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第6章 公共施設保全の基本的な考え方

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第6章 公共施設保全の基本的な考え方
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
第6章
6-1
公共施設保全の基本的な考え方
保全の目的
全庁的な視点のもと不要不急な工事を避け、計画的な施設の保全を行い、公共施設を安全・安
心に利用できる状態を維持するとともに、施設の長寿命化やライフサイクルコスト縮減を図るこ
とを目的とします。
6-2
保全の原則
厳しい財政的制約の中でこれらを実現していくためには、多くの費用がかかるため、費用を縮
減しつつ、効率的に改築や改修工事を実施していくことが重要です。
したがって、以下の3点を公共施設の質を確保するための原則とします。
① 公共施設の⻑寿命化
改修・更新(建て替え)にかかる保全費用が公共施設の一生を通じて安価になるように、計
画的・予防的な工事を行うとともに、公共施設の長寿命化を図ります。
② 維持管理費の削減
改修工事にかかる費用を少しでも賄うために、光熱水費や保守点検費など公共施設の維持管
理に必要な経常的コストを減らす方策を検討します。
③ 改修の優先順位の設定
今後の財政状況の変化に備え、各年度の保全にかかる経費をできるだけ抑制すると同時に、
一時期に極端に経費が集中しないように配慮していく必要があります。限られた予算内で公共
施設の機能を維持していくためには、優先順位を定め、必要性の高い工事に絞って実施するこ
とが不可欠です。
53
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
6-3
保全の具体的手法
① 公共施設の⻑寿命化
改修を計画的・予防的に行うことにより、劣化の進行を遅らせ、公共施設の機能低下を長期
間抑えます。建築物は躯体(柱・梁など)と躯体を囲む内外装・設備に区分されますが、内外
装・設備は躯体より耐用年数が短く、耐用年数を迎えると建物機能の低下をきたします。内外
装・設備においては、それぞれの部位の劣化状態を適切に把握し、老朽化による破損や機能低
下が予見されるときは早めに改修を行うこと、公共施設の機能に重大な影響を及ぼす部位は、
たとえ機能低下がなくてもあらかじめ定められた年数で改修を行うことを積み重ねることで、
施設の耐用年数を 20 年、30 年延伸させることをめざします。その結果、更新(建て替え)に
かかる巨額の費用や突発的に起こる過大な改修費用を抑えることができます。
図 6-1
計画保全と⻑寿命化のイメージ
② 維持管理費用の削減
建物の劣化は徐々に進行し、ある時一斉に大きな故障や不具合となって顕在化することが多
くあります。例えば、屋根や外壁のひび割れから雨水がしみこみコンクリートの中性化が徐々
に進行し、ある時に大きな構造強度の低下が発見されることや、空調などの機械のモーターの
軸ずれが起こり、異音が発生しているのに放置しておいたため、急に動かなくなることがあり
ます。日頃から建物を大事に使うとともに、細かい異常も見逃さないように常に注意を払って
おくことが重要です。このような取り組みは、突発的に多額の修繕費が発生することを防ぎ、
事前の少額な点検費・修繕費にとどめておくことが可能になるほか、不具合による無駄な光熱
水費や、突発的に必要となる保守点検費の抑制にも効果があります。これらのことを実効性の
あるものにしていくために、建物点検のあり方の施設管理者への周知や、光熱水費の現状の的
確な把握、各施設から定期的に情報を集約し、管理するしくみの構築といった取り組みを進め
ていきます。
54
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
【参考:光熱水費の現状】
市の負担している「光熱水費」について、延べ床面積あたり負担額を施設分類別にみると次
のとおりであり、環境衛生施設や庁舎等施設で延べ床面積あたりの「光熱水費」が比較的高く
なっています。
表 6-1
施設分類別の延べ床面積あたりの
市が負担する光熱水費の施設平均値
大分類
延べ床面積あたりの
光熱水費(円/㎡)
中分類
庁舎等施設
防災施設
図書館・資料館
市民会館・公民館
集会施設 コミュニティセンター
高齢者福祉会館
集会施設その他
体育施設
環境衛生施設
産業振興施設
児童福祉施設
保健福祉施設
住宅施設
学校教育施設
その他施設
合計
4,199
64
1,112
1,365
73
49
650
441
4,600
1,158
2,259
1,951
2
2,328
293
708
(平成 23〜25 年度平均)
③ 計画的な保全のための改修周期の設定
公共施設のデータベースを構築・共有し、組織横断的な視点から、各年度に必要な改修・更
新(建て替え)工事を決定するための判断材料とします。改修・更新工事は、各部材が耐用年
数に到達した時点で行うことを原則とします。学術文献などで例示されている一般的な年数を
示します。今後、施設種別や構造などに応じて、別途定めます。
表 6-2
部材ごとの耐用年数(例)
部位
修繕周期
計画更新年数
外壁
屋上防水
屋根
給水管
排水管
ガス管
給水ポンプ
8-10 年
5-10 年
5年
4-7 年
15-20 年
20-30 年
30 年
20-30 年
25-40 年
25 年
20 年
出典:建築物のライフサイクルコスト(一般財団法人建築保全センター)等
55
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
ただし、耐用年数に到達したものすべての改修・更新工事に着手するのは財政制約上不可能
です。したがって、耐用年数に到達したもののうち、最も優先すべき工事は何かについて精査
します。
④ 工事の優先順位の設定
優先すべき工事の検討・決定に際しては、物理的、機能的、経済的、社会的の4つの観点か
ら総合的に判断します。なお、各施設所管課による劣化診断(目視点検等)を実施することに
より、日々最新の情報を管理していきます。
現状で、すでに安全性が損なわれている建物や大きな機能低下が発生している建物について
は、優先的に改修を実施することとなります。この場合は推奨される周期よりも前倒しして改
修を実施します。
表 6-3
視点
優先順位検討の際に必要な視点
優先順位を高める主な要因
放置しておくと利用者に直接・間接の物理的被害や大きな施設の滅失が予見される場合
例)外装材落下の危険・消防設備の不備等への対応
物理的
観点
敷地周辺に悪影響(騒音・振動・著しい美観の喪失等)を与えており、解消が求められる
もの
例)通風不良による臭いの解消、空調外部機器の劣化による騒音解消
改修により長寿命化が明らかに見込まれるもの
例)屋根防水の改修、外壁のひび割れ補修、外壁塗装、建具廻りの防水及び鉄骨の塗装
などの躯体の構造的強度低下を防ぐために行う改修
機能的
観点
設置当初の本来の要求事項が満たせなくなっており、その解消を行うもの
例)雨漏りによる利用が著しく困難な室、設備機器の故障による機能の支障等
災害発生時・積雪時を想定し健全な状態を特に維持しておくことが必要と判断されるもの
例)避難経路の無理のない確保、積雪時の凍結防止方策
経済的
観点
予防保全により、将来のライフサイクルコストの低減が見込まれる状況にあるもの
例)鉄筋の露出などがあり、放っておくと大きな機能低下が起こり大規模な改修が必要
となることが予見されるもの
社会的
観点
市民ニーズの変化により新規整備、増改築または用途転用が必要な場合
環境負荷低減に貢献するもの
例)面積の著しい不足解消、LED 電灯への交換、バリアフリー、負荷の少ない熱源機器
への交換など
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北⾒市公共施設マネジメント基本計画
6-4
北⾒市公共施設の物理的観点から⾒た現状
① 現地調査に基づく劣化の現状
1) 現地調査の概要
【現地調査のねらい】
公共施設のうち比較的老朽化率が高い建物を対象に、目視調査によって実際の劣化状況を
把握する「施設現地調査」を実施しました。
今後の公共施設の維持保全に役立つものとするべく、老朽の問題や補修・改修の必要性を
明らかにすることを目的としています。また、今後継続的に残りの施設を各所管課で調査し
ていくための「劣化度診断マニュアル」を、本調査知見をもとにを取りまとめることも目的
の1つです。
【現地調査の対象】(次頁表参照)
「老朽化率が高い」「一定程度以上の延床面積がある」ことを条件に、地域(自治区)バ
ランス、施設用途バランスを考慮して対象を抽出しました。
なお「大規模改修実施済み建物」「産業振興施設(牧場など)」「住宅施設(公営住宅な
ど)」は対象候補から除外しました。
【現地調査の方法・内容】
対象施設の棟ごとに、屋根・外壁・設備・内装などの部位毎に建築士が目視調査し、劣化
状態を以下の4区分で判断しました。
表 6-4
劣化度
1
劣化度区分の概要
区分
健全
状態の例
劣化状況がほとんど認められない状態。
設備更新・改修を行って間もない状態。
外壁はヘアークラック(細かなひび割れ)や白華現象(石灰
2
機能上問題無し
分がにじみだした白い汚れ)程度、屋根は塗装の剥がれ程度
といった定期的な補修をすれば問題無い状態。
3
4
機能維持に補修
外壁のひび割れや部材の傷みなど、このままでは雨漏りや剥
が必要
落、水漏れなどの問題が生じる可能性がある状態。
機能上問題あり
屋根の雨漏りや、外壁の剥落・鉄筋露出、機器効率の低下な
ど問題が顕在化している状態。
57
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
表 6-5
大分類
庁舎等施設
中分類
庁舎・支所等
集会施設
市民会館・公民館
コミュニティ
センター
高齢者福祉会館
その他集会施設
図書館
・資料館
体育施設
・レクリエー
ション施設
図書館
資料館等
屋内体育施設
観光施設
児童福祉
施設
保育園
児童センター
保健福祉施設
学校教育施設
その他施設
子育て相談センター
老人福祉施設
その他教育施設
その他
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
施設現地調査の対象施設
施設名称
上常呂出張所
仁頃出張所
日吉出張所
瑞穂出張所
西地区公民館
常呂町公民館
留辺蘂町公民館
とん田地区住民センター
上ところコミュニティプラザ
上ところ住民センター
上仁頃住民センター
仁頃住民センター
小泉住民センター
端野町農業振興センター
緋牛内農村生活センター
福山地区高齢者コミュニティセンター
富丘地区高齢者コミュニティセンター
おんねゆ温泉農業交流センター
瑞穂地区農村環境改善センター
はあとふるプラザ
留辺蘂町民会館
常盤町南高齢者福祉会館
上ところ高齢者福祉会館
相内町高齢者福祉会館
高齢者文化館
高砂会館
ことぶき会館
田園空間情報センター
勤労青少年ホーム
働く婦人の家
交通安全研修センター
常呂町多目的研修センター
常呂町手工芸の館
留辺蘂町青少年会館
中央図書館上ところ分室
端野図書館
常呂図書館
留辺蘂町開拓資料館
相内地区市民トレーニングセンター
東地区市民トレーニングセンター
常呂町健康温水プール
温根湯温泉スポーツセンター
端野町物産センター
道の駅おんねゆ温泉
とん田保育園
端野中央保育園
錦水保育所
さかえ保育園
高栄児童センター
相内児童館
常呂児童館
自治区
北見
北見
常呂
留辺蘂
北見
常呂
留辺蘂
北見
北見
北見
北見
北見
北見
端野
端野
常呂
常呂
留辺蘂
留辺蘂
留辺蘂
留辺蘂
北見
北見
北見
北見
留辺蘂
留辺蘂
北見
北見
北見
北見
常呂
常呂
留辺蘂
北見
端野
常呂
留辺蘂
北見
北見
常呂
留辺蘂
端野
留辺蘂
北見
端野
常呂
留辺蘂
北見
北見
常呂
留辺蘂児童館
留辺蘂子育て相談センター
端野デイサービスセンター
学校給食センター(北見)
公用車車庫(東三輪3丁目)
緋牛内陶芸工房
合計
留辺蘂
留辺蘂
端野
北見
北見
端野
58
棟数
1
1
2
1
2
1
2
2
1
1
1
1
1
1
1
3
1
1
3
1
2
1
2
1
1
1
3
1
2
1
1
2
3
3
1
2
1
1
1
4
1
1
1
4
2
1
1
2
1
1
1
1
2
2
3
5
1
92
延床面積(㎡)
121.18
44.55
104.00
12.50
482.85
842.00
2,107.37
523.25
1,182.24
636.66
358.02
557.55
339.39
613.70
400.14
544.02
291.60
418.77
515.02
808.76
729.11
147.42
218.70
297.48
163.62
375.00
277.02
406.50
1,065.87
795.62
545.12
1,853.60
557.92
533.57
191.70
636.49
228.00
233.88
1,078.00
1,150.13
1,838.00
2,895.70
220.32
1,629.78
578.34
600.56
359.00
422.08
306.09
299.39
452.00
385.06
92.70
446.00
1,756.30
506.47
129.60
35,305.71
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
2) 建物劣化などの物理的問題
「施設現地調査」の結果、以下のような建物の劣化状況と問題を確認しました。
表 6-6
部位
現地調査で確認した劣化状況と問題
劣化状況(例)
屋根
・鉄板葺きが腐食している。
外壁
・コンクリートにひび割れが生じ、内
部鉄筋が露出している。
・サイディングが剥落している。
玄関
や窓
内装
設備
生じる問題(例)
・雨漏りが発生。雨染みが生じるほか、建
具を傷める。
・鉄筋の腐食と膨張で加速度的に劣化が進
行し、構造強度が低下。修理には大規模
な補修工事が必要となる。
・内部構造や断熱材を傷める。
・隙間が開く。
・暖房効率が低下。
・建具が破損し、ドアがずれている。 ・開閉しづらい。鍵がかけられない。
・床の樹脂タイルがひび割れている。
・転倒の危険。踏み抜く危険。
畳の下の床板が割れている。
・建て付け不良。開閉しづらい。
・建具の歪み。
・換気を停止していることが多く、臭いが
・換気設備が古く、異音がする。うる
こもるほか、湿気や熱気で内装材を傷め
さい。
る。
・照明の安定器が故障し、異音がする。
・騒音。利便低下。
しばらく点灯しない。
屋根の汚れ・腐食
スイッチ類の破損
雨漏り・天井腐食
床樹脂タイルひび割れ
図 6-2
劣化状況の例
59
外壁ひび割れ
外壁材の劣化
北⾒市公共施設マネジメント基本計画
3) 劣化度の評価結果
「施設現地調査」では、屋根・外壁・内装など建物の部位別に「健全~機能上問題あり」
の4段階で劣化度を評価しました。
その結果、築年数が長いほど劣化度評価点数は悪くなる傾向があります。築 20 年以上の
建物の多くでは「機能維持に補修が必要(劣化度3)」の部位が見られ、さらに築 40 年以
上の建物の多くで「機能上問題あり(劣化度4)」の部位が見られました。
表 6-7
劣化度
区分
1
健全
2
機能上問題無し
3
機能維持に補修
が必要
4
機能上問題あり
劣化度区分の概要
状態の例
劣化状況がほとんど認められない状態。
設備更新・改修を行って間もない状態。
外壁はヘアークラックや白華現象程度、屋根は塗装の剥がれ程度と
いった定期的な補修をすれば問題無い状態。
外壁のひび割れや部材の傷みなど、このままでは雨漏りや剥落、水
漏れなどの問題が生じる可能性がある状態。
屋根の雨漏りや、外壁の剥落・鉄筋露出、機器効率の低下など問題
が顕在化している状態。
4.50
劣
化
度
部
位
平
均
点
数
4:機能上問題あり
4.00
3.50
3:機能維持の補修が必要
3.00
2.50
2:機能上問題なし
2.00
1.50
1:健全
1.00
0.50
0
10
20
30
40
図 6-3
50
60
70
80 築年数(年)
劣化度平均点数と築年数の関係
劣化度2以下
劣化度3の部位有り
劣化度4の部位有り
50年以上
45年~49年
40年~44年
35年~39年
30年~34年
築
年
数
25年~29年
20年~24年
15年~19年
10年~14年
5年~9年
4年以下
建物数
0
図 6-4
5
10
15
劣化度 4・劣化度 3 の部位がある建物数
60
20
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