...

電気自動車の消費者購買意 思規定要因

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

電気自動車の消費者購買意 思規定要因
電気自動車の消費者購買意
思規定要因
〜何が EV を買わせるのか〜
1---研究の目的
2---はじめに
(1)電気自動車とは
(2)電気自動車の利点と普及への課題
(3)環境問題、石油枯渇問題により電気自動
車の市場価値上昇
3---電気自動車市場の動き
4—--現状分析
(1)消費者の自動車に対する意識の変化
(2)消費者の電気自動車に対する認識
(3)電気自動車の潜在的購買者の特徴
5---仮説
6—--アンケート調査
(1)アンケートの目的
(2)アンケート方法
7—--分析
(1)分析の前に
(2)分析手順
(3)分析結果
8—--分析結果の検証
9—--仮説検定
10—--考察
11---結論
伊藤
稔
伊藤克彦
犬塚
智
金
東敏
西尾沙奈
慶応義塾大学里村ゼミ伊藤班
に馬力を出せるわけではなく、電気を通じれば回
1. 研究の目的
るモーターの方が簡単に使える動力であったため、
1900 年ごろには電気自動車は珍しい存在ではなく、
私たちは今回の研究の対象財として電気自動車を
ガソリンエンジン車と市場を争っていた。
選んだ。なぜなら、最大の理由は、電気自動車は
しかし、当時の電気自動車のバッテリーでは航続
市場に投入されたばかりの製品であり、未だ電気
可能距離が非常に短いのが課題であった。そのた
自動車に関する消費者の購買行動モデルが存在し
め、ガソリンエンジンの性能が改良され、馬力が
ないからである。本研究では消費者が電気自動車
容易に出るようになると、次第に主流はガソリン
の購買意図にいたるまでのプロセスを解明した。
エンジン自動車になった。その後、長い間ガソリ
ここで購買行動までのプロセスではなく、購買意
ンエンジン車が市場を占めるようになった。
図に至るまでのプロセスに着目したのは、電気自
しかし、1990 年代に入り、リチウムイオンバッテ
動車の高額な車両価格という問題があるからだ。
リーが考案されてエネルギー効率が飛躍的に改良
後述するが、消費者は自動車を選ぶ際に車両価格
され、航続可能距離が延びた。2009 年に自動車用
を最も重視する。そのために電気自動車の購買に
として実用化されるに至り、いよいよ電気自動車
至るプロセスを考えた際、消費者の所得水準が非
の時代が到来しようとしている。現に、三菱自動
常に大きな問題となる。しかし、所得水準はマー
車からは「i-MiEV」アメリカのスラ社からテスラ
ケティングで改善することはできないので、本研
ロードスターを発売しており、その他にも多くの
究では購買意図までのプロセスに着目した。消費
企業が開発に乗り出している。
者は購買行動に移る前に購買意図形成の段階を経
るため、購買意図までのプロセスを明らかにする
意義はある。
2-2. 電気自動車の利点と普及への課題
エンジン自動車と比較した場合の電気自動車の利
2. はじめに
点と課題は以下の項目が挙げられる。
・利点
2-1.電気自動車とは
①走行中に排出ガスを出さない
②振動や騒音が少なく、発進がスムー
電気自動車とは動力源にエンジンやディーゼルな
ズであり、走行中の振動が少ない。
どの内燃機関を用いずに、バッテリーに蓄電した
③電気代がガソリンより安いため、ランニングコ
電力でモーターを回転させることで走行する自動
ストが安い。
車である。電気自動車の誕生は以外にもガソリン
電気自動車は電力でモーターを動かすため、走行
エンジン車よりも早い。電気自動車の誕生は 1834
時には排出ガスを全く排出せず、振動や騒音が少
年にアメリカのトーマス・ダベンポートが発明し
ない。また、充電するのに必要なのは電気代だけ
たとされている。ガソリンエンジン自動車が 1886
であるので、燃費が非常に安い。i-MiEV の場合、
年にカール・ベンツによって発明される 54 年も前
一般的なガソリン車と比べると、燃費は約八分の
である。昔のガソリンエンジンは今のように簡単
一程度である。
・課題
このような現状を受け、2009 年 7 月のG8(主要八
①航続可能距離が短い
カ国首脳会議)では、先進国全体で 2050 年までに
②バッテリーの充電に時間がかかる
CO2 及び温室効果ガスを 1990 年比で 80%削減す
③車両価格が高い
ることを目指すことが掲げられた。
④充電インフラ
一方、石油枯渇問題も深刻である。可採年数(ある
三菱の i-MiEV の場合、フル充電時の航続可能距離
年の埋蔵量をその年の生産量で割り、後何年くらいで石
は約 160km であるが、走行時にエアコンやヒータ
油が枯渇するかを見る指標)によるとで考えると、石
ーを使うとさらに航続可能距離は短くなる。その
油は後 40 年ほどで枯渇する見込みである。このま
ため、充電インフラの整備も大きな課題である。
まのペースで石油の埋蔵量が減少していくと石油
また、充電時間は、100 ボルトの場合 14 時間、200
の需要と供給のバランスが崩れ、激しい石油の奪
ボルトの場合だと 7 時間要する。
車両価格も約 400
い合いが起こると言われている。
万円(補助金終了時)であり、同程度のガソリン自
上記のような地球温暖化と資源枯渇問題を背景に、
動車と比べ、約 3 倍もするのである。
電気自動車は走行中に CO2 を全く排出せず、燃費
これらの課題は電気自動車の普及に向け、解決し
も非常に安いため、次世代自動車として注目を浴
なければならない問題である。
びている。実際に、以下のように世界各国で電気
自動車の普及に向けて様々な取り組みが行われて
いる。
2-3. 環境問題、石油枯渇問題により電気自動
日本:エコカー(電気自動車やハイブリット車)購入
車の市場価値上昇
者に補助金をだすなど(2010 年 10 月をもって終了)
、
電気自動車の普及を推進している。
今日、世界的に環境危機が叫ばれている。なか
アメリカ:自動車電池製造や電気自動車の普及促
でも地球温暖化問題は深刻であり、各国は温室効
進に関する 48 のプロジェクトに総額 24 億ドルを
果ガスの削減に関する法令及び条例を打ち立てて
助成している。
いる。しかし、現実には、大気中の温室効果ガス
ドイツ:1 台につき 5000 ユーロの電気自動車購入
の濃度は上昇しており、今のままでは 2100 年には
補助制度を実施している。
地球平均気温は 5.8 度上昇すると言われている。
フランス:1 台につき 700 ユーロの電気自動車購
温室効果ガス別の地球温暖化への寄与率はCO2
入補助制度を実施している。
が 60%、メタンが 20%であり、世界的に CO2 の
中国:13 のモデル都市で 1 台につき 84 万円の電
排出量の最たるものは石油など地下資源の燃焼に
気自動車購入補助制度を実施している。
よる給熱・発電の 46%で、次いで 23%が交通機関
である。つまり、交通機関が CO2 排出全体の四分
3. 電気自動車市場の動き
の一近くを占めている。交通機関には鉄道や飛行
機、船舶もあるが、自動車からの CO2 排出量はそ
2010 年の電気自動車の世界市場は 6 万 5 千台、
れらに比べればはるかに大きい。その自動車が 21
2700 億円市場を形成し、本格的な市場拡大期に入
世紀初頭までに世界に 9 億台を超えて普及してお
った。2020 年には世界で 378 万 1000 台市場とな
り、それにあわせて CO2 濃度も上昇してきた。
り、市場規模は 9 兆 4800 億円規模になると予測さ
れている。すでに三菱自動車からは i-MiEV、アメ
リカのテスラモーターズからテスラロードスター
近年、消費者の自動車に対する意識が変わりつつ
を発売しており、2010 年 12 月には日産から「LE
ある。以前は「いつかはクラウン」といったよう
AF」が発売される。また、2010 年 5 月にはトヨ
に自動車がステータスの一種であった。しかし、
タ自動車とテスラモーターズが電気自動車に関す
今日の消費者は次ページの表 1 が示すように「車
る業務提携を行い、トヨタ自動車はテスラモータ
は便利な移動手段」や、
「旅行やスポーツなど趣味
ーズに対して 5000 万ドルを出資し、株式を保有す
をサポートしてくれる道具」といった意識を持っ
る。トヨタはエコカーの軸をハイブリット車やプ
ている。自動車を単なる生活を便利にする道具と
ラグインハイブリット車に置いていたが、これを
して見ており、以前の消費者のように自動車に付
期に本格的に電気自動車の開発に乗り出した。ト
加価値を見出していない。
ヨタとテスラは 2012 年に米国での電気自動車の
また、自動車を購買する基準にも大きく変化が生
発売を目指している。
じている。先述した通り、以前は自動車はステー
一方、欧米の大手自動車メーカー各社も開発に乗
タスを象徴する存在であったため、皆のステータ
り出している。アメリカ自動車大手ゼネラルモー
スシンボルとなる自動車が人気であった。しかし
ターズ(GM)は中国で電気自動車の生産を開始し、
近年ではそういったブランドを基準に選ぶのでは
年内には試作品を発表する予定だ。GM は中国で
なく、次ページの表 2 が示すように“車両価格”や
電気自動車を生産する初の海外自動車メーカーと
“燃費の良さ”を最も重要視する。消費者は経済性を
なる。ドイツ自動車大手 BMW グループは、ライ
重視して自動車を選ぶようになったといえる。
プツィヒの工場で電気自動車生産に向けた新工場
を建設した。同社は 2013 年までに総額約 4 億ユー
ロを投資し、電気自動車「 メガシティ・ビークル
(MCV)
」を生産する新しい工場建物と設備を完成
させる予定である。ドイツのフォルクスワーゲン
■表―――1
(VW)は上海汽車集団(SAICモーター)および
購買する自動車を選ぶ際、あなたが重視するポイ
中国第一汽車集団(FAW)との現地合弁企業を通
ントは何ですか?
じ、2013 年にもEVを生産する方針を示した。
2014~2018 年に 1 万台を生産・販売する計画であ
り、18 年には中国向けに設計された電気自動車の
投入を検討していることを明らかにした。このよ
うに、欧米各社も開発に乗り出しており、今後は
価格競争が激化していくのは必至である。
4. 現状分析
■表―――2
4-1. 消費者の自動車に対する意識の変化
以下の項目はあなたの電気自動車に対するイメー
ジにどの程度あてはりますか?
ションの改善が必要である。
4-3. 電気自動車の潜在的購買者の特徴
では実際に電気自動車の購入を検討する消費者は
どの程度いるのだろうか。表 3 より、実際に検討
する消費者は全体の約 4 割であり、そのような消
費者は「イノベーター(新しいもの好き、流行をリード
することを好む)
」や「エコ先進派(イノベーターでは
ないが環境に配慮する)
」である。つまり電気自動車
このように消費者の自動車に対する意識は大きく
の購買にはエコ関与度の高低が影響しているとが
変化している。こうした変化に対応するために自
わかる。
動車メーカー各社は低燃費、ランニングコストの
■表―――3
安い自動車を開発・販売しており、販売台数を伸
もしも今すぐ購入できる場合、電気自動車を購入
ばしている。日本自動車販売協会連合会によると、
候補として検討しますか?
2010 年 1 月~6 月の自動車販売台数で 1 位~3 位
をハイブリットカーのプリウスとフィット、コン
パクトカーのヴィッツが占めた。
4-2. 消費者の電気自動車に対する認識
表 2 の調査結果が示すように、消費者の電気自動
車に対するイメージは「環境に優しいが、高価である」
が上位を占めた。このようにエコや価格の問題が
目立ち、「1. はじめに」で述べたような電気自動車
5. 仮説
特有の特徴である「走行中の振動が少ない」や「ラン
ニングコストが安い」といったメリットの理解が乏
「3. 現状分析」で述べたように電気自動車の購買
しい。電気自動車普及を進めるためにはよりメリ
を検討する消費者は「エコ先進派」や「イノベーター」
ットを正しく理解・認知させるプロモーションが
である。したがって「エコ関与度」が電気自動車の
必要である。
購買意図の形成に影響を与えると仮定できる。ま
また、航続可能距離が短いため、日々の生活で利
た、電気自動車は新たに市場に投入された自動車
用するには不便であるという消費者のイメージが
であるため、「車関与度」が電気自動車の購買意図
あるが、実際にはそのようなことは決してない。
形成に影響を与えると仮定できる。
日本人のドライバーの約 90%は一日に 80 キロ以
以上から仮説を図式化すると表 4 のようになる。
下しか走行しないが、三菱自動車の i-MiEV である
■表―――4
とフル充電で約 160km 走行可能である。プロモー
仮説
■表―――5
アンケート概要表
車関与度
EV購買意図
エコ関与度
調査手法
インターネット上のサービス
調査対象
18歳以上(大学生以上)
サンプル数
107
有効回答数
100
調査期間
10月28日〜11月17日
(計)21日間
仮説①:「車関与度」は電気自動車購買意図に正の
アンケートの構成要素は大きく二つに分かれてお
影響を与える。
り、アンケート項目は車関与度、エコ関与度を測
る既存研究を参考に作成した。前半部分では各消
仮説②:「エコ関与度」は電気自動車購買意図に正
費者がどの程度強い車関与度を持っているかを調
の影響を与える。
べる。具体的には車に関する知識を持っているか、
車にこだわりがあるか等を聞いた。尺度は「全く当
てはまらない」
、
「当てはまらない」、
「どちらでもない」
、
6. アンケート調査
「当てはまる」
、
「全く当てはまる」
、の順に「1」~「5」
とする 5 段階のリッカート尺度を採用した。なぜ
6-1. アンケートの目的
なら、リッカ―ト尺度は等間尺度であり、各アンケ
ート項目の重要性の度合い及び多様な意見を把握
「 5. 仮説」で述べたように、EVの購買意図に
し、項目間が電気自動車の購買意図にどの程度影
は「車関与度」と「エコ関与度」が影響を与えてい
響を与えるかをより分かりやすく調査するためで
ると仮説を立てた。よって、本研究のアンケート
ある。
調査では各消費者がどの程度の「エコ関与度」と「車
後半部分では各消費者がどの程度「エコ関与度」
関与度」を持っているか調べ、また、それらが電気
をもっているかを調べた。具体的には省エネを行
自動車の購買意図にどの程度影響を与えているか
っているか、環境に配慮しているか等を聞いた。
調査した。
ここでも第一部と同じように 5 段階のリッカート
尺度を用いた。本論文の最後に補録として添付し
6-2. アンケート方法
たので参考にされたし。
そして最後の質問で「車関与度」と「エコ関与度」
本アンケートの調査手法はインターネット上の
が電気自動車に対する興味や購買意図に影響して
「MR アンケート」を利用した。調査対象は 18 歳以
いるかを調べるために、電気自動車の認知度や電
上の人とした。期間は 10 月 28 日~11 月 17 日の
気自動車の購買見込みを聞いた。
計21日間で有効回答は 100 人だった。人口統計
また、ゼミ員を小規模の標本対象としてアンケ
的な変数も考慮し、性別と年齢の項目も入れた。
ートの事前調査をしたところ、アンケート調査項
アンケートの概要は表 5 の通りである。
目の中で不備がある項目が見つかり、分析のデー
タとして扱わないようにした。それに加え、項目
が 20 個以上を超えるとアンケート調査の目的や学
分析 1:因子分析
問的な背景の説明がない場合、有効な回答を引き
連続型のアンケート項目間の相関関係を把握する
出すのが難しいと判断し、項目数を 15 個に減らし
ために因子分析を実施した。5 点リッカート方式で
た。
アンケートを実施した項目間の相関関係は、独立
変数と従属変数が連続型(数値型)データで構成さ
れるため、因子分析が適切であると判断した。
7. 分析
分析 2.:二項ロジスティック回帰分析
得られたアンケート結果を検証し、「 車関与度」と
次に、アンケート項目が電気自動車購買見込みの
「エコ関与度」がどの程度電気自動車購買見込みに
有無にどういう影響を及ぼすかを検出するため、
影響を与えるか考察する。
独立変数にはアンケート項目を入れ、従属変数に
は電気自動車購買見込みの有無を入れて二項ロジ
7-1. 分析の前に
スティック回帰分析を行った。なぜなら、リッカ
ート方式の質問項目と電気自動車の購買見込みの
以下のようにアンケートの各質問項目の変数名を
有無の関係を分析するには、独立変数に連続型の
定め、
「車関与度」と「エコ関与度」要素に分類する。
リッカート方式の項目変数を入れ、従属変数に範
質問 1~質問 4 と質問 6、質問 7 を「車関与度」を
疇型の購買有無項目を入れる必要があるため、二
表す変数とし、質問 9~質問 14 を「エコ関与度」を
項ロジスティックス分析が適切であると判断した。
表す変数とする。
また、
検証はすべて SPSS を用いて分析を行った。
質問 1:こだわり
質問 2:知識
質問 3:必要
7-3. 分析結果
質問 4:外観
質問 6:燃費
・因子分析
質問 7:ブランド・車種
質問 9:環境配慮
因子分析を用いてアンケート項目の変数に影響
質問 10:高額でも環境配慮
を及ぼす因子、若しくは隠れている共通因子を探
質問 11:省エネ・節電
した。因子分析をするには尺度形態が連続型のデ
質問 12:CO2 排出抑制
ータなければならないため、アンケート項目の中
質問 13:生産過程
で必要な連続型の変数だけを選定した。標本数は
質問 14:責任
100 個を確保し、アンケート項目の中で選ばれた変
数の約 8 倍になったため、結果の歪みが少なくな
7-2. 分析手順
ったと言える。
因子抽出モデルとしては、情報損失を最小化す
本研究の検証手順は以下の通りである。
る主成分分析を採択した。一つの因子がすくなく
とも一つ以上の変数を説明出来るように固有値は
次に、表 7 の回転後の成分行列を見てみると、
1 以上に設定し、変数間の相関関係を把握するため
回転後の成分行列は上の表のように 4 つの因子に
に相関行列を検出した。表 6 の相関行列から、車
別れた。具体的には「こだわり」
、
「燃費」、
「必要」
関与度の変数である「こだわり」と「燃費」
、
「外観」
と「知識」といった変数が高い因子 1、
「環境配慮」
、
と「ブランド・車種」がある程度の相関を示すこと
「責任」
、
「CO2 排出抑制」の変数が高い因子 2、
「外
がわかった。
観」と「ブランド・車種」の変数が高い因子 3、
「省
■表―――6
エネ・節電」、
「高額でも環境配慮」と「生産過程」
相関行列
の変数が高い因子 4 になった。分析者の主観が入
る因子の命名は考察のところで扱う。
相関
こだわり
知識
必要
外観
燃費
ブランド・車種
こだわり
1.000
.351
.252
.138
.429
.169
知識
.351
1.000
.285
.240
.178
.208
必要
.252
.285
1.000
-.022
.247
.149
外観
.138
.240
-.022
1.000
.149
.415
燃費
.429
.178
.247
.149
1.000
.201
ブランド・車種
.169
.208
.149
.415
.201
1.000
上の相関行列から自動車への「こだわり」と「燃費」、「外観」と「ブランド・車種」がある程度の相関が
ることが検証された。
■表―――7
回転後の成分行列
成分
1
2
3
4
こだわり
.746
-.220
.115
.069
燃費
.659
.203
.139
-.021
必要
.658
.093
-.089
-.236
知識
.534
-.125
.359
.352
環境配慮
-.039
.778
.027
.087
責任
-.007
.731
-.146
.225
CO2 排出抑制
.064
.630
.209
-.001
外観
-.003
-.029
.862
.060
ブランド・車種
.233
.178
.681
-.121
省エネ・節電
.286
.150
-.138
.698
高額でも環境配慮
-.192
.128
.190
.675
生産過程
-.389
.105
-.274
.521
因子抽出法: 主成分分析
回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
a. 6 回の反復で回転が収束しました。
・ロジスティック回帰分析
車関与度とエコ関与度を構成するすべての項目
目は Q10、Q14、Q13 順であることが示された。
を独立変数といれ、購買有無を従属変数にいれ、
変数増加法ステップワイズで投入したため、正の
強制投入した方程式中の変数の結果は表 8 である。
影響が低い項目は自動的に除外され、自動車関与
表 8 の結果から車関与度を構成する項目は「こだ
度の項目全てが負の影響を与えることが分かる。
わり」を除いて電気自動車の購買見込みに負の影
また、表 10 の分類テーブルにより、Q10、Q14、
響を及ぼすことがわかり、エコ関与度を構成する
Q13 の順に変数が増えるにつれ、予測値と観測値
すべての項目は購買見込みに正の影響を及ぼすこ
の正解の割合が 65 パーセントから 71 パーセント
とがわかる。購買見込みに正の影響を与える項目
まで増えていくことがわかる。すなわち、設定さ
の中で、どの項目が一番購買見込みに強い影響力
れた模型で 71 パーセントを説明することができる。
を持つのかを調べた結果が表 9 である。
次ページの表 9 が示すように、Q10 の「高額で
も環境配慮」変数が電気自動車の購買見込みの有
無に一番強い影響を与えることがわかる。また、
変数 12 項目の中で買見込みに強い影響を与える項
■表―――8
方程式中の変数
EXP(B) の
95%
信頼区間
B
標準誤差 Wald
自由度
有意確率 Exp(B)
下限
上限
.073
.256
.082
1
.775
1.076
.651
1.778
q2
-.198
.261
.577
1
.447
.820
.492
1.367
q3
-.034
.213
.025
1
.874
.967
.636
1.469
q4
-.263
.240
1.201
1
.273
.769
.480
1.230
q6
-.544
.249
4.761
1
.029
.580
.356
.946
q7
-.095
.240
.157
1
.692
.909
.568
1.456
q9
.341
.224
2.311
1
.128
1.406
.906
2.182
q10
.549
.243
5.118
1
.024
1.732
1.076
2.787
q11
.283
.241
1.377
1
.241
1.327
.827
2.129
q12
.448
.241
3.460
1
.063
1.565
.976
2.510
q13
.273
.253
1.164
1
.281
1.314
.800
2.160
q14
.305
.242
1.588
1
.208
1.356
.844
2.178
定数
-3.649
1.742
4.389
1
.036
.026
ステップ 1a q1
a. ステップ 1: 投入された変数 q1, q2, q3, q4, q6, q7, q9, q10, q11, q12, q13, q14
■表―――9
反復の記述
反復
ステップ 1
ステップ 2
ステップ 3
係数
-2 対数尤度
Constant
q10
1
124.277
-1.825
.491
2
124.117
-2.051
.552
3
124.117
-2.059
.554
4
124.117
-2.059
.554
1
116.677
-2.955
.446
.432
2
116.057
-3.580
.541
.523
3
116.054
-3.635
.550
.531
4
116.054
-3.635
.550
.531
1
112.776
-3.495
.389
.367
.335
2
111.811
-4.369
.492
.466
.408
3
111.800
-4.473
.505
.478
.416
4
111.800
-4.474
.505
.478
.417
5
111.800
-4.474
.505
.478
.417
q14
q13
a. 方法: 変数増加法ステップワイズ (尤度比)
b. 定数がモデルに含まれています。
c. 初期 -2 対数尤度: 133.750
d. パラメータ推定値の変化が .001 未満であるため、反復回数 4 で推定が打ち切られました。
e. パラメータ推定値の変化が .001 未満であるため、反復回数 5 で推定が打ち切られました。
■表―――10
分類テーブル a
観測
予測
EV 購入
いいえ
ステップ 1
EV 購入
はい
正解の割合
いいえ
46
15
75.4
はい
20
19
48.7
全体のパーセント
ステップ 2
EV 購入
65.0
いいえ
47
14
77.0
はい
17
22
56.4
全体のパーセント
ステップ 3
EV 購入
69.0
いいえ
49
12
80.3
はい
17
22
56.4
全体のパーセント
71.0
a. 遮断値は .500 です
■表―――11
方程式中の変数
EXP(B) の 95% 信頼
区間
B
標準誤差 Wald
自由度
有意確率 Exp(B)
下限
上限
.554
.188
8.666
1
.003
1.740
1.203
2.517
-2.059
.603
11.659
1
.001
.128
ステップ 2b q10
.550
.196
7.872
1
.005
1.733
1.180
2.544
q14
.531
.196
7.388
1
.007
1.701
1.160
2.496
定数
-3.635
.898
16.374
1
.000
.026
ステップ 3c q10
.505
.201
6.286
1
.012
1.657
1.117
2.459
q13
.417
.206
4.092
1
.043
1.517
1.013
2.271
q14
.478
.202
5.611
1
.018
1.613
1.086
2.395
定数
-4.474
1.041
18.474
1
.000
.011
ステップ 1a q10
定数
a. ステップ 1: 投入された変数 q10
b. ステップ 2: 投入された変数 q14
c. ステップ 3: 投入された変数 q13
続いて各 Q10、Q14、Q13 がどの程度電気自動
車の購買見込みに影響を与えるか考察する。表 11
より、有意確立から独立変数の有意性を考察し、
Exp(B)値からどの程度影響を及ぼすのかを把握
する。また、Exp(B)値が1より大きいか小さい
かを見ながら、影響力の方向を把握することがで
きる。具体例を挙げると、ステップ 3 の独立変数
Q10 の有意確立は 0.012 であるため、購買確立に
有効な影響を与えることがわかる。そして、Exp
(B)1.657 であることは、独立変数である Q14
が一単位増加した場合、購買確立が 1.657 増加す
るという意味である。この分析結果から Q10 と
Q14 と Q13 が他の項目より電気自動車の購買見込
みに一番大きい正の影響力を持つことが分かった。
8. 分析結果の検証
削除しなければならないため、全体の変数を投入
した。全体的な信頼度自体はそこまで高くない結
因子分析では因子負荷量の累積が高い説明力を
持たない水準であったため、信頼性分析を通して
果になった。
また、修正済み項目合計相関の相関関係係数が
データの信頼性を図る。
0.400 を超える変数が一つもないので、全体の相関
1. 信頼性分析
関係は高くない。信頼度と合計相関係数が低い理
信頼性は SPSS の統計分析を利用し、Cronbach`s
由としては、因子分析の結果からわかるように抽
アルファ係数を利用した内的一貫性法を用いる。
出された 4 つ因子の負荷量の累積が約 56 パーセン
因子分析で尺度の妥当性検証をした後に尺度の信
トに過ぎないことが挙げられる。または標本数が
頼度検証を実施した。
少なかったことも原因に挙げられる。
■表―――12
信頼性統計量
Cronbach の
アルファ
0.53
標準化された項目に基づいた
Cronbach のアルファ
項目の数
0.53
12
Cronbach`s アルファ係数が少なくとも 0.60 を超
えると信頼度が満足できる水準であるが、表 12 よ
り、0.530 になっているので、全体的な信頼度は高
くないことを示している。
次ページの表 13 の項目合計統計量が示すように、
各項目別に見てみると、どの項目が削除されたと
しても、Crobach アルファが 0.60 を超えなく、信
頼性を得るためには少なくとも三つ以上の項目を
■表―――13
項目合計統計量
項 目が 削除
さ れた 場合
項 目 が 削 除 さ れ項 目 が 削 除 さ れ
の
た 場 合 の 尺 度 のた 場 合 の 尺 度 の修 正 済 み 項 目 合
Cronbach
平均値
分散
計相関
重相関の 2 乗
のアルファ
こだわり
32.69
30.539
.183
.337
.515
知識
32.96
28.867
.331
.281
.478
必要
33.03
31.080
.129
.213
.529
外観
32.59
30.123
.204
.272
.510
燃費
32.71
28.895
.319
.289
.481
ブランド・車種
32.61
29.493
.261
.284
.495
環境配慮
32.92
29.630
.241
.265
.500
高額でも環境配慮
33.05
31.058
.146
.192
.524
省エネ・節電
32.87
29.629
.283
.189
.491
CO2 排出抑制
32.96
29.291
.296
.173
.487
生産過程
33.22
34.517
-.098
.246
.578
責任
32.96
29.796
.245
.288
.500
9.仮説検定
二項ロジスティック回帰分析結果を中心として仮
説検証を行う。車関与度を構成する変数を統計分
析に投入すると 6 個の変数すべてが電気自動車の
購買見込に否定的な影響を与えることが明らかに
なった。従って、仮説 1 の「自動車関与度は電気
自動車購買見込に正の影響を及ぼす」は破棄され
た。
一方、エコ関与度を構成する変数を統計分析に
投入すると6個の変数すべてが電気自動車購買見
込に肯定的な影響を与えることが明らかになった。
従って、仮説2「エコ関与度は電気自動車購買見
込に正の影響を及ぼす」は採用された。
10. 考察
トがもっとかかるため、比較的に容易に習得でき
る「外観」と「ブランド・車種」を重視する。こ
因子1は「こだわり」と「燃費」と「必要」と
れらの変数は「知識」や「燃費」より多少抽象的
「知識」という変数の係数が 0.400 以上であり、
な項目であることから、自動車関与度はある程度
強い相関関係を持つ因子である。自動車への全般
存在するが、それほど強くないことがわかる。す
的な関与度が高い因子である。自動車に対する関
なわち、自動車に対して関心はあるが専門知識な
与度が高い場合、自動車自体に対する関心が高い
い購買行動の要因を説明できる。因子3の特徴に
ため、自動車の知識と必要とする度合いが高くな
基づいてエコニッチだとネーミングをした。
るといえる。自動車は耐久財であり、耐久財の中
因子4は「省エネ・節電」と「高額でも環境配
でも商品単価が比較的高く、使用期間が比較的長
慮」と「生産過程」変数の係数が強い相関関係を
い。それに加え、買回品の中でも平均的な買い替
持つ因子であり、環境関与度が高い因子である。
え期間が長いため、関心やこだわりがない場合は
因子2に比べてみると、購買行動と密接な関連を
詳しい知識を持つ可能性は希少だともいえる。自
持つ項目間の相関がわかる。
「高額でも環境配慮し
動車の燃費という変数は単なるエンジン効率だけ
た製品を購買する」という変数は実証的な項目で
ではなく、維持管理費やラーニングコストを含む
あり、環境関与度が購買にも影響を与えるほど高
自動車購買後に発生する様々な経済的なコスト概
いといえるだろう。
「省エネ・節電」変数の係数が
念とみなした。既存の自動車への関与度が高けれ
高いということは、日常生活でも環境に優しい行
ば環境関与度が低い理由としては、既存のエンジ
動を実践する高い水準のエコ関与度保有者である
ン自動車は環境に優しい製品というよりは、便利
といえる。また、生産過程で新環境部品・素材を
な移動手段として認識されているからである。す
使った製品を購買するということも環境関与度が
なわち、因子1は環境には多少負の影響を及ぼし
高いということを示す。このような因子4の特徴
ても便利さを訴求する要因を説明できる。因子1
に基づいてエコサポーターだとネーミングをした。
は「ノンエコ」とネーミングした。
因子2は「環境配慮」と「責任」と「CO2 排出抑
11. 結論
制」という変数の係数が強い相関関係を持つ因子
車関与度を構成する項目は電気自動車購
である。環境関与度の相関が高い因子であり、
「環
買見込みに負の影響を与え、エコ関与度を
境配慮」や「責任」は「購買行動」や「選好度」
構成する項目は全般的に電気自動車購買見
よりは書飛車の価値観及び信念に近い。環境関与
込に正の影響を与える。具体的に、どの項
度は高いが、具体的な実践及び行動に結びつくの
目が電気自動車購買見込みに一番影響力を
かは未知数である。因子2の特徴に基づいてエコ
持つのかというと、今回の研究では、高額
トライアーとネーミングした。
でも環境配慮をした製品を購買するという
因子3は「外観」と「ブランド・車種」という
項目の変数であった。高額であるが、環境
変数の係数が強い相関関係を持つ因子である。ま
に優しい車というイメージや認識を消費者
た、因子3は自動車に関する知識がない状態で自
に強調し、差別化していく戦略が有効であ
動車を購買しようとすると、知識を増やそうとし
ると予想される。なぜつまり、電気自動車
ても専門的な知識になればなるほど情報探索コス
の販売を促進していくためにはある程度の
既存エンジン自動車との価格の格差で差別
化する必要がある。高額を維持したまま、
他のプロモーション戦略は因子分析の結果
を土台として消費者に様々なアプローチが
出来るといえる。また、電気自動車は環境
配慮をし、新環境材料の部品・素材を使っ
ている点を様々なマーケティング戦略を通
して効率的に伝えることが今後の課題であ
る。
参考文献
「御堀直嗣+[2010 年]+『知らなきゃヤバイ!電気自動車は新たな市場をつくれるか』+
日刊工業新聞社」
「根岸敏雄+[2006 年]+『石油の生産量はピークにきたのか?』+幸書房」
Fly UP