNIDO のアフリカ 8 カ国における HCFC 調査プ
ロジェクトに対しては、5 条国各国から必要性が強調されたのに対し、UNDP の 12 カ国調
査や中国での調査の結果を待つべきとのけん制があった。ただし UNIDO の本プロジェク
トは手続き上の理由から 2006 年にビジネスプランに掲載のうえ再度提案することとなっ
た。
HCFC の需要が急増しているとの見込みから今後当初の予定通り 2015 年規制開始で
2040 年全廃というスケジュールをこのまま維持することは、ODS 削減を CFC から HCFC
へ移すことによって先送りしただけであり、5 条国においても資金を要求するだけでなく
今度は HCFC の削減前倒しなどについての覚悟を表明する時期に来ていると考えられる。
3
1-1-3
違法貿易の防止
第 16 回締約国会合の決議を受けて、違法貿易に関するワークショップが行われ 27 件の
取組みが紹介された。取組みについてはおおむね賛成の方向であったが、米国から主体は
5 条国であり、その国内法の厳格な適用が第一優先事項であり、非 5 条国の監視システム
に頼りすぎるのは好ましくないとの発言があった。日本からはトラッキングシステムで輸
出国側に義務を課すことは議定書改訂が必要と主張した。
第 47 回 ExCom においても ODS 追跡のフィージビリティスタディの提案があったが、
輸出国に負担を与えることへの懸念を日米などが表明し、決議のトーンが「要求する」か
ら「奨励する」へやわらげられ、第 18 回締約国会合までに ODS 輸出入に関する情報交換
の効用などの調査がおこなわれることとなった。
1-1-4
チラー転換
第 16 回締約国会合において大枠の認められたチラーデモンストレーションプロジェク
トについては、2005 年分として$15.2M の資金が確保され、各実施機関から第 47 回 ExCom
に提案され多くの条件が付された上で承認された。日本が投資案件として直接関与する
UNIDO のアフリカでのプロジェクトも第 48 回 ExCom に提案されることとなった。チラ
ー技術は日本メーカの得意とするところで、これを機会に世界に広く貢献することが望ま
れる。世界市場でみれば米国系メーカが大きな勢力を持っているとのことであるが、省エ
ネ性能を武器にアジアをはじめとした市場への対応が期待される。米国系チラーメーカに
おいては、輸出入銀行等と組んで積極的な金融支援をしながら顧客を獲得しているとの情
報を得ている。特に世銀の Global Chiller Project においては、チラーオーナーからの代金回
収リスクはメーカが負うことになるので、この点の対応策は積極的に検討されるべきであ
ろう。
また UNEP は非投資案件としてデモンストレーションプロジェクトにより得られた結果
を広く知らしめるプロジェクトを提案することになったが、日本の技術を広く知ってもら
うために UNEP に協力して UNEP の広報宣伝プロジェクトに載せて情報提供をしていくこ
とも必要である。
4
1-2.モントリオール議定書各会合の概要
2005 年においては下記の主要会合が開催された。なお、年の最後の執行委員会と締約
国会議は原則として相前後して開催されることになっているが、本年はモントリオール
で気候変動枠組条約第 11 回締約国会議(COP11)と京都議定書第 1 回締約国会合
(COP/MOP1)の開催(11 月 28 日~12 月 9 日)が前もって決まっていたこともあり、
その日程を避けて下記のような日程となった。
会期
場所
第 45 回基金執行委員会
2005 年 4 月 4 日~4 月 8 日
モントリオール(カナダ)
第 25 回公開作業部会
2005 年 6 月 27 日~6 月 30 日
モントリオール(カナダ)
第 2 回特別締約国会合
2005 年 7 月 1 日
モントリオール(カナダ)
第 46 回基金執行委員会
2005 年 7 月 4 日~7 月 8 日
モントリオール(カナダ)
第 47 回基金執行委員会
2005 年 11 月 21 日~11 月 25 日
モントリオール(カナダ)
第 17 回締約国会合
2005 年 12 月 12 日~12 月 16 日
ダカール(セネガル)
執行委員会
実施年月
第 45 回
05 年 4 月
Three-year phase-out plan
/
Business plans
Consolidated
/5 (05~07)
(05~07 年の
Bilateral agencies
/6 (05~07)
3 年分を
UNDP
/7 (05~07)
ローリングで)
UNEP
/8 (05~07)
UNIDO
/9 (05~07)
World Bank
/10 (05~07)
Business plan
2005
Request for
Bilateral
/16
第 46 回
第 47 回
05 年 7 月
05 年 11 月
/5
/5
/21
/13
co-operation
Work Programme
UNEP (+ amendments)
/17 + a1 (2005)
UNDP
/18 (2005)
UNIDO
/19 (2005)
World Bank
/20 (2005)
Amendment to
UNEP
/22
/14
2005 Work
UNDP
/23
/15
Programme
UNIDO
/24
/16
World Bank
/25
/17
Consolidated
/10
Bilateral cooperation
/11
UNDP
/12
UNEP
/13
UNIDO
/14
World Bank
/15
Evaluation of the implementation of the 2004 business
/16
Project implementation delays
/18
/9
Report on implementation of approved projects with
/19
/10
Progress report
specific reporting requirements
5
1-2-1
第 45 回基金執行委員会
日程
2005 年 4 月 4 日~4 月 8 日
場所
モントリオール(カナダ)
会場
International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場
主要議題は以下のとおり。
1)基金と計画の状況
決定 XVI/13 に基づくチラーのデモンストレーションプロジェクトについては、2005 年
においては$15.2M の資金枠をチラープロジェクトに確保するとともに、地域的な資金の運
用方法についての基準と様式の案を事務局が次の第 46 回執行委員会までに用意すること
となった。なお次回第 46 回執行委員会で合意される基準に従い、全体資金枠内において、
デモンストレーションプロジェクト及び準備プロジェクトを第 47 回執行委員会に提案す
ることが勧奨された。
日本と UNDP のビジネスプランに掲載されている破壊プロジェクトについては、議定書
の遵守に直接寄与しないとする事務局文書の記載に対し、日本から、議定書の生産量や消
費量の定義に照らして直接遵守に寄与するとの見解を改めて主張した。決定 44/63 に基づ
き、次回第 46 回執行委員会において破壊等のプロジェクトのガイドラインに関する議論が
行われる予定であることから、ビジネスプランへの掲載の可否の検討についても次回に持
ち越されることとなった。
インドネシアにおける破壊プロジェクトについては、次回執行委員会の議論を待つべき
ことを再確認し、ビジネスプランへの掲載が留保された。
2)プロジェクト提案
二国間支援に関しては、日本提案のインドのプロジェクト、モンゴルの TPMP について
2005 年分予算が認められた。また中国の冷媒サービスセクターにおいて、実施機関として
日本、UNIDO が承認済みであるところ、中国からの強い要請によりトレーニング関係の事
業を中心に担当することとして UNEP を追加して従来の UNIDO 担当分資金から 450,000
ドルを UNEP 担当に付け替える旨提案していたところ、特に問題なく承認された。
3)執行委員会の運営について
経費節減の観点から日本は年 2 回にして会期間での承認手続きを検討すべきと提案した。
ブラジルが賛同したが、英、ベルギー、シリア、キューバ等は、経費節減と引き替えにプ
ロジェクト承認の機会が失われることに懸念を示し、2007 年以降検討すべきことであるこ
と等の反対意見が述べられた。結果として、現状の年 3 回の開催を維持し、会期間承認手
続きについては、次回第 46 回執行委員会にて再検討されることとなった。
4)二国間協力プロジェクトにおけるサポートコスト
日本は決議案を配布し、①二国間機関へのコア・ファンドの目的は、二国間機関のプロ
ジェクト発掘やそれに要する行政経費を支弁するためのものであること、②二国間機関の
6
プロジェクトに付随するサポートコストは、先行研究の対象が執行機関のみであることか
ら、プロジェクトの規模に応じ、サポートコストの上限を規定する決議 26/41 に該当しな
い、③コア・ファンドはサポートコストの一部であり、その支出に関する報告が執行委員
会の承認を必要とすることは適切ではない、④事前に受け取ったコア・ファンドが当該年
のプロジェクト承認によって支弁され得なかった場合、資金補填の期間と一致した 3 年の
うちにサポートコストから控除等することによって精算しうるといった方法について説明
した。これに対し、米国、ベルギー、カナダから基本的には同意が示されたが、米国が決
定権限がないことの事情により次回第 46 回に検討を先送りすることとなった。
5)チラーセクターにおける ODS の撤廃
事務局より、本来チラーセクターは、TEAP の報告にもある通り、省エネに資するだけ
で、基金使用の適格性がないとのコメントがだされた。しかし、キューバより CFC チラー
はまだ使用する見込みであるがレトロフィットは難しいこと、2010 年の CFC 全廃まで時
間が無いこと、などチラーセクターに基金を使用すべしとの意見が示され、これに米国、
カナダ、タイ等は賛同した。また、オーストリアは基準無しに基金を使用するのは問題と
の意見を表明した。この結果、事務局が本件について基金を拠出する際の基準及び様式な
どについて調査し、その結果を次回第 46 回の執行委員会において提示することとなった。
6)5 条国におけるプロセスエージェント用途の使用とその放出レベル
事務局から、25 回公開作業部会への提出案が示された。また中国から締約国会合の承認
リスト以外の用途が 24 種、3000 トン程度見つかっている旨の報告もあり、議論も含めて
公開作業部会へ提出されることになった。
7)生産サブグループ報告
①中国の臭化メチル生産全廃計画、②ルーマニアの CFC/CTC/臭化メチル生産全廃計画、
③中国の CTC 全廃計画(第二段階)の 3 件は 2005 年中に審査すべきであることが確認さ
れた。
1-2-2
第 25 回公開作業部会
日程
2005 年 6 月 27 日~6 月 30 日
場所
モントリオール(カナダ)
会場
International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場
主要議題は以下のとおり。
1)TEAP2005 年プログレスレポートの提起する問題について
(a)非 5 条国に対する不可欠用途申請
第 16 回締約国会合において、CFC-MDI(定量噴霧式吸入製剤)の不可欠用途申請を行
う国は、第 25 回公開作業部会までに全廃行動計画を提出しなければ、第 17 回締約国会合
7
以降は不可欠用途を認められないとされた。今回 EC と米国から提出があり、EC は、2006
年以降、非 5 条国(先進国)における販売・流通を目的としたサルブタモールの CFC-MDI
の製造や輸入を禁止する、米国は、2008 年末から米国内でのサルブタモールの CFC-MDI
の販売は行わない、とされている。
2006 年分として TEAP は EC、米国に対して在庫保有を指摘し、申請量を減らす旨の韓
国を行った。ロシアには、TEAP みずからの情報収集により、患者への供給にたるだけの
在庫がないため申請量を上方修正して 400tを提示した。
申請国と TEAP でコンタクト会合を開催したが、合意に至らず、米国、EC 提出の決議
案ペーパーをもとに締約国会合で議論することとなった。
(b)TEAP2002 年報告によって emerging とされた破壊技術の状況の検討
TEAP より 2005 年のプログレス・レポートについて説明がなされ、将来的な更なる破壊
技術の検討の必要性等につき言及がなされた。5 条国からは、CFC を使った製品が大量に
輸入されており、その廃棄時に困難が生じ社会問題化していること、使用を終えた製品の
残存 ODS の適正な取扱いはオゾン層保護に寄与すること、とりわけ 5 条国にとってそのよ
うな ODS の回収及び破壊は、技術的、経済的に困難が伴い、ODS を使用しない製品への
買い換えといった経済的インセンティブを活用するにしても同様の問題をはらむこととな
る旨指摘した。コロンビアは 5 条国における CFC 使用製品の転換に関する技術及び経費の
研究、再利用及び破壊効率の採用(第 26 回公開作業部会における検討)を内容とした決議
案を提出した。これを受け、5 条国諸国は、次回の第 17 回締約国会合においてその経費を
見積もること、多数国間基金の次期資金補填の経費に見積もること等を提案し、上記提案
を支持した。コロンビアの決議案は、次回第 17 回締約国会合に送付されることとなった。
(c)プロセス・エージェントの問題(Process agent issues)
(i)決議 X/14 及び決議 XV/6 のプロセス・エージェントの使用並びに表A及びBに関す
る要請の検討
冒頭、TEAP より報告の説明がなされた。
これを受け、スイスは、TEAP 提案の CTC の用途、及び CFC-13 の消費に関するデータ
が欠落しており、それを欠いて評価することに懸念を表明した。これに対し、TEAP は、
前者については北朝鮮、ルーマニアからデータが提出されていないために言及できなかっ
たこと、後者については、データの提出こそあったものの商業ベースの事項につき詳細な
ものが得られていないためであるとの説明がなされた。
また、米国は、プロセス・エージェントの使用について、現行のプロセス・エージェン
トのシステムはよく機能しているところ新たな基準を追加する機を得ており、プロセス・
エージェントのデータ報告は現実的には非 5 条国に制限されていることから、5 条国にも
データの提出を求めるべきことを指摘した。
TEAP の勧告に関しては、イスラエル、トルコの使用の先送り、EC 提案及び緊急適用除
外に関する議論の更なる検討の必要性については合意したものの、各国から修正等を求め
る指摘が多く、結果、ブラケットが付され、第 17 回締約国会合に送付された。
8
(d)オゾン層の減少に関する取組みに関する TEAP/IPCC 報告の考察
決議XIV/10に基づき、TEAP/IPCC が共同作業を行い作成されたオゾン層保護と地
球温暖化防止対策との相互作用に関するレポートについて、TEAP より報告があった。我
が国は、IPCC と TEAP が協力して、本報告書を作成したことを高く評価し、モントリオー
ル議定書に基づく CFC 及び HCFC に対する生産・消費規制については、オゾン層のみなら
ず温暖化対策の観点からもモントリオール議定書は有効であること、IPCC/TEAP の報告に
ついて、引き続き専門家でデータの更新や検討を継続することが必要である旨発言を行っ
た。幾つかの 5 条国からは、TEAP はタンクに混入している ODS や装置に使用されている
ODS の破壊や処理のためのコストの研究を実施することを要求する旨発言があった。EC
は、報告書に関するワークショップの提案を行った。他方で、中国は、モントリオール議
定書と京都議定書はそもそも趣旨が違うものであり、モントリオール議定書は有効に機能
しており、これ以上の連携は必要ない旨を表明し、また、米国は中国に同意の上、EC が
提案したワークショップの開催に反対するとともに、破壊やバンクの排出について何らか
の規制を行う等のモントリオール議定書の遵守目的以外の事項を課すなら議定書の改定が
必要となることを指摘の上、義務でもないことを行うために資金を拠出することに疑義を
呈する発言があった。同様に、インドも義務ではないことを行う必要はない旨の発言を行
った。議論の結果、EC、ノルウェー及びニュージーランドから提出された決議案が勘案さ
れ、TEAP が 10 月までに、ODS のバンクからの排出等を削減するためのコストを推計する
などの補足的なレポートを求めることを含めて、次回締約国会合で議論することとなった。
議題5.多数国間基金に関する問題の考察
(a)多数国間基金の 2006-2008 年の資金補填に関する TEAP 研究
日本からは、現行期間の ODS 撤廃量と資金見通しの勘案、算定における収入面からのア
プローチ、5 条国において消費が増加すると思われる HCFC や残存 ODS からの回収破壊等
の新たな課題への対応措置の算定の必要性について発言を行った。また、多くの 5 条国か
らは、HCFC、破壊技術、チラー等への対策と資金充当が急務である旨の発言があった。
これらの発言をもとに、具体的な第 17 回締約国会合への勧告は、5 条国、非 5 条国同数
のコンタクトグループによって議論され、全体会合にフィードバックされることとなった。
コンタクトグループで作成された勧告案は、特段の異論もなく、第 17 回締約国会合の検討
に付されることとなった。コンタクトグループにおける議論及びその結果の概要は以下の
とおり。
(イ)非投資的経費(non-investment cost)に関し、非 5 条国よりその金額の見積もりにつ
いて疑問視する声が相次ぎ、結果、現行期間(2003 年~2005 年)の見積もりと支出の詳細
を次期期間(2006~2008 年)の見積もりの詳細とともに TEAP の補足報告に盛り込む。
(ロ)CTC に関しては、現時点で考慮されるべき現状が反映されていないとするスェーデ
ン及び英国の意見が反映され、オゾン事務局、多数国間基金事務局、履行委員会事務局か
ら得られる、消費データ、プロセス・エージェントの撤廃技術等の情報を勘案することが
TEAP に求められ、必要に応じて CTC に関する見積もりの修正を求める。
(ハ)HCFC、チラー及び破壊技術に関しては、カナダ等からの否定的な意見とコロンビ
9
ア、シリア、イラン、カメルーン等の 5 条国の肯定的な意見が表明された。日本は、HCFC、
破壊技術の算定の必要性につき支持の上、今後、執行委員会の場においてプロジェクトベ
ースの議論が行われることを念頭に、今次資金補填において考慮される必要がある旨、発
言した。議論の結果、当該経費の見積もりが必要か否か決するにあたり、関連プロジェク
トの現状を考慮すべく、次週開催される第 46 回執行委員会の議論を踏まえる。
(c)税関職員の訓練と免許付与制度の評価に関する執行委員会報告
既に承認された免許付与システム・税関職員の訓練等関連プロジェクトによって、CFC
の違法輸入が回避されるなど一定の効果が上がっているが、その効果は CFC 及び冷媒に
限られたものになっていること、ODS規制に係る税関職員の権限を高めること、5 条国
における法的枠組の整備、税関職員の訓練の実施を促進・サポートすること、訓練内容を
改正し、教材や分析器のより効果的な利用方法について情報提供することが重要である旨、
説明された。
日本は、本レポートは現状をよく分析しており、これまでの税関職員の訓練や法的整備
により違法貿易の削減に効果がみられることを高く評価し、議定書の義務の範囲内で、今
後も引き続き、税関職員等の訓練等を実施することが必要である旨、発言した。幾つかの
5 条国からは、担当の税関職員だけでなく、責任ある立場の職員や警察当局も参加するこ
とが効果的である旨発言があった。また、押収した ODS の破壊も課題である旨の言及があ
り、次回締約国会合で報告されることとなった。
議題 6.オゾン層破壊物質に関する違法貿易の監視及び防止
第 16 回締約国会合において、事務局は、ODS 貿易の追跡システムの確立とそれにかか
るコスト等についての実現可能性調査(feasibility study)に関するドラフトを提出すること
とされた。ODS の違法貿易防止のための協力的枠組の構築が目的とされ、このドラフトに
基づき、本年 4 月にモントリオールにおいてワークショップが開催され、右ドラフト及び
ワークショップの結果について報告がなされ、ワークショップにおいては、違法貿易の取
り組みとして 27 の方法が提示された旨、紹介された。
多くの国から、ワークショップの報告を歓迎・評価する旨の発言があり、途上国にとっ
て重要な問題であるところ、それぞれのアイテムについて、今後、深く考慮していくこと
が重要である旨発言がなされた。また、米国からは、厳格な国内法の執行と関係省庁のコ
ミュニケーションによる違法貿易の監視システムの構築は、偏に 5 条国の国内法の厳格な
適用に依存するものである旨指摘し、それ故、5 条国の監視システムに関し、非 5 条国に
よる問題解決を期待すべきでない旨の発言を行った。カナダは、事務局に自国の税関訓練
用の施設を提供し、使用したい途上国が利用できるように、事務局のホームページに掲載
している旨発言を行った。日本からは、トラッキングシステム(ODS の輸出の際に輸入国
の確認をとる等)の導入など、輸出国に新たな義務を課すことは議定書の改定が必要であ
ることから容易なことではない旨の表明を行い、アルゼンチン、ニュージーランド等から
支持を得た。EC から違法貿易に関する決議案が提出され、それを基にコンタクトグルー
プで議論が行われ、結果、9 月中旬までに各国より意見を求めることとなった。
10
議題 7.「調整」(Adjustment)に関する提案の議論
冒頭、EC より提案の趣旨及び手法(2008 年に基準値の 60%、2010 年に基準年の 40%、
2012 年に基準年の 30%、2015 年 0%とする)について解説があり、議論が開始された。
多くの 5 条国から、非 5 条国の臭化メチルの不可欠用途適用除外の議論も終結していな
い現在、時期尚早であるとし、そもそもこのタイミングでこの議論が開始されること自体
を疑問視し、議論自体の継続に強く反対する意見が相次いだ。5 条国からは各国の国内事
情が異なるにもかかわらず、必要以上に ODS 撤廃の足かせを課すことは無駄に非遵守状態
に陥る危険性を増やすばかりであるため実効性がない等、理解を示す発言は全く見られな
かった。入り口論に終始し実質的な議論がなされないまま、ドキュメント及び議論を記録
に残し、すべてブラケットを付し、第 17 回締約国会合の議論に送られることとなった。
議題 8.「改正」(Amendment)に関する提案の議論
冒頭、EC から現在の規制物質追加手続においては通常 11 年から 15 年を要し、その観点
から手続の迅速化の必要性を背景とした提案趣旨及び「修正」手続について説明がなされ
た。総じて各国から慎重論が繰り返し表明された。これらを受け、EC によって各国の懸
念を検討する旨表明された結果、本件はより総論的な手続き迅速化に関する取りうる選択
肢が今後検討されるとの了解の下、第 17 回締約国会合に送られることとなった。
1-2-3
第 2 回特別締約国会合
日程
2005 年 7 月 1 日
場所
モントリオール(カナダ)
会場
International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場
主要議題は以下のとおり。
議題 3.2006 年分の臭化メチルの不可欠用途申請の審議
第16回締約国会合において 2004 年に申請された 2005 年分の追加申請分と 2006 年分の
申請の一部が決議されたが、右会合において決議できなかった 2006 年分の申請については
暫定的な決議とされた。この暫定的な決議とされたものについては、該当する各締約国が
さらなる資料を提出した上、MBTOC がそれを検討し、不可欠用途規制除外として勧告し
たものを今次特別締約国会合において決議されるものとされていた。我が国に該当するも
のは 2004 年申請の 2006 年分のピーマン 65.6 トンとシシトウ 9.3 トンであった。MBTOC は我
が国がさらに提出した資料を検討した結果、これをすべて勧告し、今次総会で MBTOC が
勧告した日本の申請は全て決議された。
11
1-2-4
第 46 回基金執行委員会
日程
2005 年 7 月 4 日~7 月 8 日
場所
モントリオール(カナダ)
会場
International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場
主要議題は以下のとおり。
議題 5.財源の状況と計画
(b)2005 年ビジネスプラン
複数の国より、ビジネスプランに比しプロジェクト提案数が少なく、5 条国の非遵守に
陥ることに懸念が示され、結果、5 条国の遵守を確保するプロジェクトが優先的に次回執
行委員会に提出されることが求められた。
(c)モントリオール議定書における 5 条国の遵守状況/見通し
冒頭、事務局より、5 条国における規制物質毎の遵守の状況、締約国会合において遵守
に関する決議を受けた国及び非遵守と思われる国における執行の状況、カントリープログ
ラムの執行において提出されたセクター毎の ODS 消費量データの解析等について説明が
なされた。加えて、現在 5 条国には 16,373ODP トンのプロジェクト等によってカバーされ
ていない消費量が存在し、昨年よりも 23,000ODP トンの減少である旨、報告がなされた。
しかしながら、他方で、6 月 1 日現在、5 条国のうちわずか 66 ヶ国しかカントリープログ
ラムの実施状況報告を提出していない旨、指摘がなされた。
議論の結果、事務局に現行かつ潜在的な遵守問題(5 条国における 2007 年の CFC の
85%削減を念頭)に焦点をしぼった様式とすること(シリア、カナダ提案)等、改訂する
ことが求められた。また、非遵守の危機に瀕している締約国(ハロン:キルギスタン、ソ
マリア、CTC:ネパール、シエラ・レオネ、ウガンダ)へのプロジェクト形成が促され、
併せて、カントリープログラムの実施状況報告等を行う NOU の活動を維持すべく IS プロ
ジェクトの継続が求められた。
議題 6.プログラムの履行
(d)2004 年末時点のプログレス・レポート
(iii)UNDP
決議 38/38 の中で、CFC の市場価格が ODS ではない代替冷媒の価格に近くなるような
方策が採られていないと、RMP プロジェクトの R&R を始められないとする条件が、CFC
の値段が既に上昇している現在では、実態に合わないとの指摘がなされた。これに複数の
5 条国が同意し、議論の結果、決議 38/38 の問題の一文は「プロジェクトの効果的執行を
可能にする費用面でのインセンティブを促進するような方策が採られていること」と修正
されることとなった。
議題 7.プロジェクトプロポーザル
(c)2005 年の作業計画の修正
12
UNIDO のアフリカ諸国(8 ヶ国)における HCFC 調査プロジェクトが、特に議論の的と
なった。米国及びカナダは、5 条国における HCFC 規制の開始は 2016 年であり、現時点で
は基準量も定まっていないことに加え、前回の執行委員会で認められた UNDP による 12
カ国での調査や中国における同様の調査の結果を待って、このようなプロジェクトの必要
性を判断する必要があるとして、時期尚早である旨の発言を行った。これに対し、ブラジ
ル、キューバ、タイ等の 5 条国は、HCFC の撤廃は複雑かつ容易いものではないところ、
早期の調査と対応を必要とする旨の説明がなされた。他方で、英国が、そもそもこの提案
は、UNIDO のビジネスプランに掲載されておらず、手続き上の問題がある旨指摘したとこ
ろ、ベルギーがキルギスタンのケースでビジネスプランに掲載されていないプロジェクト
の形成が求められているが、それは非遵守に陥る可能性がある喫緊かつ特別の場合であっ
たからで、本件はそれに当たらず受け入れられない旨の発言を行った。結果、UNIDO は
2006 年のビジネスプランに本件を含め、再提案されることとなった。
議題 8.チラー実証プロジェクトの基準と様式の研究
第 16 回締約国会合及び第 45 回執行委員会の決議に基づき、事務局が用意したチラー分
野における実証プロジェクトの基準と様式に関するペーパーに対して、多くの意見が表明
された。とりわけ、プロジェクトの地域的配分や実証プロジェクトを通じて得られた情報
の世界的及び地域的提供の必要性、遠心式(centrifugal)チラーに対象を限定することの是
非、代替物質を非 ODS に限定することの是非、一国当たりの基金の上限や貸付と譲与の差
異、プロジェクト申請及び承認時に求める共同出資(co-financing)の確実性のレベルなど
に議論が集中した。また、米国は、本プロジェクトをもって、チラーに関してこれ以上の
基金供与は認めない旨を決議において言及すべきと主張した。さらに、UNDP 等より、本
議論の結果とワークショップへの参加を共同出資先として考えてられる GEF に知らせる
べき旨表明された。実証プロジェクトの基準と様式については、ベルギーを議長とするコ
ンタクトグループが設置され、ほぼすべてのメンバーが参加の上、活発な議論がなされた。
議論の結果、改訂された基準と様式が承認され、これらの基準に基づき、履行機関は第 47
回執行委員会までにプロジェクトプロポーザルを提出することとなった。
なお、本執行委員会後に開催された履行機関間調整会合において、世銀が行うワークシ
ョップの開催日は 9 月 26 日とされ、本来 9 月 26 日であるプロジェクトプロポーザルの締
切りは、チラーの実証プロジェクトに関しては一週間延長することが履行機関と事務局と
の間で合意された。
決議 12.二国間協力プロジェクトにおけるサポートコストに関する報告
冒頭、日本より提案趣旨及び二国間機関にコアユニット・ファンディングを認めた際の
手続等について、ポジション・ペーパーに基づいて説明を行った。これに対し、カナダよ
り日本に対する謝意とともに、コアユニット・ファンディングの算定方法につき二国間機
関の一年間のプロジェクト承認レベルを勘案する必要性が指摘され、また、英国からは、
日本提案は二国間機関のプロジェクトの実施におけるインセンティブに資するとして評価
した上で、実際に実施されるか否か分からないビジネスプランや履行機関の過去の実績に
基づいて算定することは問題であり改善の余地があること、コアユニット・ファンディン
13
グのレベルに比して、当該年間に相当額のプロジェクトが承認されなかった場合の返還規
定の必要性、コアユニット・ファンディングの手続的な側面(予算、報告、受け取り、精
算)の検証の必要性を指摘した。
さらに、米国は、一部英国の指摘事項に再度言及した上で、より詳細な資金供給方式の
提示及び査察手続を設ける必要性に言及するとともに、資金の算定においては、履行機関
のレベルを基準として扱うのは不適当である旨の発言を行った。
これらのコメントを受け、日本は、この提案は前回の事務局文書におけるメカニズムと
は根本的に異なり、コアユニット・ファンディングはサポートコストの前借りではなく、
現在の履行機関に対して実施されているシステムと同様にサポートコストとは別にコアユ
ニット・ファンディングのシステムを希望する各二国間機関が一定の算定方法に基づいて
受け取るものであり、従って、例え余剰金が生じても返済の義務は生じない旨の説明を再
度行った。また、査察制度に関しては、通常履行機関のみに対して行われているものであ
り、ドナー国である二国間機関に対して適用するのは不適切である旨の発言を行った。
また、カナダは、経費の公平性の観点から、前回第 45 回執行委員会に提出された事務局文
書を再度検証することを提案した。
日本は、関心国による非公式グループによって、これらのコメントを再検討することを
提案し、了承された。
非公式グループにおいて、我が方は再度各国の懸念の確認を行った。それによると、各
国は日本のかねてからの主張は理解するも、途上国支援を目的とする多数国間基金の資金
がドナー国に還流するシステムの創出には慎重とならざるを得ず、より精緻な検討と必要
最小限の資金供与システムとする必要があるとの認識を有していることが確認できた。そ
のような観点から、コアユニット・ファンディングが現在の経費負担以上となることに一
様に懸念が伝えられ、その意味では前回の事務局案(サポートコストの前借り)の方がま
だ概念的に近く(カナダ、英国)、透明性と適正な使用の確保の観点から査察制度の検討(米
国)、二国間機関の現状に見合った追加的な経費を生じない算定方式(カナダ、英国、米国、
オーストリア)が問題点として指摘された。これを受け、日本は、再度決議案を作成の上、
各国が受け入れ可能な部分についてのみ今次執行委員会で決議をめざし、懸念の残る部分
については次回以降の執行委員会に送ることを提案するも、本件は、その原理及びガイド
ラインに関する議論であることから前述の懸念の払拭と切り離して決議することは不可能
とし、今次執行委員会における部分的な決議さえも同意できない旨、意見表明がなされた
(米国、英国)。
この非公式グループでの議論を受け、日本は各国から出された意見を勘案の上、第 48
回執行委員会までに再度提案を行う旨発言を行い、これが記録に留められた。
議題 13.ODS の収集、回収、再利用、破壊のガイドラインの検討報告
事務局資料に基づき、日本から、破壊に関するガイドライン策定の必要性について主張
を行った。これを受け、ブラジル、シリアを中心とする 5 条国から、現在自国で抱えてい
る再利用できない ODS の問題を説明の上、日本の主張への支持が表明された。他方、米国
及びカナダは、破壊は遵守に寄与しないとする従来からの見解を繰り返し、英国は、破壊
14
は適用できるレベル(applicable)にないとした。また、オーストリアは、問題意識は共有
するも、生産への影響やストックホルム条約やバーゼル条約など他の多数国間環境条約(M
EA)との連携、持続可能性などの観点について、更なる情報の集約が必要と主張した。
日本からは、議定書の定義に基づき、破壊はモントリオール議定書の遵守に寄与するとの
立場を説明し、併せて、締約国会合の決議 IV/11 において、5 条国への破壊技術の移転を
多数国間基金を用いた財政的支援とともに促進すべきことが求められており、本決定への
対応が執行委員会へのマンデートであると主張した。議論は平行線を辿ったことから、日
本とオーストリアを中心に、表明された意見を踏まえ、事務局において更に調査検討すべ
き事項を決議案として取りまとめを行い、再度議論を行った。しかしながら、重要な議題
であり慎重な検討が必要との観点から、調査の内容についてコンタクトグループを設けて
更に包括的に議論すべしとの意見がなされ、事務局が第 47 回執行委員会までに、日・オー
ストリアによる決議案と議場におけるコメントを踏まえた調査のため TOR を用意するこ
とが決議された。
議題 14.撤廃協定、弾力的規定
履行実績に基づく(performance-based)撤廃計画のための合意に含まれる融通条件の定義
と使用について、事前の執行委員会の承認を必要とする「主要な変更(major changes)」と事
後の報告で足りるとする「軽微な変更(minor changes)」の区別について、事務局からガイ
ドラインの案が示された。キューバより、
「主要な変更」の定義に含まれる総額の20%以
上のコストの変更を伴う活動の追加や削除に関して、割合を20%ではなく30%とすべ
きことが主張され、認められた。本ガイドラインは、今後承認されるプロジェクトについ
て適用されることとなる。
議題 16.執行委員会の運営に関する報告
前回執行委員会において、今後予定される作業行程から、執行委員会は当面年 3 回開催
されることが決定しており、現時点において、会期間承認手続きを創出するメリットが乏
しいと認識されていることから、第 50 回執行委員会において再検討されることとなった。
1-2-5
第 47 回基金執行委員会
日程
2005 年 11 月 21 日~11 月 25 日
場所
モントリオール(カナダ)
会場
International Civil Aviation Organization (ICAO)内会議場
主要議題は以下のとおり。
議題 5.財源の状況と計画
(d)モデルとするローリングプランとしての 2006-2008 年撤廃計画
事務局から説明がなされ、特段の異論もなく承認された。
なお、我が方からは、来月行われる締約国会議の場で多数国間基金に対する次期資金補
15
填について議論されることとなっているが、その際に新たな課題についても議論されるべ
きである旨、また、今次会合には日本代表団に国際協力機構(JICA)からも参加しており、
今後、多数国間基金におけるプロジェクトの実施において JICA の活用が期待される旨、
表明した。
議題 7.プロジェクト提案
(f)投資プロジェクト
・チラーデモンストレーションプロジェクト
前回執行委員会における決議(46/33)に基づき、UNDP、UNIDO、世銀及びカナダより、
計7件のプロジェクトが提案された。事務局文書(ExCom47/20 Add.1)パラ 42(c)にお
いて、外部からの資金調達が保障されなければ基金からの支出は行わないとされている点
について数カ国よりその趣旨が質されたところ、事務局より外部からの資金調達は、プロ
ジェクト実施国におけるローンの保証、税制上の優遇措置等を保障する手段であるとの説
明がなされた。これらの議論を受け、オーストリアを議長国として関心国によるコンタク
トグループが形成され、ブラジル、カリブ諸国、コロンビア(UNDP)、キューバ(UNDP、
カナダ)、東欧諸国、シリア(UNIDO)におけるデモンストレーションプロジェクト及び
グローバルプロジェクト(世銀)が承認された。
UNEP に対しては、今回のデモンストレーションプロジェクトにより得られた知見を広
く普及させるためのプロジェクトを次回執行委員会に提案することが求められた。また、
今回承認されたプロジェクトの執行に関し、基金の支出を行う前に外部資金を確実に調達
すること、年度の最後に行われる執行委員会において進捗状況を報告すること、多国間基
金からの追加資金は認めないことが決議された。
・中国冷媒回収プロジェクト
日本が二国間プロジェクトとして実施している中国冷媒削減プロジェクト
(UNEP/OzL.Pro/Excom/47/25
P-27)に関し、2005 年以降も引き続き UNEP を実施機関と
して加えること(UNEP を実施機関として加えることは第 45 回執行委員会において承認済
み)、当初の予算に UNEP のサポートコスト分 30,250 ドルを加えた額をトータルコストと
すること、2005 年分の資金配分について事務局に承認を求めた。
これについて、リードエージェンシーである UNIDO より経緯説明がなされた。米国、
カナダ、英国等から、実施機関を簡単に変更することは基金を代表してプロジェクトを行
っている実施機関の地位を弱めることになるのではないか、法的に交わされた契約を短期
間のうちに何度も変更することによってプロジェクトの実施に影響が生じるのではないか
といった懸念、予算の増額は承認できず、UNEP はサポートコストのシェアの変更を検討
すべき等、承認に反対する旨表明された。日本からは、UNEP は、本プロジェクトにおい
て技術者のトレーニング等に関して重要な役割を果たすこととなっており、また、2004 年
事業では既に UNEP を含めること及びサポートコスト分の増額は認められていることから、
事業の継続性の観点からも、引き続き UNEP を実施機関に含めること及び 3 万ドルの増額
について承認を求める旨発言した。続いて UNIDO からも同趣旨の発言がなされ、本件は
中国側からの強い要望によるものであることが追加的に説明された。UNEP は予算が問題
16
ならサポートコストの割合の変更も示唆したが、懸念の払拭には至らず、結果、本件は承
認されなかった。したがって、本プロジェクトは、2005 年度は当初の計画どおり我が国の
二国間支援基金 3 百万ドルのみで実施されることとなった。
議題 11.決議 35/57 に基づく制度的強化の検討を含む全ての ODS の撤廃に必要な更なる
政策・活動に関する分析の暫定結果
HCFC の撤廃に対する支援可否等については、中国で行われている政策研究や UNDP に
よる調査の結果に照らして議論することとされた。
議題 13.質的評価指標
カナダと日本から提出されたコメントを基に議論がなされ、二国間機関に対して評価指
標(質的・量的ともに含む)を適用しないこと、履行機関に対して適用する量的評価指標
の重点配分を変更し、承認段階より履行段階の比重を重くすることが決議された。
議題 14.不要 ODS の収集、回収、再利用、破壊に関する調査の予算と手法及び委託事項
案
事務局資料に提示された今後の進め方について、専門家会合の開催に関しては議場での
大方の支持が得られたが、カナダから関心国によるコンタクトグループの設置が提案され、
ブラジルが議長を務めることとなった。
コンタクトグループにおいては、調査の目的や対象範囲を明確化し、その上で専門家会
合の開催の必要性や委託事項(TOR: Terms of reference)案について検討すべき(カナダ)、
non-reusable、unwanted ODS などの言葉の定義が不明確であり、定義を明確にすべき(オ
ーストリア、米国)、まずは 5 条国における不要な ODS 量の調査を行うことが必要(カナ
ダ)といった意見が出された。日本は、問題への対応を議論する上では、現在のみならず
将来的に不要となる ODS 量の見積もりも含める必要がある旨指摘した。また、データ収集
の方法について議論がなされ、TEAP や履行機関の協力を得て得られるであろうデータと、
必要なデータとの隔たりについても言及がなされた。議論の結果、調査を 2 段階に分け、
専門家会合において現在及び将来にわたる 5 条国に存在する不要な ODS の収集・廃棄の必
要性について評価を行うこと、最終的な TOR 案を議論する前に調査の目的について更に検
討すること、メンバー国は TOR 案の個々の事項についてコメントがあれば書面で提出する
こと等が合意された。
コンタクトグループにおける議論が本会議に報告され、専門家会合の開催時期、場所、
参加者の地理的代表性の確保等について更に検討がなされた。議論の結果、専門家会合は
2006 年 2 月 22 日から 24 日の日程でモントリオールにて開催すること、事務局はコンサル
タントを雇い 5 条国におけるデータ収集を行い専門家会合の参加者へ事前に配布すること、
会議開催費用として 5 万ドルを予算化すること、が決議された。また、執行委員会の議長
は、締約国会合を通じて TEAP 及び TOC にデータ提供での協力を求めるほか、事務局はデ
ータ報告のための様式を用意し、履行機関及び執行委員会メンバー国から関連データの提
出を募ることが決議に盛り込まれた。今後、第 48 回会合において、専門家会合の結果やメ
ンバー国から提出されたコメントを踏まえ、TOR 案を検討することとなる。
17
議題 17.生産分野サブ・グループによる報告
カナダを議長国としてサブ・グループが形成された。ルーマニアにおける ODS 生産部門
プロジェクト、中国における臭化メチル生産削減プロジェクト及び中国における ODS プロ
セスエージェントの削減(フェーズⅡ)とCTC生産削減プロジェクトについて検討が行
われ、全てのプロジェクトが承認された。
1-2-6
第 17 回締約国会合
日程
2005 年 12 月 12 日~12 月 16 日
場所
ダカール(セネガル)
会場
Congress Hall at the Méridien Hotel内会議場
主要議題は以下のとおり。
(1)7 月に開催された準備会合の結果を踏まえ、多数国間基金の 2006 年-2008 年の資金補
填規模、違法貿易、臭化メチルに関する不可欠用途適用除外等について議論が行われた。
7 月に開催された第 25 回公開作業部会において、非投資的経費(non-investmentcost)の見
直しを始め、TEAP に対し補足的報告(supplemental report)を作成することが求められていた。
今回提出された TEAP からの補足的報告では、3 年間の資金レベルは$430.33M であり、こ
れに Excom47 からの報告が勘案された場合、$417.4~485.9M と見積もられた。具体的には、
UNIDO が 2005 年に申請して先延ばしされた HCFC の調査プロジェクトが 2006 年以降検
討されることを考慮して、非投資的活動として$1M を追加的に見積もること、チラーに関
しては、$15.2M のデモンストレーションプロジェクトのための funding window の使用にお
いて、追加的な基金は承認しないことが確認されたことから追加的見積の必要はないこと、
破壊プロジェクトについては第 47 回執行委員会での議論を踏まえ、4~8 つのデモンスト
レーションプロジェクトが行われる事態を考慮し、$4M を追加的に見積もること等が含ま
れている。多数の 5 条国から ODS の破壊プロジェクトに TEAP 見積もりよりもかなり多額
の資金が必要である旨発言があった。(当初提案では破壊プロジェクトに$108M 必要との見
積もりが提示されていた。) 非 5 条国はそもそも破壊プロジェクトは不要というスタンス
であり、両者の考え方の開きが大きかったことから、相当の時間をかけてコンタクトグル
ープで議論された結果、$470M(締約国新規負担$400.4M)で決議された。
(2)違法貿易関係
7 月の OEWG に引き続き、EU から、違法貿易を防ぐために ODS 貿易を追跡するシステ
ムについてフィージビリティスタディを行うことや、輸出の際に輸入国の通報を得ること
などを盛り込んだ決定案の提出があった。追跡システムは、輸出入、中継貿易、積み替え
を対象としている。事前にこの提案に対して、懸念を表明する文章が日本、米国及び NZ
から提出された。我が国は、違法貿易の防止の重要性は理解するものの、ODS の追跡は、
18
締約国にとって過度の負担とならないようにすることが重要である。とりわけ、輸出国が
輸入国に対しで情報提供を行うことを義務づける場合には、議定書の改正につながり、締
約国に対する大きな負担と議定書の運営に混乱を与えることが考えられる一方で、その効
果には疑念を抱く国もあり、慎重に議論がなされるべきである。今次決議は、先の OEWG
でも違法貿易の削減に効果があったと報告された税関職員に対するキャパシティビルディ
ングを引き続き促進することを内容とすべきである。加えて、報告のあった違法に輸出し
ている数か国に対し、生産及び輸出管理を厳格に行うことや全ての締約国が輸出入のライ
センシング手続きを早期導入するよう促すことを内容とすべきである旨発言し、米国、NZ
からも同様な発言があった。本決議案はコンタクトグループにおいて議論され、EU から
「本決議は締約国に新たな義務を課すものではなく、あくまで調査の実施が目的である」
等の説明があった。最終的には、EU 提出決議案の全体のトーンを「要求する(call on)」の
表現から「奨励する(encourage)」等に修正し、06 年末の締約国会合までに ODS の輸出入
に係る情報交換の効用などの調査をすること、調査費用として 20 万ドルが支出されること
などが決定された。
(3)MDI の不可欠用途申請
06-07 年の MDI(metered-dose inhalers)の不可欠用途申請について、検討が行われた。第 16
回会合決議に基づいて提出された CFC-MDI 全廃行動計画によれば、EU は、06 年をもって
不可欠用途申請を終了することとしており、他方、米国は、08 年末をもって米国内での
CFC 使用の MDI は販売しないこととしている。今回、米国は、06 年及び 07 年の不可欠
用途の申請を行い、承認を求めたが、EU 等から、米国内に十分な在庫があり、これをま
ず使用するべきとの強い主張があった。日本からも、TEAP の方針を支持する旨、及び日
本では 04 年末で CFC を使用した MDI については生産、輸入ともにすべて終了、05 年末
までに CFC-MDI を市場からの完全撤廃を予定しており、他国についても全廃への取り組
みを促進するよう求める旨の発言を行った。関係者である米国、EU、及びロシアに TEAP
が加わり、コンタクトグループで話し合った結果、EU 及びロシアは申請どおり(EU:539 ト
ン、ロシア:06 年 400 トン、07 年 243 トン)米国の申請量は大きく削減(06 年 1702 トン→1100
トン、2007 年 1493 トン→1000 トン)され、承認された。
(4)TEAP/IPCC 共同報告書
オゾン層保護と地球温暖化防止対策の観点から、モントリオール議定書の専門家と京都
議定書の代替フロン等 3 ガスの専門家により、両議定書に係る相互作用に関する共同報告
書が作成された。OEWG25 において本レポートに関する検討が行われ、TEAP 及び IPCC
に対し、特定物質のオゾン層への影響に関する更なるレポートの提出を要求することとさ
れていた。今回提出されたレポートにおいては、使用済み機器の管理は排出抑制に大きな
影響を与えるが、bank からの回収及び破壊対策実施に係るコストは、実際の利用可能性
(accessibility)や輸送手段(transport logistics)に大きく依存するため地域差や不確定要素が大
きく、費用対効果はオゾン層保護と温暖化対策の相乗効果をどう捉えるかにも依存するた
め、一概に判断することはできないと結論づけられている。各国より報告書のとりまとめ
について謝辞をのべつつも、複数の途上国から、回収破壊の技術的困難性、コスト効率性
19
についてより詳細なレポートを望む旨コメントがあった。また、専門家によるワークショ
ップの開催が提案され、第 26 回公開作業部会のマージンで開催されることが決定した。
TEAP に対しては、2015 年までの ODS の使用見通しと bank からの排出見通しについてよ
り詳細なレポートを次回締約国会合に提出することが要請された。日本からは、両議定書
が協力して共同報告書を作成することは大変意義のあることであり、今後も適宜データの
更新をするなど継続して研究していくことが大切である旨発言した。
(5)EU の議定書改訂提案
「改正」提案は、EU より、議定書に新たに ODS 物質を追加するときに時間がかかりす
ぎるため、それを迅速化すべき改定案「修正(modification)」(機関決定方式採用)という手続
きを設けようとするもの。過去 2 年間も同様な提案をし、否決されたにもかかわらず、本
年も同様の提案があったが、Co-Chair から本議題については見送る(defer)との提案があり、
これが承認された。
20
1-3.支援可能性の検討研究会
「モントリオール多数国間基金を活用したオゾン層破壊物質削減に貢献する国連関係ビ
ジネスチャンスのご紹介」と題して、UNIDO ウィーン本部より大島隆一氏の来日の機会を
捉えて関連テーマ 3 点についての講演会を開催した。
日時:
2005 年 10 月 4 日(火) 15:00~17:00
場所: 株式会社旭リサーチセンター 7A4 会議室
東京都千代田区内幸町 1-1-1 帝国ホテルタワー 17 階
プログラム:
1. 開会挨拶、モントリオール基金に対する日本政府の取組み
経済産業省製造産業局オゾン層保護等推進室課長補佐 山村直弘氏
2. インド CTC(四塩化炭素)削減プロジェクトについて
三井物産プラント株式会社産業システム本部
田賀太郎氏
3. モントリオール多数国間基金を活用したオゾン層破壊物質削減に貢献する国連関係ビジネス
UNIDO, Montreal Protocol Branch, Industrial Development Officer 大島隆一氏
(1)モントリオール議定書にもとづく取組みと仕組み
(2)UNIDO の活動
(3)UNIDO における技術、設備の選定
(4)最近のプロジェクト事例、今後予定されているプロジェクトの紹介など
1. 開会挨拶、モントリオール基金に対する日本政府の取組み
経済産業省製造産業局オゾン層保護等推進室課長補佐
山村直弘氏
インドの CTC 削減事業にはじめて日本企業が参画できた。04 年末に承認された中国カ
ーエアコンからの冷媒回収事業でも可能性がある。ビジネスチャンスを見つけてほしい。
今回始まるチラー転換事業では、すべての費用をモントリオール議定書基金でまかなえな
いので従来先進国は反対していたが、一部基金を融資として使っていくことで承認された。
日本企業の参画の機会ができると思う。
HCFC 削減計画は、途上国では 2015 年の使用量が基準になるのでそれまで使用を増や
して行く可能性がある。拠出国としては今から HCFC
の転換を進めていかねばならない。
日本の得意とする分野なので執行委員会の動向を見ながら進めていきたい。
破壊事業については、モントリオール議定書で破壊は推進しているが義務とはしていな
い。その点は検討中であり、今後基金の対象となる可能性もある。UNIDO はじめ国際機関
との連携を強化していきたい。モントリオール議定書以外に、京都議定書 CDM 案件とし
てモントリオール議定書からの一連の動きとなっていく可能性もある。このような横断的
な意見交換の場を設けたい。
21
2. インド CTC(四塩化炭素)削減プロジェクトについて
三井物産プラント株式会社産業システム本部
田賀太郎氏
556 万ドルの予算で、金属洗浄に使用されていた CTC を 533ODP トン分削減するプロジ
ェクトである。UNDP が実施機関となり、インド全域にひろがる対象会社 3 社 9 工場につ
いて、2006 年はじめにかけて据付試運転まで行っていくことになった。04 年 4 月以来工場
をまわり、入札資料が作成された。このあと日本の洗浄の専門家が参加して仕様の作成を
支援し、日本の技術を活かせるようなチャンスをつくった。
入札の公示は 12 月で、公示から 3 週間でしめ切って入札となる。この時間は入札準備作
業には短すぎる。検討の時間はほとんどない。入札が終わったあとも、仕様変更や確認な
どの作業がおこなわれ、入札書類の様式作成や提出書類の準備に時間がかかる。できた書
類を現地に送付するまでの時間も考慮しておくことが必要。Special terms and conditions に
も注意をすべきである。仕様書の求めるものに対して、できないという Deviation ではなく、
代替案を示すような姿勢で臨むことが必要である。
日本の企業においても、日本で製造することに必ずしもこだわることなく、今回の例の
ように中国で製造してコストを下げるような工夫も必要だろう。
3. モントリオール多数国間基金を活用したオゾン層破壊物質削減に貢献する国連関係ビジネス
UNIDO, Montreal Protocol Branch, Industrial Development Officer 大島隆一氏
①はじめに
開発途上国におけるオゾン層破壊物質の削減と全廃を支援するため多国間基金が設けら
れ、1991 年以来技術移転を中心とする活動が続けられている。受益国は一人当たりのオゾ
ン破壊物質使用量が年間 300g以下の国で、議定書加盟国 175 カ国のうち 130 カ国である。
基金は工業国からの拠出金で、1991-1993 会計年度に 2.4 憶ドル、以後 4.55 億ドル
( 1994-1996)、4.66 億ドル(1997-1999)、4.4 億ドル(2000-2002)、合計約 13 億ドルの基
金が使われている。 日本は 2002 年度に約 3300 万ドル(40 億円)、全体の 23%を拠出して
おり、アメリカの 25%についで 2 番目の貢献をしている(ドイツ 11.2%、フランス 7.5%,
イタリア 6.2%、イギリス 5.8%、が続く)。 2003-2005 年の会計年度においても同規模の
基金で運営されている。日本の分担金はアメリカと同じである。
基金の対象となる分野は、冷凍冷蔵、発泡、燻蒸、たばこ、洗浄、プロセス、エアゾル、
消火剤、医用エアゾル等で、オゾン破壊物資のうち特定フロン、臭化メチル、トリクロロ
メタン、ハロン、四塩化炭素が全廃の対象である。2005 年 1 月 1 日には基準年比特定フロ
ン 50%、トリクロロエタン 30%、臭化メチル 20%、そして四塩化炭素 85%の削減が途上
国に義務づけられている。
基金の運用は年 3 回の実行委員会で決定される。 理事国は 1 年の任期で、途上国と工業
国からそれぞれ 7 カ国があたる。日本とアメリカは常任理事国である。プロジェクトは国
連開発計画、国連環境計画、国連工業開発機関と世界銀行によって計画、申請、実施され
ている。 国連環境計画は基金管理と啓蒙活動等の非投資プロジェクトを、他の 3 機関は主
に投資プロジェクトを実施している。分担金の 20%を限度として二国間での援助が認めら
22
れている。
②UNIDO の活動
UNIDO では 1993 年以来、834 のプロジェクトを 65 カ国にて実施しており、全予算 3 億
ドルで 4 万 ODP トンを削減する。基金全体の約 30%を担当しており、最近の年間予算は
およそ 3 千万ドル(36 億円)である。削減実績は地域的にはアジア 66%、アフリカ 17%、
中南米 11%、東欧 6%の割合であり、分野としては 冷凍冷蔵 42%、発泡 32%、エアゾル
14%、消火剤 7%、洗浄 4%、臭化メチル 1%となっている。 86%を占める優先度の高い
特定フロンの削減のための冷凍冷蔵分野、発泡分野のプロジェクトに重きをおいていた。
UNIDO の特徴は、技術系の専門職員が契約、購買部門、経理部門および現地事務所との
連携を通じて効率よくプロジェクトの発掘、計画と実施を行うことである。それによって、
複雑な技術移転を伴うプロジェクトを他機関より迅速に実施する。
(冷蔵庫工場の炭化水素
冷媒、発泡剤の転換、圧縮器工場の技術転換、多岐にわたる農産物の燻蒸技術の転換など)
2005 年の各種オゾン破壊物質削減規制に伴い、特定フロン、四塩化炭素の製造工場の転
換(休止)のためのプロジェクト(メキシコ、ルーマニア、北朝鮮、中国等)、機械洗浄過
程での四塩化炭素の代替技術導入、農薬中間体、塩素化ゴム製造過程における四塩化炭素
の全廃、工場設備、部品洗浄用の四塩化炭素、医療用エアゾルの CFC
転換技術導入等が
従来のプロジェクトに加えられた。
従来はオゾン層破壊物質使用工場毎のプロジェクトを実施していたが、大手の工場の転
換が終わっている途上国では、分野をひとまとめにして、残っている中小の工場の技術転
換を一括して行う“セクタープロジェクト”実施されるようになった。アフターマーケッ
トのサービス用に使われている特定フロン冷媒の削減を支援する国レベルの“冷媒マネー
ジメントプラン(RMP)”は、少量使用国から中国など大量使用国でも広く実施されてい
る。さらにサービス用途の CFC を含めた全ての ODS を削減する“国家削減プロジェク
ト(NPP)”が実施されており、UNIDO ではアルバニア、アルジェリア、アルゼンチン、
ボスニアヘルツエゴビナ、カメルーン、クロアチア、メキシコ、ナイジェリア、オマーン、
パキスタン、カタール、スーダン、リビア、べネズエラ、セルビアモンテネグロ、マケド
ニア、インド(プロセスエージェント)、イラン、北朝鮮、ヨルダン、エジプト、シリア、
クエート等を担当している。
③各セクターにおける活動
③-1 冷凍冷蔵、発泡分野での技術、設備
代替発泡剤用のポリウレタンフォーム発泡装置が主たる新規設備で、多くのプロジェク
トでイタリア製の装置が導入されている。冷媒注入装置、炭化水素冷媒の場合は安全のた
めの設備も必要となる。限定的ではあるが、圧縮機変換プロジェクトでは水系の部品洗浄
装置、設計試験、付帯設備としての潤滑油精製封入装置等が導入された。
③-2 アフターサービスでの技術、機器
アフターサービス用の CFC-12 は途上国の全てでオゾン破壊物質使用の中心である。基
金では冷媒回収、再使用とサービス作業のレベル向上を主たる削減方法としている。必要な
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機器は小型真空ポンプ、小型ボンベ、回収機、再生機で、大量な数が必要である。UNIDO
のプロジェクトでは簡便な冷媒分析器も導入している。基金でまかなえる冷媒分解装置は
極めて限定的である。基金を元とした CFC 使用チラーを変換するデモプロジェクトは来
年 2006 年から実施される予定で、UNIDO は中近東、東欧、アフリカを担当する。ドロップ
イン冷媒の使用は限られている(ミャンマー等)。
③-3 洗浄、プロセス分野での技術、設備
CFC-113、トリクロロエタンの他に、途上国では安価な四塩化炭素が洗浄剤として使わ
れている。四塩化炭素は化学プロセスで製造原料以外に塩素化剤、反応溶剤として使われて
おり、削減対象である。2001 年の使用量は 26,909 トンに達する。
③-4 途上国におけるオゾン破壊物質の主要用途
【洗浄】 半導体、電気回路、ブラウン管、電気回路部品、武器、時計部品、医用器具、自
転車部品、発電機、熱交換器各種(内部、外部洗浄)、スチール板、剃刀、機械部品(圧縮
機等)、貴金属宝石類、光学部品、プラスチック成型金型、塗料はくり、アスベスト金属繊
維の不織布、発電所設備、石油掘削施設、ビール工場、家庭調度品
【プロセス】 塩素、苛性ソーダ製造過程での 3 塩化窒素の除去、塩素の回収、塩化ゴム製
造、弗化ゴム製造、化成品中間体製造、SBR 製造、殺虫剤中間体製造、医薬品中間体製造、
天然物の抽出剤
以上の従来技術を転換できる技術、設備がプロジェクトにとって必要となる。代替先浄
剤としてトリクロロエチレン、パークロロエチレン、塩化メチレン等が使われるが、装置
は密閉されリークのない必要があり、用途により使えない場合も多い。十分な基金が受け
られる工場では水系の洗浄過程に変換することもある。超音波洗浄機等が一般的である。
プロセスエージェントのプロジェクトでは反応装置の交換、安全設備の導入が行われる。
③-5 臭化メチルプロジェクトの技術、設備
UNIDO は臭化メチルを得意としている。代替技術は多岐にわたっており、必要な設備も
さまざまである。スペイン、イタリアなどが技術支援をしている。
③-6 医用エアゾルプロジェクト
代替噴射剤対応の製剤設備の導入が必要となる。UNIDO では中国のプロジェクトを来年
申請する予定。中国での最後の削減分野となる。SEPA の専門家が主導して起案し、UNIDO
が支援して 2006 年 7 月にプロジェクト提案予定。
④UNIDO における技術、設備の選定
技術、設備の選定は、UNIDO の経理規則にしたがい、国際入札を通じて公平になされる。
当該技術、設備の供給可能な信頼のおける供給業者に対して入札要請を出し、UNIDO の作
成した規格仕様書にしたがって入札書類を審査した結果技術的に受け入れられるとされた
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入札業者のうち、最低価格を提示したものを選択する。7 万ドル以上の案件については内
部の契約委員会の承認が必要である。契約書および報告書は英文である。
拠出金が特定の一カ国からなされる案件の場合、拠出国の要請があれば 、入札業者をそ
の国の企業のみに特定することも可能である。
⑤CFC チラー
米国にはたくさんある。古いチラーは漏れがあり、ODP トンとしては大して大きくない
が、その割には装置取替えのコストは非常に大きい。そのためモントリオール基金でもか
ねてからこの分野には手をつけないできた。イギリスの二国間基金を使ってメキシコで実
施したケースのように、できればリボルビングファンドなどがのぞましいのではないか。
アフリカ地域(スーダン、エジプトなど)や中近東地域でのリージョナルな転換というこ
とで炭酸ガス排出削減を各国で計算して多数国間基金での承認を求めて提案の話をすすめ
ている。11 月に承認されたら、金融機関を見つけ、メーカを選定することになる。南米は
UNDP、インド・中国は世銀が担当しており、06 年後半くらいから本格的に始まる。
CFC-11 のチラーを使用している病院をセルビアで見学したが、資金がないなか、公共性
の高いところから先に手がけることになる。米メーカが強いが、米メーカにかぎっている
わけではない。東欧は日本企業の大きな進出先なので機会はたくさんあるはず。また、ア
フリカは難しい問題が多いが、南サハラにも積極的にでていってほしい
⑥破壊
HCFC は調査費用が各国向けに承認されている。UNDP の努力によるものだ。UNDP は
中国での調査を始めており、これにより HCFC 対応に窓があいた。UNIDO も東欧などで
調査を始めた。
破壊に対する要望は、いつも途上国から聞かれるが、コンタミがあったらもう使いよう
がないのは事実である。ここ 5 年くらいの懸案となっている。メキシコやアルゼンチンで
は量も膨大になり、処置に困っている。日本では大小の破壊装置は進んでいる。カナダや
オーストラリアにも破壊装置はあるが、使い勝手は悪い。資金的には手付かずとなってい
る。いったん窓があくと全ての国から破壊処理の要望が来る可能性がある。オーストラリ
アなどでは以前から持ち込めば処理をできると言っている企業もあるが、コスト的に高い
ため進んでいない。MLF 事務局長であるマリアノーランは、京都議定書とモントリオール
議定書の共同に関心のある人物で、なぜ HCFC を使おうとするのかと疑問を投げかけてい
る。
⑦入札
一件の額がそれほど大きくないこともあり、スペック作成とともに Shortlist を作って進
めている。なるべく広く多くの国から、良い機械を導入していきたい。スペック作りはポ
イントであるが、受益国ではスペックに対するイメージを持ち合わせていない場合もあり、
UNIDO が提案を作ることもある。発泡装置などイタリア仕様からドイツ仕様にするだけで
コストが倍になってしまう。資金は技術の転換に使用するのであって、向上に使ってはい
けない。先進国のコンペティタを作ることを目的とはしていないということだ。日本とし
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てはよりよい機械を手配したいと考えるのだが、前例と比して高価なものには事務局など
から抵抗がある。バランスが重要。
また支払い条件として L/C は出さない。基金の資金は UNIDO に入るが他の使途には使
えなくなるようにしてある。私はウィーンの UNIDO 本部にいるので、日本語でもぜひコ
ミュニケートしてほしい。
質問応答
①アフターサービス用 CFC -12
・アフリカは冷凍冷蔵庫、アルゼンチンはカーエアコン、メキシコはカーエアコンの 80%
が CFC -12 を使用している。家庭用冷蔵庫は普通冷媒もれは起こらないはずだが、パキ
スタンでは 3%くらい漏れており、300 リットルタイプでも年間 350g 使っている。暑い
ので大型コンデンサを使用していることも影響している。東欧では中古も使用しており、
アフリカでは中古冷蔵庫が町にあふれており故障が多いようだ。EU は輸出禁止法律 02
年に発効させた。ルーマニア、スーダンなどでは、サービス分野は対象も数多いので使
用量の把握などが困難だが、何としてもサービス分野で削減していかないとこれからは
CFC の使用量が減っていかない。
②破壊
・各国に施設を作るとどれだけ膨大な資金がかかるかわからない。拠出国側には、基金へ
の拠出額がまだ減っていかないことへの懸念があり、一方で日本はやるべきと主張して
いるがなかなか通らない。破壊が CDM の対象になるかどうかについては、モントリオ
ール議定書での回収対象は CFC であり、CFC の破壊が HFC の破壊につながる、という
ためのなんらかの論理付けをしなければならないが難しい。
・技術は TEAP の破壊の分科会で承認したものに限る。
③臭化メチル
・楯谷氏よりコメントがあった。05 年 80%削減に途上国は反対している。土壌消毒剤とし
て切花などのために使用するものであるが、臭化メチル輸入がへって国に金がはいって
も、農家には代替手段がないのが現状だ。企業側が代替剤や機材提供のほか技術指導を
したり、現地の農業指導の専門家育成をすることが重要。日本企業にはその面でビジネ
スにする道がある。
④アフリカ向けプロジェクト
・二国間資金枠を使って日本の企業としてミッションを編成し、相手国に行ってはたらき
かけて METI や UNIDO へ提案するのはどうか?
→(山村氏より)使用しなかった分
は多国籍の実施機関へ行ってしまうので残っていない。プロジェクトを探すためには、
サポートコストを使うことはできず、プロジェクトが認められてからでないと使えない。
また GTZ など世界各国に出先をもって情報収集なども踏まえてシステマチックに行っ
ている機関に対抗するためには、日本のようにそのような活動母体となる機関がないと
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ころでは活動しづらい。サポートコストをそのような用途に使うことは提案しているが、
資金をプールしておくところがない。
⑤06 年秋頃以降で日本企業の参加可能性のある事業のリストにもとづいて動くことは可
能か。→(山村氏より)今後 3 ガス関係の CDM 研究会などもやっていきたい。CFC から
ノンフロンにいくとき HFC に行かないで飛ばしたんだという理屈で認めてもらえればと
考えている。
⑥二国間枠になったときでも機器に対する条件はゆるくならないのか?
・いいものを安くというのが原則である。拠出金も国民の税金からでているものであるか
ら、日本企業のビジネスチャンスともなりうるのでその可能性を探っていっていただき
たい。日本企業の得意としているような技術を取り込んでいく方向に持っていくのが一
つの方法だ。
大島隆一氏
略歴
1976 年
東大生産技術研究所
1987 年
アイシーアイジャパン㈱
技術研究所、冷媒事業部、ウレタン事業部にてアジア
太平洋領域での HFC 冷媒、ウレタンの市場開発担当
1997 年より現職
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