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環境中の放射能の人体影響と留意点[PDF: 3.0MB]

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環境中の放射能の人体影響と留意点[PDF: 3.0MB]
福島県いわき市合同庁舎
平成27年11月26日
環境中の放射能の人体影響と留意点
1.放射能と放射線
2.日常受ける自然放射線と人工放射線
3.原子力発電所事故による放射性物質の拡散
4.放射線の人体影響と留意点
筑波大学生命環境系長
(前アイソトープ環境動態研究センター長)
松
本
宏
1.放射能と放射線
同じ元素(陽子数が同じ)で中性子
数の違うものを同位体という。今日
知られている同位体は3,000種以上、
核には安定なものと不安定なものが
ある。
核種(nuclide):原子核の種類
現在周期表には112個の元素が記載されているが、同じ元素でも中性子
数の違うものを別に数える。
今日知られている核種(放射性の原子核)は3,000種以上
同位体(isotope):
陽子数が同じで中性子数が異なるもの:化学的に同じ性質をもつ
安定同位体 (stable isotope)
(生体内や環境中挙動)
放射性同位体(radioisotope)
例:C(炭素)の同位体:15種類が知られる(6種のみを記載)
10C
11C
12C
13C
14C
15C
同位体
陽子数
6
6
6
6
6
6
中性子数
4
5
6
7
8
9
天然存在比
98.93% 1.07%
核の安定性 不安定 不安定
安定
安定
不安定 不安定
壊変形式
β+
β+
ββ半減期
19.3秒
20.3分
5730年 2.4秒
原子の安定性は原子核中の中性子と陽子の数の比 N/Pに依存:原子ごとに
特定の比で安定
原子番号が小さい場合1に近いところ、大きくなると1.5位で安定
放射線、放射能、放射性物質
不安定な原子核 →
(陽子に対して中性子
の数が多すぎたり少な
すぎる原子核)
放射線:
安定な原子核に変化(原子核の変化)
この時放射線を放出
不安定な原子核が安定な元素になろうとして放出
する粒子や電磁波(光子)
放射能:
放射線を出す能力をいい、これを持つのが放射性
物質
放射性物質:放射線を放出することにより安定になろうとする
不安定な原子核を含むもの
放射能が出ている?→ 放射線が出ている
放射能漏れ? 放射能汚染? → 放射性物質漏れ
放射性物質汚染
主な放射線の種類
α線
Heの原子核:飛ぶ距離が短く周囲の細胞のみが被曝
β線
電子:皮膚に付いた時や体内に入った時1mm以内が被曝
γ線、X線
電磁波:体内、体外に関係なく被曝
中性子線
中性子:核分裂で生成し、より遠くまで届き被曝
α-崩壊( α-粒子の放出)
226
88
質量数
α 粒子(He
の原子核)
222
Ra 138
Cs
原子番号(陽子数)
中性子数
Rn
86
136
ラドン-222
ラジウム-226
β—崩壊(中性子から電子が放出され陽子になる)
32
15
電子(e)
P 17
32
16
S 16
イオウ-32
リン-32
γ-線放出(エネルギーが電磁波として放出)
137
55
e
Cs 82
セシウム-137
137m
56
γ
Ba 81
バリウム-137m
137
56
Ba81
バリウム-137
(電磁波)
FMラジオ
電磁波
日焼け
赤外線コタツ
TV
がん治療
周波数
[Hz]
長
波
中
波
短
波
超
短
波
103
105
107
108
マ
イ
ク
ロ
波
1010
ミ
リ
波
赤
外
線
可
視
光
紫
外
線
1012
1014
1015
1016
X γ
線・線
1018
X線CT
MRI
AMラジオ
カラー写真
X線写真
電子レンジ
紫外線, X線, γ線は「電離放射線」とも言われる(光に似た性質)
電離放射線:当たったものを電離させる(原子の電子をたたき出す)
作用をもつ
放射線の遮蔽
α線を止める
β線を止める
γ(X)線を止める
α線は光速の1/10で移動 β線は光速の1/2で移動
中性子線を止める
γ線は光速で移動
α線(α粒子)
131I
137Cs
β線(電子)
γ線,X線
(電磁波)
中性子線
(中性子)
紙1枚
1mm厚ア
ルミニウム
1.5cm厚
の鉛
水やコン
クリート
原子力図面集2005年、原子力防災基礎用語集より
放射能の単位
不安定原子核が単位時間当たりに変化(壊変)する回数:壊変率
単位Bq(壊変数/秒):1秒に何個の核が変化するか
この壊変率で放射能が表わされる
放射線の単位
吸収線量:物質が吸収する放射線のエネルギー量(J/kg): Gy グレイ
1Gy = 1J/kg
等価線量:Svシーベルト
個別の臓器の線量を表す
吸収線量×放射線加重係数:吸収線量が同じでも受ける放射線の種類に
よって影響が異なるための補正を行った値
放射線加重係数:β線, γ線, X 線=1, 中性子線=5~20, α線=20
特定の臓器や組織のみが局所的に被ばくした場合組織等価線量と呼ぶ
実効線量:Svシーベルト
全身の被ばく線量を表す
等価線量を組織毎に出し組織加重係数をかけて全身への影響に換算した
被ばく量
異なる放射線で異なる臓器が被ばくした場合でもその健康影響を比較
できるようにしている
放射線の単位(イメージでとらえる!)
出放
す射
線
を
(イメージ)
ベクレル(Bq)
雨がどのくらい
降っているのか?
(雨の量)
放射性物質の量(放射線の量)
受放
け射
る線
を
グレイ(Gy)
雨にどのくらい濡れて
しまったか?
(濡れてしまった量)
吸収した放射線の量
シーベルト(Sv)
体にどのくらいのダメー
ジがあるのか?
(臓器や放射線に依存)
放射線による人体 への影響
β, γ
131I
→ 131Xe
非放射性
β, γ
137Cs
→ 137Ba
非放射性
物理的半減期:左表
生物学的半減期:生体
に取り込まれた元素が
排泄などで体外に排出
され半分になる時間
Cs 幼児・児童:
30~60日
成人:
70~100日
2.日常受ける自然放射線と人工放射線
・環境中には放射性核種由来の
放射線があり, 宇宙線とあわせて
自然放射線といわれる。また、
人工放射線のほとんどは医療
(健康診断)によって受ける。
・自然放射線による人体の被ばく
は世界平均で2.4mSv/年とい
われる。内訳は宇宙線から
0.36 mSv, 大地放射線から
0.41mSv, 人体に含まれる自然
放射性物質から1.63mSv(空
気中のラドンなどの吸入1.3,
40Kを中心として食物由来
0.33)である。
日本人の放射線被ばく
・自然放射線 2.1 mSv/年
・医療放射線 2~3 mSv/
年
・その他起源 事故など
公衆の追加被ばく限度
1 mSv/年以下に抑える
自然放射線量については国内外
の論文から、原子力安全協会が
出した報告書に基づいて、魚の
内臓等に含まれる天然のポロニ
ウムによる内部被ばく線量を上
方修正原発事故による影響は
考慮されていない。
環境中の放射性核種
核実験
137Cs,90Sr,239Pu,240Pu,236U
宇宙線(核破砕反応)
22Na, 10Be, 7Be, 14C, 129I
噴火、山火事
210Po, 210Pb
土壌
U系列,Th系列,40K
黄砂
137Cs, 239Pu
U系列,Th系列,40K
核関連施設
3H,133I,85Kr,133Xe,51Cr
54Mn,59Fe,60Co,90Sr,137Cs
地下水、温泉
226Ra,228Ra, 222Rn
食物
40K,14C, 87Rb
河川水、海水
238U, 234U, 226Ra, 228Ra
14C, 129I
大気、地殻、海、食物 どこにでも何にでも
放射性核種は含まれている!
内部被ばくと外部被ばく
内部被ばく
外部被ばく
影響同じ!
• 内部被ばくでも外部被ば
くでも
• 放射線が違っても
放射性物質がなくなる
まで被ばくし続ける
放射線源から離れれば、
それ以上被ばくしない
内部被ばく、外部被ばくそれぞれ1 Sv浴びた場合の影響の度
合いは?
地球に存在する放射性元素
• 地球の元素の存在比率
– 1位 酸素
– 2位 珪素
46%
28.%
– 7位 カリウム
2.1%
土中に含まれる。
必須の栄養素
0.0117%が40K
(1460 keVのγ線を出す)
– 39位 トリウム
9.6 x 10-6
– 51位 ウラン 2.7x 10-6
– 69位 ヘリウム
– 71位 金
8 x 10-9
4 x 10-9
放射性物質
高
放射線
(単位:μSv/h)
度
(単位:Km)
36,000km
(マイクロシーベルト/時)
静止衛星
1,000~200,000μSv/h
宇宙ステーション
500km
200~300μSv/h
20km
13μSv/h
12km
5μSv/h
4km
0.2μSv/h
2km
0.1μSv/h
海 面
0.03μSv/h
食物中の40Kの放射能(Bq/kg)
40Kの天然存在比:0.012%
放射性物質(特に
40K)を含まない
食物はない
バナナ1本:16Bq
人体の中の自然放射能
40K :67Bq/kg
体重60kgの人で4100Bq
14C :41Bq/kg
体重60kgの人で2600Bq
137Csは20~30Bq
野菜などに含まれる自然放
射能分布
遮蔽箱中でイメージングプ
レートの上に試料を置いて、
1ヶ月間露出することに
よって得られた像。野菜や
人体にはカリウムの放射性
同位体40Kが含まれ、半減
期が約13億年で、元素誕
生以来存在する。これから
放出されるエネルギーの高
いベータ線の放出分布像。
上から豚肉、バナナ(
縦切、横切)、ショウガ
外部被ばく線量には地域差が
あり日本では西日本が高い。
(花崗岩の露出した所多い)
福島県における自然平均屋外
線量(外部被ばく線量)は0.4
mSv /年(0.044μSv/時)
程度
外国には自然放射線量が
10mSv/年になるところもあ
る
線量は高度依存
12,000mで0.005 mSv/時
(ニューヨークへの往復飛行で
約0.2mSv)
放射線・放射能は自然界の一部
• 地球誕生の前からある天然の放射性物質
カリウム40、ウラン、トリウム、ラジウム、ラドン・・・
• 太陽や遠い銀河系から届く宇宙線
• 宇宙線が大気に当たってつくる放射性物質
炭素14、ナトリウム22、トリチウム(三重水素)・・
• 天然自然の放射線や放射能は安全で人工のものは危険、
ということはない。体内への蓄積性は元素の性質で決ま
り、放射性であるかどうかは関係しない
• 安全かどうかは、放射線の量(体の中の細胞が傷つく度合
い)による。現在われわれが受けている放射線にプラスして
どれだけ被ばくするかが問題
3.
原子力発電所事故による放射性物質の拡散
原子力発電:ウラン(235U)の核分裂により発生する熱で水を
蒸気に変え、この蒸気の力でタービンを回し発電する
東京電力HPより
燃料と燃料棒
原子炉1機に1,630万
個のペレット
核分裂生成物
235Uは核分裂生成物として90Sr, 92Kr, 131I, 137Cs, 141Baなど
を生成(中でも131Iや137Csは沸点が低く今回のような水蒸気爆
発で多く放出)
90Sr, 92Kr等 131I, 137Cs等
↓
235U
236U
90Sr, 92Kr
中性子
131 I, 137Cs
等
等
核分裂生成物生成率(核分裂あたりの%)
中性子
235U
↓
239Pu
核分裂生成物の質量数
W.マーシャル編:原子炉技術の発展(上)より
福島第一原発の原子炉の状況
原子炉建屋
格納容器
格納容器から建屋
に漏れた水素が爆
発し、上部が吹き
飛ぶ(1, 3, 4号機)
水素
圧力容器
質
が
漏
れ
出
す
注水
燃えない
窒素ガス注入
蒸
気
底の亀裂か
ら水漏れ
圧
力
制
御
プ
ー
ル
水
素
、
放
射
性
物
配管つなぎ
目に亀裂
水
水
水
放
射
線
水
放射線が水を分
解し水素ガスが
発生
メルトダウし
た熱い核燃料
東京電力福島第一原子力発電所事故
2011.3.11
東北地方太平洋沖地震
放射性物質はエアロゾル(気体中に浮遊する微粒子)として放出
され、上空を煙のような形で流れる放射性雲(プルーム)として
風で運ばれた。
3/15 午前 北から北東風(南から南西へ流れた)
同日 午後 南西風で北西側に流れた。夕方、南下してきた雨
雲と重なり、放射性雲に含まれる放射性物質が降雨で落下した。
Cs-137 (Bq/m2) マップ
100 km
20 km
地面のIP画像
IP像から地表面に放射性物質(Csと推定)が点状に付着して
いる様子がわかる(IPは約 25cmで四方右下の黒い部分は
鉛板遮蔽した部分)。
粘土粒子へのセシウムの取り込み
Cs LIII-edge EXAFS:
バーミキュライト(粘土鉱物、土壌中に存在)とCs: 直接結合する
土壌中の粘土鉱物
Cs
水から土壌
への吸着
水に溶けた
状態
水分子がとれて
粘土鉱物と結合を作る
→ 安定になる
Cs
Cs-137の土壌中 深度分布
2011年4月28日に採取
Cs-137 (Bq/kg)
98% in 5 cm
100 kBq/m2
2011年梅雨前後のCs分布
I-131 (Bq/kg)
100% in 5 cm
40 kBq/m2
Kato et al. (2012)
Csは土壌表層に強く吸着
Csだけを取り出すのは困難
Matsunaga et al. (2013)
Cs-137 density (Bq/m2 cm)
梅雨の後でもCsの深度
分布は変わらない
放射性核種の陸上での移行経路と人体に与える線量
汚染源
飛散
大気
降下
土壌
外部および内部被ばく
付着
農作物
食事
吸入
人体
吸収
吸入
外部および内部被ばく
大気中に放出された核種は、移動中に減衰するか、比較的 に短期間に地表
面に沈着する。その後、陸上表層の核種は 一般的には長い期間をかけて減
衰し、その地域に住んで いる人々に外部被ばくを与える可能性がある。ま
た、食物の摂取や吸入により内部被ばくの可能性がある。
4. 放射線の人体へ影響と留意点
急性障害
身体的影響
胎児発生の
障害
脱毛・不妊
など
精神遅滞
確定(非確率)的
影響
(しきい値がある)
白内障
晩発障害
ガン・白血病
遺伝的影響
遺伝的障害(先天異常)
確率的影響
(しきい値がな
いと仮定)
※しきい値・・・ある線量以下ならば安全であるという限界線量
等価線量で
評価
実効線量で
評価
2015/11/26
等価線量を用い、機能障害を判断
影
響
の
重
篤
度
実効線量で発がんの可能性を判断
例:ヨウ素の50mSv甲状腺被ばく線量
(甲状腺等価線量)は、実行線量では
2mSv(加重係数0.04)で評価
確定的影響
放射線を浴びて間もなく現れる影響の症状と浴びた線量との
関係(ガンマ線またはX線を一時に全身に浴びたとき)
急性障害
・吐き気や脱毛、貧血、火傷
・機能を担う細胞数の減少による
・しきい値以下では全く起きない
放射線の量(mSv)
症
状
250以下
医学的検査で症状が認められない
250
白血球が一時的に減少するしきい値
500
白血球が一時的に減少し、やがて回復
1,000
吐き気、嘔吐、全身倦怠、リンパ球著しく減少
1,500
50%の人が放射線宿酔(二日酔に似た症状)
2,000
5%の人が死亡
4,000
30日以内に50%の人が死亡
6,000
2週間以内に90%の人が死亡
7,000
100%の人が死亡
確定的影響が現れる被ばく量
局所被曝
皮膚:脱毛
皮膚:紅斑
皮膚:急性潰瘍
水晶体:水晶体混濁 生殖腺:永久不妊
(mSv)
500 1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
全身:50%の人が死亡
全身:末梢血中の
リンパ球の減少
8000
9000
10000
全身:100%の人が死亡
全身:悪心・嘔吐(10%の人)
(IPRC Publ.60ほか)
全身被曝
放射線によるDNAの切断
間接作用:水分子に電子が当たり活性酸素
ができ、DNAが損傷
放射線 X線、γ線、β線の主な作用
H
OH・ O
H
S-A
T-S
P
P S-C
G-S P
A-S P
P S-T
P S-G
C-S
e
p+
・DNA鎖の切断
放射線
・DNA塩基変異の導入
e
p+
・
10A
・
20A
直接作用:物質に当たって飛び出した電子
が直接DNAに当たって損傷
α線、中性子線の主な作用
二本鎖切断は重篤な損傷で生物影響はその頻度に依存する
細胞が死を免れても放射
線によるDNA損傷が突然
放射線による細胞への影響
変異として発現すること
がある。ただし、放射線
による特有の突然変異が
放射線 あるわけではなく、自然
正常細胞
でも起こりうる変異の確
率が上がる。
DNA損傷
体細胞突然変異:
発ガンの原因
(わずか) 生殖細胞突然変異:
(ほとんど全部)
修 復
子孫への遺伝的影響
修復に成功
修復に失敗
(極めてわずか)
突然異変
正常細胞
細胞死/アポトーシス
細胞のがん化
これらにより、ヒトの1/2がガン
になり、1/3がガンで死亡する
放射線を、一瞬で浴びた場合と長い年月をかけて少しづつ浴びた場
合の違い
細胞内に抗酸化(活性酸素消去)物質や抗酸化酵素があり、少量の放射線を
時間をかけて被ばくする場合は軽減効果が働く上に、DNA修復機構も機能
調査集団
がん死亡率の比 被ばく線量(被ばく期間)
原爆放射線被ばく者
1.08
200 mSv(数マイクロ秒)
中国の高自然放射線地区住民
0.75
330 mSv(60年間,
5.5mSv/年)
0.71
100 mSv(20年間,
5mSv/年)
0.68
20 mSv(約10年間,
2mSv/年)
英国の放射線科医
欧州の定期航空パイロット
⇒超高線量率の原爆放射線の被ばくは、がん死亡率を増加させる
⇒低線量率放射線の長期間被ばくは、がん死亡率を低下させる(ガン発生を起
こしにくい:ホルミシス効果?)
(出典:近藤宗平、放射線生物研究Vo145(4),p341,2010
同、IsotopeNews,No636,p14-19,Apr2007)
放射線による人体影響(外部被曝)
緊急時の吸収線量(Gy)と
実行線量(Sv)の換算
Gy = Sv
吸収線量(実行線量)
137Csが1000 Bq/m2
0.0022 mSv/時
131Iが1000 Bq/m2
0.0014 mSv/時
土壌中の137Csが
50000 Bq/m2の場合
(福島市、郡山市等の一部)
一日8時間、野外で畑仕事を1年間
続けた場合の137Csからの被ばく量
0.0022 x50 (mSv)x8 (時間)x365 (日) =
0.32 mSv/年
食品中の放射能と内部被ばくの関係
内部被ばくにおける実効線量(預託実効線量)の計算法
外部被ばく線量を考える場合には放射線にさらされた期間だけを考え
ればよいが、内部被ばくの場合には、放射性物質が体内に取り込まれ
てから排泄される、または、減衰するまで臓器が放射線にさらされる
ので、その期間の量を計算する必要。そこで摂取してから50年間に受
ける量を積算し、しかも、それを最初の1年間で全ての線量を受けたと
して、その値をmSv/年で示す。
実効線量係数
131I
:2.2 x 10-5 mSv/Bq (0.022 μSv/Bq)
137Cs :1.3 x 10-5 mSv/Bq (0.013 μSv/Bq)
134Cs
:1.9 x 10-5 mSv/Bq (0.019 μSv/Bq)
例:100Bq/kgのセシウム137を含んだ食品を毎日100gずつ1年間
食べ続けてしまった場合の生涯での被ばく量は0.047mSv
放射性セシウムに係る摂取基準値
平成23年12月22日 厚労省審議会了承
平成24年4月1日 適用
・食品からの放射性セシウムによる許容被ばく線量を暫定基準の
年間5 mSvから1 mSvに変更
・1 mSvのうち飲料水からの被ばくを0.1mSv, その他食品(コメ、
卵、肉類、野菜など)からのそれを0.9 mSv以内に抑える
・飲料水は一日2L飲むと仮定、一般食品は年代毎の摂取量を推定
し最も摂取量が多い13~18歳男子で1年間食べ続けた場合でも値
を超えないように設定
基準値
飲料水
一般食品
牛乳・乳児用食品
10 Bq/kg
100 Bq/kg
50 Bq/kg
外部被ばくと内部被ばくの合計推計値(WHO発表):各地区の住民が被ばくした
可能性の高い線量の幅、土壌表面、吸入、食事由来による被ばくを含む
甲状腺がんの発生したチェルノブイリ事故避難民の平均 490mSv
中央値 4Bq→
年間推定被ばく線量
0.023 mSv
最大値 17.3Bq→
年間推定被ばく線量
0.1 mSv
天然カリウム40
からの被ばく
年間 0.2 mSv
NaI シンチレーション検出器(食品モニター)を用いた放射性セシウム検出の例
放
射
能
強
度
137Cs
134Cs
40K
γ線のエネルギー
137Cs:
34 Bq/kg
134Cs: 19 Bq/kg (計53 Bq/kg, 検出限界は10 Bq/kg 程度)
40K : 常に一定量が食品中に存在し異常ではないため値は表示されないが、
30Bq/kg 程度と推定
コープ福島の陰膳検査
Csの最大値 最大濃度の食事を1
年間継続 実効線量 0.04mSv
ホールボディカウンターでの内部被ばくの無い人のスペクトル
体の中の40Kからのγ線だけが見える
数万人に一人見つかっている極端に内部被ばくの多い人のスペクトル
20,000Bq/body, 1日の平均摂取量140Bqと推定
甲状腺がんは増えるか?
見つかったこと
・ 原発事故時18歳以下だった福島県民27万人の甲状腺検査で33名の
甲状腺がんが発見
懸念されること
・ この病気は100万人に1~2人がなり、33名の発症は原発事故による
放射線の影響ではないのか
甲状腺がんは症状がわかりづらく、進行が遅いため発見が遅れがちであるが、致死
率も低い。100万人に1~2人というのは、自覚して検査を受けた人で発見された割合(
発見率)であり、病気の存在率を示すものではない。
比較のため事故の影響がないとみられる3県(青森、山梨、長崎)で甲状腺検査を行っ
たが、福島の18歳以下は異常率が高いわけではない: 福島の33名は特異な数値で
ではなく、この若年層の甲状腺がんは原発事故の影響によるものではない。
チェルノブイリ事故での甲状腺がん発症者の増加:
被災地近郊居住者500万人のうち約4,000人 死者は15人
事故直後に汚染された食物(特にミルクや乳製品の摂取による)
福島では内部被ばくはチェルノブイリより格段に少なく、甲状腺疾患の増加は考えにく
い
福島県民対象の内部被ばく検査結果
ホールボディカウンターによる体内セシウムからの生涯
被ばく量の推定
平成23年6月~平成26年1月 検査人数
検査結果
184,208人
預託実効線量(生涯にわたる内部被ばく線量)
1mSv未満
184,182人(99.99%)
1mSv
14人
2mSv
10人
3mSv
2人
参考となる自然放射線による被ばく量
日本人:食品による内部被ばく
0.99 mSv /年
空気中の放射性物質による内部被ばく
0.48 mSv /年
大地・宇宙船からの外部被ばく
0.63 mSv /年
高線量地域の外部被ばく(イラン・ラムサール)10.2 mSv /年
原発事故とは関係なく日常の生活で摂取される放射性物質の量
天然放射性核種
40K: 50 Bq/日(人体は常時これによる内部被ばくを受ける)
238U: 5 Bq/年, 232Th: 1 Bq/年, 230Th: 1 Bq/年,
226Ra: 10 Bq/年, 210Pb: 80 Bq/年, 210Po: 220 Bq/年
人工放射性核種
90Sr: 25 Bq/年, 137Cs: 23 Bq/年,
239Pu+240Pu: 0.07 Bq /年
放射性CsとKによる内部被ばく影響
放射線の種類やエネルギーおよび生物学的半減期に違いはあるが、
体内に存在する場合、放射能(Bq)が同じであれば、ほぼ同程度の
人体影響を与えると推定される
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告
書:福島での被ばくによるがんの増加は予想されない
プレスリリース 14-023-J
2014年04月02日
福島原発事故の結果として生じた放射線被ばくにより、今後がんや遺伝性疾
患の発生率に識別できるような変化はなく、出生時異常の増加もないと予測
その一方、最も高い被ばく線量を受けた小児の集団においては、甲状腺がん
のリスクが増加する可能性が理論的にあり得ると指摘し、今後、状況を綿密
に追跡し、更に評価を行っていく必要があると結論。甲状腺がんは低年齢の
小児には稀な疾病であり、通常そのリスクは非常に低い
人々が自身や自分の子どもの健康への影響を懸念するのは当然のことである
が、今後のがん統計に事故に伴う放射線被ばくに起因する有意な変化が生じ
るとは予想していないとの見解
陸上および海中の生態系への放射線被ばくの影響を評価し、影響があるとし
ても、いずれも一過性のもので終わる。海中の生態系については、植物相と
動物相が影響を受ける可能性は、原子力発電所に隣接する海岸域に限定され、
長期的に影響が及ぶ可能性はごく小さいと予想
学校や家庭での活動で留意すべきこと
セシウムのある場所を知ること
田畑・住宅地・校庭:土の表層、攪拌や天地換えをした場合は
撹拌した層全体的に平均的に分布
森林:葉 →落ち葉、リター層 → 森林土壌
河川・湖:底質
外部被曝の抑制:表土剥離と移動または埋設
内部被曝の抑制:食品 リター層に根や菌糸を出す植物、
原木栽培キノコ、川魚に注意
花壇作りなど土に触る作業:土埃の吸入防止(マスク)
腐葉土の利用に注意
野菜や草花などは根から水に溶けた物質を吸収
土壌に吸着したセシウムは水に溶け出さず、根からほとんど
吸収されない
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